説明

漢方処方による花粉症の治療薬

【課題】陰虚体質が引き起こす花粉症の治療薬を提供する。
【解決手段】滋陰成分が、乾地黄、玄参、芍薬、山薬、麦門冬、北沙参、山茱萸、牛膝、から選択された少なくとも1種の生薬から構成され、潜陽成分が、代赭石、竜骨、牡蛎、から選択された少なくとも1種の生薬から構成され、清熱成分が、知母、石膏、から選択された少なくとも1種の生薬から構成され、熄風成分が、薄荷、菊花、蝉退、から選択された少なくとも1種の生薬から構成され、化湿成分が、滑石、車前子、から選択された少なくとも1種の生薬から構成され、化痰・化飲成分が、か楼仁、か楼根、貝母、半夏、から選択された少なくとも1種の生薬から構成されたものであり、全体中に占める成分の割合について、滋陰成分が5〜85重量部、副成分が5〜80重量部とされたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、漢方処方による花粉症の治療薬に関するものである。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特開平8−40922号公報
【0003】
あり余るほどの豊富な食生活、車社会、運動不足、頭を悩ますこと(ストレス)の多い日々、冷暖房の完備、地球の温暖化等、古代に比べると、現代日本における生活情況は大きく変化している。そのため、現代の人々は気欝し、内熱をもちやすく、ひいては、陰を損ない、痰や「お血」を生じ易い。このような状態となった体質を漢方では陰虚体質と呼ぶ。
【0004】
ここで、上記の「気欝」とは、漢方思想において、体のエネルギーである「気」のバランスが崩れたことにより現れる、憂欝感、抑欝感、不安感などの症状である。また、「内熱」とは、体を温める力である「陽気」が陰液に比べて相対的に増加することにより体内に生じる熱である。また、「陰」とは体内に存在する体液のことであり、「陰虚」とは、体液が不足して乾燥状態にあることを言う。また、「痰」とは、体液が停滞し煮詰められることによって生じる、病的な産物である。なお、この病理産物のうち、粘りのあるものを「痰」と言い、薄いものを「飲」と言う。なお、このようにして体内の湿気が発病因子となり得る場合、この湿気を「湿邪」と言う。また、「お血」とは血行障害及び血流を逸脱した古い血のことである。
【0005】
陰虚体質になっても、陰陽失調がある限度を越えるまでは、比較的元気で活動的である。最近の高齢者もほとんどの人々は年齢の割に若く(昔に比べると)、シャキシャキとして活動的である。これも陰虚体質によるものと考える。陰虚体質の人はあえて言うならば、ボクサータイプと言える。
【0006】
臨床においても陰虚の側面をもつ人は非常に多い(発明者の印象では、患者のうちの50〜60%におよぶ)。一方、陰虚の反対である陽虚に属する人は、陰虚に比較して圧倒的に少ない。現在の日本においては、ベースに陰虚の側面をもつ患者の非常に多いということを認識すべきである。
【0007】
古代中国の医学書である「黄帝内経素問」の「四気調神大論」には、「冬三月此謂閉蔵〜此冬気之応養蔵之道也」、「所以聖人春夏養陽、秋冬養陰」、つまり、寒い時期には陰精を養うような生活をすべきであると述べられている。しかし現代においては、夏も冬も同じように生活するため、養陰できず、陰の不足を来たし易い。よって、「内経」的には、冬にあまり活動的に暮らすと陰を養えず陰虚となる可能性が大きいと言える。
【0008】
以上のことから、現代生活そのものが、まさに陰虚体質の人々を生み出していると言える。ただ、一定陰虚の側面をもつ人の方が活動的で行動も敏捷であり、陰陽失調の程度が限度を越えてしまって発病する迄は、逆説的には、現代生活にむしろ適応し易いと言える。
【0009】
陰虚体質の人は内熱(虚熱)を持つ。春になって天の陽気も盛んとなり、冬に比し気温も上昇する(外界の熱)。これにより人体の内熱と外界の熱が呼応し、陰虚内熱が応じてきたところで軽い「風邪」(花粉)の刺激を受け、内熱はますます盛んになり、ついには陽亢化風の状態となって花粉症を発症する。
【0010】
なお、上記の「風邪」は「ふうじゃ」と読み、一般に言う風邪という病態を指すものではなく、漢方思想で、病気の元となる物質を言う。また、「陽亢」とは体内の「陽気」が上昇すること、「化風」とは、上記の「風邪」によって身体に変化が起こることを言う。
【0011】
花粉症の症状の中で鼻閉、咽痛、咳、目赤等は、上記の陽亢により引き起こされる。透明な水の如き鼻水は心下(みぞおち)或いは胃にある飲が、陽亢の勢いに乗じて上昇して鼻から溢れたものである。
【0012】
また、目の痒み、咽の痒み、口中の痒み、鼻の痒み、クシャミ等は化風により引き起こされる。
【0013】
花粉症において、花粉、つまり「風邪」の存在はその発症のきっかけとしては重要であるが、「風邪」そのものとしては軽微なものである。それよりもむしろ、人体側の陰陽失調の方が病理機序としては重要である。つまり、陰虚内熱の状態が一定のレベルに達してはじめて花粉症を発症するのである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
日本においては、花粉症と言えば、陰虚、陽虚、熱証、寒証にかかわらず「麻黄附子細辛湯」や「小青竜湯」等の処方が、患者に多く投与されている。これらは飲を捌いたり、通竅作用を発揮するため、どのような花粉症に対しても一定の有効性を持っている。なお、「通竅作用」とは、身体に開いた穴の通りを良くすることを言う。しかし、そのほとんどは標治、つまり対症療法にすぎず、その点においては西洋医学における抗アレルギー剤などの投与と変わらない。この様な弁病(病態のみで判断すること)による治療薬の投与は、少なくとも漢方的とは言いがたい。
【0015】
罹患総数は大変多い花粉症であるが、生死に関わる病いではない。しかし、日常生活に支障をきたしている人にとっては切実な問題である。一般的には、抗アレルギー剤、抗ヒスタミン剤の内服及び局所投与、更にはステロイドの局所投与にて、ほとんどはコントロールされている。しかし、中にはこれらの薬物による治療及びそれに加えて、麻黄附子細辛湯、小青竜湯、辛夷清肺湯等を投与してもコントロールの不良なものもある。これはやはり、このような治療が標治に過ぎないからである。
【0016】
上記のことに鑑み、本願発明は、陰虚体質が花粉症を引き起こすことに着目したものである。具体的に、本願発明は、症候及び脈を見極めた上で、陰虚内熱陽亢化風と弁証されるものに対して滋陰、潜陽、清熱、熄風、化風(化湿、化痰、化飲)の治療を行うことで陰虚体質を改善し、有効に花粉症を治療するための、漢方処方による花粉症の治療薬を提供することを課題とする。
【0017】
なお、特許文献1に係る発明は、活血作用を有する漢方薬を用いることにより、アレルギー性疾患を引き起こす、人体の過剰対応を抑制する治療薬に関するものである。しかし、陰虚体質を改善するという面から花粉症の治療薬を提供することは、現在までなされていなかったことであり、本願の発明者が初めてなしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するために、本願の請求項1に記載の発明は、漢方処方による花粉症の治療薬において、漢方思想における、「陰」を補う効能を有する滋陰成分と、「陽」を抑える効能を有する潜陽成分と、体内の熱を冷ます効能を有する清熱成分と、「陰虚」により引き起こされた身体の諸症状を改善する効能を有する熄風成分と、「湿邪」を体外に排出する効能を有する化湿成分と、体内に発生した「痰」や「飲」により起こる身体の諸症状を改善する効能を有する化痰・化飲成分とのうち、上記の滋陰成分、及び、上記の潜陽成分、清熱成分、熄風成分、化湿成分、化痰・化飲成分のうちから選択された1種以上の成分からなる副成分が、含有成分のうち少なくとも一部を占めるものであり、上記の滋陰成分が、乾地黄、玄参、芍薬、山薬、麦門冬、北沙参、山茱萸、牛膝、から選択された少なくとも1種の生薬から構成されたものであり、潜陽成分が、代赭石、竜骨、牡蛎、から選択された少なくとも1種の生薬から構成されたものであり、清熱成分が、知母、石膏、から選択された少なくとも1種の生薬から構成されたものであり、熄風成分が、薄荷、菊花、蝉退、から選択された少なくとも1種の生薬から構成されたものであり、化湿成分が、滑石、車前子、から選択された少なくとも1種の生薬から構成されたものであり、化痰・化飲成分が、か楼仁、か楼根、貝母、半夏、から選択された少なくとも1種の生薬から構成されたものであって、治療薬の全体中に占める成分の割合について、上記滋陰成分が5〜85重量部、上記副成分が5〜80重量部とされたことを特徴とする、漢方処方による花粉症の治療薬を提供する。
【0019】
また、本願の請求項2に記載の発明は、上記の副成分が、上記の潜陽成分、清熱成分、熄風成分、から選択された2種以上の成分からなることを特徴とする、請求項1に記載の、漢方処方による花粉症の治療薬を提供する。
【0020】
また、本願の請求項3に記載の発明は、上記の副成分が、上記の潜陽成分、清熱成分、熄風成分、から選択された1種以上の成分、及び、化湿成分、化痰・化飲成分のうちから選択された1種以上の成分からなることを特徴とする、請求項1に記載の、漢方処方による花粉症の治療薬を提供する。
【発明の効果】
【0021】
本願発明は、「陰」を補う、つまり体内を潤す効能を有する生薬から構成された滋陰成分を主体としたものであって、これを服用することにより陰虚体質を改善し、根本的に花粉症を治療することのできる、漢方処方による花粉症の治療薬を提供することができたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本願発明の実施の形態の一例を例示して説明する。なお、本例における治療薬の服用は、下記各成分の生薬を煎じ、有効成分を抽出することによってなされる。この有効成分の抽出は、患者自らが行うものとし、患者には生薬をそのまま処方するものとしても良いし、あらかじめ抽出がなされたものとし、患者にはその抽出されたエキス分を処方するものとしても良く、有効成分の抽出手段としては種々の手段が採用できる。
【0023】
なお、本願発明に係る治療薬は、陰虚内熱陽亢化風と弁証された患者に処方されるが、その判断の一つとして脈診が用いられる。具体的には、陰虚内熱陽亢化風の場合、関前の脈が「浮、弦、数」、或いは「浮、弦、細、数」を呈し、かつ、関後の脈が「沈、細、数」(時には「浮」)を呈することが多いので、これを基に判断する。
【0024】
なお、この脈診は、「寸」「関」「尺」の3部に分けて行われる。図1に示すように、橈骨茎状突起の部位を「関」(A)と言い、この「関」(A)よりも手の側を「寸」(B)、肘の側を「尺」(C)と言う。上記「関前の脈」とは、この「寸」(B)における脈のことを示し、「関後の脈」とは、この「尺」(C)における脈のことを示す。
【0025】
上記の「浮」とは、指を軽く触れただけでわかる脈の状態を指し、「弦」とは、弓の弦に触れるような感じで上下動の少ない突っ張った脈の状態を指し、「数」とは、拍動数の多い脈の状態を指し、「細」とは、幅の狭い脈の状態を指し、「沈」とは、「浮」の反対で指を触れた程度ではわからず、強く圧してわかる脈の状態を指す。
【0026】
本願発明に係る治療薬は、滋陰成分、及び、上記の潜陽成分、清熱成分、熄風成分、化湿成分、化痰・化飲成分のうちから選択された1種以上の成分からなる副成分が、含有成分のうち少なくとも一部を占めるものとされる。上記の副成分については、患者の症状などに応じて適宜処方される。
【0027】
滋陰成分とは、陰を補う、つまり体内を潤す効能を有する生薬から構成される。具体的には、乾地黄、玄参、芍薬、山薬、麦門冬、北沙参、山茱萸、牛膝、から選択された少なくとも1種の生薬から構成される。
【0028】
潜陽成分とは、内熱の原因となる陽気を抑える効能を有する生薬から構成される。具体的には、代赭石、竜骨、牡蛎、から選択された少なくとも1種の生薬から構成される。
【0029】
清熱成分とは、内熱を冷ます効能を有する生薬から構成される。具体的には、知母、石膏、から選択された少なくとも1種の生薬から構成される。
【0030】
熄風成分とは、陰虚により引き起こされた身体の諸症状を改善する効能を有する生薬から構成される。具体的には、薄荷、菊花、蝉退、から選択された少なくとも1種の生薬から構成される。
【0031】
化湿成分とは、湿邪を体外に排出する効能を有する生薬から構成される。具体的には、滑石、車前子、から選択された少なくとも1種の生薬から構成されたものである。
【0032】
化痰・化飲成分とは、体内に発生した痰や飲により起こる身体の諸症状を改善する効能を有する生薬から構成される。具体的には、か楼仁、か楼根、貝母、半夏、から選択された少なくとも1種の生薬から構成される。
【0033】
本願発明に係る治療薬の全体中に占める上記成分の割合は、滋陰成分が5〜85(より望ましくは15〜75)重量部、上記副成分が5〜80(より望ましくは10〜75)重量部とされる。
【0034】
また、上記に挙げた滋陰成分及び副成分以外に属さない生薬も、患者の症状や服用をしやすくするために、適宜配合される。例示すると、生甘草、南沙参、丹参、酸棗仁、柏子仁、竜眼肉、遠志、続断、杜仲、麦芽、大黄、黄耆、柴胡、升麻、熟地黄、牛蒡子、銀花、連翹、牡丹皮であるが、その他種々の生薬を配合することができる。
【0035】
以下に、発明者が実際に診察を行い、本願発明に係る治療薬の実施例として処方を行った13の症例について説明する。なお、表1〜表4中の数値は生薬の重量(単位:g)を示す。
【実施例1】
【0036】
(症例1)33歳 男 花粉症
第1診:2005.4.5
主な症状:鼻閉、鼻汁、目痒、咽痛、クシャミ、頭がボーッとする、口乾、冷飲、身熱、寝汗
処方:表1の1−1欄の通り

第2診:2005.4.8
主な症状:服薬後約2日で鼻閉と口渇以外の症状消失
処方:表1の1−2欄の通り

第3診:2005.4.12
主な症状:鼻閉と口渇消失
処方:表1の1−3欄の通り(第1診と同処方)

第4診:2005.4.16
主な症状:諸症状消失
処方:表1の1−4欄の通り
【実施例2】
【0037】
(症例2)71歳 男 花粉症
第1診:2005.4.22
主な症状:鼻汁、鼻閉、咳、目痒、咽のイガイガ感、クシャミ、ふらつき
処方:表1の2−1欄の通り

第2診:2005.5.6
主な症状:服薬後約7日で諸症状消失
処方:表1の2−2欄の通り
【実施例3】
【0038】
(症例3)60歳 女 花粉症
第1診:2005.4.11
主な症状:鼻汁、鼻閉、目痒、咽痒、口乾、冷、頭痛、倦怠感
処方:表1の3−1欄の通り、ただし抗アレルギー剤を併用

第2診:2005.4.18
主な症状:鼻閉は継続、鼻汁、目痒、咽痒は消失、頭痛は改善
処方:表1の3−2欄の通り、ただし抗アレルギー剤を併用

第3診:2005.5.9
主な症状:服薬後約4日で諸症状消失
処方:表1の3−3欄の通り、ただし抗アレルギー剤を併用
【0039】
【表1】

【実施例4】
【0040】
(症例4)60歳 女 花粉症
第1診:2005.4.13
主な症状:鼻汁、鼻閉、目痒、咳、咽のイガイガ感、不眠
処方:表2の4−1欄の通り

第2診:2005.4.27
主な症状:鼻汁、咽のイガイガ感、不眠は継続、他の症状改善
処方:表2の4−2欄の通り

第3診:2005.5.16
主な症状:花粉症の症状消失、不眠は改善
処方:表2の4−3欄の通り
【実施例5】
【0041】
(症例5)64歳 女 花粉症
第1診:2005.4.4
主な症状:鼻汁、鼻閉、クシャミ、目痒、咳、咽のイガイガ感、口乾、冷飲、腰痛、身涼、肌水、食欲低下
処方:表2の5−1欄の通り、ただし抗アレルギー剤を併用

第2診:2005.4.25
主な症状:鼻閉、鼻汁、クシャミ、口乾、冷飲は継続、目痒、咳、咽のイガイガ感は改善
処方:表2の5−2欄の通り、ただし抗アレルギー剤を併用

第3診:2005.5.16
主な症状:不眠が現れる、4月末から花粉症の症状は改善、腰痛改善
処方:表2の5−3欄の通り
【実施例6】
【0042】
(症例6)57歳 男 花粉症
第1診:2005.4.18
主な症状:鼻閉、鼻汁、目痒、咽痒、クシャミ、夜間の空咳、身熱
処方:表2の6−1欄の通り

第2診:2005.5.30
服薬後4〜5日で花粉症の症状は消失、身熱は継続
処方:表2の6−2欄の通り
【0043】
【表2】

【実施例7】
【0044】
(症例7)28歳 男 花粉症
第1診:2005.4.28
主な症状:鼻閉、鼻汁、目痒、クシャミ、身熱、口乾、冷飲
処方:表3の7−1欄の通り、ただし抗アレルギー剤を併用

第2診:2005. 5.19
主な症状:5月初めに諸症状消失
処方:表3の7−2欄の通り
【実施例8】
【0045】
(症例8)69歳 女 花粉症
第1診:2005.4.21
主な症状:鼻汁、鼻閉、鼻痒、目痒、涙、クシャミ、肌水
処方:表3の8−1欄の通り

第2診:2005.5.19
主な症状:5月初めに諸症状消失
【実施例9】
【0046】
(症例9) 43歳 女 花粉症
第1診:2005.4.15
主な症状:鼻閉、鼻汁、目痒、咽痒、咳、クシャミ、胸中不快感、倦怠感、肌水
処方:表3の9−1欄の通り、ただし抗アレルギー剤(点鼻液)を併用

第2診:2005.5.10
主な症状:服薬後4〜5日で花粉症の症状は消失、倦怠感は継続
処方:表3の9−2欄の通り
【実施例10】
【0047】
(症例10)35歳 女 花粉症、喘息
第1診:2005.4.11
主な症状:鼻汁、鼻閉、目痒、咽痒、咳、クシャミ、胃もたれ、倦怠感、手足尖冷、冷飲、口乾
処方:表3の10−1欄の通り

第2診:2005.4.25
主な症状:咳消失、他の花粉症の症状、胃もたれはやや改善、口乾、冷、夕方身熱
処方:表3の10−2欄の通り

第3診:2005.5.16
服薬後数日で花粉症の症状消失
処方:表3の10−3欄の通り
【0048】
【表3】

【実施例11】
【0049】
(症例11) 40歳 女 花粉症、喘息
第1診:2005.6.6
主な症状:鼻汁、鼻閉、クシャミ、目痒、身熱、口乾
処方:表4の11−1欄の通り

第2診:2005.6.20
主な症状:6月12日頃から花粉症の症状消失
処方:表4の11−2欄の通り
【実施例12】
【0050】
(症例12)39歳 女 花粉症
第1診:2005.4.27
主な症状:鼻汁、鼻閉、目痒、咽痒、口乾、手掌の皮膚炎
処方:表4の12−1欄の通り

第2診:2005.5.11
主な症状:花粉症の症状改善、手掌の皮膚炎改善
処方:表4の12−2欄の通り

第3診:2005.6.5
主な症状:花粉症の症状消失
処方:表4の12−3欄の通り
【実施例13】
【0051】
(症例13)80歳 男 花粉症
第1診:2005.6.3
主な症状:クシャミ、鼻汁、鼻閉、目痒、のぼせ
処方:表4の13−1欄の通り

第2診:2005.6.24
主な症状:服薬後2〜3日で花粉症の症状改善、6月10日には消失
【0052】
【表4】

【0053】
上記のように、本願発明に係る治療薬は、陰虚体質により引き起こされた花粉症に対して有効性を有することが、臨床的に確認できたものである。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】脈診を行う部位の説明図である。
【符号の説明】
【0055】
A 「関」
B 「寸」、関前
C 「尺」、関後

【特許請求の範囲】
【請求項1】
漢方処方による花粉症の治療薬において、
漢方思想における、「陰」を補う効能を有する滋陰成分と、
「陽」を抑える効能を有する潜陽成分と、
体内の熱を冷ます効能を有する清熱成分と、
「陰虚」により引き起こされた身体の諸症状を改善する効能を有する熄風成分と、
「湿邪」を体外に排出する効能を有する化湿成分と、
体内に発生した「痰」や「飲」により起こる身体の諸症状を改善する効能を有する化痰・化飲成分とのうち、
上記の滋陰成分、及び、上記の潜陽成分、清熱成分、熄風成分、化湿成分、化痰・化飲成分のうちから選択された1種以上の成分からなる副成分が、含有成分のうち少なくとも一部を占めるものであり、
上記の滋陰成分が、乾地黄、玄参、芍薬、山薬、麦門冬、北沙参、山茱萸、牛膝、から選択された少なくとも1種の生薬から構成されたものであり、
潜陽成分が、代赭石、竜骨、牡蛎、から選択された少なくとも1種の生薬から構成されたものであり、
清熱成分が、知母、石膏、から選択された少なくとも1種の生薬から構成されたものであり、
熄風成分が、薄荷、菊花、蝉退、から選択された少なくとも1種の生薬から構成されたものであり、
化湿成分が、滑石、車前子、から選択された少なくとも1種の生薬から構成されたものであり、
化痰・化飲成分が、か楼仁、か楼根、貝母、半夏、から選択された少なくとも1種の生薬から構成されたものであって、
治療薬の全体中に占める成分の割合について、
上記滋陰成分が5〜85重量部、上記副成分が5〜80重量部とされたことを特徴とする、漢方処方による花粉症の治療薬。
【請求項2】
上記の副成分が、上記の潜陽成分、清熱成分、熄風成分、から選択された2種以上の成分からなることを特徴とする、請求項1に記載の、漢方処方による花粉症の治療薬。
【請求項3】
上記の副成分が、上記の潜陽成分、清熱成分、熄風成分、から選択された1種以上の成分、及び、化湿成分、化痰・化飲成分のうちから選択された1種以上の成分からなることを特徴とする、請求項1に記載の、漢方処方による花粉症の治療薬。

【図1】
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【公開番号】特開2007−210933(P2007−210933A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−31908(P2006−31908)
【出願日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(306000740)
【Fターム(参考)】