説明

潤滑油添加剤およびグラフト重合体

【課題】潤滑剤添加剤としての有効な分散作用を有するVI−改善剤(粘度指数改善剤)を提供する。
【解決手段】VI−作用物質(粘度指数改善作用物質)は、炭素数6〜30のアルキル(メタ)アクリル酸エステル(AMA)と、官能化されていないコポリマー(B)並びに官能化されたコポリマー(C)と、キャリヤー媒体TM中で共重合されたポリアルキルメタクリレート−マクロ単量体(A)とから形成されたグラフト重合体であって、優れた分散作用を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マクロ単量体から取得された、粘度指数改善作用および分散作用を有する潤滑油添加剤としてのグラフト重合体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
数年来、公知技術において、例えば乳濁液のための重合安定剤として使用されているいわゆるくし型重合体(コーム・ポリマー)が提供されている(G.Allen、J.C.Bevington、Comprehensiv Polymer Science、第4巻、第248〜250頁、Pergamon Press、1989年を参照のこと)。
【0003】
マクロ単量体と(化学的に異なる)コポリマーとのラジカルにより開始された共重合により、この種のくし型重合体が得られる。米国特許第5254632号明細書には、適当なマクロ単量体を製造するための相対的に簡単な方法が記載されており、この方法の場合には、(メタ)アクリル酸エステルを、ヒドロキシ基を含有する硫黄調整剤の存在下に重合させ、こうして得られたヒドロキシル基末端停止されたポリアルキル(メタ)アクリレートを、メチルメタクリレートを用いてエステル交換して、メタクリロイル末端基を有するポリ(メタ)アクリレートマクロ単量体に変えている。また、この米国特許明細書中には、就中、マクロ単量体の製造のための種々の方法が記載されている当該文献の一覧表が存在する。
【0004】
記載された説明から導き出すことができるくし型重合体は、様々な使用分野に提供され、この場合には、構造式に基づいて、乳化剤としての使用が特に重要であるものと主張することができた。この構造的な特徴は、この種のくし型重合体が、潤滑油中での粘度指数改善剤(VI−改善剤)として特に適していることを必ずしも約束するものではないものと思われた。
【0005】
他方では、潤滑剤添加剤としての有効なVI−改善剤、殊に、分散作用を有するVI−改善剤に対する絶対的な需要が存在する。
【非特許文献1】G.Allen、J.C.Bevington、Comprehensiv Polymer Science、第4巻、第248〜250頁、Pergamon Press、1989年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明には、前記による課題が課されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ところで、一定のくし型重合体を基礎とする本発明による潤滑剤添加剤は、潤滑剤技術の要求を特に充足することが見出された。
【0008】
従って、本発明は、C6〜C30−アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリル酸エステル(AMA)と、C1〜C5−アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリル酸エステル、スチロールおよびC1〜C4−アルキル基を有するアルキルスチロールおよびビニルエステルからなる群から選択された、官能化されていないコポリマー(B)並びに(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド、ビニル複素環式基の群から選択された官能化されたコポリマー(C)と、キャリヤー媒体TM中で共重合されたポリアルキルメタクリレート−マクロ単量体(A)から形成されたグラフト重合体を、VI−作用物質として含有する潤滑油添加剤に関するものである。
【0009】
通常、グラフト重合体PFPは、以下の重量比で形成されている成分である:(一般に含量の総和は100重量%である)マクロ単量体(A)は、10〜90重量%であり、C6〜C30−アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリル酸エステル(AMA)は、0〜90重量%であり、官能化されていないコポリマー(B)は、0〜60重量%であり、かつおよび官能化されたコポリマー(C)は、0〜40重量%である。
【0010】
本発明の有利な実施態様の場合、使用すべきグラフト重合体PFPの構造式は、以下の式Iによって略示的に再現することができるが、しかし、異なる実施態様も、本発明に属するものである。
【0011】
【化1】

Xは、二端遊離基を表し、
1は、−Hまたは−CH3を表し、
2は、−Hまたは−CH3を表し、
nは、6〜30を表し、
pは、マクロ単量体(A)の平均重合度を表す
(−co−は、"共重合されていることを表す"常用の略記法として記載されている)。
【0012】
グラフト重合体PFPの製造の際に、好ましくは、式IIのマクロ単量体から出発することができる:
【化2】

Xは、二端遊離基を表し、
1は、−Hまたは−CH3を表し、
2は、−Hまたは−CH3を表し、
nは、6〜30を表し、
pは、マクロ単量体の平均重合度を表す。
【0013】
この場合、pは、好ましくは、式IIのマクロ単量体の重量平均分子量Mwが、1000〜100000の範囲内であるような程度に定められている。好ましくは、二端遊離基Xは、好ましくはIの重合部分に直接接続している1つの−S−架橋成分を有する少なくとも2〜30員環の炭化水素鎖を表し、この場合、9個までの炭素員がエーテル酸素によって代替されていてもよいものである。更に、基X中では、前記の鎖が、式:
【化3】

〔式中、R9は、水素原子を表すかまたは炭素原子1〜8個を有するアルキル基を表すかまたはフェニル基を表す〕
で示される官能基によって中断されていてもよい。
【0014】
アルキル(メタ)アクリレートAMAは、一般に、式III:
【化4】

〔式中、
R′1は、HまたはCH3であり、
nは、6〜30である〕
で示すことができる。
【0015】
コポリマー(B)は、通常、式IV:
【化5】

〔式中、
R″1は、HまたはCH3であり、
3は、C1〜C5−アルキル基、好ましくはC1〜C4−アルキル基である〕
またはV:
【化6】

〔式中、
R″′1は、HまたはCH3であり、
4は、HまたはC1〜C4−アルキル基である〕
または式VI:
【化7】

〔式中、
5は、C1〜C11−アルキル基である〕
に相応する。
【0016】
式VIのコポリマーの代表例としては、酢酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ビニル−2−エチルヘキサノエート、ココヤシ油酸のビニルエステル、C10−オキソ酸(Kirk-Othmer、第3版、第4巻、第863〜871頁、J.Wiley、1978年を参照のこと)が挙げられ、式IVの代表例としては、ことにメチルメタクリレート(単量体IV−a)が挙げられる。
【0017】
(前記のコポリマーと同一ではない)官能化された、殊に分散作用を有するコポリマー(C)は、有利に式VII:
【化8】

〔式中、RIV1は、水素原子またはメチル基を表し、R6は、−OR9、−NR78を表し、かつR9は、ヒドロキシ基、基:−NR′7R′8、スルホン酸基、カルボキシル基またはカルボキシアミド基からなる群から選択された親水性の基Aで置換された、炭素原子2〜20個を有するアルキル基を表すかまたは自体水溶性で5員または6員の複素環式置換された、炭素原子2〜20個を有するアルキル基を表し、この場合、炭素鎖は、エーテル架橋性分によって中断されているかまたは末端で、C1〜C12−アルキル置換されているかまたは置換されていないフェニル基またはフェノキシ基を有していてもよく、かつR′7およびR′8は、水素原子を表すかまたは親水性の基Aで置換されたかまたは置換されていない、炭素原子1〜6個を有するアルキル基を表すかまたはR′7およびR′8は、場合によっては他の窒素原子または酸素原子を包含しながら5員または6員の複素環式基を形成し、かつR′7およびR′8は、水素原子を表すかまたは炭素原子1〜6個を有するアルキル基を表し、この場合、−NR′7R′8は、場合によっては四級化されていてもよいかまたはR7が水素原子を表す場合には、R8は、カルボキシアミド基を表していてもよい〕
によって再現することができる。置換されているかまたは置換されていない(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、アミン置換されたアルキルエステル、例えば2−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−(1−イミダゾリル)エチル(メタ)アクリレート、2−(4−モルホリニル)エチル(メタ)アクリレート、2−トリメチルアンモニウムエチル(メタ)アクリレート−塩、ヒドロキシアルキル置換された(メタ)アクリルアミド、例えばN−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N−(3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロピル)(メタ)アクリルアミド、N−ジメチルアミノメチル(メタ)アクリルアミド、N−(メタ)アクリロイドピロリドン−2−、N−(メタ)アクリルアミドメチルピロリドン、N−(1−ピペリジニルメチル)(メタ)アクリルアミド、第四級アンモニウム化合物、例えばN−トリメチルアンモニウムプロピル(メタ)アクリルアミド−塩、スルホン酸誘導体、例えば2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸またはN−(メタ)アクリロイル尿素からなる群から選択された官能化されたコポリマー(C)は、好ましい。
【0018】
殊に、2−(N−モルホリニル)エチルメタクリレート(単量体VII−a)、N−ビニルピロリドン(単量体VIII−a)が挙げられる。
【0019】
6がアルコキシル化されたアルカノールまたはフェノールを表す式VIIの単量体(式VII−aのコポリマー)は、特に重要である。
【0020】
【化9】

式中、
R′は、−Hまたは−CH3であり、
kは、5〜100であり、
iは、0〜100であり、
11は、Cn2n+1、分枝鎖状または線状または場合によっては置換されたフェノールであり、
nは、1〜22である。
【0021】
11が工業用フェノールもしくはフェノール混合物に由来する式VII−Aの代表例は、特に有用であるとして評価されるべきものである。フェノール自体とともに、第三ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、ジノニルフェノールが記載される。
【0022】
更に、官能化されたコポリマー(C)は、式VIII:
【化10】

〔式中、R10は、少なくとも1つの窒素原子を有する5員または6員の複素環式基を表す〕
で示される基に属していてもよい。ビニルピロリドン、例えば1−ビニル−2−ピロリドン、ビニルイミダゾール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルスクシンイミド、N−ビニルオキサゾリドン、N−ビニルフタルイミド、ビニルピリジン、例えば2−ビニルピリジンからなる群から選択された式VIIIのコポリマー(C)は、好ましい。
【0023】
グラフト重合体PFPの製造のための出発生成物としては、官能化されたポリ(メタ)アクリレート−マクロ単量体を使用することもできる。好ましくは、前記マクロ単量体には、式II−A:
【化11】

〔式中、
1は、−Hまたは−CH3であり、
2は、−Hまたは−CH3であり、
nは、6〜30であり、
この場合、(B′)は、(B)の場合と同じコポリマーを包含し、(C′)は、(C)と同じコポリマーを包含するものでなければならない〕
で示されるものが含まれている。
【0024】
該マクロ単量体の重量平均分子量:
w = 1000〜100000。
【0025】
この場合、マクロ単量体II−Aは、以下の重量比により形成されていてもよい:AMA含量0〜90重量%、この単量体(B′)0〜40重量%、(C′)0〜100重量%。
【0026】
本発明は、好ましくは、ドイツ連邦共和国特許出願公開第4121811号明細書もしくは米国特許第5254632号明細書に記載の、一般式II−B:
【化12】

〔式中、R1およびR2は、水素原子またはメチル基を表し、
Xは、二端遊離基を表し、
nは、5〜30の整数を表し、但し、pは、マクロ単量体IIの分子Mが1000〜100000g/モルの範囲内であるよるに定められているものとする〕
で示されるマクロ単量体の製造法を使用することができ、
この場合、式IX:
【化13】

〔式中、R12は、炭素原子1〜8個を有するアルキル基を表す〕で示される単量体のエステルを、式X:
【化14】

〔式中、X、R2およびnは、上記の意味を有し、但し、p′は、アルコールHOR12の脱離下にpと一致する〕で示されるヒドロキシル基末端停止されたポリメタクリレートエステルと交換され、この場合、式IIの化合物が形成される。
【0027】
マクロ単量体の有利な製造法により、式Xの化合物は、(メタ)アクリルエステルの単量体もしくは単量体混合物を、OH官能性調整剤、好ましくは硫黄調整剤の存在下、例えば2ーメルカプトエタノールの存在下に重合させることによって得られる(米国特許第5254632号明細書を参照のこと)。この場合、Xは、構造:−(CH22S−であると考えられる。しかしながら、末端重合可能な(活性化された)二重結合での相対的に高い官能価を有する同じ単量体組成を有するPAMA−マクロ単量体の製造に適している公知技術水準の別の方法も、良好な成果をおさめて使用することができる(欧州特許第261942号明細書を参照のこと)。相応するC6〜C30−範囲内、殊に、平均C数約10〜約20の範囲内、特にまた約12〜18の範囲内、詳細には12.5〜15の範囲内に主要点を有するアルコールの市販の混合物の(メタ)アクリル酸エステルから形成されたマクロ単量体(A)は、特に重要である。例えば、平均C数13.2〜13.8を有するC11〜C16−アルコールの混合物の(メタ)アクリル酸エステルが適している(Shell AGの市販製品 DOBANOL25L)。グラフト重合体PFPのためのキャリヤー媒体TMとしては、好ましくは、添加剤技術で常用の種類の主として脂肪親和性の不活性溶剤、殊に例えばSN 100のタイプの鉱油、例えばShell SM 920あるいはまたガス油、例えばShell G07が該当する。
【0028】
マクロ単量体の製造は、米国特許第5254632号明細書の記載とほぼ同様にかもしくはドイツ連邦共和国特許出願公開第2318809号明細書;W.Radke、A.H.E.Mueller、Polym.Prepr.(Am.Chem.Soc.Div.Polym.Chem.)32(1)1991およびH.Rauch-Puntigam、Th.Voelker、Acryl- und Methacrylverbindungen、Springer-Verlag 1967年の記載に関連して行うことができる。
【0029】
マクロ単量体(A)の製造
ヒドロキシル基を含有する前駆物質の製造
好ましくは、アルキル(メタ)アクリレートAMAからなる混合物を、分子量調整剤、例えばメルカプトエタノールと一緒に(例としては、単量体に対して1.0重量%が挙げられる)、適当な反応容器、例えば加熱器、撹拌装置、内部温度計、ガス供給装置および還流冷却器を備えた三口フラスコの中に、例えばキャリヤー媒体TMの約10倍の量で装入し、かつ保護ガス、例えば窒素を導入しながら、例えば95℃の温度に加熱する。次に、開始剤を、例えば自体常用のペルオキシ化合物、例えば過エステル(第三ブチルペル−2−エチルヘキサノエートが挙げられる)を装入し、次に、AMA−単量体を、好ましくは、別の開始剤(例としては、単量体に対して開始剤約0.4重量%が挙げられる)との混合物中で、約3.5時間の間に供給する。好ましくは、供給後に、一定の間隔で、例えばそれぞれ2.5時間および5時間後に、開始剤の約半分を装入し、かつ相対的に長い時間、例えば12時間、約95℃で保持する。引き続き、好ましくは、キャリヤー媒体TMを用いて希釈する。
【0030】
エステル交換
適当な反応容器中、例えば加熱器、撹拌装置、内部温度計、空気供給管および調節器で制御された蒸気分配器を有する充填カラムを備えた6lの三口フラスコ中に、ヒドロキシル基を含有する前駆物質と、メチル(メタ)アクリレートとの混合物(例としては、約4.3:3の重量比が挙げられる)を、好ましくは、少なくとも1つの自体公知の重合開始剤、例えばヒドロキノンモノメチルエーテルおよび安定剤、例えばHALS型(例えば4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシド挙げられる)と一緒に常用の量で装入し、かつ好ましくは、空気を導通しながら加熱して還流させる。以下においては、エステル交換成分としてのMMAが前提とされる。一定の含量を供給した後に、エステル交換触媒;好ましくはリチウム化合物、例えばリチウムエトキシドが添加され、例としては、メタクリル酸メチルエステルに対して約0.1%が添加され、かつ更に沸点、例えば65〜68℃に低下するまで還流下に保持する。引き続き、更にメタノールの豊富な留出物は、沸点(例えば100℃が挙げられる)の上昇によって十分な反応が示されるまで取り出される。他の留出物の蒸留後(100℃で)に、バッチ量は、室温に冷却され、かつ濾過される。過剰量のメチルエステルを、好ましくは、真空回転蒸発器により除去する。キャリヤー媒体TM中に溶解されたマクロ単量体Aが得られる。
【0031】
高分子量グラフト重合体PFPの製造
望ましい割合での、前記と同様に製造されたマクロ単量体A並びにAMA単量体および場合によってはコモノマーBから混合物が製造され、キャリヤー媒体TMが添加される。このうちの、ヒドロキシル基を含有する前駆物質の製造のために使用した場合よりも少ない部分、例えば装置中の約10倍の量のキャリヤー媒体中の6.5重量%が、保護ガス、例えば窒素雰囲気下で、高められた温度(例としては、82℃が挙げられる)に加熱される。装入物へのラジカル開始剤の添加後に、一定の時間、例えば3.5時間で、他の単量体混合物を、開始剤と一緒に、好ましくは連続的ポンプ輸送によって添加する。供給からより長い時間(例えば12時間が挙げられる)の後に、他の開始剤が添加され、かつ更に数時間、例えば8時間、高められた温度(約82℃)で反応させられる。引き続き、好ましくはキャリヤー媒体TMの添加によって(例えば約40%の溶液に)希釈される。
【0032】
分散作用を有するくし型重合体の製造
前記の装置中に、好ましくは、より低い分子量を有するマクロ単量体Aを、少なくとも1つの分散作用を有する単量体C、好ましくは調整剤、殊に硫黄調整剤と一緒に(例えばマクロ単量体/単量体に対して約10重量%が挙げられる)装入し、保護ガス、例えば窒素雰囲気下で、例えば100℃に加熱し、かつ開始剤を、例えば前記の方法および約0.8重量%の量で添加する。有利に数時間の間隔、例えば3〜7時間後に、更に他の開始剤を、有利に、既に添加された開始剤の約1/5の割合で添加し、かつ更により長い時間、例えば12時間、高められた温度で、例えば100℃で保持する。
【0033】
製造方法の他の有利な変法は、実施例により明らかにすることができる。
【0034】
有利な作用
本発明によるグラフト重合体PFPは、傑出した作用によって粘度指数改善剤として顕著である。改善された粘度温度特性は、粘度測定に基づき、モデル形成により実証することができる。更に、本発明により記載すべき傑出した分散作用は、特に重要である。特に有用な分散有効性は、例えば実験室試験の結果によって証明される。
【0035】
以下の実施例は、本発明の説明のために用いられる。実際の粘度の測定は、ASTM D 445により行われる。分子量は、"Salz Exclusion Chromatographie"(SEC)によって、標準PMMAを用いて測定される(H.F.Mark他、Encyclopedia of Polymer Science & Engingeering、第10巻、第1〜19頁、J.Wiley、1987年を参照のこと)。実施例中で使用された100N−油は、Shell SM 920のことである。
【0036】
剪断安定性(剪断指数)PSSIの測定は、ASTM D 2603 Ref.Bにより行われる。
【実施例】
【0037】
マクロ単量体Aの製造
A−1
PAMA−マクロ単量体、Mw=19000の製造。
a)OH−置換基を有する前駆物質の製造
11〜C16−アルカノールの混合物のメタクリル酸エステル(Shell AGの製品 DOBANOL 25L)1170gと2−メルカプトエタノール11.7gとから、混合物を製造する。油浴加熱装置、サーベル型撹拌機(Saebelruehrer)、内部温度計、N2−導管および還流冷却装置を備えた4lの三口フラスコ中に、前記の単量体混合物14.4gおよび100N−油130gを装入し、95℃に昇温させる。開始剤としての第三ブチルペル−2−エチルヘキサノエート1.18gの添加後に、C11〜C18−メタクリル酸エステル1167.3gと開始剤3.5gとからの混合物を、3.5時間で、ポンプにより均一に供給する。供給後2.5時間および5時間で、第三ブチルペル−2−エチルヘキサノエートそれぞれ2.24gを添加し、かつ更に12時間95℃で保持する。この後、100N−油497.2gを用いて希釈する。実際の粘度を、KV100=77.6cStに対して測定する。分子量を、SECによって測定する。Mw=19000g/モルである。
b)エステル交換
キノコ型電気ヒーター(elektrischem Heizpilz)、サーベル型撹拌機、内部温度計、空気供給管および調節器で制御された蒸気分配器を有する充填カラムを備えた6lの三口フラスコ中に、a)からの生成物1760.4g並びにメチルメタクリレート1260g、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル0.06gおよびヒドロキノンモノメチルエーテル0.23gを装入し、かつ空気を導通しながら昇温させて還流させる。留出物118gの除去後に、リチウムエトキシド1.15gを添加し、沸点が65〜68℃に低下するまでの間還流下で保持する。この後、100℃に沸点が上昇することによって更に反応を示すまでの間、メタノール系の留出物(65〜68℃、約17g)を除去する。100℃で更に留出物280gを留去した後に、バッチ量を室温に冷却し、ザイツ−KS80−フィルター層(Seitz-KS80-Filterschicht)によって清澄に濾過する。過剰量のメチルメタクリレートを、真空回転蒸発器により除去する。
収量:マクロ単量体A−1の油状溶液1750g。
【0038】
A−2
PAMA−マクロ単量体、Mw=5500の製造。
a)OH−置換基を有する前駆物質の製造
A−1(a)と同じ装置を使用する。6lのフラスコ中に、次のもの:100N−油1396g、C11〜C16−アルカノールの混合物のメタクリル酸エステル(製品 DOBANOL 25L)155.1gおよび2−メルカプトエタノール4.65gを装入し、かつ窒素雰囲気下で110℃に昇温させる。第三ブチルペル−2−エチルヘキサノエート1.65gの添加後に、3.5時間で、同じメタクリル酸エステル2448.9g、2−メルカプトエタノール75.3gおよび第三ブチルペル−2−エチルヘキサノエート24.5gをポンプ輸送により添加する。供給後45分および90分で、開始剤それぞれ5.2gを添加し、かつこのバッチ量を更に2時間100℃で保持する。この結果は、100℃で、20.9cStの粘度を示している。
収量:4038g。
実際の粘度KV100 = 20.9cSt
分子量(SEC) = 5500g/モル。
b)エステル交換を、A−1b)と同様にして(出発物質の同じ重量比で)行うが、しかし、a)からの全生成物を用いて10lの三口フラスコ中で行う。
マクロ単量体I−2の収量約4000g。
【0039】
A−3
PAMA−マクロ単量体、Mw=7720の製造
a)前駆物質の製造
例A−1a)の場合と同じ装置を使用する。6lのフラスコ中に、次のもの:100N−油1396g、C11〜C16−アルカノールからの混合物のメタクリル酸エステル(製品 DOBANOL 25L)155.1gおよび2−メルカプトエタノール3.10gを装入し、かつ窒素雰囲気下で110℃に昇温させる。第三ブチルペル−2−エチルヘキサノエート(開始剤)1.65gの添加後に、3.5時間で、同じメタクリル酸エステル2448.9gおよび2−メルカプトエタノール49.0gおよび開始剤24.5gを連続的にポンプ輸送する。供給後45分および90分で、開始剤それぞれ5.2gを添加し、かつバッチ量を更に12時間110℃で保持する。
実際の粘度KV100 = 21cSt
分子量(SEC) = 7720g/モル
b)例A−2b)と同様のエステル交換、マクロ単量体の油溶液収量約4000g。
【0040】
A−4
PAMA−マクロ単量体、Mw=13600の製造
a)前駆物質の製造
例A−1a)と同じ装置。6lのフラスコ中に、次のもの:100N−油1396g、C11〜C16−アルカノールの混合物のメタクリル酸エステル(製品 DOBANOL 25L)155.1g並びに2−メルカプトエタノール1.55gを装入し、かつ窒素雰囲気下で110℃に昇温させる。第三ブチルペル−2−エチルヘキサノエート(開始剤)1.65gの添加後に、3.5時間で、同じメタクリル酸エステル2448.9g、2−メルカプトエタノール49.0gおよび開始剤24.5gを連続的にポンプ輸送により添加する。供給後45分および90分で、開始剤それぞれ5.2gを添加し、かつバッチ量を更に12時間110℃で保持する。
実際の粘度KV100 = 52cSt
分子量(SEC) = 13600g/モル。
b)エステル交換を例A−2b)と同様に行う。収量、マクロ単量体の油溶液約A−4 4500g。
【0041】
マクロ単量体からのグラフト重合体PFPの製造。
【0042】
PFP−1
高分子量くし型重合体の製造
例A−1a)に記載の装置を使用する。単量体混合物を、例A−1からのマクロ単量体227.7g、C11〜C16−アルカノールの混合物のメタクリル酸エステル(製品 DOBANOL 25L)106.3gおよびメチルメタクリレート45.5gから製造し、前記の単量体混合物24.5gを、100N−油220.5gと一緒に装置の中に装入し、かつ窒素雰囲気下で82℃に昇温させる。装入物へ第三ブチルペル−2−エチルヘキサノエート0.88gを添加した後に、3.5時間で、単量体混合物355gを、第三ブチルペル−2−エチルヘキサノエート0.56gと一緒に連続的にポンプ輸送により添加する。供給後12時間で、更に第三ブチルペル−2−ヘキサノエート0.5gを添加し、かつ8時間82℃で後反応させる。この後、100N−油150gの添加によって希釈する。
収量:グラフト重合体PFP−1の油溶液600g。
【0043】
PFP−2
分散作用を有するくし型重合体の製造
例A−1a)に記載の装置を使用する。三口フラスコ中に、例A−2からのマクロ単量体122.9g、2−(N−モルホリニル)−エチルメタクリレート20.0gおよびドデシルメルカプタン0.15gを装入し、窒素雰囲気下で100℃に昇温させ、かつこの後、第三ブチルペル−2−エチルヘキサノエート1.0gを添加する。第一の開始剤添加の3ないし7時間後に、第三ブチルペル−2−エチルヘキサノエートそれぞれ更に0.2gを添加し、かつバッチ量を更に12時間100℃で保持する。
収量:くし型重合体PFP−2の油溶液143g。
【0044】
PFP−3
分散作用を有するくし型重合体の製造
例A−1と同様の装置。三口フラスコ中に、例A−3からのマクロ単量体122.9g、2−(N−モルホリニル)−エチルメタクリレート20gおよびドデシルメルカプタン0.15gを装入し、窒素雰囲気下で100℃に昇温させ、かつこの後、第三ブチルペル−2−エチルヘキサノエート1.0gを添加した。第一の開始剤添加の3ないし7時間後に、開始剤それぞれ更に0.2gを添加し、かつバッチ量を更に12時間100℃で保持する。
収量:くし型重合体PFP−3の油溶液143g。
【0045】
PFP−4
分散作用を有するくし型重合体の製造
例A−1と同様の装置。三口フラスコ中に、例A−4からのマクロ重合体138.2g、2−(N−モルホリニル)−エチルメタクリレート(=単量体VII−a)10gおよびドデシルメルカプタン0.15gを装入し、窒素雰囲気下で100℃に昇温させ、かつこの後、第三ブチルペル−2−エチルヘキサノエート1.0gを添加する。開始剤添加の3ないし7時間後に、開始剤それぞれ更に0.2gを添加し、かつバッチ量を更に12時間100℃で保持する。
【0046】
収量:くし型重合体PFP−4の油溶液148g。
【0047】
PFP−5
分散作用を有するくし型重合体の製造
例A−1と同様の装置。三口フラスコ中に、例A−2に記載のマクロ単量体138.2g、2−(N−モルホリニル)−エチルメタクリレート5.0g、N−ビニルピロリドン(=単量体VIII−a)5.0gおよびドデシルメルカプタン0.15gを装入し、窒素雰囲気下で100℃に昇温させ、かつこの後、第三ブチルペル−2−エチルヘキサノエート1.0gを添加する。第一の開始剤添加の3ないし7時間で、第三ブチルペル−2−エチルヘキサノエートそれぞれ更に0.2gを添加し、かつバッチ量を更に12時間100℃で保持する。
収量:くし型重合体PFP−5の油溶液148g。
【0048】
PFP−6
高分子量くし型重合体の製造
例A−1a)に記載の装置を使用する。単量体混合物を、例A−1からのマクロ単量体299.5g、C11〜C16−アルカノールの混合物のメタクリル酸エステル(製品 DOBANOL 25L)65g、メチルメタクリレート65.0gおよび100N−油70.5gから製造し、前記単量体混合物50gを装置の中に装入し、かつ窒素雰囲気下で90℃に昇温させる。装入物へ第三ブチルペル−2−エチルヘキサノエート0.06gを添加した後に、3.5時間で、前記単量体混合物450gを、第三ブチルペル−2−エチルヘキサノエート0.59gと一緒に連続的にポンプ輸送により供給する。供給後1.5時間で希釈するために100N−油312.5gを添加する。供給後6時間で、更に第三ブチルペル−2−エチルヘキサノエート0.65gを添加し、かつ8時間、後反応させる。
収量:グラフト共重合体PFP−6の油溶液812g。
【0049】
PFP−7
高分子量くし型重合体の製造
例A−1a)に記載の装置を使用する。単量体混合物を、例A−1からのマクロ単量体276.5g、n−ブチルメタクリレート120.0gおよび100N−油103.5gから製造する。前記単量体混合物75gを、装置の中に装入し、かつ窒素雰囲気下で90℃に昇温させる。装入物へ第三ブチルペル−2−エチルヘキサノエート0.09gを添加した後に、3.5時間で、前記単量体混合物425gを、第三ブチルペル−2−エチルヘキサノエート0.51gと一緒に連続的にポンプ輸送により供給する。供給後6時間で、更に第三ブチルペル−2−エチルヘキサノエート0.6gを添加し、かつ8時間、後反応させる。この後、100N−油100gの添加によって希釈する。
収量:グラフト共重合体PFP−7の油溶液600g。
【0050】
PFP−8
高分子量くし型重合体の製造
例A−1a)に記載の装置を使用する。単量体混合物を、例A−1からのマクロ単量体207.4g、n−ブチルメタクリレート165.0gおよび100N−油127.6gから製造する。前記単量体混合物75gを、装置の中に装入し、かつ窒素雰囲気下で85℃に昇温させる。受器に第三ブチルペル−2−エチルヘキサノエート0.09gを添加した後に、3.5時間で、前記単量体混合物425gを、第三ブチルペル−2−エチルヘキサノエート0.51gと一緒に連続的にポンプ輸送により供給する。供給後1.5時間で、希釈するために100N−油250gを添加する。供給の6時間後に、更に第三ブチルペル−2−エチルヘキサノエート0.6gを添加し、かつ8時間、後反応させる。この後、更に希釈するために、100N−油450gを添加する。
収量:グラフト共重合体PFP−8の油溶液1200g。
【0051】
試験
本発明による乳化剤作用の試験のためには、カーボンブラック点滴試験の分散作用の試験のための以下に記載のトルオール−水−乳濁試験を、使用することができる。
トルオール/水−乳濁試験の実施:
乳濁作用に対する試験すべき添加剤を、1重量%の重合体濃度を有するトルオール(オラセトブルー(Oracetblau)B20ppmを添加されている)の中に溶解する。目盛りをつけられた20mlのすり合わせ試験管の中に、蒸留水7mlおよび1%のトルオール溶液13mlを順次充填し、かつ15分間、水浴中30℃で熱処理する。試験管を強烈に振盪させることによって、均質な乳濁液が得られ、かつ試料を、温度調節浴中に返送する。トルオール、乳濁液および水の層の中への乳濁液の分離を、24時間に亘って観察する。このために、5分、10分、100分および24時間で、トルオール/乳濁液の層境界並びに乳濁液/水の層境界を、目盛りに基づいて読み取る(第1a図を見よ)。
【0052】
評価
%の値での乳濁作用の数量化を、第1b図中に示された図式により行う。この場合、観察時間5分ないし24時間で存在する乳濁液の含量は、Aの面積対A+Bの全面積の比によって特性決定され、かつ%の値で記載される。
【0053】
カーボンブラック点滴試験の実施:
試験すべき添加物を用いて、150N−油(Enerpar 11)中で2つの主溶液:重合体含量0.375%を有する主溶液Iおよび重合体含量0.75%を有する主溶液IIを混合する。それぞれの主溶液から、2つのカーボンブラック分散溶液が生じる(2回の測定)。このために、それぞれ150mlのビーカーの中に、カーボンブラック(ファーネス・カーボンブラック、Degussa、Spezialschwarz 4)1.5gおよび主溶液50gを計量して供給し、かつこの後、ウルトラ・ツラックス(Ultra-Turrax)強力撹拌機を用いて30分間、毎分9000回転で撹拌する。この後、それぞれの分散溶液の20μlを濾紙(Papier Durieux 122)の上で点滴試験する。30℃で水平な貯蔵の48時間後に、小斑点を評価する。このために、カーボンブラック斑点の直径および該カーボンブラック斑点を包囲する油斑点の直径を測定し、その比を%で記載する:
単独評点:
カーボンブラック斑点直径/油斑点直径 *100%
点滴試験の総合評点は、4つの百分率の単独評価の総和として明らかにされる。劣ったカーボンブラック分散を示す生成物は、約70%以下の総合評点を生じ、良好なカーボンブラック分散を示す生成物は、130%以上の総合評点を生じる。
【0054】
【表1】

【0055】
【表2】

【0056】
【表3】

【0057】
【数1】

【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】aは、トルオール/乳濁液の層境界並びに乳濁液/水の層境界を示す略図であり、bは、乳濁液の含量を、Aの面積対A+Bの全面積の比により数量化して乳濁作用を示す図である。
【符号の説明】
【0059】
A 乳濁液、 B トルオールまたは水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラフト重合体PFP′において、該PFP′が、5000〜1000000の範囲内の重量平均分子量を有し、かつ、
PFP’に対して、
10〜90重量%の多官能化されたポリアルキルメタクリレート−マクロ単量体(A′)、この場合、該(A’)は、1000〜100000の重量平均分子量を有するものであって、かつ、0〜90重量%のC〜C30−アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリルエステル(AMA′)、0〜40重量%のC〜C−アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリル酸エステル、スチロール、C〜C−アルキル基を有するアルキルスチロールおよび脂肪酸基中にC原子2〜12個を有する脂肪酸ビニルエステルからなる群から選択された官能化されていないコモノマー(B′)並びに0〜100重量%の官能化された(メタ)アクリル酸エステルおよび(メタ)アクリル酸アミド、およびビニル複素環式基からなる群から選択された官能化されたコモノマー(C′)を含有するものであるが、但し、マクロ単量体(A’)中のモノマー(AMA′)、(B′)および(C′)の総和は100重量%になり、
0〜90重量%のC〜C30−アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリル酸エステル(AMA)からなる群から選択されたモノマー、
0〜60重量%のC〜C−アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリル酸エステル、スチロール、C〜C−アルキル基を有するアルキルスチロールおよび脂肪酸基中にC原子2〜12個を有する脂肪酸ビニルエステルからなる群から選択されたモノマー(B)および
0〜40重量%の官能化された(メタ)アクリル酸エステルおよび(メタ)アクリル酸アミドおよびビニル複素環式基からなる群から選択された官能化されたコモノマー(C)とを共重合させてなり、但し、(AMA)、(B)および(C)の総和は、PFP′に対して10〜90重量%であることを特徴とする、グラフト重合体PFP′。
【請求項2】
請求項1に記載のグラフト重合体PFP′をグラフト重合体として含有する潤滑油添加剤。

【図1】
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【公開番号】特開2008−255359(P2008−255359A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−101040(P2008−101040)
【出願日】平成20年4月9日(2008.4.9)
【分割の表示】特願平8−120569の分割
【原出願日】平成8年5月15日(1996.5.15)
【出願人】(390009128)エボニック レーム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (293)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Roehm GmbH
【住所又は居所原語表記】Kirschenallee,D−64293 Darmstadt,Germany
【Fターム(参考)】