説明

潤滑性フィルムの形成方法

本発明は、少なくとも1種の(パー)フルオロポリエーテル(PFPE)潤滑剤、水、および、水の0.1〜3重量%の少なくとも1種の増粘剤を含む多相組成物を表面に適用する工程であって、前記多相組成物が、層を形成するように、21℃で1秒−1のせん断速度で測定して少なくとも10Pa×秒の粘度を有する工程と、前記層を乾燥させて潤滑性フィルムを形成させる工程とを含む、表面に潤滑性フィルムを形成させる方法に関する。上述した多相組成物を用いることによって、被潤滑表面にPFPE潤滑剤を、固体様グリースに好適な塗布技術などの技術(ドクターブレード、計量ロッドなど)を用いて送出することが有利に可能であり、その一方で、実際に送出された潤滑剤が潤滑において油として作用して、フッ素化溶剤の使用が回避される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(パー)フルオロポリエーテル潤滑剤を含む潤滑性フィルムの形成方法、および、摺動部品の潤滑方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(パー)フルオロポリエーテル(PFPE)潤滑剤は、広い条件範囲下で、高温性能、不燃性、熱および酸化安定性、ならびに、化学不活性が組み合わされた周知の工業潤滑剤である。
【0003】
PFPE潤滑剤を摺動/可動部品に適用するために、前記潤滑剤はニートの(純粋な)化合物として適用することが可能である。それにもかかわらず、これらの流体の動粘度は、適用が困難な表面上へこれらの流体を塗布することが不適切であり得るようなものであり、かつ/あるいは、その計量の制御が困難であり得るようなものであり、従って、潤滑剤は不均一または不適当な分布となってしまう。
【0004】
このため、一定の事例においては、上述の問題を解消するために、好適な流体中に潤滑剤を希釈/懸濁して、実質的に改変された動粘度を有するPFPE潤滑剤含有組成物を得て、浸漬、スピンコーティング、スプレーコーティング等を含むさまざまな技術が、前記PFPE潤滑剤を被潤滑表面に送出するための好適な方法となるようにすることが示唆されている。
【0005】
(特許文献1)(株式会社諏訪精工舎)(1984年06月21日)には、潤滑性フィルムを表面上に形成する方法が開示されており、ここでは、パーフルオロポリエーテル潤滑剤が、ハロゲノアルカン溶剤(例えば、パーフルオロアルカンまたはクロロフルオロアルカンなど)中に溶解されており、このように得られる溶液が、次いで、浸漬、スピンコーティング、スプレーコーティング等により目標表面に塗布され、最終的に乾燥されて潤滑性フィルムが得られている。しかし、この方法においては、用いることにより深刻な環境問題がもたらされるCFC113などのフッ素化溶剤が使用されている。
【0006】
一定の低沸点ハロゲン化溶剤も、PFPE潤滑剤の送出用に提案されている。しかし、上述した環境問題のために、乾燥/蒸発の最中の流体を適切に回収することが一般に要求される。
【0007】
このような低沸点ハロ化合物の使用が回避された代替的な溶液が示唆されている。特に、(特許文献2)(株式会社日立製作所)(1992年09月22日)には、PFPE潤滑剤と、好適な界面活性剤(好ましくは、ポリオキシエチレンアルキルエーテル界面活性剤と)とを含む水性エマルジョンを、潤滑性フィルムを表面上に形成させるために使用することが開示されている。しかし、高度に希釈されたエマルジョンのみが、工業レベルで実際に用いられるための相分離に対する好適な安定性を備えており、従って、相当の乾燥が必要とされ、その結果、この溶液の現実的な適用可能性が限定されてしまう。
【0008】
(特許文献3)(AUSIMONT SPA(IT))(1991年02月5日)または(特許文献4)(AUSIMONT S.R.L.)(1993年05月18日)に開示されているものなどの水性のPFPEマイクロエマルジョンも、PFPE潤滑剤の非常に優れた特性を表面にもたらす有効な手段を提供し得る。しかし、これらの技術では、環境問題を引き起こし得るフッ素化界面活性剤を使用する必要性がある。
【0009】
依然として、上述した溶液はいずれも、適切な潤滑性フィルムを、特に垂直な表面上に、形成させるための現実的な方法を提供していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開昭59−107428号公報
【特許文献2】米国特許第5149564号明細書
【特許文献3】米国特許第4990283号明細書
【特許文献4】米国特許第5211861号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本出願人は、意外にも、以下に詳述するとおり、PFPE潤滑剤を含むゲル様の挙動を有する適切な水性多相組成物を形成させることによって、(パー)フルオロポリエーテル潤滑剤を被潤滑表面上に効率的に送出することが可能であることをここに見出した。
【0012】
したがって、本発明は、少なくとも1種の(パー)フルオロポリエーテル(PFPE)潤滑剤、水、および、水の0.1〜3重量%の少なくとも1種の増粘剤を含む多相組成物を表面に適用する工程であって、前記多相組成物が、層を形成するように、21℃で1秒−1のせん断速度で測定して少なくとも10Pa×秒の動粘度を有する工程と、前記層を乾燥させて潤滑性フィルムを形成させる工程とを含む、表面に潤滑性フィルムを形成させる方法を提供することを目的とする。
【0013】
本出願人は、上述したとおりの多相組成物を用いることによって、固体様グリースに好適な適用技術と同様の適用技術(ドクターブレード、計量ロッド、ブラシ…)を用いて被潤滑表面にPFPE潤滑剤を送出することが有利に可能であり、その一方で、実際に送出された潤滑剤が潤滑において油として挙動して、フッ素化溶剤の使用が回避されることを見出した。
【0014】
本発明の方法において用いる組成物は、多相であり、すなわち、少なくとも2つの分離した相を含んでいる。
典型的には、本発明の多相組成物は、水を主に含む連続相と、PFPE潤滑剤を主に含む相分離ドメインとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、実施例3の組成物の拡大図(400×)である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
「水を主に含む連続相」という用語により、水を主成分として含む、すなわち、50%超、好ましくは60%超、さらにより好ましくは75重量%超の水を含む連続相を示すことを意図する。
【0017】
「PFPE潤滑剤を主に含む相分離ドメイン」という用語により、PFPE潤滑剤を主成分として含む、すなわち、50%超、好ましくは60%超、さらにより好ましくは75重量%超のPFPE潤滑剤を含む相分離ドメインを示すことを意図する。
【0018】
「相分離ドメイン」という用語により、PFPE潤滑剤の濃度が、水を主に含む連続相中のPFPE潤滑剤の濃度よりも少なくとも25%高い、好ましくは30%高い、さらにより好ましくは50%高い、組成物の三次元的体積要素(volume element)を示すことが意図されている。
【0019】
多相組成物中の前記PFPE潤滑剤を主に含む相分離ドメインの少なくとも75体積%は、100μmを超えない最大寸法を有する。
【0020】
「最大寸法」という用語により、可能なさまざまな向きの相分離ドメインの断面の各々に関連して、断面領域の直径の最大値を示すことを意図する。
【0021】
断面は、三次元空間における相分離ドメインと面とのの交差部分として考える。現実的な観点からは、薄く切断すると多くの平行な断面が得られる。
【0022】
断面領域の直径は、断面領域を内包することが可能である最小の円の直径として定義する。
【0023】
相分離ドメインの最大寸法は、好ましくは、組成物のサンプルの光学顕微鏡法および画像認識によって測定することができる。適切な値を超えない最大寸法を有する相分離ドメインの体積割合を、光学顕微鏡法および画像認識によって分析したサンプル中のドメインの総面積に対してこのようなドメインの表面積を計測することによって算出する。
【0024】
一般に、多相組成物中の前記PFPE潤滑剤を主に含む相分離ドメインの少なくとも75体積%が、75μmを超えない、好ましくは50μmを超えない最大寸法を有していることが好ましい。
【0025】
最良の結果は、前記相分離ドメインの少なくとも75体積%が10〜40μmの最大寸法を有する多相組成物で得られた。
【0026】
本発明の多相組成物は、21℃で1秒−1のせん断速度で測定して少なくとも10Pa×秒、好ましくは少なくとも20Pa×秒、より好ましくは少なくとも30Pa×秒、さらにより好ましくは少なくとも40Pa×秒の動粘度を有する。
【0027】
標準的な方法による層への適切な加工性を達成するために、一般に、本発明の方法において用いる多相組成物は、最高で1000Pa×秒、より好ましくは最高で500Pa×秒の動粘度を有することが理解される。
【0028】
動粘度は、有利には、ASTM D4440規格に準拠して、Practice ASTM D4065に掲載されている式に従って、1rad×秒−1、21℃の温度で、コーンおよびプレート幾何学的形状(直径=25mm、角度=0.1rad)での「複素粘度η」を測定して決定する。
【0029】
多相組成物の粘度に関する上述した境界は、水連続相中のPFPE潤滑剤ドメインの分散体の効果的な安定性、および、被潤滑表面のコーティングにさらに好適な加工性を達成するために好ましいものである。
【0030】
多相組成物層を被潤滑表面上に形成させる方法は特に限定されない。典型的には、組成物を、ドクターブレードコーティング、計量ロッド(またはメイヤーバー)コーティング、スロットダイコーティング、ナイフオーバーロールコーティングまたは「ギャップコーティング」等のような周知の技術に従って、標準的な装置を用いて表面上に広げることによって適用する。
【0031】
典型的には、潤滑性フィルムを得るために多相組成物の層を乾燥させる工程は、有利には20〜100℃、好ましくは20〜60℃の範囲の温度で実施する。
【0032】
この乾燥温度の選択は重大ではない。しかし、より高い温度により水蒸発時間が有利に短縮されることとなり、それ故、潤滑性フィルムがより早く形成されることが理解される。
【0033】
この蒸発を加速させるために空気を適切に換気してもよい。例えば、約50〜500Nl/hの空気流量を、有利なことに、潤滑性フィルムを乱す恐れを伴うことなく、層を乾燥させるために被潤滑表面に向けることが可能である。
【0034】
本発明において使用するPFPE潤滑剤は、典型的には、ASTM D445に準拠して20℃にて測定して、有利には20〜2000cSt、好ましくは30〜1500cSt、より好ましくは50〜500cStの動粘度を有する。
【0035】
上記に詳述した多相組成物は、以下から選択される少なくとも1種のPFPE潤滑剤を含むことが好ましい。
(1)B−O−[CF(CF)CFO]b1’(CFXO)b2’−B’
式中:
−Xは−Fまたは−CFであり、
−BおよびB’は、互いに同じであるかまたは異なり、−CF、−Cまたは−Cから選択され、
−b1’およびb2’は、互いに同じであるかまたは異なり、独立に、比b1’/b2’が20〜1,000の間に含まれ、かつ、b1’+b2’が5〜250の範囲内となるように選択される、0以上の整数であり;b1’およびb2’が共にゼロでない場合、異なる反復単位は、一般に、鎖に沿って統計的に分布されている。
前記生成物は、1968/04/06、CA786877号明細書(MONTEDISON S.P.A.)に記載されているとおり、ヘキサフルオロプロピレンを光酸化し、次いで、1971/03/31、GB1226566号明細書(MONTECATINI EDISON S.P.A.)に記載されているとおり、末端基を転換することによって入手することが可能である。
(2)CO−[CF(CF)CFO]o’−D
式中
−Dは−Cまたは−Cであり、
−o’は5〜250の整数である。
前記生成物は、1966/03/22、米国特許第3242218号明細書(DU PONT)に記載されているとおり、イオン性ヘキサフルオロプロピレンエポキシドオリゴマー化およびその後のフッ素を用いる処理によって調製することができる。
(3){CO−[CF(CF)CFO]dd’−CF(CF)−}
式中
−dd’は2〜250の整数である。
前記生成物は、1965/10/26、米国特許第3214478号明細書(DU PONT)に報告されているとおり、ヘキサフルオロプロピレンエポキシドのイオン性テロメリゼーションおよびその後の光化学的二量体化によって入手することができる。
(4)C’−O−[CF(CF)CFO]c1’(CO)c2’(CFX)c3’−C’’
式中
−Xは−Fまたは−CFであり、
−C’およびC’’は、互いに同じであるかまたは異なり、−CF、−Cまたは−Cから選択され、
−c1’、c2’およびc3’は、互いに同じであるかまたは異なり、独立に、およびc1’+c2’+c3’が5〜250の範囲内となる0以上の整数であり;c1’、c2’およびc3’の少なくとも2つがゼロでない場合、異なる反復単位は、一般に、鎖に沿って統計的に分布されている。
前記生成物は、1972/05/23、米国特許第3665041号明細書(MONTEDISON S.P.A.)に記載されているとおり、CおよびCの混合物の光酸化ならびに、その後の、フッ素での処理によって製造することができる。
(5)D−O−(CO)d1’(CFO)d2’−D’
式中
−DおよびD’は、互いに同じであるかまたは異なり、−CF、−Cまたは−Cから選択され;
−d1’およびd2’は、互いに同じであるかまたは異なり、独立に、比d1’/d2’が0.1〜5の間に含まれる、かつ、d1’+d2’が5〜250の範囲内となる、0以上の整数であり;d1’およびd2’の両方がゼロ以外である場合、異なる反復単位が概ね統計的に鎖に沿って分布されている。
前記生成物は、1973/2/6、米国特許第3715378号明細書(MONTEDISON S.P.A.)に報告されているとおりのCの光酸化、および、1972/5/23、米国特許第3665041号明細書(MONTEDISON S.P.A.)に記載されているとおりのフッ素を用いる後処理によって製造することができる。
(6)G−O−(CFCFC(Hal’)O)g1’−(CFCFCHO)g2’−(CFCFCH(Hal’)O)g3’−G’
式中
−GおよびG’は、互いに同じであるかまたは異なり、−CF、−Cまたは−Cから選択され、
−Hal’は、出現毎に同じであるかまたは異なり、FおよびClから選択されるハロゲン、好ましくはFであり、
−g1’、g2’、およびg’3は、互いに同じであるかまたは異なり、独立に、g1’+g2’+g3’が5〜250の範囲内となる0以上の整数であり;g1’、g2’およびg3’の少なくとも2つがゼロでない場合、異なる反復単位は、一般に、鎖に沿って統計的に分布されている。
前記生成物は、1985/07/17、EP148482A号明細書(ダイキン工業株式会社)に記載されているとおり、2,2,3,3−テトラフルオロオキシエタンを重合開始剤の存在下に開環重合させて、式:−CHCFCFO−の反復単位を含むポリエーテルを得、場合により、前記ポリエーテルをフッ素化および/または塩素化することによって調製することができる。
(7)L−O−(CFCFO)l’−L’
式中
−LおよびL’は、互いに同じであるかまたは異なり、−Cまたは−Cから選択され、
−l’は、5〜250の範囲の整数である。
前記生成物は、1985/06/11、米国特許第4523039号明細書(テキサス大学(THE UNIVERSITY OF TEXAS))において報告されているとおり、ポリエチレンオキシドを例えばフッ素元素でフッ素化する工程、および、場合により得られたフッ素化ポリエチレンオキシドを熱的に断片化する工程を含む方法によって得ることができる。および、
(8)R−{C(CF−O−[C(Rkk1’C(R−O}kk2’−R
式中
−Rは、1〜6個の炭素原子を有するパーフルオロアルキル基であり、
−Rは、−Fまたは1〜6個の炭素原子を有するパーフルオロアルキル基であり、
−kk1’は1〜2の整数であり、
−kk2’は、5〜250の範囲内の数字を表す。
前記生成物は、1987/01/29、国際公開第87/00538号パンフレット(LAGOWら)に記載されているとおり、ヘキサフルオロアセトンと、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、エポキシ−ブタンおよび/あるいはトリメチレンオキシド(オキセタン)から選択される酸素含有環式コモノマーまたはその置換誘導体とを共重合させ、その後、得られたコポリマーを過フッ素化させることによって製造することができる。
(9)T−O−[A−B]−[A−B’]z’−A−T’ (I)
式中:
−Aは、−(X)−O−A’−(X’)−であり、式中、A’は(パー)フルオロポリエーテル鎖であり;X、X’は、互いに同じであるかまたは異なり、−CF−、−CFCF−、−CF(CF)−から選択され;a、bは、互いに同じであるかまたは異なり、0または1に等しい整数であり、ただし、末端基T−O−に結合しているブロックAはa=1を有し、かつ、末端基T’に結合しているブロックAはb=0を有することを条件とする;
−Bは、1つ以上のオレフィンから誘導される反復単位のセグメントであり、式:−[(CR−CR(CR−CRj’]−を有し、式中:jは1〜5の整数であり、j’は0〜4の整数であり、ただし、(j+j’)は2を超えて10未満であることを条件とし;R、R、R、R、R、R、R、Rは互いに同じであるかまたは異なり、ハロゲン(好ましくはF、Cl);H;場合によりFまたは他のヘテロ原子を含有していてもよいC〜C基、好ましくはパーフルオロアルキルまたはオキシ(パー)フルオロアルキルから選択され;
−zは2以上の整数であり;z’は0または整数であり;z、z’は、式(I)のポリマーの数平均分子量が500〜500,000の範囲内となる数であり;
−B’は、式(Ia)に従うセグメントであるが、置換基R〜Rの少なくとも1つがブロックBのものとは異なり、(j+j’)が2以上〜10未満であり;
−TおよびT’は、互いに同じであるかまたは異なり、C1〜3(パー)フルオロアルキルまたはC1〜3アルキルから選択される。
前記生成物は、国際公開第2008/065163号パンフレット(SOLVAY SOLEXIS S.P.A.)(2008年06月5日)に詳述されているとおり、過酸化物基を含む(パー)フルオロポリエーテルを(フルオロ)オレフィンと反応させることによって製造することができる。
【0036】
本発明の目的に好適な多相組成物のPFPE潤滑剤の非限定的な例は、とりわけ以下のものである。
−SOLVAY SOLEXIS,S.p.A.から商品名FOMBLIN(登録商標)(タイプY、M、W、またはZ)で市販されている潤滑剤;この系統の潤滑剤は、一般に、下記式のいずれかで表される少なくとも1種の油(すなわち、1種のみまたは2種以上の油の混合物)を含む。
【化1】

−Du Pont de Nemoursから、商品名KRYTOX(登録商標)で市販されている潤滑剤。この潤滑剤は、一般に、低分子量、フッ素末端封止された、以下の化学構造を有するヘキサフルオロプロピレンエポキシドのホモポリマー少なくとも1種(すなわち1種または2種以上の混合物)を含む。
【化2】

−ダイキンから商品名DEMNUM(登録商標)で市販されている潤滑剤。この潤滑剤は、一般に、下記式で表される少なくとも1種の油(すなわち1種または2種以上の混合物)を含む。
【化3】

【0037】
より好ましいPFPE潤滑剤は、上に詳述したとおりの商品名FOMBLIN(登録商標)で市販されているものである。
【0038】
より具体的には、最も好ましいPFPE潤滑剤は、以下の式で表されるものである。
−O−(CO)d1*(CFO)d2*−D*’
(式中、
−DおよびD*’は、互いに同じであるかまたは異なり、−CF、−Cまたは−Cから選択され;
−d1およびd2は、互いに同じであるかまたは異なり、独立に、比d1’/d2’が0.1〜5の間に含まれ、かつ、d1’+d2’が5〜250の範囲内となる、0以上の整数であり;d1’およびd2’の両方がゼロ以外である場合、異なる反復単位が概ね統計的に鎖に沿って分布されている)。
【0039】
本発明の多相組成物中のPFPE潤滑剤の量は、特に限定されないが、一般に、PFPE潤滑剤の量は、PFPE潤滑剤および水の合計に対して、有利には0.1〜70重量%、好ましくは1〜60重量%、より好ましくは5〜50重量%の範囲であることが理解される。
【0040】
本発明の文脈において用いる「増粘剤」という用語は、その通常の意味を有し、水性混合物に添加したときに、他の特性を実質的に変化させることなくその粘度を高める物質を示すことを意図する。
【0041】
有用な増粘剤は、以下から選択することができる:
−イオン架橋有機ポリ酸、すなわち、分子鎖が延長されて増粘特性が生じるようにイオンが塩の添加によって架橋されている有機ポリ酸;
−鉱物;好適な鉱物の例は、とりわけクレイ、特にベントナイトおよびモンモリロナイト;コロイド状アルミナである;
−セルロース;典型的に用いられる増粘性セルロースは、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースである;
−高分子量ポリエチレンオキシドおよびその誘導体(例えば、ジステアレートなどのエステル類);
−多糖類および天然ガム;有用な多糖類および天然ガムの典型的な例は、アガロペクチン、アガロース、寒天、カラゲーナン、ペクチン、キトサン、β−グルカン、カラゲーナン、チクルガム、ダンマルガム、ゲランガム、グルコマンナン、グアーガム(Guar gum)、アラビアゴム、ガッチガム、トラガカントゴム、カラヤガム、ローカストビーンガム、マスティックガム、オオバコ種子殻、スプルースガム、タラガム、キサンタンガム、グアーガム(Cyamoposis Gum)、ビーガム、ウェランガム、ランタンガム、ジェランガムである;
−コラーゲン誘導体;非限定的な例はゼラチンおよび他の部分加水分解コラーゲンである;
−アクリルアミドポリマー;アクリルアミドのホモポリマーおよびコポリマーの両方を用いることができる;
−ならびに、これらの混合物。
【0042】
増粘剤のうち、イオン架橋有機ポリ酸が好ましい。
【0043】
好ましいイオン架橋有機酸は、とりわけ酸部分を含むエチレン性不飽和モノマーから誘導される反復単位を含む重付加ポリマー、より好ましくは、(メタ)アクリル酸、エチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−スルホエチルメタクリレート、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸から誘導される反復単位を含む重付加ポリマー、または、酸部分を有するサッカライドから誘導される反復単位、より好ましくは、D−マンヌロン酸、L−グルロン酸、ヒアルロン酸、アルギン酸から誘導される反復単位を含む重縮合ポリマーである。
【0044】
より好ましくは、増粘剤として用いるイオン架橋有機酸は、(メタ)アクリル酸ポリマー、最も好ましくはアクリル酸ポリマーである。
【0045】
ポリ酸と組み合わせて用いる塩は特に限定されない。水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウムおよび炭酸水素ナトリウムなどの無機アルカリ;塩化カルシウムおよび塩化マグネシウムなどの二価金属塩;アンモニア;ならびに、モノエタノールアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ(2−エチル−ヘキシル)アミン、アミノメチルプロパノール、テトラヒドロキシプロピレンジアミンなどの有機アミン。
【0046】
増粘剤の量は、一般に、必要な粘度を有する多相組成物が提供されるよう調節する。
【0047】
しかし、一般に、増粘剤の量は、水の0.1〜3重量%、好ましくは0.1〜1重量%、より好ましくは0.1〜0.7重量%の範囲であろうことが理解される。最良の結果は、水の0.3〜0.7重量%の増粘剤の量で得られた。
【0048】
多相組成物は、場合により、水に加えて1種以上の水混和性の有機溶剤を含んでいてもよく、典型的には、この溶剤は、脂肪族アルコールおよびポリオール、とりわけ、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、および、これらの誘導体から選択される。
【0049】
さらに、多様な通常添加される添加剤を、本発明の方法の多相組成物において用いることができる。
【0050】
多相組成物において用いることができる添加剤の非限定的な例としては、防錆添加剤、耐摩耗添加剤、熱安定剤、UVマーカ等を挙げることができる。
【0051】
添加剤のうち、以下を挙げることができる:
−機能性PFPEをベースとする防錆添加剤であって、この機能性PFPEが、1種以上の(パー)フルオロポリエーテル鎖を含み、かつ、−CFX−CN;−CFX−CH−NR(式中、RおよびRは、O、NおよびSから選択されるヘテロ原子を場合により含有していてもよい炭化水素基である);
【化4】

(式中、基XはFまたはCFを表す)から選択される少なくとも1つの末端基を有する防錆添加剤;これらの添加剤の例は、米国特許第5190681号明細書(AUSIMONT SRL(IT))(1993年03月2日)に記載されている;
−機能性PFPEをベースとする防錆添加剤であって、、この機能性PFPEが、1種以上の(パー)フルオロポリエーテル鎖と、酸性−COOH(場合により、塩化された、または、アミド基に転化されていてもよい)末端基およびケト形−C(O)CF(場合により、−C(OH)CF水和物形態であってもよい)末端基の混合物とを含む機能性PFPE;このクラスの添加剤は、特に、米国特許第5000864号明細書(AUSIMONT SRL(IT))(1991年03月19日)に記載されている;
−(パー)フルオロポリエーテル鎖を含むホスファゼンをベースとする耐摩耗性添加剤;これらの添加剤は、特に、米国特許第5441655号明細書(AUSIMONT SPA(IT))(1995年08月15日)、欧州特許出願公開第1336614 A号明細書(SOLVAY SOLEXIS S.P.A.)(2003年08月20日)、MACCONE,Pら,New additives for fluorinated lubricants.70th NLGI Annual Meeting,Hilton Head Island,South carolina(2003年10月25〜29日).第318番、または、国際公開第2008/000706号パンフレット(SOLVAY SOLEXIS S.P.A.)(2008年01月3日)に記載されている;
−(パー)フルオロポリエーテル鎖およびトリアジン末端基を含む機能性PFPEをベースとする熱安定剤;トリアジン−PFPE誘導体が、特に、米国特許第6313291号明細書(AUSIMONT SPA(US))(2001年11月6日)に記載されている;
−(パー)フルオロポリエーテル鎖と、場合により置換されいてもよいフェノキシおよびニトロ−アリール末端基から選択される芳香族末端基とを含む機能性PFPEをベースとする熱安定剤、例えば、特に、米国特許第7081440号明細書(SOLVAY SOLEXIS S.P.A.)(2006年07月25日)および米国特許出願公開第2003196727号明細書(SOLVAY SOLEXIS SPA(US))(2003年10月23日)に記載されているものなど;
−(パー)フルオロポリエーテル鎖およびリン酸基を含む機能性PFPE鎖をベースとする抗菌/防腐添加剤、例えば、特に、米国特許第6541019号明細書(AUSIMONT S.P.A.)(2003年04月1日)に記載のものなど。
【0052】
本発明の多相組成物は、とりわけ、必要とされる処方成分を好適な混合装置中で混合することによって調製することができる。
【0053】
一般に、第1のステップにおいてPFPE潤滑剤と水とを混合し、次いで、第2のステップにおいて増粘剤を添加することが好ましい。
【0054】
第1の混合ステップにおいては、高せん断速度を達成することができる装置が好ましく;典型的には、タービン攪拌機、高強度ミキサ等を用いることができる。
【0055】
高せん断ミキサ乳化剤を用いることができる。15kg未満のサイズのバッチについては、商品名Silverson Heavy Duty Lab Mixer Emulsifierで市販されているものを有利に用いることができる。
【0056】
本発明の目的のために、同軸(逆回転)または遊星動作式の低速混合システムを備えた容器、この容器の底に配置された、タービン、ロータおよびステータによる高速乳化部品、ならびに、真空回路を備えたターボ乳化機(Dumekにより市販されているものなど)が特に好適である。
【0057】
これらの装置は、通常は、少なくとも580rpm、好ましくは少なくとも1400rpm、より好ましくは少なくとも2700rpmの回転速度で作動する少なくとも1種の混合デバイスを用いて操作される。
【0058】
その結果、PFPE潤滑剤小滴が水相中に良好に分散された混合物を得ることができる。典型的には、PFPE潤滑剤と水との非混和性により、この分散体は、一般に、経時的な安定性が維持されないが、増粘剤の添加によって、擬固体分散形態でこれらの小滴が有利に「凍結」されることが可能となる。
【0059】
それ故、第2のステップにおいては、増粘剤の必要とされる添加量が、目的とされる動粘度が達成されるまで追加される。
【0060】
イオン架橋有機ポリ酸を増粘剤として用いる場合、ポリ酸前駆体を、PFPE潤滑剤との混合の前に水中に溶解してもよい。その後、必要とされるアルカリの塩を添加すると、必要とされるゲル化および動粘度の増加がもたらされ得る。
【0061】
このような場合において、多相組成物のpHを、典型的には、3〜10、好ましくは4〜9に調節する。イオン架橋有機ポリ酸の場合、これらのpH値を超えるかまたはこれらのpH値未満であると、組成物は、適切な粘度を有さない場合があり、PFPE潤滑剤の安定化に失敗することが観察されている。
【0062】
本発明の方法における被潤滑表面は、特に限定されず、とりわけ、プラスチック表面、金属表面、および、無機酸化物表面であってよい。
【0063】
本発明の方法は、潤滑性フィルムをプラスチックおよび金属表面上に形成させるために特に好適であり、特に、プラスチック−プラスチックの組み合わせまたはプラスチック−金属の組み合わせを潤滑するために特に好適である。
【0064】
本発明の方法において典型的に用いるプラスチック表面のうち、POM、PBT、PET、PC、ABS、PEX、PA、PMMA等の熱可塑性ポリマーの表面、または、EPDM、TPO、ETC等のエラストマーの表面を挙げることができる。これらの表面の各々を、同一の、もしくは、異なるプラスチックからなる別のプラスチック表面と組み合わせる場合に、あるいは、例えば鋼鉄表面といった金属表面と組み合わせる場合に、損耗を低減させるために潤滑することができる。
【0065】
本発明を、以下の実施例を参照してここに説明するが、これらの実施例の目的は単に例示することであり、本発明の範囲を限定することは意図されていない。
【実施例】
【0066】
[原料]
PFPE−1は、以下の構造:CFO−(CO)−(CFO)−CFを有する、FOMBLIN(登録商標)M30として市販されているPFPE潤滑剤であり、約0.75対1.1のp/q比、約9800の平均分子量、および、40℃で約159cStの動粘度を有する。
【0067】
増粘剤−1は、CARBOPOL(登録商標)Ultrez 21アクリレート/C10−C30アルキルアクリレートクロスポリマーである。
【0068】
添加剤−1は、商品名FOMBLIN(登録商標)HC/P2−1000で市販されている、リン酸末端基を有する機能性PFPEをベースとする防腐剤添加剤である。
【0069】
[多相組成物を形成するための一般的な方法]
必要量の潤滑剤、添加剤、および水を、高せん断ミキサ中で混合した;次いで、激しい攪拌下で増粘剤を添加し、水性NaOH溶液を添加してpH値を5〜8に調節した。
多相組成物の組成、および、21℃、1秒−1のせん断速度で測定した動粘度[η]を以下の表にまとめる。
【0070】
【表1】

【0071】
図1は、実施例3の組成物の拡大図(400×)である。
【0072】
多相組成物を、ロッドコーターを用いてさまざまな表面(PCおよびEPDM)上に塗布して、水の蒸発後に約10マイクロメートルである潤滑層を形成させた。
【0073】
潤滑特性の評価を、このように潤滑させた表面について、ASTM D 1894−87に準拠して実施した。このように形成させた潤滑層の潤滑特性を、従来の塗布方法を用いて(すなわち、低沸点溶剤、例えば3M Novec(登録商標)液およびSolvay Solexis Galden(登録商標)HT55液などを用いる溶液から)塗布した同じ潤滑剤の潤滑層であって同じ潤滑性フィルム厚を有するものの潤滑特性と比較した。
潤滑剤が多相組成物から塗布されたか、または、低沸点溶剤を用いる溶液から塗布されたかに関わらず、静摩擦係数および動摩擦係数の両方の低減が達成された。より具体的には、PCに関して、静摩擦係数は、塗布方法に関わらず、非潤滑表面に対する0.19から潤滑表面に対する0.15に低減した(動摩擦係数は0.15から0.11に低減した)。
EPDMに対する静摩擦係数は、非潤滑表面に対する1.90から、多相組成物から、または、低沸点溶剤を用いる溶液から塗布した潤滑剤での表面に対する0.68に低減した(動摩擦係数は1.31から0.28に低減した)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の(パー)フルオロポリエーテル(PFPE)潤滑剤、水、および、水の0.1〜3重量%の少なくとも1種の増粘剤を含む多相組成物を表面に適用する工程であって、前記多相組成物が、層を形成するように、21℃で1秒−1のせん断速度で測定して少なくとも10Pa×秒の動粘度を有する工程と、
前記層を乾燥させて潤滑性フィルムを形成させる工程と
を含む、表面に潤滑性フィルムを形成させる方法。
【請求項2】
前記多相組成物が、水を主に含む連続相と、PFPE潤滑剤を主に含む相分離ドメインとを含み、前記相分離ドメインの少なくとも75体積%が、100μmを超えない最大寸法を有する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記多相組成物が、少なくとも20Pa×秒、好ましくは少なくとも30Pa×秒、より好ましくは少なくとも40Pa×秒の粘度を有する、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記PFPE潤滑剤が以下のものから選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法:
(1)B−O−[CF(CF)CFO]b1’(CFXO)b2’−B’
(式中:
−Xは−Fまたは−CFであり;
−BおよびB’は、互いに同じであるかまたは異なり、−CF、−Cまたは−Cから選択され;
−b1’およびb2’は、互いに同じであるかまたは異なり、独立に、比b1’/b2’が20〜1,000の間に含まれ、かつ、b1’+b2’が5〜250の範囲内となるように選択される、0以上の整数であり;b1’およびb2’の両方がゼロではない場合、異なる反復単位が概ね統計的に鎖に沿って分布している);
(2)CO−[CF(CF)CFO]o’−D
(式中、
−Dは−Cまたは−Cであり;
−o’は5〜250の整数である);
(3){CO−[CF(CF)CFO]dd’−CF(CF)−}
(式中、
−dd’は2〜250の整数である);
(4)C’−O−[CF(CF)CFO]c1’(CO)c2’(CFX)c3’−C”
(式中、
−Xは−Fまたは−CFであり;
−C’およびC”は、互いに同じであるかまたは異なり、−CF、−Cまたは−Cから選択され;
−c1’、c2’およびc3’は、互いに同じであるかまたは異なり、独立に、c1’+c2’+c3’が5〜250の範囲内となる0以上の整数であり;c1’、c2’およびc3’の少なくとも2つがゼロではない場合、異なる反復単位が概ね統計的に鎖に沿って分布している);
(5)D−O−(CO)d1’(CFO)d2’−D’
(式中、
−DおよびD’は、互いに同じであるかまたは異なり、−CF、−Cまたは−Cから選択され;
−d1’およびd2’は、互いに同じであるかまたは異なり、独立に、比d1’/d2’が0.1〜5の間に含まれ、かつ、d1’+d2’が5〜250の範囲内となる、0以上の整数であり;d1’およびd2’の両方がゼロではない場合、異なる反復単位が概ね統計的に鎖に沿って分布している);
(6)G−O−(CFCFC(Hal’)O)g1’−(CFCFCHO)g2’−(CFCFCH(Hal’)O)g3’−G’
(式中、
−GおよびG’は、互いに同じであるかまたは異なり、−CF、−Cまたは−Cから選択され;
−Hal’は、出現ごとに同じであるかまたは異なり、FおよびClから選択されるハロゲンであり、好ましくはFであり;
−g1’、g2’およびg’3は、互いに同じであるかまたは異なり、独立に、g1’+g2’+g3’が5〜250の範囲内となる0以上の整数であり;g1’、g2’およびg3’の少なくとも2つがゼロではない場合、異なる反復単位が概ね統計的に鎖に沿って分布している);
(7)L−O−(CFCFO)l’−L’
(式中、
−LおよびL’は、互いに同じであるかまたは異なり、−Cまたは−Cから選択され;
−l’は5〜250の範囲内の整数である);
(8)R−{C(CF−O−[C(Rkk1’C(R−O}kk2’−R
(式中、
−Rは、1〜6個の炭素原子を有するパーフルオロアルキル基であり;
−Rは、−F、または1〜6個の炭素原子を有するパーフルオロアルキル基であり;
−kk1’は1〜2の整数であり;
−kk2’は、5〜250の範囲内の数を表す);および
(9)T−O−[A−B]−[A−B’]z’−A−T’ (I)
(式中:
−Aは、−(X)−O−A’−(X’)−であり、式中、A’は(パー)フルオロポリエーテル鎖であり;X、X’は、互いに同じであるかまたは異なり、−CF−、−CFCF−、−CF(CF)−から選択され;a、bは、互いに同じであるかまたは異なり、0または1に等しい整数であり、ただし、末端基T−O−に結合しているブロックAはa=1を有し、かつ、末端基T’に結合しているブロックAはb=0を有することを条件とする;
−Bは、1つ以上のオレフィンから誘導される反復単位のセグメントであり、式:−[(CR−CR(CR−CRj’]−を有し、式中:jは1〜5の整数であり、j’は0〜4の整数であり、ただし、(j+j’)は2を超えて10未満であることを条件とし;R、R、R、R、R、R、R、Rは、互いに同じであるかまたは異なり、ハロゲン(好ましくはF、Cl);H;場合によりFまたは他のヘテロ原子を含有していてもよいC〜C基、好ましくはパーフルオロアルキルまたはオキシ(パー)フルオロアルキルから選択され;
−zは2以上の整数であり;z’は0または整数であり;z、z’は、前記式(I)のポリマーの数平均分子量が500〜500,000の範囲内となるような数であり;
−B’は、式(Ia)に従うセグメントであるが、置換基R〜Rの少なくとも1つがブロックBのものとは異なり、(j+j’)が2以上〜10未満であり;
−TおよびT’は、互いに同じであるかまたは異なり、C1〜3(パー)フルオロアルキルまたはC1〜3アルキルから選択される)。
【請求項5】
前記PFPE潤滑剤の量が、PFPE潤滑剤と水との合計に対して0.1〜70重量%の範囲である、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記増粘剤が:
−イオン架橋有機ポリ酸、すなわち、分子鎖が延長されて増粘特性が生じるようにイオンが塩の添加によって架橋されている有機ポリ酸;
−鉱物;
−セルロース;
−高分子量ポリエチレンオキシドおよびその誘導体;
−多糖類および天然ガム;
−コラーゲン誘導体;
−アクリルアミドポリマー;
ならびにこれらの混合物から選択される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記増粘剤が、酸部分を含むエチレン性不飽和モノマーから誘導される反復単位を含む重付加ポリマー、または、酸部分を有するサッカライドから誘導される反復単位を含む重縮合ポリマーから選択されるイオン架橋有機酸である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記増粘剤が、(メタ)アクリル酸ポリマーである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記多相組成物の層が、ドクターブレードコーティング、計量ロッドコーティング、スロットダイコーティング、ナイフオーバーロールコーティングまたは「ギャップコーティング」から選択される技術に従って、標準的な装置を用いて前記表面に広げて形成される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記多相組成物を、必要とされる前記成分を好適な混合装置中で混合することによって調製し、この場合において、第1のステップで、前記PFPE潤滑剤および前記水を混合し、次いで、第2のステップで、前記増粘剤を添加する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
潤滑性フィルムを得るための多相組成物の前記層を乾燥させる工程を、20〜100℃の範囲の温度で実施する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2012−506471(P2012−506471A)
【公表日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−532643(P2011−532643)
【出願日】平成21年10月23日(2009.10.23)
【国際出願番号】PCT/EP2009/063957
【国際公開番号】WO2010/046464
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(508305960)ソルヴェイ・ソレクシス・エッセ・ピ・ア (53)
【Fターム(参考)】