説明

潤滑グリース組成物

【課題】尿素含有潤滑グリースの観察される固化を抑えるか又は少なくとも低下させる潤滑グリース組成物を提供し、これをもって挙げられた用途での性能を保証する。
【解決手段】1種の基油又は1種の基油混合物からの混合物からなる潤滑グリース組成物であって、増粘剤成分として尿素を含有し、さらに1種もしくは複数種のイオン性液体並びに他の添加剤及び固体潤滑剤を含有し、イオン性液体の全量が1%未満である、前記潤滑グリース組成物によって解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業用潤滑剤に慣用の粘度(ISO VG 2ないしISO VG 1500)を有する油を基礎とする基油混合物と、1種もしくは複数種のイオン性液体と、少なくとも部分的にポリ尿素化合物を基礎とする増粘剤と、慣用の添加剤とを有する潤滑グリース組成物であって、60℃〜260℃の通常の使用温度でも、特に180℃超から260℃までの高い使用温度でも、−60℃という低温でも使用できる潤滑グリース組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
新規の潤滑剤の開発は、潤滑剤組成物に新たなより高い要求を課す技術の一般的な再開発を伴わねばならない。これらの要求を、鉱油及び/又は合成油を基礎とする公知の潤滑剤組成物はもはや満たしていない。
【0003】
潤滑剤は、自動車技術、搬送技術、機械工学、オフィステクノロジー並びに工業用の設備及び機器において使用されるが、また家庭用機器及び娯楽用電子機器類においても使用される。
【0004】
転がり軸受及び滑り軸受においては、潤滑剤は、互いに滑動する又は回転する部材の間で隔てて荷重を伝達する潤滑膜の構成をもたらす。それによって、金属表面同士は接触せず、従って摩耗が生じないことが達成される。従って、潤滑剤は、高い要求を満たさねばならない。それには、極度の動作条件、例えば非常に高い又は非常に低い回転数、高い回転数もしくは外熱によって引き起こされる高い温度、非常に低い温度、例えば冷環境で作業する軸受の場合もしくは航空及び宇宙飛行で使用する場合に生ずる非常に低い温度が該当する。同様に、現代の潤滑剤は、摩耗もしくは潤滑剤の消費による室内汚染を回避するために、いわゆるクリーンルーム条件下で使用できることが望ましい。さらに、現代の潤滑剤の使用に際しては、それが蒸発することで"皮膜化(verlacken)"すること、すなわち使用直後に固体となり、潤滑作用をもはや示さなくなることが回避されるべきである。
【0005】
確立したグリース型は、あらゆる通常の基油型を基礎としてよい尿素増粘されたグリースである。特に合成エステルと組み合わせて、高温で(FE9,DIN51825により調査)使用でき、かつ優れた低騒音特性を有するグリースを得ることができ、例えばそれは欧州特許第0902828号B1に記載されている。更なる性能向上は、例えば付加的な液相としてグリース中に存在するペルフルオロポリエーテルとの組み合わせによって達成できる。例えばそれは欧州特許第0902828号B1に開示されている。実際には、かかるグリースは、溝付玉軸受での使用において有効であると実証された。しかしながら、大きな軸受の仕様の場合に、ころ軸受の場合に、又は非常に高温の使用の場合にも、再注油せねばならず、効率での限界は明らかである。グリースの強い固化は、特に低い剪断を有する領域においても観察され、前記の固化は、不十分な軸受の管理に導き、それとともに早期の故障をもたらすことがあり、また再注油導管を閉塞しうる。このグリースの強い固化は、その際、オイルの高すぎる蒸発に起因するよりも、おそらく基油の酸化産物と相まって、増粘剤分子の増強された配向に起因する。
【0006】
イオン性液体(さらにIL(=Ionic Liquid)とも呼ばれる)の潤滑技術での使用は、数年来集中的に調査されている。それというのも、カチオン又はアニオンの変更によって広い使用範囲を提供できるからである。イオン性液体は、好ましくは室温で液状であるか又は定義によれば100℃未満の融点を有する、いわゆる溶融塩である。イオン性液体をもたらす公知のカチオン/アニオン組み合わせは、例えばジアルキルイミダゾリウム、ピリジニウム、アンモニウム及びホスホニウムと、スルホネート、イミド、メチドなどの有機アニオンとの組み合わせであり、またジアルキルイミダゾリウム、ピリジニウム、アンモニウム及びホスホニウムと、ハロゲニド及びホスフェートなどの無機アニオンとの組み合わせであり、その際、低い融点を達成できるあらゆる更なるカチオンとアニオンとの組み合わせも考えられる。イオン性液体は、極めて低い蒸気圧を有してよく、可燃性でなく、かつしばしば260℃超まで熱的に安定であり、更になおも潤滑性でありうる。
【0007】
WO2006/077082号は、端面シールを使用した回転シャフトのシール方法並びに回転シャフトのシールのための端面シール用の遮断液体の成分としてイオン性液体の使用を記載している。前記の遮断液体は、回転シャフトを付加的にシールするために用いられる。公知の遮断液体は、水又は油であり、その挙動は、イオン性液体の使用によって高い気密性の要求を有する機器の周囲との相互作用に関して改善される。
【0008】
DE102004033021号A1は、作動液体としてのイオン性液体の使用を記載しており、その際、液状の圧力伝達媒体の圧縮性は低下され、従ってその液圧システムのエネルギー伝達効率は改善されるとしている。
【0009】
DE102005007100号A1から、運転液体としてイオン性液体を使用する加工機器もしくは作業機器が知られている。このイオン性液体は、運転液体として使用する範囲においても、潤滑液体、遮断液体、シール液体、圧力伝達液体などとして使用される。
【0010】
DE102008024284号A1は、基油混合物と、イオン性液体と、増粘剤と、添加剤とを含有する潤滑剤組成物を記載している。前記の潤滑剤組成物は、高い温度でも、低い温度でも使用することができる。
【0011】
更に、ほぼもっぱらイオン性液体からなり、それにより前記の好ましいイオン性液体の特性を利用する潤滑剤組成物が公知である。それは例えばWO2006/109652号A1に記載されている。
【0012】
また、主成分のイオン性液体を有するグリースを真空用途のために提供することは知られている。前記グリースは、JP2005/154755号Aから公知である。しかし、そのような潤滑グリースは、高温領域及び低温領域で使用するのには適していない。前記のグリースの更なる欠点は、極めて高い費用である。
【0013】
潤滑グリース中で低い濃度でのイオン性液体の作用はあまり知られておらずかつ記載されておらず、観察された摩擦に対する作用に限って記載されている。ここで、イオン性液体は、潤滑すべき金属表面と作用して、部分的に反応層を形成する。イオン性液体の増粘剤構造に対する作用は知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】欧州特許第0902828号B1
【特許文献2】WO2006/077082号
【特許文献3】DE102004033021号A1
【特許文献4】DE102005007100号A1
【特許文献5】DE102008024284号A1
【特許文献6】WO2006/109652号A1
【特許文献7】JP2005/154755号A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の課題は、尿素含有潤滑グリースの観察される固化を抑えるか又は少なくとも低下させる潤滑グリース組成物を提供し、これをもって挙げられた用途での性能を保証することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
驚くべきことに、目下、少量のイオン性液体が、高温でのその固化作用を抑え、かつ遅延させられることが判明した。その根拠は、極性の強い物質に対するイオン性液体の溶解特性と思われ、それが増粘剤分子の話題に出た高められた配向に影響を及ぼしうる。イオン性液体の低い蒸発傾向は、十分に長い作用時間を保証しうる。少量の配量に基づき、イオン性液体の、例えば材料相容性に対する影響はよりわずかになり、また潤滑剤のための費用には比較的控えめに影響される。
【0017】
基油混合物は、合成油、鉱油及び/又は天然油であってよい。これらの油は、個別に又は組み合わせて、用途に依存して使用することができる。
【0018】
合成油は、単独成分として又は任意の混合物において、脂肪族もしくは芳香族のジカルボン酸、トリカルボン酸もしくはテトラカルボン酸と、1種のもしくは混合物として存在するC7〜C22−アルコールとのエステルから、ポリフェニルエーテルもしくはアルキル化ジフェニルエーテルから、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリットもしくはジペンタエリトリットと、脂肪族のC7〜C22−カルボン酸とのエステルから、C7〜C22−アルコールとのC18−二量体酸エステルから、錯体エステルから選択される。更に、合成油は、ポリ−α−オレフィン、アルキル化ナフタリン、アルキル化ベンゼン、ポリグリコール、シリコーン油、ペルフルオロポリエーテルから選択され、その際、前記基油は、必ずしも混合可能である必要はなく、そのためグリースは、1つより多くの液相を含んでいてよい。
【0019】
鉱油は、パラフィン系の、ナフテン系の、芳香族系の水素化分解油;ガス・ツー・リキッド(Gas to Liquid)(GTL)液体から選択できる。GTLは、ガス・ツー・リキッド法のことであり、天然ガスからの燃料の製造方法を説明している。天然ガスは、水蒸気改質により合成ガスへと変換され、これは次いでフィッシャー・トロプシュ合成により触媒を用いて燃料へと変換される。触媒とプロセス条件は、燃料の種類を制御し、従ってそれはガソリン、灯油、ディーゼル又はオイルが製造されるかどうかを制御する。同様に、コール・ツー・リキッド(Coal−to−Liquid)法(CTL)によれば石炭が原料として使用でき、バイオマス・ツー・リキッド(Biomass−to−Liquid)(BTL)法ではバイオマスが原料として使用できる。
【0020】
天然油としては、例えば水素化などの公知法により加工(veredeln)された動物/植物由来のトリグリセリドが使用できる。特に好ましいトリグリセリド油は、高いオレイン酸含分を有するトリグリセリド油である。高いオレイン酸含分を有する典型的にここで使用される植物油は、サフラワー油、トウモロコシ油、ナタネ油、ヒマワリ油、ダイズ油、アマニ油、ラッカセイ油、ブラッダーポッド(Lesquerella)油、メドウフォーム油及びヤシ油である。
【0021】
イオン性液体のための好適なカチオンとしては、第四級アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、ピラゾリウムカチオン、オキサゾリウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、ピペリジニウム(Piperidininium)カチオン、チアゾリウムカチオン、グアニジウム(Guanidinium)カチオン、モルホリニウムカチオン、トリアルキルスルホニウムカチオン又はトリアゾリウムカチオンが示され、それらは、[PF6-、[P(C2533-、[BF4-、[CF3CO2-、[CF3SO3-並びにそのより高級な同族体、[C49−SO3-もしくは[C817−SO3-及びより高級なペルフルオロアルキルスルホネート、[(CF3SO22N]-、[(CF3SO2)(CF3COO)N]-、[R4−SO3-、[R4−O−SO3-、[R4−COO]-、Cl-、Br-、[NO3-、[N(CN)2-、[HSO4-、PF(6-x)6xもしくは[R45PO4-からなる群から選択されるアニオンと組み合わせることができ、前記基R4及びR5は、互いに独立して、水素;直鎖状もしくは分枝鎖状の、飽和もしくは不飽和の、脂肪族もしくは脂環式の、1〜20個の炭素原子を有するアルキル基;ヘテロアリール基、ヘテロアリール−C1〜C6−アルキル基であって、ヘテロアリール基中に3〜8個の炭素原子を有し、かつN、O及びSから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を有し、それがC1〜C6−アルキル基及び/又はハロゲン原子からの少なくとも1つの基で置換されていてよい基;アリール基、アリール−C1〜C6−アルキル基であって、アリール基中に5〜12個の炭素原子を有し、それが少なくとも1つのC1〜C6−アルキル基で置換されていてよい基から選択され;R6は、ペルフルオロエチル又はより高級なペルフルオロアルキル基であってよく、xは1〜4であり、一般にxは3である。しかし、他の組合せも可能である。
【0022】
増粘剤は、ジイソシアネート、好ましくは2,4−ジイソシアナトトルエン、2,6−ジイソシアナトトルエン、4,4′−ジイソシアナトジフェニルメタン、2,4′−ジイソシアナトジフェニルメタン、4,4′−ジイソシアナトジフェニル、4,4′−ジイソシアナト−3,3′−ジメチルジフェニル、4,4′−ジイソシアナト−3,3′−ジメチルフェニルメタン(これらは単独で又は組み合わせて使用できる)と、一般式(H2N)xR[式中、xは1もしくは2であり、かつRは、2〜22個の炭素原子を有するアリール基、アルキル基もしくはアルキレン基である]のアミン/ジアミン(これらは単独で又は組み合わせて存在する)とからの反応生成物であり、その際、金属セッケン、金属錯体セッケン、ベントナイト、シリケート粉末、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアミド、ポリイミドから選択される付加的な増粘剤が存在してよい。
【0023】
更に、本発明による潤滑グリース組成物は、腐蝕に対する通常の添加剤、酸化に対する通常の添加剤及び金属の影響に対する保護のための添加剤であって、キレート化合物、ラジカル捕捉剤、紫外線安定剤、反応層形成剤として存在する添加剤並びに無機のもしくは有機の固体潤滑剤、例えばポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、グラファイト、金属酸化物、窒化ホウ素、二硫化モリブデン及びホスフェートなどの固体潤滑剤を含有する。特に、リン含有化合物及び硫黄化合物の形の添加剤、例えばジアルキルジチオリン酸亜鉛、ホウ酸エステルが摩耗防止添加剤/極圧添加剤として使用され、芳香族アミノ、フェノール、硫黄化合物が酸化防止剤として使用され、金属塩、エステル、窒素含有化合物、複素環式化合物が腐食防止剤として使用され、グリセリンモノエステルもしくはグリセリンジエステルが摩擦保護剤として使用され、並びにポリイソブチレン、ポリメタクリレートが粘度向上剤として使用される。
【0024】
本発明による潤滑グリース組成物は、39〜96.9%の基油混合物、1質量%未満のイオン性液体、3〜50質量%の増粘剤、0.1〜10質量%の添加剤を含有する。この潤滑グリース組成物では、40℃で測定して、基油の粘度は、1.98〜1650mm2/sの範囲であり、イオン性液体の粘度は、1.98〜1650mm2/sの範囲である。
【0025】
本発明による潤滑グリース組成物は、ジ尿素及び/又はポリ尿素で増粘された基油をイオン性液体と混合し、引き続き、例えば高圧ホモジナイザ及び/又は三本ロール機(Dreiwalzenstuhl)によって均質化することによるか、又は基油とイオン性液体とを混合し、この混合物中でポリ尿素化合物もしくはジ尿素化合物の合成によってインサイチューで増粘し、引き続き高圧ホモジナイザ及び/又は三本ロール機によって均質化することによって得られる。混合増粘剤を用いたグリース、例えば尿素増粘剤の他にカルシウムセッケンを用いたグリースの場合に、原則的に同様に行うことができるが、イオン性液体の後からの添加が好ましい。それというのも、水性アルカリ液は、多くの通常のカチオンと反応しうるからである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、アルミニウム小皿試験において、実施例1〜3における剪断粘度(mPas)を実施例7の剪断粘度と比較したものを示す。
【図2】図2は、アルミニウム小皿試験において、実施例4〜6における剪断粘度(mPas)を実施例7の剪断粘度と比較したものを示す。
【図3】図3は、実施例1〜3の蒸発損失(DIN58397−T1に基づく)及び剪断粘度の展開(%もしくはmPas)を実施例7と比較したものを示す。
【0027】
本発明を、ここで以下の実施例によって詳細に説明する。
【実施例】
【0028】
以下に挙げる種々の潤滑剤組成物については、合成エステル、芳香族ジイソシアネート及び脂肪族アミンからなる転がり軸受用グリースを基油として使用した。アルコール切片(Alkoholschnitt)C9〜C11を有するトリメリト酸エステルを合成エステルとして使用し、MDIをイソシアネートとして使用し、かつオクチルアミン/オレイルアミンをモノアミンとして使用した。
【0029】
イオン性液体を、既に全ての他の成分、例えば油、増粘剤及び添加剤を含有している均質化されていないグリースに混加し、三本ロール機によって均質化した。
【0030】
イオン性液体としては、1−エチル−3−メチル−イミダゾリウムエチルスルフェート(EMIMethylsulfat、商品名Ecoeng 212)及びN−エチル−3−メチルピリジニウムノナフルオロブタンスルホネート(EMPYnonaflat)を濃度0.3%、0.6%及び0.9%で使用した。該グリースは、2〜3号の範囲のNLGIの混和ちょう度を示している。
【0031】
ちょう度、滴点及び油分離(Oelabscheidung)などの、とりわけイオン性液体が構造を破壊せず機能的な潤滑グリースが存在することを示すデータの他に、熱負荷に際しての尿素グリースの固化の遮断を示すべく2つの調査を行った。DIN58397−T1に基づく150℃での蒸発損失測定のために、各グリースについて2つの小皿を満たし、同時に熱処理し、表に示される時間後に測定のために乾燥チャンバから取り出した。前記の1つの皿を秤量し、それにより蒸発損失を測定した。別の皿から少量のサンプルを取り出し、レオメーター(DIN51810に基づく;25℃、300 1/秒の剪断勾配)中で剪断粘度を測定した。
【0032】
第二の試験で、160℃の熱負荷において、いわゆる"アルミニウム小皿試験(Aluschaelchentest)"を使用した。このために、まず、まだ負荷していないグリースの剪断粘度を測定する。約50mmの直径と約15mmの高さのアルミニウム小皿において、その小皿の4分の3の高さまで、試験すべきグリースをできる限り均質かつ平坦に塗りつける。引き続き、その皿をぴったりの蓋で閉鎖する。閉じた小皿を、引き続き炉板(Ofenblech)上に置き、炉内で高められた温度で負荷する。表中に示される時間後に、グリースの剪断粘度を測定する。
【0033】
剪断粘度は、300s-1;25℃で測定する。
【0034】

【表1】

【0035】
【表2】

【0036】
表中に示される結果は、イオン性液体の添加によって、ちょう度はほとんど影響を受けず、滴点に対してさほど高くないないし低い影響しか受けず、滴点は明らかに200℃超に留まることを示している。
【0037】
本発明による潤滑グリース組成物のころ軸受での使用については、油分離は部分的に大きく高まるが、油分離は依然として十分に低いままであることを示すことができた。油分離での影響はより長時間にわたって調査したので、グリース構造の潜行性の破壊が起こらないことが確認できた。
【0038】
蒸発への影響は同様に調査され、EMPYnonaflatを使用した場合に蒸発の増加は起こらず、もしくはECOENG 212を使用した場合に蒸発の軽い増加が起こることを示すことができた。更に、より明らかに低い剪断粘度が蒸発実験で明らかにされた。
【0039】
密閉型のベアリング(geschlossener Lagerung)では、とりわけECOENG 212がより低い剪断粘度をもたらし、例えばそれはアルミニウム小皿試験によって示すことができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種の基油又は1種の基油混合物からの混合物からなる潤滑グリース組成物であって、増粘剤成分として尿素を含有し、さらに1種もしくは複数種のイオン性液体並びに他の添加剤及び固体潤滑剤を含有し、イオン性液体の全量が1%未満である、前記潤滑グリース組成物。
【請求項2】
増粘剤成分が、ジイソシアネート、好ましくは2,4−ジイソシアナトトルエン、2,6−ジイソシアナトトルエン、4,4′−ジイソシアナトジフェニルメタン、2,4′−ジイソシアナトジフェニルメタン、4,4′−ジイソシアナトジフェニル、4,4′−ジイソシアナト−3,3′−ジメチルジフェニル、4,4′−ジイソシアナト−3,3′−ジメチルフェニルメタン(これらは単独で又は組み合わせて使用できる)と、一般式(H2N)xR[式中、xは1もしくは2であり、かつRは、6〜22個の炭素原子を有するアリール基、アルキル基もしくはアルキレン基である]のアミンもしくはジアミン(これらは単独で又は組み合わせて存在する)とからの反応生成物からなる群から選択され、付加的に他の増粘剤成分として、金属セッケン、金属錯体セッケン、ベントナイト、シリケート粉末、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアミド、ポリイミドが含まれている、請求項1に記載の潤滑グリース組成物。
【請求項3】
前記1種の基油又は1種の基油混合物が、工業用潤滑剤に慣用の粘度を有する油並びに鉱油、合成油及び天然油からなる群から選択され、その際、前記合成油は、単独成分としてもしくは任意の混合物で存在して、芳香族のもしくは脂肪族のジカルボン酸、トリカルボン酸もしくはテトラカルボン酸と、1種のもしくは混合物として存在するC7〜C22−アルコールとのエステルから、ポリフェニルエーテルもしくはアルキル化ジフェニルエーテルから、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリットもしくはジペンタエリトリットと、脂肪族のC7〜C22−カルボン酸とのエステルから、C7〜C22−アルコールとのC18−二量体酸エステルから、錯体エステルから選択されるか、又はポリ−α−オレフィン、アルキル化ナフタリン、アルキル化ベンゼン、ポリグリコール、シリコーン油、ペルフルオロポリエーテルから選択され、その際、前記基油は、必ずしも混合可能である必要はなく、そのためグリースは、1つより多くの液相を含んでいてよく、前記鉱油は、パラフィン系の、ナフテン系の、芳香族系の水素化分解油;ガス・ツー・リキッド(GTL)液体、コール・ツー・リキッド(CTL)液体及びバイオマス・ツー・リキッド(BTL)液体から選択され、前記天然油は、水素化により加工された動物/植物由来のトリグリセリドであり、前記トリグリセリドは、高いオレイン酸含分を有するトリグリセリド油から選択され、高いオレイン酸含分を有する植物油は、サフラワー油、トウモロコシ油、ナタネ油、ヒマワリ油、ダイズ油、アマニ油、ラッカセイ油、ブラッダーポッド油、メドウフォーム油及びヤシ油から選択される、請求項1に記載の潤滑グリース組成物。
【請求項4】
イオン性液体又は複数種のイオン性液体からの混合物は、イオン性液体のカチオンが、第四級アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、ピラゾリウムカチオン、オキサゾリウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、ピペリジニウムカチオン、トリアルキルスルホニウムカチオン、チアゾリウムカチオン、グアニジウムカチオン、モルホリニウムカチオン又はトリアゾリウムカチオンであり、かつイオン性液体のアニオンが、[PF6-、[P(C2533-、[BF4-、[CF3CO2-、[CF3SO3-並びにそのより高級な同族体、[C49−SO3-もしくは[C817−SO3-及びより高級なペルフルオロアルキルスルホネート、[(CF3SO22N]-、[(CF3SO2)(CF3COO)N]-、[R4−SO3-、[R4−O−SO3-、[R4−COO]-、Cl-、Br-、[NO3-、[N(CN)2-、[HSO4-、PF(6-x)6xもしくは[R45PO4-からなる群から選択されるアニオンであるイオン性液体であって、前記基R4及びR5が、互いに独立して、水素;直鎖状もしくは分枝鎖状の、飽和もしくは不飽和の、脂肪族もしくは脂環式の、1〜20個の炭素原子を有するアルキル基;ヘテロアリール基、ヘテロアリール−C1〜C6−アルキル基であって、ヘテロアリール基中に3〜8個の炭素原子を有し、かつN、O及びSからの少なくとも1つのヘテロ原子を有し、それがC1〜C6−アルキル基及び/又はハロゲン原子から選択される少なくとも1つの基で置換されていてよい基;アリール基、アリール−C1〜C6−アルキル基であって、アリール基中に5〜12個の炭素原子を有し、それが少なくとも1つのC1〜C6−アルキル基で置換されていてよい基から選択され、R6が、ペルフルオロエチル又はより高級なペルフルオロアルキル基であってよく、xが、1〜4である前記イオン性液体から選択される、請求項1に記載の潤滑グリース組成物。
【請求項5】
イオン性液体のアニオンが、ホスフェート、スルフェート及びスルホネートから選択され、その際、スルホネートは、フッ素化されていないか、部分フッ素化されているか、又は完全にフッ素化されていてよい、請求項4に記載の潤滑グリース組成物。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか1項に記載の潤滑グリース組成物を、ころ軸受において、玉軸受において、特に直径100mm以上の玉軸受において、転がり軸受において、特に再注油せねばならない転がり軸受において用いる使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−60551(P2013−60551A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200876(P2011−200876)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(509350664)クリューバー リュブリケーション ミュンヘン コマンディートゲゼルシャフト (6)
【氏名又は名称原語表記】Klueber Lubrication Muenchen KG
【住所又は居所原語表記】Geisenhausenerstrasse 7, D−81379 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】