潜像画像を有する印刷物
【課題】可視画像と潜像画像を有する印刷物であり、印刷物をカラー複写機で複製した場合に、可視画像と異なる潜像画像が出現する印刷物を提供する。
【解決手段】基材に、第1のハーフトーン領域と第2のハーフトーン領域が複数配置されて可視画像と潜像画像が形成された印刷物であり、各々第1のハーフトーン領域における第1の網点部と第2の網点部のいずれか一方と、第2のハーフトーン領域における第2の網点部をカラー複写機により複写した場合に第1の色から第2の色に変化する色材で形成し、第1のハーフトーン領域において前述の材料が形成されていない他方の領域を第1の色の色材で形成することで、通常光下で観察される可視画像と複写物に出現する潜像画像が全く異なる画像として出現する印刷物である。
【解決手段】基材に、第1のハーフトーン領域と第2のハーフトーン領域が複数配置されて可視画像と潜像画像が形成された印刷物であり、各々第1のハーフトーン領域における第1の網点部と第2の網点部のいずれか一方と、第2のハーフトーン領域における第2の網点部をカラー複写機により複写した場合に第1の色から第2の色に変化する色材で形成し、第1のハーフトーン領域において前述の材料が形成されていない他方の領域を第1の色の色材で形成することで、通常光下で観察される可視画像と複写物に出現する潜像画像が全く異なる画像として出現する印刷物である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙幣、旅券、有価証券、カード及び貴重印刷物等の偽造防止及び改ざん防止機能が必要とされる潜像画像を有する印刷物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、カラー複写機の高機能化及び高画質化に伴い、紙幣及び有価証券等の貴重印刷物の偽造品が出回り、深刻な問題となっている。そのため、従来から貴重印刷物には、複写機では再現することが困難な機能性インキや、網点構成から成る画像が多く用いられている。
【0003】
機能性インキを用いた印刷物としては、ランタノイド系希土類化合物を含むインキで印刷された印刷物がある(例えば、特許文献1参照。)。ランタノイド系希土類化合物とは、可視光領域において460nm、540nm及び650nm付近に主要な吸収ピークを有する組成物であるため、三波長光源下以外においては、薄い黄色として視認され、三波長蛍光灯を照射すると、濃い桃色として視認される。
【0004】
前述の特許文献1の印刷物においては、偽造防止印刷部としてランタノイド系希土類化合物を含むインキをベタ印刷することで形成し、色合わせ印刷部として偽造防止印刷部と同色のインキをベタ印刷することで形成する。この印刷物を通常光下で観察すると、偽造防止印刷部及び色合わせ部は、単色のベタ印刷領域として視認されるが、三波長蛍光灯を照射することで、色合わせ印刷部のみが変色し、異なる色のベタ印刷領域として視認され、その色変化の有無により真偽判別を行うものである。
【0005】
また、複製が困難な網点構成として、本出願人は、二つの異なる画像を同一平面上に網点画像として均等に配置する場合において、一般の商業印刷で使用されているシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)及びブラック(Bk)の基本インキを用いて、通常光下で観察される可視画像と、赤外線光下で観察される潜像画像を生成した網点印刷物について出願している(例えば、特許文献2参照。)。
【0006】
この印刷物は、一般の商業印刷で使用されているシアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)が赤外線吸収特性を有しないため、これらを重ね合わせた混色ブラックと、紫外線領域から赤外線領域までの全域にわたり吸収を示すカーボンブラックを主体としたブラック(Bk)を用いて可視画像及び潜像画像を形成する網点を配置している。
【0007】
前述のシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)及びブラック(Bk)を用いて所定の配置規則に基づき印刷された網点印刷物は、通常光下で視認することができる可視画像内に、赤外線カメラ等の鑑定装置を用いて観察することができる潜像画像を埋め込むことができる。当該網点印刷物は、特殊なインキを用いる必要がないため、安価に作製することが可能であり、現在の写真製版装置での複製が不可能であることから、偽造防止効果に優れる。
【0008】
また、本出願人は、潜像画像を形成する機能性材料として、サーモクロミックインキを用い、第1のハーフトーン領域及び第2のハーフトーン領域に形成する背景部をサーモクロミックインキによって形成し、第1のハーフトーン領域の画像部を、サーモクロミックインキが低温状態のときの色と略等色のインキによって形成し、第2のハーフトーン領域の画像部を、サーモクロミックインキが高温状態のときの色と略等色のインキにより形成することで、低温状態では第2のハーフトーン領域の画像部のみが、他の領域の色と異なることで第1の画像として可視化され、高温状態では、第1のハーフトーン領域の画像部のみが他の領域の色と異なることで第2の画像として可視化される画像表示体について出願している(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第4378789号公報
【特許文献2】特許第3544536号公報
【特許文献3】特開2008−126474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に開示されている印刷物は、偽造防止印刷部と色合わせ部を、別々のベタ領域として形成し、三波長蛍光灯を照射した際の変色の有無により真偽判別を行っている。そのことから、基材上に付与する際には、各印刷部を、同一領域に重なるようなデザインで作製することが困難であり、デザイン上の制約を受けるという問題がある。
【0011】
また、特許文献2において開示された技術を用いて作製した印刷物を、カラー複写機を用いて複製することで得られる偽造品は、肉眼では、真正品と区別することができず、例えば、銀行及び入国管理審査等の各種窓口業務における検査担当者が、赤外線カメラ等の鑑定装置を用いて当該印刷物を照射した際の、潜像画像の有無又は変色の有無により、初めて偽造品であることを確認することが可能となる。よって、各種窓口業務では、偽造防止技術に併せた鑑定装置を適宜準備する必要がある。
【0012】
また、鑑定装置を用いているが、いずれも検査担当者が目視検査により確認することから、見落とす可能性があるという問題がある。そこで、各種窓口業務では、検査担当者が鑑定装置を用いることなく、目視により瞬時にカラー複写機を用いて複製した偽造品であることを判別することが可能な偽造防止印刷物が求められている。
【0013】
また、特許文献3に開示されている印刷物は、真正品の印刷物に対する偽造防止抵抗力は極めて高いものの、印刷物に温度変化を与えることで可視画像から潜像模様へと画像をスイッチさせることを目的としているため、特許文献2と同様に、カラー複写機を用いて複製された偽造品を判別するためには、製品に対して潜像画像を観察することができる所定の温度にしなければならない。そのため、瞬時に真正品であるか偽造品であるかを判別することができないという課題が残されていた。
【0014】
本発明は、上記課題の解決を目的とするものであり、カラー複写機を用いて偽造品を作製した際に、真正品と複写物で全く異なる画像を出現させることで、瞬時に偽造品であることを判別することができ、かつ、デザイン上の制約を受けることのない潜像画像を有する印刷物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の潜像画像を有する印刷物は、基材上に、第1のハーフトーン領域と第2のハーフトーン領域とが隣接するように複数配置されて可視画像と潜像画像が形成された印刷物であって、第1のハーフトーン領域は、潜像画像の一部のみを形成する第1の網点部又は第1の背景部のいずれか一方と、第1の網点部又は第1の背景部のいずれか一方と隣接する位置に、可視画像及び潜像画像の一部を形成する第1の網点部又は第1の背景部の他方とを有し、第1の網点部又は第1の背景部の一方は、ランタノイド系希土類化合物を含有し、かつ、基材と等色の第1の色材又は透明の第1の色材により形成され、第1の網点部又は第1の背景部の他方は、ランタノイド系希土類化合物を含有せず通常光下において基材とは異なる色であり、かつ、第1の色材を三波長光源下で観察した場合の色と等色となる第2の色材により形成され、第2のハーフトーン領域は、第1の色材により第1のハーフトーン領域とともに潜像画像を形成する第2の網点部を有し、印刷物を通常光下で観察すると、第1の色材により形成された第1の網点部又は第1の背景部のいずれか一方及び第2の網点部は、基材と等色又は透明として観察されることで、第2の色材により形成された第1の網点部又は第1の背景部の他方により形成された可視画像が観察され、印刷物をカラー複写機で複写すると、可視画像と異なる潜像画像が出現することを特徴とする潜像画像を有する印刷物である。
【0016】
また、本発明の潜像画像を有する印刷物における第2のハーフトーン領域は、第2の網点部と隣接する位置に第2の背景部を更に有し、第2の背景部は、ランタノイド系希土類化合物を含まず、かつ、通常光下において第1の色材と等色の第3の色材により、第2の網点部の濃度及び色相と、基材の隠ぺい率に合わせた網点面積率で形成されたことにより、通常光下において第2の網点部と等色として観察されることを特徴とする潜像画像を有する印刷物である。
【0017】
また、本発明の潜像画像を有する印刷物は、第1のハーフトーン領域に形成された第1の網点部の面積が異なることで階調を有する可視画像が形成され、第2のハーフトーン領域に形成された第2の網点部の面積が異なることで階調を有する潜像画像が形成されたことを特徴とする潜像画像を有する印刷物である。
【0018】
また、第2のハーフトーン領域における第2の網点部は、各々の第2のハーフトーン領域の中心を除く外周領域に形成されたことを特徴とする潜像画像を有する印刷物である。
【0019】
また、本発明の潜像画像を有する印刷物は、ランタノイド系希土類化合物を含有する基材上に、ランタノイド系希土類化合物を含有せず、かつ、基材を通常光下から三波長光源下へ観察条件を変えても所定の値以上の色変化をさせない隠ぺい材料から成る隠ぺい層と、隠ぺい層の上に、少なくとも二つの色材により形成された画像形成層とを有することで、可視画像と潜像画像が形成された印刷物であって、隠ぺい層は、基材を隠ぺいする隠ぺい材料を施した第1の隠ぺい領域及び第2の隠ぺい領域を複数有し、複数の第1の隠ぺい領域は、基材を隠ぺいする隠ぺい材料のみを施した第1の隠ぺい領域及び基材を一部露出させる隠ぺい材料を施さない領域を有する第1の隠ぺい領域から成り、複数の第2の隠ぺい領域は、基材を隠ぺいする隠ぺい材料のみを施した第2の隠ぺい領域及び基材を一部露出させる隠ぺい材料を施さない領域を有する第2の隠ぺい領域から成り、画像形成層は、第1のハーフトーン領域と第2のハーフトーン領域とが隣接するように複数配置され、第1のハーフトーン領域は第1の隠ぺい領域と同一形状であり、かつ、同じ位置に配置され、潜像画像の一部のみを形成する第1の網点部又は第1の背景部のいずれか一方と、第1の網点部又は第1の背景部のいずれか一方と隣接する位置に、可視画像及び潜像画像の一部を形成する第1の網点部又は第1の背景部の他方とを有し、第1の網点部又は第1の背景部の一方は、第1の隠ぺい領域における隠ぺい材料が施されない領域と同一形状であり、かつ、同じ位置に配置されたことで基材を一部露出して形成され、第1の網点部又は第1の背景部の他方は、第1の隠ぺい領域における隠ぺい材料を施す領域と同一形状であり、かつ、同じ位置に配置され、第1の網点部又は第1の背景部の他方を形成する色材は、ランタノイド系希土類化合物を含有せず通常光下において基材とは異なる色であり、かつ、基材を三波長光源下で観察した場合に等色となる第2の色材であり、第2のハーフトーン領域は第2の隠ぺい領域と同一形状であり、かつ、同じ位置に配置され、潜像画像の一部を形成する第2の網点部又は第2の背景部のいずれか一方と、第2の網点部又は第2の背景部のいずれか一方と隣接する位置に、潜像画像の背景を形成する第2の網点部又は第2の背景部の他方とを有し、第2の網点部又は第2の背景部の一方は、第2の隠ぺい領域における隠ぺい材料が施されない領域と同一形状であり、かつ、同じ位置に配置されたことで基材を一部露出して形成され、第2の網点部又は第2の背景部の他方は、第2の隠ぺい領域における隠ぺい材料を施す領域と同一形状であり、かつ、同じ位置に配置され、第2の網点部又は第2の背景部の他方を形成する色材は、ランタノイド系希土類化合物を含有せず、かつ、基材を通常光下で観察した場合に等色となる第3の色材であり、印刷物を通常光下で観察すると、基材を一部露出することにより形成された第1の網点部又は第1の背景部の一方と、基材を一部露出することにより形成された第2の網点部又は第2の背景部の他方、及び第3の色材により形成された第2の網点部又は第2の背景部の他方とが等色として観察されることで、第2の色材により形成された第1の網点部又は第1の背景部の他方により形成された可視画像が観察され、印刷物をカラー複写機で複写すると、可視画像と異なる潜像画像が出現することを特徴とする潜像画像を有する印刷物である。
【0020】
また、本発明の潜像画像を有する印刷物の作製方法は、データを入力する入力部、入力されたデータを処理する処理部、入力されたデータ及び処理されたデータを与えられて記憶する記憶部、データを出力する出力部を備えた印刷機を用いて、前述した潜像画像を有する印刷物を作製する方法であって、可視画像に対応する第1の画像データを入力部から入力し、あるいは処理部において作製するステップと、第1のハーフトーン領域に含まれる第1の網点部及び第1の背景部の位置、形状及び寸法を、可視画像を表現するように第1のハーフトーン領域のデータを処理部において網点化された可視画像として作製し、記憶部に格納するステップと、潜像画像に対応する第2の画像データを入力部より入力し、あるいは処理部において作製するステップと、複数の第2のハーフトーン領域のそれぞれの位置、形状及び寸法、またそれぞれの第2のハーフトーン領域に含まれる第2の網点部の位置、形状及び寸法に関するマスクデータを入力部から入力し、あるいは処理部において作製するステップと、第2の画像データに対しマスクデータを用いてマスク処理を行い、第2の画像要素が潜像画像を表現するように第2のハーフトーン領域のデータを処理部において網点化された潜像画像を作製し、記憶部に格納するステップと、第1のハーフトーン領域のデータと第2のハーフトーン領域のデータとを合成した印刷物のデータを処理部において作製するステップと、処理部で作製された印刷物のデータを出力部から出力するステップとを備えることを特徴とする潜像画像を有する印刷物の作製方法である。
【0021】
また、本発明の潜像画像を有する印刷物の作製方法は、第2のハーフトーン領域に第2の背景部を形成する場合の第2のハーフトーン領域のデータを作製するステップにおいて、第1の色材により形成された第2の網点部の隠ぺい率、濃度及び色相のデータを入力部から入力し、入力されたデータを基に第2の網点部と第2の背景部を通常光下において等色として視認させるため、第3の色材により第2の背景部を形成する網点面積率を決定するステップを更に有することを特徴とする潜像画像を有する印刷物の作製方法である。
【発明の効果】
【0022】
本発明の潜像画像を有する印刷物は、通常光下では可視画像を視認することができ、かつ、印刷物をカラー複写機により複写した際には、出力物において、可視画像と全く異なる潜像画像が出現する、いわゆる、画像のスイッチ効果を有する印刷物を提供することができる。よって、作製した偽造品は、可視画像が全く異なる潜像画像にスイッチしているため、各種窓口へ持っていくことすらできない。仮に、持って行った場合において、検査担当者は、異なる画像が出現していることから、鑑定装置を用いずに、目視により瞬時に偽造品であることを判別することが可能となり、従来の複写防止印刷物と比較して、複写牽制機能が向上した印刷物となる。
【0023】
また、本発明の潜像画像を有する印刷物は、特殊な網点構成により作製しているため、二つの画像を同一領域内に重なるようなデザインで作製することが容易であり、デザイン上の制約を受けることがなく、更には、偽造品を作製するために、各インキにより作製した領域を解析し、各版面を作製することは極めて困難であることから、格別の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の潜像模様を有する印刷物における網点構成の一例を示す図
【図2】可視画像を形成する網点構成及び可視画像を示す図
【図3】潜像画像を形成する網点構成及び潜像画像を示す図
【図4】第1の網点部及び第2の網点部の形状の一例を示す図
【図5】第1の実施の形態における印刷物の作製に用いられる装置の構成を示すブロック図
【図6】第1の実施の形態における印刷物を作製する方法における手順を示すフローチャート
【図7】マスクデータを示す模式図
【図8】マスク処理を示す模式図
【図9】第1の実施の形態における印刷物を通常光下で観察した際に可視状態上に潜像画像が出現した状態を示す説明図
【図10】第2の実施の形態の印刷物における網点構成の一例を示す図
【図11】第2の実施の形態における第2のハーフトーン領域を作製する手順を示すフローチャート
【図12】第3の実施の形態における印刷物の可視画像を形成する網点構成及び可視画像を示す図
【図13】第3の実施の形態における印刷物の潜像画像を形成する網点構成及び潜像画像を示す図
【図14】第4の実施の形態の印刷物における網点構成を示す断面図
【図15】第1のハーフトーン領域3と第2のハーフトーン領域4の大きさの関係を示す拡大図
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他のいろいろな実施の形態が含まれる。
【0026】
(第1の実施の形態)
本発明の潜像画像を有する印刷物(以下「印刷物」という。)は、通常光下で観察される画像(以下「可視画像」という。)と、印刷物をカラー複写機により複写した複写物(以下「複写物」という。)に出現する画像(以下「潜像画像」という。)が全く異なる画像へとスイッチする印刷物であり、可視画像を形成する複数の第1のハーフトーン領域と潜像画像を形成する複数の第2のハーフトーン領域を重なり合うことなく均等に配置することで、二つの独立した画像を形成する領域が同一の印刷領域内に形成されたものである。
【0027】
本発明の潜像画像は、ランタノイド系希土類化合物を含有し、かつ、通常光下で透明の色材又は基材と等色(以下「第1の色」という。)の第1の色材と、第1の色材を三波長光源下で観察した場合の色(以下「第2の色」という。)と等色であり、ランタノイド系希土類化合物を含有しない第2の色材を用いて第1のハーフトーン領域における第1の網点部及び第1の背景部と、第2のハーフトーン領域における第2の網点部を第1の色材で形成することで、通常光下で観察される可視画像と、印刷物をカラー複写機で複写した複写物に出現する可視画像と異なる潜像画像を有する印刷物である。
【0028】
ランタノイド系希土類化合物は、可視光領域において460nm、540nm及び650nm付近に主要な吸収ピークを有する組成物であるため、通常光下においては、透明として視認され、三波長光源下では、色が変化して視認される。一般的なカラー複写機においては、光源に三波長蛍光灯を用いているため、三波長光源等を照射した際に色が変化するランタノイド系希土類化合物を含有する色材を用いて潜像画像を形成することで、複写物に潜像画像を出現させることが可能となる。
【0029】
ランタノイド系希土類化合物としては、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuから選択されるランタノイド系希土類元素を含む化合物であれば良いが、特に、通常光下において透明で、かつ、カラー複写機で複写された場合に赤色(濃い桃色)に変化するHo2O3が好ましい。
【0030】
また、本発明の網点構成を形成する色材としては、公知のグラビアインキ、スクリーンインキ、プロセスインキ、インクジェットプリンタ用インク等を使用することができる。また、基材2にそれぞれの領域を形成する方法としては、オフセット印刷方式、グラビア印刷方式、スクリーン印刷方式、フレキソ印刷方式、インクジェットプリンタ、レーザプリンタ等、特に限定されるものではない。
【0031】
図1(a)は、図1(b)に示す第1の実施の形態における印刷物1の網点構成の一部を拡大した図であり、基材2上に第1のハーフトーン領域3と第2のハーフトーン領域4とが隣接するように複数配置されている。図1(b)は、第1のハーフトーン領域3と第2のハーフトーン領域4により、可視画像と潜像画像が形成された印刷物1である。
【0032】
第1のハーフトーン領域3は、潜像画像の一部のみを形成する第1の網点部3a又は第1の背景部3bのいずれか一方と、可視画像及び潜像画像の一部を形成する第1の網点部3a又は第1の背景部3bの他方とを有する。第1の網点部3a又は第1の背景部3bのいずれか一方は、第1の色材により形成され、他方は、第2の色材により形成される。以下、第1の実施の形態においては、一例として、第1のハーフトーン領域3は、潜像画像の一部及び可視画像を形成する第1の網点部3aと、第1の網点部3aと隣接する位置に潜像画像の一部のみを形成する第1の背景部3bとを有し、第1の網点部3aは、第2の色材により形成され、第1の背景部3bは、第1の色材により形成されている場合について説明する。
【0033】
第2のハーフトーン領域4は、ランタノイド系希土類化合物を含有し、かつ、通常光下で透明の第1の色材又は基材2と等色の第1の色材により、潜像画像の一部を形成する第2の網点部4aを有する。第2の網点部4aが透明又は基材2と等色の第1の色材により形成されているため、第1の実施の形態における印刷物1では、第2のハーフトーン領域4における第2の網点部4aを除く領域に印刷を行わない、いわゆる、基材2表面が露出した状態としている。なお、本発明における透明の色材とは、第2のハーフトーン領域4に形成された第2の網点部4aが通常光下で観察されない構成であれば、無色透明の色材又は有色透明の色材のどちらでも良い。
【0034】
本発明の印刷物1において観察される可視画像5と潜像画像6について、図2及び図3を用いて説明する。図2(a)は、印刷物1を通常光下で観察した場合に観察される網点構成を拡大したものであり、第2のハーフトーン領域4に形成された第2の網点部4aは、ランタノイド系希土類化合物を含有し、かつ、通常光下で透明又は基材2と等色の第1の色材により形成されているため、第2のハーフトーン領域4内において第2の網点部4aが形成されていない、いわゆる、基材2表面と第2の網点部4aに色差が生じないことから、第2の網点部4aが観察されない状態である。
【0035】
第1のハーフトーン領域3における第1の網点部3aは、第2の色を有する第2の色材により形成し、第1の背景部3bを第1の色材により形成したものである。この印刷物1を通常光下で観察した場合、第1の色材により形成された、第1のハーフトーン領域3における第1の背景部3bと第2のハーフトーン領域4における第2の網点部4aは、いずれも基材2と等色として観察されるため、第1のハーフトーン領域3における第1の背景部3bと第2のハーフトーン領域4は、等色として観察される。一方、第1のハーフトーン領域3における第1の網点部3aは、第2の色を有する第2の色材により形成しているため、図2(b)に示すように、第1のハーフトーン領域3における第1の網点部3aにより形成された可視画像5が観察される。なお、図2においては、第1の網点部3aの面積が同一であることから、形成される可視画像5は階調を有しない画像であるが、複数の第1の網点部3aの面積を、各々異ならせることにより階調を有する可視画像5を形成することも可能である。
【0036】
図3(a)は、前述の印刷物1をカラー複写機で複写した複写物8における網点構成を拡大したものであり、第1のハーフトーン領域3における第1の背景部3b及び第2のハーフトーン領域4における第2の網点部4aは、第1の色材の変色効果により、第2の色へと変化する。また、第1のハーフトーン領域3における第1の網点部3aは、ランタノイド系希土類化合物を含有しない第2の色材により形成されているため、複写物8においても色変化することなく、第2の色として観察される。よって、図3(b)のように、第2の網点部4a、第1の網点部3a及び第1の背景部3bが等色として観察されることから、第2のハーフトーン領域4における第2の網点部4aを除く領域である、いわゆる、基材2表面が露出した領域により形成された可視画像5と全く異なる潜像画像6が観察される。なお、図3においては、第2の網点部4aの面積が同一であることから、形成される潜像画像6は階調を有しない画像であるが、複数の第2の網点部4aの面積を、各々異ならせることにより階調を有する潜像画像6を形成することも可能である。
【0037】
本発明における等色とは、色差ΔEが6未満のことを指し、色差とは、CIE1976L*a*b*表色系のΔEで定義するものとする。CIE1976L*a*b*表色系とは、CIE(国際照明委員会)が1976年に推奨した色空間のことであり、日本工業規格では、JIS Z 8729に規定されている。色差は、ある二色の色空間中における距離のことであり、CIE1976L*a*b*表色系での色差は、二色のL*の差、a*の差、及びb*の差をそれぞれ二乗して加え、その平方根をとることで求めることができる。
【0038】
一般的に、色差ΔEが6前後の場合においては、異なった色として視認される可能性がある。ただし、本発明においては、第1のハーフトーン領域3及び第2のハーフトーン領域4は、肉眼ではそれぞれの領域を区別して視認することができない微細な網点を有する領域である。そのことから、前述のとおり、色差ΔEが6未満であれば、通常光下において、透明又は基材と等色の第1の色材により形成された第2のハーフトーン領域4における第2の網点部4aと、第2の網点部4aを除く領域である、いわゆる、基材2表面の色を区別することができず、第2のハーフトーン領域4内において基材2と第2の網点部4aに色差が生じないことから、第2の網点部4aが観察されない状態として視認される。また、印刷物1をカラー複写機により複写した複写物8の第1のハーフトーン領域3における第1の網点部3a及び第1の背景部3bについても、ΔEが6未満であるため、等色として視認される。
【0039】
一方、ランタノイド系希土類化合物を含有する第1の色材によって形成された第2の網点部4a及び第1の背景部3bは、カラー複写機により複写した複写物8において、第2のハーフトーン領域4における第2の網点部4aを除く、いわゆる、基材2表面が露出した領域とは異なる色であり、かつ、第1のハーフトーン領域3における第1の網点部3aと等色の第2の色へと変化した状態として視認される。なお、本発明における異なる色とは、色差ΔEが6以上のことを指し、第1の色材と第2の色材を通常光下で観察した場合の第1の色及び第2の色の関係が、前述した色差ΔEが6以上となる。また、第1の色材により形成された領域と第2の色材により形成された領域を、三波長光源下で観察した場合の色をΔE6未満とする。以上の等色又は異なる色の関係を満足させることで、通常光下で観察される可視画像5と複写物8に出現する潜像画像6を全く異なる画像として視認することができる。
【0040】
また、本発明の印刷物1における第1の網点部3a及び第2の網点部4aは、図4(a)のように、各々のハーフトーン領域の中心に形成された例で説明しているが、図4(b)のように、各々のハーフトーン領域の中心を除く外周領域である、いわゆる、反転円形状として形成することや、図4(c)のように、各々のハーフトーン領域を2つ以上に分割して形成することも可能であり、これらの配置としても同様の効果を得る。
【0041】
次に、本実施の形態による印刷物1の作製に用いられる装置について、その構成を示した図5を用いて説明する。この作製装置は、入力部401、処理部402、記憶部403及び出力部404を備えている。入力部401は、本実施の形態の印刷物1の作製に必要なデータを入力し、処理部402に与える。処理部402は、与えられたデータを記憶部403に格納するとともに、印刷物1の作製に必要な演算処理及び画像処理等を行い、得られた結果を出力部404に与える。出力部404は、処理部402から与えられたデータを、外部の、例えば、図示されてない印刷機等に出力する。
【0042】
このような作製装置を用いて、本実施の形態による印刷物1を作製する方法について、その手順を示した図6を用いて説明する。図6におけるステップS11として、第1のハーフトーン領域3が形成する可視画像に対応する原画像として、第1の画像データである可視画像データを処理部402が作製するか、又は外部から可視画像データとして入力部401より入力し、処理部402を介して網点化された可視画像を記憶部403に格納する。次に、ステップS12として、記憶部403に格納された可視画像データを基に、第1のハーフトーン領域3内に形成する第1の網点部3aの位置、形状及び寸法を、処理部402を介して記憶部403に第1のハーフトーン領域3のデータとして格納する。
【0043】
次に、ステップS13として、第2のハーフトーン領域4が形成する潜像画像に対応する原画像として、第2の画像データである潜像画像データを処理部402が作製するか、又は外部から潜像画像データとして入力部401より入力し、処理部402を介して網点化された潜像画像を記憶部403に格納する。ステップS14として第2のハーフトーン領域4のみをマスク処理したマスクデータを処理部402によって作製するか、又は外部からマスクデータとして入力部401より入力し、処理部402を介して記憶部403に格納する。ステップS15として、記憶部403に格納された潜像画像データ及びマスク画像を基に、第2のハーフトーン領域4内に形成する第2の網点部4aの位置、形状及び寸法を、処理部402を介して記憶部403に第2のハーフトーン領域4のデータとして格納する。
【0044】
次に、ステップS16として、前述までのステップで記憶部403に格納された第1のハーフトーン領域3のデータと、第2のハーフトーン領域4のデータを合成し、ステップS17により、外部の印刷機等の出力部404から出力して印刷物1が完成する。前述のステップS16により、2つのデータを合成する方法としては、2つのデータに共通する位置として、少なくとも任意の三つの点を、各々のハーフトーン領域データにおけるそれぞれの基準点に設定することで、二つのデータを合成する方法を用いる。なお、基準点の設定方法についての詳細は、特願2009−255214号において記載されていることから、省略する。
【0045】
図7は、マスクデータを示す模式図である。マスクデータは、複数の第2のハーフトーン領域4へ、潜像画像6を配置する際に用いる画像である。マスクデータは、あらかじめ作製しておいた、フォーマットデータを用いて生成される。フォーマットデータとは、本発明における印刷物1を生成する、複数の第1のハーフトーン領域3及び複数の第2のハーフトーン領域4を、どのように配置するかを設計することで、フォーマットデータが生成される。フォーマットデータは、複数の画素によって構成される。フォーマットデータにおける、複数の第1のハーフトーン領域3の配置箇所の画素を白画素とし、複数の第2のハーフトーン領域4の配置箇所の画素のみを黒画素とすることで、マスクデータが生成される。マスクデータは、各原画像データの基準点と対応する基準点(P1、P2、P3)を有する。
【0046】
マスク処理とは、潜像画像データに対して、マスクデータの白画素に対応する部分を全て白画素に置き換える処理を施すことで、潜像画像データのうち、複数の第1のハーフトーン領域3に相当する部分を全て白色に置き換えるものである。それにより、潜像画像データは、複数の第2のハーフトーン領域4内に配置された第2の網点部4aのみから成る画像へと変換され、可視画像データ及び潜像画像データを形成する複数の各網点を、重なり合うことなく印刷領域内へ均等配置することが可能となる。
【0047】
図8は、一例として潜像画像データを生成する、マスク処理を示す模式図である。マスク処理においては、処理部402へ入力した、図8(a)に示す、マスクデータの基準点(P1、P2、P3)と、図8(b)に示す、マスクデータと対応する潜像画像データの基準点(P1’、P2’、P3’)とを合わせる。二つの画像データを合わせた際に、同じ位置となる二つの画素のうち、マスクデータを構成する画素が黒画素ならば、潜像画像データを構成する画素を残す。また、マスクデータを構成する画素が白画素ならば、潜像画像データを白画素とする。マスク処理を行うことで、潜像画像データのうち、第2のハーフトーン領域4に相当しない部分、つまり、第1のハーフトーン領域3を形成する画素は白画素となる。よって、図8(c)に示す、複数の第2のハーフトーン領域4から成る潜像画像データが生成される。
【0048】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態における印刷物1について説明する。まず、第2の実施の形態における印刷物1と、第1の実施の形態における印刷物1の異なる点について説明する。第1の実施の形態では、第1の色材が透明又は基材と等色の色材を用いたため、第2のハーフトーン領域4内に第2の網点部4aのみが配置されている。この場合、第2のハーフトーン領域4に形成された第2の網点部4aと第2の網点部4aが形成されていない、いわゆる、基材2表面が露出した領域が等色として観察されることを前提に説明したが、第1の色材が透明又は基材と等色であっても、第1の色材の基材2隠ぺい率、濃度及び色相や、第2の網点部4a表面からの光沢等の影響により、基材2と等色の第2の網点部4aを形成することができない場合がある。そこで、第2の網点部4aの隠ぺい性を向上させるために、第2の実施の形態においては、第2のハーフトーン領域4における第2の網点部4aと隣接する位置にランタノイド系希土類化合物を含まず、かつ、通常光下において第1の色を有する第3の色材により第2の背景部4bを形成したものである。
【0049】
まず、第1の実施の形態における印刷物1の第2の網点部4aと第2の網点部4aを除く基材2表面が露出した領域が、通常光下において等色として観察することができない場合について説明する。第2の網点部4aは、前述した第1の実施の形態では、ランタノイド系希土類化合物を含有し、かつ、通常光下で透明又は基材と等色の第1の色材により形成しているが、このランタノイド系希土類化合物を含有する色材は、基材2への浸透等の影響により、第1の色材自体の色が透明又は基材2と等色の第1の色であっても、通常光下において基材2と等色の状態として第2の網点部4aを形成することができないことがあり、その場合、図9に示すように、通常光下において印刷物1に形成された可視画像5と重なる位置に、うっすらと潜像画像6が観察される状態となる。
【0050】
また、ランタノイド系希土類化合物を含有する第1の色材は、光沢性を有するため、基材2上に第2の網点部4aを形成した際に、各々の第2のハーフトーン領域4内における第2の網点部4a表面の光沢度と、第2の網点部4aを除く領域である、いわゆる、基材2表面が露出した領域の光沢度が異なることで、通常光下で印刷物1を傾けて観察した場合に、可視画像5上に潜像画像6がうっすらと観察されてしまうことがある。
【0051】
そのため、第2の実施の形態では、図10(a)の網点構成の拡大図に示すように、第2のハーフトーン領域4内における第2の網点部4aの基材2の隠ぺい率、濃度及び色相や、第2の網点部4a表面からの光沢等の影響があっても潜像画像6を潜像化するため、第2のハーフトーン領域4における第2の網点部4aと隣接する位置に、第2の背景部4bを更に有する。第2の背景部4bは、ランタノイド系希土類化合物を含まず、かつ、通常光下において第1の色材と等色の第3の色材により、第2の網点部4aの濃度及び色相と、基材2の隠ぺい率に合わせた網点面積率で形成される。それにより、通常光下において、第2の網点部4aと第2の背景部4bが等色で、かつ、同等の光沢度として観察されることで潜像画像6をより潜像化することができる。
【0052】
第2の背景部4bは、第2の網点部と隣接する位置であれば、図10(a)に示すように、第2のハーフトーン領域4における第2の網点部4a以外に配置されることに限定されず、例えば、図10(b)及び図10(c)に示すように、余白部4cがあっても良い。
【0053】
なお、第1の実施の形態においては、第2の網点部4aを通常光下で透明又は基材と等色の第1の色材により形成することで、第2のハーフトーン領域4における第2の網点部4aと基材2表面が等色であると説明したが、第2の実施の形態における通常光下とは、前述した印刷物1を傾けて観察した場合も含む。よって、第2の実施の形態においては、基材2を水平の状態で視認した場合と傾けて視認した場合において、第2の網点部4aと第2の背景部4bは、等色(色差ΔEが6未満)で視認されることとする。
【0054】
以上のように、第2の実施の形態では、第2のハーフトーン領域4に第1の色材により形成された第2の網点部4aと第3の色材により形成された第2の背景部4bを形成することにより、印刷物1を傾けて観察した場合であっても第2の網点部4aと第2の背景部4bにおいて光沢差が生じないことから、印刷領域全面において、各々の第2のハーフトーン領域4が全て同一の濃度及び色相となり、第1のハーフトーン領域3における画像要素3aにおいて形成された可視画像6が観察される。
【0055】
なお、本願発明に用いるランタノイド系希土類化合物を含有する第1の色材とランタノイド系希土類化合物を含有しない第3の色材を等色として観察できる状態とするためには、色材自体を等色として設定するだけでは、第1の色材における基材2への浸透性、基材2隠ぺい性等の影響により、基材2の色の影響を受けることがある。そのため、第2の実施の形態の印刷物1を作成するためには、第2のハーフトーン領域4データを作製する新たなステップが追加される。
【0056】
図11により、第2のハーフトーン領域4のデータを作製する新たなステップについて説明する。まず、図6のステップS14までにより、記憶部403に格納された潜像画像データに基づき、図11のステップS21において第2のハーフトーン領域4に形成する第2の網点部4aの位置、形状及び寸法を処理部により作製し、併せて第2の背景部4bの位置、形状及び寸法を処理部により作製する。
【0057】
次に、ステップS22として、第2の網点部4aの基材隠ぺい性、濃度及び色相を入力部401より入力し、記憶部403に格納する。ステップS23として、記憶部403に格納された第2の網点部4aにおける基材2隠ぺい性、濃度及び色相のデータに基づき、第2の網点部4aと第2の背景部4bを等色とするために、第2の背景部4bを形成する網点面積率を処理部402により作製し、記憶部403に格納する。
【0058】
前述までのステップにより記憶部403に格納されたデータに基づき、ステップS24にて、全ての第2のハーフトーン領域4データを作製し、以降については、前述した図6のステップS16にて、第1のハーフトーン領域3のデータと合成され、ステップS17にて印刷物を得る。
【0059】
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態について説明する。第3の実施の形態における印刷物1は、前述した第1の実施の形態及び第2の実施の形態と異なる構成として、第2のハーフトーン領域4内に形成する第2の網点部4aを、前述した図4(b)に示す、反転円形状とし、第2の背景部4bを、第2のハーフトーン領域4における中心を含む円形状の領域としたものである。図3(b)は、第1の実施の形態及び第2の実施の形態で形成した印刷物1をカラー複写機で複写した複写物8を示す図である。
【0060】
図3(b)に示すように、潜像画像6は、画像領域6aと背景領域6bから成る。画像領域6aは、第2のハーフトーン領域4における第2の網点部4aにより形成され、背景領域6bは、第1のハーフトーン3領域及び第2の網点部4aが形成されていない、いわゆる、基材2表面が露出した領域(第2の背景部4b)により形成される。複写物8は、第2の網点部4aと第1のハーフトーン領域3は、等色として視認されるため、第2のハーフトーン領域4における基材2表面が露出した領域のみが異なる色として観察されることで第2のハーフトーン領域4内に形成された第2の網点部4aによって画像領域6aが形成されていることから、画像領域6aの中に、背景領域6bの一部を形成する第1のハーフトーン領域3が混在した状態となるため、画像領域6a及び背景領域6b全体にわたり、第1の色と第2の色が混色した状態として視認される。
【0061】
第3の実施の形態では、第2のハーフトーン領域4に形成する第2の網点部4aを、図4(b)に示す第2のハーフトーン領域4の中心を除く外側である、いわゆる、反転円形状として形成している。前述した反転円形状として第2の網点部4aを形成することにより、各々の第2のハーフトーン領域4に形成された第2の網点部4aと第1のハーフトーン領域3の間に第2の背景部4bが存在することがなくなることで、背景領域6bに形成される第2の色を有する第1のハーフトーン領域が強調されることなく潜像画像6を観察することができる。
【0062】
第3の実施の形態における印刷物1を通常光下で観察した場合の網点構成及び可視画像5と、印刷物1をカラー複写機で複写した複写物8における網点構成及び潜像画像6について、図12及び図13を用いて説明する。
【0063】
図12(a)は、第3の実施の形態における印刷物1を通常光下で観察した場合に観察される網点構成を拡大したものであり、第2のハーフトーン領域4に形成された反転円形状の第2の網点部4aは、ランタノイド系希土類化合物を含有し、かつ、第1の色を有する第1の色材により形成され、第2の背景部4bは、ランタノイド系希土類化合物を含まず、かつ、第1の色を有する第3の色材により形成することで、第2のハーフトーン領域4における第2の網点部4a及び第2の背景部4bは、第1の色として観察される。
【0064】
第1のハーフトーン領域3における第1の網点部3aは、前述した第1の実施の形態及び第2の実施の形態と同様に、第2の色を有し、かつ、ランタノイド系希土類化合物を含有しない第2の色材により形成し、第1の背景部3bを第1の色材により形成したものである。この印刷物1を通常光下で観察した場合、第1の色材により形成された、第1のハーフトーン領域3における第1の背景部3b及び第2のハーフトーン領域4における第2の網点部4aと、第3の色材により形成された第2のハーフトーン領域4における第2の背景部4bは、第1の色として観察されるため、これら三つの領域は、等色として観察される。一方、第1のハーフトーン領域3における第1の網点部3aは、第2の色を有する第2の色材により形成しているため、図12(b)に示すように、第1の網点部3aにより形成された可視画像5が観察される。
【0065】
図13(a)は、第3の実施の形態における印刷物1をカラー複写機により複写した複写物8における網点構成を拡大したものであり、第2のハーフトーン領域4における第2の網点部4aは、第1の色材の変色効果により、第2の背景部4bと異なる第2の色へと変化する。
【0066】
また、第1のハーフトーン領域3における第1の網点部3aは、ランタノイド系希土類化合物を含有しない第2の色材により形成されているため、複写物8においても色変化することなく、第2の色として観察されるが、第1のハーフトーン領域3における第1の背景部3bは、第1の色材により形成しているため、前述した第2のハーフトーン領域4における第2の網点部4aと同様に、第2の色へと変化する。
【0067】
この複写物8を観察した状態を示すのが図13(b)である。図13(b)に示すように、潜像画像6は、画像領域6aと背景領域6bから成る。第3の実施の形態において画像領域6aは、第2の網点部4aにより形成され、背景領域6bは、第1のハーフトーン領域3及び第2の背景部4bにより形成される。第2のハーフトーン領域4に形成された反転円形状の第2の網点部4aと第1のハーフトーン領域3に形成された第1の網点部3a及び第1の背景部3bが等色として観察され、かつ、第1の実施の形態及び第2の実施の形態のように、各々の第2の網点部4aと第1のハーフトーン領域3の間に第2の背景部4bが介在することなく、等色となる領域が隣接して形成されることから、第2のハーフトーン領域4における第2の網点部4aにより、可視画像5と全く異なる潜像画像6が鮮明に観察される。
【0068】
(第4の実施の形態)
第4の実施の形態について、その構成を示した図14を用いて説明する。図14(a)は、第4の実施の形態における網点構成を示す模式図であり、図14(b)は、前述した第2の実施の形態における網点構成を示す模式図である。第4の実施の形態は、前述した第1の実施の形態、第2の実施の形態及び第3の実施の形態で共通する構成であった、ランタノイド系希土類化合物を含有する第1の色材を用いることで、印刷物1をカラー複写機で複写した複写物8に潜像画像6を出現させる方法以外の構成である。なお、第1のハーフトーン領域3における第1の網点部3a及び第1の背景部3bと、第2のハーフトーン領域4における第2の網点部4a及び第2の背景部4bの位置関係は、一例として、前述した第2の実施の形態と同様の配置とした。
【0069】
図14(a)に示すように、第4の実施の形態においては、ランタノイド系希土類化合物を含有する基材2´上に、ランタノイド系希土類化合物を含有せず、かつ、基材2´の色を、通常光下から三波長光源下へ観察条件を変えても所定の値以上の変化をさせない隠ぺい材料から成る隠ぺい層7と、隠ぺい層7の上に、少なくとも二つの色材により形成された画像形成層11が形成される。
【0070】
隠ぺい層7は、基材2´を隠ぺいする隠ぺい材料を施した第1の隠ぺい領域9及び第2の隠ぺい領域10を複数有する。複数の第1の隠ぺい領域9は、基材2´を隠ぺいする隠ぺい材料のみを施した第1の隠ぺい領域9a及び基材2´を一部露出させる隠ぺい材料を施さない領域9bを有する。また、複数の第2の隠ぺい領域10は、基材2´を隠ぺいする隠ぺい材料のみを施した第2の隠ぺい領域10b及び基材2´を一部露出させる隠ぺい材料を施さない領域10aを有する。
【0071】
隠ぺい材料を施す領域(9a、10b)を形成する隠ぺい材料については、白インキ等を用いることが可能であるが、基材2´を通常光下から三波長光源下へ観察条件を変えても所定の値以上の色変化させない材料であればこれに限定されず、いかなる材料で形成しても良い。なお、所定の値以上の色変化とは、隠ぺい材料を施す領域(9a、10b)を通常光下で観察した際の色と、三波長光源下で観察した際の色の色差ΔEが6以上となることをいう。隠ぺい材料に用いることが可能な白インキには、オフセット印刷用UVインキとしてDIC株式会社製 ダイキュアRTX 白、インクジェット印刷用UVインクとして東洋インキ製造株式会社製 LIOJET FV03 ホワイト等がある。
【0072】
画像形成層11は、第1のハーフトーン領域3と第2のハーフトーン領域4とが隣接するように複数配置されている。第1のハーフトーン領域3は、第1の隠ぺい領域9と同一形状であり、かつ、同じ位置に配置され、潜像画像6の一部のみを形成する第1の網点部3a又は第1の背景部3bのいずれか一方と、可視画像5及び潜像画像6の一部を形成する第1の網点部3a又は第1の背景部3bの他方とを有する。なお、前述のとおり第4の実施の形態においては、第2の実施の形態と同様の配置とすることから、第1のハーフトーン領域3は、潜像画像6の一部及び可視画像5を形成する第1の網点部3aと、第1の網点部3aと隣接する位置に潜像画像6の一部のみを形成する第1の背景部3bとを有する構成とする。
【0073】
第1の網点部3aは、第1の隠ぺい領域9における隠ぺい材料を施す領域9aと同一形状であり、かつ、同じ位置に配置される。さらに、第1の網点部3aは、ランタノイド系希土類化合物を含有せず、通常光下において基材2´とは異なる色であり、かつ、基材2´を三波長光源下で観察した場合の色と等色となる第2の色材により形成される。
【0074】
また、第1の背景部3bは、第1の隠ぺい領域9における隠ぺい材料が施されない領域9bと同一形状であり、かつ、同じ位置に配置されたことで基材2´を一部露出して形成される。
【0075】
第2のハーフトーン領域4は、第2の隠ぺい領域10と同一形状であり、かつ、同じ位置に配置され、潜像画像6の一部を形成する第2の網点部4a及び第2の背景部4bを有する。なお、前述のとおり、第4の実施の形態においては、第2の実施の形態と同様の配置とすることから、第2のハーフトーン領域4は、潜像画像6の一部を形成する第2の網点部4aと、第2の網点部4aと隣接する位置に潜像画像6の背景を形成する第2の背景部4bとを有する構成とする。
【0076】
第2の網点部4aは、第2の隠ぺい領域10における隠ぺい材料が施されない領域10aと同一形状であり、かつ、同じ位置に配置されたことで基材2´を一部露出して形成される。
【0077】
また、第2の背景部4bは、第2の隠ぺい領域10における隠ぺい材料を施す領域10bと同一形状であり、かつ、同じ位置に配置される。さらに、第2の背景部4bは、ランタノイド系希土類化合物を含有せず、かつ、基材2´を通常光下で観察した場合の色と等色となる第3の色材により形成される。
【0078】
このように、第4の実施の形態においては、隠ぺい層7を構成する各隠ぺい領域(9、10)における隠ぺい材料を施す領域(9a、10b)の、それぞれの位置関係、形状及び大きさが、第1のハーフトーン領域3における第1の網点部3a及び第2のハーフトーン領域4における第2の背景部4bに対応した構成となっているため、第1の隠ぺい領域9における隠ぺい材料を施す領域9a上に第1のハーフトーン領域3における第1の網点部3aが形成され、第2の隠ぺい領域10における隠ぺい材料を施す領域10b上に第2のハーフトーン領域4における第2の背景部4bが形成される。
【0079】
ここで、前述した第2の実施の形態及び第3の実施の形態の印刷物1における網点構成と、第4の実施の形態における印刷物1の網点構成の違いを比較するため、比較例として、第1のハーフトーン領域3における第1の網点部3a及び第1の背景部と、第2のハーフトーン領域4における第2の網点部4a及び第2の背景部4bの位置関係が同じである第2の実施の形態の印刷物1における網点構成について、図14(b)の1つの第1のハーフトーン領域3及び第2のハーフトーン領域4を拡大した断面図を用いて説明する。第2の実施の形態における印刷物1は、基材2上に複数の第1のハーフトーン領域3と第2のハーフトーン領域4を有し、第1のハーフトーン領域3には、印刷物1をカラー複写機で複写した場合の複写物8において、第2の色材により形成された第1の網点部3aと、第1の網点部3aと等色として観察される第1の色材により形成された第1の背景部3bとを有し、第2のハーフトーン領域4には、通常光下で観察した場合に第2の背景部4bと等色として観察される第1の色材により形成された第2の網点部4aと、第3の色材によって形成された第2の背景部4bを有する。
【0080】
図14(b)のように、基材2上の第1のハーフトーン領域3内に第1の網点部3aと第1の背景部3bが形成され、第2のハーフトーン領域4内に第2の網点部4a及び第2の背景部4bを形成することで、通常光下では、第1のハーフトーン領域3に形成された第1の背景部3bと第2のハーフトーン領域4に形成された第2の網点部4a及び第2の背景部4bが等色として観察され、第1のハーフトーン領域3に形成した第1の網点部3aが異なる色として観察されることから、可視画像5が観察され、印刷物1をカラー複写機により複写した複写物8では、第1のハーフトーン領域3に形成された第1の網点部3a及び第1の背景部3bと、第2のハーフトーン領域4に形成された第2の網点部4aが等色として観察され、第2のハーフトーン領域4に形成した第2の背景部4bが異なる色として観察されることで、可視画像5と異なる潜像画像6が観察されるものである。
【0081】
一方、第4の実施の形態では、基材2´自体にランタノイド系希土類化合物を含有させることで印刷物1をカラー複写機により複写した複写物8に潜像模様6を出現させる構成である。よって、図14(a)に示す1つの第1のハーフトーン領域3及び第2のハーフトーン領域4を拡大した断面図のように、ランタノイド系希土類化合物の変色効果を部分的に隠ぺいする必要があるため、第1のハーフトーン領域3における第1の網点部3aに対応する位置と、第2のハーフトーン領域4における第2の背景部4bに対応する位置に各隠ぺい領域(9、10)における隠ぺい材料を施す領域(9a、10b)をそれぞれ形成し、その各隠ぺい材料を施す領域(9a、10b)上の対応する位置に第1の網点部3a及び第2の背景部4bをそれぞれ形成した構成である。
【0082】
なお、可視画像5及び潜像画像6のデザインによっては、各ハーフトーン領域(3、4)内において、各網点部(3a、4a)を有しない場合がある。その場合には、各網点部(3a、4a)を有しない各ハーフトーン領域(3、4)と対応する位置に配置される複数の各隠ぺい領域(9、10)は、基材2´を隠ぺいする隠ぺい材料のみを施した第1の隠ぺい領域(図示せず)又は第2の隠ぺい領域(図示せず)となる。
【0083】
第4の実施の形態の印刷物1を通常光下で観察した場合、基材2´を一部露出することにより形成された第1の背景部3b及び第2の網点部4aと、第3の色材により形成された第2の背景部4bは、全て等色として観察されることから、第2の色材により形成された第1の網点部3aによって形成された可視画像5が観察される。
【0084】
一方、印刷物1をカラー複写機により複写した複写物8は、基材2´表面が露出している第1のハーフトーン領域3における第1の背景部3b及び第2のハーフトーン領域4における第2の網点部4aの色が第1の色から第2の色へと変化することから、第2のハーフトーン領域4における第2の背景部4bと、第1のハーフトーン領域3及び第2のハーフトーン領域4における第2の網点部4aの色が異なり、可視画像5と全く異なる潜像画像6が出現する。よって、複写物8を偽造品として用いることを不可能な状態とすることができる。
【0085】
なお、前述した第1の実施の形態、第2の実施の形態、第3の実施の形態及び第4の実施の形態では、第1のハーフトーン領域3よりも第2のハーフトーン領域4が大きい状態の例で説明したが、図15(a)のように、第1のハーフトーン領域3と第2のハーフトーン領域4の大きさが同一であっても良く、図15(b)のように、第1のハーフトーン領域3よりも第2のハーフトーン領域4が小さい状態であっても同様の効果を得る。
【符号の説明】
【0086】
1 印刷物
2、2´ 基材
3 第1のハーフトーン領域
3a 第1の網点部
3b 第1の背景部
4 第2のハーフトーン領域
4a 第2の網点部
4b 第2の背景部
4c 余白部
5 可視画像
6 潜像画像
7 隠ぺい層
8 複写物
9 第1の隠ぺい領域
10 第2の隠ぺい領域
11 画像形成層
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙幣、旅券、有価証券、カード及び貴重印刷物等の偽造防止及び改ざん防止機能が必要とされる潜像画像を有する印刷物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、カラー複写機の高機能化及び高画質化に伴い、紙幣及び有価証券等の貴重印刷物の偽造品が出回り、深刻な問題となっている。そのため、従来から貴重印刷物には、複写機では再現することが困難な機能性インキや、網点構成から成る画像が多く用いられている。
【0003】
機能性インキを用いた印刷物としては、ランタノイド系希土類化合物を含むインキで印刷された印刷物がある(例えば、特許文献1参照。)。ランタノイド系希土類化合物とは、可視光領域において460nm、540nm及び650nm付近に主要な吸収ピークを有する組成物であるため、三波長光源下以外においては、薄い黄色として視認され、三波長蛍光灯を照射すると、濃い桃色として視認される。
【0004】
前述の特許文献1の印刷物においては、偽造防止印刷部としてランタノイド系希土類化合物を含むインキをベタ印刷することで形成し、色合わせ印刷部として偽造防止印刷部と同色のインキをベタ印刷することで形成する。この印刷物を通常光下で観察すると、偽造防止印刷部及び色合わせ部は、単色のベタ印刷領域として視認されるが、三波長蛍光灯を照射することで、色合わせ印刷部のみが変色し、異なる色のベタ印刷領域として視認され、その色変化の有無により真偽判別を行うものである。
【0005】
また、複製が困難な網点構成として、本出願人は、二つの異なる画像を同一平面上に網点画像として均等に配置する場合において、一般の商業印刷で使用されているシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)及びブラック(Bk)の基本インキを用いて、通常光下で観察される可視画像と、赤外線光下で観察される潜像画像を生成した網点印刷物について出願している(例えば、特許文献2参照。)。
【0006】
この印刷物は、一般の商業印刷で使用されているシアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)が赤外線吸収特性を有しないため、これらを重ね合わせた混色ブラックと、紫外線領域から赤外線領域までの全域にわたり吸収を示すカーボンブラックを主体としたブラック(Bk)を用いて可視画像及び潜像画像を形成する網点を配置している。
【0007】
前述のシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)及びブラック(Bk)を用いて所定の配置規則に基づき印刷された網点印刷物は、通常光下で視認することができる可視画像内に、赤外線カメラ等の鑑定装置を用いて観察することができる潜像画像を埋め込むことができる。当該網点印刷物は、特殊なインキを用いる必要がないため、安価に作製することが可能であり、現在の写真製版装置での複製が不可能であることから、偽造防止効果に優れる。
【0008】
また、本出願人は、潜像画像を形成する機能性材料として、サーモクロミックインキを用い、第1のハーフトーン領域及び第2のハーフトーン領域に形成する背景部をサーモクロミックインキによって形成し、第1のハーフトーン領域の画像部を、サーモクロミックインキが低温状態のときの色と略等色のインキによって形成し、第2のハーフトーン領域の画像部を、サーモクロミックインキが高温状態のときの色と略等色のインキにより形成することで、低温状態では第2のハーフトーン領域の画像部のみが、他の領域の色と異なることで第1の画像として可視化され、高温状態では、第1のハーフトーン領域の画像部のみが他の領域の色と異なることで第2の画像として可視化される画像表示体について出願している(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第4378789号公報
【特許文献2】特許第3544536号公報
【特許文献3】特開2008−126474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に開示されている印刷物は、偽造防止印刷部と色合わせ部を、別々のベタ領域として形成し、三波長蛍光灯を照射した際の変色の有無により真偽判別を行っている。そのことから、基材上に付与する際には、各印刷部を、同一領域に重なるようなデザインで作製することが困難であり、デザイン上の制約を受けるという問題がある。
【0011】
また、特許文献2において開示された技術を用いて作製した印刷物を、カラー複写機を用いて複製することで得られる偽造品は、肉眼では、真正品と区別することができず、例えば、銀行及び入国管理審査等の各種窓口業務における検査担当者が、赤外線カメラ等の鑑定装置を用いて当該印刷物を照射した際の、潜像画像の有無又は変色の有無により、初めて偽造品であることを確認することが可能となる。よって、各種窓口業務では、偽造防止技術に併せた鑑定装置を適宜準備する必要がある。
【0012】
また、鑑定装置を用いているが、いずれも検査担当者が目視検査により確認することから、見落とす可能性があるという問題がある。そこで、各種窓口業務では、検査担当者が鑑定装置を用いることなく、目視により瞬時にカラー複写機を用いて複製した偽造品であることを判別することが可能な偽造防止印刷物が求められている。
【0013】
また、特許文献3に開示されている印刷物は、真正品の印刷物に対する偽造防止抵抗力は極めて高いものの、印刷物に温度変化を与えることで可視画像から潜像模様へと画像をスイッチさせることを目的としているため、特許文献2と同様に、カラー複写機を用いて複製された偽造品を判別するためには、製品に対して潜像画像を観察することができる所定の温度にしなければならない。そのため、瞬時に真正品であるか偽造品であるかを判別することができないという課題が残されていた。
【0014】
本発明は、上記課題の解決を目的とするものであり、カラー複写機を用いて偽造品を作製した際に、真正品と複写物で全く異なる画像を出現させることで、瞬時に偽造品であることを判別することができ、かつ、デザイン上の制約を受けることのない潜像画像を有する印刷物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の潜像画像を有する印刷物は、基材上に、第1のハーフトーン領域と第2のハーフトーン領域とが隣接するように複数配置されて可視画像と潜像画像が形成された印刷物であって、第1のハーフトーン領域は、潜像画像の一部のみを形成する第1の網点部又は第1の背景部のいずれか一方と、第1の網点部又は第1の背景部のいずれか一方と隣接する位置に、可視画像及び潜像画像の一部を形成する第1の網点部又は第1の背景部の他方とを有し、第1の網点部又は第1の背景部の一方は、ランタノイド系希土類化合物を含有し、かつ、基材と等色の第1の色材又は透明の第1の色材により形成され、第1の網点部又は第1の背景部の他方は、ランタノイド系希土類化合物を含有せず通常光下において基材とは異なる色であり、かつ、第1の色材を三波長光源下で観察した場合の色と等色となる第2の色材により形成され、第2のハーフトーン領域は、第1の色材により第1のハーフトーン領域とともに潜像画像を形成する第2の網点部を有し、印刷物を通常光下で観察すると、第1の色材により形成された第1の網点部又は第1の背景部のいずれか一方及び第2の網点部は、基材と等色又は透明として観察されることで、第2の色材により形成された第1の網点部又は第1の背景部の他方により形成された可視画像が観察され、印刷物をカラー複写機で複写すると、可視画像と異なる潜像画像が出現することを特徴とする潜像画像を有する印刷物である。
【0016】
また、本発明の潜像画像を有する印刷物における第2のハーフトーン領域は、第2の網点部と隣接する位置に第2の背景部を更に有し、第2の背景部は、ランタノイド系希土類化合物を含まず、かつ、通常光下において第1の色材と等色の第3の色材により、第2の網点部の濃度及び色相と、基材の隠ぺい率に合わせた網点面積率で形成されたことにより、通常光下において第2の網点部と等色として観察されることを特徴とする潜像画像を有する印刷物である。
【0017】
また、本発明の潜像画像を有する印刷物は、第1のハーフトーン領域に形成された第1の網点部の面積が異なることで階調を有する可視画像が形成され、第2のハーフトーン領域に形成された第2の網点部の面積が異なることで階調を有する潜像画像が形成されたことを特徴とする潜像画像を有する印刷物である。
【0018】
また、第2のハーフトーン領域における第2の網点部は、各々の第2のハーフトーン領域の中心を除く外周領域に形成されたことを特徴とする潜像画像を有する印刷物である。
【0019】
また、本発明の潜像画像を有する印刷物は、ランタノイド系希土類化合物を含有する基材上に、ランタノイド系希土類化合物を含有せず、かつ、基材を通常光下から三波長光源下へ観察条件を変えても所定の値以上の色変化をさせない隠ぺい材料から成る隠ぺい層と、隠ぺい層の上に、少なくとも二つの色材により形成された画像形成層とを有することで、可視画像と潜像画像が形成された印刷物であって、隠ぺい層は、基材を隠ぺいする隠ぺい材料を施した第1の隠ぺい領域及び第2の隠ぺい領域を複数有し、複数の第1の隠ぺい領域は、基材を隠ぺいする隠ぺい材料のみを施した第1の隠ぺい領域及び基材を一部露出させる隠ぺい材料を施さない領域を有する第1の隠ぺい領域から成り、複数の第2の隠ぺい領域は、基材を隠ぺいする隠ぺい材料のみを施した第2の隠ぺい領域及び基材を一部露出させる隠ぺい材料を施さない領域を有する第2の隠ぺい領域から成り、画像形成層は、第1のハーフトーン領域と第2のハーフトーン領域とが隣接するように複数配置され、第1のハーフトーン領域は第1の隠ぺい領域と同一形状であり、かつ、同じ位置に配置され、潜像画像の一部のみを形成する第1の網点部又は第1の背景部のいずれか一方と、第1の網点部又は第1の背景部のいずれか一方と隣接する位置に、可視画像及び潜像画像の一部を形成する第1の網点部又は第1の背景部の他方とを有し、第1の網点部又は第1の背景部の一方は、第1の隠ぺい領域における隠ぺい材料が施されない領域と同一形状であり、かつ、同じ位置に配置されたことで基材を一部露出して形成され、第1の網点部又は第1の背景部の他方は、第1の隠ぺい領域における隠ぺい材料を施す領域と同一形状であり、かつ、同じ位置に配置され、第1の網点部又は第1の背景部の他方を形成する色材は、ランタノイド系希土類化合物を含有せず通常光下において基材とは異なる色であり、かつ、基材を三波長光源下で観察した場合に等色となる第2の色材であり、第2のハーフトーン領域は第2の隠ぺい領域と同一形状であり、かつ、同じ位置に配置され、潜像画像の一部を形成する第2の網点部又は第2の背景部のいずれか一方と、第2の網点部又は第2の背景部のいずれか一方と隣接する位置に、潜像画像の背景を形成する第2の網点部又は第2の背景部の他方とを有し、第2の網点部又は第2の背景部の一方は、第2の隠ぺい領域における隠ぺい材料が施されない領域と同一形状であり、かつ、同じ位置に配置されたことで基材を一部露出して形成され、第2の網点部又は第2の背景部の他方は、第2の隠ぺい領域における隠ぺい材料を施す領域と同一形状であり、かつ、同じ位置に配置され、第2の網点部又は第2の背景部の他方を形成する色材は、ランタノイド系希土類化合物を含有せず、かつ、基材を通常光下で観察した場合に等色となる第3の色材であり、印刷物を通常光下で観察すると、基材を一部露出することにより形成された第1の網点部又は第1の背景部の一方と、基材を一部露出することにより形成された第2の網点部又は第2の背景部の他方、及び第3の色材により形成された第2の網点部又は第2の背景部の他方とが等色として観察されることで、第2の色材により形成された第1の網点部又は第1の背景部の他方により形成された可視画像が観察され、印刷物をカラー複写機で複写すると、可視画像と異なる潜像画像が出現することを特徴とする潜像画像を有する印刷物である。
【0020】
また、本発明の潜像画像を有する印刷物の作製方法は、データを入力する入力部、入力されたデータを処理する処理部、入力されたデータ及び処理されたデータを与えられて記憶する記憶部、データを出力する出力部を備えた印刷機を用いて、前述した潜像画像を有する印刷物を作製する方法であって、可視画像に対応する第1の画像データを入力部から入力し、あるいは処理部において作製するステップと、第1のハーフトーン領域に含まれる第1の網点部及び第1の背景部の位置、形状及び寸法を、可視画像を表現するように第1のハーフトーン領域のデータを処理部において網点化された可視画像として作製し、記憶部に格納するステップと、潜像画像に対応する第2の画像データを入力部より入力し、あるいは処理部において作製するステップと、複数の第2のハーフトーン領域のそれぞれの位置、形状及び寸法、またそれぞれの第2のハーフトーン領域に含まれる第2の網点部の位置、形状及び寸法に関するマスクデータを入力部から入力し、あるいは処理部において作製するステップと、第2の画像データに対しマスクデータを用いてマスク処理を行い、第2の画像要素が潜像画像を表現するように第2のハーフトーン領域のデータを処理部において網点化された潜像画像を作製し、記憶部に格納するステップと、第1のハーフトーン領域のデータと第2のハーフトーン領域のデータとを合成した印刷物のデータを処理部において作製するステップと、処理部で作製された印刷物のデータを出力部から出力するステップとを備えることを特徴とする潜像画像を有する印刷物の作製方法である。
【0021】
また、本発明の潜像画像を有する印刷物の作製方法は、第2のハーフトーン領域に第2の背景部を形成する場合の第2のハーフトーン領域のデータを作製するステップにおいて、第1の色材により形成された第2の網点部の隠ぺい率、濃度及び色相のデータを入力部から入力し、入力されたデータを基に第2の網点部と第2の背景部を通常光下において等色として視認させるため、第3の色材により第2の背景部を形成する網点面積率を決定するステップを更に有することを特徴とする潜像画像を有する印刷物の作製方法である。
【発明の効果】
【0022】
本発明の潜像画像を有する印刷物は、通常光下では可視画像を視認することができ、かつ、印刷物をカラー複写機により複写した際には、出力物において、可視画像と全く異なる潜像画像が出現する、いわゆる、画像のスイッチ効果を有する印刷物を提供することができる。よって、作製した偽造品は、可視画像が全く異なる潜像画像にスイッチしているため、各種窓口へ持っていくことすらできない。仮に、持って行った場合において、検査担当者は、異なる画像が出現していることから、鑑定装置を用いずに、目視により瞬時に偽造品であることを判別することが可能となり、従来の複写防止印刷物と比較して、複写牽制機能が向上した印刷物となる。
【0023】
また、本発明の潜像画像を有する印刷物は、特殊な網点構成により作製しているため、二つの画像を同一領域内に重なるようなデザインで作製することが容易であり、デザイン上の制約を受けることがなく、更には、偽造品を作製するために、各インキにより作製した領域を解析し、各版面を作製することは極めて困難であることから、格別の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の潜像模様を有する印刷物における網点構成の一例を示す図
【図2】可視画像を形成する網点構成及び可視画像を示す図
【図3】潜像画像を形成する網点構成及び潜像画像を示す図
【図4】第1の網点部及び第2の網点部の形状の一例を示す図
【図5】第1の実施の形態における印刷物の作製に用いられる装置の構成を示すブロック図
【図6】第1の実施の形態における印刷物を作製する方法における手順を示すフローチャート
【図7】マスクデータを示す模式図
【図8】マスク処理を示す模式図
【図9】第1の実施の形態における印刷物を通常光下で観察した際に可視状態上に潜像画像が出現した状態を示す説明図
【図10】第2の実施の形態の印刷物における網点構成の一例を示す図
【図11】第2の実施の形態における第2のハーフトーン領域を作製する手順を示すフローチャート
【図12】第3の実施の形態における印刷物の可視画像を形成する網点構成及び可視画像を示す図
【図13】第3の実施の形態における印刷物の潜像画像を形成する網点構成及び潜像画像を示す図
【図14】第4の実施の形態の印刷物における網点構成を示す断面図
【図15】第1のハーフトーン領域3と第2のハーフトーン領域4の大きさの関係を示す拡大図
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他のいろいろな実施の形態が含まれる。
【0026】
(第1の実施の形態)
本発明の潜像画像を有する印刷物(以下「印刷物」という。)は、通常光下で観察される画像(以下「可視画像」という。)と、印刷物をカラー複写機により複写した複写物(以下「複写物」という。)に出現する画像(以下「潜像画像」という。)が全く異なる画像へとスイッチする印刷物であり、可視画像を形成する複数の第1のハーフトーン領域と潜像画像を形成する複数の第2のハーフトーン領域を重なり合うことなく均等に配置することで、二つの独立した画像を形成する領域が同一の印刷領域内に形成されたものである。
【0027】
本発明の潜像画像は、ランタノイド系希土類化合物を含有し、かつ、通常光下で透明の色材又は基材と等色(以下「第1の色」という。)の第1の色材と、第1の色材を三波長光源下で観察した場合の色(以下「第2の色」という。)と等色であり、ランタノイド系希土類化合物を含有しない第2の色材を用いて第1のハーフトーン領域における第1の網点部及び第1の背景部と、第2のハーフトーン領域における第2の網点部を第1の色材で形成することで、通常光下で観察される可視画像と、印刷物をカラー複写機で複写した複写物に出現する可視画像と異なる潜像画像を有する印刷物である。
【0028】
ランタノイド系希土類化合物は、可視光領域において460nm、540nm及び650nm付近に主要な吸収ピークを有する組成物であるため、通常光下においては、透明として視認され、三波長光源下では、色が変化して視認される。一般的なカラー複写機においては、光源に三波長蛍光灯を用いているため、三波長光源等を照射した際に色が変化するランタノイド系希土類化合物を含有する色材を用いて潜像画像を形成することで、複写物に潜像画像を出現させることが可能となる。
【0029】
ランタノイド系希土類化合物としては、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuから選択されるランタノイド系希土類元素を含む化合物であれば良いが、特に、通常光下において透明で、かつ、カラー複写機で複写された場合に赤色(濃い桃色)に変化するHo2O3が好ましい。
【0030】
また、本発明の網点構成を形成する色材としては、公知のグラビアインキ、スクリーンインキ、プロセスインキ、インクジェットプリンタ用インク等を使用することができる。また、基材2にそれぞれの領域を形成する方法としては、オフセット印刷方式、グラビア印刷方式、スクリーン印刷方式、フレキソ印刷方式、インクジェットプリンタ、レーザプリンタ等、特に限定されるものではない。
【0031】
図1(a)は、図1(b)に示す第1の実施の形態における印刷物1の網点構成の一部を拡大した図であり、基材2上に第1のハーフトーン領域3と第2のハーフトーン領域4とが隣接するように複数配置されている。図1(b)は、第1のハーフトーン領域3と第2のハーフトーン領域4により、可視画像と潜像画像が形成された印刷物1である。
【0032】
第1のハーフトーン領域3は、潜像画像の一部のみを形成する第1の網点部3a又は第1の背景部3bのいずれか一方と、可視画像及び潜像画像の一部を形成する第1の網点部3a又は第1の背景部3bの他方とを有する。第1の網点部3a又は第1の背景部3bのいずれか一方は、第1の色材により形成され、他方は、第2の色材により形成される。以下、第1の実施の形態においては、一例として、第1のハーフトーン領域3は、潜像画像の一部及び可視画像を形成する第1の網点部3aと、第1の網点部3aと隣接する位置に潜像画像の一部のみを形成する第1の背景部3bとを有し、第1の網点部3aは、第2の色材により形成され、第1の背景部3bは、第1の色材により形成されている場合について説明する。
【0033】
第2のハーフトーン領域4は、ランタノイド系希土類化合物を含有し、かつ、通常光下で透明の第1の色材又は基材2と等色の第1の色材により、潜像画像の一部を形成する第2の網点部4aを有する。第2の網点部4aが透明又は基材2と等色の第1の色材により形成されているため、第1の実施の形態における印刷物1では、第2のハーフトーン領域4における第2の網点部4aを除く領域に印刷を行わない、いわゆる、基材2表面が露出した状態としている。なお、本発明における透明の色材とは、第2のハーフトーン領域4に形成された第2の網点部4aが通常光下で観察されない構成であれば、無色透明の色材又は有色透明の色材のどちらでも良い。
【0034】
本発明の印刷物1において観察される可視画像5と潜像画像6について、図2及び図3を用いて説明する。図2(a)は、印刷物1を通常光下で観察した場合に観察される網点構成を拡大したものであり、第2のハーフトーン領域4に形成された第2の網点部4aは、ランタノイド系希土類化合物を含有し、かつ、通常光下で透明又は基材2と等色の第1の色材により形成されているため、第2のハーフトーン領域4内において第2の網点部4aが形成されていない、いわゆる、基材2表面と第2の網点部4aに色差が生じないことから、第2の網点部4aが観察されない状態である。
【0035】
第1のハーフトーン領域3における第1の網点部3aは、第2の色を有する第2の色材により形成し、第1の背景部3bを第1の色材により形成したものである。この印刷物1を通常光下で観察した場合、第1の色材により形成された、第1のハーフトーン領域3における第1の背景部3bと第2のハーフトーン領域4における第2の網点部4aは、いずれも基材2と等色として観察されるため、第1のハーフトーン領域3における第1の背景部3bと第2のハーフトーン領域4は、等色として観察される。一方、第1のハーフトーン領域3における第1の網点部3aは、第2の色を有する第2の色材により形成しているため、図2(b)に示すように、第1のハーフトーン領域3における第1の網点部3aにより形成された可視画像5が観察される。なお、図2においては、第1の網点部3aの面積が同一であることから、形成される可視画像5は階調を有しない画像であるが、複数の第1の網点部3aの面積を、各々異ならせることにより階調を有する可視画像5を形成することも可能である。
【0036】
図3(a)は、前述の印刷物1をカラー複写機で複写した複写物8における網点構成を拡大したものであり、第1のハーフトーン領域3における第1の背景部3b及び第2のハーフトーン領域4における第2の網点部4aは、第1の色材の変色効果により、第2の色へと変化する。また、第1のハーフトーン領域3における第1の網点部3aは、ランタノイド系希土類化合物を含有しない第2の色材により形成されているため、複写物8においても色変化することなく、第2の色として観察される。よって、図3(b)のように、第2の網点部4a、第1の網点部3a及び第1の背景部3bが等色として観察されることから、第2のハーフトーン領域4における第2の網点部4aを除く領域である、いわゆる、基材2表面が露出した領域により形成された可視画像5と全く異なる潜像画像6が観察される。なお、図3においては、第2の網点部4aの面積が同一であることから、形成される潜像画像6は階調を有しない画像であるが、複数の第2の網点部4aの面積を、各々異ならせることにより階調を有する潜像画像6を形成することも可能である。
【0037】
本発明における等色とは、色差ΔEが6未満のことを指し、色差とは、CIE1976L*a*b*表色系のΔEで定義するものとする。CIE1976L*a*b*表色系とは、CIE(国際照明委員会)が1976年に推奨した色空間のことであり、日本工業規格では、JIS Z 8729に規定されている。色差は、ある二色の色空間中における距離のことであり、CIE1976L*a*b*表色系での色差は、二色のL*の差、a*の差、及びb*の差をそれぞれ二乗して加え、その平方根をとることで求めることができる。
【0038】
一般的に、色差ΔEが6前後の場合においては、異なった色として視認される可能性がある。ただし、本発明においては、第1のハーフトーン領域3及び第2のハーフトーン領域4は、肉眼ではそれぞれの領域を区別して視認することができない微細な網点を有する領域である。そのことから、前述のとおり、色差ΔEが6未満であれば、通常光下において、透明又は基材と等色の第1の色材により形成された第2のハーフトーン領域4における第2の網点部4aと、第2の網点部4aを除く領域である、いわゆる、基材2表面の色を区別することができず、第2のハーフトーン領域4内において基材2と第2の網点部4aに色差が生じないことから、第2の網点部4aが観察されない状態として視認される。また、印刷物1をカラー複写機により複写した複写物8の第1のハーフトーン領域3における第1の網点部3a及び第1の背景部3bについても、ΔEが6未満であるため、等色として視認される。
【0039】
一方、ランタノイド系希土類化合物を含有する第1の色材によって形成された第2の網点部4a及び第1の背景部3bは、カラー複写機により複写した複写物8において、第2のハーフトーン領域4における第2の網点部4aを除く、いわゆる、基材2表面が露出した領域とは異なる色であり、かつ、第1のハーフトーン領域3における第1の網点部3aと等色の第2の色へと変化した状態として視認される。なお、本発明における異なる色とは、色差ΔEが6以上のことを指し、第1の色材と第2の色材を通常光下で観察した場合の第1の色及び第2の色の関係が、前述した色差ΔEが6以上となる。また、第1の色材により形成された領域と第2の色材により形成された領域を、三波長光源下で観察した場合の色をΔE6未満とする。以上の等色又は異なる色の関係を満足させることで、通常光下で観察される可視画像5と複写物8に出現する潜像画像6を全く異なる画像として視認することができる。
【0040】
また、本発明の印刷物1における第1の網点部3a及び第2の網点部4aは、図4(a)のように、各々のハーフトーン領域の中心に形成された例で説明しているが、図4(b)のように、各々のハーフトーン領域の中心を除く外周領域である、いわゆる、反転円形状として形成することや、図4(c)のように、各々のハーフトーン領域を2つ以上に分割して形成することも可能であり、これらの配置としても同様の効果を得る。
【0041】
次に、本実施の形態による印刷物1の作製に用いられる装置について、その構成を示した図5を用いて説明する。この作製装置は、入力部401、処理部402、記憶部403及び出力部404を備えている。入力部401は、本実施の形態の印刷物1の作製に必要なデータを入力し、処理部402に与える。処理部402は、与えられたデータを記憶部403に格納するとともに、印刷物1の作製に必要な演算処理及び画像処理等を行い、得られた結果を出力部404に与える。出力部404は、処理部402から与えられたデータを、外部の、例えば、図示されてない印刷機等に出力する。
【0042】
このような作製装置を用いて、本実施の形態による印刷物1を作製する方法について、その手順を示した図6を用いて説明する。図6におけるステップS11として、第1のハーフトーン領域3が形成する可視画像に対応する原画像として、第1の画像データである可視画像データを処理部402が作製するか、又は外部から可視画像データとして入力部401より入力し、処理部402を介して網点化された可視画像を記憶部403に格納する。次に、ステップS12として、記憶部403に格納された可視画像データを基に、第1のハーフトーン領域3内に形成する第1の網点部3aの位置、形状及び寸法を、処理部402を介して記憶部403に第1のハーフトーン領域3のデータとして格納する。
【0043】
次に、ステップS13として、第2のハーフトーン領域4が形成する潜像画像に対応する原画像として、第2の画像データである潜像画像データを処理部402が作製するか、又は外部から潜像画像データとして入力部401より入力し、処理部402を介して網点化された潜像画像を記憶部403に格納する。ステップS14として第2のハーフトーン領域4のみをマスク処理したマスクデータを処理部402によって作製するか、又は外部からマスクデータとして入力部401より入力し、処理部402を介して記憶部403に格納する。ステップS15として、記憶部403に格納された潜像画像データ及びマスク画像を基に、第2のハーフトーン領域4内に形成する第2の網点部4aの位置、形状及び寸法を、処理部402を介して記憶部403に第2のハーフトーン領域4のデータとして格納する。
【0044】
次に、ステップS16として、前述までのステップで記憶部403に格納された第1のハーフトーン領域3のデータと、第2のハーフトーン領域4のデータを合成し、ステップS17により、外部の印刷機等の出力部404から出力して印刷物1が完成する。前述のステップS16により、2つのデータを合成する方法としては、2つのデータに共通する位置として、少なくとも任意の三つの点を、各々のハーフトーン領域データにおけるそれぞれの基準点に設定することで、二つのデータを合成する方法を用いる。なお、基準点の設定方法についての詳細は、特願2009−255214号において記載されていることから、省略する。
【0045】
図7は、マスクデータを示す模式図である。マスクデータは、複数の第2のハーフトーン領域4へ、潜像画像6を配置する際に用いる画像である。マスクデータは、あらかじめ作製しておいた、フォーマットデータを用いて生成される。フォーマットデータとは、本発明における印刷物1を生成する、複数の第1のハーフトーン領域3及び複数の第2のハーフトーン領域4を、どのように配置するかを設計することで、フォーマットデータが生成される。フォーマットデータは、複数の画素によって構成される。フォーマットデータにおける、複数の第1のハーフトーン領域3の配置箇所の画素を白画素とし、複数の第2のハーフトーン領域4の配置箇所の画素のみを黒画素とすることで、マスクデータが生成される。マスクデータは、各原画像データの基準点と対応する基準点(P1、P2、P3)を有する。
【0046】
マスク処理とは、潜像画像データに対して、マスクデータの白画素に対応する部分を全て白画素に置き換える処理を施すことで、潜像画像データのうち、複数の第1のハーフトーン領域3に相当する部分を全て白色に置き換えるものである。それにより、潜像画像データは、複数の第2のハーフトーン領域4内に配置された第2の網点部4aのみから成る画像へと変換され、可視画像データ及び潜像画像データを形成する複数の各網点を、重なり合うことなく印刷領域内へ均等配置することが可能となる。
【0047】
図8は、一例として潜像画像データを生成する、マスク処理を示す模式図である。マスク処理においては、処理部402へ入力した、図8(a)に示す、マスクデータの基準点(P1、P2、P3)と、図8(b)に示す、マスクデータと対応する潜像画像データの基準点(P1’、P2’、P3’)とを合わせる。二つの画像データを合わせた際に、同じ位置となる二つの画素のうち、マスクデータを構成する画素が黒画素ならば、潜像画像データを構成する画素を残す。また、マスクデータを構成する画素が白画素ならば、潜像画像データを白画素とする。マスク処理を行うことで、潜像画像データのうち、第2のハーフトーン領域4に相当しない部分、つまり、第1のハーフトーン領域3を形成する画素は白画素となる。よって、図8(c)に示す、複数の第2のハーフトーン領域4から成る潜像画像データが生成される。
【0048】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態における印刷物1について説明する。まず、第2の実施の形態における印刷物1と、第1の実施の形態における印刷物1の異なる点について説明する。第1の実施の形態では、第1の色材が透明又は基材と等色の色材を用いたため、第2のハーフトーン領域4内に第2の網点部4aのみが配置されている。この場合、第2のハーフトーン領域4に形成された第2の網点部4aと第2の網点部4aが形成されていない、いわゆる、基材2表面が露出した領域が等色として観察されることを前提に説明したが、第1の色材が透明又は基材と等色であっても、第1の色材の基材2隠ぺい率、濃度及び色相や、第2の網点部4a表面からの光沢等の影響により、基材2と等色の第2の網点部4aを形成することができない場合がある。そこで、第2の網点部4aの隠ぺい性を向上させるために、第2の実施の形態においては、第2のハーフトーン領域4における第2の網点部4aと隣接する位置にランタノイド系希土類化合物を含まず、かつ、通常光下において第1の色を有する第3の色材により第2の背景部4bを形成したものである。
【0049】
まず、第1の実施の形態における印刷物1の第2の網点部4aと第2の網点部4aを除く基材2表面が露出した領域が、通常光下において等色として観察することができない場合について説明する。第2の網点部4aは、前述した第1の実施の形態では、ランタノイド系希土類化合物を含有し、かつ、通常光下で透明又は基材と等色の第1の色材により形成しているが、このランタノイド系希土類化合物を含有する色材は、基材2への浸透等の影響により、第1の色材自体の色が透明又は基材2と等色の第1の色であっても、通常光下において基材2と等色の状態として第2の網点部4aを形成することができないことがあり、その場合、図9に示すように、通常光下において印刷物1に形成された可視画像5と重なる位置に、うっすらと潜像画像6が観察される状態となる。
【0050】
また、ランタノイド系希土類化合物を含有する第1の色材は、光沢性を有するため、基材2上に第2の網点部4aを形成した際に、各々の第2のハーフトーン領域4内における第2の網点部4a表面の光沢度と、第2の網点部4aを除く領域である、いわゆる、基材2表面が露出した領域の光沢度が異なることで、通常光下で印刷物1を傾けて観察した場合に、可視画像5上に潜像画像6がうっすらと観察されてしまうことがある。
【0051】
そのため、第2の実施の形態では、図10(a)の網点構成の拡大図に示すように、第2のハーフトーン領域4内における第2の網点部4aの基材2の隠ぺい率、濃度及び色相や、第2の網点部4a表面からの光沢等の影響があっても潜像画像6を潜像化するため、第2のハーフトーン領域4における第2の網点部4aと隣接する位置に、第2の背景部4bを更に有する。第2の背景部4bは、ランタノイド系希土類化合物を含まず、かつ、通常光下において第1の色材と等色の第3の色材により、第2の網点部4aの濃度及び色相と、基材2の隠ぺい率に合わせた網点面積率で形成される。それにより、通常光下において、第2の網点部4aと第2の背景部4bが等色で、かつ、同等の光沢度として観察されることで潜像画像6をより潜像化することができる。
【0052】
第2の背景部4bは、第2の網点部と隣接する位置であれば、図10(a)に示すように、第2のハーフトーン領域4における第2の網点部4a以外に配置されることに限定されず、例えば、図10(b)及び図10(c)に示すように、余白部4cがあっても良い。
【0053】
なお、第1の実施の形態においては、第2の網点部4aを通常光下で透明又は基材と等色の第1の色材により形成することで、第2のハーフトーン領域4における第2の網点部4aと基材2表面が等色であると説明したが、第2の実施の形態における通常光下とは、前述した印刷物1を傾けて観察した場合も含む。よって、第2の実施の形態においては、基材2を水平の状態で視認した場合と傾けて視認した場合において、第2の網点部4aと第2の背景部4bは、等色(色差ΔEが6未満)で視認されることとする。
【0054】
以上のように、第2の実施の形態では、第2のハーフトーン領域4に第1の色材により形成された第2の網点部4aと第3の色材により形成された第2の背景部4bを形成することにより、印刷物1を傾けて観察した場合であっても第2の網点部4aと第2の背景部4bにおいて光沢差が生じないことから、印刷領域全面において、各々の第2のハーフトーン領域4が全て同一の濃度及び色相となり、第1のハーフトーン領域3における画像要素3aにおいて形成された可視画像6が観察される。
【0055】
なお、本願発明に用いるランタノイド系希土類化合物を含有する第1の色材とランタノイド系希土類化合物を含有しない第3の色材を等色として観察できる状態とするためには、色材自体を等色として設定するだけでは、第1の色材における基材2への浸透性、基材2隠ぺい性等の影響により、基材2の色の影響を受けることがある。そのため、第2の実施の形態の印刷物1を作成するためには、第2のハーフトーン領域4データを作製する新たなステップが追加される。
【0056】
図11により、第2のハーフトーン領域4のデータを作製する新たなステップについて説明する。まず、図6のステップS14までにより、記憶部403に格納された潜像画像データに基づき、図11のステップS21において第2のハーフトーン領域4に形成する第2の網点部4aの位置、形状及び寸法を処理部により作製し、併せて第2の背景部4bの位置、形状及び寸法を処理部により作製する。
【0057】
次に、ステップS22として、第2の網点部4aの基材隠ぺい性、濃度及び色相を入力部401より入力し、記憶部403に格納する。ステップS23として、記憶部403に格納された第2の網点部4aにおける基材2隠ぺい性、濃度及び色相のデータに基づき、第2の網点部4aと第2の背景部4bを等色とするために、第2の背景部4bを形成する網点面積率を処理部402により作製し、記憶部403に格納する。
【0058】
前述までのステップにより記憶部403に格納されたデータに基づき、ステップS24にて、全ての第2のハーフトーン領域4データを作製し、以降については、前述した図6のステップS16にて、第1のハーフトーン領域3のデータと合成され、ステップS17にて印刷物を得る。
【0059】
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態について説明する。第3の実施の形態における印刷物1は、前述した第1の実施の形態及び第2の実施の形態と異なる構成として、第2のハーフトーン領域4内に形成する第2の網点部4aを、前述した図4(b)に示す、反転円形状とし、第2の背景部4bを、第2のハーフトーン領域4における中心を含む円形状の領域としたものである。図3(b)は、第1の実施の形態及び第2の実施の形態で形成した印刷物1をカラー複写機で複写した複写物8を示す図である。
【0060】
図3(b)に示すように、潜像画像6は、画像領域6aと背景領域6bから成る。画像領域6aは、第2のハーフトーン領域4における第2の網点部4aにより形成され、背景領域6bは、第1のハーフトーン3領域及び第2の網点部4aが形成されていない、いわゆる、基材2表面が露出した領域(第2の背景部4b)により形成される。複写物8は、第2の網点部4aと第1のハーフトーン領域3は、等色として視認されるため、第2のハーフトーン領域4における基材2表面が露出した領域のみが異なる色として観察されることで第2のハーフトーン領域4内に形成された第2の網点部4aによって画像領域6aが形成されていることから、画像領域6aの中に、背景領域6bの一部を形成する第1のハーフトーン領域3が混在した状態となるため、画像領域6a及び背景領域6b全体にわたり、第1の色と第2の色が混色した状態として視認される。
【0061】
第3の実施の形態では、第2のハーフトーン領域4に形成する第2の網点部4aを、図4(b)に示す第2のハーフトーン領域4の中心を除く外側である、いわゆる、反転円形状として形成している。前述した反転円形状として第2の網点部4aを形成することにより、各々の第2のハーフトーン領域4に形成された第2の網点部4aと第1のハーフトーン領域3の間に第2の背景部4bが存在することがなくなることで、背景領域6bに形成される第2の色を有する第1のハーフトーン領域が強調されることなく潜像画像6を観察することができる。
【0062】
第3の実施の形態における印刷物1を通常光下で観察した場合の網点構成及び可視画像5と、印刷物1をカラー複写機で複写した複写物8における網点構成及び潜像画像6について、図12及び図13を用いて説明する。
【0063】
図12(a)は、第3の実施の形態における印刷物1を通常光下で観察した場合に観察される網点構成を拡大したものであり、第2のハーフトーン領域4に形成された反転円形状の第2の網点部4aは、ランタノイド系希土類化合物を含有し、かつ、第1の色を有する第1の色材により形成され、第2の背景部4bは、ランタノイド系希土類化合物を含まず、かつ、第1の色を有する第3の色材により形成することで、第2のハーフトーン領域4における第2の網点部4a及び第2の背景部4bは、第1の色として観察される。
【0064】
第1のハーフトーン領域3における第1の網点部3aは、前述した第1の実施の形態及び第2の実施の形態と同様に、第2の色を有し、かつ、ランタノイド系希土類化合物を含有しない第2の色材により形成し、第1の背景部3bを第1の色材により形成したものである。この印刷物1を通常光下で観察した場合、第1の色材により形成された、第1のハーフトーン領域3における第1の背景部3b及び第2のハーフトーン領域4における第2の網点部4aと、第3の色材により形成された第2のハーフトーン領域4における第2の背景部4bは、第1の色として観察されるため、これら三つの領域は、等色として観察される。一方、第1のハーフトーン領域3における第1の網点部3aは、第2の色を有する第2の色材により形成しているため、図12(b)に示すように、第1の網点部3aにより形成された可視画像5が観察される。
【0065】
図13(a)は、第3の実施の形態における印刷物1をカラー複写機により複写した複写物8における網点構成を拡大したものであり、第2のハーフトーン領域4における第2の網点部4aは、第1の色材の変色効果により、第2の背景部4bと異なる第2の色へと変化する。
【0066】
また、第1のハーフトーン領域3における第1の網点部3aは、ランタノイド系希土類化合物を含有しない第2の色材により形成されているため、複写物8においても色変化することなく、第2の色として観察されるが、第1のハーフトーン領域3における第1の背景部3bは、第1の色材により形成しているため、前述した第2のハーフトーン領域4における第2の網点部4aと同様に、第2の色へと変化する。
【0067】
この複写物8を観察した状態を示すのが図13(b)である。図13(b)に示すように、潜像画像6は、画像領域6aと背景領域6bから成る。第3の実施の形態において画像領域6aは、第2の網点部4aにより形成され、背景領域6bは、第1のハーフトーン領域3及び第2の背景部4bにより形成される。第2のハーフトーン領域4に形成された反転円形状の第2の網点部4aと第1のハーフトーン領域3に形成された第1の網点部3a及び第1の背景部3bが等色として観察され、かつ、第1の実施の形態及び第2の実施の形態のように、各々の第2の網点部4aと第1のハーフトーン領域3の間に第2の背景部4bが介在することなく、等色となる領域が隣接して形成されることから、第2のハーフトーン領域4における第2の網点部4aにより、可視画像5と全く異なる潜像画像6が鮮明に観察される。
【0068】
(第4の実施の形態)
第4の実施の形態について、その構成を示した図14を用いて説明する。図14(a)は、第4の実施の形態における網点構成を示す模式図であり、図14(b)は、前述した第2の実施の形態における網点構成を示す模式図である。第4の実施の形態は、前述した第1の実施の形態、第2の実施の形態及び第3の実施の形態で共通する構成であった、ランタノイド系希土類化合物を含有する第1の色材を用いることで、印刷物1をカラー複写機で複写した複写物8に潜像画像6を出現させる方法以外の構成である。なお、第1のハーフトーン領域3における第1の網点部3a及び第1の背景部3bと、第2のハーフトーン領域4における第2の網点部4a及び第2の背景部4bの位置関係は、一例として、前述した第2の実施の形態と同様の配置とした。
【0069】
図14(a)に示すように、第4の実施の形態においては、ランタノイド系希土類化合物を含有する基材2´上に、ランタノイド系希土類化合物を含有せず、かつ、基材2´の色を、通常光下から三波長光源下へ観察条件を変えても所定の値以上の変化をさせない隠ぺい材料から成る隠ぺい層7と、隠ぺい層7の上に、少なくとも二つの色材により形成された画像形成層11が形成される。
【0070】
隠ぺい層7は、基材2´を隠ぺいする隠ぺい材料を施した第1の隠ぺい領域9及び第2の隠ぺい領域10を複数有する。複数の第1の隠ぺい領域9は、基材2´を隠ぺいする隠ぺい材料のみを施した第1の隠ぺい領域9a及び基材2´を一部露出させる隠ぺい材料を施さない領域9bを有する。また、複数の第2の隠ぺい領域10は、基材2´を隠ぺいする隠ぺい材料のみを施した第2の隠ぺい領域10b及び基材2´を一部露出させる隠ぺい材料を施さない領域10aを有する。
【0071】
隠ぺい材料を施す領域(9a、10b)を形成する隠ぺい材料については、白インキ等を用いることが可能であるが、基材2´を通常光下から三波長光源下へ観察条件を変えても所定の値以上の色変化させない材料であればこれに限定されず、いかなる材料で形成しても良い。なお、所定の値以上の色変化とは、隠ぺい材料を施す領域(9a、10b)を通常光下で観察した際の色と、三波長光源下で観察した際の色の色差ΔEが6以上となることをいう。隠ぺい材料に用いることが可能な白インキには、オフセット印刷用UVインキとしてDIC株式会社製 ダイキュアRTX 白、インクジェット印刷用UVインクとして東洋インキ製造株式会社製 LIOJET FV03 ホワイト等がある。
【0072】
画像形成層11は、第1のハーフトーン領域3と第2のハーフトーン領域4とが隣接するように複数配置されている。第1のハーフトーン領域3は、第1の隠ぺい領域9と同一形状であり、かつ、同じ位置に配置され、潜像画像6の一部のみを形成する第1の網点部3a又は第1の背景部3bのいずれか一方と、可視画像5及び潜像画像6の一部を形成する第1の網点部3a又は第1の背景部3bの他方とを有する。なお、前述のとおり第4の実施の形態においては、第2の実施の形態と同様の配置とすることから、第1のハーフトーン領域3は、潜像画像6の一部及び可視画像5を形成する第1の網点部3aと、第1の網点部3aと隣接する位置に潜像画像6の一部のみを形成する第1の背景部3bとを有する構成とする。
【0073】
第1の網点部3aは、第1の隠ぺい領域9における隠ぺい材料を施す領域9aと同一形状であり、かつ、同じ位置に配置される。さらに、第1の網点部3aは、ランタノイド系希土類化合物を含有せず、通常光下において基材2´とは異なる色であり、かつ、基材2´を三波長光源下で観察した場合の色と等色となる第2の色材により形成される。
【0074】
また、第1の背景部3bは、第1の隠ぺい領域9における隠ぺい材料が施されない領域9bと同一形状であり、かつ、同じ位置に配置されたことで基材2´を一部露出して形成される。
【0075】
第2のハーフトーン領域4は、第2の隠ぺい領域10と同一形状であり、かつ、同じ位置に配置され、潜像画像6の一部を形成する第2の網点部4a及び第2の背景部4bを有する。なお、前述のとおり、第4の実施の形態においては、第2の実施の形態と同様の配置とすることから、第2のハーフトーン領域4は、潜像画像6の一部を形成する第2の網点部4aと、第2の網点部4aと隣接する位置に潜像画像6の背景を形成する第2の背景部4bとを有する構成とする。
【0076】
第2の網点部4aは、第2の隠ぺい領域10における隠ぺい材料が施されない領域10aと同一形状であり、かつ、同じ位置に配置されたことで基材2´を一部露出して形成される。
【0077】
また、第2の背景部4bは、第2の隠ぺい領域10における隠ぺい材料を施す領域10bと同一形状であり、かつ、同じ位置に配置される。さらに、第2の背景部4bは、ランタノイド系希土類化合物を含有せず、かつ、基材2´を通常光下で観察した場合の色と等色となる第3の色材により形成される。
【0078】
このように、第4の実施の形態においては、隠ぺい層7を構成する各隠ぺい領域(9、10)における隠ぺい材料を施す領域(9a、10b)の、それぞれの位置関係、形状及び大きさが、第1のハーフトーン領域3における第1の網点部3a及び第2のハーフトーン領域4における第2の背景部4bに対応した構成となっているため、第1の隠ぺい領域9における隠ぺい材料を施す領域9a上に第1のハーフトーン領域3における第1の網点部3aが形成され、第2の隠ぺい領域10における隠ぺい材料を施す領域10b上に第2のハーフトーン領域4における第2の背景部4bが形成される。
【0079】
ここで、前述した第2の実施の形態及び第3の実施の形態の印刷物1における網点構成と、第4の実施の形態における印刷物1の網点構成の違いを比較するため、比較例として、第1のハーフトーン領域3における第1の網点部3a及び第1の背景部と、第2のハーフトーン領域4における第2の網点部4a及び第2の背景部4bの位置関係が同じである第2の実施の形態の印刷物1における網点構成について、図14(b)の1つの第1のハーフトーン領域3及び第2のハーフトーン領域4を拡大した断面図を用いて説明する。第2の実施の形態における印刷物1は、基材2上に複数の第1のハーフトーン領域3と第2のハーフトーン領域4を有し、第1のハーフトーン領域3には、印刷物1をカラー複写機で複写した場合の複写物8において、第2の色材により形成された第1の網点部3aと、第1の網点部3aと等色として観察される第1の色材により形成された第1の背景部3bとを有し、第2のハーフトーン領域4には、通常光下で観察した場合に第2の背景部4bと等色として観察される第1の色材により形成された第2の網点部4aと、第3の色材によって形成された第2の背景部4bを有する。
【0080】
図14(b)のように、基材2上の第1のハーフトーン領域3内に第1の網点部3aと第1の背景部3bが形成され、第2のハーフトーン領域4内に第2の網点部4a及び第2の背景部4bを形成することで、通常光下では、第1のハーフトーン領域3に形成された第1の背景部3bと第2のハーフトーン領域4に形成された第2の網点部4a及び第2の背景部4bが等色として観察され、第1のハーフトーン領域3に形成した第1の網点部3aが異なる色として観察されることから、可視画像5が観察され、印刷物1をカラー複写機により複写した複写物8では、第1のハーフトーン領域3に形成された第1の網点部3a及び第1の背景部3bと、第2のハーフトーン領域4に形成された第2の網点部4aが等色として観察され、第2のハーフトーン領域4に形成した第2の背景部4bが異なる色として観察されることで、可視画像5と異なる潜像画像6が観察されるものである。
【0081】
一方、第4の実施の形態では、基材2´自体にランタノイド系希土類化合物を含有させることで印刷物1をカラー複写機により複写した複写物8に潜像模様6を出現させる構成である。よって、図14(a)に示す1つの第1のハーフトーン領域3及び第2のハーフトーン領域4を拡大した断面図のように、ランタノイド系希土類化合物の変色効果を部分的に隠ぺいする必要があるため、第1のハーフトーン領域3における第1の網点部3aに対応する位置と、第2のハーフトーン領域4における第2の背景部4bに対応する位置に各隠ぺい領域(9、10)における隠ぺい材料を施す領域(9a、10b)をそれぞれ形成し、その各隠ぺい材料を施す領域(9a、10b)上の対応する位置に第1の網点部3a及び第2の背景部4bをそれぞれ形成した構成である。
【0082】
なお、可視画像5及び潜像画像6のデザインによっては、各ハーフトーン領域(3、4)内において、各網点部(3a、4a)を有しない場合がある。その場合には、各網点部(3a、4a)を有しない各ハーフトーン領域(3、4)と対応する位置に配置される複数の各隠ぺい領域(9、10)は、基材2´を隠ぺいする隠ぺい材料のみを施した第1の隠ぺい領域(図示せず)又は第2の隠ぺい領域(図示せず)となる。
【0083】
第4の実施の形態の印刷物1を通常光下で観察した場合、基材2´を一部露出することにより形成された第1の背景部3b及び第2の網点部4aと、第3の色材により形成された第2の背景部4bは、全て等色として観察されることから、第2の色材により形成された第1の網点部3aによって形成された可視画像5が観察される。
【0084】
一方、印刷物1をカラー複写機により複写した複写物8は、基材2´表面が露出している第1のハーフトーン領域3における第1の背景部3b及び第2のハーフトーン領域4における第2の網点部4aの色が第1の色から第2の色へと変化することから、第2のハーフトーン領域4における第2の背景部4bと、第1のハーフトーン領域3及び第2のハーフトーン領域4における第2の網点部4aの色が異なり、可視画像5と全く異なる潜像画像6が出現する。よって、複写物8を偽造品として用いることを不可能な状態とすることができる。
【0085】
なお、前述した第1の実施の形態、第2の実施の形態、第3の実施の形態及び第4の実施の形態では、第1のハーフトーン領域3よりも第2のハーフトーン領域4が大きい状態の例で説明したが、図15(a)のように、第1のハーフトーン領域3と第2のハーフトーン領域4の大きさが同一であっても良く、図15(b)のように、第1のハーフトーン領域3よりも第2のハーフトーン領域4が小さい状態であっても同様の効果を得る。
【符号の説明】
【0086】
1 印刷物
2、2´ 基材
3 第1のハーフトーン領域
3a 第1の網点部
3b 第1の背景部
4 第2のハーフトーン領域
4a 第2の網点部
4b 第2の背景部
4c 余白部
5 可視画像
6 潜像画像
7 隠ぺい層
8 複写物
9 第1の隠ぺい領域
10 第2の隠ぺい領域
11 画像形成層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、第1のハーフトーン領域と第2のハーフトーン領域とが隣接するように複数配置されて可視画像と潜像画像が形成された印刷物であって、
前記第1のハーフトーン領域は、前記潜像画像の一部のみを形成する第1の網点部又は第1の背景部のいずれか一方と、前記第1の網点部又は前記第1の背景部のいずれか一方と隣接する位置に、前記可視画像及び前記潜像画像の一部を形成する前記第1の網点部又は前記第1の背景部の他方とを有し、
前記第1の網点部又は前記第1の背景部の一方は、ランタノイド系希土類化合物を含有し、かつ、前記基材と等色の第1の色材又は透明の第1の色材により形成され、
前記第1の網点部又は前記第1の背景部の他方は、ランタノイド系希土類化合物を含有せず通常光下において前記基材とは異なる色であり、かつ、前記第1の色材を三波長光源下で観察した場合の色と等色となる第2の色材により形成され、
前記第2のハーフトーン領域は、前記第1の色材により前記第1のハーフトーン領域とともに前記潜像画像を形成する第2の網点部を有し、
前記印刷物を通常光下で観察すると、前記第1の色材により形成された前記第1の網点部又は前記第1の背景部のいずれか一方及び前記第2の網点部は、前記基材と等色又は透明として観察されることで、前記第2の色材により形成された前記第1の網点部又は前記第1の背景部の他方により形成された前記可視画像が観察され、
前記印刷物をカラー複写機で複写すると、前記可視画像と異なる前記潜像画像が出現することを特徴とする潜像画像を有する印刷物。
【請求項2】
前記第2のハーフトーン領域は、前記第2の網点部と隣接する位置に第2の背景部を更に有し、
前記第2の背景部は、ランタノイド系希土類化合物を含まず、かつ、通常光下において前記第1の色材と等色の第3の色材により、前記第2の網点部の濃度及び色相と、前記基材の隠ぺい率に合わせた網点面積率で形成されたことにより、通常光下において前記第2の網点部と等色として観察されることを特徴とする請求項1記載の潜像画像を有する印刷物。
【請求項3】
前記第1のハーフトーン領域に形成された前記第1の網点部の面積が異なることで階調を有する前記可視画像が形成され、前記第2のハーフトーン領域に形成された前記第2の網点部の面積が異なることで階調を有する前記潜像画像が形成されたことを特徴とする請求項1又は2記載の潜像画像を有する印刷物。
【請求項4】
前記第2のハーフトーン領域における前記第2の網点部は、各々の前記第2のハーフトーン領域の中心を除く外周領域に形成されたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の潜像画像を有する印刷物。
【請求項5】
ランタノイド系希土類化合物を含有する基材上に、前記ランタノイド系希土類化合物を含有せず、かつ、前記基材を通常光下から三波長光源下へ観察条件を変えても所定の値以上の色変化をさせない隠ぺい材料から成る隠ぺい層と、前記隠ぺい層の上に、少なくとも二つの色材により形成された画像形成層とを有することで、可視画像と潜像画像が形成された印刷物であって、
前記隠ぺい層は、前記基材を隠ぺいする隠ぺい材料を施した第1の隠ぺい領域及び第2の隠ぺい領域を複数有し、
前記複数の第1の隠ぺい領域は、前記基材を隠ぺいする隠ぺい材料のみを施した第1の隠ぺい領域及び前記基材を一部露出させる隠ぺい材料を施さない領域を有する第1の隠ぺい領域から成り、
前記複数の第2の隠ぺい領域は、前記基材を隠ぺいする隠ぺい材料のみを施した第2の隠ぺい領域及び前記基材を一部露出させる隠ぺい材料を施さない領域を有する第2の隠ぺい領域から成り、
前記画像形成層は、第1のハーフトーン領域と第2のハーフトーン領域とが隣接するように複数配置され、
前記第1のハーフトーン領域は前記第1の隠ぺい領域と同一形状であり、かつ、同じ位置に配置され、
前記潜像画像の一部のみを形成する第1の網点部又は第1の背景部のいずれか一方と、前記第1の網点部又は前記第1の背景部のいずれか一方と隣接する位置に、前記可視画像及び前記潜像画像の一部を形成する前記第1の網点部又は前記第1の背景部の他方とを有し、
前記第1の網点部又は前記第1の背景部の一方は、前記第1の隠ぺい領域における前記隠ぺい材料が施されない領域と同一形状であり、かつ、同じ位置に配置されたことで前記基材を一部露出して形成され、
前記第1の網点部又は前記第1の背景部の他方は、前記第1の隠ぺい領域における前記隠ぺい材料を施す領域と同一形状であり、かつ、同じ位置に配置され、
前記第1の網点部又は前記第1の背景部の他方を形成する色材は、ランタノイド系希土類化合物を含有せず通常光下において前記基材とは異なる色であり、かつ、前記基材を三波長光源下で観察した場合に等色となる第2の色材であり、
前記第2のハーフトーン領域は前記第2の隠ぺい領域と同一形状であり、かつ、同じ位置に配置され、
前記潜像画像の一部を形成する第2の網点部又は第2の背景部のいずれか一方と、前記第2の網点部又は前記第2の背景部のいずれか一方と隣接する位置に、前記潜像画像の背景を形成する前記第2の網点部又は前記第2の背景部の他方とを有し、
前記第2の網点部又は前記第2の背景部の一方は、前記第2の隠ぺい領域における前記隠ぺい材料が施されない領域と同一形状であり、かつ、同じ位置に配置されたことで前記基材を一部露出して形成され、
前記第2の網点部又は前記第2の背景部の他方は、前記第2の隠ぺい領域における前記隠ぺい材料を施す領域と同一形状であり、かつ、同じ位置に配置され、
前記第2の網点部又は前記第2の背景部の他方を形成する色材は、ランタノイド系希土類化合物を含有せず、かつ、前記基材を通常光下で観察した場合に等色となる第3の色材であり、
前記印刷物を通常光下で観察すると、前記基材を一部露出することにより形成された前記第1の網点部又は前記第1の背景部の一方と、前記基材を一部露出することにより形成された前記第2の網点部又は前記第2の背景部の他方、及び前記第3の色材により形成された前記第2の網点部又は前記第2の背景部の他方とが等色として観察されることで、前記第2の色材により形成された前記第1の網点部又は前記第1の背景部の他方により形成された可視画像が観察され、
前記印刷物をカラー複写機で複写すると、前記可視画像と異なる前記潜像画像が出現することを特徴とする潜像画像を有する印刷物。
【請求項1】
基材上に、第1のハーフトーン領域と第2のハーフトーン領域とが隣接するように複数配置されて可視画像と潜像画像が形成された印刷物であって、
前記第1のハーフトーン領域は、前記潜像画像の一部のみを形成する第1の網点部又は第1の背景部のいずれか一方と、前記第1の網点部又は前記第1の背景部のいずれか一方と隣接する位置に、前記可視画像及び前記潜像画像の一部を形成する前記第1の網点部又は前記第1の背景部の他方とを有し、
前記第1の網点部又は前記第1の背景部の一方は、ランタノイド系希土類化合物を含有し、かつ、前記基材と等色の第1の色材又は透明の第1の色材により形成され、
前記第1の網点部又は前記第1の背景部の他方は、ランタノイド系希土類化合物を含有せず通常光下において前記基材とは異なる色であり、かつ、前記第1の色材を三波長光源下で観察した場合の色と等色となる第2の色材により形成され、
前記第2のハーフトーン領域は、前記第1の色材により前記第1のハーフトーン領域とともに前記潜像画像を形成する第2の網点部を有し、
前記印刷物を通常光下で観察すると、前記第1の色材により形成された前記第1の網点部又は前記第1の背景部のいずれか一方及び前記第2の網点部は、前記基材と等色又は透明として観察されることで、前記第2の色材により形成された前記第1の網点部又は前記第1の背景部の他方により形成された前記可視画像が観察され、
前記印刷物をカラー複写機で複写すると、前記可視画像と異なる前記潜像画像が出現することを特徴とする潜像画像を有する印刷物。
【請求項2】
前記第2のハーフトーン領域は、前記第2の網点部と隣接する位置に第2の背景部を更に有し、
前記第2の背景部は、ランタノイド系希土類化合物を含まず、かつ、通常光下において前記第1の色材と等色の第3の色材により、前記第2の網点部の濃度及び色相と、前記基材の隠ぺい率に合わせた網点面積率で形成されたことにより、通常光下において前記第2の網点部と等色として観察されることを特徴とする請求項1記載の潜像画像を有する印刷物。
【請求項3】
前記第1のハーフトーン領域に形成された前記第1の網点部の面積が異なることで階調を有する前記可視画像が形成され、前記第2のハーフトーン領域に形成された前記第2の網点部の面積が異なることで階調を有する前記潜像画像が形成されたことを特徴とする請求項1又は2記載の潜像画像を有する印刷物。
【請求項4】
前記第2のハーフトーン領域における前記第2の網点部は、各々の前記第2のハーフトーン領域の中心を除く外周領域に形成されたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の潜像画像を有する印刷物。
【請求項5】
ランタノイド系希土類化合物を含有する基材上に、前記ランタノイド系希土類化合物を含有せず、かつ、前記基材を通常光下から三波長光源下へ観察条件を変えても所定の値以上の色変化をさせない隠ぺい材料から成る隠ぺい層と、前記隠ぺい層の上に、少なくとも二つの色材により形成された画像形成層とを有することで、可視画像と潜像画像が形成された印刷物であって、
前記隠ぺい層は、前記基材を隠ぺいする隠ぺい材料を施した第1の隠ぺい領域及び第2の隠ぺい領域を複数有し、
前記複数の第1の隠ぺい領域は、前記基材を隠ぺいする隠ぺい材料のみを施した第1の隠ぺい領域及び前記基材を一部露出させる隠ぺい材料を施さない領域を有する第1の隠ぺい領域から成り、
前記複数の第2の隠ぺい領域は、前記基材を隠ぺいする隠ぺい材料のみを施した第2の隠ぺい領域及び前記基材を一部露出させる隠ぺい材料を施さない領域を有する第2の隠ぺい領域から成り、
前記画像形成層は、第1のハーフトーン領域と第2のハーフトーン領域とが隣接するように複数配置され、
前記第1のハーフトーン領域は前記第1の隠ぺい領域と同一形状であり、かつ、同じ位置に配置され、
前記潜像画像の一部のみを形成する第1の網点部又は第1の背景部のいずれか一方と、前記第1の網点部又は前記第1の背景部のいずれか一方と隣接する位置に、前記可視画像及び前記潜像画像の一部を形成する前記第1の網点部又は前記第1の背景部の他方とを有し、
前記第1の網点部又は前記第1の背景部の一方は、前記第1の隠ぺい領域における前記隠ぺい材料が施されない領域と同一形状であり、かつ、同じ位置に配置されたことで前記基材を一部露出して形成され、
前記第1の網点部又は前記第1の背景部の他方は、前記第1の隠ぺい領域における前記隠ぺい材料を施す領域と同一形状であり、かつ、同じ位置に配置され、
前記第1の網点部又は前記第1の背景部の他方を形成する色材は、ランタノイド系希土類化合物を含有せず通常光下において前記基材とは異なる色であり、かつ、前記基材を三波長光源下で観察した場合に等色となる第2の色材であり、
前記第2のハーフトーン領域は前記第2の隠ぺい領域と同一形状であり、かつ、同じ位置に配置され、
前記潜像画像の一部を形成する第2の網点部又は第2の背景部のいずれか一方と、前記第2の網点部又は前記第2の背景部のいずれか一方と隣接する位置に、前記潜像画像の背景を形成する前記第2の網点部又は前記第2の背景部の他方とを有し、
前記第2の網点部又は前記第2の背景部の一方は、前記第2の隠ぺい領域における前記隠ぺい材料が施されない領域と同一形状であり、かつ、同じ位置に配置されたことで前記基材を一部露出して形成され、
前記第2の網点部又は前記第2の背景部の他方は、前記第2の隠ぺい領域における前記隠ぺい材料を施す領域と同一形状であり、かつ、同じ位置に配置され、
前記第2の網点部又は前記第2の背景部の他方を形成する色材は、ランタノイド系希土類化合物を含有せず、かつ、前記基材を通常光下で観察した場合に等色となる第3の色材であり、
前記印刷物を通常光下で観察すると、前記基材を一部露出することにより形成された前記第1の網点部又は前記第1の背景部の一方と、前記基材を一部露出することにより形成された前記第2の網点部又は前記第2の背景部の他方、及び前記第3の色材により形成された前記第2の網点部又は前記第2の背景部の他方とが等色として観察されることで、前記第2の色材により形成された前記第1の網点部又は前記第1の背景部の他方により形成された可視画像が観察され、
前記印刷物をカラー複写機で複写すると、前記可視画像と異なる前記潜像画像が出現することを特徴とする潜像画像を有する印刷物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−52555(P2013−52555A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191159(P2011−191159)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(303017679)独立行政法人 国立印刷局 (471)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(303017679)独立行政法人 国立印刷局 (471)
【Fターム(参考)】
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