説明

潤滑剤ユニット、潤滑剤供給装置、プロセスカートリッジ、及び、画像形成装置

【課題】リサイクル作業において保持部材に保持された状態の固形潤滑剤を保持部材から容易に分離することができる、潤滑剤ユニット、潤滑剤供給装置、プロセスカートリッジ、及び、画像形成装置を提供する。
【解決手段】固形潤滑剤16bが貼着・保持される貼着面の一部に貫通穴16c1が形成された保持部材16cと、保持部材16cにおいて幅方向の離れた位置にそれぞれ回動可能に支持された1対の回動部材16gと、ケース16fに圧接するように1対の回動部材16gを互いに異なる方向に回動させて保持部材16cを付勢する付勢部材16hと、を備える。そして、1対の回動部材16gが、その回動にともない保持部材16cの貫通穴16c1を介して固形潤滑剤16bを押圧するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ、又は、それらの複合機等の電子写真方式を用いた画像形成装置と、そこに設置される潤滑剤ユニットと、潤滑剤供給装置と、プロセスカートリッジと、に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、複写機、プリンタ等の画像形成装置において、感光体ドラムや中間転写ベルト等の像担持体上に潤滑剤を供給する潤滑剤供給装置を用いる技術が知られている(例えば、特許文献1、2等参照。)。
【0003】
詳しくは、転写工程後の感光体ドラム上に残留する未転写トナーは、感光体ドラムに当接するクリーニングブレード(クリーニング装置)によってすべて除去されるべきものである。しかし、感光体ドラムとの摩擦によってクリーニングブレードの当接部に欠け(欠損)が生じた場合には、未転写トナーが欠損したクリーニングブレードと感光体ドラムとの隙間をすり抜けてクリーニング不良が生じてしまっていた。
【0004】
このような問題に対して、感光体ドラム上に潤滑剤を塗布することで、感光体ドラム上の摩擦係数が低下してクリーニングブレードの磨耗・欠損や感光体ドラムの劣化が低減されて、経時におけるクリーニング不良の発生を抑止することができる。
【0005】
具体的に、潤滑剤塗布装置は、感光体ドラム(像担持体)に摺接するブラシローラ(潤滑剤供給ローラ)、ブラシローラに当接する固形潤滑剤、固形潤滑剤が両面テープや接着剤等によって貼着・保持された保持部材、保持部材を固形潤滑剤とともにブラシローラに向けて付勢するスプリングや押圧機構等の付勢部材、等で構成される。そして、所定方向に回転するブラシローラによって固形潤滑剤から潤滑剤が徐々に削り取られて、ブラシローラによって削り取られて搬送された潤滑剤が像担持体の表面に塗布(供給)される。
【0006】
このような潤滑剤供給装置では、固形潤滑剤の交換メンテナンスをおこなうために、保持部材に貼着・保持された状態の固形潤滑剤(潤滑剤ユニット)を装置に対して着脱できるように構成したものが多く用いられている。また、そのような交換メンテナンス時において固形潤滑剤が保持部材に貼着・保持された状態の潤滑剤ユニットを潤滑剤供給装置から取出した後に、リサイクル工場にて消費された固形潤滑剤を保持部材から分離して新たな固形潤滑剤を保持部材に取り付けるリサイクル作業が多くおこなわれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の潤滑剤供給装置は、固形潤滑剤が保持部材に対して強固に貼着されているために、保持部材に保持された状態の使用済みの固形潤滑剤を保持部材から分離するリサイクル作業における作業性が悪かった。特に、使用済みの固形潤滑剤はその消耗によって薄肉化していて作業者による把持が容易でないために、固形潤滑剤を保持部材から分離する作業が難しくなっていた。
【0008】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、リサイクル作業において保持部材に保持された状態の固形潤滑剤を保持部材から容易に分離することができる、潤滑剤ユニット、潤滑剤供給装置、プロセスカートリッジ、及び、画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の請求項1記載の発明にかかる潤滑剤ユニットは、固形潤滑剤と、前記固形潤滑剤が貼着されるとともに、前記固形潤滑剤が貼着される貼着面の一部に単数又は複数の貫通穴が形成された保持部材と、前記保持部材において幅方向の離れた位置にそれぞれ回動可能に支持された1対の回動部材と、前記1対の回動部材を互いに異なる方向に回動させるように付勢する付勢部材と、を備え、前記1対の回動部材は、少なくとも一方が、前記付勢部材による回動にともない前記保持部材の前記貫通穴を介して前記固形潤滑剤を押圧するように形成されたものである。
【0010】
また、請求項2記載の発明にかかる潤滑剤ユニットは、前記請求項1に記載の発明において、使用が開始されないときに前記保持部材の前記貫通穴を介して前記固形潤滑剤を押圧する前記回動部材の回動動作を規制する規制手段を着脱可能に設置したものである。
【0011】
また、請求項3記載の発明にかかる潤滑剤ユニットは、前記請求項2に記載の発明において、前記規制手段を、前記保持部材に形成された穴部に挿着されて前記回動部材に係合する係止ピンとしたものである。
【0012】
また、請求項4記載の発明にかかる潤滑剤ユニットは、前記請求項2に記載の発明において、前記規制手段を、前記保持部材に形成された穴部と前記回動部材に形成された穴部とに挿着される係止ピンとしたものである。
【0013】
また、請求項5記載の発明にかかる潤滑剤ユニットは、前記請求項1〜請求項4のいずれかに記載の発明において、前記保持部材の前記貫通穴にシート状部材を設置したものである。
【0014】
また、この発明の請求項6記載の発明にかかる潤滑剤供給装置は、トナー像が担持される像担持体上に潤滑剤を供給する潤滑剤供給装置であって、請求項1〜請求項5のいずれかに記載の潤滑剤ユニットと、所定方向に回転するとともに、前記像担持体と前記固形潤滑剤とに摺接する潤滑剤供給ローラと、前記固形潤滑剤が前記潤滑剤供給ローラに圧接する方向に移動できるように前記保持部材を前記固形潤滑剤とともに収納するとともに、前記1対の回動部材が圧接するケースと、を備えたものである。
【0015】
また、請求項7記載の発明にかかる潤滑剤供給装置は、前記請求項6に記載の発明において、前記1対の回動部材は、それぞれ、前記固形潤滑剤の消費にともない前記保持部材が前記固形潤滑剤とともに前記潤滑剤供給ローラに近づく方向に移動するように前記付勢部材による付勢力によって回動して前記ケースに圧接するカム形状部を具備し、前記少なくとも一方の回動部材は、その回動中心を挟んで前記カム形状部の反対側に形成されるとともに、当該回動部材の回動範囲が所定範囲を超えたときに前記貫通穴を介して前記固形潤滑剤に接触して当該回動部材のその後の回動にともない前記固形潤滑剤を押圧する力を漸増するように形成された押圧部を具備したものである。
【0016】
また、請求項8記載の発明にかかる潤滑剤供給装置は、前記請求項6又は請求項7に記載の発明において、前記付勢部材を、前記1対の回動部材に連結されて、前記1対の回動部材が前記ケースに圧接する部分同士のスパンが漸減するように前記1対の回動部材を回動させる引張スプリングとしたものである。
【0017】
また、この発明の請求項9記載の発明にかかるプロセスカートリッジは、画像形成装置本体に対して着脱自在に設置されるプロセスカートリッジであって、請求項6〜請求項8のいずれかに記載の潤滑剤供給装置と前記像担持体とを備えたものである。
【0018】
また、請求項10記載の発明にかかるプロセスカートリッジは、前記請求項9に記載の発明において、前記像担持体上をクリーニングするクリーニング部を、前記潤滑剤供給装置に対して前記像担持体の回転方向上流側に備えたものである。
【0019】
また、この発明の請求項11記載の発明にかかる画像形成装置は、請求項6〜請求項8のいずれかに記載の潤滑剤供給装置と前記像担持体とを備えたものである。
【0020】
なお、本願において、「プロセスカートリッジ」とは、像担持体を帯電する帯電部と、像担持体上に形成された潜像を現像する現像部(現像装置)と、像担持体上をクリーニングするクリーニング部とのうち、少なくとも1つと、像担持体とが、一体化されて、画像形成装置本体に対して着脱自在に設置されるユニットと定義する。
【0021】
また、本願において、「幅方向」とは、記録媒体の搬送方向に対して直交する方向であって、像担持体における主走査方向と同じ方向であるものと定義する。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、保持部材において回動可能に支持されて付勢部材の付勢力によって回動して保持部材を付勢する1対の回動部材のうち少なくとも一方が、その回動にともない保持部材の貫通穴を介して固形潤滑剤を押圧するように形成されている。これにより、リサイクル作業において保持部材に保持された状態の固形潤滑剤が保持部材から容易に分離される、潤滑剤ユニット、潤滑剤供給装置、プロセスカートリッジ、及び、画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明の実施の形態における画像形成装置を示す全体構成図である。
【図2】作像部を示す構成図である。
【図3】潤滑剤ユニットを示す斜視図である。
【図4】保持部材を示す斜視図である。
【図5】回動部材を示す側面図である。
【図6】固形潤滑剤の消費にともなう保持部材の動作を示す図である。
【図7】使用開始前の潤滑剤供給装置の一部を示す図である。
【図8】別の形態の保持部材を示す斜視図である。
【図9】さらに別の形態の保持部材を示す斜視図である。
【図10】シート状部材が設置された保持部材を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
実施の形態.
以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0025】
まず、図1にて、画像形成装置全体の構成・動作について説明する。
本実施の形態における画像形成装置1は、複数の作像部としてのプロセスカートリッジ10Y、10M、10C、10BKが中間転写ベルト17に対向するように並設されたタンデム型のカラー画像形成装置である。
【0026】
図1において、1は画像形成装置としてのカラー複写機の装置本体、3は原稿を原稿読込部4に搬送する原稿搬送部、4は原稿の画像情報を読み込む原稿読込部、6は入力画像情報に基づいたレーザ光を発する書込み部(露光部)、7は転写紙等の記録媒体Pが収納される給紙部、10Y、10M、10C、10BKは各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)に対応した作像部としてのプロセスカートリッジ、17は複数色のトナー像が重ねて転写される中間転写ベルト、18は中間転写ベルト17上に形成されたトナー像を記録媒体Pに転写する2次転写ローラ、20は記録媒体P上の未定着画像を定着する定着部、28は各プロセスカートリッジ(作像部)10Y、10M、10C、10BKの現像部に各色のトナーを補給するためのトナー容器、を示す。
【0027】
ここで、各プロセスカートリッジ10Y、10M、10C、10BK(作像部)は、それぞれ、像担持体としての感光体ドラム11、帯電部12、現像部13(現像装置)、クリーニング部15(クリーニング装置)、潤滑剤供給装置16(潤滑剤供給部)が一体化されたものである(図2を参照できる。)。そして、各プロセスカートリッジ10Y、10M、10C、10BKは、寿命に達したときに装置本体1に対して交換される。
各プロセスカートリッジ10Y、10M、10C、10BKにおける感光体ドラム11(像担持体)上では、それぞれ、各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)のトナー像が形成される。
【0028】
以下、画像形成装置における、通常のカラー画像形成時の動作について説明する。
まず、原稿は、原稿搬送部3の搬送ローラによって、原稿台から搬送されて、原稿読込部4のコンタクトガラス上に載置される。そして、原稿読込部4で、コンタクトガラス上に載置された原稿の画像情報が光学的に読み取られる。
詳しくは、原稿読込部4は、コンタクトガラス上の原稿の画像に対して、照明ランプから発した光を照射しながら走査させる。そして、原稿にて反射した光を、ミラー群及びレンズを介して、カラーセンサに結像する。原稿のカラー画像情報は、カラーセンサにてRGB(レッド、グリーン、ブルー)の色分解光ごとに読み取られた後に、電気的な画像信号に変換される。さらに、RGBの色分解画像信号をもとにして画像処理部(不図示である。)で色変換処理、色補正処理、空間周波数補正処理等の処理をおこない、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのカラー画像情報を得る。
【0029】
そして、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色の画像情報は、書込み部6に送信される。そして、書込み部6からは、各色の画像情報に基づいたレーザ光(露光光)が、それぞれ、対応するプロセスカートリッジ10Y、10M、10C、10BKの感光体ドラム11上に向けて照射される。
【0030】
一方、4つの感光体ドラム11は、それぞれ、図の時計方向に回転している。そして、まず、感光体ドラム11の表面は、帯電ローラ12a(帯電部12)との対向位置で、一様に帯電される(帯電工程である。)。こうして、感光体ドラム11上には、帯電電位が形成される。その後、帯電された感光体ドラム11表面は、それぞれのレーザ光の照射位置に達する。
書込み部6において、光源から画像信号に対応したレーザ光が各色に対応して射出される。図示は省略するが、レーザ光は、ポリゴンミラーに入射して反射した後に、複数のレンズを透過する。複数のレンズを透過した後のレーザ光は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの色成分ごとに別の光路を通過することになる(露光工程である。)。
【0031】
イエロー成分に対応したレーザ光は、紙面左側から1番目のプロセスカートリッジ10Yの感光体ドラム11表面に照射される。このとき、イエロー成分のレーザ光は、高速回転するポリゴンミラー(不図示である。)により、感光体ドラム11の回転軸方向(主走査方向)に走査される。こうして、帯電ローラ12aにて帯電された後の感光体ドラム11上には、イエロー成分に対応した静電潜像が形成される。
【0032】
同様に、シアン成分のレーザ光は、紙面左から2番目のプロセスカートリッジ10Cの感光体ドラム11表面に照射されて、シアン成分の静電潜像が形成される。マゼンタ成分に対応したレーザ光は、紙面左から3番目のプロセスカートリッジ10Mの感光体ドラム11表面に照射されて、マゼンタ成分に対応した静電潜像が形成される。ブラック成分のレーザ光は、紙面左から4番目(中間転写ベルト17の走行方向に対して最も下流側である。)のプロセスカートリッジ10BK(黒色用作像部)の感光体ドラム11表面に照射されて、ブラック成分の静電潜像が形成される。
【0033】
その後、各色の静電潜像が形成された感光体ドラム11表面は、それぞれ、現像部13との対向位置に達する。そして、各現像部13から感光体ドラム11上に各色のトナーが供給されて、感光体ドラム11上の潜像が現像される(現像工程である。)。
その後、現像工程後の感光体ドラム11表面は、それぞれ、中間転写ベルト17との対向位置に達する。ここで、それぞれの対向位置には、中間転写ベルト17の内周面に当接するように1次転写ローラ14が設置されている。そして、1次転写ローラ14の位置で、中間転写ベルト17上に、感光体ドラム11上に形成された各色のトナー像が、順次重ねて転写される(第1転写工程である。)。
【0034】
そして、第1転写工程後の感光体ドラム11表面は、それぞれ、クリーニング部15との対向位置に達する。そして、クリーニング部15で、感光体ドラム11上に残存する未転写トナーが回収される(クリーニング工程である。)。
その後、感光体ドラム11表面は、潤滑剤供給装置16の位置と除電部(不図示である。)の位置とを順次通過して、感光体ドラム11における一連の作像プロセスが終了する。
【0035】
他方、感光体ドラム11上の各色の画像が重ねて転写された中間転写ベルト17表面は、図中の矢印方向に走行して、2次転写ローラ18の位置に達する。そして、2次転写ローラ18の位置で、記録媒体P上に中間転写ベルト17上のフルカラーの画像が2次転写される(第2転写工程である。)。
その後、中間転写ベルト17表面は、中間転写ベルトクリーニング部(不図示である。)の位置に達する。そして、中間転写ベルト17上の未転写トナーが中間転写ベルトクリーニング部に回収されて、中間転写ベルト17上の一連の転写プロセスが完了する。
【0036】
ここで、2次転写ローラ18位置の記録媒体Pは、給紙部7から搬送ガイド、レジストローラ19等を経由して搬送されたものである。
詳しくは、記録媒体Pを収納する給紙部7から、給紙ローラ8により給送された転写紙Pが、搬送ガイドを通過した後に、レジストローラ19に導かれる。レジストローラ19に達した記録媒体Pは、中間転写ベルト17上のトナー像とタイミングを合わせて、2次転写ローラ18の位置に向けて搬送される。
【0037】
その後、フルカラー画像が転写された記録媒体Pは、定着部20に導かれる。定着部20では、定着ローラと加圧ローラとのニップにて、カラー画像が記録媒体P上に定着される。
そして、定着工程後の記録媒体Pは、排紙ローラ29によって装置本体1外に出力画像として排出された後に、排紙部5上にスタックされて、一連の画像形成プロセスが完了する。
【0038】
次に、図2にて、画像形成装置の作像部について詳述する。
なお、図2は黒色用作像部としてのプロセスカートリッジ10BK(モノクロ用のプロセスカートリッジ)を示す構成図である。モノクロ用のプロセスカートリッジ10BKと、カラー用のプロセスカートリッジ10Y、10M、10Cと、は、作像プロセスに用いられるトナーの色が異なる点を除き、ほぼ同じ構成部材によって構成されているため、カラー用のプロセスカートリッジ10Y、10M、10Cの図示と説明は適宜省略する。
【0039】
図2に示すように、プロセスカートリッジ10BKには、像担持体としての感光体ドラム11と、感光体ドラム11を帯電する帯電部12(帯電ローラ)と、感光体ドラム11上に形成される静電潜像を現像する現像部13と、感光体ドラム11上の未転写トナーを回収するクリーニング部15と、感光体ドラム11上に潤滑剤を供給する潤滑剤供給装置16と、が、ケースに一体的に収納されている。
【0040】
ここで、像担持体としての感光体ドラム11は、負帯電性の有機感光体であって、ドラム状導電性支持体上に感光層等を設けたものである。
図示は省略するが、感光体ドラム11は、基層としての導電性支持体上に、絶縁層である下引き層、感光層としての電荷発生層及び電荷輸送層、保護層(表面層)が順次積層されている。
感光体ドラム11の導電性支持体(基層)としては、体積抵抗が1010Ωcm以下の導電性材料を用いることができる。
【0041】
帯電部12(帯電ローラ)は、導電性芯金の外周に中抵抗の弾性層を被覆してなるローラ部材であって、潤滑剤供給装置16に対して感光体ドラム11の回転方向下流側に配設されている。また、帯電部12(帯電ローラ)は、潤滑剤供給装置16によって感光体ドラム11上に供給された潤滑剤が付着しないように、感光体ドラム11に対して非接触で対向するように配設されている。
そして、帯電部12には不図示の電源部から所定の電圧が印加されて、これにより対向する感光体ドラム11の表面を一様に帯電する。
【0042】
現像部(現像装置)13は、主として、感光体ドラム11に対向する現像ローラ13aと、現像ローラ13aに対向する第1搬送スクリュ13b1と、仕切部材を介して第1搬送スクリュ13b1に対向する第2搬送スクリュ13b2と、現像ローラ13aに対向するドクターブレード13cと、で構成される。現像ローラ13aは、内部に固設されてローラ周面に磁極を形成するマグネットと、マグネットの周囲を回転するスリーブと、で構成される。マグネットによって現像ローラ13a(スリーブ)上に複数の磁極が形成されて、現像ローラ13a上に現像剤が担持されることになる。
【0043】
現像部13内には、キャリアとトナーとからなる2成分現像剤が収容されている。
トナーは、画質向上のために、円形度が0.98以上の球形トナーを使用している。「円形度」は、フロー式粒子像分析装置「FPIA−2000」(東亜医用電子社製)により計測した平均円形度である。具体的には、容器中の予め不純固形物を除去した水100〜150ml中に、分散剤として界面活性剤(好ましくは、アルキルベンゼンスルホン酸塩である。)を0.1〜0.5ml加えて、さらに測定試料(トナー)を0.1〜0.5g程度加える。その後、このトナーが分散した懸濁液を、超音波分散器で約1〜3分間分散処理して、分散液濃度が3000〜10000個/μlとなるようにしたものを上述の分析装置にセットして、トナーの形状及び分布を測定する。
【0044】
球形トナーとしては、従来から広く用いられている粉砕法によって形状が歪な異形のトナー(粉砕トナー)を加熱処理等して球形化したものや、重合法により製造されたもの等を用いることができる。
このような球形トナーを用いる場合、従来は、クリーニングブレード15aと感光体ドラム11との僅かな隙間に入り込んでやがてその隙間をすり抜けてクリーニング不良が生じることがあった。しかし、本実施の形態では、潤滑剤供給装置16によって潤滑剤を感光体ドラム11表面に塗布して、感光体ドラム11上におけるトナー剥離性(除去性)を向上させるために、クリーニング不良の発生が抑止される。
【0045】
クリーニング部15は、潤滑剤供給装置16に対して感光体ドラム11の回転方向上流側に配設されている。クリーニング部15には、感光体ドラム11に当接するクリーニングブレード15a、クリーニング部15内に回収されたトナーを廃トナーとして廃トナー回収容器(不図示である。)に向けて搬送する搬送コイル15b、等が設置されている。クリーニングブレード15aは、ウレタンゴム等のゴム材料からなり、感光体ドラム11表面に所定角度かつ所定圧力で当接している。これにより、感光体ドラム11上に付着する未転写トナー等の付着物が機械的に掻き取られてクリーニング部15内に回収されることになる。ここで、感光体ドラム11上に付着する付着物としては、未転写トナーの他に、記録媒体P(用紙)から生じる紙粉、帯電ローラ12aによる放電時に感光体ドラム11上に生じる放電生成物、トナーに添加されている添加剤、等がある。
【0046】
潤滑剤供給装置16は、固形潤滑剤16b、感光体ドラム11と固形潤滑剤16bとに摺接する潤滑剤供給ローラ16a(ブラシ状ローラ)、固形潤滑剤16bを保持する保持部材16c、保持部材16cを固形潤滑剤16bとともに収納するケース16f、保持部材16cとともに固形潤滑剤16bを潤滑剤供給ローラ16aに向けて付勢する回動部材16g及び引張スプリング16h(加圧機構)、潤滑剤供給ローラ16aによって感光体ドラム11上に供給された潤滑剤を薄層化するブレード状部材16d、等で構成される。なお、ブレード状部材16dは、潤滑剤供給ローラ16aに対して感光体ドラム11の回転方向下流側の位置で感光体ドラム11に対してカウンタ方向に当接するように構成されている。
このように構成された潤滑剤供給装置16によって、感光体ドラム11上に薄層化された潤滑剤が供給される。なお、潤滑剤供給装置16の構成・動作については、後で詳しく説明する。
【0047】
図2にて、先に述べた作像プロセスをさらに詳しく説明する。
現像ローラ13aは、図2中の矢印方向(反時計方向)に回転している。現像部13内の現像剤は、間に仕切部材を介在するように配設された第1搬送スクリュ13b1及び第2搬送スクリュ13b2の回転によって、不図示のトナー補給部によってトナー容器28から補給されたトナーとともに撹拌混合されながら長手方向に循環する(図2の紙面垂直方向である。)。
【0048】
そして、摩擦帯電してキャリアに吸着したトナーは、キャリアとともに現像ローラ13a上に担持される。現像ローラ13a上に担持された現像剤は、その後にドクターブレード13cの位置に達する。そして、現像ローラ13a上の現像剤は、ドクターブレード13cの位置で適量に調整された後に、感光体ドラム11との対向位置(現像領域である。)に達する。
【0049】
その後、現像領域において、現像剤中のトナーが、感光体ドラム11表面に形成された静電潜像に付着する。詳しくは、レーザ光Lが照射された画像部の潜像電位(露光電位)と、現像ローラ13aに印加された現像バイアスとの、電位差(現像ポテンシャル)によって形成される電界によって、トナーが潜像に付着する(トナー像が形成される)。
【0050】
その後、現像工程にて感光体ドラム11に付着したトナーは、そのほとんどが中間転写ベルト17上に転写される。そして、感光体ドラム11上に残存した未転写のトナーが、クリーニングブレード15aによってクリーニング部15内に回収される。
【0051】
ここで、図示は省略するが、装置本体1に設けられたトナー補給部は、交換自在に構成されたボトル状のトナー容器28と、トナー容器28を保持・回転駆動するとともに現像部13に新品トナーを補給するトナーホッパ部と、で構成されている。また、トナー容器28内には、新品のトナー(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのいずれかである。)が収容されている。また、トナー容器28(トナーボトル)の内周面には、螺旋状の突起が形成されている。
【0052】
なお、トナー容器28内の新品トナーは、現像部13内のトナー(既設のトナーである。)の消費にともない、トナー補給口から現像部13内に適宜に補給されるものである。図示は省略するが、現像部13内のトナーの消費は、感光体ドラム11に対向する反射型フォトセンサと、現像部13の第2搬送スクリュ23b2の下方に設置された磁気センサと、によって間接的又は直接的に検知される。
【0053】
以下、本実施の形態における、潤滑剤供給装置16(潤滑剤供給部)の構成・動作について詳しく説明する。
図2に示すように、潤滑剤供給装置16は、固形潤滑剤16b、感光体ドラム11と固形潤滑剤16bとに摺接するブラシ毛が周設された潤滑剤供給ローラ16a(ブラシ状ローラ)、固形潤滑剤16bを保持する保持部材16c、保持部材16cを固形潤滑剤16bとともに収納するケース16f、保持部材16cとともに固形潤滑剤16bを潤滑剤供給ローラ16aに向けて付勢する回動部材16g及び引張スプリング16h(加圧機構)、潤滑剤供給ローラ16aによって感光体ドラム11上に供給された潤滑剤を薄層化するブレード状部材16d(薄層化ブレード)、等で構成される。
ケース16fは、固形潤滑剤16bが潤滑剤供給ローラ16aに圧接する方向に移動できるように(移動を妨げないように)、保持部材16cを固形潤滑剤16bとともに収納するものである。
【0054】
潤滑剤供給ローラ16a(ブラシ状ローラ)は、長さ(毛足)が0.2〜20mm(好ましくは、0.5〜10mm)の範囲のブラシ毛が基布上に植毛されたものを芯金上にスパイラル状に巻き付けたものである。
ブラシ毛の長さが20mmを超えると、経時における感光体ドラム11との繰り返し摺擦によって、ブラシ毛が所定方向に倒毛して、固形潤滑剤16bの掻取性や感光体ドラム11からのトナー除去性が低下してしまう。これに対して、ブラシ毛の長さが0.2mm未満であると、固形潤滑剤16bや感光体ドラム11に対する物理的な当接力が不足してしまう。したがって、ブラシ毛の長さは上述の範囲であることが好ましい。
【0055】
潤滑剤供給ローラ16aは、図2の時計方向に回転する感光体ドラム11に対してカウンタ方向で接触するように回転する(図2の時計方向の回転である。)。また、潤滑剤供給ローラ16a(ブラシ毛)は、固形潤滑剤16bと感光体ドラム11とに摺接するように配置されていて、潤滑剤供給ローラ16aが回転することによって固形潤滑剤16bから潤滑剤を掻き取り、その掻き取った潤滑剤を感光体ドラム11との摺接位置まで搬送した後に、その潤滑剤を感光体ドラム11上に塗布する。
固形潤滑剤16bの後方部には,潤滑剤供給ローラ16aと固形潤滑剤16bとの接触ムラをなくすために加圧機構16g、16hが配置されていて、保持部材16cに保持(貼着)された状態の固形潤滑剤16bを潤滑剤供給ローラ16aに向けて付勢している。ここで、加圧機構は、保持部材16cに回動可能に支持された1対の回動部材16gと、1対の回動部材16gに連結された付勢部材としての引張スプリング16hと、で構成されているが、これについては後で詳しく説明する。
【0056】
本実施の形態では、固形潤滑剤16bを主としてステアリン酸亜鉛で形成している。詳しくは、固形潤滑剤16bは、ステアリン酸亜鉛を主成分とする潤滑油添加剤を溶解したもので、塗りすぎによる副作用がなく、充分な潤滑性があるものが好適である。
ステアリン酸亜鉛は、代表的なラメラ結晶紛体である。ラメラ結晶は両親媒性分子が自己組織化した層状構造を有していて、せん断力が加わると層間にそって結晶が割れて滑りやすい。したがって、感光体ドラム11表面を低摩擦係化することができる。すなわち、せん断力を受けて均一に感光体ドラム11表面を覆っていくラメラ結晶によって、少量の潤滑剤によって効果的に感光体ドラム11表面を覆うことができる。
【0057】
なお、固形潤滑剤16bとしては、ステアリン酸亜鉛の他にも、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸鉄、ステアリン酸ニッケル、ステアリン酸コバルト、ステアリン酸銅、ステアリン酸ストロンチュウム、ステアリン酸カルシウム等のステアリン酸基を有するものを用いることができる。また、同じ脂肪酸基であるオレイン酸亜鉛、オレイン酸バリウム、オレイン酸鉛、以下、ステアリン酸と同様の化合物や、パルチミン酸亜鉛、パルチミン酸バリウム、パルチミン酸鉛、以下、ステアリン酸と同様の化合物を使用して良い。他にも、脂肪酸基として、カプリル酸、リノレン酸、コリノレン酸等を使用することができる。さらに、カンデリラワックス、カンルナウバワックス、ライスワックス、木ろう、おおば油、みつろう、ラノリン等のワックスを使用することもできる。これらは有機系の固形潤滑剤となりやすく、トナーとの相性が良い。
【0058】
固形潤滑剤16bを潤滑剤供給ローラ16aを介して感光体ドラム11表面に塗布すると、感光体ドラム11表面には粉体状の潤滑剤が塗布されるが、この状態のままでは潤滑性は充分に発揮されないため、ブレード状部材16d(薄層化ブレード)が潤滑剤を均一化する部材として機能することになる。ブレード状部材16dにより、感光体ドラム11上での潤滑剤の皮膜化がおこなわれて、潤滑剤はその潤滑性を充分に発揮することになる。
このとき、潤滑剤供給ローラ16aにより塗布する粉体状の潤滑剤は微粉であるほど、ブレード状部材16dにより感光体ドラム11上に分子膜レベルで薄膜化される。
【0059】
以下、本実施の形態において特徴的な、潤滑剤供給装置16の構成・動作について詳述する。
図3は、潤滑剤ユニットを示す斜視図である。図3に示すように、潤滑剤ユニットは、固形潤滑剤16b、保持部材16c、1対の回動部材16g、引張スプリング16h(付勢部材)等で構成されている。この潤滑剤ユニットは、潤滑剤供給装置16(プロセスカートリッジ10BK)に対して着脱可能(交換可能)に構成されている。これによって、潤滑剤供給装置16(プロセスカートリッジ10BK)における固形潤滑剤の交換作業が容易化されることになる。
【0060】
図3及び図4を参照して、固形潤滑剤16bは、保持部材16cに貼着され保持されている。具体的に、保持部材16cと固形潤滑剤16bとの間に両面テープや接着剤等が介在されて、保持部材16cは固形潤滑剤16bを貼着して保持することになる。ここで、保持部材16cは、コの字状に曲げ加工された板金であって、固形潤滑剤16bが貼着される貼着面の一部に2つの貫通穴16c1が形成され、両側面に複数の穴部16c2、16c3が形成されている(図4、図6等を参照できる。)。
【0061】
ここで、図3、図5、図6等を参照して、保持部材16cには、幅方向(図2の紙面垂直方向であって、図6の左右方向である。)の離れた位置に、1対の回動部材16gがそれぞれ回動可能に支持されている。詳しくは、図5に示すように、回動部材16gの両側面には、支軸16g1(ボス部)が形成されている。そして、この回動部材16gの支軸16g1が、保持部材16cの穴部16c2(軸受部)に嵌合して、回動部材16gが保持部材16cに回動可能に保持されることになる。なお、2つの回動部材16cは、それぞれ、図3及び図6に示すように、幅方向において左右対称になるように保持部材16cに設置される。
【0062】
また、図3、図6等を参照して、1対の回動部材16gは、付勢部材としての引張スプリング16hで連結されている。詳しくは、引張スプリング16hの両端のフック部が、それぞれ、回動部材16gの穴部16g5(図5を参照できる。)に接続されている。
そして、この引張スプリング16hは、ケース16fに圧接するように1対の回動部材16gを互いに異なる方向に回動させて保持部材16cを潤滑剤供給ローラ16aに近づく方向に付勢する付勢部材として機能することになる。具体的に、引張スプリング16h(付勢部材)は、1対の回動部材16gがケース16fに圧接する部分同士のスパンが漸減するように、1対の回動部材16gを回動させる。
すなわち、2つの回動部材16gは、ケース16fの内壁面に当接するカム形状部16g2(図5等を参照できる。)が互いに近づく方向のスプリング力(付勢力)を引張スプリング16hから受ける。これにより、図6の左方の回動部材16gは、支軸16g1を回動中心として、図6の反時計方向に回動するように付勢される。これに対して、図6の右方の回動部材16gは、支軸16g1を回動中心として、図6の時計方向に回動するように付勢される。
【0063】
さらに詳しくは、図6(A)〜(D)に示すように、画像形成装置1における累積稼働時間の増加とともに、固形潤滑剤16bは、潤滑剤供給ローラ16aへの潤滑剤供給によって徐々に消費されて、その厚さ(潤滑剤供給ローラ16aへの圧接方向の厚さである。)が薄くなっていく。そして、一対の回動部材16gは、それぞれ、こうした固形潤滑剤16bの消費(薄肉化)にともない、引張スプリング16hによる付勢力によって上述した方向に回動することになる。
換言すると、一対の回動部材16gに形成されたカム形状部16g2は、それぞれ、固形潤滑剤16bの消費にともない保持部材16cが固形潤滑剤16bとともに潤滑剤供給ローラ16aに近づく方向に移動するように引張スプリング16hによる付勢力によって回動してケース16fに圧接することになる。
【0064】
ここで、本実施の形態では、2つの回動部材16gが、それぞれ、その回動(引張スプリング16hの付勢力による回動である。)にともない保持部材16cの貫通穴16c1を介して固形潤滑剤16bを押圧するように形成されている。
詳しくは、図5等を参照して、回動部材16gには、その支軸16g1(回動中心)を挟んでカム形状部16g2のほぼ反対側に、押圧部16g3(突起部)が形成されている。この押圧部16g3は、上述した固形潤滑剤16bの消費(薄肉化)にともない回動部材16gの回動範囲が所定範囲を超えたときに、貫通穴16c1を介して固形潤滑剤16bに接触して、回動部材16gのその後の回動にともない固形潤滑剤16bを押圧する力を漸増するように形成されている。
【0065】
以下、図6(A)〜(D)を用いて、固形潤滑剤16bの消費(薄肉化)にともなう保持部材16cの動作(特に、回動部材16gの動作)について詳述する。
まず、図6(A)に示すように、新品状態の固形潤滑剤16b(保持部材16cに貼着・保持された状態のものである。)が潤滑剤供給装置16(装置本体1)にセットされると、1対の回動部材16gのカム形状部16g2のスパン(ケース16fとの2つの圧接部同士間の幅方向の距離である。)が最長となる状態で、保持部材16c(加圧機構16g、16h)によって固形潤滑剤16bが潤滑剤供給ローラ16aに圧接する。このとき、回動部材16gの押圧部16g3は、貫通穴16c1を介して固形潤滑剤16bに接触することなく、保持部材16cの内部に収納されている。そして、この状態で、潤滑剤供給装置16(潤滑剤供給ローラ16a)による感光体ドラム11上への潤滑剤の供給が開始される。
その後、図6(B)に示すように、経時において、潤滑剤供給装置16(潤滑剤供給ローラ16a)による感光体ドラム11上への潤滑剤の供給が進められると、1対の回動部材16gのカム形状部16g2のスパンが徐々に漸減して、その状態で保持部材16c(加圧機構16g、16h)によって固形潤滑剤16bが潤滑剤供給ローラ16aに圧接する。このとき、回動部材16gの押圧部16g3は、保持部材16cの内部に収納されているものの、貫通穴16c1を介して固形潤滑剤16bに接触する位置に徐々に近づいていくことになる。
【0066】
そして、図6(C)に示すように、さらに経時において、潤滑剤供給装置16(潤滑剤供給ローラ16a)による感光体ドラム11上への潤滑剤の供給がさらに進められると、1対の回動部材16gのカム形状部16g2のスパンがさらに短縮化されて(回動部材16gの回動範囲が所定範囲を超えて)、回動部材16gの押圧部16g3が、貫通穴16c1を介して固形潤滑剤16bに接触した状態になる。このとき、固形部材16bは、保持部材16cを介して潤滑剤供給ローラ16aに圧接する力を受けるのではなくて、押圧部16c3を介して加圧機構16g、16hから直接的に潤滑剤供給ローラ16aに圧接する力(圧接力)を受けることになる。他方、保持部材16cには上述した圧接力の反力が作用して、結果として保持部材16cと固形潤滑剤16bとを分離(両面テープ等の剥離である。)する力が作用することになる。なお、このような状態であっても、上述したように、潤滑剤供給ローラ16aに対する固形潤滑剤16bの圧接力は、加圧機構16g、16hによって確保されているために、潤滑剤供給ローラ16aから感光体ドラム11への潤滑剤供給量が不足してしまうような不具合は生じないことになる。
【0067】
そして、最後に、図6(D)に示すように、潤滑剤供給装置16(潤滑剤供給ローラ16a)による感光体ドラム11上への潤滑剤の供給がさらに進められて、固形潤滑剤16bの肉厚が僅かになった状態で、固形潤滑剤16bが保持部材16cとともに潤滑剤供給装置16(装置本体1)から取出されて、固形潤滑剤16bの交換メンテナンスがおこなわれることになる。なお、固形潤滑剤16bの交換メンテナンスをおこなう時期は、固形潤滑剤16bの消費を直接的又は間接的に検知する検知手段(例えば、装置16の累積稼働時間をカウントする手段や、固形潤滑剤16bの肉厚を光学的に検知する手段等である。)による検知結果に基いて判断される。
また、このとき、1対の回動部材16gのカム形状部16g2のスパンが最短化されて、回動部材16gの押圧部16g3が、貫通穴16c1を介して固形潤滑剤16bを押圧した状態になる。そのため、保持部材16cには上述した圧接力の反力によって、保持部材16cと固形潤滑剤16bとを分離する力が作用して、固形潤滑剤16bは保持部材16cに対して極めて弱い貼着力によって保持されることになる(又は、貼着力がゼロの状態で当接することになる)。
これにより、使用済みの固形潤滑剤16bが保持部材16cとともに潤滑剤供給装置16(装置本体1)から取出された後に、新品時には保持部材16cに対して比較的強固に貼着されていた固形潤滑剤16bを、保持部材16cから容易に分離することができることになる。このことは、交換メンテナンスをおこなう作業者(主として、サービスマンである。)が、使用済みの固形潤滑剤16bを保持部材16cとともにリサイクル工場に配送することなく、その場で既設の保持部材16cから使用済みの固形潤滑剤16bを分離して、その代わりに用意してあった新品の固形潤滑剤16bを貼着するリサイクル作業(メンテナンス作業)をおこなうことができることを意味するものである。また、当然に、使用済みの固形潤滑剤16bを保持部材16cとともにリサイクル工場に配送してリサイクル工場にて固形潤滑剤16bの分離作業をおこなう場合であっても、その作業性は確実に向上することになる。
【0068】
なお、固形潤滑剤16bが保持部材16cに対して極めて弱い貼着力によって保持されていても、使用済みの固形潤滑剤16bがその消耗によって薄肉化していて作業者による把持が容易でない場合には、保持部材16cの内部側から貫通穴16c1を介して治具や指を突っ込んで固形潤滑剤16bを押圧してやることで、薄肉化した固形潤滑剤16bを保持部材16cから容易に分離することができる。また別の方法としては、回動部材16gを手動で回動(1対の回動部材16gのカム形状部16g2のスパンが減る方向への回動である。)させて、その回動部材16g(押圧部16g3)によって貫通穴16c1を介して固形潤滑剤16bを押圧してやることで、薄肉化した固形潤滑剤16bを保持部材16cから容易に分離することができる。
【0069】
また、本実施の形態では、図6(A)〜(D)の過程が画像形成装置1の内部でおこなわれるように設定した。これに対して、図6(A)〜(C)の過程が画像形成装置1の内部でおこなわれて、図6(D)の過程が画像形成装置1の外部でおこなわれるように設定することもできる。すなわち、図6(C)の状態(貫通穴16c1を介した回動部材16gの押圧によって固形潤滑剤16bが保持部材16cから完全に分離していない状態である。)で交換メンテナンスの時期を検知するように設定して、その検知情報に基いて装置本体1(潤滑剤供給装置16)から潤滑剤ユニット(図3を参照できる。)を取出して、装置外にて図6(D)に示すような固形潤滑剤16bの分離作業をおこなうこともできる。なお、その場合、図6(D)において、潤滑剤供給ローラ16aやケース16fから潤滑剤ユニットが分離された状態で固形潤滑剤16bの分離作業がおこなわれることになる。
【0070】
なお、本実施の形態では、潤滑剤ユニット(潤滑剤供給装置16)の使用が開始されないとき(例えば、工場出荷時からユーザー先での着荷時までの間である。)に、保持部材16cの貫通穴16c1を介して固形潤滑剤16bを押圧する回動部材16gの回動動作を規制する規制手段を着脱可能に設置している。
詳しくは、図7(A)に示すように、工場出荷時に、2つの回動部材16gを通常時の回動方向とは逆方向(引張スプリング16hのスプリング力に逆らう方向である。)に手動で回動させて、保持部材16cに形成された規制用の穴部16c3(図3等も参照できる。)に、規制手段としての係止ピン16kを挿着して回動部材16gのカム形状部16g2に係合させる。これにより、回動部材16gの回動方向の姿勢が、図7(A)の状態で定められるため、使用開始前に押圧部16g3が固形潤滑剤16bに圧接して保持部材16cに対する固形潤滑剤16bの保持力が低下してしまう不具合が抑止される。そして、上述した係止ピン16kは、ユーザー先で装置の使用が開始されるときに、作業者によって装置から取出されることになる。
なお、別の形態として、図7(B)に示すように、保持部材16cの穴部16c3とは別に、回動部材16gにも規制用の穴部16g4を形成して、工場出荷時に、2つの回動部材16gを通常時の回動方向とは逆方向に手動で回動させて、双方の規制用の穴部16c3、16g4に規制手段としての係止ピン16kを挿着することで、回動部材16gの回動を規制することもできる。特に、このような構成をとった場合には、係止ピン16kがカム形状部16g2に直接的に接触することがないために、カム形状部16g2にダメージが生じる不具合を抑止することができる。
なお、図7(A)、(B)では、潤滑剤ユニット(図3を参照できる。)が潤滑剤供給装置16に設置された状態のものを図示したが、潤滑剤ユニット単体に対して上述した係止ピン16k(規制手段)を設置することもできる。
【0071】
なお、本実施の形態では、保持部材16cにおいて固形潤滑剤が貼着される貼着面の一部に2つの貫通穴16c1を形成したが、図8や図9に示すように、保持部材16cにおいて固形潤滑剤が貼着される貼着面の一部に1つの貫通穴16c1を形成することもできる。
詳しくは、図8に示すように、保持部材16cに、一方の回動部材16gのみに対応した1つの貫通穴16c1を形成した場合(図4に示す2つの貫通穴16c1のうち1つのみを用いた場合である。)には、その一方の回動部材16gが回動にともない貫通穴16c1を介して固形潤滑剤16bを押圧することになる(他方の回動部材16gは、一方の回動部材16gとともに回動するものの、貫通穴16c1を介して固形潤滑剤16bを押圧する動作はおこなわれない)。すなわち、一方の押圧部材16gの押圧部16g3は、固形潤滑剤16bの消費(薄肉化)にともない回動部材16gの回動範囲が所定範囲を超えたときに、貫通穴16c1を介して固形潤滑剤16bに接触して、回動部材16gのその後の回動にともない固形潤滑剤16bを押圧する力を漸増することになる。このように構成した場合であっても、先に説明した本実施の形態における効果と同様の効果を得ることができる。特に、一方の押圧部材16gのみを固形潤滑剤16bを押圧可能に形成した場合には、固形潤滑剤16bの一箇所に集中的に保持部材16cとの分離を促す力が作用するために、かえって保持部材16cに対する固形潤滑剤16bの分離が促進されることになる。
【0072】
また、図9に示すように、保持部材16cに、一対の回動部材16gに共通して対応する1つの貫通穴16c1を形成した場合(図4に示す2つの貫通穴16c1を繋げた場合である。)にも、先に説明した本実施の形態における効果と同様の効果を得ることができる。特に、このように大きな開口面積の貫通穴16c1を形成した場合には、保持部材16cに対して固形潤滑剤16bを貼着するための面積(貼着面積)を小さくすることができるため、保持部材16cに対する固形潤滑剤16bのもともとの保持力を低下させることができる。すなわち、押圧部16g3によって固形潤滑剤16bを押圧する力を比較的弱く設定しても、先に説明した本実施の形態における効果と同様の効果を得ることができる。
【0073】
さらに、本実施の形態において、保持部材16cの貫通穴16c1にシート状部材16mを設置することもできる。
詳しくは、図10に示すように、保持部材16cに形成された2つの貫通穴16c1を覆うように、可撓性を有する薄いシート状部材16m(保護シート)を両面テープを介して貫通穴16c1の縁部に貼着する。このようにシート状部材16mを設置することで、回動部材16gの押圧部16g3が貫通穴16c1から固形潤滑剤16bに直接的に接触することなく、シート状部材16mを介して押圧部16g3が固形潤滑剤16bに接触することになるため、押圧部16g3との接触によって固形潤滑剤16bにダメージが生じる不具合を軽減することができる。なお、このように設置されたシート状部材16mは、可撓性の度合いが高い材料を用いた場合には押圧部16g3の押圧によって保持部材16cから分離されることなく再使用が可能になり、可撓性の度合いが低い材料を用いた場合には押圧部16g3の押圧によって固形潤滑剤16bとともに保持部材16cから分離されることになる。
【0074】
以上説明したように、本実施の形態によれば、保持部材16cにおいて回動可能に支持されて引張スプリング16h(付勢部材)の付勢力によって回動して保持部材16cを付勢する回動部材16gが、その回動にともない保持部材16cの貫通穴16c1を介して固形潤滑剤16bを押圧するように形成されている。これにより、リサイクル作業において保持部材16cに保持された状態の固形潤滑剤16bを保持部材16cから容易に分離することができる。
【0075】
なお、本実施の形態では、作像部における各部(感光体ドラム11、帯電部12、現像部13、クリーニング部15、潤滑剤供給装置16である。)を一体化してプロセスカートリッジ10Y、10M、10C、10BKを構成して、作像部のコンパクト化とメンテナンス作業性の向上とを図っている。
これに対して、作像部における各部11、12、13、15、16をプロセスカートリッジの構成部材とせずに、それぞれ単体で装置本体1に交換自在に設置されるように構成することもできる。このような場合にも、本実施の形態と同様の効果を得ることができる。
また、本実施の形態では、2成分現像剤を用いる2成分現像方式の現像部13が搭載された画像形成装置に対して本発明を適用したが、1成分現像剤を用いる1成分現像方式の現像部13が搭載された画像形成装置に対しても当然に本発明を適用することができる。
【0076】
また、本実施の形態では、中間転写ベルト17を用いたタンデム型のカラー画像形成装置に対して本発明を適用した。これに対して、転写搬送ベルトを用いたタンデム型のカラー画像形成装置(転写搬送ベルトに対向するように並設された複数の感光体ドラム上のトナー像を、転写搬送ベルトによって搬送される記録媒体上に重ねて転写する装置である。)や、モノクロ画像形成装置等、その他の画像形成装置に対しても、本発明を適用することができる。そして、このような場合であっても、本実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0077】
また、本実施の形態では、像担持体としての感光体ドラム11上に潤滑剤を供給する潤滑剤供給装置16に対して本発明を適用したが、感光体ドラム11以外の像担持体に潤滑剤を供給する潤滑剤供給装置(例えば、中間転写ベルト17に潤滑剤を供給する潤滑剤供給装置である。)に対しても当然に本発明を適用することができる。そして、このような場合であっても、本実施の形態と同様に保持部材16c(加圧機構16g、16h)を設けることで、本実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0078】
また、本実施の形態では、潤滑剤供給ローラ16aとしてブラシ毛が周設されたブラシ状ローラを用いたが、潤滑剤供給ローラ16aとしてスポンジ状部材(弾性材料)が周設されたスポンジ状ローラを用いることもできる。そして、このような場合であっても、本実施の形態と同様に保持部材16c(加圧機構16g、16h)を設けることで、本実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0079】
なお、本発明が本実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、本実施の形態の中で示唆した以外にも、本実施の形態は適宜変更され得ることは明らかである。また、前記構成部材の数、位置、形状等は本実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等にすることができる。
【符号の説明】
【0080】
1 画像形成装置本体(装置本体)、
11 感光体ドラム(像担持体)、
15 クリーニング部、
16 潤滑剤供給装置(潤滑剤供給部)、
16a 潤滑剤供給ローラ(ブラシ状ローラ)、
16b 固形潤滑剤、
16c 保持部材、
16c1 貫通穴、
16c2、16c3 穴部、
16f ケース、
16g 回動部材、
16g1 支軸(回動中心)、
16g2 カム形状部、 16g3 押圧部、
16h 引張スプリング(付勢部材)、
16k 係止ピン(規制手段)、 16m シート状部材。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0081】
【特許文献1】特開2006−293262号公報
【特許文献2】特開2007−293240号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形潤滑剤と、
前記固形潤滑剤が貼着されるとともに、前記固形潤滑剤が貼着される貼着面の一部に単数又は複数の貫通穴が形成された保持部材と、
前記保持部材において幅方向の離れた位置にそれぞれ回動可能に支持された1対の回動部材と、
前記1対の回動部材を互いに異なる方向に回動させるように付勢する付勢部材と、
を備え、
前記1対の回動部材は、少なくとも一方が、前記付勢部材による回動にともない前記保持部材の前記貫通穴を介して前記固形潤滑剤を押圧するように形成されたことを特徴とする潤滑剤ユニット。
【請求項2】
使用が開始されないときに前記保持部材の前記貫通穴を介して前記固形潤滑剤を押圧する前記回動部材の回動動作を規制する規制手段を着脱可能に設置したことを特徴とする請求項1に記載の潤滑剤ユニット。
【請求項3】
前記規制手段は、前記保持部材に形成された穴部に挿着されて前記回動部材に係合する係止ピンであることを特徴とする請求項2に記載の潤滑剤ユニット。
【請求項4】
前記規制手段は、前記保持部材に形成された穴部と前記回動部材に形成された穴部とに挿着される係止ピンであることを特徴とする請求項2に記載の潤滑剤ユニット。
【請求項5】
前記保持部材の前記貫通穴にシート状部材を設置したことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の潤滑剤ユニット。
【請求項6】
トナー像が担持される像担持体上に潤滑剤を供給する潤滑剤供給装置であって、
請求項1〜請求項5のいずれかに記載の潤滑剤ユニットと、
所定方向に回転するとともに、前記像担持体と前記固形潤滑剤とに摺接する潤滑剤供給ローラと、
前記固形潤滑剤が前記潤滑剤供給ローラに圧接する方向に移動できるように前記保持部材を前記固形潤滑剤とともに収納するとともに、前記1対の回動部材が圧接するケースと、
を備えたことを特徴とする潤滑剤供給装置。
【請求項7】
前記1対の回動部材は、それぞれ、前記固形潤滑剤の消費にともない前記保持部材が前記固形潤滑剤とともに前記潤滑剤供給ローラに近づく方向に移動するように前記付勢部材による付勢力によって回動して前記ケースに圧接するカム形状部を具備し、
前記少なくとも一方の回動部材は、その回動中心を挟んで前記カム形状部の反対側に形成されるとともに、当該回動部材の回動範囲が所定範囲を超えたときに前記貫通穴を介して前記固形潤滑剤に接触して当該回動部材のその後の回動にともない前記固形潤滑剤を押圧する力を漸増するように形成された押圧部を具備したことを特徴とする請求項6に記載の潤滑剤供給装置。
【請求項8】
前記付勢部材は、前記1対の回動部材に連結されて、前記1対の回動部材が前記ケースに圧接する部分同士のスパンが漸減するように前記1対の回動部材を回動させる引張スプリングであることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の潤滑剤供給装置。
【請求項9】
画像形成装置本体に対して着脱自在に設置されるプロセスカートリッジであって、
請求項6〜請求項8のいずれかに記載の潤滑剤供給装置と前記像担持体とを備えたことを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項10】
前記像担持体上をクリーニングするクリーニング部を、前記潤滑剤供給装置に対して前記像担持体の回転方向上流側に備えたことを特徴とする請求項9に記載のプロセスカートリッジ。
【請求項11】
請求項6〜請求項8のいずれかに記載の潤滑剤供給装置と前記像担持体とを備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−103297(P2012−103297A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−249232(P2010−249232)
【出願日】平成22年11月6日(2010.11.6)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】