説明

潜水機システム

【課題】潜水機を運用する深度が深くなっても、潜水機自体の重量の増加やケーブル(電力線)が太くなることを防止できる潜水機システムを提供する。
【解決手段】甲板40に配置されるコントローラ10により無人の潜水機20を制御する潜水機システム1において、潜水機20と、潜水機20に電力を供給するための電池32を内蔵する、中継器30と、甲板40に配置されるワイヤーウインチ41と中継器30とを接続する、吊り下げ用のテンションメンバー3と、潜水機20とコントローラ10とを接続する、送受信用の通信線4と、中継器30と潜水機20とを接続する、電力供給用の電力線5と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
水上に配置されるコントローラにより潜水機を制御する潜水機システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、海底の調査などに用いられる無人の潜水機を制御する潜水機システムとして、ROVシステム、U−ROVシステム、AUVシステムがある。これらのシステムにおいて、潜水機は、水上(船上又は地上)に配置されたコントローラにより、制御される。
【0003】
(ROVシステム)
図5は、ROVシステム101の全体構成図である。ROVは、remotely operated vehicleの略である。図5において、船上の甲板140には、コントローラ110、ケーブルウインチ(ケーブルドラム)142、及び電源装置115が配置されている。ROVシステム101は、潜水機120と、潜水機120とケーブルウインチ142とを接続するテザーケーブルC0と、を備えている。
【0004】
テザーケーブルC0には、通信線及び電力線が組み込まれている。通信線は、コントローラ110と潜水機120とを双方向で通信可能に接続する線である。通信線は、例えば、光ファイバーである。通信線を介して、制御信号及び映像信号を含む信号が伝達される。ここで、潜水機20にはカメラが搭載されており、潜水機20によって得られた画像情報が、映像信号に変換されて送信される。電力線は、電源装置115から潜水機120に電力を供給する線である。電力線は、例えば、銅撚り線である。電力は、テザーケーブルC0を介して、甲板140の電源装置115から水中の潜水機120に送電される。特許文献1には、ROVシステムにおいて用いられる潜水機の一例が開示されている。
【0005】
・(長所)
動力が甲板140から供給されるので、潜水機20に電池が搭載されている電池式と異なり、運用時間に制限がない。潜水機120と甲板140とがテザーケーブルC0で繋がっているので、故障時に潜水機120を引き上げることができる。
【0006】
・(短所)
テザーケーブルC0は、例えば、銅撚り線と光ファイバーとからなる複合ケーブルである。つまり、テザーケーブルC0は、太く且つ重い。このため、テザーケーブルC0を巻き取り及び巻き出しするために、電気式又は油圧式で駆動するケーブルウインチが必要となる。したがって、テザーケーブルC0を運用するための設備が高価となる。また、テザーケーブルC0が太く且つ重いので、潜水機120が移動するときに潜水機120がテザーケーブルC0から受ける抵抗が、無視できない。潮流が早くなると、潮流によってテザーケーブルC0が大きく引っ張られ、潜水機120の運動性が損なわれる。また、深度に応じてケーブル長さが長くなると、潜水機120が移動するときにテザーケーブルC0の全体から受ける抵抗が大きくなる。この結果、潜水機120に大きな推力が必要となる。例えば、2000m仕様の潜水機に必要とされる電力は、16kW以上である。更に、ケーブル長さが長くなると、電力損失を避けるために、高電圧送電が求められる。この場合、潜水機に、降圧トランス及び付帯の制御システムを搭載する必要がある。この結果、潜水機自体の大きさ、重さが必然的に大規模になる。運動性能を良好とする上では潜水機の比重が海水と同程度であることが望ましい。このため、重量が増えると、多くの浮力体が必要になり、潜水機が大きくなる。
【0007】
(シンカー付きROVシステム)
図6は、シンカー付きROVシステム201の全体構成図である。シンカー付きROVシステム201は、電力供給方式において、ROVシステム101と同様である。図6において、シンカー付きROVシステム201は、ROVシステム101の構成に加えて、シンカー(錘)130と、シンカー130を吊り下げるためのテンションメンバー(ワイヤー)103と、を備えている。一方、甲板140には、ケーブルウインチ142の代わりに、ワイヤーウインチ141が設けられている。
【0008】
テザーケーブルC0は、複数の連結具106によって、ケーブルの長さ方向において適当な間隔を空けて、テンションメンバー103に引っ掛けられている。この結果、シンカー130より上方のテザーケーブルC0が、シンカー130によって支持されている。テザーケーブルC0の下端部は、シンカー130より更に延びており、シンカー130の拘束を受けないフリー部分である。このため、潜水機120は、フリー部分の長さの範囲において、自由に移動できる。特許文献2には、シンカー付きROVシステムにおいて用いられる潜水機の一例が開示されている。
【0009】
・(長所)
動力が甲板140から供給されるので、運用時間に制限がない。これは、ROVシステム101と同様の長所である。また、シンカー130より上方のテザーケーブルC0がシンカー130によって支持されているので、シンカー130より上方のテザーケーブルC0の影響が、潜水機120に及びにくい。フリー部分の抵抗のみが、潜水機120に及ぶ。フリー部分の長さは比較的短いため、実質的に、潜水機120は、潮流やケーブル長さ自体による抵抗を受けない。したがって、ケーブル長さが長くなっても、潜水機120の運動性が損なわれず、潜水機120に大きな推力を必要としない。
【0010】
・(短所)
ケーブル長さが長くなると、高電圧送電となり、潜水機に降電圧装置等を搭載する必要があり、潜水機自体の容量及び重量を増大させることになる。これは、ROVシステム101と同様の短所である。また、シンカー付きROVシステム201は、潮力やケーブル長さによる抵抗を受けにくいため、ROVシステム101よりもケーブル長さを長くできるが、ケーブル長さが長くなると、テザーケーブルC0をより太くする必要がある。このため、テザーケーブルC0の運用が大変な作業になる。また、潜水機120の行動範囲が、フリー部分の長さの範囲に限定される。
【0011】
(U−ROVシステム)
図7は、U−ROVシステム301の全体構成図である。図7において、甲板140には、コントローラ110、充電装置112、及びスプーラー(巻出し器)109が配置されている。U−ROVシステム301は、潜水機220と、光ファイバーケーブルC0−1と、を備えている。光ファイバーケーブルC0−1は、通信線(信号線及び映像線)である。光ファイバーケーブルC0−1は、潜水機220に搭載されるスプーラー109と、甲板140に配置されるスプーラー109とを、接続している。ここで、光ファイバーケーブルC0−1は、潜水機200が甲板140から離れるにつれて、スプーラー109より巻き出される。潜水機は、動力源として電池を備えている。特許文献3には、U−ROVシステムにおいて用いられる潜水機の一例が開示されている。
【0012】
・(長所)
光ファイバーケーブルC0−1はスプーラー式であるので、光ファイバーケーブルC0−1に加わる抵抗は、スプーラー109から光ファイバーケーブルC0−1を巻き出すように作用する。このため、潜水機220は、光ファイバーケーブルC0−1から受ける抵抗を無視できる。したがって、運動性を損なうことなく、大きな推力を必要とすることなく、潜水機220の行動範囲を広げることができる。また、光ファイバーケーブルC0−1は使い捨てなので、ケーブルの運用が容易である。
【0013】
・(短所)
潜水機220の運用時間が、電池の容量で決定されている。このため、長時間運転を行うためには、電池の容量を増大させる必要がある。この結果、潜水機220が重く、大きくなる。潜水機220の製作コストが増大する。また、光ファイバーケーブルC0−1は使い捨てなので、潜水機220の運用コストが増大する。また、潜水機220と甲板140とが光ファイバーケーブルC0−1のみによって接続されているので、光ファイバーケーブルC0−1の切断によって潜水機220が紛失する可能性がある。このため、紛失防止のために、トランスポンダやアルゴスGPS等の測位システムの応答機器を、潜水機に搭載する必要がある。この結果、潜水機の重量の増大を招くと共に、U−ROVシステムが高価になる。
【0014】
(AUVシステム)
AUVは、Autonomus Underwater Vehicleの略である。AUVシステムは、電力供給方式において、U−ROVシステム301と同様である。AUVシステムは、U−ROVシステム301の構成において、光ファイバーケーブル及びスプーラーが除去されている。また、コントローラが、潜水機内に搭載されている。潜水機は、予め設定されたアルゴリズムに基づいて、自律的に行動する。AUVシステムは、U−ROVシステムと同様の長所及び短所を有している。加えて、AUVシステムでは、潜水機をリアルタイムで制御することができない。例えば、ユーザーは、潜水機によって得られた画像情報に基づいて潜水機に与える指令を変更することができない。したがって、潜水機の運用に限界がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平7−81672号公報
【特許文献2】特開平11−182511号公報
【特許文献3】特開2001−239991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
近年、海底調査等のために、2000m、3000m、又はそれ以上の深深度において、潜水機を運用することが、求められている。ROVシステム及びシンカー付きROVシステムの場合、降電圧装置等の搭載によって潜水機自体が大きく且つ重くなると共に、電力線を含むケーブルが太くなる。潜水機が大きく且つ重くなると、潜水機の推力を増大させる必要がある。ケーブルが太くなると、ウインチの出力を向上させる必要がある。この結果、潜水機システム自体のコスト及び潜水機システムを運用するためのコストがアップする。一方、U−ROVシステム及びAUVシステムの場合、潜水機に、電源としての電池と、紛失防止のための測位システムの応答装置と、を搭載する必要がある。このため、潜水機自体が大きく且つ重くなると共に、応答装置等の高価な機器が必要となる。この結果、潜水機システムのコストがアップする。
【0017】
つまり、従来の潜水機システムでは、潜水機を運用する深度が深くなるにつれて、潜水機自体の重量が増加するか電力線が太くなっている。この結果、潜水機システム自体のコストや、ウインチなど潜水機システムを運用するためのコストがアップする。そこで、本発明は、潜水機を運用する深度が深くなっても、潜水機自体の重量の増加やケーブル(電力線)が太くなることを防止できる潜水機システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
第1発明は、水上に配置されるコントローラにより無人の潜水機を制御する潜水機システムにおいて、潜水機と、潜水機に電力を供給するための電池を内蔵する、中継器と、
水上に配置されるウインチと中継器とを接続する、吊り下げ用のテンションメンバーと、潜水機とコントローラとを接続する、送受信用の通信線と、中継器と潜水機とを接続する、電力供給用の電力線と、を備えている、潜水機システムを提供する。
【0019】
第1発明によれば、深度が深くなっても、潜水機には、降電圧装置又は電池を搭載する必要がない。また、潜水機と水上のウインチとの接続が容易に断たれることがなく、潜水機の紛失が防止されている。したがって、潜水機システムは、潜水機を運用する深度が深くなっても、潜水機自体の重量の増加やケーブル(電力線)が太くなることを防止できる。
【0020】
第1発明は、好ましくは、構成(a)〜(d)を採用できる。
【0021】
(a)中継器とコントローラとの間で、通信線とテンションメンバーとを連結する、複数の連結具を備えている。
【0022】
構成(a)によれば、テンションメンバー3に対する通信ケーブルC1−1の移動が制限されており、テンションメンバー3に通信ケーブルC1−1が絡み付く不具合が防止されている。
【0023】
(b)中継器とウインチとの間で、通信線がテンションメンバーと一体化されている。
【0024】
構成(b)によれば、テンションメンバー3に通信線4が絡み付く不具合が防止されている。
【0025】
(c)中継器が、電力線及び通信線の少なくとも一方を巻き取るための巻き取り装置と、潜水機を着脱自在に支持可能なロック装置と、を備えている。
【0026】
構成(c)によれば、巻き取り装置が電力線又は通信線を巻き取ると、潜水機が中継器に案内される。このため、潜水機の回収が容易である。
【0027】
(d)潜水機と中継器との間で、通信線が電力線と一体化されている。
【0028】
構成(d)によれば、電力線に通信線が絡み付く不具合が防止されている。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】潜水機システムの全体構成図である(第1実施例)。
【図2】潜水機及び中継器の側面図である(第1実施例)。
【図3】潜水機及び中継器の正面図である(第1実施例)。
【図4】潜水機システムの全体構成図である(第2実施例)。
【図5】ROVシステムの全体構成図である(従来例)。
【図6】シンカー付き ROVシステムの全体構成図である(従来例)。
【図7】U−ROVシステムの全体構成図である(従来例)。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(第1実施例の構成)
図1は、第1実施例における潜水機システム1の全体構成図である。潜水機システム1は、甲板40に配置されるコントローラ10により、無人の潜水機20を制御するシステムである。図1において、潜水機システム1は、潜水機20と、中継器30と、テンションメンバー3と、通信線4と、電力線5と、を備えている。
【0031】
甲板40には、コントローラ10、操作器11、電池充電装置12、ケーブル収納装置13、及びワイヤーウインチ41が、配置されている。
【0032】
図2は、潜水機及び中継器の側面図である。図3は、潜水機及び中継器の正面図である。図2、図3において、中継器30は、メインフレーム31、電池32、ケーブル収容装置(ケーブル巻き取り装置)33、ロック装置34、深度センサ35、旋回用推進機36、及び整流板37を備えている。潜水機20は、本体フレーム21、推進機22、及びカメラ23を備えている。
【0033】
図1において、テンションメンバー3は、ワイヤーウインチ41と中継器30とを接続している。テンションメンバー3は、中継器30を水中に吊り下げるのに必要な強度を有している。
【0034】
通信線4は、コントローラ10、潜水機20、及び中継器30を接続している。コントローラ10、潜水機20、及び中継器30の間で、通信線4を介して通信が可能である。通信線4は、信号線と映像線とを兼用している。例えば、コントローラ10は、潜水機20を制御するための制御信号を、通信線4を介して潜水機20に送信する。また、潜水機20は、カメラ23によって得られた映像信号を、通信線4を介してコントローラ10に送信する。通信線4は、本実施形態では、光ファイバーによって構成されている。
【0035】
電力線5は、中継器30と潜水機20とを接続している。中継器30内の電池32の電力が、電力線5を介して、潜水機20に供給される。
【0036】
潜水機システム1は、通信線4及び電力線5を保護するために、通信ケーブルC1−1及び/又は2次ケーブルC2を、備えている。
【0037】
通信ケーブルC1−1は、中継器30とケーブル収納装置13内との間に配置されている。通信ケーブルC1−1は、通信線4をカバーにより被覆することによって構成されている。ケーブル収納装置13内には、巻き取られた通信ケーブルC1−1が収納されている。
【0038】
2次ケーブルC2は、中継器30のケーブル収容装置33と潜水機20との間に配置されている。通信線4及び電力線5は、2次ケーブルC2内で、一体化されている。2次ケーブルC2は、一体化された通信線4及び電力線5をカバーにより被覆することによって構成されている。ケーブル収容装置33内には、巻き取られた2次ケーブルC2が収納されている。
【0039】
潜水機システム1は、通信ケーブルC1−1(通信線4)とテンションメンバー3とを連結する複数の連結具6を備えている。連結具6は、本実施形態では、通信ケーブルC1−1に固定されるリング状部材である。複数の連結具6は、通信ケーブルC1−1の長さ方向に沿って、適当な間隔を空けて配置されている。また、連結具6のリング内にテンションメンバー3が挿通されている。
【0040】
(第1実施例の作動)
潜水機システム1において、ユーザーは、操作器11を操作することによって、コントローラ10を介して、潜水機20及び中継器30の駆動を制御できる。コントローラ10は、操作器11の操作内容に応じて制御信号を作成すると共に、制御信号を通信線4を介して潜水機20及び中継器30に送信する。潜水機20及び中継器30において、制御信号に基づいて、推進機22やカメラ23などのアクチュエータが駆動される。
【0041】
図2、図3に示されるように、潜水機システム1の使用前には、潜水機20は中継器30に支持されている。具体的には、ロック装置34が有する複数のロック爪34aが、潜水機20の本体フレーム21を掴むことによって、潜水機20が中継器30に支持される。ロック状態の中継器30及び潜水機20は、甲板40に載せられている。
【0042】
潜水機システム1の使用時に、ユーザーは、ワイヤーウインチ41を操作することによって、ロック状態の中継器30及び潜水機20を、目標深度に到達するように、水中に沈めていく。中継器30の下方に移動するのに連動して、通信ケーブルC1−1がケーブル収納装置13から巻き出されていく。ここで、通信ケーブルC1−1は、連結器6によって、テンションメンバー3に保持されている。
【0043】
中継器30及び潜水機20が目標深度に到達すると、ユーザーは、ロック装置34による潜水機20のロックを解除させる。
【0044】
ロックが解除された後、ユーザーは、推進機22により潜水機20を移動させたり、カメラ23に撮像を行わせる。潜水機20を移動させることによって、所望の場所における海底の画像情報を得ることができる。画像情報は、操作器11の表示ディスプレイ等に表示することができる。このため、ユーザーは、潜水機20によって得られた画像情報を見ながら、リアルタイムで潜水機20を制御できる。
【0045】
潜水機20の移動可能な範囲は、中継器30から2次ケーブルC2の長さの範囲内である。
【0046】
潜水機20による作業が終了すると、ユーザーは、潜水機20を中継器30に向けて移動させる。ここで、中継器30内のケーブル収納装置33は、2次ケーブルC2を巻き取る機能を有している。このため、ユーザーは、2次ケーブルC2を巻き取ることによって、潜水機20を中継器30に案内できる。潜水機20が中継器30の底面に到達すると、ユーザーは、ロック装置34により、潜水機20を中継器30にロックする。
【0047】
ロックが行われると、ユーザーは、ワイヤーウインチ41を操作することによって、ロック状態の中継器30及び潜水機20を、甲板40に向けて引き上げていく。また、ユーザーは、通信ケーブルC1−1をケーブル収納装置13内に巻き取っていく。このようにして、中継器30及び潜水機20は、甲板40に戻される。
【0048】
中継器30内の電池32は、潜水機システム1の非使用時に、電池充電装置12によって再充電される。
【0049】
(第1実施例の作用、効果)
潜水機システム1では、電池33によって潜水機20に電力が供給されると共に、電池33が、潜水機20とは別体の中継器30に搭載されている。このため、深度が深くなっても、潜水機20には、降電圧装置又は電池を搭載する必要がない。また、電力線5が甲板40のウインチと潜水機20とではなく中継器30と潜水機20とを接続している。このため、深度が深くなるにつれて電力線を長くする必要がなく、深度が深くなっても電力供給を維持するために電力線を太くする必要がない。また、潜水機システム1では、潜水機20が電力線5又はテンションメンバー3を介して吊り下げられている。電力線5は比較的高い強度に設計されているので、テンションメンバーとしての機能も有している。このため、潜水機20と甲板40との接続が容易に断たれることがなく、潜水機40の紛失が防止されている。したがって、潜水機20には、紛失防止のための装置すなわち測位システムの応答装置を、搭載する必要がない。まとめると、潜水機システム1は、潜水機20を運用する深度が深くなっても、潜水機20自体の重量の増加やケーブル(電力線5)が太くなることを防止できる。
【0050】
潜水機システム1では、複数の連結器6によって、通信ケーブルC1−1(通信線4)とテンションメンバー3とが連結されている。このため、テンションメンバー3に対する通信ケーブルC1−1の移動が制限されており、テンションメンバー3に通信ケーブルC1−1が絡み付く不具合が防止されている。
【0051】
潜水機システム1では、潜水機20と中継器30との間で、通信線4と電力線5とが2次ケーブルC2に組み込まれている。このため、電力線5に通信線4が絡み付く不具合が防止されている。
【0052】
中継器30は、2次ケーブルC2を巻き取る機能を有するケーブル収納装置34と、潜水機20を中継器30に対して着脱自在に支持可能なロック装置34と、を備えている。このため、ケーブル収納装置34が2次ケーブルC2を巻き取ると、潜水機20が中継器30に案内される。このため、潜水機20の回収が容易である。
【0053】
潜水機システム1では、中継器30に重量物である電池33が搭載されている。このため、テンションメンバー3や通信ケーブルC1−1が受ける抵抗が、中継器30に吸収され、潜水機20には殆ど及ばない。また、テンションメンバー3及び通信ケーブルC1−1は、電力線を含まないので、比較的細い線である。このため、テンションメンバー3及び通信ケーブルC1−1自体が、抵抗を受けにくい。このため、潜水機20の運動性が損なわれず、潜水機20に大きな推力を必要としない。
【0054】
(第2実施例の構成)
図4は、第2実施例における潜水機システム1の全体構成図である。第1実施例及び第2実施例は、次の相違点を除いて、共通の構成を有している。甲板40には、ワイヤーウインチ41に代えてケーブルウインチ42が設けられている。中継器30とケーブルウインチ42との間には、テンションメンバー3単体ではなく、1次ケーブルC1が配置されている。1次ケーブルC1は、一体化されたテンションメンバー3及び通信線4をカバーにより被覆することによって構成されている。これに応じて、通信ケーブルC1−1、ケーブル収納装置13、及び複数の連結具6は、除去されている。
【0055】
(第2実施例の作動)
第2実施例では、ユーザーは、ケーブルウインチ42を操作することによって、ロック状態の中継器30及び潜水機20を、下降又は上昇させる。この点を除いて、第1実施例及び第2実施例の作動は、同様である。
【0056】
(第2実施例の作用、効果)
第2実施例は、通信ケーブルC1−1及び連結具6に係わる作用、効果を除いて、第1実施例と同様の作用、効果を有している。
【0057】
第2実施例では、中継器30とケーブルウインチ42との間で、通信線4とテンションメンバー3とが1次ケーブルC1に組み込まれている。このため、テンションメンバー3に通信線4が絡み付く不具合が防止されている。
【0058】
(本実施例と従来例との比較)
表1は、本実施例と従来例との比較を示す表である。表1において、中継器電池方式が、本実施例(第1実施例及び第2実施例)を示している。
【0059】
【表1】

【0060】
(変形例)
本実施例は、次の変形構成を適用できる。
【0061】
潜水機システム1は、船上の甲板40において運用できるだけでなく、地上において運用することが可能である。このため、コントローラ10やワイヤーウインチ41等が設置される場所は、水上における安定した土台であれば、甲板40に限定されない。
【0062】
コントローラ10は、本実施例では、潜水機20だけでなく中継器30の駆動を制御する。中継器30が駆動されない場合、つまり中継器30にロック装置34や推進機36等のアクチュエータが搭載されない場合、通信線4を中継器30に接続する必要はない。
【0063】
ケーブル収納装置13は、本実施例では、単に、通信ケーブルC1−1を収納可能な箱である。ここで、通信ケーブルC1−1には、潜水機20や中継器30の荷重が加わらないので、通信ケーブルC1−1を巻き取るためにウインチを必要としない。しかし、巻き取りを良好におこなうために、ケーブル収納装置13がウインチの機能を備えていても良い。
【符号の説明】
【0064】
1 潜水機システム
3 テンションメンバー
4 通信線
5 電力線
6 連結器
10 コントローラ
20 潜水機
30 中継器
32 電池
33 ケーブル収納装置(巻き取り装置)
34 ロック装置
40 甲板
C1−1 通信ケーブル
C1 1次ケーブル
C2 2次ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水上に配置されるコントローラにより無人の潜水機を制御する潜水機システムにおいて、
潜水機と、
潜水機に電力を供給するための電池を内蔵する、中継器と、
水上に配置されるウインチと中継器とを接続する、吊り下げ用のテンションメンバーと、
潜水機とコントローラとを接続する、送受信用の通信線と、
中継器と潜水機とを接続する、電力供給用の電力線と、
を備えている、
ことを特徴とする潜水機システム。
【請求項2】
中継器とコントローラとの間で、通信線とテンションメンバーとを連結する、複数の連結具を備えている、
請求項1に記載の潜水機システム。
【請求項3】
中継器とウインチとの間で、通信線がテンションメンバーと一体化されている、
請求項1に記載の潜水機システム。
【請求項4】
中継器が、電力線及び通信線の少なくとも一方を巻き取るための巻き取り装置と、潜水機を着脱自在に支持可能なロック装置と、を備えている、
請求項1に記載の潜水機システム。
【請求項5】
潜水機と中継器との間で、通信線が電力線と一体化されている、
請求項1に記載の潜水機システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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