説明

潤滑剤供給装置、クリーニング装置、プロセスカートリッジ、転写装置、及び、画像形成装置

【課題】比較的簡易な構成で、像担持体への潤滑剤の供給が経時においても確実に安定的におこなわれる、潤滑剤供給装置、クリーニング装置、プロセスカートリッジ、転写装置、及び、画像形成装置を提供する。
【解決手段】回転部材16aに対する固形潤滑剤16bの摺接位置が経時において回転部材16aの周方向に沿って上方に変位するように、付勢部材16cによって固形潤滑剤16bが回転部材16aに向けて付勢された状態のまま、移動手段16fによって固形潤滑剤16bを回転移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ、又は、それらの複合機等の電子写真方式を用いた画像形成装置と、そこに設置される潤滑剤供給装置、クリーニング装置、プロセスカートリッジ、転写装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、複写機、プリンタ等の画像形成装置において、感光体ドラム、感光体ベルト、中間転写ベルト、中間転写ドラム等の像担持体上に付着する未転写トナー等の付着物をクリーニング装置で確実に清掃するとともに、像担持体やクリーニングブレード等の磨耗を低減するために、像担持体上に潤滑剤を供給する潤滑剤供給装置を用いる技術が知られている(例えば、特許文献1等参照。)。
【0003】
詳しくは、転写工程後の感光体ドラム(像担持体)上に残留する未転写トナーは、感光体ドラムに当接するクリーニングブレード(クリーニング装置)によってすべて除去されるべきものである。しかし、クリーニングブレードが感光体ドラムとの当接によって経時劣化(磨耗)した場合には、未転写トナーが磨耗したクリーニングブレードと感光体ドラムとの隙間をすり抜けてクリーニング不良が生じることがあった。
また、クリーニングブレードに劣化が生じていなくても、小粒径トナーや球形トナーを用いた場合には、そのトナーがクリーニングブレードと感光体ドラムとの僅かな隙間に入り込んでやがてその隙間をすり抜けてクリーニング不良が生じることがあった。
さらに、トナーやトナー中に含まれる外添剤や紙粉等の付着物がクリーニングブレードと感光体ドラムとの隙間をすり抜けると、それが感光体ドラム上に膜状に固着してフィルミングが生じることもあった。
【0004】
このような問題に対して、感光体ドラム上に潤滑剤を塗布することで、感光体ドラム上の摩擦係数が低下してクリーニングブレードや感光体ドラムの劣化が低減されるとともに、感光体ドラムに付着する未転写トナー等の付着物の離脱性が向上されるために、経時におけるクリーニング不良やフィルミングの発生を抑止することができる。
【0005】
具体的に、特許文献1等において、潤滑剤塗布装置(潤滑剤供給装置)は、感光体ドラム(像担持体)に摺接するブラシローラ(ブラシ状回転部材)、ブラシローラに当接する固形潤滑剤、固形潤滑剤をブラシローラに向けて付勢する加圧スプリング(付勢部材)、等で構成される。そして、所定方向に回転するブラシローラによって固形潤滑剤から潤滑剤が徐々に削り取られて、ブラシローラによって削り取られた潤滑剤が像担持体の表面に塗布(供給)される。
【0006】
一方、特許文献1等には、ブラシローラによる固形潤滑剤の削れ速度を経時的に適切な範囲内に維持することを目的として、固形潤滑剤を自重とスプリング力とによってブラシローラへ押圧する第1押圧状態から、スプリング力を用いずに自重によって固形潤滑剤をブラシローラへ押圧する第2押圧状態へ切り替える技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の潤滑剤供給装置は、経時において固形潤滑剤の消耗にともない固形潤滑剤が小さくなってしまうと、固形潤滑剤をブラシローラ(ブラシ状回転部材)に向けて付勢するスプリング(付勢部材)の使用長さが長くなって、スプリングの付勢力が小さくなってしまっていた。そのため、経時において、ブラシローラへの固形潤滑剤の圧接力の低下にともない、ブラシローラによる固形潤滑剤の削り量が減少して、像担持体への潤滑剤の供給量が低下してしまっていた。
【0008】
このような不具合を解消するために、固形潤滑剤を付勢するスプリングの使用長さ(付勢力)が経時においても一定になるように、スプリングの他端側を支持する部材を経時において固形潤滑剤の側に移動させる方策が考えられる。しかし、その場合、スプリングを支持する部材を移動させる機構や制御が複雑になってしまうため、装置が大型化・高コスト化してしまう可能性が高い。
【0009】
また、このような問題は、感光体ドラムや感光体ベルトの表面に潤滑剤を供給する潤滑剤供給装置に限定されることなく、中間転写ベルト、中間転写ドラム等の中間転写体の表面に潤滑剤を供給する潤滑剤供給装置においても、共通するものである。
【0010】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、比較的簡易な構成で、像担持体への潤滑剤の供給が経時においても確実に安定的におこなわれる、潤滑剤供給装置、クリーニング装置、プロセスカートリッジ、転写装置、及び、画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明の請求項1記載の発明にかかる潤滑剤供給装置は、トナー像が担持される像担持体の表面に潤滑剤を供給する潤滑剤供給装置であって、前記像担持体に摺接する回転部材と、前記回転部材に摺接する固形潤滑剤と、前記固形潤滑剤を前記回転部材に向けて付勢する付勢部材と、を備え、前記回転部材に対する前記固形潤滑剤の摺接位置が経時において前記回転部材の周方向に沿って上方に変位するように、前記付勢部材によって前記固形潤滑剤が前記回転部材に向けて付勢された状態のまま前記固形潤滑剤を回転移動させる移動手段をさらに備えたものである。
【0012】
また、請求項2記載の発明にかかる潤滑剤供給装置は、前記請求項1に記載の発明において、前記移動手段は、前記固形潤滑剤を前記付勢部材とともに前記回転部材の回転軸を中心として回転させるものである。
【0013】
また、請求項3記載の発明にかかる潤滑剤供給装置は、前記請求項2に記載の発明において、前記固形潤滑剤と前記付勢部材とを保持するホルダを備え、前記移動手段は、前記ホルダを押動することで前記固形潤滑剤及び前記付勢部材を前記回転軸を中心として回転させるものである。
【0014】
また、請求項4記載の発明にかかる潤滑剤供給装置は、前記請求項3に記載の発明において、前記移動手段を、前記固形潤滑剤の重量の変化に応じて前記摺接位置が変位するように前記ホルダを押動する弾性部材としたものである。
【0015】
また、請求項5記載の発明にかかる潤滑剤供給装置は、前記請求項1〜請求項4のいずれかに記載の発明において、前記固形潤滑剤は、ステアリン酸亜鉛を含有するものである。
【0016】
また、請求項6記載の発明にかかるクリーニング装置は、請求項1〜請求項5のいずれかに記載の潤滑剤供給装置と、前記像担持体に当接して前記像担持体上をクリーニングするとともに、前記潤滑剤供給装置によって前記像担持体に供給された潤滑剤を薄層化するクリーニングブレードと、を備えたものである。
【0017】
また、請求項7記載の発明にかかるプロセスカートリッジは、画像形成装置本体に対して着脱自在に設置されるプロセスカートリッジであって、請求項1〜請求項5のいずれかに記載の潤滑剤供給装置と、前記像担持体と、を備えたものである。
【0018】
また、請求項8記載の発明にかかる中間転写装置は、複数色のトナー像が重ねて転写される中間転写体を具備した中間転写装置であって、前記像担持体は、前記中間転写体であって、請求項1〜請求項5のいずれかに記載の潤滑剤供給装置を備えたものである。
【0019】
また、この発明の請求項9記載の発明にかかる画像形成装置は、請求項1〜請求項5のいずれかに記載の潤滑剤供給装置と、前記像担持体と、を備えたものである。
【0020】
なお、本願において、「プロセスカートリッジ」とは、像担持体を帯電する帯電部と、像担持体上に形成された潜像を現像する現像装置(現像部)と、像担持体上をクリーニングするクリーニング装置(クリーニング部)とのうち、少なくとも1つと、像担持体とが、一体化されて、画像形成装置本体に対して着脱自在に設置されるユニットと定義する。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、回転部材に対する固形潤滑剤の摺接位置が経時において回転部材の周方向に沿って上方に変位するように、付勢状態の固形潤滑剤を回転移動させているため、経時において固形潤滑剤に対する付勢力の低下分を相殺するように固形潤滑剤の自重分が加わって、回転部材に対する固形潤滑剤の圧接力の低下が抑止される。これにより、比較的簡易な構成で、像担持体への潤滑剤の供給が経時においても確実に安定的におこなわれる、潤滑剤供給装置、クリーニング装置、プロセスカートリッジ、転写装置、及び、画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明の実施の形態における画像形成装置を示す全体構成図である。
【図2】作像部を示す構成図である。
【図3】初期における潤滑剤供給装置の状態を示す拡大図である。
【図4】経時における潤滑剤供給装置の状態を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
実施の形態.
以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0024】
まず、図1にて、画像形成装置全体の構成・動作について説明する。
本実施の形態における画像形成装置1は、複数の作像部としてのプロセスカートリッジ10Y、10M、10C、10BKが中間転写ベルト17に対向するように並設されたタンデム型のカラー画像形成装置である。
【0025】
図1において、1は画像形成装置としてのカラー複写機の装置本体、3は原稿を原稿読込部4に搬送する原稿搬送部、4は原稿の画像情報を読み込む原稿読込部、6は入力画像情報に基づいたレーザ光を発する書込み部(露光部)、7は転写紙等の記録媒体Pが収納される給紙部、10Y、10M、10C、10BKは各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)に対応した作像部としてのプロセスカートリッジ、17は複数色のトナー像が重ねて転写される中間転写ベルト(中間転写体)、18は中間転写ベルト17上に形成されたトナー像を記録媒体Pに転写する2次転写ローラ、20は記録媒体P上の未定着画像を定着する定着部、28は各プロセスカートリッジ10Y、10M、10C、10BKの現像装置に各色のトナーを補給するためのトナー容器、を示す。
【0026】
ここで、各プロセスカートリッジ10Y、10M、10C、10BK(作像部)は、それぞれ、像担持体としての感光体ドラム11、帯電部12、現像装置13(現像部)、クリーニング装置15(クリーニング部)、潤滑剤供給装置16(潤滑剤供給部)が一体化されたものである(図2を参照できる。)。そして、各プロセスカートリッジ10Y、10M、10C、10BKは、寿命に達したときに、新品のものに交換される。
各プロセスカートリッジ10Y、10M、10C、10BKにおける感光体ドラム11(像担持体)上では、それぞれ、各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)のトナー像が形成される。
【0027】
以下、画像形成装置における、通常のカラー画像形成時の動作について説明する。
まず、原稿は、原稿搬送部3の搬送ローラによって、原稿台から搬送されて、原稿読込部4のコンタクトガラス上に載置される。そして、原稿読込部4で、コンタクトガラス上に載置された原稿の画像情報が光学的に読み取られる。
詳しくは、原稿読込部4は、コンタクトガラス上の原稿の画像に対して、照明ランプから発した光を照射しながら走査させる。そして、原稿にて反射した光を、ミラー群及びレンズを介して、カラーセンサに結像する。原稿のカラー画像情報は、カラーセンサにてRGB(レッド、グリーン、ブルー)の色分解光ごとに読み取られた後に、電気的な画像信号に変換される。さらに、RGBの色分解画像信号をもとにして画像処理部(不図示である。)で色変換処理、色補正処理、空間周波数補正処理等の処理をおこない、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのカラー画像情報を得る。
【0028】
そして、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色の画像情報は、書込み部6に送信される。そして、書込み部6からは、各色の画像情報に基づいたレーザ光(露光光)が、それぞれ、対応するプロセスカートリッジ10Y、10M、10C、10BKの感光体ドラム11上に向けて照射される。
【0029】
一方、4つの感光体ドラム11は、それぞれ、図の時計方向に回転している。そして、まず、感光体ドラム11の表面は、帯電部12の帯電ローラ12a(図2を参照できる。)との対向位置で、一様に帯電される(帯電工程である。)。こうして、感光体ドラム11上には、帯電電位が形成される。その後、帯電された感光体ドラム11表面は、それぞれのレーザ光の照射位置に達する。
書込み部6において、光源から画像信号に対応したレーザ光が各色に対応して射出される。図示は省略するが、レーザ光は、ポリゴンミラーに入射して反射した後に、複数のレンズを透過する。複数のレンズを透過した後のレーザ光は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの色成分ごとに別の光路を通過することになる(露光工程である。)。
【0030】
イエロー成分に対応したレーザ光は、紙面左側から1番目のプロセスカートリッジ10Yの感光体ドラム11表面に照射される。このとき、イエロー成分のレーザ光は、高速回転するポリゴンミラー(不図示である。)により、感光体ドラム11の回転軸方向(主走査方向)に走査される。こうして、帯電ローラ12aにて帯電された後の感光体ドラム11上には、イエロー成分に対応した静電潜像が形成される。
【0031】
同様に、シアン成分のレーザ光は、紙面左から2番目のプロセスカートリッジ10Cの感光体ドラム11表面に照射されて、シアン成分の静電潜像が形成される。マゼンタ成分に対応したレーザ光は、紙面左から3番目のプロセスカートリッジ10Mの感光体ドラム11表面に照射されて、マゼンタ成分に対応した静電潜像が形成される。ブラック成分のレーザ光は、紙面左から4番目(中間転写ベルト17の走行方向に対して最も下流側である。)のプロセスカートリッジ10BK(黒色用作像部)の感光体ドラム11表面に照射されて、ブラック成分の静電潜像が形成される。
【0032】
その後、各色の静電潜像が形成された感光体ドラム11表面は、それぞれ、現像装置13(図2を参照できる。)との対向位置に達する。そして、各現像装置13から感光体ドラム11上に各色のトナーが供給されて、感光体ドラム11上の潜像が現像される(現像工程である。)。
その後、現像工程後の感光体ドラム11表面は、それぞれ、中間転写体ろしての中間転写ベルト17との対向位置に達する。ここで、それぞれの対向位置には、中間転写ベルト17の内周面に当接するように1次転写ローラ14が設置されている。そして、1次転写ローラ14の位置で、中間転写ベルト17上に、感光体ドラム11上に形成された各色のトナー像が、順次重ねて転写される(第1転写工程である。)。
【0033】
そして、第1転写工程後の感光体ドラム11表面は、それぞれ、クリーニング装置15(潤滑剤供給装置16が内設されたものであって、図2を参照できる。)との対向位置に達する。そして、クリーニング装置15で、感光体ドラム11上に残存する未転写トナーが回収される(クリーニング工程である。)。
その後、感光体ドラム11表面は、除電部(不図示である。)の位置を通過して、感光体ドラム11における一連の作像プロセスが終了する。
【0034】
他方、感光体ドラム11上の各色の画像が重ねて転写された中間転写ベルト17表面は、図中の矢印方向に走行して、2次転写ローラ18の位置に達する。そして、2次転写ローラ18の位置で、記録媒体P上に中間転写ベルト17上のフルカラーの画像が2次転写される(第2転写工程である。)。
その後、中間転写ベルト17表面は、中間転写ベルトクリーニング装置9の位置に達する。そして、中間転写ベルト17上の未転写トナーが中間転写ベルトクリーニング装置9に回収されて、中間転写ベルト17上の一連の転写プロセスが完了する。
【0035】
ここで、2次転写ローラ18位置の記録媒体Pは、給紙部7から搬送ガイド、レジストローラ19等を経由して搬送されたものである。
詳しくは、記録媒体Pを収納する給紙部7から、給紙ローラ8により給送された転写紙Pが、搬送ガイドを通過した後に、レジストローラ19に導かれる。レジストローラ19に達した記録媒体Pは、中間転写ベルト17上のトナー像とタイミングを合わせて、2次転写ローラ18の位置に向けて搬送される。
【0036】
その後、フルカラー画像が転写された記録媒体Pは、定着部20に導かれる。定着部20では、定着ローラと加圧ローラとのニップにて、カラー画像が記録媒体P上に定着される。
そして、定着工程後の記録媒体Pは、排紙ローラ29によって装置本体1外に出力画像として排出された後に、排紙部5上にスタックされて、一連の画像形成プロセスが完了する。
【0037】
次に、図2にて、画像形成装置の作像部について詳述する。
図2は、黒色用のプロセスカートリッジ10BKを示す構成図である。その他の3つのプロセスカートリッジ10Y、10M、10Cは、それぞれ、作像プロセスに用いられるトナーの色が異なる点を除き、黒色用のプロセスカートリッジ10BKとほぼ同じに構成されているため、その図示と説明を省略する。
【0038】
図2に示すように、プロセスカートリッジ10BKには、像担持体としての感光体ドラム11と、感光体ドラム11を帯電する帯電部12と、感光体ドラム11上に形成される静電潜像を現像する現像装置13と、感光体ドラム11上の未転写トナーを回収するクリーニング装置15と、感光体ドラム11の表面に潤滑剤を供給する潤滑剤供給装置16と、が、ケースに一体的に収納されている。また、潤滑剤供給装置16は、クリーニング装置15に内設されている。
【0039】
ここで、像担持体としての感光体ドラム11は、負帯電性の有機感光体であって、ドラム状導電性支持体上に感光層等を設けたものである。
図示は省略するが、感光体ドラム11は、基層としての導電性支持体上に、絶縁層である下引き層、感光層としての電荷発生層及び電荷輸送層、保護層(表面層)が順次積層されている。
感光体ドラム11の導電性支持体(基層)としては、体積抵抗が1010Ωcm以下の導電性材料を用いることができる。
【0040】
感光体ドラム11の感光層は、積層構造とすることもできるし、単層構造とすることもできる。
まず、感光層を電荷発生層と電荷輸送層とからなる積層構造とした場合について説明する。
電荷発生層は、電荷発生物質を主成分とする層である。電荷発生層には公知の電荷発生物質を用いることができる。具体的には、電荷発生物質として、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、トリスアゾ顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、キナクリドン系顔料、キノン系縮合多環化合物、スクアリック酸系染料、他のフタロシアニン系顔料、ナフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩系染料等を用いることができる。これらの電荷発生物質は単独でも、2種以上混合して用いることもできる。
電荷発生層は、電荷発生物質を必要に応じて結着樹脂とともに適当な溶剤中にボールミル、アトライター、サンドミル、超音波等を用いて分散して、これを導電性支持体上(又は、下引き層上)に塗布して、乾燥することにより形成される。塗布液の塗工法としては、浸漬塗工法、スプレーコート、ビートコート、ノズルコート、スピナーコート、リングコート等の方法を用いることができる。電荷発生層の膜厚は、0.01〜5μm程度が適当である(さらに、好ましくは0.1〜2μm程度である。)。
【0041】
電荷輸送層は、電荷輸送物質及び結着樹脂を適当な溶剤に溶解又は分散して、これを電荷発生層上に塗布、乾燥することにより形成できる。また、必要により単独又は2種以上の可塑剤、レベリング剤、酸化防止剤等を添加することもできる。電荷輸送物質の量は、結着樹脂100重量部に対して、20〜300重量部(好ましくは、40〜150重量部である。)が適当である。また、電荷輸送層の膜厚は解像度・応答性の点から25μm以下にすることが好ましい。下限値に関しては、作像プロセス(特に、帯電電位等である。)によって異なるが、5μm以上が好ましい。
【0042】
次に、感光層を単層構造とした場合について説明する。
単層構造の感光層は、上述の電荷発生物質、電荷輸送物質、結着樹脂等を適当な溶剤に溶解又は分散して、これを導電性支持体上(又は、下引き層上)に塗布、乾燥することによって形成できる。電荷輸送物質を含有させずに、電荷発生物質と結着樹脂とから構成してもよい。また、必要により可塑剤やレベリング剤、酸化防止剤等を添加することもできる。
結着樹脂としては上述の電荷輸送層の形成時に用いる結着樹脂の他に、上述の電荷発生層の形成時に用いる結着樹脂を混合して用いてもよい。さらには、高分子電荷輸送物質も良好に使用できる。結着樹脂100重量部に対する電荷発生物質の量は5〜40重量部が好ましく、電荷輸送物質の量は0〜190重量部が好ましい(さらに好ましくは50〜150重量部である。)。
単層構造の感光層は、電荷発生物質、結着樹脂を電荷輸送物質とともにテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジクロロエタン、シクロヘキサン等の溶媒を用いて分散機等で分散した塗工液を、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート、リングコート等で塗工して形成できる。感光層の膜厚は、5〜25μm程度が適当である。
【0043】
感光体ドラム11の下引き層は、一般には樹脂を主成分とするが、これらの樹脂の上に感光層を溶剤で塗布することを考えると、一般の有機溶剤に対して耐溶剤性の高い樹脂であることが望ましい。このような樹脂としては、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂等、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂等が挙げられる。下引き層には、モアレ防止、残留電位の低減等のために、酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等の金属酸化物の微粉末顔料を加えてもよい。また、これらの下引き層は、上述した感光層と同様に、適当な溶媒及び塗工法を用いて形成することができる。下引き層の膜厚は、0〜5μm程度が適当である。
【0044】
感光体ドラム11の保護層は、感光体ドラム11表面における機械的磨耗を軽減するためのものである。
本実施の形態における保護層は、架橋構造を有するバインダー樹脂で形成されている。架橋構造は、1分子内に複数個の架橋性官能基を有する反応性モノマーを使用して、光や熱エネルギーを用いて架橋反応を生じさせることで形成される3次元の網目構造である。この網目構造を有するバインダー樹脂は、高い耐摩耗性を発揮することになる。電気的な安定性、耐刷性、寿命の観点から、上述の反応性モノマーとして、全部又は一部に電荷輸送能を有するモノマーを使用することもできる。このようなモノマーを使用することにより、網目構造中に電荷輸送部位が形成されて、保護層としての機能も充分に発揮される。
【0045】
電荷輸送能を有する反応性モノマーとしては、同一分子中に電荷輸送性成分と加水分解性の置換基を有する珪素原子とをそれぞれ少なくとも1つ以上含有する化合物、同一分子中に電荷輸送性成分とヒドロキシル基とを含有する化合物、同一分子中に電荷輸送性成分とカルボキシル基とを含有する化合物、同一分子中に電荷輸送性成分とエポキシ基とを含有する化合物、同一分子中に電荷輸送性成分とイソシアネート基とを含有する化合物等を用いることができる。これら反応性基を有する電荷輸送性材料は、単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
また、電荷輸送能を有するモノマーとして、電気的・化学的安定性が高いこと、キャリアの移動度が速いこと等から、トリアリールアミン構造を有する反応性モノマーを用いることもできる。
さらに、塗工時の粘度調整、架橋型電荷輸送層の応力緩和、低表面エネルギー化や摩擦係数低減等の機能付与のために、1官能及び2官能の重合性モノマー及び重合性オリゴマーを併用することもできる。これらの重合性モノマー、オリゴマーとしては、公知のものが利用できる。
【0046】
保護層は、熱又は光を用いて正孔輸送性化合物の重合又は架橋をおこなって形成される。熱により重合反応を行う際には、熱エネルギーのみで重合反応が進行する場合と重合開始剤が必要となる場合とがあるが、より低い温度で効率よく反応を進行させるためには、開始剤を添加することが好ましい。光により重合させる場合は、光として紫外線を用いることが好ましいが、光エネルギーのみで反応が進行することはごく稀であり、一般には光重合開始剤が併用される。この場合の重合開始剤とは、主には波長400nm以下の紫外線を吸収してラジカルやイオン等の活性種を生成して、重合を開始させるものである。なお、上述した熱及び光重合開始剤を併用することも可能である。
【0047】
このように形成した網目構造を有する保護層は、耐摩耗性が高い反面、架橋反応時に体積収縮が大きく、あまり厚膜化するとクラックなどを生じる場合がある。このような場合には、保護層を積層構造として、下層(感光層側)には低分子分散ポリマーからなる保護層を形成して、上層(表面側)には架橋構造を有する保護層を形成しても良い。
以上述べたように、本実施の形態では、感光体ドラム11の表面に、架橋構造を有するとともに電荷輸送材を具備するバインダー樹脂で形成された硬い保護層を設けているために、感光体ドラム11としての機能を損なわずに、クリーニングブレード15aによる感光体ドラム11の膜削れを防止することができる。
【0048】
帯電部12は、帯電ローラ12a、クリーニングローラ12b等で構成されている。帯電ローラ12aは、導電性芯金の外周に中抵抗の弾性層を被覆してなるローラ部材であって、潤滑剤供給装置16に対して感光体ドラム11の回転方向下流側に配設されている。また、帯電ローラ12aは、潤滑剤供給装置16によって感光体ドラム11上に供給された潤滑剤が付着しないように、感光体ドラム11に対して非接触で対向するように配設されている。また、クリーニングローラ12bは、帯電ローラ12a上の汚れを除去するためのもので、帯電ローラ12aに接触するように配設されている。
そして、このように構成された帯電部12において、帯電ローラ12aには不図示の電源部から所定の電圧が印加されて、これにより対向する感光体ドラム11の表面を一様に帯電する。
【0049】
現像装置13(現像部)は、主として、感光体ドラム11に対向する現像ローラ13aと、現像ローラ13aに対向する第1搬送スクリュ13b1と、仕切部材を介して第1搬送スクリュ13b1に対向する第2搬送スクリュ13b2と、現像ローラ13aに対向するドクターブレード13cと、で構成される。現像ローラ13aは、内部に固設されてローラ周面に磁極を形成するマグネットと、マグネットの周囲を回転するスリーブと、で構成される。マグネットによって現像ローラ13a(スリーブ)上に複数の磁極が形成されて、現像ローラ13a上に現像剤が担持されることになる。
【0050】
現像装置13内には、キャリアとトナーとからなる2成分現像剤が収容されている。
トナーは、画質向上のために、円形度が0.98以上の球形トナーを使用している。「円形度」は、フロー式粒子像分析装置「FPIA−2000」(東亜医用電子社製)により計測した平均円形度である。具体的には、容器中の予め不純固形物を除去した水100〜150ml中に、分散剤として界面活性剤(好ましくは、アルキルベンゼンスルホン酸塩である。)を0.1〜0.5ml加えて、さらに測定試料(トナー)を0.1〜0.5g程度加える。その後、このトナーが分散した懸濁液を、超音波分散器で約1〜3分間分散処理して、分散液濃度が3000〜10000個/μlとなるようにしたものを上述の分析装置にセットして、トナーの形状及び分布を測定する。
【0051】
球形トナーとしては、従来から広く用いられている粉砕法によって形状が歪な異形のトナー(粉砕トナー)を加熱処理等して球形化したものや、重合法により製造されたもの等を用いることができる。
このような球形トナーを用いる場合、従来は、クリーニングブレード15aと感光体ドラム11との僅かな隙間に入り込んでやがてその隙間をすり抜けてクリーニング不良が生じることがあった。しかし、本実施の形態では、潤滑剤供給装置16によって潤滑剤を感光体ドラム11表面に塗布して、感光体ドラム11上におけるトナー剥離性(除去性)を向上させるために、クリーニング不良の発生が抑止される。
【0052】
クリーニング装置15には、潤滑剤供給装置16の他に、感光体ドラム11に当接するクリーニングブレード15a、クリーニング装置15内に回収されたトナーを廃トナーとして廃トナー回収容器(不図示である。)に向けて搬送する搬送コイル15b、等が設置されている。クリーニングブレード15aは、潤滑剤供給装置16に対して感光体ドラム11の回転方向下流側に配設されている。クリーニングブレード15aは、ウレタンゴム等のゴム材料からなり、感光体ドラム11表面に所定角度かつ所定圧力で当接している。これにより、感光体ドラム11上に付着する未転写トナー等の付着物が機械的に掻き取られてクリーニング装置15内に回収されることになる。さらに、クリーニングブレード15aは、ブラシ状回転部材16a(回転部材)によって感光体ドラム11上に供給された潤滑剤を薄層化する部材としても機能する。これにより、感光体ドラム11の表面全域にわたって潤滑剤が適量にムラなく塗布されることになる。
なお、感光体ドラム11上に付着する付着物としては、未転写トナーの他に、記録媒体P(用紙)から生じる紙粉、帯電ローラ12aによる放電時に感光体ドラム11上に生じる放電生成物、トナーに添加されている添加剤、等がある。
【0053】
潤滑剤供給装置16は、固形潤滑剤16b、感光体ドラム11と固形潤滑剤16bとに摺接する回転部材(潤滑剤供給部材)としてのブラシ状回転部材16a、固形潤滑剤16bをブラシ状回転部材16aに向けて付勢する付勢部材としての圧縮スプリング16c、保持部16d、ホルダ16e、トーションスプリング16f(移動手段、弾性部材)、等で構成される(図3をも参照できる。)。
なお、潤滑剤供給装置16の構成・動作については、後でさらに詳しく説明する。
【0054】
図2にて、先に述べた作像プロセスをさらに詳しく説明する。
現像ローラ13aは、図2中の矢印方向(反時計方向)に回転している。現像装置13内の現像剤は、間に仕切部材を介在するように配設された第1搬送スクリュ13b1及び第2搬送スクリュ13b2の回転によって、不図示のトナー補給部によってトナー容器28から補給されたトナーとともに撹拌混合されながら長手方向に循環する(図2の紙面垂直方向である。)。
【0055】
そして、摩擦帯電してキャリアに吸着したトナーは、キャリアとともに現像ローラ13a上に担持される。現像ローラ13a上に担持された現像剤は、その後にドクターブレード13cの位置に達する。そして、現像ローラ13a上の現像剤は、ドクターブレード13cの位置で適量に調整された後に、感光体ドラム11との対向位置(現像領域である。)に達する。
【0056】
その後、現像領域において、現像剤中のトナーが、感光体ドラム11表面に形成された静電潜像に付着する。詳しくは、レーザ光Lが照射された画像部の潜像電位(露光電位)と、現像ローラ13aに印加された現像バイアスとの、電位差(現像ポテンシャル)によって形成される電界によって、トナーが潜像に付着する(トナー像が形成される)。
【0057】
その後、現像工程にて感光体ドラム11に付着したトナーは、そのほとんどが中間転写ベルト17上に転写される。そして、感光体ドラム11上に残存した未転写トナーが、クリーニングブレード15aによってクリーニング装置15内に回収される(ブラシ状回転部材16aによっても未転写トナーが回収される。)。
【0058】
ここで、図示は省略するが、装置本体1に設けられたトナー補給部は、交換自在に構成されたボトル状のトナー容器28と、トナー容器28を保持・回転駆動するとともに現像装置13に新品トナーを補給するトナーホッパ部と、で構成されている。また、トナー容器28内には、新品のトナー(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのいずれかである。)が収容されている。また、トナー容器28(トナーボトル)の内周面には、螺旋状の突起が形成されている。
【0059】
なお、トナー容器28内の新品トナーは、現像装置13内のトナー(既設のトナーである。)の消費にともない、トナー補給口から現像装置13内に適宜に補給されるものである。図示は省略するが、現像装置13内のトナーの消費は、感光体ドラム11に対向する反射型フォトセンサと、現像装置13の第2搬送スクリュ23b2の下方に設置された磁気センサと、によって間接的又は直接的に検知される。
【0060】
以下、本実施の形態における、潤滑剤供給装置16(潤滑剤供給部)の構成・動作について詳しく説明する。
図3は初期における潤滑剤供給装置16の状態を示す拡大図であり、図4は経時における潤滑剤供給装置の状態を示す拡大図である。
図3、図4に示すように、潤滑剤供給装置16は、固形潤滑剤16b、感光体ドラム11と固形潤滑剤16bとに摺接する回転部材としてのブラシ状回転部材16a(ブラシ状ローラ)、固形潤滑剤16bをブラシ状回転部材16aに向けて付勢する付勢手段としての圧縮スプリング16c、固形潤滑剤16bを保持する保持部16d、固形潤滑剤16bと圧縮スプリング16cと保持部16dとを保持するホルダ16e、移動手段としてのトーションスプリング16f(弾性部材)、等で構成される。
【0061】
回転部材としてのブラシ状回転部材16a(潤滑剤供給ローラ)は、長さ(毛足)が0.2〜20mm(好ましくは、0.5〜10mm)の範囲のブラシ毛が基布上に植毛されたものを芯金上にスパイラル状に巻き付けたものである。
ブラシ毛の長さが20mmを超えると、経時における感光体ドラム11との繰り返し摺擦によって、ブラシ毛が所定方向に倒毛して、固形潤滑剤16bの掻取性や感光体ドラム11からのトナー除去性が低下してしまう。これに対して、ブラシ毛の長さが0.2mm未満であると、固形潤滑剤16bや感光体ドラム11に対する物理的な当接力が不足してしまう。したがって、ブラシ毛の長さは上述の範囲であることが好ましい。
【0062】
ブラシ状回転部材16a(回転部材)は、図3、図4の時計方向に回転する感光体ドラム11に対して順方向で接触するように回転する(図3、図4の反時計方向の回転である。)。また、ブラシ状回転部材16aは、固形潤滑剤16bと感光体ドラム11とに摺接するように配置されていて、ブラシ状回転部材16aが回転することによって固形潤滑剤16bから潤滑剤を掻き取り、その潤滑剤を感光体ドラム11上に塗布する。
固形潤滑剤16bの後方部には,ブラシ状回転部材16aと固形潤滑剤16bとの接触ムラをなくすために圧縮スプリング16cが保持部16dを介して配置されていて、固形潤滑剤16bをブラシ状回転部材16aに付勢している。
【0063】
本実施の形態では、固形潤滑剤16bを主としてステアリン酸亜鉛で形成している。詳しくは、固形潤滑剤16bは、ステアリン酸亜鉛を主成分とする潤滑油添加剤を溶解したもので、塗りすぎによる副作用がなく、充分な潤滑性があるものが好適である。
ステアリン酸亜鉛は、代表的なラメラ結晶紛体である。ラメラ結晶は両親媒性分子が自己組織化した層状構造を有していて、せん断力が加わると層間にそって結晶が割れて滑りやすい。したがって、感光体ドラム11表面を低摩擦係化することができる。すなわち、せん断力を受けて均一に感光体ドラム11表面を覆っていくラメラ結晶によって、少量の潤滑剤によって効果的に感光体ドラム11表面を覆うことができる。
【0064】
なお、固形潤滑剤16bとしては、ステアリン酸亜鉛の他にも、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸鉄、ステアリン酸ニッケル、ステアリン酸コバルト、ステアリン酸銅、ステアリン酸ストロンチュウム、ステアリン酸カルシウム等のステアリン酸基を有するものを用いることができる。また、同じ脂肪酸基であるオレイン酸亜鉛、オレイン酸バリウム、オレイン酸鉛、以下、ステアリン酸と同様の化合物や、パルチミン酸亜鉛、パルチミン酸バリウム、パルチミン酸鉛、以下、ステアリン酸と同様の化合物を使用して良い。他にも、脂肪酸基として、カプリル酸、リノレン酸、コリノレン酸等を使用することができる。さらに、カンデリラワックス、カンルナウバワックス、ライスワックス、木ろう、おおば油、みつろう、ラノリン等のワックスを使用することもできる。これらは有機系の固形潤滑剤となりやすく、トナーとの相性が良い。
【0065】
固形潤滑剤16bをブラシ状回転部材16aを介して感光体ドラム11表面に塗布すると、感光体ドラム11表面には粉体状の潤滑剤が塗布されるが、この状態のままでは潤滑性は充分に発揮されないため、クリーニングブレード15a(薄層化ブレード)が潤滑剤を均一化する部材として機能することになる。クリーニングブレード15aにより、感光体ドラム11上での潤滑剤の皮膜化がおこなわれて、潤滑剤はその潤滑性を充分に発揮することになる。
このとき、ブラシ状回転部材16aにより塗布する粉体状の潤滑剤は微粉であるほど、クリーニングブレード15aにより感光体ドラム11上に分子膜レベルで薄膜化される。
【0066】
以下、本実施の形態における潤滑剤供給装置16において特徴的な構成について詳述する。
図3及び図4を参照して、本実施の形態における潤滑剤供給装置16には、ブラシ状回転部材16a(回転部材)に対する固形潤滑剤16bの摺接位置が経時においてブラシ状回転部材16aの周方向に沿って上方に変位するように、圧縮スプリング16cによって固形潤滑剤16bがブラシ状回転部材16aに向けて付勢された状態のまま固形潤滑剤16bを回転移動させる移動手段としてのトーションスプリング16fが設置されている。
【0067】
詳しくは、移動手段としてのトーションスプリング16fは、固形潤滑剤16bの重量の変化に応じて摺接位置(ブラシ状回転部材16aに対する固形潤滑剤16bの摺接位置である。)が変位するようにホルダ16eを押動する弾性部材である。そして、トーションスプリング16fは、コイル部16f1を中心にして、その一端側がクリーニング装置15のケースに固定され、その他端側がホルダ16eに固定されている。また、図示は省略するが、固形潤滑剤16b等を保持するホルダ16eは、装置16のフレームに対して、ブラシ状回転部材16aの回転軸を中心にして回動自在に保持されている。
このような構成によって、トーションスプリング16f(移動手段)は、ホルダ16eを押動することで固形潤滑剤16b及び圧縮スプリング16c(及び、保持部16d)を、ブラシ状回転部材16aの回転軸を中心として回転させることになる(図4の破線矢印方向の回転である。)。
【0068】
具体的に、図3に示すように、初期(新品時)には、固形潤滑剤16bが消耗していないため、固形潤滑剤16bの重量が最大になり、スプリング16cや保持部16dをも内設したホルダ16eの全重量と、トーションスプリング16fの付勢力と、のバランス(ホルダ16eの全重量が、トーションスプリング16fの付勢力より大きくなる。)によって、ホルダ16e(固形潤滑剤16b)の回転方向の位置が図3の位置に定められる。そして、この状態で、固形潤滑剤16bは、圧縮スプリング16cのスプリング力(付勢力)によってブラシ状回転部材16aに向けて水平方向に付勢されて、所定の圧接力でブラシ状回転部材16aに圧接することになる。このとき、圧縮スプリング16cの使用長さ(スプリング力)は最小となる。また、固形潤滑剤16bはブラシ状回転部材16aに向けて水平方向に付勢されているため、固形潤滑剤16b(及び、保持部16d、ホルダ16e、圧縮スプリング16c)の自重はブラシ状回転部材16aに対する圧接力に関与しないことになる。
【0069】
これに対して、図4に示すように、経時において、ブラシ状回転部材16aとの摺接によって固形潤滑剤16bが徐々に消耗して、固形潤滑剤16bの重量が徐々に低下していくと、スプリング16cや保持部16dをも内設したホルダ16eの全重量と、トーションスプリング16fの付勢力と、のバランス(ホルダ16eの全重量が、トーションスプリング16fの付勢力に比べて徐々に小さくなる。)によって、ホルダ16e(固形潤滑剤16b)がブラシ状回転部材16aの回転軸を中心にして徐々に回転していく(押し上げられていく)。そして、この状態で、固形潤滑剤16bは、圧縮スプリング16cのスプリング力(付勢力)によってブラシ状回転部材16aに向けて斜め上方から付勢されて、所定の圧接力でブラシ状回転部材16aに圧接することになる。
このとき、圧縮スプリング16cの使用長さは初期に比べて大きくなる(自由長に近くなっていく)。すなわち、圧縮スプリング16cのスプリング力(付勢力)は初期に比べて小さくなる。
また、固形潤滑剤16bはブラシ状回転部材16aに向けて斜め上方から付勢されているため、固形潤滑剤16b(及び、保持部16d、ホルダ16e、圧縮スプリング16c)の自重(自重に対する圧接方向の成分である。)がブラシ状回転部材16aに対する圧接力に関与することになる。そのため、経時において固形潤滑剤16bに対する圧縮スプリング16cのスプリング力が低下しても、その低下分を相殺するように固形潤滑剤16bの自重分が加わるため、ブラシ状回転部材16aに対する固形潤滑剤16bの圧接力の低下が抑止されることになる。
【0070】
詳しくは、図4において、固形潤滑剤16b(及び、保持部16d、ホルダ16e、圧縮スプリング16c)の重量をWとして、経時における圧縮スプリング16cによるスプリング力をF1として、ブラシ状回転部材16aに対する固形潤滑剤16bの圧接方向が重力方向に対してなす角度をθとすると、ブラシ状回転部材16aに対する固形潤滑剤16bの圧接力P1は、
P1=F1+W×cosθ …(1)
となる。
また、図3において、初期における圧縮スプリング16cによるスプリング力をF0とすると、ブラシ状回転部材16aに対する固形潤滑剤16bの圧接力P0は、
P0=F0 …(2)
となる。
そして、(1)式と(2)式とにおいて、P0≒P1となるように、構成部品の種々の設定(主として、トーションスプリング16fのスプリング力の設定である。)をおこなう。これにより、経時において、固形潤滑剤16bの消耗にともない固形潤滑剤16bが小さくなってしまい、固形潤滑剤16bをブラシ状回転部材16aに向けて付勢する圧縮スプリング16cの使用長さが長くなって、スプリング力が小さくなってしまっても、ブラシ状回転部材16aに対する固形潤滑剤16bの圧接力が一定になって、ブラシ状回転部材16aによる固形潤滑剤16bの削り量(単位時間当りの削り量である。)も一定になる。したがって、ブラシ状回転部材16aによって感光体ドラム11の表面に供給される潤滑剤の供給量(単位時間当りの供給量である。)も一定になる。
【0071】
ここで、本実施の形態では、トーションスプリング16f(移動手段)が、固形潤滑剤16bを圧縮スプリング16c(付勢部材)とともにブラシ状回転部材16aの回転軸を中心として回転させるように構成されているため、初期から経時にかけてブラシ状回転部材16aに対する固形潤滑剤16bの接触面積を定量化することができる。したがって、ブラシ状回転部材16aによる固形潤滑剤16bの削り量も一定になって、ブラシ状回転部材16aによって感光体ドラム11の表面に供給される潤滑剤の供給量も一定になる。
【0072】
また、本実施の形態では、トーションスプリング16f(移動手段)が固形潤滑剤16bに当接して固形潤滑剤16bを回転移動させるのではなく、トーションスプリング16f(移動手段)がホルダ16eに当接して固形潤滑剤16bを回転移動させているので、トーションスプリング16fとの直接的な接触による磨耗によって固形潤滑剤16bにダメージを与える不具合を抑止することができる。
【0073】
また、本実施の形態では、ホルダ16eと保持部16dとを別々の部材として構成したが、ホルダ16eと保持部16dとを一体化した1つの部材として構成することもできる。
【0074】
以上説明したように、本実施の形態によれば、ブラシ状回転部材16a(回転部材)に対する固形潤滑剤16bの摺接位置が経時においてブラシ状回転部材16aの周方向に沿って上方に変位するように、付勢状態の固形潤滑剤16bを回転移動させているため、経時において固形潤滑剤16bに対する付勢力の低下分を相殺するように固形潤滑剤16bの自重分が加わって、ブラシ状回転部材16aに対する固形潤滑剤16bの圧接力の低下が抑止される。これにより、比較的簡易な構成で、感光体ドラム11(像担持体)への潤滑剤の供給を経時においても確実に安定的におこなうことができる。
【0075】
なお、本実施の形態では、作像部における各部(感光体ドラム11、帯電部12、現像装置13、クリーニング装置15、潤滑剤供給装置16である。)を一体化してプロセスカートリッジ10Y、10M、10C、10BKを構成して、作像部のコンパクト化とメンテナンス作業性の向上とを図っている。
これに対して、潤滑剤供給装置16をプロセスカートリッジやクリーニング装置の構成部材とせずに、単体で装置本体1に交換自在に設置されるように構成することもできる。また、潤滑剤供給装置16をクリーニング装置15の構成部材として、装置本体1に交換自在に設置されるように構成することもできる。そして、このような場合にも、本実施の形態と同様の効果を得ることができる。
また、本実施の形態では、2成分現像剤を用いる2成分現像方式の現像装置13が搭載された画像形成装置に対して本発明を適用したが、1成分現像剤を用いる1成分現像方式の現像装置13が搭載された画像形成装置に対しても当然に本発明を適用することができる。
【0076】
また、本実施の形態では、感光体ドラム11の表面に潤滑剤を供給する潤滑剤供給装置16に対して本発明を適用した。これに対して、感光体ベルトの表面に潤滑剤を供給する潤滑剤供給装置に対しても、当然に本発明を適用することができる。また、中間転写ベルトや中間転写ドラム等の中間転写体の表面に潤滑剤を供給する潤滑剤供給装置に対しても、本発明を適用することができる。例えば、図1に示す中間転写ベルトクリーニング装置9を、図2に示すクリーニング装置15(潤滑剤供給装置16が内設されたものである。)と同様に構成することで、本実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0077】
また、本実施の形態では、初期においてブラシ状回転部材16aに対する固形潤滑剤16bの圧接方向が水平方向になり、経時においてブラシ状回転部材16aに対する固形潤滑剤16bの圧接方向が斜め上方からのものになるように構成した。しかし、ブラシ状回転部材16aに対する固形潤滑剤16bの摺接位置が経時においてブラシ状回転部材16aの周方向に沿って上方に変位するように構成されていれば、初期及び経時における固形潤滑剤16bの圧接方向が本実施の形態のものでなくても、本実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0078】
また、本実施の形態では、感光体ドラム11に摺接して潤滑剤を供給する回転部材としてブラシ状回転部材16aを用いたが、感光体ドラム11に摺接して潤滑剤を供給する回転部材の形態はこれに限定されることなく、例えば、固形潤滑剤16bから潤滑剤を削り取れる程度に目の粗い表面からなる弾性ローラを回転部材として用いることもできる。そして、そのような場合であっても、本実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0079】
なお、本発明が本実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、本実施の形態の中で示唆した以外にも、本実施の形態は適宜変更され得ることは明らかである。また、前記構成部材の数、位置、形状等は本実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等にすることができる。
【符号の説明】
【0080】
1 画像形成装置本体(装置本体)、
10Y、10M、10C、10BK プロセスカートリッジ(作像部)、
11 感光体ドラム(像担持体)、
15 クリーニング装置、
15a クリーニングブレード,
16 潤滑剤供給装置、
16a ブラシ状回転部材(回転部材)、
16b 固形潤滑剤、
16c 圧縮スプリング(付勢部材)、
16d 保持部、
16e ホルダ、
16f トーションスプリング(移動手段、弾性部材)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0081】
【特許文献1】特開2007−164107号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像が担持される像担持体の表面に潤滑剤を供給する潤滑剤供給装置であって、
前記像担持体に摺接する回転部材と、
前記回転部材に摺接する固形潤滑剤と、
前記固形潤滑剤を前記回転部材に向けて付勢する付勢部材と、
を備え、
前記回転部材に対する前記固形潤滑剤の摺接位置が経時において前記回転部材の周方向に沿って上方に変位するように、前記付勢部材によって前記固形潤滑剤が前記回転部材に向けて付勢された状態のまま前記固形潤滑剤を回転移動させる移動手段をさらに備えたことを特徴とする潤滑剤供給装置。
【請求項2】
前記移動手段は、前記固形潤滑剤を前記付勢部材とともに前記回転部材の回転軸を中心として回転させることを特徴とする請求項1に記載の潤滑剤供給装置。
【請求項3】
前記固形潤滑剤と前記付勢部材とを保持するホルダを備え、
前記移動手段は、前記ホルダを押動することで前記固形潤滑剤及び前記付勢部材を前記回転軸を中心として回転させることを特徴とする請求項2に記載の潤滑剤供給装置。
【請求項4】
前記移動手段は、前記固形潤滑剤の重量の変化に応じて前記摺接位置が変位するように前記ホルダを押動する弾性部材であることを特徴とする請求項3に記載の潤滑剤供給装置。
【請求項5】
前記固形潤滑剤は、ステアリン酸亜鉛を含有することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の潤滑剤供給装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれかに記載の潤滑剤供給装置と、
前記像担持体に当接して前記像担持体上をクリーニングするとともに、前記潤滑剤供給装置によって前記像担持体に供給された潤滑剤を薄層化するクリーニングブレードと、
を備えたことを特徴とするクリーニング装置。
【請求項7】
画像形成装置本体に対して着脱自在に設置されるプロセスカートリッジであって、
請求項1〜請求項5のいずれかに記載の潤滑剤供給装置と、前記像担持体と、を備えたことを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項8】
複数色のトナー像が重ねて転写される中間転写体を具備した中間転写装置であって、
前記像担持体は、前記中間転写体であって、
請求項1〜請求項5のいずれかに記載の潤滑剤供給装置を備えたことを特徴とする中間転写装置。
【請求項9】
請求項1〜請求項5のいずれかに記載の潤滑剤供給装置と、前記像担持体と、を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−237601(P2011−237601A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−108991(P2010−108991)
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】