説明

潜像パターンを有する画像形成体

【課題】顕像化(真偽の検証)のための検証用フィルムを別途用意しなくとも、その検証が容易に確実にでき、その潜像パターンに自由度を付与して、セキュリティ性にも優れた潜像パターンを有する画像形成体及びその顕像化方法の提供にある。
【解決手段】一枚の紙基材42上の3隅に万線比率が1:1でピッチが同一の万線でなる潜像パターン10A、10B、10Cとそれ以外の万線状非潜像パターンとが合わされて形成され、該潜像パターンと非潜像パターンの位相を1/2ピッチずらしてある画像形成体1で、その3隅に形成されている潜像パターン10A、10B、10Cと、万線比率、ピッチが同一の検証用万線状パターン20が折り返し線40A、40B、40Cで対象となる1隅に形成され、該万線状潜像パターンおよび検証用万線状パターンの部位に透かし印刷層44が施されている潜像パターンを有する画像形成体1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、株・債券、商品券あるいは自治体等で用いられる証明用紙、入場券等有価証券類の偽造、複写を防止する必要性のある画像形成体に適用されるもので、通常、視認が困難な潜像パターンを有し、その潜像パターンを認識するのに別具にて顕像化することのできる潜像パターンを有する画像形成体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、株券、商品券さらにはクレジットカード等有価証券類の他、商品用の封印シールやタグ類に至るまで偽造・複製による不正使用を防止するため、精巧な印刷技術による印刷等が施されているのが一般的であったが、近年の偽造・複製による不正使用の頻発に鑑み、これら精巧な印刷等に加え特殊な偽造防止策が施されるようになってきた。
【0003】
この特殊な偽造防止策として、例えばホログラムを貼付けるたり、紫外線で発色する材料や画像を施して紫外線照射で真偽判定をする方法などがあり、あるいは、後に詳述するが、金属箔層に万線方向が異なる万線状凹凸パターン群が複数集合したエンボスパターンを形成したもので、見る角度を変化させると万線状凹凸パターン群の濃淡や輝きが変化する所謂オパール効果を有する画像体として有価証券類等に貼付けたりする方法がある。
【0004】
上記偽造防止策のいずれもが角度を変化させる等目視によって、隠しパターン等を認識することができるもので、この偽造防止技術に精通した者には比較的容易に偽造が可能なものであった。
【0005】
上記偽造防止技術に対し、一見して隠しパターン(潜像パターン)等が認識できないものに、万線が略1対1の幅の潜像部と非潜像部とでなり、その万線が潜像部と非潜像部で位相が1/2ピッチずらしてある印刷物に、この万線と同形状の万線パターンを有する万線フィルムを重ね合わせると、非潜像部がこの万線フィルムの万線パターンで隠され、潜像部のみが像として浮かび上がって見えるようになり、この潜像部の像の有無で真偽判定をする「万線モアレ方式」という技術を用いた方法がある。
【0006】
上記「万線モアレ方式」について、さらに詳しく説明すると、例えば、図6の正面図に示すように、幅とピッチが略1対1の万線パターンがハート型の潜像部(30)とそれ以外の非潜像部(32)とを形成していて、この図6に示すA部の部分拡大図としての図7に示すように、潜像部(30)と非潜像部(32)の万線パターンの万線方向が同一方向で、その万線の位相を1/2ピッチずらしてあり、この像を万線モアレ像(3)といい、例えば、図8の正面拡大図に示すように、この万線と略同形状(万線幅(W)とピッチ(P))の万線パターンを有する万線フィルム(34)を重ね合わせると、非潜像部(32)がこの万線フィルム(34)の万線パターンで隠されてしまい、図9の正面図に示すように、潜像部(30)のみがハート型の画像として浮かび上がって見えるようになるものである。
【0007】
この万線モアレ像(3)を偽造防止用として使用する場合、例えば、図6に示すように、潜像部(30)の近傍に例えば三角形の可視像(36)を形成しておき、通常肉眼では三角形の可視像(36)のみが見えているので、一見してこの可視像(36)が偽造防止策と思わせるもので、実質の真偽判定は、図8に示すように、上記万線フィルム(34)をこの万線モアレ像に重ね合わせることによって、図9に示すように、可視像(36)に加えハート型の潜像部(30)の有無で行うようにしたものである(例えば、特許文献1参照。)。
【0008】
また、上記「万線モアレ方式」の技術を複製し難いように複雑にしたものとして、例えば、シート上に線部と非線部の万線比率が1:1の同一ピッチによる万線を、異なる万線角度にて配置した2乃至数種類の万線パターンが形成され、該万線パターンのうち1乃至数種類の万線パターン領域内に該万線パターンに対して位相を半ピッチ分だけずらして形成した、文字の潜像万線パターンを備えた画像形成体があり、この顕像化に前記万線パターンと同一のピッチを有する顕像化万線シートを互いに前記万線角度が整合するように重合した際に各々万線角度に対応する万線パターン領域内に形成された文字の潜像万線パターンが顕像化されるものがある(例えば、特許文献2参照。)。
【0009】
以下に、上記先行技術文献を示す。
【特許文献1】実公昭62−20307号公報
【特許文献2】特開2001−213042号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記の「万線モアレ方式」のいずれの技術においても、潜像パターンの顕像化(有価証券類等の真偽判定のための検証)に際しその潜像パターンに整合した検証用の透明フィルムを別途必要とし、その検証を行う検証所等にこの検証用フィルムの配布が必要でかつその管理も容易ではなかった。さらに配布されている検証用フィルムが1種類しかないと、有価証券類等に形成する潜像パターンもそのピッチや万線形状等もそれに合わせざるを得ないことから、デザイン性を含めセキュリティ性にも限度がある(欠ける)という問題点があった。
【0011】
本発明は、かかる従来技術の問題点を解決するものであり、その課題とするところは、シート状基材上に、線部と非線部の万線比率が略1:1でそのピッチがの略同一の万線状潜像パターンとそれ以外の万線状非潜像パターンとが形成されてなり、該万線状潜像パターンと万線状非潜像パターンの位相を略1/2ピッチずらしてある画像形成体において、その潜像パターンの顕像化(真偽の検証)のための検証用フィルムを特に別途用意しなくとも、その検証を行う検証所等で容易に確実に検証することができ、検証用フィルムを必要としないことから、その潜像パターンの形状やピッチ等に自由度を付与するので、デザイン性を含めセキュリティ性に優れた潜像パターンを有する画像形成体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に於いて上記課題を達成するために、まず請求項1の発明では、不透明なシート状の基材上の少なくとも一個所に、線部と非線部の万線比率が略1:1であって、ピッチが互いに略同一の万線状潜像パターンとそれ以外の万線状非潜像パターンとが合わされて形成されてなり、該万線状潜像パターンと万線状非潜像パターンの位相をずらしてある潜像パターンを有する画像形成体において、前記万線状潜像パターンと、万線比率が略1:1であって、ピッチが該万線状潜像パターンと略同一の検証用万線状パターンが前記基材を折り曲げて重ねると前記万線状潜像パターンが可視化されるように形成され、該万線状潜像パターンおよび検証用万線状パターンの場所の基材が透明化または半透明化されていることを特徴とする潜像パターンを有する画像形成体としたものである。
【0013】
上記透明化または半透明化は、例えば透かし印刷もしくは紙透かしを適用すればよく、可視化のために好ましくは不透明度を50%以下とする。
【0014】
また、請求項2の発明では、透明または半透明のシート状の基材上の少なくとも一個所に、線部と非線部の万線比率が略1:1であって、ピッチが互いに略同一の万線状潜像パターンとそれ以外の万線状非潜像パターンとが合わされて形成されてなり、該万線状潜像パターンと万線状非潜像パターンの位相をずらしてある潜像パターンを有する画像形成体において、前記万線状潜像パターンと、万線比率が略1:1であって、ピッチが該万線状潜像パターンと略同一の検証用万線状パターンが前記基材を折り曲げて重ねると前記万線状潜像パターンが可視化されるように形成されていることを特徴とする潜像パターンを有する画像形成体としたものである。
【0015】
上記可視化のために基材は透明かまたは半透明である必要があり、好ましくは不透明度が50%以下のものを用いる。
【0016】
また、請求項3の発明では、前記万線状潜像パターンおよび万線状非潜像パターンは目視不可能な特殊インキで形成されていることを特徴とする請求項1または2のいずれか1項記載の潜像パターンを有する画像形成体としたものである。
【0017】
上記請求項1乃至3のいずれか1項記載の潜像パターンを有する画像形成体は、この画像形成体に形成されている万線状潜像パターンに検証用万線状パターンを折り返し線(または仮想線)で折り返して整合するように重ねて、透過光により前記万線状潜像パターンを顕像化(可視化)することができる。
【0018】
上記でいう「不透明度」は、JIS P8138に規定する紙の不透明度試験方法により得られる値で、ハンターリフレクトメータを用い、緑色フィルターをセットして測定する。その測定方法は、試験紙の裏面へ、緑色フィルターを用いたとき反射率89%の白色板を当てたときと、黒色板(同様に反射率0.5%以下のもの)を当てたときの反射率の比を百分率によって示す。
【0019】
また、上記「線部と非線部の万線比率」は、万線の線(線部)の1本の幅と、線と線の間(非線部)の幅との比率のことを云う。
【発明の効果】
【0020】
本発明は以上の構成であるから、下記に示す如き効果がある。
【0021】
即ち、上記請求項1に係る発明によれば、不透明なシート状の基材上の少なくとも一個所に、線部と非線部の万線比率が略1:1であって、ピッチが互いに略同一の万線状潜像パターンとそれ以外の万線状非潜像パターンとが合わされて形成されてなり、該万線状潜像パターンと万線状非潜像パターンの位相をずらしてある潜像パターンを有する画像形成体において、前記万線状潜像パターンと、万線比率が略1:1であって、ピッチが該万線状潜像パターンと略同一の検証用万線状パターンが前記基材を折り曲げて重ねると前記万線状潜像パターンが可視化されるように形成され、該万線状潜像パターンおよび検証用万線状パターンの場所の基材が透明化または半透明化されていることによって、万線状潜像パターンの検証に際し、この万線状潜像パターンと検証用万線状パターンが一枚のシート内にあるので、従来のように別途に検証用万線フィルムを必要とせず、よって、その検証を行う検証所等での万線フィルムの管理が容易となる。
【0022】
さらにまた、潜像パターンの万線形状やそのピッチ等に自由度が増し、デザイン性を含めセキュリティ性をも高めることのできる潜像パターンを有する画像形成体とすることができる。
【0023】
また、上記請求項2に係る発明によれば、透明または半透明のシート状の基材上の少な
くとも一個所に、線部と非線部の万線比率が略1:1であって、ピッチが互いに略同一の万線状潜像パターンとそれ以外の万線状非潜像パターンとが合わされて形成されてなり、該万線状潜像パターンと万線状非潜像パターンの位相をずらしてある潜像パターンを有する画像形成体において、前記万線状潜像パターンと、万線比率が略1:1であって、ピッチが該万線状潜像パターンと略同一の検証用万線状パターンが前記基材を折り曲げて重ねると前記万線状潜像パターンが可視化されるように形成されていることによって、上記請求項1の発明の場合と同様に万線状潜像パターンの検証に際し、この万線状潜像パターンと検証用万線状パターンが一枚のシート内にあるので、従来のように別途に検証用万線フィルムを必要とせず、よって、その検証を行う検証所等での万線フィルム等の管理が容易となる。
【0024】
さらにまた、潜像パターンの万線形状やそのピッチ等に自由度が増し、デザイン性を含めセキュリティ性をも高めることのできる潜像パターンを有する画像形成体とすることができる。
【0025】
上記請求項1または2について、潜像を隠し且つ可視化の際の視認性を良くするうえでは、万線比率は1:1が最も好ましいが、1:1から多少違ってもある程度の効果は得られ、ピッチは同一が最も好ましいが多少違ってもある程度の効果は得られ、また位相のずれは1/2ピッチが最も好ましいが1/2から多少違ってもある程度の効果は得られる。いずれもベストに近い方が良い効果につながる。
【0026】
なお、好ましくは、万線状潜像パターンと万線状非潜像パターンおよび検証用万線状パターンの線幅は、30〜500μmの範囲とすることによって、印刷等による万線状潜像パターンと万線状非潜像パターンおよび検証用万線状パターンの再現性(細線の再現の可能性)があり、かつ画像形成体の万線状潜像パターンの視認が困難な潜像パターンを有する画像形成体とし、万線状潜像パターン等の線幅が30μmに満たないと、印刷等による画像形成体の万線状潜像パターンや検証用万線状パターンの再現性に欠けるとともに、これらのデザインも細かすぎて、検証用万線状パターンを重ね合わせても視認もしくは機械読み取りが困難なものとなり、逆に500μmを越えると画像形成体に形成された万線状潜像パターンが目視で(検証用万線状パターンを重ね合わせない状態でも)判別できたり、複写機などで複写再現され易くなる場合があり、あまり好ましくない。
【0027】
さらにまた、上記請求項3に係る発明によれば、万線状潜像パターンおよび万線状非潜像パターンは、目視不可能な特殊インキで形成されていることによって、検証する検証所等の機械読み取り以外では、視認することができず、さらにまた、複写機などでの複写再現が不可能な、よりセキュリティ性を高めた潜像パターンを有する画像形成体とすることができる。
【0028】
なお、上記潜像パターンを有する画像形成体の顕像化方法として、前記画像形成体に形成されている万線状潜像パターンに検証用万線状パターンを折り返し線(または仮想線)で折り返して整合するように重ねて、透過光により該万線状潜像パターンを顕像化せしめることによって、従来のように、別途の検証用の万線パターンフィルムを必要としないので、その検証を行う検証所等での検証作業や管理等が容易で確実となり、かつセキュリティ性に優れた検証を可能にする潜像パターンを有する画像形成体の顕像化方法とすることができる。
【0029】
上記折り返し線は、特に設けなくともよいが、設けておくと、可視化に際の重ね合わせが容易になるので好ましい。但し表面に印刷が施されることが多いことから、あまり目立たない色あるいは薄くした方が好ましい。
【0030】
従って本発明は、株・債券、商品券あるいは自治体等で用いられる証明用紙、入場券等有価証券類の偽造、複写を防止する潜像パターンを有する画像形成体およびその顕像化方法として、優れた実用上の効果を発揮するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下本発明を実施するための最良の形態を図面を用いて詳細に説明する。
【0032】
図1は、本発明の潜像パターンを有する画像形成体の一事例を示す説明図であり、図2は、本発明の潜像パターンを有する画像形成体の他の事例を示す説明図である。図3は、図1の潜像パターンを有する画像形成体の顕像化の一事例を示す説明図であり、図4は、図2の潜像パターンを有する画像形成体の顕像化の一事例を示す説明図である。また、図5は、本発明の潜像パターンを有する画像形成体を構成する万線状パターンの線の形態の事例を示す説明図である。
【0033】
本発明の潜像パターンを有する画像形成体は、例えば、図1(a)の平面図に示すように、略正方形状の紙基材(42)上の上部と左側下部の3隅に、線部と非線部の万線比率が1:1でそのピッチが同一の万線でなる潜像パターンA(10A)、潜像パターンB(10B)、潜像パターンC(10C)とそれ以外の万線でなる非潜像パターン(特に図示せず)とが合わされて形成されていて、その万線でなる潜像パターンA、B、C(10A、10B、10C)と万線でなる非潜像パターン(図示せず)の位相を1/2ピッチずらしてある。
【0034】
なお、本発明のシート状の基材の代表例は、上記のように「紙」であるが、必ずしも紙に限定するものではなく、印刷が可能で折り曲げも可能であれば、例えばプラスチックのシートでもよい。このプラスチックシートは本来が透明かまたは半透明であり、表面への印刷とかマット処理(表面を粗くして平滑度を低下させる)によって不透明度を選択的に高められる。
【0035】
上記のように3隅に形成されている万線でなる潜像パターンA、B、C(10A、10B、10C)と万線比率が1:1でそのピッチが同一の検証用万線パターン(20)が右下の隅に形成されていて、その検証用万線パターン(20)が3隅に形成されているそれぞれの万線でなる潜像パターンA、B、C(10A、10B、10C)に対し、それぞれの折り返し線A(40A)、折り返し線B(40B)、折り返し線C(40C)で対象形を成して形成されている。
【0036】
さらに、例えば、図1(a)のB−B面を断面で表した図1(b)に示すように、左上の隅に形成されている万線でなる潜像パターンA(10A)と右下の隅に形成されている検証用万線パターン(20)の位置に相当する紙基材(42)上に不透明度が50%以下になる透かし印刷層(44)が施されている潜像パターンを有する画像形成体(1)とするものである。
【0037】
なお、図1(a)に示す右上および左下の隅に形成されている万線でなる潜像パターンB、C(10B、10C)の位置に相当する紙基材(42)上にも透かし印刷層(図示せず)が施されている。また、図1(b)に示す透かし印刷層(44)は、万線でなる潜像パターンA(10A)や検証用万線パターン(20)の上に形成してもよく、さらにこの透かし印刷層(44)に代え、特に、図示しないが紙基材(42)の抄造時に厚紙のこの部分を薄くして不透明度が50%以下になるようにする紙透かし(そのうちの白透かし)であってもよい。
【0038】
図1(a)および図1(b)に示すような潜像パターンを有する画像形成体(1)の顕
像化方法として、例えば、右上がり略45°の折り返し線A(40A)に対し、対象形の関係にある万線でなる潜像パターンA(10A)と検証用万線パターン(20)とを、例えば、図3(a)に示すように、折り返し線A(40A)で折り返し、それぞれの万線の方向を整合させ重ね合わせると、万線でなる潜像パターンが顕像化される。すなわち後方からの透過光(図示せず)で「A」の文字が視認または機械読み取りできるようになるものである。
【0039】
また、図1(a)に示す横方向中央の折り返し線B(40B)に対し、対象形の関係にある万線でなる潜像パターンB(10B)と検証用万線パターン(20)とを、例えば、図3(b)に示すように、折り返し線B(40B)で折り返し、それぞれの万線の方向を整合させ重ね合わせると、万線でなる潜像パターンが顕像化される。すなわち後方からの透過光(図示せず)で「B」の文字が視認または機械読み取りできるようになる。
【0040】
さらにまた、図1(a)に示す縦方向中央の折り返し線C(40C)に対し、対象形の関係にある万線でなる潜像パターンC(10C)と検証用万線パターン(20)とを、例えば、図3(c)に示すように、折り返し線C(40C)で折り返し、それぞれの万線の方向を整合させ重ね合わせると、万線でなる潜像パターンが顕像化される。すなわち後方からの透過光(図示せず)で「C」の文字が視認または機械読み取りできるようになるもので、一枚の潜像パターンを有する画像形成体(1)で3通りの潜像パターンが顕像化が可能な潜像パターンを有する画像形成体(1)とすることができる。
【0041】
また、本発明の潜像パターンを有する画像形成体の他の形態として、例えば、図2(a)の平面図に示すように、略正方形状で不透明度が50%以下の薄紙でなる紙基材(43)上の上部左側隅に線部と非線部の万線比率が1:1でそのピッチが同一の万線でなる潜像パターンA(10A)とそれ以外の万線でなる非潜像パターン(特に図示せず)とが合わされて形成されていて、さらに上部右側隅に線部と非線部の万線比率が1:1でそのピッチが同一の万線でなる潜像パターンB(10B)とそれ以外の万線でなる非潜像パターン(特に図示せず)とが合わされて形成されていて、その万線でなる潜像パターンA、B(10A、10B)のそれぞれと万線でなる非潜像パターン(図示せず)の位相をそれぞれ1/2ピッチずらしてある。
【0042】
上記のように上部2隅に形成されている万線でなる潜像パターンA、B(10A、10B)とそれぞれの万線比率が1:1でそのピッチが同一の検証用万線パターンA、B(20A、20B)が下部の2隅に形成されていて、それら検証用万線パターンA、B(20A、20B)が上部2隅に形成されているそれぞれの万線でなる潜像パターンA、B(10A、10B)に対し、それぞれの折り返し線AB(40AB)で対象形を成して形成されている潜像パターンを有する画像形成体(1)である。
【0043】
この場合の紙基材として、不透明度が50%以下の薄紙を使用しているので、図1(b)に示すような透かし印刷層(44)を必要とせず、例えば、図2(a)のB−B面を断面で表した図2(b)に示すように、不透明度が50%以下の薄紙でなる紙基材(43)上に、万線でなる潜像パターンA(10A)と折り返し線AB(40AB)で対象形を成している検証用万線パターンA(20A)が直接形成されている潜像パターンを有する画像形成体(1)とすることもできる。
【0044】
また、図2(a)および図2(b)に示す潜像パターンを有する画像形成体(1)の顕像化方法として、例えば、横方向中央の折り返し線AB(40AB)に対し、対象形の関係にある万線でなる潜像パターンA(10A)と検証用万線パターンA(20A)および万線でなる潜像パターンB(10B)と検証用万線パターンB(20B)とを、例えば、図4の斜視図に示すように、折り返し線AB(40AB)で折り返し、万線でなる潜像パ
ターンA(10A)と検証用万線パターンA(20A)および万線でなる潜像パターンB(10B)と検証用万線パターンB(20B)の万線の方向をそれぞれ整合させ重ね合わせると、下方からの透過光(O)で「A」の文字と「B」の文字が上方から視認または機械読み取りができるようになる潜像パターンを有する画像形成体(1)とすることができる。
【0045】
以上のように、万線でなる潜像パターンと検証用万線パターンとが折り返し線で対象の位置でそれらの万線方向が対象形であれば、その数と位置および万線の形態を限定するものではなく、無数の組合せでなる潜像パターンを有する画像形成体(1)とすることができる。
【0046】
上記万線でなる潜像パターンA(10A)と検証用万線パターンA(20A)等を構成する万線状パターンの形態として、例えば、図5(a)に示すように、上記事例のような直線状の万線でなる万線状パターン(18)でなるものでもよいが、これら直線でなる万線状パターン(18)に限定するものではなく、例えば、図5(b)に示すように、点で形成され直線状の万線状パターン(18a)としてもよく、あるいは、図5(c)に示すように、波状線でなる万線状パターン(17)とすることもでき、これら波状線でなる万線状パターン(17)を、例えば、点で形成された波状線でなる万線状パターン(図示せず)とすることもできる。
【0047】
また、図1(b)に示す紙基材(42)上に形成する透かし印刷層(44)としては、例えば、ボイル油を主成分とした無色の印刷インキを用いて凸版印刷等で紙基材に浸透させ透かし印刷層(44)を形成するものや、この乾燥性や曳糸性等を改良したものとして、例えば、特開平02−127599号公報に提案されている無色の印刷インキにセルローズと類似した光屈折率を持つ常温固体の樹脂とワックスや動植物油等を配合した透かしインキなどを用いることもできる。
【0048】
これら透かしインキによって紙基材(42)に浸透して、不透明度を50%以下にし、後方からの透過光によって潜像パターンが顕像化されたパターンを前方から視認または機械読み取り可能とするものである。
【0049】
この透かし印刷層(44)に代え、用紙の抄造時に紙料ウエブの厚みや密度を変化させ透かし部となる部位を不透明度を50%以下にし、透過光で透けて見えるようにする紙透かし(特に白透かし)とすることもできる。この紙透かしの方法として、抄造行程中のワイヤーパートにおいて、ダンディロールと称される透水性の押さえ網をロール表面に設けた装置が紙料ウエブに作用し、ダンディロール表面に設けた模様に対応した凹凸によって、紙料ウエブの一部に厚さや密度変化等の坪量変化を与えるようにする方法などが用いられる。
【0050】
また、不透明度が50%以下の薄紙でなる紙基材(43)としては、例えば、坪量55g/m2 程度以下の上質紙、中質紙、あるいは半透明のグラシン紙、模造紙などが挙げられ、用途などによって適宜選定される。
【0051】
以上のように、一枚の紙基材(42)に不透明度が50%以下になる透かし印刷層(44)もしくは紙透かし(図示せず)が施されている部位に、あるいは一枚の不透明度が50%以下の薄紙でなる紙基材上に万線でなる潜像パターンA(10A)と検証用万線パターン(20)が形成されているので、従来のように別途に多種類の検証用万線フィルムを必要とせず、その検証を行う検証所等での万線フィルムの管理が容易となり、さらに潜像パターンの万線形状やそのピッチ等に自由度が増し、デザイン性を含めよりセキュリティ性をも高めることのできる潜像パターンを有する画像形成体(1)およびその顕像化方法
とすることができる。
【0052】
また、本発明では、例えば、図1(a)に示す万線でなる潜像パターンA(10A)と検証用万線パターン(20)の線幅として、30μm〜500μmの範囲が好ましい値である。
【0053】
これらの線幅が30μmに満たないと、各種印刷やインクジェットプリンター等による印字等に際し、万線でなる潜像パターンA(10A)や検証用万線パターン(20)の再現性に欠けるとともに、これらのデザインも細かすぎて、図3(a)の如く検証用万線パターンを重ね合わせても「A」なる文字の視認あるいは機械読み取りが困難なものとなり、逆に500μmを越えると画像形成体に形成された万線でなる潜像パターンA(10A)が目視で(検証用万線パターンを重ね合わせない状態でも)判別できるようになり、かつ複写機などで複写再現され易くなる場合がもあり、あまり好ましくはない。
【0054】
さらにまた、上記請求項3に係る発明は、例えば、図1(a)に示す万線でなる潜像パターンA(10A)およびそれ以外の非潜像パターン(図示せず)は、目視では不可能な特殊インキで形成されているもので、その特殊インキとして、例えば蛍光インキや赤外線吸収インキなどが挙げられる。
【0055】
前者の蛍光インキに分散されているもので短波長(254nm前後)で蛍光を発する蛍光物質(顔料)としては、例えば、Zn2 SiO4 :Mn、Ca2 5 9 Cl:Eu2+、CawO4 、ZnO:Zn、Y2 2 S:Ag、YVO4 :Eu、Gd2 2 S:Tb、LaO2 S:Tb、Y3 Al5 12:Ceなどが挙げられ、これら単体あるいは数種類混合されて使用することができ、また、長波長(340nm近傍)の蛍光を発する蛍光物質(顔料)としては、芳香族ヘテロ環誘導体などの蛍光染料の樹脂固溶体であり、その樹脂としてはポリメタクリル酸エステル、尿素・ホルマリン樹脂、メラミン・ホルマリン樹脂、塩化ビニル、塩ビ・酢ビ共重合体、アルキッド樹脂およびそれらを変性したものが挙げられ、その蛍光染料としては、例えば、芳香族ヘテロ環誘導体としてのフルオレセン、エオシン、ローダミンB、ローダミン6G、チオフラビンなどの色素、ジアミノスチルベンジスルホン酸、イミダゾール、クマリン、トリアゾール、カルバゾール、ピリジン、ナフタル酸、イミダゾロンなどの誘導体、アントラセンなどのベンゼン環を有する化合物などが挙げられ、これら蛍光インキで印刷された潜像パターンをブラックライトの照射で視認または機械読み取りが可能となる。
【0056】
また、後者の赤外線吸収インキとしては、赤外光波長領域のみ吸収する赤外線吸収材料をバインダー樹脂と溶媒等で溶解、分散させて印刷方式(オフセット、グラビア、凸版あるいはスクリーン印刷等)に合わせたインキとするものである。
【0057】
このインキとしては、例えば五二酸化リンを主成分とし酸化鉄或いは酸化銅或いは両者を含むリン酸結晶粉末、五二酸化リンを主成分としFe2+またはCu2+イオンを含むガラス系粉末、金属錯体の赤外線吸収材、シアニン系、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系、アントラキノン系、コロニックメチン系、アズレオニオム系、ピリリウム系等の赤外線吸収染料が挙げられ、またそのバインダーとしては、ポリ塩化ビニル、酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、ポリアクリル、ポリスチレン、ポリアミド等樹脂が挙げられ、その溶媒としてはアマニ脂、キリ脂、トルエン、アセトン、イソプロピルアルコール等アルコール類、メチルエチルケトン、エチレングリコール等が挙げられ、それぞれ(グラビア、フレキソ、オフセット等)の印刷方式と基材に応じて上記バインダーや溶媒を選定し、かつ粘度や転移性、乾燥性等を考慮して調整し赤外線吸収物質を含むインキとすることができ、これら赤外線線吸収インキで印刷された潜像パターンを赤外線吸収物質を検知する赤外カメラとモニターとでなる赤外検証機のモニター上での観察が可能となる。
【0058】
このように、白色光下では目視不可能な蛍光インキやカーボンブラック含有以外の無色の赤外線吸収インキで印刷された潜像パターンA(10A)等とすることによって、その真偽を検証する検証所等の機械読み取り以外では、視認することができず、さらに複写機などでの複写再現が不可能な、よりセキュリティ性を高めた潜像パターンを有する画像形成体(1)とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の潜像パターンを有する画像形成体の一事例を説明するもので、(a)は、その正面図であり、(b)は、(a)のB−B面の断面図である。
【図2】本発明の潜像パターンを有する画像形成体の他の一事例を説明するもので、(a)は、その正面図であり、(b)は、(a)のB−B面の断面図である。
【図3】本発明の潜像パターンを有する画像形成体の一事例の顕像化の一実施の形態を示すもので、(a)は、潜像パターンAの顕像化であり、(b)は、潜像パターンBの顕像化であり、(c)は、潜像パターンCの顕像化である。
【図4】本発明の潜像パターンを有する画像形成体の他の一事例の顕像化の一実施の形態を示す斜視図である。
【図5】本発明の潜像を有する画像形成体を構成する万線状パターンの形態の一事例を示すもので、(a)は、直線でなる万線状パターンであり、(b)は、直線が点でなる万線状パターンであり、(c)は、波線でなる万線状パターンであり、
【図6】従来の画像形成体を構成する万線モアレ像の一事例を説明するための正面図である。
【図7】図6に示す万線モアレ像の正面図のA部の部分拡大図である。
【図8】潜像部を有する万線モアレ像に万線フィルムを重ね合わせた一事例を説明するための正面拡大図である。
【図9】潜像部を有する万線モアレ像に万線フィルムを重ね合わせた際に潜像部が顕像化され浮き上がって見える一事例を示す正面図である。
【符号の説明】
【0060】
1‥‥潜像パターンを有する画像形成体
3‥‥万線モアレ像
10A‥‥万線でなる潜像パターンA
10B‥‥万線でなる潜像パターンB
10C‥‥万線でなる潜像パターンC
18‥‥直線でなる万線状パターン
18a‥‥直線が点でなる万線状パターン
18b‥‥波状線でなる万線状パターン
18c‥‥波状線が点でなる万線状パターン
20‥‥検証用万線パターン
20A‥‥検証用万線パターンA
20B‥‥検証用万線パターンB
30‥‥潜像部
32‥‥非潜像部
34‥‥万線フィルム
36‥‥可視像
40A‥‥折り返し線A
40B‥‥折り返し線B
40C‥‥折り返し線C
40AB‥‥折り返し線AB
42‥‥紙基材
43‥‥薄紙でなる紙基材
44‥‥透かし印刷層
O‥‥透過光
P‥‥万線フィルムの万線のピッチ
W‥‥万線フィルムの万線の幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不透明なシート状の基材上の少なくとも一個所に、線部と非線部の万線比率が略1:1であって、ピッチが互いに略同一の万線状潜像パターンとそれ以外の万線状非潜像パターンとが合わされて形成されてなり、該万線状潜像パターンと万線状非潜像パターンの位相をずらしてある潜像パターンを有する画像形成体において、前記万線状潜像パターンと、万線比率が略1:1であって、ピッチが該万線状潜像パターンと略同一の検証用万線状パターンが前記基材を折り曲げて重ねると前記万線状潜像パターンが可視化されるように形成され、該万線状潜像パターンおよび検証用万線状パターンの場所の基材が透明化または半透明化されていることを特徴とする潜像パターンを有する画像形成体。
【請求項2】
透明または半透明のシート状の基材上の少なくとも一個所に、線部と非線部の万線比率が略1:1であって、ピッチが互いに略同一の万線状潜像パターンとそれ以外の万線状非潜像パターンとが合わされて形成されてなり、該万線状潜像パターンと万線状非潜像パターンの位相をずらしてある潜像パターンを有する画像形成体において、前記万線状潜像パターンと、万線比率が略1:1であって、ピッチが該万線状潜像パターンと略同一の検証用万線状パターンが前記基材を折り曲げて重ねると前記万線状潜像パターンが可視化されるように形成されていることを特徴とする潜像パターンを有する画像形成体。
【請求項3】
前記万線状潜像パターンおよび万線状非潜像パターンは目視不可能な特殊インキで形成されていることを特徴とする請求項1または2のいずれか1項記載の潜像パターンを有する画像形成体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−168356(P2007−168356A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−371799(P2005−371799)
【出願日】平成17年12月26日(2005.12.26)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】