説明

潅水チューブ

【課題】給水孔毎の給水量のばらつきを抑制する潅水チューブを提供する。
【解決手段】潅水チューブは、液体搬送路11を有する主管10と、主管10の外周に設けられ、液体搬送路11との間に設けられた連通孔21と、外方へ向かう給水孔22とを有する支管20とを備えている。給水孔22と連通孔21との間に、複数の第1給水路23が延びている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物体の株元への潅水を行う潅水チューブに関する。
【背景技術】
【0002】
農作物への潅水が過剰にならないように、緩やかな速度で一滴ずつ潅水する点滴潅水が行われている。点滴潅水を行う潅水チューブとして、例えば、潅水用の水を搬送する水搬送ホース、水搬送ホースに所定間隔で設けられた開口、及びこの開口と農作物へ水を給水する給水孔(滴下出口)との間に延びる散布ホースを備えるものが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
農業用の潅水では、異物の蓄積、潅水用の水に混合されている養分の析出、微生物の繁殖などにより、散布ホースに目詰まりが発生し易い。上述したような従来の潅水チューブは、開口と給水孔との間には1本の散布ホース、すなわち1つの水路しか設けられていない。そのため、散布ホースに目詰まりが発生すると、この散布ホースに対応する給水孔から給水しなくなり、農作物への給水量がばらつくという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭60−29306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、給水孔毎の給水量のばらつきを抑制する潅水チューブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による潅水チューブは、液体搬送路を有する主管と、前記主管の外周に設けられ、前記液体搬送路との間に設けられた少なくとも1つの連通孔と、外方へ向かう給水孔とを有する支管と、を備え、前記給水孔は前記連通孔と複数の第1給水路を介して接続されている。
【0007】
本発明による潅水チューブにおいて、複数の第1給水路の給水孔側端部が互いに接続されて給水孔側接続部を形成し、この給水孔側接続部と前記給水孔との間に第2給水路が延びることが好ましい。
【0008】
本発明による潅水チューブにおいて、複数の第1給水路の連通孔側端部が互いに接続されて連通孔側接続部を形成し、この連通孔側接続部と前記連通孔との間に第3給水路が延びることが好ましい。
【0009】
本発明による潅水チューブにおいて、前記支管は複数の給水孔を有し、1つの給水孔に対応する第2給水路に、他の給水孔が第4給水路を介して接続されていることが好ましい。
【0010】
本発明による潅水チューブにおいて、前記支管は複数の給水孔を有し、前記給水孔側接続部に、他の給水孔が第4給水路を介して接続され、前記給水孔側接続部の口径は、少なくとも前記第1給水路又は前記第2給水路又は前記第4給水路のいずれかの口径より大きいことが好ましい。
【0011】
本発明による潅水チューブにおいて、前記支管は複数の給水孔と、複数の連通孔とを有し、1つの給水孔に対応する複数の第1給水路は、他の給水孔に接続されると共に、当該複数の第1給水路は複数の連通孔に接続されていることが好ましい。
【0012】
本発明による潅水チューブにおいて、前記支管は、前記給水孔の近傍に設けられた突起部を有することが好ましい。
【0013】
本発明による潅水チューブにおいて、前記主管及び前記支管は、少なくとも一部に遮光層を有することが好ましい。
【0014】
本発明による潅水チューブにおいて、前記支管の連通孔の近傍に、パーティクルを除去するフィルタが設けられていることが好ましい。
【0015】
本発明による潅水チューブにおいて、前記主管及び前記支管の内面及び/又は外面の少なくとも一部は、撥水処理、又は撥油処理、又は親水処理されていることが好ましい。
【0016】
本発明による潅水チューブにおいて、前記支管はフィルム材からなり、前記複数の第1給水路は、表面に凸形状部又は凹形状部を有する前記フィルム材の前記凸形状部又は凹形状部により形成されることが好ましい。
【0017】
本発明による潅水チューブにおいて、前記主管及び前記支管の表面に、前記主管及び前記支管を補強する補強フィルムが設けられていることが好ましい。
【0018】
本発明による潅水チューブにおいて、前記主管の前記液体搬送路は、フィルム材を筒状に組み立て、一対の端縁を接着することにより形成される筒部を有し、前記支管は、前記フィルム材が接着された背シール部を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、給水孔は連通孔と複数の第1給水路を介して接続されているので、1つの第1給水路に目詰まりが生じても他の第1給水路を介して連通孔から給水孔へ液体を送ることができ、このため給水孔から液体を確実に流すことができる。このことにより、潅水チューブにおける給水孔毎の給水量のばらつきを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係る潅水チューブの外観斜視図である。
【図2】同実施形態に係る潅水チューブの側面図である。
【図3】同実施形態に係る潅水チューブの断面図である。
【図4】同実施形態に係る潅水チューブの製造方法を説明する図である。
【図5】給水路の賦形化方法を説明する図である。
【図6】支管に設けられる給水路のパターンの一例を示す図である。
【図7】支管に設けられる給水路のパターンの一例を示す図である。
【図8】支管に設けられる給水路のパターンの一例を示す図である。
【図9】支管に設けられる給水路のパターンの一例を示す図である。
【図10】支管に設けられる給水路のパターンの一例を示す図である。
【図11】支管に設けられる給水路のパターンの一例を示す図である。
【図12】支管に設けられる給水路のパターンの一例を示す図である。
【図13】支管に設けられる給水路のパターンの一例を示す図である。
【図14】変形例による潅水チューブの外観斜視図である。
【図15】変形例による潅水チューブの外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施の形態
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
図1に本発明の実施形態に係る潅水チューブの外観斜視図を示し、図2に側面図を示す。なお、図2において波線の左側は潅水チューブの切断面を示す。また、図2におけるA−A線、B−B線に沿った断面図をそれぞれ図3(a)、(b)に示す。
【0023】
図1乃至図3に示すように、潅水チューブは液体搬送路11を有する主管10と、主管10の外周に設けられ、液体搬送路11との間に設けられた複数の連通孔21と、外方へ向かう複数の給水孔22とを有する支管20とを備えている。
【0024】
また、支管20に設けられた複数の給水孔22のうち1つの給水孔22は、対応する1つの連通孔21と、複数の(2つの)第1給水路23によって互いに接続されている。ここで、第1給水路23は図1及び図2(図2の波線の右側)において破線で示されている。
【0025】
複数の第1給水路23は、給水孔22側において互いに接続されて給水孔側接続部23aを形成し、この給水孔側接続部23aは直接給水孔22に接続されている。また、複数の第1給水路23は連通孔21側において互いに接続されて連通孔側接続部23bを形成し、この連通孔側接続部23bは直接連通孔21に接続されている。
【0026】
また、主管10の液体搬送路11内には、潅水用の水や、水と肥料が混合された養液等の液体が流れるようになっている。以下、本実施の形態において、主管10の液体搬送路11は水を搬送するものとして説明する。
【0027】
上述のように、支管20の連通孔21及び給水孔22は、所定間隔を空けて複数設けられている。主管10の液体搬送路11を流れる水は、連通孔21、複数の第1給水路23、及び給水孔22を介して外部へ排出される。給水孔22から排出された水は、農作物に与えられる。
【0028】
また、上述のように、1つの給水孔22と、これに対応する1つの連通孔21との間には、複数(本実施形態では2つ)の第1給水路23が延びている。従って、第1給水路23のいずれかに目詰まりが発生しても、他の第1給水路23により、連通孔21から給水孔22まで確実に水を流すことができるため、各給水孔23から農作物への給水が止まることを防止でき、給水孔23毎の給水量のばらつきを抑制できる。
【0029】
次に、本実施形態に係る潅水チューブの製造方法について、図4(a)、(b)及び図5により説明する。潅水チューブは図4(a)に示すような1枚のフィルム材40からなっており、このフィルム材40を図4(b)に示すように円筒状に組み立て、一対の端縁41の内面同士をフィルム材外側からヒータで溶融接着(以下では「ヒートシール」とも呼ぶ)することで、図4(c)に示すように、潅水チューブが構成される。この場合、円筒状に組み立てられたフィルム材40の円筒部42が主管10となり、フィルム材40が接着(合掌貼り)された背シール部43が支管20となる。例えば、図4(c)において、円筒部42の外周は約6cm、背シール部43の幅は1〜2cm程度となっている。
【0030】
フィルム材40のヒートシールを行う時、第1給水路23となる部分は加熱を行わないようにする。これにより、フィルム材40の非接着部が連通孔21、給水孔22、及び第1給水路23となる。
【0031】
フィルム材40としては、例えばポリエチレン(PE)フィルムや無延伸ポリプロピレン(CPP)フィルムを用いることができる。また、フィルム材40を、二軸延伸ナイロンフィルム等をさらに有する多層フィルムとしてもよい。この多層フィルムを用いる場合には、二軸延伸ナイロンフィルム等が主管10及び支管20を補強する補強フィルムとして機能することにより、潅水チューブの突き刺し強度、引っ張り強度、耐圧性を向上させることができる。
【0032】
なお、上述したような第1給水路23の形成方法では、非接着部のフィルム同士が重なったままブロッキング状態となり、水が流れ難くなる場合がある。そのため、第1給水路23を賦形化して、ブロッキングの発生を防止することが好適である。
【0033】
例えば、あらかじめ第1給水路23の形状に加工した型を準備し、この型を挟み込んでフィルム材40をヒートシールし、その後、型を抜くことで、第1給水路23を賦形化できる。
【0034】
また、図5(a)に示すように、第1給水路23に対応する部分が矩形状に凹んだ一対の金型、又は、図5(b)に示すように、第1給水路23に対応する部分が三角形状に凹んだ一対の金型を準備し、この金型でフィルム材40をプレスして加熱すると共に、金型の凹部は加熱せずに真空引きしてフィルム材40を引き離すようにすることでも、第1給水路23を賦形化できる。賦形化は、第1給水路23の一部のみ行うようにしてもよい。このような賦形化により、表面に凸形状部(又は凹形状部)を有するフィルム材40の前記凸形状部(又は凹形状部)が非接着部となり、連通孔21、給水孔22、及び第1給水路23が形成される。
【0035】
このようにして、1つの給水孔22と、これに対応する1つの連通孔21との間に複数の第1給水路23が延びる支管20を備えた、給水孔23毎の給水量のばらつきを抑制できる潅水チューブを製造することができる。
【0036】
本発明の変形例
図6〜図13に、支管20に設けられる給水路のパターンの変形例を示す。なお、図6〜図13に示す変形例において、図1〜図5に示す実施の形態と同一部分には同一符号を付して説明は省略する。
【0037】
上記実施形態では、1つの連通孔21と1つの給水孔22との間に、第1給水路23が2本延びる場合の例を示したが、図6(a)に示すように第1給水路23を3本設けてもよく、あるいは4本以上設けてもよい。第1給水路23の本数が多い程、第1給水路23に目詰まりが発生した場合に、給水孔22からの給水量の変動を小さく抑えることができる。
【0038】
あるいはまた、図6(b)、(c)に示すように、2本あるいは3本の第1給水路23を給水孔22側において互いに接続して給水孔側接続部23aを形成し、この給水孔側接続部23aを給水孔22に直接接続すると共に、2本あるいは3本の第1給水路23の連通孔21側を互いに接続することなく、独立して対応する連通孔21に接続してもよい。給水孔側接続部23aを給水孔22に直接接続することにより、給水孔22と複数の第1給水路23との距離を短くすることができ、給水孔側接続部23aでの目詰まりの発生を抑制することができる。目詰まりの発生を抑制することにより、潅水チューブの交換頻度も減少し、省資源化にも繋がるという効果がある。
【0039】
次に、図7(a)〜(d)により、本発明の他の変形例について説明する。
【0040】
図7(a)、(b)に示すように、複数の第1給水路23の給水孔22側の端部が互いに接続されて給水孔側接続部23aを形成している。そして、この給水孔側接続部23aと給水孔22との間に第2給水路24が延びている。
【0041】
この場合、複数の第1給水路23は、連通孔21側の端部が互いに接続されて連通孔側接続部23bを形成し、この連通孔側接続部23bは直接連通孔21に接続されている。
【0042】
図7(c)、(d)に示すように、複数の第1給水路23の給水孔22側の端部が互いに接続されて給水孔側接続部23aを形成している。そして、この給水孔側接続部23aと給水孔22との間に、第2給水路24が延びている。図7(a)から(d)に示すように、長く延びている第2給水路24を設けて給水路下流部分を冗長化することで、給水終了時などの負圧発生時に土や微生物などの土壌成分を第2給水路24が吸い込むことにより発生する給水孔22の目詰まり防止に効果がある。この場合、複数の第1給水路23の連通孔21側は、各々独立して対応する連通孔21に接続されている。特定の給水孔22に対して連通孔21が複数あることで、搬送する液体中の物理的な異物である浮遊物により連通孔21に目詰まりが発生した場合に、給水孔22からの給水量の変動をさらに小さく抑えることができる。
【0043】
次に、図8(a)、(b)により、本発明のさらに他の変形例について説明する。
【0044】
図8(a)、(b)に示すように、複数の第1給水路23の連通孔21側の端部が互いに接続されて連通孔側接続部23bを形成している。そして、この連通孔側接続部23bと連通孔21との間に第3給水路25が延びている。長く延びている第3給水路25を設けて給水路上流部分を冗長化することで、搬送液体中に含まれる化学的な汚れ物質が給水路の長さの短い部分で析出することが多いような場合に、給水路上流での目詰まりを軽減することができる。また、給水路全体を冗長化するより低コストである。さらに、液体は上流から下流へと流れるため、上流の目詰まりは確実に下流に影響するため、影響度の大きい上流部分を優先して冗長化し、給水量への影響を軽減することができる。
【0045】
この場合、複数の第1給水路23は、給水孔22側の端部が互いに接続されて給水孔側接続部23aを形成し、この給水孔側接続部23aは直接給水孔22に接続されている。
【0046】
次に、図9(a)、(b)により、本発明の他の変形例について説明する。
【0047】
図9(a)、(b)に示すように、複数の第1給水路23の給水孔22側の端部が互いに接続されて給水孔側接続部23aを形成している。そして、この給水孔側接続部23aと給水孔22との間に第2給水路24が延びている。
【0048】
この場合、複数の第1給水路23の連通孔21側の端部が互いに接続されて連通孔側接続部23bを形成している。そして、この連通孔側接続部23bと連通孔21との間に第3給水路25が延びている。なお、目詰まりの発生を考慮すると、給水路が1本になっている部分(第2給水路24、第3給水路25)の長さは短い方がよい。
【0049】
次に、図10(a)、(b)により、本発明のさらに他の変形例について説明する。
【0050】
図10(a)、(b)に示すように、複数の第1給水路23の給水孔22側の端部が互いに接続されて給水孔側接続部23aを形成している。そして、この給水孔側接続部23aと給水孔22との間に第2給水路24が延びている。
【0051】
この場合、複数の第1給水路23の連通孔21側は、各々独立して対応する連通孔21に接続されている。さらに、1つの給水孔22に対応する第2給水路24に、他の給水孔22’が第4給水路26を介して接続されている。
【0052】
図10(a)、(b)に示す構成では、第2給水路24と第4給水路26との接続部と、給水孔側接続部23aとの間が1本の第2給水路部24で接続されており、この部分で目詰まりが発生すると、複数の給水孔22、22’からの給水量に変動が生じることも考えられる。従って、図11(a)〜(c)に示すような構成にすることがより好適である。
【0053】
図11(a)、(b)に示すように、複数の第1給水路23の給水孔22側の端部が互いに接続されて給水孔側接続部23aを形成している。そして、この給水孔側接続部23aと1つの給水孔22との間に第2給水路24が延びている。また、給水孔側接続部23aに、他の給水孔22’が第4給水路26を介して接続されている。
【0054】
図11(a)、(b)に示す構成は、図10(a)、(b)における、第2給水路24と第4給水路26との接続部と、給水孔側接続部23aとの間の部分を極めて短くしたものに相当する。図11(a)、(b)に示すような構成にすることで、目詰まりが発生すると複数の給水孔22、22’からの給水量に影響を与える給水路の領域が極めて小さくなり、給水孔毎の給水量のばらつきをさらに効果的に抑制できる。図10(a)、(b)および図11(a)、(b)に示す構成は、例えば土壌が細かく給水路下流での負圧発生時に土や微生物などの土壌成分を給水路22、22’が吸い込むことにより発生する給水路下流での目詰まりや、さらには液体中の物理的な細かい異物による給水路上流での目詰まりが極端に発生しやすい環境で、潅水チューブを利用する場合に特に効果がある。
【0055】
図11(c)に示すように、複数の第1給水路23の給水孔22側の端部が互いに接続されて給水孔側接続部23aを形成している。そして、この給水孔側接続部23aと1つの給水孔22との間に第2給水路24が延びている。
【0056】
また、給水孔側接続部23aに、他の給水孔22’が第4給水路26を介して接続されている。この場合、給水孔側接続部23aの口径は、給水路の口径より大きくなっている。図11(c)では、給水孔側接続部23aの口径が、第1給水路23及び第2給水路24及び第4給水路26の口径より大きくなっている。
【0057】
このような構成は、図10(c)における、第2給水路24と第4給水路26との接続部と、給水孔側接続部23aとの間の部分の口径を大きくしたものに相当する。図11(c)に示すような構成にすることで、液体の流れが集中し、あらゆる異物が集まる可能性が高い給水孔側接続部23aを拡大させることにより、給水孔側接続部23aに異物が蓄積したり、養分が析出したりしても、目詰まりすることを防止し、複数の連通孔21から複数の給水孔22、22’まで確実に水を流し、給水孔毎の給水量のばらつきを効果的に抑制できる。
【0058】
次に、図12(a)、(b)により、本発明のさらに他の変形例について説明する。
【0059】
図12(a)、(b)に示すように、1つの給水孔22に対応する複数の第1給水路23は、他の給水孔22’に接続されると共に、複数の連通孔21に接続される。第1給水路23は、図12(a)に示すように網目状に構成してもよいし、図12(b)に示すように格子状に構成してもよい。
【0060】
このような構成にすることで、複数の第1給水路23のいずれかで発生した目詰まりの影響が分散され、複数の給水孔22、22’からの給水量の変動を小さく抑えることができる。
【0061】
次に、図13により、本発明のさらに他の変形例について説明する。
【0062】
図13に示すように、複数の第1給水路23の給水孔22側の端部が互いに接続されて給水孔側接続部23aを形成し、この給水孔側接続部23aは給水孔22に直接接続されている。また、複数の第1給水路23は、連通孔21側の端部が互いに接続されて連通孔側接続部23bを形成し、この連通孔側接続部23bは直接連通孔21に接続されている。
【0063】
この場合、複数の第1給水路23はそれぞれW字形状になっており、連通孔21と給水孔22との間に延びる第1給水路23の長さを長くとることができる。このような構成は、第1給水路23における水の圧力が減少するため、給水孔22からの点滴潅水に好適である。
【0064】
図14(a)に示すように、支管20の給水孔22間(給水孔22近傍)に尖鋭突起部60を設ける構成にしてもよい。尖鋭突起部60は、例えば、1枚のフィルム材の一対の端縁に三角形状の突起を設けておき、ヒートシールの際に一対の突起を重ね合わせて接着することで形成できる。
【0065】
このような潅水チューブを、図14(b)に示すように、尖鋭突起部60を地面に刺して敷設することで、給水孔22と地面との間に空隙ができる。これにより、土に含まれる異物を給水孔22から吸引することを防止し、支管20の給水路(第1給水路23〜第4給水路26)における目詰まり発生を防止できる。また、給水孔22下方の所望の領域に潅水することができる。
【0066】
なお、給水孔22近傍に設ける突起部は、潅水チューブを敷設した際に給水孔22と地面との間に空隙を設けることができるものであれば、その形状は尖鋭形状に限定されない。
【0067】
なお、上記各実施形態及び変形例では、背張り型の潅水チューブを用いて説明を行っていたが、図15に示すような、1枚のフィルム材を、端部からある幅を有するように互いに反対方向で重ね合わせた状態でヒートシールして形成する内張り型の潅水チューブとしてもよい。図15において、円筒部71が主管となり、フィルム材の接着(封筒貼り)部72が支管となる。また、ヒートシール時に非加熱にした部分が非接着となり、給水路となる。
【0068】
さらに、内張り部分をあらかじめ別途2枚のフィルムで整形しておき、整形部分を連通孔に後から接続して潅水チューブとしても良い。この場合、あらかじめ整形する部分はフィルムの重ね合わせで製造しても良いし、フィルムを利用せずプラスティック樹脂の型への流し込みで製造しても良い。
【0069】
潅水チューブの材料
次に、潅水チューブを構成する主管10及び支管20の材料について説明する。以下、主管10及び支管20の材料については、上述した図1〜図15に示す全ての実施の形態や変形例に対して適用することができる。
【0070】
潅水チューブの支管20の第1給水路23、第2給水路24、第3給水路25、及び第4給水路26における目詰まり発生要因の1つとして、微生物や藻などの繁殖がある。従って、微生物や藻などの繁殖を抑えるために、潅水チューブの少なくとも一部が遮光性を有するようにすることが好適である。
【0071】
例えば、潅水チューブの主管10及び支管20の材料を黒色で着色したり、潅水チューブを形成するフィルム材40にカーボンブラックを添加したり、カーボンブラックを添加した遮光フィルムを含む多層フィルムで潅水チューブを形成することで、遮光性を有する潅水チューブが得られる。
【0072】
潅水チューブの主管10及び支管20の材料は、遮光・防霜・防風目的で利用する寒冷紗と同様の遮光率30%以上をもつことが望ましく、防草目的で利用する黒色マルチと同様の遮光率90%以上をもつことがより望ましい。潅水チューブの主管10及び支管20の材料は、高性能な防草目的や暗所設計目的で利用する黒色マルチや遮光カーテンと同様の遮光率99.99%以上をもつことがさらに望ましい。
【0073】
なお、パーティクル等を除去するフィルタを支管20の連通孔21に設けてもよい。支管20の第1給水路23、第2給水路24、第3給水路25、及び第4給水路26は、主管10の液体搬送路11と比較して、口径が小さく、目詰まりが発生しやすい。フィルタを設けることで、第1給水路23、第2給水路24、第3給水路25、及び第4給水路26への異物の侵入を防止し、目詰まり発生を防止できる。フィルタとしては、例えば、発泡体や布(不織布含む)などを用いることができる。
【0074】
また、潅水チューブの主管10及び支管20の内面(液体搬送路11、第1給水路23、第2給水路24、第3給水路25、及び第4給水路26の表面)に、撥水処理、又は撥油処理、又は親水処理を施してもよい。これにより、汚れの付着を防ぎ(耐汚性)、目詰まりを防止することができる。
【0075】
例えば、撥水処理を施すことで、水分をはじくことができ、水分に付随する異物の付着を防止できる。撥水処理としては、飽和フルオロアルキル基、アルキルシリル基、フルオロシリル基、長鎖アルキル基などを用いることができる。
【0076】
また、撥油処理を施すことで、油分をはじくことができ、油分に付随する異物の付着を防止できる。撥油処理としては、フッ素樹脂などを用いることができる。
【0077】
また、親水処理を施すことで、水分に付随する異物が乾いて析出することを防止できる。親水処理としては、酸化チタンなどを用いることができる。
【0078】
このような潅水チューブは、例えば、上述の耐汚性処理を、潅水チューブの材料となるフィルム材の一面に予め施しておき、この面を内側にして潅水チューブを組み立てることで得られる。
【0079】
耐汚性処理は、潅水チューブの内面だけでなく、外面に施してもよい。例えば、チューブ外面に親水処理をすることで、カビの発生を防ぎ、カビがチューブ内に侵入することを防止できる。
【0080】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0081】
10 主管
11 液体搬送路
20 支管
21 連通孔
22 給水孔
22’ 他の給水孔
23 第1給水路
23a 給水孔側接続部
23b 連通孔側接続部
24 第2給水路
25 第3給水路
26 第4給水路
40 フィルム材
42 円筒部
43 背シール部
60 尖鋭突起部
71 円筒部
72 接着(封筒貼り)部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体搬送路を有する主管と、
前記主管の外周に設けられ、前記液体搬送路との間に設けられた少なくとも1つの連通孔と、外方へ向かう給水孔とを有する支管と、
を備え、
前記給水孔は前記連通孔と複数の第1給水路を介して接続されていることを特徴とする潅水チューブ。
【請求項2】
複数の第1給水路の給水孔側端部が互いに接続されて給水孔側接続部を形成し、この給水孔側接続部と前記給水孔との間に第2給水路が延びることを特徴とする請求項1に記載の潅水チューブ。
【請求項3】
複数の第1給水路の連通孔側端部が互いに接続されて連通孔側接続部を形成し、この連通孔側接続部と前記連通孔との間に第3給水路が延びることを特徴とする請求項1又は2に記載の潅水チューブ。
【請求項4】
前記支管は複数の給水孔を有し、1つの給水孔に対応する第2給水路に、他の給水孔が第4給水路を介して接続されていることを特徴とする請求項2に記載の潅水チューブ。
【請求項5】
前記支管は複数の給水孔を有し、前記給水孔側接続部に、他の給水孔が第4給水路を介して接続され、前記給水孔側接続部の口径は、少なくとも前記第1給水路又は前記第2給水路又は前記第4給水路のいずれかの口径より大きいことを特徴とする請求項2に記載の潅水チューブ。
【請求項6】
前記支管は複数の給水孔と、複数の連通孔とを有し、1つの給水孔に対応する複数の第1給水路は、他の給水孔に接続されると共に、当該複数の第1給水路は、複数の連通孔に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の潅水チューブ。
【請求項7】
前記支管は、前記給水孔の近傍に設けられた突起部を有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の潅水チューブ。
【請求項8】
前記主管及び前記支管は、少なくとも一部に遮光層を有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の潅水チューブ。
【請求項9】
前記支管の連通孔の近傍に、パーティクルを除去するフィルタが設けられていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の潅水チューブ。
【請求項10】
前記主管及び前記支管の内面及び/又は外面の少なくとも一部は、撥水処理、又は撥油処理、又は親水処理されていることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の潅水チューブ。
【請求項11】
前記支管はフィルム材からなり、前記複数の第1給水路は、表面に凸形状部又は凹形状部を有する前記フィルム材の前記凸形状部又は凹形状部により形成されることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の潅水チューブ。
【請求項12】
前記主管及び前記支管の表面に、前記主管及び前記支管を補強する補強フィルムが設けられていることを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載の潅水チューブ。
【請求項13】
前記主管の前記液体搬送路は、フィルム材を筒状に組み立て、一対の端縁を接着することにより形成される筒部を有し、前記支管は、前記フィルム材が接着された背シール部を有することを特徴とする請求項1乃至12のいずれかに記載の潅水チューブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−254752(P2011−254752A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−131810(P2010−131810)
【出願日】平成22年6月9日(2010.6.9)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】