説明

演算装置およびデータベース

【課題】単位およびプレフィックスを含む異なる物理量間の演算を誤謬なく行うことのできる演算装置およびデータベースを提供する。
【解決手段】演算装置は、基本単位に対して、素因数を含む基数と指数部とで表されるプレフィックスの前記素因数を除いた素数が割り当てられる第1標識と、組立単位に対して、前記第1標識の積により得られる整数がそれぞれ、分子および分母に割り当てられる第2標識とを記憶するデータベースと、量、プレフィックス、単位をそれぞれ含む複数の物理量を得て、前記単位が前記基本単位の場合には、前記単位を前記第1標識に変換し、または前記単位が前記組立単位の場合には、前記単位を前記第2標識に変換し、変換された第1標識または第2標識に前記プレフィックスを乗算して第3標識を得る変換部と、前記複数の物理量の前記量同士の演算、前記第3標識同士の演算をそれぞれ行う演算部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、演算装置およびデータベースに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、単位を含む異なる物理量間の演算を行う際には、文字列処理による演算が行
われる。
しかしながら、単位およびプレフィックスを含む異なる物理量間の演算を行う際には、
上記の文字列処理による方法では、演算式の順番や、単位、プレフィックスの表記(フォ
ント等)の違いにより文字列が異なる場合等に処理が複雑になってしまう。また、演算の
結果得られる単位の照合を正確に行い、誤謬のない演算結果を得ることが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−322406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
単位およびプレフィックスを含む異なる物理量間の演算を誤謬なく行うことのできる演
算装置およびデータベースを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の演算装置は、単位系を構成する基本単位に対して、素因数を含む基数と指数
部とで表されるプレフィックスの前記素因数を除いた素数が割り当てられる第1標識と、
前記基本単位の組み合わせにより分子および分母を含む既約分数で表される組立単位に対
して、前記第1標識の積により得られる整数がそれぞれ、前記分子および前記分母に割り
当てられる第2標識とを記憶するデータベースと、量、プレフィックス、単位をそれぞれ
含む複数の物理量を得て、前記単位が前記基本単位の場合には、前記単位を前記第1標識
に変換し、変換された第1標識に前記プレフィックスを乗算して第3標識を得る、または
前記単位が前記組立単位の場合には、前記単位を前記第2標識に変換し、変換された第2
標識に前記プレフィックスを乗算して第3標識を得る変換部と、前記複数の物理量の前記
量同士の演算、前記第3標識同士の演算をそれぞれ行う演算部とを備える。
【0006】
実施形態のデータベースは、単位系を構成する基本単位に対して、素因数を含む基数と
指数部とで表されるプレフィックスの前記素因数を除いた素数が割り当てられる第1標識
と、前記基本単位の組み合わせにより分子および分母を含む既約分数で表される組立単位
に対して、前記第1標識の積により得られる整数がそれぞれ、前記分子および前記分母に
割り当てられる第2標識とを記憶する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第一の実施形態に係る演算装置の構成図。
【図2】第一の実施形態に係る演算装置の割り当て部のフローチャート(基本単位への割り当て)。
【図3】第一の実施形態に係る演算装置の割り当て部のフローチャート(組立単位への割り当て)。
【図4】第一の実施形態に係る演算装置の演算部のフローチャート。
【図5】第二の実施形態に係る演算装置の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、発明を実施するための実施形態について説明する。
(第一の実施形態)
図1は、第一の実施形態に係る演算装置1000の構成図である。
本実施形態の演算装置1000は、異なる物理量間の演算時にプレフィックス(接頭語
)や単位を含む演算を行う。
図1の演算装置1000は、割り当て部10、変換部20、演算部30、データベース
50、記憶部60、キーボード等の入力装置70、ディスプレイ等の出力装置80を備え
る。なお、割り当て部10、変換部20、演算部30はCPU等の演算処理装置100によ
り実現される。また、データベース50、記憶部60はメモリ等の記憶装置200により
実現される。
【0009】
以下、割り当て部10の機能について詳細に説明する。
割り当て部10は、物理量のSI単位系における基本単位に対して、一意に定まる識別子
(ID)として、それぞれ固有の素数(以下、第1標識)を割り当て、データベース50に
格納する。また、SI単位系における基本単位の組み合わせにより既約分数の形で表現する
ことができる組立単位に対して、それぞれ固有の整数の組(以下、第2標識)を割り当て
、整数値としてデータベース50に格納する。
【0010】
(基本単位)
図2は、基本単位に対する第1標識の割り当てのフローである。
割り当て部10は、整数を小さい順にカウントしていき(S101)、例えばエラトス
テネスの篩やAPR(Adleman-Pomerance-Rumely)判定法などの公知の方法により整数が素
数であるか否かを判定する(S102)。なお、100以下の素数としては、2,3, 5, 7, 11,
13, 17, 19, 23, 29, 31, 37, 41, 43, 47, 53, 59, 61,
67, 71, 73, 79, 83, 89, 97 が挙げられる。
【0011】
割り当て部10は、カウントにより得られる整数が素数である場合には、予め記憶部6
0に格納されている基本単位の第1標識の割り当ての対象となる第1のリストを参照して
、この第1のリスト順に基本単位を抽出する(S103)。そして、この基本単位に対し
て第1標識を割り当てていく(S104)。また、カウントにより得られる整数が素数で
ない場合には、素数が現れるまで再度整数をカウントしていく。
【0012】
割り当て部10は、記憶部60が格納する第1のリストに記載されている全ての基本単
位(および無次元量)に対して固有の第1標識を割り当てる(S105)。
表1は、SI単位系における基本単位(m, Kg, s, A,
K, Cd, mol)への第1標識の割り当ての一例を示す表である。
【0013】
【表1】

【0014】
なお、平面角(Radian)や立体角(Steradian)等の無次元量は、SI単位系においては
いずれも1(dimension = 1)であるが、物理量として異なるため、それぞれに固有の第1
標識を割り当て、基本単位と同等に扱うことができる。
【0015】
そこで、表2に示すように、割り当て部10は、無次元量(rad, sr等)を基本単位と
してみなし、無次元量に対して固有の第1標識を割り当てることも可能である。
【0016】
【表2】

【0017】
(組立単位)
SI単位系における組立単位は、基本単位の組み合わせ、すなわち基本単位の乗算または
除算により表現することができる(例えば、ニュートンN=Kg・m/s2)。組立単位と基本
単位の関係については、表3に示すように、第2のリストとして予め記憶部60に格納し
ておくことができる。
【0018】
【表3】

【0019】
図3は、組立単位に対する第2標識の割り当てのフローである。
割り当て部10は、第1標識として基本単位に割り当てられる素数をデータベース50
から読み出し、記憶部60が格納する第2のリストを参照して、リスト順に組立単位を抽
出する(S201)。そして、この組立単位の基本単位を用いた場合の表記に従い、分子
または分母ごとに基本単位の第1標識である素数を乗算する(S202)。例えば、ニュ
ートン(N)の基本単位を用いた表記では、分子はKg・mであるので、表1に示す基本単位
の第1標識に基づいて7・3=21を得る。また、分母はs2であるので、同様に表1に基づい
て11・11=121を得る。
【0020】
割り当て部10は、組立単位に対して分子の整数と分母の整数の組の順序列を第2標識
として割り当て(S203)、データベース50に格納する。上記のニュートン(N)の例
に従うと、ニュートン(N)に対する第2標識としては、(21, 121)のように与えられる

【0021】
割り当て部10は、記憶部60が格納する第2のリストに記載されている全ての組立単
位に対して固有の第2標識を割り当てる(S204)。
表4は、SI単位系における組立単位への第2標識の割り当ての一例を示す表である。な
お、表4に示す周波数(Hz)やクーロン(C)のように、分子または分母のいずれかが無
次元の場合には、無次元を1として、この1と整数の組を第2標識として割り当てる。すな
わち、表4の例では、周波数(Hz)に対しては(1, 11)を、クーロン(C)に対しては(
143, 1)を割り当てる。
【0022】
また、例えば周波数(Hz)と放射能(Bq)等のように、複数の組立単位が同一の次元を
持つ場合には、識別のための固有の素数を分子または分母に乗算することで、異なる第2
標識を割り当てる、表4に示す周波数(Hz)と放射能(Bq)の例では、いずれもs-1とし
て表されるので、周波数(Hz)に関しては(1, 11)を第2標識として割り当て、この周
波数(Hz)と区別するために、放射能(Bq)には、分子に識別のための素数37を乗算する
ことで、(37, 11)を第2標識として割り当てる。
【0023】
同様に、例えばグレイ(Gr)により表される吸収線量と、シーベルト(Sv)により表さ
れる線量当量は同じ[m2・s-2]の次元を持ち、線量当量は、吸収線量に放射線のタイプ毎
に異なる人体に対する効果計数(WR)を掛けて算出される値である。したがって、効果計
数(WR)に1つの素数41を与えることにより、例えば吸収線量が(9, 121)で表されると
き、線量等量は、 (9 ×41, 121)=(369,
121)と表すことが可能である。このように定めた第2標識により吸収線量と線量当量を
区別することが可能である。
【0024】
【表4】

【0025】
以下、変換部20、演算部30の機能について詳細に説明する。
演算装置1000は、割り当て部10が、第1のリストの基本単位および第2のリスト
の組立単位全てに対して、第1および第2標識をデータベース50に格納した後、このデ
ータベース50に格納される第1および第2標識を用いて異なる物理量間の演算を行う。
【0026】
変換部20は、例えば設計時等にユーザが入力装置70を用いて、物理量を量および単
位の文字列として入力する場合に、データベース50を参照して、ユーザにより入力され
た単位の文字列から対応する第2標識へ変換する。そして、量と第2標識の組を順序列と
して記憶部60に格納する。
【0027】
例えば、ユーザが入力装置70により、「50N」を入力すると、変換部20は、デー
タベース50を参照して、ニュートン(N)から第2標識である(21, 121)へ変換する。
そして、量50と、第2標識(21, 121)の組の順序列として、(50, 21, 121)を記憶部
60に格納する。なお、基本単位の場合には、第2標識の分母の整数は1とする。
【0028】
また、ユーザは入力装置70により、単位に加えプレフィックス(k, M, G等)を入力
することができる。一般に、プレフィックスは基数(底)をZ、指数部をnとすると、Zn
形で表すことができる。なお、基数Zとしては、通常の物理量の場合には10を、ビット(b
it)やバイト(byte)等の情報量の場合には1024(=210)を適用する。プレフィックスとZ
nとの関係は、第3のリストとして予めデータベース50に格納しておくことができる。
【0029】
変換部20は、ユーザが入力装置70を用いて、プレフィクスを文字列として入力する
と、第3のリストを参照して、文字列からプレフィクスを表すZnにおける指数部nへ変換
する。そして、量と第2標識と指数部の組を順序列として記憶部60に格納する。
【0030】
例えば、ユーザが入力装置70により、50kN(量として50、単位としてN、プレフ
ィックスとしてk)を入力すると、変換部20は、データベース50を参照して、ニュー
トン(N)から第2標識である(21, 121)へ変換する。また、kから103の指数部である3
へ変換する。そして、量50と第2標識と指数部の組の順序列(50, 21, 121, 3)を記憶
部60に格納する。
【0031】
また、ユーザは入力装置70により、異なる物理量の演算式を文字列で入力することが
できる。このとき、変換部20は、それぞれの物理量を順序列へ変換するが、後述の演算
の便のために除算を示す記号「÷(または/)」の直後の物理量に関しては、量の逆数と
、分母と分子を入れ替えた第2標識と、指数部にマイナスを付した値の順序列へ変換する

【0032】
演算部30は、ユーザが複数の異なる物理量の演算式を文字列で入力する際に、変換部
20が変換し記憶部60に格納する、量と第2標識と指数部の順序列(以下、順序列(a,
b, c, d)と表記)を用いて異なる物理量間の演算を行う。
【0033】
複数の異なる物理量の演算には、単位が異なる場合と同一の場合とで、次式のような性
質がある(演算式を乗算の形式で表現した場合)。なお、ここでは、異なる物理量に対応
してサフィックス(1, 2,…., n)を添えて表している。
【0034】
【数1】

【0035】
図4は、演算部30の演算のフローである。
具体的には、演算部30は、変換部20が変換し記憶部60に格納する複数の物理量に
ついて、それぞれ順序列(a,
b, c, d)を得る(S301)。このとき、プレフィックスが入力されていない物理量につ
いては、d=0として順序列(a ,b, c, 0)を得る。
【0036】
演算部30は、記憶部60から得た全ての順序列を参照して(S302)、順序列の第
2標識b, cのいずれかが異なる場合(すなわち、単位が異なる場合)には、(式1)に基
づいて、量同士の乗算(Πa=A)を行う(S303)。また、第2標識の分子同士の乗算(
Πb=B´)、第2標識の分母同士の乗算(Πc=C´)を行い(S304およびS305)、B
´およびC´の共通因数でそれぞれ除算(通分)することで、BおよびCを算出する(S30
6)。また、指数部の加算(Σd=D)を行う(S307)。
【0037】
そして、演算部30は、上記の算出結果を演算後の物理量を表す順序列(A, B, C, D)
を得て(S308)、記憶部60に格納する。
(演算の具体例)
以下、圧力(Pa)の算出の例を基に具体的な演算について説明する。
圧力(Pa)の単位は、ニュートン(N)を面積(m2)で割ることで得られる。例えば、5
0kgの人が1G(9.8m/s2)の重力加速度の下で、50cm2の台の上に乗る時、台に掛かる圧力
は、50kg ×9.8 m/ s2÷50 cm2により算出できる。
【0038】
そこで、ユーザが圧力を算出するために、入力装置70を用いて、50kg×9.8 m/ s2÷5
0 cm2を文字列として入力すると、変換部20は、50kgを(50, 7, 1, 0)へ、9.8
cm2を(9.8, 3, 112,0)へ、50 cm2を(50-1, 1, 32,-(-2)×2)へそれぞれ変換し、記憶
部60に格納する。
【0039】
演算部30は、記憶部60からそれぞれの順序列を参照して、図4に示すフローに従い
、量の乗算50×9.8×50-1、第2標識の乗算7×3×1および1×112×32、指数部の加算0+0+
2×2をそれぞれ行い、単位の通分を行うことで演算後の物理量を表す順序列(9.8, 7, 36
3, 4)を得る。そして、この順序列を記憶部60に格納する。
【0040】
なお、演算式が加算および減算により表される場合には、演算部30は、(式2)に従
い演算を行うことができる。このときには、例えば単位が同一であることを判定し、同一
である場合に演算を行う。同一でない場合には、後述の出力装置80によりエラーメッセ
ージを表示することで、ユーザに対して視覚的に認識させることができる。
【0041】
また、演算式が四則演算の組み合わせである場合には、(式1)および(式2)の両者
に従い演算を行うこともできる。
変換部20は、データベース50に格納されている組立単位の第2標識を参照して、演
算部30が記憶部60に格納する順序列(A, B, C, D)の単位を示す部分(B, C)と第2
標識が一致する組立単位または基本単位の文字列へ変換する。
【0042】
また、データベース50に格納されている第3のリストを参照して、指数部からプレフ
ィックスへ変換する。この際には、必要に応じて、不動小数点表記における乗数を調整し
、これにより生じる乗数を指数部に加算した後プレフィックの文字列へ変換する。
【0043】
出力装置80は、変換部20が変換する結果を、量、プレフィックス、単位の順序の文
字列で表示し、ユーザが視覚的に認識できるように演算結果を出力する。
本実施形態の演算装置1000によれば、単位に割り当てられる第1または第2標識を
用いることで、異なる単位間の演算の際も、素数同士の演算であるため意図しない通分等
による結果の誤謬を防ぐことができる。また、組立単位の表現方法(順序等)によらず単
位を正確に同定することができる。
【0044】
また、物理量が「量、単位、プレフィックスの指数部」の整数の組とする単純な順序列
で表現され、量なら量、単位なら単位、指数部なら指数部といった同一種類を示す整数同
士の演算に分解することで、単位およびプレフィックスを含む異なる物理量間の演算をよ
り簡単に行うことができる。
【0045】
なお、本実施形態では、設計時にユーザが入力装置70を用いて演算式等の文字列を入
力することを例に説明したが、演算装置1000と接続される制御対象となる装置の制御
や、診断等の物理量の演算を必要とする場合に、自動で演算式を得ることができる。また
、演算式ではなく、演算装置1000と接続されるケーブル等の装置に対して与えること
のできる最大許容電圧等の物理量を標識として付与(直接記載、RFID等の電子媒体、バー
コード等の光学媒体に情報タグとして記載)することで、正常な状態で装置が運転されて
いるか等を管理するための管理システムとして演算装置1000を用いることができる。
【0046】
また、本実施形態では、SI単位系のみを例として説明を行ったが、これに限定されるも
のではなく、インペリアル単位系等のSI単位系以外の単位系を対象にすることができる。
このときには、例えば単位系(SI単位系、インペリアル単位系等)を表す単位標識と、長
さ、重さ等の物理量の種類(概念)“quantity”を表す物理標識を順序列に加える。(例
えば、SI単位系におけるメートル(m)と、インペリアル単位系におけるヤード(yd)は
長さという同一の“quantity”に属する。)
【0047】
そして、データベース50に単位換算のための換算式をリストとして格納しておくこと
で、演算部30は、単位標識が異なり、かつ物理標識が同一の場合には、換算式を参照し
て、異なる単位系間での物理量の換算を行うことができる。
【0048】
(変形例)
第一の実施形態では、プレフィックスの表現のために、単位とは別にプレフィックスの
指数部を順序列の一つの整数として割り当てていた。本変形例では、単位とプレフィック
スを同時に表現する。
【0049】
割り当て部10は、基本単位には素数のうち2と5を除いた素数を第1標識として割り当
てる。また、この基本単位の第1標識を用いて、組立単位に対して第1標識を割り当てる
。なお、割り当ての詳細については、第一の実施形態と上記の点を除いて同様であるので
、ここでは説明を省略する。
【0050】
変換部20は、第一の実施形態と同様にユーザが入力装置70を用いて、物理量を量、
プレフィックス、単位の文字列として入力すると、データベース50を参照して、ユーザ
により入力された単位の文字列から対応する第2標識へ変換する。
【0051】
また、第3のリストを参照して、文字列からプレフィクスを表すZnに変換する。そして
、nが正の場合には、単位の第2標識のうち分子を表す整数にZnを乗算し、nが負の場合に
は、分母を表す整数にZ-nを乗算して、量と、プレフィックスが反映された単位の第3標
識の順序列として記憶部60に格納する。
【0052】
例えば、ユーザが入力装置70により、50kN(量として50、単位としてN、プレフ
ィックスとしてk)を入力すると、変換部20は、データベース50を参照して、ニュー
トン(N)から第2標識である(21, 121)へ変換する。また、記憶部60を参照して、k
から103=1000に変換し、第2標識のうち分子を表す21に1000を乗算して21000を得る。そ
して、量50と、プレフィックスが反映された第3標識の組の順序列(50, 21000, 121)
を記憶部60に格納する。
【0053】
演算部30は、ユーザが複数の異なる物理量の演算式を文字列で入力する際に、変換部
20が変換し記憶部60に格納する、量と、プレフィックスが反映された第3標識の順序
列(以下、順序列(a, e, f)と表記)を用いて異なる物理量間の演算を行う。
【0054】
演算部30は、記憶部60から得た全ての順序列を参照して、単位が異なる場合には、
量同士の乗算(Πa=A)を行う。また、第3標識の分子同士の乗算(Πe=E´)、第3標識
の分母同士の乗算(Πf=F´)を行い、E´およびF´の共通因数でそれぞれ除算(通分)
することで、EおよびFを算出する。
【0055】
そして、演算部30は、上記の算出結果を演算後の物理量を表す順序列(A, E, F)と
して、記憶部60に格納する。
これにより、物理量が「量、プレフィックスを含む単位」の整数の組とする、より単純
な順序列で表現することができる。そして、量同士、プレフィックスを含む単位同士の演
算に分解することで、より簡単に異なる物理量間の演算行うことができる。
【0056】
さらに、基本単位の第1標識として2と5を除くことで、プレフィックスを含む単位同士
の演算の際に予期せぬ通分を行うことなく、誤謬のない演算を行うことが可能となる。
【0057】
また、ここではプレフィックスを表す指数として基数Zを10とする10進法で表記する
(情報量の場合には1024とする)例を基に説明したが、例えば、単一の素数または複数の
素数の積を基数Zとすることもできる。
【0058】
この場合には、割り当て部10は、基本単位に対して基数Zを素因数に分解して得られ
る素数を除いた素数を第1標識として割り当てる。
例として、プレフィックスを表す素数として基数Zを21とする場合、割り当て部10は
、基本単位には、21を3と7の素因数に分解することで、この3と7を除いた素数を第1標識
として割り当てる。また、基数Zを単一の素数である7とする場合、割り当て部10は、基
本単位には7を除いた素数を第1標識として割り当てる。
【0059】
これにより、上記のように基数Zを10進法で表記する際に、10の素因数である2と5を
除く場合と同様に、プレフィックスを含む単位同士の演算の際に予期せぬ通分を行うこと
なく、誤謬のない演算を行うことが可能となる。
【0060】
変換部20は、第3標識の整数から、例えば素因数分解等によりプレフィックスZnを分
離する。そして、データベース50に格納されている第3のリストを参照して、指数部か
らプレフィックスの文字列へ変換する。また、データベース50に格納されている組立単
位の第2標識を参照して、プレフィックスが分離された後の第3標識と第2標識が一致す
る組立単位または基本単位の文字列へ変換する。
【0061】
(第二の実施形態)
図5は第二の実施形態に係る演算装置2000の構成図である。
演算装置2000は、照合部40を備える点で第一の実施形態に係る演算装置1000
とは異なる。なお、演算装置1000と同一の構成については、同一の符号を付すことで
説明を省略する。
【0062】
照合部40は、演算部30が異なる物理量間の演算を行う際に、これにより得られる演
算結果が、物理的に意味のある物理量かどうかを判別する。照合部40は、CPU等の演算
処理装置100により実現される。
【0063】
以下、照合部40の機能について詳細に説明する。
物理的に意味のある物理量かどうかの判別には演算結果の単位を用いることができる。
これは、例えば物理量の乗算または除算の演算の結果として得られる単位が、基本単位の
組み合わせとして存在しない場合には、演算結果は物理的に意味のない物理量であるとい
える。逆に、基本単位の組み合わせとして存在する場合には、演算結果は物理的に意味の
ある物理量であるといえる。
【0064】
照合部40は、演算部30が記憶部60に格納する演算結果の順序列(A, B, C, D)を
得て、単位を示す部分(B, C)を抽出する。そして、データベース50に格納されている
基本単位の第1標識および組立単位の第2標識を参照して、これら第1または第2標識と
抽出した(B, C)とを照合する。
【0065】
その結果、データベース50に格納されている第1または第2標識に、(B, C)と一致
する、すなわちB=bおよびC=cを同時に満たすものがある場合には、照合部40は演算結
果が物理的に意味のある物理量であると判定する。
【0066】
一方、データベース50に格納されている第1または第2標識に、(B, C)と一致する
ものがない場合には、照合部40は演算結果が物理的に意味のない物理量であると判定す
る。この際には、例えば出力装置80によりエラーメッセージを表示することで、ユーザ
に対して視覚的に認識させることができる。
【0067】
本実施形態の演算装置2000によれば、物理的に意味のある物理量を得る演算のみを
行うことができる。これによりユーザが行う設計時等には、ユーザによるヒューマンエラ
ーを防止することができる。
【0068】
以上説明した少なくとも1つの実施形態の演算装置によれば、単位およびプレフィック
スを含む異なる物理量間の演算を誤謬なく行うことが可能となる。
これら実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図し
ていない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明
の要旨を逸脱しない範囲で、様々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実
施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同時に、特許請求の範囲に記載され
た発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0069】
10・・・割り当て部
20・・・変換部
30・・・演算部
40・・・照合部
50・・・データベース
60・・・記憶部
70・・・入力装置
80・・・出力装置
100・・・演算処理装置
200・・・記憶装置
1000、2000・・・演算装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単位系を構成する基本単位に対して、素因数を含む基数と指数部とで表されるプレフィ
ックスの前記素因数を除いた素数が割り当てられる第1標識と、前記基本単位の組み合わ
せにより分子および分母を含む既約分数で表される組立単位に対して、前記第1標識の積
により得られる整数がそれぞれ、前記分子および前記分母に割り当てられる第2標識とを
記憶するデータベースと、
量、プレフィックス、単位をそれぞれ含む複数の物理量を得て、前記単位が前記基本単
位の場合には、前記単位を前記第1標識に変換し、変換された第1標識に前記プレフィッ
クスを乗算して第3標識を得る、または前記単位が前記組立単位の場合には、前記単位を
前記第2標識に変換し、変換された第2標識に前記プレフィックスを乗算して第3標識を
得る変換部と、
前記複数の物理量の前記量同士の演算、前記第3標識同士の演算をそれぞれ行う演算部
と、
を備える演算装置。
【請求項2】
前記データベースは、前記基本単位に対して、2と5を除いた素数が割り当てられる第
1標識を記憶する、請求項1に記載の演算装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の演算装置に用いられるデータベースであって、
単位系を構成する基本単位に対して、素因数を含む基数と指数部とで表されるプレフィ
ックスの前記素因数を除いた素数が割り当てられる第1標識と、前記基本単位の組み合わ
せにより分子および分母を含む既約分数で表される組立単位に対して、前記第1標識の積
により得られる整数がそれぞれ、前記分子および前記分母に割り当てられる第2標識とを
記憶するデータベース。
【請求項4】
前記基本単位に対して、2と5を除いた素数が割り当てられる第1標識を記憶する、請
求項3に記載のデータベース。
【請求項5】
単位系を構成する基本単位に対して、素数が割り当てられる第1標識と、前記基本単位
の組み合わせにより分子および分母を含む既約分数で表される組立単位に対して、前記第
1標識の積により得られる整数がそれぞれ、前記分子および前記分母に割り当てられる第
2標識とを記憶するデータベースと、
量、基数と指数部とで表されるプレフィックス、単位をそれぞれ含む複数の物理量を得
て、前記単位が前記基本単位の場合には、前記単位を前記第1標識に、または前記単位が
前記組立単位の場合には、前記単位を前記第2標識に変換する変換部と、
前記複数の物理量の前記量同士の第1演算、変換された第1標識または変換された第2
標識同士の第2演算、前記指数部同士の第3演算をそれぞれ行う演算部と、
を備える演算装置。
【請求項6】
前記第3演算の結果と、前記データベースが記憶する前記第1標識または前記第2標識
とを照合する照合部と、
前記結果を出力する出力部と、
をさらに備え、
前記結果と一致する前記第1標識または前記第2標識が存在しない場合に、前記出力部
はエラーメッセージを出力する、請求項5に記載の演算装置。
【請求項7】
請求項5または6に記載の演算装置に用いられるデータベースであって、
単位系を構成する基本単位に対して、素数が割り当てられる第1標識と、前記基本単位
の組み合わせにより分子および分母を含む既約分数で表される組立単位に対して、前記第
1標識の積により得られる整数がそれぞれ、前記分子および前記分母に割り当てられる第
2標識とを記憶するデータベース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−73284(P2013−73284A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209988(P2011−209988)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)