説明

漏出防止具及び該漏出防止具を用いた積層管の製造方法

【課題】
外管と内管との間に水硬性硬化体層が形成された積層管を製造するに際し、外管と内管との間に充填された水硬性材料が漏れ出すのを防止することで、仕上がりの見栄えを向上させると共に、無駄な材料の発生を抑え、材料コストの削減を図ることを目的とする。
【解決手段】
軸方向に両端部が開口した外管の内部に少なくとも一端部が位置するように外管に沿って内管を配置し、前記外管と内管との間の空間を閉塞するべく該内管の一端部を外管の開口方向から覆うとともに外管の内壁に連結するよう閉塞部材を配置し、前記外管と内管との間に水硬性材料を充填して水硬性硬化体層を形成することによって積層管を製造するに際し、前記内管の一端部と閉塞部材との間に形成され内管の径方向内方に向かって開口した隙間部から水硬性材料が漏れ出すのを防止する漏出防止具であって、
前記隙間部を封止するように隙間部に沿って配置される封止手段と、該封止手段を内管の径方向内方から外方に向かって付勢する付勢手段とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外管と該外管の内部に配置された内管との間に水硬性硬化体層が形成された積層管の製造に用いる工具とその工具を用いた積層管の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、軸方向に両端部が開口した外管と該外管の内側に配置された内管との間に水硬性硬化体層が形成された積層管が知られている。該積層管の製造方法としては、内管の両端部のうち少なくとも一端部が外管の内部に位置するように外管に沿って内管を配置し、前記外管と内管との間の空間を閉塞するべく該内管の一端部を外管の開口方向から覆うとともに外管の内壁に連結するよう閉塞部材を配置し、そして、外管と内管との間に水硬性材料を充填して水硬性硬化体層を形成するという手順が採用されている。
【0003】
前記積層管を構成する素材としては、様々な素材を組み合わせて用いることができる。例えば、外管及び閉塞部材としては、金属製の素材等を用いることができ、また、内管としては、樹脂製の素材等を用いることができる。また、水硬性材料としては、モルタル、コンクリート等を用いることができる。
【0004】
しかしながら、前記積層管を製造する際には、前記内管の一端部と閉塞部材との間に、内管の径方向内方に向かって開口した隙間部が形成される場合がある。具体的には、内管と閉塞部材とが異素材で形成されている場合、例えば、内管が樹脂製素材で形成され、閉塞部材が金属製素材で形成されている場合には、前記内管の一端部と閉塞部材とを溶接等で密封することができないため、内管の径方向内方に向かって開口した隙間が生じてしまう。このため、外管と内管との間に充填された水硬性材料が隙間部から漏れ出てしまうことがある。このため、漏れ出た水硬性材料が内管の内壁等で硬化し、見栄えが悪くなるのに加え、無駄な材料が発生してしまうため、材料コストの増大の原因となっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、外管と内管との間に水硬性硬化体層が形成された積層管を製造するに際し、外管と内管との間に充填された水硬性材料が漏れ出すのを防止することで、仕上がりの見栄えを向上させると共に、無駄な材料の発生を抑え、材料コストの削減を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかる漏出防止具は、上記課題を解決すべく構成されたもので、軸方向に両端部が開口した外管の内部に少なくとも一端部が位置するように外管に沿って内管を配置し、前記外管と内管との間の空間を閉塞するべく該内管の一端部を外管の開口方向から覆うとともに外管の内壁に連結するよう閉塞部材を配置し、前記外管と内管との間に水硬性材料を充填して水硬性硬化体層を形成することによって積層管を製造するに際し、前記内管の一端部と閉塞部材との間に形成され内管の径方向内方に向かって開口した隙間部から水硬性材料が漏れ出すのを防止する漏出防止具であって、前記隙間部を封止するように隙間部に沿って配置される封止手段と、該封止手段を内管の径方向内方から外方に向かって付勢する付勢手段とを備えることを特徴とする。
【0007】
かかる構成の漏出防止具によれば、内管の一端と閉塞部材との間に形成されて内管の径方向内方に向かって開口した隙間部を封止するように構成された封止手段と、該封止手段を内管の径方向内方から外方に向かって付勢する付勢手段とを備えることで、外管と内管との間に充填された水硬性材料が隙間部を通じて漏れ出すことを防止することができる。
【0008】
具体的には、隙間部が内管の径方向内方に向かって開口するように形成されているため、外管と内管との間に充填された水硬性材料は、隙間部から内管の径方向内方に向かって漏れ出すこととなるが、封止部材が隙間部に沿って配置され、且つ、付勢手段が封止手段を内管の径方向内方から外方に向かって付勢するため、隙間部を効果的に封止することができ、水硬性材料が漏れ出すのを効果的に防止することができる。
【0009】
また、本発明にかかる漏出防止具は、前記封止手段が弾性部材を用いて形成されることが好ましい。
【0010】
かかる構成の漏出防止具によれば、封止手段が弾性部材を用いて構成されることで、隙間部を封止する際により効果的に隙間部を封止することができる。具体的には、封止手段が弾性部材を用いて構成されているため、付勢手段によって付勢された際に、封止手段が隙間部の開口部に沿って弾性変形し、隙間部の開口部に封止手段を密着させることができる。このため、隙間部から水硬性材料が漏れ出すのをより効果的に防止することができる。
【0011】
また、本発明にかかる漏出防止具は、前記付勢手段が剛性部材を用いて環状に形成されると共に、その一部が切り欠かれて形成された切欠き部を備えることが好ましい。
【0012】
かかる構成の漏出防止具によれば、付勢手段が剛性部材を用いて環状に形成され、その一部に切欠き部を備えることで、切欠き部の間隔が狭くなるように、即ち、切欠き部を形成する付勢手段の両端部が当接するように付勢手段に力を加えると、付勢手段には、その両端部が離間する方向に応力が生じる。言い換えれば、付勢手段には、その中心から外側に向かって広がるように応力が生じることになる。このため、隙間部を封止するように配置される封止手段を内管の径方向内方から外方に向かって付勢することができる。
【0013】
また、本発明にかかる漏出防止具は、前記付勢手段が封止手段を取り付けるための溝部をその外周に沿って備えることが好ましい。
【0014】
かかる構成の漏出防止具によれば、付勢手段が封止手段を取り付けるための溝部をその外周に沿って備えることで、封止手段を付勢手段に安定して取り付けることができ、付勢手段が封止手段を付勢した際に確実に付勢することができる。
【0015】
また、本発明にかかる漏出防止具は、前記封止手段が付勢手段に取り付けられた際に、環状となるように形成されると共にその一部に前記付勢手段の切欠き部と略等しい間隔の切り欠き部を備え、該封止手段の切欠き部と付勢手段の切欠き部とが付勢手段の中心から見て周方向の異なる位置に形成されることが好ましい。
【0016】
かかる構成の漏出防止具によれば、封止手段が付勢手段に取り付けられた際に、環状となるように形成されると共にその一部に前記付勢手段の切欠き部と略等しい間隔の切り欠き部を備えることで、付勢手段の切欠き部の間隔を狭くするように力を加えて付勢手段の両端部を当接させた際に、封止手段の切欠き部を形成する封止手段の両端部も当接することとなり、隙間部を隙間なく封止することができる。また、封止手段の切欠き部と付勢手段の切欠き部とが付勢手段の中心から見て周方向の異なる位置に形成されることで、封止手段の両端部が当接した当接部分と、付勢手段の両端部が当接した当接部分とが付勢手段の中心から見て周方向の異なる位置に形成されるため、それぞれの当接部分から水硬性材料が漏れ出すのを防止することができる。
【0017】
また、本発明にかかる積層管の製造方法は、軸方向に両端部が開口した外管の内部に少なくとも一端部が位置するように外管に沿って内管を配置し、前記外管と内管との間の空間を閉塞するべく該内管の一端部を外管の開口方向から覆うとともに外管の内壁に連結するよう閉塞部材を配置し、前記外管と内管との間に水硬性材料を充填して水硬性硬化体層を形成することによって積層管を製造する積層管の製造方法であって、前記内管の一端部と閉塞部材との間に形成されて内管の径方向内方に向かって開口した隙間部を封止するように内管の端部に沿って封止部材を配置し、該封止部材を内管の径方向内方から外方に向かって付勢手段を用いて付勢することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明にかかる漏出防止具によれば、外管と内管との間に水硬性硬化体層が形成された積層管を製造するに際し、外管と内管との間に充填された水硬性材料が漏れ出すのを防止することで、仕上がりの見栄えを向上させると共に、無駄な材料の発生を抑え、材料コストの削減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明にかかる実施形態について図1〜3を参照しながら説明する。
【0020】
本実施形態にかかる漏出防止具1は、複数の層から構成された積層管Aの製造に用いるものである。漏出防止具1についての説明に先立って、積層管Aについて説明する。積層管Aは、図1に示すように、軸方向に両端部が開口した外管A1と該外管A1の内側に配置された内管A2と、前記外管A1と内管A2との間の空間(以下、内外管空間A12と記す)を閉塞すべく外管A1の内壁に連結された閉塞部材A3と、外管と内管との間に形成された水硬性硬化体層A4とから構成されている。
【0021】
前記外管A1は、軸方向に両端部が開口した円筒形状に形成され、その内側に前記内管A2を配置可能に構成されている。また、外管A1は、その内側に内管A2が配置された際に、内管A2の軸が外管A1の軸と一致するように構成されている。具体的には、外管A1の内壁には、内管A2の外周面を支える支持部(図示せず)が備えられている。該支持部は、外管A1の内側に配置された内管A2の軸が外管A1の軸と一致するように内管A2を支えるように構成されている。また、外管A1は、鋼材等の金属製材料を用いて形成されている。
【0022】
前記内管A2は、軸方向に両端部が開口した円筒形状に形成され、外管A1の内側に配置可能に構成されている。具体的には、内管A2は、その外周径が外管A1の内周径よりも小さく形成されている。また、内管A2は、その開口する両端間の長さが外管A1の開口する両端間の長さよりも短くなるように形成され、その両端部が外管A1の内部に位置するように構成されている。また、内管A2は、その軸が外管A1の軸と一致するように外管A1の内部に配置されている。具体的には、外管A1の内壁に備えられた前記支持手段によって内管A2が支えられ、外管A1と内管A2との軸が一致するように構成されている。また、内管A2は、ポリ塩化ビニルやFRP等の樹脂製素材を用いて形成されている。
【0023】
前記閉塞部材A3は、外管A1と内管A2との間の空間を閉塞するように配置されている。本実施形態においては、一対の閉塞部材A3が外管A1と内管A2との間の空間を外管A1の開口方向から閉塞するように配置されている。また、閉塞部材A3は、内管A2の少なくとも一端部を外管A1の開口方向から覆うように形成されている。本実施形態においては、一対の閉塞部材A3が内管A2の両端部をそれぞれ外管A1の両端部側から覆うように配置されている。
【0024】
また、閉塞部材A3は、外管A1の内壁に連結されている。具体的には、閉塞部材A3は、外管A1の内壁に略垂直に連結され、外管A1の軸に略直行するように構成されている。また、閉塞部材A3は、円盤状に形成され、中心部が内管A2の内部と連通するように円形状に開口するように構成されている。具体的には、閉塞部材A3は、その外径が外管A1の内周径に略等しくなるように形成され、且つ、閉塞部材A3の中心部の開口の内径が内管A2の内径と略等しくなるように形成されている。
【0025】
また、閉塞部材A3は、外管A1の内壁に隙間なく連結されている。本実施形態においては、閉塞部材A3は、金属製素材を用いて形成され、前記外管A1の内壁に隙間なく溶接されて連結されている。なお、閉塞部材A3には内外管空間A12内に水硬性材料を供給するための供給口(図示せず)が形成されている。また、閉塞部材A3は、外管A1と内管A2との間に水硬性材料が供給された際に、外管A1と内管A2との間の空気を外部へ放出させる空気口(図示せず)を備えている。該空気口が形成される位置としては、特に限定されるものではないが、外管A1及び内管A2を地面に寝かした状態で水硬性材料を供給する場合には、前記空気口は、閉塞部材A3の中心に対して供給口と対称位置に形成されることが好ましい。
【0026】
前記水硬性硬化体層A4は、外管A1と内管A2との間に水硬性材料が充填されて硬化したものでる。具体的には、内外管空間A12を閉塞した閉塞部材A3の供給口から水硬性材料を供給し、内外管空間A12に水硬性材料が充填されて形成されたものである。水硬性材料としては、水と混練されたセメント、モルタル、コンクリート、石膏等を用いることができる。
【0027】
次に、本実施形態にかかる漏出防止具1の特徴的な部分について説明する。漏出防止具1は、図2及び図3に示すように、上記積層管Aを製造する際に、前記内管A2の一端部と閉塞部材A3との間に形成された隙間部Bから水硬性材料が漏れ出すのを防止するように構成されている。該隙間部Bは、内外管空間A12に連通するように形成され、内管A2の径方向内方に向かって開口するように形成されている。また、本実施形態においては、隙間部Bは、内管A2の両端部と一対の閉塞部材A3との間に一対形成されている。また、隙間部Bは、内管A2の一端縁(内管A2の開口端縁)に沿って円形状に形成されている。
【0028】
前記漏出防止具1は、隙間部Bを封止するように隙間部Bに沿って配置される封止手段11と、該封止手段11を内管A2の径方向内方から外方に向かって付勢する付勢手段12とを備えている。
【0029】
前記封止手段11は、弾性部材を用いて構成されている。具体的には、封止手段11は、内部が中空に形成された一本の中空ゴムを用いて構成されている。また、封止手段11は、その断面形状が円形となるように形成され、その外径が隙間部Bの開口幅よりも大きくなるように構成されている。
【0030】
前記付勢手段12は、環状に形成されると共にその一部が切り欠かれて形成された切欠き部12Rを備えている。即ち、付勢手段12は、一部に切欠き部12Rが形成された略C字状に形成されている。また、前記付勢手段12は、封止手段11を取り付けるための溝部12aをその外周に沿って備えている。このため、環状に形成された付勢手段12の外周に封止手段11を取り付けた際には、封止手段11は、付勢手段12の外周に沿って環状をなすこととなる。この状態において、封止手段11には、前記切欠き部12Rと略等しい間隔の切り欠き部11Rが形成されている。また、封止手段11と付勢手段12(より詳しくは、溝部12a)とは、封止手段11の両端部近傍以外の部分で接着剤等を用いて固定されている。
【0031】
また、付勢手段12は、剛性部材を用いて形成され、切欠き部12Rを形成する両端部を当接させるように力を加えることで、その両端部が離間する方向に応力が生じるように構成されている。このため、付勢手段12は、その外周に取り付けられた封止手段11を付勢手段12の径方向外方に向かって付勢するように構成されている。具体的には、付勢手段12は、金属製の板部材を用いて形成され、その両端部を当接させるように力を加えた際に、金属製素材の弾性力によってその両端部が離間する方向に応力が生じるように構成されている。金属製素材としては、鉄やアルミニウム等の弾性を有する金属を用いることができる。また、付勢手段12は、その両端部が当接した状態で、内管A2の内周径よりも僅かに小さい径となるように形成されている。また、付勢手段12の両端部を当接させることにより、付勢手段12の外周に取り付けられた封止手段11の両端部も当接するように構成されている。
【0032】
また、付勢手段12に封止手段11が取り付けられた状態で、封止手段11の切欠き部11Rと付勢手段12の切欠き部12Rとは、重なり合わないように形成されている。具体的には、切欠き部11Rと切欠き部12Rとは、環状の付勢手段12の中心から見て重なり合わないように周方向の異なる位置に形成されている。
【0033】
次に、漏出防止具1を用いて積層管Aを製造する手順について説明する。まず初めに、外管A1の内側に内管A2を配置する。次に、内外管空間A12を外管A1の両端部側から閉塞するように閉塞部材A3を配置して外管A1の内壁に連結する。この状態において、外管A1の内部に位置する内管A2の両端部は、外管A1の両端部側から閉塞部材A3によって覆われており、内管A2の両端部と一対の閉塞部材A3との間に隙間部Bが形成されている。
【0034】
一方、漏出防止具1の方では、付勢手段12の両端部が互いに接近するように力を加え、両端部を当接した状態とする。この状態において、付勢手段12の外周に取り付けられた封止手段11の両端部も当接した状態となっており、付勢手段12の外周径は、内管A2の内周径よりも僅かに小さくなっている。
【0035】
そして、閉塞部材A3の開口から漏出防止具1を隙間部Bに沿って配置し、付勢手段12に加えていた力(封止手段11の両端部を当接させていた力)を解放する。これにより、付勢手段12に生じていた応力によって、封止手段11が内管A2の径方向内方から外方に向かって付勢され、封止手段11が弾性変形して隙間部Bに一部が食い込み、隙間部Bが完全に封止される。そして、閉塞部材A3に備えられた供給口から内外管空間A12に水硬性材料を供給して充填し、所定時間放置することで、水硬性硬化体層A4が形成される。
【0036】
以上のように、本実施形態にかかる漏出防止具1によれば、外管A1と内管A2との間に水硬性硬化体層A4が形成された積層管Aを製造するに際し、外管A1と内管A2との間に充填された水硬性材料が漏れ出すのを防止することで、仕上がりの見栄えを向上させると共に、無駄な材料の発生を抑え、材料コストの削減を図ることができる。
【0037】
即ち、前記漏出防止具1は、隙間部Bを封止するように構成された封止手段11と、該封止手段11を内管A2の径方向内方から外方に向かって付勢する付勢手段12とを備えていることで、外管A1と内管A2との間に充填された水硬性材料が隙間部Bを通じて漏れ出すのを防止することができる。
【0038】
具体的には、隙間部Bが内管A2の径方向内方に向かって開口するように形成されているため、隙間部Bに沿って配置された封止手段11を付勢手段12が内管A2の径方向内方から外方に向かって付勢することで、隙間部Bを効果的に封止することができる。
【0039】
また、前記漏出防止具1は、封止手段11が弾性部材を用いて構成されていることで、封止手段11が付勢手段12によって付勢された際に、封止手段11が隙間部Bの開口部に沿って弾性変形し、隙間部Bの開口部に封止手段11を密着させることができる。このため、隙間部Bから水硬性材料が漏れ出すのをより効果的に防止することができる。
【0040】
また、漏出防止具1は、付勢手段12が剛性部材を用いて環状に形成され、その一部に切欠き部12Rを備えることで、切欠き部12Rの間隔が狭くなるように、即ち、切欠き部12Rを形成する付勢手段12の両端部が当接するように付勢手段12に力を加えると、付勢手段12には、その両端部が離間する方向に応力が生じる。言い換えれば、付勢手段12には、その中心から外側に向かって広がるように応力が生じることになる。このため、内管A2の端部に沿って配置される封止手段11を内管A2の径方向内方から外方に向かって付勢することができる。
【0041】
また、漏出防止具1によれば、付勢手段12が封止手段11を取り付けるための溝部12aを外周に備えることで、封止手段11を付勢手段12に安定して取り付けることができ、付勢手段12が封止手段11を付勢した際に確実に付勢することができる。
【0042】
また、漏出防止具1は、付勢手段12に取り付けられた封止手段11が環状となると共にその一部に前記付勢手段12の切欠き部12Rと略等しい間隔の切り欠き部11Rを備えることで、切欠き部12Rの間隔を狭くするように力を加えて付勢手段12の両端部を当接させた際に、封止手段11の両端部も当接することとなり、隙間部Bを隙間なく封止することができる。また、切欠き部11Rと切欠き部12Rとが付勢手段12の中心から見て周方向の異なる位置に形成されることで、封止手段11の両端部が当接した当接部分と、付勢手段12の両端部が当接した当接部分とが付勢手段12の中心から見て周方向の異なる位置に形成されるため、それぞれの当接部分から水硬性材料が漏れ出すのを防止することができる。
【0043】
なお、本発明に係る漏出防止具1は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0044】
例えば、上記実施形態では、内外管空間A12が外管A1の両端側から一対の閉塞部材A3で閉塞されているが、これに限定されるものではなく、内外管空間A12が外管A1の一端側からのみ閉塞されてもよい。この場合、内外管空間A12の閉塞された側(一端側)を底面にして外管A1及び内管A2を起立させ、内外管空間A12の開放した状態の他端側から水硬性材料を供給することで、積層管Aを製造してもよい。
【0045】
また、上記実施形態では、付勢手段12の外周径が内管A2の内周径よりも大きく形成されることで、付勢手段12の両端部を当接させた際に付勢手段12の両端部が離間する方向に応力が生じ、これにより、隙間部Bを封止する封止手段11が付勢されるように構成されているが、これに限定されるものではなく、図4に示すように、付勢手段12の両端部の間隔が可変可能に構成されてもよい。具体的には、ナット部材13aが螺合したボルト部材13bによって付勢手段12の両端部が連結されるようにしてもよい。これにより、封止手段11を付勢する際には、ナット部材13aを回転させて移動させ、付勢手段12の両端部を離間する方向に変位させることで、より強い力で封止手段11を内管A2の外周方向へ付勢することができる。
【0046】
また、上記実施形態においては、隙間部Bに封止手段11の一部が入り込むように構成されているが、これに限定されるものではなく、さらに封止手段11の一部が隙間部Bの開口部を覆うようにしてもよい。具体的には、図5に示すように、封止手段11が、隙間部Bを封止した状態で、隙間部Bに入り込む入込部11aと隙間部Bの開口を覆うように突出した突出部11bとを備えてもよい。
その先端が隙間部Bに入り込んだ状態で隙間部Bの開口部をさらに覆うように形成されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】(a)は、本実施形態にかかる積層管Aに漏出防止具1が取り付けられた状態の全体を示した斜視図、(b)は、(a)の積層管Aの一端部を拡大した斜視図。
【図2】図1(b)のA−A断面を示した図。
【図3】(a)は、本実施形態にかかる漏出防止具1の正面図、(b)は、(a)のB−B断面を示した図。
【図4】他の実施形態にかかる漏出防止具1が積層管Aに取り付けられた状態を示した図。
【図5】更に他の実施形態にかかる漏出防止具1が積層管Aに取り付けられた状態を示した図。
【符号の説明】
【0048】
1…漏出防止具、11…封止手段、12…付勢手段、12a…溝部、13a…ナット部材、13b…ボルト部材、A…積層管、A1…外管、A2…内管、A12…内外管空間、A3…閉塞部材、A4…水硬性硬化体層、B…隙間部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に両端部が開口した外管の内部に少なくとも一端部が位置するように外管に沿って内管を配置し、前記外管と内管との間の空間を閉塞するべく該内管の一端部を外管の開口方向から覆うとともに外管の内壁に連結するよう閉塞部材を配置し、前記外管と内管との間に水硬性材料を充填して水硬性硬化体層を形成することによって積層管を製造するに際し、前記内管の一端部と閉塞部材との間に形成され内管の径方向内方に向かって開口した隙間部から水硬性材料が漏れ出すのを防止する漏出防止具であって、
前記隙間部を封止するように隙間部に沿って配置される封止手段と、該封止手段を内管の径方向内方から外方に向かって付勢する付勢手段とを備えることを特徴とする漏出防止具。
【請求項2】
前記封止手段は、弾性部材を用いて形成されることを特徴とする請求項1に記載の漏出防止具。
【請求項3】
前記付勢手段は、剛性部材を用いて環状に形成されると共にその一部が切り欠かれて形成された切欠き部を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の漏出防止具。
【請求項4】
前記付勢手段は、前記封止手段を取り付けるための溝部をその外周に沿って備えることを特徴とする請求項1乃至3に記載の漏出防止具。
【請求項5】
前記封止手段は、付勢手段に取り付けられた際に、環状となるように形成されると共にその一部に前記付勢手段の切欠き部と略等しい間隔の切り欠き部を備え、該封止手段の切欠き部と付勢手段の切欠き部とが付勢手段の中心から見て周方向の異なる位置に形成されることを特徴とする請求項3又は4に記載の漏出防止具。
【請求項6】
軸方向に両端部が開口した外管の内部に少なくとも一端部が位置するように外管に沿って内管を配置し、前記外管と内管との間の空間を閉塞するべく該内管の一端部を外管の開口方向から覆うとともに外管の内壁に連結するよう閉塞部材を配置し、前記外管と内管との間に水硬性材料を充填して水硬性硬化体層を形成することによって積層管を製造する積層管の製造方法であって、
前記内管の一端部と閉塞部材との間に形成されて内管の径方向内方に向かって開口した隙間部を封止するように内管の端部に沿って封止部材を配置し、該封止部材を内管の径方向内方から外方に向かって付勢手段を用いて付勢することを特徴とする積層管の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−115868(P2010−115868A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−290845(P2008−290845)
【出願日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【出願人】(390000332)栗本コンクリート工業株式会社 (29)
【出願人】(394002981)株式会社岡本建設用品製作所 (10)
【Fターム(参考)】