説明

漏れ防止用組成物

【課題】粘性を高くして、振動が生じても滴下した薬液が受け皿から漏れ出にくくなる漏れ防止用組成物を提供する。
【解決手段】メトフルトリン 、プロフルトリン、エムペンスリン、ローズマリーオイルの1つ以上が含有されている揮散性薬剤に無機粉を含有させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
第1発明は、揮散性薬剤を保持するための薬剤保持体と、揮散口を有してこの薬剤保持体を収納保持する容器と、を備えた薬剤揮散装置に関し、特にハエ、コバエ、カ、ブヨ等の飛翔性害虫を防除するのに好適な薬剤揮散装置に関する。
また、第2発明は、第1発明の揮散性薬剤の漏れ防止に有効な揮散性薬剤に関する。
そして、第3発明は、第1発明の揮散性薬剤の光及び/又は紫外線劣化を防止するのに有効な光・紫外線安定化剤に関する。
【背景技術】
【0002】
〈従来の薬剤揮散装置〉
従来、例えばネット状の薬剤保持体に含まれる揮散性薬剤を雰囲気中に揮散させる装置としては、図9に示すように、揮散性薬剤が含浸された薬剤保持体105を、チャンバ106内に収納保持した装置100等が知られている(例えば、特許文献1参照)。この薬剤保持体105は、枠体101と、この枠体101の中央に配置された板状の中央部102と、この中央部102から枠体に延びる桟103と、枠体101と中央部102と桟と103により区画される開口部に架け渡されたネット状部材104とを有しており、例えば製造時において、この枠体101の中央部102の一方の平面に揮散性薬剤が滴下(供給)されることで、中央部102及び桟103を通じてネット状部材104に揮散性薬剤が含浸される。
【0003】
なお、この装置100では、その薬剤保持体105が、チャンバ106内に収納されたファン(不図示)により発生された気流が当てられて、この結果、その揮散性薬剤の有効成分がチャンバ106外へ放出される構成であるが、この他にもファンを用いずに自然揮散させる装置も一般的に知られている。
【0004】
〈従来の漏れ防止対策〉
また、従来、いわゆる殺虫マットなるマット状製剤が知られていた。
この製剤は、これを製造するに当たりマットの中心部にノズルから薬液を滴下していた。この際薬液には、殺虫成分を均一にマット中に浸透させるためにピペロニルブトキサイドを配合していた。ところで最近になって薬液を通気性シートに滴下して製造する送風式薬剤カートリッジが知られるようになってきた。そして薬剤カートリッジは、気体が通過する孔の断面積が大きいものは、薬液を滴下させたときに、該液が該保持材を通過して下に垂れてしまうので、このため薬液を滴下させたときに保持材の下に受け皿等を設けて薬液を損失しないようにしていた。
しかしながら、かかる受け皿にはその大きさを大きくできない製造上の制約が自ずとあるため、どうしても受けきらない量の薬液が滴下されたときには、殺虫成分の特定溶媒が配合された薬液では受け皿から薬液が溢れてしまい、薬剤カートリッジをうまく製造することができなかった。
【0005】
〈従来の紫外線劣化防止対策〉
また、従来、シクロプロパンカルボン酸誘導体は、熱や光、更に酸素による酸化等により安定性が悪いため、シクロプロパンカルボン酸誘導体自体、より安定な誘導体としての合成が検討される一方シクロプロパンカルボン酸誘導体を有効成分とする組成物中のその化合物を安定化するために、該組成物に酸化防止剤等の化合物を添加したり、該組成物を冷暗所に貯蔵したり、該組成物を密封状態にするパッケージに入れたり、シクロプロパンカルボン酸誘導体をマイクロカプセルに封入した剤型にすることがなされ、各種薬剤組成物としても使用されていた。例えば、シクロプロパンカルボン酸誘導体自体に紫外線吸収剤であるベンゾフェノン系誘導体、トリアゾール系誘導体、置換アクリロニトリル系化合物、立体障害アミン等の添加(特開昭59−39807号を参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−197856号公報(図1)
【特許文献2】特開2001−192309号公報
【特許文献3】特開昭59−39807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
〈従来の薬剤揮散装置の課題〉
ところで、通常、ネット状部材を有した薬剤保持体(ネット状の薬剤保持体)に揮散性薬剤を保持させる場合、揮散性薬剤をネット状部材に直接滴下すると揮散性薬剤がネット状部材を通過して垂れてしまい、ネット状部材に効率よく薬剤を含浸・拡散させることができない問題があった。
【0008】
そこで、前述した通り、特許文献1では、この問題を解決するため、枠体101の中央部102の一方の平面に薬剤を滴下し、中央部102及び桟103を経てネット状部材104に揮散性薬剤を供給することで、ネット状部材104に揮散性薬剤を効率良く含浸・拡散させるように構成されている。しかしながら、この種の装置は一般的に限られた時間内での使用を想定されたものであるため、そのネット状部材104のサイズは比較的小さいもので十分であるが、一方自然揮散させるもの等においては、所定の箇所(屋外、トイレ等)に据え置かれて長時間にわたって使用されるものが多く、したがって、薬剤保持体についてはそのサイズがより大きいものを採用する必要がある。このため、薬剤保持体へ揮散性薬剤を多量に含浸させる必要があり、その揮散性薬剤の含浸方法の更なる向上が求められ、そして、製造時等において、薬剤保持体に揮散性薬剤を効率よく供給することが求められていた。
【0009】
本発明は前述した事情に鑑みてなされたものであり、第1発明の課題は、ネット状の薬剤保持体に揮散性薬剤を効率良く多量に含浸・拡散させて、害虫防除効果等の向上を図ると共に、加えて製造時等の揮散性薬剤の供給効率を高めることができる薬剤揮散装置を提供することにある。
【0010】
〈従来の漏れ防止対策の課題〉
また、通風性基材(薬剤保持体)に薬液を滴下して蒸散材を製造する際に、受け皿の大きさによっては、滴下した薬液を多くしたり、振動などが加わると滴下した薬液が受け皿からあふれてしまい、したがって通風性基材に薬液を効率よく拡散・含浸させることができないことがあった。
第2発明はこれらの課題を解決するもので、受け皿の大きさが小さくても、滴下した薬液を多くしても、振動などが加わっても、滴下した薬液が受け皿からあふれることのない、したがって通風性基材(薬剤保持体)に薬液を効率よく拡散・含浸させることができるようにすることを第2の課題とする。
【0011】
〈従来の紫外線劣化防止対策の課題〉
また、前記のシクロプロパンカルボン酸誘導体自体に紫外線吸収剤であるベンゾフェノン系誘導体、トリアゾール系誘導体、置換アクリロニトリル系化合物、立体障害アミン等を添加した従来知られている紫外線吸収剤(後述する表3の比較例2および3参照)では十分な安定化効果が得られず、コスト的にも満足できるものではなかった。
そこで、第3発明は大きな光量を受け、特に紫外線に曝されるような場所であっても、シクロプロパンカルボン酸誘導体の安定性を高め、かつそれにより効力の持続性を大きくすることができる安定化剤を提供することを第3の課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
〈第1の課題を解決する手段〉
前述した第1の課題は、下記の構成により達成される。
(1) 揮散性薬剤を保持するための薬剤保持体と、揮散口を有して当該薬剤保持体を収納保持する容器と、を備えた薬剤揮散装置において、
前記薬剤保持体に前記揮散性薬剤を供給して前記揮散性薬剤を保持させるため、 前記容器には、平板部及び皿形状部を有した揮散性薬剤供給手段が少なくとも1つ設けられていると共に、
前記薬剤保持体は、当該平板部の面部と当該皿形状部の底部との間に挟まれて位置されており、そして前記皿形状部の前記底部には、複数の貫通孔が設けられていることを特徴とする薬剤揮散装置。
(2) 前記複数の貫通孔は、前記皿形状部の前記底部の縁部近傍に、周方向にわたって略等間隔に配設されていることを特徴とする上記(1)の薬剤揮散装置。
(3) 使用時に前記薬剤揮散装置を所定の設置箇所に保持するため、着脱自在な保持手段を更に備えることを特徴とする上記(1)又は(2)の薬剤揮散装置。
(4) 前記保持手段は、略コ字形状の板部材により形成されており、そして
当該板部材の互いに対向する側板部の中央部各々には、スリットを介して折り曲げ自在なスタンド用片が設けられていることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれか1つの薬剤揮散装置。
【0013】
上記(1)の構成によれば、薬剤保持体が、揮散性薬剤供給手段の平板部の面部と皿形状部の底部との間に挟まれて位置しており、そしてその皿形状部の底部には複数の貫通孔が設けられている。このため、揮散性薬剤の供給を行う際には、まず皿形状部に揮散性薬剤が注入され、この皿形状部に一時的に貯留した揮散性薬剤が、その底部に設けられた複数の貫通孔を介して、薬剤保持体に供給されることになる。このとき、薬剤保持体が、揮散性薬剤供給手段の平板部の面部と皿形状部の底部との間に挟まれているので、例えば毛細管現象に従って、揮散性薬剤がこの挟持部分の面方向で放射状に薬剤保持体に拡がって拡散・含浸されていくことになる。したがって、ネット状の薬剤保持体に揮散性薬剤を効率良く多量に拡散・含浸させることができるので、害虫防除効果の向上を図ることができる。加えて製造時等の揮散性薬剤の供給効率を高めることができる。なお、皿形状部の内径は約10〜20mmが好適である。また貫通孔の径は約1〜3mm、そして、その個数は4〜8個が好適である。なお、皿形状部内の面積が、約75〜350mm程度であれば、皿形状は円形に限られず各種形状にすることができる。
上記(2)の構成によれば、複数の貫通孔が皿形状部の底部の縁部近傍に、周方向にわたって略等間隔に配設されているので、底部の中央部に設けた場合と比較して、貫通孔を介した薬剤保持体への供給量と薬剤保持体の挟持部分を介した薬剤保持体全体への含浸量とのバランスを適切に調整することができ、揮散性薬剤の垂れを防止して、ネット状の薬剤保持体に揮散性薬剤をさらに効率良く拡散・含浸させることができる。また、製造時等、揮散性薬剤の垂れを防止することができるので、無駄を防止することができて供給効率を高めることができる。
上記(3)の構成によれば、着脱自在な保持手段を更に備えることにより、薬剤揮散装置が必要とされる設置箇所(例えば、屋外、トイレ等)に適宜設置することができて、取扱性の向上を図ることができる。
上記(4)の構成によれば、保持手段が略コ字形状の板部材により形成され、且つこの板部材の互いに対向する側板部の中央部各々には、スリットを介して折り曲げ自在なスタンド用片が設けられているので、この保持手段は所謂ハンガーとしてぶら下げて用いたり、或いは薬剤揮散装置から取り外してから所謂スタンドとしてテーブルや机等に立てたりして用いることができて、さらに取扱性の向上を図ることができる。
【0014】
ここで、ハエ、コバエ、カ、ブヨ等の飛翔性害虫等の害虫に対して殺虫又は忌避の害虫防除効果を有する揮散性薬剤に適用される薬剤としては以下に述べるものを用いることができる。
【0015】
薬剤として揮散性の害虫防除剤を用いることができ、例えば、エンペンスリン、トランスフルトリン、メトフルトリン、プロフルトリン等のピレスロイド系化合物、そしてフェニトロチオン、ダイアジノン、マラソン、ピリダフェンチオン、プロチオホス、ホキシム、クロルピリオス、ジクロルボス等の有機リン系化合物、等を用いることもできる。
この中でも、トランスフルトリン、メトフルトリン、プロフルトリンがよく、これらを組み合わせたもの、特にメトフルトリン、プロフルトリンを併用するのがよい。
【0016】
また、薬剤は、液状のものはそのまま用いてもよいが、薬剤保持体への拡散性、含浸性等を高めるために溶剤を用いて溶液の形態としてもよい。溶剤としては、例えば、流動パラフィン、フタル酸ジエチル、セバシン酸ジブチル等を用いることができ、その粘度は1〜10mm/S(40℃)CsTがよい。
【0017】
さらに、塩化セチルピリジウム、イソプロピルメチルフェノール、グルコン酸クロルヘキシジン、エタノール、イソプロパノール、フェノキシエタノール、パラベン類、クロロオシレノール、チモール等の除菌・殺菌成分、BHT、BHA、アスコルビン酸等の安定化剤、光安定化剤等を用いることができる。また、その多機能化又はその効力の向上のために、異なる用途の薬剤を併用してもよい。
【0018】
そして、前述したような揮散性薬剤が含浸される薬剤保持体としては、効率よく自然揮散させる上で、薄型で前述の化合物の自然揮散が妨げられない構造のものを使用する。このような薬剤保持体は、その容積が小さくても揮散性に優れるので、ピレスロイド系化合物等が効率よく自然揮散し、その結果、優れた害虫防除効果および揮散効果を発揮する。
【0019】
このような薬剤保持体としては、例えば、紙、糸(撚り糸等)、不織布、木材、パルプ、化学繊維、ポリエステル、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂材料等の材質からなる、例えばネット、網(メッシュ)、レース地のように多数の連続的ないし断続的な空隙を有するようなネット状の薬剤保持体を使用することができる。
【0020】
このように、揮散性薬剤が含浸された薬剤保持体は、本発明の装置に取付けられて、軒下、ベランダ、倉庫、室外、室内等に設置して、揮散性薬剤を自然揮散させる。これにより、揮散性薬剤が効率よく薬剤保持体から自然揮散し、そして容器に設けられた揮散口を介して容器外部の雰囲気中に揮散して、高い害虫防除効果および揮散効果を発揮する。
【0021】
本発明に係る薬剤揮散装置は、例えば、シナハマダラカ、アカイエカ、コガタアカイエカ、ネッタイシマカ、ヒトスジシマカ、トウゴウヤブカ等の蚊;サシバエ等のハエ;シクロアブ、ウシアブ、メクラアブ、ゴマフアブ等のアブ;クロオオブユ、キアシオオブユ、アオキツメトゲブユ等のブユ;トクナガクロズカカ、オオシマヌカカ、ニワトリヌカカ等のヌカカ;キイロスズメバチ、セグロアシナガバチ、ミツバチ等のハチ;ハネアリ等のアリ、等の害虫に用いることができる。
【0022】
前述では、主に害虫防除について説明したが、前述の薬剤に代えて、香料、精油を揮散性薬剤として用いることができる。この香料、精油は、周囲雰囲気中の環境改善だけではなく、害虫防除剤として用いることもできる。
ここで、香料、精油としては、例えば、リナロール、α―ピネン、β−ピネン、リモネン、ゲラニオール、シトラール、シトロネラール、ヒノキオイル、月桃オイル、ヒバオイル、スペアミントオイル、バジルオイル、バラオイル、ジャスミンオイル、ユーカリオイル、キュベバオイル、ハッカオイル、オレンジオイル、レモンオイル、グレープフルーツオイル、ライムオイル、ペチバーオイル、レモングラスオイル、ローズマリーオイル、ラベンダーオイル、イランイランオイル、ティートリーオイル、ボアドローズオイル、マジョラムオイル、ホップオイル、シソオイル、ベルガモットオイル、ゼラニウムオイル、ニームオイル、防虫菊オイル、カモミールオイル、等を例示することができる。
【0023】
〈第2の課題を解決する手段〉
前述した第2の課題を解決するため、第2発明は組成物に係り、揮散性薬剤と共に、薬剤保持体に該揮散性薬剤を拡散・含浸させるために漏れ防止として無機粉が含有されたことを特徴としている。
そして、その組成物を請求項1記載の薬剤揮散装置の揮散性薬剤供給手段に供給することにより、揮散性薬剤が薬剤保持体に拡散して含浸し、無機粉が揮散性薬剤供給手段に留まるようになることを特徴としている。
【0024】
〈第3の課題を解決する手段〉
前述した第3の課題を解決するため、シクロプロパンカルボン酸誘導体の光・紫外線安定化剤が、常温液状のアルカン又はシクロアルカンを安定化作用成分として含むことを特徴とするものである。
また、前記揮散性薬剤にこの光・紫外線安定化剤を含有させたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0025】
〈第1発明の効果〉
第1発明によれば、ネット状の薬剤保持体に揮散性薬剤を効率良く多量に拡散・含浸させて、害虫防除効果等の向上を図ると共に、加えて製造時等の揮散性薬剤の供給効率を高めることができる薬剤揮散装置を提供することができる。
【0026】
〈第2発明の効果〉
第2発明によれば、通風性基材に薬液を滴下して蒸散材を製造する際に、受け皿の大きさはそのままでも、無機粉により粘性が高くなっているので振動が生じても滴下した薬液が受け皿から漏れ出にくくなり、しかも揮散性薬剤は通風性基材に薬液を極めて効率よくもれなく拡散・含浸させることができるようになる。
【0027】
〈第3発明の効果〉
第3発明によれば、安定化剤として常温液状のアルカン又はシクロアルカンを選択することにより、シクロプロパンカルボン酸誘導体を安定化せしめ、特に光や紫外線に対する安定性を大きくし、その組成物を光や紫外線に曝露された窓ガラス等の表面に塗布して大きな光量を受けても、シクロプロパンカルボン酸誘導体の安定性を高めてかつそれにより効力の持続性を大きくすることができる安定化剤が得られ、したがってまた、紫外線に曝されるような場所であっても性能が安定した薬剤揮散装置が得られる。
第3発明の安定化方法としては、常温液状のアルカン又はシクロアルカンをシクロプロパンカルボン酸誘導体に添加することにより上記の効果を有するようになる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態に係る薬剤揮散装置の分解斜視図である。
【図2】図1の薬剤揮散装置の組立後の外観斜視図である。
【図3】図1の薬剤揮散装置の使用例を説明する外観斜視図である。
【図4】揮散性薬剤供給部の断面図である。
【図5】第1の揮散性薬剤供給部の周りの正面図である。
【図6】実施例2に用いたサンプルの揮散性薬剤供給部周りの正面図である。
【図7】実施例3に用いたサンプルの揮散性薬剤供給部周りの正面図である。
【図8】比較例1に用いたサンプルの揮散性薬剤供給部周りの正面図である。
【図9】従来の装置の概略図である。
【図10】流動パラフィンの添加量とメトフルトリン安定性との関係を示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
なお、この明細書では第1発明〜第3発明について説明しているが、この特許請求の範囲で請求しているのは第2発明である。ただし、第1発明は第2発明を理解するための前提となっており、また、第3発明もこの分野の技術の豊富化に寄与するので、第1および第3発明について以下に詳しい説明をすることとする。
〈第1発明を実施するための最良の形態〉
図1〜図5は第1発明に係る薬剤揮散装置の一実施形態を示すものであり、図1は本発明の一実施形態に係る薬剤揮散装置の分解斜視図であり、図2は図1の薬剤揮散装置の組立後の外観斜視図であり、図3は図1の薬剤揮散装置の使用例を説明する外観斜視図であり、図4は揮散性薬剤供給部の断面図であり、図5は第1の揮散性薬剤供給部の周りの正面図である。
なお、今回開示される実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。第1発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0030】
図1に示すように、薬剤揮散装置10は、表容器11と、裏容器12と、ネット状の薬剤保持体13と、保持部材(図2参照)14と、を備えて構成される。
【0031】
表容器11は、成形がし易い、例えば、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、アクリロ・ニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂等の樹脂材料を用いて、前面板15と、この前面板15の周縁部から略直角に立設された周板16と、からなり、前面板15には、V字状をなす7個の前方揮散口17が上下方向に略並列に設けられている。
【0032】
そして、表容器11には、この7個の前方揮散口17のうちの、最上部に位置する前方揮散口17の右方端部と、最下部に位置する前方揮散口17の左方端部と、の2箇所に、略コ字形状にそれぞれ形成される、後述する第1の揮散性薬剤供給部18aの表部を構成するための第1の表供給部19aと、第2の揮散性薬剤供給部18bの表部を構成するための第2の表供給部19bと、がそれぞれ設けられている。
即ち、これら表供給部19a、19bは、その略コ字形状の端部で前方揮散口17の縁部をそれぞれ上下方向で架け渡すように表容器11の内方に屈曲した状態で形成されており、またその底板部それぞれには、皿形状部20a、20bが形成されている。
【0033】
裏容器12は、表容器11と同様に、成形がし易い、例えば、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、アクリロ・ニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂等の樹脂材料を用いて、後面板21と、この表面板21の周縁部から略直角に立設された周板22と、からなり、後面板21には、7個のV字状をなす後方揮散口23が上下方向に略並列に設けられている。
【0034】
そして、裏容器12には、この7個の後方揮散口23のうちの、最上部に位置する後方揮散口23の右方端部と、最下部に位置する後方揮散口23の左方端部と、の2箇所に、略コ字形状にそれぞれ形成される、第1の揮散性薬剤供給部18aの裏部を構成するための第2の裏供給部24aと、第2の揮散性薬剤供給部18bの裏部を構成するための第2の裏供給部24bと、がそれぞれ設けられている。
即ち、これら裏供給部24a、24bは、その略コ字形状の端部で後方揮散口23の縁部をそれぞれ上下方向で架け渡すように裏容器12の内方に屈曲した状態で形成されており、またその底板部それぞれには、平板部25a、25bが形成されている。
【0035】
薬剤保持体13は、前述した通りの多数の連続的な空隙を有するようなネットとされ、例えば、細い線形状の複数の樹脂材を交差させたネット状部材として板形状に一体成形されている。
なお、薬剤保持体13として、ネット状部材に代えて、浸透性のある紙材や不織布を用いて板形状に形成したものも適用できる。
【0036】
図2に示すように、表容器11及び裏容器12は、その合体時に、表容器11及び裏容器12それぞれに設けられた複数の支持片(不図示)により薬剤保持体13を挟持して収納保持し、そして、それぞれの周板16,22が接着剤等の接合手段により結合されることにより箱形状に構成される。
なお、表容器11及び裏容器12それぞれの両側部には、4(2+2)箇所の切欠が合体時に互いに対向するようにそれぞれ設けられているので、その合体時に、周板16、22の上方側に一対の保持部材取付孔26が互いに対向する位置で形成されることになる。
このため、保持部材取付孔26に、保持部材14が着脱自在に取り付けられ得る。
【0037】
保持部材14は、例えば可撓性を有する樹脂材料を用いて、略コ字形状の板部材により形成されており、この板部材の互いに対向する側板部27の先端側には、保持部材取付孔26に取り付けるための係止突起28が設けられている。また、側板部27の中央部には、スリット29を介して折り曲げ自在なスタンド用片30が設けられている。
【0038】
保持部材14は、係止突起28が両容器11、12により形成された保持部材取付孔26に係合されることで、例えば不図示のハンガーかけに掛止されることで、薬剤揮散装置10は、その必要とされる設置箇所(例えば、屋外、トイレ等)に適宜設置される。
なお、保持部材14は、コ字形状に代えて、単純なU字形状に形成されても良い。
【0039】
また、図3に示すように、薬剤揮散装置10は、保持部材14の係止突起28を保持部材取付孔26に取り付けた使用例に加えて、保持部材14を取り外した状態でも使用することもできる。即ち、両容器11、12から取り外された保持部材14は、スタンド用片30を上方に向けて、例えば机等に置かれ、その後、スリット29を介してスタンド用片30が、略90度折り曲げられる。これにより、スタンド用片30上に薬剤揮散装置10が載置されることで、保持部材14がスタンドとして機能し、ひっくり返らずに両容器11、12を起立させて薬剤揮散装置10を安定的に所定の箇所に設置することができる。
【0040】
そして、図4、図5に示すように、表供給部19a、19bの底板部の外方面それぞれには、注入される揮散性薬剤を一時的に貯留するため、その中央部に段部を有して略円形状の皿形状部(凹部)20a、20bが形成されおり、そして、この皿形状部20a、20bの底部の縁部近傍には、その円周方向にわたって略等間隔縁部の円周方向に等間隔に4個の貫通孔32が形成されている。
一方、裏供給部24a、24bの底板部には前述したような段部又は貫通孔は設けられておらず、そのまま平板部25a、25bとして形成されている。
なお、図4は両揮散性薬剤供給部18a、18bの断面を示し、図5はそのうち第1の揮散性薬剤供給部18aを示している。
【0041】
また、表容器11及び裏容器12の合体時には、薬剤保持体13は、図4に示すように、裏供給部24a、24bの平板部25a、25bの面部と皿形状部の底部20a、20bとの間に挟まれて位置することになる。このとき、裏供給部24a、24bの平板部25a、25b及び表供給部19a、19bの皿形状部20a、20bが薬剤保持体13を挟んで対向配置することになり、このことにより、揮散性薬剤を薬剤保持体13に供給及び拡散・含浸させるための揮散性薬剤供給部18a、18bそれぞれが構成されることになる。
【0042】
即ち、このように構成された揮散性薬剤供給部18a、18bを用いた薬剤保持体13への薬剤含浸方法としては、例えば製造時において、第1の揮散性薬剤供給部18aの第1の表供給部19aが第1の裏供給部24aに対し上方に位置するように、薬剤揮散装置10を載置し、この状態で第1の表供給部19aの皿形状部20aに揮散性薬剤を注入する。この注入された揮散性薬剤は、皿形状部20a内に一時的に貯留され、そして貫通孔32を介して、薬剤保持体13に供給される。このとき、平板部25a、25b及びの皿形状部20a、20bにより形成された薬剤保持体13の挟持面で、毛細管現象に従って、揮散性薬剤がこの挟持面の面方向で放射状に薬剤保持体13に拡がって拡散・含浸される。第2の揮散性薬剤供給部18bについても同様であるが、特に本実施形態では、揮散性薬剤供給部が2箇所に設けられているので、この揮散性薬剤供給部18a、18bが同時に用いられることにより、より効率よく揮散性薬剤を薬剤保持体13に拡散・含浸することができる。
なお、揮散性薬剤供給部は、上述した上下一対に限らず、複数個所(例えば4隅部)に更に設けられてもよい。
【0043】
このように揮散性薬剤が含浸された薬剤保持体13を備える薬剤揮散装置10は、保持部材14を用いて部屋の柱等に掛止されたり、或いはスタンド用片30上に載置されたりして、所定の箇所(例えば、屋外、トイレ等)に設置されることで、揮散性薬剤が薬剤保持体13及び揮散口17、23を介して容器11、12外部に揮散し、例えば飛翔性害虫等を防除する。
【0044】
以上説明したように、本実施形態によれば、薬剤保持体13が、揮散性薬剤供給部18a、18bの平板部25a、25bの面部と皿形状部20a、20bの底部との間に挟まれて位置しており、そしてその皿形状部20a、20bの底部には複数の貫通孔32が設けられている。このため、揮散性薬剤の供給を行う際には、まず皿形状部20a、20bに揮散性薬剤が注入され、この皿形状部20a、20bに一時的に貯留した揮散性薬剤が、その底部に設けられた複数の貫通孔32を介して、薬剤保持体13に供給されることになる。このとき、薬剤保持体13が、揮散性薬剤供給部18a、18bの平板部25a、25bの面部と皿形状部20a、20bの底部との間に挟まれているので、例えば毛細管現象に従って、揮散性薬剤がこの挟持面の面方向で放射状に薬剤保持体に拡がって拡散・含浸されていくことになる。したがって、ネット状の薬剤保持体13に揮散性薬剤を効率良く多量に拡散・含浸させて、害虫防除効果の向上を図ると共に、加えて製造時等の揮散性薬剤の供給効率を高めることができる
【0045】
また、本実施形態によれば、複数の貫通孔32が皿形状部20a、20bの底部の縁部近傍に、円周方向にわたって略等間隔に配設されているので、底部の中央部に設けた場合と比較して、貫通孔32を介した薬剤保持体13への供給量と薬剤保持体13の挟持部分を介した薬剤保持体13全体への含浸量とを適切に調整することができ、揮散性薬剤の垂れを防止して、ネット状の薬剤保持体13に揮散性薬剤をさらに効率良く拡散・含浸させることができる。また、製造時等、揮散性薬剤の垂れを防止することができるので、無駄を防止することができて供給効率を高めることができる。
【0046】
さらに、本実施形態によれば、着脱自在な保持部材14を更に備えることにより、薬剤揮散装置10が必要とされる設置箇所(例えば、屋外、トイレ等)に適宜設置することができて、取扱性の向上を図ることができる。特に、この保持部材14が略コ字形状の板部材により形成され、且つこの板部材の互いに対向する側板部27の中央部各々には、スリット29を介して折り曲げ自在なスタンド用片30が設けられているので、この保持部材14は所謂ハンガーとしてぶら下げて用いたり、或いは薬剤揮散装置10から取り外してから所謂スタンドとしてテーブルや机等に立てたりして用いることができて、さらに取扱性の向上を図ることができる。
【実施例1】
【0047】
次に、第1発明に係る薬剤揮散装置の作用効果を確認するために行った実施例について説明する。
【0048】
<揮散性薬剤の垂れ試験>
以下に示すように、第1発明に係る皿形状部20a、20bの底部に複数の貫通孔を有した2種類の薬剤揮散装置(実施例1、2)と、皿形状部20a、20bの底部に1つの貫通孔を有した薬剤揮散装置(比較例1)、皿形状部20a、20bを有していない薬剤揮散装置(比較例2)と、を用意し、これら揮散性薬剤供給部18a、18bそれぞれに、140μLの揮散性薬剤{組成:メトフルトリン(150mg)、プロフルトリン(100mg)、流動パラフィン(100mg)}を注入し、注入直後と注入後(24時間後)とにおける、薬剤揮散装置の内部及び外部における垂れ量を測定した。この試験結果を表1に示す。
(本試験のため用意された薬剤揮散装置)
なお、下記に示す揮散性薬剤供給部18a,18bの皿形状部20a,20bはいずれも約1mmの深さに設定されている。
[実施例1]:揮散性薬剤供給部18a,18bの皿形状部20a,20bの底部の縁部近傍に4個の貫通孔32(径:2mm)を円周方向に等間隔に設けたもの(図5参照)
[実施例2]:揮散性薬剤供給部18a,18bの皿形状部20a,20bの底部の縁部近傍に6個と、底の中央に1個、との計7個の貫通孔52(径:2mm)が設けられたもの(図7参照)
[比較例1]:揮散性薬剤供給部18a,18bの皿形状部20a,20bの底部中央に単一の貫通孔51(径:2mm)が設けられたもの(図6参照)
[比較例2]:図8に示すように、揮散性薬剤供給部18a,18bに皿形状部が設けられず、そのまま円形状の貫通孔53(径:13mm)が設けられたもの(図8参照)
【0049】
【表1】

【0050】
表1により明らかなように、比較例2は、24時間後に、25.8μLの垂れが生じた。この垂れ量は、全添加量の18%に当たるために、例えばその製造時等において揮散性薬剤が多量に無駄になり効率が悪いことがわかった。
これに対して、実施例1、実施例2、比較例1は、いずれも垂れが発生しなかった。しかしながら、比較例1は、揮散性薬剤の垂れは認められなかったものの、揮散性薬剤の薬剤保持体への拡散・含浸が不十分であり、皿形状部20a、20bに揮散性薬剤の多くが貯留されたままであった。これは、皿形状部20a、20bの周縁近傍の内周面における揮散性薬剤の液保持力が依然として高い状態のままであり、貫通孔51を介した薬剤保持体13への供給が不十分になったためだと推測される。一方、底部の周縁部に貫通孔32、52が設けられる実施例1及び実施例2は、その位置によりその液保持力の影響を受けないので薬剤保持体13への供給が十分になったものと推測される。
なお、所定時間後に両容器11、12を開放して薬剤保持体13への揮散性薬剤の拡散性・含浸性を調べたところ、事実、実施例1、実施例2が、比較例1と比べて、薬剤保持体13への薬剤の拡散性・含浸性が良好であり、ネット状の薬剤含浸体に効率よく拡散していることがわかった。
【0051】
<処方例>
また、第1発明に係る揮散性薬剤の処方としては以下のものが挙げられる。
[処方例1]
メトフルトリン 150mg
トランスフルトリン 50mg
流動パラフィン 100mg
[処方例2]
メトフルトリン 50mg
プロフルトリン 100mg
流動パラフィン 300mg
無水ケイ酸 9mg
[処方例3]
エムペンスリン 100mg
プロフルトリン 50mg
流動パラフィン 100mg
[処方例4]
ローズマリーオイル 100mg
流動パラフィン 50mg
[処方例5]
緑茶抽出物 0.1mg
柿抽出液 50mg
エタノール 30mg
[処方例6]
ラウリルメタアクリレート 50mg
エタノール 30mg
【0052】
なお、第1発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良等が自在である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置場所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
例えば、前述した実施形態では、V字状をなす揮散口17,23を複数有する樹脂材料の容器11,12として説明したが、本発明に係る容器は通気性を有する揮散口が設けられていればよく、例えば全体又は一部が格子状(ネット状を含む)に形成したものでもよく、この場合には、人(特に幼児)の指と薬剤保持体13との接触をより確実に防止することができてよい。さらに、容器11,12の前面、後面に揮散口17,23を設けたが、薬剤保持体13が外れないように、例えばその周壁等に更に設けるようにしてもよい。
また、前述した実施形態では、着脱自在の保持部材14を備える構成としたが、これに限らず、容器11,12の周壁、容器11,12の前面・後面に、揮散口を塞がないように、例えば貼付粘着剤、クリップ等の装置支持部を取り付けるように構成してもよい。
【0053】
〈第2発明[漏れ防止対策]を実施するための最良の形態〉
第2発明は組成物に係り、揮散性薬剤と共に、薬剤保持体に該揮散性薬剤を拡散・含浸させるために漏れ防止として無機粉が含有されたことを特徴としている。
そして、その組成物を請求項1記載の薬剤揮散装置の揮散性薬剤供給手段に供給することにより、揮散性薬剤が薬剤保持体に拡散して含浸し、無機粉が揮散性薬剤供給手段に留まるようになることを特徴としている。
ここで「揮散性薬剤供給手段」とは「薬液を受けるための手段(皿、トレー、シャーレ、ロート、シートなど)を言う。
【0054】
蒸散材用拡散・含浸剤組成物の有効成分として無機粉(例えば二酸化珪素粉および/又は無水ケイ酸粉)を例示できるが、これらの少なくとも1種を薬液に配合することで、薬液は基材のカバーに設けられた滴下用枠内に滴下するが該枠内からはみ出すことなしに該枠内を出発点として通風性のある基材を極めて効率よく拡散・含浸する作用を有するものであれば二酸化珪素粉および/又は無水ケイ酸粉と同様の無機粉に替えることができる。そのような無機物として、例えば、ベントナイト、ラポナイト、セピオライト、スクメタイト、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ヘクトライト、ゼオライト、カオリン、及びこれらの鉱物に第4アンモニウムなどを結合させた有機鉱物等を挙げることができる。
また、無機粉の比重および粒径は、例えば無水ケイ酸で、その比重が0.03〜0.10g/ml、粉径が0.5〜10μmのものが好ましい。
【0055】
蒸散材用拡散・含浸剤組成物を用いた薬液処理方法において、基材(薬剤保持体)としては、網(網目)状、ネット状、格子状等の形態で通風性のある紙、不織紙、布、之等と他の無機及び有機繊維乃至合成樹脂との積層シートや発泡シート等を例示でき、特に前記有機溶媒溶液を吸収し易いものが好ましい。
【0056】
薬液に利用される有機溶媒としては、各種のアルコール類、エステル類、エーテル類、ケトン類、含窒素化合物等が包含される。之等の有機溶媒はその1種を単独で用いることもでき、2種以上を併用することもできる。更にそれらの利用に際し、常温で固体の化合物はこれらを上記有機溶媒又は他の固体と混合して液化して使用することもできる。
【0057】
前記有機溶媒の使用量は、基材の吸油量によって異なり、該基材として通風性のあるシート材(約100g/m)を用いる場合、約0.3〜10.0mg/cm程度が基材に含浸される量の範囲から選択されるのが適当である。
【0058】
薬液に配合される有害生物防除剤等としては、防虫剤、殺虫剤、忌避剤、芳香剤、消臭剤等のいずれであってもよい。之等の代表例としては、例えばパラジクロロベンゼン、ナフタレン、樟脳等の防虫剤、アレスリン、フラメトリン、フタルスリン、エムペントリン、テラレトリン、レスメトリン、ペルメトリン、フェノトリン、フェニトロチオン、フェンバレレート、エトック、トランスフルトリン、メトフルトリン、プロフルトリンこれらの光学及び/又は幾何異性体等のピレスロイド系殺虫剤、O,O−ジメチル O−(2,2−ジクロロ)ビニルホスフェート等の有機リン系殺虫剤、O−イソプロポキシフェニルメチルカーバメート、メトキサジアゾン等のカーバメート系殺虫剤、ジ−ノルマル−プロピル イソシンコメロネート、2,3,4,5−ビス(Δ2−ブチレン)−テトラヒドロフルフラール、ジ−ノルマル−ブチル サクシネート(DNBS)、ピリミジン誘導体(5−クロロ−4−アミノ−2,6−ジメチルピリミジン等)ピペリジン誘導体(1−ヘキサノイル−ピペリジン、1−ペンタノイル−2,6−ジメチル−ピペリジン等)、キサントゲン酸誘導体(O−エチル−S−ターシャリーブチル−スルフェニル キサントエート等)、アミド類(N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジエチルメタトルアミド等)、アゼピン誘導体(1−ヘキサノイル 3−ピペコリン、1−ヘキサノイル 2−ピペコリン等)、モルフォリン誘導体(4−ヘキサノイル−2,6−ジメチルモルフォリン等)、ピロリジン誘導体(1−オクタノイルピロリジン等)、キノン類(ナフトキノン、ベンゾキノン等)等の忌避剤、ジャスミン系、ブーケ系等の芳香剤、ラウリル酸メタクリレート、ゲラニルクロトネート等の消臭剤、橙色201号、黄色201号、赤色215号、赤色218号、赤色223号、C.I.ソルベントレッド49、黄色204号、青色403号等の色素等を例示できる。
【0059】
更に、薬液には必要に応じて、N−(2−エチルヘキシル)−ビシクロ−[2,2,1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボキシイミド(サイネピリン222:吉富製薬株式会社製)等の効力増強剤や保留剤としても働くピペロニルブトキサイド及び各種着香料等を添加配合可能である。
【実施例2】
【0060】
以下、第2発明の実施例を挙げて更に詳しく説明するが、第2発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
〈漏れ防止試験の目的〉
自然蒸散型ネット製剤は薬液保持部にネットを使用しており、薬液滴下皿に点滴した薬液が徐々にネット全体に拡散することで完成品となる。薬液の点滴からネット全体に拡散するまで、一定の時間が必要であり、その間に強い振動や衝撃が加わると、点滴皿からの薬液漏れが発生することがある。
また、薬液滴下皿の大きさに制限がある場合には、薬液が多ければ、必然的に皿の薬液保持能力を超えてしまい、漏れが発生する。
そこで、薬液の濃度を調整することで安定した薬液の点滴から拡散を行えるようにすることに着目した。
〈漏れ防止試験の方法〉
「供試検体」としてアドソリダー101(日本薬局方 軽質無水ケイ酸)を用いて、それぞれ1.0%、1.5%、1.75%、および2.0%となるように薬液を調製した。
「試験方法」は、実施例1〜4として上記アドソリダー101処方調合液を、比較例としてアドソリダ無添加処方調合液をハホネ薬剤滴下皿に150μL点滴し、10分後における薬液の漏れを確認した。その際に、滴下皿を地面と水平に保持した場合と、さらに点滴後に垂直にした場合の漏れを確認した。
〈漏れ防止試験の結果〉
アドソリダー濃度と薬液の漏れの関係を表2に示した。
【0061】
【表2】

〈結果の考察〉
アドソリダーを濃度1.0%から2.0%まで添加したいずれの処方においても水平漏れは認められなかった。なかでも1.75%濃度の調合液が最も最適な物性を示し、それよりも低濃度では点滴後に垂直にした際に薬液の漏れが確認された。
比較例であるアドソリダ無添加処方調合液の場合は、薬液の垂直漏れは勿論、水平漏れも確認された。
【0062】
〈第3発明[紫外線劣化防止]を実施するための最良の形態〉
第3発明は、常温液状のアルカン又はシクロアルカンが上記したような条件あるいは場所においてもシクロプロパンカルボン酸誘導体を十分安定化することができることを見出して、それに基いてなされたものである。
【0063】
すなわち、第3発明はシクロプロパンカルボン酸誘導体の光及び/又は紫外線安定化剤に係り、常温液状のアルカン又はシクロアルカンを安定化作用成分として含むことによって上記の目的を達成した。
そして、この光・紫外線安定化剤を上記揮散性薬剤に含有させることで、紫外線に強い薬剤揮散装置が得られることとなった。
本発明で安定化しようとするシクロプロパンカルボン酸誘導体としては、それに包含されることが知られているすべてのものが入るが、例えば、例えば、次のような構造式のメトフルトリン[C182043]、プロフルトリン[C171842]、トランスフルトリン[C1512Cl242]及び、これらの異性体、類縁体、誘導体を挙げることができる。
【0064】
【化1】

【0065】
【化2】

【0066】
【化3】

【0067】
上記化合物には、通常用いられる各種の効力増強剤、揮散率向上剤、酸化防止剤、香料、等を添加することができる。
これらの添加剤の上記化合物への配合割合は、剤型、使用場面、適用対象等により異なるが、通常全組成物中に有効成分量あるいは溶解量までの量を配合することができる。
【0068】
第3発明において、上記化合物の安定化のために用いる常温液状のアルカン又はシクロアルカンとしては、その安定化作用を有するものならばいずれをも用いることができるが、具体的には、流動パラフィンとかミネラルオイルを用いることができる。
【0069】
第3発明で使用する常温液状のアルカン又はシクロアルカンは、シクロプロパンカルボン酸誘導体に対して等量混合比(1:1)で十分に効果が期待できる。シクロプロパンカルボン酸誘導体に対して常温液状のアルカン又はシクロアルカンを2倍量混合しても効果はほとんど変らない。
【0070】
また、これらの常温液状のアルカン又はシクロアルカンの組成物(添加剤などを含めたもの)原体に対し添加量は10〜100質量%の範囲とすることができるが、特に、20〜60質量%とすることが好ましい。
【0071】
原体が液体の場合は溶剤は要らないが、原体が結晶の場合は必要最少量の溶剤に溶かして使う。第3発明の安定化剤を添加して得られるあるいは第3発明の組成物の剤型としては、具体的には、エタノール、メタノール、水、これらの混合物等の溶媒にシクロプロパンカルボン酸誘導体と適量の安定化剤を溶解して液剤を形成し、使用時に適切な濃度に希釈して噴霧剤として用いたり、LPG(液化天然ガス)やDME(ジメチルエーテル)、圧縮ガス等の噴射剤とシクロプロパンカルボン酸誘導体、安定化剤、及び溶媒からなる液剤とを配合してエアゾール剤として用いることができる。エアゾール剤の場合、全部の剤が一つの容器に入っている1液型の形式の外、噴射剤だけを入れた容器とシクロプロパンカルボン酸誘導体、安定化剤及び溶媒を入れた容器を組合せて用いる、隔離式噴射装置を利用した2液型の形式も用いることができる。この他にポンプデイスペンサーなどを用いてもよい。
【0072】
さらに、シクロプロパンカルボン酸誘導体、溶媒及び安定化剤を不織布、紙、これらを素材としたネット等に含浸されたシート状の剤型とすることができる。
第3発明安定化剤の添加によって得られる組成物を具体的に適用する場所、すなわち使用場面としては、外光にさらされる病院、薬局、一般家屋又は商店等のガラス窓、例えばショーウインド、又は網戸、あるいは自動販売機の電光表示面、屋内の電灯、又は街灯等の外部照明灯の個所に、シクロプロパンカルボン酸誘導体を適切な濃度で配合された前記組成物を噴霧、塗布等の操作で付着させることにより有効に使用できる。
そのさい、有効にその作用を発揮しうる適用対象としては、処置の必要な生物が例示できる。
【実施例3】
【0073】
以下、実施例により第3発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
シクロプロパンカルボン酸誘導体の経時的分解率をみるため次の安定性試験を行なった。
〈薬剤耐光試験の目的〉
メトフルトリン自然蒸散剤の使用場所として、屋内および屋外を設定しており、屋外使用を想定した場合の耐光性を評価する。
〈薬剤耐光試験の方法〉
「供試検体」として、100×100mmに裁断した150dネット(丸紅)に、以下の実施例(1)〜(4)の薬剤アセトン溶液、すなわち、メトフルトリン150mgに流動パラフィン40Sを50mg(実施例1)、75mg(実施例2)、100mg(実施例3)、150mg(実施例4)をそれぞれ添加した溶液を滴下・拡散し、アセトンを揮散させた後、包材(PET単体)で包んだ。また、比較例として、比較例1は流動パラフィン40Sを添加しないメトフルトリン150mgのみの液、比較例2は、4−ドデシル−2−ヒドロキシベンゾフェノン添加量1%(1.5mg)添加した溶液、比較例3は、2−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾー8添加量1%(1.5mg)添加した溶液とした。
「試験場所」は、日当たりのよい社屋の屋上。
「試験方法」は、上記比較例および実施例1〜4の各供試検体を以下の条件A、B下で1カ月間放置し、その後、残存薬剤を定量した。
条件A:白紙上に設置し、上からアルミシートで覆った。
条件B:白紙上にそのまま設置した。
〈薬剤耐光試験の結果〉
流動パラフィン添加量とメトフルトリン残存率の関係を表4に示した。
ここで、メトフルトリン残存率(%)=(条件B/条件A)×100
【表3】

〈結果の考察〉
流動パラフィンを添加しない比較例1では残存率22.5%。ベンゾフェノン系誘導体を添加した比較例2ではメトフルトリン残存率5.3%。トリアゾール系誘導体を添加した比較例3ではメトフルトリン残存率28.0%、といずれも低いが、流動パラフィンを添加した実施例(1) →(5)では添加量が50mg、75mg、100mg、150mgと増加するにつれて、残存率も42.5%、57.0%、61.1%、70.1%と増加していく関係が認められた。
すなわち、流動パラフィンの添加量とメトフルトリン安定性の関係は図10のような線図となった。図10において、横軸は流動パラフィンの添加量(単位mg)、縦軸はメトフルトリンの残存率(%)である。0%はメトフルトリンのすべてが揮散してメトフルトリンは1mgたりとも残存していないこと、100%はメトフルトリンがそのまま残存していることを意味する。図10からは流動パラフィンの添加量が増えれば、メトフルトリンの残存率が高くなることが判り、安定性には正の相関性あることが認められる。
【0074】
〈パラフィン類とエステル類の耐光試験〉
パラフィンの添加によりメトフルトリンの光分解が抑制されることを見い出した本願発明についてさらに、その有効なパラフィンなどの範囲を設定するため以下のような耐光性試験を行った。
〈メトフルトリンについての光・紫外線に対する安定性試験〉
20mlの硝子瓶に下記パラフィン類、エステル類を100μl、メトフルトリンを200μlを量り取り、密封した後、サンルームにて1ヶ月放置した。所定時間後、内容物を量り取り、これに内部標準の入ったアセント溶液を加え分析用サンプルとした。
実施例1は、光・紫外線安定化剤として出光興産製IPソルベント1620(以下、「IP1620」と言う。)、実施例2は、光・紫外線安定化剤として出光興産製IPソルベント2028(以下、「IP2028」と言う。)、実施例3は、光・紫外線安定化剤として三光化学製流動パラフィン40−Sである(以下、「流パラ40S」と言う。)。
一方、比較例1はフタル酸ジプロピル、比較例2はマレイン酸ジプチル、比較例3はラウリン酸ヘキシルを用い、比較例4はメトフルトリンのみを用いた。
その結果、表4が得られた。
【表4】

〈プロフルトリンについての光・紫外線に対する安定性試験〉
上記メトフルトリンについての光・紫外線に対する安定性試験のメトフルトリンに代えてプロフルトリンを用いた。
実施例4は、光・紫外線安定化剤として「流パラ40S」を用い、比較例5はメトフルトリンのみを用いた。
その結果、表5が得られた。
【表5】

〈考察〉
表4から、実施例1では残存率が89.2%、実施例2及び3では77.6%となり、パラフィン類にはメトフルトリンの耐光性を向上させる効果が認められた。
これに対して、比較例1では73.1%、比較例2では72.1%、比較例3では60.8となり、吸光度がより高いと思われていたエステル系化合物に耐光性を向上させる効果が認められなかった。また、比較例4では69.2となり、同じく耐光性を向上させる効果が認められなかった。
また、表5からは、「流パラ40S」を用いたら83.3%となり、「流パラ40S」にプロフルトリンの耐光性を向上させる効果が認められた。
これに対して、比較例5では67.1となり、耐光性を向上させる効果が認められなかった。
したがってこのことから、本発明が見出したパラフィン類の耐光性を向上させる効果(すなわち、光・紫外線に対する安定作用)が容易に類推できるものではないことが示されたと言える。
【符号の説明】
【0075】
10 薬剤揮散装置
11 表容器(容器)
12 裏容器(容器)
13 薬剤保持体
14 保持部材(保持手段)
18a 第1の揮散性薬剤供給部(揮散性薬剤供給手段)
18b 第2の揮散性薬剤供給部(揮散性薬剤供給手段)
20a 第1の皿形状部(皿形状部)
20b 第2の皿形状部(皿形状部)
25a 第1の平板部(平板部)
25b 第2の平板部(平板部)
27 側板部
32 貫通孔
29 スリット
30 スタンド用片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮散性薬剤に無機粉を含有することを特徴とする漏れ防止用組成物。
【請求項2】
前記揮散性薬剤として、メトフルトリン 、プロフルトリン、エムペンスリン、ローズマリーオイルの1つ以上を含有することを特徴とする請求項1記載の漏れ防止用組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−36219(P2012−36219A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243691(P2011−243691)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【分割の表示】特願2008−271233(P2008−271233)の分割
【原出願日】平成20年10月21日(2008.10.21)
【出願人】(000100539)アース製薬株式会社 (191)
【Fターム(参考)】