説明

漏油対策シートおよび漏油対策方法

【課題】漏油発見時における初期対応の迅速化を図ること。
【解決手段】シート状に形成され、耐油性を有する基台部110と、基台部110の一面側に設けられ、水酸化ナトリウムを含む脂肪酸塩によって構成される凝固層120と、基台部110における凝固層120側に設けられ、凝固層120の周囲を囲む環形状をなす粘着層130と、を備えた漏油対策シート100を構成した。これにより、油がにじみ出した油入機器の表面に、にじみ出した油と凝固層120とが接触するようにして漏油対策シート100における粘着層130を貼り付けることによって、にじみ出した油を脂肪酸塩に含まれる水酸化ナトリウムの作用によって凝固させ、凝固した油を基台部110によって封止しておくことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、油入機器における漏油の発生に起因する漏油事故を防止する漏油対策シートおよび漏油対策方法に関する。
【背景技術】
【0002】
変圧器やバランサ本体(小型油入変圧器)などの油入機器においては、電圧のかかっているコイルや絶縁物を効率的に冷やすために使用される絶縁油などの油が、油入機器外箱(タンクケース)内に封入されている。このような油入機器は、屋外に設置されることが多く、雨や強風などにさらされているために油入機器外箱(タンクケース)に赤錆や黒錆などが発錆することがある。
【0003】
油入機器外箱における発錆は、経時にともなって進行し、油入機器外箱の経時劣化を促進する一因となっている。発錆によって経時劣化した油入機器外箱においては、油入機器外箱に孔があいたり亀裂が生じたりして、油入機器外箱内に封入された油が外部へ漏れる、いわゆる漏油が発生しやすくなる。
【0004】
油入機器には、絶縁性の高い油が封入されており、漏油によって油入機器における油量が減少した場合には、油入機器において絶縁破壊などの事故(以下「漏油事故」という)の発生が危惧される。また、油入機器に封入された油は、たとえばPCB(polychlorinated biphenyl:ポリ塩化ビフェニル)など、生体に対する毒性が高い物質を含んでいる場合があり、漏油が発生した場合は環境に対して悪影響をおよぼすことが懸念され、漏油対策は重要な課題とされている。
【0005】
油入機器においては、油入機器外箱からの漏油が深刻化する前に、油入機器外箱に油がにじみ出してくる、いわゆる油のにじみが発生する。このため、従来から定期的に油入機器を点検して、油入機器外箱の外観および、油のにじみ発生の有無を判断し、油のにじみが発生している油入機器を順次新しい油入機器に取り替える(吊り替える)ことによって漏油事故の発生防止につとめている。油入機器の吊り替えをおこなうかどうかは、油入機器の点検をおこなう作業者が所定の取替基準にしたがって判断している。
【0006】
油入機器の吊り替え作業に際しては、漏油事故の発生を防止するために、吸着マットなどの油を吸収する部材を用いて、油入機器から油を回収する漏油回収作業をおこなっている。漏油が発生した場合は早急な対策が必要であるため、吊り替えを専門におこなう業者などに委託せず、油入機器の設置元となる電力会社などの直営工事によって、漏油回収作業および油入機器の吊り替え作業をおこなっている。漏油回収作業に際しては、複数人の作業者が必要であり、該当する施設における停電をともなう。
【0007】
従来、漏油回収作業に際しては、油を吸着する性能を備えた各種の油吸着用のマットなどを用いて、当該マットに油を吸着させるようにしていた。このような油吸着用のマットには、たとえば不織布と合成樹脂フィルムとの積層体からなる油吸着マット(たとえば、下記特許文献1を参照)や、片面が透油性シート、他の面が非透油性シートにより構成された袋状物に、おが屑を充填、密閉してなる油吸着用マット(たとえば、下記特許文献2を参照)の他、オイルクロスやカットネオ(いずれも谷口商会株式会社の取り扱い)などの商品名で市販されている各種の油吸着用のマットがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平2−202979号公報
【特許文献2】特開平8−117594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述した従来の技術では、油入機器が屋外に設置されているため、風雨や紫外線による油入機器の経時劣化は避けられず、油入機器外箱における発錆を完全に防ぐことは困難であった。このため、現状では、発錆などの経時劣化に起因する漏油を防止することは難しい。
【0010】
漏油が発生した場合は、経時により劣化が進行するため、漏油回収作業をともなう吊り替え作業が必須となる。従来、漏油回収作業に際しては、油入機器の周囲のコンクリートを剥がし、吸着マットを用いて油入機器から油を回収する。このため、漏油回収作業をともなう従来の吊り替え作業は、吊り替え作業のみをおこなう場合と比較して煩雑であり作業者にかかる作業負担が大きいという問題があった。
【0011】
また、漏油回収作業をともなう従来の吊り替え作業は、漏油回収作業に際して、油入機器から油を回収するための吸着マットの消費をともなうため、吊り替え作業のみをおこなう場合と比較して、吊り替え作業が完了するまでにかかる時間やコストが増大してしまうという問題があった。
【0012】
また、吊り替え作業に際しては複数の作業者が必要となるため、漏油の発生を発見した場合にもその場で対策を講じることができず、漏油の発生を知りながら漏油を進行させてしまうという問題があった。
【0013】
また、漏油が発生した状況では、吊り替え作業を迅速におこなう必要があるが、作業が大がかりであることもあり、従来の方法では作業準備が整うまでに時間がかかる。このため、従来の方法では、漏油の発生を発見してから対策が完了するまでに時間がかかるという問題があった。
【0014】
また、このような緊急の吊り替え作業は、通常は専門の業者などに委託している業務を直営工事によりおこなうため、従来の方法では吊り替え作業における作業効率が低いという問題があった。
【0015】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、漏油発見時における初期対応の迅速化を図ることができる漏油対策シートおよび漏油対策方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、この発明にかかる漏油対策シートは、シート状に形成され、耐油性を有する基台部と、前記基台部の一面側に設けられ、水酸化ナトリウムを含む脂肪酸塩によって構成される凝固層と、前記基台部における前記凝固層側に設けられ、前記凝固層の周囲を囲む環形状をなす粘着層と、を備えたことを特徴とする。
【0017】
この発明によれば、油がにじみ出した油入機器の表面に、にじみ出した油と凝固層とが接触するようにして漏油対策シートにおける粘着層を貼り付けることによって、にじみ出した油を脂肪酸塩に含まれる水酸化ナトリウムの作用によって凝固させ、凝固した油を基台部によって封止しておくことができる。これによって、漏油を発見した場合には、漏油対策シートを貼り付ける作業のみで、漏油の進行を遅延させることができる。
【0018】
また、この発明にかかる漏油対策シートは、上記の発明において、前記基台部が、可撓性を有し、前記凝固層および前記粘着層は、前記基台部の形状に沿って変形可能に設けられていることを特徴とする。
【0019】
この発明によれば、油入機器の形状にあわせて漏油対策シートを変形させることができるので、漏油対策シートの貼り付け対象となる油入機器の形状に左右されることなく、油入機器において油がにじみ出した箇所を確実に覆うことができる。これによって、漏油の進行を確実に遅延させることができる。
【0020】
また、この発明にかかる漏油対策シートは、上記の発明において、前記基台部が、絶縁性を有することを特徴とする。
【0021】
この発明によれば、基台部が帯電することによる油入機器における絶縁破壊を防止することができる。これによって、漏油に起因する2次的な被害を防止することができる。
【0022】
また、この発明にかかる漏油対策シートは、上記の発明において、前記基台部が、防水性を有することを特徴とする。
【0023】
この発明によれば、漏油対策シートによる封止部分の内側に、基台部を介して空気中の水分や雨水が侵入して、油入機器における劣化および当該劣化によって漏油が進行することを防止することができる。これによって、漏油の進行を確実に遅延させることができる。
【0024】
また、この発明にかかる漏油対策シートは、上記の発明において、前記基台部の前記一面側に設けられ、前記凝固層および前記粘着層を、前記凝固層および前記粘着層から剥離可能にラミネートするラミネート部材を備えたことを特徴とする。
【0025】
この発明によれば、油がにじみ出している箇所に漏油対策シートを貼り付けるまでの間、凝固層および粘着層をラミネート部材によって保護しておくことができる。これによって、凝固層が損傷したり、粘着層にごみなどが付着して粘着性が低下したりすることによる漏油対策シートの性能低下を防止し、使用時における漏油対策シートの性能を確保することができる。
【0026】
また、この発明にかかる漏油対策シートは、上記の発明において、前記基台部よりも伸縮性の低い材料によって形成され、線状に配列された複数の孔によって構成される破断線を備えていることを特徴とする。
【0027】
この発明によれば、ラミネート部材が貼り付けられた状態で破断線の方向に交差する方向に沿って基台部を伸ばすことにより、ラミネート部材を破断させ、凝固層および粘着層を露出させることができる。これによって、油がにじみ出した油入機器の表面に、漏油対策シートを容易に貼り付けることができる。
【0028】
また、この発明にかかる漏油対策シートは、上記の発明において、前記凝固層が、前記基台部の一面側において、所定のパターンをなすように設けられていることを特徴とする。
【0029】
この発明によれば、油がにじみ出している箇所の形状として想定される形状にあわせた複数種類の漏油対策シートを提供することができる。これによって、貼り付け対象となる箇所の形状にあわせた漏油対策シートを選択して貼り付けることができるので、油がにじみ出した箇所を確実に覆うことができる。これによって、漏油の進行を確実に遅延させることができる。
【0030】
また、この発明にかかる漏油対策方法は、シート状に形成され、耐油性を有する基台部と、前記基台部の一面側に設けられ、脂肪酸塩によって構成される凝固層と、前記基台部における前記凝固層側に設けられ、前記凝固層の周囲を囲む環形状をなす粘着層と、を備えた漏油対策シートを用いて、前記漏油対策シートを、油がにじみ出した油入機器の表面に、にじみ出した油と凝固層とが接触し、かつ、油がにじみ出している箇所を覆うように貼り付けることにより、前記油がにじみ出している箇所を封止することを特徴とする。
【0031】
この発明によれば、油がにじみ出した油入機器の表面に、にじみ出した油と凝固層とが接触するようにして漏油対策シートにおける粘着層を貼り付けることによって、にじみ出した油を脂肪酸塩によって凝固させ、凝固した油を封止部材によって封止しておくことができる。これによって、漏油の進行を遅延させることができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明にかかる漏油対策シートおよび漏油対策方法によれば、漏油対策シートを貼り付ける作業のみで漏油の進行を遅延させることができるので、漏油を発見した場合には、直ちに漏油の進行を遅延させるための初期対応をとることができ、漏油発見時における初期対応の迅速化を図ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1−1】この発明にかかる実施の形態の漏油対策シートを示す説明図(その1)である。
【図1−2】この発明にかかる実施の形態の漏油対策シートを示す説明図(その2)である。
【図2】油入変圧器の一例を示す説明図である。
【図3−1】この発明にかかる実施の形態の漏油対策方法にしたがった漏油対策作業手順を示す説明図(その1)である。
【図3−2】の発明にかかる実施の形態の漏油対策方法にしたがった漏油対策作業手順を示す説明図(その2)である。
【図3−3】の発明にかかる実施の形態の漏油対策方法にしたがった漏油対策作業手順を示す説明図(その3)である。
【図3−4】の発明にかかる実施の形態の漏油対策方法にしたがった漏油対策作業手順を示す説明図(その4)である。
【図4】この発明にかかる実施の形態の漏油対策シートの変形例を示す説明図(その1)である。
【図5】この発明にかかる実施の形態の漏油対策シートの変形例を示す説明図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる漏油対策シートおよび漏油対策方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0035】
(漏油対策シートの構成)
まず、この発明にかかる実施の形態の漏油対策シートについて説明する。図1−1および図1−2は、この発明にかかる実施の形態の漏油対策シートを示す説明図である。図1−1においては、この発明にかかる実施の形態の漏油対策シートを斜めから見た状態を示している。図1−2においては、この発明にかかる実施の形態の漏油対策シートを分解して斜め方向から見た状態を示している。
【0036】
図1−1および図1−2において、この発明にかかる実施の形態の漏油対策シート100は、基台部110と凝固層120と粘着層130とラミネート部材140とを備えている。基台部110は、耐油性を有する材料を、シート状に形成することによって構成されている。
【0037】
基台部110は、油入変圧器(図2における符号200を参照)のタンクケース内に封入された油(絶縁油)に対して、当該油に基台部110を長時間接触させた場合にも、性状の変化を起こさず、変質や変形を生じない材料を用いて形成されている。基台部110は、基台部110の一面側に油入変圧器のタンクケース内に封入された油が接触した場合にも、当該油が基台部110の裏面側にしみ出さない材料を用いて形成されている。
【0038】
また、基台部110は、可撓性を有する材料を用いて形成されている。基台部110は、漏油対策シート100を湾曲させたり折り曲げたりした場合にも、破れたり裂けたり亀裂が入ったりしない程度の可撓性を有する材料を用いて形成されている。基台部110は、たとえば漏油対策シート100の貼り付け対象となる油入変圧器におけるタンクケースや放熱フィンなどに沿って変形することが可能な可撓性を有する材料を用いて形成されていることが好ましい。
【0039】
また、基台部110は、絶縁性を有する材料を用いて形成されている。さらに、基台部110は、防水性、紫外線に対する耐性(耐候性)や耐熱性など、屋外に曝露された場合に要求される各種耐性に優れた材料を用いて形成されていることが好ましい。上記の各耐性を備えた材料については、たとえば電線の補修に用いる電線補修用カバーなどの、公知の各種の材料を適宜用いて形成することができる。
【0040】
基台部110は、具体的には、たとえばアクリル樹脂やポリエチレン樹脂などを、シート状に形成することによって実現することができる。また、基台部110は、具体的には、たとえばニトリルゴム、フッ化ビニリデン系ゴム、シリコーンゴムなどの合成ゴムを用いて形成することができる。
【0041】
凝固層120は、基台部110の一面側に設けられている。凝固層120は、強アルカリ性物質を含む脂肪酸塩を主成分として構成されている。具体的には、凝固層120は、強アルカリ性物質として水酸化ナトリウムを含む脂肪酸塩を主成分として構成されている。脂肪酸塩は、脂肪酸と強アルカリ性物質との塩であり、石鹸の化学物質名称として知られている。脂肪酸は、親油性の炭化水素に親水性のカルボキシル基が結合した構造をしている。
【0042】
凝固層120は、石桍などに多く含まれる高級脂肪酸塩を多く含んでいることが好ましい。高級脂肪酸における「高級」は、石鹸を構成する分子における炭素の数が6個以上であることを示す化学的な名称に由来する。脂肪酸塩は、界面活性剤であり、水になじみやすい部分(親水基)と、油になじみやすい部分(親油基・疎水基)とを、分子内に有し、両親媒性を示す。
【0043】
脂肪酸塩は、油と水と強アルカリ性物質とを混合することにより、たとえば石鹸に代表されるような界面活性剤として製造することができる。石鹸の製造に用いる強アルカリ性物質としては、水酸化ナトリウムあるいは水酸化カリウムが用いられている。水酸化ナトリウムを用いて製造した石鹸は固形石鹸となり、水酸化カリウムを用いて製造した石鹸は液体石鹸となる。
【0044】
凝固層120を形成する油としては、たとえば工業的に製造された石鹸のように、動植物の油脂を用いることができる。製品としての石鹸は、炭酸塩や香料などが加えられていることも多いが、この実施の形態の漏油対策シート100の凝固層120は、たとえば純石鹸のように、添加物を含まない脂肪酸ナトリウムのみで構成されていることが好ましい。
【0045】
粘着層130は、基台部110の一面側であって、基台部110における凝固層120と同じ面側に設けられている。粘着層130は、たとえば凝固層120の周囲を囲む環形状をなすように設けられている。これにより、粘着層130の周囲において切れ間のない状態で、基台部110を油入変圧器に貼り付けることができる。
【0046】
また、粘着層130は、基台部110の周縁に沿って、環形状をなすように設けられていることが好ましい。これにより、漏油対策シート100を油入変圧器に貼り付けた場合に、基台部110の端がめくれて、漏油対策シート100が油入変圧器から剥がれやすくなることを防止できる。
【0047】
また、粘着層130は、基台部110の一面側において、一部が基台部110と凝固層120との間に挟まれるようにして設けられていてもよい。この場合、たとえば粘着層130を、凝固層120よりも広い面積に(基台部110全面を覆うように)設ける。あるいは、この場合、たとえば基台部110の一面側において、凝固層120に対して位置をずらした状態で粘着層130を設ける。
【0048】
粘着層130は、たとえば油入変圧器など、漏油対策シート100の貼り付け対象とされる材質に対して、漏油対策シート100を貼り付けて固定することが可能な程度の粘着性を備えた材料を用いて形成されている。また、粘着層130は、防水性、耐熱性、紫外線耐性など、各種の耐候性に優れた材料を用いて形成されていることが好ましい。具体的には、粘着層130は、たとえばアクリル系粘着剤を用いて形成することができる。
【0049】
ラミネート部材140は、粘着層130から剥離可能な状態で、凝固層120および粘着層130をラミネートする。ラミネート部材140は、粘着層130にくっつくことが可能であって、かつ粘着層130から剥離することが可能な材料を、フィルム状に成型することによって構成されている。ラミネート部材140を設けることにより、凝固層120や粘着層130の損傷を防止することができる。
【0050】
ラミネート部材140は、耐油性および防水性を有している。これにより、油や水がラミネート部材140を介して凝固層120や粘着層130に接することを防止し、漏油対策シート100の使用前に凝固層120および粘着層130の性能が低下することを防止できる。
【0051】
ラミネート部材140は、具体的には、たとえばPET材料を用いてシート状に形成された基材に、シリコーン樹脂を塗布することによって構成することができる。基材は、PET材料を用いて形成されたものに限らず、たとえば半晒、上質紙、グラシン紙などを用いて形成されていてもよい。
【0052】
基材に対するシリコーン樹脂の浸透性が高い場合は、たとえば基材の一面側に目止め層を設け、この目止め層に積層してシリコーン樹脂層を設けてもよい。目止め層は、具体的には、たとえば基材における少なくとも一面側に、ポリエチレン、クレーコートやPVA(ポリビニルアルコール)を用いた層を形成することによって実現できる。
【0053】
ラミネート部材140(あるいはラミネート部材140の基材)は、基台部110の伸縮性よりも伸縮性が低い材料によって形成されている。ラミネート部材140において、中央部分には、破線をなすように設けられた複数の孔によって形成されるミシン目141が設けられている。ミシン目141は、たとえば保護フィルムを横断あるいは縦断する線形をなすように設けられている。
【0054】
ミシン目141がなす線形は、たとえば直線とすることができる。また、ミシン目141がなす線形は、たとえばラミネート部材140を横断あるいは縦断する波線などの曲線としてもよい。ミシン目141は、ラミネート部材140の対角をつなぐ直線あるいは曲線としてもよい。
【0055】
つぎに、この発明にかかる実施の形態の漏油対策方法にしたがった、漏油対策シート100の使用方法について説明する。この発明にかかる実施の形態の漏油対策方法においては、上記の漏油対策シート100を用いる。この発明にかかる実施の形態の漏油対策方法は、たとえば油入変圧器などの油入機器において、油がにじみ出している場合の対策として有用な効果を発揮する。
【0056】
図2は、油入変圧器の一例を示す説明図である。図2に示した油入機器は、この発明にかかる実施の形態の漏油対策シート100を用いた漏油対策方法による漏油対策の適用対象となる。図2において、油入変圧器は、たとえば電柱などの高所に設置して使用される柱上変圧器とすることができる。柱上変圧器は、架空配電線路において、電柱に金属製の固定具(装柱金物)を介して取り付けられている。
【0057】
漏油対策の対象となる油入変圧器は、柱上変圧器に限るものではない。漏油対策の対象となる油入変圧器は、たとえば自動電圧調整器(SVR:Step Voltage Regulator)であってもよい。自動電圧調整器は、柱上変圧器のタップで対応できない電圧降下に対して、高圧配電線の電圧を補償するために用いられ、高圧配電線路の途中に設置し、線路の電圧降下を補正する。また、補修作業の対象となる油入変圧器は、地上に設置して使用される地上設置変圧器であってもよい。
【0058】
油入変圧器200は、油入機器を実現し、油入変圧器本体201と外装品とからなる。油入変圧器本体201は、油入機器外箱としてのタンクケース203を備えている。タンクケース203は、円筒形、小判形、角形など、公知の各種の形状のものを用いることができる。
【0059】
タンクケース203は、鋼板を用いて製造されている。具体的には、タンクケース203は、たとえば冷間圧延鋼板(SPCC)や熱間圧延軟鋼板(SPHC)などを用いて製造されている。冷間圧延鋼板(SPCC)は加工性に優れており、表面が滑らかになるなど美観に優れたタンクケース203を製造することができる。熱間圧延軟鋼板(SPHC)を用いることにより、冷間圧延鋼板(SPCC)を用いた場合と比較してタンクケース203を安価に製造することができる。
【0060】
タンクケース203の上面には、高圧ブッシング204、低圧ブッシング205、コンサベータ206などが設けられている。高圧ブッシング204は、油入変圧器200の一次側端子に接続される。高圧ブッシング204には、高圧ブッシング204の端子部を保護するために絶縁する高圧絶縁キャップが設けられていてもよい。低圧ブッシング205は、変圧器の二次側端子に接続される。
【0061】
高圧ブッシング204および低圧ブッシング205は、タンクケース203の上面を貫通するように設けられた孔に嵌め込まれるようにして設けられている。高圧ブッシング204および低圧ブッシング205は、タンクケース203の上面に設けられた孔に嵌め込まれ、電線をタンクケース203内に通すための通路を備え、電線とタンクケース203とを絶縁する。また、高圧ブッシング204および低圧ブッシング205は、タンクケース203の上面に設けられた孔を密閉するシール機能を備え、電線を支持固定する。
【0062】
コンサベータ206は、タンクケース203内に封入された油(絶縁油)の温度による変化量を吸収する装置であり、タンクケース203内に封入された油と空気との接触を断ち、油入変圧器200の絶縁油の劣化を防止する。コンサベータ206においては、たとえば油入変圧器200の容量が大きい場合、柔軟で耐油性があり、透気度の低いゴム製の袋や隔膜が取り付けられていてもよい。
【0063】
コンサベータ206は、継電器207などを介して、タンクケース203に接続されている。継電器207は、コンサベータ206の状態に応じて、制御用の電気信号を出力する装置であり、たとえば電流や電圧の急激な変化からコンサベータ206における電気回路を保護するために設けられている。
【0064】
タンクケース203の側方には、ラジエータ208が設けられている。ラジエータ208は、タンクケース203内に設けられた高圧巻線や低圧巻線などを冷却するために設けられており、たとえば冷却用の放熱板ひだ(図3−1における符号301を参照)を備えた構成とすることができる。ラジエータ208において、冷却用の放熱板ひだは、たとえば山形に成形した鋼鈑をタンクケース203に溶接した構成、リブ(フィン)式ラジエータとすることができる。
【0065】
また、ラジエータ208は、たとえばパネル式ラジエータを用いることができる。パネル式ラジエータは、たとえば油ダクトを形どった鋼鈑を、内部に油が通るように二枚重ねてシーム溶接した構成とすることができる。また、パネル式ラジエータは、断面が櫛状になるように成形し上下の端面をスクイズ加工溶接した鋼鈑を、タンクケース203の側面部分に溶接して取り付けた構成であってもよい。
【0066】
タンクケース203内には、鉄心209および巻線(高圧巻線および低圧巻線)210が設けられている。鉄心209と巻線210との位置関係は、たとえば鉄心209の周りに低圧巻線を配置し、低圧巻線の周りに高圧巻線を配置した内鉄形とすることができる。また鉄心209と巻線210の位置関係は、巻線210の周りに鉄心209を配置した外鉄形であってもよい。
【0067】
タンクケース203の内側に封入された油は、粘性が低く、熱に対する安定性や電気絶縁性が高く、耐薬品性に優れていることが好ましい。タンクケース203の内側に封入された油は、油入変圧器200において一般的に用いられる油を用いることができ、具体的には、たとえばシリコーン油や鉱油などを用いることができる。
【0068】
(漏油対策作業手順)
つぎに、この発明にかかる実施の形態の漏油対策方法にしたがった漏油対策作業手順について説明する。図3−1、図3−2、図3−3および図3−4は、この発明にかかる実施の形態の漏油対策方法にしたがった漏油対策作業手順を示す説明図である。
【0069】
図3−1、図3−2、図3−3および図3−4において、この発明にかかる実施の形態の漏油対策方法にしたがった漏油対策作業に際しては、まず、タンクケース203が劣化し、当該タンクケース203の表面に油がにじみ出している箇所310を発見する(図3−1を参照)。油がにじみ出している箇所310は、たとえば定期的におこなう油入変圧器200の点検作業に際して発見することができる。図3−1においては、放熱板ひだ301において油がにじみ出している状態を示している。
【0070】
油がにじみ出している箇所310を発見した場合は、油がにじみ出している箇所310の周囲を清掃する。清掃は、たとえばウエス321などを用いて、油がにじみ出している箇所310の周囲のごみや汚れを拭き取ることによっておこなう(図3−2を参照)。ごみや汚れを拭き取る範囲は、漏油対策シート100の大きさよりも広い範囲とする。清掃に際しては、漏油対策シート100における粘着層130を、油入変圧器200に貼り付けることができる程度に、ごみや汚れを取り除く。
【0071】
つぎに、漏油対策シート100におけるラミネート部材140を剥がし、タンクケース203に貼り付ける。ラミネート部材140は、漏油対策シート100の両端を把持した状態で基台部110を伸ばすように引っ張ることによって、剥がすことができる。
【0072】
ラミネート部材140は、基台部110よりも伸縮性が小さい材料によって形成されているため、漏油対策シート100の両端を把持した状態で基台部110を伸ばすように引っ張ることによって、ミシン目141の位置でラミネート部材140が破断する(図3−3を参照)。このようにラミネート部材140を中央部で破断させることにより、凝固層120および粘着層130を露出させることができる。
【0073】
油入変圧器200に漏油対策シート100を貼り付ける際には、漏油対策シート100の両端を把持した状態で、漏油対策シート100における凝固層120側の面を、タンクケース203における貼り付け対象となる位置に対向させる。この状態で、ミシン目141の位置でラミネート部材140を破断させて凝固層120および粘着層130を露出させ、露出した凝固層120がにじみ出した油に接触するようにして、漏油対策シート100を油入変圧器200に押しつける。
【0074】
漏油対策シート100においては、基台部110が、折り曲げあるいは湾曲することが可能な可撓性を有する材料によって形成されているため、漏油対策シート100を油がにじみ出している箇所310の形状に沿って変形させることができる(図3−4を参照)。これによって、油がにじみ出している箇所310を確実に覆うことができる。
【0075】
この実施の形態の漏油対策シート100は、貼り付ける直前まで凝固層120および粘着層130を保護した状態を維持することができるので、貼り付ける際に凝固層120および粘着層130が損傷することを防止できる。この実施の形態の漏油対策シート100においては、粘着層130が設けられているため、漏油対策シート100をタンクケース203に固定するためのテーピング部材を別途準備することなく、漏油対策シート100をタンクケース203に容易に貼り付けることができる。
【0076】
また、この実施の形態の漏油対策シート100においては、凝固層120の周囲を囲むようにして環状の粘着層130が設けられているため、油がにじみ出している箇所310を、タンクケース203の表面と基台部110とによって形成される空間内に確実に密封した状態とすることができる。これによって、漏油対策シート100をタンクケース203に貼り付けたあとに、空気中の湿気などが、タンクケース203の表面と基台部110とによって形成される空間内に入り込んでタンクケース203の劣化が進行することを抑制できる。
【0077】
また、この実施の形態の漏油対策シート100は、上記のように容易に貼り付けることができるので、電柱の上など足場が限られている場合にも、簡単かつ確実に貼り付けることができる。大きさや、凝固層120の厚さなどが異なる複数種類の漏油対策シート100をあらかじめ準備しておくことにより、油にじみ箇所の大きさや、にじみ出している油の量などに応じて、適した種類の漏油対策シート100を選択して貼り付けるようにしてもよい。
【0078】
凝固層120の主成分をなす脂肪酸塩は、界面活性剤であり、水になじみやすい部分(親水基)と、油になじみやすい部分(親油基・疎水基)と分子内に有する両親媒性の物質であるため、油がにじみ出している箇所310に漏油対策シート100を貼り付けると、凝固層120をなす脂肪酸塩はにじみ出た油に溶解する。脂肪酸塩を油に溶解し、油と脂肪酸塩とを混ぜ合わせることによって、にじみ出た油を水酸化ナトリウムの作用によって、ゲル状(半固体状)固形化させることができる。
【0079】
上記のような漏油対策作業をおこなうことにより、油入変圧器200の表面ににじみ出した油を、凝固層120の主成分をなす脂肪酸塩と混ぜ合わせることによって凝固させ、凝固させた状態の油を基台部110および粘着層130によって封止しておくことができる。これによって、油入変圧器200の表面ににじみ出した油が、油入変圧器200の表面を伝って広がっていくことを防止し、にじみ出した位置にとどめておくことができる。このようにして、油入変圧器200の表面ににじみ出した油を、にじみ出した位置にとどめておくことにより、漏油の進行を遅延させることができる。
【0080】
にじみ出した油の量が経時にともなって増加した場合、にじみ出した油の量に対して、凝固層120における脂肪酸塩に含まれる水酸化ナトリウムの量が相対的に減少する。そして、にじみ出した油の量が経時にともなって増加し、にじみ出した油の量に対する水酸化ナトリウムの相対的な量が所定量以下になった場合、油がにじみ出している箇所310において一旦凝固した油の粘度がふたたび低下する。
【0081】
この実施の形態においては、油がにじみ出している箇所310に漏油対策シート100を貼り付けることにより、にじみ出した油の量が経時にともなって増加することによりにじみ出た油の粘度が低下して流動性が高くなった場合にも、にじみ出た油が油入変圧器200の表面を伝って広がったり、したたり落ちたりすることを防止することができる。これによって、漏油の進行を遅延させることができる。
【0082】
このように、深刻な漏油までは至らず、油入変圧器200の表面に油がにじみ出ている状態であれば、この実施の形態の漏油対策作業をおこなうことにより、漏油の進行を遅延させる応急処置をおこなうことができる。そして、このような応急処置をおこなうことによって、漏油状況が深刻化するまでの猶予時間を確保することができる。
【0083】
漏油状況が深刻化するまでの猶予時間を確保することによって、漏油状況が深刻化する前に、油入変圧器200の吊り替え作業の体勢を整えることができる。作業体勢が整った状態で油入変圧器200の吊り替え作業をおこなうことにより、油入変圧器200の吊り替え作業を計画的かつ効率よくおこなうことができる。これにより、油入変圧器200の吊り替え作業に際しての作業性の向上を図ることができる。
【0084】
図4および図5は、この発明にかかる実施の形態の漏油対策シート100の変形例を示す説明図である。上述した実施の形態においては、基台部110の形状にあわせた略長方形をなす凝固層120を設けた漏油対策シート100について説明したが、凝固層120の形状はこれに限るものではない。たとえば図4に示すように、基台部110の一面側において、所定のパターンをなすように設けられた凝固層120を備えた漏油対策シート400としてもよい。
【0085】
具体的には、漏油対策シート400においては、たとえば基台部110の大きさよりも小さい凝固層120を複数並べてもよい。また、具体的には、たとえば基台部110の大きさよりも十分に小さい円(ドット)形状の凝固層120を、複数設けてもよい。また、具体的には、たとえば基台部110の中央部分ほど厚さが厚くなるような略角錐形状とするなど、基台部110における場所に応じて厚さを異ならせるようにしてもよい。
【0086】
このような漏油対策シート400によれば、油がにじみ出している箇所310の形状として想定される形状にあわせた複数種類の漏油対策シート400を提供することができる。これによって、貼り付け対象となる箇所の形状にあわせた漏油対策シート400を選択することができるので、にじみ出た油を確実に封止し、漏油の進行を確実に防止することができる。
【0087】
また、上述した実施の形態においては、シート状をなす基台部110を備えた漏油対策シート400について説明したが、基台部110の形状はこれに限るものではない。具体的には、たとえば図5に示すように、長尺状の基台部110aを備えた漏油対策シート500としてもよい。このような漏油対策シート500とすることにより、油にじみ箇所の大きさやにじみ出している油の量などに応じて、基台部110aを必要な長さにカットして使用することができる。
【0088】
また、このような形状とする場合、基台部110の裏面側(凝固層120が設けられている側とは反対側の面)にシリコーン樹脂など、剥離機能を備えた層を設け、この層によってラミネート部材140としての機能を実現するようにしてもよい。これにより、漏油対策シート500の運搬および保管に際しては、一面側に凝固層120および粘着層130が設けられた基台部110aを、ロール状に巻きあげた状態とすることができる。これによって、漏油対策シート500を貼り付けたあとにラミネート部材140がごみとして残ることがないので、漏油対策作業をより効率よくおこなうことができる。
【0089】
以上説明したように、この実施の形態の漏油対策シート100(400、500)は、シート状に形成され、耐油性を有する基台部110(110a)と、基台部110の一面側に設けられ、水酸化ナトリウムを含む脂肪酸塩によって構成される凝固層120と、基台部110における凝固層120側に設けられ、凝固層120の周囲を囲む環形状をなす粘着層130と、を備えたことを特徴としている。
【0090】
これにより、この実施の形態の漏油対策シート100(400、500)によれば、油がにじみ出した油入機器の表面に、にじみ出した油と凝固層120とが接触するようにして漏油対策シート100(400、500)における粘着層130を貼り付けることによって、にじみ出した油を脂肪酸塩に含まれる水酸化ナトリウムの作用によって凝固させ、凝固した油を基台部110(110a)によって封止しておくことができる。
【0091】
これによって、漏油を発見した場合には、漏油対策シート100(400、500)を貼り付ける作業のみで、漏油の進行を遅延させることができ、直ちに漏油の進行を遅延させるための初期対応をとることができる。このように、この実施の形態の漏油対策シート100(400、500)によれば、漏油発見時における初期対応の迅速化を図ることができる。
【0092】
また、この実施の形態の漏油対策シート100(400、500)は、基台部110が、可撓性を有し、凝固層120および粘着層130は、基台部110の形状に沿って変形可能に設けられていることを特徴としている。これにより、この実施の形態の漏油対策シート100(400、500)によれば、油入機器の形状にあわせて漏油対策シート100を変形させることができ、漏油対策シート100(400、500)の貼り付け対象となる油入機器の形状に左右されることなく、油入機器において油がにじみ出した箇所310を確実に覆うことができる。これによって、漏油の進行を確実に遅延させることができる。
【0093】
また、この実施の形態の漏油対策シート100(400、500)は、基台部110(110a)が、絶縁性を有することを特徴としている。これにより、この実施の形態の漏油対策シート100(400、500)によれば、基台部110が帯電することによる油入機器における絶縁破壊を防止することができるので、漏油に起因する2次的な被害を防止することができる。
【0094】
また、この実施の形態の漏油対策シート100(400、500)は、基台部110(110a)が、防水性を有することを特徴としている。これにより、この実施の形態の漏油対策シート100によれば、漏油対策シート100(400、500)による封止部分の内側に、基台部110(110a)を介して空気中の水分や雨水が侵入して、油入機器における劣化および当該劣化によって漏油が進行することを防止することができる。これによって、漏油の進行を確実に遅延させることができる。
【0095】
また、この実施の形態の漏油対策シート100(400)は、基台部110の一面側に設けられ、凝固層120および粘着層130を、凝固層120および粘着層130から剥離可能にラミネートするラミネート部材140を備えたことを特徴としている。これにより、この実施の形態の漏油対策シート100(400)によれば、油がにじみ出している箇所310に漏油対策シート100(400)を貼り付けるまでの間、凝固層120および粘着層130をラミネート部材140によって保護しておくことができる。
【0096】
そして、これによって、凝固層120が損傷したり、粘着層130にごみなどが付着して粘着性が低下したりすることによる漏油対策シート100の性能低下を防止し、使用時における漏油対策シート100(400)の性能を確保することができる。
【0097】
また、この実施の形態の漏油対策シート100(400)は、基台部110よりも伸縮性の低い材料によって形成され、線状に配列された複数の孔によって構成される破断線を備えていることを特徴としている。この実施の形態の漏油対策シート100によれば、ラミネート部材140が貼り付けられた状態で破断線の方向に交差する方向に沿って基台部110を伸ばすことにより、ラミネート部材140を破断させ、凝固層120および粘着層130を露出させることができる。これによって、油がにじみ出した油入機器の表面に、漏油対策シート100を容易に貼り付けることができる。
【0098】
また、この発明にかかる漏油対策方法は、シート状に形成され、耐油性を有する基台部110と、基台部110の一面側に設けられ、脂肪酸塩によって構成される凝固層120と、基台部110における凝固層120側に設けられ、凝固層120の周囲を囲む環形状をなす粘着層130と、を備えた漏油対策シート100(400、500)を用いて、漏油対策シート100(400、500)を、油がにじみ出した油入機器の表面に、にじみ出した油と凝固層120とが接触し、かつ、油がにじみ出している箇所310を覆うように貼り付けることにより、油がにじみ出している箇所310を封止することを特徴とする。
【0099】
この発明によれば、油がにじみ出した油入機器の表面に、にじみ出した油と凝固層120とが接触するようにして漏油対策シート100(400、500)における粘着層130を貼り付けることによって、にじみ出した油を脂肪酸塩によって凝固させ、凝固した油を封止部材によって封止しておくことができる。これによって、漏油の進行を遅延させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0100】
以上のように、この発明にかかる漏油対策シートおよび漏油対策方法は、油入機器における漏油の発生に起因する漏油事故を防止する漏油対策シートおよび漏油対策方法に有用であり、特に、油のにじみ出しが発生した油入機器における漏油事故を防止する漏油対策シートおよび漏油対策方法に適している。
【符号の説明】
【0101】
100 漏油対策シート
110 基台部
120 凝固層
130 粘着層
140 ラミネート部材
400 漏油対策シート
500 漏油対策シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状に形成され、耐油性を有する基台部と、
前記基台部の一面側に設けられ、水酸化ナトリウムを含む脂肪酸塩によって構成される凝固層と、
前記基台部における前記凝固層側に設けられ、前記凝固層の周囲を囲む環形状をなす粘着層と、
を備えたことを特徴とする漏油対策シート。
【請求項2】
前記基台部は、可撓性を有し、
前記凝固層および前記粘着層は、前記基台部の形状に沿って変形可能に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の漏油対策シート。
【請求項3】
前記基台部は、絶縁性を有することを特徴とする請求項1または2に記載の漏油対策シート。
【請求項4】
前記基台部は、防水性を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の漏油対策シート。
【請求項5】
前記基台部の前記一面側に設けられ、前記凝固層および前記粘着層を、前記凝固層および前記粘着層から剥離可能にラミネートするラミネート部材を備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の漏油対策シート。
【請求項6】
前記基台部は、伸縮性を有し、
前記ラミネート部材は、前記基台部よりも伸縮性の低い材料によって形成され、線状に配列された複数の孔によって構成される破断線を備えたことを特徴とする請求項5に記載の漏油対策シート。
【請求項7】
前記凝固層は、前記基台部の一面側において、所定のパターンをなすように設けられていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の漏油対策シート。
【請求項8】
シート状に形成され、耐油性を有する基台部と、前記基台部の一面側に設けられ、脂肪酸塩によって構成される凝固層と、前記基台部における前記凝固層側に設けられ、前記凝固層の周囲を囲む環形状をなす粘着層と、を備えた漏油対策シートを用いて、
前記漏油対策シートを、油がにじみ出した油入機器の表面に、にじみ出した油と凝固層とが接触し、かつ、油がにじみ出している箇所を覆うように貼り付けることにより、前記油がにじみ出している箇所を封止することを特徴とする漏油対策方法。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図3−3】
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【図3−4】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−6642(P2011−6642A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−154040(P2009−154040)
【出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)