説明

潤滑剤洗剤の製造方法

本発明は、潤滑剤洗剤として用いるためのアルカリ土類金属サリチル酸塩の製造方法と、該方法によって製造される組成物である。該方法は2工程を含む。工程1は、C14以上の線状α−オレフィンを用いて行なわれ、商業的に受容される収率でアルキルサリチル酸を製造する、サリチル酸のアルキル化である。該アルキル化条件は、油溶性である、主として1置換パラアルキルサリチル酸を製造する。工程2では、該油溶性酸を中和し、プロモーター及び界面活性剤の存在下でCOを用いる石灰の炭酸化によって過塩基化する。過塩基化後の反応混合物を濾過し、溶媒を蒸留によって除去する。或いは、アルキルサリチル酸を、予め過塩基化したアルカリ土類金属スルホン酸塩、例えばスルホン酸カルシウムと反応させて、種々な割合の分散したアルカリ土類金属炭酸塩を含むアルカリ土類金属サリチル酸塩を製造することができる。この方法では、最終生成物の濾過が必要ではなく、したがって、この方法は商業的に好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、“潤滑剤洗剤の製造方法”なる名称の米国仮特許出願第60/422,493号(2002年10月31日出願)に対する合衆国法第120条、タイトル35下での利益を主張する。
1.発明の分野
本発明は、潤滑油に用いるためのアルカリ土類金属過塩基化洗剤(alkaline earth overbased detergent)の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2.関連技術の説明
潤滑油組成物のための添加剤としての有機カルボン酸のアルカリ土類金属塩を用いることは知られている。これらの塩は、エンジンシリンダーの内側が清潔に維持され、ピストン上及びピストン溝内の炭素質生成物の付着が防止され、したがってピストンリングの膠着を確実に防止するのを助ける分散特性(dispersant property)を有する。
【0003】
このような酸の塩基性(又は過塩基化)アルカリ土類金属塩を製造することも知られている。過塩基化(overbasing)は、潤滑油組成物に加えられた場合に、該組成物が用いられるエンジンの運転中に形成される酸性化合物と反応して、該酸性化合物を中和するアルカリ・リザーブ(alkaline reserve)を生じる。それ故、発生する可能性がある任意のスラッジは、該塩の分散特性のために、分散され、一方ではスラッジ形成を促進する酸は中和される。
【0004】
過塩基化サリチル酸塩は、対応するアルキル化サリチル酸を過塩基化することによって製造される。アルキル基は典型的に、油溶性を与えるために約14より多い炭素数の長鎖アルキル基である。アルキル化サリチル酸塩は、フェノールのアルキル化によってアルキルフェノールを形成し、次いでKolbe−Schmitt反応によって該アルキルフェノールをカルボキシル化して、アルキル化サリチル酸を得ることによって、慣用的に製造される。アルキル化サリチル酸を得るためのKolbe−Schmittルートは、高温/高圧の使用に帰因する不利な経済性の他に、実質的な線状アルキル化用フィードを用いる場合に、長鎖アルキルフェノールの全てが容易にカルボキシル化されるとは限らないという問題に苦しむことになる。詳しくは、実質的な線状アルキル化用フィードによるフェノールの慣用的なアルキル化は、オルト−アルキルフェノールとパラ−アルキルフェノールとのほぼ50:50混合物を生じる。この得られた長鎖パラ−アルキルフェノールは、Kolbe−Schmitt反応によって容易にカルボキシル化されるが、得られた長鎖オルト−アルキルフェノールは低反応性であり、実質的な線状アルキル化用フィードに由来するアルキルフェノールの総量の約70%のみが、通常、該反応中にアルキル化サリチル酸に転化されるに過ぎない。
【0005】
この問題を回避する1つの方法は、アルキルサリチレート(例えば、メチルサリチレート)をアルキル化してから、得られたアルキル化アルキルサリチレートに対して加水分解を行なって、アルキル化サリチル酸を得ることである。アルキルサリチレートをアルキル化する方法は、米国特許第5,434,293号明細書に開示されている。
【0006】
DD−A−269619とDD−A−293108の両方は、触媒として、それぞれ、酸性イオン交換樹脂又はポリリン酸を用いる、オレフィンによるサリチル酸の直接アルキル化を開示している。両方の資料は、触媒としての硫酸の使用(オレフィンによるサリチル酸のアルキル化を包含しない先行技術方法における)が、例えば腐食問題及び副反応のような、多くの欠点を有するので、好ましくないことを教示している。
【0007】
DE689600は、触媒としての過塩素酸の使用を開示している。
米国特許第1,998,750号明細書は、サリチル酸と、炭素数5〜7の任意の非芳香族一価アルコールとの、又はアミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基又はヘプチル基を与えることができる化合物との硫酸の存在下での縮合を開示している。
【0008】
米国特許第4,810,398号明細書は、有機カルボン酸のブレンドの塩基性アルカリ土類金属塩が(a)炭化水素溶媒中の1当量の有機カルボン酸のブレンドと1当量を超えるアルカリ土類金属水酸化物及び(又は)酸化物との混合物を調製する工程;(b)得られた混合物中に、二酸化炭素を過剰なアルカリ土類金属1当量につき少なくとも0.5当量の二酸化炭素の量で導入する工程;及び(c)残留固体(もしあるならば)と水層(もしあるならば)とを除去する工程によって製造されることを開示している。これによると、有機カルボン酸の該ブレンドはC−C30アルキルサリチル酸と、1種類以上のアルカンカルボン酸(この場合、アルキル部分は分枝しており、炭素原子4〜40個を有する)を含む。このような塩は分散特性を有しており、潤滑油及び燃料組成物に用いるために適すると言われている。
【0009】
米国特許第4,869,837号明細書は、有機カルボン酸のブレンドの塩基性アルカリ土類金属塩の製造方法であって、(a)炭化水素溶媒中の1当量の有機カルボン酸の該ブレンドと1当量を超えるアルカリ土類金属水酸化物及び(又は)酸化物との混合物を調製する工程;(b)得られた混合物中に、二酸化炭素を過剰なアルカリ土類金属1当量につき少なくとも0.5当量の二酸化炭素の量で導入する工程;及び(c)残留固体(もしあるならば)と水層(もしあるならば)とを除去する工程を含む方法を開示している。この方法によると、有機カルボン酸の該ブレンドは、油溶性アルキルサリチル酸と1種類以上の炭化水素置換コハク酸又はコハク酸無水物(この場合、該炭化水素ラジカルは120〜5000の数平均分子量を有する)を含む。
【0010】
米国特許第4,876,020号明細書は、潤滑基油、1種類以上の芳香族カルボン酸過塩基化アルカリ土類金属塩、及び分子量150〜1500を有するポリアルコキシル化アルコールから選択された安定剤を含む潤滑油組成物を開示している。
【0011】
米国特許第5,049,685号明細書は、下記一般式:
【化1】


(上記式中、Rはメチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、tert−ヘキシル基、tert−オクチル基、α,α−ジアルキルベンジル基又は核置換α,α−ジアルキルベンジル基を表す;及びRはtert−ブチル基、tert−アミル基、tert−ヘキシル基、tert−オクチル基、α,α−ジアルキルベンジル基又は核置換α,α−ジアルキルベンジル基を表す。)で示される核置換サリチル酸及びその塩を開示している。核置換サリチル酸とその塩は、水、有機溶媒又は有機ポリマー化合物中への良好な溶解性を有すると言われており、これらは、ポリマー化合物のための抗菌剤、殺菌剤若しくは安定剤として、又は記録用物質(recording materials)のための着色剤として非常に好ましい。
【0012】
米国特許第5,415,792号明細書は、潤滑油組成物のための有用な添加剤であると言われている過塩基化アルキルサリチレートを開示している。特に、該組成物は潤滑油組成物に洗浄力及び分散性を与えると同時に、アルカリ・リザーブを与える。
【0013】
米国特許第5,434,293号明細書は、固体酸性アルキル化触媒と、ほぼ等モル量のアルキルサリチレート及びアルキル化用フィードストックを用いる、アルキルサリチレートのアルキル化方法を開示している。
【0014】
米国特許第5,451,331号明細書は、300を超えるTBNを有する潤滑油添加剤濃縮物の製造方法であって、高温において成分(A)一定のサリチル酸誘導体、成分(B)反応中の中間点で1回の添加で又は複数回の添加で加えられるアルカリ土類金属塩基、成分(C)(i)水、(ii)炭素数2〜4の多価アルコール、(iii)ジ−(C若しくはC)グリコール、(iv)トリ−(C2−C4)グリコール、(iv)式(I)R(OROR(I)[式中、RはC−Cアルキル基であり、Rはアルキレン基であり、Rは水素若しくはC−Cアルキル基であり、xは1〜6の整数である]で示される、モノ−若しくはポリ−アルキレングリコールアルキルエーテル、(vi)C−C20一価アルコール、(vii)C−C20ケトン、(viii)C−C10カルボン酸エステル又は(ix)C−C20エーテルである、少なくとも1種類の化合物、成分(D)潤滑油、成分(E)成分(B)の添加後若しくは各添加後に加えられる二酸化炭素、成分(F)一定のカルボン酸若しくは誘導体、並びに成分(G)(i)無機ハロゲン化物或いは(ii)アルカン酸アンモニウム又はギ酸若しくはアルカン酸モノ−、ジ−、トリ−若しくはテトラ−アルキルアンモニウムを反応させることを含む方法を開示している。但し、成分(G)が(ii)である場合に、成分(F)は酸塩化物ではなく、全ての成分の重量比率は、300を超えるTBNを有する濃縮物を製造するような重量比率である。
【0015】
米国特許第5,734,078号明細書は、アルキル置換基が少なくとも炭素数6であるアルキルサリチル酸の製造方法であって、サリチル酸を少なくとも炭素数6であるオレフィンと、触媒としての硫酸の存在下、高温において反応させることを含む方法を開示している。このようなアルキル化サリチル酸の金属塩を含む潤滑油添加剤及びそれらの製造方法も開示されている。
【0016】
米国特許第5,792,735号明細書は、燃料油を残留油含量と共に含む低速度又は中速度ジーゼルエンジンへの使用に適すると言われる潤滑油組成物であって、300を超えるTBNを有するヒドロカルビル置換フェネート濃縮物と、ヒドロカルビル置換サリチレート及びヒドロカルビル置換スルホネートの少なくとも一方をさらに含むことを特徴とする潤滑油組成物を開示している。ヒドロカルビル置換フェネートは、好ましくは、式:RCH(R)COH[式中、RはC10−C24アルキル基であり、Rは水素又はC−Cアルキル基である]で示されるカルボン酸、例えばステアリン酸を組み入れることによって修飾されたフェネートである。
【0017】
米国特許第6,034,039号明細書は、クランク室潤滑油に改良された付着制御及び腐食防止を与えると言われる複合洗剤(complex detergent)を開示している。
上記開示は、それらの全体において、本明細書に援用される。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0018】
発明の概要
本発明は、潤滑剤洗剤として用いるためのアルカリ土類金属サリチル酸塩の製造方法及び該方法によって製造される組成物に関する。該方法は、2工程を含む:
工程1:
14以上の線状α−オレフィンを用いて、サリチル酸のアルキル化を行なって、商業的に受容される収率でアルキルサリチル酸を製造する。該アルキル化条件は、油溶性である、主として1置換パラアルキルサリチル酸を製造する。
工程2:
次いで、該油溶性酸を中和し、例えばメタノールのようなプロモーター及び界面活性剤、例えばアルキルサリチル酸の存在下で、COを用いる石灰(lime)の炭酸化(carbonation)によって過塩基化する(overbased)。過塩基化(overbasing)後の反応混合物を濾過し、溶媒を蒸留によって除去する。
【0019】
或いは、アルキルサリチル酸を、過塩基化アルカリ又はアルカリ土類金属スルホン酸塩、石炭酸塩又はカルボン酸塩から成る群から選択された予め過塩基化された洗剤と反応させて、種々な割合の分散したアルカリ又はアルカリ性炭酸塩を含むアルカリ又はアルカリ土類金属サリチル酸塩を製造することができる。この方法では、最終生成物の濾過は必要ではなく、したがって、この方法は商業的に好ましい。過塩基化洗剤が予め過塩基化したアルカリ土類金属スルホン酸塩、例えばスルホン酸カルシウムであることも好ましい。
【0020】
該オレフィン組成が、圧力差走査カロリメトリー(PDSC)と洗剤添加剤適合性及び油溶性との両方での最終生成物の性能に役割を果たすことは、既に判明している。最適PDSCのために好ましい鎖長はC16〜C18であり、高いC18含量は改良された添加剤適合性及び溶解性をもたらす。
【0021】
さらに詳しくは、本発明は、アルカリ土類金属サリチル酸塩の製造方法であって、(A)サリチル酸を少なくとも14個の炭素原子を含む線状α−オレフィンによって、強酸触媒の存在下でアルキル化して、油溶性アルキル化サリチル酸を形成する工程;(B)該油溶性アルキル化サリチル酸を中和する工程;(C)プロモーター及び界面活性剤の存在下で、COを用いる石灰の炭酸化によって、該油溶性アルキル化サリチル酸を過塩基化する工程;(D)(C)の生成物を濾過する工程;及び(E)蒸留によって溶媒を除去する工程を含む方法に関する。
【0022】
他の態様では、本発明は、アルカリ土類金属サリチル酸塩の製造方法であって、(A)サリチル酸を少なくとも14個の炭素原子を含む線状α−オレフィンによって、強酸触媒の存在下でアルキル化して、油溶性アルキル化サリチル酸を形成する工程;(B)該油溶性アルキル化サリチル酸を、過塩基化したアルカリ若しくはアルカリ土類金属スルホン酸塩、石炭酸塩又はカルボン酸塩、例えばスルフォン酸カルシウムから成る群から選択された、予め過塩基化した洗剤と反応させて、分散したアルカリ若しくはアルカリ土類金属炭酸塩を変化する割合で含むアルカリ若しくはアルカリ土類金属サリチル酸塩を製造する工程を含む方法に関する。
【0023】
さらに他の態様では、本発明は、(A)サリチル酸を少なくとも14個の炭素原子を含む線状α−オレフィンによって、強酸触媒の存在下でアルキル化して、油溶性アルキル化サリチル酸を形成する工程;(B)該油溶性アルキル化サリチル酸を中和する工程;(C)プロモーター(promoter;促進剤、助解媒)及び界面活性剤の存在下で、COを用いる石灰の炭酸化によって、該油溶性アルキル化サリチル酸を過塩基化する(overbasing)工程;(D)(C)の生成物を濾過する工程;及び(E)蒸留によって溶媒を除去する工程
を含む方法によって製造されるアルカリ土類金属サリチル酸塩に関する。
【0024】
さらに他の態様では、本発明は、(A)サリチル酸を少なくとも14個の炭素原子を含む線状α−オレフィンによって、強酸触媒の存在下でアルキル化して、油溶性アルキル化サリチル酸を形成する工程;(B)該油溶性アルキル化サリチル酸を、過塩基化したアルカリ若しくはアルカリ土類金属スルホン酸塩、石炭酸塩又はカルボン酸塩、例えばスルホン酸カルシウムから成る群から選択された、予め過塩基化した洗剤と反応させて、分散したアルカリ若しくはアルカリ土類金属炭酸塩を変化する割合で含むアルカリ若しくはアルカリ土類金属サリチル酸塩を製造する工程を含む方法によって製造されるアルカリ土類金属サリチル酸塩に関する。
【0025】
好ましい実施態様の説明
上述したように、本発明の方法における第1工程は、C14以上の線状α−オレフィンを用いてサリチル酸をアルキル化して、アルキルサリチル酸を商業的に受容される収率で製造することを含む。該アルキル化条件は、主として、油溶性である1置換パラ−アルキルサリチル酸を製造する。
【0026】
アルキルサリチル酸は、サリチル酸及び線状α−オレフィンから、触媒として強酸、好ましくは無水メタンスルホン酸を用いて製造される。用いることができる他の強酸は、例えば、硫酸、塩酸、硝酸、トリフルオロ酢酸、過塩素酸等を包含する。条件は、例えば、オレフィン中のサリチル酸のサスペンジョンを約120〜約150℃の範囲内の温度で反応させるような条件である。生成物は、オルト−及びパラ−モノアルキル化サリチル酸と、若干のジアルキル化及びトリアルキル化サリチル酸との混合物である。アルキルフェノール含量は非常に低く、生成物の色は、Kolbe−Schmitt合成によって得られたものに比べて優れている。該アルキル化サリチル酸は、理論値の約85〜95%である酸価を有する。これらのサリチル酸の対応過塩基化カルシウム塩のPDSC及びパネル・コーカー値(panel coker value)は、対照の商業的サリチレート洗剤に同等であるか又はこれよりも優れている。
【0027】
本発明の方法に用いるアルキルサリチル酸は、それが含有するアルキル置換基(単数又は複数)によって油溶性になる。該アルキルサリチル酸が1個より多い、例えば2個又は3個のアルキル置換基を含有しうることが考えられるが、このような置換基の1個のみを、パラ位置に含有することが好ましい。好ましくは、アルキル置換基(単数又は複数)の炭素原子数は少なくとも14であり、好ましくは、14〜30の範囲である。アルキルサリチル酸が主として1個のみの置換基を含有する場合には、該アルキル基は最も好ましくは14〜26個の炭素原子を含有する。アルキル基(単数又は複数)は線状でも、又は分枝状でもあることができるが、最も好ましくは線状である。適当なオレフィンは、非限定的に、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、1−ドコセン、1−テトラコセン、これらの混合物等を包含する。
【0028】
商業的なサリチル酸をさらに精製して、又はもはや精製せずに用いることができる。
反応が行なわれる条件は、用いる予定のオレフィンの性質(nature)に依存する。当業者は、異なるオレフィンによっては、最適反応条件を変えることが望ましいと考えられ、おそらくは望ましいことを自覚するであろう。
【0029】
サリチル酸とオレフィンとを反応させる温度は、好ましくは50℃以上であり、適当には、約50℃〜約200℃の範囲内でありうる。この範囲内の最適温度は、該オレフィンの炭素鎖の長さに依存する。通常は、C14オレフィンに関しては、最適温度は約100℃〜約150℃、例えば約120℃である。
【0030】
反応の所要時間は、通常は、重要ではない。約2〜約36時間の反応時間が通常充分である。
該反応は、必要な場合には、溶媒中で行なうことができるが、通常は、溶媒は用いられない。
該アルキルサリチル酸は、当該技術分野で知られた手段によって反応混合物から取り出すことができる。C14以上のアルキルサリチル酸に関しては、溶媒抽出が典型的に用いられる。
【0031】
本発明の方法の第2工程では、該油溶性酸を中和して、例えばメタノールのようなプロモーター及び例えばアルキルサリチル酸のような界面活性剤の存在下で、COを用いる、石灰の炭酸化によって過塩基化する。過塩基化後の反応混合物を濾過して、溶媒を蒸留によって除去する。
【0032】
或いは、アルキルサリチル酸を予め過塩基化したアルカリ土類金属スルホン酸塩、例えばスルホン酸カルシウムと反応させて、種々な割合の分散したアルカリ土類金属サリチル酸塩を含むアルカリ土類金属サリチル酸塩を製造することができる。この方法では、最終生成物の濾過は必要ではなく、したがって、この方法は商業的に好ましい。
【0033】
本発明の方法によって製造されるアルカリ土類金属サリチル酸塩洗剤は、適当には、サリチル酸カルシウム洗剤、サリチル酸マグネシウム洗剤又はこれらの混合物を包含する。
【0034】
塩基の添加量は、過塩基化塩(overbased salt)、即ち、金属部分の当量数の、アルキルサリチル酸部分の当量数に対する比率が通常は約1.2より大きく、4.5以上ほどの高さになることもできる塩を生じるために充分であるべきである。
【0035】
中性のアルカリ土類金属サリチル酸塩を過塩基化して、例えば炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウムのようなアルカリ土類金属炭酸塩、又は例えばホウ酸マグネシウムのようなアルカリ土類金属ホウ酸塩を製造することによって、過塩基化アルカリ土類金属サリチル酸塩を得ることができる。
【0036】
金属サリチル酸塩洗剤の塩基価(base number)は、特に限定されない;しかし、塩基価は通常、約60〜約350mgKOH/g、好ましくは約150〜約350mgKOH/gの範囲内である。
【0037】
金属塩基は、反応中の中間点において1回添加で又は複数回添加で加えることができる。
過塩基化する反応混合物は適当にさらに、プロモーター、好ましくは酸素含有有機溶媒と、任意に水を含有することができる。適当なプロモーターは、C−Cアルコール、例えばグリコール、プロピレングリコール、グリセロール又は1,3−ジヒドロキシプロパンのような多価アルコール、例えばグリコール若しくはプロピレングリコールのC−Cモノエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,3−若しくは1,4−ジオキサン、又は1,3−ジオキソランのようなエーテルを包含する。好ましくは、該プロモーターはC−Cアルコール、特にメタノールである。
【0038】
アルキルサリチル酸と金属塩基との反応のための溶媒は、(1)炭素数2〜4の多価アルコール;(2)ジ−(C−C)グリコール;(3)トリ−(C−C)グリコール;(4)式:R(OROR[式中、RはC−Cアルキル基であり、Rはアルキレン基であり、Rは水素若しくはC−Cアルキル基であり、xは1〜6の整数である]で示される、モノ−若しくはポリアルキレングリコールアルキルエーテル;(5)炭素数20までの一価アルコール;(6)炭素数20までのケトン;(7)炭素数10までのカルボン酸エステル;(8)揮発性液体炭化水素;又は(9)炭素数20までのエーテルであることができる。
【0039】
好ましい溶媒は、脂肪族又は芳香族のいずれでもよい、不活性炭化水素である。適当な例は、トルエン、キシレン、ナフサ、及び脂肪族パラフィン、例えば、ヘキサン、及び脂環式パラフィンを包含する。
【0040】
該反応にプロモーターとして作用するメタノールと、ナフサとの組み合わせが特に好ましい。
潤滑油添加剤としての過塩基化生成物の予定の使用を考慮すると、補助希釈剤として基油を組み入れることが好ましい。基油は、動物油、植物油、又は鉱油であることができる。好ましくは、基油は、例えばナフテン塩基、パラフィン基(paraffin base)、又は混合基油のような、石油由来潤滑油である。或いは、潤滑油は合成油、例えば合成エステル又はポリマー炭化水素潤滑油であることができる。
【0041】
過塩基化金属塩の製造に、二酸化炭素をガス又は固体の形状で、好ましくはガスの形状で用いることができ、この場合に、二酸化炭素を反応混合物に吹き入れることができる。金属塩基の添加後に、二酸化炭素の添加が典型的に行なわれる。
【0042】
高度に過塩基化した金属塩を製造するために、炭酸化触媒(carbonation catalyst)を用いることができる。該触媒は無機化合物又は有機化合物のいずれでもよいが、無機化合物が好ましい。適当な無機化合物はハロゲン化水素、金属ハロゲン化物、ハロゲン化アンモニウム、金属アルカン酸塩、アルカン酸アンモニウム、又はモノ−、ジ−、トリ−若しくはテトラ−アルキルアンモニウムのギ酸塩若しくはアルカン酸塩を包含する。適当な触媒の例は、塩化カルシウム、塩化アンモニウム、酢酸カルシウム、酢酸アンモニウム、酢酸亜鉛、及び酢酸テトラメチルアンモニウムを包含する。触媒は、典型的に、約2重量%までのレベルで用いられる。高度に過塩基化した金属アルキルサリチル酸塩の製造についてのより完全な記載は、EP−A−0351052に見い出すことができる。
【0043】
上記反応に用いる高温は、適当には、約100°F〜約500°F(約38℃
〜約260℃)の範囲内でありうる。
溶媒中の金属塩の濃縮物は、例えば蒸留ストリッピング(distillative stripping)のような慣用的な手段によって回収することができる。最後に、該濃縮物を必要な場合には濾過することができる。
【0044】
一般に、過塩基化サリチル酸カルシウムの製造方法は、油中のアルキル化サリチル酸と任意にスルホン酸カルシウム又はスルホン酸(便宜的に、以下の考察はカルシウム化合物に重点を置くが、類似性によって、この方法がマグネシウム化合物に、並びにカルシウムとマグネシウムとの混合物にも適用することができることを、当業者は容易に理解するであろう)との溶液を、酸化カルシウム又は水酸化カルシウムのスラリーと反応させ、二酸化炭素を該反応混合物に通してバブルさせ、それによって、過剰な炭酸カルシウムをサリチル酸カルシウム及び存在する場合のスルホン酸カルシウム中に組み入れる(これは、生成物に望ましいリザーブ・アルカリ性(reserve alkalinity)を与える)ことを含む。この方法では、例えばメタノールのような低分子量アルコールと水を加えて、炭酸カルシウムのミセル分散系の形成を促進することが有利であると判明している。
【0045】
水酸化カルシウムは、反応混合物中の唯一のリザーブ・アルカリ性剤として商業的に用いられる場合に、高TBN生成物を得るために実質的な過剰量で用いられる。
【0046】
分散剤は、過塩基化洗剤のための方法及び生成物の任意の成分である。有用な分散剤の1つは、ヒドロカルビル置換コハク酸又はヒドロカルビル置換コハク酸無水物と、少なくとも1個の第1級又は第2級アミノ窒素を含有するアミンとの反応生成物であり、例えば、ポリアルキレンポリアミンは、置換ポリアルキレンポリアミン及びさらに言えば、アンモニアと同様に、この必要条件を満たす。ビス−スクシンイミドもまた、任意の分散剤として有用である。ビス−スクシンイミドは、ヒドロカルビル置換コハク酸又はヒドロカルビル置換コハク酸無水物と、少なくとも2個の第1級及び(又は)第2級窒素を含有するアミンとの反応によって製造される。このようなビス−スクシンイミドは、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン又はトリエチレンテトラアミン又はテトラエチレンペンタアミン又はN−メチルジプロピレントリアミン等のポリイソブテニル・ビス−スクシンイミドである(例えば、Benoit、米国特許第3,438,899号明細書)。
種々な上記分散剤は単独でも、又は混合物としても用いることができる。
【0047】
本発明の過塩基化サリチル酸カルシウムは非晶質ミセル構造を有する。過塩基化サリチル酸カルシウム又は同様な過塩基化洗剤は非晶質炭酸カルシウムの安定な分散系である。
本発明の過塩基化サリチル酸カルシウム洗剤は、約0.1〜25重量%以上の洗剤量でエンジンオイル又は潤滑油に加えることができる。
【0048】
本発明は、非常に多様な潤滑油に適用可能である。潤滑油は、1種類以上の天然油、1種類以上の合成油又はこれらの混合物から構成することができる。天然油は、動物油及び植物油(例えば、ひまし油、ラード油)、液状石油、パラフィン型、ナフテン型及び混合パラフィン型の水素化精製した、溶媒処理した又は酸処理した鉱物性潤滑油を包含する。石炭又はシェールに由来する潤滑粘度の油も、有用な基油である。
【0049】
合成潤滑油は、炭化水素油及びハロ置換炭化水素油、例えば重合した及び共重合したオレフィン(例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレン−イソブチレン・コポリマー、塩素化ポリブチレン、ポリ(1−ヘキセン)、ポリ(1−オクテン)、ポリ(1−デセン));アルキルベンゼン(例えば、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジ(2−エチルヘキシル)ベンゼン);ポリフェニル(例えば、ビフェニル、ターフェニル、アルキル化ポリフェノール);アルキル化ジフェニルエーテル及びアルキル化ジフェニルスルフィド、並びにこれらの誘導体、類似体及び同族体を包含する。
【0050】
アルキレンオキシドポリマー及びインターポリマー並びに末端ヒドロキシル基がエステル化、エーテル化等によって修飾されている、これらの誘導体は、既知合成潤滑油の他のクラスを構成する。これらは、エチレンオキシド又はプロピレンオキシドの重合によって製造されるポリオキシアルキレンポリマー、これらのポリオキシアルキレンポリマーのアルキル及びアリールエーテル(例えば、平均分子量1000を有するメチルポリイソプロピレングリコールエーテル、分子量500〜1000を有するポリエチレングリコールのジフェニルエーテル、分子量1000〜1500を有するポリプロピレングリコールのジエチルエーテル);並びにこれらのモノ−及びポリカルボン酸エステル、例えば、酢酸エステル、混合C−C脂肪酸エステル、及びテトラエチレングリコールのC13オキソ酸ジエステルによって例示される。
【0051】
合成潤滑油の他の適当なクラスは、多様なアルコール(例えば、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、ドデシルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエーテル、プロピレングリコール)による、ジカルボン酸(例えば、フタル酸、コハク酸、アルキルコハク酸及びアルケニルコハク酸、マレイン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、アジピン酸、リノール酸ダイマー、マロン酸、アルキルマロン酸、アルケニルマロン酸)のエステルを含む。これらのエステルの特定の例は、ジブチルアジペート、ジ−(2−エチルヘキシル)セバケート、ジーn−ヘキシルフマレート、ジオクチルセバケート、ジイソオクチルセバケート、ジイソデシルアゼレート、ジオクチルフタレート、ジデシルフタレート、ジエイコシルセバケート、リノール酸ダイマーの2−エチルヘキシルジエステル、及びセバシン酸1モルと、テトラエチレングリコール2モル及び2−エチルヘキサン酸2モルとの反応によって形成される複合エステルを包含する。
【0052】
合成油として有用なエステルは、C−C12モノカルボン酸と、ポリオール及びポリオールエーテル、例えばネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ジペンタエリトリトール及びトリペンタエリトリトール等とから製造されるエステルを包含する。
【0053】
例えばポリアルキル−、ポリアリール−、ポリアルコキシ−及びポリアリールオキシシロキサン油及びシリケート油のような、ケイ素系油(silicon−based oil)は、合成潤滑剤の他の有用なクラスを構成し;これらは、テトラエチルシリケート、テトライソプロピルシリケート、テトラ−(2−エチルヘキシル)シリケート、テトラ−(4−メチル−2−エチルヘキシル)シリケート、テトラ−(p−tert−ブチルフェニル)シリケート、ヘキサ−(4−メチル−2−ペントキシ)ジシロキサン、ポリ(メチル)シロキサン及びポリ(メチルフェニル)シロキサンを包含する。他の合成潤滑油は、リン含有酸の液体エステル(例えば、トリクレシルホスフェート、トリオクチルホスフェート、デシルホスホン酸のジエチルエステル)及びポリマー・テトラヒドロフランを包含する。
【0054】
未精製油、精製油及び再精製油を本発明の潤滑剤に用いることができる。未精製油は、天然又は合成供給源から、さらに精製処理なしに、直接得られる油である。例えば、レトルティング操作(retorting operation)から直接得られるシェール油、蒸留から直接得られる石油、又はエステル化プロセスから直接得られ、さらなる処理なしに用いられるエステル油は、未精製油であると考えられる。精製油は、それらが、1つ以上の性質を改善するために1回以上の精製工程でさらに処理されていること以外は、未精製油に同じである。例えば蒸留、溶媒抽出、酸若しくは塩基抽出、濾過及びパーコレーションのような、多くの該精製方法は、当業者に知られている。再精製油は、精製油を得るために用いられる方法と同様な方法によって、但し、既に使用された油に適用して得られる。このような再精製油は、再生油又は再処理油としても知られており、使用済み添加剤及び油分解生成物を除去する方法によって、しばしば、さらに処理される。
【0055】
本発明は特に、エンジンオイル製剤及びそのための添加剤に関する。本明細書で用いる限り、“エンジンオイル”なる用語は、エンジンオイルに有用でありうる潤滑油を意味し、例として、自動車オイル又はジーゼルエンジンオイルを包含する。本発明の潤滑油組成物は、4ストローク・トランクピストンエンジン及び2ストローク・クロスヘッドエンジンを含めた海洋ジーゼルエンジンの潤滑のためにも適する。
【0056】
製剤化した油は、潤滑粘度範囲内、典型的に、100°Fにおける約45SUSから100°F(約38℃)における約6000SUSまでの粘度を有するべきである。潤滑油はさらに、1種類以上の過塩基化アルカリ土類金属洗剤を含有し、該洗剤の少なくとも1つは、本明細書に記載するようなアルキルサリチル酸に基づく金属含有中性及び過塩基化サリチル酸塩である。洗剤成分は集合的に、通常は0.01重量%から25重量%程度まで、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.1〜5.0重量%の範囲内である有効量を含む。本明細書で特に指定しない限り、全ての重量%は、総潤滑油組成物の重量によるものである。
【0057】
完成潤滑油中に含めるべき添加剤濃縮物量は、最終用途の性質に依存する。海洋潤滑油のためには、9〜100のTBNを生じることが典型的に充分である;自動車エンジン潤滑油のためには、4〜20のTBNを生じることが充分である。
【0058】
本明細書で用いる限り、“総塩基数(Total Base Number)”又は“TBN”は、添加剤1g中のKOHのmgに相当する塩基量を意味する。したがって、高いTBN数は、より大きくアルカリ性の生成物を表し、それ故、より大きいアルカリ性リザーブ(alkalinity reserve)を表す。添加剤組成物の総塩基数は、ASTM試験法第D2896号又は他の同等な方法によって容易に測定される。
【0059】
完成潤滑油は、さらに、有効量の、1種類以上の他の種類の慣用的潤滑油添加剤、例えば粘度指数向上剤、摩耗防止剤、酸化防止剤、分散剤、さび止め剤、流動点降下剤(pour−point depressant)等を含有することもできる。
本発明の利点及び重要な特徴は、下記実施例からさらに明らかになるであろう。
【0060】
例1
サリチル酸のアルキル化
サリチル酸(215.0g)を、スターラーと温度計と加熱マントルとを装備した3リットルのガラス容器に加える。次に、混合C14−C18オレフィン(367.7g)を加え、続いて、例えばメタンスルホン酸45.1gのようなアルキル化触媒を加える。この混合物を120℃に加熱し、この温度に24時間保持する。次に、若干のVM&Pナフサ(582.6g)を導入し、この透明な溶液を沈降させて、使用済み触媒を除去する。回収された生成物は、直接の過塩基化に又は予め過塩基化した洗剤との反応に適した、透明な黄色がかったナフサ希釈アルキルサリチル酸である。
【0061】
例2
サリチル酸カルシウム調製
VM&Pナフサ20g、基油15g及びメタノール20gを含有する反応器に、500TBNスルホン酸カルシウム35gを加える。ひと度完全に混合したならば、例1に記載したアルキルサリチル酸100gを徐々に加え、次の2時間にわたって、温度を420°F(約216℃)に上昇させる。ストリップしたサリチル酸カルシウムは光沢があり、透明であり、粘度45センチストーク、TBN170及びカルシウム%、6.1%を有する。
【0062】
例2の生成物をPDSC(圧力差走査カロリメトリー)で試験して、109分間の誘導時間(induction time)を有することが判明している。対応するスルホン酸カルシウムは30分間未満のOITを有した。
【0063】
同じ生成物をパネル・コーカー試験を用いて高温洗浄力に関して試験して、3.5mgの付着物を有することが判明している。上記反応に塩基(CaCO)の供給源として用いた、対応する過塩基化スルホン酸塩は75mgの付着物を有した。
パネル・コーカー試験は、オイルが高温において表面に接触するときに固体分解生成物を形成するオイルの傾向を測定するための手段である。この試験は、Federal Test Standard 791B、Method3462を行なうように設計されているFalex Panel Coking Test Apparatusによって行なうことができる。
【0064】
例3
サリチル酸カルシウム調製
例1におけるように調製したアルキルサリチレート140gを反応器に加え、続いて、基油50g、VM&Pナフサ220g、メタノール9g、中性スルホン酸カルシウム7.5g及び水和石灰23gを加える。この混合物を140°F(60℃)に加熱して、COを、石灰がCaCOに転化するまで、導入する。この反応混合物を濾過し、蒸留して、流体の光沢ある、透明なサリチル酸カルシウム洗剤を得る。
PDSC試験は、140分間のOITを示し、PanelCoker試験は優れた洗浄力を実証し、付着物は8.5mgであった。
【0065】
例4
サリチル酸カルシウム調製
比較例
アルキルサリチル酸と過塩基化スルホン酸塩との反応は、正確な条件を必要とし、さもなくば、好ましくない結晶質炭酸カルシウムが形成される。下記に示す反応の条件は、主としてバテライト型(vaterite form)のCaCOを含有する完成サリチレートを製造した。
該条件は、メタノール20gに加えて、水20gを含めたこと以外は、例2と同じであった。極性の増加が界面活性剤コロイドを不安定にして、非晶質の油溶性CaCOの、結晶質バテライトへの転化を生じた。完成生成物は粘稠性であり、非常に濁っており、使用に適さなかった。
【0066】
本発明の基礎をなす原理から逸脱せずになされうる多くの変化及び改変を考慮して、本発明に与えられる保護の範囲を理解するために特許請求の範囲を参照すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ土類金属サリチル酸塩の製造方法であって、
(A)サリチル酸を少なくとも14個の炭素原子を含む線状α−オレフィンによって、強酸触媒の存在下でアルキル化して、油溶性アルキル化サリチル酸を形成する工程;
(B)該油溶性アルキル化サリチル酸を中和する工程;
(C)プロモーター及び界面活性剤の存在下で、COを用いる石灰の炭酸化によって、該油溶性アルキル化サリチル酸を過塩基化する工程;
(D)(C)の生成物を濾過する工程;及び
(E)蒸留によって溶媒を除去する工程
を含む方法。
【請求項2】
該強酸触媒が無水メタンスルホン酸である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
該アルキル化工程が約50〜約200℃の範囲内の温度において行なわれる、請求項1記載の方法。
【請求項4】
該線状α−オレフィンが、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、1−ドコセン、1−テトラコセン、及びこれらの混合物から成る群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
該過塩基化工程がプロモーターの存在下で行なわれる、請求項1記載の方法。
【請求項6】
アルカリ土類金属サリチル酸塩の製造方法であって、
(A)サリチル酸を少なくとも14個の炭素原子を含む線状α−オレフィンによって、強酸触媒の存在下でアルキル化して、油溶性アルキル化サリチル酸を形成する工程;
(B)該油溶性アルキル化サリチル酸を、過塩基化したアルカリ若しくはアルカリ土類金属スルホン酸塩、石炭酸塩又はカルボン酸塩から成る群から選択された、予め過塩基化した洗剤と反応させて、種々な割合の分散したアルカリ若しくはアルカリ土類金属炭酸塩を含むアルカリ若しくはアルカリ土類金属サリチル酸塩を製造する工程
を含む方法。
【請求項7】
該強酸触媒が無水メタンスルホン酸である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
該アルキル化工程が約50〜約200℃の範囲内の温度において行なわれる、請求項6記載の方法。
【請求項9】
該線状α−オレフィンが、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、1−ドコセン、1−テトラコセン、及びこれらの混合物から成る群から選択される、請求項6記載の方法。
【請求項10】
該過塩基化工程がプロモーターの存在下で行なわれる、請求項6記載の方法。
【請求項11】
(A)サリチル酸を少なくとも14個の炭素原子を含む線状α−オレフィンによって、強酸触媒の存在下でアルキル化して、油溶性アルキル化サリチル酸を形成する工程;
(B)該油溶性アルキル化サリチル酸を中和する工程;
(C)プロモーター及び界面活性剤の存在下で、COを用いる石灰の炭酸化によって、該油溶性アルキル化サリチル酸を過塩基化する工程;
(D)(C)の生成物を濾過する工程;及び
(E)蒸留によって溶媒を除去する工程
を含む方法によって製造されるアルカリ土類金属サリチル酸塩。
【請求項12】
(A)サリチル酸を少なくとも14個の炭素原子を含む線状α−オレフィンによって、強酸触媒の存在下でアルキル化して、油溶性アルキル化サリチル酸を形成する工程;
(B)該油溶性アルキル化サリチル酸を、過塩基化したアルカリ若しくはアルカリ土類金属スルホン酸塩、石炭酸塩又はカルボン酸塩、例えばスルホン酸カルシウムから成る群から選択された、予め過塩基化した洗剤と反応させて、種々な割合の分散したアルカリ若しくはアルカリ土類金属炭酸塩を含むアルカリ若しくはアルカリ土類金属サリチル酸塩を製造する工程
を含む方法によって製造されるアルカリ土類金属サリチル酸塩。

【公表番号】特表2006−504804(P2006−504804A)
【公表日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−502183(P2005−502183)
【出願日】平成15年10月15日(2003.10.15)
【国際出願番号】PCT/US2003/033461
【国際公開番号】WO2004/041767
【国際公開日】平成16年5月21日(2004.5.21)
【出願人】(502303290)クロンプトン コーポレーション (2)
【出願人】(505159869)クロンプトン カンパニー / コンパニー (2)
【Fターム(参考)】