潅水構造体、この潅水構造体を用いた潅水システム及びこの潅水システムの運転方法
【課題】保水性ブロック下方の貯水部に雨水等をより多く貯水でき、もって外気温が高温の場合には、長期間に亘って保水性ブロックを冷却できる潅水構造体、この潅水構造体を用いた潅水システム及びこの潅水システムの運転方法を提供する。
【解決手段】潅水構造体1は、内部に貯水空間2を有し上部に上方からの水を受けるための開口部を有する地下埋設型の貯水ユニット3と、貯水ユニット3の開口部を覆う透水性を有する保水性ブロック4と、貯水ユニット3内の貯水空間2内に貯水されている水を保水性ブロック4へと揚水する導水性部材6とを有し、貯水ユニット3の貯水空間2は圧力調整孔8aを介して外気に連通している。
【解決手段】潅水構造体1は、内部に貯水空間2を有し上部に上方からの水を受けるための開口部を有する地下埋設型の貯水ユニット3と、貯水ユニット3の開口部を覆う透水性を有する保水性ブロック4と、貯水ユニット3内の貯水空間2内に貯水されている水を保水性ブロック4へと揚水する導水性部材6とを有し、貯水ユニット3の貯水空間2は圧力調整孔8aを介して外気に連通している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、歩道等の道路やビルの屋上あるいは公園内等に布設される潅水システムに用いられる潅水構造体、これら潅水構造体を用いて形成した潅水システム及びこの潅水システムの運転方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
都市部の歩道等の道路やビルの屋上、あるいは公園内の一部は、通常、アスファルトやコンクリートで固められている。気温が高く、照り返しのきつい夏季の日中、そのような場所の温度上昇は周囲に比較し一段と激しい。このような環境下において歩道を歩いたり、ビルの屋上等で過ごしたりすることはとても厳しい状況下にある。特に温暖化現象が顕著になってきた昨今においては、日中のみならず夜間においても、この熱がアスファルトやビルの屋上から放熱されて、いわゆるヒートアイランド現象を引き起こす要因の一つにもなっている。
【0003】
このヒートアイランド現象等を緩和しようと、道路の脇に植樹したり、ビルの屋上に芝生や木を植えたり、あるいは種々の草花を植える試みも成されているが、それだけでは十分でなく、さらなる工夫が求められている。
この一環として、特許文献1や特許文献2にあるように透水性を有する保水性舗装ブロック本体(以下単に保水性ブロックという)の下に容器状の保水タンクや保水トレイを設置した潅水構造体が提案されている。この潅水構造体の場合、保水性ブロックを浸透して下降した雨水や打ち水(以下単に雨水等という)を保水タンクや保水トレイに溜めておき、外気温が高温になった時には、この雨水等を給水手段、具体的には不織布等の導水性部材を介して毛細管現象により上方に吸い上げ、これを保水性ブロック表面から蒸発させて、その蒸発潜熱により保水性ブロックを冷やそう、というものである。
すなわち、降雨時に雨水等を保水タンクや保水トレイに貯水し、例えば晴天になって、気温が高温になった時等には貯水した雨水等で保水性ブロックを冷やしてヒートアイランド現象を緩和させよう、というものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2885085号公報(特開平8‐85907号)
【特許文献2】特開2006−124980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1や特許文献2に開示されている舗装用の潅水構造体の場合、実際に使用してみると、十分な降雨や打ち水があったにも関わらず、保水タンクや保水トレイ内の貯水空間を十分に満たす雨水等を集めることができない、という問題があった。 その理由は以下のように推測される。
降った雨は、直ちに保水性ブロックの表面や隣接する保水性ブロック間の目地部からその内部に向かって浸透していく。その際、その浸透の進行に伴って保水タンクや保水トレイ内の貯水空間内の空気を圧縮し、大気圧よりもその内部圧力を高めてしまう。その結果、この高められた貯水空間内部の圧力が、保水性ブロックを毛細管現象により浸透しようとしてくる雨水等の毛細管圧力を上回り、ある量を超える雨水等の浸透を阻止してしまう、と推測される。
このように保水性ブロックの材質や毛細管半径、さらにはその厚さ等が決まると、保水タンクや保水トレイ内に溜まる雨水等の貯水量が決まってしまい、それ以上の貯水量を確保することができない、という問題がある。その結果、十分な降雨や打ち水があっても保水タンクや保水トレイ内に十分な貯水量を確保できないため、例えば、夏の高温時、保水性ブロックに雨水等を短期間しか供給することができず、保水性ブロックの冷却を長期間に亘って安定して行うことができない、という問題があった。
【0006】
前述の問題に鑑み本発明の目的は、保水性ブロック下方の貯水部に雨水等をより多く貯水でき、もって外気温が高温の場合には、長期間に亘って保水性ブロックを冷却できる潅水構造体、この潅水構造体を用いた潅水システム及びこの潅水システムの運転方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成すべく参考例記載の潅水構造体は、内部に貯水空間を有し上部に上方からの水を受けるための開口部を有する地下埋設型の貯水ユニットと、該貯水ユニットの前記開口部を覆う透水性を有する保水性ブロックと、前記貯水ユニット内の貯水空間内に貯水されている水を前記保水性ブロック側へと揚水する導水性部材とを有し、前記貯水ユニットの貯水空間は圧力調整孔を介して外気に連通していることを特徴とするものである。
【0008】
このように貯水ユニットの貯水空間を圧力調整孔を介して外気(以下本発明で言う外気とは、大気圧を保持している外部空間の意味である)に連通させておくと、貯水空間内に雨水等が溜まって、貯水空間内の空気の容積が変化しても貯水空間の圧力は前記圧力調整孔を介して常に大気圧とほぼ同じ値に保持される。
そのため貯水空間内の圧力は、保水性ブロックを毛細管現象により浸透しようとしている雨水等の毛細管圧力を上回ることがなくなり、貯水空間内により多くの貯水量を確保できるようになる。
換言すると、参考例の潅水構造体によれば、降雨量や打ち水量に比例してより多くの貯水量を確保できるので、外気温が高温の場合にも、長期間に亘って保水性ブロックに雨水等を供給でき、その蒸発潜熱で保水性ブロックを冷却することができる。
【0009】
さらに本発明の請求項1記載の潅水構造体は、内部に貯水空間を有し上部に上方からの水を受けるための開口部を有する地下埋設型の貯水ユニットと、該貯水ユニットの前記開口部を覆う透水性を有する天板と、前記天板上方に形成されたサンドクッション層からなる貯水層と、前記貯水ユニット内の貯水空間内に貯水されている水を前記貯水層側へと揚水する導水性部材と、前記貯水層上に載置される透水性を有する保水性ブロックとを有し、前記貯水ユニットの貯水空間は圧力調整孔を介して外気に連通していることを特徴とするものである。
【0010】
このように貯水ユニットと保水性ブロックとの間にサンドクッション層からなる貯水層を設けているので、貯水ユニットとこのサンドクッション層からなる貯水層の両方に雨水等を貯えることができ、より大量の雨水等を確保することができる。それ故、外気が高温の場合には、より長期間に亘って雨水等を保水性ブロックへ供給でき、保水性ブロックを冷やすことができる。
しかも貯水ユニットの貯水空間とサンドクッション層とを、透水性を有する天板、具体的には、表裏を貫通する通水孔を有するような天板で通気可能状態に保持し、かつ圧力調整孔を介して貯水空間を外気と連通させているため、貯水空間内に雨水等が溜まっても、貯水空間やサンドクッション層からなる貯水層(以下単に貯水層という)内の圧力は常時大気圧とほぼ同じ値に保持される。
そのため貯水ユニット内の貯水空間及び貯水層に十分な貯水量を確保することができる。その結果、外気温が高温の場合には、長期間に亘って保水性ブロックに雨水等を供給でき、その蒸発潜熱で保水性ブロックを冷却し続けることができる。
【0011】
また請求項1記載の潅水構造体は、前記保水性ブロック及び前記サンドクッション層からなる貯水層の内部を浸透した水を前記貯水ユニット内の貯水空間へと滴下する集水部材をさらに有することを特徴とするものである。
【0012】
この潅水構造体においては、例えば、保水性ブロックや貯水層の下面に直接的にまたは間接的に接触するように、貯水空間に向けて突出する集水部材が設けられている。そのため、保水性ブロック及び貯水層を浸透して、貯水層下部に達した雨水等はこの集水部材に集められ、集水部材から貯水空間へと滴下する。すなわち、貯水層の下面にこのような集水部材が存在しない場合に比較して、集水部材内部の水の重力ポテンシャルが低くなって、より効率良く貯水空間に雨水等を溜めることができる。すなわち、保水性ブロック上に降った雨水等を効率良く貯水空間に貯えることができる。
加えて、貯水ユニットの貯水空間を圧力調整孔を介して外気に連通させてあるため、貯水空間内に雨水等が溜まって、貯水空間の空気の容積が変化しても貯水空間の圧力は前記圧力調整孔を介して大気圧とほぼ同じ値に保持される。
そのため貯水空間内や貯水層内の圧力は、保水性ブロックを毛細管現象により浸透しようとしている雨水等の毛細管圧力を上回ることがなくなり、貯水空間内や貯水層内により多くの貯水量を確保できる。それ故、外気温が高温の場合にも、長期間に亘って保水性ブロックに雨水等を供給でき、その蒸発潜熱で保水性ブロックを冷却することができる。
【0013】
また請求項2記載の潅水構造体は、請求項1に記載の潅水構造体において、前記圧力調整孔の一方の開口端は前記貯水ユニットの貯水空間の上部領域に開口していることを特徴とするものである。
このように圧力調整孔の一方の開口端を貯水ユニットの貯水空間の上部領域に開口させておくと、貯水空間の下部に雨水等が貯えられても、貯水空間上部はまだ空気層になっている。そのためこの空気層部分で外気との連通状態を維持し続けることができる。その結果、長期間に亘って貯水層内を大気圧に維持でき、かつ貯水空間の圧力が保水性ブロックや貯水層を毛細管現象により浸透しようとしている雨水等の毛細管圧力を上回るような状態になることを防止でき、貯水層内により多くの貯水量を確保できる。よって、外気温が高温の場合にも、長期間に亘って保水性ブロックに雨水等を供給でき、その蒸発潜熱で保水性ブロックを冷却することができる。
【0014】
さらに請求項2記載の潅水構造体は、請求項1に記載の潅水構造体において、前記圧力調整孔の一方の開口端は前記貯水ユニットの貯水空間の上部領域に開口しており、他方の開口端は前記保水性ブロックの上表面に開口していることを特徴としている。また請求項2記載の潅水構造体は、請求項2に記載の潅水構造体において、前記圧力調整孔の一方の開口端は前記貯水ユニットの貯水空間の上部領域に開口しており、他方の開口端は前記貯水ユニットの側壁外部に開口していることを特徴とするものである。
【0015】
このように圧力調整孔の一方の開口端を貯水ユニットの貯水空間の上部領域に開口させ、他方の開口端を保水性ブロックの上表面、あるいはまた貯水ユニットの側壁外部に開口させるようにすれば、前者の場合には、保水性ブロック上の大気と貯水ユニットの貯水空間とを容易に、かつ確実に連通できるし、後者の場合には、例えば、貯水ユニットの脇に側溝等が走っていれば、この側溝内の大気と貯水空間とを簡単な構造で連通できる利点がある。
その結果、圧力を常時簡単に大気圧に保持でき、貯水空間の圧力が保水性ブロックや貯水層を毛細管現象により浸透しようとしている雨水等の毛細管圧力を上回るような状態になることを回避でき、貯水層内に十分な貯水量を貯えることができる。それ故、この十分な貯水量でもって、長期間に亘って保水性ブロックに雨水等を供給でき、その蒸発潜熱で保水性ブロックを冷却することができる。
【0016】
さらに、また請求項1記載の潅水構造体は、前記天板は透水性を有する防砂シートで覆われていることを特徴とするものである。
このように天板を透水性の防砂シート、例えば、不織布製のシートで覆っておけば、貯水ユニットの貯水空間へサンドクッション層からなる貯水層側から砂等が混入し、貯水空間を経時的に埋めたり狭めたりする、という問題を回避することができる。
その結果、より長期間に亘って前述した潅水構造体による効果を持続させることができる。
【0017】
また請求項3記載の潅水構造体は、内部に空間を有し上部が透水性を有する地下埋設型の通気ユニットと、該通気ユニット上に形成されたサンドクッション層からなる貯水層と、該貯水層上に載置される透水性を有する保水性ブロックとを有し、前記通気ユニットの空間は圧力調整孔を介して外気に連通していることを特徴としている。
このように潅水構造体の下部部分に圧力調整孔を介して外気に連通する通気ユニットを設け、この通気ユニットの上部を透水性、すなわち通気性を有するようにして、貯水層と通気状態を保持するだけの簡単な構造で、貯水層内の圧力を常に大気圧とほぼ同じ値に保持することができる。
そのため通気ユニット内の圧力が、保水性ブロックを毛細管現象により浸透してくる雨水等の毛細管圧力を上回ることがないので、従来に比してより多くの雨水等を貯水層内に貯えることができる。
換言すると、降雨量に比例してより多くの貯水量を確保できるので、外気温が高温の場合には、より長期間に亘って保水性ブロックに雨水等を供給でき、その蒸発潜熱で保水性ブロックを冷却することができる。
【0018】
加えて請求項4記載の潅水構造体は、請求項3記載の潅水構造体において、前記圧力調整孔の一方の開口端は前記通気ユニットの空間の上部領域に開口しており、他方の開口端は前記保水性ブロックの上表面に開口していることを特徴としているものであり、請求項4記載の潅水構造体は、請求項3記載の潅水構造体において、前記圧力調整孔の一方の開口端は前記通気ユニットの空間の上部領域に開口しており、他方の開口端は前記通気ユニットの側壁外部に開口していることを特徴とするものである。
【0019】
このように圧力調整孔の一方の開口端を通気ユニットの空間の上部領域に開口させ、他方の開口端を保水性ブロックの上表面、あるいはまた通気ユニットの側壁外部に開口させるようにすれば、前者の場合には、保水性ブロック上の大気と通気ユニット内の空間とを容易に連通できるし、後者の場合には、例えば通気ユニットの脇に側溝等が走っていればこの側溝内の大気と簡単な構造で連通できる。
すなわち、極めて簡単な構造で、長期間に亘って通気ユニット内の空間及び貯水層内を大気圧に維持でき、貯水層内に効率良く、かつより多くの雨水等を貯えることができる。
【0020】
また参考例に記載の潅水構造体は、サンドクッション層からなる貯水層と、該貯水層上に載置される透水性を有する保水性ブロックと、前記貯水層の下部領域に形成され管壁に複数個の通気孔を有する通気パイプからなる通気ユニットとを有し、該通気ユニットの通気パイプは、透水性を有する防砂シートで覆われているもので、外気に連通していることを特徴とするものである。
尚、ここでいう通気パイプとは、パイプ壁面に、例えば、内径が5mm以上の通気孔を複数有するパイプを言うものとする。
このように貯水層の下部に通気パイプからなる通気ユニットを形成しておけば、サンドクッション層からなる貯水層は、通気パイプを介して外気に通じているので、その内部圧力を常に大気圧とほぼ同じ圧力に維持することができる。
その結果、貯水層内の圧力が、保水性ブロック内を毛細管現象により浸透してきている雨水等の毛細管圧力を上回ることがなくなり、時間の経過に比例して貯水層の貯水量を増加させることが可能になる。
このように降雨量や打ち水量に比例してより多くの貯水量を貯水層内に確保できるので、外気温が高温の場合には、長期間に亘って保水性ブロックに雨水等を供給でき、その蒸発潜熱で保水性ブロックを冷却し続けることができる。
【0021】
前記参考例記載の潅水構造体は、前記通気パイプは透水性を有する防砂シートで覆われていることを特徴としている。
このように通気パイプを透水性(通気性)を有する防砂シート、例えば、不織布製のシートで覆っておけば、通気パイプ周囲に存在するサンドクッション層からなる貯水層側から砂等が通気パイプ管壁に形成されている複数の通気孔から通気パイプ内に混入したり、通気孔そのものを塞いでしまう、という問題の発生を回避することができる。
その結果、より長期間に亘って、前述した潅水構造体による効果を持続させることができる。
【0022】
また請求項5記載の潅水システムは、所定の深さを有する穴内に請求項1〜請求項2のいずれかに記載の潅水構造体を隣接して複数個布設し、隣接する潅水構造体同士の前記貯水ユニットの貯水空間同士を連通させたことを特徴とするものである。
例えば、歩道に潅水システムを形成する場合には、歩道下を所定の深さ掘り起こして穴を形成し、穴の底面に不陸処置を施した後、前記請求項1〜請求項2のいずれかに記載の潅水構造体を互いに隣接させながら複数個布設して形成する。このとき隣接する貯水ユニットの貯水空間同士を、例えば、隣接貯水ユニット間圧力調整管で連結して、互いに連通状態にしておけば、より確実に各貯水ユニットの貯水空間内の圧力を大気圧に保持することが可能になる。
その結果、貯水空間の圧力が、保水性ブロックを毛細管現象により浸透しようとしている雨水等の毛細管圧力を上回ることがなくなり、降雨量等に比例してより多くの貯水量を確保できる。それ故、外気温が高温の場合にも、長期間に亘って保水性ブロックに雨水等を連続供給でき、その蒸発潜熱で保水性ブロックを冷却し続けることができる。
【0023】
また請求項6記載の潅水システムは、所定の深さを有する穴内に請求項3〜請求項4のいずれかに記載の潅水構造体を隣接して複数個布設し、隣接する潅水構造体同士の前記通気ユニットの空間同士圧力調整管で連通させたことを特徴とするものである。
請求項3〜請求項4のいずれかに記載の潅水構造体を用いて、例えば、歩道に潅水システムを形成する場合には、歩道下を所定の深さ掘り起こして穴を形成し、穴の底面に不陸処置を施した後、前記請求項3〜請求項4のいずれかに記載の潅水構造体を互いに隣接させながら複数個布設して形成する。このとき隣接する各潅水構造体の下部に位置する通気ユニットの空間同士を、例えば、隣接通気ユニット間圧力調整管を用いて連結して互いに連通状態にしておけば、より確実に各潅水構造体の通気ユニット内の空間内圧力を大気圧に保持することが可能になる。
その結果、通気ユニットの空間内圧力や貯水層内の圧力が、保水性ブロックを毛細管現象により浸透しようとしている雨水等の毛細管圧力を上回ることがなくなり、降雨量や打ち水量に比例してより多くの貯水量を貯水層内に確保すること可能になる。それ故、外気温が高温の場合にも、長期間に亘って保水性ブロックに雨水等を供給でき、その蒸発潜熱で保水性ブロックを冷却し続けることができる。
【0024】
尚、ここでいう「隣接する潅水構造体の通気パイプ同士を互いに連結する」という意味には、歩道に掘った穴内全体に亘って各潅水構造体に共通の通気パイプを布設しておき、この上にサンドクッション層からなる貯水層や保水性ブロックを布設したものも含まれるものとする。
【0025】
さらに請求項7記載の潅水システムは、所定の深さを有する穴内に請求項1〜請求項2のいずれかに記載の潅水構造体を隣接して複数個布設した潅水システムにおいて、前記集水部材全体を単位時間当たりに浸透する水量が、前記潅水構造体間に設けられている目地部全体を単位時間当たりに浸透する水量よりも大きいことを特徴とするものである。
このように集水部材全体を単位時間当たりに浸透する水量が、潅水構造体間に設けられている目地部全体を単位時間当たりに浸透する水量よりも大きくなるように、例えば、集水部材の材質や大きさ、形状あるいは目地部の材質等を選択しておけば、潅水構造体同士の隙間に砂等を充填して形成した目地部から浸透して貯水空間に溜まらずに潅水構造体外に逃げていく雨水等の量を少なくして、貯水ユニットの貯水空間に効率良く雨水等を貯えることが可能になる。それ故、外気温が高温の場合にも、長期間に亘って保水性ブロックに雨水等を連続供給でき、その蒸発潜熱で保水性ブロックを冷却し続けることができる。
【0026】
また請求項8記載の潅水システムの運転方法は、所定の深さを有する穴内に請求項1〜請求項4のいずれかに記載の潅水構造体を隣接して複数個布設した潅水システムの運転方法において、該潅水システムを動作させない期間には、前記保水性ブロックの上表面に開口している前記他方の開口端、前記貯水ユニットの側壁外部に開口している前記他方の開口端、前記通気ユニットの側壁外部に開口している前記他方の開口端及び前記通気ユニットの通気パイプの外気に連通している開口端を閉じ部材で閉じておくことを特徴としている。
例えば、冬季においてはこの種の潅水システムを使用する可能性は少ない。そのような場合に、圧力調整孔の他方の開口端、すなわち、前記保水性ブロック上表面に開口している開口端、前記貯水ユニットの側壁外部に開口している開口端、前記通気ユニットの側壁外部に開口している開口端及び前記通気ユニットの通気パイプの外気に連通している開口端が開口したままだと、例えば、貯水ユニットの貯水空間内部が大気と連通した状態であるため、雨水等が浸透し続け、潅水システムが働いてしまう。また、この開口端に不要なごみが入り易い。
そこでこれらの圧力調整孔の外部開口端を閉じ部材、例えば、ゴム栓等の蓋等で塞ぐ。このようにしておけば、例えば、貯水空間内部が大気と連通しなくなるため、雨水等の浸透を防止し、潅水システムへの水の供給を停止することが可能になる。また、圧力調整孔の外部に開口している開口端にごみが詰まって、夏季この潅水システムの運転を再開しようとした際、当初の目的を果たせなくなる、という問題を回避し易くなり、好ましい。
【発明の効果】
【0027】
以上のように本発明によれば、保水性ブロック下方の貯水部に雨水等をより多く貯水でき、もって外気温が高温の場合には、長期間に亘って保水性ブロックを冷却できる潅水構造体及びこの潅水構造体を用いた潅水システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】参考例発明1の潅水構造体の実施形態例を示す概略断面図である。
【図2】参考例発明2の潅水構造体の実施形態例を示す概略断面図である。
【図3】参考例発明3の潅水構造体の実施形態例を示す概略断面図である。
【図4】参考例発明4の潅水構造体の実施形態例を示す概略断面図である。
【図5】参考例発明5の潅水構造体の実施形態例を示す概略断面図である。
【図6】本発明の潅水構造体の第一実施形態例を示す概略断面図である。
【図7】図6に係る天板の一例を示す平面図である。
【図8】本発明の潅水構造体の第二実施形態例を示す概略断面図である。
【図9】本発明に係る天板の別の実施形態例で、図9(a)は平面図、図9(b)はそのA−A断面図である。
【図10】本発明の潅水構造体の第三実施形態例を示す概略断面図である。
【図11】参考例発明6の潅水構造体の実施形態例を示すもので、図11(a)は概略断面図、図11(b)は図11(a)のB−B断面図である。
【図12】本発明の第四実施形態例を示すもので、保水性ブロックに形成されている圧力調整孔の部分を示す一部拡大断面図である。
【図13】本発明に第五実施形態例を示すもので、図13(a)は、貯水空間内の雨水等が減って、浮き型の蓋が下がって圧力調整孔を塞いだ状態を、図13(b)は貯水空間内の雨水等の水量が増えて蓋が浮き上がって、圧力調整孔との間に隙間ができている状態をそれぞれ示している。
【図14】本発明に係る図13に示す潅水構造体の改良型に関するもので、本発明の潅水構造体の第六実施形態例を示す圧力調整孔部分の一部拡大断面図である。
【図15】本発明の第七実施形態例を示す保水性ブロック4の一部拡大断面図である。
【図16】本発明の潅水システムの第一実施形態例を示す概略断面図である。
【図17】本発明の潅水システムの第二実施形態例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に図を用いて参考例および本発明の潅水構造体及びこの潅水構造体を用いた潅水システムの実施形態例を詳細に説明する。
図1は参考例発明1の潅水構造体の実施形態例を示す概略断面図である。図1に示すように、この潅水構造体1は、内部に貯水空間2を有し上部に開口部を有する地下埋設型の貯水ユニット3と、貯水ユニット3の前記開口部を覆うインターブロッキング舗装等によく使用される透水性を有する保水性ブロック4(以下単に保水性ブロック4という)と、貯水空間2内に貯水されている雨水等5を、毛細管現象を利用して保水性ブロック4側へと揚水する導水性部材6とを有している。
ここで、貯水ユニット3の前記開口部は、保水性ブロックや後述する天板の下面あるいは集水部材下端等から滴下する雨水等を受ける開口部、すなわち上方からの水を受け取るために設けられている開口部である。
また、符号7は、貯水ユニット3に、より機械的強度を付与したいような場合に、貯水ユニット3に一体成形されたり、接着剤等で接続される補強板である。ところで、図1ではこの補強板7で貯水空間2が複数箇所に仕切られているように見えるが、実際には、各補強板7には適当な大きさの開口部や切欠等があって、貯水されている雨水等5は貯水空間2全体に移動可能になっている。
【0030】
ここで貯水ユニット3としては、プラスチック製の成形体が好適であるが、金属製、セラミック製あるいは金属とプラスチックの複合体、金属とセラミックスの複合体であってもよい。特に好ましいのはポリプロピレン製で、さらにはポリプロピレンのリサイクル品であると環境保護の面からも最適である。
また導水性部材6としては、一般的には不織布が使用されるが、これ以外にも、例えば、ガラス粉やセラミックス粉を管状あるいは柱状に成形した成形体(多孔質体)であってもよいし、あるいはプラスチックや金属からなるパイプ内にガラス粉やセラミックス粉を充填したものであってもよい。このようにプラスチックや金属からなるパイプを使用すれば、これらパイプが補強体としての役割も果たすので好ましい。
ところで図1では、1個の貯水ユニット3内に導水性部材6を2個装着しているが、実際には、導水性部材6の保水性ブロック4への揚水量が、保水性ブロック4から大気中へと蒸発する雨水等の蒸発量以上になるようにその個数、大きさ等が決定される。
【0031】
そして図1に示す本発明の潅水構造体1の最も大きな特徴は、一端が貯水ユニット3の貯水空間2の上部領域に開口し、他端が保水性ブロック4の上表面に開口している圧力調整孔8aが保水性ブロック4を上下に貫通して設けられている点にある。この圧力調整孔8aの内径は5mm以上にしておくのが好ましい。その理由は、降雨の雨粒の大きさがおおよそ5mm以下であるからである。この内径があまり小さいと水の表面張力で圧力調整孔8aの孔が容易に塞がれて、圧力調整孔8aの目的である外気、すなわち大気と貯水空間2を繋ぎ、貯水空間2内の圧力を常に大気圧とほぼ等しくする、という目的を達成することができなくなるからである。
【0032】
このように保水性ブロック4に貯水ユニット3の貯水空間2と外気を連通する圧力調整孔8aを設けておくと、貯水ユニット3の貯水空間2内に雨水等が溜まって、貯水空間2内の空気の容積が変化しても貯水空間2の内圧は圧力調整孔8aを介して常に大気圧とほぼ同じ値に保持される。
そのため貯水空間2の内圧は、保水性ブロック4を毛細管現象により浸透してくる雨水等の毛細管圧力を上回ることがなくなる。その結果、従来のように貯水空間2に雨水等が一定量貯えられると、貯水空間2内の内圧が高まって、それ以降は保水性ブロック4側から雨水等が浸透して来ず、貯水空間2に十分な雨水等を貯えることができない、という問題を解決することができる。
それ故、この潅水構造体1によれば、降雨量におおよそ比例してより多くの貯水量を確保できるので、外気温が高温の場合にも、長期間に亘って保水性ブロック4に雨水等を安定して供給でき、その蒸発潜熱で保水性ブロック4を冷却し続けることができる。
【0033】
ところでこの圧力調整孔8aの貯水空間2側の開口端は、貯水空間2のできるだけ上部領域に設けることが好ましい。
その理由は、下部領域に設けると早い段階で貯水空間2内に溜まる雨水等5にその開口端が水没し、もはや貯水空間2の空気が残っている部分と外気(大気)とを繋ぎ、貯水空間2内の内圧を大気圧に等しくできなくなるからである。すなわち、圧力調整孔8aの貯水空間2側開口端が水没した時点で、貯水空間2内の内圧調整機能が失われ、もはや保水性ブロック4側から貯水空間2へ雨水等の浸透が行われなくなってしまう。
ところで、保水性ブロック4の上表面に形成されている圧力調整孔8aの開口端からごみが侵入すると、圧力調整孔8aを塞いで貯水空間2内の内圧調整機能が失われたり、貯水空間2の容積を狭める恐れがある。そこで必要なら金網等でできている、いわゆる通気性を有する蓋13をこの開口端に被せておくことも有効である。また、この蓋13の先端が保水性ブロック4の上表面よりも突出しないようにしておけば、歩行者の邪魔にならず、それ故、自身も破損し難くなり、好ましい。
【0034】
図2は参考例発明2の潅水構造体の実施形態例を示す概略断面図である。この図2を含め、以下に説明する図面においては、先に説明した図面で既に説明したものと同じものには同じ符号を付して、詳細な説明は省略することにする。
図2に示す潅水構造体1の特徴は、貯水ユニット3の一方の側壁にパイプを貫通させ、圧力調整孔8bが形成されている点にある。因みに、この場合には、潅水構造体1の脇に側溝9が設置されていて、圧力調整孔8bの側溝側の開口端は、側溝9の中央部よりも上方に形成されているものとする。尚、図2で符号10は、側溝9の上部の開口部を覆う蓋である。
ところで図2では圧力調整孔8bの一端が側溝9の上部領域に開口しているが、この開口部が側溝9内を流れる雨水等5で塞がれないように、側溝9のできるだけ上部領域に開口するようにするのが好ましい。因みに、圧力調整孔8bのどちらか一方の開口端が水没した時点で、圧力調整孔8bは貯水空間2の内圧を大気と同じにする、という機能を失ってしまう。
【0035】
また図2に示す潅水構造体1において、貯水ユニット3の貯水空間2内の圧力を大気圧に等しくする、という機能をより確実に発揮させるために、図1に示す保水性ブロック4に形成されている圧力調整孔8aも併せて形成しておくこともできる。
加えて図2において、貯水ユニット3の貯水空間2の向かって右側にも、例えば、隣接貯水ユニット間圧力調整管8cを設けておけば、一点鎖線が示すように、隣接して潅水構造体1を布設して潅水システムを形成する場合に、隣の潅水構造体1の貯水ユニット3に対して、その貯水空間2にこの隣接貯水ユニット間圧力調整管8cを連結すれば、さらに潅水システム全体の貯水空間2の圧力調整がより確実に行える利点もある。
尚、図2において符号11は、潅水構造体1を布設するために歩道等に所定の深さの穴を掘り、必要により不陸処置を施した路盤を示している。
【0036】
図3は参考例発明3の潅水構造体の実施形態例を示す概略断面図である。
図3に示すものは、図2に示すものに似ているが、相違する箇所は、圧力調整孔8bを形成するためのパイプを車道と歩道との間に設置されている路石12を貫通させて車道側の外気にその一端を開口させている点にある。この場合にも、貯水ユニット3の貯水空間2内の圧力を大気圧に等しくする、という機能を保証するために、図1に示す保水性ブロック4に形成されている圧力調整孔8a(図3には図示せず)や隣接貯水ユニット間圧力調整管8cも併せて形成することもできる。
【0037】
図4は参考例発明4の潅水構造体の実施形態例を示す概略断面図である。
図4に示す潅水構造体1の特徴は、保水性ブロック4の下面に、例えば、円柱状または角柱状の、突起状の集水部材15を、その先端が貯水ユニット3の貯水空間2に向かって突出するように、例えば接着剤やねじ等で固定した点にある。ところでこの集水部材15は、保水性ブロック4の下面に直接固定したものに限らず、例えば、貯水ユニット3の補強板7に設けた固定機構を介して保水性ブロック4の下面に接触するように装着したものであってもよい。
【0038】
図4に示す突起状の集水部材15は、例えば、石英粉末を成形した透水性を有する成形体で、その毛細管半径が50μm、長さは10mmの多孔質体である。もちろんこれ以外の材質、形状であってもよい。具体的には、プラスチックあるいは金属性のパイプを補強体として、前記石英粉末製の成形体に被せたものであってもよい。
このような集水部材15を保水性ブロック4の下面に設けておくと、保水性ブロック4内を浸透して下垂した雨水等は、効率良くこの集水部材15に集まる。
因みに、図4において、保水性ブロック4と突起状の集水部材15を一体としてみたとき、この突起状の集水部材15の内部の水の重力ポテンシャルが一番低くなり、保水性ブロック4を浸透してきた雨水等をより早く貯水空間2へと滴下でき、より速い速度で貯水空間2に雨水等を貯えることが可能になる。
【0039】
ところで、図4に示すように集水部材15を保水性ブロック4の下面に装着し、圧力調整孔8bや隣接貯水ユニット間圧力調整管8cはなく、保水性ブロック4に圧力調整孔8aのみ設けた場合と、圧力調整孔8a、8b及び隣接貯水ユニット間圧力調整管8cが全くない場合で、貯水ユニット3の貯水空間2に溜まる雨水等の高さ、すなわち貯水量を比較してみた。因みに、用いた集水部材15は、前述したように石英粉末を成形した透水性を有する成形体で、その毛細管半径が50μm、長さが10mmの多孔質体である。また貯水空間2の深さは、160mmになっている。比較実験をした温度雰囲気は20℃である。そして初期状態では貯水空間2内に水は全くなく、内圧は大気圧に等しい1気圧である。
この状態で保水性ブロック4上に水をかけ始めた。その結果、保水性ブロック4を浸透した水が保水性ブロック4の下面に装着された集水部材15に集まり、その先端から貯水空間2へと滴下し始めた。
【0040】
圧力調整孔8a、8b及び隣接貯水ユニット間圧力調整管8cがいずれも形成されていない潅水構造体にあっては、貯水空間2内の水の高さが約1mmになった時点で、最早水位がそれ以上上昇することはなかった。すなわち、保水性ブロック4に水を掛け続けているにも関わらず、貯水空間2に水がそれ以上溜まっていくことはなかった。これは貯水空間2の空気が溜まってくる水の体積増加に比例して徐々に圧縮され、貯水空間2の内圧が高まったからである、と推測される。
その結果、この高められた貯水空間2内部の空気の圧力が、実験の途中から保水性ブロック4を毛細管現象により浸透してくる水の毛細管圧力を上回ってしまって、この実験の場合には、わずか1mm程度の高さまでしか溜まらなかった、と考えられる。
一方、図4にあって圧力調整孔8aのみ形成されている本発明の潅水構造体1にあっては、圧力調整孔8aで貯水空間2内の空気の圧力が常に大気圧に等しい圧力に保持されているため、圧力調整孔8aの貯水空間2側の開口端の端部近傍の約160mmの高さまで水を貯えることができた。
【0041】
図5に示す潅水構造体は、参考例発明5の潅水構造体の実施形態例を示す概略断面図である。図5に示す潅水構造体1の特徴は、集水部材15が円錐状または角錐状になっていて、貯水空間2に向かってその先端が尖っている点にその特徴がある。
そのため、その先端に雨水等がより集まり易くなる。その結果、保水性ブロック4を浸透してきた雨水等をより一層早く貯水空間2へと滴下でき、より速い速度で貯水空間2に貯えることができる。
【0042】
図6は本発明の潅水構造体の第一実施形態例を示す概略断面図である。
図6に示す潅水構造体1の特徴は、これまで説明した貯水ユニット3と保水性ブロック4との間に天板16とサンドクッション層からなる貯水層18とを介在させた点にある。
具体的には、貯水ユニット3の上部の開口部を、図7に示すように、表裏を貫通する通水孔19を1個または複数個有する平板状の天板16で覆い、必要ならこの天板16上に多少厚めの、例えば厚さ約1mmの不織布等からなる透水性(通気性)を有する防砂シート17を被せ、さらにこの防砂シート17上にサンドクッション層からなる貯水層18、すなわち、砂や砂礫からなる貯水層18を設け、さらにこの上に保水性ブロック4を載置したものである。
尚、図7は天板16の一例を示す平面図である。ところで天板16の上表面においては、各通水孔19に周囲から雨水等が集まり易いように、通水孔19に向かって傾斜をつけて凹ませておくことも有効である。
【0043】
そしてこの例でも、潅水構造体1の下部にある貯水ユニット3の貯水空間2と外気(大気)とを、保水性ブロック4、貯水層18、防砂シート17及び天板16とを貫通するパイプで形成した圧力調整孔8aで繋ぎ、貯水空間2の内圧を常に大気圧とほぼ等しくなるようにしている。
尚、圧力調整孔8aの貯水空間2側の開口端は貯水空間2の上部領域に開口するように形成されている。
【0044】
ここで天板16としては、図7に示すような通水孔19を有する、例えば、プラスチック製の成形体が好適であるが、金属製、セラミック製あるいは金属とプラスチックの複合体、金属とセラミックスの複合体であってもよい。特に好ましいのはポリプロピレン製で、これのリサイクル品であると環境保護の面からも好適である。
尚、通水孔19を有するもの以外にも、例えば、多孔質で透水性のあるものであれば使用可能で、具体的には、透水性を有するプラスチック製成形体も使用できる。
【0045】
この天板16の役割の一つは、上部に位置する貯水層18と保水性ブロック4の重さを支え、例えば、貯水層18が貯水ユニット3の貯水空間2側に垂れないようにするためのものである。
また、天板16上に必要により透水性を有する防砂シート17を被せているが、この防砂シート17の役割の一つは、貯水ユニット3の貯水空間2内に貯水層18側から砂や砂礫が、主に天板16同士の合わせ目をすり抜けて入り込まないようにすることにある。それ故、敷き詰められている天板16同士の隙間が、貯水層18を構成している砂等の粒径より小さい場合には、あえて防砂シート17を天板16に被せる必要はない。
天板16と防砂シート17の他の一つの役割は、貯水空間2と貯水層18や保水性ブロック4との間の通気性を妨げないことにある。よって天板16、防砂シート17ともに透水性(当然通気性も含む)のある材質のものを選ぶか、各々に複数個の孔を設けて通気性を確保しておく必要がある。各役割をそれぞれ果たすことができるものであれば、両者ともに前述した材質のものに関わらず、他の材質のものであってもよい。
【0046】
図8は本発明の潅水構造体の第二実施形態例を示す概略断面図である。この実施形態例の特徴は、図6に示す潅水構造体1を用いて潅水システムを形成する場合を考慮して、一点鎖線で示す隣接する潅水構造体1との間で、互いの貯水空間2を連通する隣接貯水ユニット間圧力調整管8cを、貯水空間2の上部領域にその開口端が開口するように貯水空間2の左右にそれぞれ設けた点にある。もちろんこの潅水構造体1を平面正方形あるいは長方形の箱状のものとした場合には、各辺毎にこの隣接貯水ユニット間圧力調整管8cを設けても良いことは言うまでもない。
因みに、潅水システムを歩道に形成する場合には、歩道を数十センチ程掘り下げ、その底面(路盤)に不陸処置を施して平らにしたら、その路盤上に図8に示す潅水構造体1を隣接させながら複数個布設し、各潅水構造体1同士の貯水空間2を隣接貯水ユニット間圧力調整管8cで繋げば良い。
もちろん、圧力調整孔8aのみで隣接貯水ユニット間圧力調整管8cのない図6に示す潅水構造体1を複数個隣接させて並べ、潅水システムを構成してもよいことは言うまでもない。
【0047】
ところで図6、図8に示す潅水構造体1にあっても天板16の下面に直接、あるいは貯水ユニット3の補強板7に装着した固定機構等を介して間接的に集水部材15を装着するようにしてもよい。このようにすれば集水効率を高めることができる。
具体的には、図9(a)に示すように、天板16の通水孔19の上部を段差のあるざぐり孔にしておいて、図9(b)に一点鎖線で示すように、このざぐり孔に先端太径部分を引っ掛けるように集水部材15や導水性部材6を装着することもできる。因みに、導水性部材6の下端は貯水ユニット3の貯水空間2の底面にほぼ接触する状態になるように装着されている。その理由は、貯水空間2内に貯えられている雨水等を最後まで効率よく揚水できるようにするためである。
【0048】
ところで、これら導水性部材6や集水部材15としては、プラスチックや金属のパイプを被せた補強体付きのものであればより好適で、特にそのパイプの先端が通水孔19のざぐり部に引っ掛けられる構造になっていれば、これを固定機構にして、導水性部材6や集水部材15を簡単に天板16に装着できる。尚、導水性部材6や集水部材15を天板16の通水孔19に装着する際には、導水性部材6や集水部材15の先端を、防砂シート17がある場合には防砂シート17の下面に、防砂シート17がない場合には貯水層18の下部表面に接触するように装着することが望ましい。このようにすれば集水部材15の集水効率を上げ、また導水性部材6の揚水効率を上げることができ好ましい。
ところで図9(a)は、天板16の図7とは別の実施形態例を示す平面図、図9(b)はそのA−A断面図である。
【0049】
図10は本発明の潅水構造体の第三実施形態例を示す概略断面図である。この第三実施形態例の特徴は、図8に示す潅水構造体1と異なり、潅水構造体1の下部に貯水ユニット3に替えて上部が透水性(通気性)を有する材質、もしくは構造を有する通気ユニット20を設置した点にある。
この例では、通気ユニット20は箱状のブロック21と、このブロック21の上部の開口部を覆う、例えば、図7に示すような通気孔19を有する天板16とで構成されている。尚、符号22はブロック21の内部に必要により適宜設けられる補強板である。
因みに、この補強板22は透水性を有しているか、もしくは補強板22の両側の空間を通気状態に保持する開口部分を有しているか、いずれかの特性または構造を有している。
【0050】
ところでこの通気ユニット20において、少なくとも天板16は、透水性を有する材質で形成されているか、あるいは図7に示す天板16のように、通水孔19を介して通気性を有していることが必要である。また、好ましくは、ブロック21の底面部も含め全体が透水性(通気性)を有していて、サンドクッション層からなる貯水層18から防砂シート17及び天板16を介して浸透し、滴下してきた雨水等を一時的に貯えることがあっても、その一時的に貯えた雨水等を底面部から路盤11へと浸透させ、逃がせるものが好ましい。その理由は、ブロック21内に雨水等が溜まると、後述する圧力調整孔8b等が水没する危険性が高くなるからである。
言うまでもなく、この通気ユニット20の基本的な役割は、透水性を有する天板16及びこの天板16上に必要により被せられる防砂シート17を介して、通気ユニット20内の空間と貯水層18との間で通気状態(連通状態)を作り、通気ユニット20内の空間及び貯水層18の各内圧を大気圧にほぼ等しくすることにある。それ故、圧力調整孔8aもしくは側溝9に通じる圧力調整孔8bのいずれか一方、あるいは両方により通気ユニット20の内部と外気とが繋がれている。
この通気ユニット20としては、ブロック21と天板16が一体になったような形状のものが好適で、具体的には、建設用に市販されている透水性のコンクリートブロック等を用いることもできる。
【0051】
尚、この通気ユニット20内に開口する圧力調整孔8aや圧力調整孔8bの開口端も、通気ユニット20の内部空間のできるだけ上部領域に設けることが好ましい。その理由は、通気ユニット20内にも、前述したように一時的ではあるが雨水等が溜まる可能性があるからである。それ故、開口端が水没しないように、できるだけ通気ユニット20の内部空間の上部領域に開口端を設けるのが良い。尚、隣接通水ユニット間圧力調整管8dは、この潅水構造体1を一点鎖線が示すように複数個並べて潅水システムを構成した場合に、隣接する潅水構造体1の通気ユニット20と通気状態を確保するために必要に応じて設けるものである。
【0052】
図11は参考例発明6の潅水構造体の実施形態例を示すもので、図11(a)は概略断面図、図11(b)は図11(a)のB−B断面図である。
図11に示すようにこの潅水構造体1は、路盤11上に直接サンドクッション層からなる貯水層18を設け、この上に保水性ブロック4を載置したものである。そしてこの貯水層18の下部、換言すると路盤11上に、例えばその内径が5mm以上の通気パイプ30を、一例としてジグザグ状に布設して通気ユニットを形成し、この上に砂あるいは砂礫からなる貯水層18を積み上げたものになっている。すなわち、この例では通気パイプ30を図10における通気ユニット20として用いるものである。この通気パイプ30の管壁には内径が、例えば、5mm以上の通気孔31が複数個開けてあって、サンドクッションからなる貯水層18とはいわゆる通気状態が維持されている。
【0053】
それ故、保水性ブロック4に浸透した雨水等が、貯水層18に貯えられ、その結果、貯水層18の内部圧力が高まろうとしても、この通気パイプ30の管壁に設けられている複数の通気孔31を介して貯水層18の内圧は、パイプ30の内部圧力、すなわち大気圧とほぼ等しく保持される。因みに、この通気パイプ30の少なくとも一端である開口端は外気に開放されている。この例では一端が側溝9に開放されていて、外気、すなわち大気とほぼ等しい圧力になるように工夫されている。
また図11では省略されているが、通気パイプ30の管壁に設けた通気孔31からパイプ内部に砂等が入り込まないように、通気パイプ30の外側を、透水性を有する防砂シート等で覆うことが好ましい。防砂シートとしては、具体的には厚さの薄い不織布が好ましく、この例では、厚さ約0.5mmの不織布で通気パイプ30の外側をらせん状に重ね巻きしている。
【0054】
ところで図11に示す潅水構造体1を用いて、例えば、歩道に潅水システムを形成する場合には、歩道一杯に所定の深さの穴を掘り、不陸処置を施して路盤11を平らにならしたら、その上に不織布等の防砂シート(図示せず)が巻かれた一連続の通気パイプ30をジグザグに折り曲げながら敷き詰める。そしてその両端または少なくとも一端の開口端を側溝9の通常水が来ない高さに位置決めして固定する。この状態で敷き詰めた通気パイプ30上に所定の粒径を有する砂を厚さ約30mmm程度敷き詰め貯水層18を形成する。
最後に、この貯水層18上に複数個の保水性ブロック4を敷き詰め、必要なら隣接する保水性ブロック4間の隙間等を目地砂で埋める。
ここで、前述した通気パイプ30は連続長のものをジグザグに折り曲げて布設しているが、通気パイプ30が潅水構造体1毎に所定長さに切断されているものにあっては、布設に際して、隣接する潅水構造体1の通気パイプ30同士を適宜連結していけばよい。
尚、通気パイプ30に巻く防砂シートは、仮に貯水層18を形成する瓦礫等の粒径が通気孔31よりも大きい場合は省略することもできる。
【0055】
図12は本発明の第四実施形態例を示すもので、保水性ブロック4に形成されている圧力調整孔8aの部分を示す一部拡大断面図である。
例えば、歩道に潅水システムを形成する場合に、用いる潅水構造体1の保水性ブロック4に圧力調整孔8aが形成されているものを考える。具体的には、例えば、図1や図4〜図6、図8及び図10に示すように、保水性ブロック4に地面に対して略垂直の圧力調整孔8aが形成されているものにあっては、この圧力調整孔8aから石やごみが入り込み孔を塞ぐ危険性がある。そこで通常は、図1の符号13が示すように蓋13で塞いでもよい。但し、冬季のように、潅水システムを長期間止めるような場合に使用する蓋は、通気性のないものの方が好ましい。こうすることで、貯水空間2内部が大気と連通しなくなるため、雨水等の浸透を防止し、潅水システムへの水の供給を停止することが可能になる。
そこで、例えば、図12に示すように圧力調整孔8aの開口端を、例えばゴム製の蓋35で塞げばよい。この際、蓋35が保水性ブロック4の上表面から突出していると、歩道上を歩く歩行者にとって危険でもある。そこで蓋35の上表面が保水性ブロック4から突出しないように、例えば、図12に示すように圧力調整孔8aの先端に凹み部37を設けておいて、蓋35がこの凹み部37に面一で嵌るようにしておくとよい。
【0056】
尚、図12では保水性ブロック4の上表面に形成されている圧力調整孔8aの開口端を塞ぐ例のみ示しているが、これ以外にも、貯水ユニットの側壁外部に開口して圧力調整孔8bや通気ユニット30の通気パイプの外気に連通している開口端といった、いわゆる外気に開口している開口端も同様に、ゴム栓等の蓋35で塞ぐことができる。このようにしておけば、圧力調整孔の外部に開口している開口端にごみが詰まって、例えば、夏季この潅水システムの運転を再開しようとした場合、当初の目的を果たせなくなる、という問題も併せて回避でき、好ましい。
【0057】
図13は図12の蓋35に替わる浮き型の蓋36を示す本発明の第五実施形態例を示すものである。図13(a)は、貯水空間2内の雨水等が減って、浮き型の蓋36が下がって圧力調整孔8aを塞いだ状態を示し、図13(b)は貯水空間2内の雨水等の水量が増えて蓋36が浮き上がって、圧力調整孔8aとの間に隙間ができている状態を示している。ここで符号38は浮き型の蓋36に繋がれている紐、符号39はその紐38の他端が繋がれている支点を示している。
この例では、冬季の如く、貯水空間2内の雨水等が減った場合には、自動的に浮きが下がって、浮き型の蓋36で圧力調整孔8aは自動的に塞がれる。それ故、図12に示す蓋35と異なり、作業者が蓋35をするために歩き回る必要がない。
【0058】
図14は図13の改良型で、本発明の潅水構造体の第六実施形態例を示す圧力調整孔8aの部分の一部拡大断面図である。
図14に示すように、この例では、浮き型の蓋36が保水性ブロック4の表面から飛び出さないように、図12に示す実施形態例と同じ考え方で、圧力調整孔8aの上部に凹み部40を新たに設け、図13(a)、図13(b)のいずれの状態にあっても浮き型の蓋36が凹み部40の中から飛び出さないようにその深さや紐38の長さが工夫され、調整されている。
このようにしておけば、歩行者の邪魔になることもないし、歩行者に潰されて破損する、という問題も回避できる。
【0059】
図15は、本発明の第七実施形態例を示す保水性ブロック4の一部拡大断面図である。例えば、図1に示すような潅水構造体1で潅水システムを構成した場合、この圧力調整孔8aの下端の開口端は、前述したようにできるだけ貯水空間2の上部領域に開口している方が、理論的には貯水空間2内により多くの雨水等を貯えることができる。そこで保水性ブロック4の下面に形成される圧力調整孔8aの下端の開口部分を図15に示すように、例えば、皿状に凹まして凹部41を形成しておく。このようにしておけば、貯水空間2内に雨水等が一杯に貯えられても、まだ圧力調整孔8aの下端には空気が存在し、よって貯水空間2内の内圧調整、すなわち大気圧の状態に保持し続ける、という圧力調整孔8aの役割を最後まで果たすことができ好ましい。なお、このような効果は、雨水を貯水する空間であれば、同様の効果が得られる。
【0060】
図16は、本発明の潅水システムの第一実施形態例を示す概略断面図である。
図16に示すものは、図5に示す潅水構造体1を用いた潅水システムを示すものである。例えば、いま歩道に潅水システムを形成する場合、まず歩道を所定の深さ掘って、穴を形成し、この穴の底面に不陸処置を施して平らにならし、路盤11を形成したら、そこに図5に示す潅水構造体1を複数個、その上表面が面一になるように敷き詰める。その際、隣接する潅水構造体1同士の貯水空間2を隣接貯水ユニット間圧力調整管8cで繋いでいく。最後に潅水構造体1同士の隙間に目地砂(図では省略されている)を充填する。
このように形成した潅水システムにおいて、この潅水システムが理想的に動作するためには、保水性ブロック4の表面から下方に浸透する雨水等の量(図16でハッチング付き矢印で示す集水部材15から滴下する雨水等の量の合計値)が、隣接する潅水構造体1同士の隙間、すなわち目地部から下方に浸透していく雨水等の量(図16で線状矢印で示す目地部からの浸透量の合計値)よりも多くないと、貴重な雨水等の大部分が貯水ユニット3の貯水空間2内に溜まらずに、地中へと逃げていってしまうことになる。
【0061】
そこで集水部材15の集水効率を高め、またその形状や配置等も考える必要がある。そのようにして、潅水システム全体に形成されている集水部材15全体を単位時間当たりに浸透する水量が、潅水構造体1間に設けられている目地部全体を浸透し、路盤11へと逃げていく単位時間当たりの水量よりも大きくなるように設計することが重要である。
より具体的に、図16に示す潅水システムを想定して説明する。いまその内側に保水性ブロック4や潅水構造体1間の目地部が適切に含まれるように、任意の位置で所定面積分切り取ったような測定装置を作った。さらにこの装置において、その外側四辺に雨水がこぼれないように枠を設けた。また目地部を透過してきた水を貯水ユニット3に溜まるものとは切り離して別に集めることができるように、貯水ユニット3の下方に、さらに装置全体に跨るように箱状の貯水部を設けた。尚、予めこの装置における複数個の集水部材15の根元部の水平面内断面積の合計値や、目地部の大気に露出している部分の全表面積を測定しておく。尚、ここでいう集水部材15の根元部の水平面内断面積とは、例えば、保水性ブロック4の下面と集水部材15の接触面積をいう。
【0062】
いま集水部材15の根元部の水平面内断面積の合計値はA1、潅水構造体1間の目地部の全表面積はA2であったとする。また集水部材15や目地砂の材質はわかっているので、各々の透水係数kを事前に調べておく。いま集水部材15の透水係数をk1、目地部の目地砂の透水係数をk2とする。さらに動水勾配はどちらも同じくiとする。
この装置を降雨が予想される日に屋外に設置し、降雨に所定時間晒した。所定時間経過後、貯水ユニット3の貯水空間2に溜まった水量Q1と、この貯水ユニット3の下方に設けた目地部から浸透して来た雨水を貯えた貯水部内の水量Q2を各々測定した。各Q1、Q2は以下のように表すことができる。
Q1=A1×k1×i・・・・・・・・・(1)
Q2=A2×k2×i・・・・・・・・・(2)
【0063】
前述したように、Q1がQ2よりも大きくないと、雨水等の大部分が貯水ユニット3の貯水空間2内に溜まらずに、潅水構造体1同士の間の目地部から地中へと逃げていってしまうことになる。これを防止するためには、集水部材15の材質としてよりk1の大きなものを選ぶとか、潅水構造体1一個あたりに装着する集水部材15の個数を増やしてA1を大きくするとか、逆に目地砂の表面積A2を少なくするとか、その粒径を細かくして透水係数k2を小さくする等々の工夫が重要である。
具体的には、潅水構造体1を構成する貯水ユニット3の隙間を埋める目地砂の水平面内断面積、すなわち大気に露出している部分の表面積を潅水システム全体の1%以下にし、かつ、集水部材15の根元部分の水平面内断面積、すなわち保水性ブロック4の下面と接触している部分の面積をこれと同程度以上にすることが望ましく、さらに集水効率を高めるためには、潅水構造体1を構成する各貯水ユニット3間の隙間やこの潅水システムと外部との間の隙間から雨水等が逃げないように、適切な遮水処理を施しておくことが有効である。
尚、集水部材15の透水係数k1は、潅水構造体1間に形成されている目地部を形成している材料の透水係数k2と同程度かそれよりも大きくしておくとよい。このようにしておけば、集水部材15が透水量に関して、潅水システム全体の支障になることがなく好ましい。
【0064】
ところでここまでの記載で、隣接する貯水ユニット3や通気ユニット20を連通する部材を総合的に隣接貯水ユニット間圧力調整管とか隣接通気ユニット間圧力調整管と記載してきたが、隣接各ユニット間圧力や外気である大気と内部間圧力を等しくするもの、すなわち、お互いのユニット同士を連通するものであれば、その構造は厳密な意味で管に限定する必要がないことは言うまでもない。
具体的には、例えば、隣接各ユニット間の圧力調整を行うために、本発明の潅水システムの第二実施形態例を示す図17のようにしてもよい。この通気ユニット20は、防砂シート17の下にある天板16が断面ゲタ状になっている。より詳細に説明すると、天板16はその下面にゲタの歯に相当する透水性の板状歯50を複数本有していて、この天板16と路盤11との間に形成される空間とで通気ユニット20を形成している。潅水システムを形成する場合には、図のように天板16を、板状歯50側を路盤11に向けて複数個隣接させて設置すればよい。
【0065】
因みに、天板16は板状歯50を含めて全体が透水性、すなわち、通気性を有しているので、この通気ユニット20の少なくともいずれか一つに圧力調整孔8aあるいは圧力調整孔8bを設けて外気と連通しておけばよい。ここで板状歯50は、通気ユニット20を補強する役割も担っている。
図17に示す実施形態例の場合、天板16の下に形成された空間の一部が隣接する各通気ユニット間の圧力調整管となる。このように本発明では広い意味で隣接貯水ユニット間圧力調整管あるいは隣接通気ユニット間圧力調整管という言葉を用いている。
尚、天板16はアーチ状の構造であってもよい。
【0066】
ところでまた、これまで説明してきた各実施形態例では、1個の貯水ユニット3上に1個の保水性ブロック4が載置されている図のみ示しているが、例えば、1個の貯水ユニット3の上に4個等複数個の保水性ブロック4を載せるものであってもよい。
【0067】
以上に説明したように本発明によれば、保水性ブロック下方の貯水空間や貯水層に雨水等をより多く貯水でき、もって外気温が高温の場合には、長期間に亘って保水性ブロックを冷却できる潅水構造体、この潅水構造体を用いた潅水システム及びこの潅水システムの運転方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 潅水構造体
2 貯水空間
3 貯水ユニット
4 保水性ブロック
5 雨水等
6 導水性部材
7 補強板
8a 圧力調整孔
8b 圧力調整孔
8c 隣接貯水ユニット間圧力調整管
8d 隣接通気ユニット間圧力調整管
9 側溝
10 蓋
11 路盤
12 路石
15 集水部材
16 天板
17 防砂シート
18 サンドクッション層からなる貯水層
19 通水孔
20 通気ユニット
30 通気パイプ
31 通気孔
35 蓋
36 浮き型の蓋
37、40 凹み部
41 凹部
50 板状歯
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、歩道等の道路やビルの屋上あるいは公園内等に布設される潅水システムに用いられる潅水構造体、これら潅水構造体を用いて形成した潅水システム及びこの潅水システムの運転方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
都市部の歩道等の道路やビルの屋上、あるいは公園内の一部は、通常、アスファルトやコンクリートで固められている。気温が高く、照り返しのきつい夏季の日中、そのような場所の温度上昇は周囲に比較し一段と激しい。このような環境下において歩道を歩いたり、ビルの屋上等で過ごしたりすることはとても厳しい状況下にある。特に温暖化現象が顕著になってきた昨今においては、日中のみならず夜間においても、この熱がアスファルトやビルの屋上から放熱されて、いわゆるヒートアイランド現象を引き起こす要因の一つにもなっている。
【0003】
このヒートアイランド現象等を緩和しようと、道路の脇に植樹したり、ビルの屋上に芝生や木を植えたり、あるいは種々の草花を植える試みも成されているが、それだけでは十分でなく、さらなる工夫が求められている。
この一環として、特許文献1や特許文献2にあるように透水性を有する保水性舗装ブロック本体(以下単に保水性ブロックという)の下に容器状の保水タンクや保水トレイを設置した潅水構造体が提案されている。この潅水構造体の場合、保水性ブロックを浸透して下降した雨水や打ち水(以下単に雨水等という)を保水タンクや保水トレイに溜めておき、外気温が高温になった時には、この雨水等を給水手段、具体的には不織布等の導水性部材を介して毛細管現象により上方に吸い上げ、これを保水性ブロック表面から蒸発させて、その蒸発潜熱により保水性ブロックを冷やそう、というものである。
すなわち、降雨時に雨水等を保水タンクや保水トレイに貯水し、例えば晴天になって、気温が高温になった時等には貯水した雨水等で保水性ブロックを冷やしてヒートアイランド現象を緩和させよう、というものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2885085号公報(特開平8‐85907号)
【特許文献2】特開2006−124980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1や特許文献2に開示されている舗装用の潅水構造体の場合、実際に使用してみると、十分な降雨や打ち水があったにも関わらず、保水タンクや保水トレイ内の貯水空間を十分に満たす雨水等を集めることができない、という問題があった。 その理由は以下のように推測される。
降った雨は、直ちに保水性ブロックの表面や隣接する保水性ブロック間の目地部からその内部に向かって浸透していく。その際、その浸透の進行に伴って保水タンクや保水トレイ内の貯水空間内の空気を圧縮し、大気圧よりもその内部圧力を高めてしまう。その結果、この高められた貯水空間内部の圧力が、保水性ブロックを毛細管現象により浸透しようとしてくる雨水等の毛細管圧力を上回り、ある量を超える雨水等の浸透を阻止してしまう、と推測される。
このように保水性ブロックの材質や毛細管半径、さらにはその厚さ等が決まると、保水タンクや保水トレイ内に溜まる雨水等の貯水量が決まってしまい、それ以上の貯水量を確保することができない、という問題がある。その結果、十分な降雨や打ち水があっても保水タンクや保水トレイ内に十分な貯水量を確保できないため、例えば、夏の高温時、保水性ブロックに雨水等を短期間しか供給することができず、保水性ブロックの冷却を長期間に亘って安定して行うことができない、という問題があった。
【0006】
前述の問題に鑑み本発明の目的は、保水性ブロック下方の貯水部に雨水等をより多く貯水でき、もって外気温が高温の場合には、長期間に亘って保水性ブロックを冷却できる潅水構造体、この潅水構造体を用いた潅水システム及びこの潅水システムの運転方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成すべく参考例記載の潅水構造体は、内部に貯水空間を有し上部に上方からの水を受けるための開口部を有する地下埋設型の貯水ユニットと、該貯水ユニットの前記開口部を覆う透水性を有する保水性ブロックと、前記貯水ユニット内の貯水空間内に貯水されている水を前記保水性ブロック側へと揚水する導水性部材とを有し、前記貯水ユニットの貯水空間は圧力調整孔を介して外気に連通していることを特徴とするものである。
【0008】
このように貯水ユニットの貯水空間を圧力調整孔を介して外気(以下本発明で言う外気とは、大気圧を保持している外部空間の意味である)に連通させておくと、貯水空間内に雨水等が溜まって、貯水空間内の空気の容積が変化しても貯水空間の圧力は前記圧力調整孔を介して常に大気圧とほぼ同じ値に保持される。
そのため貯水空間内の圧力は、保水性ブロックを毛細管現象により浸透しようとしている雨水等の毛細管圧力を上回ることがなくなり、貯水空間内により多くの貯水量を確保できるようになる。
換言すると、参考例の潅水構造体によれば、降雨量や打ち水量に比例してより多くの貯水量を確保できるので、外気温が高温の場合にも、長期間に亘って保水性ブロックに雨水等を供給でき、その蒸発潜熱で保水性ブロックを冷却することができる。
【0009】
さらに本発明の請求項1記載の潅水構造体は、内部に貯水空間を有し上部に上方からの水を受けるための開口部を有する地下埋設型の貯水ユニットと、該貯水ユニットの前記開口部を覆う透水性を有する天板と、前記天板上方に形成されたサンドクッション層からなる貯水層と、前記貯水ユニット内の貯水空間内に貯水されている水を前記貯水層側へと揚水する導水性部材と、前記貯水層上に載置される透水性を有する保水性ブロックとを有し、前記貯水ユニットの貯水空間は圧力調整孔を介して外気に連通していることを特徴とするものである。
【0010】
このように貯水ユニットと保水性ブロックとの間にサンドクッション層からなる貯水層を設けているので、貯水ユニットとこのサンドクッション層からなる貯水層の両方に雨水等を貯えることができ、より大量の雨水等を確保することができる。それ故、外気が高温の場合には、より長期間に亘って雨水等を保水性ブロックへ供給でき、保水性ブロックを冷やすことができる。
しかも貯水ユニットの貯水空間とサンドクッション層とを、透水性を有する天板、具体的には、表裏を貫通する通水孔を有するような天板で通気可能状態に保持し、かつ圧力調整孔を介して貯水空間を外気と連通させているため、貯水空間内に雨水等が溜まっても、貯水空間やサンドクッション層からなる貯水層(以下単に貯水層という)内の圧力は常時大気圧とほぼ同じ値に保持される。
そのため貯水ユニット内の貯水空間及び貯水層に十分な貯水量を確保することができる。その結果、外気温が高温の場合には、長期間に亘って保水性ブロックに雨水等を供給でき、その蒸発潜熱で保水性ブロックを冷却し続けることができる。
【0011】
また請求項1記載の潅水構造体は、前記保水性ブロック及び前記サンドクッション層からなる貯水層の内部を浸透した水を前記貯水ユニット内の貯水空間へと滴下する集水部材をさらに有することを特徴とするものである。
【0012】
この潅水構造体においては、例えば、保水性ブロックや貯水層の下面に直接的にまたは間接的に接触するように、貯水空間に向けて突出する集水部材が設けられている。そのため、保水性ブロック及び貯水層を浸透して、貯水層下部に達した雨水等はこの集水部材に集められ、集水部材から貯水空間へと滴下する。すなわち、貯水層の下面にこのような集水部材が存在しない場合に比較して、集水部材内部の水の重力ポテンシャルが低くなって、より効率良く貯水空間に雨水等を溜めることができる。すなわち、保水性ブロック上に降った雨水等を効率良く貯水空間に貯えることができる。
加えて、貯水ユニットの貯水空間を圧力調整孔を介して外気に連通させてあるため、貯水空間内に雨水等が溜まって、貯水空間の空気の容積が変化しても貯水空間の圧力は前記圧力調整孔を介して大気圧とほぼ同じ値に保持される。
そのため貯水空間内や貯水層内の圧力は、保水性ブロックを毛細管現象により浸透しようとしている雨水等の毛細管圧力を上回ることがなくなり、貯水空間内や貯水層内により多くの貯水量を確保できる。それ故、外気温が高温の場合にも、長期間に亘って保水性ブロックに雨水等を供給でき、その蒸発潜熱で保水性ブロックを冷却することができる。
【0013】
また請求項2記載の潅水構造体は、請求項1に記載の潅水構造体において、前記圧力調整孔の一方の開口端は前記貯水ユニットの貯水空間の上部領域に開口していることを特徴とするものである。
このように圧力調整孔の一方の開口端を貯水ユニットの貯水空間の上部領域に開口させておくと、貯水空間の下部に雨水等が貯えられても、貯水空間上部はまだ空気層になっている。そのためこの空気層部分で外気との連通状態を維持し続けることができる。その結果、長期間に亘って貯水層内を大気圧に維持でき、かつ貯水空間の圧力が保水性ブロックや貯水層を毛細管現象により浸透しようとしている雨水等の毛細管圧力を上回るような状態になることを防止でき、貯水層内により多くの貯水量を確保できる。よって、外気温が高温の場合にも、長期間に亘って保水性ブロックに雨水等を供給でき、その蒸発潜熱で保水性ブロックを冷却することができる。
【0014】
さらに請求項2記載の潅水構造体は、請求項1に記載の潅水構造体において、前記圧力調整孔の一方の開口端は前記貯水ユニットの貯水空間の上部領域に開口しており、他方の開口端は前記保水性ブロックの上表面に開口していることを特徴としている。また請求項2記載の潅水構造体は、請求項2に記載の潅水構造体において、前記圧力調整孔の一方の開口端は前記貯水ユニットの貯水空間の上部領域に開口しており、他方の開口端は前記貯水ユニットの側壁外部に開口していることを特徴とするものである。
【0015】
このように圧力調整孔の一方の開口端を貯水ユニットの貯水空間の上部領域に開口させ、他方の開口端を保水性ブロックの上表面、あるいはまた貯水ユニットの側壁外部に開口させるようにすれば、前者の場合には、保水性ブロック上の大気と貯水ユニットの貯水空間とを容易に、かつ確実に連通できるし、後者の場合には、例えば、貯水ユニットの脇に側溝等が走っていれば、この側溝内の大気と貯水空間とを簡単な構造で連通できる利点がある。
その結果、圧力を常時簡単に大気圧に保持でき、貯水空間の圧力が保水性ブロックや貯水層を毛細管現象により浸透しようとしている雨水等の毛細管圧力を上回るような状態になることを回避でき、貯水層内に十分な貯水量を貯えることができる。それ故、この十分な貯水量でもって、長期間に亘って保水性ブロックに雨水等を供給でき、その蒸発潜熱で保水性ブロックを冷却することができる。
【0016】
さらに、また請求項1記載の潅水構造体は、前記天板は透水性を有する防砂シートで覆われていることを特徴とするものである。
このように天板を透水性の防砂シート、例えば、不織布製のシートで覆っておけば、貯水ユニットの貯水空間へサンドクッション層からなる貯水層側から砂等が混入し、貯水空間を経時的に埋めたり狭めたりする、という問題を回避することができる。
その結果、より長期間に亘って前述した潅水構造体による効果を持続させることができる。
【0017】
また請求項3記載の潅水構造体は、内部に空間を有し上部が透水性を有する地下埋設型の通気ユニットと、該通気ユニット上に形成されたサンドクッション層からなる貯水層と、該貯水層上に載置される透水性を有する保水性ブロックとを有し、前記通気ユニットの空間は圧力調整孔を介して外気に連通していることを特徴としている。
このように潅水構造体の下部部分に圧力調整孔を介して外気に連通する通気ユニットを設け、この通気ユニットの上部を透水性、すなわち通気性を有するようにして、貯水層と通気状態を保持するだけの簡単な構造で、貯水層内の圧力を常に大気圧とほぼ同じ値に保持することができる。
そのため通気ユニット内の圧力が、保水性ブロックを毛細管現象により浸透してくる雨水等の毛細管圧力を上回ることがないので、従来に比してより多くの雨水等を貯水層内に貯えることができる。
換言すると、降雨量に比例してより多くの貯水量を確保できるので、外気温が高温の場合には、より長期間に亘って保水性ブロックに雨水等を供給でき、その蒸発潜熱で保水性ブロックを冷却することができる。
【0018】
加えて請求項4記載の潅水構造体は、請求項3記載の潅水構造体において、前記圧力調整孔の一方の開口端は前記通気ユニットの空間の上部領域に開口しており、他方の開口端は前記保水性ブロックの上表面に開口していることを特徴としているものであり、請求項4記載の潅水構造体は、請求項3記載の潅水構造体において、前記圧力調整孔の一方の開口端は前記通気ユニットの空間の上部領域に開口しており、他方の開口端は前記通気ユニットの側壁外部に開口していることを特徴とするものである。
【0019】
このように圧力調整孔の一方の開口端を通気ユニットの空間の上部領域に開口させ、他方の開口端を保水性ブロックの上表面、あるいはまた通気ユニットの側壁外部に開口させるようにすれば、前者の場合には、保水性ブロック上の大気と通気ユニット内の空間とを容易に連通できるし、後者の場合には、例えば通気ユニットの脇に側溝等が走っていればこの側溝内の大気と簡単な構造で連通できる。
すなわち、極めて簡単な構造で、長期間に亘って通気ユニット内の空間及び貯水層内を大気圧に維持でき、貯水層内に効率良く、かつより多くの雨水等を貯えることができる。
【0020】
また参考例に記載の潅水構造体は、サンドクッション層からなる貯水層と、該貯水層上に載置される透水性を有する保水性ブロックと、前記貯水層の下部領域に形成され管壁に複数個の通気孔を有する通気パイプからなる通気ユニットとを有し、該通気ユニットの通気パイプは、透水性を有する防砂シートで覆われているもので、外気に連通していることを特徴とするものである。
尚、ここでいう通気パイプとは、パイプ壁面に、例えば、内径が5mm以上の通気孔を複数有するパイプを言うものとする。
このように貯水層の下部に通気パイプからなる通気ユニットを形成しておけば、サンドクッション層からなる貯水層は、通気パイプを介して外気に通じているので、その内部圧力を常に大気圧とほぼ同じ圧力に維持することができる。
その結果、貯水層内の圧力が、保水性ブロック内を毛細管現象により浸透してきている雨水等の毛細管圧力を上回ることがなくなり、時間の経過に比例して貯水層の貯水量を増加させることが可能になる。
このように降雨量や打ち水量に比例してより多くの貯水量を貯水層内に確保できるので、外気温が高温の場合には、長期間に亘って保水性ブロックに雨水等を供給でき、その蒸発潜熱で保水性ブロックを冷却し続けることができる。
【0021】
前記参考例記載の潅水構造体は、前記通気パイプは透水性を有する防砂シートで覆われていることを特徴としている。
このように通気パイプを透水性(通気性)を有する防砂シート、例えば、不織布製のシートで覆っておけば、通気パイプ周囲に存在するサンドクッション層からなる貯水層側から砂等が通気パイプ管壁に形成されている複数の通気孔から通気パイプ内に混入したり、通気孔そのものを塞いでしまう、という問題の発生を回避することができる。
その結果、より長期間に亘って、前述した潅水構造体による効果を持続させることができる。
【0022】
また請求項5記載の潅水システムは、所定の深さを有する穴内に請求項1〜請求項2のいずれかに記載の潅水構造体を隣接して複数個布設し、隣接する潅水構造体同士の前記貯水ユニットの貯水空間同士を連通させたことを特徴とするものである。
例えば、歩道に潅水システムを形成する場合には、歩道下を所定の深さ掘り起こして穴を形成し、穴の底面に不陸処置を施した後、前記請求項1〜請求項2のいずれかに記載の潅水構造体を互いに隣接させながら複数個布設して形成する。このとき隣接する貯水ユニットの貯水空間同士を、例えば、隣接貯水ユニット間圧力調整管で連結して、互いに連通状態にしておけば、より確実に各貯水ユニットの貯水空間内の圧力を大気圧に保持することが可能になる。
その結果、貯水空間の圧力が、保水性ブロックを毛細管現象により浸透しようとしている雨水等の毛細管圧力を上回ることがなくなり、降雨量等に比例してより多くの貯水量を確保できる。それ故、外気温が高温の場合にも、長期間に亘って保水性ブロックに雨水等を連続供給でき、その蒸発潜熱で保水性ブロックを冷却し続けることができる。
【0023】
また請求項6記載の潅水システムは、所定の深さを有する穴内に請求項3〜請求項4のいずれかに記載の潅水構造体を隣接して複数個布設し、隣接する潅水構造体同士の前記通気ユニットの空間同士圧力調整管で連通させたことを特徴とするものである。
請求項3〜請求項4のいずれかに記載の潅水構造体を用いて、例えば、歩道に潅水システムを形成する場合には、歩道下を所定の深さ掘り起こして穴を形成し、穴の底面に不陸処置を施した後、前記請求項3〜請求項4のいずれかに記載の潅水構造体を互いに隣接させながら複数個布設して形成する。このとき隣接する各潅水構造体の下部に位置する通気ユニットの空間同士を、例えば、隣接通気ユニット間圧力調整管を用いて連結して互いに連通状態にしておけば、より確実に各潅水構造体の通気ユニット内の空間内圧力を大気圧に保持することが可能になる。
その結果、通気ユニットの空間内圧力や貯水層内の圧力が、保水性ブロックを毛細管現象により浸透しようとしている雨水等の毛細管圧力を上回ることがなくなり、降雨量や打ち水量に比例してより多くの貯水量を貯水層内に確保すること可能になる。それ故、外気温が高温の場合にも、長期間に亘って保水性ブロックに雨水等を供給でき、その蒸発潜熱で保水性ブロックを冷却し続けることができる。
【0024】
尚、ここでいう「隣接する潅水構造体の通気パイプ同士を互いに連結する」という意味には、歩道に掘った穴内全体に亘って各潅水構造体に共通の通気パイプを布設しておき、この上にサンドクッション層からなる貯水層や保水性ブロックを布設したものも含まれるものとする。
【0025】
さらに請求項7記載の潅水システムは、所定の深さを有する穴内に請求項1〜請求項2のいずれかに記載の潅水構造体を隣接して複数個布設した潅水システムにおいて、前記集水部材全体を単位時間当たりに浸透する水量が、前記潅水構造体間に設けられている目地部全体を単位時間当たりに浸透する水量よりも大きいことを特徴とするものである。
このように集水部材全体を単位時間当たりに浸透する水量が、潅水構造体間に設けられている目地部全体を単位時間当たりに浸透する水量よりも大きくなるように、例えば、集水部材の材質や大きさ、形状あるいは目地部の材質等を選択しておけば、潅水構造体同士の隙間に砂等を充填して形成した目地部から浸透して貯水空間に溜まらずに潅水構造体外に逃げていく雨水等の量を少なくして、貯水ユニットの貯水空間に効率良く雨水等を貯えることが可能になる。それ故、外気温が高温の場合にも、長期間に亘って保水性ブロックに雨水等を連続供給でき、その蒸発潜熱で保水性ブロックを冷却し続けることができる。
【0026】
また請求項8記載の潅水システムの運転方法は、所定の深さを有する穴内に請求項1〜請求項4のいずれかに記載の潅水構造体を隣接して複数個布設した潅水システムの運転方法において、該潅水システムを動作させない期間には、前記保水性ブロックの上表面に開口している前記他方の開口端、前記貯水ユニットの側壁外部に開口している前記他方の開口端、前記通気ユニットの側壁外部に開口している前記他方の開口端及び前記通気ユニットの通気パイプの外気に連通している開口端を閉じ部材で閉じておくことを特徴としている。
例えば、冬季においてはこの種の潅水システムを使用する可能性は少ない。そのような場合に、圧力調整孔の他方の開口端、すなわち、前記保水性ブロック上表面に開口している開口端、前記貯水ユニットの側壁外部に開口している開口端、前記通気ユニットの側壁外部に開口している開口端及び前記通気ユニットの通気パイプの外気に連通している開口端が開口したままだと、例えば、貯水ユニットの貯水空間内部が大気と連通した状態であるため、雨水等が浸透し続け、潅水システムが働いてしまう。また、この開口端に不要なごみが入り易い。
そこでこれらの圧力調整孔の外部開口端を閉じ部材、例えば、ゴム栓等の蓋等で塞ぐ。このようにしておけば、例えば、貯水空間内部が大気と連通しなくなるため、雨水等の浸透を防止し、潅水システムへの水の供給を停止することが可能になる。また、圧力調整孔の外部に開口している開口端にごみが詰まって、夏季この潅水システムの運転を再開しようとした際、当初の目的を果たせなくなる、という問題を回避し易くなり、好ましい。
【発明の効果】
【0027】
以上のように本発明によれば、保水性ブロック下方の貯水部に雨水等をより多く貯水でき、もって外気温が高温の場合には、長期間に亘って保水性ブロックを冷却できる潅水構造体及びこの潅水構造体を用いた潅水システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】参考例発明1の潅水構造体の実施形態例を示す概略断面図である。
【図2】参考例発明2の潅水構造体の実施形態例を示す概略断面図である。
【図3】参考例発明3の潅水構造体の実施形態例を示す概略断面図である。
【図4】参考例発明4の潅水構造体の実施形態例を示す概略断面図である。
【図5】参考例発明5の潅水構造体の実施形態例を示す概略断面図である。
【図6】本発明の潅水構造体の第一実施形態例を示す概略断面図である。
【図7】図6に係る天板の一例を示す平面図である。
【図8】本発明の潅水構造体の第二実施形態例を示す概略断面図である。
【図9】本発明に係る天板の別の実施形態例で、図9(a)は平面図、図9(b)はそのA−A断面図である。
【図10】本発明の潅水構造体の第三実施形態例を示す概略断面図である。
【図11】参考例発明6の潅水構造体の実施形態例を示すもので、図11(a)は概略断面図、図11(b)は図11(a)のB−B断面図である。
【図12】本発明の第四実施形態例を示すもので、保水性ブロックに形成されている圧力調整孔の部分を示す一部拡大断面図である。
【図13】本発明に第五実施形態例を示すもので、図13(a)は、貯水空間内の雨水等が減って、浮き型の蓋が下がって圧力調整孔を塞いだ状態を、図13(b)は貯水空間内の雨水等の水量が増えて蓋が浮き上がって、圧力調整孔との間に隙間ができている状態をそれぞれ示している。
【図14】本発明に係る図13に示す潅水構造体の改良型に関するもので、本発明の潅水構造体の第六実施形態例を示す圧力調整孔部分の一部拡大断面図である。
【図15】本発明の第七実施形態例を示す保水性ブロック4の一部拡大断面図である。
【図16】本発明の潅水システムの第一実施形態例を示す概略断面図である。
【図17】本発明の潅水システムの第二実施形態例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に図を用いて参考例および本発明の潅水構造体及びこの潅水構造体を用いた潅水システムの実施形態例を詳細に説明する。
図1は参考例発明1の潅水構造体の実施形態例を示す概略断面図である。図1に示すように、この潅水構造体1は、内部に貯水空間2を有し上部に開口部を有する地下埋設型の貯水ユニット3と、貯水ユニット3の前記開口部を覆うインターブロッキング舗装等によく使用される透水性を有する保水性ブロック4(以下単に保水性ブロック4という)と、貯水空間2内に貯水されている雨水等5を、毛細管現象を利用して保水性ブロック4側へと揚水する導水性部材6とを有している。
ここで、貯水ユニット3の前記開口部は、保水性ブロックや後述する天板の下面あるいは集水部材下端等から滴下する雨水等を受ける開口部、すなわち上方からの水を受け取るために設けられている開口部である。
また、符号7は、貯水ユニット3に、より機械的強度を付与したいような場合に、貯水ユニット3に一体成形されたり、接着剤等で接続される補強板である。ところで、図1ではこの補強板7で貯水空間2が複数箇所に仕切られているように見えるが、実際には、各補強板7には適当な大きさの開口部や切欠等があって、貯水されている雨水等5は貯水空間2全体に移動可能になっている。
【0030】
ここで貯水ユニット3としては、プラスチック製の成形体が好適であるが、金属製、セラミック製あるいは金属とプラスチックの複合体、金属とセラミックスの複合体であってもよい。特に好ましいのはポリプロピレン製で、さらにはポリプロピレンのリサイクル品であると環境保護の面からも最適である。
また導水性部材6としては、一般的には不織布が使用されるが、これ以外にも、例えば、ガラス粉やセラミックス粉を管状あるいは柱状に成形した成形体(多孔質体)であってもよいし、あるいはプラスチックや金属からなるパイプ内にガラス粉やセラミックス粉を充填したものであってもよい。このようにプラスチックや金属からなるパイプを使用すれば、これらパイプが補強体としての役割も果たすので好ましい。
ところで図1では、1個の貯水ユニット3内に導水性部材6を2個装着しているが、実際には、導水性部材6の保水性ブロック4への揚水量が、保水性ブロック4から大気中へと蒸発する雨水等の蒸発量以上になるようにその個数、大きさ等が決定される。
【0031】
そして図1に示す本発明の潅水構造体1の最も大きな特徴は、一端が貯水ユニット3の貯水空間2の上部領域に開口し、他端が保水性ブロック4の上表面に開口している圧力調整孔8aが保水性ブロック4を上下に貫通して設けられている点にある。この圧力調整孔8aの内径は5mm以上にしておくのが好ましい。その理由は、降雨の雨粒の大きさがおおよそ5mm以下であるからである。この内径があまり小さいと水の表面張力で圧力調整孔8aの孔が容易に塞がれて、圧力調整孔8aの目的である外気、すなわち大気と貯水空間2を繋ぎ、貯水空間2内の圧力を常に大気圧とほぼ等しくする、という目的を達成することができなくなるからである。
【0032】
このように保水性ブロック4に貯水ユニット3の貯水空間2と外気を連通する圧力調整孔8aを設けておくと、貯水ユニット3の貯水空間2内に雨水等が溜まって、貯水空間2内の空気の容積が変化しても貯水空間2の内圧は圧力調整孔8aを介して常に大気圧とほぼ同じ値に保持される。
そのため貯水空間2の内圧は、保水性ブロック4を毛細管現象により浸透してくる雨水等の毛細管圧力を上回ることがなくなる。その結果、従来のように貯水空間2に雨水等が一定量貯えられると、貯水空間2内の内圧が高まって、それ以降は保水性ブロック4側から雨水等が浸透して来ず、貯水空間2に十分な雨水等を貯えることができない、という問題を解決することができる。
それ故、この潅水構造体1によれば、降雨量におおよそ比例してより多くの貯水量を確保できるので、外気温が高温の場合にも、長期間に亘って保水性ブロック4に雨水等を安定して供給でき、その蒸発潜熱で保水性ブロック4を冷却し続けることができる。
【0033】
ところでこの圧力調整孔8aの貯水空間2側の開口端は、貯水空間2のできるだけ上部領域に設けることが好ましい。
その理由は、下部領域に設けると早い段階で貯水空間2内に溜まる雨水等5にその開口端が水没し、もはや貯水空間2の空気が残っている部分と外気(大気)とを繋ぎ、貯水空間2内の内圧を大気圧に等しくできなくなるからである。すなわち、圧力調整孔8aの貯水空間2側開口端が水没した時点で、貯水空間2内の内圧調整機能が失われ、もはや保水性ブロック4側から貯水空間2へ雨水等の浸透が行われなくなってしまう。
ところで、保水性ブロック4の上表面に形成されている圧力調整孔8aの開口端からごみが侵入すると、圧力調整孔8aを塞いで貯水空間2内の内圧調整機能が失われたり、貯水空間2の容積を狭める恐れがある。そこで必要なら金網等でできている、いわゆる通気性を有する蓋13をこの開口端に被せておくことも有効である。また、この蓋13の先端が保水性ブロック4の上表面よりも突出しないようにしておけば、歩行者の邪魔にならず、それ故、自身も破損し難くなり、好ましい。
【0034】
図2は参考例発明2の潅水構造体の実施形態例を示す概略断面図である。この図2を含め、以下に説明する図面においては、先に説明した図面で既に説明したものと同じものには同じ符号を付して、詳細な説明は省略することにする。
図2に示す潅水構造体1の特徴は、貯水ユニット3の一方の側壁にパイプを貫通させ、圧力調整孔8bが形成されている点にある。因みに、この場合には、潅水構造体1の脇に側溝9が設置されていて、圧力調整孔8bの側溝側の開口端は、側溝9の中央部よりも上方に形成されているものとする。尚、図2で符号10は、側溝9の上部の開口部を覆う蓋である。
ところで図2では圧力調整孔8bの一端が側溝9の上部領域に開口しているが、この開口部が側溝9内を流れる雨水等5で塞がれないように、側溝9のできるだけ上部領域に開口するようにするのが好ましい。因みに、圧力調整孔8bのどちらか一方の開口端が水没した時点で、圧力調整孔8bは貯水空間2の内圧を大気と同じにする、という機能を失ってしまう。
【0035】
また図2に示す潅水構造体1において、貯水ユニット3の貯水空間2内の圧力を大気圧に等しくする、という機能をより確実に発揮させるために、図1に示す保水性ブロック4に形成されている圧力調整孔8aも併せて形成しておくこともできる。
加えて図2において、貯水ユニット3の貯水空間2の向かって右側にも、例えば、隣接貯水ユニット間圧力調整管8cを設けておけば、一点鎖線が示すように、隣接して潅水構造体1を布設して潅水システムを形成する場合に、隣の潅水構造体1の貯水ユニット3に対して、その貯水空間2にこの隣接貯水ユニット間圧力調整管8cを連結すれば、さらに潅水システム全体の貯水空間2の圧力調整がより確実に行える利点もある。
尚、図2において符号11は、潅水構造体1を布設するために歩道等に所定の深さの穴を掘り、必要により不陸処置を施した路盤を示している。
【0036】
図3は参考例発明3の潅水構造体の実施形態例を示す概略断面図である。
図3に示すものは、図2に示すものに似ているが、相違する箇所は、圧力調整孔8bを形成するためのパイプを車道と歩道との間に設置されている路石12を貫通させて車道側の外気にその一端を開口させている点にある。この場合にも、貯水ユニット3の貯水空間2内の圧力を大気圧に等しくする、という機能を保証するために、図1に示す保水性ブロック4に形成されている圧力調整孔8a(図3には図示せず)や隣接貯水ユニット間圧力調整管8cも併せて形成することもできる。
【0037】
図4は参考例発明4の潅水構造体の実施形態例を示す概略断面図である。
図4に示す潅水構造体1の特徴は、保水性ブロック4の下面に、例えば、円柱状または角柱状の、突起状の集水部材15を、その先端が貯水ユニット3の貯水空間2に向かって突出するように、例えば接着剤やねじ等で固定した点にある。ところでこの集水部材15は、保水性ブロック4の下面に直接固定したものに限らず、例えば、貯水ユニット3の補強板7に設けた固定機構を介して保水性ブロック4の下面に接触するように装着したものであってもよい。
【0038】
図4に示す突起状の集水部材15は、例えば、石英粉末を成形した透水性を有する成形体で、その毛細管半径が50μm、長さは10mmの多孔質体である。もちろんこれ以外の材質、形状であってもよい。具体的には、プラスチックあるいは金属性のパイプを補強体として、前記石英粉末製の成形体に被せたものであってもよい。
このような集水部材15を保水性ブロック4の下面に設けておくと、保水性ブロック4内を浸透して下垂した雨水等は、効率良くこの集水部材15に集まる。
因みに、図4において、保水性ブロック4と突起状の集水部材15を一体としてみたとき、この突起状の集水部材15の内部の水の重力ポテンシャルが一番低くなり、保水性ブロック4を浸透してきた雨水等をより早く貯水空間2へと滴下でき、より速い速度で貯水空間2に雨水等を貯えることが可能になる。
【0039】
ところで、図4に示すように集水部材15を保水性ブロック4の下面に装着し、圧力調整孔8bや隣接貯水ユニット間圧力調整管8cはなく、保水性ブロック4に圧力調整孔8aのみ設けた場合と、圧力調整孔8a、8b及び隣接貯水ユニット間圧力調整管8cが全くない場合で、貯水ユニット3の貯水空間2に溜まる雨水等の高さ、すなわち貯水量を比較してみた。因みに、用いた集水部材15は、前述したように石英粉末を成形した透水性を有する成形体で、その毛細管半径が50μm、長さが10mmの多孔質体である。また貯水空間2の深さは、160mmになっている。比較実験をした温度雰囲気は20℃である。そして初期状態では貯水空間2内に水は全くなく、内圧は大気圧に等しい1気圧である。
この状態で保水性ブロック4上に水をかけ始めた。その結果、保水性ブロック4を浸透した水が保水性ブロック4の下面に装着された集水部材15に集まり、その先端から貯水空間2へと滴下し始めた。
【0040】
圧力調整孔8a、8b及び隣接貯水ユニット間圧力調整管8cがいずれも形成されていない潅水構造体にあっては、貯水空間2内の水の高さが約1mmになった時点で、最早水位がそれ以上上昇することはなかった。すなわち、保水性ブロック4に水を掛け続けているにも関わらず、貯水空間2に水がそれ以上溜まっていくことはなかった。これは貯水空間2の空気が溜まってくる水の体積増加に比例して徐々に圧縮され、貯水空間2の内圧が高まったからである、と推測される。
その結果、この高められた貯水空間2内部の空気の圧力が、実験の途中から保水性ブロック4を毛細管現象により浸透してくる水の毛細管圧力を上回ってしまって、この実験の場合には、わずか1mm程度の高さまでしか溜まらなかった、と考えられる。
一方、図4にあって圧力調整孔8aのみ形成されている本発明の潅水構造体1にあっては、圧力調整孔8aで貯水空間2内の空気の圧力が常に大気圧に等しい圧力に保持されているため、圧力調整孔8aの貯水空間2側の開口端の端部近傍の約160mmの高さまで水を貯えることができた。
【0041】
図5に示す潅水構造体は、参考例発明5の潅水構造体の実施形態例を示す概略断面図である。図5に示す潅水構造体1の特徴は、集水部材15が円錐状または角錐状になっていて、貯水空間2に向かってその先端が尖っている点にその特徴がある。
そのため、その先端に雨水等がより集まり易くなる。その結果、保水性ブロック4を浸透してきた雨水等をより一層早く貯水空間2へと滴下でき、より速い速度で貯水空間2に貯えることができる。
【0042】
図6は本発明の潅水構造体の第一実施形態例を示す概略断面図である。
図6に示す潅水構造体1の特徴は、これまで説明した貯水ユニット3と保水性ブロック4との間に天板16とサンドクッション層からなる貯水層18とを介在させた点にある。
具体的には、貯水ユニット3の上部の開口部を、図7に示すように、表裏を貫通する通水孔19を1個または複数個有する平板状の天板16で覆い、必要ならこの天板16上に多少厚めの、例えば厚さ約1mmの不織布等からなる透水性(通気性)を有する防砂シート17を被せ、さらにこの防砂シート17上にサンドクッション層からなる貯水層18、すなわち、砂や砂礫からなる貯水層18を設け、さらにこの上に保水性ブロック4を載置したものである。
尚、図7は天板16の一例を示す平面図である。ところで天板16の上表面においては、各通水孔19に周囲から雨水等が集まり易いように、通水孔19に向かって傾斜をつけて凹ませておくことも有効である。
【0043】
そしてこの例でも、潅水構造体1の下部にある貯水ユニット3の貯水空間2と外気(大気)とを、保水性ブロック4、貯水層18、防砂シート17及び天板16とを貫通するパイプで形成した圧力調整孔8aで繋ぎ、貯水空間2の内圧を常に大気圧とほぼ等しくなるようにしている。
尚、圧力調整孔8aの貯水空間2側の開口端は貯水空間2の上部領域に開口するように形成されている。
【0044】
ここで天板16としては、図7に示すような通水孔19を有する、例えば、プラスチック製の成形体が好適であるが、金属製、セラミック製あるいは金属とプラスチックの複合体、金属とセラミックスの複合体であってもよい。特に好ましいのはポリプロピレン製で、これのリサイクル品であると環境保護の面からも好適である。
尚、通水孔19を有するもの以外にも、例えば、多孔質で透水性のあるものであれば使用可能で、具体的には、透水性を有するプラスチック製成形体も使用できる。
【0045】
この天板16の役割の一つは、上部に位置する貯水層18と保水性ブロック4の重さを支え、例えば、貯水層18が貯水ユニット3の貯水空間2側に垂れないようにするためのものである。
また、天板16上に必要により透水性を有する防砂シート17を被せているが、この防砂シート17の役割の一つは、貯水ユニット3の貯水空間2内に貯水層18側から砂や砂礫が、主に天板16同士の合わせ目をすり抜けて入り込まないようにすることにある。それ故、敷き詰められている天板16同士の隙間が、貯水層18を構成している砂等の粒径より小さい場合には、あえて防砂シート17を天板16に被せる必要はない。
天板16と防砂シート17の他の一つの役割は、貯水空間2と貯水層18や保水性ブロック4との間の通気性を妨げないことにある。よって天板16、防砂シート17ともに透水性(当然通気性も含む)のある材質のものを選ぶか、各々に複数個の孔を設けて通気性を確保しておく必要がある。各役割をそれぞれ果たすことができるものであれば、両者ともに前述した材質のものに関わらず、他の材質のものであってもよい。
【0046】
図8は本発明の潅水構造体の第二実施形態例を示す概略断面図である。この実施形態例の特徴は、図6に示す潅水構造体1を用いて潅水システムを形成する場合を考慮して、一点鎖線で示す隣接する潅水構造体1との間で、互いの貯水空間2を連通する隣接貯水ユニット間圧力調整管8cを、貯水空間2の上部領域にその開口端が開口するように貯水空間2の左右にそれぞれ設けた点にある。もちろんこの潅水構造体1を平面正方形あるいは長方形の箱状のものとした場合には、各辺毎にこの隣接貯水ユニット間圧力調整管8cを設けても良いことは言うまでもない。
因みに、潅水システムを歩道に形成する場合には、歩道を数十センチ程掘り下げ、その底面(路盤)に不陸処置を施して平らにしたら、その路盤上に図8に示す潅水構造体1を隣接させながら複数個布設し、各潅水構造体1同士の貯水空間2を隣接貯水ユニット間圧力調整管8cで繋げば良い。
もちろん、圧力調整孔8aのみで隣接貯水ユニット間圧力調整管8cのない図6に示す潅水構造体1を複数個隣接させて並べ、潅水システムを構成してもよいことは言うまでもない。
【0047】
ところで図6、図8に示す潅水構造体1にあっても天板16の下面に直接、あるいは貯水ユニット3の補強板7に装着した固定機構等を介して間接的に集水部材15を装着するようにしてもよい。このようにすれば集水効率を高めることができる。
具体的には、図9(a)に示すように、天板16の通水孔19の上部を段差のあるざぐり孔にしておいて、図9(b)に一点鎖線で示すように、このざぐり孔に先端太径部分を引っ掛けるように集水部材15や導水性部材6を装着することもできる。因みに、導水性部材6の下端は貯水ユニット3の貯水空間2の底面にほぼ接触する状態になるように装着されている。その理由は、貯水空間2内に貯えられている雨水等を最後まで効率よく揚水できるようにするためである。
【0048】
ところで、これら導水性部材6や集水部材15としては、プラスチックや金属のパイプを被せた補強体付きのものであればより好適で、特にそのパイプの先端が通水孔19のざぐり部に引っ掛けられる構造になっていれば、これを固定機構にして、導水性部材6や集水部材15を簡単に天板16に装着できる。尚、導水性部材6や集水部材15を天板16の通水孔19に装着する際には、導水性部材6や集水部材15の先端を、防砂シート17がある場合には防砂シート17の下面に、防砂シート17がない場合には貯水層18の下部表面に接触するように装着することが望ましい。このようにすれば集水部材15の集水効率を上げ、また導水性部材6の揚水効率を上げることができ好ましい。
ところで図9(a)は、天板16の図7とは別の実施形態例を示す平面図、図9(b)はそのA−A断面図である。
【0049】
図10は本発明の潅水構造体の第三実施形態例を示す概略断面図である。この第三実施形態例の特徴は、図8に示す潅水構造体1と異なり、潅水構造体1の下部に貯水ユニット3に替えて上部が透水性(通気性)を有する材質、もしくは構造を有する通気ユニット20を設置した点にある。
この例では、通気ユニット20は箱状のブロック21と、このブロック21の上部の開口部を覆う、例えば、図7に示すような通気孔19を有する天板16とで構成されている。尚、符号22はブロック21の内部に必要により適宜設けられる補強板である。
因みに、この補強板22は透水性を有しているか、もしくは補強板22の両側の空間を通気状態に保持する開口部分を有しているか、いずれかの特性または構造を有している。
【0050】
ところでこの通気ユニット20において、少なくとも天板16は、透水性を有する材質で形成されているか、あるいは図7に示す天板16のように、通水孔19を介して通気性を有していることが必要である。また、好ましくは、ブロック21の底面部も含め全体が透水性(通気性)を有していて、サンドクッション層からなる貯水層18から防砂シート17及び天板16を介して浸透し、滴下してきた雨水等を一時的に貯えることがあっても、その一時的に貯えた雨水等を底面部から路盤11へと浸透させ、逃がせるものが好ましい。その理由は、ブロック21内に雨水等が溜まると、後述する圧力調整孔8b等が水没する危険性が高くなるからである。
言うまでもなく、この通気ユニット20の基本的な役割は、透水性を有する天板16及びこの天板16上に必要により被せられる防砂シート17を介して、通気ユニット20内の空間と貯水層18との間で通気状態(連通状態)を作り、通気ユニット20内の空間及び貯水層18の各内圧を大気圧にほぼ等しくすることにある。それ故、圧力調整孔8aもしくは側溝9に通じる圧力調整孔8bのいずれか一方、あるいは両方により通気ユニット20の内部と外気とが繋がれている。
この通気ユニット20としては、ブロック21と天板16が一体になったような形状のものが好適で、具体的には、建設用に市販されている透水性のコンクリートブロック等を用いることもできる。
【0051】
尚、この通気ユニット20内に開口する圧力調整孔8aや圧力調整孔8bの開口端も、通気ユニット20の内部空間のできるだけ上部領域に設けることが好ましい。その理由は、通気ユニット20内にも、前述したように一時的ではあるが雨水等が溜まる可能性があるからである。それ故、開口端が水没しないように、できるだけ通気ユニット20の内部空間の上部領域に開口端を設けるのが良い。尚、隣接通水ユニット間圧力調整管8dは、この潅水構造体1を一点鎖線が示すように複数個並べて潅水システムを構成した場合に、隣接する潅水構造体1の通気ユニット20と通気状態を確保するために必要に応じて設けるものである。
【0052】
図11は参考例発明6の潅水構造体の実施形態例を示すもので、図11(a)は概略断面図、図11(b)は図11(a)のB−B断面図である。
図11に示すようにこの潅水構造体1は、路盤11上に直接サンドクッション層からなる貯水層18を設け、この上に保水性ブロック4を載置したものである。そしてこの貯水層18の下部、換言すると路盤11上に、例えばその内径が5mm以上の通気パイプ30を、一例としてジグザグ状に布設して通気ユニットを形成し、この上に砂あるいは砂礫からなる貯水層18を積み上げたものになっている。すなわち、この例では通気パイプ30を図10における通気ユニット20として用いるものである。この通気パイプ30の管壁には内径が、例えば、5mm以上の通気孔31が複数個開けてあって、サンドクッションからなる貯水層18とはいわゆる通気状態が維持されている。
【0053】
それ故、保水性ブロック4に浸透した雨水等が、貯水層18に貯えられ、その結果、貯水層18の内部圧力が高まろうとしても、この通気パイプ30の管壁に設けられている複数の通気孔31を介して貯水層18の内圧は、パイプ30の内部圧力、すなわち大気圧とほぼ等しく保持される。因みに、この通気パイプ30の少なくとも一端である開口端は外気に開放されている。この例では一端が側溝9に開放されていて、外気、すなわち大気とほぼ等しい圧力になるように工夫されている。
また図11では省略されているが、通気パイプ30の管壁に設けた通気孔31からパイプ内部に砂等が入り込まないように、通気パイプ30の外側を、透水性を有する防砂シート等で覆うことが好ましい。防砂シートとしては、具体的には厚さの薄い不織布が好ましく、この例では、厚さ約0.5mmの不織布で通気パイプ30の外側をらせん状に重ね巻きしている。
【0054】
ところで図11に示す潅水構造体1を用いて、例えば、歩道に潅水システムを形成する場合には、歩道一杯に所定の深さの穴を掘り、不陸処置を施して路盤11を平らにならしたら、その上に不織布等の防砂シート(図示せず)が巻かれた一連続の通気パイプ30をジグザグに折り曲げながら敷き詰める。そしてその両端または少なくとも一端の開口端を側溝9の通常水が来ない高さに位置決めして固定する。この状態で敷き詰めた通気パイプ30上に所定の粒径を有する砂を厚さ約30mmm程度敷き詰め貯水層18を形成する。
最後に、この貯水層18上に複数個の保水性ブロック4を敷き詰め、必要なら隣接する保水性ブロック4間の隙間等を目地砂で埋める。
ここで、前述した通気パイプ30は連続長のものをジグザグに折り曲げて布設しているが、通気パイプ30が潅水構造体1毎に所定長さに切断されているものにあっては、布設に際して、隣接する潅水構造体1の通気パイプ30同士を適宜連結していけばよい。
尚、通気パイプ30に巻く防砂シートは、仮に貯水層18を形成する瓦礫等の粒径が通気孔31よりも大きい場合は省略することもできる。
【0055】
図12は本発明の第四実施形態例を示すもので、保水性ブロック4に形成されている圧力調整孔8aの部分を示す一部拡大断面図である。
例えば、歩道に潅水システムを形成する場合に、用いる潅水構造体1の保水性ブロック4に圧力調整孔8aが形成されているものを考える。具体的には、例えば、図1や図4〜図6、図8及び図10に示すように、保水性ブロック4に地面に対して略垂直の圧力調整孔8aが形成されているものにあっては、この圧力調整孔8aから石やごみが入り込み孔を塞ぐ危険性がある。そこで通常は、図1の符号13が示すように蓋13で塞いでもよい。但し、冬季のように、潅水システムを長期間止めるような場合に使用する蓋は、通気性のないものの方が好ましい。こうすることで、貯水空間2内部が大気と連通しなくなるため、雨水等の浸透を防止し、潅水システムへの水の供給を停止することが可能になる。
そこで、例えば、図12に示すように圧力調整孔8aの開口端を、例えばゴム製の蓋35で塞げばよい。この際、蓋35が保水性ブロック4の上表面から突出していると、歩道上を歩く歩行者にとって危険でもある。そこで蓋35の上表面が保水性ブロック4から突出しないように、例えば、図12に示すように圧力調整孔8aの先端に凹み部37を設けておいて、蓋35がこの凹み部37に面一で嵌るようにしておくとよい。
【0056】
尚、図12では保水性ブロック4の上表面に形成されている圧力調整孔8aの開口端を塞ぐ例のみ示しているが、これ以外にも、貯水ユニットの側壁外部に開口して圧力調整孔8bや通気ユニット30の通気パイプの外気に連通している開口端といった、いわゆる外気に開口している開口端も同様に、ゴム栓等の蓋35で塞ぐことができる。このようにしておけば、圧力調整孔の外部に開口している開口端にごみが詰まって、例えば、夏季この潅水システムの運転を再開しようとした場合、当初の目的を果たせなくなる、という問題も併せて回避でき、好ましい。
【0057】
図13は図12の蓋35に替わる浮き型の蓋36を示す本発明の第五実施形態例を示すものである。図13(a)は、貯水空間2内の雨水等が減って、浮き型の蓋36が下がって圧力調整孔8aを塞いだ状態を示し、図13(b)は貯水空間2内の雨水等の水量が増えて蓋36が浮き上がって、圧力調整孔8aとの間に隙間ができている状態を示している。ここで符号38は浮き型の蓋36に繋がれている紐、符号39はその紐38の他端が繋がれている支点を示している。
この例では、冬季の如く、貯水空間2内の雨水等が減った場合には、自動的に浮きが下がって、浮き型の蓋36で圧力調整孔8aは自動的に塞がれる。それ故、図12に示す蓋35と異なり、作業者が蓋35をするために歩き回る必要がない。
【0058】
図14は図13の改良型で、本発明の潅水構造体の第六実施形態例を示す圧力調整孔8aの部分の一部拡大断面図である。
図14に示すように、この例では、浮き型の蓋36が保水性ブロック4の表面から飛び出さないように、図12に示す実施形態例と同じ考え方で、圧力調整孔8aの上部に凹み部40を新たに設け、図13(a)、図13(b)のいずれの状態にあっても浮き型の蓋36が凹み部40の中から飛び出さないようにその深さや紐38の長さが工夫され、調整されている。
このようにしておけば、歩行者の邪魔になることもないし、歩行者に潰されて破損する、という問題も回避できる。
【0059】
図15は、本発明の第七実施形態例を示す保水性ブロック4の一部拡大断面図である。例えば、図1に示すような潅水構造体1で潅水システムを構成した場合、この圧力調整孔8aの下端の開口端は、前述したようにできるだけ貯水空間2の上部領域に開口している方が、理論的には貯水空間2内により多くの雨水等を貯えることができる。そこで保水性ブロック4の下面に形成される圧力調整孔8aの下端の開口部分を図15に示すように、例えば、皿状に凹まして凹部41を形成しておく。このようにしておけば、貯水空間2内に雨水等が一杯に貯えられても、まだ圧力調整孔8aの下端には空気が存在し、よって貯水空間2内の内圧調整、すなわち大気圧の状態に保持し続ける、という圧力調整孔8aの役割を最後まで果たすことができ好ましい。なお、このような効果は、雨水を貯水する空間であれば、同様の効果が得られる。
【0060】
図16は、本発明の潅水システムの第一実施形態例を示す概略断面図である。
図16に示すものは、図5に示す潅水構造体1を用いた潅水システムを示すものである。例えば、いま歩道に潅水システムを形成する場合、まず歩道を所定の深さ掘って、穴を形成し、この穴の底面に不陸処置を施して平らにならし、路盤11を形成したら、そこに図5に示す潅水構造体1を複数個、その上表面が面一になるように敷き詰める。その際、隣接する潅水構造体1同士の貯水空間2を隣接貯水ユニット間圧力調整管8cで繋いでいく。最後に潅水構造体1同士の隙間に目地砂(図では省略されている)を充填する。
このように形成した潅水システムにおいて、この潅水システムが理想的に動作するためには、保水性ブロック4の表面から下方に浸透する雨水等の量(図16でハッチング付き矢印で示す集水部材15から滴下する雨水等の量の合計値)が、隣接する潅水構造体1同士の隙間、すなわち目地部から下方に浸透していく雨水等の量(図16で線状矢印で示す目地部からの浸透量の合計値)よりも多くないと、貴重な雨水等の大部分が貯水ユニット3の貯水空間2内に溜まらずに、地中へと逃げていってしまうことになる。
【0061】
そこで集水部材15の集水効率を高め、またその形状や配置等も考える必要がある。そのようにして、潅水システム全体に形成されている集水部材15全体を単位時間当たりに浸透する水量が、潅水構造体1間に設けられている目地部全体を浸透し、路盤11へと逃げていく単位時間当たりの水量よりも大きくなるように設計することが重要である。
より具体的に、図16に示す潅水システムを想定して説明する。いまその内側に保水性ブロック4や潅水構造体1間の目地部が適切に含まれるように、任意の位置で所定面積分切り取ったような測定装置を作った。さらにこの装置において、その外側四辺に雨水がこぼれないように枠を設けた。また目地部を透過してきた水を貯水ユニット3に溜まるものとは切り離して別に集めることができるように、貯水ユニット3の下方に、さらに装置全体に跨るように箱状の貯水部を設けた。尚、予めこの装置における複数個の集水部材15の根元部の水平面内断面積の合計値や、目地部の大気に露出している部分の全表面積を測定しておく。尚、ここでいう集水部材15の根元部の水平面内断面積とは、例えば、保水性ブロック4の下面と集水部材15の接触面積をいう。
【0062】
いま集水部材15の根元部の水平面内断面積の合計値はA1、潅水構造体1間の目地部の全表面積はA2であったとする。また集水部材15や目地砂の材質はわかっているので、各々の透水係数kを事前に調べておく。いま集水部材15の透水係数をk1、目地部の目地砂の透水係数をk2とする。さらに動水勾配はどちらも同じくiとする。
この装置を降雨が予想される日に屋外に設置し、降雨に所定時間晒した。所定時間経過後、貯水ユニット3の貯水空間2に溜まった水量Q1と、この貯水ユニット3の下方に設けた目地部から浸透して来た雨水を貯えた貯水部内の水量Q2を各々測定した。各Q1、Q2は以下のように表すことができる。
Q1=A1×k1×i・・・・・・・・・(1)
Q2=A2×k2×i・・・・・・・・・(2)
【0063】
前述したように、Q1がQ2よりも大きくないと、雨水等の大部分が貯水ユニット3の貯水空間2内に溜まらずに、潅水構造体1同士の間の目地部から地中へと逃げていってしまうことになる。これを防止するためには、集水部材15の材質としてよりk1の大きなものを選ぶとか、潅水構造体1一個あたりに装着する集水部材15の個数を増やしてA1を大きくするとか、逆に目地砂の表面積A2を少なくするとか、その粒径を細かくして透水係数k2を小さくする等々の工夫が重要である。
具体的には、潅水構造体1を構成する貯水ユニット3の隙間を埋める目地砂の水平面内断面積、すなわち大気に露出している部分の表面積を潅水システム全体の1%以下にし、かつ、集水部材15の根元部分の水平面内断面積、すなわち保水性ブロック4の下面と接触している部分の面積をこれと同程度以上にすることが望ましく、さらに集水効率を高めるためには、潅水構造体1を構成する各貯水ユニット3間の隙間やこの潅水システムと外部との間の隙間から雨水等が逃げないように、適切な遮水処理を施しておくことが有効である。
尚、集水部材15の透水係数k1は、潅水構造体1間に形成されている目地部を形成している材料の透水係数k2と同程度かそれよりも大きくしておくとよい。このようにしておけば、集水部材15が透水量に関して、潅水システム全体の支障になることがなく好ましい。
【0064】
ところでここまでの記載で、隣接する貯水ユニット3や通気ユニット20を連通する部材を総合的に隣接貯水ユニット間圧力調整管とか隣接通気ユニット間圧力調整管と記載してきたが、隣接各ユニット間圧力や外気である大気と内部間圧力を等しくするもの、すなわち、お互いのユニット同士を連通するものであれば、その構造は厳密な意味で管に限定する必要がないことは言うまでもない。
具体的には、例えば、隣接各ユニット間の圧力調整を行うために、本発明の潅水システムの第二実施形態例を示す図17のようにしてもよい。この通気ユニット20は、防砂シート17の下にある天板16が断面ゲタ状になっている。より詳細に説明すると、天板16はその下面にゲタの歯に相当する透水性の板状歯50を複数本有していて、この天板16と路盤11との間に形成される空間とで通気ユニット20を形成している。潅水システムを形成する場合には、図のように天板16を、板状歯50側を路盤11に向けて複数個隣接させて設置すればよい。
【0065】
因みに、天板16は板状歯50を含めて全体が透水性、すなわち、通気性を有しているので、この通気ユニット20の少なくともいずれか一つに圧力調整孔8aあるいは圧力調整孔8bを設けて外気と連通しておけばよい。ここで板状歯50は、通気ユニット20を補強する役割も担っている。
図17に示す実施形態例の場合、天板16の下に形成された空間の一部が隣接する各通気ユニット間の圧力調整管となる。このように本発明では広い意味で隣接貯水ユニット間圧力調整管あるいは隣接通気ユニット間圧力調整管という言葉を用いている。
尚、天板16はアーチ状の構造であってもよい。
【0066】
ところでまた、これまで説明してきた各実施形態例では、1個の貯水ユニット3上に1個の保水性ブロック4が載置されている図のみ示しているが、例えば、1個の貯水ユニット3の上に4個等複数個の保水性ブロック4を載せるものであってもよい。
【0067】
以上に説明したように本発明によれば、保水性ブロック下方の貯水空間や貯水層に雨水等をより多く貯水でき、もって外気温が高温の場合には、長期間に亘って保水性ブロックを冷却できる潅水構造体、この潅水構造体を用いた潅水システム及びこの潅水システムの運転方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 潅水構造体
2 貯水空間
3 貯水ユニット
4 保水性ブロック
5 雨水等
6 導水性部材
7 補強板
8a 圧力調整孔
8b 圧力調整孔
8c 隣接貯水ユニット間圧力調整管
8d 隣接通気ユニット間圧力調整管
9 側溝
10 蓋
11 路盤
12 路石
15 集水部材
16 天板
17 防砂シート
18 サンドクッション層からなる貯水層
19 通水孔
20 通気ユニット
30 通気パイプ
31 通気孔
35 蓋
36 浮き型の蓋
37、40 凹み部
41 凹部
50 板状歯
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に貯水空間を有し上部に上方からの水を受けるための開口部を有する地下埋設型の貯水ユニットと、該貯水ユニットの前記開口部を覆う透水性を有する防砂シートで覆われた天板と、前記天板上方に形成されたサンドクッション層からなる貯水層と、前記貯水ユニット内の貯水空間内に貯水されている水を前記貯水層側へと揚水する導水性部材と、前記貯水層上に載置される透水性を有する保水性ブロックとを有し、前記貯水ユニットの貯水空間は圧力調整孔を介して外気に連通している潅水構造体であって、
さらに、前記保水性ブロック及び前記サンドクッション層からなる貯水層の内部を浸透した水を前記貯水ユニット内の貯水空間へと滴下する集水部材をさらに有することを特徴とする請求項1または請求項2いずれかに記載の潅水構造体。
【請求項2】
前記圧力調整孔の一方の開口端は前記貯水ユニットの貯水空間の上部領域に開口しており、他方の開口端は前記保水性ブロックの上表面に開口しているか、あるいは前記圧力調整孔の一方の開口端は前記貯水ユニットの貯水空間の上部領域に開口しており、他方の開口端は前記貯水ユニットの側壁外部に開口しているかの少なくともいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の潅水構造体。
【請求項3】
内部に空間を有し上部が透水性を有する地下埋設型の通気ユニットと、該通気ユニット上に形成されたサンドクッション層からなる貯水層と、該貯水層上に載置される透水性を有する保水性ブロックとを有し、前記通気ユニットの空間は圧力調整孔を介して外気に連通していることを特徴とする潅水構造体。
【請求項4】
前記圧力調整孔の一方の開口端は前記通気ユニットの空間の上部領域に開口しており、他方の開口端は前記保水性ブロックの上表面に開口しているか、あるいは前記圧力調整孔の一方の開口端は前記通気ユニットの空間の上部領域に開口しており、他方の開口端は前記通気ユニットの側壁外部に開口しているかの少なくともいずれかであることを特徴とする請求項3記載の潅水構造体。
【請求項5】
所定の深さを有する穴内に請求項1〜請求項2のいずれかに記載の潅水構造体を隣接して複数個布設し、隣接する潅水構造体同士の前記貯水空間同士を連通させたもので、さらに隣接する潅水構造体同士の前記通気パイプが連結されていることを特徴とする潅水システム。
【請求項6】
所定の深さを有する穴内に請求項3〜請求項4のいずれかに記載の潅水構造体を隣接して複数個布設し、隣接する潅水構造体同士の前記通気ユニットの空間同士を連通させたもので、さらに隣接する潅水構造体同士の通気ユニットの空間同士が前記圧調整管で連結されていることを特徴とする潅水システム。
【請求項7】
所定の深さを有する穴内に請求項1〜請求項2のいずれかに記載の潅水構造体を隣接して複数個布設した潅水システムにおいて、前記集水部材全体を単位時間当たりに浸透する水量が、前記潅水構造体間に設けられている目地部全体を単位時間当たりに浸透する水量よりも大きいことを特徴とする潅水システム。
【請求項8】
所定の深さを有する穴内に請求項1〜請求項4記載の潅水構造体を隣接して複数個布設した潅水システムの運転方法において、該潅水システムを動作させない期間には、前記保水性ブロックの上表面に開口している前記他方の開口端、前記貯水ユニットの側壁外部に開口している前記他方の開口端、あるいは前記通気ユニットの側壁外部に開口している前記他方の開口端及び前記通気ユニットの通気パイプの外気に連通している開口端を閉じ部材で閉じておくことを特徴とする潅水システムの運転方法。
【請求項1】
内部に貯水空間を有し上部に上方からの水を受けるための開口部を有する地下埋設型の貯水ユニットと、該貯水ユニットの前記開口部を覆う透水性を有する防砂シートで覆われた天板と、前記天板上方に形成されたサンドクッション層からなる貯水層と、前記貯水ユニット内の貯水空間内に貯水されている水を前記貯水層側へと揚水する導水性部材と、前記貯水層上に載置される透水性を有する保水性ブロックとを有し、前記貯水ユニットの貯水空間は圧力調整孔を介して外気に連通している潅水構造体であって、
さらに、前記保水性ブロック及び前記サンドクッション層からなる貯水層の内部を浸透した水を前記貯水ユニット内の貯水空間へと滴下する集水部材をさらに有することを特徴とする請求項1または請求項2いずれかに記載の潅水構造体。
【請求項2】
前記圧力調整孔の一方の開口端は前記貯水ユニットの貯水空間の上部領域に開口しており、他方の開口端は前記保水性ブロックの上表面に開口しているか、あるいは前記圧力調整孔の一方の開口端は前記貯水ユニットの貯水空間の上部領域に開口しており、他方の開口端は前記貯水ユニットの側壁外部に開口しているかの少なくともいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の潅水構造体。
【請求項3】
内部に空間を有し上部が透水性を有する地下埋設型の通気ユニットと、該通気ユニット上に形成されたサンドクッション層からなる貯水層と、該貯水層上に載置される透水性を有する保水性ブロックとを有し、前記通気ユニットの空間は圧力調整孔を介して外気に連通していることを特徴とする潅水構造体。
【請求項4】
前記圧力調整孔の一方の開口端は前記通気ユニットの空間の上部領域に開口しており、他方の開口端は前記保水性ブロックの上表面に開口しているか、あるいは前記圧力調整孔の一方の開口端は前記通気ユニットの空間の上部領域に開口しており、他方の開口端は前記通気ユニットの側壁外部に開口しているかの少なくともいずれかであることを特徴とする請求項3記載の潅水構造体。
【請求項5】
所定の深さを有する穴内に請求項1〜請求項2のいずれかに記載の潅水構造体を隣接して複数個布設し、隣接する潅水構造体同士の前記貯水空間同士を連通させたもので、さらに隣接する潅水構造体同士の前記通気パイプが連結されていることを特徴とする潅水システム。
【請求項6】
所定の深さを有する穴内に請求項3〜請求項4のいずれかに記載の潅水構造体を隣接して複数個布設し、隣接する潅水構造体同士の前記通気ユニットの空間同士を連通させたもので、さらに隣接する潅水構造体同士の通気ユニットの空間同士が前記圧調整管で連結されていることを特徴とする潅水システム。
【請求項7】
所定の深さを有する穴内に請求項1〜請求項2のいずれかに記載の潅水構造体を隣接して複数個布設した潅水システムにおいて、前記集水部材全体を単位時間当たりに浸透する水量が、前記潅水構造体間に設けられている目地部全体を単位時間当たりに浸透する水量よりも大きいことを特徴とする潅水システム。
【請求項8】
所定の深さを有する穴内に請求項1〜請求項4記載の潅水構造体を隣接して複数個布設した潅水システムの運転方法において、該潅水システムを動作させない期間には、前記保水性ブロックの上表面に開口している前記他方の開口端、前記貯水ユニットの側壁外部に開口している前記他方の開口端、あるいは前記通気ユニットの側壁外部に開口している前記他方の開口端及び前記通気ユニットの通気パイプの外気に連通している開口端を閉じ部材で閉じておくことを特徴とする潅水システムの運転方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−82684(P2012−82684A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258754(P2011−258754)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【分割の表示】特願2008−36773(P2008−36773)の分割
【原出願日】平成20年2月19日(2008.2.19)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【分割の表示】特願2008−36773(P2008−36773)の分割
【原出願日】平成20年2月19日(2008.2.19)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】
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