説明

潤滑剤用接続要素

【課題】エンジンと潤滑剤貯蔵タンクとの間の相対運動を補償することができるエンジンハウジングと潤滑剤貯蔵タンクとの間の接続を提供する。
【解決手段】ピストンエンジンは、エンジンハウジング25と潤滑剤貯蔵タンク23と、エンジンハウジングと潤滑剤貯蔵タンクとを接続する接続要素24とを含む。接続要素は、液密な方法でエンジンハウジングに接続される第1の端部を有するパイプピースを有する。組み立て中のエンジンハウジングと潤滑剤貯蔵タンクとの間の間隔の変化を許容するように補償要素が潤滑剤貯蔵タンクに設けられる。補償要素は、液密接続がパイプピースの第2の端部と潤滑剤貯蔵タンクとの間に確立され得るように、パイプピースの第2の端部が少なくとも部分的に入れられるシール材を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はピストンエンジンのための潤滑剤用接続要素に関する。
【背景技術】
【0002】
大型2ストロークエンジンあるいはまた4ストロークエンジンでは、潤滑用または冷却用の潤滑剤が、たいていはエンジンの下に配置された潤滑剤貯蔵タンクに集められる。それは特に駆動ユニットの潤滑および/またはピストンの冷却の問題である。
【0003】
潤滑剤貯蔵タンクの例は例えば特許文献1に示されている。この文献はクランクケースに戻されるオイル用オーバーフロー通路に関する。この装置はオイルタンクの油面を超えて溢れたオイルを収容するための容積をなくすことを可能にする。オーバーフロー通路は、オイルタンクをクランクケースの内部につなぐとともに、オイルタンクの圧力をクランクケースの圧力と均一にする働きをする。
【0004】
潤滑剤貯蔵タンクは、これらのエンジンでは概して、エンジンの構成部品ではなく、むしろ乗り物のハウジングの構成部品である。乗り物のハウジングは特に船の船体であり得る。したがって、パイプピースにより形成された接続はエンジンと潤滑剤貯蔵タンクとの間に提供される。エンジンが乗り物、例えば船体の内部に配置される場合、潤滑剤タンクが乗り物の胴体に接続されるときに、潤滑剤タンクとエンジンとの間に相対運動が生じる。
【0005】
ピストンエンジンは特に大型エンジンとして設計される。このような大型エンジンは、それぞれが少なくとも190mmの直径を有する複数のピストンを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2002/0003064号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、エンジンと潤滑剤貯蔵タンクとの間の相対運動を補償することができるエンジンハウジングと潤滑剤貯蔵タンクとの間の接続を提供することである。本発明のさらなる目的は、簡単な組立が可能になるエンジンハウジングと潤滑剤貯蔵タンクとの間の液密接続を提供することである。本発明のさらなる目的は、エンジンを乗り物のハウジングに取り付ける前に既に設置され得る、すなわち、乗り物のハウジングに対するエンジンの最終的な位置への固定前であり、設置が現時点において準備され得るとともに、最終組立がシール材を導入することによるエンジンの取り付け後に行われる、エンジンハウジングと潤滑剤貯蔵タンクとの間の液密接続を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、エンジンハウジングと、潤滑剤貯蔵タンクと、エンジンハウジングを潤滑剤貯蔵タンクに接続する接続要素とを含むピストンエンジン装置により満たされる。接続要素は、液密な方法でエンジンハウジングに接続される第1の端部を有するパイプピースを有する。パイプピースは任意の所望の断面を有することができ、パイプピースは特に円形断面を有し得る。パイプピースはまたじょうご状のもの(funnel)として形成されることができ、パイプピースは特に円錐形の断面の広がりを有し得る。
【0009】
補償要素が、特に組み立て中に生じ得るエンジンハウジングと潤滑剤貯蔵タンクとの間の間隔の変化を許容するように、潤滑剤貯蔵タンクに設けられる。補償要素は、液密接続がパイプピースの第2の端部と潤滑剤貯蔵タンクとの間に確立され得るように、パイプピースの第2の端部が少なくとも部分的に入れられるシール材を含む。シール材は特に弾性材料であるので、振動、すなわち、エンジンの運転中のエンジンハウジングと潤滑剤貯蔵タンクとの間の相対運動および/または熱膨張が補償され得る。パイプピースは、エンジンハウジングの開口に入れられる剛体要素である。このために、パイプピースは、開口に位置するそして好ましくはクランプ接続により開口に保持されるフランジを有する。フランジは好ましくはカバー要素とエンジンハウジングとの間に固定される。カバー要素は、ネジ接続を介してエンジンハウジングに固定して接続され得る。フランジ接続を通る潤滑剤の通過を避けることができるように、シール要素が、エンジンハウジングとフランジとの間および/またはフランジとシール要素との間に配置され得る。
【0010】
フランジの外側端部とカバー要素との間に半径方向に間隔が設けられる。この半径方向は、パイプピースの中心軸に垂直に配置された平面内にある。エンジンハウジングに対するパイプピースの半径方向の変位がここでは可能にされる。この半径方向の変位は、補償要素の組み立て中の補償要素に対するパイプピースの位置決めを可能にする。この補償の可能性の提供により、潤滑剤貯蔵タンクの開口に対するパイプピースの位置またはこの開口を囲むパイプ要素の位置に対する厳しい公差の値が与えられる必要はない。
【0011】
第1のパイプピースに補償要素を介して接続される第2のパイプピースが設けられ得る。この第2のパイプピースは特に、潤滑剤の中に存在する固体粒子または化学的に活性な成分によるシール材への損傷が避けられ得るように、エンジンハウジングから出てくる流体流からシール材を保護し得る。第2のパイプピースは、潤滑剤貯槽タンクに有利に延びる。潤滑剤の流れのより良いチャネリング(channeling)がここでは可能である。流入がさらに潤滑剤貯槽タンク内で通常予想される液面の下に生じる。潤滑剤の流れの沈静化(calming)がこれによって生じる。潤滑剤貯槽タンク内での気泡や泡の形成がさらに回避される。
【0012】
潤滑剤貯槽タンクはさらにまた、分離器の機能を担い得る。潤滑剤の流れにより連れて来られた如何なる固体粒子も、潤滑剤貯槽タンク内で潤滑剤から分離され得る。したがって、例えば、シリンダスペースとエンジンスペースとの間の中間ベースのスタッフィングボックスを通過する燃焼残渣に起因して、またはエンジンのシリンダの潤滑の磨耗または駆動ユニットの潤滑または冷却に起因して存在し得るこのような望まれない固体粒子は、沈殿により潤滑剤貯槽タンク内で潤滑剤から分離され得る。この潤滑剤は、駆動ユニットの潤滑または冷却のために繰返し使用するためにリサイクルされ得るとともにエンジンを潤滑するために再び使用され得る。
【0013】
実施形態によれば、補償要素は、潤滑剤貯槽タンクの外壁に接続されるパイプ要素を含む。このパイプ要素は、シール材の受入の役に立つ。シール材は、パイプ要素の内部に保持されるとともにパイプ要素と第1のパイプピースとの間で正確に計量され得る。パイプ要素は環状要素として形成される。このパイプ要素は特に円形断面を有し得る。第1および第2のパイプピースとは対照的に、シール材を含む環状通路の幅が次の標準直径を有するパイプ要素では大きすぎるので、このパイプ要素が標準直径を有さず、したがってこの目的のためだけの環状要素として製造される可能性がある。この場合、シール材の望まれない増加された必要性に加えて、シール材の硬化にも問題が生る可能性があった。したがって、環状通路の幅ができるだけ小さく保持されるべきである。これは、環状通路の幅が、相対運動を吸収するための十分な柔軟さを確保するために提供されなければならない最小幅を持つとともに安定性を確保するために超えることがない最大幅を持つ、規定された公差内にあることを意味する。
【0014】
潤滑剤貯槽タンクは、潤滑剤を受け入れるための少なくとも1つの開口を含む。補償要素は開口の周りに配置される。したがって、シール材はパイプ要素とパイプピースとの間の全周に均等に分配され得る。これにより、潤滑材が潤滑剤貯蔵タンクから出てくることが出来ず、エンジンハウジングと潤滑剤貯蔵タンクとの間の接続が液密であることを確実にする。
【0015】
実施形態によれば、パイプ要素は、潤滑剤貯蔵タンクの外壁とエンジンハウジングの外壁との間の間隔より小さい高さを有する。この結果、この間隔の設置によりもたらされる変動は補償され得る。実施形態によれば、第2のパイプピースが設けられる場合、液密接続が潤滑剤貯蔵タンクと第2のパイプピースとの間にも確保されるように、シール材がパイプ要素と第2のパイプピースとの間に配置される。
【0016】
第1のパイプピースの第2の端部は特に、少なくとも部分的にシール材の中に突出し得る。実施形態によれば、第2の端部の侵入深さは、シール材の液面の高さの少なくとも10%に達する。
【0017】
第2の端部は、シール材の液面の高さの少なくとも50%超に達する侵入深さを有し得る。実施形態によれば、シール材は接着剤または泡の塊を含む。接着剤は特に、重合体を含み得るまたはメタクリル酸ベースの接着剤を含み得る二液型接着剤であり得る。この接着剤は、一方においては、パイプ要素と潤滑剤貯蔵タンクの開口にまで達する潤滑剤貯蔵タンクの壁の部分との間の隙間に単に入れられ得るが、他方においては、少なくとも第1のパイプピースの第2の端部への接続によく適している。
【0018】
接着剤は好ましくは、シール材が最大3.5mmの厚さでの完全硬化に関して48時間以内、好ましくは最大2.5mmの厚さでの完全硬化に関して24時間以内に硬化するように作られる。厚さはここでは、パイプピースと第2のパイプピースとの間のシール材で満たされた間隔である半径方向に計測されたシール剤の厚さとして理解される。シール材としてのこのような接着剤の使用は、組み立て中の遅れが避けられ得るという結果をもたらす。例えば、シリコーンが接着剤の代わりにシール材として使用された場合、最大1週間までの硬化時間が考慮されなければならず、次の組立ステップの遅れをもたらし得る。
【0019】
実施形態によれば、第1のパイプピースの内径は第2のパイプピースの内径より大きい。この場合、第1のパイプピースは第2のパイプピースに対して重なる方法で配置され得る。
【0020】
代替実施形態によれば、第1のパイプピースの内径は第2のパイプピースの内径とほぼ等しい。この場合、第1のパイプピースの第2の端部は第2のパイプピースの第1の端部に隣接する。運転状態においてエンジンハウジングと潤滑剤貯蔵タンクとの間の間隔の変動がシール材により補償され得るように、間隔が2つの端部の間に設けられる。
【0021】
示された変形の特別な利点は、接続要素がエンジンハウジングおよび乗り物のハウジングの組み立て中だけではなく、ピストンエンジン装置の取り付け中に既に設置され得るという事実に基づく。パイプピースは、エンジンハウジングおよび乗り物のハウジングの組み立て中、エンジンハウジングの潤滑剤貯蔵タンクの開口に対して位置合わせをされるとともに、好ましくはクランプ接続により接続される。シール材のみが最終的な作業ステップとして塗布されなければならない。
【0022】
以前に用いられた解決方法によれば、接続要素は、エンジンの設置後にピストンエンジンの垂直位置に従って製造されなければならず、続いてエンジンハウジングの内部から潤滑剤貯蔵タンクの外壁に溶接されなければならなかった。溶接がエンジンハウジング内の開口を通じて行われなければならなかったので、この取り付け作業は多少の技能を必要とする。
【0023】
さらに、弾性補償要素が続いてエンジンハウジングと接続要素との間に取り付けられなければならなかった。この弾性補償要素は、一方では潤滑剤が乗り物のハウジングに入ることができないように、接続のシール性を確保しなければならず、他方では、振動および/または熱膨張を補償すべきである。取り付けは、ピストンエンジンの設置および溶接により行われるその取り付けの後のパイプピースの製造に必要な作業ステップのために時間がかかる。取り付けは、近づきやすさ(アクセシビリティ)の欠如のために厄介であるとともに間違いを起こしやすかった。これらの理由のために、補償要素の破損(故障)が以前の既知の解決方法では繰返し起こり得る。補償要素は通常ラバーマットを用いてエンジンハウジングに接続されていた。
【0024】
ピストンエンジンは特に、例えば造船で使用される等の大型ディーゼルエンジンとして好ましくは設計される大型エンジンである。大型ディーゼルエンジンは、例えば2ストロークエンジンまたは4ストロークエンジンとして設計され得る。
【0025】
本発明はさらに、乗り物のハウジングおよび前述の実施形態の1つによるピストンエンジン装置を含む乗り物を含み、乗り物のハウジングはエンジンハウジングのための支持点を含む。
【0026】
支持点における乗り物のハウジングとエンジンハウジングとの間の支持間隔は特に、10mmと200mmとの間、好ましくは25mmと85mmとの間、特に好ましくは25mmと65mmとの間になり得る。最終的な支持間隔にしたがってエンジンハウジングを置く支持要素が支持点に設けられる。
【0027】
潤滑剤貯蔵タンクは少なくとも部分的に乗り物のハウジングに収容されるとともに、潤滑剤貯蔵タンクとエンジンハウジングとの間の距離は、液密接続が支持点における全ての支持間隔に対してエンジンハウジングと潤滑剤貯蔵タンクとの間に確立され得るように、組み立て中に補償要素を用いて変えられ(適合され)得る。
【0028】
乗り物は特に船であり得る。乗り物のハウジングはしたがって大型エンジンが支持点を介して支持される船体である。
【0029】
以下に本発明が添付の概略図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1a】潤滑剤貯蔵タンクおよびピストンエンジンを含むピストンエンジン装置である。
【図1b】図1aによるピストンエンジンのシリンダスペースの詳細である。
【図2】潤滑剤貯蔵タンクとエンジンハウジングとの間の最小間隔が示された、潤滑剤貯蔵タンクとエンジンハウジングとの間の接続要素の第1の変形である。
【図3】潤滑剤貯蔵タンクとエンジンハウジングとの間の最大間隔が示された、図2による接続要素である。
【図4】潤滑剤貯蔵タンクとエンジンハウジングとの間の最小間隔が示された、潤滑剤貯蔵タンクとエンジンハウジングとの間の接続要素の第2の変形である。
【図5】潤滑剤貯蔵タンクとエンジンハウジングとの間の最大間隔が示された、図4による接続要素である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1aおよび図1bは、ピストンエンジンを通る、特に大型エンジンを通る断面を示す。このピストンエンジンは通常、ここでは例えば2ストロークエンジンとして構成される大型エンジンとして設計される。このような大型ディーゼルエンジンは、内径が通常190mmより大きいシリンダを一般に備える。典型的な直径は250mmと1000mmの間である。ピストンロッド30およびコネクティングロッド40を介して回転可能なクランクシャフト11に接続されたピストン2は、シリンダ1の内部を往復動する。ピストンの往復運動は上死点と下死点との間で行われる。
【0032】
シリンダ1およびピストン2は作動スペースまたは燃焼スペース(燃焼室)を取り囲む。燃焼スペースの容積はピストンの位置に応じて可変である。シリンダ1は、ガス交換バルブ20、排出ガス出口通路21およびガス交換バルブ20用駆動ユニット22を含むヘッド部分12を有する。さらに、複数の燃料用噴射ノズル25、26がガス交換バルブ20の高さでヘッド部分12に配置される。
【0033】
シリンダヘッドはヘッド部分12に隣接する。シリンダ本体は、内壁9を有するシリンダまたはシリンダライナおよび、ピストン2が下死点またはその近傍に位置するときに燃焼スペースとシリンダスペース19との間の連通を確立するシリンダまたはシリンダライナの下部領域の掃気スリット18を含む。シリンダスペースはシリンダ本体を取り囲むとともに、周囲からの空気がシリンダスペース内に入り得るように周囲と連通する。
【0034】
図1aおよび図1bは、上死点と下死点との間の位置にあるピストンを示す。横断面が上死点の一番上のピストンリングを通って配置される場合、この横断面はシリンダ軸14に垂直に位置し、横断面は、以後上死点ゾーン8と呼ばれる領域を周る線に沿ったシリンダの内壁19と交差する。上死点ゾーン8は、垂直配置のシリンダの摺動面7の上限を形成する。同様の横断面が下死点の一番下のピストンリングを通って配置される場合、下死点ゾーン15が同じ方法で得られる。長さL(13)は、上死点8と下死点15との間の間隔を示すとともに、摺動面の長さに対応する。摺動面は、0.2mから約4mの長さを有し得る。摺動面の幅は、下死点ゾーン15の周囲はもちろん、上死点ゾーン8の周囲により形成される。
【0035】
下死点ゾーンの領域では、空気が周囲から導入されるので、エンジンスペースの空気の周囲温度と実質的に変わらない運転温度がこの領域に存在する。しかし、300℃を超える温度が上死点ゾーンの領域に存在し得る。圧力差がシリンダヘッドとピストンとの間の燃焼スペースと、シリンダスペース19との間に与えられる。より高い燃焼スペース圧力が燃焼スペースに最も近く燃焼空間5に面するピストンリングの表面に作用するとともに、このピストンリングをピストンリングが収容されるピストン溝に向かって押す。燃焼スペース圧力はまた、ピストンリングの内側被覆面(インナージャケット面)にも作用し、それによってピストンリングが内部シリンダ壁の方向に付勢される。複数の相互に配置されたピストンリングを用いて、このプロセスは段階的に行われ、すなわち、各ピストンリングが燃焼スペース内に存在する圧力条件によりシリンダの内壁に向かって付勢される。これは、潤滑膜の適切な形成を妨げ得る。シリンダの内壁とピストンリングとの間の望まれない固体摩擦に対する手段は、潤滑膜として摺動面7の領域のシリンダ1の内壁9を覆う潤滑剤の導入である。
【0036】
潤滑剤は、潤滑剤供給部4を経由してシリンダスペースに供給される。潤滑剤のための1つまたは複数の注入開口16がシリンダの周囲に分散されて設けられ得る。注入開口から始まって、通路17はシリンダの内壁9まで延び、これを用いて潤滑剤の輸送と散布が行われる。潤滑剤は垂直配置のシリンダの通路の下の全摺動面7を湿らせ得る。ピストン2が膨張段階において注入開口16を超えて動く場合、潤滑剤もまた、シリンダの内壁9を摺動するピストンリング3または複数のピストンリング3により輸送される。
【0037】
少なくとも1つのピストンリング3を備えるピストン2を収容するピストンエンジンのシリンダは、潤滑剤を散布するためのスリット形状の切り欠き5を含み得る。スリット形状の切り欠き5は、潤滑剤ポケットとしての機能を果たす。潤滑剤が注入開口16を経由して供給される場合、潤滑剤は、ピストンリング3により取り込まれるとともにピストンリング3とともに運ばれ、シリンダの内壁9とピストンリングとの間に潤滑膜を形成する。一部の潤滑剤は、ピストンリング3と内壁9との間の中間スペースを通って出てくる。しかし、ピストンリング3はシリンダの内壁9に出来るだけ密接に接触すべきであるので、この量は出来る限り低くされるべきである。そうでなければ、作動スペース内にあり得る燃料/ガス混合気が出てくるとともに掃気スリット18に移動することになる。140barまでの圧力が作動スペース内に存在し得る。作動スペース内の過剰な潤滑剤は、シリンダの内壁9に沿って流れ出るとともに、潤滑剤の貯蔵部を形成するスリット形状の切り欠き5の中に移動する。ピストンリングがスリット形状の切り欠き5を過ぎて摺動するとき、潤滑剤のための注入開口16の上に配置されたスリット形状の切り欠き5は潤滑剤で満たされる。ピストンリングはまたその移動中に潤滑剤の一部も輸送し、ピストンリングがこのようなスリット形状の切り欠きを過ぎて移動するときに、この潤滑剤は、スリット形状の切り欠き内に入るとともにスリット形状の切り欠きを満たす。
【0038】
スリット形状の切り欠きは特にまた、掃気スリット18の下はもちろん、掃気スリット18の領域にも設けられ得る。この領域では、これまでに材料の減少に起因する損傷が発見されている。この材料の減少は同様に、不均一なため、不十分な潤滑剤の供給に起因する。潤滑剤はこの点で高圧で運ばれる必要が無いので、潤滑剤供給部4を経由して導入された潤滑剤は、特に図1aまたは図1bに示されたピストンの位置において、周期的に供給される。潤滑剤は、シリンダ内壁に沿って底部まで動き、次にピストンのピストンリング3とともに運ばれてピストンリング3により分配される。潤滑剤の一部は掃気スリット18まで明らかに移動するが、潤滑剤は、ピストンが下死点にあるときの一番下に配置されたピストンリングの可能な限り一番下の位置までの掃気スリットの領域にもスリット形状の切り欠きが設けられる場合に、そこにしか貯蔵され得ない。
【0039】
駆動ユニットスペース31がシリンダスペース19に隣接する。ピストンロッド30は駆動ユニットスペース31内に配置され、このピストンロッドはピストン2から始まり、大型エンジンの動作中にクロスヘッド32およびコネクティングロッド40を経由して駆動ユニットのクランクシャフト11に作用するとともに、そうすることで、クランクシャフトを角速度で回転させる。クロスヘッド32は、例えばレール34に沿って往復動可能な滑りブロック33を備える。レール34は、駆動ユニットスペースの固定位置に配置された案内要素の実施形態である。代替的には、クロスヘッドはまた、連結ロッドに沿って案内され得る。この連結ロッドは、ピストンエンジンの略全体にわたって延びる長いネジである。
【0040】
ピストン2が垂直方向に上下に動くべき場合、クロスヘッド32は、上死点と下死点位置との間を動くピストン2により駆動されて、レール34を滑りブロック33とともに上下に動く。ピストンロッド30はクロスヘッドのクロスヘッド差込口42で終わる。コネクティングロッド40の第1の端部41はクロスヘッド差込口に取り付けられる。コネクティングロッド40の第2の端部43はクランクシャフトの回転クランク44に取り付けられる。
【0041】
爆発のように進む燃焼反応が始まるように、燃焼空間内の圧縮された燃料/ガス混合気が着火するまたは点火される、あるいは、燃料が高温の圧縮空気に噴射されるとともに点火されるまたは自己着火するとき、ピストンの作動ストロークが始まる。この効果によるエネルギの開放および圧力の増加のために、ピストンは、シリンダの内壁9に沿ってヘッド部分12から離れて、つまり図1aまたは図1bの表示において下方に移動する。ピストン2に強固に接続されたピストンロッド30およびクロスヘッド差込口42は、同じ並進運動を実行する。クロスヘッド差込口42は滑りブロック33を介してレール34に沿って案内される。同時に、その端部41においてクロスヘッド差込口42に回転可能に支持されるコネクティングロッド40は偏向されるとともにその第2の端部43を介してクランクシャフト11の回転運動を開始させる。
【0042】
ピストン2が下死点にあるとき作動ストロークは完了する。クランクシャフトはそのとき180度の回転を行っている。この位置において、コネクティングロッド40の第2の端部43はクランクシャフト11の長手方向軸のすぐ下に位置するとともに滑りブロック33はその最も下の位置にある。
【0043】
ピストンがこの下死点に近づくとき、ガス交換バルブ20が開放されるとともに新気が掃気スリット18を経由して燃焼スペース内に導かれる。燃焼ガスは開放されたガス交換バルブ20を経由して燃焼スペースを出る。コネクティングロッド40は、ピストンロッド30およびピストン2とともに、クランクシャフト11の持続回転により上方に動かされる。ピストンが掃気スリット18を閉じるとき、燃焼スペースに位置する空気が圧縮され得るようにガス交換バルブ20が閉鎖される。圧縮の手順はピストンが上死点に達するまで続けられる。この位置では、コネクティングロッド40の第2の端部43はクランクシャフト11の長手方向軸のすぐ上に位置するとともに滑りブロック33はその最も上の位置にある。ほぼこの時点で、燃焼スペースへの燃料の噴射が行われるとともに新しいサイクルが点火とともに開始される。
【0044】
この点で、一方では、ピストン2がシリンダライナ1内をその内壁9に沿って出来る限り容易に、すなわちスムーズに摺動することができ、他方では、燃焼プロセスで解放されるエネルギの機械仕事への効率的な変換を達成するためにピストン2がシリンダ1の燃焼スペースを出来る限りシールするように、シリンダ潤滑またはピストン潤滑が提供されることになる。
【0045】
このため、ピストンエンジンの運転中に、シリンダ1の内壁に沿ったピストンの良好な滑り特性を達成するとともに、ピストン2の滑り面およびピストンリング3の磨耗を出来る限り低く保つために、潤滑剤が通常シリンダ1に導入される。潤滑油はさらに、腐食の回避はもちろん、攻撃的な燃焼生成物の中和をするように機能する。これらの多くの要求のために、非常に高級であるとともに高価な物質が、潤滑剤として頻繁に用いられる。
【0046】
潤滑剤は、潤滑個所、例えば駆動ユニットスペースおよびまたは冷却の役に立つ通路から、クランクシャフトハウジングに移動し、そこから共用を意図して全潤滑剤が集められる潤滑剤貯蔵タンク23に移動する。潤滑剤貯蔵タンクは、接続要素24を介してエンジンハウジング25に、特にクランクシャフトハウジングに接続される。
【0047】
したがって、冷却および/または潤滑に必要な乗り物のための全潤滑剤を取り込み得るように、潤滑剤貯蔵タンクは設計される。全体が図示されていない乗り物は、乗り物のハウジング65および前述の実施形態の1つによるピストンエンジンを含み、乗り物のハウジング65はエンジンハウジング25のための支持点66を含む。
【0048】
乗り物のハウジング65とエンジンハウジング25との間の支持点66における支持間隔67は特に、10mmと200mmとの間、好ましくは25mmと85mmとの間、特に好ましくは25mmと65mmとの間になり得る。支持要素68は、支持点66に設けられるとともに所望の支持間隔67の観測値を保証する。
【0049】
潤滑剤貯蔵タンク23は少なくとも部分的に乗り物のハウジング65に収容されるとともに、潤滑剤貯蔵タンク23とエンジンハウジング25との間の間隔は、特に好適な領域の外のパイプピース26の適合が必要とされ得る実施形態であることを可能にしながら、液密接続が支持点66における全ての支持間隔67に対してエンジンハウジング25と潤滑剤貯蔵タンク23との間に確立され得るように、組み立て中に補償要素29を用いて変えられ得る。
【0050】
図1aまたは図1bのエンジンハウジング25および潤滑剤貯蔵タンク23の断面が図2に示される。エンジンハウジングを潤滑剤貯蔵タンクに接続するための接続要素24が設けられる。接続要素は、液密な方法でエンジンハウジング25に接続される第1の端部27を有するパイプピース26を含む。パイプピース26は任意の所望の断面を有することができ、パイプピースは特に円形断面を有し得る。
【0051】
補償要素29が、特に組み立て中に生じ得るエンジンハウジングと潤滑剤貯蔵タンク23との間の間隔の変化を許容するように、潤滑剤貯蔵タンクに設けられる。補償要素29は、潤滑剤貯蔵タンク23の開口60の周りに配置される。補償要素29は、液密接続がパイプピース26の第2の端部28と潤滑剤貯蔵タンク23との間に確立され得るように、パイプピース26の第2の端部28が少なくとも部分的に入れられるシール材45を含む。シール材45は特に弾性材料であるので、振動または熱膨張のためのエンジンハウジング25と潤滑剤貯蔵タンク23との間の相対運動が補償され得る。冷却に起因する熱膨張の補償は特に、スイッチオフされたピストンエンジンにも行われる。
【0052】
補償要素29は、潤滑剤貯蔵タンクの外壁に接続されたパイプ要素47を含む。このパイプ要素47は、シール材45が制御されない方法で潤滑剤貯蔵タンクの外壁を越えて広がることを防ぐ、環状要素である。シール材は、組立の状態では、依然として液体であるか少なくとも流動性を有する。パイプ要素47および第2のパイプピース46はしたがって、シール材を含む解放環状通路の境界をつける。パイプピース26の第2の端部28はシール材の中に入り込み得る。第2の端部28のシール材への侵入深さは、乗り物のハウジング65(図1a参照)とエンジンハウジング25との間の支持間隔67によって決まるとともに、図2に示された最大侵入深さと図3に示された最小侵入深さとの間で変化し得る。
【0053】
パイプ要素47は、潤滑剤貯蔵タンク23の外壁とエンジンハウジング25の外壁との間の間隔より小さい高さを有する。
【0054】
パイプピース26は、エンジンハウジングの開口50に入れられた剛体要素である。このために、パイプピース26は、開口50に位置し、好ましくはクランプ接続により開口に保持されるフランジ52を有する。フランジ52はさらに、カバー要素51とエンジンハウジングとの間に固定される。カバー要素51は、ネジ接続53を介してエンジンハウジングに固定して接続される。フランジ接続を通る、つまり、特にネジ接続53を通る、またはフランジ52とカバー要素51との間の、潤滑剤の通過を避けることができるように、シール要素54が、エンジンハウジングとフランジとの間および/またはフランジとカバー要素との間に配置され得る。
【0055】
フランジ52の外側端部55とカバー要素51との間に、半径方向、すなわち、パイプピース26の中心軸56に垂直に配置された平面内に、間隔が設けられる。エンジンハウジング25に対するパイプピース26の半径方向の変位がこれにより許容される。この半径方向の変位は、補償要素29の組み立て中の補償要素に対するパイプピース26の位置決めを可能にする。この結果、図2の横方向に延びる半径方向平面内における設置のための交差は、増大する。
【0056】
フランジ52をエンジンハウジング25に直接、好ましくはネジ接続により接続するための代替実施形態の提供を行うことができる。
【0057】
第1のパイプピース26に補償要素29を介して接続される第2のパイプピース46が設けられる。第2のパイプピース46は、潤滑剤貯槽タンク23に延びる。この第2のパイプピース46は特に、潤滑剤の中に存在する固体粒子または化学的に活性な成分によるシール材への損傷が避けられ得るように、エンジンハウジングから出てくる流体流からシール材45を保護し得る。第2のパイプピース46は潤滑剤貯槽タンク23に有利に延びる。
【0058】
図3は、潤滑剤貯蔵タンク23とエンジンハウジング25との間が最大間隔である図2による接続要素24を示し、同じ部品は同じ参照番号を有するとともに以下では図2に示された実施形態との違いのみが説明され、これは図4および図5に関しても適用される。したがって、第1のパイプピース26の第2の端部は、取り付けのために必要な公差が観測され得るとともに、図2によるエンジンハウジング25と潤滑剤貯蔵タンク23との間の最小間隔または図3によるエンジンハウジングと潤滑剤貯蔵タンクとの間の最大間隔に対して取り付けが可能になるように、図2による実施形態のものよりはるかに少なくシール材45に突出する。
【0059】
図4は、潤滑剤貯蔵タンク23とエンジンハウジング25との間の接続要素24の第2の変形を示す。この実施形態によれば、第1のパイプピース26の内径は、寸法が第2のパイプピース46の内径と等しい。図4によれば、第1のパイプピース26は第2のパイプピース46の上に配置される。しかし、2つのパイプピースは互いに当接せず、第1のパイプピースの第2の端部28はむしろ第2のパイプピース46の第1の端部48から間隔を開けて配置される。シール材が第1の端部48と第2の端部28との間に位置する。
【0060】
図5は、図4による潤滑剤貯蔵タンク23とエンジンハウジング25との間の接続要素24を示す。図4とは対照的に、第2のパイプピース46の第1の端部48と第1のパイプピース26の第2の端部28との間には図4のものよりも大きい間隔があり、すなわち、エンジンハウジング25および潤滑剤貯蔵タンク23のための公差を観測することができる最大可能間隔がある。
【0061】
シール材30がパイプ要素47とパイプピース26との間に導入されるという点において、液密接続がパイプ要素47とパイプピース26との間にも確立され得るので、第2のパイプピース46を省略することも当然可能である。
【0062】
本発明は当然示された実施形態に限られると見なされるべきではなく、本発明の対象は、ピストンエンジン、特に大型エンジンも含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンハウジングと、潤滑剤貯蔵タンクと、前記エンジンハウジングを前記潤滑剤貯蔵タンクに接続する接続要素とを含み、前記接続要素は液密な方法で前記エンジンハウジングに接続される第1の端部を有するパイプピースを有し、組み立て中の前記エンジンハウジングと前記潤滑剤貯蔵タンクとの間の間隔の変化を許容するように補償要素が前記潤滑剤貯蔵タンクに設けられた、ピストンエンジン装置であって、
前記補償要素は、液密接続が前記パイプピースの第2の端部と前記潤滑剤貯蔵タンクとの間に確立され得るように、前記パイプピースの前記第2の端部が少なくとも部分的に入れられるシール材を含む、
ピストンエンジン装置。
【請求項2】
前記第1のパイプピースに前記補償要素を介して接続される第2のパイプピースが設けられた、
請求項1に記載のピストンエンジン装置。
【請求項3】
前記第2のパイプピースは、前記潤滑剤貯槽タンクに延びる、
請求項2に記載のピストンエンジン装置。
【請求項4】
前記補償要素は、前記潤滑剤貯槽タンクの外壁に接続されるパイプ要素を含む、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のピストンエンジン装置。
【請求項5】
前記補償要素は前記潤滑剤貯槽タンクの開口の周りに配置される、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のピストンエンジン装置。
【請求項6】
前記パイプ要素は、前記潤滑剤貯蔵タンクの前記外壁と前記エンジンハウジングの外壁との間の間隔より小さい高さを有する、
請求項4または5に記載のピストンエンジン装置。
【請求項7】
前記シール材が前記パイプ要素と前記第2のパイプピースとの間に配置される、
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のピストンエンジン装置。
【請求項8】
前記第1のパイプピースの前記第2の端部は、少なくとも部分的に前記シール材の中に突出する、
請求項1乃至7のいずれか1項に記載のピストンエンジン装置。
【請求項9】
前記シール材は、重合体またはメタクリル酸ベースの接着剤を含み得る接着剤、特に、二液型接着剤を含む、
請求項1乃至8のいずれか1項に記載のピストンエンジン装置。
【請求項10】
前記シール材は、最大3.5mmの厚さでの完全硬化に関して48時間以内に硬化する、好ましくは最大2.5mmの厚さでの完全硬化に関して24時間以内に硬化する、
請求項1乃至9のいずれか1項に記載のピストンエンジン装置。
【請求項11】
前記第1のパイプピースの内径は前記第2のパイプピースの内径より大きい、
請求項1乃至10のいずれか1項に記載のピストンエンジン装置。
【請求項12】
前記第1のパイプピースの内径は前記第2のパイプピースの内径とほぼ等しい、
請求項1乃至10のいずれか1項に記載のピストンエンジン装置。
【請求項13】
乗り物のハウジングと、請求項1乃至12のいずれか1項に記載のピストンエンジン装置とを含み、
前記乗り物のハウジングは前記エンジンハウジングのための支持点を含む、
乗り物。
【請求項14】
前記支持点における前記乗り物のハウジングと前記エンジンハウジングとの間の支持間隔は、10mmと200mmとの間、好ましくは25mmと85mmとの間、特に好ましくは25mmと65mmとの間になり得る、
請求項13に記載の乗り物。
【請求項15】
前記潤滑剤貯蔵タンクは少なくとも部分的に前記乗り物のハウジングに収容されるとともに、
前記潤滑剤貯蔵タンクと前記エンジンハウジングとの間の間隔が、前記支持点における全ての前記支持間隔に対して前記エンジンハウジングと前記潤滑剤貯蔵タンクとの間に液密接続が確立され得るように、組み立て中に前記補償要素を用いて変えられ得る、
請求項14に記載の乗り物。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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