説明

漏電検出器

【課題】燃料電池の絶縁抵抗を高精度に測定する。
【解決手段】漏電検出器70は、燃料電池20に絶縁抵抗測定用の交流電圧を印加したときの応答電圧を測定する測定部72と、過去に測定された燃料電池20の絶縁抵抗Zの値Z1、交流電圧V1と応答電圧V2との比(V2/V1)、及び燃料電池20の電圧変動ΔVfに基づいて、燃料電池20の絶縁抵抗Zの値Z2を補正計算する計算部73とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は燃料電池の絶縁抵抗を高精度に測定するための漏電検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、燃料ガス及び酸化ガスを膜−電極接合体に供給することにより電気化学反応を起こし、化学エネルギーを電気エネルギーに変換するためのエネルギー変換システムである。なかでも、固体高分子膜を電解質として用いる固体高分子電解質型燃料電池は、低コストでコンパクト化が容易であり、しかも高い出力密度を有することから、車載電源としての用途が期待されている。
【0003】
車載電源用の燃料電池は、数百セルを直列に接続することにより、300V〜400V程度の高電圧を発生するため、十分な漏電対策が必要となる。例えば、特開2003−250201号公報には、車載高圧電源の電源端子にカップリングコンデンサを介してハイレベルの電圧とローレベルの電圧をそれぞれ印加したときに測定される応答電圧の差分が所定の閾値を下回るときに地絡を検出する地絡検出装置が開示されている。特開2004−286523号公報には、車載高圧電源の電圧変動を検出し、電圧変動の少ないときに高圧電源の絶縁抵抗を測定する漏電判定装置が開示されている。
【特許文献1】特開2003−250201号公報
【特許文献2】特開2004−286523号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、絶縁抵抗測定用の電圧を、カップリングコンデンサを介して燃料電池の電源端子に印加すると、燃料電池の電圧変動によりカップリングコンデンサに充放電が生じてしまい、応答電圧に影響が生じるので、燃料電池の絶縁抵抗を正確に測定することができない場合がある。
【0005】
そこで、本発明は、このような問題点に鑑み、燃料電池の絶縁抵抗を高精度に測定することのできる漏電検出器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明に係わる漏電検出器は、燃料電池に絶縁抵抗測定用の交流電圧を印加したときの応答電圧を測定する測定部と、過去に測定された燃料電池の絶縁抵抗の値、交流電圧と応答電圧との比、及び燃料電池の電圧変動に基づいて、燃料電池の絶縁抵抗を補正計算する計算部とを備える。かかる構成によれば、燃料電池の電圧変動を加味した上で絶縁抵抗を補正計算するので、測定精度を高めることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、燃料電池の絶縁抵抗を高精度に測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら本発明に係わる実施形態について説明する。
図1は本実施形態に係わる燃料電池システム10の電力系統の概略構成を示しており、反応ガス供給系や冷却系などの図示は省略している。
燃料電池システム10は、燃料電池スタック20、トラクションインバータ30、トラクションモータ40、DC/DCコンバータ50、二次電池60、漏電検出器70、及び制御ユニット(ECU)80を備える。
【0009】
燃料電池スタック20は、複数のセルを直列に積層してなる固体高分子電解質型セルスタックである。燃料電池スタック20では、アノード極において(1)式の酸化反応が生じ、カソード極において(2)式の還元反応が生じる。燃料電池スタック20全体としては(3)式の起電反応が生じる。
【0010】
2 → 2H++2e- …(1)
(1/2)O2+2H++2e- → H2O …(2)
2+(1/2)O2 → H2O …(3)
【0011】
燃料電池スタック20には、燃料電池スタック20の出力電圧を検出するための電圧センサ90が取り付けられている。
【0012】
DC/DCコンバータ50は、二次電池60から供給される直流電圧を昇圧してトラクションインバータ30に出力する機能と、燃料電池スタック20が発電した直流電力、又は回生制動によりトラクションモータ40が回収した回生電力を降圧して二次電池60に充電する機能とを有する電力変換手段である。DC/DCコンバータ50のこれらの機能により、二次電池60の充放電が制御される。また、DC/DCコンバータ50による電圧変換制御により、燃料電池スタック20の運転ポイント(出力電圧、出力電流)が制御される。
【0013】
二次電池60は、燃料電池スタック20から外部負荷(トラクションモータ40又は補機類など)へ供給される電力の過不足を調整するために充放電制御される。二次電池60は、余剰電力の貯蔵源、回生制動時の回生エネルギー貯蔵源、燃料電池車両の加速又は減速に伴う負荷変動時のエネルギーバッファとして機能する。二次電池60としては、例えば、ニッケル・カドミウム蓄電池、ニッケル・水素蓄電池、リチウム二次電池等が好適である。
【0014】
トラクションインバータ30は、例えば、パルス幅変調方式で駆動されるPWMインバータであり、制御ユニット80からの制御指令に従って、燃料電池スタック20又は二次電池60から出力される直流電圧を三相交流電圧に変換して、トラクションモータ40の回転トルクを制御する。トラクションモータ40は、例えば、三相交流モータであり、燃料電池車両の動力源を構成する。
【0015】
制御ユニット80は、CPU、ROM、RAM、及び入出力インタフェース等を備えるコンピュータシステムであり、アクセルセンサ(図示せず)から出力されるアクセル開度信号や、車速センサ(図示せず)から出力される車速信号などを基にシステム全体の要求電力を求める。
【0016】
システム全体の要求電力は、車両走行電力と補機電力との合計値である。補機電力には車載補機類(加湿器、エアコンプレッサ、水素ポンプ、及び冷却水循環ポンプ等)で消費される電力、車両走行に必要な装置(変速機、車輪制御装置、操舵装置、及び懸架装置等)で消費される電力、乗員空間内に配設される装置(空調装置、照明器具、及びオーディオ等)で消費される電力などが含まれる。
【0017】
そして、制御ユニット80は、燃料電池スタック20と二次電池60とのそれぞれの出力電力の配分を決定し、発電指令値を演算するとともに、燃料電池スタック20の発電量が目標電力に一致するように、燃料電池スタック20への反応ガス供給を制御する。更に制御ユニット80は、DC/DCコンバータ50を制御して、燃料電池スタック20の出力電圧を調整することにより、燃料電池スタック20の運転ポイント(出力電圧、出力電流)を制御する。制御ユニット80は、アクセル開度に応じた目標車速が得られるように、例えば、スイッチング指令として、U相、V相、及びW相の各交流電圧指令値をトラクションインバータ30に出力し、トラクションモータ40の出力トルク、及び回転数を制御する。
【0018】
漏電検出器70は、燃料電池スタック20の電源端子とグランド(車体ボディ)との間の絶縁抵抗Zを測定し、絶縁抵抗Zが所定の閾値を下回ると、漏電が生じているものと判定し、制御ユニット80に漏電発生を通知する。漏電発生の通知を受けた制御ユニット70は、燃料電池スタック20の発電を停止するとともに、リレーL1,L2を開き、車両の安全を確保する。
【0019】
漏電検出器70は、交流電源71、測定部72、計算部73、抵抗R、及びカップリングコンデンサCを備える。交流電源71は、絶縁抵抗測定用の交流電圧を抵抗R及びカップリングコンデンサCを介して燃料電池スタック20の電源端子に印加する。測定部72は、絶縁抵抗測定用の交流電圧が燃料電池スタック20の電源端子に印加されたときの測定部位A(抵抗RとカップリングコンデンサCとの間の部位)の電圧(以下、応答電圧と称する。)を測定する。計算部73は、過去に測定した絶縁抵抗Zの値Z1、電圧センサ90により測定される燃料電池スタック20の電圧変動ΔVf、及び絶縁抵抗測定用の交流電圧V1と応答電圧V2との比(V2/V1)に基づいて、絶縁抵抗Zの値Z2を算出する。ここで、電圧変動ΔVfが絶縁抵抗Zの計算に与える影響は、予め理論的又は実験的に求められており、計算部73は、電圧変動ΔVfに基づく補正計算を加味した上で絶縁抵抗Zの値Z2を算出する。
【0020】
本実施形態によれば、燃料電池スタック20の電圧変動を加味した上で絶縁抵抗Zを算出するので、測定精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施形態に係わる燃料電池システムの概略構成図である。
【符号の説明】
【0022】
10…燃料電池システム 20…燃料電池スタック 30…トラクションインバータ 40…トラクションモータ 50…DC/DCコンバータ 60…二次電池 70…漏電検出器 80…制御ユニット 90…電圧センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池とグランドとの間の絶縁抵抗を測定する漏電検出器であって、
前記燃料電池に絶縁抵抗測定用の交流電圧を印加したときの応答電圧を測定する測定部と、
過去に測定された前記絶縁抵抗の値、前記交流電圧と前記応答電圧との比、及び前記燃料電池の電圧変動に基づいて前記絶縁抵抗を補正計算する計算部と、
を備える漏電検出器。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2008−304290(P2008−304290A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−151189(P2007−151189)
【出願日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】