説明

潤滑グリース組成物

(i)800〜1000kg/mの範囲の密度を有する基油;及び(ii)850〜1050kg/mの範囲の密度を有する尿素化合物;を含み、基油(i)と尿素化合物(ii)の密度の差が50kg/m未満である潤滑グリース組成物のマスフライホイール用途における使用。本発明による潤滑グリース組成物は、デュアルマスフライホイール用途においてオイルブリーディングを減少させ、剪断安定性を向上させるために特に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑グリース組成物、特にフライホイール用途において用いるため、特にデュアルマスフライホイール用途において用いるための潤滑グリース組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
潤滑の主要な目的は、互いに対して移動する固体表面を離隔させて摩擦及び摩耗を最小にすることである。この目的のために最も頻繁に用いられる材料はオイル及びグリースである。潤滑剤の選択は、主として特定の用途によって定まる。
【0003】
潤滑グリースはデュアルマスフライホイール用途において最適の潤滑剤である。デュアルマスフライホイールは過度のトランスミッションギアの鳴りを排除し、ギアチェンジ/シフトの作動力を減少し、燃費を向上させる。デュアルマスフライホイールは、通常は、標準的なマニュアルトランスミッションを有する軽量ディーゼルトラック、及び駆動系における振動を減衰させる高性能の高級な乗物に取り付けられる。これによって、長期の損傷なしにより長い期間乗物を運転することが可能になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リチウム石けんコンプレックスをベースとするグリースは、フライホイール用途において用いられることが知られている。かかるグリースは、満足できる潤滑特性を与えることが分かっている。しかしながら、より高い性能に対する増加し続ける要求のために、向上した潤滑特性、特に向上したオイルブリーディング性及び剪断安定性を示すマスフライホイール用途において用いるためのグリースを提供することが望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、
(i)800〜1000kg/mの範囲の密度を有する基油;及び
(ii)800〜1000kg/mの範囲の密度を有する尿素化合物;
を含み、基油(i)と尿素化合物(ii)の密度の差が50kg/m未満である潤滑グリース組成物のマスフライホイール用途における使用が提供される。
【0006】
本発明によれば、オイルブリーディングを減少させるための、基油(i)と尿素化合物(ii)の密度の差が50kg/m未満である、
(i)800〜1000kg/mの範囲の密度を有する基油;及び
(ii)800〜1000kg/mの範囲の密度を有する尿素化合物;
の組成物の潤滑グリースにおける使用が更に提供される。
【0007】
本発明の他の形態によれば、剪断安定性を向上させるための、基油(i)と尿素化合物(ii)の密度の差が50kg/m未満である、
(i)800〜1000kg/mの範囲の密度を有する基油;及び
(ii)800〜1000kg/mの範囲の密度を有する尿素化合物;
の組成物の潤滑グリースにおける使用が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明において用いるための潤滑グリース組成物は、必須成分として基油を含む。
本発明による潤滑組成物において用いる基油に関しては特に制限はなく、種々の通常の基油を好都合に用いることができる。基油は無機又は合成起源のものであってよく、或いは1種類以上の鉱油及び/又は1種類以上の合成油の混合物を含んでいてもよい。
【0009】
無機起源の基油は、液体石油、並びに、水素化仕上げ処理又は脱ロウによって更に精製してもよいパラフィン系、ナフテン系、又はパラフィン/ナフテン混合タイプの溶剤処理又は酸処理無機潤滑油などの鉱油であってよい。
【0010】
本発明の潤滑油組成物において用いるのに好適な基油は、グループI、グループII、又はグループVの基油、ポリ−α−オレフィン、フィッシャー・トロプシュ誘導基油、及びこれらの混合物である。
【0011】
本発明における「グループI」基油、「グループII]基油、及び「グループV」基油とは、米国石油協会(API)分類I、II、及びVの定義にしたがう潤滑油基油を意味する。かかるAPI分類は、API Publication 1509, 15版, 付表E, 2002年4月において定義されている。
【0012】
本発明において用いるのに好適なグループI基油は、Royal Dutch/Shell Group of Companiesによって"HVI"、例えばHVI 160Bの商品名で販売されているもののような溶剤処理高粘度指数基油である。
【0013】
本発明において用いるのに好適なグループII基油としては、Motiva Enterprises LLC, Houston, Texas,米国から商業的に入手できるMotiva Star 12の商品名で販売されているもの、及びChevron Corporation,米国から商業的に入手できるChevron 600Rの商品名で販売されているもののような激しく水素化処理した高粘度指数基油が挙げられる。
【0014】
本発明において用いるのに好適なグループV基油としては、Royal Dutch/Shell Group of Companiesから商業的に入手できるMVIN 170の商品名で販売されているもののような溶剤又は水素化処理製造経路からのナフテン系基油が挙げられる。
【0015】
本発明の潤滑油組成物において基油として好都合に用いることができる好適なフィッシャー・トロプシュ誘導基油は、例えば、EP−0776959、EP−0668342、WO−97/21788、WO−00/15736、WO−00/14188、WO−00/14187、WO−00/14183、WO−00/14179、WO−00/08115、WO−99/41332、EP−1029029、WO−01/18156、WO−01/57166に開示されているものである。
【0016】
合成油としては、オレフィンオリゴマー(PAO)、二塩基酸エステル、ポリオールエステル、及び脱ロウワックス状ラフィネートのような炭化水素油が挙げられる。Shell Groupによって"XHVI"(商標)の名称で販売されている合成炭化水素基油を好都合に用いることができる。
【0017】
好適なPAOとしては、8〜16個の炭素原子を有する線状α−オレフィンを含む線状α−オレフィンのオリゴマー(水素化仕上げ処理済み)が挙げられる。
他の好適な合成基油としては、Italmatch Chemicals S.P.A.,イタリアから商業的に入手できるKetjenlube 230及びKetjenlube 2700の商品名を有するもののようなPAOのエステル化誘導体、並びにExxonMobil Corporationから商業的に入手できるSynesstic 5及びSynesstic 12の商品名を有するもののようなアルキル化ナフタレンが挙げられる。
【0018】
好ましくは、基油は、無機起源のもの、例えばRoyal Dutch/Shell Group of Companiesによって"HVI"、例えばHVI 170の名称で販売されているもの、並びにMotiva Enterprises, Houston, Texas,米国からMotiva Star 12の商品名で販売されているものである。
【0019】
好ましくは、潤滑組成物は、潤滑組成物の全重量を基準として少なくとも30重量%、好ましくは少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも70重量%の基油を含む。
本発明において用いるための基油は、800〜1000kg/mの範囲、好ましくは850〜950kg/mの範囲、より好ましくは850〜920kg/mの範囲の密度を有する。
【0020】
基油に加えて、本発明に用いるための潤滑グリース組成物は1種類以上の尿素化合物を更に含む。グリースにおいて増粘剤として用いる尿素化合物は、それらの分子構造中に尿素基(−NHCONH−)を含む。これらの化合物としては、尿素結合の数によって、モノ、ジ、又はポリ尿素化合物が挙げられる。更に、尿素−ウレタン化合物及び尿素−イミド化合物のような尿素化合物を含む種々の増粘剤を用いることもできる。潤滑組成物は、好ましくは、潤滑組成物の全重量を基準として2〜20重量%、より好ましくは5〜20重量%の尿素増粘剤を含む。
【0021】
本発明において用いるための尿素化合物は、850〜1050kg/mの範囲、好ましくは900〜1000kg/mの範囲、より好ましくは900〜970kg/mの範囲の密度を有する。
【0022】
オイルブリーディング性を減少させる観点からは、基油(i)と尿素化合物(ii)の密度の差は、50kg/m未満、好ましくは30kg/m未満、より好ましくは10kg/m未満である。
【0023】
上記に記載の密度の要求が満足される限りにおいては、本発明による潤滑組成物において用いる尿素化合物に関しては特に制限はない。
本発明のグリース組成物における1種類以上の尿素増粘剤は、モノ尿素、ジ尿素、トリ尿素、テトラ尿素、又は他のポリ尿素のような尿素化合物から選択することができる。ジ尿素化合物が本発明において用いるのに好ましい。
【0024】
ジ尿素化合物は、ジイソシアネートと、脂肪族アミン、脂環式アミン、及び/又は芳香族アミンであってよいモノアミンとの反応生成物である。
本発明における好ましい態様においては、モノアミンは脂肪族アミンである。
【0025】
ジ尿素化合物の製造において用いるための脂肪族モノアミンは、好ましくは、8〜24個の炭素原子を有する飽和又は不飽和の脂肪族アミンであり、分岐又は直鎖の形態で用いることができるが、直鎖形態が特に好ましい。
【0026】
好都合に用いることができるモノアミンの例としては、オクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、テトラデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、オレイルアミン、アニリン、p−トルイジン、シクロヘキシルアミンが挙げられる。モノアミンの好ましい例としては、オクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、テトラデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、及びオレイルアミンが挙げられる。
【0027】
更に、好都合に用いることができるジイソシアネートの例としては、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、及び芳香族ジイソシアネート、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ナフタレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、トランス−1,4−シクロヘキサンジイソシアネート(CHDI)、1,3−ビス(イソシアナトメチルベンゼン)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(H6XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、3−イソシアナトメチル−3,3,5’−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(IPDI)、フェニレンジイソシアネート、m−テトラメチルキシレンジイソシアネート(m−TMXDI)、及びp−テトラメチルキシレンジイソシアネート(p−TMXDI)が挙げられる。特に、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)が好ましい。
【0028】
トリ尿素化合物は、一般式(I):
【0029】
【化1】

(式中、R及びRはヒドロカルビレン基を示し、R及びRはヒドロカルビル基を示す)
によって表すことができる。
【0030】
これらの化合物は、2モルの脂肪族、脂環式、又は芳香族ジイソシアネート、1モルの脂肪族、脂環式、又は芳香族ジアミン、1モルの脂肪族、脂環式、又は芳香族アミン、及び1モルの脂肪族、脂環式、又は芳香族アルコールの反応生成物である。これらは、それぞれの上記記載の割合を与えるような上記記載の化合物を基油中で混合し、反応を進行させることによって得られる。例えば、これらは、2モルのトリレンジイソシアネート、1モルのエチレンジイソシアネート、1モルのオクタデシルアミン、及び1モルのオクタデシルアルコールを基油中で反応させることによって得ることができる。
【0031】
トリ尿素化合物を製造するのに好都合に用いることができる脂肪族、脂環式、又は芳香族ジイソシアネートの例としては、ジ尿素化合物の製造に関連して上記に列記したジイソシアネートが挙げられる。特に、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、トランス−1,4−シクロヘキサンジイソシアネート(CHDI)、及び4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)が好ましい。
【0032】
トリ尿素化合物を製造するのに好都合に用いることができるモノアミンの例としては、ジ尿素化合物の製造に関連して上記に列記したモノアミンが挙げられる。
トリ尿素化合物の製造において好都合に用いることができる脂肪族、脂環式、又は芳香族ジアミンは、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、及びデカメチレンジアミンのような脂肪族ジアミン、ジアミノシクロヘキサンのような脂環式ジアミン、並びにフェニレンジアミン、ベンジジン、ジアミノスチルベン、及びトリジンのような芳香族ジアミン(これらは全てその中に2〜12個の炭素原子を有するジアミンである)である。
【0033】
本発明における好ましい態様においては、ジアミンは脂肪族ジアミンである。好ましい脂肪族ジアミンの例は、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、及びデカメチレンジアミンである。
【0034】
トリ尿素化合物の製造において好都合に用いることができるモノアルコールの例は、分岐又は直鎖の脂肪族、脂環式、又は芳香族アルコールである。C〜C24の飽和又は不飽和脂肪族アルコールである脂肪族アルコールを好都合に用いることができる。直鎖形態が特に好ましい。
【0035】
本発明における好ましい態様においては、モノアルコールは脂肪族モノアルコールである。
特に、オクチルアルコール、デシルアルコール、ドデシルアルコール、テトラデシルアルコール、ヘキサデシルアルコール、オクタデシルアルコール、及びオレイルアルコールが好ましい。
【0036】
好都合に用いることができる脂環式アルコールの例はシクロヘキシルアルコールである。好都合に用いることができる芳香族アルコールの例としては、ベンジルアルコール、サリチルアルコール、フェネチルアルコール、シンナミルアルコール、及びヒドロシンナミルアルコールが挙げられる。
【0037】
テトラ尿素化合物は、一般式(2):
【0038】
【化2】

(式中、R及びRはヒドロカルビレン基を示し、Rはヒドロカルビル基を示す)
によって表すことができる。
【0039】
これらの化合物は、2モルの脂肪族、脂環式、又は芳香族ジイソシアネート、1モルの脂肪族、脂環式、又は芳香族ジアミン、及び2モルの脂肪族、脂環式、又は芳香族アミンの反応生成物である。これらは、それぞれの上記記載の割合を与えるような上記記載の化合物を通常の基油中で混合し、反応を進行させることによって得られる。例えば、これらは、2モルのトリレンジイソシアネート、1モルのエチレンジアミン、及び2モルのオクタデシルアミンを基油中で反応させることによって得ることができる。
【0040】
好都合に用いることができるジイソシアネートの例としては、ジ尿素化合物の製造に関連して上記に列記したジイソシアネートが挙げられる。特に、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、トランス−1,4−シクロヘキサンジイソシアネート(CHDI)、及び4,4’−ジシクロヘキシルメタン
タンジイソシアネート(H12MDI)が好ましい。
【0041】
テトラ尿素を製造するために用いることができる好適な脂肪族、脂環式、又は芳香族ジアミンとしては、トリ尿素化合物の製造に関連して上記に列記したジアミンが挙げられる。
【0042】
テトラ尿素を製造するために用いることができる好適なモノアミンとしては、ジ尿素化合物の製造に関連して上記に列記したモノアミンが挙げられる。
脂環式モノアミンの例としては、シクロヘキシルアミンを言及することができる。
【0043】
芳香族モノアミンの例としては、アニリン及びp−トルイジンを言及することができる。
本発明においては、テトラ尿素を製造するためには脂肪族モノアミンが好ましい。
【0044】
オイルブリーディングの減少及び剪断安定性の向上の観点からは、本発明において用いる尿素化合物は、ジイソシアネートを、C〜C10脂肪族アミン及びC14〜C20脂肪族アミンを含む複数のモノアミンの混合物と反応させることによって製造されるジ尿素化合物であることが好ましい。複数のモノアミンの混合物がC〜C10脂肪族アミン及びC16〜C18脂肪族アミンを含むことが更により好ましい。複数のモノアミンの混合物がC脂肪族アミン及びC18脂肪族アミンを含むことが特に好ましい。好ましくは、ジイソシアネートは4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)である。
【0045】
種々の通常のグリース添加剤を、この適用分野において通常的に用いられる量で本発明の潤滑グリース中に導入して、酸化安定性、粘着性、極圧特性、及び腐食抑制性のような幾つかの所望の特性をグリースに与えることができる。好適な添加剤としては、1種類以上の極圧/耐摩耗剤、例えば亜鉛ジアルキルのような亜鉛塩、或いはジアリールジチオホスフェート、ボレート、置換チアジアゾール、例えばジアルコキシアミンを置換有機ホスフェートと反応させることによって製造されるポリマー窒素/リン化合物、アミンホスフェート、天然又は合成起源の硫化鯨油、硫化ラード、硫化エステル、硫化脂肪酸エステル、及び同様の硫化物質、例えば式:(OR)P=O(ここで、Rはアルキル、アリール、又はアラルキル基である)にしたがう有機ホスフェート、並びにトリフェニルホスホロチオネート;1種類以上の過塩基化金属含有洗浄剤、例えばカルシウム又はマグネシウムアルキルサリチレート又はアルキルアリールスルホネート;1種類以上の無灰分散添加剤、例えばポリイソブテニルコハク酸無水物とアミン又はエステルの反応生成物;1種類以上の酸化防止剤、例えばヒンダードフェノール又はアミン、例えばフェニルα−ナフチルアミン;1種類以上の防錆添加剤;1種類以上の摩擦調整添加剤;1種類以上の粘度指数調整剤;1種類以上の流動点降下添加剤;並びに1種類以上の粘着剤が挙げられる。グラファイト、微粉砕二硫化モリブデン、タルク、金属粉末のような固体物質、並びにポリエチレンワックスのような種々のポリマーを、特別な特性を与えるために加えることもできる。
【0046】
摩擦レベルを減少させるためには、当業者は、主として有機モリブデンベースの配合物を用いることを試みており、かかる潤滑組成物の数多くの提案が特許文献において存在する。
【0047】
ここで、以下の実施例を参照することによって本発明を記載する。
【実施例】
【0048】
実施例1〜4及び比較例A、B、C、D、及びE:
下記に記載する製造法を用いて、本発明によるグリース組成物及び比較グリース組成物を調製した。グリース組成物を表1に示す。
【0049】
グリース試料の調製:
基油の一部をオートクレーブに充填した。次に、イソシアネートをオートクレーブ中に加えた。オートクレーブを閉止した。別の配合容器内で、基油及びアミンを希釈及び混合した。イソシアネートを融点より高い温度に加熱した。基油及びアミンの混合物も融点より高い温度に加熱した。アミン及び基油の混合物を撹拌しながらオートクレーブ中にポンプで導入した。オートクレーブを、イソシアネート及びアミンによって80℃〜140℃の間に加熱した。イソシアネートとアミンが反応した後、イソシアネートとアミンの平衡を赤外分光法及びアミン価によって測定した。反応が完了している場合は、性能添加剤を加えることができる。反応が完了していない場合には、イソシアネート又はアミンのいずれかの適切な反応物質を加えることによって反応を完了させることができる。性能添加剤を含ませた後、例えば均質化及び脱気によってグリースを仕上げ処理することができる。
【0050】
油分離試験法:
下記に記載する試験法を用いて、グリース試料の油分離性を測定した。
マスフライホイールグリースの油分離は、動的ねじり試験リグを用いて測定することができる。材料仕様に合致しなければならないマスフライホイールの全ての内部部品に関しては完全に新しい部品を用いることが必要である。試験部分の充填指針にしたがって、マスフライホイールに(実施例又は比較例の)グリースを充填した。次に、マスフライホイールを次の条件:150℃の温度;6000rpm;に3時間(振動なし)かけた。次に、マスフライホイールを1時間放置した。グリースの油分離値は、1時間後に回収される分離された油の質量を測定することによって得られる。
【0051】
マスフライホイール内での剪断安定性の測定:
マスフライホイールグリースの剪断安定性は、動的ねじり試験リグを用いて測定することができる。材料仕様に合致しなければならないマスフライホイールの全ての内部部品に関しては完全に新しい部品を用いることが必要である。試験部分の充填指針にしたがって、マスフライホイールに(本発明又は比較例の)グリースを充填した。次に、グリースを次の条件:150℃の温度;6000rpm;0.5分、±20°の角度の振動を伴う10Hzのサイクル;にかけた。グリースの剪断安定性値は、冷却されたグリース試料の稠度値(ASTM−D217によって測定)である。
【0052】
油分離及び剪断安定性試験の結果を表1に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
【表2】

【0055】
【表3】

議論:
表1における結果から、CモノアミンとC18モノアミンの混合物を用いて製造したジ尿素グリース(実施例1、2、3、及び4)は、CモノアミンとC12モノアミンの混合物を用いて製造したジ尿素グリース(比較例A、B、C)と比較して、或いはCモノアミンのみ(比較例D)又はC18モノアミンのみ(比較例E)を用いて製造したジ尿素グリースと比較して、大きく減少した油分離を示すことが分かる。上記に記載の油分離試験法においては、油分離値に関して10g未満の数値が許容できるとみなされる。
【0056】
また、表1における剪断安定性結果から、CモノアミンとC18モノアミンの混合物を用いて製造したジ尿素グリースは、良好な剪断安定性及び減少した油分離を示すことも分かる。特に、実施例2(CモノアミンとC18モノアミンの混合物から製造したジ尿素グリース)は、(通常は500(×0.1mm)より大きい剪断安定性値を有する従来の尿素グリースと比べて)329(×0.1mm)の剪断安定性値を有する。比較例B(CモノアミンとC12モノアミンの混合物から製造したジ尿素グリース)は、良好な剪断安定性を有しているが、10gを大きく超える油分離値によって示されるように良好な油分離特性を有していない。
【0057】
更に、実施例4(CモノアミンとC18モノアミンの混合物から製造したジ尿素グリース)は、良好な剪断安定性(312(×0.1mm)の剪断安定性値)を有する。これに対して、比較例C(Cモノアミンのみから製造したジ尿素グリース)は基準に達しない剪断安定性を有し、比較例D(C18モノアミンのみから製造)は劣った剪断安定性を有する。比較例C及びDは、良好な剪断安定性を有していないのに加えて、10gを大きく超える油分離値によって示されるようにいずれも良好な油分離特性を有していない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)800〜1000kg/mの範囲の密度を有する基油;及び
(ii)850〜1050kg/mの範囲の密度を有する尿素化合物;
を含み、基油(i)と尿素化合物(ii)の密度の差が50kg/m未満である潤滑グリース組成物のマスフライホイール用途における使用。
【請求項2】
尿素化合物が、ジ尿素、トリ尿素、及びテトラ尿素化合物、及びこれらの混合物から選択される、請求項1に記載の潤滑グリース組成物の使用。
【請求項3】
尿素化合物がジ尿素化合物である、請求項1に記載の潤滑グリース組成物の使用。
【請求項4】
ジ尿素化合物が、ジイソシアネート、並びにC〜C10脂肪族アミン及びC14〜C20脂肪族アミンを含む複数のモノアミンの混合物を反応させることによって得られる、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
複数のモノアミンの混合物がC〜C10脂肪族アミン及びC16〜C18脂肪族アミンを含む、請求項4に記載の潤滑グリース組成物の使用。
【請求項6】
複数のモノアミンの混合物がC脂肪族アミン及びC18脂肪族アミンを含む、請求項4又は5に記載の潤滑グリース組成物の使用。
【請求項7】
ジイソシアネートが4,4−ジフェニルメタンジイソシアネートである、請求項4〜6のいずれかに記載の潤滑グリース組成物の使用。
【請求項8】
基油が鉱油である、請求項1〜7のいずれかに記載の潤滑グリース組成物の使用。
【請求項9】
オイルブリーディングを減少させるための、基油(i)と尿素化合物(ii)の密度の差が50kg/m未満である、
(i)800〜1000kg/mの範囲の密度を有する基油;及び
(ii)850〜1050kg/mの範囲の密度を有する尿素化合物;
の組成物の潤滑グリースにおける使用。
【請求項10】
剪断安定性を向上させるための、基油(i)と尿素化合物(ii)の密度の差が50kg/m未満である、
(i)800〜1000kg/mの範囲の密度を有する基油;及び
(ii)850〜1050kg/mの範囲の密度を有する尿素化合物;
の組成物の潤滑グリースにおける使用。

【公表番号】特表2013−502477(P2013−502477A)
【公表日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−525168(P2012−525168)
【出願日】平成22年8月18日(2010.8.18)
【国際出願番号】PCT/EP2010/062061
【国際公開番号】WO2011/020863
【国際公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(390023685)シエル・インターナシヨネイル・リサーチ・マーチヤツピイ・ベー・ウイ (411)
【氏名又は名称原語表記】SHELL INTERNATIONALE RESEARCH MAATSCHAPPIJ BESLOTEN VENNOOTSHAP
【Fターム(参考)】