説明

潤滑剤中の添加剤としてのチタン化合物およびチタン錯体

【課題】例えばエンジン油における、デポジット制御、酸化、および濾過性などの特性に対して有利な効果を有する、可溶性チタン含有物質を含有する潤滑剤組成物を提供すること。
【解決手段】潤滑粘度の油、油溶性チタン含有物質の形態の、重量で1ppm〜1000ppmのチタン、および少なくとも1種の潤滑剤添加剤を含有する、潤滑組成物は、エンジン油のデポジット制御、酸化、および濾過性などの特性に対して、有利な効果を提供する。本発明は、(a)潤滑粘度の油;(b)油溶性チタン含有物質の形態の、重量で1ppm〜1000ppmのチタン;ならびに(c)少なくとも1種の添加剤であって、(i)耐磨耗剤、(ii)分散剤、(iii)酸化防止剤、および(iv)洗浄剤、からなる群より選択される、添加剤、を含有する潤滑組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本願は、2005年3月28日に出願された、米国仮出願番号60/665,715からの優先権の利益を主張する。
【0002】
(発明の背景)
本発明は、例えばエンジン油における、デポジット制御、酸化、および濾過性などの特性に対して有利な効果を有する、可溶性チタン含有物質を含有する潤滑剤組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
クランクケースの潤滑剤についての現在の提唱される仕様(例えば、乗用車のモータ油についてのGF−4、およびヘビーデューティーディーゼル機関についてのPC−10)は、政府の仕様に合うために、次第に厳しくなる標準を詳細に記載する。特に問題とされるのは、硫黄およびリンの許容量である。これらの許容量を低下させることは、エンジンの性能、エンジンの磨耗、およびエンジン油の酸化に対する、重大な影響を有し得ると広く考えられている。このことは、エンジン油中のリンの含有量に大きく寄与するものが、歴史的に、亜鉛のジアルキルジチオリン酸塩(ZDP)であり、そしてZDPは、エンジン油に耐磨耗特性および酸化防止特性を付与するために長期間使用されていたことに起因する。従って、エンジン油におけるZDPの量が減少することは予想されるが、エンジンの性能、エンジンの磨耗、およびエンジン油の酸化という特性のうちの1つ以上を損なうことに対する保護を与えるための代用物が、必要とされる。このような改善された保護は、ZDPおよび関連する物質が潤滑剤中に含有されても含有されなくても、望ましい。望ましい潤滑剤は、リン、硫黄、および灰分(すなわち、ASTM D−874に従う硫酸化灰分(サンプルの金属含有量の尺度))のうちの1つ以上の量が少なくあり得る。
【0004】
特許文献1(Schwindら、2003年11月4日)は、有機ポリスルフィドと、オーバーベース化組成物またはリン化合物もしくはホウ素化合物との組み合わせを含有する、潤滑組成物、濃縮物、およびグリースを開示する。基礎となる金属化合物中で使用され得る金属としては、(とりわけ)チタンが挙げられる。
【0005】
特許文献2(Mathurら、1999年10月19日)は、特定のチオリンエステル(thiophosphorus ester)を含有する、潤滑組成物、機能的流体およびグリースを開示する。ホウ素の耐磨耗剤または極圧剤が存在し得、これらの薬剤は、ホウ素化されたオーバーベース化金属塩であり得る。基本的な金属化合物の金属の例としては、(とりわけ)チタンが挙げられる。
【0006】
特許文献3(Lange,1998年9月22日)は、潤滑油のための金属含有分散剤の粘度改質剤を開示し、これらの粘度改質剤は、α,β−不飽和カルボン酸をグラフト化された炭化水素ポリマーと、窒素と、炭化水素置換されたポリカルボン酸の金属含有誘導体との反応生成物を含有する。金属は、(とりわけ)チタンから選択され得る。
【0007】
特許文献4(Salomonら、1997年3月25日)は、潤滑粘度の油と、カルボン酸誘導体と、アルカリ金属オーバーベース化塩とを含有する、潤滑組成物および濃縮物を開示する。油溶性の遷移金属含有組成物であり得る酸化防止剤もまた、開示される。この遷移金属は、(とりわけ)チタンから選択され得る。
【0008】
表面修飾されたTiO粒子の形態のチタンもまた、摩擦特性および磨耗特性を改善するための、流動パラフィンへの添加剤として開示されている。例えば、非特許文献1を参照のこと。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第6,624,187号明細書
【特許文献2】米国特許第5,968,880号明細書
【特許文献3】米国特許第5,811,378号明細書
【特許文献4】米国特許第5,614,480号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Q.Xueら,Wear 213,29−32,1997
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
チタン(例えば、特定のチタン化合物の形態で供給されるチタン)の存在は、上記特性のうちの1つ以上に対して、有利な効果を提供することが、ここで発見された。具体的には、チタンイソプロポキシドのような物質は、Komatsuホットチューブデポジットスクリーン試験(KHT)、KES濾過性試験、分散剤パネルコークス器試験(エンジン油のデポジット形成傾向を評価するために使用される試験)、およびCat 1M−PC試験のうちの1つ以上に、有利な効果を付与する。
【0012】
(発明の要旨)
本発明は、
(a)潤滑粘度の油;
(b)油溶性チタン含有物質の形態の、重量で1ppm〜1000ppmのチタン;ならびに
(c)少なくとも1種の添加剤であって、
(i)耐磨耗剤、
(ii)分散剤、
(iii)酸化防止剤、および
(iv)洗浄剤、
からなる群より選択される、添加剤、
を含有する潤滑組成物を提供する。
【0013】
別の実施形態において、本発明は、
(a)潤滑粘度の油;
(b)油溶性チタン含有物質の形態の、重量で1ppm〜50ppm未満のチタンであって、この油溶性チタン含有物質は、チタンアルコキシド、チタンで修飾された分散剤、芳香族カルボン酸のチタン塩、および硫黄含有酸のチタン塩からなる群より選択される、チタン;ならびに
(c)少なくとも1種の添加剤であって、
(i)耐磨耗剤、
(ii)分散剤、
(iii)酸化防止剤、および
(iv)洗浄剤、
からなる群より選択される、添加剤
を含有する潤滑組成物を提供する。
【0014】
本発明は、上記要素を混合する工程を包含する、潤滑組成物を調製するための方法、および上記潤滑組成物を機械デバイスに供給する工程を包含する、機械デバイスを潤滑するための方法をさらに提供する。
【0015】
本発明は、ヘビーデューティーサイクルなどの機関に上記潤滑組成物を供給することによって、この機関を潤滑させるための方法をさらに提供する。
【0016】
1つの実施形態において、本発明は、内燃機関を潤滑させるための方法を提供し、この方法は、この機関に、
(a)潤滑粘度の油;
(b)20,000未満の数平均分子量を有する油溶性チタン含有物質の形態の、重量で1ppm〜1000ppmのチタン;
(c)Ti含有酸化防止剤以外の酸化防止剤、および
(d)Ti含有洗浄剤以外の金属含有洗浄剤、
を含有する潤滑組成物を供給する工程を包含する。
【0017】
別の実施形態において、本発明は、内燃機関を潤滑させるための方法を提供し、この方法は、この機関に、
(a)潤滑粘度の油;
(b)20,000未満の数平均分子量を有する油溶性チタン含有物質の形態の、重量で1ppm〜50ppm未満のチタン;
(c)Ti含有酸化防止剤以外の酸化防止剤、および
(d)Ti含有洗浄剤以外の金属含有洗浄剤、
を含有する潤滑組成物を供給する工程を包含する。
例えば、本発明は、以下の項目を提供する。
(項目1)
内燃機関を潤滑させるための方法であって、該方法は、該機関に潤滑組成物を供給する工程を包含し、該潤滑組成物は、
(a)潤滑粘度の油;
(b)20,000未満の数平均分子量を有する油溶性チタン含有物質の形態の、重量で約1ppm〜約1000ppmのチタン;
(c)Ti含有酸化防止剤以外の酸化防止剤、および
(d)Ti含有洗浄剤以外の金属含有洗浄剤、
を含有する、方法。
(項目2)
前記油溶性チタン含有物質が、チタン(IV)アルコキシドまたはチタン(IV)カルボン酸塩を含有する、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記油溶性チタン含有物質が、チタン(IV)イソプロポキシドを含有する、項目1に記載の潤滑組成物。
(項目4)
前記油溶性チタン含有物質が、チタンで修飾された分散剤を含有する、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記油溶性チタン含有物質が、チタンアルコキシドとヒドロカルビル置換無水コハク酸との反応生成物を含有する、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記油溶性チタン含有物質が、表面修飾されたTiOナノ粒子を含有する、項目1に記載の方法。
(項目7)
前記チタンの量が、重量で約1ppm〜50ppm未満である、項目1に記載の方法。
(項目8)
前記組成物中のモリブデンの量が、重量で150ppm未満である、項目1に記載の方法。
(項目9)
前記潤滑組成物が、
(e)耐磨耗剤、および
(f)分散剤、
からなる群より選択される少なくとも1種の添加剤をさらに含有する、項目1に記載の方法。
(項目10)
前記耐磨耗剤が、リン含有耐磨耗剤を含有する、項目9に記載の方法。
(項目11)
前記組成物が、重量で約1200ppm未満のリンを含有する、項目9に記載の方法。
(項目12)
前記内燃機関が、ヘビーデューティーディーゼル機関である、項目1に記載の方法。
(項目13)
潤滑組成物であって、
(a)潤滑粘度の油;
(b)油溶性チタン含有物質の形態の、約1ppm〜50ppm未満のチタンであって、該油溶性チタン含有物質は、チタンアルコキシド、チタンで修飾された分散剤、芳香族カルボン酸のチタン塩、および硫黄含有酸のチタン塩からなる群より選択される、チタン;ならびに
(c)少なくとも1種の添加剤であって、
(i)耐磨耗剤、
(ii)分散剤、
(iii)酸化防止剤、および
(iv)洗浄剤、
からなる群より選択される、添加剤、
を含有する、潤滑組成物。
(項目14)
潤滑組成物を調製するための方法であって、該方法は、項目13に記載の成分を混合する工程を包含する、方法。
(項目15)
項目14の成分を混合することにより調製された、組成物。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(発明の詳細な説明)
種々の好ましい特徴および実施形態が、非限定的な例示によって、以下に記載される。
【0019】
本発明の1つの要素は、潤滑粘度の油(基油とも称される)である。本発明の潤滑油組成物において使用される基油は、American Petroleum Institute(API)Base Oil Interchangeability GuidelinesにおいてGroup I〜Group Vと指定される、基油のいずれかからなる群より選択され得る。これらの5つの基油の群は、以下のとおりである:
【0020】
【表1】

Group I、Group IIおよびGroup IIIは、鉱油のベースストックである。従って、潤滑粘度の油は、天然潤滑油または合成潤滑油、およびこれらの混合物を含有し得る。鉱油と合成油との混合物(特に、ポリαオレフィン油とポリエステル油との混合物)が、しばしば使用される。
【0021】
天然油としては、動物油および植物油(例えば、ヒマシ油、ラード油および他の植物酸エステル)、ならびに鉱物潤滑油(例えば、液体石油および溶媒で処理された鉱物潤滑油または酸で処理された鉱物潤滑油(例えば、パラフィン系、ナフテン系、もしくは混合パラフィン−ナフテン系))が挙げられる。水素処理された油または水素分解された油は、潤滑粘度の有用な油の範囲内に含まれる。
【0022】
石炭または頁岩由来の潤滑粘度の油もまた、有用である。合成潤滑油としては、炭化水素油およびハロ置換炭化水素油(例えば、重合オレフィンおよび相互重合オレフィン、ならびにこれらの混合物、アルキルベンゼン、ポリフェニル(例えば、ビフェニル、テルフェニル、およびアルキル化ポリフェニル)、アルキル化ジフェニルエーテルおよびアルキル化ジフェニルスルフィドならびにこれらの誘導体、アナログおよびホモログ)が挙げられる。
【0023】
アルキレンオキシドポリマーおよびインターポリマー、ならびにこれらの誘導体、ならびに末端ヒドロキシル基が、例えば、エステル化またはエーテル化により修飾されているものは、使用され得る公知の合成潤滑油の他のクラスを構成する。
【0024】
使用され得る別の適切なクラスの合成潤滑油としては、ジカルボン酸と、C5〜C12モノカルボン酸と、ポリオールまたはポリオールエーテルとから作製されるエステルが挙げられる。他の合成潤滑油としては、リン含有酸、ポリマーのテトラヒドロフラン、ケイ素ベースの油(例えば、ポリアルキルシロキサン油、ポリアリールシロキサン油、ポリアルコキシシロキサン油、またはポリアリールオキシシロキサン油、およびシリケート油)が挙げられる。
【0025】
水素処理されたナフテン系油、およびFischer−Tropsch気液合成手順に続いて水素異性化(hydroisomerization)により調製された油もまた公知であり、そして使用され得る。
【0026】
未精製油、精製油および再精製油は、本明細書中で上に開示された型の天然のものであっても合成のものであっても(これらのいずれかの2種類以上の混合物であっても)、本発明の組成物において使用され得る。未精製油とは、さらなる精製処理なしで、天然供給源または合成供給源から直接得られる油である。精製油は、1つ以上の特性を改善するために、1つ以上の精製工程でさらに処理されたことを除いて、未精製油と類似である。再精製油は、すでに使用された精製油に対する、精製油を得るために使用されたものと類似のプロセスによって得られる。このような再精製油は、しばしば、使用済み添加剤および油分解生成物の除去を目的とする技術によって、さらに処理される。
【0027】
本発明はまた、油溶性チタン含有物質の形態、またはより一般的には、炭化水素に可溶性の物質の形態の、チタンを含有する。「油溶性」または「炭化水素に可溶性」とは、場合によって油または炭化水素(代表的に、鉱油)に、微視的規模または全体的規模で溶解または分散し、その結果、実用的な溶液または分散物が調製され得る、物質を意味する。有用な潤滑剤処方物を調製する目的で、チタン物質は、数日間または数週間にわたって、沈殿も沈降もしないべきである。このような物質は、分子規模で真の溶解度を示し得るか、または種々のサイズもしくは規模の凝集体の形態を示し得る。ただし、これらの凝集体は、全体的な規模では、溶解または分散している。油溶性チタン含有物質の性質は、広範であり得る。本発明において使用され得るチタン化合物、または本発明の油溶性物質の調製のために使用され得るチタン化合物のうちでも、種々のチタン(IV)化合物(例えば、酸化チタン(IV);硫化チタン(IV);硝酸チタン(IV);チタン(IV)アルコキシド(例えば、チタンメトキシド、チタンエトキシド、チタンプロポキシド、チタンイソプロポキシド、チタンブトキシド);ならびに他のチタン化合物またはチタン錯体(チタンフェネート;チタンのカルボン酸塩(例えば、2−エチル−1−3−ヘキサン二酸チタン(IV)もしくはクエン酸チタンもしくはオレイン酸チタン);チタン(IV)2−エチルヘキソキシド;ならびにチタン(IV)(トリエタノールアミナト)イソプロポキシド)(titanium(IV)(triethanolaminato)isopropoxide))が挙げられるが、これらに限定されない)である。本発明に包含されるチタンの他の形態としては、チタンのリン酸塩(例えば、ジチオリン酸チタン(例えば、ジアルキルジチオリン酸塩))およびチタンのスルホン酸塩(例えば、アルキルスルホン酸塩)、または一般的には、チタン化合物と、塩(特に、油溶性塩)を形成する種々の酸物質との反応生成物が挙げられる。従って、チタン化合物は、とりわけ、有機酸、アルコール、およびグリコールから誘導され得る。Ti化合物はまた、Ti−O−Ti構造を含む、二量体形態またはオリゴマー形態として存在し得る。このようなチタン物質は、市販されているか、または当業者に明らかである適切な合成技術によって容易に調製され得る。これらの物質は、特定の化合物に依存して、室温で、固体または液体として存在し得る。これらの物質はまた、適切な不活性溶媒中の溶液形態として提供され得る。
【0028】
別の実施形態において、チタンは、Ti修飾された分散剤(例えば、スクシンイミド分散剤)として供給され得る。このような物質は、チタンアルコキシドと、ヒドロカルビル置換された無水コハク酸(例えば、例えば、アルケニル無水コハク酸(またはアルキル無水コハク酸))との間で、チタン混合無水物を形成することによって、調製され得る。得られるチタン−コハク酸中間体は、直接使用され得るか、または多数の物質(例えば、(a)遊離した縮合可能なNH官能性を有するポリアミンベースのスクシンイミド/アミド分散剤;(b)ポリアミンベースのスクシンイミド/アミド分散剤の成分(すなわち、アルケニル無水コハク酸(またはアルキル無水コハク酸)およびポリアミン)、(c)置換無水コハク酸と、ポリオール、アミノアルコール、ポリアミン、またはこれらの混合物との反応によって調製される、ヒドロキシ含有ポリエステル分散剤)のいずれかと反応させられ得る。あるいは、チタン−コハク酸中間体は、他の試薬(例えば、アルコール、アミノアルコール、エーテルアルコール、ポリエーテルアルコールもしくはポリオール、または脂肪酸)と反応させられ得、そしてその生成物は、Tiを潤滑剤に与えるために直接使用されるか、または上記のようなコハク酸分散剤とさらに反応させられるかの、いずれかである。例として、(モルに基づいて)1部のチタン酸テトライソプロピルが、(モルに基づいて)2部のポリイソブタン置換無水コハク酸と、140℃〜150℃で5時間〜6時間反応して、チタン修飾された分散物または中間体を提供し得る。得られた物質(30g)は、ポリイソブテン置換無水コハク酸およびポリエチレンポリアミンの混合物由来のスクシンイミド分散物(127g+希釈油)と、150℃で1.5時間さらに反応させられて、チタン修飾されたスクシンイミド分散剤を生成し得る。
【0029】
別の実施形態において、チタンは、チタンと塩形成および/またはキレート化している、トリルトリアゾールオリゴマーとして供給され得る。トリルトリアゾールの表面活性な特性は、この物質が、チタンのための送達系として働くことを可能にし、本明細書中で他の箇所に記載されるようなチタン性能の利点と、トリルトリアゾールの耐磨耗特性との両方を与える。1つの実施形態において、この物質は、最初にトリルトリアゾール(1.5当量)とホルムアルデヒド(1.57当量)とを、不活性溶媒中で混合し、続いてジエタノールアミン(1.5当量)を添加し、次いで加熱および縮合水の除去を行いながら、ヘキサデシル無水コハク酸(1.5当量)および触媒量のメタンスルホン酸を添加することによって、調製され得る。この中間体は、チタンイソプロポキシド(0.554当量)と60℃で反応させられ得、続いて減圧ストリップされて、赤色の粘性生成物を提供し得る。
【0030】
チタンの他の形態(例えば、Q.Xueら,Wear 213,29−32,1997(Elsevier Science S.A.)により詳細に記載されるような、表面修飾されたに酸化チタンナノ粒子)もまた、提供され得る。この文献は、2−エチルヘキサン酸(2−ethylhexoic acid)で表面修飾された、5nmの平均直径を有するTiO2ナノ粒子を開示する。有機ヒドロカルビル鎖によりキャップされたこのようなナノ粒子は、非極性有機溶媒および極性が弱い有機溶媒に、よく分散すると記載されている。これらの合成は、K.G.Severinらによって、Chem.Mater.6,8990−898,1994に詳細に記載されている。
【0031】
1つの実施形態において、チタンは、長鎖ポリマー(すなわち、高分子量のポリマー)の一部ではなく、長鎖ポリマーに結合してもいない。従って、チタン種は、これらの状況において、150,000未満、100,000未満、30,000未満、20,000未満、10,000未満、5000未満、3000未満、2000未満(例えば、約1000または1000未満)の数平均分子量を有し得る。チタンを上に開示されたように提供する非ポリマー種は、代表的に、このようなポリマーの分子量範囲未満である。例えば、チタンテトラアルコキシド(例えば、チタンイソプロポキシド)は、容易に計算され得るように、1000以下、または300以下の数平均分子量を有し得る。上記のような、チタンで修飾された分散剤は、3000以下または2000以下(例えば、約1000)の数平均分子量を有する、ヒドロカルビル置換基を含み得る。
【0032】
潤滑剤中に存在するチタンの量は、代表的に、重量で1ppm〜1000ppm、あるいは10ppm〜500ppm、または10ppm〜150ppm、または20ppm〜500ppm、または20ppm〜300ppm、または30ppm〜100ppm、あるいは、50ppm〜500ppmであり得る。本発明において観察される、清浄性/耐汚損/酸化防止の利点は、化合物のアニオン性部分にかかわらず、比較的低濃度のチタン(例えば、重量で5ppm〜100ppm、または8ppm〜50ppm、または8ppm〜45ppm、または10ppm〜45ppm、または15ppm〜30ppm、または10ppm〜25ppmのチタン、あるいは重量で1ppm〜50ppm未満、または8ppm〜50ppm未満のTi)において得られ得ると考えられる。50ppmまたは70ppmまたは100ppm過剰の量は、なお有効であると考えられるが、過剰なレベルのチタンを供給する費用と引き換えに得られる利点が次第に低くなり得る。8ppmまたは10ppmよりはるかに低い量は、性能の特に有用な改善を提供しないかもしれず、そして1000ppmを超える量は、さらなる費用を正当化するほどに充分なさらなる利点を提供しないかもしれない。
【0033】
これらの限界は、調査される特定の系によって変動し得、そしてチタンと会合するアニオンまたは錯化剤によって、ある程度影響を受け得る。また、使用されるべき特定のチタン化合物の量は、チタンと会合するアニオン性基または錯化基の相対重量に依存する。例えば、チタンイソプロポキシドは、代表的に、16.8重量%のチタンを含有する形態で市販される。従って、20ppm〜100ppmの量のチタンが提供されるべきである場合、約119ppm〜約595ppm(すなわち、約0.01重量%〜約0.06重量%)のチタンイソプロポキシドが使用される、などである。
【0034】
同様に、様々な性能の利点が、様々な特定のチタン化合物(すなわち、化合物の異なるアニオン性部分または錯化部分を有する化合物)を使用することによって得られ得る。例えば、表面修飾されたTiO粒子は、摩擦特性および磨耗特性を付与し得る。同様に、チタンと塩形成および/またはキレート化したトリルトリアゾールオリゴマーは、耐磨耗特性を付与し得る。同じ様式で、比較的長い鎖のアニオン性部分、またはリンもしくは他の耐磨耗要素を含有するアニオン性部分を含むチタン化合物は、そのアニオンの耐磨耗特性により、耐磨耗性能を付与し得る。例としては、ネオデカン酸チタン;チタン2−エチルヘキソキシド;チタン(IV)2−プロパノラト、チタン(IV)トリス−イソオクタデカナト−O;チタン(IV)2,2(ビス−2−プロペノラトメチル)ブタノラト-(
titanium(IV)2,2(bis−2−prepenolatomethyl)-butanolato)、チタン(IV)トリス−ネオデカナト−O;チタン(IV)
2−プロパノラト、チタン(IV)トリス(ジオクチル)ホスファト−O;およびチタン(IV)2−プロパノラト、チタン(IV)トリス(ドデシル)ベンゼンスルファナト−Oが挙げられる。このような耐磨耗付与物質のいずれかが使用される場合、これらの物質は、このような化合物を含まない潤滑剤組成物の表面より大きい表面磨耗の低下を付与するために適切な量で使用され得、そして実際に付与するべきである。
【0035】
特定の実施形態において、チタン含有物質は、チタンアルコキシド、チタンで修飾された分散剤、芳香族カルボン酸(例えば、安息香酸またはアルキル置換安息香酸)のチタン塩、および硫黄含有酸のチタン塩(例えば、式R−S−R’−COHのものであり、この式において、Rは、ヒドロカルビル基であり、そしてR’は、ヒドロカルビレン基である)からなる群より選択され得る。
【0036】
チタン化合物は、任意の好都合な様式で、潤滑剤組成物に加えられ得る。これらの様式は、例えば、他の点では完成した潤滑剤に添加すること(トップ処理(top−treating))によるか、または濃縮物の形態のチタン化合物を、油もしくは他の適切な溶媒中に、必要に応じて、1種以上のさらなる成分(例えば、酸化防止剤、グリセロールモノオレエートなどの摩擦改質剤、スクシンイミド分散剤などの分散剤、またはオーバーベース化硫化フェネート洗浄剤などの洗浄剤)と一緒に、予め混合しておくことによる。このようなさらなる成分(代表的に、希釈油と一緒である)は、代表的に、添加剤パッケージ(時々、DI(洗浄剤−抑止剤)パッケージと称される)に含まれ得る。
【0037】
さらなる従来の成分が、本発明による潤滑剤を調製する際に使用され得る。これらの成分は、例えば、クランクケース潤滑剤において代表的に使用される添加剤である。クランクケース潤滑剤は、代表的に、本明細書中以下に記載される以下の成分のいずれかまたはすべてを含有し得る。1つのこのような添加剤は、耐磨耗剤である。
【0038】
耐磨耗剤の例としては、リンを含有する耐磨耗剤/極圧剤(例えば、金属のチオリン酸塩、リン酸エステルおよびその塩、リンを含有するカルボン酸、エステル、エーテル、およびアミド);ならびにホスファイトが挙げられる。リンの酸としては、リン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸、およびチオリン酸(ジチオリン酸を含む)、ならびにモノチオリン酸、チオホスフィン酸、およびチオホスフィン酸が挙げられる。リンを含有しない耐磨耗剤としては、ホウ酸化エステル、モリブデン含有化合物、および硫黄化オレフィンが挙げられる。
【0039】
リンの酸のエステルは、1種以上のリンの酸または無水物を、例えば、1個〜30個、または2個〜24個、または12個までの炭素原子を含むアルコール(種々の型のモノオールよびジオールおよびポリオールが挙げられる)と反応させることによって、調製され得る。このようなアルコール(市販のアルコール混合物を含む)は、周知である。これらのリンの酸のエステルの例としては、トリフェニルリン酸エステルおよびトリクレジルリン酸エステルが挙げられる。
【0040】
1つの実施形態において、リンの耐磨耗剤/極圧剤は、ジチオリン酸またはホスホロジチオ酸であり得る。ジチオリン酸は、式(RO)PSSHによって表され得、この式において、Rは、独立して、例えば、3個〜30個の炭素原子、または18個まで、または12まで、または8個までの炭素原子を含むヒドロカルビル基である。
【0041】
リンの酸のエステルの金属塩は、金属塩基とリンの酸のエステルとの反応によって、調製される。この金属塩基は、金属塩を形成し得る任意の金属化合物であり得る。金属塩基の例としては、金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属ホウ酸塩などが挙げられる。金属塩基の金属としては、IA族の金属、IIA族の金属、IB族VIIB族の金属、およびVIII族の金属(CAS版の元素の周期表)が挙げられる。これらの金属としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属および遷移金属が挙げられる。1つの実施形態において、この金属は、IIA族の金属(例えば、カルシウムまたはマグネシウム)、IIB族の金属(例えば、亜鉛)、またはVIIB族の金属(例えば、マンガン)である。1つの実施形態において、この金属は、マグネシウム、カルシウム、マンガンまたは亜鉛である。この金属はまた、チタンであり得るが、特定の実施形態において、この金属塩は、Ti塩以外である。
【0042】
1つの実施形態において、リンを含有する耐磨耗剤/極圧剤は、金属チオリン酸塩、または金属ジチオリン酸塩である。この金属チオリン酸塩は、当業者に公知の手段によって調製される。金属ジチオリン酸塩の例としては、ジチオリン酸イソプロピルメチルアミル亜鉛、ジチオリン酸イソプロピルイソオクチル亜鉛、ジチオリン酸ジ(シクロヘキシル)亜鉛、ジチオリン酸イソブチル2−エチルヘキシル亜鉛、ジチオリン酸イソプロピル2−エチルヘキシル亜鉛、ジチオリン酸イソブチルイソアミル亜鉛、ジチオリン酸イソプロピルn−ブチル亜鉛、ジチオリン酸ジ(ヘキシル)カルシウム、およびジチオリン酸ジ(ノニル)バリウムが挙げられる。
【0043】
1つの実施形態において、リン含有耐磨耗剤は、リン含有アミドである、リン含有アミドは、例えば、チオリン酸エステルまたはジチオリン酸エステルと、不飽和アミドとの反応によって、調製され得る。不飽和アミドの例としては、アクリルアミド、N,N−メチレンビス(アクリルアミド)、メタクリルアミド、クロトンアミドなどが挙げられる。リンの酸と不飽和アミドとの反応生成物は、連結化合物またはカップリング化合物(例えば、ホルムアルデヒドまたはパラホルムアルデヒド)とさらに反応させられ得る。リン含有アミドは、当該分野において公知であり、そして米国特許第4,670,169号、同第4,770,807号、および同第4,876,374.に開示されている。
【0044】
1つの実施形態において、リンの耐磨耗剤/極圧剤は、少なくとも1つのホスファイトを含む、リン含有カルボン酸エステルである。このホスファイトは、ジヒドロカルビルホスファイトまたはトリヒドロカルビルホスファイトであり得る。1つの実施形態において、各ヒドロカルビル基は、独立して、1個〜24個の炭素原子、または1個〜18個、または2個〜8個の炭素原子を含む。ホスファイトおよびそれらの調製は、公知であり、そして多くのホスファイトが、市販されている。特に有用なホスファイトは、亜リン酸水素ジブチル、亜リン酸水素ジオレイル、亜リン酸水素ジ(C14〜18)、および亜リン酸トリフェニルである。
【0045】
他のリン含有耐磨耗剤としては、トリフェニルチオホスフェート、およびジチオリン酸エステル(例えば、混合されたO,O−(2−メチルプロピル,アミル)−S−カルボメトキシ−エチルホスホロジチオエートおよびO,O−ジイソオクチル−S−カルボメトキシエチル−ホスホロジチオエート)が挙げられる。
【0046】
このようなリン含有耐磨耗剤は、米国特許出願第2003/0092585号により詳細に記載されている。
【0047】
リン含有耐磨耗剤の適切な量は、選択される特定の試薬およびその有効性に、ある程度依存する。しかし、特定の実施形態において、このリン含有耐磨耗剤は、組成物に0.01重量%〜0.2重量%のリンをもたらす量、または0.015重量%〜0.15重量%、または0.02重量%〜0.1重量%、または0.025重量%〜0.08重量%のリンをもたらす量で存在し得る。例えば、亜リン酸水素ジブチル((CO)P(O)Hであり、これは、約16重量%のPを含む)について、適切な量は、0.062%〜0.56%を含み得る。代表的なジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZDP)(これは、(油がない状態に基づいて計算して)11%のPを含み得る)について、適切な量は、0.09%〜0.82%を含み得る。本発明の利点は、比較的低い量のZDP、ならびに亜鉛、硫黄、およびリンの他の供給源(例えば、1200ppm未満、1000ppm未満、500ppm未満、100ppm未満、またはさらに50ppm未満のリン)を含む処方物において、より明白に実現され得る場合があると考えられる。特定の実施形態において、リンの量は、50ppm〜500ppm、または50ppm〜600ppmであり得る。
【0048】
他の耐磨耗剤としては、ジチオカルバメート化合物が挙げられ得る。1つの実施形態において、ジチオカルバメートを含有する組成物は、ジアミルアミンまたはジブチルアミンと、二硫化炭素との反応から誘導される。この反応は、ジチオカルバミン酸または塩を形成し、これが最終的に、アクリルアミドと反応する。この試薬の量、または耐磨耗剤全体の量は、リン含有試薬について上に記載されたものと類似であり得、例えば、特定の実施形態において、0.05重量%〜1重量%であり得る。
【0049】
分散剤は、潤滑剤の分野において周知であり、そして主として、無灰型分散剤およびポリマー分散剤として公知であるものが挙げられる。無灰型分散剤は、比較的高い分子量の炭化水素鎖に結合した極性基によって特徴付けられる。代表的な無灰分散剤としては、窒素含有分散剤(例えば、N置換された長鎖アルケニルスクシンイミド)が挙げられ、これは、代表的に
【0050】
【化1】

を含む種々の化学構造を有する。この化学構造において、各Rは、独立して、アルキル基(頻繁には、500〜5000の分子量を有するポリイソブチル基)であり、そしてRは、アルケニル基(通常、エチレン(C)基)である。このような分子は、通常、アルケニルアシル化剤とポリアミンとの反応から誘導され、そしてこれらの2つの部分の間の種々の連結は、上に示される単純なイミド構造以外にも可能であり、これらの連結としては、種々のアミドおよび第四級アンモニウム塩が挙げられる。スクシンイミド分散剤は、米国特許第4,234,435号および同第3,172,892号に、より充分に記載されている。
【0051】
別のクラスの無灰分散剤は、高分子量のエステルである。これらの物質は、これらがヒドロカルビルアシル化剤と高脂肪族アルコール(例えば、グリセロール、ペンタエリトリトール、またはソルビトール)との反応によって調製されるようであり得ることを除いて、上記スクシンイミドと類似である。このような物質は、米国特許第3,381,022号により詳細に記載されている。
【0052】
別のクラスの無灰分散剤は、Mannich塩基である。これらの塩基は、高分子量のアルカリ置換されたフェノールと,アルキレンポリアミンと,アルデヒド(例えば,ホルムアルデヒド)との縮合によって形成される物質である。このような物質は、一般構造
【0053】
【化2】

(種々の異性体などを含む)を有し得、そして米国特許第3,634,515号により詳細に記載されている。
【0054】
他の分散剤としては、ポリマー分散剤添加剤が挙げられ、これらは一般に、ポリマーに分散特徴を付与する極性官能性を含む、炭化水素ベースのポリマーである。
【0055】
分散剤はまた、種々の試薬のうちのいずれかとの反応によって、後処理され得る。とりわけ、尿素、チオ尿素、ジメルカプトチアジアゾール、二硫化炭素、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、炭化水素置換された無水コハク酸、ニトリル、エポキシド、ホウ素化合物、およびリン化合物である。このような処理を詳述する参考文献は、米国特許第4,654,403号に列挙されている。
【0056】
本発明の組成物中の分散剤の量は、代表的に、1重量%〜10重量%、または1.5重量%〜9.0重量%、または2.0重量%〜8.0重量%であり得る(すべて、油がない状態に基づいて表現される)。
【0057】
別の成分は、酸化防止剤である。特定の酸化防止剤は、チタンを含有し得るが、特定の実施形態において、存在し得る酸化防止剤は、チタン含有酸化防止剤以外のものである。すなわち、Ti含有酸化防止剤は、潤滑剤中に存在しても存在しなくてもよいが、特定の実施形態において、チタンを含有しない、異なる酸化防止剤またはさらなる酸化防止剤が存在し得る。
【0058】
酸化防止剤は、フェノール性酸化防止剤を包含し、これは、一般式
【0059】
【化3】

のものであり得る。この一般式において、Rは、1個〜24個、または4個〜18個の炭素原子を含むアルキル基であり、そしてaは、1〜5、または1〜3、または2の整数である。このフェノールは、2個〜3個のt−ブチル基を含むブチル置換されたフェノールであり得、例えば、
【0060】
【化4】

であり得る。
【0061】
パラ位もまた、ヒドロカルビル基、または2つの芳香族環を架橋する基によって、占有され得る。特定の実施形態において、このパラ位は、エーテル含有基によって占有され、例えば、式
【0062】
【化5】

の酸化防止剤である。この式において、Rは、ヒドロカルビル基(例えば、1個〜18個、または2個〜12個、または2個〜8個、または2個〜6個の炭素原子を含むアルキル基)であり;そしてt−アルキルは、t−ブチルであり得る。このような酸化防止剤は、米国特許第6,559,105号により詳細に記載されている。
【0063】
酸化防止剤としてはまた、式
【0064】
【化6】

のもののような芳香族アミンが挙げられる。この式において、Rは、フェニル基、ナフチル基、またはRにより置換されたフェニル基などの芳香族基であり得、そしてRおよびRは、独立して、水素、あるいは1個〜24個、または4個〜20個、または6個〜12個の炭素原子を含むアルキル基であり得る。1つの実施形態において、芳香族アミン酸化防止剤は、式
【0065】
【化7】

のノニル化ジフェニルアミン、またはジ−ノニル化アミンとモノ−ノニル化アミンとの混合物などの、アルキル化ジフェニルアミンを含有し得る。
【0066】
酸化防止剤としてはまた,硫黄化オレフィン(例えば,モノスルフィドもしくはジスルフィド,またはこれらの混合物)が挙げられる。これらの物質は、一般に、1個〜10個(例えば、1個〜4個、または1個もしくは2個)の硫黄原子を有するスルフィド結合を有する。硫黄化されて本発明の硫黄化有機化合物を形成し得る物質としては、油、脂肪酸およびエステル、オレフィンおよびこれらのオレフィンから作製されるポリオレフィン、テルペン、またはDiels−Alder付加体が挙げられる。いくつかのこのような硫黄化物質の調製の方法の詳細は、米国特許第3,471,404号および同第4,191,659号に見出され得る。
【0067】
モリブデン化合物もまた、酸化防止剤として働き得、そしてこれらの物質はまた、種々の他の機能(例えば、耐磨耗剤)で働き得る。潤滑油組成物における、モリブデンおよび硫黄を含有する組成物の、耐磨耗剤および酸化防止剤としての使用は、公知である。例えば、米国特許第4,285,822号は、(1)極性溶媒と、酸性モリブデン化合物と、油溶性塩基性窒素化合物とを混合して、モリブデン含有錯体を形成すること、ならびに(2)この錯体を二硫化炭素と接触させて、モリブデンおよび硫黄を含有する組成物を形成することによって調製された、モリブデンおよび硫黄を含有する組成物を含有する、潤滑油組成物を開示する。モリブデンベースの酸化防止剤は、存在しても存在しなくてもよい。特定の実施形態において、この潤滑剤処方物は、モリブデンをほとんどまたはまったく含まず、例えば、重量で500ppm未満、または300ppm未満、または150ppm未満、または100ppm未満、または50ppm未満、または20ppm未満、または10ppm未満、または5ppm未満、または1ppm未満のMoである。
【0068】
酸化防止剤の代表的な量は、もちろん、特定の酸化防止剤およびその個々の有効性に依存するが、例示的な総量は、0.01重量%〜5重量%、または0.15重量%〜4.5重量%、または0.2重量%〜4重量%であり得る。さらに、1種以上の酸化防止剤が存在し得、そしてこれらの特定の組み合わせは、その組み合わせられた全体的な効果が相乗的であり得る。
【0069】
洗浄剤は、代表的に、オーバーベース化物質である。オーバーベース化物質(他にオーバーベース化塩または長塩基化塩と称される)は、一般に、単相の均質なニュートン系であり、金属と、この金属と反応する特定の酸性有機化合物との化学量論に従う中和のために存在するよりも過剰な、金属含有量により特徴付けられる。オーバーベース化物質は、酸性物質(代表的に、無機酸または低級カルボン酸であり、好ましくは、二酸化炭素)を、酸性有機化合物、この酸性有機物質のための反応媒体(少なくとも1種の不活性な有機溶媒(例えば、鉱油、ナフサ、トルエン、キシレン)を含有する)、化学量論的に過剰な金属塩基(例えば、他の金属のうちでもとりわけ、Ca化合物、Mg化合物、Ba化合物、Na化合物、またはK化合物)、および促進剤(例えば、フェノールまたはアルコール)を含有する混合物と反応させることによって、調製される。この酸性有機物質は、通常、油中へのある程度の溶解度を提供するために充分な数の炭素原子を有する。過剰な金属の量は、通常、金属比で表される。用語「金属比」とは、金属の全当量対酸性有機化合物の当量の比である。天然の金属塩は、金属比1を有する。通常の金属塩において存在するよりも4.5倍多くの金属を有する塩は、3.5当量の金属過剰、すなわち4.5の比を有する。
【0070】
このようなオーバーベース化物質は、当業者に周知である。スルホン酸の塩基性塩(例えば、長鎖アルキルベンゼンスルホン酸、カルボン酸、フェノール(オーバーベース化フェノールスルフィド(硫黄で架橋されたフェノール)を含む)、ホスホン酸、およびこれらのうちのいずれか2つ以上の混合物)を作製するための技術を記載する特許としては、米国特許第2,501,731号;同第2,616,905号;同第2,616,911号;同第2,616,925号;同第2,777,874号;同第3,256,186号;同第3,384,585号;同第3,365,396号;同第3,320,162号;同第3,318,809号;同第3,488,284号;および同第3,629,109号が挙げられる。
【0071】
他の酸性基材またはより特別な酸性基材に基づく洗浄剤としては、サリチレート、サリキサレート、およびサリゲニンが挙げられる。代表的なサリチレート洗浄剤は、油溶性を促進するために充分に長い炭化水素置換基を有する、金属オーバーベース化サリチレートである。ヒドロカルビル置換されたサリチル酸は、サリチル酸のアルカリ金属塩と二酸化炭素との反応による、対応するフェノールの反応によって調製され得る。炭化水素置換基は、カルボキシレート洗浄剤またはフェネート洗浄剤について記載されたとおりであり得る。オーバーベース化サリチル酸洗浄剤およびこれらの調製は、米国特許第3,372,116号に、より詳細に記載されている。
【0072】
サリキサレート誘導体の洗浄剤およびサリゲニン誘導体の洗浄剤は、米国特許出願公開第2004/0102335号に、より詳細に記載されている。サリゲニン洗浄剤は、式
【0073】
【化8】

によって表され得、この式において、Xは、−CHOまたは−CHOHを含み、Yは、−CH−または−CHOCH−を含み、そして代表的な実施形態において、このような−CHO基は、少なくとも10モル%のX基およびY基を含み;そしてMは、金属イオンの価数であり、代表的には、一価または二価である。各nは、独立して、0または1である。R1は、代表的に1個〜60個の炭素原子を含むヒドロカルビル基であり、mは、0〜10であり、そしてm>0である場合、X基のうちの1つは、Hであり得;各pは、独立して、0、1、2または3であり、好ましくは、1であり;そして全てのR基における炭素原子の総数は、代表的に、少なくとも7である。nが0である場合、Mは、Hにより置き換えられて、中和されていないフェノール性−OH基を形成する。好ましい金属イオンMは、一価の金属イオン(例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム)、ならびに二価のイオン(例えば、カルシウムまたはマグネシウム)である。サリゲニン誘導体およびこれらの調製方法は、米国特許第6,310,009号に、より詳細に記載されている。
【0074】
サリキサレート洗浄剤は、式(I)または式(II)
【0075】
【化9】

のうちの少なくとも1つのユニットを含む、実質的に線状の化合物によって代表され得、この化合物の各末端は、式(III)または式(IV)
【0076】
【化10】

の末端基を有し、このような基は、二価の架橋基Aによって連結され、これらの架橋基は、各連結について同じであっても異なっていてもよい。上記式(I)〜(IV)において、Rは、水素またはヒドロカルビル基であり;Rは、ヒドロキシル基またはヒドロカルビル基であり、jは、0、1、または2であり;Rは、水素、ヒドロカルビル基、またはヘテロ置換ヒドロカルビル基であり;そしていずれかのRは、ヒドロキシルであり、そしてRおよびRは、独立して、水素、ヒドロカルビル基、もしくはヘテロ置換ヒドロカルビル基のいずれかであるか、またはRとRとの両方がヒドロカルビルであり、そしてRが、水素、ヒドロカルビル基、もしくはヘテロ置換ヒドロカルビル基であり;ただし、R、R、RおよびRのうちの少なくとも1つは、少なくとも8個の炭素原子を含むヒドロカルビルであり;そしてこれらの分子は、平均して、単位(I)または単位(III)のうちの少なくとも1つ、および単位(II)または単位(IV)のうちの少なくとも1つを含み、そして組成物中の単位(I)と単位(III)との総数対単位(II)と単位(IV)との総数の比は、0.1:1〜2:1である。二価の架橋基「A」(これらは、各場合において同じであっても異なっていてもよい)は、−CH−(メチレン架橋)および−CHOCH−(エーテル架橋)を含み、これらのいずれかは、ホルムアルデヒドまたはホルムアルデヒド等価物(例えば、パラホルム、ホルマリン)から誘導され得る。サリキサレート誘導体およびそれらの調製方法は、米国特許第6,200,936号および国際公開第01/56968号に、より詳細に記載されている。サリキサレート誘導体は、大環状であるよりもむしろ、主として線状の構造を有するが、両方の構造が、用語「サリキサレート」に包含されることが意図されると考えられる。
【0077】
洗浄剤の量は、代表的に、油なしの状態に基づいて、0.1重量%〜5.0重量%であり得る。多くの洗浄剤は、30%〜50%の希釈油を含有するので、このことは、例えば、市販の油溶性洗浄剤の約0.2重量%〜12重量%に対応する。他の実施形態において、洗浄剤の量は、(油なしで)0.2重量%〜4.0重量%、または0.3重量%〜3.0重量%であり得る。
【0078】
洗浄剤は、上記金属のうちのいずれか、および一般的に、他の金属に基づき得る。従って、チタンベースの洗浄剤もまた可能である。従って、特定の洗浄剤は、チタンを含有し得るが、特定の実施形態において、存在し得る洗浄剤は、チタン含有洗浄剤以外のものである。すなわち、Ti含有洗浄剤は、潤滑剤中に存在しても存在しなくてもよいが,特定の実施形態において,チタンを含有しない異なる洗浄剤またはさらなる洗浄剤が,存在し得る。もちろん、潤滑剤中の金属イオンは,1つの洗浄剤から別の洗浄剤に移動し得、その結果、チタン洗浄剤以外の洗浄剤が最初に添加される場合、ある期間の後に、これらの分子のうちのいくらかは、Tiイオンと会合し得ることが認識される。Ti含有洗浄剤以外の洗浄剤の存在は、このような洗浄剤中の、このような付随的な移動したTiイオンの存在によって、無効にされないと解釈されるべきである。
【0079】
粘度改質剤(時々、粘度指数改質剤または粘度改変剤と称される)が、本発明の組成物に含有され得る。粘度改質剤は、通常、ポリマーであり、ポリイソブテン、ポリメタクリル酸エステル、ジエンポリマー、ポリアルキルスチレン、エステル化スチレン−無水マレイン酸コポリマー、アルケニルアレーン−共役ジエンコポリマーおよびポリオレフィンが挙げられる。本発明の粘度改質剤以外の、多官能性粘度改質剤(分散特性および/または酸化防止特性もまた有する)が公知であり、そして本発明の製品に加えて必要に応じて使用され得る。
【0080】
本発明の潤滑油において必要に応じて使用され得る他の添加剤としては、流動点降下剤、極圧剤、耐磨耗剤、色安定化剤および消泡剤が挙げられる。
【0081】
本発明の組成物中に含有され得る極圧剤および腐食防止剤および酸化防止剤は、塩素化された脂肪族炭化水素、有機スルフィドおよび有機ポリスルフィド、リンのエステル(炭化水素ホスファイトおよびトリ炭化水素ホスファイトが挙げられる)、ならびにモリブデン化合物によって例示される。
【0082】
本明細書中に記載される種々の添加剤は、潤滑剤に直接添加され得る。しかし、1つの実施形態において、これらの添加剤は、濃縮物を形成する量の、実質的に不活性な通常は液体の有機希釈剤(例えば、鉱油または合成油(例えば、ポリαオレフィン))で希釈されて、添加剤濃縮物を形成し得る。これらの濃縮物は、通常、本発明の組成物の0.1重量%〜80重量%を構成し、そしてさらに、当該分野において公知であるかまたは本明細書中で上に記載された、1種以上の他の添加剤を含有し得る。15%、20%、30%、もしくは50%、またはこれより高濃度などの添加剤が、使用され得る。「濃縮物を形成する量」とは、一般に、完全に処方された潤滑剤中に存在する量より少ない(例えば、85%未満、または80%未満、または70%未満、または60%未満)、油または他の溶媒の量を意味する。添加剤の濃縮物は、所望の成分を、しばしば高温(通常、150℃まで、または130℃まで、または115℃まで)で一緒に混合することによって、調製され得る。
【0083】
従って、本発明の潤滑組成物は、機械デバイスの表面を潤滑するために使用される場合、機関の性能、機関の磨耗、機関の清浄性、デポジット制御、濾過性、および酸化という特性のうちの1つ以上の劣化に対する保護を付与する。機械デバイスは、例えば、エンジンドライブトレインであり、例えば、乗物のドライブトレインの可動部品であり、内燃機関の構成要素の内部表面が挙げられる。従って、このような表面は、潤滑組成物のコーティングを含むといわれ得る。
【0084】
潤滑されるべき内燃機関としては、ガソリンを燃料とする機関、火花点火機関、ディーゼルエンジン、圧縮着火機関、2行程サイクルエンジン、4行程サイクルエンジン、油だめにより潤滑される機関、燃料により潤滑される機関、天然ガスを燃料とする機関、海洋用ディーゼルエンジン、および定置機関が挙げられ得る。このような機関が使用され得る乗物としては、自動車、トラック、オフロード仕様の乗物、海洋用の乗物、オートバイ、全地勢走行車、およびスノーモービルが挙げられる。1つの実施形態において、潤滑される機関は、ヘビーデューティーディーゼルエンジンであり、この機関としては、油だめにより潤滑される機関、2行程サイクルエンジンまたは4行程サイクルエンジンが挙げられ得、これらは、当業者に周知である。このような機関は、3Lより大きいか、5Lより大きいか、または7Lより大きい、エンジン排気量を有し得る。
【0085】
本明細書中で使用される場合、用語「ヒドロカルビル置換基」または「ヒドロカルビル基」は、その通常の意味で使用され、これらの用語は、当業者に周知である。具体的には、これらの用語は、その分子の残りの部分に直接結合した炭素原子を有し、そして主として炭化水素の特徴を有する基をいう。ヒドロカルビル基の例としては、以下が挙げられる:
炭化水素置換基(すなわち、脂肪族置換基(例えば、アルキルまたはアルケニル)、脂環式置換基(例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル)、ならびに芳香族置換された芳香族置換基、脂肪族置換された芳香族置換基、および脂環式置換された芳香族置換基、ならびに環が分子の別の部分を介して結合している(例えば、2つの置換基が一緒になって1つの環を形成する)環式置換基);
置換炭化水素置換基(すなわち、本明細書の文脈において、置換基の主として炭化水素の性質を変化させない非炭化水素基(例えば、ハロ(特に、クロロおよびフルオロ)、ヒドロキシ、アルコキシ、メルカプト、アルキルメルカプト、ニトロ、ニトロソ、ならびにスルホキシ)を含む置換基);
ヘテロ置換基(すなわち、本発明の文脈において、主として炭化水素の特徴を有するが、環または鎖中に炭素以外のものを含む(その他は炭素原子からなる)置換基)。ヘテロ原子としては、硫黄、酸素、窒素が挙げられ、そしてピリジル、フリル、チエニルおよびイミダゾリルなどの置換基を包含する。一般に、2つ以下、好ましくは1つ以下の、非炭化水素置換基が、ヒドロカルビル基中の10個ごとの炭素原子について存在する。代表的に、ヒドロカルビル基中には、非炭化水素置換基は存在しない。
【0086】
上記物質のうちのいくつかは、最終処方物中で相互作用し得、その結果、最終処方物の成分は、最初に添加された成分と異なり得ることが,公知である。例えば,(例えば洗浄剤の)金属イオンは、他の分子の他の酸性部位またはアニオン性部位に移動し得る。これによって形成される生成物(本発明の組成物をその意図された用途で使用する際に形成される生成物を含む)は、容易な説明をされにくいかもしれない。それにもかかわらず、全てのこのような改変および反応生成物は、本発明の範囲内に含まれる。本発明は、上に記載された成分を混合することによって調製される組成物を包含する。
【実施例】
【0087】
(処方物A) 潤滑剤処方物を、チタンの添加なしおよびありで試験するために調製する。この処方物は、以下の成分を含有する:
100重量部のAPI Group 2ベースストック(130Nおよび260N);
15部の市販のスチレン−イソプレン粘度改変剤(市販の物質中に存在する希釈油成分を含有する);
0.2部の無水マレイン酸/スチレンコポリマー流動点降下剤(約54%の希釈油を含有する)
7.2部のスクシンイミド分散剤(50%の希釈油を含有する)
3.04部の多重オーバーベース化硫酸カルシウム、フェネート、およびサリキサレート洗浄剤(各々、27%〜51%の希釈油を含有する)
1.51部の酸化防止剤(硫黄化オレフィン−硫黄化Diels−Alder付加体)、ヒンダードフェノールエステル、およびジアルキルアリールアミン
0.98部のジ(第二級)アルキルジチオリン酸亜鉛(9%の希釈油を含有する)
0.01部の市販の消泡剤
1.05部のさらなる希釈油。
【0088】
上記処方物を、チタンイソプロポキシドでトップ処理して、以下の表に示される量のTi濃度を得る。これらの処方物を、Komatsuホットチューブ試験(280℃)に供する。この試験は、アルミニウムヒータブロックに挿入されてこのブロックにより加熱される、ガラスチューブからなる。サンプルを、このガラスチューブに通して、16時間、0.31cm/時間の流量で、10cm/分の空気流と一緒にシリンジポンプで引き込む。この試験の終了時に、これらのチューブをすすぎ、そして目視により0〜10のスケールで評点を付ける。0は、黒色のチューブであり、10は、清浄なチューブである。これらの結果を、以下の表に提供する:
【0089】
【表2】

本発明の処方物をまた、「KES濾過試験」に供する。この試験において、99gのサンプル(この例において、処方物Aおよび示される量のチタン(チタンイソプロポキシドとして供給される))を、1gの水と一緒に12時間〜24時間、室温で振盪する。得られた混合物を、5μmの細孔を有するフィルタに通す。結果を、サンプルがこのフィルタを通過するために必要とされる分数として表す。
【0090】
【表3】

(処方物B) 潤滑剤処方物を、チタンの添加ありまたはなしで試験するために調製する。この処方物は、以下の成分を含有する:
93重量部のAPI Group 2ベースストック(SAE−30);
2.8部のスクシンイミド分散剤(49%の希釈油を含有する)
0.7部のジ(第二級)アルキルジチオリン酸亜鉛(9%の希釈油を含有する)
3.1部の多重オーバーベース化スルホン酸カルシウムおよびフェネート分散剤(各々、27%〜52%の希釈油を含有する)
0.2部の市販のフェノール系酸化防止剤
0.008部の市販の消泡剤
0.1部のさらなる希釈油。
【0091】
処方物B、および以下の表に示されるような量のチタンイソプロポキシド(記載されるもの以外は最終ブレンドに添加される)を、分散剤パネルコークス器試験に供する。この試験において、試験処方物のサンプルを、加熱した鋼パネル(330℃)に5秒間跳ねかけ、次いで、このパネルを55秒間焼成する。このサイクルを、1分間の間隔で、3時間の全試験時間にわたって繰り返す。この試験の終了時に、パネル上のデポジットの量をmgで決定する。
【0092】
以下の表には、上記のようなKomatsuホットチューブ試験からのこれらの標本についての結果もまた報告される。
【0093】
【表4】

a.Tiイソプロポキシドをまず酸化防止剤に添加し、次いでブレンドする。
b.Tiイソプロポキシドをまず他の成分の濃縮物に添加し、次いでブレンドする。
【0094】
これらの結果は、分散剤パネルコークス期試験において、8ppm未満のTiにおいてさえも、そしておそらく、より低いTiにおいてさえも、かなりの改善を示す。これらはまた、KHT試験結果において、かなりの改善を示す(この処方物については、約35ppmより多いTiで開始する)(KHT試験の変動性は、約±1単位であるようである)。
【0095】
(処方物C) 定置ガスエンジン潤滑剤処方物を、チタンの添加ありまたはなしで試験するために調製する。この処方物は、以下の成分を含有する:
100重量部のAPI Group 2ベースストック(600N);
4.24部のスクシンイミド分散剤(40%の希釈油を含有する)
0.30部のジ(第二級)アルキルジチオリン酸亜鉛(9%の希釈油を含有する)
2.48部のオーバーベース化スルホン酸カルシウムおよびフェネート分散剤(各々、27%〜47%の希釈油を含有する)
2.06部の市販の酸化防止剤
0.007部の市販の消泡剤
0.29部のさらなる希釈油。
【0096】
処方物Cおよび以下の表に示されるような量のチタンイソプロポキシドを、Cat 1M−PC試験(ASTM手順D6618)に供する。この試験は、エンジン油を、4行程サイクルディーゼルエンジンにおける、リングの固着、リングおよびシリンダの磨耗、ならびにピストンデポジットの蓄積について評価する。結果を、補正デメリット評価結果合計点(weighted total demerits(WTD))および第一リング溝カーボン詰まり(top groove fill(TGF))として報告する。Komatsuホットチューブ試験のついての結果もまた、報告する。
【0097】
【表5】

−は、測定がなされなかったことを示す。
【0098】
これらの結果は、Cat 1M−PC試験とKHT試験との両方において、優れた性能を示す。
【0099】
上記文献の各々は、本明細書中に参考として援用される。実施例中を除いて、または層ではないことが明白に示される場合を除いて、物質の量、反応条件、分子量、炭素原子の数などを特定する本明細書中の全ての数量は、単語「約」によって修飾されていると理解されるべきである。他に示されない限り、本明細書中で言及される化学物質または組成物は、異性体、副生成物、誘導体、および市販の等級に存在すると通常理解されるような他の物質を含有し得る、市販の等級の物質であると解釈されるべきである。しかし、各化学成分の量は、そうではないことが示されない限り、市販の物質中に慣習的に存在し得るあらゆる溶媒または希釈油を除いて提供される。本明細書中に記載される量、範囲および比の上限および下限は、独立して組み合わせられ得ることが理解されるべきである。同様に、本発明の各要素の範囲および量は、他の要素のいずれかについての範囲または量と一緒に使用され得る。本明細書中で使用される場合、表現「〜から本質的になる」は、考慮中の組成物の基本的滑新規な特徴に重大な影響を与えない物質の含有を許容する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の発明。

【公開番号】特開2013−57082(P2013−57082A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−278023(P2012−278023)
【出願日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【分割の表示】特願2008−504225(P2008−504225)の分割
【原出願日】平成18年3月27日(2006.3.27)
【出願人】(591131338)ザ ルブリゾル コーポレイション (203)
【氏名又は名称原語表記】THE LUBRIZOL CORPORATION
【住所又は居所原語表記】29400 Lakeland Boulevard, Wickliffe, Ohio 44092, United States of America
【Fターム(参考)】