説明

漂泊触媒の調製

本発明は、実質的に非水溶性溶液中において、マンガン錯体を合成することに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水溶性溶液中での漂泊触媒および酸化触媒の合成に関する。
【背景技術】
【0002】
Wieghardtらは、JACS、第110巻、第7398頁(1988年)において、エタノール/水混合液中の二核のビスカルボキシレート橋かけMe−TACNマンガン(III)錯体(Me−TACN=1,4,7−トリメチル−1,4,7−トリアザシクロノナン)と空気(二酸素)との反応による[MnIV(μ−O)(Me−TACN)](PFの合成を記載している。
【0003】
Wieghardtらは、JACS、第120巻、第13104頁(1998年)において、メタノール中の酢酸マンガン(III)の反応による錯体[MnIVMnIII(μ−O)(μ−OAc)(Me−DTNE)](ClOの合成を記載し、遅い空気酸化により前記錯体を生成している(Me−DTNE=1,2−ビス−(4,7−ジメチル−1,4,7−トリアザシクロノン−1−イル)−エタン)。
【0004】
Koekらは、Inorg Chim Acta、第295巻、第189頁(1999年)において、水/エタノール混合液を用いたTACN誘導体に基づく二核Mn(IV)錯体の合成を記載している。
【0005】
国際公開第96/06154号は、KPFの存在下、エタノール/水中の酢酸マンガン(II)4水和物の反応と、当該反応後に過酸化水素/NaOHを添加して、その後酢酸を用いて中和することによる[MnIVMnIII(μ−O)(μ−OAc)(Me−DTNE)](PFの合成を記載している。
【0006】
国際公開第2006/125517号は、1,4,7−トリメチル−1,4,7−トリアザシクロノナン(Me−TACN)と、1,2−ビス−(4,7−ジメチル−1,4,7−トリアザシクロノン−1−イル)−エタン)(Me−DTNE)とを用いた、漂白における高水溶性塩としてのマンガン錯体の水性媒体中での製造、および、当該錯体の使用を開示している。
【0007】
米国特許第5,274,147号で、Unileverは、水性エタノール溶液中での二核のビス−カルボキシレート橋かけ錯体の処理によって運ばれるMe−TACNを含むトリ−μ−オキソ橋かけマンガン錯体の形成を開示している。
【0008】
米国特許第5,153,161号で、Unileverは、マンガン塩と過酸化水素とを用いた配位子の水溶液の処理によって運ばれるMe−TACNを含むトリ−μ−オキソ橋かけマンガン錯体の形成を開示している。
【0009】
米国特許第5,256,779号で、Unileverは、マンガン塩と過酸化水素とを用いた配位子の水溶液の処理によって運ばれるMe−TACNを含むトリ−μ−オキソ橋かけマンガン錯体の形成を開示している。
【0010】
国際公開第2005/033070号で、BASFは、Me−TACNの水溶液への酢酸マンガン(II)の水溶液の添加と、続く有機基質の添加と、続く過酸化水素の添加を開示している。
【発明の概要】
【0011】
MnIIIイオンとMnIVイオンおよびトリアザシクロノナン配位子を有する二核マンガン錯体が、不活性条件(窒素またはアルゴン雰囲気)下、非水溶性溶媒中で、マンガン塩(多くの場合MnII塩)をトリアザシクロノナン配位子と反応させ、その後過酸化水素を添加し、高原子価MnIIIおよび/またはMnIV種を形成することにより形成される。
【0012】
従来技術において教示されているようなアルコール/水混合液を用いるよりも、むしろ非水溶性溶媒を用いてTACN部分を有するこれらの二核マンガン錯体を製造すると、収率と純度の両方で利点を有することを我々は見出した。
【0013】
さらなる利点は、PF含有錯体に見られるように、水から容易に結晶化しない錯体を生成させる非配位アニオンを用いたときでさえも、低水含有媒体を用いることにより金属錯体塩の乾燥が容易になるということである。斯かる非配位カウンターイオンの例は、これらに限定されないが、クロリド、ニトレート、ベンゾエート、サルフェート、およびアセテートを含む。非配位は別として、好適な錯体は、配位カウンターイオンも含む。(Me−TACN)に対する配位カウンターイオンは、3つのO2−であり、Me−DTNEに対する配位カウンターイオンは、2つのO2−と、1つのカルボキシレートイオンであり、アセテートを有することが好適である。
【0014】
一の実施態様では、本発明は、下記式(I)の配位子からの二核マンガン触媒塩の合成方法を提供する:
【化1】

pは、3であり;
Rは、独立して、水素、C1〜C6アルキル、CHCHOH、およびCHCOOHから選択され、または、Rのうち1つは、他のQのNにエチレン橋かけを介して結合しており;R1、R2、R3、およびR4は、独立して、H、C1〜C4アルキル、およびC1〜C4アルキルヒドロキシから選択され、
前記方法は、以下の工程を含む:
(i)溶媒中で、前記配位子の0.03mmol/ml〜4mmol/ml溶液を、マンガン塩と共に処理し、錯体形成混合物を形成する工程、ここで、配位子当たりの3つの窒素環の、マンガン塩に対する比は、0.8〜2であり、当該錯体形成混合物は、0〜6wt%の水を含有する;
(ii)前記工程(i)の溶液を過酸化水素または過酸化水素供給源と共に処理し、前記マンガン塩の1モル当たり1〜10モルのHを供給する工程、
(iii)前記工程(ii)の溶液を塩基と共に処理し、pHが8〜13の溶液を供給する工程、
(iv)前記工程(iii)の溶液を酸と共に処理し、pHが4〜9の溶液を供給する工程。
【0015】
前記工程(iv)終了後の溶液は、0〜20体積%の水、好ましくは0〜10体積%の水を含有することが好適である。
【0016】
上記工程(i)、(ii)および(iii)で述べたような遷移金属触媒の形成速度は、前記配位子に依存する。Me−TACN配位子からの遷移金属触媒の形成は、通常、5分以内に終了する。好ましくは、錯体形成混合物が残存し、工程(ii)が始まる前に、任意に、20℃〜80℃の温度範囲で少なくとも20分間撹拌される。Me−DTNE配位子からの遷移金属触媒の形成では、最適な錯体形成のために約20〜30分必要となる。錯体形成後、H/塩基をゆっくりと添加して所望のMn(IV)/Mn(IV)またはMn(IV)/Mn(III)種(工程(ii)、(iii)および(iv))を形成してもよい。この第2工程、酸化工程は、固体物質として保管するのに十分に安定な錯体または水溶液または非水溶液中に溶解した保管するのに十分に安定な錯体を供給する。
【0017】
他の実施態様では、本発明は、本明細書に規定するような予備形成遷移金属触媒塩を提供し、当該予備形成遷移金属触媒塩は、少なくとも24時間前に、好ましくは7日前に接触工程および酸化工程が行われることにより形成され、そして密閉した、好ましくは密封した容器内に保存される。
【発明を実施するための形態】
【0018】
発明の詳細な説明
遷移金属触媒の配位子は、式(I)である:
【化2】

pは、3であり;
好ましくはRは、独立して、水素、CH、C、CHCHOHおよびCHCOOHから選択され;この基の最小の好適な基は、水素である。最も好ましいRは、メチル、および/または、Rの一つが、QのNと他のQのNとを結ぶエチレン橋かけである。好ましくはR1、R2、R3、およびR4は、独立して、Hおよびメチルから選択される。好適な配位子は、1,4,7−トリメチル−1,4,7−トリアザシクロノナン(Me−TACN)および1,2−ビス−(4,7−ジメチル−1,4,7−トリアザシクロノン−1−イル)−エタン(Me−DTNE)であり、なかでもMe−TACNが最も好適である。最も好ましいマンガンイオンは、Mn(III)および/またはMn(IV)である。
【0019】
遷移金属錯体の配位カウンターイオンは、O2−および/またはカルボキシレート(好ましくはアセテート)である。遷移金属錯体が少なくとも1つのO2−配位カウンターイオンを有することが好適である。特に、Me−TACNには、3つのO2−配位カウンターイオンが好適であり、または、1つのO2−配位カウンターイオンおよび2つのカルボキシレートカウンターイオンが好適であり、配位カウンターイオンとして2つのアセテート部分を有することが最も好適である。Me−DTNEには、2つのO2−配位カウンターイオンおよび1つのアセテート配位カウンターイオンが好適である。
【0020】
遷移金属触媒塩の非配位アニオンは、好ましくは、クロリド、アセテート、ベンゾエート、サルフェート、およびニトレート、過塩素酸塩、ヘキサフルオロホスフェートからなる群より選択される。
【0021】
錯体形成方法の第1工程は、非水溶性溶媒への配位子の溶解を伴い、その後マンガン塩が添加される。適切で好適な溶媒は、これらに限定されないが、
メタノール、エタノール、アセトニトリル、トルエン、アセトン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコール、プロピレングリコール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、およびイソブタノールを含む。
メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、および1,2−プロピレングリコール等のOH含有溶媒が好適である。
【0022】
錯体形成工程において用いられるマンガン塩は、塩化マンガン(II)、硫酸マンガン(II)、酢酸マンガン(II)、酢酸マンガン(III)、硝酸マンガン(II)から選択される。
【0023】
Me−DTNE型錯体を合成し、かつ、開始物質が酢酸マンガン(II)または酢酸マンガン(III)でない場合、追加としてカルボン酸またはそのアルカリ塩を、配位子に対して若干過剰のモル等量で添加する必要がある。好ましくは、アルカリカルボキシレートは、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、ギ酸ナトリウム、ギ酸カリウム、安息香酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウムから選択され、好ましくはカルボン酸は、酢酸、ギ酸、安息香酸、およびプロピオン酸から選択される。酢酸ナトリウムおよび酢酸が、最も好適である。
【0024】
続く工程では、過酸化水素の添加が必要である。3〜70%の過酸化水素水、過酸化アルカリ、尿素・過酸化水素、過ホウ酸ナトリウムおよび過炭酸ナトリウム等の過酸化水素の異なる供給源を用いてもよい。
【0025】
過酸化物の最適な量は、配位子に対してモル等量であるが、モル等量よりも若干過剰にしても収率に大きな低下は生じない。
【0026】
過酸化水素水を添加するときの水の投入が、基本的に不可避であることに留意されたい。しかしながら、濃縮された過酸化水素(30%以上)を用いることにより、水の値は10体積%未満となる。この理由のため、過酸化水素の最も好適な範囲は、20〜55%であるが、3〜70wt%の過酸化水素水も許容できる。
【0027】
また、追加の塩基を添加して、過酸化水素によりマンガンイオンを酸化させる必要がある。塩基のモル量は、添加される過酸化物のモル量とほぼ同量である。NaOH、KOH、および他のアルカリ水酸化物を用いることができ、NaOHおよびKOHが最も好適である。水溶液(例えば、5M溶液)を用いて、反応混合物へ滴下で添加してもよい。あるいは、エタノール中のKOH等の溶液を用いて、反応媒体中に存在する水の量を低下させてもよい。さらに、NaまたはKを調整されたアルコール溶液に添加して、アルコールのアルカリ塩を調製し、その後、そのアルカリ塩を反応媒体にゆっくりと添加してもよい。
【0028】
この工程の後に、酸を添加して中性の溶液(pH4〜9)を得る必要がある。任意の有機酸または無機酸を用い得るが、目的とする錯体の塩と同一の酸を用いることが好適であり、例えば、塩化物塩を製造する場合、塩酸等を使用する。
【0029】
最後に、添加する追加のカウンターイオン塩または酸を選択し、大きな非配位カウンターイオンを有する錯体を生じさせることができる。これらの化合物は、ベンゾエート塩、安息香酸、NaPF、KPF、HPF、およびNaClOから選択され、安息香酸ナトリウムおよびKPFが好適である。
【0030】
過酸化水素水(3〜70%のHが使用される)、添加される塩基(例えば、水中の5MのNaOH)、添加される酸等(例えば、水中の37%HCl)などの、反応媒体における水の様々な供給源を見出すことができる。より濃縮された溶液(例えば、30%を超えるH、エタノールに溶解したKOH、または、エタン酸ナトリウム)を用いることにより、当該溶液を中和するための濃縮された酸溶液(例えば、純酢酸)は、水の値を低くする。好ましくは、反応媒体は、20%未満の水を含有し、より好ましくは、10%未満の水を含有する。反応が終了し、固体物質を得たいのであれば、触媒塩を含む溶液から溶媒を除去する必要がある。これを達成するために、様々な方法を用いることができる、すなわち、大気圧におけるエバポレーション、減圧下でのエバポレーションによる除去、凍結乾燥、スプレードライにより達成することができる。反応媒体中の水の値が低ければ、溶媒の除去が容易であり、それによって材料を乾燥させるために必要とされる温度と時間を低減できることは、当業者にとって明らかである。経済的な理由は別として、いくつかの錯体の分解を減少させたものも得られる。
【0031】
あるいは、溶液中で触媒塩を製造することができ、固体物質として触媒塩を分離できない。触媒塩の値は、その場合、触媒の0.01〜50wt%となり、より好ましくは、触媒の0.1〜20wt%、最も好ましくは触媒の0.5〜10wt%となる。触媒を溶液中に残存させる場合は、好ましくは沸点が極度に低くない溶媒を用いる。非限定的な例として、エチレングリコール、プロピレングリコール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノールが挙げられる。
【0032】
あるいは、水との混和性の低い非水性溶媒(当該非水性溶媒の水への溶解性は20℃で20g/L未満である)中で触媒を製造することができる。上述した錯体形成により二核錯体を形成した後に、水を添加して、完全に混合して水相に触媒を溶解する。触媒を含有する水相が、次いで溶媒から除去される。触媒の抽出に用いられる水の量により、有機相から分離後の水溶液中の触媒の濃度が決定される。水中の触媒の好適な範囲(w/w%)は、0.01〜50wt%、より好ましくは、0.1〜20wt%、特に好ましくは0.5〜10wt%である。ジクロロメタン中の水の溶解性は、13g/Lであり、トルエン中の水の溶解性は、0.47g/Lである(両方とも20℃で)。
【0033】
水との混和性が低い非水性溶媒中で触媒を製造する場合、トルエンおよびジクロロメタンが好適である。水の添加後、水性触媒溶液が二核マンガン触媒塩を0.1〜20wt%、好ましくは0.5〜10wt%含むことが好適である。
【0034】
触媒含有溶液が0.01〜50wt%の触媒、好ましくは0.1〜20wt%の触媒、より好ましくは0.5〜10wt%の触媒を含むことが好適である。
【0035】
厳密には必要ではないが、錯体形成が無酸素雰囲気で、好ましくは窒素またはアルゴン雰囲気下で行われることが好適である。また、触媒を含有する固体物質または溶液を窒素ガス下またはアルゴンガス下で保管することが好適である。
【0036】
漂泊方法では、基質を、0,1〜100マイクロモルの予備形成遷移金属触媒および5〜1500mMの過酸化水素と接触させることが好適である。好ましくは、当該予備形成遷移金属触媒塩および過酸化水素を、当該基質に導入する直前に混合することが好ましい。
【実施例】
【0037】
例1.従来公知の方法による[Mn(μ−O)(μ−CHCOO)(Me−DTNE)]Clの調製(比較例)
窒素下、異なる溶媒(40mL)中、Me−DTNE(95%純度、4mmol)に、MnCl・4HO(99%純度、8.8mmol)と酢酸ナトリウム(99%純度、2mmol)との固体混合物を添加した。その混合物を58℃で30分間撹拌した。氷浴中で冷却しながらさらに10分間撹拌した後、水(9mL、9mmol)中の1MのHと、1.5MのNaOH(4.5mL、6.75mmol)との新しく調製された混合物を5分間に亘って滴下で添加した。その混合物は、すぐに暗い緑褐色に変化した。その混合物を、氷浴中で20分間撹拌し、次いで室温で20分間撹拌した。1Mの酢酸(2.5mmol)を添加した。さらに20分間撹拌した後、その混合物をろ過して茶色の固体を除去し、ろ床をエタノールで洗浄した。次いで緑色のろ液をエバポレートした(湯浴温度<45℃)。残りの暗い緑色のオイルをエタノールと酢酸エチルとで共沸し、残りの水の大部分の除去を容易にした。暗い緑色のオイルは、エタノール(20mL)に吸収され、ろ過により分離された不溶性の白色の塩は、エタノールで洗浄された。全てのエタノールを除去後、暗い緑色のオイルを再び得た。少量のエタノールを添加し、2分間撹拌した。次いで、多量の酢酸エチルを添加した。緑色の固体がすぐに沈殿した。−20℃で3時間後、その懸濁液をろ別し、緑色の固体を得て、その固体を酢酸エチル、n−ヘキサンで洗浄し、真空下45℃で5時間乾燥し、[Mn(μ−O)(μ−OAc)(Me−DTNE)]Cl・HOとして暗い緑色の粉末を得た。
【0038】
1.1 EtOH/HO(2:1、v/v)基準試験
エタノール/水(2:1、v/v):40mL;緑色の粉末を生成し、UV−Vis純度は85.3%、収率は88%。
【0039】
UV−Visスペクトル(ε:mol−1・L・cm−1、水中、Mw:630):271nm(11794)、554nm(258)、639nm(275)。
【0040】
IR(KBr錠剤法):3421br、2921w、1604m、1568m、1499w、1463s、1395s、1337w、1286w、1159w、1076w、1057w、1032w、1004w、985w、912w、779w、744w、678m、614m cm−1
【0041】
超高速液体クロマトグラフィー(UPLC)分析により12.45%の遊離[H(Me−DTNE)]Clを確認した。
【0042】
合計塩化物量は、13.10%だった。
【0043】
水分析(カール−フィッシャー法):[Mn(μ−O)(μ−OAc)(Me−DTNE)]Cl・HOの分析計算値:2.86%;検出値4.10%。
【0044】
この例は、妥当な収率と純度で錯体を合成できるが、その錯体が有意の量の錯体を形成していない配位子と水とを含むことを示している。この例は、その錯体形成が最適ではなかったことを示している。
【0045】
1.2 HO、基準試験
脱塩水:40mL;緑色の粉末を生成し、UV−Vis純度は63.8%、収率は54%。
【0046】
UV−Visスペクトル(ε:mol−1・L・cm−1、水中、Mw:630):271nm(8100)、554nm(209)、639nm(208)。
【0047】
IR(KBr錠剤法):3425br、2921m、1604m、1567m、1497w、1463s、1394s、1338m、1293w、1159w、1076w、1057w、1032w、1004w、985w、912w、779w、744w、678m、613m cm−1
【0048】
UPLC分析により6.79%の遊離[H(Me−DTNE)]Clを確認した。
【0049】
合計塩化物量は、12.22%だった。
【0050】
水分析(カール−フィッシャー法):[Mn(μ−O)(μ−OAc)(Me−DTNE)]Cl・HOの計算値:2.86%;検出値4.30%。
【0051】
例1.1と同様に、その固体物質は、有意の量の錯体を形成していない配位子と水とを含む。さらに、収率は改善の余地がある。
【0052】
例2
錯体形成に非水溶性溶媒を用いた固体[Mn(μ−O)(μ−CHCOO)(Me−DTNE)]Clの製造
窒素下、異なる溶媒(10mL〜40mL)中、Me−DTNE(95%純度、4mmol)に、MnCl(99%純度、8.8mmol)と酢酸ナトリウム(99%純度、2mmol)との固体混合物を添加した。その混合物を58℃で30分間(CHClについては、40℃で30分間)撹拌した。氷浴中で冷却しながらさらに10分間撹拌した後、水(9mL、9mmol)中の1MのHと、5MのNaOH(1.35mL、6.75mmol)との新しく調製された混合物を5分間に亘って滴下で添加した。その混合物は、すぐに暗い緑褐色に変化した。その混合物を、氷浴中で20分間撹拌し、次いで室温で20分間撹拌した。氷酢酸(2.5mmol)を添加した。さらに20分間撹拌した後、その混合物をろ過して茶色の固体を除去し、ろ床をエタノールで洗浄した。各場合に、緑色の溶液中の溶媒をエバポレートし(湯浴温度<45℃)、暗い緑色のオイルを得て、そのオイルをエタノール(20mL)に吸収した。ろ過により分離された不溶性の白色の塩をエタノールで洗浄した。全てのエタノールを除去後、暗い緑色のオイルを再び得た。少量のエタノールを添加し、2分間撹拌した。次いで、多量の酢酸エチルを添加した。緑色の固体がすぐに沈殿した。−20℃で3時間後、その懸濁液をろ別し、緑色の固体を得て、その固体を酢酸エチル、n−ヘキサンで洗浄し、真空下45℃で5時間乾燥し、[Mn(μ−O)(μ−CHCOO)(Me−DTNE)]Cl・HOとして暗い緑色の粉末を得た。
【0053】
2.1 エタノール溶媒
エタノール:10mL:UV−Vis純度が100%の緑色の粉末が単離され、収量は96.3%。
【0054】
UV−Visスペクトル(ε:mol−1・L・cm−1、水中、Mw:630):271nm(13332)、554nm(317)、639nm(327)。
【0055】
IR(KBr錠剤法):3419br、2923m、1606m、1565m、1499w、1461s、1396s、1340m、1288w、1159w、1076w、1057w、1036m、1007m、915w、778w、744w、682m、613m cm−1
【0056】
UPLC分析により微量の遊離[H(Me−DTNE)]Clを確認した。
【0057】
水分析(カール−フィッシャー法):[Mn(μ−O)(μ−OAc)(Me−DTNE)]Cl・HOの分析計算値:2.86%;検出値4.71%。
【0058】
2.2 メタノール溶媒
メタノール:10mL:UV−Vis純度99%を示す緑色の粉末が得られ、収量は102.9%。
【0059】
UV−Visスペクトル(ε:mol−1・L・cm−1、水中、Mw:630):271nm(13388)、554nm(308)、639nm(318)。
【0060】
[Mn(CHCOO)(C1840)]Cl・HOの分析計算
(C2045ClMn):C 38.11、H 7.20、N 13.33;検出値:C 38.33、H 7.63、N 12.57%。
【0061】
IR(KBr錠剤法):3425br、2923m、1642m、1568m、1499w、1462s、1395s、1337m、1286w、1159w、1076m、1055m、1033m、1004m、912w、780w、744w、678m、613m cm−1
【0062】
MS−ES:m/e 270.6。
【0063】
UPLC分析によりMn錯体中に微量の遊離[H(Me−DTNE)]Clを確認した。
【0064】
合計塩化物量は、11.07%だった。
【0065】
水分析(カール−フィッシャー法):[Mn(μ−O)(μ−OAc)(Me−DTNE)]Cl・HOの分析計算値:2.86%;検出値3.80%。
【0066】
2.3 ジクロロメタン溶媒
ジクロロメタン:20mL:UV−Vis純度101%の緑色の粉末が得られ、収量は95.6%。
【0067】
UV−Visスペクトル(ε:mol−1・L・cm−1、水中、Mw:630):271nm(13114)、554nm(314)、639nm(340)。
【0068】
IR(KBr錠剤法):3426br、2926m、1636m、1564s、1499w、1462s、1397s、1341m、1288w、1159w、1076m、1055m、1038m、1001m、916w、778w、744w、682m、614m cm−1
【0069】
UPLC分析によりMn錯体中に微量の遊離[H(Me−DTNE)]Clを確認した。
【0070】
合計塩化物量は、10.19%だった。
【0071】
水分析(カール−フィッシャー法):[Mn(μ−O)(μ−OAc)(Me−DTNE)]Cl・HOの分析計算値:2.86%;検出値1.92%。
【0072】
2.4 アセトニトリル溶媒
アセトニトリル:10mL:UV−Vis純度85.3%を有する緑色の粉末が単離され、単離された収量は87.2%。
【0073】
UV−Visスペクトル(ε:mol−1・L・cm−1、水中、Mw:630):271nm(11345)、554nm(265)、639nm(280)。
【0074】
IR(KBr錠剤法):3433br、2923m、1642m、1567m、1499w、1460m、1396m、1341w、1058m、1033m、1004w、912w、780w、744w、678w、613w cm−1
【0075】
UPLC分析によりMn錯体中に微量の遊離[H(Me−DTNE)]Clを確認した。
【0076】
合計塩化物量は、14.07%だった。
【0077】
水分析(カール−フィッシャー法):[Mn(μ−O)(μ−OAc)(Me−DTNE)]Cl・HOの分析計算値:2.86%;検出値1.39%。
【0078】
2.5 アセトン溶媒
アセトン:30mL:UV−Vis純度88.1%を有する緑色の粉末を生成し、単離された収量は83.6%。
【0079】
UV−Visスペクトル(ε:mol−1・L・cm−1、水中、Mw:630):271nm(11977)、554nm(289)、639nm(266)。
【0080】
IR(KBr錠剤法):3426br、2924m、1635s、1560s、1499w、1458s、1395s、1338m、1286w、1183w、1075m、1056m、1033m、1003m、985m、913w、780w、744w、678m、616m cm−1
【0081】
UPLC分析によりMn錯体中に微量の遊離[H(Me−DTNE)]Clを確認した。
【0082】
合計塩化物量は、9.49%だった。
【0083】
水分析(カール−フィッシャー法):[Mn(μ−O)(μ−OAc)(Me−DTNE)]Cl・HOの分析計算値:2.86%;検出値2.66%。
【0084】
2.6 テトラヒドロフラン(THF)溶媒
THF:40mL:UV−Vis純度70.8%の緑色の粉末を生成し、単離された収量は62.3%。
【0085】
UV−Visスペクトル(ε:mol−1・L・cm−1、水中、Mw:630):271nm(8921)、554nm(231)、639nm(233)。
【0086】
IR(KBr錠剤法):3422br、2924m、1604s、1567s、1498w、1463s、1395s、1337m、1294w、1159w、1057m、1032m、1004m、986m、911w、779w、744w、677m、613m cm−1
【0087】
UPLC分析によりMn錯体中に微量の遊離[H(Me−DTNE)]Clを確認した。
【0088】
合計塩化物量は、10.51%だった。
【0089】
水分析(カール−フィッシャー法):[Mn(μ−O)(μ−OAc)(Me−DTNE)]Cl・HOの分析計算値:2.86%;検出値1.53%。
【0090】
例2.1〜2.6の全てにおいて、錯体を形成していない遊離の配位子の値は検出限界を下回っている。特に、エタノール、メタノールおよびジクロロメタンの場合、単離された収率および純度は、基準試験(1.1および1.2)よりもかなり高い。全ての場合において、基準試験実験よりも溶媒の除去がかなり容易であり、固体物質の単離が容易である。
【0091】
例3
有機溶液に溶解した[Mn(μ−O)(μ−OAc)(Me−DTNE)]Clの調製
窒素下、異なる溶媒(10mL〜20mL)中、Me−DTNE(95%純度、4mmol)に、MnCl(99%純度、8.8mmol)と酢酸ナトリウム(99%純度、2mmol)との固体混合物を添加した。その混合物を58℃で30分間撹拌した。氷浴中で冷却しながらさらに10分間撹拌した後、水(9mL、9mmol)中の1MのHと、5MのNaOH(1.35mL、6.75mmol)との新しく調製された混合物を10分間に亘って滴下で添加した。その混合物は、すぐに暗い緑褐色に変化した。その混合物を、氷浴中で20分間撹拌し、次いで室温で20分間撹拌した。氷酢酸(2.5mmol)を添加した。さらに20分間撹拌した後、その混合物をろ過して茶色の固体を除去し、ろ床を溶媒で洗浄した。次いで、溶媒を添加して混合物は20mL〜40mLに達した。この緑色の溶液から、40(または50)倍の希釈溶液および1600(または2000)倍の希釈溶液を作製した;そして、波長244nm、554nm、および639nmにおけるUV−Visスペクトルの吸収から、貯蔵溶液の濃度と、反応率を、100%純度について水中のMw612のMn(μ−O)(μ−OAc)(Me−DTNE)]Clのモル吸光係数に基づいて計算し、ε(mol−1・L・cm−1:271nm(13200mol−1・L・cm−1)、554nm(315mol−1・L・cm−1)、639nm(325mol−1・L・cm−1)。
【0092】
3.1 エチレングリコール溶媒
エチレングリコール:10mL;触媒を含む溶液の体積:28mL;希釈倍率:50倍および2000倍;UV−Vis吸光度:
271nm:1.052
554nm:0.905
639nm:0.869
したがって、UV−Vis反応率の平均は101.4%だった;溶液は8.01%(wt%)の触媒を含み、密度は1.112g/mLだった。
【0093】
UPLC分析によりMn錯体中に微量の遊離[H(Me−DTNE)]Clを確認した。
【0094】
合計塩化物量は、1.89%だった。
【0095】
3.2 1,2−プロピレングリコール溶媒
1,2−プロピレングリコール:10mL;触媒を含む溶液の体積:40mL;希釈倍率:40倍および1600倍;UV−Vis吸光度:
271nm:0.937
554nm:0.832
639nm:0.860
したがって、UV−Vis反応率の平均は107.1%だった;溶液は6.18%(wt%)の触媒を含み、密度は1.074g/mLだった。
【0096】
UPLC分析によりMn錯体中に微量の遊離[H(Me−DTNE)]Clを確認した。
【0097】
合計塩化物量は、1.35%だった。
【0098】
3.3 1,3−プロピレングリコール溶媒
1,3−プロピレングリコール:10mL;触媒を含む溶液の体積:35mL;希釈倍率:40倍および1600倍;UV−Vis吸光度:
271nm:1.048
554nm:0.990
639nm:1.040
したがって、UV−Vis反応率の平均は110.5%だった;溶液は7.23%(wt%)の触媒を含み、密度は1.075g/mLだった。
【0099】
UPLC分析によりMn錯体中に微量の遊離[H(Me−DTNE)]Clを確認した。
【0100】
合計塩化物量は、1.60%だった。
【0101】
3.4 ジメチルホルムアミド(DMF)溶媒
DMF:10mL;触媒を含む溶液の体積:30mL;希釈倍率:40倍および1600倍;UV−Vis吸光度:
271nm:1.295
554nm:1.152
639nm:1.120
したがって、UV−Vis反応率の平均は109.4%だった;溶液は8.66%(wt%)の触媒を含み、密度は1.039g/mLだった。
【0102】
UPLC分析によりMn錯体中に微量の遊離[H(Me−DTNE)]Clを確認した。
【0103】
合計塩化物量は、1.80%だった。
【0104】
3.5 ジメチルスルホキシド(DMSO)溶媒
DMSO:20mL;触媒を含む溶液の体積:40mL;希釈倍率:40倍および1600倍;UV−Vis吸光度:
271nm:0.625
554nm:0.744
639nm:0.680
したがって、UV−Vis反応率の平均は82.9%だった;溶液は4.60%(wt%)の触媒を含み、密度は1.125g/mLだった。
【0105】
UPLC分析により[Mn(μ−O)(μ−OAc)(Me−DTNE)]Cl溶液中に微量の遊離[H(Me−DTNE)]Clを確認した。
【0106】
合計塩化物量は、1.12%だった。
【0107】
例3.1〜3.5の全てにおいて、有機溶媒に溶解した錯体は容易に調製された。全ての場合において、錯体を形成していない遊離の配位子の値は検出限界を下回っていた。
【0108】
最も好適な溶媒、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコールおよび1,3−プロピレングリコールは、他の溶液と混合するために容易に用いることができる(例えば、水、界面活性剤含有処方物、家庭内および産業用クリーニング、テキスタイル処理等の様々な用途用)。
【0109】
例4
非水溶液中での[Mn(μ−O)(μ−OAc)(Me−DTNE)]Cl錯体の調製、水溶液中での単離
窒素下、異なる溶媒中、Me−DTNE(95%純度、4mmol)に、MnCl(99%純度、8.8mmol)と酢酸ナトリウム(99%純度、2mmol)との固体混合物を添加した。その混合物を、トルエンについては58℃で、CHClについては40℃で、30分間撹拌した。次いでその混合物を氷浴中で冷却し、さらに10分間撹拌した。水(9mL、9mmol)中の1MのHと、5MのNaOH(1.35mL、6.75mmol)との新しく調製された混合物を10分間に亘って滴下で添加した。その混合物は、すぐに暗い緑褐色に変化した。その混合物を、氷浴中で20分間撹拌し、次いで室温で20分間撹拌した。氷酢酸(2.5mmol)を添加した。さらに20分間撹拌した後、その混合物をろ過して茶色の固体を除去し、ろ床を水で洗浄した。そのろ液は2層に分離した。次いで、その水層を分液漏斗により直接分離した。微量の揮発分は、真空下20分間で除去した。その混合物は、ミリポア水を添加して25mLに達した。この緑色の溶液から、50倍の希釈溶液および2000倍の希釈溶液を作製した;そして、波長244nm、554nm、および639nmにおけるUV−Visスペクトルの吸収から、貯蔵溶液の濃度と、反応率を、100%純度について水中のMw612のMn(μ−O)(μ−OAc)(Me−DTNE)]Clのモル吸光係数に基づいて計算し、ε(mol−1・L・cm−1:271nm(13200mol−1・L・cm−1)、554nm(315mol−1・L・cm−1)、639nm(325mol−1・L・cm−1)。
【0110】
4.1 トルエン溶媒
トルエン:30mL;触媒を含む溶液の体積:25mL;希釈倍率:50倍および2000倍;UV−Vis吸光度:
271nm:0.924
554nm:0.883
639nm:0.901
したがって、UV−Vis変換の平均は86.1%だった;水溶液は8.21%(wt%)の触媒を含み、密度は1.041g/mLだった。
【0111】
UPLC分析により微量の遊離[H(Me−DTNE)]Clを確認した。
【0112】
合計塩化物量は、2.19%だった。
【0113】
4.2 ジクロロメタン溶媒
CHCl:30mL;触媒を含む溶液の体積:25mL;希釈倍率:50倍および2000倍;
UV−Vis吸光度:
271nm:1.162
554nm:1.059
639nm:1.090
したがって、UV−Vis反応率の平均は106.4%だった;水溶液は10.43%(wt%)の触媒を含み、密度は1.043g/mLだった。
【0114】
UPLC分析により微量の遊離[H(Me−DTNE)]Clを確認した。
【0115】
合計塩化物量は、2.51%だった。
【0116】
上記2つの例は、水との混和性の低い非水溶性溶媒中での錯体形成と、続く水中への錯体の抽出が、所望の錯体を与え、また、錯体を形成せずに存在している配位子の値が低いことを示している。特に、ジクロロメタンは、適した溶媒であり、例2.3で既に示されたものと類似していることが証明された。
【0117】
例5
固体[Mn(μ−O)(μ−OAc)(Me−DTNE)](PFの調製
窒素下、溶媒中、Me−DTNE(95%純度、10mmol)に、MnCl・4HO(22mmol)とNaAc(5mmol)との固体混合物を添加した。その混合物を58℃で30分間撹拌した。その混合物を氷浴中で冷却しながらさらに10分間撹拌した後に、水(22.5mL、22.5mmol)中の1MのHと、5MのNaOH(3.375mL、16.875mmol)との新しく調製された混合物を5分間に亘って滴下で添加した。その混合物は、すぐに暗い緑褐色に変化した。その後、その混合物を、氷浴中で20分間撹拌し、次いで室温で20分間撹拌した。氷酢酸(6.25mmol)を添加した。さらに20分間撹拌した後、75mLのmQ水中のKPF(30mmol)の水溶液を添加した。5分後に50mLのアセトニトリルを添加して緑色の沈殿物を溶解させた。さらに10〜15分撹拌した後、その混合物をろ過して茶色の固体を除去し、ろ床をアセトニトリルで洗浄した。次いで、その混合物は、アセトニトリルを添加して260mLまたは170mLに達した。その緑色の溶液の全ての溶媒をエバポレートした(湯浴温度<45℃)。暗い緑色の残留物をエタノールと酢酸エチルとで共沸し、残りの水の大部分の除去を容易にした。暗い緑色の残留物は、アセトニトリル(125mL)に吸収され、ろ過により分離された不溶性の白色の塩を、アセトニトリルで洗浄した。アセトニトリルの一部をエバポレートし、水(50mL)を添加し、次いで残りのアセトニトリルをエバポレートし、緑色の固体とわずかな水が残った。その懸濁液を−25℃の冷蔵庫内に終夜置き、ろ別した。その緑色の固体を冷水、エタノール、およびn−ヘキサンで洗浄し、真空下45℃で5時間乾燥し、[Mn(μ−O)(μ−OAc)(Me−DTNE)](PFとして暗い緑色の粉末を得た。
【0118】
5.1 EtOH/HO(2:1、v/v)溶媒(基準試験、従来技術による方法)
エタノール/水(2:1、v/v):100mL。緑色の粉末を単離、UV−Vis純度は95.9%、単離された収率は72.3%。
【0119】
UV−Visスペクトル(ε:mol−1・L・cm−1、アセトニトリル中、Mw:831):271nm(15442)、554nm(342)、639nm(387)。
【0120】
204312Mnの分析計算:C 28.89、H 5.21、N 10.11;検出値:C 28.79、H 5.21、N 10.25%。
【0121】
IR(KBr錠剤法):3441br、2933m、1633m、1561m、1499w、1467m、1384m、1341m、1287w、1159w、1077m、1057m、1035m、1005m、985m、840vs、780w、743w、692m、679m、608m、558m cm−1
【0122】
UPLC分析により微量の遊離[H(Me−DTNE)](PFを確認した。
【0123】
カール−フィッシャー法により、水の量は1.78%だった。
【0124】
5.2 エタノール溶媒
エタノール:25mL;緑色の粉末を単離、UV−Vis純度は98.6%、単離された収率は85.9%。
【0125】
UV−Visスペクトル(ε:mol−1・L・cm−1、アセトニトリル中、Mw:831):271nm(16041)、554nm(351)、639nm(396)。
【0126】
204312Mnの分析計算:C 28.89、H 5.21、N 10.11;検出値:C 28.77、H 5.22、N 10.19%。
【0127】
IR(KBr錠剤法):3441br、2933m、1633m、1562m、1499w、1467m、1384m、1342m、1287w、1159w、1078m、1058m、1036m、1005m、986m、840vs、780w、743w、692m、679m、608m、558m cm−1
【0128】
MS−ES:m/e 270.6。
【0129】
UPLC分析により微量の遊離[H(Me−DTNE)](PFを確認した。
【0130】
カール−フィッシャー法により、水の量は0.55%だった。
【0131】
例5.2は、エタノール溶媒では、水/エタノール混合液から単離した生成物(比較例5.1)と比較して、高収率/高純度の固体[Mn(μ−O)(μ−OAc)(Me−DTNE)](PFが得られたことを示している。
【0132】
例6
[Mn(μ−O)(Me−TACN)]Cl・3HOの調製
窒素下、20mLの水中(6.1)または20mLのエタノール中(6.2)で、Me−TACN(99%純度、10mmol)と塩化マンガン(II)(11mmol)との混合物を35℃で20分間撹拌した。氷浴中で冷却しながらさらに10分間撹拌した後に、1MのH(12.5mmol)と、5MのNaOH(15mmol)との新しく調製された混合物を5〜10分間に亘って滴下で添加した。その混合物は、すぐに暗い褐色/赤色に変化した。その混合物を、さらに氷浴中で20分間撹拌し、室温でさらに40分間撹拌した。1MのHCl(5.2mmol)を添加し、30分間撹拌してpH値を5に調整した。その赤ワイン色の混合物をろ過し、茶色の固体を除去し、ろ床をエタノールで洗浄した。そのろ液を真空下(湯浴:35℃〜40℃)で還元して、赤色のオイルを得た。残留物をエタノールに溶解し、ろ過により分離された不溶性の白色の塩は、エタノールで洗浄された。エタノールが混合したろ液をエバポレートして乾燥し、赤色のオイルを得た。その赤色のオイルをアセトニトリルおよび酢酸エチルで洗浄し、赤色の固体を得た。その固体を真空下45℃で6時間乾燥して[Mn(μ−O)(Me−TACN)]Cl・3HOとして赤色の固体を得た。
【0133】
6.1:錯体形成溶媒として水。赤色の粉末、UV−Vis純度が92.7%、収率は88%。
【0134】
UV−Visスペクトル(ε:mol−1・L・cm−1、水中、Mw:625):244nm(18016)、278nm(17190)、313nm(11069)、389nm(949)、485nm(355)。
【0135】
UPLC分析により微量の遊離[H(Me−TACN)]Clを確認した。
【0136】
合計塩化物量は、12.35%だった。
【0137】
6.2:錯体形成溶媒としてエタノール。赤色の粉末、UV−Vis純度が92.9%、収率は82%。
【0138】
UV−Visスペクトル(ε:mol−1・L・cm−1、水中、Mw:625):244nm(18048)、278nm(17231)、313nm(11113)、389nm(979)、485nm(370)。
【0139】
UPLC分析により微量の遊離[H(Me−TACN)]Clを確認した。
【0140】
合計塩化物量は、11.83%だった。
【0141】
セクション6.1と6.2で示された結果は、両方の溶媒(水溶性溶媒対非水溶性溶媒)が錯体の形成に適していることを示唆する一方、非水溶性溶媒が水溶性溶媒よりもエバポレートにより除去しやすいという利点を示すことを示唆している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)の配位子からの二核マンガン触媒塩の合成方法であって、
【化1】

pは、3であり;
Rは、独立して、水素、C1〜C6アルキル、CHCHOH、およびCHCOOHから選択され、または、Rのうち1つは、他のQのNにエチレン橋かけを介して結合しており;R1、R2、R3、およびR4は、独立して、H、C1〜C4アルキル、およびC1〜C4アルキルヒドロキシから選択され、
前記方法は、以下の工程を含む:
(i)溶媒中で、前記配位子の0.03mmol/ml〜4mmol/ml溶液を、マンガン塩と共に処理し、錯体形成混合物を形成する工程、ここで、配位子当たりの3つの窒素環の、マンガン塩に対する比は、0.8〜2であり、当該錯体形成混合物は、0〜6を含有する;
(ii)前記工程(i)の溶液を過酸化水素または過酸化水素供給源と共に処理し、前記マンガン塩の1モル当たり1〜10モルのHを供給する工程;
(iii)前記工程(ii)の溶液を塩基と共に処理し、pHが8〜13の溶液を供給する工程;
(iv)前記工程(iii)の溶液を酸と共に処理し、pHが4〜9の溶液を供給する工程。
【請求項2】
前記Rが、独立して、CH、C、CHCHOHおよびCHCOOHから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記R1、R2、R3、およびR4が、独立して、Hおよびメチルから選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記触媒が、1,4,7−トリメチル−1,4,7−トリアザシクロノナン(Me−TACN)および1,2−ビス−(4,7−ジメチル−1,4,7−トリアザシクロノン−1−イル)−エタン(Me−DTNE)からなる群より選択される配位子から誘導される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記非水溶性溶媒が、少なくとも1種のOH基を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記非水溶性プロトン溶媒が、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコールから選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記非水溶性溶媒が、ジクロロメタン;トルエン;アセトニトリル;アセトン;ジメチルスルホキシド;ジクロロメタン;および、ジメチルホルムアミドから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記工程(iv)終了後の溶液が、20体積%未満の水を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記工程(iv)終了後の溶液が、10体積%未満の水を含有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記マンガン塩が、塩化マンガン(II);硫酸マンガン(II);酢酸マンガン(II);および、酢酸マンガン(III);硝酸マンガン(II)から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記非配位カウンターイオンが、クロリド;ニトレート;サルフェート;アセテート;ベンゾエート;および、ヘキサフルオロホスフェートから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記工程(iv)の錯体形成プロセスの終了後に、水が前記溶液に添加され、前記二核マンガン触媒塩が水中に抽出され、水溶性の触媒溶液を与え、かつ、前記溶媒が20℃で0〜20g/Lの範囲の水混和性を有する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
錯体形成用の前記溶媒が、トルエンおよびジクロロメタンから選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記水溶性の触媒溶液が、0.1〜20wt%の前記二核マンガン触媒塩を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記水溶性の溶液が、0.5〜10wt%の前記二核マンガン触媒塩を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記Rの1つが、他のQのNにエチレン橋かけを介して結合している場合、アルカリカルボキシレートまたはカルボン酸が、工程(i)の後、かつ、工程(ii)の前で、過酸化水素の添加前に、添加される、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記アルカリカルボキシレートが、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、ギ酸ナトリウム、ギ酸カリウム、安息香酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウムから選択され、前記カルボン酸が、酢酸、ギ酸、安息香酸、およびプロピオン酸から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記過酸化水素供給源が、3〜70wt%の過酸化水素水である、請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記過酸化水素供給源が、20〜55wt%の過酸化水素水である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記反応が、窒素およびアルゴンから選択される不活性ガス下で行われる、請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2013−521235(P2013−521235A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−555271(P2012−555271)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【国際出願番号】PCT/CN2010/000256
【国際公開番号】WO2011/106906
【国際公開日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(512227498)カテクセル リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】CATEXEL LIMITED
【Fターム(参考)】