潜像印刷物
【課題】 本発明は、潜像印刷物に係わり、特に偽造防止効果を必要とする銀行券、パスポート、有価証券、身分証明書、カード及び通行券等のセキュリティ印刷物に好適であり、画像が観察角度の変化に応じて変化する潜像印刷物に関する。
【解決手段】 光輝性材料を含むインキと透明なインキとを用いて、拡散反射光下と正反射光下とで画像がスイッチする効果を有する印刷物であって、更に正反射時に出現する潜像画像とUV光照射時に出現する発光画像とを異なる画像とすることで偽造防止効果を高めることが可能な潜像印刷物を提供する。
【解決手段】 光輝性材料を含むインキと透明なインキとを用いて、拡散反射光下と正反射光下とで画像がスイッチする効果を有する印刷物であって、更に正反射時に出現する潜像画像とUV光照射時に出現する発光画像とを異なる画像とすることで偽造防止効果を高めることが可能な潜像印刷物を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潜像印刷物に係わり、特に偽造防止効果を必要とする銀行券、パスポート、有価証券、身分証明書、カード及び通行券等のセキュリティ印刷物に好適であり、画像が観察角度の変化に応じて変化する潜像印刷物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年のスキャナ、プリンタ及びカラーコピー機等のデジタル機器の進展により、貴重印刷物の精巧な複製物を容易に作製することが可能となっている。複製や偽造を防止する偽造防止技術の一つとして、観察角度によって画像が変化するホログラムに代表される光学的なセキュリティ要素を貼付したものが多く存在するようになった。
【0003】
しかし、ホログラムは、インキを用いた印刷によって形成する従来の偽造防止技術とは異なり、複雑な製造工程と特殊な材料を用いて形成されることから、従来の偽造防止用印刷物と比較すると製造に手間がかかり、かつ、極めて高価である。このことから、金属インキ、干渉マイカ、酸化フレークマイカ、顔料コートアルミニウムフレーク及び光学的変化フレーク等の特殊な光反射性粉体をインキ又は塗料に配合し、かつ、特殊な材料同士の重ね合わせや複雑な網点構成を用いることによって、ホログラムと同様な画像変化を実現した一般的な印刷方法で形成可能な偽造防止用印刷物が開示されている。
【0004】
本出願人は、一般的で、かつ、比較的安価な材料及び簡単な印刷手段を使用していながら、特定の観察角度において、印刷物中の特定部位における人の目に認識される情報が、観察角度を変化させることによって、全く別の情報に変化する偽造防止用情報担持体に係る発明を出願している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−188973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の印刷物では、透明インキに発光顔料や発光染料を混合して潜像画像を形成した場合、この印刷物にUV光を照射して出現する発光画像は、正反射時に出現する潜像画像と同じ画像にしかならないという問題があった。
【0007】
潜像画像と発光画像とを異なる画像とするためには、発光顔料を含む透明インキと、発光顔料を含まない透明インキの2種類の透明インキを用いる必要があり、光輝性材料を含むインキを含めると合計で3種類のインキを用いる必要があった。この場合でも発光画像は正反射時に出現する画像に含まれたデザイン(例えば正反射時の画像がABという画像であれば、発光画像はAあるいはBとするデザイン)とする必要があり、潜像画像と発光画像とを全く異なる画像とすることは不可能であった。
【0008】
本発明は上記事情に鑑み、光輝性材料を含むインキと透明なインキとを用いて拡散反射光下と正反射光下とで画像がスイッチする効果を有する印刷物であって、正反射時に出現する潜像画像とUV光照射時に出現する発光画像とを異なる画像とすることで偽造防止効果を高めることが可能な潜像印刷物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明における潜像印刷物は、基材上の少なくとも一部に印刷画像を備え、印刷画像は、光輝性材料を含み基材と異なる色の材料で形成された第1の画像の上に、発光性材料を含む透明な材料によって形成された第2の画像が形成されており、第1の画像は、背景画像と情報画像とを有し、背景画像は、第1の画像要素が所定ピッチで所定方向に複数配置された背景要素群によって形成されており、情報画像は、第2の画像要素が所定ピッチで所定方向に複数配置された情報要素群によって形成されており、第2の画像は、第1の潜像画像と第2の潜像画像とを有し、第1の潜像画像は、第3の画像要素が所定ピッチで所定方向に複数配置された第1の潜像画像要素群によって形成されており、第2の潜像画像は、第4の画像要素が所定ピッチで所定方向に複数配置された第2の潜像画像要素群によって形成されており、所定ピッチ内に、第1の画像要素、第2の画像要素及び第4の画像要素が隣接又は近接して配置されており、第1の画像要素上に第3の画像要素が重なるように形成されており、拡散反射光が支配的な観察角度領域では第1の画像が視認可能であり、正反射光が支配的な観察角度領域では第1の潜像画像が視認可能であり、UV光が照射された状況では第2の潜像画像が視認可能であることを特徴とする。
【0010】
本発明における潜像印刷物は、第1の画像要素、第2の画像要素、第3の画像要素、第4の画像要素が、画線又は画素であることを特徴とする。
【0011】
本発明における潜像印刷物は、第3の画像要素の所定方向における幅が、第1の画像要素の所定方向における幅以下であることを特徴とする。
【0012】
本発明における潜像印刷物は、第一の画像の画線面積率が、20%から80%の範囲内で形成されて成ることを特徴とする
【0013】
本発明における潜像印刷物は、第一の画像における背景画像の面積率が、20%から60%の範囲内で形成され、第一の画像における情報画像の面積率が、背景画像の面積率を超えず、かつ、10%から40%の範囲内で形成されることを特徴とする。
【0014】
本発明における潜像印刷物は、所定ピッチが、0.1mmから5mmの範囲内で形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の潜像印刷物によれば、UV吸収能を有する光輝性材料を含んだインキで形成された画像と、発光顔料を含んだ透明インキで形成された画像とを、一定の規則に従って重ね合わせることで、刷色数を増やすことなく、正反射時に出現する潜像画像とUV光照射時に出現する発光画像とが全く異なる偽造防止効果を向上させることが可能な印刷物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態1による潜像印刷物を示す説明図である。
【図2】(a)は同潜像印刷物における画像を示し、この画像が(b)に示された第1の画像と、(c)に示された第2の画像とを含むことを示す説明図である。
【図3】(a)は同潜像印刷物における第1の画像を示し、この画像が(b)に示された背景画像と、(c)に示された情報画像とを含むことを示す説明図である。
【図4】(a)は同潜像印刷物における第2の画像を示す、この画像が(b)に示された第1の潜像画像と、(c)に示された第2の潜像画像とを含むことを示す説明図である。
【図5】同潜像印刷物における第1の画像を一部拡大して示し、この画像が第1の画線、第2の画線を含むことを示す説明図である。
【図6】同潜像印刷物における第2の画像を一部拡大して示し、この画像が第3の画線、第4の画線を含むことを示す説明図である。
【図7】(a)は同潜像印刷物における第1の画像に含まれる第1の画線を拡大して示し、(b)は同潜像印刷物における第1の画像に含まれる第2の画線を拡大して示す説明図である。
【図8】(a)は同潜像印刷物における第2の画像に含まれる第3の画線を拡大して示し、(b)は同潜像印刷物における第2の画像に含まれる第4の画線を拡大して示す説明図である。
【図9】同潜像印刷物における第1の画像に含まれる第1、第2の画線と第2の画像に含まれる第3、第4の画線との重ね合わせの位置関係を示す説明図である。
【図10】(a)は、観察者の視点が、拡散反射光が支配的な観察角度領域にある場合に同潜像印刷物中に現れる画像を示し、(b)は、観察者の視点が、正反射光が支配的な観察角度領域にある場合に同潜像印刷物中に現れる画像を示し、(c)は、UV光を照射した場合に同潜像印刷物中に現れる画像を示す説明図である。
【図11】(a)は、同潜像印刷物における第1の画像に含まれる第1、第2の画線の具体的な数値を示し、(b)は、同潜像印刷物における第2の画像に含まれる第3、第4の画線の具体的な数値を示す説明図である。
【図12】本発明の実施の形態2による潜像印刷物を示す説明図である。
【図13】(a)は同潜像印刷物における画像を示し、この画像が(b)に示された第1の画像と、(c)に示された第2の画像とを含むことを示す説明図である。
【図14】(a)は同潜像印刷物における第1の画像を示し、この画像が(b)に示された背景画像と、(c)に示された情報画像とを含むことを示す説明図である。
【図15】(a)は同潜像印刷物における第2の画像を示す、この画像が(b)に示された第1の潜像画像と、(c)に示された第2の潜像画像とを含むことを示す説明図である。
【図16】同潜像印刷物における第1の画像を一部拡大して示し、この画像が第1の画素、第2の画素を含むことを示す説明図である。
【図17】同潜像印刷物における第2の画像を一部拡大して示し、この画像が第3の画素、第4の画素を含むことを示す説明図である。
【図18】潜像印刷物における第1の画像に含まれる第1、第2の画素と第2の画像に含まれる第3、第4の画素との重ね合わせの位置関係を示す説明図である。
【図19】(a)は、観察者の視点が、拡散反射光が支配的な観察角度領域にある場合に同潜像印刷物中に現れる画像を示し、(b)は、観察者の視点が、正反射光が支配的な観察角度領域にある場合に同潜像印刷物中に現れる画像を示し、(c)は、UV光を照射した場合に同潜像印刷物中に現れる画像を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他のいろいろな実施の形態が含まれる。
【0018】
一般に、透明インキを用いた場合、品質管理上透明インキの存在を確認できるように可視化させるため、発光顔料や発光染料等を混合することが行われる。以下の実施の形態による潜像印刷物は、発光顔料や発光染料等により正反射光下で可視化される潜像画像の他に、UV光を照射して可視化する異なる潜像画像を備えている。
(1)実施の形態1
【0019】
本発明の実施の形態1による潜像印刷物について、図面を参照して説明する。
【0020】
なお、実施の形態1による潜像印刷物では画線により画像を構成しており、実施の形態2による潜像印刷物では画素により画像を構成している。
【0021】
ここで画線とは、印刷物における画像を構成する最小単位である印刷網点を、所定方向に隙間無く連続して配置することにより形成した画像要素であって、例えば、直線、曲線、波線、点線や破線等の分断線等が含まれ、画線の形状は如何なるものであっても本発明における画線に含まれるものとする。
【0022】
画素とは、印刷物における画像を構成する最小単位である印刷網点を複数集合させて形成した一塊の画像要素であって、例えば、円、三角形や四角形等を含む多角形、星形等の各種図形、あるいは文字や記号等が含まれ、濃淡の変化が面積率、即ち点の大小により表現される網点形状であり、画素の形状は如何なるものであっても本発明における画素に含まれるものとする。また、画像要素は画素、画線のいずれか又はその組み合わせであるものとする。
【0023】
なお、画線により画像を構成して成る実施の形態1においては、課題を解決するための手段における第1の画像要素は第1の画線、背景要素群は画線群、第2の画像要素は第2の画線、情報要素群は画線群、第3の画像要素は第3の画線、第1の潜像画像要素群は画線群、第4の画像要素は第4の画線、第2の潜像画像要素群は画線群として説明する。
【0024】
図1に、本実施の形態1による潜像印刷物(1)を示す。潜像印刷物(1)は、基材(2)上の少なくとも一部に印刷画像(3)を有し、印刷画像(3)中には後述するように第1の画像の上に第2の画像が重なって形成されている。
【0025】
なお、基材(2)は上質紙、コート紙、プラスティック板等、平坦な面を有するものであれば如何なるものであってもよく、材質や外形形状、寸法等に関して限定されない。
【0026】
また、印刷画像(3)は、着色された画線を含むものであればよく、色等について限定されない。
【0027】
図2(a)に示された印刷画像(3)は、図2(b)に示された第1の画像(4)の上面に図2(c)に示された第2の画像(5)を含む構成を有する。
【0028】
ここで、第1の画像(4)は、拡散反射光下において視認可能な画像であり、UV(紫外線)光を吸収する特性を有する光輝性材料を含んだインキ(光輝性インキ)で形成されており、画線面積率(一定面積中に占める画線面積の割合)は、20〜80%の範囲で形成することが望ましい。
【0029】
なお、光輝性インキの光反射特性であるが、インキを一般的なコート紙上に網点面積率100%で印刷した場合、正反射光下の明度の値が100以上であり、拡散反射光下における明度(最小明度)と正反射光下における明度(最大明度)との差が50以上であることが望ましい。なぜなら、これを下回る反射特性しか備えないインキを用いた場合、正反射光下での第一の画像(4)の消失効果が低くなり、本発明における効果である画像のチェンジ効果が失われる可能性が生じるためである。
【0030】
第2の画像(5)は、後述するように正反射光下で視認可能な第1の潜像画像と、UV光を照射されて視認可能な第2の潜像画像とを含んでおり、発光顔料、発光染料等の発光性を有する材料を含む透明インキで形成されている。なお、発光色は如何なるものであってもよい。インキは、第1の画像(4)を形成するインキよりも光沢性が低くマット調を有するものであることが望ましい。
【0031】
マット系インキの光反射特性であるが、インキを一般的なコート紙上に網点面積率100%で印刷した場合、正反射光下の明度の値が光輝性インキの明度の値より20以上低く、拡散反射光下における明度(最小明度)と正反射光下における明度(最大明度)との差が30以下であることが望ましい。なぜなら、正反射光下で出現する画像は、光輝性インキとマット系インキの反射率の差異によって画像が可視化されるため、光輝性インキとマット系インキの明度の差異が20を下回る場合、画像を容易に視認することが難しくなるためである。
【0032】
図3(a)に示された第1の画像(4)は、図3(b)に示された背景画像(6)と図3(c)に示された情報画像(7)とを含んでいる。なお、背景画像(6)と情報画像(7)とは同一の光輝性インキにより形成される。ここでは、情報画像(7)により「日本」という情報が出現する。
【0033】
背景画像(6)は、階調が一定、即ち画線面積率が一定であり、面積率は20〜60%の範囲内であることが望ましい。これは、20%に満たない面積率で画像を形成した場合、正反射光下で出現する画像の視認性が低くなってしまうためである。また、第一の画像(4)には、背景画像(6)の他に、情報画像(7)及び後述する非画線領域(11)が必須であり、これらの画線や領域との割合を考慮すると、背景画像(6)は60%以下に面積率を留めることが望ましい。
【0034】
情報画像(7)は、有意な情報を有し、2値画像に限らず多階調を有するものであってもよく、面積率は10〜40%の範囲内であることが望ましい。これは、10%に満たない面積率で画像を形成した場合、充分な濃度を得ることができず、視認性の低い画像しか形成できないためである。また、40%を超える面積率で形成するには、背景画像(6)及び後述する非画線領域(11)の画線面積率を大きく削る必要があり、この場合には、正反射光下で出現する画像の視認性やUV照射時に出現する画像の視認性が大きく損なわれるためである。
【0035】
図4(a)に示された第2の画像(5)は、図4(b)に示された第1の潜像画像(8)と図4(c)に示された第2の潜像画像(9)とを含んでいる。第1の潜像画像(8)は正反射時に出現する画像であり、この画像を出現させるための有意な情報を有し、2値画像に限らず多階調を有するものであってもよく、面積率は図3(b)に示された背景画像(6)の面積率を超えない範囲である必要がある。ここでは、第1の潜像画像(8)により「桜の絵柄」が出現する。
【0036】
第2の潜像画像(9)はUV光照射時に出現する画像であり、この画像を出現させるための有意な情報を有し、2値画像に限らず多階調を有するものであってもよく、面積率は100%から第1の画像(4)の最大面積率を差し引いた値により決定され、20%以上を有することが望ましい。ここでは、第2の潜像画像(9)により「OK」の文字が出現する。
【0037】
図5に、第1の画像(4)の一部を拡大し、第1の画像(4)に含まれる背景画像(6)を形成する第1の画線(10)、情報画像(7)を形成する第2の画線(12)、第1の画線(10)及び第2の画線(12)のいずれも存在しない非画線領域(11)の配置を示す。
【0038】
第1の画線(10)、第2の画線(12)は、所定で所定方向に規則的に配置されている。ここで所定方向とは、画線と直交する方向、即ち図中上下方向をいう。
【0039】
第1の画線(10)は画線幅(W1)を有し、所定ピッチ(P1)で配置されて画線群を構成することで背景画像(6)を形成する。ピッチ(P1)は、印刷の再現性及び画像の解像度等を考慮して設定することが望ましく、例えば、0.1〜5mmとしてもよい。
【0040】
第2の画線(12)は画線幅(W3)を有し、第1の画線(10)と同様に所定ピッチ(P1)で所定方向に配置されて画線群を構成することで情報画像(7)を形成する。
【0041】
非画線領域(11)は幅(W2)を有し、この領域には後述するように第2の潜像画像(9)を形成する第4の画線(14)が配置される。この非画線領域(11)の幅(W2)を確保するため、第2の画線(12)はピッチ(P1)の範囲内において第1の画線(10)に近接して配置されていることが望ましい。
【0042】
第1の画線(10)と第2の画線(12)とが重なって形成された場合には、重なりあった領域において不必要な濃淡が生じてしまい、その濃淡は正反射光下で出現する第2の画像(5)に反映されることとなり、望ましくない。
【0043】
第1の画線(10)と第2の画線(12)とは、必ずしも隣接するように形成する必要はなく、近接させて形成してもよい。
【0044】
なお、図5における一部拡大図において、第1の画線(10)は横縞の画線で示されており、第2の画線(12)は縦縞の画線で示されている。同様に、後述する図8における一部拡大図において、第3の画線(13)、第4の画線(14)は斜縞(ハッチング)の画線で示されている。しかし、これらの表示はそれぞれの画線の構成を区別しやすくするために行っているものであって、実際の各画線が縦縞や斜縞等で形成されているわけではない。
【0045】
図6に、第2の画像(5)の一部を拡大し、第1の潜像画像(8)を形成する第3の画線(13)、第2の潜像画像(9)を形成する第4の画像(14)の配置を示す。
【0046】
第3の画線(13)は画線幅(W4)を有し、ピッチ(P1)で所定方向に配置されて画線群を構成することで第1の潜像画像(8)を形成する。
【0047】
第4の画線(14)は画線幅(W5)を有し、ピッチ(P1)で所定方向に配置されて画線群を構成することで第2の潜像画像(9)を形成する。この第4の画線(14)が、上述した非画線領域(11)内に形成される。
【0048】
第1の画線(10)及び第2の画線(12)には、着色顔料を付与してもよい。着色顔料の色は、黒、赤、青又は黄色等のいずれの色相であってもよい。例えば、第1の画線(10)、第2の画線(12)を形成するインキに、光輝性材料とともに着色顔料を混合したり、インキ同士を混ぜ合わせたりしてもよく、あらかじめ着色インキで第1の画線(10)、第2の画線(12)による第1の画像(4)と同じ画像を形成し、その後、光輝性材料を含むインキで同じ第1の画像(4)を重ねあわせて形成してもよい。
【0049】
ただし、過剰な量の顔料を混合した場合には、第1の画像(4)における階調差(濃淡の差)が大きくなりインキ中の光輝性材料の混合割合が低下したり、又は正反射光下での観察において第1の画像(4)が十分に消失しなかったり、という現象が起こり得る。よって、顔料同士を混合する場合、又はインキ同士を混合する場合には、いずれの色の着色顔料を混合する場合でもインキ中の光輝性材料の配合割合の2分の1の量を超えない範囲に留めることが望ましい。
【0050】
下地に、着色インキであらかじめ第1の画像(4)と同じ画像を形成することで色を付与する場合には、いかなる色でいかなる濃度のインキを用いたとしても、十分なスイッチ効果を得ることができる。
【0051】
なお、上述した光輝性材料として、アルミニウム粉末、銅粉末、亜鉛粉末、錫粉末、真鍮粉末、リン化鉄、酸化チタン、あるいは鱗片状マイカ粉末等、一般的な金属粉顔料を用いてもよい。
【0052】
光輝性材料として挙げたチタンやアルミニウム、亜鉛、真鍮等の金属粉末は、紫外線を吸収する特性、いわゆる紫外線吸収能を有することが広く知られおり、これらの材料は、従来からUVカットガラスやUVカットフィルムの材料として一般に広く用いられている。また、酸化チタンは高い紫外線吸収剤機能を有することが知られており、化粧品においてUVカット機能を付与する場合に用いられる。なお、本出願人はすでに特許第3680908号公報や特許第4487090号公報において、酸化チタンに代表される紫外線吸収剤と蛍光発光インキと組み合わせた印刷物を出願している。このことから、蛍光発光インキの上に紫外線吸収剤を重ねて印刷することによって、優れた紫外線吸収効果を得る方法が一般的であるが、紫外線吸収剤の上に蛍光発光インキを重ねて形成しても同様な効果を得ることもできる。
【0053】
虹彩色パール顔料及び鱗片状顔料等の一般的なパール顔料、ガラスフレーク顔料又はコレステリック液晶顔料等の機能性顔料を用いた場合には、第1の画像(4)の明度のみが変化する明暗フリップフロップ性(主に明度のみが変化する特性)のみでなく、第1の画像(4)の色調も変化するカラーフリップフロップ性(明度だけでなく、色調も変化する特性)を付与することができる。
【0054】
なお、光輝性材料にIR吸収顔料、フォトクロミック顔料、示温材料、サーモクロミック材料等の機能性材料を加えてもよい。ただし、IR吸収顔料、フォトクロミック顔料、示温材料、サーモクロミック材料等の機能性材料を加える場合は、本発明における潜像印刷物の効果に影響がない範囲で加える必要がある。
【0055】
第3の画線(13)、第4の画線(14)を形成するインキは、透明である必要がある。インキは透明であればグロス系でもマット系でも良いが、第1の画線(10)、第2の画線(12)を形成するインキよりもマット系の透明インキを用いることが望ましい。マット系のインキを使用すると第1の画像(4)に達する光の量を遮る割合が高くなり、第2の画像(5)の視認性が高くなる。
【0056】
また、この透明なインキには、蛍光顔料や燐光顔料、蓄光顔料等の発光顔料の他に、IR吸収顔料、フォトクロミック顔料、示温材料、サーモクロミック材料等の機能性材料を加えてもよい。ただし、IR吸収顔料、フォトクロミック顔料、示温材料、サーモクロミック材料等の機能性材料を加える場合は、透明性を失わない顔料の選定が必要であり、本発明における潜像印刷物の効果に影響がない範囲で加える必要がある。
【0057】
図7(a)に、第1の画像(4)に含まれる背景画像(6)の一部を拡大し、背景画像(6)を構成する第1の画線(10)の配置を示す。
【0058】
上述のように、第1の画線(10)は画線幅(W1)を有し、所定ピッチ(P1)で所定方向に配置されて画線群を構成することで背景画像(6)を形成する。
【0059】
図7(b)に、第1の画像(4)に含まれる情報画像(7)の一部を拡大し、情報画像(7)を構成する第2の画線(12)の配置を示す。
【0060】
第2の画線(12)は画線幅(W3)を有し、第1の画線(10)と同様に所定ピッチ(P1)で所定方向に配置されて画線群を構成することで情報画像(7)を形成する。
【0061】
図8(a)に、第2の画像(5)に含まれる第1の潜像画像(8)の一部を拡大し、この画像(8)を構成する第3の画線(13)の配置を示す。
【0062】
第3の画線(13)は画線幅(W4)を有し、ピッチ(P1)で所定方向に配置されて画線群を構成することで第1の潜像画像(8)を形成する。
【0063】
図8(b)に、第2の画像(5)に含まれる第2の潜像画像(9)の一部を拡大し、この画像(9)を構成する第4の画線(14)の配置を示す。
【0064】
第4の画線(14)は画線幅(W5)を有し、ピッチ(P1)で所定方向に配置されて画線群を構成することで第2の潜像画像(9)を形成する。
【0065】
図9に、第1の画像(4)と第2の画像(5)との重ね合わせにおける適正な位置関係を示す。第1の画像(4)に含まれる背景画像(6)を構成する第1の画線(10)と、情報画像(7)を構成する第2の画線(12)とが同一ピッチ(P1)で所定方向に配置されている。
【0066】
第2の画像(5)に含まれる第1の潜像画像(8)を構成する第3の画線(13)は、第1の画線(10)の上に重ねて形成される。
【0067】
第2の画像(5)に含まれる第2の潜像画像(9)を構成する第4の画線(14)は、第1の画線(10)、第2の画線(12)のいずれも形成されていない非画線領域(11)に形成される。
【0068】
ここで、第2の画線(12)の上部にはいかなる画線も重ねて形成されてはならない。なお、印刷順序としては、第1の画像(4)を印刷した後、第2の画像(5)を印刷する。
【0069】
光輝性インキで形成された第1の画線(10)上に、透明性インキで形成された第3の画線(13)が形成される。拡散反射時には、第3の画線(13)は不可視であるため、第3の画線(13)で構成された第1の潜像画像(8)は出現しない。正反射時には、第3の画線(13)は第1の画線(10)に対して強いコントラストを有し、第1の潜像画像(8)が出現し視認可能となる。しかし、UV照射時には、光輝性インキで形成された第1の画線(10)にUV光が吸収されるため、第3の画線(13)は発光が抑制されて第1の潜像画像(8)が出現しない。
【0070】
非画線領域(11)において、透明インキで形成された第4の画線(14)は、拡散反射時、正反射時のいずれであっても出現せず第2の潜像画像(9)は不可視の状態である。UV照射時には、第4の画線(14)は強く発光し第2の潜像画像(9)が出現し視認可能となる。
【0071】
ここで、第1の画像(4)において情報画像(7)を形成する第2の画線(12)上に、透明インキで形成される第3の画線(13)又は第4の画線(14)を重ねて形成すると、透明インキが重なった領域は正反射光下において情報画像(7)が消失せず、第1の潜像画像(8)の出現を妨げることとなる。そこで、第2の画線(12)上には、透明インキによる第3の画線(13)又は第4の画線(14)のいずれも重ねて形成しないことにより、正反射光下において情報画像(7)を完全に消失させることができる。
【0072】
第1の画像(4)の背景画像(6)を構成する第1の画線(10)と情報画像(7)を構成する第2の画線(12)とを隣接して形成することが望ましく、第2の画像(5)の第2の潜像画像(9)を構成する第4の画線(14)を第1の画線(10)、第2の画線(12)と重ならないように形成する必要があり、第3の画線(13)の画線幅(W4)が第1の画線(10)の画線幅(W1)以内の幅に収まるように(W4≦W1)設計する必要がある。
【0073】
第3の画線(13)の画線面積率が大きいほど、正反射光下で出現する第1の潜像画像(8)の視認性が高くなる。このため、第1の画線(10)の画線幅(W1)とほぼ同じ画線幅で設計することが望ましい。しかし、第3の画線(13)の画線幅(W4)の値が第1の画線(10)の画線幅(W1)に近づく程、製造時における刷り合わせズレに対する許容度が小さくなる。そこで、印刷を行う機械における刷り合わせ精度を考慮して、それぞれの画線幅(W1)及び画線幅(W4)を設計することが望ましい。
【0074】
なお、上述のように、情報画像(7)を構成する第2の画線(12)上に第2の潜像画像(9)を構成する第4の画線(14)が重ならないことが、第2の潜像画像(9)の視認性を向上させるために必要である。しかし、印刷時の刷り合わせのズレ等により、第2の画線(12)上に第1の潜像画像(8)を構成する第3の画線(13)が若干重なったとしても、第3の画線(13)は、背景画像(6)を構成する第1の画線(10)上に重なる面積が大きい。このため、第2の潜像画像(9)の視認性への影響は小さい。従って、第2の画線(12)上に第3の画線(13)が若干重なった場合も本発明の技術的範囲内に含まれるものとする。
【0075】
図10(a)〜(c)に、光源(15)又はUV光源(17)、潜像印刷物(1)、観察者(16a)の位置関係、並びにそれぞれにおける潜像印刷物(1)の視認状態を示す。
【0076】
図10(a)に示されるように、拡散反射光下、即ち潜像印刷物(1)に入射する光の角度と、観察者(16a)と潜像印刷物(1)とを結ぶ角度とが大きく異なる状態で観察した場合、観察者(16a)には第1の画像(4)が視認される。
【0077】
潜像印刷物(1)を、図10(b)に示されるように、正反射光下、即ち潜像印刷物(1)に入射する光の角度と、観察者(16a)と潜像印刷物(1)とを結ぶ角度がほぼ同じ状態で観察した場合、観察者(16a)には第1の潜像画像(8)が視認される。
【0078】
潜像印刷物(1)を、図10(c)に示されるように、UV光源(17)によるUV光照射時に観察した場合、観察者(16a)には第2の潜像画像(9)が視認される。
【0079】
このように、観察状態に応じて優れたスイッチ効果により、三通りの画像が視認される。
【0080】
図11に、本実施の形態1による潜像印刷物(1)における第1の画像(4)を構成する第1の画線(10)の画線幅(W1)、第2の画線(12)の画線幅(W3)、非画線領域(11)の幅(W2)、第2の画像(5)を構成する第3の画線(13)の画線幅(W4)、第4の画線(14)の画線幅(W5)、並びにピッチ(P1)のそれぞれの具体的数値の一例を示す。
【0081】
本実施の形態1における一例によれば、第1の画像(4)を構成する第1の画線(10)の画線幅(W1)を0.20mmとし、第2の画線(12)の画線幅(W3)を0.15mmとし、非画線領域(11)の幅(W2)を0.15mmとし、第2の画像(5)を構成する第3の画線(13)の画線幅(W4)を0.18mmとし、第4の画線(14)の画線幅(W5)を0.15mmとし、それぞれのピッチ(P1)を0.5mmとする。
【0082】
また、第1の画線(10)、第2の画線(12)は、例えば、銀色のメタリックインキ(UV NO3 シルバー T&K TOKA製)を用いて形成してもよい。
【0083】
第3の画線(13)、第4の画線(14)は、例えばOPニス(T&K TOKA製 マットメジウム)に緑色発光顔料を2%配合したインキを用いて形成してもよい。
【0084】
本実施の形態1によれば、拡散反射光下と正反射光下とで第1、第2の画像がスイッチする効果を有する印刷物において、正反射時に出現する第1の潜像画像とUV光照射時に出現する第2の潜像画像とを異なる画像とすることが可能であり、より高い偽造防止効果を得ることができる。
(2)実施の形態2
【0085】
本発明の実施の形態2による潜像印刷物について、図面を参照して説明する。
【0086】
実施の形態2による潜像印刷物では、画像要素としての画素により画像を構成しており、画素は印刷物における画像を構成する最小単位に相当する。
【0087】
なお、画素により画像を構成して成る実施の形態2においては、課題を解決するための手段における第1の画像要素は第1の画素、背景要素群は画素群、第2の画像要素は第2の画素、情報要素群は画素群、第3の画像要素は第3の画素、第1の潜像画像要素群は画素群、第4の画像要素は第4の画素、第2の潜像画像要素群は画素群として説明する。
【0088】
図12に、本実施の形態2による潜像印刷物(21)を示す。潜像印刷物(21)は、基材(22)上の少なくとも一部に印刷画像(23)を有し、印刷画像(23)中において第1の画像の上に第2の画像が重なって形成されている。基材(22)は実施の形態1の基材(2)と同様に、上質紙、コート紙、プラスティック板等、平坦な面を有するものであれば如何なるものであってもよく、材質や外形形状、寸法等に関して限定されない。
【0089】
印刷画像(23)は、着色された画素を含むものであればよく、色等について限定されない。
【0090】
図13(a)に示された印刷画像23は、図13(b)に示された第1の画像(24)の上面に、図13(c)に示された第2の画像(25)を含んでいる。
【0091】
第1の画像(24)は拡散反射光下において視認可能な画像であり、UV光を吸収する特性を有する光輝性材料を含んだインキで形成されており、画素面積率(一定面積中に占める画素面積の割合)は20〜80%の範囲で形成することが望ましい。
【0092】
なお、光輝性インキの光反射特性については、実施の形態1において述べたように、インキを一般的なコート紙上に網点面積率100%で印刷した場合、正反射光下の明度の値が100以上で、拡散反射光下における明度と正反射光下における明度との差が50以上であることが望ましい。
【0093】
第2の画像(25)は、正反射光下で視認可能な第1の潜像画像と、UV光を照射されて視認可能な第2の潜像画像とを含んでおり、発光顔料、発光染料等の発光性を有する材料を含む透明インキで形成されている。インキは、第1の画像(24)を形成するインキよりも光沢性が低くマット調を有するものが望ましい。
【0094】
マット系インキの光反射特性については、上記実施の形態1において述べたように、インキを一般的なコート紙上に網点面積率100%で印刷した場合、正反射光下の明度の値が光輝性インキの明度の値より20以上低く、拡散反射光下における明度と正反射光下における明度との差が30以下であることが望ましい。
【0095】
図14(a)に示された第1の画像(24)は、図14(b)に示された背景画像(26)と図14(c)に示された情報画像(27)とを含んでいる。なお、背景画像(26)と情報画像(27)とは同一の光輝性インキにより形成される。ここでは、情報画像(27)により「日本」という情報が出現される。
【0096】
背景画像(26)は階調が一定、即ち画素面積率が一定であり、面積率は20〜60%の範囲内であることが望ましい。これは、20%に満たない面積率で画像を形成した場合、正反射光下で出現する画像の視認性が低くなってしまうためである。また、第1の画像(24)には、背景画像(26)の他に、情報画像(27)及び後述する非画素領域(31)が必須であり、これらの画素や領域との割合を考慮すると、背景画像(6)は60%以下に面積率を留めることが望ましい。
【0097】
情報画像(27)は、潜像画像を出現させるための有意な情報を有し、2値画像に限らず多階調を有するものであってもよく、面積率は10〜40%の範囲内であることが望ましい。これは、10%に満たない面積率で画像を形成した場合、充分な濃度を得ることができず、視認性の低い画像しか形成できないためである。また、40%を超える面積率で形成するには、背景画像(26)及び後述する非画線領域(31)の画線面積率を大きく削る必要があり、この場合には、正反射光下で出現する画像の視認性やUV照射時に出現する画像の視認性が大きく損なわれるためである。
【0098】
図15(a)に示された第2の画像(25)は、図15(b)に示された第1の潜像画像(28)と図15(c)に示された第2の潜像画像(29)とを含んでいる。第1の潜像画像(28)は正反射時に出現する画像であり、この画像を出現させるための有意な情報を有し多階調を有するものであってもよく、面積率は背景画像(26)の面積率を超えない範囲である必要がある。ここでは、第1の潜像画像(28)により「桜の絵柄」が出現する。
【0099】
第2の潜像画像(29)はUV光照射時に出現する画像であり、この画像を出現させるための有意な情報を有し多階調を有するものであってもよく、面積率は100%から第1の画像(24)の最大面積率を差し引いた値により決定され、20%以上を有することが望ましい。ここでは、第2の潜像画像(29)により「OK」の文字が出現する。
【0100】
図16に、第1の画像(24)の一部を拡大し、第1の画像(24)に含まれる背景画像(26)を形成する第1の画素(30)、情報画像(27)を形成する第2の画素(32)、第1の画素(30)及び第2の画素(32)のいずれも存在しない非画素領域(31)の配置を示す。第1の画素(30)、第2の画素(32)は、所定ピッチで所定方向に、ここでは所定ピッチで図中上下左右方向のマトリクス状に規則的に配置されている。
【0101】
第1の画素(30)は画素幅、ここでは円形の画素として、例えば、直径0.4mmを有し、所定ピッチ(P1)として、例えば、ピッチ0.6mmでマトリクス状に配置されて画素群を構成することで背景画像(26)を形成する。
【0102】
第2の画素(32)は画素幅、ここでは円形の画素として、例えば、直径0.3mmを有し、第1の画素(30)と同じピッチ(P1)としてここではピッチ0.6mmでマトリクス状に配置されて画素群を構成することで情報画像(27)を形成する。
【0103】
非画素領域(31)には、後述するように第2の潜像画像(29)を形成する第4の画素(34)が配置される。第1の画素(30)と第2の画素(32)とは、必ずしも隣接するように形成する必要はないが、非画素領域(31)に第4の画素(34)の配置が可能なように、第2の画素(32)を第1の画素(30)に対して配置する必要がある。
【0104】
第1の画素(30)と第2の画素(32)とが重なって形成された場合は、重なりあった領域において不必要な濃淡が生じ、その濃淡が正反射光下で出現する第2の画像(25)に反映され望ましくない。
【0105】
なお、図16における一部拡大図において、第1の画素(30)は横縞の画素で示されており、第2の画素(32)は縦縞の画素で示されている。同様に、後述する図17における一部拡大図において、第3の画素(33)、第4の画素(34)は斜縞(ハッチング)の画素で示されている。しかし、これらの表示はそれぞれの画素の構成を区別しやすくするために行っているものであって、実際の各画素が縦縞や斜縞等で形成されているわけではない。
【0106】
図17に、第2の画像(25)の一部を拡大し、第1の潜像画像(28)を形成する第3の画素(33)、第2の潜像画像(29)を形成する第4の画素(34)の配置を示す。
【0107】
第3の画素(33)は画素幅、ここでは円形の画素として、例えば、直径0.35mmを有し、所定ピッチ(P1)として第1の画素(30)と同様に、例えば、ピッチ0.6mmでマトリクス状に配置されて画素群を構成することで第1の潜像画像(28)を形成する。
【0108】
第4の画素(34)は画素幅として、例えば、直径0.20mmを有し、所定ピッチ(P1)としてピッチ0.6mmで配置されて画素群を構成することで第2の潜像画像(29)を形成する。この第4の画素(34)が、上述した非画素領域(31)内に形成される。
【0109】
上記第1の実施の形態と同様に、第1の画素(30)、第2の画素(32)には、着色顔料を付与してもよい。着色顔料の色は、黒、赤、青又は黄色等のいずれの色相であってもよい。例えば、第1の画素(30)、第2の画素(32)を形成するインキに、光輝性材料とともに着色顔料を混合したり、インキ同士を混ぜ合わせたりしてもよく、あらかじめ着色インキで第1の画素(30)、第2の画素(32)による第1の画像(24)と同じ画像を形成し、その後、光輝性材料を含むインキで同じ第1の画像(24)を重ね合わせて形成してもよい。
【0110】
光輝性材料として、アルミニウム粉末、銅粉末、亜鉛粉末、錫粉末、真鍮粉末、リン化鉄、酸化チタン、あるいは鱗片状マイカ粉末等、一般的な金属粉顔料を用いてもよい。
【0111】
虹彩色パール顔料及び鱗片状顔料等の一般的なパール顔料、ガラスフレーク顔料又はコレステリック液晶顔料等の機能性顔料を用いた場合には、第1の画像(24)の明度のみが変化する明暗フリップフロップ性(主に明度のみが変化する特性)のみでなく、第1の画像(24)の色調も変化するカラーフリップフロップ性(明度だけでなく、色調も変化する特性)を付与することができる。
【0112】
光輝性材料にIR吸収顔料、フォトクロミック顔料、示温材料及びサーモクロミック材料等の機能性材料を加えてもよい。ただし、IR吸収顔料、フォトクロミック顔料、示温材料、サーモクロミック材料等の機能性材料を加える場合は、本発明における潜像印刷物の効果に影響がない範囲で加える必要がある。
【0113】
第3の画素(33)、第4の画素(34)を形成するインキは、透明である必要がある。インキは透明であればグロス系でもマット系でも良いが、第1の画素(30)、第2の画素(32)を形成するインキよりもマット系の透明インキを用いることが望ましい。マット系のインキを使用すると第1の画像(24)に達する光の量を遮る割合が高くなり、第2の画像(25)の視認性が高くなる。
【0114】
また、この透明なインキには、蛍光顔料や燐光顔料、蓄光顔料等の発光顔料の他に、IR吸収顔料、フォトクロミック顔料、示温材料、サーモクロミック材料等の機能性材料を加えてもよい。ただし、IR吸収顔料、フォトクロミック顔料、示温材料、サーモクロミック材料等の機能性材料を加える場合は、透明性を失わない顔料の選定が必要であり、本発明における潜像印刷物の効果に影響がない範囲で加える必要がある。
【0115】
図18に、第1の画像(24)と第2の画像(25)との重ね合わせにおける適正な位置関係を示す。第1の画像(24)に含まれる背景画像(26)を構成する第1の画素(30)と、情報画像(27)を構成する第2の画素(32)とが同一ピッチ(P1)で配置されている。
【0116】
第2の画像(25)に含まれる第1の潜像画像(28)を構成する第3の画素(33)は、第1の画素(30)の上に重ねて形成される。
【0117】
第2の画像(25)に含まれる第2の潜像画像(29)を構成する第4の画素(34)は、第1の画素(30)、第2の画素(32)のいずれも形成されていない非画素領域(31)に形成される。
【0118】
ここで、第2の画素(32)の上部にはいかなる画素も重ねて形成されてはならない。印刷順序としては、第1の画像(24)を印刷した後、第2の画像(25)を印刷する。
【0119】
光輝性インキで形成された第1の画素(30)上に、透明性インキで形成された第3の画素(33)が形成される。拡散反射時には、第3の画素(33)は不可視であるため、第3の画素(33)で構成された第1の潜像画像(28)は出現しない。正反射時には、第3の画素(33)は第1の画素(30)に対して強いコントラストを有し、第1の潜像画像(28)が出現し視認可能となる。しかし、UV照射時には、光輝性インキで形成された第1の画素(30)にUV光が吸収されるため、第3の画素(33)は発光が抑制されて第1の潜像画像(28)が出現しない。
【0120】
非画素領域(31)において、透明インキで形成された第4の画素(34)は、拡散反射時、正反射時のいずれであっても出現せず第2の潜像画像(29)は不可視状態である。UV照射時には、第4の画素(34)は強く発光し、第2の潜像画像(29)が出現し視認可能となる。
【0121】
ここで、第1の画像(24)において情報画像(27)を形成する第2の画素(32)上に、透明インキで形成される第3の画素(33)又は第4の画素(34)を重ねて形成すると、透明インキが重なった領域は正反射光下において情報画像(27)が消失せず、第1の潜像画像(28)の出現を妨げることとなる。そこで、第2の画素(32)上には、透明インキによる第3の画素(33)又は第4の画素(34)のいずれも重ねて形成しないことにより、正反射光下において情報画像(27)を完全に消失させることができる。
【0122】
第1の画像(24)の背景画像(26)を構成する第1の画素(30)と情報画像(27)を構成する第2の画素(32)とを隣接して形成することが望ましく、第2の画像(25)の第2の潜像画像(29)を構成する第4の画素(34)を第1の画素(30)、第2の画素(32)と重ならないように形成する必要があり、第3の画素(33)の画素幅が第1の画素(30)の画素幅以内の幅に収まるように、第3の画素(33)の画素幅≦第1の画素(30)の画素幅で設計する必要がある。
【0123】
第3の画素(33)の画素面積率が大きいほど、正反射光下で出現する第1の潜像画像(28)の視認性が高くなる。このため、第1の画素(30)の画素幅とほぼ同じ画素幅で設計することが望ましい。しかし、第3の画素(33)の画素幅の値が第1の画素(30)の画素幅に近づく程、製造時における刷り合わせズレに対する許容度が小さくなる。そこで、印刷を行う機械における刷り合わせ精度を考慮して、それぞれ第1の画素(30)の画素幅及び第3の画素(33)の画素幅を設計することが望ましい。
【0124】
なお、上述のように、情報画像(27)を構成する第2の画素(32)上に第2の潜像画像(29)を構成する第4の画素(34)が重ならないことが、第2の潜像画像(29)の視認性を向上させるために必要である。しかし、印刷時の刷り合わせのズレ等により、第2の画素(32)上に第1の潜像画像(28)を構成する第3の画素(33)が若干重なったとしても、第3の画素(33)は、背景画像(26)を構成する第1の画素(30)上に重なる面積が大きい。このため、第2の潜像画像(29)の視認性への影響は小さい。従って、第2の画素(32)上に第3の画素(33)が若干重なった場合も本発明の技術的範囲内に含まれるものとする。
【0125】
図19(a)〜(c)に、光源(35)又はUV光源(37)、潜像印刷物(21)、観察者(36a)の位置関係、並びにそれぞれにおける潜像印刷物(21)の視認状態を示す。
【0126】
図19(a)に示されるように、拡散反射光下、即ち潜像印刷物(21)に入射する光の角度と、観察者(36a)と潜像印刷物(21)とを結ぶ角度とが大きく異なる状態で観察した場合、観察者(36a)には第1の画像(24)が視認される。
【0127】
潜像印刷物(21)を、図19(b)に示されるように、正反射光下、即ち潜像印刷物(21)に入射する光の角度と、観察者(36a)と潜像印刷物(21)とを結ぶ角度がほぼ同じ状態で観察した場合、観察者(36a)には第1の潜像画像(28)が視認される。
【0128】
潜像印刷物(21)を、図19(c)に示されるように、UV光源(37)によるUV光照射時に観察した場合、観察者(36a)には第2の潜像画像(29)が視認される。このように、観察状態に応じて優れたスイッチ効果により三通りの画像が視認される。
【0129】
本実施の形態2によれば、上記実施の形態1と同様に、拡散反射光下と正反射光下とで第1、第2の画像がスイッチする効果を有する印刷物において、正反射時に出現する第1の潜像画像とUV光照射時に出現する第2の潜像画像とを異なる画像とすることが可能であり、より高い偽造防止効果を得ることができる。
【0130】
上記実施の形態1、2における潜像印刷物の印刷方式は、オフセット印刷、フレキソ印刷、凸版印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷及び凹版印刷等のあらゆる印刷方式で形成することが可能である。また、金属インクを用いることが可能であればIJPやレーザプリンタ、昇華型プリンタ等の各種デジタル出力機でも形成することができ、この場合には、一枚、一枚の出力物の情報を変える、いわゆる可変印刷を実施することができる。
【0131】
上記実施の形態はいずれも一例であって、本発明の技術的範囲内において様々に変形することが可能である。
【符号の説明】
【0132】
1、21 潜像印刷物
2、22 基材
3、23 印刷画像
4、24 第1の画像
5、25 第2の画像
6、26 背景画像
7、27 情報画像
8、28 第1の潜像画像
9、29 第2の潜像画像
10 第1の画線
11 非画線領域
12 第2の画線
13 第3の画線
14 第4の画線
15、35 光源
16a、16b、16c、36a、36b、36c、 観察者
17、37 光源
30 第1の画素
31 非画素領域
32 第2の画素
33 第3の画素
34 第4の画素
【技術分野】
【0001】
本発明は、潜像印刷物に係わり、特に偽造防止効果を必要とする銀行券、パスポート、有価証券、身分証明書、カード及び通行券等のセキュリティ印刷物に好適であり、画像が観察角度の変化に応じて変化する潜像印刷物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年のスキャナ、プリンタ及びカラーコピー機等のデジタル機器の進展により、貴重印刷物の精巧な複製物を容易に作製することが可能となっている。複製や偽造を防止する偽造防止技術の一つとして、観察角度によって画像が変化するホログラムに代表される光学的なセキュリティ要素を貼付したものが多く存在するようになった。
【0003】
しかし、ホログラムは、インキを用いた印刷によって形成する従来の偽造防止技術とは異なり、複雑な製造工程と特殊な材料を用いて形成されることから、従来の偽造防止用印刷物と比較すると製造に手間がかかり、かつ、極めて高価である。このことから、金属インキ、干渉マイカ、酸化フレークマイカ、顔料コートアルミニウムフレーク及び光学的変化フレーク等の特殊な光反射性粉体をインキ又は塗料に配合し、かつ、特殊な材料同士の重ね合わせや複雑な網点構成を用いることによって、ホログラムと同様な画像変化を実現した一般的な印刷方法で形成可能な偽造防止用印刷物が開示されている。
【0004】
本出願人は、一般的で、かつ、比較的安価な材料及び簡単な印刷手段を使用していながら、特定の観察角度において、印刷物中の特定部位における人の目に認識される情報が、観察角度を変化させることによって、全く別の情報に変化する偽造防止用情報担持体に係る発明を出願している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−188973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の印刷物では、透明インキに発光顔料や発光染料を混合して潜像画像を形成した場合、この印刷物にUV光を照射して出現する発光画像は、正反射時に出現する潜像画像と同じ画像にしかならないという問題があった。
【0007】
潜像画像と発光画像とを異なる画像とするためには、発光顔料を含む透明インキと、発光顔料を含まない透明インキの2種類の透明インキを用いる必要があり、光輝性材料を含むインキを含めると合計で3種類のインキを用いる必要があった。この場合でも発光画像は正反射時に出現する画像に含まれたデザイン(例えば正反射時の画像がABという画像であれば、発光画像はAあるいはBとするデザイン)とする必要があり、潜像画像と発光画像とを全く異なる画像とすることは不可能であった。
【0008】
本発明は上記事情に鑑み、光輝性材料を含むインキと透明なインキとを用いて拡散反射光下と正反射光下とで画像がスイッチする効果を有する印刷物であって、正反射時に出現する潜像画像とUV光照射時に出現する発光画像とを異なる画像とすることで偽造防止効果を高めることが可能な潜像印刷物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明における潜像印刷物は、基材上の少なくとも一部に印刷画像を備え、印刷画像は、光輝性材料を含み基材と異なる色の材料で形成された第1の画像の上に、発光性材料を含む透明な材料によって形成された第2の画像が形成されており、第1の画像は、背景画像と情報画像とを有し、背景画像は、第1の画像要素が所定ピッチで所定方向に複数配置された背景要素群によって形成されており、情報画像は、第2の画像要素が所定ピッチで所定方向に複数配置された情報要素群によって形成されており、第2の画像は、第1の潜像画像と第2の潜像画像とを有し、第1の潜像画像は、第3の画像要素が所定ピッチで所定方向に複数配置された第1の潜像画像要素群によって形成されており、第2の潜像画像は、第4の画像要素が所定ピッチで所定方向に複数配置された第2の潜像画像要素群によって形成されており、所定ピッチ内に、第1の画像要素、第2の画像要素及び第4の画像要素が隣接又は近接して配置されており、第1の画像要素上に第3の画像要素が重なるように形成されており、拡散反射光が支配的な観察角度領域では第1の画像が視認可能であり、正反射光が支配的な観察角度領域では第1の潜像画像が視認可能であり、UV光が照射された状況では第2の潜像画像が視認可能であることを特徴とする。
【0010】
本発明における潜像印刷物は、第1の画像要素、第2の画像要素、第3の画像要素、第4の画像要素が、画線又は画素であることを特徴とする。
【0011】
本発明における潜像印刷物は、第3の画像要素の所定方向における幅が、第1の画像要素の所定方向における幅以下であることを特徴とする。
【0012】
本発明における潜像印刷物は、第一の画像の画線面積率が、20%から80%の範囲内で形成されて成ることを特徴とする
【0013】
本発明における潜像印刷物は、第一の画像における背景画像の面積率が、20%から60%の範囲内で形成され、第一の画像における情報画像の面積率が、背景画像の面積率を超えず、かつ、10%から40%の範囲内で形成されることを特徴とする。
【0014】
本発明における潜像印刷物は、所定ピッチが、0.1mmから5mmの範囲内で形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の潜像印刷物によれば、UV吸収能を有する光輝性材料を含んだインキで形成された画像と、発光顔料を含んだ透明インキで形成された画像とを、一定の規則に従って重ね合わせることで、刷色数を増やすことなく、正反射時に出現する潜像画像とUV光照射時に出現する発光画像とが全く異なる偽造防止効果を向上させることが可能な印刷物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態1による潜像印刷物を示す説明図である。
【図2】(a)は同潜像印刷物における画像を示し、この画像が(b)に示された第1の画像と、(c)に示された第2の画像とを含むことを示す説明図である。
【図3】(a)は同潜像印刷物における第1の画像を示し、この画像が(b)に示された背景画像と、(c)に示された情報画像とを含むことを示す説明図である。
【図4】(a)は同潜像印刷物における第2の画像を示す、この画像が(b)に示された第1の潜像画像と、(c)に示された第2の潜像画像とを含むことを示す説明図である。
【図5】同潜像印刷物における第1の画像を一部拡大して示し、この画像が第1の画線、第2の画線を含むことを示す説明図である。
【図6】同潜像印刷物における第2の画像を一部拡大して示し、この画像が第3の画線、第4の画線を含むことを示す説明図である。
【図7】(a)は同潜像印刷物における第1の画像に含まれる第1の画線を拡大して示し、(b)は同潜像印刷物における第1の画像に含まれる第2の画線を拡大して示す説明図である。
【図8】(a)は同潜像印刷物における第2の画像に含まれる第3の画線を拡大して示し、(b)は同潜像印刷物における第2の画像に含まれる第4の画線を拡大して示す説明図である。
【図9】同潜像印刷物における第1の画像に含まれる第1、第2の画線と第2の画像に含まれる第3、第4の画線との重ね合わせの位置関係を示す説明図である。
【図10】(a)は、観察者の視点が、拡散反射光が支配的な観察角度領域にある場合に同潜像印刷物中に現れる画像を示し、(b)は、観察者の視点が、正反射光が支配的な観察角度領域にある場合に同潜像印刷物中に現れる画像を示し、(c)は、UV光を照射した場合に同潜像印刷物中に現れる画像を示す説明図である。
【図11】(a)は、同潜像印刷物における第1の画像に含まれる第1、第2の画線の具体的な数値を示し、(b)は、同潜像印刷物における第2の画像に含まれる第3、第4の画線の具体的な数値を示す説明図である。
【図12】本発明の実施の形態2による潜像印刷物を示す説明図である。
【図13】(a)は同潜像印刷物における画像を示し、この画像が(b)に示された第1の画像と、(c)に示された第2の画像とを含むことを示す説明図である。
【図14】(a)は同潜像印刷物における第1の画像を示し、この画像が(b)に示された背景画像と、(c)に示された情報画像とを含むことを示す説明図である。
【図15】(a)は同潜像印刷物における第2の画像を示す、この画像が(b)に示された第1の潜像画像と、(c)に示された第2の潜像画像とを含むことを示す説明図である。
【図16】同潜像印刷物における第1の画像を一部拡大して示し、この画像が第1の画素、第2の画素を含むことを示す説明図である。
【図17】同潜像印刷物における第2の画像を一部拡大して示し、この画像が第3の画素、第4の画素を含むことを示す説明図である。
【図18】潜像印刷物における第1の画像に含まれる第1、第2の画素と第2の画像に含まれる第3、第4の画素との重ね合わせの位置関係を示す説明図である。
【図19】(a)は、観察者の視点が、拡散反射光が支配的な観察角度領域にある場合に同潜像印刷物中に現れる画像を示し、(b)は、観察者の視点が、正反射光が支配的な観察角度領域にある場合に同潜像印刷物中に現れる画像を示し、(c)は、UV光を照射した場合に同潜像印刷物中に現れる画像を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他のいろいろな実施の形態が含まれる。
【0018】
一般に、透明インキを用いた場合、品質管理上透明インキの存在を確認できるように可視化させるため、発光顔料や発光染料等を混合することが行われる。以下の実施の形態による潜像印刷物は、発光顔料や発光染料等により正反射光下で可視化される潜像画像の他に、UV光を照射して可視化する異なる潜像画像を備えている。
(1)実施の形態1
【0019】
本発明の実施の形態1による潜像印刷物について、図面を参照して説明する。
【0020】
なお、実施の形態1による潜像印刷物では画線により画像を構成しており、実施の形態2による潜像印刷物では画素により画像を構成している。
【0021】
ここで画線とは、印刷物における画像を構成する最小単位である印刷網点を、所定方向に隙間無く連続して配置することにより形成した画像要素であって、例えば、直線、曲線、波線、点線や破線等の分断線等が含まれ、画線の形状は如何なるものであっても本発明における画線に含まれるものとする。
【0022】
画素とは、印刷物における画像を構成する最小単位である印刷網点を複数集合させて形成した一塊の画像要素であって、例えば、円、三角形や四角形等を含む多角形、星形等の各種図形、あるいは文字や記号等が含まれ、濃淡の変化が面積率、即ち点の大小により表現される網点形状であり、画素の形状は如何なるものであっても本発明における画素に含まれるものとする。また、画像要素は画素、画線のいずれか又はその組み合わせであるものとする。
【0023】
なお、画線により画像を構成して成る実施の形態1においては、課題を解決するための手段における第1の画像要素は第1の画線、背景要素群は画線群、第2の画像要素は第2の画線、情報要素群は画線群、第3の画像要素は第3の画線、第1の潜像画像要素群は画線群、第4の画像要素は第4の画線、第2の潜像画像要素群は画線群として説明する。
【0024】
図1に、本実施の形態1による潜像印刷物(1)を示す。潜像印刷物(1)は、基材(2)上の少なくとも一部に印刷画像(3)を有し、印刷画像(3)中には後述するように第1の画像の上に第2の画像が重なって形成されている。
【0025】
なお、基材(2)は上質紙、コート紙、プラスティック板等、平坦な面を有するものであれば如何なるものであってもよく、材質や外形形状、寸法等に関して限定されない。
【0026】
また、印刷画像(3)は、着色された画線を含むものであればよく、色等について限定されない。
【0027】
図2(a)に示された印刷画像(3)は、図2(b)に示された第1の画像(4)の上面に図2(c)に示された第2の画像(5)を含む構成を有する。
【0028】
ここで、第1の画像(4)は、拡散反射光下において視認可能な画像であり、UV(紫外線)光を吸収する特性を有する光輝性材料を含んだインキ(光輝性インキ)で形成されており、画線面積率(一定面積中に占める画線面積の割合)は、20〜80%の範囲で形成することが望ましい。
【0029】
なお、光輝性インキの光反射特性であるが、インキを一般的なコート紙上に網点面積率100%で印刷した場合、正反射光下の明度の値が100以上であり、拡散反射光下における明度(最小明度)と正反射光下における明度(最大明度)との差が50以上であることが望ましい。なぜなら、これを下回る反射特性しか備えないインキを用いた場合、正反射光下での第一の画像(4)の消失効果が低くなり、本発明における効果である画像のチェンジ効果が失われる可能性が生じるためである。
【0030】
第2の画像(5)は、後述するように正反射光下で視認可能な第1の潜像画像と、UV光を照射されて視認可能な第2の潜像画像とを含んでおり、発光顔料、発光染料等の発光性を有する材料を含む透明インキで形成されている。なお、発光色は如何なるものであってもよい。インキは、第1の画像(4)を形成するインキよりも光沢性が低くマット調を有するものであることが望ましい。
【0031】
マット系インキの光反射特性であるが、インキを一般的なコート紙上に網点面積率100%で印刷した場合、正反射光下の明度の値が光輝性インキの明度の値より20以上低く、拡散反射光下における明度(最小明度)と正反射光下における明度(最大明度)との差が30以下であることが望ましい。なぜなら、正反射光下で出現する画像は、光輝性インキとマット系インキの反射率の差異によって画像が可視化されるため、光輝性インキとマット系インキの明度の差異が20を下回る場合、画像を容易に視認することが難しくなるためである。
【0032】
図3(a)に示された第1の画像(4)は、図3(b)に示された背景画像(6)と図3(c)に示された情報画像(7)とを含んでいる。なお、背景画像(6)と情報画像(7)とは同一の光輝性インキにより形成される。ここでは、情報画像(7)により「日本」という情報が出現する。
【0033】
背景画像(6)は、階調が一定、即ち画線面積率が一定であり、面積率は20〜60%の範囲内であることが望ましい。これは、20%に満たない面積率で画像を形成した場合、正反射光下で出現する画像の視認性が低くなってしまうためである。また、第一の画像(4)には、背景画像(6)の他に、情報画像(7)及び後述する非画線領域(11)が必須であり、これらの画線や領域との割合を考慮すると、背景画像(6)は60%以下に面積率を留めることが望ましい。
【0034】
情報画像(7)は、有意な情報を有し、2値画像に限らず多階調を有するものであってもよく、面積率は10〜40%の範囲内であることが望ましい。これは、10%に満たない面積率で画像を形成した場合、充分な濃度を得ることができず、視認性の低い画像しか形成できないためである。また、40%を超える面積率で形成するには、背景画像(6)及び後述する非画線領域(11)の画線面積率を大きく削る必要があり、この場合には、正反射光下で出現する画像の視認性やUV照射時に出現する画像の視認性が大きく損なわれるためである。
【0035】
図4(a)に示された第2の画像(5)は、図4(b)に示された第1の潜像画像(8)と図4(c)に示された第2の潜像画像(9)とを含んでいる。第1の潜像画像(8)は正反射時に出現する画像であり、この画像を出現させるための有意な情報を有し、2値画像に限らず多階調を有するものであってもよく、面積率は図3(b)に示された背景画像(6)の面積率を超えない範囲である必要がある。ここでは、第1の潜像画像(8)により「桜の絵柄」が出現する。
【0036】
第2の潜像画像(9)はUV光照射時に出現する画像であり、この画像を出現させるための有意な情報を有し、2値画像に限らず多階調を有するものであってもよく、面積率は100%から第1の画像(4)の最大面積率を差し引いた値により決定され、20%以上を有することが望ましい。ここでは、第2の潜像画像(9)により「OK」の文字が出現する。
【0037】
図5に、第1の画像(4)の一部を拡大し、第1の画像(4)に含まれる背景画像(6)を形成する第1の画線(10)、情報画像(7)を形成する第2の画線(12)、第1の画線(10)及び第2の画線(12)のいずれも存在しない非画線領域(11)の配置を示す。
【0038】
第1の画線(10)、第2の画線(12)は、所定で所定方向に規則的に配置されている。ここで所定方向とは、画線と直交する方向、即ち図中上下方向をいう。
【0039】
第1の画線(10)は画線幅(W1)を有し、所定ピッチ(P1)で配置されて画線群を構成することで背景画像(6)を形成する。ピッチ(P1)は、印刷の再現性及び画像の解像度等を考慮して設定することが望ましく、例えば、0.1〜5mmとしてもよい。
【0040】
第2の画線(12)は画線幅(W3)を有し、第1の画線(10)と同様に所定ピッチ(P1)で所定方向に配置されて画線群を構成することで情報画像(7)を形成する。
【0041】
非画線領域(11)は幅(W2)を有し、この領域には後述するように第2の潜像画像(9)を形成する第4の画線(14)が配置される。この非画線領域(11)の幅(W2)を確保するため、第2の画線(12)はピッチ(P1)の範囲内において第1の画線(10)に近接して配置されていることが望ましい。
【0042】
第1の画線(10)と第2の画線(12)とが重なって形成された場合には、重なりあった領域において不必要な濃淡が生じてしまい、その濃淡は正反射光下で出現する第2の画像(5)に反映されることとなり、望ましくない。
【0043】
第1の画線(10)と第2の画線(12)とは、必ずしも隣接するように形成する必要はなく、近接させて形成してもよい。
【0044】
なお、図5における一部拡大図において、第1の画線(10)は横縞の画線で示されており、第2の画線(12)は縦縞の画線で示されている。同様に、後述する図8における一部拡大図において、第3の画線(13)、第4の画線(14)は斜縞(ハッチング)の画線で示されている。しかし、これらの表示はそれぞれの画線の構成を区別しやすくするために行っているものであって、実際の各画線が縦縞や斜縞等で形成されているわけではない。
【0045】
図6に、第2の画像(5)の一部を拡大し、第1の潜像画像(8)を形成する第3の画線(13)、第2の潜像画像(9)を形成する第4の画像(14)の配置を示す。
【0046】
第3の画線(13)は画線幅(W4)を有し、ピッチ(P1)で所定方向に配置されて画線群を構成することで第1の潜像画像(8)を形成する。
【0047】
第4の画線(14)は画線幅(W5)を有し、ピッチ(P1)で所定方向に配置されて画線群を構成することで第2の潜像画像(9)を形成する。この第4の画線(14)が、上述した非画線領域(11)内に形成される。
【0048】
第1の画線(10)及び第2の画線(12)には、着色顔料を付与してもよい。着色顔料の色は、黒、赤、青又は黄色等のいずれの色相であってもよい。例えば、第1の画線(10)、第2の画線(12)を形成するインキに、光輝性材料とともに着色顔料を混合したり、インキ同士を混ぜ合わせたりしてもよく、あらかじめ着色インキで第1の画線(10)、第2の画線(12)による第1の画像(4)と同じ画像を形成し、その後、光輝性材料を含むインキで同じ第1の画像(4)を重ねあわせて形成してもよい。
【0049】
ただし、過剰な量の顔料を混合した場合には、第1の画像(4)における階調差(濃淡の差)が大きくなりインキ中の光輝性材料の混合割合が低下したり、又は正反射光下での観察において第1の画像(4)が十分に消失しなかったり、という現象が起こり得る。よって、顔料同士を混合する場合、又はインキ同士を混合する場合には、いずれの色の着色顔料を混合する場合でもインキ中の光輝性材料の配合割合の2分の1の量を超えない範囲に留めることが望ましい。
【0050】
下地に、着色インキであらかじめ第1の画像(4)と同じ画像を形成することで色を付与する場合には、いかなる色でいかなる濃度のインキを用いたとしても、十分なスイッチ効果を得ることができる。
【0051】
なお、上述した光輝性材料として、アルミニウム粉末、銅粉末、亜鉛粉末、錫粉末、真鍮粉末、リン化鉄、酸化チタン、あるいは鱗片状マイカ粉末等、一般的な金属粉顔料を用いてもよい。
【0052】
光輝性材料として挙げたチタンやアルミニウム、亜鉛、真鍮等の金属粉末は、紫外線を吸収する特性、いわゆる紫外線吸収能を有することが広く知られおり、これらの材料は、従来からUVカットガラスやUVカットフィルムの材料として一般に広く用いられている。また、酸化チタンは高い紫外線吸収剤機能を有することが知られており、化粧品においてUVカット機能を付与する場合に用いられる。なお、本出願人はすでに特許第3680908号公報や特許第4487090号公報において、酸化チタンに代表される紫外線吸収剤と蛍光発光インキと組み合わせた印刷物を出願している。このことから、蛍光発光インキの上に紫外線吸収剤を重ねて印刷することによって、優れた紫外線吸収効果を得る方法が一般的であるが、紫外線吸収剤の上に蛍光発光インキを重ねて形成しても同様な効果を得ることもできる。
【0053】
虹彩色パール顔料及び鱗片状顔料等の一般的なパール顔料、ガラスフレーク顔料又はコレステリック液晶顔料等の機能性顔料を用いた場合には、第1の画像(4)の明度のみが変化する明暗フリップフロップ性(主に明度のみが変化する特性)のみでなく、第1の画像(4)の色調も変化するカラーフリップフロップ性(明度だけでなく、色調も変化する特性)を付与することができる。
【0054】
なお、光輝性材料にIR吸収顔料、フォトクロミック顔料、示温材料、サーモクロミック材料等の機能性材料を加えてもよい。ただし、IR吸収顔料、フォトクロミック顔料、示温材料、サーモクロミック材料等の機能性材料を加える場合は、本発明における潜像印刷物の効果に影響がない範囲で加える必要がある。
【0055】
第3の画線(13)、第4の画線(14)を形成するインキは、透明である必要がある。インキは透明であればグロス系でもマット系でも良いが、第1の画線(10)、第2の画線(12)を形成するインキよりもマット系の透明インキを用いることが望ましい。マット系のインキを使用すると第1の画像(4)に達する光の量を遮る割合が高くなり、第2の画像(5)の視認性が高くなる。
【0056】
また、この透明なインキには、蛍光顔料や燐光顔料、蓄光顔料等の発光顔料の他に、IR吸収顔料、フォトクロミック顔料、示温材料、サーモクロミック材料等の機能性材料を加えてもよい。ただし、IR吸収顔料、フォトクロミック顔料、示温材料、サーモクロミック材料等の機能性材料を加える場合は、透明性を失わない顔料の選定が必要であり、本発明における潜像印刷物の効果に影響がない範囲で加える必要がある。
【0057】
図7(a)に、第1の画像(4)に含まれる背景画像(6)の一部を拡大し、背景画像(6)を構成する第1の画線(10)の配置を示す。
【0058】
上述のように、第1の画線(10)は画線幅(W1)を有し、所定ピッチ(P1)で所定方向に配置されて画線群を構成することで背景画像(6)を形成する。
【0059】
図7(b)に、第1の画像(4)に含まれる情報画像(7)の一部を拡大し、情報画像(7)を構成する第2の画線(12)の配置を示す。
【0060】
第2の画線(12)は画線幅(W3)を有し、第1の画線(10)と同様に所定ピッチ(P1)で所定方向に配置されて画線群を構成することで情報画像(7)を形成する。
【0061】
図8(a)に、第2の画像(5)に含まれる第1の潜像画像(8)の一部を拡大し、この画像(8)を構成する第3の画線(13)の配置を示す。
【0062】
第3の画線(13)は画線幅(W4)を有し、ピッチ(P1)で所定方向に配置されて画線群を構成することで第1の潜像画像(8)を形成する。
【0063】
図8(b)に、第2の画像(5)に含まれる第2の潜像画像(9)の一部を拡大し、この画像(9)を構成する第4の画線(14)の配置を示す。
【0064】
第4の画線(14)は画線幅(W5)を有し、ピッチ(P1)で所定方向に配置されて画線群を構成することで第2の潜像画像(9)を形成する。
【0065】
図9に、第1の画像(4)と第2の画像(5)との重ね合わせにおける適正な位置関係を示す。第1の画像(4)に含まれる背景画像(6)を構成する第1の画線(10)と、情報画像(7)を構成する第2の画線(12)とが同一ピッチ(P1)で所定方向に配置されている。
【0066】
第2の画像(5)に含まれる第1の潜像画像(8)を構成する第3の画線(13)は、第1の画線(10)の上に重ねて形成される。
【0067】
第2の画像(5)に含まれる第2の潜像画像(9)を構成する第4の画線(14)は、第1の画線(10)、第2の画線(12)のいずれも形成されていない非画線領域(11)に形成される。
【0068】
ここで、第2の画線(12)の上部にはいかなる画線も重ねて形成されてはならない。なお、印刷順序としては、第1の画像(4)を印刷した後、第2の画像(5)を印刷する。
【0069】
光輝性インキで形成された第1の画線(10)上に、透明性インキで形成された第3の画線(13)が形成される。拡散反射時には、第3の画線(13)は不可視であるため、第3の画線(13)で構成された第1の潜像画像(8)は出現しない。正反射時には、第3の画線(13)は第1の画線(10)に対して強いコントラストを有し、第1の潜像画像(8)が出現し視認可能となる。しかし、UV照射時には、光輝性インキで形成された第1の画線(10)にUV光が吸収されるため、第3の画線(13)は発光が抑制されて第1の潜像画像(8)が出現しない。
【0070】
非画線領域(11)において、透明インキで形成された第4の画線(14)は、拡散反射時、正反射時のいずれであっても出現せず第2の潜像画像(9)は不可視の状態である。UV照射時には、第4の画線(14)は強く発光し第2の潜像画像(9)が出現し視認可能となる。
【0071】
ここで、第1の画像(4)において情報画像(7)を形成する第2の画線(12)上に、透明インキで形成される第3の画線(13)又は第4の画線(14)を重ねて形成すると、透明インキが重なった領域は正反射光下において情報画像(7)が消失せず、第1の潜像画像(8)の出現を妨げることとなる。そこで、第2の画線(12)上には、透明インキによる第3の画線(13)又は第4の画線(14)のいずれも重ねて形成しないことにより、正反射光下において情報画像(7)を完全に消失させることができる。
【0072】
第1の画像(4)の背景画像(6)を構成する第1の画線(10)と情報画像(7)を構成する第2の画線(12)とを隣接して形成することが望ましく、第2の画像(5)の第2の潜像画像(9)を構成する第4の画線(14)を第1の画線(10)、第2の画線(12)と重ならないように形成する必要があり、第3の画線(13)の画線幅(W4)が第1の画線(10)の画線幅(W1)以内の幅に収まるように(W4≦W1)設計する必要がある。
【0073】
第3の画線(13)の画線面積率が大きいほど、正反射光下で出現する第1の潜像画像(8)の視認性が高くなる。このため、第1の画線(10)の画線幅(W1)とほぼ同じ画線幅で設計することが望ましい。しかし、第3の画線(13)の画線幅(W4)の値が第1の画線(10)の画線幅(W1)に近づく程、製造時における刷り合わせズレに対する許容度が小さくなる。そこで、印刷を行う機械における刷り合わせ精度を考慮して、それぞれの画線幅(W1)及び画線幅(W4)を設計することが望ましい。
【0074】
なお、上述のように、情報画像(7)を構成する第2の画線(12)上に第2の潜像画像(9)を構成する第4の画線(14)が重ならないことが、第2の潜像画像(9)の視認性を向上させるために必要である。しかし、印刷時の刷り合わせのズレ等により、第2の画線(12)上に第1の潜像画像(8)を構成する第3の画線(13)が若干重なったとしても、第3の画線(13)は、背景画像(6)を構成する第1の画線(10)上に重なる面積が大きい。このため、第2の潜像画像(9)の視認性への影響は小さい。従って、第2の画線(12)上に第3の画線(13)が若干重なった場合も本発明の技術的範囲内に含まれるものとする。
【0075】
図10(a)〜(c)に、光源(15)又はUV光源(17)、潜像印刷物(1)、観察者(16a)の位置関係、並びにそれぞれにおける潜像印刷物(1)の視認状態を示す。
【0076】
図10(a)に示されるように、拡散反射光下、即ち潜像印刷物(1)に入射する光の角度と、観察者(16a)と潜像印刷物(1)とを結ぶ角度とが大きく異なる状態で観察した場合、観察者(16a)には第1の画像(4)が視認される。
【0077】
潜像印刷物(1)を、図10(b)に示されるように、正反射光下、即ち潜像印刷物(1)に入射する光の角度と、観察者(16a)と潜像印刷物(1)とを結ぶ角度がほぼ同じ状態で観察した場合、観察者(16a)には第1の潜像画像(8)が視認される。
【0078】
潜像印刷物(1)を、図10(c)に示されるように、UV光源(17)によるUV光照射時に観察した場合、観察者(16a)には第2の潜像画像(9)が視認される。
【0079】
このように、観察状態に応じて優れたスイッチ効果により、三通りの画像が視認される。
【0080】
図11に、本実施の形態1による潜像印刷物(1)における第1の画像(4)を構成する第1の画線(10)の画線幅(W1)、第2の画線(12)の画線幅(W3)、非画線領域(11)の幅(W2)、第2の画像(5)を構成する第3の画線(13)の画線幅(W4)、第4の画線(14)の画線幅(W5)、並びにピッチ(P1)のそれぞれの具体的数値の一例を示す。
【0081】
本実施の形態1における一例によれば、第1の画像(4)を構成する第1の画線(10)の画線幅(W1)を0.20mmとし、第2の画線(12)の画線幅(W3)を0.15mmとし、非画線領域(11)の幅(W2)を0.15mmとし、第2の画像(5)を構成する第3の画線(13)の画線幅(W4)を0.18mmとし、第4の画線(14)の画線幅(W5)を0.15mmとし、それぞれのピッチ(P1)を0.5mmとする。
【0082】
また、第1の画線(10)、第2の画線(12)は、例えば、銀色のメタリックインキ(UV NO3 シルバー T&K TOKA製)を用いて形成してもよい。
【0083】
第3の画線(13)、第4の画線(14)は、例えばOPニス(T&K TOKA製 マットメジウム)に緑色発光顔料を2%配合したインキを用いて形成してもよい。
【0084】
本実施の形態1によれば、拡散反射光下と正反射光下とで第1、第2の画像がスイッチする効果を有する印刷物において、正反射時に出現する第1の潜像画像とUV光照射時に出現する第2の潜像画像とを異なる画像とすることが可能であり、より高い偽造防止効果を得ることができる。
(2)実施の形態2
【0085】
本発明の実施の形態2による潜像印刷物について、図面を参照して説明する。
【0086】
実施の形態2による潜像印刷物では、画像要素としての画素により画像を構成しており、画素は印刷物における画像を構成する最小単位に相当する。
【0087】
なお、画素により画像を構成して成る実施の形態2においては、課題を解決するための手段における第1の画像要素は第1の画素、背景要素群は画素群、第2の画像要素は第2の画素、情報要素群は画素群、第3の画像要素は第3の画素、第1の潜像画像要素群は画素群、第4の画像要素は第4の画素、第2の潜像画像要素群は画素群として説明する。
【0088】
図12に、本実施の形態2による潜像印刷物(21)を示す。潜像印刷物(21)は、基材(22)上の少なくとも一部に印刷画像(23)を有し、印刷画像(23)中において第1の画像の上に第2の画像が重なって形成されている。基材(22)は実施の形態1の基材(2)と同様に、上質紙、コート紙、プラスティック板等、平坦な面を有するものであれば如何なるものであってもよく、材質や外形形状、寸法等に関して限定されない。
【0089】
印刷画像(23)は、着色された画素を含むものであればよく、色等について限定されない。
【0090】
図13(a)に示された印刷画像23は、図13(b)に示された第1の画像(24)の上面に、図13(c)に示された第2の画像(25)を含んでいる。
【0091】
第1の画像(24)は拡散反射光下において視認可能な画像であり、UV光を吸収する特性を有する光輝性材料を含んだインキで形成されており、画素面積率(一定面積中に占める画素面積の割合)は20〜80%の範囲で形成することが望ましい。
【0092】
なお、光輝性インキの光反射特性については、実施の形態1において述べたように、インキを一般的なコート紙上に網点面積率100%で印刷した場合、正反射光下の明度の値が100以上で、拡散反射光下における明度と正反射光下における明度との差が50以上であることが望ましい。
【0093】
第2の画像(25)は、正反射光下で視認可能な第1の潜像画像と、UV光を照射されて視認可能な第2の潜像画像とを含んでおり、発光顔料、発光染料等の発光性を有する材料を含む透明インキで形成されている。インキは、第1の画像(24)を形成するインキよりも光沢性が低くマット調を有するものが望ましい。
【0094】
マット系インキの光反射特性については、上記実施の形態1において述べたように、インキを一般的なコート紙上に網点面積率100%で印刷した場合、正反射光下の明度の値が光輝性インキの明度の値より20以上低く、拡散反射光下における明度と正反射光下における明度との差が30以下であることが望ましい。
【0095】
図14(a)に示された第1の画像(24)は、図14(b)に示された背景画像(26)と図14(c)に示された情報画像(27)とを含んでいる。なお、背景画像(26)と情報画像(27)とは同一の光輝性インキにより形成される。ここでは、情報画像(27)により「日本」という情報が出現される。
【0096】
背景画像(26)は階調が一定、即ち画素面積率が一定であり、面積率は20〜60%の範囲内であることが望ましい。これは、20%に満たない面積率で画像を形成した場合、正反射光下で出現する画像の視認性が低くなってしまうためである。また、第1の画像(24)には、背景画像(26)の他に、情報画像(27)及び後述する非画素領域(31)が必須であり、これらの画素や領域との割合を考慮すると、背景画像(6)は60%以下に面積率を留めることが望ましい。
【0097】
情報画像(27)は、潜像画像を出現させるための有意な情報を有し、2値画像に限らず多階調を有するものであってもよく、面積率は10〜40%の範囲内であることが望ましい。これは、10%に満たない面積率で画像を形成した場合、充分な濃度を得ることができず、視認性の低い画像しか形成できないためである。また、40%を超える面積率で形成するには、背景画像(26)及び後述する非画線領域(31)の画線面積率を大きく削る必要があり、この場合には、正反射光下で出現する画像の視認性やUV照射時に出現する画像の視認性が大きく損なわれるためである。
【0098】
図15(a)に示された第2の画像(25)は、図15(b)に示された第1の潜像画像(28)と図15(c)に示された第2の潜像画像(29)とを含んでいる。第1の潜像画像(28)は正反射時に出現する画像であり、この画像を出現させるための有意な情報を有し多階調を有するものであってもよく、面積率は背景画像(26)の面積率を超えない範囲である必要がある。ここでは、第1の潜像画像(28)により「桜の絵柄」が出現する。
【0099】
第2の潜像画像(29)はUV光照射時に出現する画像であり、この画像を出現させるための有意な情報を有し多階調を有するものであってもよく、面積率は100%から第1の画像(24)の最大面積率を差し引いた値により決定され、20%以上を有することが望ましい。ここでは、第2の潜像画像(29)により「OK」の文字が出現する。
【0100】
図16に、第1の画像(24)の一部を拡大し、第1の画像(24)に含まれる背景画像(26)を形成する第1の画素(30)、情報画像(27)を形成する第2の画素(32)、第1の画素(30)及び第2の画素(32)のいずれも存在しない非画素領域(31)の配置を示す。第1の画素(30)、第2の画素(32)は、所定ピッチで所定方向に、ここでは所定ピッチで図中上下左右方向のマトリクス状に規則的に配置されている。
【0101】
第1の画素(30)は画素幅、ここでは円形の画素として、例えば、直径0.4mmを有し、所定ピッチ(P1)として、例えば、ピッチ0.6mmでマトリクス状に配置されて画素群を構成することで背景画像(26)を形成する。
【0102】
第2の画素(32)は画素幅、ここでは円形の画素として、例えば、直径0.3mmを有し、第1の画素(30)と同じピッチ(P1)としてここではピッチ0.6mmでマトリクス状に配置されて画素群を構成することで情報画像(27)を形成する。
【0103】
非画素領域(31)には、後述するように第2の潜像画像(29)を形成する第4の画素(34)が配置される。第1の画素(30)と第2の画素(32)とは、必ずしも隣接するように形成する必要はないが、非画素領域(31)に第4の画素(34)の配置が可能なように、第2の画素(32)を第1の画素(30)に対して配置する必要がある。
【0104】
第1の画素(30)と第2の画素(32)とが重なって形成された場合は、重なりあった領域において不必要な濃淡が生じ、その濃淡が正反射光下で出現する第2の画像(25)に反映され望ましくない。
【0105】
なお、図16における一部拡大図において、第1の画素(30)は横縞の画素で示されており、第2の画素(32)は縦縞の画素で示されている。同様に、後述する図17における一部拡大図において、第3の画素(33)、第4の画素(34)は斜縞(ハッチング)の画素で示されている。しかし、これらの表示はそれぞれの画素の構成を区別しやすくするために行っているものであって、実際の各画素が縦縞や斜縞等で形成されているわけではない。
【0106】
図17に、第2の画像(25)の一部を拡大し、第1の潜像画像(28)を形成する第3の画素(33)、第2の潜像画像(29)を形成する第4の画素(34)の配置を示す。
【0107】
第3の画素(33)は画素幅、ここでは円形の画素として、例えば、直径0.35mmを有し、所定ピッチ(P1)として第1の画素(30)と同様に、例えば、ピッチ0.6mmでマトリクス状に配置されて画素群を構成することで第1の潜像画像(28)を形成する。
【0108】
第4の画素(34)は画素幅として、例えば、直径0.20mmを有し、所定ピッチ(P1)としてピッチ0.6mmで配置されて画素群を構成することで第2の潜像画像(29)を形成する。この第4の画素(34)が、上述した非画素領域(31)内に形成される。
【0109】
上記第1の実施の形態と同様に、第1の画素(30)、第2の画素(32)には、着色顔料を付与してもよい。着色顔料の色は、黒、赤、青又は黄色等のいずれの色相であってもよい。例えば、第1の画素(30)、第2の画素(32)を形成するインキに、光輝性材料とともに着色顔料を混合したり、インキ同士を混ぜ合わせたりしてもよく、あらかじめ着色インキで第1の画素(30)、第2の画素(32)による第1の画像(24)と同じ画像を形成し、その後、光輝性材料を含むインキで同じ第1の画像(24)を重ね合わせて形成してもよい。
【0110】
光輝性材料として、アルミニウム粉末、銅粉末、亜鉛粉末、錫粉末、真鍮粉末、リン化鉄、酸化チタン、あるいは鱗片状マイカ粉末等、一般的な金属粉顔料を用いてもよい。
【0111】
虹彩色パール顔料及び鱗片状顔料等の一般的なパール顔料、ガラスフレーク顔料又はコレステリック液晶顔料等の機能性顔料を用いた場合には、第1の画像(24)の明度のみが変化する明暗フリップフロップ性(主に明度のみが変化する特性)のみでなく、第1の画像(24)の色調も変化するカラーフリップフロップ性(明度だけでなく、色調も変化する特性)を付与することができる。
【0112】
光輝性材料にIR吸収顔料、フォトクロミック顔料、示温材料及びサーモクロミック材料等の機能性材料を加えてもよい。ただし、IR吸収顔料、フォトクロミック顔料、示温材料、サーモクロミック材料等の機能性材料を加える場合は、本発明における潜像印刷物の効果に影響がない範囲で加える必要がある。
【0113】
第3の画素(33)、第4の画素(34)を形成するインキは、透明である必要がある。インキは透明であればグロス系でもマット系でも良いが、第1の画素(30)、第2の画素(32)を形成するインキよりもマット系の透明インキを用いることが望ましい。マット系のインキを使用すると第1の画像(24)に達する光の量を遮る割合が高くなり、第2の画像(25)の視認性が高くなる。
【0114】
また、この透明なインキには、蛍光顔料や燐光顔料、蓄光顔料等の発光顔料の他に、IR吸収顔料、フォトクロミック顔料、示温材料、サーモクロミック材料等の機能性材料を加えてもよい。ただし、IR吸収顔料、フォトクロミック顔料、示温材料、サーモクロミック材料等の機能性材料を加える場合は、透明性を失わない顔料の選定が必要であり、本発明における潜像印刷物の効果に影響がない範囲で加える必要がある。
【0115】
図18に、第1の画像(24)と第2の画像(25)との重ね合わせにおける適正な位置関係を示す。第1の画像(24)に含まれる背景画像(26)を構成する第1の画素(30)と、情報画像(27)を構成する第2の画素(32)とが同一ピッチ(P1)で配置されている。
【0116】
第2の画像(25)に含まれる第1の潜像画像(28)を構成する第3の画素(33)は、第1の画素(30)の上に重ねて形成される。
【0117】
第2の画像(25)に含まれる第2の潜像画像(29)を構成する第4の画素(34)は、第1の画素(30)、第2の画素(32)のいずれも形成されていない非画素領域(31)に形成される。
【0118】
ここで、第2の画素(32)の上部にはいかなる画素も重ねて形成されてはならない。印刷順序としては、第1の画像(24)を印刷した後、第2の画像(25)を印刷する。
【0119】
光輝性インキで形成された第1の画素(30)上に、透明性インキで形成された第3の画素(33)が形成される。拡散反射時には、第3の画素(33)は不可視であるため、第3の画素(33)で構成された第1の潜像画像(28)は出現しない。正反射時には、第3の画素(33)は第1の画素(30)に対して強いコントラストを有し、第1の潜像画像(28)が出現し視認可能となる。しかし、UV照射時には、光輝性インキで形成された第1の画素(30)にUV光が吸収されるため、第3の画素(33)は発光が抑制されて第1の潜像画像(28)が出現しない。
【0120】
非画素領域(31)において、透明インキで形成された第4の画素(34)は、拡散反射時、正反射時のいずれであっても出現せず第2の潜像画像(29)は不可視状態である。UV照射時には、第4の画素(34)は強く発光し、第2の潜像画像(29)が出現し視認可能となる。
【0121】
ここで、第1の画像(24)において情報画像(27)を形成する第2の画素(32)上に、透明インキで形成される第3の画素(33)又は第4の画素(34)を重ねて形成すると、透明インキが重なった領域は正反射光下において情報画像(27)が消失せず、第1の潜像画像(28)の出現を妨げることとなる。そこで、第2の画素(32)上には、透明インキによる第3の画素(33)又は第4の画素(34)のいずれも重ねて形成しないことにより、正反射光下において情報画像(27)を完全に消失させることができる。
【0122】
第1の画像(24)の背景画像(26)を構成する第1の画素(30)と情報画像(27)を構成する第2の画素(32)とを隣接して形成することが望ましく、第2の画像(25)の第2の潜像画像(29)を構成する第4の画素(34)を第1の画素(30)、第2の画素(32)と重ならないように形成する必要があり、第3の画素(33)の画素幅が第1の画素(30)の画素幅以内の幅に収まるように、第3の画素(33)の画素幅≦第1の画素(30)の画素幅で設計する必要がある。
【0123】
第3の画素(33)の画素面積率が大きいほど、正反射光下で出現する第1の潜像画像(28)の視認性が高くなる。このため、第1の画素(30)の画素幅とほぼ同じ画素幅で設計することが望ましい。しかし、第3の画素(33)の画素幅の値が第1の画素(30)の画素幅に近づく程、製造時における刷り合わせズレに対する許容度が小さくなる。そこで、印刷を行う機械における刷り合わせ精度を考慮して、それぞれ第1の画素(30)の画素幅及び第3の画素(33)の画素幅を設計することが望ましい。
【0124】
なお、上述のように、情報画像(27)を構成する第2の画素(32)上に第2の潜像画像(29)を構成する第4の画素(34)が重ならないことが、第2の潜像画像(29)の視認性を向上させるために必要である。しかし、印刷時の刷り合わせのズレ等により、第2の画素(32)上に第1の潜像画像(28)を構成する第3の画素(33)が若干重なったとしても、第3の画素(33)は、背景画像(26)を構成する第1の画素(30)上に重なる面積が大きい。このため、第2の潜像画像(29)の視認性への影響は小さい。従って、第2の画素(32)上に第3の画素(33)が若干重なった場合も本発明の技術的範囲内に含まれるものとする。
【0125】
図19(a)〜(c)に、光源(35)又はUV光源(37)、潜像印刷物(21)、観察者(36a)の位置関係、並びにそれぞれにおける潜像印刷物(21)の視認状態を示す。
【0126】
図19(a)に示されるように、拡散反射光下、即ち潜像印刷物(21)に入射する光の角度と、観察者(36a)と潜像印刷物(21)とを結ぶ角度とが大きく異なる状態で観察した場合、観察者(36a)には第1の画像(24)が視認される。
【0127】
潜像印刷物(21)を、図19(b)に示されるように、正反射光下、即ち潜像印刷物(21)に入射する光の角度と、観察者(36a)と潜像印刷物(21)とを結ぶ角度がほぼ同じ状態で観察した場合、観察者(36a)には第1の潜像画像(28)が視認される。
【0128】
潜像印刷物(21)を、図19(c)に示されるように、UV光源(37)によるUV光照射時に観察した場合、観察者(36a)には第2の潜像画像(29)が視認される。このように、観察状態に応じて優れたスイッチ効果により三通りの画像が視認される。
【0129】
本実施の形態2によれば、上記実施の形態1と同様に、拡散反射光下と正反射光下とで第1、第2の画像がスイッチする効果を有する印刷物において、正反射時に出現する第1の潜像画像とUV光照射時に出現する第2の潜像画像とを異なる画像とすることが可能であり、より高い偽造防止効果を得ることができる。
【0130】
上記実施の形態1、2における潜像印刷物の印刷方式は、オフセット印刷、フレキソ印刷、凸版印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷及び凹版印刷等のあらゆる印刷方式で形成することが可能である。また、金属インクを用いることが可能であればIJPやレーザプリンタ、昇華型プリンタ等の各種デジタル出力機でも形成することができ、この場合には、一枚、一枚の出力物の情報を変える、いわゆる可変印刷を実施することができる。
【0131】
上記実施の形態はいずれも一例であって、本発明の技術的範囲内において様々に変形することが可能である。
【符号の説明】
【0132】
1、21 潜像印刷物
2、22 基材
3、23 印刷画像
4、24 第1の画像
5、25 第2の画像
6、26 背景画像
7、27 情報画像
8、28 第1の潜像画像
9、29 第2の潜像画像
10 第1の画線
11 非画線領域
12 第2の画線
13 第3の画線
14 第4の画線
15、35 光源
16a、16b、16c、36a、36b、36c、 観察者
17、37 光源
30 第1の画素
31 非画素領域
32 第2の画素
33 第3の画素
34 第4の画素
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上の少なくとも一部に印刷画像を備え、
前記印刷画像は、光輝性材料を含み前記基材と異なる色の材料で形成された第1の画像の上に、発光性材料を含む透明な材料によって形成された第2の画像が形成されており、
前記第1の画像は、背景画像と情報画像とを有し、
前記背景画像は、第1の画像要素が所定ピッチで所定方向に複数配置された背景要素群によって形成されており、前記情報画像は、第2の画像要素が前記所定ピッチで前記所定方向に複数配置された情報要素群によって形成されており、
前記第2の画像は、第1の潜像画像と第2の潜像画像とを有し、
前記第1の潜像画像は、第3の画像要素が前記所定ピッチで前記所定方向に複数配置された第1の潜像画像要素群によって形成されており、前記第2の潜像画像は、第4の画像要素が前記所定ピッチで前記所定方向に複数配置された第2の潜像画像要素群によって形成されており、
前記所定ピッチ内に、前記第1の画像要素、前記第2の画像要素及び前記第4の画像要素が隣接又は近接して配置されており、前記第1の画像要素上に前記第3の画像要素が重なるように形成されており、
拡散反射光が支配的な観察角度領域では前記第1の画像が視認可能であり、正反射光が支配的な観察角度領域では前記第1の潜像画像が視認可能であり、UV光が照射された状況では前記第2の潜像画像が視認可能であることを特徴とする潜像印刷物。
【請求項2】
前記第1の画像要素、前記第2の画像要素、前記第3の画像要素、前記第4の画像要素は、画線、画素の少なくとも一つ又はそれぞれの組み合わせであることを特徴とする請求項1記載の潜像印刷物。
【請求項3】
前記第3の画像要素の前記所定方向における幅は、前記第1の画像要素の前記所定方向における幅以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の潜像印刷物。
【請求項4】
前記第一の画像の画線面積率は、20%から80%の範囲内で形成されて成ることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の潜像印刷物。
【請求項5】
前記第一の画像における前記背景画像の面積率は、20%から60%の範囲内で形成され、前記第一の画像における前記情報画像の面積率は、前記背景画像の面積率を超えず、かつ、10%から40%の範囲内で形成されることを特徴とする請求項4に記載の潜像印刷物。
【請求項6】
前記所定ピッチは、0.1mmから5mmの範囲内で形成されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の潜像印刷物。
【請求項1】
基材上の少なくとも一部に印刷画像を備え、
前記印刷画像は、光輝性材料を含み前記基材と異なる色の材料で形成された第1の画像の上に、発光性材料を含む透明な材料によって形成された第2の画像が形成されており、
前記第1の画像は、背景画像と情報画像とを有し、
前記背景画像は、第1の画像要素が所定ピッチで所定方向に複数配置された背景要素群によって形成されており、前記情報画像は、第2の画像要素が前記所定ピッチで前記所定方向に複数配置された情報要素群によって形成されており、
前記第2の画像は、第1の潜像画像と第2の潜像画像とを有し、
前記第1の潜像画像は、第3の画像要素が前記所定ピッチで前記所定方向に複数配置された第1の潜像画像要素群によって形成されており、前記第2の潜像画像は、第4の画像要素が前記所定ピッチで前記所定方向に複数配置された第2の潜像画像要素群によって形成されており、
前記所定ピッチ内に、前記第1の画像要素、前記第2の画像要素及び前記第4の画像要素が隣接又は近接して配置されており、前記第1の画像要素上に前記第3の画像要素が重なるように形成されており、
拡散反射光が支配的な観察角度領域では前記第1の画像が視認可能であり、正反射光が支配的な観察角度領域では前記第1の潜像画像が視認可能であり、UV光が照射された状況では前記第2の潜像画像が視認可能であることを特徴とする潜像印刷物。
【請求項2】
前記第1の画像要素、前記第2の画像要素、前記第3の画像要素、前記第4の画像要素は、画線、画素の少なくとも一つ又はそれぞれの組み合わせであることを特徴とする請求項1記載の潜像印刷物。
【請求項3】
前記第3の画像要素の前記所定方向における幅は、前記第1の画像要素の前記所定方向における幅以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の潜像印刷物。
【請求項4】
前記第一の画像の画線面積率は、20%から80%の範囲内で形成されて成ることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の潜像印刷物。
【請求項5】
前記第一の画像における前記背景画像の面積率は、20%から60%の範囲内で形成され、前記第一の画像における前記情報画像の面積率は、前記背景画像の面積率を超えず、かつ、10%から40%の範囲内で形成されることを特徴とする請求項4に記載の潜像印刷物。
【請求項6】
前記所定ピッチは、0.1mmから5mmの範囲内で形成されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の潜像印刷物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
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【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2012−171272(P2012−171272A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−36928(P2011−36928)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(303017679)独立行政法人 国立印刷局 (471)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(303017679)独立行政法人 国立印刷局 (471)
【Fターム(参考)】
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