説明

漏洩磁束探傷方法及び装置

【課題】漏洩磁束探傷方法において、測定した結果が測定状態の変動に影響されることなく、欠陥による真の信号が精度良くとらえられる計測及び解析方法を提供する。
【解決手段】被検査材表面に平行な磁束を発生させ、被検査体表面から漏洩する磁束を磁気センサによって検知する漏洩磁束探傷方法において、周波数が可変の交流磁場を発生させる励磁コイルと、励磁コイル用電源と、被検査体表面から漏洩した磁場の表面に水平な成分を検知する磁気センサと、磁気センサの出力から励磁コイルと同じ周波数の信号を検波するロックイン検波回路と、ロックイン検波回路の出力信号により磁気センサの出力の信号強度と位相変化を解析する信号解析装置を備え、多点計測した各計測点の位相と全ての計測点で共通の調整位相を足し合わせた位相の三角関数の余弦あるいは正弦を求め、各計測点での信号強度と正弦あるいは余弦をかけあわせた解析値を任意での調整位相で表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検査材に交流磁場を印加し、被検査材表面から漏洩する漏洩磁束を検出することによって被検査材の欠陥を探傷する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鋼材の欠陥を検査する方法として、磁気を用いた漏洩磁束探傷方法がある。これは、測定対象を直流あるいは交流によって磁化させて、測定対象の表面から漏洩する磁束を主に磁気センサとしてサーチコイルで検出している。最近では、磁気センサとして磁気抵抗素子(MR)、ホール素子、磁気インピーダンス素子(MI)などが用いられ始めている。鋼材表面に欠陥があると表面に漏洩磁束が発生するので、磁気センサによって表面に平行な磁場成分あるいは垂直な磁場成分を計測する。ここで、測定対象を磁化させる方法としては、励磁コイルによって直流に磁化させる方法と、交流に磁化させる方法がある。直流に磁化させる方法では、測定対象断面を一様に磁化させることができるので内部の欠陥を探傷する方法として主に用いられている。また、交流磁化では、周波数に依存した表皮効果により主に材料表面近くでの探傷に用いられている。また、磁気センサとしてMRや、ホール素子、MI素子などの低周波まで感度がある磁気センサを用いることにより、低周波で励磁することができ深部の欠陥を検出できるようになってきた。渦電流探傷方法は一般的には漏洩磁束探傷方法を含み、測定対象に磁場を印加して磁気センサで計測する方法としては同じ構成である。この渦電流探傷方法として、低周波磁場を印加して、試料表面に平行な磁場成分を検出する方法については、特許第3987941号公報(特許文献1)で記載した。
【0003】
測定対象として様々な形状があるが、円柱状の鋼管や棒鋼などの欠陥を検出する場合には、励磁コイルとして貫通型コイルに測定対象を通して、交流磁化をする方法が良く行われている。また、大きな鋼管やタンクなどの検査には、表面が平坦に近いため、Uの字の形状のヨーク材に励磁コイルを取り付け、ヨーク材両端の部分を測定対象に接触させ交流で磁化させる方法がよくとられている(非特許文献1、2参照)。
【0004】
このような漏洩磁束探傷で測定対象の様々な位置で計測して得られた、多点計測データの処理として従来は、磁気センサの出力をそのまま信号強度として用い、計測位置による信号強度変化を見ることにより、欠陥部分や大きさを推定していた。また、最近では、磁気センサの出力を、励磁コイルと同期させてロックインアンプによって検波し、信号強度の他、位相を解析することが行われている。すなわち、計測位置による信号強度変化の他、位相変化をグラフ化して欠陥部分や大きさを推定している。例えば特開2007−64628号公報(特許文献2)では信号強度変化のグラフから、欠陥の深さと、大きさを同定する解析方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3987941号公報
【特許文献2】特開2007−64628号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「Non−destructive evaluation ofmagnetic metallic materials using Hallsensors」K.Kosmas,Ch. Sargentis,D.Tsamakis,E.Hristoforou,Journal of Materials Processing Technology, Vol.161(2005)pp.359−362
【非特許文献2】「非線形渦電流解析による欠陥検査法」 後藤雄治,電気学会誌,127巻(2007)pp.727−730
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、従来の漏洩磁束探傷方法では、測定した範囲での磁場強度変化や位相の変化をそれぞれ独自にグラフ化あるいはマッピングして、欠陥を検出し表示していた。しかし、これらの解析表示では、測定のための走査を行っているときに測定試料と、測定装置の励磁コイルや磁気センサとの距離が一定でない場合、その変動分が測定結果に大きく影響してしまうため、正確な欠陥位置や大きさを同定することが困難になることがあった。
【0008】
そこで、本発明は、測定した結果が測定状態の変動に影響されることなく、欠陥による真の信号が精度良くとらえられる計測及び解析をするための漏洩磁束探傷方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために提案されたものであって、本発明の第一の形態は、
被検査材に交流磁場を印加する磁場印加手段と、
前記被検査材から漏洩する漏洩磁束を検出するセンサと、
前記センサから出力された信号と位相の変化を解析する解析手段と、
を用い、前記被検査材から漏洩する漏洩磁束を検出することにより欠陥を探傷する漏洩磁束探傷方法であって、
前記磁場印加手段により前記交流磁場を所定の磁場印加方向に印加して前記被検査材の表面と平行な磁束を生じさせる工程と、
前記センサにより前記被検査材の表面の複数位置における前記所定の磁場印加方向と平行な方向の磁場の大きさを検出する工程と、
前記センサの出力を前記交流磁場と同じ周波数で位相が互いに直交する2つの信号に検波して前記解析手段に入力する工程と、
前記解析手段に入力された前記2つの信号によって、前記複数位置における磁場の大きさのデータと前記位相のデータを算出し、当該位相に対して校正用の補正位相を加えたデータの正弦値あるいは余弦値を求め、前記磁場の大きさのデータと前記正弦値あるいは前記余弦値との積を求め、前記複数位置における前記積の各値を用いて欠陥を特定する工程と、を備えた漏洩磁束探傷方法である。
【0010】
本発明の第2の形態は、前記積の各値を、表示手段により表示する工程を有する漏洩磁束探傷方法である。
【0011】
本発明の第3の形態は、
被検査材に交流磁場を印加する磁場印加手段と、
前記被検査材から漏洩する漏洩磁束を検出するセンサと、
前記センサから出力された信号と位相の変化を解析する解析手段と、
を備え、前記被検査材から漏洩する漏洩磁束を検出することにより欠陥を探傷する漏洩磁束探傷装置であって、
前記センサの出力を前記交流磁場と同じ周波数で位相が互いに直交する2つの信号に検波するロックイン検波手段を備え、
前記磁場印加手段では、前記交流磁場を所定の磁場印加方向に印加して前記被検査材の表面と平行な磁束を生じさせ、
前記センサは、前記被検査材の表面の複数位置における前記所定の磁場印加方向と平行な方向の磁場の大きさを検出し、
前記解析手段は、前記2つの信号によって、前記複数の位置における磁場の大きさのデータと前記位相のデータを算出し、当該位相に対して校正用の補正位相を加えたデータの正弦値あるいは余弦値を求め、前記磁場の大きさのデータと前記正弦値あるいは前記余弦値との積を求め、前記複数位置における前記積の各値を用いて欠陥を特定する漏洩磁束探傷装置である。
【0012】
本発明の第4の形態は、前記校正用の補正位相を入力する入力手段を備えた漏洩磁束探傷装置である。
【0013】
本発明の第5の形態は、前記センサを前記交流磁場の印加方向と交差する方向に移動させる走査手段を設けた漏洩磁束探傷装置である。
【0014】
本発明の第6の形態は、前記磁場印加手段は2つの磁極部を有し、この2つの磁極部間に複数の前記センサを並べて設けた漏洩磁束探傷装置である。
【0015】
本発明の第7の形態は、前記2つの磁極部が一組の励磁コイルであり、当該励磁コイルをU字型あるいはコの字型のヨーク材の両端部に設け、前記励磁コイル間を結ぶ直線と平行な方向に複数の前記センサを並べて設けた漏洩磁束探傷装置である。
【0016】
本発明の第8の形態は、前記2つの磁極部が一組の励磁コイルであり、当該励磁コイルの面を対向配置し、前記励磁コイルの中に被検査材を挿通可能とするとともに、前記励磁コイルの中心軸に対して平行な方向に複数の前記センサを並べて設けた漏洩磁束探傷装置である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の第1の形態によれば、漏洩磁束の平行成分を検知することにより欠陥の位置と対応した磁場変化をとらえることができ、さらにセンサにより得られた漏洩磁束による磁場信号を互いに直交する2つの信号である信号強度と位相に分け、複数位置で多点計測した各計測点での位相と全ての計測点で校正用の補正位相を足し合わせた位相の三角関数の余弦あるいは正弦を求め、これら信号強度と三角関数をかけた量を求めることによって、最適な信号変化を求めることができ、より正確な欠陥位置や大きさを同定することが可能となる。
【0018】
本発明の第2の形態によれば、前記積の各値を表示手段により表示することによって、前記補正位相を任意に変化させた場合に最適な信号変化を容易に求めることができ、より正確な欠陥位置や大きさを同定することが可能となる。
【0019】
本発明の第3の形態によれば、漏洩磁束の平行成分を検知することにより欠陥の位置と対応した磁場変化をとらえることができ、さらにロックイン検波手段によりセンサにより得られた磁場信号を信号強度と位相に分け、複数位置で多点計測した各計測点での位相と全ての計測点で校正用の補正位相を足し合わせた位相の三角関数の余弦あるいは正弦を求め、これら信号強度と三角関数をかけた量を求めることによって、最適な信号変化を求めることができ、より正確な欠陥位置や大きさを同定することが可能となる。
【0020】
本発明の第4の形態によれば、前記補正位相を任意に入力可能となる。
【0021】
本発明の第5の形態によれば、二次元で欠陥を検出することができる。
【0022】
本発明の第6の形態によれば、複数個のセンサを並べることにより、検査時に磁極部間におけるセンサの移動が不要となり、測定状態の変動に影響されることなく一度に検査することが可能となる。
【0023】
本発明の第7の形態によれば、一組の該励磁コイルをUあるいはコの字型のヨーク材の両端部に設けことにより、一組の励磁コイルを結んだ直線と平行に、被検査材に磁束を導入することができる。このように方向性のよい磁束により被検査材の欠陥によって表面に漏洩した磁束を検知しやすくなり、さらにセンサとして磁束と同じ方向の成分を計測するため、より欠陥による漏洩磁束の変化を顕著に検出することができる。また、複数個のセンサを並べることにより、検査時に磁極部間におけるセンサの移動が不要となり、測定状態の変動に影響されることなく一度に検査することが可能となる。
【0024】
本発明の第8の形態によれば、一組の該励磁コイルの面を対向させることにより、該励磁コイルの中に被検査材を通すことができ、一組の励磁コイルを結んだ中心軸と平行に、被検査材に磁束を導入することができる。このように方向性のよい磁束により被検査材の欠陥によって表面に漏洩した磁束を検知しやすくなり、さらにセンサとして磁束と同じ方向の成分を計測するため、欠陥による漏洩磁束の変化をより顕著に検出することができる。また、複数個のセンサを並べることにより、検査時に磁極部間におけるセンサの移動が不要となり、測定状態の変動に影響されることなく一度に検査することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態である漏洩磁束検査方法を適用する漏洩磁束探傷装置の基本構成を示す概略図である。
【図2】被検査材の構造を示す概略図であり、(a)は被検査材の裏面図、(b)は(a)におけるA−A矢視断面図である。
【図3】被検査材を測定した結果を示し、各点iにおける磁場強度(Bxi)変化と位相θi変化を示す図である。
【図4】被検査材を測定した結果を示し、各点iにおけるBxi・SIN(θi+α)を求めて、共通の調整位相αを20度毎に変化させた時の結果を示す図である。
【図5】磁気センサアレイを2次元走査して得られたBxi・SIN(θi+α)の2次元データを用いて画像化したものを示す図である。
【図6】本発明の第二の実施形態である漏洩磁束探傷装置の基本構成を示す概略図である。
【図7】本発明の第三の実施形態である漏洩磁束探傷装置の基本構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を、添付する図面を参照して詳細に説明する。
また、同様の用途及び機能を有する部材には同符号を付してその説明を省略する。
【実施例1】
【0027】
図1は、本発明の一実施形態である漏洩磁束探傷方法を適用する漏洩磁束探傷装置の基本構成を示す概略図である。
漏洩磁束探傷装置は、被検査材1−1から漏洩する漏洩磁束を検出することにより欠陥を探傷する装置であり、図1に示すように、磁場印加手段15、磁気センサアレイ6−1、ロックイン検波器10、信号解析装置11及び表示機構12を主に具備している。
【0028】
磁場印加手段15は、所定の厚みを有する被検査材1−1に交流磁場を印加する磁場印加手段であり、一組の励磁コイル2−1、2−2、ヨーク材3、励磁コイル用電源4及び発信器5により構成される。励磁コイル2−1、2−2は、磁極部の一例であり、U字型の前記ヨーク材3の両端部に各々反対巻きに巻回されている。また、励磁コイル2−1、2−2は、それぞれ励磁コイル用電源4に接続されており、当該励磁コイル用電源4には発信器5が接続されている。磁場印加手段15は、励磁コイル用電源4により交流電流を励磁コイル2−1、2−2に通電することで励磁コイル2−1、2−2を励磁し、当該励磁コイル2−1、2−2を被検査材1−1表面に接触させることで前記被検査材1−1の表面と平行となるように磁束を生じさせることができる。つまり、磁場印加手段15は、交流磁場を所定の磁場印加方向(本実施例においては、励磁コイル2−1、2−2間を結ぶ直線と平行な方向)に印加して被検査材の表面と平行な磁束を発生させることができる。
なお、前記ヨーク材3の形状はU字型に限定するものでなく、コの字型であってもかまわない。
【0029】
磁気センサアレイ6−1は、前記被検査材1−1から漏洩する漏洩磁束を検出するセンサであり、複数の磁気センサ7−1〜10を磁気センサアレイ6−1の長手方向に並べて設けたアレイ状のセンサである。磁気センサアレイ6−1は、前記励磁コイル2−1、2−2間を結ぶ直線に平行な方向に複数の磁気センサ7−1〜10を並べた状態で被検査材1−1表面に載置され、前記複数の磁気センサ7−1〜10は被検査材1−1の表面の複数位置における、磁場印加手段15の磁場印加方向(前記励磁コイル2−1、2−2間を結ぶ直線上に平行な方向)と平行な方向の磁場成分を検出することができる。すなわち、磁気センサアレイ6−1は、被検査材1−1の表面の磁気センサアレイ6−1長手方向における磁場印加手段15の磁場印加方向と平行な方向の磁場の大きさを複数点で計測することができる。また、複数の磁気センサ7−1〜10は、それぞれに対応する磁気センサ計測回路8−1〜10に接続されており、当該磁気センサ計測回路8−1〜10により対応する磁気センサ7−1〜10が駆動される。磁気センサ計測回路8−1〜10は、マルチプレクサ9に接続されている。
【0030】
ロックイン検波器10は、磁気センサアレイ6−1の出力信号を前記交流磁場と同じ周波数で位相が互いに直交する2つの信号に検波するロックイン検波手段である。ロックイン検波器10は、励磁コイル2−1、2−2に流された交流電流の交流周波数に同期した信号のみを検出する。つまり、ロックイン検波器10は、励磁コイル2−1、2−2と同じ周波数で位相が互いに90度異なる2つの信号に検波する。ロックイン検波器10は、マルチプレクサ9に接続されている。
【0031】
信号解析装置11は、前記磁気センサアレイ6−1から前記ロックイン検波器10を介して出力された信号と位相の変化を解析する手段であり、前記ロックイン検波器10に接続されている。すなわち、信号解析装置11は、ロックイン検波器10により検波された2つの信号によって、複数の位置における磁場の大きさのデータと前記位相のデータを算出し、当該位相に対して校正用の補正位相を加えたデータの正弦値あるいは余弦値を求め、前記磁場の大きさのデータと前記正弦値あるいは前記余弦値との積を求め、前記複数位置における前記積の各値を用いて欠陥を特定することができる。つまり、信号解析装置11は、ロックイン検波器10によって検波された信号を所定の解析方法により解析することができる。信号解析装置11には、表示機構12が接続されている。
また、信号解析装置11には、前記校正用の補正位相を入力する入力手段(図示せず)が接続されている。
ここで、前記校正用の補正位相とは、磁気センサアレイ6−1の校正を行う際に、磁気センサアレイ6−1が有する複数の磁気センサ7−1〜10全てに対して共通して適用される位相調整用の位相のことである(以下、共通の調整位相αという)。
【0032】
表示機構12は、前記信号解析装置11により解析結果を表示する表示手段である。表示機構12は、例えば、前記ロックイン検波器10を介して出力された信号と位相の変化や前記磁場の大きさのデータと前記正弦値あるいは前記余弦値との積の値のような被検査材1−1表面の欠陥を特定する際に必要な情報を表示することができる。
【0033】
また、上述した漏洩磁束探傷装置に適用する本実施形態に係る漏洩磁束探傷方法は、
上記漏洩磁束探傷装置を用い、前記被検査材1−1から漏洩する漏洩磁束を検出することにより欠陥を探傷する漏洩磁束探傷方法であって、
前記磁場印加手段15により前記交流磁場を所定の磁場印加方向に印加して前記被検査材1−1の表面と平行な磁束を生じさせる工程と、
前記磁気センサアレイ6−1により前記被検査材1−1の表面の複数位置における前記所定の磁場印加方向と平行な方向の磁場の大きさを検出する工程と、
前記磁気センサアレイ6−1の出力を前記交流磁場と同じ周波数で位相が互いに直交する2つの信号に検波して前記信号解析装置11に入力する工程と、
前記信号解析装置11に入力された前記2つの信号によって、前記複数位置における磁場の大きさのデータと前記位相のデータを算出し、当該位相に対して共通の調整位相αを加えたデータの正弦値あるいは余弦値を求め、前記磁場の大きさのデータと前記正弦値あるいは前記余弦値との積を求め、前記複数位置における前記積の各値を用いて欠陥を特定する工程と、を備えたものである。
以下、漏洩磁束探傷装置及び漏洩磁束探傷方法を具体的に説明する。
【0034】
図1に示すように、被検査材1−1表面に、励磁コイル2−1、2−2を接触させた状態で、当該励磁コイル2−1、2−2により交流磁場を所定の印加方向(励磁コイル2−1、2−2を結ぶ直線と平行な方向)に印加して、前記被検査材1−1の表面と平行な磁束が導入される。この一組の励磁コイル2−1、2−2はUの字型のヨーク材3の両端に取り付けており、この両端を結んだ直線の方向に磁束を導入することができる。励磁コイル用電源4は発信器5によって励磁の周波数を変えることができる。この発信器5の信号で励磁コイル用電源4を駆動し励磁コイル2−1と2−2に交流電流を流す。励磁コイル2−1と2−2は反対巻きになっており、片方が被検査材1−1に対してN極になり、もう一方は被検査材1−1に対してS極となるようにしている。被検査材1−1の表面あるいは内部あるいは裏面に欠陥があると、その直上において漏洩磁束が漏洩し、磁場が変化する。この変化を磁気センサアレイ6−1で多点計測を行う。この磁気センサアレイ6−1が有する磁気センサ7−1〜10は、励磁コイル2−1、2−2が対向する方向と同方向、つまり磁束を導入したx方向に配列されている。また、磁気センサアレイ6−1の各磁気センサ7−1〜10は、磁気センサアレイ6−1の長手方向、つまり磁束を導入した方向の漏洩磁束の磁束密度成分Bxを検出している。この磁束密度成分Bxを計測する磁気センサとしては磁気抵抗素子(MR)を用いた。もちろん、磁気センサとして他の磁気インピーダンス素子(MI)や、ホール素子、フラックスゲート、超伝導量子干渉素子等いずれかを使用することができる。
【0035】
磁気センサアレイ6−1には10個の磁気センサ7−1〜10を並べて設けた。もちろん、磁気センサの数が多く、また磁気センサ間隔を小さくすることにより空間分解能が高い測定が可能となる。また、複数個の磁気センサ7−1〜10を並べることにより、検査時に励磁コイル2−1と2−2の間の移動(走査)が不要となり、測定状態の変動に影響されることなく一度に検査することが可能となる。磁気センサ7−1〜10にはそれぞれ計測用として磁気センサ計測回路8−1〜10を設けて、これらの各出力をマルチプレクサ9によって切り替えてロックイン検波器10によって検波する。この検波により励磁コイル2−1と2−2に流す交流電流の信号を作っている発信器5に同期した信号だけ検出することができる。ロックイン検波器10によって発信器5の信号に対する同相の信号と、90度位相がずれている信号の2つに分離して検出される。この同相信号と直交信号によって、磁気センサアレイ6−1における各磁気センサ7−1〜10の信号の信号強度Bxiと位相θiを算出することができる。信号解析装置11においてBxi・SIN(θi+α)を計算し、データを表示機構12に表示する。ここで、このデータを見ながら解析処理を進め、共通の調整位相αを変化させ、最適な最終表示を行う。すなわち、この最適な最終表示を行うことにより、共通の調整位相αを任意に変化させた場合に最適な信号変化を容易に求めることができ、より正確な欠陥位置や大きさを同定することが可能となる。
なお、上述した共通の調整位相αを変化させて、欠陥位置や大きさを検出するための最適なBxi・SIN(θi+α)を求める方法としては、Bxi・SIN(θi+α)として所定の閾値を予め設定しておき、信号解析装置11が有する図示しない演算手段により所定のプログラムを実行して自動的に求めることも可能である。
【0036】
次に、漏洩磁束探傷装置の基本性能を示すため、被検査材1−1として図2(a)(b)に示す裏面に同じ形状の2つの穴が穿設された鉄板を用いて欠陥の検出を行った。この鉄板は板厚10mm、大きさ500mm×500mmで、穴形状としてφ30mm(図2(a)に示すd)、深さ6mm(図2(b)に示すh)で裏面(底面)に穴があいていて表面には穴が隠れた状態である。これを被検査材1−1の表面から、図1の漏洩磁束探傷方法を適用した漏洩磁束探傷装置を用いて計測した。ここで、磁気センサアレイ6−1には磁気センサが10個配置しているので、一度に10点の計測データが得られる。これをさらに所定方向に移動させて計測することによって、もっと広い範囲の計測データを合成して得ることができる。
【0037】
図3は被検査材1−1を測定した結果を示し、磁気センサ7−1〜10における各計測点である各点iにおける磁場強度(Bxi)変化と、位相θi変化を示している。図3において、上グラフの横軸が各点i、縦軸が磁場強度(μT)であり、下グラフの横軸が各点i、縦軸が位相(rad)である。また、図4は本発明の漏洩磁束探傷方法による解析によって得られる結果を示しており、各点iにおける磁場強度Bxi・SIN(θi+α)を求め、ここで、共通の調整位相αを20度毎に変化させた時の結果を示したものである。従来は図3のように磁場強度変化や位相変化をそれぞれ単独で見て欠陥を検出していた。一方、本発明では図4のように磁場強度と位相情報を掛け合わせることによって、さらに共通の調整位相αを調整することにより欠陥による磁場変化のみが顕著に抽出できるようになる。ここで、図4では共通の調整位相αが180度の時、欠陥の位置に対応した明確な信号変化(2つの下向きピーク)を確認することができている。この共通の調整位相αはいったん決定されれば、各計測時に調整する必要は特になく、欠陥のない標準サンプルなどを使って漏洩磁束探傷装置を校正しておけばよい。
なお、前記共通の調整位相αとしては、漏洩磁束探傷装置の設けられた図示しない入力手段により任意の値を信号解析装置11に入力することが可能である。
【0038】
また、図示しないが、上述した漏洩磁束探傷装置においては、磁気センサアレイ6−1を交流磁場の印加方向と交差する方向に移動させる走査手段を設け、交流磁場の印加方向、すなわち本実施例では磁気センサアレイの長手方向に対して垂直方向に走査して計測することによりBxi・SIN(θi+α)の2次元のデータを得て、欠陥を二次元で検出することができる。上述したように本実施例に係る漏洩磁束探傷装置においては、共通の調整位相が180度の場合において最も欠陥に対応した信号が得られたので、この共通の調整位相を用いて画像データとして表示することができる。図5は、図2の片方の穴を中心とした走査範囲100mm×100mmで計測した結果を示しており、穴の大きさに対応した画像が得られている。このように本発明により従来困難であった被検査材の裏面の欠陥も精度良く検知できるようになった。
なお、磁場印加手段15と磁気センサアレイ6−1とを一体的に構成し、これに走査手段を設けることで、磁場印加手段15と磁気センサアレイ6−1とを一体として移動することができるように構成してもかまわない。
【0039】
以上のように、漏洩磁束探傷装置及びこの漏洩磁束探傷装置に適用する漏洩磁束探傷方法を構成することで、漏洩磁束の平行成分を検知することにより欠陥の位置と対応した磁場変化をとらえることができ、さらに磁気センサアレイ6−1により得られた漏洩磁束による磁場信号を互いに直交する2つの信号である信号強度と位相に分け、複数位置で多点計測した各計測点での位相と全ての計測点で共通の調整位相αを足し合わせた位相の三角関数の余弦あるいは正弦を求め、これら信号強度と三角関数をかけた量を求めることによって、欠陥を検出しやすい最適な信号変化を求めることができ、より正確な欠陥位置や大きさを同定することが可能となる。
【0040】
また、本実施例のように、漏洩磁束探傷装置及びこの漏洩磁束探傷装置に適用する漏洩磁束探傷方法を構成することで、一組の該励磁コイル2−1、2−2をUあるいはコの字型のヨーク材3の両端部に設けことにより、一組の励磁コイル2−1、2−2を結んだ直線と平行に、被検査材1−1に磁束を導入することができる。このように方向性のよい磁束により被検査材1−1の欠陥によって表面に漏洩した磁束を検知しやすくなり、さらに磁気センサとして磁束と同じ方向の成分を計測するため、欠陥による漏洩磁束の変化をより顕著に検出することができる。また、複数個の磁気センサ7−1〜10を並べることにより、検査時に移動をしなくても一度に検査することが可能となる。
【実施例2】
【0041】
次に、本発明に係る漏洩磁束探傷方法を適用する漏洩磁束探傷装置の別実施例について図6を用いて説明する。
本実施例に係る漏洩磁束探傷装置は、被検査材1−2から漏洩する漏洩磁束を検出することにより欠陥を探傷する装置であり、図6に示すように、磁場印加手段25、磁気センサアレイ6−2、図1で示した、ロックイン検波器10、信号解析装置11及び表示機構12を主に具備している。磁気センサアレイ6−2、ロックイン検波器10、信号解析装置11及び表示機構12については、実施例1と同様であり、詳細な説明は省略する。
【0042】
磁場印加手段25は、所定の厚みを有する円筒状の被検査材1−2(例えば、鋼管)に交流磁場を印加する磁場印加手段であり、一組の励磁コイル2−3、2−4、励磁コイル用電源4及び発信器5により構成される。励磁コイル2−3、2−4は、磁極部の一例であり、当該励磁コイル2−3、2−4の面が対向した状態で前記励磁コイル2−3、2−4の中に被検査材1−2を挿通して配置することが可能であり、各々反対巻きに巻回されている。また、励磁コイル2−3、2−4は、それぞれ励磁コイル用電源4に接続されており、当該励磁コイル用電源4には発信器5が接続されている。磁場印加手段25は、励磁コイル用電源4より交流電流を励磁コイル2−3、2−4に通電することで励磁コイル2−3、2−4を励磁し、当該励磁コイル2−3、2−4に被検査材1−2を挿通させて配置することで前記被検査材1−2の表面と平行に(図6に示すx方向に)磁束を生じさせることができる。
【0043】
磁気センサアレイ6−2は、前記被検査材1−2から漏洩する漏洩磁束を検出するセンサであり、複数の磁気センサ7−1〜10を磁気センサアレイ6−2の長手方向に並べて設けたアレイ状のセンサである。磁気センサアレイ6−2は、前記励磁コイル2−3、2−4の中心軸に対して平行な方向に複数の磁気センサ7−1〜10を並べた状態で被検査材1−2表面に載置され、前記複数の磁気センサ7−1〜10は被検査材1−2の表面の複数位置における、磁場印加手段15の磁場印加方向(前記励磁コイル2−3、2−4の中心軸に平行な方向:x方向)と平行な方向の磁場成分を検出することができる。すなわち、磁気センサアレイ6−2は、被検査材1−2の表面の磁気センサアレイ6−2長手方向における磁場印加手段25の磁場印加方向と平行な方向の磁場の大きさを複数点で計測することができる。また、複数の磁気センサ7−1〜10は、それぞれに対応する磁気センサ計測回路8−1〜10に接続されており、当該磁気センサ計測回路8−1〜10により対応する磁気センサ7−1〜10が駆動される。磁気センサ計測回路8−1〜10は、マルチプレクサ9に接続されている。
なお、前記励磁コイル2−3、2−4の巻回形状は、本実施例の如く、円形状に特に限定するものでなく、筒状の被検査材に適宜対応させた形状、例えば楕円状や四角状とすることができる。
【0044】
つまり、一組の円形状の励磁コイル2−3、2−4の面を対向させ、円筒状の鋼管である被検査材1−2を励磁コイル2−3、2−4の中に挿通させて、磁束を鋼管の中心軸に平行に導入する。被検査材1−2の中心軸に平行な方向の磁場成分を検知する磁気センサ7−1〜10を、中心軸に対して平行方向に多数個を並べた磁気センサアレイ6−2を用いた。この構成により、円筒状の測定対象の表面のみならず、内部あるいは配管内部表面の欠陥を検知することができるようになった。
【0045】
本実施例のように、漏洩磁束探傷装置を構成することで、一組の該励磁コイル2−3、2−4の面を対向させることにより、該励磁コイル2−3、2−4の中に被検査材1−2を通すことができ、一組の励磁コイル2−3、2−4を結んだ中心軸と平行に、被検査材1−2に磁束を導入することができる。このように方向性のよい磁束により被検査材の欠陥によって表面に漏洩した磁束を検知しやすくなり、さらに磁気センサとして磁束と同じ方向の成分を計測するため、より欠陥による漏洩磁束の変化を顕著に検出することができる。また、複数個の磁気センサ7−1〜10を並べることにより、検査時に移動をしなくても一度に検査することが可能となる。
【実施例3】
【0046】
次に、本発明に係る漏洩磁束探傷方法を適用する漏洩磁束探傷装置の別実施例について図7を用いて説明する。
図7は本発明の図6の実施形態と同じ機能をもたせるための別の形態を示している。図6では円筒状の鋼管を計測するために、励磁コイル2−3、2−4を円筒周囲に巻きつける構造を用いた。しかし、大きな径の鋼管の場合、励磁コイルを巻きつけることが困難な場合がある。これを回避する方法として、図7に示すように所定大きさの長方形励磁コイル13を多数個組み合わせて、被検査材1−3に鋼管に巻き付けることで、被検査材1−3に磁場を印加する励磁コイルを構成することができる。具体的には、個々の長方形励磁コイル13は、可塑性のある励磁コイル母材14に形成されているので、円筒形状にもぴったり合わせることができ、被検査材1−3の円筒の鋼管表面に張り付けることができる。これらを被検査材1−3の周方向に直列につなぐことにより、実質的に図6における円形の励磁コイル2−3、2−4と同様の機能を有することができる。円筒の長さ方向にある励磁コイル13の配線部分は隣り合った励磁コイル13の配線と重なっている。このため、励磁コイル13に流れる電流は隣の励磁コイル13とは反対方向の電流となるので、お互いがキャンセルされる。また、励磁コイル13の円周上にある配線部分は重なってなく、隣接する励磁コイル13に流れる電流の方向と同じ方向になるので、結果的には円筒状の鋼管の円周全てを回る電流を形成することができる。これにより、本実施例に示す磁場印加手段は、実質的に図6と同じ励磁コイル2−3、2−4の機能を持たせることができ、しかもコイルを分割して張り付けることができるので取り外しが非常に簡単な励磁コイルを実現できている。漏洩磁束は、図6の実施例と同じように励磁コイルの中心軸に平行な方向(x方向)の磁場成分を検知する磁気センサ7−1〜10を多数個を並べた磁気センサアレイ6−3を使って計測する。
【0047】
以上のように、本発明に係る漏洩磁束探傷方法を適用した漏洩磁束探傷装置は、被検査材表面に平行な磁束を発生させ、該被検査体表面から漏洩する磁束を磁気センサによって検知する装置であり、周波数が可変の交流磁場を発生させる励磁コイルと励磁コイル用電源とを備え、該被検査体表面から漏洩した磁場の表面に水平な成分を検知する磁気センサを設け、該磁気センサの計測回路の出力から前記励磁コイルと同じ周波数の信号を検波するロックイン検波手段を備え、該ロックイン検波手段の出力信号により該磁気センサの出力の信号強度と位相変化を解析する信号解析装置を備え、多点計測した各計測点での該位相と全ての計測点で共通の調整位相を足し合わせた位相の三角関数の余弦あるいは正弦を求め、各計測点での該信号強度と該正弦あるいは該余弦をかけあわせた解析値を任意での前記調整位相で表示するものである。
【0048】
また、本発明に係る漏洩磁束探傷方法を適用した漏洩磁束探傷装置は、漏洩磁束の平行成分を検知することにより欠陥の位置と対応した磁場変化をとらえることができ、さらにロックイン検波手段により磁場信号を信号強度と位相に分け、多点計測した各計測点での位相と全ての計測点で共通の調整位相を足し合わせた位相の三角関数の余弦あるいは正弦を求め、これら信号強度と三角関数をかけた量を求め、そこで調整位相を任意に変化させることによって、最適な信号変化を求めることができ、より正確な欠陥位置や大きさを同定することが可能となる。
【0049】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲における種々の変形例・設計変更などをその技術的範囲内に包含することは云うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は,鉄鋼構造物の測定対象に交流磁場を印加し,表面やあるいは内部、裏面側にある欠陥を検出する漏洩磁束探傷方法である。従来の漏洩磁束探傷方法は、表面の欠陥検査での精度が高かったが、本発明ではより深部あるいは裏面側の欠陥までを検査可能とした。これにより、工業プラントにおけるタンクや配管の内部欠陥や、橋梁などの溶接部などの欠陥検査に適用できる。
【符号の説明】
【0051】
1−1 被検査材
1−2 被検査材
1−3 被検査材
2−1 励磁コイル
2−2 励磁コイル
2−3 励磁コイル
2−4 励磁コイル
3 ヨーク材
4 励磁コイル用電源
5 発信器
6−1 磁気センサアレイ
6−2 磁気センサアレイ
6−3 磁気センサアレイ
7−1 磁気センサ
7−2 磁気センサ
7−3 磁気センサ
7−4 磁気センサ
7−5 磁気センサ
7−6 磁気センサ
7−7 磁気センサ
7−8 磁気センサ
7−9 磁気センサ
7−10 磁気センサ
8−1 磁気センサ計測回路
8−2 磁気センサ計測回路
8−3 磁気センサ計測回路
8−4 磁気センサ計測回路
8−5 磁気センサ計測回路
8−6 磁気センサ計測回路
8−7 磁気センサ計測回路
8−8 磁気センサ計測回路
8−9 磁気センサ計測回路
8−10 磁気センサ計測回路
9 マルチプレクサ
10 ロックイン検波器
11 信号解析装置
12 表示機構
13 長方形励磁コイル
14 励磁コイル母材
15・25 磁場印加手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査材に交流磁場を印加する磁場印加手段と、
前記被検査材から漏洩する漏洩磁束を検出するセンサと、
前記センサから出力された信号と位相の変化を解析する解析手段と、
を用い、前記被検査材から漏洩する漏洩磁束を検出することにより欠陥を探傷する漏洩磁束探傷方法であって、
前記磁場印加手段により前記交流磁場を所定の磁場印加方向に印加して前記被検査材の表面と平行な磁束を生じさせる工程と、
前記センサにより前記被検査材の表面の複数位置における前記所定の磁場印加方向と平行な方向の磁場の大きさを検出する工程と、
前記センサの出力を前記交流磁場と同じ周波数で位相が互いに直交する2つの信号に検波して前記解析手段に入力する工程と、
前記解析手段に入力された前記2つの信号によって、前記複数位置における磁場の大きさのデータと前記位相のデータを算出し、当該位相に対して校正用の補正位相を加えたデータの正弦値あるいは余弦値を求め、前記磁場の大きさのデータと前記正弦値あるいは前記余弦値との積を求め、前記複数位置における前記積の各値を用いて欠陥を特定する工程と、を備えたことを特徴とする漏洩磁束探傷方法。
【請求項2】
前記積の各値を、表示手段により表示する工程を有することを特徴とする請求項1に記載の漏洩磁束探傷方法。
【請求項3】
被検査材に交流磁場を印加する磁場印加手段と、
前記被検査材から漏洩する漏洩磁束を検出するセンサと、
前記センサから出力された信号と位相の変化を解析する解析手段と、
を備え、前記被検査材から漏洩する漏洩磁束を検出することにより欠陥を探傷する漏洩磁束探傷装置であって、
前記センサの出力を前記交流磁場と同じ周波数で位相が互いに直交する2つの信号に検波するロックイン検波手段を備え、
前記磁場印加手段では、前記交流磁場を所定の磁場印加方向に印加して前記被検査材の表面と平行な磁束を生じさせ、
前記センサは、前記被検査材の表面の複数位置における前記所定の磁場印加方向と平行な方向の磁場の大きさを検出し、
前記解析手段は、前記2つの信号によって、前記複数の位置における磁場の大きさのデータと前記位相のデータを算出し、当該位相に対して校正用の補正位相を加えたデータの正弦値あるいは余弦値を求め、前記磁場の大きさのデータと前記正弦値あるいは前記余弦値との積を求め、前記複数位置における前記積の各値を用いて欠陥を特定することを特徴とする漏洩磁束探傷装置。
【請求項4】
前記校正用の補正位相を入力する入力手段を備えたことを特徴とする請求項3に記載の漏洩磁束探傷装置。
【請求項5】
前記センサを前記交流磁場の印加方向と交差する方向に移動させる走査手段を設けたことを特徴する請求項3または請求項4に記載の漏洩磁束探傷装置。
【請求項6】
前記磁場印加手段は2つの磁極部を有し、この2つの磁極部間に複数の前記センサを並べて設けたことを特徴とする請求項3から請求項5の何れか一項に記載の漏洩磁束探傷装置。
【請求項7】
前記2つの磁極部が一組の励磁コイルであり、当該励磁コイルをU字型あるいはコの字型のヨーク材の両端部に設け、前記励磁コイル間を結ぶ直線と平行な方向に複数の前記センサを並べて設けたことを特徴とする請求項6に記載の漏洩磁束探傷装置。
【請求項8】
前記2つの磁極部が一組の励磁コイルであり、当該励磁コイルの面を対向配置し、前記励磁コイルの中に被検査材を挿通可能とするとともに、前記励磁コイルの中心軸に対して平行な方向に複数の前記センサを並べて設けたことを特徴とする請求項6に記載の漏洩磁束探傷装置。

【図1】
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【図2】
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【図6】
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【図7】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−13087(P2011−13087A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−157126(P2009−157126)
【出願日】平成21年7月1日(2009.7.1)
【特許番号】特許第4487082号(P4487082)
【特許公報発行日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(504147243)国立大学法人 岡山大学 (444)
【Fターム(参考)】