説明

潤滑剤成形物の成形方法及びその成形装置、並びに、潤滑剤成形物及びそれを有する潤滑剤塗布装置

【課題】偏摩耗のない潤滑剤成形物を容易且つ安価に成形できる潤滑剤成形物の成形方法及びその製造装置、並びに、潤滑剤成形物及びこの潤滑剤成形物を有する潤滑剤塗布装置を提供する。
【解決手段】金型201によって上方に開口を有する直方体形状のキャビティ203が形成されており、(イ)このキャビティ203を複数の仕切板541によって長手方向に並ぶ複数の区画204a〜204jに仕切り、そして、(ロ)これら複数の区画204a〜204jのそれぞれに予め定められた量の潤滑剤Jを充填したのち、(ハ)複数の仕切板541を上方に引き抜いて仕切りを解除し、それから、(ニ)キャビティ203にパンチ202を挿入して潤滑剤Jを直方体形状に圧縮して潤滑剤成形物6a1を成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潜像を担持する像担持体の表面にニップを形成するように当接されたブラシローラによって当該表面に塗布される潤滑剤成形物の成形方法及びその成形装置、並びに、これらを用いて成形された潤滑剤成形物及びそれを有する潤滑剤塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電子写真プロセスを用いる画像形成装置は、ドラム形状(円筒形状)の像担持体としての感光体を有しており、この感光体の表面の放電によって該感光体の表面に電荷を与え帯電させ、この帯電させた感光体の表面を露光して該感光体の表面に静電潜像を形成させる。そして、画像形成装置は、前記感光体の表面に形成させた静電潜像にトナーを供給して可視像化させ、この可視像を中間転写体に順次多重転写して中間転写体に多色画像を形成させる。そして、画像形成装置は、この多色画像を記録紙等の記録媒体に静電的に一括再転写させて、画像ズレのない多色画像を形成させている。
【0003】
従来の画像形成装置における感光体廻りには、トナー像の転写後に感光体の表面に付着した転写残トナー等の付着物を除去して該感光体の表面を清掃するクリーニング部材が設けられている。このクリーニング部材によって付着物を除去することにより、当該付着物に起因する画像劣化などの悪影響を回避することができる。このようなクリーニング部材としては、例えば、ゴム等の弾性体で構成されたクリーニングブレードが用いられる。
【0004】
しかしながら、前記クリーニングブレードは、感光体との摺擦を続けると経時による磨耗や欠け、変形等が生じることがあり、クリーニング性能が低下するという問題があった。さらに、クリーニングブレードとの摺擦によって感光体の表面も磨耗するので、感光体の寿命が短くなるという問題もあった。さらに、トナーに外添される流動性付与剤や帯電制御剤等が、クリーニングブレードとの当接圧で感光体の表面に固着してフィルミングが発生してしまうという問題があった。
【0005】
そこで、従来においては、感光体の表面に潤滑剤を塗布することにより、感光体とクリーニングブレードとの間に働く摩擦抵抗を低減してこれらの摩耗等を防止して、上記問題を解決していた。
【0006】
感光体の表面に塗布される潤滑剤は、微粉末の状態で感光体の表面に直接供給されて塗布されることが理想である。しかし、微粉末状の潤滑剤を収容するためには、画像形成装置内に相当量のスペースを確保する必要がある。そこで、スペースの節減のために、潤滑剤を棒状等に成形して得た潤滑剤成形物を使用されている。
【0007】
このような潤滑剤成形物を感光体に塗布する潤滑剤塗布装置には、潤滑剤成形物を感光体の軸方向に均一にムラ無く塗布する機能が求められる。このような機能を有する潤滑剤塗布装置として、潤滑剤成形物と感光体の両方に当接するように回転駆動するブラシローラを備えたもの(例えば、特許文献1を参照)が提案されている。図20に、このような潤滑剤塗布装置を有する画像形成装置を示す。
【0008】
図20に示すように、従来の画像形成装置(図中、符号100で示す)には、(1)感光体101と、(2)帯電ローラ102a及び帯電クリーニングローラ102bを備えた帯電装置102と、(3)露光装置103と、(4)現像スリ−ブ104a、スクリュー104b及びドクターブレード104cを備えた現像装置104と、(5)転写ローラ105a及び中間転写ベルト105bを備えた転写装置105と、(6)潤滑剤成形物106a、ブラシローラ106b、塗布ブレード106c、塗布ブレード保持部材106d、潤滑剤成形物保持容器106g及び圧縮部材(スプリング)106hを備えた潤滑剤塗布装置106と、(7)クリーニングブレード107a、クリーニングブレード支持部材107b及びトナー回収コイル107cを備えたクリーニング装置107と、(8)プロセスカートリッジケース108と、を有するプロセスカートリッジ109が設けられている。
【0009】
このような画像形成装置100に設けられた従来の潤滑剤塗布装置106によれば、潤滑剤成形物106aがブラシローラ106bの摺擦により削られて微粉末となってブラシローラ106bの繊維に付着され、そのブラシローラ106bに付着された微粉末状潤滑剤が感光体101の表面に塗布されるので、塗布ムラが少なく、かつ、省スペース化に優れていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述した潤滑剤成形物106aは、金型によって形成された上方に開口を有する直方体形状のキャビティに微粉末状の潤滑剤を充填したのち、前記キャビティにパンチを挿入して前記潤滑剤を圧縮することにより成形される。そして、このような潤滑剤成形物106aは、図21(a)〜(c)に示すように、潤滑剤充填漏斗に所定量の潤滑剤を投入したのち、当該漏斗の先端をキャビティ内に挿入して、キャビティの長手方向(図21左右方向)に往復させながら徐々に上方に引き上げるように移動して、当該漏斗の先端から微粉末状の潤滑剤を吐出させることにより、当該キャビティに潤滑剤を充填していたので、キャビティの長手方向で潤滑剤の充填量のばらつきが生じ、そのため、圧縮成形された潤滑剤成形物106aに長手方向の密度分布のばらつき(不規則な乱れ)が生じてしまうことがあった。
【0011】
そして、上述した潤滑剤塗布装置106において、潤滑剤成形物106aはブラシローラ106bの摺擦により徐々に削られて薄肉化されるところ、潤滑剤成形物106aの密度分布にばらつきがあると、密度が低い箇所が、密度が高い箇所より速く削られてしまうので、図22に示すように、偏摩耗が生じて一端側が薄くなり且つ他端側が厚くなってしまうという問題があった。そして、このように潤滑剤成形物106aに偏摩耗が生じると、厚みが薄い部分によって使用可能期間が制限されてしまい、寿命が短くなって、微粉末状潤滑剤を長期間にわたり安定して感光体101(即ち、像担持体)の表面に供給して塗布することができなかった。
【0012】
また、上述した潤滑剤成形物の密度分布のばらつきを解消するため、キャビティに充填された微粉末状の潤滑剤をへら等を用いて均一にならしたり、微粉末状の潤滑剤を一部に多く集めて規則的に密度に差異を生じさせたりする(例えば、特許文献2を参照)ことなどが考えられるが、表面的には潤滑剤が平らになったり、規則的に配分されたようになったりするものの内側の充填密度まで均一にすることができず、密度分布のばらつきを十分に解消できるものではなかった。また、へら等を用いて潤滑剤を均す工数が増加して、コストが増加してしまうという別の問題があった。
【0013】
本発明は、上記課題に係る問題を解決することを目的としている。即ち、本発明は、偏摩耗のない潤滑剤成形物を容易且つ安価に成形できる潤滑剤成形物の成形方法及びその製造装置、並びに、潤滑剤成形物及びこの潤滑剤成形物を有する潤滑剤塗布装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1に記載された発明は、上記目的を達成するために、ブラシローラによって像担持体の表面に塗布される潤滑剤成形物を、上方に開口を有する直方体形状のキャビティが形成される金型で成形する潤滑剤成形物の成形方法において、(イ)前記キャビティを長手方向に並ぶ複数の区画に仕切る仕切部材を、当該キャビティに挿入する挿入工程と、(ロ)前記複数の区画のそれぞれに予め定められた量の潤滑剤を充填する充填工程と、(ハ)前記仕切部材を上方に引き上げて前記キャビティから抜き取る抜取工程と、(ニ)前記キャビティにパンチを挿入して前記潤滑剤を直方体形状に圧縮する圧縮工程と、を順次有することを特徴とする潤滑剤成形物の成形方法である。
【0015】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、前記(イ)工程では、前記キャビティを少なくとも3つ以上の複数の区画に仕切る仕切部材を当該キャビティに挿入し、そして、前記(ロ)工程では、前記複数の区画のうち両端又はそれら近傍の区画に充填される前記潤滑剤の量がこれら区画以外の他の区画に充填される前記潤滑剤の量より多くなるように、前記複数の区画のそれぞれに前記潤滑剤を充填することを特徴とするものである。
【0016】
請求項3に記載された発明は、上記目的を達成するために、ブラシローラによって像担持体の表面に塗布される潤滑剤成形物を、上方に開口を有する直方体形状のキャビティが形成される金型で成形する潤滑剤成形物の成形装置において、前記キャビティを長手方向に並ぶ複数の区画に仕切る仕切部材と、前記仕切部材を移動可能に保持する仕切部材移動部と、潤滑剤を計量して前記複数の区画のそれぞれに充填する潤滑剤供給部と、前記キャビティに挿入されるパンチを移動可能に保持するパンチ移動部と、を有していることを特徴とする潤滑剤成形物の成形装置である。
【0017】
請求項4に記載された発明は、請求項3に記載された発明において、前記仕切部材移動部によって前記仕切部材を前記キャビティに挿入する挿入手段と、前記仕切部材が前記キャビティに挿入された後に、前記潤滑剤供給部によって前記複数の区画のそれぞれについて前記潤滑剤を予め定められた量に計量して、当該複数の区画のそれぞれに計量した前記潤滑剤を充填する充填手段と、前記複数の区画のそれぞれに前記潤滑剤が充填された後に、前記仕切部材移動部によって前記仕切部材を上方に引き上げて前記キャビティから抜き取る抜取手段と、前記仕切部材が前記キャビティから抜き取られた後に、前記パンチ移動部によって前記キャビティにパンチを挿入して前記潤滑剤を直方体形状に圧縮する圧縮手段と、が設けられた制御部をさらに有していることを特徴とするものである。
【0018】
請求項5に記載された発明は、請求項4に記載された発明において、前記仕切部材が、前記キャビティを少なくとも3つ以上の複数の区画に仕切るように構成され、かつ、前記予め定められた潤滑剤の量のうち、前記複数の区画のうち両端又はそれら近傍の区画について予め定められた潤滑剤の量が、これら区画以外の他の区画について予め定められた潤滑剤の量よりも多くなるように設定されていることを特徴とするものである。
【0019】
請求項6に記載された発明は、上記目的を達成するために、ブラシローラによって像担持体の表面に塗布される潤滑剤成形物において、前記潤滑剤成形物が、直方体形状に形成され、且つ、前記潤滑剤成形物の両端部分又はそれら近傍部分における前記潤滑剤の密度が、中央部分における前記潤滑剤の密度より高くされていることを特徴とする潤滑剤成形物である。
【0020】
請求項7に記載された発明は、上記目的を達成するために、像担持体の表面に潤滑剤を塗布するブラシローラと、前記ブラシローラ上に前記潤滑剤を供給する潤滑剤供給部材と、を少なくとも有する潤滑剤塗布装置において、前記潤滑剤供給部材には、請求項6に記載の潤滑剤成形物が設けられていることを特徴とする潤滑剤塗布装置である。
【発明の効果】
【0021】
請求項1に記載された発明によれば、金型によって上方に開口を有する直方体形状のキャビティが形成されており、(イ)このキャビティを仕切部材によって長手方向に並ぶ複数の区画に仕切り、そして、(ロ)これら複数の区画のそれぞれに予め定められた量の潤滑剤を充填したのち、(ハ)仕切部材を上方に引き抜いて仕切りを解除し、それから、(ニ)キャビティにパンチを挿入して潤滑剤を直方体形状に圧縮して潤滑剤成形物を成形するので、キャビティを仕切ることにより形成された区画に充填される潤滑剤の量(潤滑剤の充填量)に応じて当該区画に対応する潤滑剤成形物の箇所の密度が定まり、そのため、全ての区画に同量の潤滑剤を充填することで均一な密度分布の潤滑剤成形物を容易且つ安価に成形することができ、または、任意の一又は複数の区画に充填される潤滑剤の量を、他の区画に充填される潤滑剤の量と異ならせることで、規則的な密度分布の潤滑剤成形物を容易且つ安価に成形することができ、即ち、潤滑剤の密度分布のばらつきがなく、偏摩耗のない潤滑剤成形物を容易且つ安価に成形できる。また、仕切部材を上方に引き上げてキャビティから抜き取ることで当該キャビティの仕切りを解除するので、仕切りを解除するときに任意の一の区画に充填された潤滑剤がそれに隣接する他の区画に充填された潤滑剤と混ざることがなく、そのため、精度の高い密度分布の潤滑剤成形物を成形できる。
【0022】
請求項2に記載された発明によれば、キャビティを仕切部材によって長手方向に並ぶ3つ以上の複数の区画に仕切り、これら複数の区画のうち両端又はそれら近傍の区画に充填される潤滑剤の量が、これら区画以外の他の区画に充填される潤滑剤の量より多くなるように、複数の区画のそれぞれに潤滑剤を充填するので、両端部分又はそれら近傍部分の密度が他の部分より高くなるように構成された潤滑剤成形物を成形することができる。このような潤滑剤成形物においては、密度の高い両端部分又はそれら近傍部分が、密度の低い他の部分より削れにくくなるので、当該両端部分又はそれら近傍部分によってブラシローラに押しつけられる圧力を二点支持でき、そのため、ブラシローラの摺擦により削られる速度が長手方向により均一になるので、さらに偏摩耗のない潤滑剤成形物を成形できる。
【0023】
請求項3に記載された発明によれば、キャビティを長手方向に並ぶ複数の区画に仕切る仕切部材と、この仕切部材を移動可能に保持する仕切部材移動部と、潤滑剤を計量して仕切部材によって仕切られた複数の区画のそれぞれに充填する潤滑剤供給部と、キャビティに挿入されるパンチを移動可能に保持するパンチ移動部と、を有しているので、金型によって上方に開口を有する直方体形状のキャビティが形成されており、(イ)仕切部材移動部によって仕切部材をキャビティに挿入して、キャビティを仕切部材によって長手方向に並ぶ複数の区画に仕切り、そして、(ロ)潤滑剤供給部によって、これら複数の区画のそれぞれに予め定められた量の潤滑剤を充填したのち、(ハ)仕切部材移動部によって仕切部材を上方に引き抜いて仕切りを解除し、それから、(ニ)パンチ移動部によってキャビティにパンチを挿入して潤滑剤を直方体形状に圧縮して潤滑剤成形物を成形することができる。これにより、キャビティを仕切ることにより形成された区画に充填される潤滑剤の量(潤滑剤の充填量)に応じて当該区画に対応する潤滑剤成形物の箇所の密度が定まるので、全ての区画に同量の潤滑剤を充填することで均一な密度分布の潤滑剤成形物を容易且つ安価に成形することができ、または、任意の一又は複数の区画に充填される潤滑剤の量を、他の区画に充填される潤滑剤の量と異ならせることで、規則的な密度分布の潤滑剤成形物を容易且つ安価に成形することができ、即ち、潤滑剤の密度分布のばらつきがなく、偏摩耗のない潤滑剤成形物を容易且つ安価に成形できる。また、仕切部材移動部によって仕切部材を上方に引き上げてキャビティから抜き取ることで当該キャビティの仕切りを解除するので、仕切りを解除するときに任意の一の区画に充填された潤滑剤がそれに隣接する他の区画に充填された潤滑剤と混ざることがなく、そのため、精度の高い密度分布の潤滑剤成形物を成形できる。
【0024】
請求項4に記載された発明によれば、前記仕切部材移動部によって前記仕切部材を前記キャビティに挿入する挿入手段と、前記仕切部材が前記キャビティに挿入された後に、前記潤滑剤供給部によって前記複数の区画のそれぞれについて前記潤滑剤を予め定められた量に計量して、当該複数の区画のそれぞれに計量した前記潤滑剤を充填する充填手段と、前記複数の区画のそれぞれに前記潤滑剤が充填された後に、前記仕切部材移動部によって前記仕切部材を上方に引き上げて前記キャビティから抜き取る抜取手段と、前記仕切部材が前記キャビティから抜き取られた後に、前記パンチ移動部によって前記キャビティにパンチを挿入して前記潤滑剤を直方体形状に圧縮する圧縮手段と、が設けられた制御部をさらに有しているので、制御部によって、上記仕切部材移動部、上記潤滑剤供給部及び上記パンチ移動部を制御することにより、上述した(イ)〜(ニ)に示す動作を実行することができ、そのため、潤滑剤の密度分布のばらつきがなく、偏摩耗のない潤滑剤成形物をさらに容易且つ正確に成形できる。
【0025】
請求項5に記載された発明によれば、仕切部材が、キャビティを少なくとも3つ以上の複数の区画に仕切るように構成され、かつ、前記予め定められた潤滑剤の量のうち、前記複数の区画のうち両端又はそれら近傍の区画について予め定められた潤滑剤の量が、これら区画以外の他の区画について予め定められた潤滑剤の量よりも多くなるように設定されているので、両端部分又はそれら近傍部分の密度が他の部分より高くなるように構成された潤滑剤成形物を成形することができる。このような潤滑剤成形物においては、密度の高い両端部分又はそれら近傍部分が、密度の低い他の部分より削れにくくなるので、当該両端部分又はそれら近傍部分によってブラシローラに押しつけられる圧力を二点支持でき、そのため、ブラシローラの摺擦により削られる速度が長手方向により均一になるので、さらに偏摩耗のない潤滑剤成形物を成形できる。
【0026】
請求項6に記載された発明によれば、潤滑剤成形物が、直方体形状に形成され、且つ、当該潤滑剤成形物の両端部分又はそれら近傍部分における潤滑剤の密度が、中央部分における潤滑剤の密度より高くされているので、密度の高い両端部分又はそれら近傍部分によってブラシローラに押しつけられる圧力を二点支持でき、そのため、ブラシローラの摺擦により削られる速度が長手方向に均一になり偏摩耗を防止できる。
【0027】
請求項7に記載された発明によれば、潤滑剤塗布装置が有する潤滑剤供給部材には、請求項5に記載の潤滑剤成形物が設けられているので、潤滑剤成形物の偏摩耗がなく、そのため、潤滑剤を長期間にわたり安定して像担持体の表面に供給して塗布することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】(a)は、本発明の潤滑剤成形装置の一実施形態の正面図であり、(b)は、側面図である。
【図2】(a)は、図1の潤滑剤成形装置において潤滑剤成形物の成形に用いられる金型及びパンチの斜視図であり、(b)は、横断面図である。
【図3】図1の潤滑剤成形装置の機能ブロック図である。
【図4】図1の順潤滑剤成形装置の制御部(CPU)によって実行される本発明に係る処理(潤滑剤成形処理)の一例を示すフローチャートである。
【図5】(a)は、潤滑剤成形装置の初期状態を示す正面図であり、(b)は、側面図である。
【図6】(a)は、複数の仕切板がキャビティに挿入された状態を示す正面図であり(b)、は側面図である。
【図7】(a)は、複数の区画に潤滑剤が順次充填される状態を示す正面図であり、(b)は、側面図である。
【図8】(a)は、複数の仕切板がキャビティから抜き取られた状態を示す正面図であり、(b)は、側面図である。
【図9】(a)は、キャビティにパンチを挿入して潤滑剤を圧縮している状態を示す正面図であり、(b)は、側面図である。
【図10】(a)は、キャビティからパンチが引き抜かれた状態を示す正面図であり、(b)は、側面図である。
【図11】(a)は、本実施形態における複数の区画に充填する潤滑剤の配分を模式的に示す図であり、(b)〜(c)は、当該配分の他の例を模式的に示す図である。
【図12】本発明の潤滑剤成形物の一実施形態の斜視図である。
【図13】図12の潤滑剤成形物の長手方向の密度分布を説明する図である。
【図14】図12の潤滑剤成形物の長手方向の密度分布の他の一例を説明する図である。
【図15】図12の潤滑剤成形物の長手方向の密度分布のさらに他の一例を説明する図である。
【図16】本発明の一実施形態の潤滑剤塗布装置を有するプロセスカートリッジの説明図である。
【図17】図16のプロセスカートリッジの拡大説明図である。
【図18】図16の潤滑剤塗布装置が有する潤滑剤カートリッジの横断面図である。
【図19】図16のプロセスカートリッジを有する画像形成装置の説明図である。
【図20】従来の画像形成装置の説明図である。
【図21】(a)〜(c)は、従来の潤滑剤成形物の成形方法の一例を説明する図である。
【図22】潤滑剤成形物の偏摩耗が生じた状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る潤滑剤成形装置の一実施形態について、図1〜図11を参照して説明する。この潤滑剤成形装置は、潤滑剤を金型に充填して所定の圧力を加えて圧縮することにより、潤滑剤成形物を成形するものである。
【0030】
この潤滑剤成形装置では、例えば、一般的に使用される公知の潤滑性物質からなる微粉末状の潤滑剤を用いて潤滑剤成形物を成形する。特に、潤滑性に優れる固体潤滑剤の窒化ホウ素、ポリテトラフッ化エチレン、及び、メラミンシアヌレート、並びに、膜形成に優れる脂肪酸金属塩のステアリン酸亜鉛等が好ましく、これらを単独もしくは任意の処方比で混合して使用することが可能である。勿論、これら以外にも、本発明の目的に合致した潤滑性物質であればあれば使用可能である。本実施形態においては、ステアリン酸亜鉛を主成分とする微粉末状の潤滑剤(ジンクステアレート GF−200(平均粒径14μm)や、ジンクステアレート GP(平均粒径67μm)、それぞれ日油社製)を用いている。
【0031】
図1(a)、(b)に示すように、潤滑剤成形装置500は、ベース部501と、金型保持部502と、パンチ移動部503と、支柱504と、第1移動部510と、第2移動部520と、潤滑剤供給部530と、キャビティ仕切部540と、制御部550と、潤滑剤貯蔵タンク(図示なし)と、搬送ホース(図示無し)と、を有して構成されている。
【0032】
ベース部501は、例えば、鋼鉄などの金属で平板状に形成されており、工場のフロアや作業台などに設置される。このベース部501には、後述する潤滑剤成形物6a1の成形に用いられる金型201を保持する金型保持部502と、金型201と嵌め合わされるパンチ202を移動可能に保持するパンチ移動部503と、ベース部501の上面501aから鉛直方向に立設された支柱504と、が設けられている。
【0033】
金型201は、図2(a)、(b)に示すように、第1金型部分201aと第2金型部分201bと第3金型部分201cと第4金型部分201dとを備え、これら金型部分によって内側に直方体形状の空間を形成する器型に構成されている。第1金型部分201aは、帯板状の底壁201a1、及び、当該底壁201a1の一方の長辺から立設された側壁201a2、を有している。第2金型部分201bは、上記側壁201a2と平面視形状が同一の矩形板状に形成されている。第2金型部分201bは、第1金型部分201aの側壁201a2と相対配置されて、金型201の側壁201a3となる。第3金型部分201cと第4金型部分201dとは、それぞれ矩形板状に形成されており、それらの一方の面に凸部が設けられている。第3金型部分201cと第4金型部分201dとは、それぞれの凸部が側壁201a2と側壁201a3との間に挟まれるようにして、底壁201a1の短辺が向き合う方向に相対して配置されて、それぞれが金型201の側壁201a4、201a5となる。上記底壁201a1には、これら第1金型部分201aと第2金型部分201bと第3金型部分201cと第4金型部分201dとを互いに組み付ける図示しない組み付け部が設けられている。
【0034】
金型201は、これら第1金型部分201aと第2金型部分201bと第3金型部分201cと第4金型部分201dとを組み合わせることにより、金型201の内側に、上方に開口203aを有する直方体形状の空間であるキャビティ203が形成される。この金型201のキャビティ203には、パンチ202が嵌め合わされる。
【0035】
パンチ202は、矩形板状の基部202aと、基部202aの下面に突出して形成された凸部202bと、で構成されている。凸部202bは、直方体形状に形成されているとともに、その下面202cが、金型201のキャビティ203の開口203aと同一形状に形成されている。これにより、パンチ202は、その凸部202bの外周面202dをキャビティ203の内周面に当接するようにして嵌め合わされる。そして、キャビティ203にパンチ202が嵌め合わされることにより、キャビティ203に凸部202bが挿入されて、金型201の内側に、潤滑剤成形物6a1の形状に沿う空間が形成される。本実施形態においては、当該空間(即ち、潤滑剤成形物6a1の外形)が、幅10mm、長さ322mm、高さ21mmの直方体形状になるように、キャビティ203に凸部202bが挿入される。なお、本明細書において、直方体形状には、その面が若干の曲面状や複合面状に形成された略直方体形状を含む。即ち、キャビティ203に充填された潤滑剤がパンチ202によって圧縮可能であれば、例えば、第1金型部分201aの底壁201a1の上面及びパンチ202の凸部202bの下面202cのいずれかが曲面状などに形成されていてもよい。
【0036】
パンチ202は、後述するパンチ移動部503が備える油圧ピストン505の先端にパンチ保持部506を介して固定されている。
【0037】
パンチ移動部503は、油圧ピストン505と、油圧ピストン505の先端に設けられた上記パンチ202を保持するパンチ保持部506と、油圧ピストン505を鉛直方向に平行に突没可能に支持するシリンダ部(図示なし)と、シリンダ部をベース部501に固定するシリンダ固定部(図示なし)と、を有している。シリンダ部は、油圧によって油圧ピストン505を当該シリンダ部から突出及び当該シリンダ部に没入させることにより、油圧ピストン505の先端にパンチ保持部506を介して固定されたパンチ202を、上下方向に移動させる。
【0038】
第1移動部510は、後述する潤滑剤供給部530を保持する供給手段保持部511と、この供給手段保持部をX方向(図1(a)の左右方向、図1(b)の前後方向)に移動可能に支持する第1アクチュエータ512と、この第1アクチュエータ512をY方向(図1(a)の前後方向、(b)の左右方向)及びZ方向(図1(a)、(b)の上下方向)に移動可能に支持する第2アクチュエータ513と、を有している。第2アクチュエータ513が支柱504に取り付けられている。即ち、第1移動部510は、支柱504に設けられている。
【0039】
第2移動部520は、後述するキャビティ仕切部540を保持する仕切部材保持部521をY方向及びZ方向に移動可能に支持する第3アクチュエータ522を有している。第3アクチュエータ522は、支柱504に第2アクチュエータ513より下方に取り付けられている。即ち、第2移動部520は、支柱504に第1移動部510より下方に設けられている。
【0040】
つまり、第1移動部510によって、供給手段保持部511に保持された潤滑剤供給部530がX方向、Y方向及びZ方向に移動される。また、第2移動部520によって、仕切部材保持部521に保持されたキャビティ仕切部540が、Y方向及びZ方向に移動される。第2移動部520は、請求項中の仕切部材移動部に相当する。
【0041】
潤滑剤供給部530は、収容容器531と、供給ノズル532と、計量容器535と、を有している。
【0042】
収容容器531は、有底の略円筒状に形成されており、内部に微粉末状の潤滑剤Jを収容する。収容容器531は、搬送ホース(図示なし)を介して潤滑剤Jが貯蔵された潤滑剤貯蔵タンク(図示なし)に接続されている。また、収容容器531には、バキュームポンプが設けられており、潤滑剤貯蔵タンクから搬送ホースを通じて当該潤滑剤Jを吸引して収容容器531内まで搬送する。収容容器531は、上記供給手段保持部511によって保持されている。
【0043】
供給ノズル532は、収容容器531の下部に当該収容容器531の内部と連通されて設けられている。また、供給ノズル532は、その先端部分が開閉可能に構成されている。供給ノズル532は、その先端部分を開くことにより、潤滑剤Jを吐出して、計量容器535に供給する。
【0044】
計量容器535は、コップ状に形成されており、潤滑剤Jを一時的に収容するとともに、収容した潤滑剤Jを計量する。また、計量容器535の底部は、開閉可能に構成されている。計量容器535は、底部を閉じた状態で供給ノズル532を通じて供給された潤滑剤Jを計量するとともに、底部を開いて計量した潤滑剤Jを後述するキャビティ仕切部540の複数の漏斗542に供給する。計量容器535は、連結部材536によって収容容器531に連結されており、収容容器531とともに移動される。
【0045】
キャビティ仕切部540は、仕切部材としての複数の仕切板541と、複数の漏斗542と、で構成されている。
【0046】
複数の仕切板541は、それぞれが金型201のキャビティ203の横断面と平面視形状が同一の矩形板状に形成されており、互いに平行で且つ水平方向に等間隔に並ぶように上記仕切部材保持部521に保持されている。複数の仕切板541は、キャビティ203に挿入されることにより、当該キャビティ203を長手方向に並ぶ複数の区画に仕切るように構成されている。本実施形態においては、9枚の仕切板541が設けられており、キャビティ203を10個の区画204a〜204j(図6、図7)に仕切るように構成されている。複数の仕切板541の枚数及び間隔は任意に調整可能である。
【0047】
複数の漏斗542は、複数の仕切板541によって仕切られた複数の区画のそれぞれに対応して設けられており、複数の仕切板541と同様に水平方向に等間隔並ぶように仕切部材保持部521に保持されている。複数の漏斗542は、上記計量容器535から供給された潤滑剤Jを、それに対応する区画に導いて充填する。このとき潤滑剤Jは、上方から漏斗542を通じて自然落下されるので、上記各区画内に安息角を形成する山状に積み上げられて充填される。本実施形態において、複数の漏斗542は複数の区画204a〜204jに対応して10個設けられている。複数の漏斗542の個数は任意に調整可能である。
【0048】
制御部550は、周知のコンピュータなどで構成されている。制御部550は、CPU、ROM、RAM、記憶装置、入力装置、表示装置などを有している。
【0049】
CPUは、潤滑剤成形装置500における各種制御を司り、ROMに記憶されている各種制御プログラムにしたがって本実施形態に係る制御を含む各種の処理を実行する。ROMは、前記制御プログラムやこの制御プログラムに参照されるパラメータなどの各種情報を記憶している。特に、ROMは、CPUを、挿入手段、充填手段、抜取手段、圧縮手段、などの各種手段として機能させるための制御プログラムを記憶している。そして、CPUは、この制御プログラムを実行することで前述した各種手段として機能する。RAMは、CPUが各種の処理を実行する上において必要なデータ、プログラム等が適宜記憶される。
【0050】
記憶装置は、例えば、ハードディスク装置やフラッシュメモリカードなどが用いられており、電源断となってもデータを保持できるように構成されている。この記憶装置には、後述する潤滑剤成形処理で用いられる各種パラメータ等(潤滑剤に加える圧縮圧力、複数の区画のそれぞれについて予め定められた潤滑剤の充填量など)が記憶されている。入力装置は、周知のキーボード、マウスなどで構成されており、各種操作が入力される。表示装置は、液晶ディスプレイ装置、プリンタ装置などで構成されており、操作メニューや潤滑剤成形動作完了通知などが表示される。
【0051】
制御部550には、図3に示すように、パンチ移動部503(シリンダ部)と、第1移動部510(第1アクチュエータ512及び第2アクチュエータ513)と、第2移動部520(第3アクチュエータ522)と、潤滑剤供給部530(供給ノズル532、計量容器535、バキュームポンプ)と、などが接続されており、所定の制御信号を送受信することによりこれら各部位を制御するように構成されている。
【0052】
次に、制御部550のCPUによって実行される本発明に係る処理(潤滑剤成形処理)の一例を、図4のフローチャート及び図5〜図10の動作説明図を参照して説明する。
【0053】
始めに、潤滑剤成形装置500の金型保持部502に金型201をセットするとともに、パンチ保持部506にパンチ202をセットする。そして、潤滑剤成形装置500に電源を投入すると、CPUは所定の初期化処理を実行する。CPUは、初期化処理が終了したあとに入力装置に所定の操作が入力されると、潤滑剤成形処理を開始する。
【0054】
CPUは、潤滑剤成形処理において、まず、第2移動部520を制御してキャビティ仕切部540を金型201の上方に移動させ、第1移動部510を制御して、潤滑剤供給部530をキャビティ仕切部540の上方に移動させ、パンチ移動部503を制御して、パンチ202を潤滑剤供給部530の上方に移動させる(ステップS110、図5)。これにより、下方から、金型201、キャビティ仕切部540、潤滑剤供給部530、パンチ202の順に並ぶ初期位置に配置される。
【0055】
そして、CPUは、第2移動部520を制御して、キャビティ仕切部540を金型201に近づくように下方に移動させて、複数の仕切板541をキャビティ203に挿入する(ステップS120、図6)[挿入工程、挿入手段]。これにより、キャビティ203が、複数の仕切板541によって長手方向に並ぶ複数の区画204a〜204jに仕切られる。また、CPUは、第1移動部510を制御して、潤滑剤供給部530を同様に金型201に近づくように下方に移動させる。
【0056】
そして、CPUは、複数の区画204a〜204jのそれぞれについて予め定められた潤滑剤Jの充填量を記憶装置から読み出して、複数の区画204a〜204jのそれぞれに潤滑剤Jを充填する(ステップS130、図7)[充填工程、充填手段]。
【0057】
具体的には、まず、CPUは、潤滑剤供給部530のバキュームポンプを駆動して潤滑剤貯蔵タンクから収容容器531に潤滑剤Jを搬送する。そして、CPUは、第1移動部510を制御して、計量容器535が区画204aに対応する漏斗542の上方に移動するように潤滑剤供給部530を移動させる。そして、CPUは、区画204aについて予め定められた潤滑剤Jの充填量を読み出し、供給ノズル532を開いて潤滑剤Jを吐出させるとともに潤滑剤Jを計量して、計量値が上記充填量に達したとき供給ノズル532を閉じる。そして、CPUは、計量容器535の底部を開いて、漏斗542を通じて区画204aに潤滑剤Jを充填する。以下、順次区画204b〜204jについても同様に潤滑剤Jの充填を行う。本実施形態においては、両端に位置する区画204a、204jについて予め定められた潤滑剤Jの充填量が、それぞれ同一で且つ他の区画204b〜204iについて予め定められた潤滑剤Jの充填量より多く(例えば、2%〜7%程度多く)なるように、複数の区画204a〜204jに潤滑剤Jを充填する。複数の区画204a〜204jに充填される潤滑剤Jの量は、キャビティ203の長手方向中央について対称に設定されることが、偏摩耗を防止する上で望ましい。潤滑剤Jは、上方から漏斗542を通じて自然落下されるので、上記各区画内に安息角を形成する山状に積み上げられて充填される。
【0058】
そして、複数の区画204a〜204jについて潤滑剤Jの充填が終了すると、CPUは、第1移動部510及び第2移動部520を制御して、潤滑剤供給部530及びキャビティ仕切部540を金型201から離れるように上方に移動させて、複数の仕切板541を上方に引き上げてキャビティ203から抜き取る(ステップS140、図8)[抜取工程、抜取手段]。これにより、キャビティ203の仕切りが解除される。また、仕切板541を上方に引き抜くのでキャビティ203内の潤滑剤Jが崩れることなく、充填時の形状が維持される。
【0059】
そして、CPUは、第1移動部510及び第2移動部520を制御して、潤滑剤供給部530及びキャビティ仕切部を待避位置(図9(b)に示す右寄りの位置)に移動させる。そのあと、CPUは、パンチ移動部503を制御して、油圧ピストン505をシリンダ部から突出させてパンチ202を金型201に近づくように下方に移動させて、パンチ202の凸部202bを金型201のキャビティ203に嵌め合わせて挿入し、キャビティ203に充填された潤滑剤Jが直方体形状に圧縮する(ステップS150、図9)[圧縮工程、圧縮手段]。また、このとき、CPUは、記憶装置から潤滑剤に加える圧縮圧力(例えば、140kN)を読み出して、当該圧縮圧力でキャビティ203内の潤滑剤Jを圧縮するように、パンチ移動部503を制御する。
【0060】
そして、CPUは、パンチ移動部503を制御して、油圧ピストン505をシリンダ部に没入させてパンチ202を金型201から離すように上方に移動させて、パンチ202の凸部202bをキャビティ203から引き抜く(ステップS160、図10)。
【0061】
そして、図示しない搬送アーム部などによって、金型201が金型保持部502から外されるとともに、金型201が第1金型部分201aと第2金型部分201bと第3金型部分201cと第4金型部分201dとに分解されて、潤滑剤成形物6a1が取り出される。このようにして潤滑剤成形物6a1が成形される。
【0062】
以上より、本発明によれば、金型201によって上方に開口を有する直方体形状のキャビティ203が形成されており、(イ)このキャビティ203を複数の仕切板541によって長手方向に並ぶ複数の区画204a〜204jに仕切り、そして、(ロ)これら複数の区画204a〜204jのそれぞれに予め定められた量の潤滑剤Jを充填したのち、(ハ)複数の仕切板541を上方に引き抜いて仕切りを解除し、それから、(ニ)キャビティ203にパンチ202を挿入して潤滑剤Jを直方体形状に圧縮して潤滑剤成形物6a1を成形するので、キャビティ203を仕切ることにより形成された区画に充填される潤滑剤の量(潤滑剤の充填量)に応じて当該区画に対応する潤滑剤成形物6a1の箇所の密度が定まり、そのため、全ての区画204a〜204jに同量の潤滑剤Jを充填することで均一な密度分布の潤滑剤成形物6a1を容易且つ安価に成形することができ、または、任意の一又は複数の区画に充填される潤滑剤Jの量を、他の区画に充填される潤滑剤Jの量と異ならせることで、規則的な密度分布の潤滑剤成形物6a1を容易且つ安価に成形することができ、即ち、潤滑剤Jの密度分布のばらつきがなく、偏摩耗のない潤滑剤成形物6a1を容易且つ安価に成形できる。また、複数の仕切板541を上方に引き上げてキャビティ203から抜き取ることで当該キャビティ203の仕切りを解除するので、仕切りを解除するときに任意の一の区画に充填された潤滑剤Jがそれに隣接する他の区画に充填された潤滑剤Jと混ざることがなく、そのため、精度の高い密度分布の潤滑剤成形物6a1を成形できる。
【0063】
また、キャビティ203を複数の仕切板541よって長手方向に並ぶ10個の複数の区画204a〜204jに仕切り、これら複数の区画204a〜204jのうち両端の区画204a、204jに充填される潤滑剤Jの量が、それぞれ同一で且つこれら区画204a、204j以外の他の区画204b〜204iに充填される潤滑剤Jの量より多くなるように、複数の区画204a〜204jのそれぞれに潤滑剤Jを充填するので、両端部分の密度が互いに同一で且つ他の部分(即ち、両端部分に挟まれた中央部分)より高くなるように構成された潤滑剤成形物6a1を成形することができる。このような潤滑剤成形物6a1においては、密度の高い両端部分が、密度の低い中央部分より削れにくくなるので、当該両端部分によってブラシローラに押しつけられる圧力を二点支持でき、そのため、ブラシローラの摺擦により削られる速度が長手方向により均一になるので、より偏摩耗のない潤滑剤成形物6a1を成形できる。
【0064】
また、複数の区画204a〜204j内には、潤滑剤Jが上方から漏斗542を通じて自然落下されるので、上記各区画内に安息角を形成する山状に積み上げられて充填されるが、このような山状に積み上げられた潤滑剤Jを均すことなくそのままパンチで圧縮できるので、工数が少なく容易且つ安価に潤滑剤成形物6a1を成形できる。
【0065】
なお、上述した本実施形態においては、図11(a)に模式的に示すように、両端の区画204a、204j(図中、a、jで示す)に充填される潤滑剤Jの量が、それぞれ同一で且つこれら区画204a、204j以外の他の区画204b〜204i(図中、b〜iで示す)に充填される潤滑剤Jの量より多くなるように、複数の区画204a〜204jのそれぞれに潤滑剤Jを充填するものであったが、これに限定されるものではない。これ以外にも、例えば、図11(b)に示すように、両端の区画204a、204jに代えて、両端近傍の区画204b、204iに充填される潤滑剤Jの量が、それぞれ同一で且つこれら区画204b、204i以外の他の区画204a、204c〜204h、204jに充填される潤滑剤Jの量より多くなるようにしてもよい。
【0066】
または、図11(c)に示すように、一方の端の区画204aから中央の区画204eまで潤滑剤Jの量が徐々に少なくなり、中央の区画204fから他方の端の区画204jまで潤滑剤Jの量が徐々に多くなるようにしてもよい。換言すると、充填工程では、両端の区画から中央の区画に向かうにしたがって徐々に充填される潤滑剤Jの量が少なくなるように、複数の区画のそれぞれに潤滑剤Jを充填するようにしてもよい。このように充填することで、潤滑剤の密度が、潤滑剤成形物の両端部分から中央部分に向かうにしたがって徐々に低くなるように構成された潤滑剤成形物を成形できる。このような密度分布の潤滑剤成形物は、低密度部分に対して相対的に削れにくい高密度部分が両端に設けられているので、潤滑剤成形物がブラシローラによって削られたときに、常に両端部が他の部分と同一か又は他の部分より多く残り(即ち、両端部の高さが他の部分の高さ以上となり)、そのため、ブラシローラに対して二点支持で安定して押し当てられて、偏摩耗をより防止できる。または、図11(d)に示すように、全ての区画204a〜204jに充填される潤滑剤Jの量を同一になるようにしてもよい。
【0067】
次に、本発明の潤滑剤成形物の一実施形態について、図12〜図15を参照して説明する。この潤滑剤成形物は、上述した潤滑剤成形装置500を用いて成形されている。この潤滑剤成形物は、潜像を担持する像担持体の表面にニップを形成するように当接されたブラシローラによって当該表面に塗布される。
【0068】
潤滑剤成形物6a1は、図12に示すように、例えば、ステアリン酸亜鉛を主成分とする微粉末状の潤滑剤を直方体形状に圧縮して成形されている。勿論、これ以外の潤滑性物質を用いて成形されていても良い。本実施形態において、潤滑剤成形物6a1は、幅10mm、長さ322mm、高さ21mmの直方体形状に成形されている。
【0069】
この潤滑剤成形物6a1は、図13に示すように、長手方向(図12の左右方向)の両端部分の潤滑剤の密度が、それぞれ同一で且つ中央部分の潤滑剤の密度より高くなるように成形されている。このような密度分布となる潤滑剤成形物6a1は、上述した潤滑剤成形装置500において、複数の区画204a〜204jに、図11(a)に示すような配分で潤滑剤Jを充填することにより得られる。
【0070】
以上より、本発明によれば、潤滑剤成形物6a1が、直方体形状に形成され、且つ、当該潤滑剤成形物6a1の両端部分における潤滑剤の密度が、中央部分における潤滑剤の密度より高くされているので、密度の高い両端部分によってブラシローラに押しつけられる圧力を二点支持でき、そのため、ブラシローラの摺擦により削られる速度が長手方向に均一になり偏摩耗を防止できる。
【0071】
また、潤滑剤成形物6a1の密度分布は、上記に限定されるものではなく、例えば、潤滑剤成形物6a1を、図14に示すように、両端から中央に向かって徐々に密度が低くなるような密度分布に成形してもよい。換言すると、潤滑剤の密度が、潤滑剤成形物の両端部分から中央部分に向かうにしたがって徐々に低くなるように構成されていてもよい。このような密度分布となる潤滑剤成形物6a1は、上述した潤滑剤成形装置500において、複数の区画204a〜204jに、図11(c)に示すような配分で潤滑剤Jを充填することにより得られる。または、潤滑剤成形物6a1を、図15に示すように、長手方向全体にわたって密度が均一となるような密度分布に成形してもよい。このような密度分布となる潤滑剤成形物6a1は、上述した潤滑剤成形装置500において、複数の区画204a〜204jに、図11(d)に示すような配分で潤滑剤Jを充填することにより得られる。そして、これらのような密度分布に成形された潤滑剤成形物6a1においても、上記と同様に、ブラシローラの摺擦により削られる速度が長手方向に均一になるので偏摩耗を防止でき、特に、図14に示す密度分布とすることで、低密度部分に対して相対的に削れにくい高密度部分が両端に設けられ、これにより潤滑剤成形物がブラシローラによって削られたときに、常に両端部が他の部分と同一か又は他の部分より多く残り(即ち、両端部の高さが他の部分の高さ以上となり)、そのため、ブラシローラに対して二点支持で安定して押し当てられて、偏摩耗をより防止することができる。
【0072】
次に、本発明の一実施形態に係る潤滑剤塗布装置について、図16〜図18を参照して説明する。
【0073】
潤滑剤塗布装置6は、図16に示すように潜像を担持する像担持体としての感光体ドラム1を有するプロセスカートリッジ10に設けられている。潤滑剤塗布装置6は、潤滑剤供給部材としての潤滑剤カートリッジ6aと、ブラシローラ6bと、塗布ブレード6cと、塗布ブレード支持部材6dと、を有して構成されている。
【0074】
潤滑剤カートリッジ6aは、図17、図18に示すように、上述した潤滑剤成形物6a1と、潤滑剤保持部材6a2と、加圧スプリング6a3と、潤滑剤カートリッジフレーム6a4と、を有して構成されている。潤滑剤保持部材6a2は、帯板状の上壁部と、当該上壁部の長辺から下方に向けて伸びる一対の側壁部と、を有した角樋状に形成されており、この上壁部の上面には、両面テープ等の接着手段によって潤滑剤成形物6a1が接着されている。潤滑剤カートリッジフレーム6a4は、上方に開口を有する長尺の箱状に形成されており、その内側には、潤滑剤成形物6a1を開口側に向けるようにして潤滑剤保持部材6a2が収容されている。加圧スプリング6a3は、潤滑剤保持部材6a2と潤滑剤カートリッジフレーム6a4との間に挟まれるようにして、潤滑剤保持部材6a2の両端部分に1つずつ計2個配設されている。加圧スプリング6a3は、潤滑剤保持部材6a2を上記開口側に向けて付勢している。これにより、潤滑剤成形物6a1は、ブラシローラ6bに押しつけられる。
【0075】
本実施形態において、潤滑剤カートリッジ6aは、ブラシローラ6bの下方に配置されて、当該ブラシローラ6bに下方から潤滑剤成形物6a1を押しつけているが、これに代えて、潤滑剤カートリッジ6aをブラシローラ6bの上方に配置して、当該ブラシローラに上方から潤滑剤成形物6a1を押しつけるようにしてもよい。即ち、ブラシローラ6bに対して、自由なレイアウトで潤滑剤カートリッジ6aを配置し、所定の画像形成プロセスを維持することが可能である。
【0076】
ブラシローラ6bは、潤滑剤塗布装置6の中において回転自在に設けられていて、感光体ドラム1と同一又は単独で駆動部から駆動力を受けて回転される。また、回転方向は特に規定しないが、例えば、潤滑性物質を多く感光体ドラム1上に供給したい場合には、感光体ドラム1の回転方向に対して、ブラシローラ6bの回転方向は逆回転にするなど適宜選択することが可能である。また、ブラシローラ6bは、その図示しないブラシ繊維を感光体ドラム1に対して、0.5〜1.0mm食い込むように接触されている。
【0077】
ブラシローラ6bの製造方法としては、化学繊維を生布(基布)に植え込んで作ったパイルを導電性の芯金に螺旋状に巻きつけて作る方法や、前記化学繊維を接着剤で表面を覆われた芯金に直接植え込む方法などがある。このような化学繊維として、ポリプロピレン、ポリエステル、PET、ナイロン、およびアクリルなどの熱可塑性の樹脂繊維を用いることが好ましい。特に、感光体ドラム1を傷つけることなく感光体ドラム1の表面に潤滑剤を供給することが可能なポリエステル、及び、ナイロン製の繊維が好ましい。また、このような繊維には、カーボン等の導電性フィラーを添加したものがより好ましい。
【0078】
塗布ブレード6cは、ウレタンエラストマー、シリコーンエラストマー、フッ素エラストマー等の弾性部材で構成されている。これらの中でも、特に、ウレタンエラストマーは、耐磨耗性、高機械強度等の点から優れている。塗布ブレード6cは、一般的には、遠心成形により弾性部材をシート状に成形した後、これをブレード形状にカットして得る。
【0079】
塗布ブレード支持部材6dは、好ましくは、金属、プラスチック及びセラミックから選ばれる材料で構成されるが、それらに限定されるものではない。機械強度の高いSUS等の鋼板、アルミニウム板、又は、リン青銅等の銅板を用いることもできる。このような材料で構成される塗布ブレード支持部材6dは、上記塗布ブレード6cを保持して、所定の当接圧、当接角で当該塗布ブレード6cを感光体ドラム1の表面に当接させる。
【0080】
また、本発明による潤滑剤塗布装置は、前述のように、感光体ドラム1の周辺に取り付けてその表面に潤滑剤を塗布するものとして好適であるが、中間転写ベルト5b等の他の像担持体に取り付けても同様の効果を奏する。
【0081】
以上より、本発明によれば、潤滑剤塗布装置が有する潤滑剤供給部材としての潤滑剤カートリッジ6aには、上述した潤滑剤成形物6a1が設けられているので、潤滑剤成形物6a1の偏摩耗がなく、そのため、潤滑剤を長期間にわたり安定して感光体ドラム1の表面に供給して塗布することができる。
【0082】
次に、上述した潤滑剤塗布装置が設けられたプロセスカートリッジを有する画像形成装置について、図19を参照して説明する。
【0083】
画像形成装置100は、図19に示すように、イエロー(以下Y)、シアン(以下C)、マゼンタ(以下M)、ブラック(以下K)の4色トナーから一画像を形成するタンデム型の画像形成装置である。この画像形成装置100は、それぞれ前記4色のトナー像を形成する像担持体として4つの感光体ドラム1Y、1C、1M、1Kを備えており、後述するように、これらの感光体ドラム1Y、1C、1M、1Kを中心として、その外周表面に、帯電装置2、現像装置4、潤滑剤塗布装置6、クリーニング装置7を備えたプロセスカートリッジ10Y、10C、10M、10Kが、それぞれ図の左から順に配列されている。これらのプロセスカートリッジ10Y、10C、10M、10K上には、4つのローラ52、53、54、55に掛け回されて支持された無端状の中間転写ベルト31が各に感光体ドラム1Y、1C、1M、1Kに接触しながら図中Aの方向に駆動移動されている。
【0084】
前記4つのプロセスカートリッジ10Y、10C、10M、10Kの下方には、帯電した各感光体ドラム1Y、1C、1M、1Kの表面に各色の画像データに基づいて照射されるレーザー光Lによって潜像を形成する露光ユニット25が備えられている。また、中間転写ベルト31を挟んで、各感光体ドラム1Y、1C、1M、1Kと対向する位置には、感光体ドラム1Y、1C、1M、1K上に形成されたトナー像を中間転写ベルト31上に一次転写する一次転写ローラ32がそれぞれ配置されている。一次転写ローラ32には、図示しない電源部に接続されていて、所定の電圧が印加される。
【0085】
中間転写ベルト31のローラ52で支持された部分の外側には、二次転写ローラ34が圧接されている。二次転写ローラ34は、図示しない電源に接続されており、所定の電圧が印加される。二次転写ローラ34と中間転写ベルト31との接触部が二次転写部であり、中間転写ベルト31上のトナー像が転写紙(記録紙)に転写される。中間転写ベルト31のローラ55で支持された部分の外側には、二次転写後の中間転写ベルト31の表面をクリーニングする中間転写ベルトクリーニング装置33が設けられている。
【0086】
前記二次転写部の上方には、転写紙上のトナー像を転写紙に半永久的に定着させる定着装置40が備えられている。この定着装置40は、内部にハロゲンヒータを有する加熱ローラ42及び定着ローラ44に巻き掛けられた無端の定着ベルト43と、定着ベルト43を介して定着ローラ44に対向、圧接して配置される加圧ローラ45と、から構成されている。画像形成装置100の下部には、転写紙を載置して二次転写部に向けて転写紙を送り出す給紙装置20が備えられている。
【0087】
図20は、画像形成装置100における4つのプロセスカートリッジ10Y、10C、10M、10Kのうちの1つのプロセスカートリッジ10の拡大説明図である。プロセスカートリッジ10は、感光体ドラム1の周りに、感光体ドラム1表面に電荷を与える帯電装置2、感光体ドラム1表面に形成された潜像を各色トナーで現像してトナー像とする現像装置4、感光体ドラム1の表面に潤滑剤を供給・塗布する潤滑剤塗布装置6、トナー像転写後の感体光ドラム1の表面のクリーニングをするクリーニング装置7がそれぞれ配置されている。プロセスカートリッジ10は、部品の交換、保守、点検の際に、画像形成装置100の本体から引き出し可能に構成されている。
【0088】
潤滑剤塗布装置6は、潤滑剤成形物6a1が設けられた潤滑剤カートリッジ6aと、回転駆動されて潤滑剤成形物6a1から微粉末状の潤滑剤を削り取るとともに感光体ドラム1の表面に供給するブラシローラ6bと、ブラシローラ6bによって供給された微粉末状の潤滑剤を感光体ドラム1の表面に塗布する塗布ブレード6cと、を有している。潤滑剤カートリッジ6aは、潤滑剤塗布装置6に対して着脱可能に設けられており、容易に交換できる。
【0089】
感光体ドラム1は、プロセスカートリッジ10に回転可能に支持されていて、その表面の一部が転写装置5の中間転写ベルト5bに接している。5aは転写ローラである。感光体ドラム1は、直径が30から100mm程度の導電性支持体表面に光導電性物質である感光層を設けたものである。導電性支持体にはアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス等の導電性金属が可能である。なお、本実施形態では、像担持体としてドラム形状(円筒形状)の感光体ドラム1を用いているが、これに限らず、例えば、増反自体としてベルト状の感光体をもちいてもよい。感光体ドラム1は電荷発生材と電荷輸送材との機能が一体的に構成された単層型のものと、電荷発生層と電荷輸送層との2層構成となった機能分離型のものを用いることができる。一般的な機能分離型の感光体ドラム1には、導電性支持体上に直接、又は、下引き層(中間層)を介して電荷発生層が設けられ、そして、この電荷発生層上に電荷輸送物質を含有する樹脂層(電荷輸送層)が設けられている。特に、機能分離型の積層像担持体を用いると感度設計の自由度が広がるので、像担持体1には機能分離型の積層像担持体が好ましく、本実施例では積層像担持体を採用した。
【0090】
帯電装置2は、導電性芯金の周りに中抵抗の弾性層や樹脂層を被覆して構成される帯電ローラ2aや帯電ローラ2aを像担持体1に当接させるための図示しないスプリング等を備えている。帯電ローラ2aは図示しない電源部に接続されており、所定の直流電圧および交流電圧が印加される。また、この帯電ローラ2aは、両端部にスペーサー部材を設けると、このスペーサーが像担持体1と当接し、像担持体1と一定のギャップを持った非接触で配置することも可能となる。本実施例では、帯電部材の長寿命化のため前述の非接触での帯電方式を採用した。また、この帯電ローラ2aと像担持体1とが接している帯電ローラ2aの周囲には、帯電ローラ2aの表面に付着した異物を清掃する帯電清掃ローラ2bが設けられている。これにより、帯電ローラ2aを更に長寿命化することが可能となる。
【0091】
露光装置3は、露光ユニット25に設けられており、公知のレーザー方式によって、カラー画像形成に対応した光情報を一様に帯電された感光体ドラム1の表面に潜像として照射する。LEDアレイと結像手段から成る露光装置も採用可能である。本発明では、露光装置3は通常の画像形成終了後、制御部から信号を受け取った際に像担持体全面にレーザーを照射することで、感光体1ドラム上の残留電荷を取り除く働きも受け持つ。
【0092】
現像装置4は、感光体ドラム1と対向する位置に、内部に磁界発生手段を備える現像スリーブ4aが配置されている。現像スリーブ4aの下方には図示しないトナーボトルから投入されるトナーを現像剤と混合し、攪拌しながら現像スリーブ4aへ汲み上げるための2つのスクリュー4bが備えられている。現像スリーブ4aによって汲み上げられるトナーと磁性キャリアからなる現像剤は、ドクターブレード4cによって所定の現像剤層の厚みに規制され、現像スリーブ4aに担持される。現像スリーブ4aは、感光体ドラム1との対向位置において矢印の方向に移動しながら、現像剤を担持搬送し、トナーを感光体ドラム1の潜像面に供給する。
【0093】
クリーニング装置7は、クリーニング部材としてクリーニングブレード7a、前記クリーニングブレード7aを保持するためのブレード保持部材7b、及び、クリーニングされて余剰になったトナーや紙粉等を搬送しつつ回収するトナー回収コイル7cを備えている。
【0094】
上述した画像形成装置100は、各感光体ドラム1Y、1C、1M、1Kの表面に放電して該感光体ドラム1Y、1C、1M、1Kの表面に電荷を与え帯電させ、この帯電させた感光体ドラム1Y、1C、1M、1Kの表面をそれぞれ露光して各感光体ドラム1Y、1C、1M、1Kの表面に静電潜像を形成させる。そして、画像形成装置100は、感光体ドラム1Y、1C、1M、1Kの表面に形成させた静電潜像にトナーを供給して可視像化させ、これら可視像を中間転写ベルト5bに順次多重転写して中間転写ベルト5b上に多色画像を形成させる。そして、画像形成装置100は、この多色画像を転写紙等の記録媒体に静電的に一括再転写させて多色画像を形成する。
【0095】
本発明者らは、以下の実施例1〜5、比較例1に示すように密度分布の異なる複数の潤滑剤成形物を成形し、それぞれの潤滑剤成形物についての偏摩耗及び形成された画像の品質について確認を行った。
【0096】
実施例1〜5及び比較例1においては、ステアリン酸亜鉛を主成分とする微粉末状の潤滑剤(ジンクステアレート GF−200(平均粒径14μm)、日油社製)を上記金型201及びパンチ202で圧縮して、幅10mm、長さ322mm、高さ21mmの直方体形状の潤滑剤成形物を成形した。
【0097】
(実施例1)
上述した潤滑剤成形装置500を用いて、次のようにして潤滑剤成形物を成形した。9枚の仕切板541を互いに平行で且つ水平方向に等間隔に並ぶように仕切部材保持部521に取り付けて、これら複数の仕切板541で金型201のキャビティ203を10個の区画に仕切り、これらの区画に一方の端から順に、(a)7.81g、(b)7.76g、(c)7.71g、(d)7.66g、(e)7.61g、(f)7.61g、(g)7.66g、(h)7.71g、(i)7.76g、(j)7.81gの微粉末状の潤滑剤を充填するとともに140kNの圧力で圧縮して潤滑剤成形物を得た。
【0098】
(実施例2)
9枚の仕切板541でキャビティ203を10個の区画に仕切り、これらの区画に一方の端から順に、(a)8.11g、(b)7.61g、(c)7.61g、(d)7.61g、(e)7.61g、(f)7.61g、(g)7.61g、(h)7.61g、(i)7.61g、(j)8.11gの潤滑剤を充填した以外は、実施例1と同様にして、潤滑剤成形物を得た。
【0099】
(実施例3)
5枚の仕切板541でキャビティ203を6個の区画に仕切り、これらの区画に一方の端から順に、(a)13.01g、(b)12.85g、(c)12.68g、(d)12.68g、(e)12.85g、(f)13.01gの潤滑剤を充填した以外は、実施例1と同様にして、潤滑剤成形物を得た。
【0100】
(実施例4)
5枚の仕切板541でキャビティ203を6個の区画に仕切り、これらの区画に一方の端から順に、(a)13.18g、(b)12.68g、(c)12.68g、(d)12.68g、(e)12.68g、(f)13.18gの潤滑剤を充填した以外は、実施例1と同様にして、潤滑剤成形物を得た。
【0101】
(実施例5)
9枚の仕切板541でキャビティ203を10個の区画に仕切り、これらの全ての区画に同一に7.71gの潤滑剤を充填した以外は、実施例1と同様にして、潤滑剤成形物を得た。
【0102】
(比較例1)
図21に示すように、キャビティ203の長手方向に沿って潤滑剤吐出ノズルを移動させながら当該潤滑剤ノズルから潤滑剤を吐出させて、キャビティ203に77.1gの潤滑剤を充填するとともに140kNの圧力で圧縮して、潤滑剤成形物を得た。
【0103】
これら実施例1〜5、比較例1の潤滑剤成形物を上述した画像形成装置100(即ち、潤滑剤塗布装置6)に組み込み、平均円形度が0.972、体積平均粒径が5.0μm、結着樹脂の熱軟化点が70℃の重合トナーを用いて、A4サイズの記録紙に5%濃度の規定画像を45枚/分の速度で200000枚連続印刷した。そして、潤滑剤成形物の偏摩耗及び形成された画像の品質について、以下の評価基準を用いて評価した。
[偏摩耗]
○・・・潤滑剤成形物が長手方向に均一な厚みで残存している
×・・・潤滑剤成形物が目視で確認できる程度に傾いて偏摩耗している
[画像品質]
○・・・1枚目の画像と200000枚目の画像とにおいて目視で確認できる画像不良及び画質劣化なし
×・・・1枚目の画像と200000枚目の画像とにおいて目視で確認できる画像不良及び画質劣化のいずれかあり
【0104】
偏摩耗及び画像品質の評価結果を表1に示す。
【0105】
【表1】

【0106】
表1に示す評価結果から、実施例1〜5では、200000枚印刷した後でも、潤滑剤成形物が長手方向に均一な厚みで残存しているので、潤滑剤を長期間にわたり安定して感光体ドラムの表面に供給して塗布することができ、画像不良や経時での画質劣化を防ぐことができた。また、実施例1〜5の結果から、キャビティ203の区画数は、6〜10の間において任意であることが確認された。これに対して、比較例1では、潤滑剤成形物の偏摩耗が発生して、画像不良や経時での画質劣化が発生した。
【0107】
このような評価結果からも、本発明の効果を確認することができた。
【0108】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0109】
1 感光体ドラム(像担持体)
6 潤滑剤塗布装置
6a 潤滑剤カートリッジ(潤滑剤供給部材)
6a1 潤滑剤成形物
6b ブラシローラ
10 プロセスカートリッジ
100 画像形成装置
201 金型
202 パンチ
203 キャビティ
204a〜204j 複数の区画
500 潤滑剤成形装置(潤滑剤成形物の成形装置)
501 ベース部
502 金型保持部
503 パンチ移動部
504 支柱
505 油圧ピストン
506 パンチ保持部
510 第1移動部
511 供給手段保持部
512 第1アクチュエータ
513 第2アクチュエータ
520 第2移動部(仕切部材移動部)
521 仕切部材保持部
522 第3アクチュエータ
530 潤滑剤供給部
531 収容容器
532 供給ノズル
535 計量容器
536 連結部材
540 キャビティ仕切部
541 仕切板(仕切部材)
542 漏斗
550 制御部(挿入手段、充填手段、抜取手段、圧縮手段)
J 潤滑剤
【先行技術文献】
【特許文献】
【0110】
【特許文献1】特開2007−153919号公報
【特許文献2】特開2010−060839号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブラシローラによって像担持体の表面に塗布される潤滑剤成形物を、上方に開口を有する直方体形状のキャビティが形成される金型で成形する潤滑剤成形物の成形方法において、
(イ)前記キャビティを長手方向に並ぶ複数の区画に仕切る仕切部材を、当該キャビティに挿入する挿入工程と、
(ロ)前記複数の区画のそれぞれに予め定められた量の潤滑剤を充填する充填工程と、
(ハ)前記仕切部材を上方に引き上げて前記キャビティから抜き取る抜取工程と、
(ニ)前記キャビティにパンチを挿入して前記潤滑剤を直方体形状に圧縮する圧縮工程と、
を順次有することを特徴とする潤滑剤成形物の成形方法。
【請求項2】
前記(イ)工程では、前記キャビティを少なくとも3つ以上の複数の区画に仕切る仕切部材を当該キャビティに挿入し、そして、
前記(ロ)工程では、前記複数の区画のうち両端又はそれら近傍の区画に充填される前記潤滑剤の量がこれら区画以外の他の区画に充填される前記潤滑剤の量より多くなるように、前記複数の区画のそれぞれに前記潤滑剤を充填することを特徴とする請求項1に記載の潤滑剤成形物の成形方法。
【請求項3】
ブラシローラによって像担持体の表面に塗布される潤滑剤成形物を、上方に開口を有する直方体形状のキャビティが形成される金型で成形する潤滑剤成形物の成形装置において、
前記キャビティを長手方向に並ぶ複数の区画に仕切る仕切部材と、
前記仕切部材を移動可能に保持する仕切部材移動部と、
潤滑剤を計量して前記複数の区画のそれぞれに充填する潤滑剤供給部と、
前記キャビティに挿入されるパンチを移動可能に保持するパンチ移動部と、
を有していることを特徴とする潤滑剤成形物の成形装置。
【請求項4】
前記仕切部材移動部によって前記仕切部材を前記キャビティに挿入する挿入手段と、
前記仕切部材が前記キャビティに挿入された後に、前記潤滑剤供給部によって前記複数の区画のそれぞれについて前記潤滑剤を予め定められた量に計量して、当該複数の区画のそれぞれに計量した前記潤滑剤を充填する充填手段と、
前記複数の区画のそれぞれに前記潤滑剤が充填された後に、前記仕切部材移動部によって前記仕切部材を上方に引き上げて前記キャビティから抜き取る抜取手段と、
前記仕切部材が前記キャビティから抜き取られた後に、前記パンチ移動部によって前記キャビティにパンチを挿入して前記潤滑剤を直方体形状に圧縮する圧縮手段と、
が設けられた制御部をさらに有している
ことを特徴とする請求項3に記載の潤滑剤成形物の成形装置。
【請求項5】
前記仕切部材が、前記キャビティを少なくとも3つ以上の複数の区画に仕切るように構成され、かつ、
前記予め定められた潤滑剤の量のうち、前記複数の区画のうち両端又はそれら近傍の区画について予め定められた潤滑剤の量が、これら区画以外の他の区画について予め定められた潤滑剤の量よりも多くなるように設定されている
ことを特徴とする請求項4に記載の潤滑剤成形装置。
【請求項6】
ブラシローラによって像担持体の表面に塗布される潤滑剤成形物において、
前記潤滑剤成形物が、直方体形状に形成され、且つ、
前記潤滑剤成形物の両端部分又はそれら近傍部分における前記潤滑剤の密度が、中央部分における前記潤滑剤の密度より高くされていることを特徴とする潤滑剤成形物。
【請求項7】
像担持体の表面に潤滑剤を塗布するブラシローラと、前記ブラシローラ上に前記潤滑剤を供給する潤滑剤供給部材と、を少なくとも有する潤滑剤塗布装置において、
前記潤滑剤供給部材には、請求項6に記載の潤滑剤成形物が設けられていることを特徴とする潤滑剤塗布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2012−237808(P2012−237808A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105383(P2011−105383)
【出願日】平成23年5月10日(2011.5.10)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】