説明

漸次変化パターンを具有する織物基盤電極

【課題】織物を基盤とする織物基盤電極であって、該織物基盤電極の製造工程において、より速い編み上げ速さの実現と、編み機部品の長寿命化を可能とする、織物基盤電極を提供すること。
【解決手段】非導電性撚り糸を有する織物部分と、導電性撚り糸用細線を有する導電性領域を含み、漸次変化パターン82、84を包含する織物基盤電極を構成する。該電極は、さらに、浮き撚り糸を有し、織物構造またはうね織り構造の中に組み込まれることができる。衣類に組み込まれたときに、該電極は、着用者の心拍数のような、生物生理学的特性を監視することに使われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、織物を基盤とする織物基盤電極、または、該電極を用いる織物基盤電極システムに関連し、その織物基盤電極は、漸次変化パターンを具有している。パターンの外周は、曲線からなっていても、直線からなっていても、両者の組み合わせからなっていてもよい。前記、織物基盤電極、または、織物基盤電極システムは、着用物に統合される。この着用物は、例えば、着用者からの生物生理学的信号を受けるために、この、織物基盤電極を用いる生物生理学的監視に適用される。
【背景技術】
【0002】
織物基盤電極は、非導電性繊維の領域に囲まれた、導電線、または、金属繊維を伴う導電性撚り糸からなり、例えば衣類のような着用物に統合されることが可能である。導電線または金属繊維を伴う導電性撚り糸は着用物に合体される。着用物は、電気インパルスを、着用者から受け取ったり、反対に、電気装置から着用者へ伝えたりすることに適用される。Bekaertに譲渡された特許文書WO 01/02052は、そのような着用物を開示している。
【0003】
着用者の心拍速さを検知したり、あるいは報告したりするための、着用可能な織物基盤のセンサーが、RTO Holding OYに譲渡された特許文書WO 02/071935に開示されている。
【0004】
Koninklijke Philips Electronics NVに譲渡された特許文書WO 03/094717は、内部に統合された皮膚接触用電極を有する織物を開示している。開示された織物は「ブラまたはレディーストップ」の形状を持ち、電極を除けば、非導電性である。この織物は、部分的に重なり合う、金属繊維から作られる導電性材料の層と、該導電性材料を部分的に覆って該導電性材料を電気的に絶縁するように配置された電気的絶縁性材料を有する形で提供される。
【0005】
Tefron Ltd.に譲渡された特許文書WO 2004/006700は、着用者の皮膚近くに配置され、金属的でよい導電性内側表面領域を有する環状編みされた衣類を開示している。この導電性内部表面領域は、電気信号を外側にある導電性領域へ導く働きをする。そのような電気信号は、着用者から送られる心拍数または着用者へ送られる電気刺激手段を含む。
【0006】
これらの特許書類の各々が関連する目的は、導電性領域を提供することであり、その導電性領域は、金属線または金属繊維であってよく、衣類、ベルトまたは伝統的な織物構成体に統合された電極として機能する。一般的に、これらの特許文書は、衣類または着用物の他の部分とは電気的に絶縁された導電性領域を開示している。これらの領域は、衣類に編み込まれていてよい。さらに、これらの特許文書は、少なくとも1つの導電性領域を着用者の皮膚に密着する位置に設けることを開示している。その結果として、皮膚に密着した導電性領域によって形成された電極は、着用者の身体内部で発生した電気信号を拾い上げる接触点を提供する。反対に、そのような電極は、着用者外部で作られた電気信号を受ける皮膚上の接触点を提供する。要するに、これらの特許文書は、着用者の身体への、または、からの電気信号を伝える手段を提供している。
【0007】
上記に加えて、これらの特許文書は、一般的に、少なくとも1つの第2の編み物構造の電極を開示している。さらにしばしば、この第2の電極は、衣類に統合され、衣類の外側表面に近い位置にある。この第2の電極は、また、都合よくは、皮膚接触をしている電極にかぶさる位置にあって、両電極の間には、衣類の非導電性構成材料が存在している。両電極間の電気的接続が望まれる位置において、そのような接続は金属線を用いて達成される。これに代えて、皮膚接触電極が、外側表面電極ともなるように、折り返されてもよい。
【0008】
Textronics Inc.に譲渡されたU.S. Pat. No. 7,308,294とU.S. Pat. No. 7,474,910は、他の生物生理学的信号を監視するための着用可能な、織物を基盤とする検知器を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第01/02052号パンフレット
【特許文献2】国際公開第02/071935号パンフレット
【特許文献3】国際公開第03/094717号パンフレット
【特許文献4】国際公開第2004/006700号パンフレット
【特許文献5】米国特許第7,308,294号明細書
【特許文献6】米国特許第7,474,910号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
着用者に皮膚接触している衣類統合型電極と、衣類統合型外側電極との間の接続を金属線または金属繊維を用いて行った場合には、或る制約が存在する。その制約は、編み上げ過程で、使用される工具の性質によって生じる。例えば、編み針の消耗や破損は編み針と、金属線または金属繊維を用いた撚り糸との間の金属対金属の接触の結果生じる。編み機の効率と生産性を向上させるために、運転速さの上昇が望ましい。しかしながら、そのような運転速さの上昇は、また、撚り糸の中への異物混入の原因となり、編み針のみならず、撚り糸送出部、錘(おもり)およびカムに影響を与える。
【0011】
例えば、環状編み機の高速運転においては、編み針は、着用物の製造中の、繰り返して起こる、金属線または金属繊維を用いた撚り糸との接触のため、頻繁に取り換えられる。編み針の消耗は、編み針のかぎ針部分とかみ合う掛け金の自由端によって、編み針が低い編み目ループ形成位置に移動する間に、掛け金が、閉じる位置に回転運動する際に起こりうる。編み針の消耗は、また、編み針が、掛け金の下の編み目ループを完成させるために持ち上げられ、掛け金が完全に開いた位置に回転運動する際にも起こりうる。或る場合には、編み針に対する掛け金からの衝撃は、また、金属疲労と掛け金の損傷の原因となりうる。
【0012】
編み針の消耗は、また、使用される撚り糸の性質に起因しても起こりうる。例えば、金属被覆された繊維から作られた撚り糸は硬く、「柔軟性」がほとんど無く、その結果、編み機部品の消耗が起こる。このことは、特に、金属被覆の繊維が編まれた構造に最初に引き込まれたときに起こる。消耗は、また、着用物の製造中に、撚り糸が天然または合成繊維から作られている場合に起こりうる。或る合成繊維は、例えば、つや消し剤を含有し、それが編み針の消耗を生み出す。加えて、天然繊維から作られた撚り糸は、その繊維が、どのように育てられ、収穫され、精製されたかによる異物を含んでいる可能性がある。しばしば見られる、この種の撚り糸の不純物はシリカである。これらの不純物は針をすり減らす。針の消耗の結果、起こることは、縫い目の乱れ、意図しない織物の孔、意図しないひだ縫い、意図しない二重縫い、撚り糸の切断、編み機の停止、機械停止時間などである。これらの結果は、欠陥製品を生み、生産に必要な時間と、織物を基盤とした電極を統合した着用物のコストを増大させる。
【0013】
他の制約もまた存在しえて、それは、例えば、人体への接触を通じて生物生理学的監視が望まれる場合である。この場合の制約は、因習に従って作られた織物に、金属線または金属繊維で作られた撚り糸の部分を作る際の、金属繊維で作られた撚り糸のもろさと、持ちのよい柔軟性の欠如に基づく困難性を含むであろう。
【0014】
他の構成もまた、或る制約を受けるであろう。例えば、「折り返し」および、(導電性材料を電気的に絶縁するように設けられた非導電性材料を伴った)部分的に重なり合う導電性材料層を含む構成は、衣類または織物に統合される電極の配置を設計する際の自由度を厳しく制限するであろう。
【0015】
従って、1つまたはそれ以上の欠点を克服することを可能とする、織物を基盤とする電極、すなわち織物基盤電極を提供することが要求される。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、1つの面において、漸次変化パターンを少なくとも1つ有する、織物基盤電極を提供する。本発明は、第2の面において、漸次変化パターンを有する、織物基盤電極を、衣類のような、着用物中に取り込んでなる電極システムを提供する。これらの、織物基盤電極は伸長復元性の非導電性撚り糸を有する部分と、伸長復元性の導電性撚り糸を有する部分を含むことができる。
【0017】
上記織物基盤電極システムは、導電性領域を有する第1および第2の織物部分を含むことができる。そのような2つの導電性領域は、部分的に重なり合う関係にあるように配置され、両領域の物理的接触によって、両領域間の電気的導通が形成される。
【0018】
少なくとも1つの導電性領域は、浮き撚り糸を含むことができる。加えて、少なくとも1つの導電性領域は、弾性化された導電性撚り糸および/または少なくとも部分的に導電性撚り糸で覆われた弾性撚り糸で作られていることができる。1つの実施形態において、導電性領域は、織られるかまたはうね織りされた構造を有する織物を含むことができる。さらなる実施形態において、導電性領域は、1つまたは複数の、少なくとも1つの疎水性材料を有し、かつ/または、少なくとも1つの疎水性材料を有する領域によって分けられている部分を含むことができる。
【0019】
導電性領域のために選ばれたパターンは、織物基盤電極の製造に影響を与える。特に、漸次変化パターンは、編み針の消耗、破損、そして編み針の配列乱れを軽減することが見いだされている。ここで、「漸次変化パターン」は、織物基盤電極が、少なくとも1つの漸次変化をしている端、すなわち、漸次または斜めの角度によって、変化する端、例えば、円形にされるか、角度をつけられるか、曲線状にされるか、またはジグザグ状にされるかした端を持つことを意味する。特に、漸次変化パターンを用いることによって、編み針に印加される応力を、直線の端を持つパターンを用いた場合に比べて、より少なくすることができる。例えば、直線端を持つ長方形パターンまたは正方形パターンの領域を編んでいる場合に、編み機は、同じ編み針を用いて始め、同じ編み針を用いて終わる。ただ1つの編み針に、続けて印加される応力は編み針の配列乱れを生じ、それによって、過剰編みや被覆誤差が生じる可能性があり、その結果として、不正規な形状のセンサー領域や、その他の欠陥が生じる可能性がある。それに比較して、漸次変化パターンの領域を編む場合には、編み始めから編み終りまで、横糸1本ずつの編み過程の繰り返しにおいて、異なった編み針を用いる。これによって、編み針への応力は、いくつかの編み針に分散される。加えて、漸次変化する端を有するパターンの使用は、編み針以外の部品、例えば撚り糸切断刃にとっても有益である。このように、漸次変化パターンの使用は、欠陥を減らし、編み針への均等な応力の印加を可能とし、撚り糸切断刃などの部品に利益をもたらす。
【発明の効果】
【0020】
このように、漸次変化パターンを用いることによって、織物基盤電極の製造工程は改善され、その結果として、より速い編み上げ速さと、その他の改善点の中で、編み機部品の長寿命化が可能となる。
【0021】
本発明の範囲に入る、織物基盤電極は、測定装置に接続可能である。その測定装置は、例えば、該電極を包含している衣類の着用者の生物生理学的信号を監視することに用いることができる。例えば、1つの実施形態において、該織物基盤電極は、上記着用者の心拍数の監視を容易にすることに用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1A】第1の、織物基盤電極の上面を示す図である。
【図1B】第1の基盤電極の裏面を示す図である。
【図1C】図1Aと図1Bの、織物基盤電極が導電性浮き撚り糸の部分を含み、その部分が、図1Dと図1Eの、織物基盤電極の導電性浮き撚り糸の部分と接触していることを示す立面図である。
【図1D】第2の、織物基盤電極の上面を示す図である。
【図1E】第2の織物基盤電極の裏面を示す図である。
【図1F】統合された、織物基盤電極が異なる型の編み物構造を持つことを示す図である。
【図2A】織物基盤電極を有する上半身着用物を示す図である。
【図2B】織物基盤電極を有する上半身着用物を示す図である。
【図3A】織物基盤電極の正面図である。
【図3B】折られた外形を持つ、織物基盤電極を示す図である。
【図3C】折られた外形を持つ、織物基盤電極を示す図である。
【図4】生物生理学的監視が可能なエレクトロニクスとの通信に適用される一対の、織物基盤電極の部分断面図である。
【図5】人体への着用に適し、生物生理学的監視可能なエレクトロニクスへの適用可能な、連続帯を示す図である。
【図6】一対の、織物基盤電極と、その構造における可変な寸法を示す図である。
【図7】漸次変化パターンの第1の例を有する一対の、織物基盤電極を示す図である。
【図8】漸次変化パターンの第2の例を有する一対の、織物基盤電極を示す図である。
【図9】漸次変化パターンの第3の例を有する一対の、織物基盤電極を示す図である。
【図10】漸次変化パターンの第5の例を有する一対の、織物基盤電極を示す図である。
【図11】漸次変化パターンの第6の例を有する一対の、織物基盤電極を示す図である。
【図12】漸次変化パターンの第7の例を有する一対の、織物基盤電極を示す図である。
【図13】漸次変化パターンの第8の例を有する一対の、織物基盤電極を示す図である。
【図14】漸次変化パターンの第9の例を有する一対の、織物基盤電極を示す図である。
【図15】漸次変化パターンの第10の例を有する一対の、織物基盤電極を示す図である。
【図16】漸次変化パターンの第11の例を有する一対の、織物基盤電極を示す図である。
【図17】漸次変化パターンの第12の例を有する一対の、織物基盤電極を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、1つの実施形態において、織物基盤電極を提供することができ、該電極は着用物に完全に統合され、該着用物は該電極が着用者の身体に接触することを許す。この織物基盤電極は、編み機における、編み針の消耗と、編み針の破損と、編み針の配列乱れを低減するための漸次変化パターンを含む。ここで開示される織物基盤電極は、また、該電極を統合した着用物の着用者への生物生理学的信号の伝達に適用されることが可能である。例えば、そのような織物基盤電極は、着用者の生物生理学的監視に適用される。
【0024】
ここで開示される織物基盤電極は、また、着用者の身体への接触を経由して、壊れやすい接続線に依存することなく、電気信号を送ったり受けたりすることが可能である。この織物基盤電極は、また、着用者の身体への信頼性の高い接触に特別に適用され、さらに、補足的な、織物基盤電極と首尾一貫した電気的連続性を提供する(すなわち、着用者が自由に動いても、信号の消失や短絡が起こらない)。この観点において、この織物基盤電極は、導電性領域において引き延ばし可能であり、それは、導電性撚り糸または細線と共に編まれ、または織られた弾性材料が存在すること、および/または、弾性と導電性の両方を有する撚り糸または細線を用いたことによる。
【0025】
1つの実施形態において、この織物基盤電極は、1つの、編物構造中に導電性撚り糸を備えた第1の織物部分を含む電極システム中に包含されることができる。前記編物構造は、例えば、伸縮性布地、うねのある布地、疑似うねつき布地および1×1および1×3構造のうねつき布地のなかから選ばれたものでありうる。前記導電性撚り糸の部分は、前記第1の織物部分に囲まれ、絶縁されることができる。
【0026】
他の実施形態において、織物基盤電極は、漸次変化パターンを持つ。特に、織物基盤電極の端部は、丸い形状、角を持つ形状、曲線形状またはジグザグ形状を持っていてよい。このような実施形態において、織物基盤電極は、1つあるいはそれ以上の、丸い形状か、曲線形状か、斜めに切れた形状かまたはジグザグ形状に伸ばされていてよく、または、ジグザグ形状か、丸い形状か、曲線形状か、斜めに切れた形状かまたは角のある形状に縮められていてよい。
【0027】
前記織物基盤電極は、導電性撚り糸または細線で覆われた、弾性撚り糸であるLycra(登録商標)spandexのような材料の存在により、導電性領域における伸長可能性を持つことができる。前記織物基盤電極は、また、WO 2004/097089A1またはUS 7,135,227(INVISTA Technologies S.a.r.l.に譲渡)において開示されているような導電性撚り糸の使用によって、導電性領域における伸長可能性を持つことができ、上記書類の全内容は、ここでの引用文献に含まれている。これらに加えて、前記織物基盤電極は、(例えば、1×1または1×3構造のうねつき編物構造のような)異なった形の編物構造を用いることによって、伸長可能性を持つことができる。
【0028】
さらなる実施形態において、織物基盤電極は、1つの電極システムの中に設けられ、その電極システムは、部分的に重なる部分を有する第1の織物部分と第2の織物部分を含む。第1の織物部分は少なくとも1つの第1の導電性領域(第1の「電極」)を含んでいてよく、第2の織物部分は少なくとも1つの第2の導電性部分(第2の「電極」)を含んでいてよい。第1の織物部分の導電性領域と第2の織物部分の導電性領域は、協力して、部分的な物理的接触領域を作ることができる。この物理的接触領域は、第1と第2の「電極」の間に、電気伝導を確立することができる。
【0029】
第1と第2の領域すなわち「電極」は、それぞれ、少なくとも1つの、導電性撚り糸の部分を含む。加えて、第1と第2の領域すなわち「電極」は、それぞれ、少なくとも1つの「浮き撚り糸」の部分を含んでいてよい。
【0030】
本発明の範囲に入る実施形態は、ここに示した図面を参照しながら、さらに説明されるであろう。
【0031】
1つの実施形態において、第1の織物基盤電極は、1つの電極システム内に設けられ、その電極システムは、第1の織物部分10を含み、第1の織物部分10は、図1Aおよび図1Bに示されるように、導電性撚り糸30の部分を有している。この実施形態において、導電性撚り糸30の部分(図1A)は、第1の織物部分10に囲まれ、第1の織物部分10から電気的に絶縁されている。
【0032】
第2の、織物基盤電極は、第1の織物部分20を含み、第1の織物部分20は、図1Dおよび図1Eに示されるように、導電性撚り糸40の部分を有する。
【0033】
本発明の範囲に入る実施形態において、編物構造が使用可能である。その編物構造は、織物部分10および20と導電性撚り糸30および40の両方に対して、例えば、単一の伸縮性布地、疑似うねつき布地および1×1および1×3構造のうねつき布地の中から選ばれたものでありうる。当業者によって知られているように、そのような織物としては、うね織物、すなわち、縦のうねが、交互に、(奇数うねとして)表面に現れ、(偶数うねとして)裏面に現れる織物がある。この型のうね織物は、長さと幅の両方向に良好な弾性を有していることが知られており、体形にぴったり合う衣類を作るのに役立つ。
【0034】
さらなる、本発明の実施形態において、導電性撚り糸30および40は、浮き糸があるように作られる。浮き糸は、当業者に知られているように、織り込まれないで織物の上に出ている(すなわち、織物表面上に浮いたり、横になったりしている)撚り糸の部分を含む。うね織り構造中に導電性撚り糸30および40を有する織物部分10および20は、織物電極構造を提供することができ、その織物電極構造中では、撚り糸30および40は織物のうね構造の上に浮いている。その結果として、これらの浮き撚り糸34および44(図1A、図1B、図1Dおよび図1E)は、織物表面上で直ちに近づくことができる。この、直ちに近づくことができる浮き撚り糸34および44は、浮き撚り糸の物理的接触によって、織物の導電性撚り糸部分間の電気的接触を容易にする。1つの実施形態において、導電性撚り糸部分間の電気的接触は、浮き撚り糸34および44を縫い合わせることによって、さらに容易となる。
【0035】
図1Cに示されているように、第1の織物基盤電極15と第2の織物基盤電極25が、互いに近接した位置にあり、浮き撚り糸34および44を互いに接触させ、導電接続を完成させている。
【0036】
導電性撚り糸30および40、従って、浮き撚り糸34および44として適した材料は、例えば、特許文書WO 2004/097089A1またはUS 7,135,227(INVISTA Technologies S.a.r.l.に譲渡)において開示された導電性撚り糸を含み、上記書類の全内容は、ここでの引用文献に含まれている。WO 2004/097089A1またはUS 7,135,227において開示された導電性撚り糸(以下、ETG1撚り糸と呼ぶ)は、本来、伸長復元性であり、ここに開示される実施形態における編物構造を構成しうる。WO 2004/097089Aの開示に従った、弾性導電性撚り糸の製作に適した非弾性導電性細線は、BEKAERT Fibre Technologies製のそのような撚り糸(CONDUFIL(登録商標)80 dtex および24本の細線からなる撚り糸)、および、Laird Sauquoit Industries(Scranton, Pennsylvania, USA18505)製の、Xstatic(登録商標)という名の、銀被覆されたナイロン撚り糸を含む。
【0037】
非導電性撚り糸または伝統的な織物撚り糸は、織物部分本体の製作に都合よく用いられる。これらの撚り糸は、例えば、綿糸、再生セルロース糸、絹糸、ラミー糸、ポリエステル糸および/またはナイロン糸を含みうる。織物部分本体は、また、ポリエステル糸とナイロン糸に、(INVISTA Technologies S.a.r.l.製のLYCRA(登録商標)ブランドのspandexのような)弾性撚り糸を混ぜたものを含みうる。すなわち、非導電性撚り糸は、伸長復元性を有する非導電性撚り糸を含む。
【0038】
この点で、図1Fは、統合された織物電極35を示し、この織物電極35は、うね織り構造(すなわち、1×1または1×3うね構造)を含む種々の型の織物構造を用いた導電性領域40’の部分を有している。このような電極は、導電性領域40’を囲み、例えば、うね構造を持つ、より広い領域18の中にあるようにすることができる。電極領域は、例えば、導電性撚り糸で覆われたLycra(登録商標)spandexの存在、または、WO 2004/097089A1において開示された撚り糸(ETG1)のような導電性撚り糸の使用によって、伸長可能である。加えて、うね構造と弾性材料の使用によって、この伸長可能な電極は、人体への良好な接触と、それによる、信号の良好な取得を可能とする。
【0039】
上記のような、うね構造の伸長可能電極は、例えば、(GRUPPO LONATI, イタリーに属する)SANTONI製のSM8-TOP1, SM8-TOP2 およびSM4-TR2編み機により、13”、14”、15”、17”および20”シリンダーを用いて、製造可能である。
【0040】
このような統合された織物電極に用いることができる導電性撚り糸の例は次のようなものを含む。すなわち、Xstatic(登録商標) 70 デニールで二重のもの(例えば、70 デニールの、銀被覆されたナイロン糸と、Laird Sauquoit Industries(Scranton, Pennsylvania, USA 18505)製の34本の細線)、ETG1撚り糸(LYCRA(登録商標) Type 162 “clear” 32 を70 デニールのナイロン撚り糸で二重被覆したものと、Electro Feindraht製の20ミクロンの銀メッキされた銅線)などである。
【0041】
図1Cは、AからA’へ伸びている軸に沿う織物部分10と織物部分20の側面を示している。この図に示されているように、織物部分10の浮き撚り糸34と織物部分20の浮き撚り糸44との物理的接触が可能となる。この、浮き撚り糸34と44との物理的接触、あるいは、類似の浮き糸複数の物理的接触は、織物部分10と20との間の電気的連続性をもたらす。
【0042】
図1Cに示されているように、織物部分10の浮き撚り糸34が、織物部分20の浮き撚り糸44と接触しているとき、2つの導電性領域間、すなわち、表面12上の導電性部分30から表面22上の導電性部分40への電気信号の伝達が可能となる。
【0043】
シャツのような着用物に完全に統合される織物基盤電極システムの1つの実施形態が、図2Aおよび図2Bによって示されている。これらの図において、着用物100は、上半身用着衣として示されている。着用物100は、広く実行されている(環状)シームレス編み技術によって製造可能である。例えば、シームレス編み技術を用いて製造された「編んだまま」形状において、着用物100は、上部90と、それと、AA’軸に関して鏡像関係にある下部80とからなる円筒形状を有する。図2Aの下部80は、上部90の中へ折り込まれ、図2Bによって示されるように、内側部分と外側部分とを持つ二重衣類を形成する。衣類のウエストバンドも、類似の方法で製造される。
【0044】
図2Aおよび図2Bは、織物基盤電極システムを完全に統合した着用物100を示す。織物基盤電極システム40の外面部分は、下部80と関連づけられているように示されている。織物基盤電極システム40の外面部分は、破線で示されるように、内面部分42および浮き撚り糸44と電気的に連続している。織物基盤電極システム30の外面部分は、上部90と関連づけられ、破線で示されるように、内面部分32および浮き撚り糸34と電気的に連続している。下部80が、着用物100の上部90の方に折られたとき、浮き撚り糸部分34と44は、(図1Cと同様に)図2Bに示されるように、物理的に接触する。浮き撚り糸部分34と44の物理的接触の結果として、電気信号は、二重衣類100の外部表面にある電極30から、内部表面にある電極40、さらに着用者の皮膚に至る方向とその逆の方向に通過することができる。
【0045】
織物基盤電極システムの他の実施形態は図3Aおよび図3Bによって示されている。図3Aに、織物70の一部分が、水平軸CC’とBB’によって区切られている状態が示されている。図3Aには、CC’とBB’の両方から等距離にある3番目の水平軸AA’が示されている。
【0046】
図3Aおよび図3Bにおいて、水平方向において反対向きに置かれた、2つの、織物基盤電極が示されている。これらの電極は、図3Aに示されるように、導電性撚り糸30、30’の第1および第2の外側部分を含む。これらの電極は、さらに、図3Aに示されるように、導電性撚り糸部分34、34’を含み、その導電性撚り糸部分34、34’は、それぞれ、撚り糸部分30、30’の下に横たわる浮き撚り糸として、破線によって、示されている。
【0047】
同様に、図3Aは、織物基盤電極システムの、随意的に付加された、綿糸のような保湿性の撚り糸からなる第3および第4の外側部分46、46’を含む、構成要素を示している。このような織物基盤電極システムは、さらに、図3Aに示されるように、導電性撚り糸部分44、44’を含み、その導電性撚り糸部分44、44’は、それぞれ、導電性撚り糸部分40、40’の下に横たわる浮き撚り糸として、破線によって、示されている。導電性撚り糸部分40、40’は、それぞれ、44、44’につながり、随意的に付加された、保湿性の撚り糸からなる第3および第4の外側部分46、46’によって囲まれている。
【0048】
さらに、図3Aには、織物基盤電極への電気的接触のための中心点としての役目を果たす金属製コネクタ50が示されている。
【0049】
図3Bは、織物部分70を水平軸AA’に沿って折り、水平軸CC’とBB’が重なって、水平軸CB−CB’となった後の状態を示している。このように、織物部分70を水平軸AA’に沿って折った結果として、二重織物部分が形成される。内側の導電性撚り糸部分と、それに付随する浮き糸部分、それぞれ、34と44、ならびに、34’と44’は二重織物部分の内側部分において(図3Cに示されるように)物理的に接触する。
【0050】
図3Cに示されるように、導電性撚り糸部分30と30’は、外側表面部分72の上にあり、導電性撚り糸部分34と34’は、内側表面部分74の上にある。同様に、図3Cに示されるように、随意的に付加された保湿性撚り糸部分46と46’は外側表面部分78の上にある。図3Cに示されるように、導電性撚り糸部分40と40’は外側表面部分78の上にあり、浮き撚り糸部分44と44’は、二重織物の内側表面部分76の上にある。
【0051】
図3Cに示されるように、折り重ねられた織物部分70は、表面部分78、72と、2つの織物基盤電極を持ち、その電極は、表面部分78から表面部分72へと連続している。このような配置は、表面部分72と78の間の、電気信号のやりとりを可能とする。接続点50と50’は、電気信号の送受信に使われる。
【0052】
接続点50と50’を電気信号の送受信に用いる手段は図4に示されている。この図において、織物部分70は、表面74と76’の間を眺めた形で示されており、これらの表面は、(図3Bに示されたように)織物部分70を水平軸AA’に沿って折り重ねることによって、互いに向き合っている。表面78(着用者の皮膚に接触する側)は、導電性撚り糸部分40と40’を含み、表面72は導電性撚り糸部分30と30’を含んでいる。表面76と74の間において、導電性撚り糸部分44と44’が導電性撚り糸部分34と34’と物理的に接触し、導電性撚り糸部分44、44’と導電性撚り糸部分30、30’電気的連続性を提供している。
【0053】
導電接点50と50’は、それぞれ、導電性撚り糸部分30と30’につながれている。導電接点50と50’は、例えば、金属導電体のような、いかなる導電体で作られていてもよい。導電接点50と50’は、導電性撚り糸部分30、30’につながれることができ、それによって、導電性撚り糸部分30、30’を通して、それぞれ、電気接点210と210’と電気的連絡が可能となる。電気接点210と210’は電気装置200に付随している。
【0054】
電気装置200は、図4において、折り重ねられた織物部分70の表面74と76の間に装着されている。その結果として、導電性撚り糸部分40と40’で発生した電気信号は、それぞれ、電気装置200に付随する電気接点210と210’に導かれる(導電性撚り糸部分30、30’の場合も同様である)。その反対に、電気装置200において発生した電気信号は、直接、電気接点210と210’に導かれ、さらに、導電性撚り糸部分40と40’(導電性撚り糸部分30、30’でも同様)へ導かれる。
【0055】
随意的に付加された撚り糸60の一例が図4に示され、この撚り糸は、例えば、疎水性部材であるPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)の細線からなる。随意的に付加された撚り糸60の使用は、着用者が強く汗をかいている場合に起こるかもしれない、織物基盤電極回路の短絡の可能性を低める。ある実施の形態において、PTFE細線は、LYCRA(登録商標)のspandex撚り糸によって、被覆されるか、撚り合わされていてよい。別の方法としては、これらの撚り糸は、予備的処理無しに、衣類構造における従来の繊維と統合されうる。
【0056】
2つの織物基盤電極を用いて十分に統合されている着用物110の部分が図5に示されている。図5における着用物は、袖、袖口またはバンドを表現している。そのような実施の形態においては、電気装置200は、該着用物を着用した人または動物の、生物生理学的パラメーターを受けたり、保存したり、そして/または伝達したりしうる。
【0057】
図5に示されているように、2つの織物基盤電極は、表面72と74の間に装着されている電気装置200と直接連絡を取り合うことができる。表面78の上の2つの導電性撚り糸部分40と40’は、着用者の皮膚に接触することができる。導電性撚り糸部分40と40’と皮膚の接触の結果として、着用者から発生する電気信号は、それぞれ、導電性撚り糸部分30と30’へ伝達され、さらに、接点50と50’を経由して、電気装置200へ伝達されることができる。同様にして、電気装置200は、電気信号を、接点50と50’を経由して、さらに、導電性撚り糸部分30と30’を経由し、着用者の皮膚に接触している導電性撚り糸部分40と40’へ伝達し、電気信号を着用者に伝達することができる。
【0058】
本発明の他の実施形態において、電気装置200は、生物生理学的監視をすることができ、例えば、着用者の心臓の電気的活動に付随する電気信号を監視し、心拍数を監視することができる。電気装置200は、図4に示されたように、導電性接点210と210’を用いて、接点50と50’へ関連付けられることができる。この用途に適しているスナップ留め式接点50と50’は、例えば、PRYM Consumer USA製の19Lと21Lとして入手可能である。スナップ留め式接点50、50’の下の強化織物としては、例えば、CORDURA(登録商標)の織物片の形で入手可能である。これらは、織物電極30と30’の位置にあるスナップ式接点の、消耗による故障または突発的故障を防ぐのに役立つ。
【0059】
図5における着用物110は、着用者の中胸部を囲むバンドの形をしている。このバンドは、人体の他の部分、すなわち、手首、腕、腰などにも適用可能である。着用物110の表面78は、着用者に向いて位置し、導電性撚り糸部分40と40’は、心臓の鼓動に伴う電気信号を受けるように、水平方向に距離を置いて、位置している。
【0060】
付加的に、着用者の皮膚からの信号を取得することが、例えば、図4における、導電性撚り糸部分40と40’を取り囲むバンド状の布地に編み込まれた綿撚り糸46と46’を用いることによって可能となる。綿撚り糸は、(例えば、絹、ビスコースレーヨン、アセテート、羊毛と同様に)親水性であることが知られており、導電性撚り糸部分40と40’の周囲に、着用者の身体から出る湿分を保持する湿分保持性を高める。
【0061】
着用者の皮膚に接触する導電性撚り糸部分40と40’の周囲に塗布膜を設けるのも付加的事項であり、これによって、着用物110が着用されてすぐに、湿分が高くなるようにして、発汗を促進することができる。このような塗布膜は、織物部分の導電性領域の上および/または周囲に、ポリマー溶液を上塗りすることによって、形成可能である。そのような塗布膜を設けることは、例えば、着用者が激しい運動をしない場合に望ましい(例えば、着用者が激しい運動をする場合には、この塗布膜を設けることは、あまり望ましくない)。適当な塗布膜としては、例えば、ELASTOSIL R plus 573 導電性シリコンゴム(Wacker Silicones, WACKER-Chemie GmbH, ドイツ製)がある。
【0062】
心拍数を監視するのに適した電気装置としては、POLAR Electro Oy(Professorinitie 5,フィンランド, 90440 Kempele)製のものがある。POLAR S810i(商標)およびPOLAR RS800(商標)は、ともに、電子モジュール(図5に示された実施形態における200)と、該モジュールとラジオ波で交信する、手首装着型の装置を含む。この手首装着型の装置は、着用者のデータを記録する。そのデータは、装着者が、例えば、ランニング、サイクリング、スキー滑走のような激しい運動をしているときに取得可能である。
【0063】
本発明の、この実施の形態は、POLAR RS800(商標)またはPOLAR S810i(商標)のような装置を装着するときの、他の装着手段よりも優れたものになりうる。これに比べて、POLAR S810i(商標)を使用する際に用いられることがすでに知られている胸用のベルトと帯は、人体によく合い、心地よく、目立たないものであるとはいえない。上半身用衣類、例えばスポーツブラは、生物生理学的監視のために完全に統合化され、本発明の優れた実施形態となる。
【0064】
本発明の実施形態に基づいて、織物基盤電極を取り込むことができる着用物の例は、あらゆる型のスポーツまたは運動用衣服を含む、あらゆる型の衣服をも含む。そのような衣服の特別な例として、シャツ、タンクトップ、ブラ、下着がある。さらに、着用物として、バンド、帯、ベルト、または、他のいかなる型の着用物も、例として含まれることに注意することも重要である。一層のあて布状電極40をあらゆる着用物に切り張りすることができる。着用物は、患者の生物生理学的パラメーターの監視のような、医療用途にも使用されうる。
【0065】
図7から図17までは、漸次変化パターンを持つ織物基盤電極が織物部分70に組み込まれている状態を示している。図7から図9までは、水平軸AA’を示している。水平軸AA’に沿って折ることによって、二重織物部分が形成される。図10から図17までは、漸次変化パターンを持つ織物基盤電極を有する二重織物の正面図を示す。これらの、漸次変化パターンを持つ織物基盤電極の実施形態は、電気信号の授受のための接続点50および50’(図7から図17までには示していない)を持っていてよい。
【0066】
図7においては、第1の電極82は引き伸ばされた卵型の周縁部を持ち、その周縁部は、長さが幅よりも長い。第2の電極84は、他の、引き伸ばされた卵型の周縁部を持ち、その周縁部の長さbは幅aよりも長い。水平軸AA’に沿って折ることによって、二重織物部分が形成される。
【0067】
これらの引き伸ばされた卵型の漸次変化パターン82,84は、環状編み機の動作プログラムにおいて、異なる編み針位置において、導電性撚り糸が選択されるようにすることによって形成される。例えば、漸次変化パターンの、導電性撚り糸1本分の、第1の列の長さを第2の列の長さより短くし、それを、列の長さが最大となるまで続ければ、卵型の頂点部分を作ることができる。そして、もう一方の部分を作るには、その逆を行えばよい。
【0068】
図8は、他の漸次変化パターン86、88を示し、織物基盤電極の周縁部が、角を持つ端を持つ形となっている。第1の電極86は、引き伸ばされた6角形の周縁部を持ち、その長さは幅よりも長い。第2の電極88は、別の、引き伸ばされた6角形の周縁部を持ち、その長さは幅よりも長い。
【0069】
図9は、他の漸次変化パターン90、92示し、織物基盤電極は、一方の端部において角を持っている。
【0070】
図10は、1対の織物基盤電極94を示し、その電極は、引き伸ばされた卵型をしている。他に、このような電極の一方のみが、引き伸ばされた卵型をしていてもよい。
【0071】
図11は、1対の織物基盤電極96を示し、各電極は、斜めに切れた端を持つ形の漸次変化パターンを持っている。この漸次変化パターンは、台形であり、上端の導電性撚り糸または繊維は、次の撚り糸または繊維よりも短く編み込まれており、このようなことが下端まで続いている。
【0072】
図12は、1対の織物基盤電極98を示し、各電極は、角を持つ端を持つ漸次変化パターンを持っている。この実施形態において、各電極は、引き伸ばされた5角形となっている。ここで、各電極は、織物の中で、水平軸に対して、ある角度をもって配置されている。
【0073】
図13は、1対の織物基盤電極99を示し、各電極は、上端および下端が、曲がり方が変化する曲線となっている漸次変化パターンを持っている。ここに示されているように、電極の向かい合う端部は、直線となっているが、曲線あるいは他の形をしていてもよい。直線状の端部は、互いに傾いているように示されているが、両方が垂直であってもよい。
【0074】
図14は、1対の織物基盤電極101を示し、各電極は、3角形状の漸次変化パターンを持っている。各3角形状パターンの1つの頂点は丸くなっている。各電極は、織物の中で、電極が形成されている方向が、水平軸に対して、ある角度を持っているように配置されている。
【0075】
図15は、1対の織物基盤電極103を示し、各電極は、3角形状の漸次変化パターンを持っている。各3角形状パターンの各頂点は丸くなっており、各電極は、織物の中で、電極が形成されている方向が、水平軸に対して、平行になるように配置されている。そうではなくて、織物基盤電極103が、互いにある角度をもって向き合っていてもよいし、電極が形成されている方向が、水平軸に対して、ある角度を持っているように配置されていてもよい。
【0076】
図16は、1対の織物基盤電極105を示し、各電極は、涙粒形状の漸次変化パターンを持っている。パターンの1つの端部は角を持っており、他の端部は、円形であるか丸みを持っている。
【0077】
図17は、1対の、楕円形状の周縁部を持つ織物基盤電極107を示している。このような楕円形状の漸次変化パターンは、環状編み機の動作プログラムにおいて、異なる編み針位置において、導電性撚り糸が選択されるようにすることによって形成される。例えば、漸次変化パターンの第1の列の長さを第2の列の長さより短くし、それを、列の長さが最大となるまで続ければよい。そして、次には、その逆を行えばよい。
【0078】
図7から図17までに示された漸次変化パターンを持つ織物基盤電極は、環状編み機、例えば、SANTONIによって製造されている環状編み機を用い、編み機の動作をプログラミングすることによって、製造可能である。漸次変化パターンを持つ織物基盤電極を形成するために、環状編み機は、ユーザー特化仕様に従って、導電性撚り糸を、異なる編み針位置においてつまみあげるように、プログラミングされる。編み機は、1つまたはそれ以上の、外側の円筒面に細長い小孔を有する環状編み針シリンダーを持っている。その小孔は、糸のループを作るために編み針が移動するときのガイドとなる。編み針は、最大位置と最少位置との間を、カムの作用によって、往復する。編み機の動作中、シリンダーと編み針は回転する。漸次変化パターンを持つ織物基盤電極を形成するために、ある編み針は、他の編み針が、前回の編み動作が終わっていない撚り糸をつまみあげるために、別の場所に移動する間に、糸のループを作ることを要求される。編み機は、漸次変化パターンを持つ織物基盤電極が環状に編みあげられた衣類の中に編み込まれるように、各編み針の位置と移動を決定するようにプログラミングされる。
【0079】
すなわち、漸次変化パターンは、導電性撚り糸または導電性繊維1本ずつの編み過程の繰り返しによって形成され、該編み過程の繰り返しにおいて、第1の編み過程が導電性撚り糸または導電性繊維の第1の長さを作り、前記第1の編み過程に隣接する第2の編み過程が前記第1の長さとは異なる第2の長さを作り、前記第2の編み過程に隣接する第3の編み過程が前記第2の長さとは異なる第3の長さを作ることによって形成される。
【0080】
試験方法
織物基盤電極の効率を評価する方法が、U.S. Patent No. 7,308,294と U.S. Patent No. 7,474,910に説明されており、その全内容は、ここでの引用文献に含まれている。
【0081】
本発明の視野内に入る実施形態の、生物生理学的監視への適合性を試験するために、いくつかの対象の心拍数が、POLAR RS800(商標)およびPOLAR S810i(商標)のエレクトロニクスモジュールを用いて測定された。これらのモジュールは、上胸部に着用された編物バンド(すなわち、70)の中に装着され、種々の、漸次変化パターンを持つ織物基盤電極を用いた場合と、(漸次変化パターンを持たない長方形織物基盤電極を有する)比較用織物基盤電極を用いた場合の、信号品質を比較するために用いられた。
【0082】
心拍数監視用ベルトまたは胸バンドを用いた場合の結果の例が(表1中の1−6に)示されている。これらの心拍数監視ベルトは、SANTONI製のSMA-8-TOP1シームレス、13インチサイズ、編み機(以後、「SANTONI編み機」という)によって作られた。心拍数監視ベルトを製作する際に、種々の撚り糸を用いて、(ジャージー織り構造、モックうね織り構造を含む)異なる編み構造の組み合わせが製作された。各例において、表示された電極領域は、Laird Sauquoit Industries(Scranton, Pennsylvania, USA18505)製の、銀被覆されたナイロンの70デニールのXstatic(登録商標)と34本の細線(以後、「Xstatic(登録商標)70/34」という)を用いて製作された。
【0083】
心拍数監視ベルトの例1−6の各々において、導電性撚り糸でできたセンサーは基盤織物に織りこまれている。二重の、Unifi, Inc.製の、70デニール、68本のナイロン細糸で織られた織物がLycra(登録商標)spandex(T-902C 260d)で被覆された。ナイロン糸とLycra(登録商標)spandexは、SANTONI編み機を用い、ナイロン92%、Lycra(登録商標)8%の割合で編み合わされた(ナイロンが約75から100%、Lycra(登録商標)が0から約25%の割合でもよい)。さらに、このとき、織物基盤電極を含む織物領域(「導電性領域」)および、非導電性領域(非導電性部分)において、単純なジャージー編みと(1×1、3×1、2×1、2×2)モックうね編みが用いられた。
【0084】
織物基盤電極を含む織物領域(「導電性領域」)において、導電性撚り糸が、基盤織物の1つの側に、SANTONI編み機を用いて、編み込まれた。例1−6および比較対象の心拍数監視ベルトを製作する際に用いられた導電性撚り糸は、Xstatic(登録商標)70/34であった(Bekaert製の、ポリエステル糸80%とステンレススチール糸20%の複合撚り糸も使用可能であろう)。この点において、導電性領域は、単純なジャージー編みとモックうね編みを用いて作られた。
【0085】
30−60分続く屋内または屋外運動期間の間、被実験者は、比較例と6例の監視ベルトを着用した。屋内心拍数は、所有権のあるadidas(登録商標)ソフトウエアを用いて記録された。屋外心拍数のデータは、POLAR S810i(商標)およびPOLAR RS800(商標)のエレクトロニクスモジュールを用いる方法、および手首装着データ記録器によって記録された。
【0086】
例1−6の心拍数監視ベルトにおいて、導電性領域の大きさa×b(図7)は、表1に示されているように、変化している。これらの値を用いて、各領域の面積が近似され、百分率で、比較例と比較された。
【0087】
各運動期間の、開始時、中間、終了時における、信号取得の質が、専門家のパネルによって評価された。雑音の存在またはその他の信号劣化も注目された。スコア10は優秀と考えられ、スコア1は不十分と考えられた。そして、平均評価が計算された。
【0088】
表1は、例1−6と比較例の心拍数監視ベルトの、上記導電性領域の大きさと、信号品質の平均評価とを示している。この場合の、織物基盤電極は下記の周縁形状を持っている。
比較例 浮き糸を持つ長方形パターン
例1 浮き糸無しの長方形パターン
例2 引き伸ばされた楕円パターン
例3 引き伸ばされた楕円パターン
例4 楕円パターン
例5 楕円パターン
例6 楕円パターン
【0089】
【表1】

例1−6は、漸次変化パターンを持つ織物基盤電極は、比較例に匹敵する信号品質を提供することを示している。このように、漸次変化パターンを持つ織物基盤電極は、着用物中での織物基盤電極の信号取得に悪影響を及ぼすことなく、編み上げ速さおよび編み針の耐久性の点において、製造工程上の有用性をもたらす。
【0090】
上記の詳細説明は、本発明の視野を制限するものではない。ここに開示された例は、代表例であって、発明の範囲を制限するものではない。上記の発明の実施形態は、本発明から逸脱することなく、本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が認めるように、修正または変更されるであろうし、構成要素が追加されたり削除されたりするであろう。従って、本発明は、特許請求の範囲によって限定され、本明細書に詳述した方法に代わる方法によっても遂行しうるであろう。
【符号の説明】
【0091】
10:織物部分、12:表面、15:織物基盤電極、18:より広い領域、20:織物部分、22:表面、25:織物基盤電極、30、30’:導電性撚り糸、32:内面部分、34:浮き撚り糸、34、34’:導電性浮き撚り糸部分、35:織物電極、40、40’:導電性撚り糸、42:内面部分、44:浮き撚り糸、44、44’:導電性撚り糸部分、46:第3の外側部分、46’:第4の外側部分、50:金属製コネクタ、60:随意的に付加された撚り糸、70:織物部分、72:外側表面部分、74:内側表面部分、76:内側表面部分、78:外側表面部分、80:下部、82:電極、84:電極、86:電極、88:電極、90:上部、90、92:漸次変化パターン、94、96、98、99:織物基盤電極、100、110:着用物、101、103、105、107:織物基盤電極、110:着用物、210、210’:電気接点、200:電気装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
織物を基盤とする織物基盤電極であり、
(a)非導電性撚り糸と、
(b)導電性撚り糸細線を含む少なくとも1つの導電性領域を含む第1の織物部分を含み、
該導電性領域は漸次変化パターンを少なくとも1つ形成していることを特徴とする織物基盤電極。
【請求項2】
請求項1に記載の織物基盤電極において、前記非導電性撚り糸は、伸長復元性を有する1つまたはそれ以上の撚り糸を含むことを特徴とする織物基盤電極。
【請求項3】
請求項1または2に記載の織物基盤電極において、前記導電性撚り糸細線は、伸長復元性を有する1つまたはそれ以上の撚り糸細線を含むことを特徴とする織物基盤電極。
【請求項4】
請求項1、2または3に記載の織物基盤電極において、前記導電性領域は、織られるかまたはうね織りされている構造を有する織物を含むことを特徴とする織物基盤電極。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の織物基盤電極において、前記第1の織物部分の導電性領域は、少なくとも1本の浮き撚り糸を含むことを特徴とする織物基盤電極。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の織物基盤電極において、前記導電性領域は、導電性撚り糸によって覆われた弾性撚り糸を含むことを特徴とする織物基盤電極。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の織物基盤電極において、少なくとも1つの疎水性部材が前記導電性領域に包含されていることを特徴とする織物基盤電極。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の織物基盤電極において、前記第1の織物部分の導電性領域は、1つの長さと1つの幅と1つの厚さを有し、該長さは該幅よりも長いことを特徴とする織物基盤電極。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載の織物基盤電極において、前記漸次変化パターンは、丸い端、角を持つ端、斜めに切れた端、曲線形状の端およびジグザグ形状の端からなる群から選ばれる端を持つ形状を有することを特徴とする織物基盤電極。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかに記載の織物基盤電極において、前記漸次変化パターンは、上記導電性撚り糸細線1本ずつの編み過程の繰り返しによって形成され、該編み過程の繰り返しにおいて、第1の編み過程が第1の長さを作り、第2の編み過程が前記第1の長さとは異なる第2の長さを作り、第3の編み過程が前記第2の長さとは異なる第3の長さを作ることによって、前記漸次変化パターンが形成されることを特徴とする織物基盤電極。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれかに記載の織物基盤電極において、該電極は、前記第1の織物部分の導電性領域の上および/または周囲に、ポリマー溶液の上塗りを含むことを特徴とする織物基盤電極。
【請求項12】
織物を基盤とする織物基盤電極を形成する際の編み針の消耗を軽減するための方法であって、
少なくとも1つの、漸次変化パターンを有する織物を作るように、編み機をプログラミングすること、
導電性撚り糸または導電性繊維を用いて前記織物を編み、少なくとも1つの、前記漸次変化パターンを有する導電性領域を形成すること、および、
前記織物を、他の撚り糸または繊維と編み合わせて、前記織物の他の非導電性部分を形成すること
を含むことを特徴とする、編み針の消耗を軽減するための方法。
【請求項13】
請求項12に記載の、編み針の消耗を軽減するための方法において、前記編み機は環状編み機であることを特徴とする、編み針の消耗を軽減するための方法。
【請求項14】
請求項12または13に記載の、編み針の消耗を軽減するための方法において、少なくとも1つの前記漸次変化パターンは、丸い端、斜めに切れた端、曲線形状の端、角を持つ端およびジグザグ形状の端からなる群から選ばれる端を持つことを特徴とする、編み針の消耗を軽減するための方法。
【請求項15】
請求項12、13または14に記載の、編み針の消耗を軽減するための方法において、前記漸次変化パターンは、前記導電性撚り糸または導電性繊維1本ずつの編み過程の繰り返しによって形成され、該編み過程の繰り返しにおいて、第1の編み過程が第1の長さを作り、前記第1の編み過程に隣接する第2の編み過程が前記第1の長さとは異なる第2の長さを作り、前記第2の編み過程に隣接する第3の編み過程が前記第2の長さとは異なる第3の長さを作ることを特徴とする、編み針の消耗を軽減するための方法。
【請求項16】
織物を基盤とする織物基盤電極システムであり、
該電極システムは、少なくとも第1の織物部分と第2の織物部分を含み、
前記第1の織物部分は、少なくとも1つの第1の漸次変化パターンを有する少なくとも1つの第1の導電性領域を含み、
前記第2の織物部分は、少なくとも1つの第2の漸次変化パターンを有する少なくとも1つの第2の導電性領域を含み、該第2の漸次変化パターンは、少なくとも1つの前記第1の漸次変化パターンと同じかまたは異なっていてよく、
前記第1および第2の織物部分は、少なくとも部分的に重なりあい、
前記第1の織物部分の導電性領域と前記第2の織物部分の導電性領域とは電気的に結合されていることを特徴とする、織物基盤電極システム。
【請求項17】
請求項16に記載の、織物基盤電極システムにおいて、(i)前記第1の織物部分の導電性領域と(ii)前記第2の織物部分の導電性領域のうちの少なくとも1つは浮き撚り糸を含むことを特徴とする、織物基盤電極システム。
【請求項18】
請求項16または17に記載の、織物基盤電極システムにおいて、(i)前記第1の織物部分の導電性領域と(ii)前記第2の織物部分の導電性領域のうちの少なくとも1つは、少なくとも1つの弾性化された導電性撚り糸の部分を含むことを特徴とする、織物基盤電極システム。
【請求項19】
請求項16、17または18に記載の、織物基盤電極システムにおいて、(i)前記第1の織物部分の導電性領域と(ii)前記第2の織物部分の導電性領域のうちの少なくとも1つは、導電性撚り糸によって少なくとも部分的に覆われた弾性撚り糸を含むことを特徴とする、織物基盤電極システム。
【請求項20】
請求項16ないし19のいずれかに記載の、織物基盤電極システムにおいて、(i)前記第1の織物部分の導電性領域と(ii)前記第2の織物部分の導電性領域のうちの少なくとも1つは、織られるかまたはうね織りされている構造を有する織物を含むことを特徴とする、織物基盤電極システム。
【請求項21】
請求項16ないし20のいずれかに記載の、織物基盤電極システムにおいて、(i)前記第1の織物部分の導電性領域と(ii)前記第2の織物部分の導電性領域は、共に浮き撚り糸を有し、該浮き撚り糸は互いに縫い合わされていることを特徴とする、織物基盤電極システム。
【請求項22】
請求項16ないし21のいずれかに記載の、織物基盤電極システムにおいて、前記第1の織物部分の導電性領域と前記第2の織物部分の導電性領域は、協同して、少なくとも部分的な物理的接触を作り、前記第1の織物部分と前記第2の織物部分を電気的に結合していることを特徴とする、織物基盤電極システム。
【請求項23】
請求項16ないし22のいずれかに記載の織物基盤電極システムが組み込まれた着用物。
【請求項24】
請求項23に記載の着用物において、該着用物は、ブラジャー、シャツ、タンクトップ、下着、袖、袖口、帯、ベルトおよびバンドから選ばれた着用物であることを特徴とする着用物。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図1F】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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