潜像印刷物
【課題】 本発明は、偽造防止効果を必要とするセキュリティ印刷物である銀行券、パスポート、有価証券、身分証明書、カード、通行券等の貴重印刷物の分野において、反射光下で観察した場合と透過光下で観察した場合で全く相関のない異なる画像に変化する潜像印刷物に関する。
【解決手段】 基材上の少なくとも一部に印刷画像を有し、印刷画像は、背景要素群と情報要素群から構成され、更に背景要素群は、第一の印刷要素群と第二の印刷要素群に区分けされ、第一のインキで第一の印刷要素群が、第二のインキで第二の印刷要素群と情報要素群が印刷される。情報要素、第一の印刷要素、第二の印刷要素及び基材の分光反射率に相関性を持たせ、情報要素群、第一の印刷要素、第二の印刷要素及び基材の分光透過率に相関性を持たせることで、反射画像と透過画像を形成して成る真偽判別と偽造防止効果に優れた潜像印刷物を提供する。
【解決手段】 基材上の少なくとも一部に印刷画像を有し、印刷画像は、背景要素群と情報要素群から構成され、更に背景要素群は、第一の印刷要素群と第二の印刷要素群に区分けされ、第一のインキで第一の印刷要素群が、第二のインキで第二の印刷要素群と情報要素群が印刷される。情報要素、第一の印刷要素、第二の印刷要素及び基材の分光反射率に相関性を持たせ、情報要素群、第一の印刷要素、第二の印刷要素及び基材の分光透過率に相関性を持たせることで、反射画像と透過画像を形成して成る真偽判別と偽造防止効果に優れた潜像印刷物を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、偽造防止効果を必要とするセキュリティ印刷物である銀行券、パスポート、有価証券、身分証明書、カード、通行券等の貴重印刷物の分野において、反射光下で観察した場合と、透過光下で観察した場合で全く相関のない異なる画像に変化する潜像印刷物に関わるものである。
【背景技術】
【０００２】
近年のスキャナ、プリンタ、カラーコピー機等のデジタル機器の進展により、貴重印刷物の精巧な複製物を容易に作製することが可能となっている。そのような複製や偽造を防止する偽造防止技術の一つとして、メタメリックペアインキを用いる技術がある。
【０００３】
メタメリックペアインキを用いた偽造防止技術は、照明の光源や種類及び特定波長の光を透過するフィルタの介在により、インキが同色に見えたり、異なった色に見えたりする特性を利用するものである。偽造防止印刷の分野において、このようにインキのメタメリズムによる光学特性を利用する方法は従来から行われている。
【０００４】
例えば、太陽光、蛍光灯又は白熱電球等による通常光下においては同色に見えるが、所定の分光エネルギー分布を有する光源の下で見るか、所定のフィルタを通して見るか、あるいは所定のフィルタを通過させた光の下で見ると、一方が異なった色相に見えるメタメリックな性質を有する二種類の色料によってパターンを互いに対比観察できるように基材上に形成することを特徴とした画像形成体が開示されている（例えば、特許文献１参照）。
【０００５】
また、本出願人は、メタメリックペアインキと複数の微細な網点や画素構造の組み合わせによる特殊な網点構成を組み合わせて用いることによって、可視光域の第一の波長で観察した場合と、可視光域の第二の波長で観察した場合とでは、全く相関のない異なる画像が視認されることを特徴とした真偽判別可能な印刷物を過去に出願している（例えば、特許文献２及び特許文献３参照）。
【０００６】
一方、偽造防止技術の代表的な技術の一つとして、用紙の粗密や薄厚によって模様を形成して透過光下で模様を視認させる、いわゆる透かしが存在する。しかし、この技術は用紙の製造段階で形成する必要があることから用紙メーカでなければ製造不可能であり、加えて用紙メーカが製造した場合でも製造コストが高くなるという問題があることから、これを擬似的に再現する方法として、印刷工程で特殊なインキ（例えば、特許文献４参照）を用いて、この透かしに相当する透過画像を形成する偽造防止技術が存在する（例えば、特許文献５参照）。この技術もデジタル機器を用いたとしても複写不可能であるという特徴を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００７】
【特許文献１】特公昭６０−５８７１１号公報
【特許文献２】特許第４２７３５０７号公報
【特許文献３】特開２００８−４９５７０号公報
【特許文献４】特開２０００−２９０５７１号公報
【特許文献５】特開平６−２２８９００号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００８】
しかしながら、特許文献１、特許文献２及び特許文献３に記載の技術に関しては、メタメリックペアインキで形成した偽造防止用印刷物の真偽を判別するためには、所定の分光エネルギー分布を有する光源の下で見るか、所定のフィルタを通して見るか、あるいは所定のフィルタを通過させた光の下で見る必要があり、専用の光源か、フィルタを備える必要があった。これは、透かしのように印刷物を手にした万人が簡便に真偽判別を行えるものではなく、判別できる者が限定されるという問題があった。
【０００９】
また、特定のインキを用いて透過光下で透かしのような透過画像を認証する透かし印刷を用いた偽造防止技術に関しては、浸透型インキ自体が多くのメーカから市販されており、一般人であっても容易に入手可能であって、偽造者にとっても製造が容易であるという問題があった。また、半透明あるいは透明なインキで形成しても、インキが浸透した領域は油染みのような濃い色に変色して観察されるため、用紙の粗密や薄厚によって模様を形成する透かしと比較して、透過画像が反射光下でも容易に視認されてしまうという問題があった。反射画像として視認しづらい程度にインキ量を抑えると、透過画像は不鮮明となり、透過画像が視認しやすい程度にインキ量を増やすと、反射画像として強く現れてしまう傾向にある。
【００１０】
本発明は、前述した課題の解決を目的とするものであり、基材に印刷した場合に反射光下では等色に観察されるが、透過率が異なる二つのインキを組み合わせてペアインキとして用い、且つ、特殊で複雑な網点構成によって画像を形成する印刷物であって、メタメリックペアインキで形成した偽造防止印刷物のように、特殊な光源やフィルタを必要とせず、透かし印刷のように市販のインキが入手できただけでは形成が不可能であり、反射光下で観察できる画像と透過光下で観察できる画像が全く相関のない異なる画像であることを特徴とする真偽判別と偽造防止効果に優れた潜像印刷物に関わる。
【課題を解決するための手段】
【００１１】
本発明の潜像印刷物は、基材上の少なくとも一部に基材と異なる色の印刷画像を備える潜像印刷物において、印刷画像は、要素を複数配置して成る一定の面積率で形成された背景要素群と、背景要素群を形成している要素と重複しないように、要素を複数配置して成る情報要素群とを有し、背景要素群は、インキの違いによって形成されて成る第一の印刷要素群と第二の印刷要素群に区分けされ、第一の印刷要素群及び情報要素群は第一のインキで形成されて成り、第二の印刷要素群は第二のインキで形成されて成り、第一の印刷要素群の分光反射率は、第二の印刷要素群の分光反射率と等しい分光反射率を有し、且つ、第一の印刷要素群の分光反射率、第二の印刷要素群の分光反射率及び情報要素群の分光反射率は、基材の分光反射率よりも低い分光反射率を有し、第一の印刷要素群の分光透過率は、第二の印刷要素群の分光透過率及び情報要素群の分光透過率より高い分光透過率を有し、且つ、第二の印刷要素群の分光透過率及び情報要素群の分光透過率は、基材の分光透過率と等しい分光透過率を有し、透過光下で観察した場合は、第二の印刷要素群が視認され、反射光下で観察した場合は、印刷画像が視認されることを特徴とする。
【００１２】
本発明の潜像印刷物は、背景要素群を形成する要素が、画素及び／又は画線であることを特徴とする。
【００１３】
本発明の潜像印刷物は、情報要素群を形成する要素が、画素及び／又は画線であることを特徴とする。
【００１４】
本発明の潜像印刷物は、４００ｎｍから７００ｎｍの波長域において、第一の印刷要素群における透過スペクトルの積分値が、第二の印刷要素群及び情報要素群における透過スペクトルの積分値の１２０％以上を有する。
【００１５】
本発明の潜像印刷物は、第一のインキ及び／又は第二のインキが、機能性材料を混合して成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【００１６】
本発明の潜像印刷物においては、印刷物を反射光下で観察した場合と、透過光下で観察した場合とで、異なる画像が観察されることを確認することで真偽判別が可能であり、特殊な光源やフィルタを必要とせず、特別な道具を用いる必要がない。
【００１７】
本発明の潜像印刷物は、市販されている浸透型インキを単に印刷するだけでは形成不能であり、これを形成するにあたっては基材に印刷した場合に浸透型インキと反射光下では等色であって、透過率が異なる光学特性を有するもう一方のインキを作製する必要があり、そのためにはインキ製造のための技能と設備が必要となることから、容易に偽造することは不可能である。
【００１８】
本発明の潜像印刷物においては、特殊な網点構成を用いることによって反射光下で観察される画像と、透過光下で観察される画像とを、全く相関のない画像とすることが可能であるから、デザイン上の自由度が高い。
【００１９】
本発明の潜像印刷物においては、そもそも透過画像は反射画像として可視化させることを特徴の一つとしており、従来の透かし印刷の技術のように用紙に転移させる浸透型インキの量に制限を設ける必要がないため、極めて鮮明な透過画像が形成できる。
【００２０】
以上の手法で形成した潜像印刷物は、生産性の高い印刷方式であるオフセット印刷で製造可能であることからコストパフォーマンスに優れ、また最新のデジタル機器を用いたとしても透過画像の再現は不可能であることから、偽造防止効果に優れる。
【図面の簡単な説明】
【００２１】
【図１】（ａ）は本発明における潜像印刷物を示し、（ｂ）は背景要素群を示し、（ｃ）は情報要素群を示す。
【図２】（ａ）は本発明における第一の印刷要素群を示し、（ｂ）は本発明における第二の印刷要素群を示す。
【図３】（ａ）は本発明において第二のインキで形成される第二の印刷要素群と情報要素群を示し、（ｂ）は本発明において第一のインキで形成される第一の印刷要素群を示す。
【図４】第一のインキ、第二のインキ及び基材の分光反射率を示す。
【図５】第一のインキ、第二のインキ及び基材の分光透過率を示す。
【図６】（ａ）は本発明における潜像印刷物が反射光下で視認される画像を示し、（ｂ）は本発明における潜像印刷物が透過光下で視認される画像を示す。
【図７】透過スペクトルの積分値を示す。
【図８】（ａ）は本発明の一実施例における潜像印刷物を示し、（ｂ）は背景要素群を示し、（ｃ）は情報要素群を示す。
【図９】（ａ）は本発明の一実施例における第一の印刷要素群を示し、（ｂ）は本発明の一実施例における第二の印刷要素群を示す。
【図１０】（ａ）は本発明の一実施例において第二のインキで形成される第二の印刷要素群と情報要素群を示し、（ｂ）は本発明の一実施例において第一のインキで形成される第一の印刷要素群を示す。
【図１１】（ａ）は本発明の一実施例における潜像印刷物が反射光下で視認される画像を示し、（ｂ）は本発明の一実施例における潜像印刷物が透過光下で視認される画像を示す。
【図１２】（ａ）は本発明の一実施例における潜像印刷物を示し、（ｂ）は背景要素群を示し、（ｃ）は情報要素群を示す。
【図１３】（ａ）は本発明の一実施例における第一の印刷要素群を示し、（ｂ）は本発明の一実施例における第二の印刷要素群を示す。
【図１４】（ａ）は本発明の一実施例において第二のインキで形成される第二の印刷要素群と情報要素群を示し、（ｂ）は本発明の一実施例において第一のインキで形成される第一の印刷要素群を示す。
【図１５】（ａ）は本発明の一実施例における潜像印刷物が反射光下で視認される画像を示し、（ｂ）は本発明の一実施例における潜像印刷物が透過光下で視認される画像を示す。
【図１６】（ａ）は本発明の一実施例における潜像印刷物を示し、（ｂ）は背景要素群を示し、（ｃ）は情報要素群を示す。
【図１７】（ａ）は本発明の一実施例における第一の印刷要素群を示し、（ｂ）は本発明の一実施例における第二の印刷要素群を示す。
【図１８】（ａ）は本発明の一実施例において第二のインキで形成される第二の印刷要素群と情報要素群を示し、（ｂ）は本発明の一実施例において第一のインキで形成される第一の印刷要素群を示す。
【図１９】（ａ）は本発明の一実施例における潜像印刷物が反射光下で視認される画像を示し、（ｂ）は本発明の一実施例における潜像印刷物が透過光下で視認される画像を示す。
【図２０】（ａ）は本発明の一実施例における潜像印刷物を示し、（ｂ）は背景要素群を示し、（ｃ）は情報要素群を示す。
【図２１】（ａ）は本発明の一実施例における第一の印刷要素群を示し、（ｂ）は本発明の一実施例における第二の印刷要素群を示す。
【図２２】（ａ）は本発明の一実施例において第二のインキで形成される第二の印刷要素群と情報要素群を示し、（ｂ）は本発明の一実施例において第一のインキで形成される第一の印刷要素群を示す。
【図２３】（ａ）は本発明の一実施例における潜像印刷物が反射光下で視認される画像を示し、（ｂ）は本発明の一実施例における潜像印刷物が透過光下で視認される画像を示す。
【図２４】（ａ）は本発明の一実施例における潜像印刷物を示し、（ｂ）は背景要素群を示し、（ｃ）は情報要素群を示す。
【図２５】（ａ）は本発明の一実施例における第一の印刷要素群を示し、（ｂ）は本発明の一実施例における第二の印刷要素群を示す。
【図２６】（ａ）は本発明の一実施例において第二のインキで形成される第二の印刷要素群と情報要素群を示し、（ｂ）は本発明の一実施例において第一のインキで形成される第一の印刷要素群を示す。
【図２７】（ａ）は本発明の一実施例における潜像印刷物が反射光下で視認される画像を示し、（ｂ）は本発明の一実施例における潜像印刷物が透過光下で視認される画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【００２２】
本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる発明を実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載される技術的思想の範囲内であれば、その他のいろいろな実施の形態が含まれる。
【００２３】
次に、本発明について図面を用いて説明する。図１（ａ）は、本発明における潜像印刷物を示し、（ｂ）は、背景要素群を示し、（ｃ）は、情報要素群を示す。図２（ａ）は、本発明における第一の印刷要素群を示し、（ｂ）は、本発明における第二の印刷要素群を示す。図３（ａ）は、本発明において第二のインキで形成される第二の印刷要素群と情報要素群を示し、（ｂ）は、本発明において第一のインキで形成される第一の印刷要素群を示す。図４は、第一のインキ、第二のインキ及び基材の分光反射率を示す。図５は、第一のインキ、第二のインキ及び基材の分光透過率を示す。図６（ａ）は、本発明における潜像印刷物が反射光下で視認される画像を示し、（ｂ）は、本発明における潜像印刷物が透過光下で視認される画像を示す。図７は、透過スペクトルの積分値を示す。図８（ａ）は、本発明の一実施例における潜像印刷物を示し、（ｂ）は、背景要素群を示し、（ｃ）は、情報要素群を示す。図９（ａ）は、本発明の一実施例における第一の印刷要素群を示し、（ｂ）は、本発明の一実施例における第二の印刷要素群を示す。図１０（ａ）は、本発明の一実施例において第二のインキで形成される第二の印刷要素群と情報要素群を示し、（ｂ）は、本発明の一実施例において第一のインキで形成される第一の印刷要素群を示す。図１１（ａ）は、本発明の一実施例における潜像印刷物が反射光下で視認される画像を示し、（ｂ）は、本発明の一実施例における潜像印刷物が透過光下で視認される画像を示す。図１２（ａ）は、本発明の一実施例における潜像印刷物を示し、（ｂ）は、背景要素群を示し、（ｃ）は、情報要素群を示す。図１３（ａ）は、本発明の一実施例における第一の印刷要素群を示し、（ｂ）は、本発明の一実施例における第二の印刷要素群を示す。図１４（ａ）は、本発明の一実施例において第二のインキで形成される第二の印刷要素群と情報要素群を示し、（ｂ）は、本発明の一実施例において第一のインキで形成される第一の印刷要素群を示す。図１５（ａ）は、本発明の一実施例における潜像印刷物が反射光下で視認される画像を示し、（ｂ）は、本発明の一実施例における潜像印刷物が透過光下で視認される画像を示す。図１６（ａ）は、本発明の一実施例における潜像印刷物を示し、（ｂ）は、背景要素群を示し、（ｃ）は、情報要素群を示す。図１７（ａ）は、本発明の一実施例における第一の印刷要素群を示し、（ｂ）は、本発明の一実施例における第二の印刷要素群を示す。図１８（ａ）は、本発明の一実施例において第二のインキで形成される第二の印刷要素群と情報要素群を示し、（ｂ）は、本発明の一実施例において第一のインキで形成される第一の印刷要素群を示す。図１９（ａ）は、本発明の一実施例における潜像印刷物が反射光下で視認される画像を示し、（ｂ）は、本発明の一実施例における潜像印刷物が透過光下で視認される画像を示す。図２０（ａ）は、本発明の一実施例における潜像印刷物を示し、（ｂ）は、背景要素群を示し、（ｃ）は、情報要素群を示す。図２１（ａ）は、本発明の一実施例における第一の印刷要素群を示し、（ｂ）は、本発明の一実施例における第二の印刷要素群を示す。図２２（ａ）は、本発明の一実施例において第二のインキで形成される第二の印刷要素群と情報要素群を示し、（ｂ）は、本発明の一実施例において第一のインキで形成される第一の印刷要素群を示す。図２３（ａ）は、本発明の一実施例における潜像印刷物が反射光下で視認される画像を示し、（ｂ）は、本発明の一実施例における潜像印刷物が透過光下で視認される画像を示す。図２４（ａ）は、本発明の一実施例における潜像印刷物を示し、（ｂ）は、背景要素群を示し、（ｃ）は、情報要素群を示す。図２５（ａ）は本発明の一実施例における第一の印刷要素群を示し、（ｂ）は本発明の一実施例における第二の印刷要素群を示す。図２６（ａ）は、本発明の一実施例において第二のインキで形成される第二の印刷要素群と情報要素群を示し、（ｂ）は、本発明の一実施例において第一のインキで形成される第一の印刷要素群を示す。図２７（ａ）は、本発明の一実施例における潜像印刷物が反射光下で視認される画像を示し、（ｂ）は、本発明の一実施例における潜像印刷物が透過光下で視認される画像を示す。
【００２４】
図１（ａ）に、本発明における潜像印刷物（１）を示す。潜像印刷物（１）は、基材（２）の上に、基材と異なる色を有する印刷画像（３）が形成されており、印刷画像（３）は、図１（ｂ）に示す背景要素群（４）と図１（ｃ）に示す情報要素群（５）から構成されている。図１（ｂ）に示す背景要素群（４）は、一定の形態を成す要素（６）が規則的に配置されることで一定の階調（濃度）を有して視認される。図１（ｃ）に示す情報要素群（５）は、背景要素群（４）を形成している要素（６）と異なる形態を成す要素（７）が、背景要素群（４）を形成している要素（６）と重複しないように配置されて成り、情報要素群（５）によって背景要素群（４）に階調差（濃度差）が生じ、アルファベットの「Ａ」の文字として視認される。つまり、印刷画像（３）は、背景要素群（４）を形成している複数の要素（６）が作り出しているフラットな階調の中に、情報要素群（５）を形成している要素（７）が配置されることで、その配置された部分に背景要素群（４）よりも高い面積率の部分が生じ、その面積率の差が生じた部分によって「Ａ」の文字が形成されることとなる。
【００２５】
本発明でいう「背景要素（４）を形成する要素（６）」とは、画素又は画線のことであり、また、本発明でいう「情報要素（５）を形成する要素（７）」とは、画素又は画線のことである。ここでいう「画素」とは、印刷画像（３）を形成する一要素として用い、濃淡の変化を面積率（点の大小）で表現する網点形状のことである。また、「画線」とは、点線や破線の分断線、直線、曲線及び波線のことであり、如何なる画線形状で構成しても本発明の技術思想に含まれる。
【００２６】
前述した「情報要素群（５）は、背景要素群（４）を形成している要素（６）と異なる形態を成す要素（７）が、背景要素群（４）を形成している要素（６）と重複しないように配置される」における「異なる形態」とは、大きさ、形状、位相のいずれかが異なっていれば良い。
【００２７】
本発明において、背景要素群（４）を形成する要素（６）は、画素及び／又は画線から成り、情報要素群（５）を形成する要素（７）は、画素及び／又は画線から成る。ただし、情報要素群（５）の場合、要素（７）の一つである四角い形状の画素を隙間なく隣接させて配置することで、ベタ画像の形態としても良く、更に、画素の大小又は粗密によって階調画像の形態としても良い。このように、情報要素群（５）の要素（７）においては、背景要素群（４）の要素（６）と重複しないように、印刷画像（３）中の一部の面積率を異ならせる形態であれば如何なる形態であっても良い。また、背景要素群（４）を形成する要素（６）と、情報要素群（５）を形成する要素（７）の組み合わせについては、すべての組み合わせにおいて本発明の潜像印刷物が作製可能である。なお、本発明を実施するための形態においては、背景要素群（４）を形成している要素（６）及び情報要素群（５）を形成している要素（７）が網点の場合で説明する。
【００２８】
図１に示す潜像印刷物（１）の場合、図１（ｂ）に示す背景要素群（４）は、一定の大きさの網点を成す要素（６）が規則的に複数配置されることで一定の階調を有して視認され、図１（ｃ）に示す情報要素群（５）は、背景要素群（４）を形成している要素（６）よりも大きい直径の中抜きの網点から成る要素（７）が、背景要素群（４）を形成している要素（６）と重複しないように規則的に複数配置されて成る。
【００２９】
このように、印刷画像（３）は、背景要素群（４）を形成している複数の要素（６）が作り出しているフラットな階調の中に、情報要素群（５）を形成している要素（７）が配置されることで、その配置された部分に背景要素群（４）よりも高い階調の部分が生じ、その階調差が生じた部分によって「Ａ」の文字が形成される。
【００３０】
なお、本実施の形態においては、背景要素群（４）が一定の大きさの網点を成す複数の要素（６）から形成され、情報要素群（５）が背景要素群（４）を形成している要素（６）よりも大きい直径の中抜きの網点から成る複数の要素（７）から形成される場合で説明するが、この形態に限定される必要はなく、本発明は、フラットな階調を有する背景要素群（４）に対して階調差を生じるように、情報要素群（５）を形成している複数の要素（７）によって面積率を異ならせる形態であれば良い。
【００３１】
例えば、背景要素群（４）を形成する網点と網点の間に、情報要素群（５）を形成する網点の位相をずらして配置する形態、背景要素群（４）を形成する網点以外の領域の一部に、情報要素群（５）を形成するベタ画像を配置する形態、背景要素群（４）を形成する画線と画線間に、情報要素群（５）を形成する画線を隣接するように配置する形態、背景要素群（４）を形成する網点以外の領域の一部に、情報要素群（５）を形成する階調画像を配置する形態などが挙げられる。これらの形態については、後述する実施例１から実施例５の中で具体的に説明する。
【００３２】
背景要素群（４）を形成している要素（６）と、情報要素群（５）を形成している要素（７）は、重複しないように形成する必要がある。これは、背景要素群（４）を形成している要素（６）と、情報要素群（５）を形成している要素（７）を重複して形成すると、重複した部分だけ階調が上がってしまい、本発明の潜像印刷物（１）を反射光下で観察した際、本来、視認できないはずの第一の印刷要素群（８）が構成する「ＯＫ」の文字が視認されてしまう問題が生じるためである。
【００３３】
図２に、背景要素群（４）を構成している二つの要素群を示す。図２（ａ）は、第一の印刷要素群（８）を示し、図２（ｂ）は、第二の印刷要素群（９）を示す。図２（ａ）に示す第一の印刷要素群（８）は、アルファベットの「ＯＫ」の文字を成す構成であり、図２（ｂ）に示す第二の印刷要素群（９）は、背景要素群（４）の中から第一の印刷要素群（８）の「ＯＫ」の文字を抜いた構成となっている。以上のように、第一の印刷要素群（８）と第二の印刷要素群（９）は、ペア画像となっており、第一の印刷要素群（８）が構成する文字や記号等の有意味画像は、第二の印刷要素群（９）によってカモフラージュされ、一定の階調を有する背景要素群（４）の中に隠される構成となっている。
【００３４】
第一の印刷要素群（８）が、第二の印刷要素群（９）によってカモフラージュされ、一定の階調を有する背景要素群（４）の中に隠される構成となるため、第一の印刷要素群（８）の面積率と第二の印刷要素群（９）の面積率は同じである。
【００３５】
図３に、本発明において第一のインキと第二のインキで形成されて成る、それぞれの画像を示す。図３（ａ）は、第二のインキで形成する画像であり、情報要素群（５）と第二の印刷要素群（９）が組み合わさった構成となっている。図３（ｂ）は、第一のインキで形成する画像であり、第一の印刷要素群（８）のみで構成されている。
【００３６】
以上のように、第一のインキで形成された第一の印刷要素群（８）と第二のインキで形成された第二の印刷要素群（９）が組み合わさって背景要素群（４）を形成し、背景要素群（４）に第二のインキで形成された情報要素群（５）が加わることによって、本発明における潜像印刷物に形成されて成る印刷画像（３）が構成されている。
【００３７】
次に、本発明で用いる第一のインキと第二のインキについて説明する。第一のインキを基材（２）に印刷した場合と、第二のインキを基材（２）に印刷をし、それぞれの印刷物を同じ面積率で構成された場合、反射光下で観察すると等色に観察される特性を有し、且つ、光の透過率が異なることを特徴とする。
【００３８】
次に、基材上（２）に第一のインキで形成した印刷サンプルと、第二のインキで形成した印刷サンプルの分光反射率及び分光透過率について説明する。分光反射率及び分光透過率を測定するためのサンプルは、基材（２）として肌色の上質紙を使用し、第一のインキ及び第二のインキを１００％のベタ印刷を行なったものとする。また、分光反射率及び分光透過率の測定には、ｆｏｓｔｅｒ＋ｆｒｅｅｍａｎ社製ＶＳＣ５０００を使用する。
【００３９】
これ以後、説明を明瞭にするために「基材（２）上に第一のインキで形成された印刷サンプル」は、「第一のサンプル」と記載し、また「基材（２）上に第二のインキで形成された印刷サンプル」は、「第二のサンプル」と記載する。
【００４０】
図４に、第一のサンプルの分光反射率（１０Ｒ）、第二のサンプルの分光反射率（１１Ｒ）及び基材（２）の分光反射率（１２Ｒ）を示す。図４のグラフから、第一のサンプルと第二のサンプルの分光反射率（１０Ｒ、１１Ｒ）は、ほぼ同じであることから、第一のサンプルと第二のサンプルは目視上、ほぼ等色に観察されることがわかる。また、第一のサンプルと第二のサンプルの分光反射率（１０Ｒ、１１Ｒ）と、基材（２）の分光反射率（１２Ｒ）と相似であるものの、基材（２）の分光反射率（１２Ｒ）よりも低いことから、第一のサンプルと第二のサンプルは、基材（２）の色が若干濃くなった色彩として観察者には認識される特徴を有することがわかる。
【００４１】
図５に、第一のサンプルの分光透過率（１０Ｔ）、第二のサンプルの分光透過率（１１Ｔ）及び基材（２）の分光透過率（１２Ｔ）を示す。図５のグラフから、第一のサンプルの分光透過率（１０Ｔ）は、第二のサンプル及び基材の分光透過率（１１Ｔ、１２Ｔ）を約１０％程度上回っており、更に第二のサンプルの分光透過率（１１Ｔ）は、基材（２）の分光透過率（１２Ｒ）とほぼ同一である。分光透過率が高いということは、透過光下で観察した際には明るく視認されることを意味する。よって、透過光下で観察した際には、第一のサンプルは第二のサンプルや基材よりも明るく視認されるとともに第二のサンプルは基材（２）と同じ分光透過率（１２Ｔ）となることで基材と区別がつかなくなり、目視上不可視となる特徴を有することがわかる。
【００４２】
以上の結果から、第一のインキで基材（２）上に形成された画像と、第二のインキで基材（２）上に形成された画像は、その面積率が等しければ反射光下では等色に観察され、透過光で観察した場合には、第一のインキで形成された画像が明るく視認されるとともに、第二のインキで形成された画像は、基材と等色になることで視認困難となることがわかる。
【００４３】
以上の結果を踏まえて、本発明の潜像印刷物（１）の効果について説明する。本発明の潜像印刷物（１）を反射光下で観察した場合には、第一のインキで形成された第一の印刷要素群（８）と、第二のインキで形成された第二の印刷要素群（９）は、面積率が同じであることから、等色に視認され、第一の印刷要素群（８）が示す「ＯＫ」の文字は第二の印刷要素群によって完全にカモフラージュされる。観察者には、第一の印刷要素群（８）及び第二の印刷要素群（９）が組み合わさって形成したフラットな階調を有した背景要素群（４）の中に、面積率の違いによって形成された「Ａ」の文字から成る情報要素群（５）が、背景要素群（４）より濃い色を有して観察される。すなわち、図６（ａ）に示す印刷画像（３）が基材（２）よりもわずかに濃い色で視認される。
【００４４】
また、本発明の潜像印刷物（１）を透過光下で観察した場合には、第一のインキで形成された第一の印刷要素群（８）は、第二のインキで形成された第二の印刷要素群（９）及び情報要素群（５）並びに用紙である基材（２）よりも明るく視認され、且つ、第二のインキで形成された第二の印刷要素群（９）及び情報要素群（５）は、基材（２）と等色となって視認困難となることから、観察者には、図６（ｂ）に示すように「ＯＫ」の文字から成る第一の印刷要素群（８）のみが、基材（２）よりも明るく視認される。
【００４５】
以上のように、本発明の潜像印刷物（１）を反射光下で観察した場合には、背景要素群（４）の中に異なる面積率で形成される「Ａ」の文字から成る印刷画像（３）が、基材（２）よりもわずかに濃い色で視認され、透過光下で観察した場合には、第一のインキによって形成される「ＯＫ」の文字から成る第一の印刷要素群（７）が、基材（２）よりも明るく視認される。このように、反射光下と透過光下の観察において、全く相関のない異なる画像が視認されるため、真偽判別性に優れる。
【００４６】
本発明を実施するための形態では、基材（２）として肌色の上質紙を用いたが、基材の色は肌色に限定されるわけではなく、白色の基材であっても、その他の色の基材を用いたとしても良く、透過率１００％の透明以外の基材であれば本発明の潜像印刷物を形成することは可能である。ただし、第二のインキは、第一のインキが基材に浸透した場合に反射光下で観察される色と、第二のインキが基材に浸透した場合に反射光下で観察される色と等色に調色する必要があることから、基材が変わればそれに応じて第二のインキを調色する必要がある。
【００４７】
まず、第一のインキと第二のインキの二つのペアインキについて説明する。このペアインキは、基材上に同じ面積率で印刷した場合、第一のインキの分光反射率と第二のインキの分光反射率がほぼ同一であり、且つ、第一のインキの分光反射率と第二のインキの分光反射率は、基材の分光反射率より低く、更に、第一のインキの分光透過率が、第二のインキより大きくなる特徴を有している必要がある。また、前述したように、透過光下で観察した際、第二の印刷要素群（９）及び情報要素群（５）が基材（２）と同化して消失したような印象を観察者に与えることは、本発明における潜像印刷物（１）の真偽判別の効果をより一層高める役割を果たすことから、第二のインキを一定の面積率で基材（２）に印刷した場合の分光透過率と、基材（２）の分光透過率は、同一となるように形成する。
【００４８】
第一のインキを基材（２）に一定の面積率で印刷した場合の分光反射率と、第二のインキを第一のインキと同じ面積率で基材（２）に印刷した場合の分光反射率を同一にし、且つ、基材の分光反射率よりも低くするのは、本発明の潜像印刷物（１）を反射光下で観察した際、第一の印刷要素群（８）及び第二の印刷要素群（９）とを等色にし、第一の印刷要素群（８）を隠蔽するためである。仮に、分光反射率が異なる場合、本発明の潜像印刷物（１）を反射光下で観察した際、第一の印刷要素群（８）及び第二の印刷要素群（９）とは、互いに異なる色で認識されるため、第一の印刷要素群（８）が構成する有意味情報である「ＯＫ」の文字が視認される問題が生じる。
【００４９】
また、第一のインキを一定の面積率で基材（２）に印刷した場合の分光透過率が、第一のインキと同じ面積率で第二のインキを基材（２）に印刷した場合の分光透過率より大きくなるようにし、第二のインキを一定の面積率で基材（２）に印刷した場合の分光透過率と、基材（２）の分光透過率をほぼ同一にするのは、本発明の潜像印刷物（１）を透過光下で観察した際、第二の印刷要素群（９）及び情報要素群（５）が基材（２）と等色となり、第一の印刷要素群（８）が基材（２）や第一のインキで形成された第二の印刷要素群（９）及び情報要素群（５）よりも明るく観察されるようにするためである。もし、第一の印刷要素群（８）及び第二の印刷要素群（９）と、情報要素群（５）の分光透過率が同一である場合、本発明の潜像印刷物（１）を透過光下で観察した際、第一の印刷要素群（８）も第二の印刷要素群（９）も情報要素群（５）もすべて観察され、反射光下で観察できる画像と何ら変化が生じなくなってしまう。また、透過光下で第二の印刷要素群（９）及び情報要素群（５）と基材（２）が等色でない場合も、本発明の潜像印刷物（１）を透過光下で観察した際、第二の印刷要素群（９）と情報要素群（５）も透過で視認されることから、第一の印刷要素群（８）が構成する「ＯＫ」の文字と情報要素群（５）が構成する画像である「Ａ」の文字が混ざり合い、不鮮明な画像となってしまう。
【００５０】
第一のインキを基材（２）に印刷した場合と、第二のインキを基材（２）に印刷した場合の分光透過率の差異については、目視上容易に真偽判別を行うことを目的とすると、可視光である４００ｎｍから７００ｎｍの波長域における第一のインキの透過スペクトルの積分値が、第二のインキの透過スペクトルの積分値の１２０％以上に達する必要がある。
透過スペクトルの積分値は、図７（ａ）の斜線部分で示す第二の印刷サンプルの分光透過率（１１Ｔ）の面積率に対し、図７（ｂ）の斜線部分で示す第一の印刷サンプルの分光透過率（１０Ｔ）の面積率の割合で表される。
【００５１】
これは、第二の印刷サンプルの透過スペクトルの積分値が、第一の印刷サンプルの透過スペクトルの積分値の１２０％より小さい場合、本発明の潜像印刷物（１）を透過光下で観察した際の第一の印刷要素群（８）の視認性が低下する。また、第一のインキの透過スペクトルの積分値の上限については、大きければ大きいほど本発明の潜像印刷物（１）を透過光下で観察した際の視認性が良くなるため好ましい。
【００５２】
第一のインキについては、浸透型のインキを用いれば良い。透明や半透明と称して販売されているインキであっても、適正な印刷膜厚で基材上に形成した場合には、印刷した部分は油染みのように成り、基材より濃い色で可視化されることから、本発明に必要な反射光下で可視画像を形成する特性を有している。第一のインキに望まれる特性としては、印刷時に基材に充分浸透して印刷領域の分光透過率が上がること、インキ自体は透明に近いか、あるいは半透明であること、経時による色の変化が小さいこと、滲みが少ないこと等がある。これらの特性を満たしていれば、浸透型インキとして販売されている以外のインキを用いても何ら問題ない。
【００５３】
また、第一のインキは、微量の着色顔料を加えて着色半透明化しても良い。この場合、デザイン上の自由度が向上するが、過剰に着色した場合には、いかに浸透性に優れたインキであっても分光透過率が低下することから注意が必要であり、その都度、着色顔料の適当な配合割合を見極める必要がある。この場合、第一のインキと 等色に仕上げるために第二のインキも同様に着色する必要がある。
【００５４】
また、第一のインキ及び第二のインキに、機能性材料を混合して特殊な認証機能を付与しても良い。例えば、いずれかのインキに発光顔料を混合して、ブラックライト照射時にいずれかの印刷要素が発光する特性を付与したり、赤外線吸収材料を混合して赤外線による認証機能を付与したりすることが可能である。その他にも、燐光顔料、蓄光顔料、フォトクロミック顔料、示温材料、サーモクロミック材料等が挙げられる。第一のインキに浸透型のインキを用いることは先に述べたが、浸透型のインキの中には、印刷することによって赤外吸収特性を発揮するインキがあり、そのような特性を持ったインキを第一のインキとして用いることにより、赤外線ビュアのような簡易的な判別具によって第一の印刷要素群を視認することも可能である。
【００５５】
本発明における潜像印刷物の印刷方式は、オフセット印刷、フレキソ印刷、凸版印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、凹版印刷等のあらゆる印刷方式で形成することが可能である。また、浸透性の高いインクを用いることが可能であればＩＪＰ等でも形成でき、この場合には一枚、一枚の出力物の情報を変える、いわゆる可変印刷を実施することができる。
【００５６】
また、本発明の潜像印刷物（１）を形成するための要素の構成については、実施の形態に記載の構成に制限されるものではない。要素の構成としては、第一の印刷要素群（８）及び第二の印刷要素群（９）とが組み合わさって一定の背景要素群（４）を構成し、且つ、背景要素群（４）と異なる面積率で情報要素群（５）が形成されることで、印刷画像が構成されていれば良い。
【００５７】
以下、前述の発明を実施するための最良の形態にしたがって、具体的に作製した潜像印刷物の実施例について詳細に説明するが、本発明は、この実施例に限定されるものではない。
【実施例１】
【００５８】
本発明の実施例１について、図８から図１１を用いて説明をする。実施例１では、基材（２−１）として肌色の上質紙（日本製紙株式会社製）を用いた。
【００５９】
図８（ａ）に、本発明における潜像印刷物（１−１）を示す。潜像印刷物（１−１）は、基材（２−１）の上に、基材と異なる色を有する印刷画像（３−１）が形成されており、印刷画像（３−１）は、図８（ｂ）に示す背景要素群（４−１）と図８（ｃ）に示す情報要素群（５−１）から構成されている。図８（ｂ）に示す背景要素群（４−１）は、直径１ｍｍの網点を成した要素（６−１）が２ｍｍピッチで規則的に配置されることで一定の階調を有して視認され、図８（ｃ）に示す情報要素群（５−１）は、背景要素群（４−１）を形成している要素（６−１）よりも大きな直径２ｍｍで画線幅０．２５ｍｍの中抜きの網点から成る要素（７−１）が、背景要素群（４−１）と重複しないように２ｍｍピッチで規則的に配置されて成り、情報要素群（４−１）によって面積率の差が生じ、アルファベットの「Ａ」の文字として視認される。つまり、印刷画像（３−１）は、背景要素群（４−１）を形成している複数の要素（６−１）が作り出しているフラットな階調の中に、情報要素群（５−１）を形成している要素（７−１）が配置されることで、その配置された部分に背景要素群（４−１）よりも高い面積率の部分が生じ、その面積率の差が生じた部分によって「Ａ」の文字が形成される。
【００６０】
図９に、背景要素群（４−１）を構成している二つの要素群を示す。図９（ａ）に第一の印刷要素群（８−１）を示し、図９（ｂ）に第二の印刷要素群（９−１）を示す。図９（ａ）に示す第一の印刷要素群（８−１）は、アルファベットの「ＯＫ」の文字を示す構成であり、図９（ｂ）に示す第二の印刷要素群（９−１）は、背景要素群（４−１）の中から第一の印刷要素群（８−１）の「ＯＫ」の文字を抜いた構成となっている。
【００６１】
図１０に、第一のインキと第二のインキで形成されて成る、それぞれの画像を示す。図１０（ａ）は、第二のインキで形成する画像であり、情報要素群（５−１）と第二の印刷要素群（９−１）が組み合わさった構成となっている。図１０（ａ）に示す画像を表１に示す配合で作製した第二のインキを用いてオフセット印刷で基材（２−１）上に印刷した。図１０（ｂ）は、第一のインキで形成する画像であり、第一の印刷要素群（８−１）のみで構成されている。図１０（ｂ）に示す画像を、帝国インキ製造株式会社製オフセットインキ「ユニマーク」を用いてオフセット印刷で基材（２−１）上に印刷した。
【００６２】
【表１】
【００６３】
第一のインキと第二のインキは、基材に同じ面積率で印刷した場合には、ほぼ等しい分光反射率を有し、且つ、第一のインキは第二のインキよりも分光透過率が大きい特性を有する。よって、第一のインキと第二のインキは、基材に同じ面積率で印刷した場合には反射光下での観察において等色に観察され、透過光下での観察では第一のインキで印刷した画像が第二のインキで印刷した画像よりも明るく見える。実施例１の場合、第一の印刷要素群における透過スペクトルの積分値は、第二の印刷要素群及び情報要素群における透過スペクトルの積分値の１５０％を有している。
【００６４】
本発明の実施例１における効果について、図１１を用いて説明する。本発明の潜像印刷物（１−１）を反射光下で観察した場合には、第一のインキで形成された第一の印刷要素群（８−１）と、第二のインキで形成された第二の印刷要素群（９−１）は、ほぼ等色に視認されることから、観察者には、図１１（ａ）に示す印刷画像（３−１）が、基材（２−１）である用紙の色よりもわずかに濃い濃度で視認できる。
【００６５】
また、本発明の潜像印刷物（１−１）を透過光下で観察した場合には、第二のインキで形成された第二の印刷要素群（９−１）及び情報要素群（５−１）は、基材（２−１）である肌色の用紙と等色となり、第一のインキで形成された第一の印刷要素群（８−１）は、基材（２−１）や第二のインキで形成された第一の印刷要素群（９−１）及び情報要素群（５−１）よりも明るく視認されることから、観察者には、図１１（ｂ）に示すように第一のインキによって形成される「ＯＫ」の文字から成る第一の印刷要素群（８−１）が、基材（２−１）よりも明るく視認できる。
【００６６】
以上のように、反射光下で観察した場合には、背景要素群（４−１）の中に情報要素群（５−１）を形成することで面積率の差が生じ、「Ａ」の文字から成る印刷画像（３−１）が基材（２−１）よりも濃く視認され、透過光下で観察した場合には、第一のインキによって形成される「ＯＫ」の文字から成る第一の印刷要素群（８−１）が基材（２−１）よりも明るく視認される。このように、反射光下と透過光下の観察において、全く相関のない異なる画像が確認できた。
【実施例２】
【００６７】
本発明の実施例２について、図１２から図１５を用いて説明をする。実施例２では、基材（２−２）として一般的な白い色の上質紙（日本製紙株式会社製）を用いた。
【００６８】
図１２（ａ）に、本発明における潜像印刷物（１−２）を示す。潜像印刷物（１−２）は、基材（２−２）の上に、基材と異なる色を有する印刷画像（３−２）が形成されており、印刷画像（３−２）は、図１２（ｂ）に示す背景要素群（４−２）と図１２（ｃ）に示す情報要素群（５−２）から構成されている。図１２（ｂ）に示す背景要素群（４−２）は、直径０．５ｍｍの網点を成した要素（６−２）が、０．８ｍｍピッチで規則的に配置されることで一定の階調を有して視認され、図１２（ｃ）に示す情報要素群（５−２）は、背景要素群（４−２）を形成している要素（６−２）と同じ直径０．５ｍｍの網点を成した要素（７−２）が、背景要素群（４−２）と重複しないように０．８ｍｍピッチで規則的に配置されて成り、情報要素群（４−２）によって面積率の差が生じ、アルファベットの「ＣＯＰＹ」の文字として視認される。背景要素群（４−２）を構成している要素（６−２）と、情報要素群（５−２）を構成している要素（７−２）とは、上下左右に０．４ｍｍ位相が異なっていることから、重なりあう部位は存在しない。よって、印刷画像（３−２）は、背景要素群（４−２）を形成している複数の要素（６−２）が作り出したフラットな階調の中に、情報要素群（５−２）を形成している要素（７−２）が配置されることで、その配置された部分に背景要素群（４−２）よりも高い面積率の部分が生じ、その面積率の差が生じた部分によって「ＣＯＰＹ」の文字が形成される。
【００６９】
図１３に、背景要素群（４−２）を構成している二つの要素群を示す。図１３（ａ）に第一の印刷要素群（８−２）を示し、図１３（ｂ）に第二の印刷要素群（９−２）を示す。（ａ）に示す第一の印刷要素群（８−２）は、アルファベットの「ＯＫ」の文字を示す構成であり、（ｂ）に示す第二の印刷要素群（９−２）は、背景要素群（４−２）の中から第一の印刷要素群（８−２）の「ＯＫ」の文字を抜いた構成となっている。
【００７０】
図１４に、第一のインキと第二のインキで形成されて成る、それぞれの画像を示す。（ａ）は、第二のインキで形成する画像であり、情報要素群（５−２）と第二の印刷要素群（９−２）が組み合わさった構成となっている。図１４（ａ）に示す画像を表２に示す配合で作製した第二のインキを用いてオフセット印刷で基材（２−２）上に印刷した。（ｂ）は、第一のインキで形成する画像であり、第一の印刷要素群（８−２）のみで構成されている。図１４（ｂ）に示す画像を、帝国インキ製造株式会社製オフセットインキ「ユニマーク」を用いてオフセット印刷で基材（２−２）上に印刷した。
【００７１】
【表２】
【００７２】
第一のインキと第二のインキは、基材に同じ面積率で印刷した場合には、ほぼ等しい分光反射率を有し、且つ、第一のインキは第二のインキよりも分光透過率が大きい特性を有する。よって、第一のインキと第二のインキは、基材に同じ面積率で印刷した場合には反射光下での観察において等色に観察され、透過光下での観察では第一のインキで印刷した画像が第二のインキで印刷した画像よりも明るく見える。実施例２の場合、第一の印刷要素群における透過スペクトルの積分値は、第二の印刷要素群及び情報要素群における透過スペクトルの積分値の１４０％を有している。
【００７３】
本発明の実施例２における効果について、図１５を用いて説明する。本発明の潜像印刷物（１−２）を反射光下で観察した場合には、第一のインキで形成された第一の印刷要素群（８−２）と、第二のインキで形成された第二の印刷要素群（９−２）は、ほぼ等色に視認されることから、観察者には、図１５（ａ）に示す「ＣＯＰＹ」の文字から成る印刷画像（３−２）が、基材（２−２）である用紙の色よりもわずかに濃い濃度で視認できる。
【００７４】
また、本発明の潜像印刷物（１−２）を透過光下で観察した場合には、第二のインキで形成された第二の印刷要素群（９−２）及び情報要素群（５−２）は、基材（２−２）である肌色の用紙と等色となり、第一のインキで形成された第一の印刷要素群（８−２）は、基材（２−２）や第二のインキで形成された第一の印刷要素群（９−２）及び情報要素群（５−２）よりも明るく視認されることから、観察者には、図１５（ｂ）に示すように第一のインキによって形成される「ＯＫ」の文字から成る第一の印刷要素群（８−２）が、基材（２−２）よりも明るく視認できる。
【００７５】
以上のように、反射光下で観察した場合には、背景要素群（４−２）の中に情報要素群（５−２）を形成することで面積率の差が生じ、「ＣＯＰＹ」の文字から成る印刷画像（３−２）が基材（２−２）よりも濃く視認され、透過光下で観察した場合には、第一のインキによって形成される「ＯＫ」の文字から成る第一の印刷要素群（８−２）が基材（２−２）よりも明るく視認される。このように、反射光下と透過光下の観察において、全く相関のない異なる画像が確認できた。
【実施例３】
【００７６】
本発明の実施例３について、図１６から図１９を用いて説明をする。実施例３では、基材（２−３）として一般的な白い色の上質紙（日本製紙株式会社製）を用いた。
【００７７】
図１６（ａ）に、本発明における潜像印刷物（１−３）を示す。潜像印刷物（１−３）は、基材（２−３）の上に、基材と異なる色を有する印刷画像（３−３）が形成されており、印刷画像（３−３）は、図１６（ｂ）に示す背景要素群（４−３）と図１６（ｃ）に示す情報要素群（５−３）から構成されている。図１６（ｂ）に示す背景要素群（４−３）は、直径０．３ｍｍの網点を成した要素（６−３）が、０．５ｍｍピッチで規則的に配置されることで一定の階調を有して視認され、図１６（ｃ）に示す情報要素群（５−３）は、背景要素群（４−３）を形成している要素（６−３）に接したベタ塗りの要素（７−３）によって形成されて成り、情報要素群（４−３）によって面積率の差が生じ、アルファベットの「ＣＯＰＹ」の文字として視認される。前述したとおり、要素としてベタ塗りの要素で形成した場合も、背景要素群（４−３）を形成する要素（６−３）と、情報要素群（５−３）を形成する要素（７−３）は、重複しないように構成する。背景印刷画像（３−３）は、背景要素群（４−３）を形成している複数の要素（６−３）が作り出したフラットな階調の中に、情報要素群（５−３）を形成している要素（７−３）が配置されることで、その配置された部分に背景要素群（４−３）よりも高い面積率の部分が生じ、その面積率の差が生じた部分によって「ＣＯＰＹ」の文字が形成される。
【００７８】
図１７に、背景要素群（４−３）を構成している二つの要素群を示す。図１７（ａ）に第一の印刷要素群（８−３）を示し、図１７（ｂ）に第二の印刷要素群（９−３）を示す。図１７（ａ）に示す第一の印刷要素群（８−３）は、アルファベットの「ＯＫ」の文字を示す構成であり、図１７（ｂ）に示す第二の印刷要素群（９−３）は、背景要素群（４−３）の中から第一の印刷要素群（８−３）の「ＯＫ」の文字を抜いた構成となっている。
【００７９】
図１８に、第一のインキと第二のインキで形成されて成る、それぞれの画像を示す。図１８（ａ）は、第二のインキで形成する画像であり、情報要素群（５−３）と第二の印刷要素群（９−３）が組み合わさった構成となっている。図１８（ａ）に示す画像を表２に示す配合で作製した第二のインキを用いてオフセット印刷で基材（２−３）上に印刷した。図１８（ｂ）は、第一のインキで形成する画像であり、第一の印刷要素群（８−３）のみで構成されている。図１８（ｂ）に示す画像を、ＤＩＣ製オフセットインキＯＰニス「ハイグロス」を用いてオフセット印刷で基材（２−３）上に印刷した。
【００８０】
第一のインキと第二のインキは、基材に同じ面積率で印刷した場合には、ほぼ等しい分光反射率を有し、且つ、第一のインキは第二のインキよりも分光透過率が大きい特性を有する。よって、第一のインキと第二のインキは、基材に同じ面積率で印刷した場合には反射光下での観察において等色に観察され、透過光下での観察では第一のインキで印刷した画像が第二のインキで印刷した画像よりも明るく見える。実施例３の場合、第一の印刷要素群における透過スペクトルの積分値は、第二の印刷要素群及び情報要素群における透過スペクトルの積分値の１４０％を有している。
【００８１】
本発明の実施例３における効果について、図１９を用いて説明する。本発明の潜像印刷物（１−３）を反射光下で観察した場合には、第一のインキで形成された第一の印刷要素群（８−３）と、第二のインキで形成された第二の印刷要素群（９−３）は、ほぼ等色に視認されることから、観察者には、図１９（ａ）に示す「ＣＯＰＹ」の文字から成る印刷画像（３−３）が、基材（２−３）である用紙の色よりもわずかに濃い濃度で視認できる。
【００８２】
また、本発明の潜像印刷物（１−３）を透過光下で観察した場合には、第二のインキで形成された第二の印刷要素群（９−３）及び情報要素群（５−３）は、基材（２−３）である肌色の用紙と等色となり、第一のインキで形成された第一の印刷要素群（８−３）は、基材（２−３）や第二のインキで形成された第一の印刷要素群（９−３）及び情報要素群（５−３）よりも明るく視認されることから、観察者には、図１９（ｂ）に示すように第一のインキによって形成される「ＯＫ」の文字から成る第一の印刷要素群（８−３）が、基材（２−３）よりも明るく視認できる。
【００８３】
以上のように、反射光下で観察した場合には、背景要素群（４−３）の中に情報要素群（５−３）を形成することで面積率の差が生じ、「ＣＯＰＹ」の文字から成る印刷画像（３−３）が基材（２−３）よりも濃く視認され、透過光下で観察した場合には、第一のインキによって形成される「ＯＫ」の文字から成る第一の印刷要素群（８−３）が基材（２−３）よりも明るく視認される。このように、反射光下と透過光下の観察において、全く相関のない異なる画像が確認できた。
【実施例４】
【００８４】
本発明の実施例４について、図２０から図２３を用いて説明をする。実施例４では、基材（２−４）として一般的な白い色の上質紙（日本製紙株式会社製）を用いた。
【００８５】
図２０（ａ）に、本発明における潜像印刷物（１−４）を示す。潜像印刷物（１−４）は、基材（２−４）の上に、基材と異なる色を有する印刷画像（３−４）が形成されており、印刷画像（３−４）は、図２０（ｂ）に示す背景要素群（４−４）と図２０（ｃ）に示す情報要素群（５−４）から構成されている。図２０（ｂ）に示す背景要素群（４−４）は、画線幅０．２５ｍｍの画線を成した要素（６−４）が、０．５ｍｍピッチで規則的に配置されることで一定の階調を有して視認され、図２０（ｃ）に示す情報要素群（５−４）は、背景要素群（４−４）を形成している要素（６−４）に接した画線幅０．２５ｍｍの画線を成した要素（７−４）が、０．５ｍｍピッチで配されて成り、情報要素群（４−４）によって面積率の差が生じ、アルファベットの「ＣＯＰＹ」の文字として視認される。前述したとおり、要素として接した画線の要素で形成した場合も、背景要素群（４−４）を形成する要素（６−４）と、情報要素群（５−４）を形成する要素（７−４）は、重複しないように交互に構成する。つまり、印刷画像（３−４）は、背景要素群（４−４）を形成している複数の要素（６−４）が作り出したフラットな階調の中に、情報要素群（５−４）を形成している要素（７−４）が配置されることで、その配置された部分に背景要素群（４−４）よりも高い面積率の部分が生じ、その面積率の差が生じた部分によって「ＣＯＰＹ」の文字が形成される。
【００８６】
図２１に、背景要素群（４−４）を構成している二つの要素群を示す。図２１（ａ）に第一の印刷要素群（８−４）を示し、図２１（ｂ）に第二の印刷要素群（９−４）を示す。図２１（ａ）に示す第一の印刷要素群（８−４）は、アルファベットの「ＯＫ」の文字を示す構成であり、図２１（ｂ）に示す第二の印刷要素群（９−４）は、背景要素群（４−４）の中から第一の印刷要素群（８−４）の「ＯＫ」の文字を抜いた構成となっている。
【００８７】
図２２に、第一のインキと第二のインキで形成されて成る、それぞれの画像を示す。図２２（ａ）は、第二のインキで形成する画像であり、情報要素群（５−４）と第二の印刷要素群（９−４）が組み合わさった構成となっている。図２２（ａ）に示す画像を表２に示す配合で作製した第二のインキを用いてオフセット印刷で基材（２−４）上に印刷した。図２２（ｂ）は、第一のインキで形成する画像であり、第一の印刷要素群（８−４）のみで構成されている。図２２（ｂ）に示す画像を、ＤＩＣ製オフセットインキＯＰニス「ハイグロス」を用いてオフセット印刷で基材（２−４）上に印刷した。
【００８８】
第一のインキと第二のインキは、基材に同じ面積率で印刷した場合には、ほぼ等しい分光反射率を有し、且つ、第一のインキは第二のインキよりも分光透過率が大きい特性を有する。よって、第一のインキと第二のインキは、基材に同じ面積率で印刷した場合には反射光下での観察において等色に観察され、透過光下での観察では第一のインキで印刷した画像が第二のインキで印刷した画像よりも明るく見える。実施例４の場合、第一の印刷要素群における透過スペクトルの積分値は、第二の印刷要素群及び情報要素群における透過スペクトルの積分値の１４０％を有している。
【００８９】
本発明の実施例４における効果について、図２３を用いて説明する。本発明の潜像印刷物（１−４）を反射光下で観察した場合には、第一のインキで形成された第一の印刷要素群（８−４）と、第二のインキで形成された第二の印刷要素群（９−４）は、ほぼ等色に視認されることから、観察者には、図２３（ａ）に示す「ＣＯＰＹ」の文字から成る印刷画像（３−４）が、基材（２−４）である用紙の色よりもわずかに濃い濃度で視認できる。
【００９０】
また、本発明の潜像印刷物（１−４）を透過光下で観察した場合には、第二のインキで形成された第二の印刷要素群（９−４）及び情報要素群（５−４）は、基材（２−４）である肌色の用紙と等色となり、第一のインキで形成された第一の印刷要素群（８−４）は、基材（２−４）や第二のインキで形成された第一の印刷要素群（９−４）及び情報要素群（５−４）よりも明るく視認されることから、観察者には、図２３（ｂ）に示すように第一のインキによって形成される「ＯＫ」の文字から成る第一の印刷要素群（８−４）が、基材（２−４）よりも明るく視認できる。
【００９１】
以上のように、反射光下で観察した場合には、背景要素群（４−４）の中に情報要素群（５−４）を形成することで面積率の差が生じ、「ＣＯＰＹ」の文字から成る印刷画像（３−４）が基材（２−４）よりも濃く視認され、透過光下で観察した場合には、第一のインキによって形成される「ＯＫ」の文字から成る第一の印刷要素群（８−４）が基材（２−４）よりも明るく視認される。このように、反射光下と透過光下の観察において全く相関のない異なる画像が確認できた。
【実施例５】
【００９２】
本発明の実施例５について、図２４から図２７を用いて説明をする。実施例５では、基材（２−５）として一般的な白い色の上質紙（日本製紙株式会社製）を用いた。
【００９３】
図２４（ａ）に、本発明における潜像印刷物（１−５）を示す。潜像印刷物（１−５）は、基材（２−５）の上に、基材と異なる色を有する印刷画像（３−５）が形成されており、印刷画像（３−５）は、図２４（ｂ）に示す背景要素群（４−５）と図２４（ｃ）に示す情報要素群（５−５）から構成されている。図２４（ｂ）に示す背景要素群（４−５）は、直径０．２５ｍｍの網点を成した要素（６−５）が、０．５ｍｍピッチで規則的に配置されることで一定の階調を有して視認され、図２４（ｃ）に示す情報要素群（５−５）は、背景要素群（４−５）を形成している要素（６−５）より微細で目視困難な網点によって階調を表現した要素（７−５）によって形成されて成り、情報要素群（４−５）によって面積率の差が生じ、「蝶」の画像として視認される。前述したとおり、要素として階調のある要素で形成した場合も、背景要素群（４−５）を形成する要素（６−５）と、情報要素群（５−５）を形成する要素（７−５）は、重複しないように構成する。つまり、印刷画像（３−５）は、背景要素群（４−５）を形成している複数の要素（６−５）が作り出したフラットな階調の中に、情報要素群（５−５）を形成している要素（７−５）が配置されることで、その配置された部分に背景要素群（４−５）よりも高い面積率の部分が生じ、その面積率の差が生じた部分によって「蝶」の画像が形成される。
【００９４】
図２５に、背景要素群（４−５）を構成している二つの要素群を示す。図２５（ａ）に第一の印刷要素群（８−５）を示し、図２５（ｂ）に第二の印刷要素群（９−５）を示す。図２５（ａ）に示す第一の印刷要素群（８−５）は、アルファベットの「ＯＫ」の文字を示す構成であり、図２５（ｂ）に示す第二の印刷要素群（９−５）は、背景要素群（４−５）の中から第一の印刷要素群（８−５）の「ＯＫ」の文字を抜いた構成となっている。
【００９５】
図２６に、第一のインキと第二のインキで形成されて成る、それぞれの画像を示す。図２６（ａ）は、第二のインキで形成する画像であり、情報要素群（５−５）と第二の印刷要素群（９−５）が組み合わさった構成となっている。図２６（ａ）に示す画像を表２に示す配合で作製した第二のインキを用いてオフセット印刷で基材（２−５）上に印刷した。図２６（ｂ）は、第一のインキで形成する画像であり、第一の印刷要素群（８−５）のみで構成されている。図２６（ｂ）に示す画像を、ＤＩＣ製オフセットインキＯＰニス「ハイグロス」を用いてオフセット印刷で基材（２−５）上に印刷した。
【００９６】
第一のインキと第二のインキは、基材に同じ面積率で印刷した場合には、ほぼ等しい分光反射率を有し、且つ、第一のインキは第二のインキよりも分光透過率が大きい特性を有する。よって、第一のインキと第二のインキは、基材に同じ面積率で印刷した場合には反射光下での観察において等色に観察され、透過光下での観察では第一のインキで印刷した画像が第二のインキで印刷した画像よりも明るく見える。実施例５の場合、第一の印刷要素群における透過スペクトルの積分値は、第二の印刷要素群及び情報要素群における透過スペクトルの積分値の１４０％を有している。
【００９７】
本発明の実施例５における効果について、図２７を用いて説明する。本発明の潜像印刷物（１−５）を反射光下で観察した場合には、第一のインキで形成された第一の印刷要素群（８−５）と、第二のインキで形成された第二の印刷要素群（９−５）は、ほぼ等色に視認されることから、観察者には、図２７（ａ）に示す「蝶」の画像から成る印刷画像（３−５）が、基材（２−５）である用紙の色よりもわずかに濃い濃度で視認できる。
【００９８】
また、本発明の潜像印刷物（１−５）を透過光下で観察した場合には、第二のインキで形成された第二の印刷要素群（９−５）及び情報要素群（５−５）は、基材（２−５）である肌色の用紙と等色となり、第一のインキで形成された第一の印刷要素群（８−５）は、基材（２−５）や第二のインキで形成された第一の印刷要素群（９−５）及び情報要素群（５−５）よりも明るく視認されることから、観察者には、図２７（ｂ）に示すように第一のインキによって形成される「ＯＫ」の文字から成る第一の印刷要素群（８−５）が、基材（２−５）よりも明るく視認できる。
【００９９】
以上のように、反射光下で観察した場合には、背景要素群（４−５）の中に情報要素群（５−５）を形成することで面積率の差が生じ、「蝶」の画像から成る印刷画像（３−５）が基材（３−５）よりも濃く視認され、透過光下で観察した場合には、第一のインキによって形成される「ＯＫ」の文字から成る第一の印刷要素群（８−５）が基材（２−５）よりも明るく視認される。このように、反射光下と透過光下の観察において、全く相関のない異なる画像が確認できた。
【符号の説明】
【０１００】
１、１−１、１−２、１−３、１−４、１−５ 潜像印刷物
２、２−１、２−２、２−３、２−４、２−５ 基材
３、３−１、３−２、３−３、３−４、３−５ 印刷画像
４、４−１、４−２、４−３、４−４、５−５ 背景要素群
５、５−１、５−２、５−３、５−４、５−５ 情報要素群
６、６−１、６−２、６−３、６−４、６−５ 背景要素群を形成する要素
７、７−１、７−２、７−３、７−４、７−５ 情報要素群を形成する要素
８、８−１、８−２、８−３、８−４、８−５ 第一の印刷要素群
９、９−１、９−２、９−３、９−４、９−５ 第二の印刷要素群
１０Ｒ 第一の印刷サンプルの分光反射率曲線
１１Ｒ 第二の印刷サンプルの分光反射率曲線
１２Ｒ 基材の分光反射率曲線
１０Ｔ 第一の印刷サンプルの分光透過率曲線
１１Ｔ 第二の印刷サンプルの分光透過率曲線
１２Ｔ 基材の分光透過率曲線
【技術分野】
【０００１】
本発明は、偽造防止効果を必要とするセキュリティ印刷物である銀行券、パスポート、有価証券、身分証明書、カード、通行券等の貴重印刷物の分野において、反射光下で観察した場合と、透過光下で観察した場合で全く相関のない異なる画像に変化する潜像印刷物に関わるものである。
【背景技術】
【０００２】
近年のスキャナ、プリンタ、カラーコピー機等のデジタル機器の進展により、貴重印刷物の精巧な複製物を容易に作製することが可能となっている。そのような複製や偽造を防止する偽造防止技術の一つとして、メタメリックペアインキを用いる技術がある。
【０００３】
メタメリックペアインキを用いた偽造防止技術は、照明の光源や種類及び特定波長の光を透過するフィルタの介在により、インキが同色に見えたり、異なった色に見えたりする特性を利用するものである。偽造防止印刷の分野において、このようにインキのメタメリズムによる光学特性を利用する方法は従来から行われている。
【０００４】
例えば、太陽光、蛍光灯又は白熱電球等による通常光下においては同色に見えるが、所定の分光エネルギー分布を有する光源の下で見るか、所定のフィルタを通して見るか、あるいは所定のフィルタを通過させた光の下で見ると、一方が異なった色相に見えるメタメリックな性質を有する二種類の色料によってパターンを互いに対比観察できるように基材上に形成することを特徴とした画像形成体が開示されている（例えば、特許文献１参照）。
【０００５】
また、本出願人は、メタメリックペアインキと複数の微細な網点や画素構造の組み合わせによる特殊な網点構成を組み合わせて用いることによって、可視光域の第一の波長で観察した場合と、可視光域の第二の波長で観察した場合とでは、全く相関のない異なる画像が視認されることを特徴とした真偽判別可能な印刷物を過去に出願している（例えば、特許文献２及び特許文献３参照）。
【０００６】
一方、偽造防止技術の代表的な技術の一つとして、用紙の粗密や薄厚によって模様を形成して透過光下で模様を視認させる、いわゆる透かしが存在する。しかし、この技術は用紙の製造段階で形成する必要があることから用紙メーカでなければ製造不可能であり、加えて用紙メーカが製造した場合でも製造コストが高くなるという問題があることから、これを擬似的に再現する方法として、印刷工程で特殊なインキ（例えば、特許文献４参照）を用いて、この透かしに相当する透過画像を形成する偽造防止技術が存在する（例えば、特許文献５参照）。この技術もデジタル機器を用いたとしても複写不可能であるという特徴を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００７】
【特許文献１】特公昭６０−５８７１１号公報
【特許文献２】特許第４２７３５０７号公報
【特許文献３】特開２００８−４９５７０号公報
【特許文献４】特開２０００−２９０５７１号公報
【特許文献５】特開平６−２２８９００号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００８】
しかしながら、特許文献１、特許文献２及び特許文献３に記載の技術に関しては、メタメリックペアインキで形成した偽造防止用印刷物の真偽を判別するためには、所定の分光エネルギー分布を有する光源の下で見るか、所定のフィルタを通して見るか、あるいは所定のフィルタを通過させた光の下で見る必要があり、専用の光源か、フィルタを備える必要があった。これは、透かしのように印刷物を手にした万人が簡便に真偽判別を行えるものではなく、判別できる者が限定されるという問題があった。
【０００９】
また、特定のインキを用いて透過光下で透かしのような透過画像を認証する透かし印刷を用いた偽造防止技術に関しては、浸透型インキ自体が多くのメーカから市販されており、一般人であっても容易に入手可能であって、偽造者にとっても製造が容易であるという問題があった。また、半透明あるいは透明なインキで形成しても、インキが浸透した領域は油染みのような濃い色に変色して観察されるため、用紙の粗密や薄厚によって模様を形成する透かしと比較して、透過画像が反射光下でも容易に視認されてしまうという問題があった。反射画像として視認しづらい程度にインキ量を抑えると、透過画像は不鮮明となり、透過画像が視認しやすい程度にインキ量を増やすと、反射画像として強く現れてしまう傾向にある。
【００１０】
本発明は、前述した課題の解決を目的とするものであり、基材に印刷した場合に反射光下では等色に観察されるが、透過率が異なる二つのインキを組み合わせてペアインキとして用い、且つ、特殊で複雑な網点構成によって画像を形成する印刷物であって、メタメリックペアインキで形成した偽造防止印刷物のように、特殊な光源やフィルタを必要とせず、透かし印刷のように市販のインキが入手できただけでは形成が不可能であり、反射光下で観察できる画像と透過光下で観察できる画像が全く相関のない異なる画像であることを特徴とする真偽判別と偽造防止効果に優れた潜像印刷物に関わる。
【課題を解決するための手段】
【００１１】
本発明の潜像印刷物は、基材上の少なくとも一部に基材と異なる色の印刷画像を備える潜像印刷物において、印刷画像は、要素を複数配置して成る一定の面積率で形成された背景要素群と、背景要素群を形成している要素と重複しないように、要素を複数配置して成る情報要素群とを有し、背景要素群は、インキの違いによって形成されて成る第一の印刷要素群と第二の印刷要素群に区分けされ、第一の印刷要素群及び情報要素群は第一のインキで形成されて成り、第二の印刷要素群は第二のインキで形成されて成り、第一の印刷要素群の分光反射率は、第二の印刷要素群の分光反射率と等しい分光反射率を有し、且つ、第一の印刷要素群の分光反射率、第二の印刷要素群の分光反射率及び情報要素群の分光反射率は、基材の分光反射率よりも低い分光反射率を有し、第一の印刷要素群の分光透過率は、第二の印刷要素群の分光透過率及び情報要素群の分光透過率より高い分光透過率を有し、且つ、第二の印刷要素群の分光透過率及び情報要素群の分光透過率は、基材の分光透過率と等しい分光透過率を有し、透過光下で観察した場合は、第二の印刷要素群が視認され、反射光下で観察した場合は、印刷画像が視認されることを特徴とする。
【００１２】
本発明の潜像印刷物は、背景要素群を形成する要素が、画素及び／又は画線であることを特徴とする。
【００１３】
本発明の潜像印刷物は、情報要素群を形成する要素が、画素及び／又は画線であることを特徴とする。
【００１４】
本発明の潜像印刷物は、４００ｎｍから７００ｎｍの波長域において、第一の印刷要素群における透過スペクトルの積分値が、第二の印刷要素群及び情報要素群における透過スペクトルの積分値の１２０％以上を有する。
【００１５】
本発明の潜像印刷物は、第一のインキ及び／又は第二のインキが、機能性材料を混合して成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【００１６】
本発明の潜像印刷物においては、印刷物を反射光下で観察した場合と、透過光下で観察した場合とで、異なる画像が観察されることを確認することで真偽判別が可能であり、特殊な光源やフィルタを必要とせず、特別な道具を用いる必要がない。
【００１７】
本発明の潜像印刷物は、市販されている浸透型インキを単に印刷するだけでは形成不能であり、これを形成するにあたっては基材に印刷した場合に浸透型インキと反射光下では等色であって、透過率が異なる光学特性を有するもう一方のインキを作製する必要があり、そのためにはインキ製造のための技能と設備が必要となることから、容易に偽造することは不可能である。
【００１８】
本発明の潜像印刷物においては、特殊な網点構成を用いることによって反射光下で観察される画像と、透過光下で観察される画像とを、全く相関のない画像とすることが可能であるから、デザイン上の自由度が高い。
【００１９】
本発明の潜像印刷物においては、そもそも透過画像は反射画像として可視化させることを特徴の一つとしており、従来の透かし印刷の技術のように用紙に転移させる浸透型インキの量に制限を設ける必要がないため、極めて鮮明な透過画像が形成できる。
【００２０】
以上の手法で形成した潜像印刷物は、生産性の高い印刷方式であるオフセット印刷で製造可能であることからコストパフォーマンスに優れ、また最新のデジタル機器を用いたとしても透過画像の再現は不可能であることから、偽造防止効果に優れる。
【図面の簡単な説明】
【００２１】
【図１】（ａ）は本発明における潜像印刷物を示し、（ｂ）は背景要素群を示し、（ｃ）は情報要素群を示す。
【図２】（ａ）は本発明における第一の印刷要素群を示し、（ｂ）は本発明における第二の印刷要素群を示す。
【図３】（ａ）は本発明において第二のインキで形成される第二の印刷要素群と情報要素群を示し、（ｂ）は本発明において第一のインキで形成される第一の印刷要素群を示す。
【図４】第一のインキ、第二のインキ及び基材の分光反射率を示す。
【図５】第一のインキ、第二のインキ及び基材の分光透過率を示す。
【図６】（ａ）は本発明における潜像印刷物が反射光下で視認される画像を示し、（ｂ）は本発明における潜像印刷物が透過光下で視認される画像を示す。
【図７】透過スペクトルの積分値を示す。
【図８】（ａ）は本発明の一実施例における潜像印刷物を示し、（ｂ）は背景要素群を示し、（ｃ）は情報要素群を示す。
【図９】（ａ）は本発明の一実施例における第一の印刷要素群を示し、（ｂ）は本発明の一実施例における第二の印刷要素群を示す。
【図１０】（ａ）は本発明の一実施例において第二のインキで形成される第二の印刷要素群と情報要素群を示し、（ｂ）は本発明の一実施例において第一のインキで形成される第一の印刷要素群を示す。
【図１１】（ａ）は本発明の一実施例における潜像印刷物が反射光下で視認される画像を示し、（ｂ）は本発明の一実施例における潜像印刷物が透過光下で視認される画像を示す。
【図１２】（ａ）は本発明の一実施例における潜像印刷物を示し、（ｂ）は背景要素群を示し、（ｃ）は情報要素群を示す。
【図１３】（ａ）は本発明の一実施例における第一の印刷要素群を示し、（ｂ）は本発明の一実施例における第二の印刷要素群を示す。
【図１４】（ａ）は本発明の一実施例において第二のインキで形成される第二の印刷要素群と情報要素群を示し、（ｂ）は本発明の一実施例において第一のインキで形成される第一の印刷要素群を示す。
【図１５】（ａ）は本発明の一実施例における潜像印刷物が反射光下で視認される画像を示し、（ｂ）は本発明の一実施例における潜像印刷物が透過光下で視認される画像を示す。
【図１６】（ａ）は本発明の一実施例における潜像印刷物を示し、（ｂ）は背景要素群を示し、（ｃ）は情報要素群を示す。
【図１７】（ａ）は本発明の一実施例における第一の印刷要素群を示し、（ｂ）は本発明の一実施例における第二の印刷要素群を示す。
【図１８】（ａ）は本発明の一実施例において第二のインキで形成される第二の印刷要素群と情報要素群を示し、（ｂ）は本発明の一実施例において第一のインキで形成される第一の印刷要素群を示す。
【図１９】（ａ）は本発明の一実施例における潜像印刷物が反射光下で視認される画像を示し、（ｂ）は本発明の一実施例における潜像印刷物が透過光下で視認される画像を示す。
【図２０】（ａ）は本発明の一実施例における潜像印刷物を示し、（ｂ）は背景要素群を示し、（ｃ）は情報要素群を示す。
【図２１】（ａ）は本発明の一実施例における第一の印刷要素群を示し、（ｂ）は本発明の一実施例における第二の印刷要素群を示す。
【図２２】（ａ）は本発明の一実施例において第二のインキで形成される第二の印刷要素群と情報要素群を示し、（ｂ）は本発明の一実施例において第一のインキで形成される第一の印刷要素群を示す。
【図２３】（ａ）は本発明の一実施例における潜像印刷物が反射光下で視認される画像を示し、（ｂ）は本発明の一実施例における潜像印刷物が透過光下で視認される画像を示す。
【図２４】（ａ）は本発明の一実施例における潜像印刷物を示し、（ｂ）は背景要素群を示し、（ｃ）は情報要素群を示す。
【図２５】（ａ）は本発明の一実施例における第一の印刷要素群を示し、（ｂ）は本発明の一実施例における第二の印刷要素群を示す。
【図２６】（ａ）は本発明の一実施例において第二のインキで形成される第二の印刷要素群と情報要素群を示し、（ｂ）は本発明の一実施例において第一のインキで形成される第一の印刷要素群を示す。
【図２７】（ａ）は本発明の一実施例における潜像印刷物が反射光下で視認される画像を示し、（ｂ）は本発明の一実施例における潜像印刷物が透過光下で視認される画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【００２２】
本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる発明を実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載される技術的思想の範囲内であれば、その他のいろいろな実施の形態が含まれる。
【００２３】
次に、本発明について図面を用いて説明する。図１（ａ）は、本発明における潜像印刷物を示し、（ｂ）は、背景要素群を示し、（ｃ）は、情報要素群を示す。図２（ａ）は、本発明における第一の印刷要素群を示し、（ｂ）は、本発明における第二の印刷要素群を示す。図３（ａ）は、本発明において第二のインキで形成される第二の印刷要素群と情報要素群を示し、（ｂ）は、本発明において第一のインキで形成される第一の印刷要素群を示す。図４は、第一のインキ、第二のインキ及び基材の分光反射率を示す。図５は、第一のインキ、第二のインキ及び基材の分光透過率を示す。図６（ａ）は、本発明における潜像印刷物が反射光下で視認される画像を示し、（ｂ）は、本発明における潜像印刷物が透過光下で視認される画像を示す。図７は、透過スペクトルの積分値を示す。図８（ａ）は、本発明の一実施例における潜像印刷物を示し、（ｂ）は、背景要素群を示し、（ｃ）は、情報要素群を示す。図９（ａ）は、本発明の一実施例における第一の印刷要素群を示し、（ｂ）は、本発明の一実施例における第二の印刷要素群を示す。図１０（ａ）は、本発明の一実施例において第二のインキで形成される第二の印刷要素群と情報要素群を示し、（ｂ）は、本発明の一実施例において第一のインキで形成される第一の印刷要素群を示す。図１１（ａ）は、本発明の一実施例における潜像印刷物が反射光下で視認される画像を示し、（ｂ）は、本発明の一実施例における潜像印刷物が透過光下で視認される画像を示す。図１２（ａ）は、本発明の一実施例における潜像印刷物を示し、（ｂ）は、背景要素群を示し、（ｃ）は、情報要素群を示す。図１３（ａ）は、本発明の一実施例における第一の印刷要素群を示し、（ｂ）は、本発明の一実施例における第二の印刷要素群を示す。図１４（ａ）は、本発明の一実施例において第二のインキで形成される第二の印刷要素群と情報要素群を示し、（ｂ）は、本発明の一実施例において第一のインキで形成される第一の印刷要素群を示す。図１５（ａ）は、本発明の一実施例における潜像印刷物が反射光下で視認される画像を示し、（ｂ）は、本発明の一実施例における潜像印刷物が透過光下で視認される画像を示す。図１６（ａ）は、本発明の一実施例における潜像印刷物を示し、（ｂ）は、背景要素群を示し、（ｃ）は、情報要素群を示す。図１７（ａ）は、本発明の一実施例における第一の印刷要素群を示し、（ｂ）は、本発明の一実施例における第二の印刷要素群を示す。図１８（ａ）は、本発明の一実施例において第二のインキで形成される第二の印刷要素群と情報要素群を示し、（ｂ）は、本発明の一実施例において第一のインキで形成される第一の印刷要素群を示す。図１９（ａ）は、本発明の一実施例における潜像印刷物が反射光下で視認される画像を示し、（ｂ）は、本発明の一実施例における潜像印刷物が透過光下で視認される画像を示す。図２０（ａ）は、本発明の一実施例における潜像印刷物を示し、（ｂ）は、背景要素群を示し、（ｃ）は、情報要素群を示す。図２１（ａ）は、本発明の一実施例における第一の印刷要素群を示し、（ｂ）は、本発明の一実施例における第二の印刷要素群を示す。図２２（ａ）は、本発明の一実施例において第二のインキで形成される第二の印刷要素群と情報要素群を示し、（ｂ）は、本発明の一実施例において第一のインキで形成される第一の印刷要素群を示す。図２３（ａ）は、本発明の一実施例における潜像印刷物が反射光下で視認される画像を示し、（ｂ）は、本発明の一実施例における潜像印刷物が透過光下で視認される画像を示す。図２４（ａ）は、本発明の一実施例における潜像印刷物を示し、（ｂ）は、背景要素群を示し、（ｃ）は、情報要素群を示す。図２５（ａ）は本発明の一実施例における第一の印刷要素群を示し、（ｂ）は本発明の一実施例における第二の印刷要素群を示す。図２６（ａ）は、本発明の一実施例において第二のインキで形成される第二の印刷要素群と情報要素群を示し、（ｂ）は、本発明の一実施例において第一のインキで形成される第一の印刷要素群を示す。図２７（ａ）は、本発明の一実施例における潜像印刷物が反射光下で視認される画像を示し、（ｂ）は、本発明の一実施例における潜像印刷物が透過光下で視認される画像を示す。
【００２４】
図１（ａ）に、本発明における潜像印刷物（１）を示す。潜像印刷物（１）は、基材（２）の上に、基材と異なる色を有する印刷画像（３）が形成されており、印刷画像（３）は、図１（ｂ）に示す背景要素群（４）と図１（ｃ）に示す情報要素群（５）から構成されている。図１（ｂ）に示す背景要素群（４）は、一定の形態を成す要素（６）が規則的に配置されることで一定の階調（濃度）を有して視認される。図１（ｃ）に示す情報要素群（５）は、背景要素群（４）を形成している要素（６）と異なる形態を成す要素（７）が、背景要素群（４）を形成している要素（６）と重複しないように配置されて成り、情報要素群（５）によって背景要素群（４）に階調差（濃度差）が生じ、アルファベットの「Ａ」の文字として視認される。つまり、印刷画像（３）は、背景要素群（４）を形成している複数の要素（６）が作り出しているフラットな階調の中に、情報要素群（５）を形成している要素（７）が配置されることで、その配置された部分に背景要素群（４）よりも高い面積率の部分が生じ、その面積率の差が生じた部分によって「Ａ」の文字が形成されることとなる。
【００２５】
本発明でいう「背景要素（４）を形成する要素（６）」とは、画素又は画線のことであり、また、本発明でいう「情報要素（５）を形成する要素（７）」とは、画素又は画線のことである。ここでいう「画素」とは、印刷画像（３）を形成する一要素として用い、濃淡の変化を面積率（点の大小）で表現する網点形状のことである。また、「画線」とは、点線や破線の分断線、直線、曲線及び波線のことであり、如何なる画線形状で構成しても本発明の技術思想に含まれる。
【００２６】
前述した「情報要素群（５）は、背景要素群（４）を形成している要素（６）と異なる形態を成す要素（７）が、背景要素群（４）を形成している要素（６）と重複しないように配置される」における「異なる形態」とは、大きさ、形状、位相のいずれかが異なっていれば良い。
【００２７】
本発明において、背景要素群（４）を形成する要素（６）は、画素及び／又は画線から成り、情報要素群（５）を形成する要素（７）は、画素及び／又は画線から成る。ただし、情報要素群（５）の場合、要素（７）の一つである四角い形状の画素を隙間なく隣接させて配置することで、ベタ画像の形態としても良く、更に、画素の大小又は粗密によって階調画像の形態としても良い。このように、情報要素群（５）の要素（７）においては、背景要素群（４）の要素（６）と重複しないように、印刷画像（３）中の一部の面積率を異ならせる形態であれば如何なる形態であっても良い。また、背景要素群（４）を形成する要素（６）と、情報要素群（５）を形成する要素（７）の組み合わせについては、すべての組み合わせにおいて本発明の潜像印刷物が作製可能である。なお、本発明を実施するための形態においては、背景要素群（４）を形成している要素（６）及び情報要素群（５）を形成している要素（７）が網点の場合で説明する。
【００２８】
図１に示す潜像印刷物（１）の場合、図１（ｂ）に示す背景要素群（４）は、一定の大きさの網点を成す要素（６）が規則的に複数配置されることで一定の階調を有して視認され、図１（ｃ）に示す情報要素群（５）は、背景要素群（４）を形成している要素（６）よりも大きい直径の中抜きの網点から成る要素（７）が、背景要素群（４）を形成している要素（６）と重複しないように規則的に複数配置されて成る。
【００２９】
このように、印刷画像（３）は、背景要素群（４）を形成している複数の要素（６）が作り出しているフラットな階調の中に、情報要素群（５）を形成している要素（７）が配置されることで、その配置された部分に背景要素群（４）よりも高い階調の部分が生じ、その階調差が生じた部分によって「Ａ」の文字が形成される。
【００３０】
なお、本実施の形態においては、背景要素群（４）が一定の大きさの網点を成す複数の要素（６）から形成され、情報要素群（５）が背景要素群（４）を形成している要素（６）よりも大きい直径の中抜きの網点から成る複数の要素（７）から形成される場合で説明するが、この形態に限定される必要はなく、本発明は、フラットな階調を有する背景要素群（４）に対して階調差を生じるように、情報要素群（５）を形成している複数の要素（７）によって面積率を異ならせる形態であれば良い。
【００３１】
例えば、背景要素群（４）を形成する網点と網点の間に、情報要素群（５）を形成する網点の位相をずらして配置する形態、背景要素群（４）を形成する網点以外の領域の一部に、情報要素群（５）を形成するベタ画像を配置する形態、背景要素群（４）を形成する画線と画線間に、情報要素群（５）を形成する画線を隣接するように配置する形態、背景要素群（４）を形成する網点以外の領域の一部に、情報要素群（５）を形成する階調画像を配置する形態などが挙げられる。これらの形態については、後述する実施例１から実施例５の中で具体的に説明する。
【００３２】
背景要素群（４）を形成している要素（６）と、情報要素群（５）を形成している要素（７）は、重複しないように形成する必要がある。これは、背景要素群（４）を形成している要素（６）と、情報要素群（５）を形成している要素（７）を重複して形成すると、重複した部分だけ階調が上がってしまい、本発明の潜像印刷物（１）を反射光下で観察した際、本来、視認できないはずの第一の印刷要素群（８）が構成する「ＯＫ」の文字が視認されてしまう問題が生じるためである。
【００３３】
図２に、背景要素群（４）を構成している二つの要素群を示す。図２（ａ）は、第一の印刷要素群（８）を示し、図２（ｂ）は、第二の印刷要素群（９）を示す。図２（ａ）に示す第一の印刷要素群（８）は、アルファベットの「ＯＫ」の文字を成す構成であり、図２（ｂ）に示す第二の印刷要素群（９）は、背景要素群（４）の中から第一の印刷要素群（８）の「ＯＫ」の文字を抜いた構成となっている。以上のように、第一の印刷要素群（８）と第二の印刷要素群（９）は、ペア画像となっており、第一の印刷要素群（８）が構成する文字や記号等の有意味画像は、第二の印刷要素群（９）によってカモフラージュされ、一定の階調を有する背景要素群（４）の中に隠される構成となっている。
【００３４】
第一の印刷要素群（８）が、第二の印刷要素群（９）によってカモフラージュされ、一定の階調を有する背景要素群（４）の中に隠される構成となるため、第一の印刷要素群（８）の面積率と第二の印刷要素群（９）の面積率は同じである。
【００３５】
図３に、本発明において第一のインキと第二のインキで形成されて成る、それぞれの画像を示す。図３（ａ）は、第二のインキで形成する画像であり、情報要素群（５）と第二の印刷要素群（９）が組み合わさった構成となっている。図３（ｂ）は、第一のインキで形成する画像であり、第一の印刷要素群（８）のみで構成されている。
【００３６】
以上のように、第一のインキで形成された第一の印刷要素群（８）と第二のインキで形成された第二の印刷要素群（９）が組み合わさって背景要素群（４）を形成し、背景要素群（４）に第二のインキで形成された情報要素群（５）が加わることによって、本発明における潜像印刷物に形成されて成る印刷画像（３）が構成されている。
【００３７】
次に、本発明で用いる第一のインキと第二のインキについて説明する。第一のインキを基材（２）に印刷した場合と、第二のインキを基材（２）に印刷をし、それぞれの印刷物を同じ面積率で構成された場合、反射光下で観察すると等色に観察される特性を有し、且つ、光の透過率が異なることを特徴とする。
【００３８】
次に、基材上（２）に第一のインキで形成した印刷サンプルと、第二のインキで形成した印刷サンプルの分光反射率及び分光透過率について説明する。分光反射率及び分光透過率を測定するためのサンプルは、基材（２）として肌色の上質紙を使用し、第一のインキ及び第二のインキを１００％のベタ印刷を行なったものとする。また、分光反射率及び分光透過率の測定には、ｆｏｓｔｅｒ＋ｆｒｅｅｍａｎ社製ＶＳＣ５０００を使用する。
【００３９】
これ以後、説明を明瞭にするために「基材（２）上に第一のインキで形成された印刷サンプル」は、「第一のサンプル」と記載し、また「基材（２）上に第二のインキで形成された印刷サンプル」は、「第二のサンプル」と記載する。
【００４０】
図４に、第一のサンプルの分光反射率（１０Ｒ）、第二のサンプルの分光反射率（１１Ｒ）及び基材（２）の分光反射率（１２Ｒ）を示す。図４のグラフから、第一のサンプルと第二のサンプルの分光反射率（１０Ｒ、１１Ｒ）は、ほぼ同じであることから、第一のサンプルと第二のサンプルは目視上、ほぼ等色に観察されることがわかる。また、第一のサンプルと第二のサンプルの分光反射率（１０Ｒ、１１Ｒ）と、基材（２）の分光反射率（１２Ｒ）と相似であるものの、基材（２）の分光反射率（１２Ｒ）よりも低いことから、第一のサンプルと第二のサンプルは、基材（２）の色が若干濃くなった色彩として観察者には認識される特徴を有することがわかる。
【００４１】
図５に、第一のサンプルの分光透過率（１０Ｔ）、第二のサンプルの分光透過率（１１Ｔ）及び基材（２）の分光透過率（１２Ｔ）を示す。図５のグラフから、第一のサンプルの分光透過率（１０Ｔ）は、第二のサンプル及び基材の分光透過率（１１Ｔ、１２Ｔ）を約１０％程度上回っており、更に第二のサンプルの分光透過率（１１Ｔ）は、基材（２）の分光透過率（１２Ｒ）とほぼ同一である。分光透過率が高いということは、透過光下で観察した際には明るく視認されることを意味する。よって、透過光下で観察した際には、第一のサンプルは第二のサンプルや基材よりも明るく視認されるとともに第二のサンプルは基材（２）と同じ分光透過率（１２Ｔ）となることで基材と区別がつかなくなり、目視上不可視となる特徴を有することがわかる。
【００４２】
以上の結果から、第一のインキで基材（２）上に形成された画像と、第二のインキで基材（２）上に形成された画像は、その面積率が等しければ反射光下では等色に観察され、透過光で観察した場合には、第一のインキで形成された画像が明るく視認されるとともに、第二のインキで形成された画像は、基材と等色になることで視認困難となることがわかる。
【００４３】
以上の結果を踏まえて、本発明の潜像印刷物（１）の効果について説明する。本発明の潜像印刷物（１）を反射光下で観察した場合には、第一のインキで形成された第一の印刷要素群（８）と、第二のインキで形成された第二の印刷要素群（９）は、面積率が同じであることから、等色に視認され、第一の印刷要素群（８）が示す「ＯＫ」の文字は第二の印刷要素群によって完全にカモフラージュされる。観察者には、第一の印刷要素群（８）及び第二の印刷要素群（９）が組み合わさって形成したフラットな階調を有した背景要素群（４）の中に、面積率の違いによって形成された「Ａ」の文字から成る情報要素群（５）が、背景要素群（４）より濃い色を有して観察される。すなわち、図６（ａ）に示す印刷画像（３）が基材（２）よりもわずかに濃い色で視認される。
【００４４】
また、本発明の潜像印刷物（１）を透過光下で観察した場合には、第一のインキで形成された第一の印刷要素群（８）は、第二のインキで形成された第二の印刷要素群（９）及び情報要素群（５）並びに用紙である基材（２）よりも明るく視認され、且つ、第二のインキで形成された第二の印刷要素群（９）及び情報要素群（５）は、基材（２）と等色となって視認困難となることから、観察者には、図６（ｂ）に示すように「ＯＫ」の文字から成る第一の印刷要素群（８）のみが、基材（２）よりも明るく視認される。
【００４５】
以上のように、本発明の潜像印刷物（１）を反射光下で観察した場合には、背景要素群（４）の中に異なる面積率で形成される「Ａ」の文字から成る印刷画像（３）が、基材（２）よりもわずかに濃い色で視認され、透過光下で観察した場合には、第一のインキによって形成される「ＯＫ」の文字から成る第一の印刷要素群（７）が、基材（２）よりも明るく視認される。このように、反射光下と透過光下の観察において、全く相関のない異なる画像が視認されるため、真偽判別性に優れる。
【００４６】
本発明を実施するための形態では、基材（２）として肌色の上質紙を用いたが、基材の色は肌色に限定されるわけではなく、白色の基材であっても、その他の色の基材を用いたとしても良く、透過率１００％の透明以外の基材であれば本発明の潜像印刷物を形成することは可能である。ただし、第二のインキは、第一のインキが基材に浸透した場合に反射光下で観察される色と、第二のインキが基材に浸透した場合に反射光下で観察される色と等色に調色する必要があることから、基材が変わればそれに応じて第二のインキを調色する必要がある。
【００４７】
まず、第一のインキと第二のインキの二つのペアインキについて説明する。このペアインキは、基材上に同じ面積率で印刷した場合、第一のインキの分光反射率と第二のインキの分光反射率がほぼ同一であり、且つ、第一のインキの分光反射率と第二のインキの分光反射率は、基材の分光反射率より低く、更に、第一のインキの分光透過率が、第二のインキより大きくなる特徴を有している必要がある。また、前述したように、透過光下で観察した際、第二の印刷要素群（９）及び情報要素群（５）が基材（２）と同化して消失したような印象を観察者に与えることは、本発明における潜像印刷物（１）の真偽判別の効果をより一層高める役割を果たすことから、第二のインキを一定の面積率で基材（２）に印刷した場合の分光透過率と、基材（２）の分光透過率は、同一となるように形成する。
【００４８】
第一のインキを基材（２）に一定の面積率で印刷した場合の分光反射率と、第二のインキを第一のインキと同じ面積率で基材（２）に印刷した場合の分光反射率を同一にし、且つ、基材の分光反射率よりも低くするのは、本発明の潜像印刷物（１）を反射光下で観察した際、第一の印刷要素群（８）及び第二の印刷要素群（９）とを等色にし、第一の印刷要素群（８）を隠蔽するためである。仮に、分光反射率が異なる場合、本発明の潜像印刷物（１）を反射光下で観察した際、第一の印刷要素群（８）及び第二の印刷要素群（９）とは、互いに異なる色で認識されるため、第一の印刷要素群（８）が構成する有意味情報である「ＯＫ」の文字が視認される問題が生じる。
【００４９】
また、第一のインキを一定の面積率で基材（２）に印刷した場合の分光透過率が、第一のインキと同じ面積率で第二のインキを基材（２）に印刷した場合の分光透過率より大きくなるようにし、第二のインキを一定の面積率で基材（２）に印刷した場合の分光透過率と、基材（２）の分光透過率をほぼ同一にするのは、本発明の潜像印刷物（１）を透過光下で観察した際、第二の印刷要素群（９）及び情報要素群（５）が基材（２）と等色となり、第一の印刷要素群（８）が基材（２）や第一のインキで形成された第二の印刷要素群（９）及び情報要素群（５）よりも明るく観察されるようにするためである。もし、第一の印刷要素群（８）及び第二の印刷要素群（９）と、情報要素群（５）の分光透過率が同一である場合、本発明の潜像印刷物（１）を透過光下で観察した際、第一の印刷要素群（８）も第二の印刷要素群（９）も情報要素群（５）もすべて観察され、反射光下で観察できる画像と何ら変化が生じなくなってしまう。また、透過光下で第二の印刷要素群（９）及び情報要素群（５）と基材（２）が等色でない場合も、本発明の潜像印刷物（１）を透過光下で観察した際、第二の印刷要素群（９）と情報要素群（５）も透過で視認されることから、第一の印刷要素群（８）が構成する「ＯＫ」の文字と情報要素群（５）が構成する画像である「Ａ」の文字が混ざり合い、不鮮明な画像となってしまう。
【００５０】
第一のインキを基材（２）に印刷した場合と、第二のインキを基材（２）に印刷した場合の分光透過率の差異については、目視上容易に真偽判別を行うことを目的とすると、可視光である４００ｎｍから７００ｎｍの波長域における第一のインキの透過スペクトルの積分値が、第二のインキの透過スペクトルの積分値の１２０％以上に達する必要がある。
透過スペクトルの積分値は、図７（ａ）の斜線部分で示す第二の印刷サンプルの分光透過率（１１Ｔ）の面積率に対し、図７（ｂ）の斜線部分で示す第一の印刷サンプルの分光透過率（１０Ｔ）の面積率の割合で表される。
【００５１】
これは、第二の印刷サンプルの透過スペクトルの積分値が、第一の印刷サンプルの透過スペクトルの積分値の１２０％より小さい場合、本発明の潜像印刷物（１）を透過光下で観察した際の第一の印刷要素群（８）の視認性が低下する。また、第一のインキの透過スペクトルの積分値の上限については、大きければ大きいほど本発明の潜像印刷物（１）を透過光下で観察した際の視認性が良くなるため好ましい。
【００５２】
第一のインキについては、浸透型のインキを用いれば良い。透明や半透明と称して販売されているインキであっても、適正な印刷膜厚で基材上に形成した場合には、印刷した部分は油染みのように成り、基材より濃い色で可視化されることから、本発明に必要な反射光下で可視画像を形成する特性を有している。第一のインキに望まれる特性としては、印刷時に基材に充分浸透して印刷領域の分光透過率が上がること、インキ自体は透明に近いか、あるいは半透明であること、経時による色の変化が小さいこと、滲みが少ないこと等がある。これらの特性を満たしていれば、浸透型インキとして販売されている以外のインキを用いても何ら問題ない。
【００５３】
また、第一のインキは、微量の着色顔料を加えて着色半透明化しても良い。この場合、デザイン上の自由度が向上するが、過剰に着色した場合には、いかに浸透性に優れたインキであっても分光透過率が低下することから注意が必要であり、その都度、着色顔料の適当な配合割合を見極める必要がある。この場合、第一のインキと 等色に仕上げるために第二のインキも同様に着色する必要がある。
【００５４】
また、第一のインキ及び第二のインキに、機能性材料を混合して特殊な認証機能を付与しても良い。例えば、いずれかのインキに発光顔料を混合して、ブラックライト照射時にいずれかの印刷要素が発光する特性を付与したり、赤外線吸収材料を混合して赤外線による認証機能を付与したりすることが可能である。その他にも、燐光顔料、蓄光顔料、フォトクロミック顔料、示温材料、サーモクロミック材料等が挙げられる。第一のインキに浸透型のインキを用いることは先に述べたが、浸透型のインキの中には、印刷することによって赤外吸収特性を発揮するインキがあり、そのような特性を持ったインキを第一のインキとして用いることにより、赤外線ビュアのような簡易的な判別具によって第一の印刷要素群を視認することも可能である。
【００５５】
本発明における潜像印刷物の印刷方式は、オフセット印刷、フレキソ印刷、凸版印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、凹版印刷等のあらゆる印刷方式で形成することが可能である。また、浸透性の高いインクを用いることが可能であればＩＪＰ等でも形成でき、この場合には一枚、一枚の出力物の情報を変える、いわゆる可変印刷を実施することができる。
【００５６】
また、本発明の潜像印刷物（１）を形成するための要素の構成については、実施の形態に記載の構成に制限されるものではない。要素の構成としては、第一の印刷要素群（８）及び第二の印刷要素群（９）とが組み合わさって一定の背景要素群（４）を構成し、且つ、背景要素群（４）と異なる面積率で情報要素群（５）が形成されることで、印刷画像が構成されていれば良い。
【００５７】
以下、前述の発明を実施するための最良の形態にしたがって、具体的に作製した潜像印刷物の実施例について詳細に説明するが、本発明は、この実施例に限定されるものではない。
【実施例１】
【００５８】
本発明の実施例１について、図８から図１１を用いて説明をする。実施例１では、基材（２−１）として肌色の上質紙（日本製紙株式会社製）を用いた。
【００５９】
図８（ａ）に、本発明における潜像印刷物（１−１）を示す。潜像印刷物（１−１）は、基材（２−１）の上に、基材と異なる色を有する印刷画像（３−１）が形成されており、印刷画像（３−１）は、図８（ｂ）に示す背景要素群（４−１）と図８（ｃ）に示す情報要素群（５−１）から構成されている。図８（ｂ）に示す背景要素群（４−１）は、直径１ｍｍの網点を成した要素（６−１）が２ｍｍピッチで規則的に配置されることで一定の階調を有して視認され、図８（ｃ）に示す情報要素群（５−１）は、背景要素群（４−１）を形成している要素（６−１）よりも大きな直径２ｍｍで画線幅０．２５ｍｍの中抜きの網点から成る要素（７−１）が、背景要素群（４−１）と重複しないように２ｍｍピッチで規則的に配置されて成り、情報要素群（４−１）によって面積率の差が生じ、アルファベットの「Ａ」の文字として視認される。つまり、印刷画像（３−１）は、背景要素群（４−１）を形成している複数の要素（６−１）が作り出しているフラットな階調の中に、情報要素群（５−１）を形成している要素（７−１）が配置されることで、その配置された部分に背景要素群（４−１）よりも高い面積率の部分が生じ、その面積率の差が生じた部分によって「Ａ」の文字が形成される。
【００６０】
図９に、背景要素群（４−１）を構成している二つの要素群を示す。図９（ａ）に第一の印刷要素群（８−１）を示し、図９（ｂ）に第二の印刷要素群（９−１）を示す。図９（ａ）に示す第一の印刷要素群（８−１）は、アルファベットの「ＯＫ」の文字を示す構成であり、図９（ｂ）に示す第二の印刷要素群（９−１）は、背景要素群（４−１）の中から第一の印刷要素群（８−１）の「ＯＫ」の文字を抜いた構成となっている。
【００６１】
図１０に、第一のインキと第二のインキで形成されて成る、それぞれの画像を示す。図１０（ａ）は、第二のインキで形成する画像であり、情報要素群（５−１）と第二の印刷要素群（９−１）が組み合わさった構成となっている。図１０（ａ）に示す画像を表１に示す配合で作製した第二のインキを用いてオフセット印刷で基材（２−１）上に印刷した。図１０（ｂ）は、第一のインキで形成する画像であり、第一の印刷要素群（８−１）のみで構成されている。図１０（ｂ）に示す画像を、帝国インキ製造株式会社製オフセットインキ「ユニマーク」を用いてオフセット印刷で基材（２−１）上に印刷した。
【００６２】
【表１】
【００６３】
第一のインキと第二のインキは、基材に同じ面積率で印刷した場合には、ほぼ等しい分光反射率を有し、且つ、第一のインキは第二のインキよりも分光透過率が大きい特性を有する。よって、第一のインキと第二のインキは、基材に同じ面積率で印刷した場合には反射光下での観察において等色に観察され、透過光下での観察では第一のインキで印刷した画像が第二のインキで印刷した画像よりも明るく見える。実施例１の場合、第一の印刷要素群における透過スペクトルの積分値は、第二の印刷要素群及び情報要素群における透過スペクトルの積分値の１５０％を有している。
【００６４】
本発明の実施例１における効果について、図１１を用いて説明する。本発明の潜像印刷物（１−１）を反射光下で観察した場合には、第一のインキで形成された第一の印刷要素群（８−１）と、第二のインキで形成された第二の印刷要素群（９−１）は、ほぼ等色に視認されることから、観察者には、図１１（ａ）に示す印刷画像（３−１）が、基材（２−１）である用紙の色よりもわずかに濃い濃度で視認できる。
【００６５】
また、本発明の潜像印刷物（１−１）を透過光下で観察した場合には、第二のインキで形成された第二の印刷要素群（９−１）及び情報要素群（５−１）は、基材（２−１）である肌色の用紙と等色となり、第一のインキで形成された第一の印刷要素群（８−１）は、基材（２−１）や第二のインキで形成された第一の印刷要素群（９−１）及び情報要素群（５−１）よりも明るく視認されることから、観察者には、図１１（ｂ）に示すように第一のインキによって形成される「ＯＫ」の文字から成る第一の印刷要素群（８−１）が、基材（２−１）よりも明るく視認できる。
【００６６】
以上のように、反射光下で観察した場合には、背景要素群（４−１）の中に情報要素群（５−１）を形成することで面積率の差が生じ、「Ａ」の文字から成る印刷画像（３−１）が基材（２−１）よりも濃く視認され、透過光下で観察した場合には、第一のインキによって形成される「ＯＫ」の文字から成る第一の印刷要素群（８−１）が基材（２−１）よりも明るく視認される。このように、反射光下と透過光下の観察において、全く相関のない異なる画像が確認できた。
【実施例２】
【００６７】
本発明の実施例２について、図１２から図１５を用いて説明をする。実施例２では、基材（２−２）として一般的な白い色の上質紙（日本製紙株式会社製）を用いた。
【００６８】
図１２（ａ）に、本発明における潜像印刷物（１−２）を示す。潜像印刷物（１−２）は、基材（２−２）の上に、基材と異なる色を有する印刷画像（３−２）が形成されており、印刷画像（３−２）は、図１２（ｂ）に示す背景要素群（４−２）と図１２（ｃ）に示す情報要素群（５−２）から構成されている。図１２（ｂ）に示す背景要素群（４−２）は、直径０．５ｍｍの網点を成した要素（６−２）が、０．８ｍｍピッチで規則的に配置されることで一定の階調を有して視認され、図１２（ｃ）に示す情報要素群（５−２）は、背景要素群（４−２）を形成している要素（６−２）と同じ直径０．５ｍｍの網点を成した要素（７−２）が、背景要素群（４−２）と重複しないように０．８ｍｍピッチで規則的に配置されて成り、情報要素群（４−２）によって面積率の差が生じ、アルファベットの「ＣＯＰＹ」の文字として視認される。背景要素群（４−２）を構成している要素（６−２）と、情報要素群（５−２）を構成している要素（７−２）とは、上下左右に０．４ｍｍ位相が異なっていることから、重なりあう部位は存在しない。よって、印刷画像（３−２）は、背景要素群（４−２）を形成している複数の要素（６−２）が作り出したフラットな階調の中に、情報要素群（５−２）を形成している要素（７−２）が配置されることで、その配置された部分に背景要素群（４−２）よりも高い面積率の部分が生じ、その面積率の差が生じた部分によって「ＣＯＰＹ」の文字が形成される。
【００６９】
図１３に、背景要素群（４−２）を構成している二つの要素群を示す。図１３（ａ）に第一の印刷要素群（８−２）を示し、図１３（ｂ）に第二の印刷要素群（９−２）を示す。（ａ）に示す第一の印刷要素群（８−２）は、アルファベットの「ＯＫ」の文字を示す構成であり、（ｂ）に示す第二の印刷要素群（９−２）は、背景要素群（４−２）の中から第一の印刷要素群（８−２）の「ＯＫ」の文字を抜いた構成となっている。
【００７０】
図１４に、第一のインキと第二のインキで形成されて成る、それぞれの画像を示す。（ａ）は、第二のインキで形成する画像であり、情報要素群（５−２）と第二の印刷要素群（９−２）が組み合わさった構成となっている。図１４（ａ）に示す画像を表２に示す配合で作製した第二のインキを用いてオフセット印刷で基材（２−２）上に印刷した。（ｂ）は、第一のインキで形成する画像であり、第一の印刷要素群（８−２）のみで構成されている。図１４（ｂ）に示す画像を、帝国インキ製造株式会社製オフセットインキ「ユニマーク」を用いてオフセット印刷で基材（２−２）上に印刷した。
【００７１】
【表２】
【００７２】
第一のインキと第二のインキは、基材に同じ面積率で印刷した場合には、ほぼ等しい分光反射率を有し、且つ、第一のインキは第二のインキよりも分光透過率が大きい特性を有する。よって、第一のインキと第二のインキは、基材に同じ面積率で印刷した場合には反射光下での観察において等色に観察され、透過光下での観察では第一のインキで印刷した画像が第二のインキで印刷した画像よりも明るく見える。実施例２の場合、第一の印刷要素群における透過スペクトルの積分値は、第二の印刷要素群及び情報要素群における透過スペクトルの積分値の１４０％を有している。
【００７３】
本発明の実施例２における効果について、図１５を用いて説明する。本発明の潜像印刷物（１−２）を反射光下で観察した場合には、第一のインキで形成された第一の印刷要素群（８−２）と、第二のインキで形成された第二の印刷要素群（９−２）は、ほぼ等色に視認されることから、観察者には、図１５（ａ）に示す「ＣＯＰＹ」の文字から成る印刷画像（３−２）が、基材（２−２）である用紙の色よりもわずかに濃い濃度で視認できる。
【００７４】
また、本発明の潜像印刷物（１−２）を透過光下で観察した場合には、第二のインキで形成された第二の印刷要素群（９−２）及び情報要素群（５−２）は、基材（２−２）である肌色の用紙と等色となり、第一のインキで形成された第一の印刷要素群（８−２）は、基材（２−２）や第二のインキで形成された第一の印刷要素群（９−２）及び情報要素群（５−２）よりも明るく視認されることから、観察者には、図１５（ｂ）に示すように第一のインキによって形成される「ＯＫ」の文字から成る第一の印刷要素群（８−２）が、基材（２−２）よりも明るく視認できる。
【００７５】
以上のように、反射光下で観察した場合には、背景要素群（４−２）の中に情報要素群（５−２）を形成することで面積率の差が生じ、「ＣＯＰＹ」の文字から成る印刷画像（３−２）が基材（２−２）よりも濃く視認され、透過光下で観察した場合には、第一のインキによって形成される「ＯＫ」の文字から成る第一の印刷要素群（８−２）が基材（２−２）よりも明るく視認される。このように、反射光下と透過光下の観察において、全く相関のない異なる画像が確認できた。
【実施例３】
【００７６】
本発明の実施例３について、図１６から図１９を用いて説明をする。実施例３では、基材（２−３）として一般的な白い色の上質紙（日本製紙株式会社製）を用いた。
【００７７】
図１６（ａ）に、本発明における潜像印刷物（１−３）を示す。潜像印刷物（１−３）は、基材（２−３）の上に、基材と異なる色を有する印刷画像（３−３）が形成されており、印刷画像（３−３）は、図１６（ｂ）に示す背景要素群（４−３）と図１６（ｃ）に示す情報要素群（５−３）から構成されている。図１６（ｂ）に示す背景要素群（４−３）は、直径０．３ｍｍの網点を成した要素（６−３）が、０．５ｍｍピッチで規則的に配置されることで一定の階調を有して視認され、図１６（ｃ）に示す情報要素群（５−３）は、背景要素群（４−３）を形成している要素（６−３）に接したベタ塗りの要素（７−３）によって形成されて成り、情報要素群（４−３）によって面積率の差が生じ、アルファベットの「ＣＯＰＹ」の文字として視認される。前述したとおり、要素としてベタ塗りの要素で形成した場合も、背景要素群（４−３）を形成する要素（６−３）と、情報要素群（５−３）を形成する要素（７−３）は、重複しないように構成する。背景印刷画像（３−３）は、背景要素群（４−３）を形成している複数の要素（６−３）が作り出したフラットな階調の中に、情報要素群（５−３）を形成している要素（７−３）が配置されることで、その配置された部分に背景要素群（４−３）よりも高い面積率の部分が生じ、その面積率の差が生じた部分によって「ＣＯＰＹ」の文字が形成される。
【００７８】
図１７に、背景要素群（４−３）を構成している二つの要素群を示す。図１７（ａ）に第一の印刷要素群（８−３）を示し、図１７（ｂ）に第二の印刷要素群（９−３）を示す。図１７（ａ）に示す第一の印刷要素群（８−３）は、アルファベットの「ＯＫ」の文字を示す構成であり、図１７（ｂ）に示す第二の印刷要素群（９−３）は、背景要素群（４−３）の中から第一の印刷要素群（８−３）の「ＯＫ」の文字を抜いた構成となっている。
【００７９】
図１８に、第一のインキと第二のインキで形成されて成る、それぞれの画像を示す。図１８（ａ）は、第二のインキで形成する画像であり、情報要素群（５−３）と第二の印刷要素群（９−３）が組み合わさった構成となっている。図１８（ａ）に示す画像を表２に示す配合で作製した第二のインキを用いてオフセット印刷で基材（２−３）上に印刷した。図１８（ｂ）は、第一のインキで形成する画像であり、第一の印刷要素群（８−３）のみで構成されている。図１８（ｂ）に示す画像を、ＤＩＣ製オフセットインキＯＰニス「ハイグロス」を用いてオフセット印刷で基材（２−３）上に印刷した。
【００８０】
第一のインキと第二のインキは、基材に同じ面積率で印刷した場合には、ほぼ等しい分光反射率を有し、且つ、第一のインキは第二のインキよりも分光透過率が大きい特性を有する。よって、第一のインキと第二のインキは、基材に同じ面積率で印刷した場合には反射光下での観察において等色に観察され、透過光下での観察では第一のインキで印刷した画像が第二のインキで印刷した画像よりも明るく見える。実施例３の場合、第一の印刷要素群における透過スペクトルの積分値は、第二の印刷要素群及び情報要素群における透過スペクトルの積分値の１４０％を有している。
【００８１】
本発明の実施例３における効果について、図１９を用いて説明する。本発明の潜像印刷物（１−３）を反射光下で観察した場合には、第一のインキで形成された第一の印刷要素群（８−３）と、第二のインキで形成された第二の印刷要素群（９−３）は、ほぼ等色に視認されることから、観察者には、図１９（ａ）に示す「ＣＯＰＹ」の文字から成る印刷画像（３−３）が、基材（２−３）である用紙の色よりもわずかに濃い濃度で視認できる。
【００８２】
また、本発明の潜像印刷物（１−３）を透過光下で観察した場合には、第二のインキで形成された第二の印刷要素群（９−３）及び情報要素群（５−３）は、基材（２−３）である肌色の用紙と等色となり、第一のインキで形成された第一の印刷要素群（８−３）は、基材（２−３）や第二のインキで形成された第一の印刷要素群（９−３）及び情報要素群（５−３）よりも明るく視認されることから、観察者には、図１９（ｂ）に示すように第一のインキによって形成される「ＯＫ」の文字から成る第一の印刷要素群（８−３）が、基材（２−３）よりも明るく視認できる。
【００８３】
以上のように、反射光下で観察した場合には、背景要素群（４−３）の中に情報要素群（５−３）を形成することで面積率の差が生じ、「ＣＯＰＹ」の文字から成る印刷画像（３−３）が基材（２−３）よりも濃く視認され、透過光下で観察した場合には、第一のインキによって形成される「ＯＫ」の文字から成る第一の印刷要素群（８−３）が基材（２−３）よりも明るく視認される。このように、反射光下と透過光下の観察において、全く相関のない異なる画像が確認できた。
【実施例４】
【００８４】
本発明の実施例４について、図２０から図２３を用いて説明をする。実施例４では、基材（２−４）として一般的な白い色の上質紙（日本製紙株式会社製）を用いた。
【００８５】
図２０（ａ）に、本発明における潜像印刷物（１−４）を示す。潜像印刷物（１−４）は、基材（２−４）の上に、基材と異なる色を有する印刷画像（３−４）が形成されており、印刷画像（３−４）は、図２０（ｂ）に示す背景要素群（４−４）と図２０（ｃ）に示す情報要素群（５−４）から構成されている。図２０（ｂ）に示す背景要素群（４−４）は、画線幅０．２５ｍｍの画線を成した要素（６−４）が、０．５ｍｍピッチで規則的に配置されることで一定の階調を有して視認され、図２０（ｃ）に示す情報要素群（５−４）は、背景要素群（４−４）を形成している要素（６−４）に接した画線幅０．２５ｍｍの画線を成した要素（７−４）が、０．５ｍｍピッチで配されて成り、情報要素群（４−４）によって面積率の差が生じ、アルファベットの「ＣＯＰＹ」の文字として視認される。前述したとおり、要素として接した画線の要素で形成した場合も、背景要素群（４−４）を形成する要素（６−４）と、情報要素群（５−４）を形成する要素（７−４）は、重複しないように交互に構成する。つまり、印刷画像（３−４）は、背景要素群（４−４）を形成している複数の要素（６−４）が作り出したフラットな階調の中に、情報要素群（５−４）を形成している要素（７−４）が配置されることで、その配置された部分に背景要素群（４−４）よりも高い面積率の部分が生じ、その面積率の差が生じた部分によって「ＣＯＰＹ」の文字が形成される。
【００８６】
図２１に、背景要素群（４−４）を構成している二つの要素群を示す。図２１（ａ）に第一の印刷要素群（８−４）を示し、図２１（ｂ）に第二の印刷要素群（９−４）を示す。図２１（ａ）に示す第一の印刷要素群（８−４）は、アルファベットの「ＯＫ」の文字を示す構成であり、図２１（ｂ）に示す第二の印刷要素群（９−４）は、背景要素群（４−４）の中から第一の印刷要素群（８−４）の「ＯＫ」の文字を抜いた構成となっている。
【００８７】
図２２に、第一のインキと第二のインキで形成されて成る、それぞれの画像を示す。図２２（ａ）は、第二のインキで形成する画像であり、情報要素群（５−４）と第二の印刷要素群（９−４）が組み合わさった構成となっている。図２２（ａ）に示す画像を表２に示す配合で作製した第二のインキを用いてオフセット印刷で基材（２−４）上に印刷した。図２２（ｂ）は、第一のインキで形成する画像であり、第一の印刷要素群（８−４）のみで構成されている。図２２（ｂ）に示す画像を、ＤＩＣ製オフセットインキＯＰニス「ハイグロス」を用いてオフセット印刷で基材（２−４）上に印刷した。
【００８８】
第一のインキと第二のインキは、基材に同じ面積率で印刷した場合には、ほぼ等しい分光反射率を有し、且つ、第一のインキは第二のインキよりも分光透過率が大きい特性を有する。よって、第一のインキと第二のインキは、基材に同じ面積率で印刷した場合には反射光下での観察において等色に観察され、透過光下での観察では第一のインキで印刷した画像が第二のインキで印刷した画像よりも明るく見える。実施例４の場合、第一の印刷要素群における透過スペクトルの積分値は、第二の印刷要素群及び情報要素群における透過スペクトルの積分値の１４０％を有している。
【００８９】
本発明の実施例４における効果について、図２３を用いて説明する。本発明の潜像印刷物（１−４）を反射光下で観察した場合には、第一のインキで形成された第一の印刷要素群（８−４）と、第二のインキで形成された第二の印刷要素群（９−４）は、ほぼ等色に視認されることから、観察者には、図２３（ａ）に示す「ＣＯＰＹ」の文字から成る印刷画像（３−４）が、基材（２−４）である用紙の色よりもわずかに濃い濃度で視認できる。
【００９０】
また、本発明の潜像印刷物（１−４）を透過光下で観察した場合には、第二のインキで形成された第二の印刷要素群（９−４）及び情報要素群（５−４）は、基材（２−４）である肌色の用紙と等色となり、第一のインキで形成された第一の印刷要素群（８−４）は、基材（２−４）や第二のインキで形成された第一の印刷要素群（９−４）及び情報要素群（５−４）よりも明るく視認されることから、観察者には、図２３（ｂ）に示すように第一のインキによって形成される「ＯＫ」の文字から成る第一の印刷要素群（８−４）が、基材（２−４）よりも明るく視認できる。
【００９１】
以上のように、反射光下で観察した場合には、背景要素群（４−４）の中に情報要素群（５−４）を形成することで面積率の差が生じ、「ＣＯＰＹ」の文字から成る印刷画像（３−４）が基材（２−４）よりも濃く視認され、透過光下で観察した場合には、第一のインキによって形成される「ＯＫ」の文字から成る第一の印刷要素群（８−４）が基材（２−４）よりも明るく視認される。このように、反射光下と透過光下の観察において全く相関のない異なる画像が確認できた。
【実施例５】
【００９２】
本発明の実施例５について、図２４から図２７を用いて説明をする。実施例５では、基材（２−５）として一般的な白い色の上質紙（日本製紙株式会社製）を用いた。
【００９３】
図２４（ａ）に、本発明における潜像印刷物（１−５）を示す。潜像印刷物（１−５）は、基材（２−５）の上に、基材と異なる色を有する印刷画像（３−５）が形成されており、印刷画像（３−５）は、図２４（ｂ）に示す背景要素群（４−５）と図２４（ｃ）に示す情報要素群（５−５）から構成されている。図２４（ｂ）に示す背景要素群（４−５）は、直径０．２５ｍｍの網点を成した要素（６−５）が、０．５ｍｍピッチで規則的に配置されることで一定の階調を有して視認され、図２４（ｃ）に示す情報要素群（５−５）は、背景要素群（４−５）を形成している要素（６−５）より微細で目視困難な網点によって階調を表現した要素（７−５）によって形成されて成り、情報要素群（４−５）によって面積率の差が生じ、「蝶」の画像として視認される。前述したとおり、要素として階調のある要素で形成した場合も、背景要素群（４−５）を形成する要素（６−５）と、情報要素群（５−５）を形成する要素（７−５）は、重複しないように構成する。つまり、印刷画像（３−５）は、背景要素群（４−５）を形成している複数の要素（６−５）が作り出したフラットな階調の中に、情報要素群（５−５）を形成している要素（７−５）が配置されることで、その配置された部分に背景要素群（４−５）よりも高い面積率の部分が生じ、その面積率の差が生じた部分によって「蝶」の画像が形成される。
【００９４】
図２５に、背景要素群（４−５）を構成している二つの要素群を示す。図２５（ａ）に第一の印刷要素群（８−５）を示し、図２５（ｂ）に第二の印刷要素群（９−５）を示す。図２５（ａ）に示す第一の印刷要素群（８−５）は、アルファベットの「ＯＫ」の文字を示す構成であり、図２５（ｂ）に示す第二の印刷要素群（９−５）は、背景要素群（４−５）の中から第一の印刷要素群（８−５）の「ＯＫ」の文字を抜いた構成となっている。
【００９５】
図２６に、第一のインキと第二のインキで形成されて成る、それぞれの画像を示す。図２６（ａ）は、第二のインキで形成する画像であり、情報要素群（５−５）と第二の印刷要素群（９−５）が組み合わさった構成となっている。図２６（ａ）に示す画像を表２に示す配合で作製した第二のインキを用いてオフセット印刷で基材（２−５）上に印刷した。図２６（ｂ）は、第一のインキで形成する画像であり、第一の印刷要素群（８−５）のみで構成されている。図２６（ｂ）に示す画像を、ＤＩＣ製オフセットインキＯＰニス「ハイグロス」を用いてオフセット印刷で基材（２−５）上に印刷した。
【００９６】
第一のインキと第二のインキは、基材に同じ面積率で印刷した場合には、ほぼ等しい分光反射率を有し、且つ、第一のインキは第二のインキよりも分光透過率が大きい特性を有する。よって、第一のインキと第二のインキは、基材に同じ面積率で印刷した場合には反射光下での観察において等色に観察され、透過光下での観察では第一のインキで印刷した画像が第二のインキで印刷した画像よりも明るく見える。実施例５の場合、第一の印刷要素群における透過スペクトルの積分値は、第二の印刷要素群及び情報要素群における透過スペクトルの積分値の１４０％を有している。
【００９７】
本発明の実施例５における効果について、図２７を用いて説明する。本発明の潜像印刷物（１−５）を反射光下で観察した場合には、第一のインキで形成された第一の印刷要素群（８−５）と、第二のインキで形成された第二の印刷要素群（９−５）は、ほぼ等色に視認されることから、観察者には、図２７（ａ）に示す「蝶」の画像から成る印刷画像（３−５）が、基材（２−５）である用紙の色よりもわずかに濃い濃度で視認できる。
【００９８】
また、本発明の潜像印刷物（１−５）を透過光下で観察した場合には、第二のインキで形成された第二の印刷要素群（９−５）及び情報要素群（５−５）は、基材（２−５）である肌色の用紙と等色となり、第一のインキで形成された第一の印刷要素群（８−５）は、基材（２−５）や第二のインキで形成された第一の印刷要素群（９−５）及び情報要素群（５−５）よりも明るく視認されることから、観察者には、図２７（ｂ）に示すように第一のインキによって形成される「ＯＫ」の文字から成る第一の印刷要素群（８−５）が、基材（２−５）よりも明るく視認できる。
【００９９】
以上のように、反射光下で観察した場合には、背景要素群（４−５）の中に情報要素群（５−５）を形成することで面積率の差が生じ、「蝶」の画像から成る印刷画像（３−５）が基材（３−５）よりも濃く視認され、透過光下で観察した場合には、第一のインキによって形成される「ＯＫ」の文字から成る第一の印刷要素群（８−５）が基材（２−５）よりも明るく視認される。このように、反射光下と透過光下の観察において、全く相関のない異なる画像が確認できた。
【符号の説明】
【０１００】
１、１−１、１−２、１−３、１−４、１−５ 潜像印刷物
２、２−１、２−２、２−３、２−４、２−５ 基材
３、３−１、３−２、３−３、３−４、３−５ 印刷画像
４、４−１、４−２、４−３、４−４、５−５ 背景要素群
５、５−１、５−２、５−３、５−４、５−５ 情報要素群
６、６−１、６−２、６−３、６−４、６−５ 背景要素群を形成する要素
７、７−１、７−２、７−３、７−４、７−５ 情報要素群を形成する要素
８、８−１、８−２、８−３、８−４、８−５ 第一の印刷要素群
９、９−１、９−２、９−３、９−４、９−５ 第二の印刷要素群
１０Ｒ 第一の印刷サンプルの分光反射率曲線
１１Ｒ 第二の印刷サンプルの分光反射率曲線
１２Ｒ 基材の分光反射率曲線
１０Ｔ 第一の印刷サンプルの分光透過率曲線
１１Ｔ 第二の印刷サンプルの分光透過率曲線
１２Ｔ 基材の分光透過率曲線
【特許請求の範囲】
【請求項１】
基材上の少なくとも一部に印刷画像を備える潜像印刷物において、
前記印刷画像は、要素を複数配置して成る一定の面積率で形成された背景要素群と、前記背景要素群を形成している前記要素と重複しないように、要素を複数配置して成る情報要素群とを有し、
前記背景要素群は、第一の印刷要素群と第二の印刷要素群に区分けされ、
前記第一の印刷要素群は第一のインキで形成されて成り、前記第二の印刷要素群及び情報要素群は第二のインキで形成されて成り、
前記第一の印刷要素群の分光反射率は、前記第二の印刷要素群の分光反射率と等しい分光反射率を有し、且つ、前記第一の印刷要素群の分光反射率、前記第二の印刷要素群の分光反射率及び情報要素群の分光反射率は、前記基材の分光反射率よりも低い分光反射率を有し、
前記第一の印刷要素群の分光透過率は、前記第二の印刷要素群の分光透過率及び情報要素群の分光透過率より高い分光透過率を有し、且つ、前記第二の印刷要素群の分光透過率及び情報要素群の分光透過率は、前記基材の分光透過率と等しい分光透過率を有し、
透過光下で観察した場合は、第一の印刷要素群が視認され、反射光下で観察した場合は、前記印刷画像が視認されることを特徴とする潜像印刷物。
【請求項２】
前記背景要素群を形成する前記要素は、画素及び／又は画線であることを特徴とする請求項１記載の潜像印刷物。
【請求項３】
前記情報要素群を形成する前記要素は、画素及び／又は画線であることを特徴とする請求項１又は２記載の潜像印刷物。
【請求項４】
４００ｎｍから７００ｎｍの波長域において、前記第一の印刷要素群における透過スペクトルの積分値が、前記第二の印刷要素群及び前記情報要素群における透過スペクトルの積分値の１２０％以上を有することを特徴とする請求項１乃至３のいずれか一項記載の潜像印刷物。
【請求項５】
前記第一のインキ及び／又は前記第二のインキは、機能性材料を混合して成ることを特徴とする請求項１乃至４のいずれか一項記載の潜像印刷物。
【請求項１】
基材上の少なくとも一部に印刷画像を備える潜像印刷物において、
前記印刷画像は、要素を複数配置して成る一定の面積率で形成された背景要素群と、前記背景要素群を形成している前記要素と重複しないように、要素を複数配置して成る情報要素群とを有し、
前記背景要素群は、第一の印刷要素群と第二の印刷要素群に区分けされ、
前記第一の印刷要素群は第一のインキで形成されて成り、前記第二の印刷要素群及び情報要素群は第二のインキで形成されて成り、
前記第一の印刷要素群の分光反射率は、前記第二の印刷要素群の分光反射率と等しい分光反射率を有し、且つ、前記第一の印刷要素群の分光反射率、前記第二の印刷要素群の分光反射率及び情報要素群の分光反射率は、前記基材の分光反射率よりも低い分光反射率を有し、
前記第一の印刷要素群の分光透過率は、前記第二の印刷要素群の分光透過率及び情報要素群の分光透過率より高い分光透過率を有し、且つ、前記第二の印刷要素群の分光透過率及び情報要素群の分光透過率は、前記基材の分光透過率と等しい分光透過率を有し、
透過光下で観察した場合は、第一の印刷要素群が視認され、反射光下で観察した場合は、前記印刷画像が視認されることを特徴とする潜像印刷物。
【請求項２】
前記背景要素群を形成する前記要素は、画素及び／又は画線であることを特徴とする請求項１記載の潜像印刷物。
【請求項３】
前記情報要素群を形成する前記要素は、画素及び／又は画線であることを特徴とする請求項１又は２記載の潜像印刷物。
【請求項４】
４００ｎｍから７００ｎｍの波長域において、前記第一の印刷要素群における透過スペクトルの積分値が、前記第二の印刷要素群及び前記情報要素群における透過スペクトルの積分値の１２０％以上を有することを特徴とする請求項１乃至３のいずれか一項記載の潜像印刷物。
【請求項５】
前記第一のインキ及び／又は前記第二のインキは、機能性材料を混合して成ることを特徴とする請求項１乃至４のいずれか一項記載の潜像印刷物。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【図９】
【図１０】
【図１１】
【図１２】
【図１３】
【図１４】
【図１５】
【図１６】
【図１７】
【図１８】
【図１９】
【図２０】
【図２１】
【図２２】
【図２３】
【図２４】
【図２５】
【図２６】
【図２７】
【図２】
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【図４】
【図５】
【図６】
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【図８】
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【図１０】
【図１１】
【図１２】
【図１３】
【図１４】
【図１５】
【図１６】
【図１７】
【図１８】
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【図２０】
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【図２２】
【図２３】
【図２４】
【図２５】
【図２６】
【図２７】
【公開番号】特開２０１１−１４３６６９（Ｐ２０１１−１４３６６９Ａ）
【公開日】平成２３年７月２８日（２０１１．７．２８）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２０１０−８０３４（Ｐ２０１０−８０３４）
【出願日】平成２２年１月１８日（２０１０．１．１８）
【出願人】（３０３０１７６７９）独立行政法人 国立印刷局 (471)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２３年７月２８日（２０１１．７．２８）
【国際特許分類】
【出願日】平成２２年１月１８日（２０１０．１．１８）
【出願人】（３０３０１７６７９）独立行政法人 国立印刷局 (471)
【Ｆターム（参考）】
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