説明

潤滑油用粘度指数向上剤および液体潤滑油組成物

【課題】粘度指数に優れた液体潤滑油組成物を提供する。
【解決手段】(A)基油及び添加物を含有する液体潤滑油100重量部と、(B)(a)芳香族ビニル系化合物を主体とする重合体ブロックと(b)イソブチレンを主体とする重合体ブロックからなるイソブチレン系ブロック共重合体0.01〜20重量部とを含有することを特徴とする液体潤滑油組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は潤滑油組成物用の添加剤として有用な特性を有するイソブチレン系ブロック共重合体、及びそれらを含む液体潤滑油組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
潤滑油の粘度は温度に伴って大きく変動する。一般に油類は、所定の低温側温度と所定の高温側温度における油の粘度により求められる、粘度指数によって識別される。所定の低温側温度および所定の高温側温度は何年にもわたって変動してきたが、常にJIS試験手順(JIS K 2283)によって定められている。現在では、試験で指定される低温側温度は40℃であり高温側温度は100℃である。100℃における動粘度が同じである2種類のエンジン潤滑油では、40℃における動粘度の低い方が高い粘度指数を有する。油の粘度指数が高いほど、40℃〜100℃の間の温度での動粘度の変化が小さいことを示す。粘度が高すぎると摩擦力の増大から機械効率が低下し、逆に粘度が低すぎると油膜破断による焼き付きが起こる。つまり潤滑油は幅広い温度で適切な粘度範囲にあることが好ましく、粘度指数が高いほど幅広い温度での使用に適しているといえる。一般に、エンジンオイルに添加される粘度指数向上剤は、粘度指数とともに動粘度も増加させる。粘度指数向上剤には熱・酸化安定性、せん断安定性が求められる。
【0003】
粘度指数向上剤には、特許文献1、2、3に記載されているようにポリイソブチレンが用いられているが、潤滑油の性能向上のためにはさらなる粘度指数の向上が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63-205396号公報
【特許文献2】国際公開WO07/114260号公報
【特許文献3】特開平07−268047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、潤滑油の粘度指数を向上させる改質剤と粘度指数の高い潤滑油に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明は(A)基油及び添加物を含有する液体潤滑油100重量部と、(B)(a)芳香族ビニル系化合物を主体とする重合体ブロックと(b)イソブチレンを主体とする重合体ブロックとを含有するイソブチレン系ブロック共重合体0.01〜20重量部よりなる液体潤滑油組成物に関する。
【0007】
好ましい実施態様としては、(B)イソブチレン系ブロック共重合体が(a)芳香族ビニル系化合物を主体とする重合体ブロックを10〜45重量%含む液体潤滑油組成物に関する。
【0008】
好ましい実施態様としては、(B)イソブチレン系ブロック共重合体の数平均分子量が1万から30万である液体潤滑油組成物に関する。
【0009】
好ましい実施態様としては、液体潤滑油組成物からなるエンジン油、作動油、ギヤー油及び一般機械油に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明は優れた粘度指数をもつ潤滑油を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に用いる(A)液体潤滑油には、基油及び添加剤を含む。
(A)液体潤滑油中の基油としては、例えば植物油、鉱物油、合成油が挙げられる。植物油としては、パーム油、大豆油、なたね油などが例示でき、鉱物油としてはパラフィン系オイル、ナフテン系オイルなどが例示でき、合成油としてはポリアルファオレフィン、ポリブテン、ポリアルキルベンゼン、ポリリン酸エステル、ポリシロキサンが例示できる。これらはそれぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0012】
本発明の潤滑油混合用組成物は、潤滑油の製造時に潤滑油に混合することもできるし、添加剤として製品化し、この添加剤を別途製品化されている潤滑油に混合することもできる。
【0013】
(A)液体潤滑油中の添加剤としては、例えば、清浄分散剤、酸化防止剤、流動点降下剤、油性剤、防錆剤、熱安定剤、せん断安定剤、掃気剤、摩耗防止剤などが挙げられる。
【0014】
本発明における(B)イソブチレン系ブロック共重合体とは(a)芳香族ビニル系化合物を主体とする重合体ブロックおよび(b)イソブチレンを主体とする重合体ブロックからなるブロック共重合体である。芳香族ビニル系化合物としては、スチレン、o−、m−又はp−メチルスチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、2,6−ジメチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、α−メチル−o−メチルスチレン、α−メチル−m−メチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレン、β−メチル−o−メチルスチレン、β−メチル−m−メチルスチレン、β−メチル−p−メチルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、α−メチル−2,6−ジメチルスチレン、α−メチル−2,4−ジメチルスチレン、β−メチル−2,6−ジメチルスチレン、β−メチル−2,4−ジメチルスチレン、o−、m−又はp−クロロスチレン、2,6−ジクロロスチレン、2,4−ジクロロスチレン、α−クロロ−o−クロロスチレン、α−クロロ−m−クロロスチレン、α−クロロ−p−クロロスチレン、β−クロロ−o−クロロスチレン、β−クロロ−m−クロロスチレン、β−クロロ−p−クロロスチレン、2,4,6−トリクロロスチレン、α−クロロ−2,6−ジクロロスチレン、α−クロロ−2,4−ジクロロスチレン、β−クロロ−2,6−ジクロロスチレン、β−クロロ−2,4−ジクロロスチレン、o−、m−又はp−t−ブチルスチレン、o−、m−又はp−メトキシスチレン、o−、m−又はp−クロロメチルスチレン、o−、m−又はp−ブロモメチルスチレン、シリル基で置換されたスチレン誘導体、インデン、ビニルナフタレン等が挙げられる。これらの中でも、工業的な入手性やガラス転移温度の点から、スチレン、α−メチルスチレン、および、これらの混合物が好ましく、特にスチレンが好ましい。
【0015】
(a)芳香族ビニル系化合物を主成分とする重合体ブロックは、芳香族ビニル系化合物に由来するユニットが60重量%以上、好ましくは80重量%以上から構成される重合体ブロックである。
【0016】
(b)イソブチレンを主成分とする重合体ブロックは、イソブチレンに由来するユニットが60重量%以上、好ましくは80重量%以上から構成される重合体ブロックである。
【0017】
いずれの重合体ブロックも、共重合成分として、相互の単量体を使用することができるほか、その他のカチオン重合可能な単量体成分を使用することができる。このような単量体成分としては、脂肪族オレフィン類、ジエン類、ビニルエーテル類、シラン類、ビニルカルバゾール、β−ピネン、アセナフチレン等の単量体が例示できる。これらはそれぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0018】
脂肪族オレフィン系単量体としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、ペンテン、ヘキセン、シクロヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、ビニルシクロヘキサン、オクテン、ノルボルネン等が挙げられる。
【0019】
ジエン系単量体としては、ブタジエン、イソプレン、ヘキサジエン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、ジビニルベンゼン、エチリデンノルボルネン等が挙げられる。
【0020】
ビニルエーテル系単量体としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、(n−、イソ)プロピルビニルエーテル、(n−、sec−、tert−、イソ)ブチルビニルエーテル、メチルプロペニルエーテル、エチルプロペニルエーテル等が挙げられる。
【0021】
シラン化合物としては、ビニルトリクロロシラン、ビニルメチルジクロロシラン、ビニルジメチルクロロシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルトリメチルシラン、ジビニルジクロロシラン、ジビニルジメトキシシラン、ジビニルジメチルシラン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、トリビニルメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
【0022】
本発明の成分(B)の構造は、(a)芳香族ビニル系ブロックと(b)イソブチレン系ブロックが(a)−(b)−(a)のように連なったトリブロック体、(a)−(b)のようなジブロック体、(b)ブロックを中心とした星形ブロック共重合体、(a)ブロックを中心とした星状ブロック共重合体などが粘度指数向上効果の観点から好ましい。
【0023】
(a)芳香族ビニル系重合体ブロックと(b)イソブチレン系重合体ブロックの割合に関しては、特に制限はないが、基油への溶解性の点から、成分(B)における(a)芳香族ビニル系重合体ブロックの含有量が10〜45重量%以上であることが好ましく、10〜30重量%であることがさらに好ましい。
【0024】
また成分(B)の分子量は特に制限はないが、溶解性、せん断安定性等の面から、GPC測定による数平均分子量で1万〜30万であることが好ましく、3万〜15万であることが特に好ましい。数平均分子量が1万よりも低い場合には粘度指数改良効果が十分に発現されない傾向があり、一方30万を超える場合には基油への溶解性が悪化する傾向がある。さらには品質安定性の観点からイソブチレン系ブロック共重合体の重量平均分子量/数平均分子量が1.4以下であることが好ましい。
【0025】
成分(B)の製造方法については特に制限はないが、例えば、下記一般式(I)で表される化合物の存在下に、単量体成分を重合させることにより得られる。
(CRX)nR (I)
[式中Xはハロゲン原子、炭素数1〜6のアルコキシ基またはアシロキシ基から選ばれる置換基、R、Rはそれぞれ水素原子または炭素数1〜6の1価炭化水素基でR、Rは同一であっても異なっていても良く、Rは一価若しくは多価芳香族炭化水素基または一価若しくは多価脂肪族炭化水素基であり、nは1〜6の自然数を示す。]
上記一般式(I)で表わされる化合物は開始剤となるものでルイス酸等の存在下炭素陽イオンを生成し、カチオン重合の開始点になると考えられる。本発明で用いられる一般式(I)の化合物の例としては、次のような化合物等が挙げられる。
【0026】
(1−クロル−1−メチルエチル)ベンゼン[CC(CHCl]、1,4−ビス(1−クロル−1−メチルエチル)ベンゼン[1,4−Cl(CHCCC(CHCl]、1,3−ビス(1−クロル−1−メチルエチル)ベンゼン[1,3−Cl(CHCCC(CHCl]、1,3,5−トリス(1−クロル−1−メチルエチル)ベンゼン[1,3,5−(ClC(CH]、1,3−ビス(1−クロル−1−メチルエチル)−5−(tert−ブチル)ベンゼン[1,3−(C(CHCl)-5−(C(CH)C
これらの中でも特に好ましいのはビス(1−クロル−1−メチルエチル)ベンゼン[C(C(CHCl)]、トリス(1−クロル−1−メチルエチル)ベンゼン[(ClC(CH]である。[なおビス(1−クロル−1−メチルエチル)ベンゼンは、ビス(α−クロロイソプロピル)ベンゼン、ビス(2−クロロ−2−プロピル)ベンゼンあるいはジクミルクロライドとも呼ばれ、トリス(1−クロル−1−メチルエチル)ベンゼンは、トリス(α−クロロイソプロピル)ベンゼン、トリス(2−クロロ−2−プロピル)ベンゼンあるいはトリクミルクロライドとも呼ばれる]。
【0027】
成分(B)を製造する際には、さらにルイス酸触媒を共存させることもできる。このようなルイス酸としてはカチオン重合に使用できるものであれば良く、TiCl、TiBr、BCl、BF、BF・OEt、SnCl、SbCl、SbF、WCl、TaCl、VCl、FeCl、ZnBr、AlCl、AlBr等の金属ハロゲン化物;EtAlCl、EtAlCl等の有機金属ハロゲン化物を好適に使用することができる。中でも触媒としての能力、工業的な入手の容易さを考えた場合、TiCl、BCl、SnClが好ましい。ルイス酸の使用量は、特に限定されないが、使用する単量体の重合特性あるいは重合濃度等を鑑みて設定することができる。通常は一般式(I)で表される化合物に対して0.1〜100モル当量使用することができ、好ましくは1〜50モル当量の範囲である。
【0028】
成分(B)の製造に際しては、さらに必要に応じて電子供与体成分を共存させることもできる。この電子供与体成分は、カチオン重合に際して、成長炭素カチオンを安定化させる効果があるものと考えられており、電子供与体の添加によって、分子量分布の狭い、構造が制御された重合体を生成することができる。使用可能な電子供与体成分としては特に限定されないが、例えば、ピリジン類、アミン類、アミド類、スルホキシド類、エステル類、または金属原子に結合した酸素原子を有する金属化合物等を挙げることができる。
【0029】
成分(B)の重合は必要に応じて有機溶媒中で行うことができ、有機溶媒としてはカチオン重合を本質的に阻害しなければ、特に制約なく使用することができる。具体的には、塩化メチル、ジクロロメタン、クロロホルム、塩化エチル、ジクロロエタン、n−プロピルクロライド、n−ブチルクロライド、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、ブチルベンゼン等のアルキルベンゼン類;エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等の直鎖式脂肪族炭化水素類;2−メチルプロパン、2−メチルブタン、2,3,3−トリメチルペンタン、2,2,5−トリメチルヘキサン等の分岐式脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の環式脂肪族炭化水素類;石油留分を水添精製したパラフィン油等を挙げることができる。
【0030】
これらの溶媒は、成分(B)を構成する単量体の重合特性及び生成する重合体の溶解性等のバランスを考慮して、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0031】
上記溶媒の使用量は、得られる重合体溶液の粘度や除熱の容易さを考慮して、重合体の濃度が1〜50wt%、好ましくは5〜35wt%となるように決定される。
【0032】
実際の重合を行うに当たっては、各成分を冷却下例えば−100℃以上0℃未満の温度で混合する。エネルギーコストと重合の安定性を釣り合わせるために、特に好ましい温度範囲は−30℃〜−80℃である。
【0033】
成分(B)の配合量は(A)基油及び添加物を含有する液体潤滑油100重量部に対して0.01〜20重量部が好ましく、0.1〜5重量部がさらに好ましい。0.01重量部未満では、粘度指数改良効果が不充分となり、20重量部を越えると、実用上の粘度が高くなりすぎるおそれがある。
【0034】
本発明の成分(B)は、潤滑油に加えることによって、潤滑油の粘度指数特性を向上させることがきる。
【0035】
潤滑油への成分(B)の添加方法は、潤滑油の製造時に潤滑油に混合することもできるし、添加剤として別途製品化されている潤滑油に混合することもできる。さらに、本発明の液体潤滑油組成物は、成分(B)以外の種々の添加剤成分などと共に潤滑油に混合することができる。
【0036】
本発明の潤滑油は自動車用のエンジン油、ミッション油、ギヤ油に加え、船舶用のシリンダ油、システム油、工業用のタービン油、油圧作動油、冷凍機油に使用できる。
【0037】
本発明の潤滑油組成物は、防食添加剤、酸化防止剤、洗浄剤、流動点降下剤、および1種類以上の別の粘度指数向上剤などの他の添加剤も含むことができる。
【実施例】
【0038】
ここから本発明の実施例を示すが、これらは単なる例示であり、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、以下の記載において、%および部は特に断らない限り、それぞれ重量%、重量部を表す。
【0039】
(組成物の調製法と試験法)
成分(A)基油と成分(B)イソブチレン系ブロック共重合体を入れたガラス製容器を120℃に設定したオイルバスに設置し加熱しながらマグネチックスターラーを用いて5時間撹拌後、成分(B)を溶解させ液体潤滑油組成物を得た。
【0040】
(1) 粘度指数
JIS−K2283に従って評価した。
【0041】
(2)分子量の測定
本実施例に示すブロック共重合体の分子量は、Waters社製GPCシステム(カラム:昭和電工(株)製ShodexK−804(ポリスチレンゲル)、移動相:クロロホルム)を用い測定し、数平均分子量はポリスチレン換算で表記した。
【0042】
(3)動粘度
40℃及び100℃における動粘度をJIS K−2283に従い、キャノン−ウベローデ粘度計を用いて測定した。
【0043】
(実施例および比較例で用いた原料)
成分(A)の基油には、Durasyn 170 (INEOS Oligomers社製)を用いた。
成分(B−1): スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体 (製造例1)
成分(B−2): スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体 (製造例2)
成分(B−3): スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体 (製造例3)
成分(B−4): スチレン−イソブチレンジブロック共重合体 (製造例4)
PIB: ポリイソブチレン (Basf社製 Oppanol B12)
【0044】
(製造例1)成分(B−1)の製造法
2Lのセパラブルフラスコの重合容器内を窒素置換したのち、注射器を用いてn−ヘキサン456.4mLおよび塩化ブチル656.3mL(いずれもモレキュラーシーブスで乾燥したもの)を加え、重合容器を−70℃のドライアイス/メタノールバス中につけて冷却した。イソブチレンモノマー232mL(2871mmol)が入っている三方コック付耐圧ガラス製液化採取管にテフロン(登録商標)製の送液チューブを接続し、重合容器内にイソブチレンモノマーを窒素圧により送液した。p−ジクミルクロライド0.687g(3.0mmol)およびα−ピコリン1.30g(14mmol)を加えた。次にさらに四塩化チタン8.67mL(79.1mmol)を加えて重合を開始した。重合開始から2.5時間同じ温度で撹拌を行なったのち、重合溶液からサンプリング用として重合溶液約1mLを抜き取った。続いて、あらかじめ−70℃に冷却しておいたスチレンモノマー38,9g(373mmol)、n−ヘキサン14.1mLおよび塩化ブチル20.4mLの混合溶液を重合容器内に添加した。さらに2時間後大量の水を加えて反応を終了させた。
反応溶液を2回水洗し、溶媒を蒸発させ、得られた重合体を60℃で24時間真空乾燥することにより目的のブロック共重合体を得た。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により得られた重合体の分子量を測定した。ブロック共重合体の数平均分子量(Mn)が93000であるブロック共重合体が得られた。
【0045】
(製造例2)成分(B−2)の製造法
2Lのセパラブルフラスコの重合容器内を窒素置換したのち、注射器を用いてn−ヘキサン456.4mLおよび塩化ブチル656.3mL(いずれもモレキュラーシーブスで乾燥したもの)を加え、重合容器を−70℃のドライアイス/メタノールバス中につけて冷却した。イソブチレンモノマー151mL(1866mmol)が入っている三方コック付耐圧ガラス製液化採取管にテフロン(登録商標)製の送液チューブを接続し、重合容器内にイソブチレンモノマーを窒素圧により送液した。p−ジクミルクロライド0.687g(3.0mmol)およびα−ピコリン1.30g(14mmol)を加えた。次にさらに四塩化チタン8.67mL(79.1mmol)を加えて重合を開始した。重合開始から2.5時間同じ温度で撹拌を行なったのち、重合溶液からサンプリング用として重合溶液約1mLを抜き取った。続いて、あらかじめ−70℃に冷却しておいたスチレンモノマー50.6g(486mmol)、n−ヘキサン14.1mLおよび塩化ブチル20.4mLの混合溶液を重合容器内に添加した。さらに2時間後大量の水を加えて反応を終了させた。
反応溶液を2回水洗し、溶媒を蒸発させ、得られた重合体を60℃で24時間真空乾燥することにより目的のブロック共重合体を得た。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により得られた重合体の分子量を測定した。ブロック共重合体のMnが59000であるブロック共重合体が得られた。
【0046】
(製造例3)成分(B−3)の製造法
2Lのセパラブルフラスコの重合容器内を窒素置換したのち、注射器を用いてn−ヘキサン456.4mLおよび塩化ブチル656.3mL(いずれもモレキュラーシーブスで乾燥したもの)を加え、重合容器を−70℃のドライアイス/メタノールバス中につけて冷却した。イソブチレンモノマー151mL(1866mmol)が入っている三方コック付耐圧ガラス製液化採取管にテフロン(登録商標)製の送液チューブを接続し、重合容器内にイソブチレンモノマーを窒素圧により送液した。p−ジクミルクロライド0.687g(3.0mmol)およびα−ピコリン1.30g(14mmol)を加えた。次にさらに四塩化チタン8.67mL(79.1mmol)を加えて重合を開始した。重合開始から2.5時間同じ温度で撹拌を行なったのち、重合溶液からサンプリング用として重合溶液約1mLを抜き取った。続いて、あらかじめ−70℃に冷却しておいたスチレンモノマー38.8g(373mmol)、n−ヘキサン14.1mLおよび塩化ブチル20.4mLの混合溶液を重合容器内に添加した。さらに2時間後大量の水を加えて反応を終了させた。
反応溶液を2回水洗し、溶媒を蒸発させ、得られた重合体を60℃で24時間真空乾燥することにより目的のブロック共重合体を得た。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により得られた重合体の分子量を測定した。ブロック共重合体のMnが55000であるブロック共重合体が得られた。
【0047】
(製造例4)成分(B−4)の製造法
2Lのセパラブルフラスコの重合容器内を窒素置換したのち、注射器を用いてn−ヘキサン456.4mLおよび塩化ブチル656.3mL(いずれもモレキュラーシーブスで乾燥したもの)を加え、重合容器を−70℃のドライアイス/メタノールバス中につけて冷却した。イソブチレンモノマー116mL(1435mmol)が入っている三方コック付耐圧ガラス製液化採取管にテフロン(登録商標)製の送液チューブを接続し、重合容器内にイソブチレンモノマーを窒素圧により送液した。クミルクロライド0.45g(3.0mmol)およびα−ピコリン1.30g(14mmol)を加えた。次にさらに四55塩化チタン8.67mL(79.1mmol)を加えて重合を開始した。重合開始から2.5時間同じ温度で撹拌を行なったのち、重合溶液からサンプリング用として重合溶液約1mLを抜き取った。続いて、あらかじめ−70℃に冷却しておいたスチレンモノマー25.0g(240mmol)、n−ヘキサン14.1mLおよび塩化ブチル20.4mLの混合溶液を重合容器内に添加した。さらに2時間後大量の水を加えて反応を終了させた。
反応溶液を2回水洗し、溶媒を蒸発させ、得られた重合体を60℃で24時間真空乾燥することにより目的のブロック共重合体を得た。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により得られた重合体の分子量を測定した。ブロック共重合体のMnが35000であるブロック共重合体が得られた。
【0048】
(実施例1〜4)
成分(A)、(B)を表1に示す割合で配合し液体潤滑油組成物を得た。配合組成及び特性値の測定結果を表1に示す。
【0049】
(比較例1〜2)
成分(A)、およびPIBを表1に示す割合で配合し液体潤滑油組成物を得た。配合組成及び特性値の測定結果を表1に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
実施例1〜4は成分(B)を含まない比較例1に対して粘度指数が向上している。また実施例はポリイソブチレンを含む比較例2よりも粘度指数が高いことから本発明の液体潤滑油組成物は粘度指数に優れることが分かる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)基油及び添加物を含有する液体潤滑油100重量部と、(B)(a)芳香族ビニル系化合物を主体とする重合体ブロックと(b)イソブチレンを主体とする重合体ブロックからなるイソブチレン系ブロック共重合体0.01〜20重量部とを含有することを特徴とする液体潤滑油組成物。
【請求項2】
(B)イソブチレン系ブロック共重合体が(a)芳香族ビニル系化合物を主体とする重合体ブロックを10〜45重量%含むことを特徴とする請求項1に記載の液体潤滑油組成物。
【請求項3】
(B)イソブチレン系ブロック共重合体の数平均分子量が1万から30万であることを特徴とする請求項1または2に記載の液体潤滑油組成物。
【請求項4】
請求項1〜3に記載の液体潤滑油組成物からなるエンジン油、作動油、ギヤー油及び一般機械油。

【公開番号】特開2012−219243(P2012−219243A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−89502(P2011−89502)
【出願日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】