説明

漂白剤組成物

【課題】保存安定性、漂白性、付着性及びすすぎ性に優れた、増粘された漂白剤組成物を提供する。
【解決手段】次亜塩素酸塩、有機系増粘剤及びアルカリ剤を含有する漂白剤組成物であって、次亜塩素酸塩を0.5〜4.0重量%、有機系増粘剤を0.1〜10.0重量%、及び、アルカリ剤を0.2〜5.0重量%含有し、さらに、スルホン酸化合物及びそのアルカリ金属塩を0.1〜10.0重量%含有し、25℃における粘度が1,000〜100,000mPa・sであり、かつ、pHが11〜14である漂白剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、漂白剤組成物に関し、特に、浴室や台所の床、壁等の硬質材料に発生するかびの除去及び発生防止に用いられる増粘された漂白剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
次亜塩素酸塩を主成分とする漂白剤及び洗浄剤組成物は、その漂白効果の高さから、浴室、台所、トイレ等の床、壁、天井、目地あるいはシール材等の硬質材料に発生するかびの除去に使用されている。
これら漂白剤組成物に関しては、より高い漂白効果、安定性、安全性を得る為に、各種の界面活性剤やキレート剤を添加したり、pHや不純物をコントロールしたりする等の様々な工夫がなされている。
例えば、硬質材料や垂直な壁や天井部分等に発生したかびを除去するに際して、より高い漂白効果を得るために、漂白剤組成物の流失を防止し、かびとの接触時間を長くさせるための工夫として、増粘された漂白剤組成物が提案されている。この増粘漂白剤組成物は、液体状の漂白剤組成物と比較して、飛散が少なく、局所的(スポット的)な使用が容易であり、安全性かつ利便性の点で優れた特長を有している。
一般に、増粘漂白剤組成物を得るためには、強アルカリの次亜塩素酸塩水溶液中に2種以上の界面活性剤を加えて、界面活性剤のコンプレックスなどを利用した塩析による手法が用いられることが多い(例えば、特許文献1及び2参照。)。
また、無機系増粘剤(膨潤性粘土鉱物)を加えて高粘度化しようとする手法が用いられることもある(例えば、特許文献3及び4参照。)。
【特許文献1】特開平6−184594号公報
【特許文献2】特開2003−277796号公報
【特許文献3】特開昭57−168999号公報
【特許文献4】特開2000−212009号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1及び2の手法で増粘した場合、充分な高粘度を有するゲルが得られず、また高粘度を得る為には界面活性剤が多量に必要であり、充分な製品安定性を保持できないという問題がある。
また、上記特許文献3及び4の手法で増粘した場合、充分な高粘度を有するゲルが得られる反面、外観が不透明で、増粘剤を多量に必要とするという問題があるだけでなく、ゲル化速度が緩慢で徐々に高粘度化する等、ハンドリング性にも問題がある。
ここで、有機系増粘剤(水溶性高分子ポリマー)を加えて高粘度化する手法も考えられるが、この場合、配合直後は目的とする高粘度なゲルが得られるものの、貯蔵中に粘度が低下してしまう、あるいは有効塩素の失活を促進してしまい、充分な安定性が得られないといった問題がある。
また、増粘された漂白剤組成物は、液体漂白剤組成物と比較して、浸透性が低いために漂白効果が劣る場合があり、高粘度であるためにすすぎ性が悪いといった問題がある。
さらに、漂白剤組成物全般に関わることとして、漂白剤組成物を用いてかびを除去した後、時間が経過すると再度かびが発生し、かび除去作業を短期間内に繰り返し行わなければならないといった問題もある。
このため、保存安定性、漂白性、付着性及びすすぎ性に優れた増粘漂白剤組成物の出現が望まれており、これに加えて、かびの発生防止効果にも優れた増粘漂白剤組成物の出現が期待されている。
そこで、本発明は、かかる事情及び問題点に鑑みなされたものであり、保存安定性、漂白性、付着性及びすすぎ性に優れた増粘漂白剤組成物を提供することを目的とし、さらには、かびの発生防止効果にも優れた増粘漂白剤組成物を提供することをも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために、本発明に係る漂白剤組成物は、次亜塩素酸塩、有機系増粘剤及びアルカリ剤を含有する漂白剤組成物であって、さらに、スルホン酸化合物及びそのアルカリ金属塩を含有し、前記漂白剤組成物の粘度が1,000〜100,000mPa・sであり、かつ、前記漂白剤組成物のpHが11〜14であることを特徴とする。これによって、保存安定性、漂白性、付着性及びすすぎ性に優れた増粘漂白剤組成物を実現することができる。
ここで、次亜塩素酸塩を0.5〜4.0重量%、有機系増粘剤を0.1〜10.0重量%、アルカリ剤を0.2〜5.0重量%、及び、スルホン酸化合物とそのアルカリ金属塩とを0.1〜10.0重量%含有するのが好ましい。このような組成となるように各成分を混合させることによって、増粘漂白剤組成物は、より優れた保存安定性、漂白性、付着性及びすすぎ性を発揮することになる。
また、本発明に係る漂白剤組成物は、さらに、炭素数8〜18のアルキル基を1〜2個有する4級アンモニウム塩型界面活性剤を含有することを特徴とする。これによって、より効果的にかびの再発生を抑えることができ、ひいてはかび除去作業の頻度を著しく少なくすることができる増粘漂白剤組成物が実現される。
本発明に係る漂白剤組成物は、さらに、炭素数4〜18のアルキル基を少なくとも1つ有するアミンオキシド型界面活性剤を含有するとしてもよく、炭素数6〜14の脂肪酸及びそのアルカリ金属塩を含有するとしてもよい。これによって、漂白剤組成物の透明性、保存安定性及び漂白性を維持することができる。
また、本発明に係る漂白剤組成物は、さらに、平均粒径1μm〜3mmの有機又は無機の粒子を含有すると構成することもでき、前記粒子は、不透明又は着色されているとするのがより好ましい。これによって、粒子のスクラブ効果が発揮されて、かびの除去性能がより優れたものとなる他、着色粒子を含有することにより漂白剤の塗布された部分が明瞭となるので、塗布作業の効率を向上させることもできる。
【発明の効果】
【0005】
以上説明したように、本発明に係る漂白剤組成物によれば、保存安定性、漂白性、付着滞留性及びすすぎ性に優れた増粘漂白剤組成物を実現することができる。
また、増粘された漂白剤組成物はスポット的な使用が容易にできるので、飛散や次亜塩素酸塩特有の嫌な臭いを抑制することができる。
さらに、4級アンモニウム塩型界面活性剤を含有させ、かびの再発防止性を付与することによって、かびの除去作業の頻度を低減することもできる。
またさらに、アミンオキシド型界面活性剤、又は/及び、脂肪酸とそのアルカリ金属塩とを含有させることにより、漂白剤組成物の透明性、保存安定性及び漂白性を維持することができ、着色粒子を含有させて、かびの除去性能及び塗布時における作業効率を向上させる効果も期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
本実施の形態に係る漂白剤組成物は、次亜塩素酸塩、有機系増粘剤、アルカリ剤、スルホン酸化合物、及び、スルホン酸化合物のアルカリ金属塩を含有し、粘度が1,000〜100,000mPa・sで、かつ、pHが11〜14であることを特徴とするものである。
次亜塩素酸塩は、その強い酸化作用によってかび汚れを漂白し、かびを取り除く作用を示す。次亜塩素酸塩としては、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム等が挙げられ、いずれかを単独で用いてもよいし、これらの2種以上を混合して用いるとしてもよい。次亜塩素酸塩は、入手の容易性や漂白剤組成物の安定性の観点から、次亜塩素酸のナトリウム塩又はカリウム塩を用いるのが好ましい。また、良好なかび除去効果と、使用時における人体等への影響を抑えて安全性を確保する観点から、次亜塩素酸塩の含有量は、0.1〜10.0重量%が好ましく、0.5〜4.0重量%がより好ましい。
【0007】
有機系増粘剤は、硬質材料表面に対する漂白剤組成物の付着効果を高め、結果としてかび除去効果を高めるために加えられる。また、有機系増粘剤を配合することにより、飛散や塩素系のにおいを抑制する効果やスポット的な塗布を容易とする効果も得られる。有機系増粘剤としては、例えば分子中に水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、エーテル基、アミノ基等を有する水溶性高分子化合物が挙げられ、具体的には、(1)グアーガム、アルギン酸、キサンタンガム、カゼイン等の植物、微生物、動物由来の天然高分子化合物及びその誘導体、(2)澱粉やセルロースを酸化、硫酸化、メチル化、カルボキシメチル化、ヒドロキシエチル化、ヒドロキシプロピル化、カチオン化した澱粉誘導体及びセルロース誘導体、(3)ポリアクリル酸ホモポリマーまたはアクリル酸と共重合可能なモノマーとのコポリマーであるポリアクリル酸誘導体及び該ポリアクリル酸ホモポリマー又は該ポリアクリル酸誘導体を架橋したもの、(4)ポリビニルアルコール若しくはポリビニルアルコール誘導体、(5)ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリアルキレングリコール及びその誘導体、(6)カチオン性ポリマー、等が例示できる。上記水溶性高分子化合物のうち、増粘効果の持続性の観点から上記(3)〜(5)の群から選ばれる1種以上が好ましく、(3)がより好ましい。これらの有機系増粘剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いることもできる。有機系増粘剤の含有量は、好ましくは0.1〜10.0重量%であり、更に好ましくは0.5〜5.0重量%である。
【0008】
漂白剤組成物の粘度は、塗布された漂白剤組成物が硬質材料表面から流失するのを防止してかび除去性能を向上させたり、使用時に漂白剤組成物が飛散するのを防止して安全性を高めたりする観点から、25℃における粘度が1,000〜200,000mPa・sであることが必要であり、1,000〜100,000mPa・sが好ましく、20,000〜40,000mPa・sがより好ましい。漂白剤組成物の粘度が1,000mPa・s未満では粘度が低過ぎて、例えば垂直な壁面に漂白剤組成物を付着させても短時間内に垂れ落ちてしまい、充分な漂白効果を得ることができない。また、漂白剤組成物の粘度が200,000mPa・sを超えると粘度が高過ぎて、硬質材料表面に付着させ難くハンドリング性に劣り好ましくない。なお、これらの粘度は、例えばB型粘度計等によって測定することができる。
【0009】
貯蔵時における製品安定性をより高めるために、漂白剤組成物のpHは11〜14であり、12〜14が好ましく、12.5〜14がより好ましく、13〜13.8が特に好ましい。また、次亜塩素酸塩や後述する4級アンモニウム塩の分解を抑える観点からすれば、漂白剤組成物のpHは11以上が好ましく、製造時や使用時における人体等に対する安全性を確保する観点から、pHは14以下が好ましい。
【0010】
アルカリ剤は、漂白剤組成物のpHを11〜14にするために用いられる。アルカリ剤としては、特に限定されないが、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム及び珪酸ナトリウムなどが挙げられる。アルカリ剤は、種類によって充分な塩素濃度及び粘度の保存安定性が得られない場合があるので、低温下における保存安定性の観点から無機カリウム塩が好ましく、さらに入手の容易性から水酸化カリウムがより好ましい。また、アルカリ剤の含有量が過少であると、充分な塩素濃度及び粘度の保存安定性が得られず、また含有量が過剰であると安全性の観点からも好ましくないので、その含有量は0.2〜5.0重量%が好ましく、0.5〜2.0重量%がより好ましい。
【0011】
スルホン酸化合物及びそのアルカリ金属塩は下記一般式(1)で表されるスルホン酸化合物である。
R−SO−M (一般式1)
Rは炭素数4〜18、芳香環を含んでもよい。また、直鎖型、分岐型いずれでもよく、メトキシ基、アミノ基、ニトロ基、水酸基等の官能基を含んでもよい。Mはアルカリ金属でナトリウム、カリウム等が挙げられる。スルホン酸化合物及びそのアルカリ金属塩を配合することにより、漂白剤組成物の保存安定性及びすすぎ性が向上する。
スルホン酸化合物としては、アルキルベンゼンスルホン酸及びそのアルカリ金属塩(LAS)、αーオレフィンスルホン酸及びそのアルカリ金属塩(AOS)、第2級アルキルスルホン酸及びそのアルカリ金属塩(SAS)等を例示することができる。これらの中でも保存安定性、漂白性の観点から芳香族スルホン酸化合物が好ましく、さらに詳しくはトルエンスルホン酸、メトキシベンゼンスルホン酸とそのアルカリ金属塩が好ましい。スルホン酸化合物及びその塩は、その含有量が少な過ぎる場合は充分な安定化効果が得られず、また過剰に含有した場合は系の増粘が難しく安定性が低下するので、その含有量は0.1〜10.0重量%が好ましく、更に好ましくは0.5〜5.0重量%である。
【0012】
使用する水は漂白剤組成物の残部であり、その種類は特に限定されるものではないが、漂白剤組成物の製品安定性及び漂白性、かびの除去性の観点から、イオン交換樹脂等で水中の金属イオンや陰イオンを1mg/L以下に低減した精製水を使用するのが好ましい。
ここで、本発明の漂白剤組成物に、分子中に炭素数8〜18の炭化水素基を1〜2個有する4級アンモニウム塩を含有させると、かび除去処理後の硬質表面におけるかびの再発生を抑えることができ、これにより結果として、かびを除去する作業の頻度を著しく少なくすることが可能となる。4級アンモニウム塩は、良好なかび発生防止効果を得る観点から、炭化水素基の炭素数は8〜18であり、10〜14が好ましい。
分子中に炭素数8〜18の炭化水素基を1〜2個有する4級アンモニウム塩としては、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムフォスフェート、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、ジココイルジメチルアンモニウムクロライド、ジオレイルジメチルアンモニウウクロライド等が挙げられる。
【0013】
分子中に炭素数8〜18の炭化水素基を1〜2個有する4級アンモニウム塩の含有量は、少な過ぎると充分なかび発生防止効果が得られず、過剰に含有すると安定性の観点から好ましくないので、その含有量は、0.01〜10.0重量%が好ましく、0.05〜5.0重量%がより好ましい。
なお、本発明の漂白剤組成物に上記の4級アンモニウム塩を含有した場合、かびの発生抑制効果が得られる反面、先に述べたスルホン酸化合物塩とコンプレックスを形成し、白濁、透明性が低下してしまう場合がある。このような場合、可溶化力の高い界面活性剤を含有させることにより、透明性を維持することができる。界面活性剤としては、次亜塩素酸塩の保存安定性、漂白性の観点及び漂白剤組成物のすすぎ性の観点から、アミンオキシド型界面活性剤、又は/及び、脂肪酸とそのアルカリ金属塩を含有することが好ましい。
【0014】
アミンオキシド型界面活性剤としては、デシルジメチルアミンオキサイド、ラウリルジメチルアミンオキサイド等が挙げられる。分子中に炭素数4〜18のアルキル基を1〜2個有するアミンオキサイドを含有すると、かびの再発防止効果が更に向上することにもなり、好ましい。かびの再発防止効果の観点からは、分子中の炭素数4〜18のアルキル基の個数は1以上であり、2以下であることが好ましく、アルキル基の炭素数は6〜16がより好ましく、10〜14が更に好ましい。なお、これらは単独で用いることもできるし、2種以上を混合して用いるとしてもよい。アミンオキサイドの含有量が少な過ぎると、充分な可溶化ができず、特に低温時には白濁する等して透明性が維持できず、界面活性剤としての効果が薄れて漂白効果も低下する。一方、含有量が過剰であると、保存安定性が低下する。このような観点から、アミンオキサイドの含有量は、0.1〜5.0重量%とするのが好ましい。
【0015】
脂肪酸及びそのアルカリ金属塩としては、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸及びこれらのナトリウム塩やカリウム塩等が挙げられる。脂肪酸及びそのアルカリ金属塩は、可溶化力及び漂白性の観点から、炭素数6〜14の脂肪酸及びそのアルカリ金属塩であるのが好ましく、炭素数8〜12がより好ましい。なお、これらは単独で用いることもできるし、2種以上を混合して用いるとしてもよい。
さらに、本発明の漂白剤組成物に、平均粒径が1μm〜3mmの有機又は無機の粒子を含有させると、粒子のスクラブ効果によりかびが除去しやすくなるので、好ましい。
【0016】
有機粒子としては、天然の有機粒子又は合成の有機粒子等が挙げられる。天然の有機粒子としては、木綿やパルプ等の繊維、澱粉、胡桃やアーモンド等の植物の実の殻、あるいは蟹等の甲殻類の殻等の粉砕物等が挙げられる。また、合成の有機粒子として、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、塩化ビニル樹脂(PVC)、ユリア樹脂(UF)、メタクリル樹脂(MMA)、ABS樹脂(ABS)、ポリカーボーネート(PC)、ポリメチルペンテン(PMP)、メタクリルスチレン共重合樹脂(MS)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリアクリロニトリル(PAN)等の粒子も挙げられる。これらの粒子は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。なお、合成の有機粒子の場合は、安定性の観点から、ポリマーの主鎖が炭素と炭素の結合からなるPE、PP、PTFE、PVC、ABS等が好ましい。
無機粒子としては、天然鉱物やチタン等の金属、あるいは酸化チタン、酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化カルシウム等の金属酸化物の粒子が挙げられる。なお、漂白剤組成物の安定性に対する影響からは、無機粒子よりも有機粒子を用いることが好ましい。
【0017】
ここで、有機又は無機の粒子の中でも不透明あるいは着色した粒子を用いると、漂白剤の塗布された部分が明瞭となり、塗布作業がしやすくなると共に、かびの取り残しが無くなり、かび除去性が向上するという効果が得られる。有機粒子の着色には、染料、有機顔料、無機顔料からなる群より選ばれる1種以上を用いることができるが、漂白剤組成物中での色の安定性の観点から有機顔料または無機顔料が好ましく、有機顔料がより好ましい。本発明の漂白剤組成物中に染料、有機顔料、無機顔料を直接配合し着色することもできるが、漂白剤組成物中における色素の安定性や硬質表面への着色の点から、着色には着色した有機粒子を用いることが好ましい。
有機粒子又は無機粒子の形状は特に限定されないが、球状が好ましい。優れたかび除去効果と良好なかび除去作業性とを同時に得る観点から、有機粒子又は無機粒子の平均粒径は1μm〜3mmが好ましく、1μm〜1mmがさらに好ましい。また、有機粒子又は無機粒子の含有量は、0.01〜10.0重量%が好ましく、0.1〜5.0重量%がより好ましい。
【0018】
本発明に係る漂白剤組成物は、上記したように、次亜塩素酸塩、有機系増粘剤、アルカリ剤、スルホン酸化合物及びそのアルカリ金属塩が含有されていることを必須とするが、これ以外の他の成分についても、本発明の効果を損ねない範囲で必要に応じて添加することができる。上記他の成分としては、例えば界面活性剤、研磨剤、溶剤、キレート剤、消泡剤、香料、着色剤等が挙げられる。
【実施例】
【0019】
以下に実施例を挙げて本発明について更に詳しく説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものでないことはいうまでもない。
以下の実施例及び比較例に用いた漂白剤組成物の各成分とその分類について表1に示す。
【0020】
【表1】

表2に示した漂白剤組成物の組成(重量%)になるように各成分を混合して、実施例1〜6及び比較例1〜4の漂白剤組成物を得た。得られた漂白剤組成物について、その保存安定性、漂白性、付着滞留性、すすぎ性、かびの発生防止性を以下に記載する試験により評価した。
(保存安定性)
漂白組成物の配合直後の粘度と、50℃で28日間保管後の粘度を、B型粘度計(株式会社トキメック製、商品名BL型)で測定し、粘度の保存安定性を評価した。
また、その時の次亜塩素酸ナトリウムの保存安定性を有効塩素残存率%で評価した。なお、有効塩素残存率は以下に示す式により求めた。
有効酸素残存率(%)=(保管後の有効塩素濃度÷保管前の有効塩素濃度)×100
(漂白性)
漂白剤組成物を試験布EMPA167(紅茶、綿)に塗布、付着させ1分間作用させた。その後水槽中ですすぎ洗いし、風乾させた。この試験布の白度を色差計(日本電色工業株式会社製、「NR−3000」)にて測定し、漂白率で評価した。なお、漂白率は以下に示す式により求めた。
漂白率(%)=(漂白後の白度÷初期白度)×100
◎は漂白率が100〜85%、○は85〜70%、△は70〜55%、×は54%以下であることを示している。
【0021】
(付着滞留性及びすすぎ性)
漂白剤組成物をスライドガラスに塗布あるいはスプレー吹き付けによって付着させ、試験板を垂直に保った状態で1時間放置した。その後、スライドガラス表面を目視にて観察し付着滞留性を評価した。
○は漂白剤組成物が滞留している、△は一部滞留している、×はほとんど滞留がないことを示している。
また、付着滞留性を評価した後、そのスライドガラスをシャワーで流水すすぎし風燥させる。スライドガラス表面を目視にて観察しすすぎ性を評価した。
○は漂白剤組成物の残留がほとんどみられない、△は若干の残留がみられる、×は多くの残留がみられることを示している。
(かびの発生防止性)
漂白剤組成物を直径1cmに切断したろ紙に付着させ、その後、流水ですすぎ洗い流す。このろ紙を用いて、黒色酵母(Aureobasidium pullulans)、ポテトデキストロース寒天培地、7日間(25℃)によるハローテストによりかびの発生防止性を評価した。
○はろ紙上にかびの発生がみられず阻止円がみられる、△はろ紙上にかびの発生がみられない、×はろ紙上にかびの発生がみられることを示している。
【0022】
【表2】

比較例1及び2に示されるように、スルホン酸化合物及びそのアルカリ金属塩が含有されていない漂白剤組成物は、経時的に粘度が低下してしまい保存安定性に課題があり、すすぎ性にも課題があることが判る。
比較例3は、強アルカリの次亜塩素酸塩水溶液中に2種以上の界面活性剤を加えて、界面活性剤のコンプレックスを利用した塩析による手法を用いて増粘させた漂白剤組成物であるが、高粘度化に限界があり、次亜塩素酸塩の保存安定性に課題があることが明らかである。なお、すすぎ性については、アミンオキシド型界面活性剤と、脂肪酸及びそのアルカリ金属塩とが含有されているため、良好であることが判る。
比較例4は、膨潤性粘土鉱物を加えて増粘させた漂白剤組成物であるが、経時的に粘度が上昇してしまう等、粘度のコントロールに課題があり、すすぎ性にも劣ることが判る。
比較例5の市販液体漂白剤は液状であるため、飛散や次亜塩素酸ナトリウム特有の嫌な臭いを生じさせやすく、付着滞留性が劣るという課題がある。
【0023】
これに比較して、実施例1〜6の漂白剤組成物は、保存安定性、漂白性、付着滞留性及びすすぎ性に優れていることが確認された。さらに、4級アンモニウム塩型界面活性剤を含有している実施例2〜5の漂白剤組成物は、かびの再発防止性に優れていることが判る。
ここまで本発明に係る漂白剤組成物について、実施の形態及び実施例に基づいて説明したが、本発明は、この実施の形態や実施例に限定されるものではなく、その範囲を逸脱することなく本発明の趣旨に沿って種々の変更が可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明に係る漂白剤組成物は、住居等の浴室や台所の床、壁等の硬質材料に発生するかびの除去及び発生防止のための漂白剤等に適用することができ、特に、垂直な壁や天井部分等に発生したかびを除去する、また、このような箇所におけるかびの発生を防止する用途に好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次亜塩素酸塩、有機系増粘剤及びアルカリ剤を含有する漂白剤組成物であって、
さらに、スルホン酸化合物及びそのアルカリ金属塩を含有し、
25℃における粘度が1,000〜100,000mPa・sであり、かつ、
pHが11〜14である
ことを特徴とする漂白剤組成物。
【請求項2】
次亜塩素酸塩を0.5〜4.0重量%、有機系増粘剤を0.1〜10.0重量%、アルカリ剤を0.2〜5.0重量%、及び、スルホン酸化合物とそのアルカリ金属塩とを0.1〜10.0重量%含有する
ことを特徴とする請求項1記載の漂白剤組成物。
【請求項3】
さらに、炭素数8〜18のアルキル基を1〜2個有する4級アンモニウム塩型界面活性剤を含有する
ことを特徴とする請求項1又は2記載の漂白剤組成物。
【請求項4】
さらに、炭素数4〜18のアルキル基を少なくとも1つ有するアミンオキシド型界面活性剤を含有する
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の漂白剤組成物。
【請求項5】
さらに、炭素数6〜14の脂肪酸及びそのアルカリ金属塩を含有する
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の漂白剤組成物。
【請求項6】
さらに、平均粒径1μm〜3mmの有機又は無機の粒子を含有する
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の漂白剤組成物。
【請求項7】
前記粒子は、不透明又は着色されている
ことを特徴とする請求項6記載の漂白剤組成物。

【公開番号】特開2007−137930(P2007−137930A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−329777(P2005−329777)
【出願日】平成17年11月15日(2005.11.15)
【出願人】(397056042)攝津製油株式会社 (4)
【Fターム(参考)】