説明

潤滑剤供給装置、プロセスカートリッジ、及び、画像形成装置

【課題】環境変動によって像担持体に供給する潤滑剤が不足することなく、常に安定して像担持体上に潤滑剤を供給することができる、潤滑剤供給装置、プロセスカートリッジ、及び、画像形成装置を提供する。
【解決手段】所定方向に回転しながら像担持体11に摺接する潤滑剤供給ローラ16aと、潤滑剤供給ローラ16aに摺接する固形潤滑剤16bと、装置の周囲の絶対湿度を検知する検知手段41と、潤滑剤供給ローラ16aから像担持体11上に供給する潤滑剤の量を可変する可変手段45と、が設けられている。そして、可変手段45は、検知手段に41よって検知された絶対湿度に応じて像担持体11上への潤滑剤の供給量を可変するように制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ、又は、それらの複合機等の電子写真方式を用いた画像形成装置と、そこに設置される潤滑剤供給装置と、プロセスカートリッジと、に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、複写機、プリンタ等の画像形成装置において、感光体ドラムや中間転写ベルト等の像担持体上に潤滑剤を供給する潤滑剤供給装置を用いる技術が知られている(例えば、特許文献1、2等参照。)。
【0003】
詳しくは、転写工程後の感光体ドラム上に残留する未転写トナーは、感光体ドラムに当接するクリーニングブレード(クリーニング装置)によってすべて除去されるべきものである。しかし、感光体ドラムとの摩擦によってクリーニングブレードの当接部に欠け(欠損)が生じた場合には、未転写トナーが欠損したクリーニングブレードと感光体ドラムとの隙間をすり抜けてクリーニング不良が生じてしまったり、すり抜けた未転写トナーが感光体ドラムにフィルミング(融着)してしまったりしていた。
【0004】
このような問題に対して、感光体ドラム上に潤滑剤を塗布することで、感光体ドラム上の摩擦係数が低下してクリーニングブレードの磨耗・欠損や感光体ドラムの劣化が低減されて、経時におけるクリーニング不良やフィルミングの発生を抑止することができる。
【0005】
具体的に、特許文献1において、潤滑剤塗布装置は、感光体ベルト(像担持体)に摺接するブラシローラ(潤滑剤供給ローラ)、ブラシローラに当接する固形潤滑剤、固形潤滑剤をブラシローラに向けて圧接方向に付勢する圧縮スプリング、等で構成される。そして、所定方向に回転するブラシローラによって固形潤滑剤から潤滑剤が徐々に削り取られて、ブラシローラによって削り取られて搬送された潤滑剤が像担持体の表面に塗布(供給)される。
【0006】
一方、特許文献2には、周囲の温湿度が所定の範囲内にないときに、塗布ブラシ(潤滑剤供給ローラ)の回転数を大きくして、塗布ブラシから中間転写ベルト(像担持体)に供給する潤滑剤量を増加する技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の潤滑剤供給装置は、環境変動によって像担持体に供給される潤滑剤の供給量が変化してしまうという問題があった。そして、このような不具合が生じてしまうと、潤滑剤供給装置によって像担持体上に供給される潤滑剤が不足してクリーニングブレードの欠損やクリーニング不良やフィルミング等が発生してしまうことになる。
【0008】
一方、上述した特許文献2の技術は、周囲の温湿度が所定の範囲内にないときに、潤滑剤供給ローラから像担持体に供給する潤滑剤量が増加するように制御しているため、環境変動によって潤滑剤供給量が不足してしまう不具合を解決する効果がある程度期待できる。しかし、周囲の温湿度と潤滑剤供給量との関係は相関性が高くないために、上述した問題が充分に解決できない可能性があった。
【0009】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、環境変動によって像担持体に供給する潤滑剤が不足することなく、常に安定して像担持体上に潤滑剤を供給することができる、潤滑剤供給装置、プロセスカートリッジ、及び、画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明者は、前記課題を解決するために研究を重ねた結果、環境変動のうち温度や相対湿度と潤滑剤供給量との相関関係はそれほど高くなく、絶対湿度と潤滑剤供給量との相関関係がとても高いことを知るに至った。
【0011】
この発明は以上述べた事項に基づくものであり、すなわち、この発明の請求項1記載の発明にかかる潤滑剤供給装置は、トナー像が担持される像担持体上に潤滑剤を供給する潤滑剤供給装置であって、所定方向に回転するとともに、前記像担持体に摺接する潤滑剤供給ローラと、前記潤滑剤供給ローラに摺接する固形潤滑剤と、装置の周囲の絶対湿度を検知する検知手段と、前記潤滑剤供給ローラから前記像担持体上に供給する潤滑剤の量を可変する可変手段と、を備え、前記可変手段は、前記検知手段によって検知された絶対湿度に応じて前記像担持体上への潤滑剤の供給量を可変するように制御されるものである。
【0012】
また、請求項2記載の発明にかかる潤滑剤供給装置は、前記請求項1に記載の発明において、前記可変手段は、前記検知手段によって検知された絶対湿度が高いときには前記供給量が増加するように制御され、前記検知手段によって検知された絶対湿度が低いときには前記供給量が減少するように制御されるものである。
【0013】
また、請求項3記載の発明にかかる潤滑剤供給装置は、前記請求項1に記載の発明において、前記可変手段は、前記検知手段によって検知された絶対湿度が所定値よりも高いときにのみ前記供給量が増加するように制御されるものである。
【0014】
また、請求項4記載の発明にかかる潤滑剤供給装置は、前記請求項1〜請求項3のいずれかに記載の発明において、前記可変手段は、前記潤滑剤供給ローラの回転数、又は/及び、前記潤滑剤供給ローラに対する前記固形潤滑剤の押圧力、を可変するものである。
【0015】
また、この発明の請求項5記載の発明にかかるプロセスカートリッジは、画像形成装置本体に対して着脱可能に設置されるプロセスカートリッジであって、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の潤滑剤供給装置と前記像担持体とを備えたものである。
【0016】
また、請求項6記載の発明にかかるプロセスカートリッジは、前記像担持体上をクリーニングするクリーニング部を、前記潤滑剤供給装置に対して前記像担持体の回転方向上流側に備えたものである。
【0017】
また、この発明の請求項7記載の発明にかかる画像形成装置は、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の潤滑剤供給装置と前記像担持体とを備えたものである。
【0018】
なお、本願において、「プロセスカートリッジ」とは、像担持体を帯電する帯電部と、像担持体上に形成された潜像を現像する現像部(現像装置)と、像担持体上をクリーニングするクリーニング部とのうち、少なくとも1つと、像担持体とが、一体化されて、画像形成装置本体に対して着脱可能に設置されるユニットと定義する。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、潤滑剤供給量との相関関係が高い絶対湿度に基いて潤滑剤供給量を可変制御しているため、環境変動によって像担持体に供給する潤滑剤が不足することなく、常に安定して像担持体上に潤滑剤が供給される、潤滑剤供給装置、プロセスカートリッジ、及び、画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の実施の形態における画像形成装置を示す全体構成図である。
【図2】作像部を示す構成図である。
【図3】潤滑剤ユニットを示す斜視図である。
【図4】絶対湿度の変化にともなう潤滑剤供給ローラの回転数の可変制御を示す表図である。
【図5】(A)絶対湿度と潤滑剤供給量との関係を示すグラフと、(B)温度と潤滑剤供給量との関係を示すグラフと、(C)相対湿度と潤滑剤供給量との関係を示すグラフと、である。
【図6】絶対湿度に基いて潤滑剤供給ローラの回転数の可変制御をおこなったときの、像担持体上における絶対的な潤滑剤量の変化を模式的に示す図である。
【図7】変形例としての、絶対湿度の変化にともなう潤滑剤供給ローラの回転数の可変制御を示す表図である。
【図8】図7の制御をおこなったときの、像担持体上における絶対的な潤滑剤量の変化を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
実施の形態.
以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0022】
まず、図1にて、画像形成装置全体の構成・動作について説明する。
本実施の形態における画像形成装置1は、複数の作像部としてのプロセスカートリッジ10Y、10M、10C、10BKが中間転写ベルト17に対向するように並設されたタンデム型のカラー画像形成装置である。
【0023】
図1において、1は画像形成装置としてのカラー複写機の装置本体、3は原稿を原稿読込部4に搬送する原稿搬送部、4は原稿の画像情報を読み込む原稿読込部、6は入力画像情報に基づいたレーザ光を発する書込み部(露光部)、7は転写紙等の記録媒体Pが収納される給紙部、10Y、10M、10C、10BKは各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)に対応した作像部としてのプロセスカートリッジ、17は複数色のトナー像が重ねて転写される中間転写ベルト、18は中間転写ベルト17上に形成されたトナー像を記録媒体Pに転写する2次転写ローラ、20は記録媒体P上の未定着画像を定着する定着部、28は各プロセスカートリッジ(作像部)10Y、10M、10C、10BKの現像部に各色のトナーを補給するためのトナー容器、を示す。
【0024】
ここで、各プロセスカートリッジ10Y、10M、10C、10BK(作像部)は、それぞれ、像担持体としての感光体ドラム11、帯電部12、現像部13(現像装置)、クリーニング部15(クリーニング装置)、潤滑剤供給装置16(潤滑剤供給部)が一体化されたものである(図2を参照できる。)。そして、各プロセスカートリッジ10Y、10M、10C、10BKは、寿命に達したときに装置本体1に対して交換される。
各プロセスカートリッジ10Y、10M、10C、10BKにおける感光体ドラム11(像担持体)上では、それぞれ、各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)のトナー像が形成される。
【0025】
以下、画像形成装置における、通常のカラー画像形成時の動作について説明する。
まず、原稿は、原稿搬送部3の搬送ローラによって、原稿台から搬送されて、原稿読込部4のコンタクトガラス上に載置される。そして、原稿読込部4で、コンタクトガラス上に載置された原稿の画像情報が光学的に読み取られる。
詳しくは、原稿読込部4は、コンタクトガラス上の原稿の画像に対して、照明ランプから発した光を照射しながら走査させる。そして、原稿にて反射した光を、ミラー群及びレンズを介して、カラーセンサに結像する。原稿のカラー画像情報は、カラーセンサにてRGB(レッド、グリーン、ブルー)の色分解光ごとに読み取られた後に、電気的な画像信号に変換される。さらに、RGBの色分解画像信号をもとにして画像処理部(不図示である。)で色変換処理、色補正処理、空間周波数補正処理等の処理をおこない、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのカラー画像情報を得る。
【0026】
そして、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色の画像情報は、書込み部6に送信される。そして、書込み部6からは、各色の画像情報に基づいたレーザ光(露光光)が、それぞれ、対応するプロセスカートリッジ10Y、10M、10C、10BKの感光体ドラム11上に向けて照射される。
【0027】
一方、4つの感光体ドラム11は、それぞれ、図の時計方向に回転している。そして、まず、感光体ドラム11の表面は、帯電ローラ12a(帯電部12)との対向位置で、一様に帯電される(帯電工程である。)。こうして、感光体ドラム11上には、帯電電位が形成される。その後、帯電された感光体ドラム11表面は、それぞれのレーザ光の照射位置に達する。
書込み部6において、光源から画像信号に対応したレーザ光が各色に対応して射出される。図示は省略するが、レーザ光は、ポリゴンミラーに入射して反射した後に、複数のレンズを透過する。複数のレンズを透過した後のレーザ光は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの色成分ごとに別の光路を通過することになる(露光工程である。)。
【0028】
イエロー成分に対応したレーザ光は、紙面左側から1番目のプロセスカートリッジ10Yの感光体ドラム11表面に照射される。このとき、イエロー成分のレーザ光は、高速回転するポリゴンミラー(不図示である。)により、感光体ドラム11の回転軸方向(主走査方向)に走査される。こうして、帯電ローラ12aにて帯電された後の感光体ドラム11上には、イエロー成分に対応した静電潜像が形成される。
【0029】
同様に、シアン成分のレーザ光は、紙面左から2番目のプロセスカートリッジ10Cの感光体ドラム11表面に照射されて、シアン成分の静電潜像が形成される。マゼンタ成分に対応したレーザ光は、紙面左から3番目のプロセスカートリッジ10Mの感光体ドラム11表面に照射されて、マゼンタ成分に対応した静電潜像が形成される。ブラック成分のレーザ光は、紙面左から4番目(中間転写ベルト17の走行方向に対して最も下流側である。)のプロセスカートリッジ10BK(黒色用作像部)の感光体ドラム11表面に照射されて、ブラック成分の静電潜像が形成される。
【0030】
その後、各色の静電潜像が形成された感光体ドラム11表面は、それぞれ、現像部13との対向位置に達する。そして、各現像部13から感光体ドラム11上に各色のトナーが供給されて、感光体ドラム11上の潜像が現像される(現像工程である。)。
その後、現像工程後の感光体ドラム11表面は、それぞれ、中間転写ベルト17との対向位置に達する。ここで、それぞれの対向位置には、中間転写ベルト17の内周面に当接するように1次転写ローラ14が設置されている。そして、1次転写ローラ14の位置で、中間転写ベルト17上に、感光体ドラム11上に形成された各色のトナー像が、順次重ねて転写される(第1転写工程である。)。
【0031】
そして、第1転写工程後の感光体ドラム11表面は、それぞれ、クリーニング部15との対向位置に達する。そして、クリーニング部15で、感光体ドラム11上に残存する未転写トナーが回収される(クリーニング工程である。)。
その後、感光体ドラム11表面は、潤滑剤供給装置16の位置と除電部(不図示である。)の位置とを順次通過して、感光体ドラム11における一連の作像プロセスが終了する。
【0032】
他方、感光体ドラム11上の各色の画像が重ねて転写された中間転写ベルト17表面は、図中の矢印方向に走行して、2次転写ローラ18の位置に達する。そして、2次転写ローラ18の位置で、記録媒体P上に中間転写ベルト17上のフルカラーの画像が2次転写される(第2転写工程である。)。
その後、中間転写ベルト17表面は、中間転写ベルトクリーニング部(不図示である。)の位置に達する。そして、中間転写ベルト17上の未転写トナーが中間転写ベルトクリーニング部に回収されて、中間転写ベルト17上の一連の転写プロセスが完了する。
【0033】
ここで、2次転写ローラ18位置の記録媒体Pは、給紙部7から搬送ガイド、レジストローラ19等を経由して搬送されたものである。
詳しくは、記録媒体Pを収納する給紙部7から、給紙ローラ8により給送された転写紙Pが、搬送ガイドを通過した後に、レジストローラ19に導かれる。レジストローラ19に達した記録媒体Pは、中間転写ベルト17上のトナー像とタイミングを合わせて、2次転写ローラ18の位置に向けて搬送される。
【0034】
その後、フルカラー画像が転写された記録媒体Pは、定着部20に導かれる。定着部20では、定着ローラと加圧ローラとのニップにて、カラー画像が記録媒体P上に定着される。
そして、定着工程後の記録媒体Pは、排紙ローラ29によって装置本体1外に出力画像として排出された後に、排紙部5上にスタックされて、一連の画像形成プロセスが完了する。
【0035】
次に、図2にて、画像形成装置の作像部について詳述する。
なお、図2は黒色用作像部としてのプロセスカートリッジ10BK(モノクロ用のプロセスカートリッジ)を示す構成図である。モノクロ用のプロセスカートリッジ10BKと、カラー用のプロセスカートリッジ10Y、10M、10Cと、は、作像プロセスに用いられるトナーの色が異なる点を除き、ほぼ同じ構成部材によって構成されているため、カラー用のプロセスカートリッジ10Y、10M、10Cの図示と説明は適宜省略する。
【0036】
図2に示すように、プロセスカートリッジ10BKには、像担持体としての感光体ドラム11と、感光体ドラム11を帯電する帯電部12(帯電ローラ)と、感光体ドラム11上に形成される静電潜像を現像する現像部13と、感光体ドラム11上の未転写トナーを回収するクリーニング部15と、感光体ドラム11上に潤滑剤を供給する潤滑剤供給装置16と、が、ケースに一体的に収納されている。
【0037】
ここで、像担持体としての感光体ドラム11は、負帯電性の有機感光体であって、ドラム状導電性支持体上に感光層等を設けたものである。
図示は省略するが、感光体ドラム11は、基層としての導電性支持体上に、絶縁層である下引き層、感光層としての電荷発生層及び電荷輸送層、保護層(表面層)が順次積層されている。
感光体ドラム11の導電性支持体(基層)としては、体積抵抗が1010Ωcm以下の導電性材料を用いることができる。
【0038】
帯電部12(帯電ローラ)は、導電性芯金の外周に中抵抗の弾性層を被覆してなるローラ部材であって、潤滑剤供給装置16に対して感光体ドラム11の回転方向下流側に配設されている。また、帯電部12(帯電ローラ)は、潤滑剤供給装置16によって感光体ドラム11上に供給された潤滑剤が付着しないように、感光体ドラム11に対して非接触で対向するように配設されている。
そして、帯電部12には不図示の電源部から所定の電圧が印加されて、これにより対向する感光体ドラム11の表面を一様に帯電する。
【0039】
現像部(現像装置)13は、主として、感光体ドラム11に対向する現像ローラ13aと、現像ローラ13aに対向する第1搬送スクリュ13b1と、仕切部材を介して第1搬送スクリュ13b1に対向する第2搬送スクリュ13b2と、現像ローラ13aに対向するドクターブレード13cと、で構成される。現像ローラ13aは、内部に固設されてローラ周面に磁極を形成するマグネットと、マグネットの周囲を回転するスリーブと、で構成される。マグネットによって現像ローラ13a(スリーブ)上に複数の磁極が形成されて、現像ローラ13a上に現像剤が担持されることになる。
【0040】
現像部13内には、キャリアとトナーとからなる2成分現像剤が収容されている。
トナーは、画質向上のために、円形度が0.98以上の球形トナーを使用している。「円形度」は、フロー式粒子像分析装置「FPIA−2000」(東亜医用電子社製)により計測した平均円形度である。具体的には、容器中の予め不純固形物を除去した水100〜150ml中に、分散剤として界面活性剤(好ましくは、アルキルベンゼンスルホン酸塩である。)を0.1〜0.5ml加えて、さらに測定試料(トナー)を0.1〜0.5g程度加える。その後、このトナーが分散した懸濁液を、超音波分散器で約1〜3分間分散処理して、分散液濃度が3000〜10000個/μlとなるようにしたものを上述の分析装置にセットして、トナーの形状及び分布を測定する。
【0041】
球形トナーとしては、従来から広く用いられている粉砕法によって形状が歪な異形のトナー(粉砕トナー)を加熱処理等して球形化したものや、重合法により製造されたもの等を用いることができる。
このような球形トナーを用いる場合、従来は、クリーニングブレード15aと感光体ドラム11との僅かな隙間に入り込んでやがてその隙間をすり抜けてクリーニング不良が生じることがあった。しかし、本実施の形態では、潤滑剤供給装置16によって潤滑剤を感光体ドラム11表面に塗布して、感光体ドラム11上におけるトナー剥離性(除去性)を向上させるために、クリーニング不良の発生が抑止される。
【0042】
クリーニング部15は、潤滑剤供給装置16に対して感光体ドラム11の回転方向上流側に配設されている。クリーニング部15には、感光体ドラム11に当接するクリーニングブレード15a、クリーニング部15内に回収されたトナーを廃トナーとして廃トナー回収容器(不図示である。)に向けて搬送する搬送コイル15b、等が設置されている。クリーニングブレード15aは、ウレタンゴム等のゴム材料からなり、感光体ドラム11表面に所定角度かつ所定圧力で当接している。これにより、感光体ドラム11上に付着する未転写トナー等の付着物が機械的に掻き取られてクリーニング部15内に回収されることになる。ここで、感光体ドラム11上に付着する付着物としては、未転写トナーの他に、記録媒体P(用紙)から生じる紙粉、帯電ローラ12aによる放電時に感光体ドラム11上に生じる放電生成物、トナーに添加されている添加剤、等がある。
【0043】
潤滑剤供給装置16は、固形潤滑剤16b、感光体ドラム11と固形潤滑剤16bとに摺接する潤滑剤供給ローラ16a(ブラシ状ローラ)、固形潤滑剤16bを保持する保持部材16c、保持部材16cを固形潤滑剤16bとともに収納するケース16f、保持部材16cとともに固形潤滑剤16bを潤滑剤供給ローラ16aに向けて付勢する回動部材16g及び引張スプリング16h(加圧機構)、潤滑剤供給ローラ16aによって感光体ドラム11上に供給された潤滑剤を薄層化するブレード状部材16d、等で構成される。なお、ブレード状部材16dは、潤滑剤供給ローラ16aに対して感光体ドラム11の回転方向下流側の位置で感光体ドラム11に対してカウンタ方向に当接するように構成されている。
このように構成された潤滑剤供給装置16によって、感光体ドラム11上に薄層化された潤滑剤が供給される。なお、潤滑剤供給装置16の構成・動作については、後で詳しく説明する。
【0044】
図2にて、先に述べた作像プロセスをさらに詳しく説明する。
現像ローラ13aは、図2中の矢印方向(反時計方向)に回転している。現像部13内の現像剤は、間に仕切部材を介在するように配設された第1搬送スクリュ13b1及び第2搬送スクリュ13b2の回転によって、不図示のトナー補給部によってトナー容器28から補給されたトナーとともに撹拌混合されながら長手方向に循環する(図2の紙面垂直方向である。)。
【0045】
そして、摩擦帯電してキャリアに吸着したトナーは、キャリアとともに現像ローラ13a上に担持される。現像ローラ13a上に担持された現像剤は、その後にドクターブレード13cの位置に達する。そして、現像ローラ13a上の現像剤は、ドクターブレード13cの位置で適量に調整された後に、感光体ドラム11との対向位置(現像領域である。)に達する。
【0046】
その後、現像領域において、現像剤中のトナーが、感光体ドラム11表面に形成された静電潜像に付着する。詳しくは、レーザ光Lが照射された画像部の潜像電位(露光電位)と、現像ローラ13aに印加された現像バイアスとの、電位差(現像ポテンシャル)によって形成される電界によって、トナーが潜像に付着する(トナー像が形成される)。
【0047】
その後、現像工程にて感光体ドラム11に付着したトナーは、そのほとんどが中間転写ベルト17上に転写される。そして、感光体ドラム11上に残存した未転写のトナーが、クリーニングブレード15aによってクリーニング部15内に回収される。
【0048】
ここで、図示は省略するが、装置本体1に設けられたトナー補給部は、交換自在に構成されたボトル状のトナー容器28と、トナー容器28を保持・回転駆動するとともに現像部13に新品トナーを補給するトナーホッパ部と、で構成されている。また、トナー容器28内には、新品のトナー(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのいずれかである。)が収容されている。また、トナー容器28(トナーボトル)の内周面には、螺旋状の突起が形成されている。
【0049】
なお、トナー容器28内の新品トナーは、現像部13内のトナー(既設のトナーである。)の消費にともない、トナー補給口から現像部13内に適宜に補給されるものである。図示は省略するが、現像部13内のトナーの消費は、感光体ドラム11に対向する反射型フォトセンサと、現像部13の第2搬送スクリュ23b2の下方に設置された磁気センサと、によって間接的又は直接的に検知される。
【0050】
以下、本実施の形態における、潤滑剤供給装置16(潤滑剤供給部)の構成・動作について詳しく説明する。
図2に示すように、潤滑剤供給装置16は、固形潤滑剤16b、感光体ドラム11と固形潤滑剤16bとに摺接するブラシ毛が周設された潤滑剤供給ローラ16a(ブラシ状ローラ)、固形潤滑剤16bを保持する保持部材16c、保持部材16cを固形潤滑剤16bとともに収納するケース16f、保持部材16cとともに固形潤滑剤16bを潤滑剤供給ローラ16aに向けて付勢する回動部材16g及び引張スプリング16h(加圧機構)、潤滑剤供給ローラ16aによって感光体ドラム11上に供給された潤滑剤を薄層化するブレード状部材16d(薄層化ブレード)、等で構成される。
【0051】
ケース16fは、固形潤滑剤16bが潤滑剤供給ローラ16aに圧接する方向に移動できるように(移動を妨げないように)、保持部材16cを固形潤滑剤16bとともに収納する略箱状部材であって、潤滑剤供給装置16(プロセスカートリッジ10BK)に保持されている。ケース16fは、固形潤滑剤16bや保持部材16cの圧接方向(固形潤滑剤16bが潤滑剤供給ローラ16aを圧接する方向である。)の移動を妨げない範囲で、それらの部材16b、16cとの隙間が比較的小さく設定されていて、潤滑剤供給ローラ16aに対して固形潤滑剤16bが傾いて圧接するのをある程度防止する。
【0052】
なお、本実施の形態では、ケース16gが、固形潤滑剤16bが潤滑剤供給ローラ16aに圧接する方向(圧接方向)に対して正逆方向に移動可能に保持されている。また、ケース16gには可変手段としての可動部46(例えば、リンク機構である。)が接続されていて、可動部46によってケース16gが圧接方向に対して正逆方向に移動することで、潤滑剤供給ローラ16aに対する固形潤滑剤16bの押圧力(圧接力)を可変して、感光体ドラム11上に供給する潤滑剤の量を可変できるように構成されている。
【0053】
潤滑剤供給ローラ16a(ブラシ状ローラ)は、長さ(毛足)が0.2〜20mm(好ましくは、0.5〜10mm)の範囲のブラシ毛が基布上に植毛されたものを芯金上にスパイラル状に巻き付けたものである。
ブラシ毛の長さが20mmを超えると、経時における感光体ドラム11との繰り返し摺擦によって、ブラシ毛が所定方向に倒毛して、固形潤滑剤16bの掻取性や感光体ドラム11からのトナー除去性が低下してしまう。これに対して、ブラシ毛の長さが0.2mm未満であると、固形潤滑剤16bや感光体ドラム11に対する物理的な当接力が不足してしまう。したがって、ブラシ毛の長さは上述の範囲であることが好ましい。
【0054】
潤滑剤供給ローラ16aは、図2の時計方向に回転する感光体ドラム11に対してカウンタ方向で接触するように、駆動モータ45によって回転駆動される(図2の時計方向の回転である。)。また、潤滑剤供給ローラ16a(ブラシ毛)は、固形潤滑剤16bと感光体ドラム11とに摺接するように配置されていて、潤滑剤供給ローラ16aが回転することによって固形潤滑剤16bから潤滑剤を掻き取り、その掻き取った潤滑剤を感光体ドラム11との摺接位置まで搬送した後に、その潤滑剤を感光体ドラム11上に塗布(供給)する。
なお、本実施の形態において、駆動モータ45は、速度可変型モータであって、潤滑剤供給ローラ16aの回転数を可変して、感光体ドラム11上に供給する潤滑剤の量を可変できるように構成されている。すなわち、駆動モータ45が潤滑剤供給量を可変する可変手段として機能することになるが、これについては後で詳しく説明する。
【0055】
固形潤滑剤16bの後方部には,潤滑剤供給ローラ16aと固形潤滑剤16bとの接触ムラをなくすために加圧機構16c、16g、16h、16jが配置されていて、保持部材16cに保持(貼着)された状態の固形潤滑剤16bを潤滑剤供給ローラ16aに向けて付勢している。ここで、加圧機構(押圧装置)は、保持部材16cと、保持部材16cに回動可能に支持された1対の回動部材16gと、1対の回動部材16gに連結された引張スプリング16h(付勢部材)と、軸受16jと、で構成されている。
【0056】
本実施の形態において、固形潤滑剤16b(潤滑部材)は、主としてチッ化ホウ素と脂肪酸金属塩とを配合して形成したものである。
チッ化ホウ素は放電による特性変化がほとんどないため、チッ化ホウ素を配合した固形潤滑剤16bを用いることで、感光体ドラム11上で帯電工程や転写工程がおこなわれた後にも放電による劣化が生じにくくなる。また、チッ化ホウ素を配合した固形潤滑剤16bを用いることで、感光体ドラム11が放電により酸化、蒸発してしまうことを防止することもできる。
また、チッ化ホウ素だけからなる潤滑剤を用いてしまうと、感光体ドラム11の表面に供給された潤滑剤がドラム表面全体にいきわたらずに、ドラム表面全体に均一な潤滑剤の皮膜が形成されなくなるおそれがある。そのため、固形潤滑剤16bにチッ化ホウ素の他に脂肪酸金属塩を配合している。これにより、感光体ドラム11表面の全体にわたって潤滑剤の皮膜を効率よく形成することができて、長期にわたって高い潤滑性を維持することができる。脂肪酸金属塩としては、例えば、フッ素系樹脂、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム等のラメラ結晶構造を持つ脂肪酸金属塩や、ラウロイルリジン、モノセチルリン酸エステルナトリウム亜鉛塩、ラウロイルタウリンカルシウム等の物質を使用することができる。特に、脂肪酸金属塩としてステアリン酸亜鉛を用いた場合には、感光体ドラム11上での伸展性が向上して、吸湿性が低くて湿度が変化しても潤滑性が損なわれにくくなる。
また、固形潤滑剤16bに配合する材料としては、脂肪酸金属塩やチッ化ホウ素の他に、シリコーンオイル、フッ素系オイル、天然ワックス等の液状材料やガス状材料を外添剤として用いることもできる。
このように構成された固形潤滑剤16bは、粉体状の潤滑剤を型に入れて型内で圧力をかけて固形のバー状に形成することもできるし、紛体状の潤滑剤を加熱溶融したものを型の中に流し込んだ後に冷却して潤滑剤のブロックを形成することもできる。また、潤滑剤の構成材料をバー状に固める際に、必要に応じて、その構成材料中にバインダーを添加して成形することもできる。
【0057】
固形潤滑剤16bを潤滑剤供給ローラ16aを介して感光体ドラム11表面に塗布すると、感光体ドラム11表面には粉体状の潤滑剤が塗布されるが、この状態のままでは潤滑性は充分に発揮されないため、ブレード状部材16d(薄層化ブレード)が潤滑剤を均一化する部材として機能することになる。ブレード状部材16dにより、感光体ドラム11上での潤滑剤の皮膜化がおこなわれて、潤滑剤はその潤滑性を充分に発揮することになる。
このとき、潤滑剤供給ローラ16aにより塗布する粉体状の潤滑剤は微粉であるほど、ブレード状部材16dにより感光体ドラム11上に分子膜レベルで薄膜化される。
【0058】
図3は、潤滑剤ユニットを示す斜視図である。図3に示すように、潤滑剤ユニットは、保持部材16c、1対の回動部材16g、引張スプリング16h(付勢部材)、軸受16j等で構成された加圧機構(押圧装置)に、固形潤滑剤16bが設置されたものである。この潤滑剤ユニットは、潤滑剤供給装置16(プロセスカートリッジ10BK)に対して着脱可能(交換可能)に構成されている。これによって、潤滑剤供給装置16(プロセスカートリッジ10BK)における固形潤滑剤の交換作業が容易化されることになる。
【0059】
図3を参照して、固形潤滑剤16bは、保持部材16cに貼着され保持されている。具体的に、保持部材16cと固形潤滑剤16bとの間に両面テープや接着剤等が介在されて、保持部材16cは固形潤滑剤16bを貼着して保持することになる。ここで、保持部材16cは、コの字状に曲げ加工された板金であって、その両側面に軸受16jを介して回動部材16gを保持するための複数の穴部16c2が形成されている。
【0060】
ここで、保持部材16cには、幅方向(図2の紙面垂直方向である。)の離れた位置に、1対の回動部材16g(押圧部材)がそれぞれ回動可能に支持されている。この1対の回動部材16gは、引張スプリング16hによる付勢力によってそれぞれ所定方向に回動して保持部材16cを介して固形潤滑剤16bを間接的に押圧して、固形潤滑剤16bを潤滑剤供給ローラ16aに圧接させるものである。
詳しくは、回動部材16gの両側面には、回動中心となる支軸16g1(軸部)が形成されている。そして、この回動部材16gの支軸16g1が、軸受16jの内径部に挿着された状態で保持部材16cの穴部16c2に嵌合して、回動部材16gが保持部材16cに回動可能に保持されることになる。なお、2つの回動部材16cは、それぞれ、幅方向において左右対称になるように保持部材16cに設置される。
【0061】
また、1対の回動部材16gは、引張スプリング16hで連結されている。詳しくは、引張スプリング16hの両端のフック部が、それぞれ、回動部材16gの穴部に接続されている。
そして、この引張スプリング16hは、ケース16fに圧接するように1対の回動部材16gを互いに異なる方向に回動させて保持部材16cを潤滑剤供給ローラ16aに近づく方向に付勢する付勢部材として機能することになる。具体的に、2つの回動部材16gは、ケース16fの内壁面に当接するカム形状部(不図示である。)が互いに近づく方向のスプリング力(付勢力)を引張スプリング16hから受ける。これにより、図3の左方の回動部材16gは、支軸16g1を回動中心として、反時計方向に回動するように付勢される。これに対して、図3の右方の回動部材16gは、支軸16g1を回動中心として、時計方向に回動するように付勢される。
【0062】
以下、本実施の形態において特徴的な、潤滑剤供給装置16(画像形成装置1)の構成・動作について詳述する。
図2を参照して、本実施の形態における潤滑剤供給装置16(画像形成装置1)では、潤滑剤供給ローラ16aを回転駆動する駆動モータ45が、潤滑剤供給ローラ16aから感光体ドラム11上に供給する潤滑剤の量(潤滑剤供給量)を可変する可変手段として機能する。具体的に、感光体ドラム11上への潤滑剤供給量を増加させる場合には、潤滑剤供給ローラ16aの回転数が増加するように、制御部48によって制御される。これに対して、感光体ドラム11上への潤滑剤供給量を減少させる場合には、潤滑剤供給ローラ16aの回転数が低下するように、制御部48によって制御される。これは、潤滑剤供給ローラ16aの回転数の増減に応じて、ほぼ比例的に、潤滑剤供給ローラ16aによって固形潤滑剤16bから削り取られる潤滑剤量が増減するためである。
【0063】
また、図2を参照して、潤滑剤供給装置16の近傍(固形潤滑剤16bの近傍である。)の位置には、潤滑剤供給装置16(固形潤滑剤16b)の周囲の絶対湿度を検知する検知手段としての絶対湿度検知部41が設置されている。
検知手段としての絶対湿度検知部41は、固形潤滑剤16bの近傍の絶対湿度(水分量)を検知するものであって、主として、固形潤滑剤16bの近傍の温度を検知する温度センサ42と、固形潤滑剤16bの近傍の相対湿度を検知する相対湿度センサ43と、で構成されている。具体的に、絶対湿度検知部41は、温度センサ42と相対湿度センサ43とでそれぞれ検知された温湿度の結果を制御部48送って、それらの温湿度から制御部48の記憶部に記憶された変換テーブルに基いて絶対湿度(水分量)を求める。なお、温度センサ42と相対湿度センサ43として、それらが一体化された既存の温湿度センサを用いることができる。
【0064】
そして、本実施の形態では、絶対湿度検知部41(検知手段)によって検知された絶対湿度に応じて感光体ドラム11上への潤滑剤の供給量(潤滑剤供給量)が可変されるように、駆動モータ45(可変手段)が制御されることになる。詳しくは、絶対湿度検知部41によって検知された絶対湿度が高いときには潤滑剤供給量が増加するように駆動モータ45が制御され、絶対湿度検知部41によって検知された絶対湿度が低いときには潤滑剤供給量が減少するように駆動モータ45が制御される。
【0065】
具体的に、図4を参照して、絶対湿度として中程度の値(例えば、10〜15g/cm3である。)が検知された場合には、潤滑剤供給ローラ16aの回転数が標準値α(例えば、200rpmである。)になるように制御部48で制御する。これに対して、絶対湿度として低い値(例えば、10g/cm3以下である。)が検知された場合には、潤滑剤供給ローラ16aの回転数が標準値αよりも低い値(例えば、0.8×αである。)になるように制御部48で制御する。さらに、絶対湿度として高い値(例えば、15g/cm3以上である。)が検知された場合には、潤滑剤供給ローラ16aの回転数が標準値αよりも高い値(例えば、1.2×αである。)になるように制御部48で制御する。
【0066】
このように、潤滑剤供給装置16の周囲の絶対湿度の高低に応じて潤滑剤供給量を増減しているのは、環境変動のうち温度や相対湿度と潤滑剤供給量との相関関係はそれほど高くなく、絶対湿度と潤滑剤供給量との相関関係がとても高いことによるものである。
図5(A)〜(C)は、本実施の形態における潤滑剤供給装置16(画像形成装置1)において、環境変動による潤滑剤供給量(潤滑剤消費率)の変化を実験により求めた結果を示すグラフである。図5(A)は絶対湿度と潤滑剤供給量との関係を示し、図5(B)は温度と潤滑剤供給量との関係を示し、図5(C)は相対湿度と潤滑剤供給量との関係を示す。
図5の実験結果から、絶対湿度と潤滑剤供給量との関係を示すグラフ(1次関数)の相関係数は「0.8756」となり、温度や相対湿度に係るものと比べて「1」に近似しており、潤滑剤供給量との相関関係が極めて高いことがわかる。
特に、絶対湿度が相対湿度に比べて潤滑剤供給量との相関関係が高い理由としては、潤滑剤の含水率が低くても僅かな含水率の違いによって、固形潤滑剤16bの磨耗性(潤滑剤供給ローラ16aによる削れやすさである。)が大きく変動するためと考えられる。潤滑剤の含水率は、相対湿度ではなくて、空気中の水分量を示す絶対湿度に依存するため、相対湿度よりも絶対湿度の方が潤滑剤供給量との相関性が高くなるものと考えられる。さらに、潤滑剤供給ローラ16aのブラシ毛は、そのコシの強さが水分量に影響することから、水分量(絶対湿度)が多い場合にはブラシ毛のコシが弱くなるのにともない感光体ドラム11上への潤滑剤の供給力(塗布力)が弱まり、水分量(絶対湿度)が少ない場合にはブラシ毛のコシが強くなるのにともない感光体ドラム11上への潤滑剤の供給力(塗布力)が強まるため、絶対湿度と潤滑剤供給量との相関関係が高くなるものと考えられる。
【0067】
このように潤滑剤供給装置16の周囲の絶対湿度の高低に応じて可変手段としての駆動モータ45を制御することで、図6に示すように、絶対湿度が変動しても潤滑剤供給量が下限供給量(感光体ドラム11上に不足なく供給されるべき最低限の供給量である。)を下回らないことになる。すなわち、環境変動が生じても潤滑剤供給装置16によって感光体ドラム11上に供給される潤滑剤が不足してクリーニングブレードの欠損やクリーニング不良やフィルミング等が発生してしまう不具合が軽減される。特に、本実施の形態では、絶対湿度が低いときにも潤滑剤供給量が多くならないように制御しているため、潤滑剤の過剰供給によって固形潤滑剤16bの寿命が早まってしまう不具合も軽減されることになる。
【0068】
なお、本実施の形態では、潤滑剤供給量を可変する可変手段として潤滑剤供給ローラ16aの回転数を可変する手段を用いたが、潤滑剤供給量を可変する可変手段として潤滑剤供給ローラ16aに対する固形潤滑剤16bの押圧力を可変する手段を用いることもできるし、上述した2つの手段を合わせて用いることもできる。
具体的に、図2を参照して、絶対湿度検知部41によって検知された絶対湿度が高いときには潤滑剤供給ローラ16aに対する固形潤滑剤16bの押圧力が大きくなるように可動部46が制御され、絶対湿度検知部41によって検知された絶対湿度が低いときには潤滑剤供給ローラ16aに対する固形潤滑剤16bの押圧力が小さくなるように可動部46が制御される。
そして、このような場合にも、本実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0069】
また、本実施の形態において、絶対湿度検知部41(検知手段)によって検知された絶対湿度が所定値よりも高いときにのみ潤滑剤供給量が増加するように駆動モータ45(可変手段)を制御することもできる。
具体的に、図7を参照して、絶対湿度として低い値や中程度の値が検知された場合(所定値に達しない場合である。)には、潤滑剤供給ローラ16aの回転数が標準値αになるように制御部48で制御する。これに対して、絶対湿度として所定値よりも高い値が検知された場合には、潤滑剤供給ローラ16aの回転数が標準値αよりも高い値(例えば、1.2×αである。)になるように制御部48で制御する。
このような制御をおこなった場合には、図8を参照して、破線で示すような絶対湿度と潤滑剤供給量との関係に対して、実線で示すように絶対湿度が高くなっても潤滑剤供給量が下限供給量を下回らない状態を維持することができる。すなわち、環境変動が生じても潤滑剤供給装置16によって感光体ドラム11上に供給される潤滑剤が不足してクリーニングブレードの欠損やクリーニング不良やフィルミング等が発生してしまう不具合が軽減される。
特に、図7に示すような制御をおこなった場合には、絶対湿度の変動に関らず下限供給量よりも多い潤滑剤供給量を確実に維持することができるため、帯電ハザードが生じて感光体ドラム11が劣化しやすくなる不具合を確実に抑止することができる。
【0070】
以上説明したように、本実施の形態によれば、潤滑剤供給量との相関関係が高い絶対湿度に基いて潤滑剤供給量を可変制御しているため、環境変動によって感光体ドラム11(像担持体)に供給する潤滑剤が不足することなく、常に安定して感光体ドラム11上に潤滑剤を供給することができる。
【0071】
なお、本実施の形態では、作像部における各部(感光体ドラム11、帯電部12、現像部13、クリーニング部15、潤滑剤供給装置16である。)を一体化してプロセスカートリッジ10Y、10M、10C、10BKを構成して、作像部のコンパクト化とメンテナンス作業性の向上とを図っている。
これに対して、作像部における各部11、12、13、15、16をプロセスカートリッジの構成部材とせずに、それぞれ単体で装置本体1に交換自在に設置されるように構成することもできる。このような場合にも、本実施の形態と同様の効果を得ることができる。
また、本実施の形態では、2成分現像剤を用いる2成分現像方式の現像部13が搭載された画像形成装置に対して本発明を適用したが、1成分現像剤を用いる1成分現像方式の現像部13が搭載された画像形成装置に対しても当然に本発明を適用することができる。
【0072】
また、本実施の形態では、中間転写ベルト17を用いたタンデム型のカラー画像形成装置に対して本発明を適用した。これに対して、転写搬送ベルトを用いたタンデム型のカラー画像形成装置(転写搬送ベルトに対向するように並設された複数の感光体ドラム上のトナー像を、転写搬送ベルトによって搬送される記録媒体上に重ねて転写する装置である。)や、モノクロ画像形成装置等、その他の画像形成装置に対しても、本発明を適用することができる。そして、このような場合であっても、本実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0073】
また、本実施の形態では、像担持体としての感光体ドラム11上に潤滑剤を供給する潤滑剤供給装置16に対して本発明を適用したが、感光体ドラム11以外の像担持体に潤滑剤を供給する潤滑剤供給装置(例えば、中間転写ベルト17に潤滑剤を供給する潤滑剤供給装置である。)に対しても当然に本発明を適用することができる。そして、このような場合であっても、本実施の形態と同様に絶対湿度に基いて潤滑剤供給量を可変制御することで、本実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0074】
また、本実施の形態では、潤滑剤供給ローラ16aとしてブラシ毛が周設されたブラシ状ローラを用いたが、潤滑剤供給ローラ16aとしてスポンジ状部材(弾性材料)が周設されたスポンジ状ローラを用いることもできる。そして、このような場合であっても、本実施の形態と同様に絶対湿度に基いて潤滑剤供給量を可変制御することで、本実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0075】
なお、本発明が本実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、本実施の形態の中で示唆した以外にも、本実施の形態は適宜変更され得ることは明らかである。また、前記構成部材の数、位置、形状等は本実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等にすることができる。
【符号の説明】
【0076】
1 画像形成装置本体(装置本体)、
11 感光体ドラム(像担持体)、
15 クリーニング部、
16 潤滑剤供給装置(潤滑剤供給部)、
16a 潤滑剤供給ローラ(ブラシ状ローラ)、
16b 固形潤滑剤、
41 絶対湿度検知部(検知手段)、
45 駆動モータ(可変手段)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0077】
【特許文献1】特開2001−305907号公報
【特許文献2】特開平07−271142号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像が担持される像担持体上に潤滑剤を供給する潤滑剤供給装置であって、
所定方向に回転するとともに、前記像担持体に摺接する潤滑剤供給ローラと、
前記潤滑剤供給ローラに摺接する固形潤滑剤と、
装置の周囲の絶対湿度を検知する検知手段と、
前記潤滑剤供給ローラから前記像担持体上に供給する潤滑剤の量を可変する可変手段と、
を備え、
前記可変手段は、前記検知手段によって検知された絶対湿度に応じて前記像担持体上への潤滑剤の供給量を可変するように制御されることを特徴とする潤滑剤供給装置。
【請求項2】
前記可変手段は、前記検知手段によって検知された絶対湿度が高いときには前記供給量が増加するように制御され、前記検知手段によって検知された絶対湿度が低いときには前記供給量が減少するように制御されることを特徴とする請求項1に記載の潤滑剤供給装置。
【請求項3】
前記可変手段は、前記検知手段によって検知された絶対湿度が所定値よりも高いときにのみ前記供給量が増加するように制御されることを特徴とする請求項1に記載の潤滑剤供給装置。
【請求項4】
前記可変手段は、前記潤滑剤供給ローラの回転数、又は/及び、前記潤滑剤供給ローラに対する前記固形潤滑剤の押圧力、を可変することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の潤滑剤供給装置。
【請求項5】
画像形成装置本体に対して着脱可能に設置されるプロセスカートリッジであって、
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の潤滑剤供給装置と前記像担持体とを備えたことを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項6】
前記像担持体上をクリーニングするクリーニング部を、前記潤滑剤供給装置に対して前記像担持体の回転方向上流側に備えたことを特徴とする請求項5に記載のプロセスカートリッジ。
【請求項7】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の潤滑剤供給装置と前記像担持体とを備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−3173(P2013−3173A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130749(P2011−130749)
【出願日】平成23年6月11日(2011.6.11)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】