説明

漢方又は生薬製剤及びその製造方法

【課題】吸湿性の高い漢方乾燥エキスを含んでいても、微粉量の少ない製剤及びその製造方法を提供する。
【解決手段】漢方乾燥エキスを含む組成物に、アルファー化デンプンを含む結合剤の水溶液を噴霧して流動層造粒し、漢方製剤を得る。アルファー化デンプンは、水溶性成分の含有量が45〜90質量%、3質量%水溶液の粘度が、室温、30rpmで100〜300mPa・sであってもよい。製剤全体に対して、アルファー化デンプンの含有量は0.1〜5質量%、漢方乾燥エキスの含有量は40〜95質量%であってもよい。漢方製剤において、200メッシュパス(75μm以下)の微粉の含有量は10質量%以下の散剤であってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、漢方乾燥エキス(生薬乾燥エキス)とアルファー化デンプンとを含む製剤、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
漢方又は生薬製剤には、数種類の生薬原末を配合した製剤と、原生薬から抽出・濃縮した漢方又は生薬エキスを配合した製剤がある。生薬原末に関しては、1日処方量が非常に大きいため、服用性に問題が生じる。そのため、主成分の原生薬をまとめて抽出・濃縮したエキスが好んで用いられる。漢方又は生薬エキスは、乾燥エキスと軟エキスに大別される。
【0003】
乾燥エキスの製造方法は、数種類の原生薬からの浸出液を抽出・濃縮した後に噴霧乾燥により粉末化する手法が多く用いられる。しかし、この手法で得られた乾燥エキスの多くは、粒子径が20〜30μmと小さいため、凝集性が高く流動性が悪い。さらに、吸湿性が大きいという問題もある。そのため、乾燥エキス自体にデキストリンなどが添加されて流動性が改善されているが、これらの添加剤は乾燥エキス自体の流動性及び吸湿性を改善するために添加されており、製剤化の際の作業性を向上させるほどの量ではない。
【0004】
流動性及び吸湿性の改善のために、軟エキスの段階で、吸水性の高い製剤成分(無水ケイ酸、デキストリンなど)を混合し、噴霧乾燥を行う方法も知られている。例えば、特開平9−176027号公報(特許文献1)には、ダイオウなどのアントロン系化合物を主成分とする生薬エキスと多孔性ケイ酸カルシウムとを配合し、平衡相対湿度40%以下で製した医薬組成物が開示されている。しかし、製剤化での製剤成分の配合量が多くなるため、エキスを固形分20〜30%程度しか配合することができず、また吸湿性の抑制も十分でない。
【0005】
また、結合剤の水溶液を用いて吸湿性の高い乾燥エキスを造粒することも知られている。しかし、乾燥エキスは、水溶液と接触すると、溶解してべっとりとした粘性物を生成し、そのまま乾燥により固化してしまう特性がある。そのため、粗い粒度の造粒物が生成し、散剤としても適合しない。一方、粗大な生成物(又は造粒物)を破砕すると、適度な粒度を経ることなく、流動性に劣る粉末状に破砕され、重質で流動性の粒剤を得ることができない。
【0006】
このような問題は、結合剤溶液を噴霧して、吸湿性の高い漢方乾燥エキスを流動層造粒する方法でも生じ、粉末の流動性不良が問題となる。一方、流動不良を起こさずに造粒するためには、多量の賦形剤を配合する方法、結合剤溶液の注液速度を小さくし、低水分状態で造粒する方法が利用される。しかし、漢方製剤は1日当たりの服用量が多いため、賦形剤を多量に配合することは、服用性の観点から望ましくない。また、注液速度を小さくし、低水分条件で造粒すると、造粒が円滑に進行せず、微粉量が多くなる。特に、製剤中の乾燥エキスの含有量を大きくすると、微粉量が多くなり、重質で流動性に優れた製剤(散剤など)を得ることができない。微粉量の多い造粒物は、散剤(細粒剤を含む)や顆粒剤の製造、例えば、造粒後の工程(混合、包装など)などの製造工程において操作性及び作業性の低下をもたらし、服用時には内袋からの流動性が悪いという問題が生じる。そのため、漢方製剤では、微粉量を極力減らすことが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−176027号公報(特許請求の範囲、段落[0004])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、吸湿性の高い漢方又は生薬のエキスを含んでいても、微粉量の少ない製剤(例えば、200メッシュパス(通過)の微粉が10質量%以下の製剤)及びその製造方法を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、漢方又は生薬のエキスを高含量で含んでいても、重質で流動性の高い製剤及びその製造方法を提供することにある。
【0010】
本発明のさらに他の目的は、低水分条件で流動層造粒しても、円滑に造粒でき、微粉の発生が抑制された製剤及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討したところ、乾燥エキスの流動層造粒において、結合剤としてアルファー化デンプンを用いると、乾燥エキスの含有量が高くても、また低水分での造粒においても、200メッシュパスの微粉の発生を10質量%以下に抑制でき、重質で流動性に優れた製剤(散剤)が得られることを見いだし、本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明の漢方製剤は、(1)生薬又は漢方乾燥エキスとアルファー化デンプンとを含んでいる。(2)アルファー化デンプンの水溶性成分の含有量は45〜90質量%であってもよい。また、(3)アルファー化デンプンの3質量%水溶液の粘度は、室温、30rpmで100〜300mPa・sであってもよい。(4)アルファー化デンプンは、バレイショデンプンなどであってもよい。
【0013】
さらに、(5)アルファー化デンプンの含有量は製剤全体に対して0.1〜5質量%であってもよく、(6)製剤中の漢方又は生薬乾燥エキスの含有量は40〜95質量%であってもよい。(7)エキスは、参蘇飲エキス又は参蘇飲エキスのデキストリンプレミックス品などであってもよい。(8)漢方製剤は、散剤であってもよく、(9)200メッシュパス(75μm以下)の微粉の含有量が10質量%以下の散剤であってもよい。
【0014】
本発明は、(10)漢方乾燥エキスを含む組成物に、アルファー化デンプンを含む結合剤の水溶液を噴霧して流動層造粒する漢方製剤の製造方法を包含する。この方法において、(11)結合剤の水溶液中のアルファー化デンプン濃度は1〜10質量%であってもよい。また、前記方法において、低水分条件で造粒してもよい。造粒工程における水分条件(水分量)は、平衡相対湿度(ERH, Equilibrium Relative Humidity)を測定すること等により確認することができる。そのため、前記方法において、(12)平衡相対湿度が40%以下で造粒してもよい。
【0015】
また、本発明は、(13)漢方乾燥エキスを含む組成物に、アルファー化デンプンを含む結合剤の水溶液を噴霧して流動層造粒し、微粉の発生を抑制する方法も包含する。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、漢方又は生薬乾燥エキスの造粒において、結合剤としてアルファー化デンプンを用いるため、吸湿性の高い漢方乾燥エキスを用いて低水分量で造粒しても微粉量の少ない製剤(粒剤などの造粒製剤)を得ることができる。また、漢方乾燥エキスの含有量が高くても重質で流動性の高い製剤(粒剤など)を得ることができる。さらには、低水分条件で流動層造粒しても、造粒効率が高く、微粉の発生を抑制できる。
【0017】
また、散剤は微粉が多いと服用時に服用者がむせやすい。さらに、製造段階のパッケージングの際に微粉がフィルムなどの包装材に付着しやすくなり、製造ロスが多くなる。これまで、低水分条件下で流動層造粒をおこなうと、微粉が多くなりこのような問題が生じていた。しかし、本発明により、漢方又は生薬乾燥エキスを、特定の結合剤を用いて特定の平衡相対湿度下で造粒すると、微粉量の少ない製剤を得ることができるため、パッケージング特性と服用性に優れた漢方製剤を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[漢方又は生薬エキス]
乾燥エキスとして用いられる生薬の種類は、特に制限されず、例えば、例えば、アセンヤク、イレイセン(威霊仙)、ウイキョウ(茴香)、エンゴサク(延胡索)、オウギ(黄耆)、オウゴン(黄岑)、オウバク(黄柏)、オウヒ(桜皮)、オウレン(黄連)、オンジ(遠志)、ガジュツ、カンキョウ(乾姜)、カッコン(葛根)、カッコウ、カロニン、カノコソウ、カンゾウ(甘草)、カミツレ、キキョウ(桔梗)、キクカ(菊花)、キジツ(枳実)、キョウニン(杏仁)、キョウカツ、クジン(苦参)、ケイガイ(荊芥)、ケイヒ(桂皮)、ゲンチアナ、コウカ(紅花)、コウブシ(香附子)、コウベイ、コウボク(厚朴)、ゴオウ、ゴシツ(牛膝)、ゴシュユ(呉茱萸)、ゴボウシ(牛蒡子)、ゴミシ(五味子)、サイコ(柴胡)、サイシン(細辛)、サンシシ(山梔子)、サンシュユ(山茱萸)、サンショウ(山椒)、サンザシ(山査子)、サンズコン(山豆根)、サンソウニン(酸棗仁)、サンヤク(山薬)、サンナ(山奈)、ジオウ(地黄)、シオン、シャクヤク、ジャコウ、ショウマ(升麻)、シツリシ、シャゼンシ、シャゼンソウ、シャジン(シュクシャ(縮砂))、獣胆(ユウタンを含む)、ショウキョウ(生姜)、ジリュウ(地竜)、シンイ(辛夷)、ジコッピ(地骨皮)、シコン、セキサン(石蒜)、セッコウ(石膏)、セネガ、センコツ(川骨)、ゼンコ(前胡)、センキュウ、センブリ、ソウジュツ(蒼朮)、ソウハクヒ(桑白皮)、ソヨウ(蘇葉)、ダイオウ(大黄)、タイソウ、チクジョ、チクセツニンジン(竹節人参)、チョウジ(丁子)、チョレイ(猪苓)、チンピ(陳皮)、テンナンショウ(天南星)、トウガシ(冬瓜子)、トウキ(当帰)、トウニン(桃仁)、トコン、トチュウ、ナンテンジツ、ニンジン(人参)、ニンドウ(忍冬)、バイモ、バクモンドウ、ハッカ(薄荷)、ハンゲ(半夏)、ビャクシ、ビャクシャク、ビャクジュツ(白朮)、ビワヨウ(枇杷葉)、ビンロウジ(檳榔子)、ブクリョウ(茯苓)、ボタンピ(牡丹皮)、マオウ(麻黄)、マシニン(麻子仁)、モッコウ(木香)、ヨクイニン、リュウガンニク(竜眼肉)、リョウキョウ(良姜)、リュウコツ(竜骨)、リュウタン(竜胆)、レンニク(蓮肉)、レンギョウ(連翹)などが例示できる。
【0019】
生薬は、疾患の種類に応じて選択でき、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。より具体的には、かぜ症候群の治療及び/又は予防に用いられる漢方薬又は生薬(例えば、総合感冒剤などの成分)としては、例えば、マオウ、ナンテンジツ、オウヒ、オンジ、カンゾウ、キキョウ、キョウニン、シャゼンシ、シャゼンソウ、サンソウイン、セキサン(石蒜)、セネガ、セッコウ(石膏)、バイモ、ウイキョウ、オウバク、オウレン、ガジュツ、カノコソウ、カミツレ、ケイヒ、ゲンチアナ、ゴオウ、サンショウ、シャジン、ショウキョウ、ジリュウ、ソウジュツ、チョウジ、チンピ、ビャクジュツ、ボタンピ、ジオウ(地黄)、チクセツニンジン、トコン、ニンジン、アセンヤク、ウイキョウ、オウゴン、カッコン、カロニン、キョウニン、ケイヒ、ゴオウ、コウブシ、コウベイ(粳米)、コウボク、ゴミシ、サイコ、サイシン、シオン、ジャコウ、シャクヤク、ソウハクヒ、ソヨウ、タイソウ、チクセツニンジン、バクモンドウ、ハンゲ、バイモ、ブクリョウ、リュウコツ(竜骨)、獣胆(ユウタンを含む)などが例示できる。代表的なかぜ症候群の治療及び/又は予防に用いられる生薬(例えば、総合感冒剤などの生薬成分)は、ナンテンジツエキス、キキョウエキス、ショウキョウエキス、チンピエキスなどを含んでいてもよい。
【0020】
また、生薬エキスの代わりに漢方エキスが用いられてもよい。漢方エキスは、生薬原末から抽出したエキスの濃縮エキスまたは複数の生薬から抽出したエキスまたはその混合物であってもよい。本発明に使用される漢方エキスとしては、内服投与によって使用されるものであって、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであればよく、構成する生薬の組合せやその配合比率についても特に制限されないが、例えば、「改定 一般用漢方処方の手引き」(財団法人 日本公定書協会監修、日本漢方生薬製剤協会編集、株式会社じほう発行)および「改定 一般用漢方処方の手引き 平成22年4月1日通知(加減方追加)対応追補版」(財団法人 日本公定書協会監修、日本漢方生薬製剤協会編集、株式会社じほう発行)に記載されている漢方配合を有するエキスが挙げられる。具体的には、安中散、安中散加茯苓、胃風湯、胃苓湯、茵ちん蒿湯、茵ちん五苓散、温経湯、温清飲、温胆湯、延年半夏湯、黄耆建中湯、黄ごん湯、応鐘散、黄連阿膠湯、黄連解毒湯、黄連湯、乙字湯、乙字湯去大黄、化食養脾湯、かっ香正気散、葛根黄連黄ごん湯、葛根紅花湯、葛根湯、葛根湯加川きゅう辛夷、加味温胆湯、加味帰脾湯、加味解毒湯、加味逍遙散、加味逍遙散加川きゅう地黄、加味平胃散、乾姜人参半夏丸、甘草瀉心湯、甘草湯、甘麦大棗湯、帰耆建中湯、桔梗湯、帰脾湯、きゅう帰膠艾湯、きゅう帰調血飲、きゅう帰調血飲第一加減、響声破笛丸、杏蘇散、苦参湯、駆風解毒散(湯)、荊芥連翹湯、鶏肝丸、桂枝湯、桂枝加黄耆湯、桂枝加葛根湯、桂枝加厚朴杏仁湯、桂枝加芍薬生姜人参湯、桂枝加芍薬大黄湯、桂枝加芍薬湯、桂枝加朮附湯、桂枝加竜骨牡蛎湯、桂枝加苓朮附湯、桂枝人参湯、桂枝茯苓丸、桂枝茯苓丸料加よく苡仁、啓脾湯、荊防敗毒散、桂麻各半湯、鶏鳴散加茯苓、堅中湯、甲字湯、香砂平胃散、香砂養胃湯、香砂六君子湯、香蘇散、厚朴生姜半夏人参甘草湯、五虎湯、牛膝散、五積散、牛車腎気丸、呉茱萸湯、五物解毒散、五淋散、五苓散、柴陥湯、柴胡加竜骨牡蛎湯、柴胡桂枝乾姜湯、柴胡桂枝湯、柴胡清肝湯、柴芍六君子湯、柴朴湯、柴苓湯、左突膏、三黄散、三黄瀉心湯、酸棗仁湯、三物黄ごん湯、滋陰降火湯、滋陰至宝湯、紫雲膏、四逆散、四君子湯、滋血潤腸湯、七物降下湯、柿蒂湯、四物湯、炙甘草湯、芍薬甘草湯、鷓鴣菜湯、蛇床子湯、十全大補湯、十味敗毒湯、潤腸湯、蒸眼一方、生姜瀉心湯、小建中湯、小柴胡湯、小柴胡湯加桔梗石膏、小承気湯、小青竜湯、小青竜湯加杏仁石膏、小青龍湯加石膏、椒梅湯、小半夏加茯苓湯、消風散、升麻葛根湯、逍遙散、四苓湯、辛夷清肺湯、秦ぎょう姜活湯、秦ぎょう防風湯、参蘇飲、神秘湯、参苓白朮散、清肌安蛔湯、清湿化痰湯、清上けん痛湯、清上防風湯、清暑益気湯、清心蓮子飲、清肺湯、折衝飲、川きゅう茶調散、千金鶏鳴散、銭氏白朮散、疎経活血湯、蘇子降気湯、大黄甘草湯、大黄牡丹皮湯、大建中湯、大柴胡湯、大柴胡湯去大黄、大半夏湯、竹茹温胆湯、治打撲一方、治頭瘡一方、治頭瘡一方去大黄、中黄膏、調胃承気湯、丁香柿蒂湯、釣藤散、猪苓湯、猪苓湯合四物湯、通導散、桃核承気湯、当帰飲子、当帰建中湯、当帰散、当帰四逆湯、当帰四逆加呉茱萸生姜湯、当帰芍薬散、当帰湯、当帰貝母苦参丸料、独活葛根湯、独活湯、二朮湯、二陳湯、女神散、人参湯、人参養栄湯、排膿散、排膿湯、麦門冬湯、八味地黄丸、半夏厚朴湯、半夏瀉心湯、半夏白朮天麻湯、白虎湯、白虎加桂枝湯、白虎加人参湯、不換金正気散、伏竜肝湯、茯苓飲、茯苓飲加半夏、茯苓飲合半夏厚朴湯、茯苓沢瀉湯、分消湯、平胃散、防已黄耆湯、防已茯苓湯、防風通聖散、補気健中湯、補中益気湯、補肺湯、麻黄湯、麻杏甘石湯、麻杏よく甘湯、麻子仁丸、麻黄附子細辛湯、楊柏散、よく苡仁湯、抑肝散、抑肝散加陳皮半夏、六君子湯、立効散、竜胆瀉肝湯、苓姜朮甘湯、苓桂甘棗湯、苓桂朮甘湯、六味丸、黄耆桂枝五物湯、解労散、加味四物湯、枳縮二陳湯、こ菊地黄丸、柴胡疎肝湯、柴蘇飲、芍薬甘草附子湯、沢しゃ湯、竹葉石膏湯、知柏地黄丸、中建中湯、定悸飲、当帰芍薬散加黄耆釣藤、当帰芍薬散加人参、当帰芍薬散加附子、排膿散及湯、八解散、附子理中湯、味麦地黄丸、明朗飲、抑肝散加芍薬黄連、連珠飲、麻黄湯等のエキスが例示される。代表的なかぜ症候群の治療及び/又は予防に用いられる漢方(例えば、総合感冒剤などに配合される漢方成分)は、参蘇飲、葛根湯、桂枝湯、香蘇湯、柴胡桂枝湯、小柴胡湯、小青竜湯、麦門冬湯、半夏厚朴湯、麻黄湯から選択された一種を含んでいてもよい。また、本発明で用いられる代表的な漢方は、参蘇飲、香蘇散、半夏厚朴湯、六君子湯、四君子湯、銭氏白朮散である。
【0021】
なお、これらの漢方エキスは、生薬乾燥エキスの形態ではない非抽出生薬、例えば、コウベイ(粳米)、ゴオウ、セッコウ(石膏)、バイモ、リュウコツ(竜骨)、リュウタン(竜胆)などの獣胆などと組み合わせて使用してもよい。また、これらの乾燥エキスは、その流動性、吸湿性を改善するため、例えば、デキストリンなどを含有したプレミックス品でもよい。プレミックス品は市販のもの(キキョウ乾燥エキス末、地竜エキス散−N;いずれも日本粉末薬品株式会社製)を用いてもよい。また、プレミックス品は製薬産業で一般的に用いられる添加剤[例えば、軽質無水ケイ酸(商品名;サイリシア)、ケイ酸カルシウム(商品名;フローライトRE)等の吸着剤、乳糖、デンプン、結晶セルロース、カルメロースカルシウム(商品名;ECG505)等の賦形剤]を軟エキスに加えて、湿式造粒法、噴霧乾燥法(スプレードライ)、または特表2005−515174号に記載の方法等により得たものでもよい。
【0022】
本発明では漢方製剤(生薬製剤)の製造において、生薬は乾燥エキスまたはプレミックス品の形態で使用されることが好ましい。
【0023】
各生薬乾燥エキスの1日当たりの使用量(投与量)は、生薬の種類に応じて、例えば、原生薬換算で、100〜50000mg、好ましくは250〜20000mg、さらに好ましくは500〜15000mg程度から選択できる。より具体的には、1日当たりの使用量(投与量)は、原生薬換算で、ジンソイン(参蘇飲)では、例えば、1000〜50000mg、好ましくは5000〜20000mg程度であってもよい。
【0024】
なお、本発明では、生薬成分(漢方薬)の含有量が高くても、重質で流動性の高い製剤(散剤などの粒剤)を得ることができる。そのため、製剤(造粒物又は造粒による粒剤)中の乾燥エキス含有量は、例えば、固形分換算で、25〜95質量%程度の広い範囲で選択でき、通常、40〜95質量%(例えば、45〜90質量%)、好ましくは50〜80質量%(例えば、50〜70質量%)、さらに好ましくは55〜65質量%(例えば、50〜65質量%)程度であってもよい。
【0025】
[非生薬活性成分]
本発明の漢方製剤(又は医薬組成物)は、活性成分として少なくとも生薬を含んでいればよく、活性成分は生薬単独で形成してもよく、必要であれば、生薬と非生薬活性成分とを含んでいてもよい。非生薬活性成分は生理活性成分であってもよく薬理活性成分であってもよい。
【0026】
上記生薬の少なくとも1種と組み合わせて用いられる非生薬薬物(非生薬系合成薬物、非生薬活性成分)は、所望する活性に応じて選択でき、例えば、解熱鎮痛剤、抗ヒスタミン剤鎮咳剤、ノスカピン類、去痰剤、気管支拡張剤、胃粘膜保護剤、カフェイン類、ビタミン類催眠鎮静薬、喀痰溶解剤などであってもよい。これらの活性成分は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0027】
解熱鎮痛剤としては、例えば、アスピリン(アセチルサリチル酸)、アスピリンアルミニウム、アセトアミノフェン、サリチルアミド、サリチル酸ナトリウム、エテンザミド、サザピリン、ラクチルフェネチジン、イブプロフェン、ケトプロフェン、ロキソプロフェンナトリウ、アセトアミノフェンなどが例示できる。
【0028】
抗ヒスタミン剤としては、例えば、塩酸ジフェンヒドラミン、サリチル酸ジフェンヒドラミン、タンニン酸ジフェンヒドラミン、d−マレイン酸クロルフェニラミン、dl−マレイン酸クロルフェニラミン、酒石酸アリメマジン、塩酸イソチペンジル、プロメタジンメチレン二サリチル酸塩、塩酸ジフェニルピラリン、テオクル酸ジフェニルピラリン、塩酸ジフェテロール、リン酸ジフェテロール、塩酸トリプロリジン、塩酸トリペレナミン、塩酸トンジルアミン、塩酸フェネタジン、塩酸メトジラジン、ジフェニルジスルホン酸カルビノキサミン、ナパジシル酸メブヒドロリン、マレイン酸カルビノキサミン、塩酸イプロヘプチン、塩酸プロメタジン、ジフェニルジスルホン酸カルビノキサミン、酒石酸アリメマジン、タンニン酸フェネタジン、プロメタジンメチレンジサリチル酸塩などが例示できる。
【0029】
鎮咳剤としては、例えば、リン酸コデイン、リン酸ジヒドロコデイン、デキストロメトルファン臭化水素酸塩、デキストロメトルファン・フェノールフタリン塩、塩酸アロクラミド、塩酸クロペラスチン、フェンジゾ酸クロペラスチン、クエン酸ペントキシベリン(クエン酸カルベタペンタン)、ヒベンズ酸チペピジン、ジブナートナトリウム、クエン酸チペピジン、フェンジゾ酸クロベラスチンなどが例示でき、ノスカピン類としては、例えば、ノスカピン、塩酸ノスカピンなどが例示でき、去痰剤としては、グアヤコールスルホン酸カリウム、塩酸ブロムヘキシン、グアイフェネシン、クエン酸チペピジン、カルボシステイン、塩化アンモニウム、l−メントール、アンモニア・ウイキョウ精、グアヤコールスルホン酸カリウム、グアイフェネシン、クレゾールスルホン酸カリウムなどが例示でき、気管支拡張剤としては、例えば、dl−塩酸メチルエフェドリン、dl−メチルエフェドリンサッカリン塩、塩酸トリメトキノール、塩酸フェニルプロパノールアミン、塩酸メトキシフェナミン、l−塩酸メチルエフェドリン塩酸プソイドエフェドリン、アミノフィリン、ジプロフィリン、テオフィリン、プロキシフィリンなどが例示できる。
【0030】
カフェイン類としては、安息香酸ナトリウムカフェイン、カフェイン、無水カフェインなどが例示でき、喀痰溶解剤としては、塩化リゾチーム、塩酸エチルシステイン、塩酸メチルシステインなどが例示でき、ビタミン類としては、例えば、ビタミンB類またはその誘導体若しくはそれらの塩類、ビタミンB類またはその誘導体若しくはそれらの塩類、ビタミンC類またはその誘導体若しくはそれらの塩類、ビタミンP(ヘスペリジン)またはその誘導体若しくはそれらの塩類などが例示できる。
【0031】
胃粘膜保護剤としては、例えば、アミノ酢酸、ケイ酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、合成ヒドロタルサイト、酸化マグネシウム、ジヒドロキシアルミニウム・アミノ酢酸塩、水酸化アルミニウムゲル、乾燥水酸化アルミニウムゲル、水酸化アルミニウム・炭酸マグネシウム混合乾燥ゲル、水酸化アルミニウム・炭酸水素ナトリウムの共沈生成物、水酸化アルミニウム・炭酸カルシウム・炭酸マグネシウムの共沈生成物、水酸化マグネシウム・硫酸アルミニウムカリウムの共沈生成物、炭酸マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムなどが例示できる。また、催眠鎮静薬として、アリルイソプロピルアセチル尿素、ブロムワレリル尿素などが例示できる。
【0032】
これらの成分のなかで、少なくとも解熱鎮痛剤又は解熱鎮痛抗炎症剤(例えば、アセトアミノフェン、イブプロフェン)、抗アレルギー剤又は抗ヒスタミン剤を用いる場合が多い。各活性成分の含有量は、医薬品製造指針のかぜ薬基準に従って配合してもよい。
【0033】
生薬と非生薬活性成分との割合は、生薬及び非生薬活性成分の種類に応じて選択でき、例えば、乾燥生薬エキス(原生薬換算)/非生薬活性成分=50/50〜100/0(質量比)の範囲から選択でき、かぜ症候群に用いられる薬剤(総合感冒剤など)では、例えば、乾燥生薬エキス(原生薬換算)/非生薬活性成分=85/15〜99.5/0.5(質量比)、好ましくは90/10〜99/1(質量比)、さらに好ましくは92/8〜97/3(質量比)程度であってもよい。
【0034】
[アルファー化デンプン]
アルファー化デンプンは、医薬品添加物規格の「アルファー化澱粉」、USP/NFおよびPh.Eur.の「pregelatinized starch」に適合する変性デンプンであり、平均アルファー化度は90〜100%程度である。なお、平均アルファー化度は、グルコアミラーゼ法などの慣用の方法により算出できる。
【0035】
アルファー化デンプンは結合剤として機能するとともに、水和により大きく膨潤し崩壊剤として機能させることもできる。アルファー化デンプンは変性デンプン(又は加工デンプン)であってもよく、例えば、化学的及び/又は物理的に改質されたデンプンであってもよい。化学的改質方法は、例えば、反応成分との反応による化学的修飾方法であってもよい。一方、物理的改質方法は、例えば、デンプンを加熱(例えば、水の存在下での加熱)して乾燥させる方法であってもよい。アルファー化デンプンを構成する(又はアルファー化デンプンの原料成分である)デンプンとしては、コメ、モチゴメ、トウモロコシ、モチトウモロコシ、アミロトウモロコシ、モロコシ、コムギ、オオムギ、サトイモ、リョクトウ、バレイショ、ユリ、カタクリ、チューリップ、カンナ、エンドウ、シソエンドウ、クリ、クズ、ヤマノイモ、カンショ、ソラマメ、インゲンマメ、サゴ、タピオカ(キャッサバ)、ワラビ、ハス、ヒシなどの天然デンプン、老化デンプン、架橋デンプンなどが例示できる。これらのデンプンは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのデンプンのうち、バレイショ、コムギ、トウモロコシ、コメ、タピオカ、及びカンショから選択された少なくとも一種のデンプンである場合が多い。特に、デンプンとしては、バレイショデンプン、トウモロコシデンプンなどの天然デンプンが好ましい。
【0036】
本発明に有用なアルファー化デンプンは、以下の特性(i)〜(v)のうち少なくとも1つの特性(すなわち、いずれかまたは全部の特性)を備えていてもよい。
【0037】
(i)水溶性成分の含有量は、40〜95質量%程度の範囲から選択でき、45〜90質量%程度であってもよい。なお、水溶性成分の割合は、式[(W1×50÷5)÷W0×100]により算出できる(式中、W1(g)は、室温(20〜25℃)で、水49.5gに試料0.5gを加えて1時間撹拌して分散させ、得られた分散液20mLを30mLの沈降管に移し、10000rpm(9400G)で10分間遠心分離し、この上澄液5mLを秤量瓶に入れ、105℃で一定重量になるまで(例えば6時間)乾燥させた後の重量を示し、W0(g)は、試料1gを105℃で6時間乾燥させた後の重量を示す)。
【0038】
(ii)アルファー化デンプンの3質量%水溶液の粘度は、室温(例えば、10〜35℃、特に20〜25℃)、30rpmで測定したとき、100〜300mPa・s、好ましくは125〜275mPa・s、さらに好ましくは150〜250mPa・s(例えば、170〜230mPa・s)程度である。
【0039】
(iii)平均粒径は、10〜150μm(例えば、20〜140μm)、好ましくは30〜130μm(例えば、50〜120μm)程度であってもよく、通常、100〜130μm(例えば、100〜120μm)程度である。なお、平均粒径は、レーザー回折式粒度測定装置HELOS&RODOS(乾式法)を用いて測定できる。
【0040】
(iv)嵩密度は、0.05〜1.0g/mL、好ましくは0.1〜0.7g/mL(例えば、0.2〜0.5g/mL)、さらに好ましくは0.2〜0.4g/mL(例えば、0.25〜0.3g/mL)程度であってもよい。なお、嵩密度は、メスシリンダーに試料を充填し、試料の充填量が100mLであるときの試料重量(g)として測定できる。
【0041】
(v)膨潤体積(膨潤度)は、12〜27cm/g程度の範囲から選択でき、15〜25cm/g(例えば、16〜23m/g)、好ましくは17〜23cm/g(例えば、17.5〜22.5m/g)、さらに好ましくは18〜22cm/g程度であってもよい。アルファー化デンプンの膨潤体積(膨潤度)は、室温(20〜25℃)で、試料1gを水に分散させて、50mLの沈降管に移し、全量を50mLとし、16時間放置後の下層の容積(cm又はmL)を、試料1gの乾燥重量[105℃で6時間乾燥させた後の重量(g)]で除した値として測定できる。
【0042】
本発明に有用なアルファー化デンプンは、これらの特性のうち、(i)水溶性成分の含有量及び(ii)水溶液の粘度のうち少なくとも1つの特性(特に、両特性)を備えている場合が多い。すなわち、生薬乾燥エキスを、水溶性成分の含有量及び/又は水溶液の粘度が特定の範囲にあるアルファー化デンプンを結合剤として用いて、低いERH(平衡相対湿度)の条件で造粒すると、微粉の発生を顕著に防止できる。
【0043】
このようなアルファー化デンプンは、旭化成ケミカルズ(株)から商品名「SWELSTAR WB−1」として入手できる。
【0044】
本発明では、アルファー化デンプンの含有量が少なくても微粉の生成を抑制しつつ造粒物(粒剤などの造粒製剤)を得ることができる。そのため、アルファー化デンプンの含有量は製剤(造粒末又は造粒散剤)全体に対して、0.1〜5質量%、好ましくは0.2〜3質量%(例えば、0.3〜2.5質量%)、さらに好ましくは0.5〜2質量%(例えば、0.5〜1.5質量%)程度であってもよい。
【0045】
[担体又は添加剤]
本発明の組成物は、さらに、担体(結合剤、賦形剤、崩壊剤から選択された少なくとも1つの成分)を含有していてもよい。
【0046】
賦形剤としては、例えば、D−マンニトール、D−ソルビトール、エリスリトール、キシリトールなどの糖アルコール、乳糖、ブドウ糖、果糖、白糖、粉末還元麦芽糖水アメなどの糖類、結晶セルロース、粉末セルロース、デンプン類(バレイショデンプン、トウモロコシデンプンなど)、デキストリン、β−シクロデキストリン、カルメロースナトリウム、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、二酸化ケイ素、沈降性炭酸カルシウム、無水リン酸水素カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、乳酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ヒドロタルサイト、タルク、カオリンなどが例示できる。賦形剤としては、糖類、結晶セルロース、デンプン類、無水リン酸水素カルシウムなどを用いる場合が多い。賦形剤の使用量は、乾燥生薬エキス100質量部に対して、1〜150質量部(例えば、10〜120質量部)、好ましくは25〜100質量部(例えば、30〜1000質量部)、さらに好ましくは50〜100質量部(例えば、50〜90質量部)程度であってもよい。また、製剤(造粒物)中の賦形剤の含有量は、例えば、10〜80質量%、好ましくは20〜70質量%、さらに好ましくは30〜60質量%(例えば、35〜55質量%)程度であってもよい。
【0047】
アルファー化デンプンが結合剤及び/又は崩壊剤として機能するため、結合剤及び/又は崩壊剤は必ずしも必要ではないが、必要であれば結合剤及び/又は崩壊剤を併用してもよい。結合剤としては、例えば、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体、結晶セルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン(ポビドン)、ビニルピロリドン共重合体(コポリビドン)、アクリル酸系高分子、ゼラチン、アラビアゴム、プルラン、カンテン、トラガント、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、白糖などが例示できる。結合剤(アルファー化デンプンを含まない)の使用量は、乾燥生薬エキス100質量部に対して、0〜50質量部、好ましくは1〜30質量部、さらに好ましくは3〜25質量部(例えば、5〜15質量部)程度であってもよい。結合剤(アルファー化デンプンを含まない)の含有量は、製剤(造粒物)全体に対して、0〜15質量%、好ましくは0.05〜10質量%、さらに好ましくは0.1〜5質量%程度であってもよい。
【0048】
崩壊剤としては、例えば、カルメロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム(カルメロースカルシウム)、クロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L−HPC)、クロスポビドン、デンプン類(トウモロコシデンプンなど)、ヒドロキシプロピルスターチ、部分アルファー化デンプン、アルギン酸、ベントナイトなどが例示できる。崩壊剤としては、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L−HPC)、クロスポビドン、デンプン類などを用いる場合が多い。崩壊剤(アルファー化デンプンを含まない)の使用量は、乾燥エキス100質量部に対して、1〜30質量部、好ましくは3〜25質量部、さらに好ましくは5〜20質量部(例えば、5〜15質量部)程度であってもよい。崩壊剤(アルファー化デンプンを含まない)の含有量は、製剤(造粒物)全体に対して、0〜15質量%、好ましくは0.5〜10質量%程度であってもよい。
【0049】
本発明の組成物は、他の担体又は添加剤、例えば、滑沢剤(ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、硬化油、ポリエチレングリコール、ジメチルポリシロキサン、ミツロウ、サラシミツロウなど);抗酸化剤(ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、没食子酸プロピル、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、トコフェロール、クエン酸など);保存剤(パラオキシ安息香酸エステル類など);着色剤(ウコン抽出液、リボフラビン、カロチン液、タール色素、カラメル、酸化チタン、ベンガラなど);界面活性剤(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、モノステアリン酸グリセリン、ソルビタン脂肪酸エステル(モノステアリン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタンなど)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン、ポリソルベート類、ラウリル硫酸ナトリウム、マクロゴール類、ショ糖脂肪酸エステルなど);流動化剤(ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、軽質無水ケイ酸、タルク、含水二酸化ケイ素など);可塑剤(クエン酸トリエチル、ポリエチレングリコール、トリアセチン、セタノールなど);甘味剤又は矯味剤(ショ糖、マンニトール、D−ソルビトール、キシリトール、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、アスコルビン酸、ステビア、メントール、カンゾウ粗エキス、単シロップなど);着香剤又は香料(メントール、ジンジャーオイルなど);色素、清涼化剤、防腐剤又は保存剤、湿潤剤、帯電防止剤などを含んでいてもよい。
【0050】
これらの担体又は添加剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0051】
[漢方製剤]
本発明の漢方製剤(医薬組成物)の最終形態は特に制限されず、種々の固形製剤(経口固形製剤)、例えば、散剤、細粒剤(顆粒剤)、丸剤、錠剤、カプセル剤、チュアブル錠などであってもよく、フィルム錠、糖衣錠などの被覆剤などであってもよい。
【0052】
本発明は、造粒物(造粒末)の形態の漢方製剤において、微粉量が少ないという特色がある。例えば、造粒物(散剤、粒剤)において、200メッシュパス(75μm以下)の微粉の含有量は、造粒物全体に対して、通常、15質量%以下(例えば、0〜12質量%)であり、10質量%以下(例えば、0.1〜10質量%)、好ましくは0.3〜9質量%程度である。
【0053】
さらに、造粒物(散剤、粒剤)は重質であることが好ましい。造粒物が重質であるか否かは、例えば、粗比容を測定することにより確認することができる。造粒により圧密化された造粒物は粗比容が小さくなる。粗比容は、例えば、2.5mL/g以下、好ましくは2.3mL/g以下、さらに好ましくは2mL/g以下であってもよい。
【0054】
本発明では、低水分条件で造粒できるため、漢方製剤の含水量も低減でき、漢方製剤を安定化できる。漢方製剤中のERHは、例えば、40%以下、好ましくは25〜38%、さらに好ましくは30〜35%程度であってもよい。ERHは、慣用の方法、例えば、漢方製剤1gを25℃の密閉容器内に置いたとき、その密閉容器内空間が示す平衡相対湿度を、市販の水分活性測定装置を用いて測定することにより算出できる。
【0055】
[漢方製剤の製造方法など]
本発明の漢方製剤は、湿式造粒、例えば、攪拌造粒法、転動造粒法、押出造粒法などを利用して製造できるが、好ましくは流動層造粒法で製造することができる。流動層造粒法では、少なくとも乾燥エキスを含む活性成分と、必要により担体又は添加剤とを含む組成物に、アルファー化デンプンを含む結合剤の水溶液を噴霧して造粒を行う。アルファー化デンプンを用いることにより、流動層造粒法を用いても低水分量で製造することができ、その結果、微粉の発生を防止又は抑制でき、重質で流動性の高い造粒物(造粒末)を得ることができる。そのため、本発明は、乾燥エキスを含む組成物に、アルファー化デンプンを含む結合剤の水溶液を噴霧して流動層造粒し、適切な粒度を有する粉体を製造する方法を包含する。
【0056】
本発明の方法では、セルロース系結合剤ではなく、アルファー化デンプンを用いるため、低水分条件で流動層造粒しても、微粉の発生を抑制しつつ、円滑に造粒できる。結合剤溶液中のアルファー化デンプン濃度は、0.5〜10質量%(例えば、1〜10質量%)、好ましくは1.5〜7質量%(例えば、2〜5質量%)、さらに好ましくは2〜4質量%程度であってもよい。
【0057】
流動層造粒は、慣用の方法、例えば、上昇気流により粉粒体(少なくとも乾燥生薬エキスを含む活性成分と、必要により担体又は添加剤とを含む粉粒体)を流動させ、結合剤の水溶液を上方から噴霧するトップスプレー法、側方から噴霧するサイドスプレー法などであってもよい。
【0058】
本発明の漢方製剤は、低水分量条件下で造粒することができる。水分条件はERHなどにより測定することができる。例えば、ERHが50%以下、好ましくは40%以下の条件であってもよく、造粒効率の点からERHが20〜40%程度の条件であってもよい。
【0059】
造粒物は、常法により、乾燥され、必要により篩などにより分級及び/又は整粒される。本発明ではアルファー化デンプンを結合剤として用いるためか、粗大な造粒物を整粒しても微粉の発生を抑制できる。
【0060】
また、この造粒物(造粒末)と担体又は添加剤との混合物を打錠することにより錠剤を得ることもでき、前記造粒物(造粒末)をカプセルに充填することによりカプセル剤を得ることができる。
【0061】
このような方法で得られた漢方製剤は、前記のように微粉が少なく、漢方乾燥エキスを高含量で含んでいても、重質で流動性が高いため、造粒後の工程(混合、包装など)での操作性及び作業性、並びに服用性を向上できる。
【実施例】
【0062】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0063】
実施例1
アルファー化デンプン(アルファー化度90〜100%、水溶性成分の含有量45〜90質量%、3質量%水溶液の粘度(温度20〜25℃程度の室温、30rpm)160〜230mPa・sのバレイショデンプン:SWELSTAR WB-1,旭化成ケミカルズ(株))を濾過上水に溶解し、結合剤溶液を調製した。流動層造粒乾燥機(マルチプレックスMP−10,(株)パウレック)に参蘇飲乾燥エキス(参蘇飲エキスH、小城製薬(株))、トウモロコシデンプン(コーンスターチ)、乳糖水和物(Pharmatose 200M DMV)を入れて流動させ、結合剤溶液をスプレーで噴霧し、ERH40%以下で造粒した。その後、乾燥し、造粒末を得た。得られた造粒末の粒度に関し、30号篩(30メッシュ篩)の残留品が5質量%以上である場合、残留した造粒末をパワーミル(P−7、1mmφパンチング、昭和化学機械工作所)を用いて整粒し、日本薬局方第15改正の散剤規格(18号篩全通、30号篩残留品5質量%以下)を満たす整粒末を得た。
【0064】
実施例2
トウモロコシデンプン(コーンスターチ)を加えた濾過上水を約80℃に熱し、撹拌することで澱粉糊(アルファー化デンプン)を調製し、結合剤溶液とした。実施例1と同様にして、流動層造粒乾燥機に参蘇飲エキス、トウモロコシデンプン、乳糖水和物を入れて流動し、結合剤溶液をスプレーで噴霧し、ERH40%以下で造粒し、常法により乾燥し造粒末を得た。また、実施例1と同様に、得られた造粒末の粒度が、30号残留品が5質量%以上の場合、パワーミルを用いて整粒し、日本薬局方第15改正の散剤規格を満たす整粒末を得た。
【0065】
実施例3
アルファー化デンプン(SWELSTAR WB-1,旭化成ケミカルズ(株))を濾過上水に溶解し、結合剤溶液を調製した。実施例1と同様にして、流動層造粒乾燥機に参蘇飲エキスデキストリンプレミックス品(参蘇飲エキスPD、小城製薬(株))、トウモロコシデンプン、乳糖水和物を入れて流動させ、結合剤溶液をスプレーで噴霧し、ERH40%以下で造粒し、常法により乾燥し造粒末を得た。
【0066】
比較例1
ヒドロキシプロピルセルロース(HPC−L,日本曹達(株))を濾過上水に溶解し、結合剤溶液を調製した。実施例1と同様にして、流動層造粒乾燥機に参蘇飲エキス(参蘇飲エキスH、小城製薬(株))、トウモロコシデンプン、乳糖水和物を入れて流動させ、結合剤溶液をスプレーで噴霧し、ERH40%以下で造粒し、常法により乾燥し造粒末を得た。
【0067】
比較例2
ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース,TC−5R,信越化学工業(株))を濾過上水に溶解し、結合剤溶液を調製した。実施例1と同様にして、流動層造粒乾燥機に参蘇飲エキス(参蘇飲エキスH、小城製薬(株))、トウモロコシデンプン、乳糖水和物を入れて流動させ、結合剤溶液をスプレーで噴霧し、ERH40%以下で造粒し、常法により乾燥し造粒末を得た。
【0068】
比較例3
ヒドロキシプロピルセルロース(HPC−L,日本曹達(株))を濾過上水に溶解し、結合剤溶液を調製した。実施例1と同様にして、流動層造粒乾燥機に参蘇飲エキスデキストリンプレミックス品(参蘇飲エキスPD、小城製薬(株))、トウモロコシデンプン、乳糖水和物を入れて流動させ、結合剤溶液をスプレーで噴霧し、ERH40%以下で造粒し、常法により乾燥し造粒末を得た。
【0069】
表1に上記実施例及び比較例の処方を示す。
【0070】
【表1】

【0071】
また、得られた造粒末、整粒末の比容(嵩密度)及び粒度を比較した。その結果を表2及び表3に示す。なお、粗比容(mL/g)は造粒末又は整粒末100g(又は50g)を250mLメスシリンダーに静かに入れて目盛りを読み取って測定した。粒度は、慣用の方法に従って、メッシュ(M)サイズの異なる篩を用いて測定した。「M」はメッシュを示し、メッシュ(M)の数字が大きいほど、粒度が小さい。
【0072】
【表2】

【0073】
【表3】

【0074】
デンプン系の結合剤を用いた実施例1〜3は、造粒が進行し、200メッシュパス(75μm以下)の微粉が10質量%以下となった。また、30メッシュオン(残留)(500μm以上)が5質量%以上あった実施例1〜2は、パワーミルで整粒を行ったが、その場合でも、200メッシュパス(75μm以下)の微粉は10質量%以下であった。一方、セルロース系の結合剤(HPC−L、TC−5R)を用いた比較例1〜3は、造粒が進行せず、200メッシュパス(75μm以下)の微粉が20質量%以上となり、飛散性の高い造粒末となった。
【0075】
製造例1
【0076】
【表4】

【0077】
【表5】

【0078】
流動層造粒乾燥機に、表4に記載した量の参蘇飲エキスPDと賦形剤(コーンスターチ、乳糖水和物、アルファー化デンプン(粉添加分))を仕込み、濾過上水に溶解したアルファー化デンプン(液添加分)溶液を噴霧し、ERH40%以下で造粒を行った。得られた造粒末をパワーミル(スクリーン:1.0mmφパンチング)で整粒した後、振動篩を用いて、30号篩で篩過を行った。篩過後、30号篩上品が4%以上存在する場合はパワーミルP−7S(スクリーン:1.0mmφパンチング)で粉砕し、振動篩(30号)で篩過を行う。この工程を30号篩上品が4%未満になるまで繰り返す。その後30号篩上品を18号篩で篩過し、18号篩下品と30号篩下品を併せて整粒末とする。続いて、表5記載量のスクラロースとアセスルファムカリウムを得られた整粒末の一部で倍散した後、丸篩(30号)で篩過を行う。また、表5記載量のサイリシア320も整粒末の一部で倍散した後、丸篩(18号)で篩過を行う。これらと表5記載量の結晶セルロースを残りの整粒末に添加、タンブラー混合機で混合し、散剤を得た。
【0079】
製造例2
【0080】
【表6】

【0081】
【表7】

【0082】
流動層造粒乾燥機に、表6に記載した量の参蘇飲エキスHと賦形剤(コンスターチ、乳糖水和物)を仕込み、濾過上水に溶解したアルファー化デンプン溶液を噴霧し、ERH40%以下で造粒を行った。得られた造粒末をパワーミル(スクリーン:1.0mmφパンチング)で整粒した後、振動篩を用いて、30号篩で篩過を行った。篩過後、30号篩上品が4%以上存在する場合はパワーミルP−7S(スクリーン:1.0mmφパンチング)で粉砕し、振動篩(30号)で篩過を行う。この工程を30号篩上品が4%未満になるまで繰り返す。その後30号篩上品を18号篩で篩過し、18号篩下品と30号篩下品を併せて整粒末とする。続いて、表5記載量のスクラロースとアセスルファムカリウムを得られた整粒末の一部で倍散した後、丸篩(30号)で篩過を行う。また、表5記載量のサイリシア320も整粒末の一部で倍散した後、丸篩(18号)で篩過を行う。これらと表5記載量の結晶セルロースを残りの整粒末に添加、タンブラー混合機で混合し、散剤を得た。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、漢方製剤を高濃度で含有する製剤を、造粒により微粉量を低減しつつ効率よく製造するのに適している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
漢方乾燥エキスとアルファー化デンプンとを含む漢方製剤。
【請求項2】
アルファー化デンプンの水溶性成分の含有量が45〜90質量%である請求項1記載の漢方製剤。
【請求項3】
アルファー化デンプンの3質量%水溶液の粘度が、室温、30rpmで100〜300mPa・sである請求項1又は2記載の漢方製剤。
【請求項4】
アルファー化デンプンが、バレイショデンプンである請求項1〜3のいずれかに記載の漢方製剤。
【請求項5】
アルファー化デンプンの含有量が製剤全体に対して0.1〜5質量%である請求項1〜4のいずれかに記載の漢方製剤。
【請求項6】
製剤中の漢方乾燥エキスの含有量が40〜95質量%である請求項1〜5のいずれかに記載の漢方製剤。
【請求項7】
漢方乾燥エキスが、参蘇飲エキス又は参蘇飲エキスのデキストリンプレミックス品である請求項1〜6のいずれかに記載の漢方製剤。
【請求項8】
散剤である請求項1〜7のいずれかに記載の漢方製剤。
【請求項9】
200メッシュパス(75μm以下)の微粉の含有量が10質量%以下の散剤である請求項1〜8のいずれかに記載の漢方製剤。
【請求項10】
漢方乾燥エキスを含む組成物に、アルファー化デンプンを含む結合剤の水溶液を噴霧して流動層造粒する漢方製剤の製造方法。
【請求項11】
結合剤の水溶液中のアルファー化デンプン濃度が1〜10質量%である請求項10記載の漢方製剤の製造方法。
【請求項12】
平衡相対湿度が40%以下で造粒する請求項10又は11記載の漢方製剤の製造方法。
【請求項13】
漢方乾燥エキスを含む組成物に、アルファー化デンプンを含む結合剤の水溶液を噴霧して流動層造粒し、微粉の発生を抑制する方法。

【公開番号】特開2013−32351(P2013−32351A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−150209(P2012−150209)
【出願日】平成24年7月4日(2012.7.4)
【出願人】(000002934)武田薬品工業株式会社 (396)
【Fターム(参考)】