説明

潤滑油用粘度指数向上剤および潤滑油組成物

【課題】潤滑油添加剤として有用な新規な潤滑油用粘度指数向上剤を提供すること。
【解決手段】下記一般式(I)または(II)で表される、ポリオレフィン鎖Pの末端基中に(メタ)アクリロイル基を含有するポリオレフィンマクロモノマー(A)を構成単位として有するグラフト共重合体からなる潤滑油用粘度指数向上剤、




[式中、R1およびR2はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を示し、PはCH=CHR3(R3は炭素原子数が1〜20の炭化水素基、水素原子またはハロゲン原子)で示されるオレフィンを単独重合または共重合させてなるポリマー鎖である]
並びに、前記潤滑油用粘度指数向上剤を含む潤滑油組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリオレフィン鎖を側鎖として有する新規なグラフト共重合体からなる潤滑油用粘度指数向上剤および該粘度指数向上剤を含有する潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
石油製品は一般に温度変化により粘度が大きく変化する、いわゆる粘度の温度依存性を有しているが、自動車用のエンジン油・ギヤ油や作動油等として使用される潤滑油は、低温から高温まで広い範囲にわたって粘度ができるだけ変化しないことが実用上望ましい。この尺度として粘度指数が用いられ、粘度指数が大きいほど温度変化に対する安定性が高い。そこで潤滑油には、粘度の温度依存性を小さくする目的で、鉱物油等の潤滑油基油に可溶な、ある種のポリマーが粘度指数向上剤 として用いられている。そのような重合体としては、例えばポリメタクリレート(PMA)〔特開平7−62372号公報〕、オレフィン共重合体(OCP)〔特公昭46−34508号公報〕、ポリイソブチレン(PIB)等が使用されている。
【0003】
これらの重合体を添加した潤滑油にはそれぞれ特徴がある。例えば、PMAは粘度指数向上性に優れており流動点降下作用もあるが、増粘効果、剪断安定性が低い。増粘効果を向上させるためには分子量を大きくする方法があるが、この場合、剪断力に対する安定性が極端に悪くなり、駆動時の粘度低下が問題となる。PIBは増粘効果が大きいが、粘度指数向上性に劣る。OCPの粘度指数向上性はPMAに劣るが、増粘効果が大きく、かつ剪断安定性に優れている。
【0004】
OCPの物性を改良する方法としては、モノマーの種類、モル比などを調整する方法、ランダム、ブロックなどのモノマー配列を変える方法、組成の異なるポリマーをブレンドする方法、エチレン・α−オレフィン共重合体に極性モノマーをグラフト共重合する方法などがあり、従来から種々の方法が試みられている。
【0005】
例えば、米国特許第3,697,429号には、異なるエチレン含量のエチレン・α−オレフィンコポリマーのブレンドが開示されており、潤滑油の粘度指数向上剤 として使用した場合には、優れた低温特性を得られることが示されている。一方、リビング重合の特性を活かした他の工夫も行われており、例えば、特開昭60−35009号公報では、分子量分布が狭く、分子内で組成の異なるエチレンとα−オレフィンのランダム共重合体、ブロック共重合体が開示されている。これらの共重合体は、剪断安定性と増粘性、および優れた低温特性を有しており、粘度指数改良剤として好適であることが示されている。
【0006】
このように性能改善に向けて様々な試みがなされているが、近年、省エネルギー化を目的とした温度粘度特性の改善、廃潤滑油削減などを目的とした長寿命化(剪断安定性、耐熱酸化安定性)要求が高まっており、粘度指数向上剤に対しても更なる性能バランスの改善が求められている。
【0007】
更なる性能バランスの改善策として、増粘性、耐熱性に優れるエチレン・α−オレフィン共重合体と温度粘度特性に優れるポリ(メタ)アクリレートの複合化が考えられ、特開昭61−181528号公報にはポリオレフィンにポリ(メタ)アクリレートをラジカル開始剤の存在下で反応させることにより得られるグラフト共重合体が開示されている。しかし、ラジカルグラフト反応では充分な反応率を得ることは困難であり、未変性のポリオレフィンおよび(メタ)アクリレートのホモポリマーが多く存在するため、有効成分量が少なく、大幅な性能改善は期待できない。
【0008】
グラフト共重合体の含有率を高める方法としては、ポリオレフィン鎖にラジカル重合性を有する官能基を付与したマクロモノマーを(メタ)アクリレートと共重合することによってグラフト共重合体を得る方法が考えられる。このようなグラフト共重合体を合成するためのポリオレフィンマクロモノマーを製造する方法としては、例えば特開平6−329720号公報には、リビング重合法を利用して合成したポリエチレンの末端に重合性のアクリロイル基またはメタクリロイル基を導入する方法が記載されている。
【0009】
前述のリビング重合を用いた方法では、一つの触媒活性点から一本の重合体しか得られない。しかしながら生産性の点からは一つの触媒活性点から得られる重合体の数は多いほど好ましい。従って、リビング重合の利用は工業的な量産を考えると経済的に十分満足すべき方法とは言い難い。しかも、特開平6−329720号公報に記載の方法ではアルキルリチウムを用いたアニオン重合法を利用しているため、マクロモノマーとして製造できるポリオレフィンは最大で1000量体程度の比較的低分子量のポリエチレンであり、潤滑油添加剤として有用な分子量500〜20,000のエチレン・α−オレフィン共重合体に適用するのは困難である。
【特許文献1】特開平7−62372号公報
【特許文献2】特公昭46−34508号公報
【特許文献3】米国特許第3,697,429号公報
【特許文献4】特開昭60−35009号公報
【特許文献5】特開昭61−181528号公報
【特許文献6】特開平6−329720号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、自動車や工業用機械の低燃費化・省エネルギー化の観点から高い粘度指数を有し、且つ、廃潤滑油削減の観点から剪断安定性に優れる、耐久性の高い潤滑油用粘度指数向上剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、エチレン・α−オレフィン共重合体の末端にエポキシ基を導入し、さらに(メタ)アクリロイル基に変換することにより、新規なポリオレフィンマクロモノマーを工業的に有利な方法で製造する製造法を発明するに至った。また、該ポリオレフィンマクロモノマーを共重合することによって得られる共重合体が、潤滑油用粘度指数向上剤として優れた粘度指数向上能と剪断安定性を有することを見出した。
【0012】
即ち、本発明は、
下記一般式(I)または(II)で表される、ポリオレフィン鎖Pの末端基中に(メタ)アクリロイル基を含有するポリオレフィンマクロモノマー(A)を構成単位として有するグラフト共重合体からなる潤滑油用粘度指数向上剤、
【0013】
【化1】

【0014】
【化2】

【0015】
[式中、R1およびR2はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を示し、PはCH=CHR3(R3は炭素原子数が1〜20の炭化水素基、水素原子またはハロゲン原子)で示されるオレフィンを単独重合または共重合させてなるポリマー鎖である]
並びに
(i)前記潤滑油用粘度指数向上剤0.2〜50重量部と、
(ii)鉱油、合成炭化水素油及びエステル油から選ばれる少なくとも1種類からなり、かつ、100℃での動粘度が1〜20mm/sの範囲にあるベースオイル50〜99.8重量部と、必要に応じて
(iii)清浄分散剤、粘度指数向上剤、酸化防止剤、腐食防止剤、耐磨耗剤、摩擦調整剤、流動点降下剤、防錆剤、消泡剤および極圧剤からなる群より選ばれた少なくとも1種類の添加剤を含むことを特徴とする潤滑油組成物である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の潤滑油用粘度指数向上剤は、従来の潤滑油用粘度指数向上剤と比較して優れた粘度温度特性および剪断安定性を有している。従って、鉱油やα−オレフィンオリゴマーのような、潤滑油基油およびその他の添加剤と配合することにより、高い粘度温度特性、剪断安定性を有し、燃費効率、耐久性に優れた潤滑油組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の潤滑油用粘度指数向上剤は、下記一般式(I)または(II)で表される、ポリオレフィン鎖Pの末端基中に(メタ)アクリロイル基を含有するポリオレフィンマクロモノマー(A)を構成単位として有するグラフト共重合体からなる。
【0018】
【化3】

【0019】
【化4】

【0020】
[式中、R1およびR2はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を示し、PはCH=CHR3(R3は炭素原子数が1〜20の炭化水素基、水素原子またはハロゲン原子)で示されるオレフィンを単独重合または共重合させてなるポリマー鎖である]
【0021】
本発明において、ポリオレフィン鎖Pとして使用されるポリオレフィンの数平均分子量(Mn)は、単分散ポリスチレンを標準としてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。本方法により測定したポリオレフィン鎖Pの数平均分子量(Mn)は、500〜20,000、好ましくは700〜15,000、特に好ましくは800〜10,000の範囲にある。
【0022】
また、本発明において、ポリオレフィン鎖Pとしては種々のポリオレフィンを用いることができるが、基油への溶解性の面からエチレン・α−オレフィン共重合体が好ましい。
【0023】
エチレン・α−オレフィン共重合体を構成する炭素原子数3〜20のα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセンの直鎖状α―オレフィンや4−メチル−1−ペンテン、8−メチル−1−ノネン、7-メチル−1−デセン、6−メチル−1−ウンデセン、6,8−ジメチル−1−デセンなどの分岐を有するα―オレフィンを挙げることができるが、好ましくは炭素原子数3〜8の直鎖状α―オレフィンであり、特に好ましくはプロピレンである。これらのα−オレフィンは単独でまたは2種以上組合わせて用いることができる。
【0024】
本発明において、ポリオレフィン鎖Pとして使用されるエチレン・α−オレフィン共重合体は、エチレンから導かれる構成単位を30〜90モル%、好ましくは40〜85モル%、更に好ましくは50〜80モル%の範囲で含有する。一方、炭素原子数3〜20のα−オレフィンから導かれる構成単位の含有率は10〜70モル%の範囲であり、好ましくは15〜60モル%、更に好ましくは20〜50モル%である。
【0025】
以下に、本発明で用いられるポリオレフィンマクロモノマー(A)の製造法について具体的に説明する。
【0026】
下記一般式(I)で表される、ポリオレフィン鎖Pの末端基中に(メタ)アクリロイル基を含有するポリオレフィンマクロモノマー(A)を構成単位として有するグラフト共重合体からなる潤滑油用粘度指数向上剤である。
【0027】
本発明で用いられるポリオレフィンマクロモノマー(A)は、例えば下記一般式(IV)で表される、ポリオレフィン鎖Pの末端にエポキシ基を有するポリオレフィンを製造する工程(1)または下記一般式(V)で表される、ポリオレフィン鎖Pの末端に水酸基を有するポリオレフィンを製造する工程(1’)と、
【0028】
【化5】

【0029】
(式中、R1は水素原子またはメチル基を示す)
【0030】
【化6】

【0031】
[式中、PはCH=CHR3(R3は炭素原子数が1〜20の炭化水素基、水素原子またはハロゲン原子)で示されるオレフィンを単独重合または共重合させてなるポリマー鎖である]
【0032】
前記工程(1)で得られたポリオレフィン鎖Pの末端エポキシ基に(メタ)アクリロイル基を付加する工程(2)、または、前記工程(1’)で得られたポリオレフィン鎖Pの末端水酸基に(メタ)アクリロイル基を付加する工程(2’)を順次実施することによって製造される。
【0033】
前記工程(1)および(2)を順次実施することによって、下記一般式(I)で表される、ポリオレフィン鎖Pの末端基中に(メタ)アクリロイル基を含有するポリオレフィンマクロモノマー(A)を製造することができる。
【0034】
【化7】

【0035】
[式中、R1およびR2はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を示し、PはCH=CHR3(R3は炭素原子数が1〜20の炭化水素基、水素原子またはハロゲン原子)で示されるオレフィンを単独重合または共重合させてなるポリマー鎖である]
【0036】
また、前記工程(1’)および(2’)を順次実施することによって、下記一般式(II)で表される、ポリオレフィン鎖Pの末端基中に(メタ)アクリロイル基を含有するポリオレフィンマクロモノマー(A)を製造することができる。
【0037】
【化8】

【0038】
[式中、R1およびR2はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を示し、PはCH=CHR3(R3は炭素原子数が1〜20の炭化水素基、水素原子またはハロゲン原子)で示されるオレフィンを単独重合または共重合させてなるポリマー鎖である]
【0039】
以下に、上記の各工程についてより詳細に説明する。
(1)ポリオレフィン鎖Pの末端にエポキシ基を有するポリオレフィンを製造する工程
末端にエポキシ基を有するポリオレフィンは末端に不飽和結合を有するポリオレフィンの酸化反応により製造することができる。末端が不飽和結合であるポリオレフィンは、例えば既知のチーグラーナッタ触媒やメタロセン触媒などのオレフィン重合触媒の存在下に、前述した炭素原子数2〜20のオレフィンを重合または共重合させて製造することができる。また、特開2000−351813号公報、特開2001−2731号公報に記載されているように、ポストメタロセン触媒を用いて製造することもできる。
【0040】
該ポリオレフィンの末端不飽和結合をエポキシ基に変換する方法としては、日本国特許第2136151号公報に記載されているように、末端に不飽和結合を有するポリオレフィンに、ギ酸、酢酸などの有機酸と過酸化水素との混合物を反応させる方法、m−クロロ過安息香酸等の有機過酸化物を反応させる方法が挙げられる。また、特開平8−27136号公報に記載されているように、α−アミノメチルホスホン酸、タングステン酸類および相間移動触媒の存在下で、該ポリオレフィンを過酸化水素と反応させることによっても製造することができる。
【0041】
(2)ポリオレフィン鎖Pの末端エポキシ基に(メタ)アクリロイル基を付加する工程
一般式(I)で表される、末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリオレフィンは、例えば、トリエチルアミンやピリジン等の塩基性触媒または、硫酸などの酸触媒の存在下、一般式(IV)で表される末端にエポキシ基を有するポリオレフィンとアクリル酸またはメタクリル酸とを反応させることにより得られる。
【0042】
反応に際し、アクリル酸またはメタクリル酸は、ポリオレフィン末端のエポキシ基1モルに対し、0.1〜1000モル、好ましくは0.2〜500モルの範囲で用いられる。反応温度は、通常−100〜150℃、好ましくは0〜120℃であり、反応時間は通常0.1〜48時間、好ましくは0.5〜12時間である。また、反応中にアクリル酸またはメタクリル酸の重合反応が進行することを防止する目的で、ハイドロキノン等の重合禁止剤を加えることもできる。
【0043】
以上で述べた方法によって、下記一般式(I)で表される、ポリオレフィン鎖Pの末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリオレフィン、すなわちポリオレフィンマクロモノマーが製造される。
【0044】
【化9】

【0045】
(式中、R1およびR2はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を示す)
【0046】
(1’)ポリオレフィン鎖Pの末端に水酸基を有するポリオレフィンを製造する工程
末端に水酸基を有するポリオレフィンは、例えばオレフィン重合触媒の存在下に末端修飾ポリオレフィンを製造し、次いで該末端修飾ポリオレフィンの末端基と官能基構造を有する化合物との置換反応を行った後加溶媒分解するか、または、該末端修飾ポリオレフィンの末端基を加溶媒分解により官能基を形成する構造を有する化合物との置換反応を行った後加溶媒分解することにより製造することができる。
【0047】
以下、末端修飾ポリオレフィンの製造および該末端修飾ポリオレフィンを末端に水酸基を有するポリオレフィン(V)に変換する工程に分けて詳述する。
【0048】
末端修飾ポリオレフィンの製造
末端修飾ポリオレフィンは、例えば次の一般式(VI)を有する。
【0049】
P−AlR …(VI)
(式中、PはCH2 =CHR で示されるオレフィンを単独重合または共重合させてなるポリマー鎖である。R 、Rは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数1〜20の炭化水素基、水素原子またはハロゲン原子であり、Rは、炭素原子数1〜20の炭化水素基、水素原子またはハロゲン原子である。)
まず、一般式(VI)で表される末端修飾ポリオレフィンに代表される末端修飾ポリオレフィンの製造に用いられるオレフィン重合触媒は、従来公知のいずれの触媒であってもよい。従来公知の触媒としては、例えばマグネシウム担持型チタン触媒、メタロセン触媒、ポストメタロセン触媒などが挙げられる。
【0050】
ポリオレフィン鎖Pを構成するモノマーとして使用されるCH2 =CHR で示されるオレフィンは上述の通りである。
【0051】
上記一般式(VI)で表される末端修飾ポリオレフィンは、溶媒懸濁重合法、液体状オレフィンを溶媒とする懸濁重合法などによって製造される。溶媒懸濁重合を実施する際には、重合溶媒として、重合不活性な炭化水素を用いることができる。この際用いられる不活性炭化水素媒体として具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;エチレンクロリド、クロルベンゼンなどのハロゲン化炭化水素、またはこれらの組み合わせが挙げられる。これらのうち、特に脂肪族炭化水素を用いることが好ましい。
【0052】
このようにして製造された上記一般式(VI)で表される末端修飾ポリオレフィンは通常スラリーとして得られる。次に、[1]得られた末端修飾ポリオレフィンの−AlR基と官能基構造を有する化合物との置換反応を行い、次いで加溶媒分解するか、または、[2]得られた末端修飾ポリオレフィンの−AlR基を、加溶媒分解により官能基を形成する構造を有する化合物との置換反応を行い、次いで加溶媒分解することにより下記一般式(V)で表される末端に水酸基を有するポリオレフィンを製造する。
【0053】
【化10】

【0054】
式中、Pは前記と同様である。官能基構造を有する化合物としては、ハロゲンガス、メチルクロロホルミエート、フタル酸クロライドなどが挙げられる。また、加溶媒分解により官能基を形成する構造を有する化合物としては、酸素、一酸化炭素、二酸化炭素などが挙げられる。
【0055】
上記のようにして得られた末端修飾ポリオレフィンの−AlR 基と、官能基構造を有する化合物または加溶媒分解により官能基を形成する構造を有する化合物との置換反応は、通常0〜300℃、好ましくは10〜200℃の温度で、0〜100時間、好ましくは0.5〜50時間行われる。置換反応を行った後、加溶媒分解する際の温度は、通常0〜100℃、好ましくは10〜80℃の温度であり、加溶媒分解時間は、0〜100時間、好ましくは0.5〜50時間である。加溶媒分解に用いられる溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、水などが挙げられる。
【0056】
また、末端に水酸基を有するポリオレフィンは、片末端が不飽和結合であるポリオレフィンと、13族元素を含む化合物、例えば有機アルミニウム化合物または有機ホウ素化合物とを反応させて、上記一般式(VI)で表される末端修飾ポリオレフィンとし、次いで上記のようにして末端を水酸基に変換することによっても製造することができる。
【0057】
片末端が不飽和結合であるポリオレフィン(末端不飽和ポリオレフィン)は、例えば上記のようなオレフィン重合触媒の存在下に炭素原子数2〜20のオレフィンを重合または共重合させて製造することができる。
【0058】
オレフィン重合は、溶液重合、懸濁重合などの液相重合法あるいは気相重合法のいずれにおいても実施することができる。重合形態としては、懸濁重合の反応形態を採ることが好ましく、この時の反応溶媒としては、不活性炭化水素溶媒を用いることもできるし、反応温度において液状のオレフィンを用いることもできる。
【0059】
この際用いられる不活性炭化水素媒体としては、具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;エチレンクロリド、クロルベンゼンなどのハロゲン化炭化水素、あるいはこれらの組み合わせが挙げられる。これらのうち、特に脂肪族炭化水素を用いることが好ましい。
【0060】
このようにして得られた末端不飽和ポリオレフィンと13族元素を含む化合物を反応させて13族元素が結合した末端に変換する。なお、得られたポリオレフィンが、片末端に13族元素が結合したものと、片末端が不飽和結合末端であるものとの混合物である場合にも、必要に応じて、片末端が不飽和結合末端であるポリオレフィンの末端を13族元素が結合した末端に変換してもよい。
【0061】
反応に用いられる13族元素を含む化合物としては、有機アルミニウム化合物または有機ホウ素化合物が好ましく用いられる。中でも、トリアルキルアルミニウム、ジアルキルアルミニウムハイドライドまたは1つ以上の水素−ホウ素結合を有するホウ素化合物であることがより好ましく、有機アルミニウムとしてはジアルキルアルミニウムハイドライドが特に好ましく、有機ホウ素化合物としては9-ボラビシクロ[3,3,1]ノナンが特に好ましい。
【0062】
片末端が不飽和結合末端であるポリオレフィンと、13族元素を含む化合物との反応は、例えば以下のようにして行われる。
【0063】
(a)末端がビニリデン基であるポリプロピレン0.1〜50gと、ジイソブチルアルミニウムハイドライドの0.01〜5モル/リットル−オクタン溶液を5〜1000ミリリットルとを混合し、0.5〜6時間還流させる。
(b)末端がビニリデン基であるポリプロピレン0.1〜50gと、5〜1000ミリリットルの無水テトラヒドロフランと、0.1〜50ミリリットルの9-ボラビシクロ[3.3.1]ノナンの0.05〜10モル/リットル−テトラヒドロフラン溶液とを混合し、20〜65℃で0.5〜24時間攪拌する。
【0064】
以上のようにして、片末端修飾ポリオレフィンが製造される。得られたポリオレフィンの片末端には13族元素が結合しており、該13族元素はアルミニウムであることが好ましい。
【0065】
(2’)ポリオレフィン鎖Pの末端水酸基に(メタ)アクリロイル基を付加する工程
末端にアクリロイル基またはメタクリロイル基を有するポリオレフィンマクロモノマー(A)は、上記末端に水酸基を有するポリオレフィンとアクリル酸ハライド、メタクリル酸ハライド、アクリル酸またはメタクリル酸とを反応させることによっても得ることができる。
【0066】
末端に水酸基を有するポリオレフィンとアクリル酸ハライド、メタクリル酸ハライド、アクリル酸またはメタクリル酸との反応は、例えば以下のようにして行われる。
(c)トリエチルアミン等の塩基存在下、末端に水酸基を有するポリオレフィンをアクリル酸クロリド、メタクリル酸クロリド等のアクリル酸ハライドまたはメタクリル酸ハライドと反応させる方法。
(d)酸触媒の存在下、末端に水酸基を有するポリオレフィンをアクリル酸またはメタクリル酸と反応させる方法。
【0067】
反応に際し、アクリル酸ハライド、メタクリル酸ハライド、アクリル酸またはメタクリル酸は、ポリオレフィン末端の水酸基1モルに対し、0.1〜1000モル、好ましくは0.2〜500モルの範囲で用いられる。反応温度は、通常−100〜150℃、好ましくは0〜120℃であり、反応時間は通常0.1〜48時間、好ましくは0.5〜12時間である。
【0068】
このようにして下記一般式(II)で表される、ポリオレフィン鎖Pの末端基中に(メタ)アクリロイル基を含有するポリオレフィンマクロモノマー(A)を製造することができる。
【0069】
【化11】

【0070】
[式中、R2は水素原子またはメチル基を示し、PはCH=CHR3(R3は炭素原子数が1〜20の炭化水素基、水素原子またはハロゲン原子)で示されるオレフィンを単独重合または共重合させてなるポリマー鎖である]
【0071】
本発明のグラフト共重合体は、上記のポリオレフィンマクロモノマー(A)を用いることにより、ポリオレフィン骨格を有するグラフ共重合体として製造することができる。以下に上記のポリオレフィンマクロモノマーを用いたグラフト共重合体の製造方法について説明する。
【0072】
(3)グラフト共重合体の製造方法
本発明のポリオレフィンマクロモノマー(A)を単独で、またはポリオレフィンマクロモノマー(A)を炭素−炭素不飽和結合を少なくとも一つ有する有機化合物から選ばれる1種以上のモノマー(B)と組み合わせて、ラジカル重合またはアニオン重合、配位重合等によって重合することにより、ポリオレフィン骨格を有するグラフト共重合体を得ることができる。
【0073】
モノマー(B)は、炭素−炭素不飽和結合を少なくとも一つ有する有機化合物から選ばれる。炭素−炭素不飽和結合とは炭素−炭素二重結合または炭素ー炭素三重結合である。このような有機化合物の例としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−tert−ブチル、(メタ)アクリル酸−n−ペンチル、(メタ)アクリル酸−n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸−n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸−n−オクチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸−2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸−3−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2−アミノエチル、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロメチル、(メタ)アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルエチル等の(メタ)アクリル酸系モノマー、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、クロルスチレン、スチレンスルホン酸及びその塩等のスチレン系モノマー、パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン等のフッ素含有ビニルモノマー、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のケイ素含有ビニル系モノマー、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル、フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステル、マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系モノマー、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基含有ビニル系モノマー、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド基含有ビニル系モノマー、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等のビニルエステル系モノマー、エチレン、プロピレン、ブテン等のオレフィン系モノマー、ブタジエン、イソプレン等のジエン系モノマー、塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化アリル、アリルアルコール等が挙げられる。
【0074】
本発明においては、上記のモノマーのうち、一般式(III)で表される(メタ)アクリロイル基を有するモノマー(B)を構成単位として有するグラフト共重合体が好ましい。
【0075】
【化12】

【0076】
(式中、R4は炭素数1〜20のアルコキシル基またはアミノ基、R5は水素原子またはメチル基を示す)
【0077】
これらのモノマー(B)は、単独で、または2種類以上を組み合わせて成分(B)として使用しても構わない。
【0078】
ラジカル重合においては、開始剤として、通常のラジカル重合において用いられる開始剤はいずれも使用することができ、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビス−2−アミジノプロパン塩酸塩、アゾビスイソ酪酸ジメチル、アゾビスイソブチルアミジン塩酸塩または4,4’−アゾビス−4−シアノ吉草酸等のアゾ系開始剤、過酸化ベンゾイル、2,4−ジクロル過酸化ベンゾイル、過酸化ジ−tert−ブチル、過酸化ラウロイル、過酸化アセチル、過酸化ジイソプロピルジカーボネート、クメンヒドロペルオキシド、tert−ブチルヒドロペルオキシド、ジクミルペルオキシド、p−メンタンヒドロペルオキシド、ピナンヒドロペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、ジイソプロピルペルオキシジカルボナート、tert−ブチルペルオキシラウレート、ジ−tert−ブチルペルオキシフタレート、ジベンジルオキシドまたは2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロペルオキシド等の過酸化物系開始剤、または過酸化ベンゾイル−N,N−ジメチルアニリンまたはペルオキソ二硫酸−亜硫酸水素ナトリウム等のレドックス系開始剤等が挙げられる。
【0079】
これらのうち、アゾ系開始剤または過酸化物系開始剤が好ましく、更に好ましくは、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソ酪酸ジメチル、過酸化ベンゾイル、2,4−ジクロル過酸化ベンゾイル、過酸化ジ−tert−ブチル、過酸化ラウロイル、過酸化ジイソプロピルジカーボネートまたは過酸化アセチルである。これらのラジカル重合開始剤は、単独でもまたは2種以上を同時にまたは順次に使用することもできる。
【0080】
使用できる溶媒としては、反応を阻害しないものであれば何れでも使用することができるが、例えば、具体例として、ベンゼン、トルエンおよびキシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナンおよびデカン等の脂肪族炭化水素系溶媒、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンおよびデカヒドロナフタレンのような脂環族炭化水素系溶媒、クロルベンゼン、ジクロルベンゼン、トリクロルベンゼン、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素およびテトラクロルエチレン等の塩素化炭化水素系溶媒、メタノール、エタノール、n-プロパノール、iso-プロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノールおよびtert-ブタノール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;酢酸エチルおよびジメチルフタレート等のエステル系溶媒、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジ-n-アミルエーテル、テトラヒドロフランおよびジオキシアニソールのようなエーテル系溶媒等をあげることができる。また、水を溶媒として、懸濁重合、乳化重合で重合することもできる。これらの溶媒は、単独でもまたは2種以上を混合して使用してもよい。また、これらの溶媒の使用によって、反応液が均一相となることが好ましいが、不均一な複数の相となっても構わない。
【0081】
反応温度は重合反応が進行する温度であれば何れでも構わず、所望する重合体の重合度、使用するラジカル重合開始剤および溶媒の種類や量によって一様ではないが、通常、−100℃〜250℃である。好ましくは−50℃〜180℃であり、更に好ましくは0℃〜160℃である。反応は場合によって減圧、常圧または加圧の何れでも実施できる。上記重合反応は、窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
【0082】
また、ラジカル重合としては上記ラジカル重合開始剤を用いる方法以外に、例えば以下に述べる文献に記載されているようなリビングラジカル重合法を用いることもできる。
1) J. Am. Chem. Soc., 116, 7943 (1994),
2) Macromolecules, 27, 7228 (1994),
3) J. Am. Chem. Soc., 117, 5614 (1995)
4) Macromolecules, 28, 7901 (1995)
5) WO96/30421号公報
6) WO97/18247号公報
7) WO98/01480号公報
8) WO98/40415号公報
9) Macromolecules, 28, 1721 (1995)
10) 特開平9−208616号公報
11) 特開平8−41117号公報
【0083】
アニオン重合においては、アニオン重合開始剤として、通常のラジカル重合において用いられる開始剤はいずれも使用することができ、例えば、ブチルリチウム、プロピルリチウム、エチルリチウム、メチルリチウム等の有機リチウム化合物や、Grignard試薬等を用いることができる。
【0084】
使用できる溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、モノグリム、ジグリムなどのエーテル系溶媒などが用いられる。これらの溶媒は、1種単独または2種以上組み合わせて用いることができる。中でも、芳香族炭化水素とエーテル系溶媒が好ましく用いられる。重合は、通常−100℃〜100℃、好ましくは−80℃〜80℃、より好ましくは−70℃〜70℃の重合温度で、1分間〜500時間、好ましくは10分間〜300時間、より好ましくは15分間〜150時間かけて実施される。
【0085】
配位重合においては、重合触媒として、メタロセン触媒またはポストメタロセン触媒を用いることができる。
【0086】
本発明の潤滑油組成物は、
(i)上記のグラフト共重合体からなる潤滑油用粘度指数剤0.2〜50重量部と、
(ii)鉱油、合成炭化水素油及びエステル油から選ばれる少なくとも1種類からなり、かつ、100℃での動粘度が1〜20mm/sの範囲にあるベースオイル50〜99.8重量部と、必要に応じて
(iii)清浄分散剤、粘度指数向上剤、酸化防止剤、腐食防止剤、耐磨耗剤、摩擦調整剤、流動点降下剤、防錆剤、消泡剤および極圧剤からなる群より選ばれた少なくとも1種類の添加剤からなることを特徴とする。
【0087】
本発明の潤滑油組成物に用いられるベースオイルとしては100℃での動粘度が1〜20mm2/sの範囲にある、従来公知の鉱物油、合成炭化水素油、及びエステル油から選ばれる少なくとも1種のベースオイルが用いられる。
【0088】
鉱物油は一般に精製の仕方により幾つかの等級があるが、一般に0.5〜10%のワックス分を含む鉱物油が使用される。例えば、水素分解精製法で製造された流動点が低く、粘度指数の高い、イソパラフィンを主体とした組成の高度精製油を用いることができる。
【0089】
合成炭化水素油としては例えばα−オレフィンオリゴマー、アルキルベンゼン類、アルキルナフタレン類等が挙げられ、これらは1種単独で、または2種以上組合わせて用いることができる。このうちα−オレフィンオリゴマーとしては、炭素原子数8〜12のオレフィンから選ばれる少なくとも1種のオレフィンの低分子量オリゴマーが使用できる。この様なα−オレフィンオリゴマーは、チーグラー触媒、ルイス酸を触媒としたカチオン重合、熱重合、ラジカル重合によって製造することができる。
【0090】
アルキルベンゼン類、アルキルナフタレン類は通常大部分がアルキル鎖長が炭素原子数6〜14のジアルキルベンゼンまたはジアルキルナフタレンであり、このようなアルキルベンゼン類またはアルキルナフタレン類は、ベンゼンまたはナフタレンとオレフィンとのフリーデルクラフトアルキル化反応によって製造される。アルキルベンゼン類またはアルキルナフタレン類の製造において使用されるアルキル化オレフィンは、線状もしくは枝分かれ状のオレフィンまたはこれらの組合わせでも良い。これらの製造方法は、例えば、米国特許第3,909,432号に記載されている。
【0091】
エステル油としては、一塩基酸とアルコールから製造されるモノエステル;二塩基酸とアルコールとから、またはジオールと一塩基酸または酸混合物とから製造されるジエステル;ジオール、トリオール(例えばトリメチロールプロパン)、テトラオール(例えばペンタエリスリトール)、ヘキサオール(例えばジペンタエリスリトール)等と一塩基酸または酸混合物とを反応させて製造したポリオールエステル等が挙げられる。これらのエステルの例としては、トリデシルペラルゴネート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルアゼレート、トリメチロールプロパントリヘプタノエート、ペンタエリスリトールテトラヘプタノエート等が挙げられる。
【0092】
本発明の潤滑油組成物に用いられる添加剤としては下記のものを例示することができ、これらを単独または2種以上組合わせて用いることができる。
清浄分散剤:金属スルホネート、金属フェネート、金属フォスファネート、コハク酸イミ
ド等を例示することができ、通常0〜15重量%の範囲で用いられる。
流動点降下剤:ポリメタクリレート、アルキルナフタレン等を例示することができ、通常
0〜3重量%の範囲で用いられる。
極圧剤:スルフィド類、スルホキシド類、スルホン類、チオホスフィネート類、チオカー
ボネート類、硫化油脂、硫化オレフィン等のイオウ系極圧剤;リン酸エステル、
亜リン酸エステル、リン酸エステルアミン塩、亜リン酸エステルアミン類等のリ
ン酸類;塩素化炭化水素等のハロゲン系化合物などを例示することができる。極
圧剤は、必要に応じて0〜15重量%の範囲で用いられる。
耐磨耗剤:二硫化モリブデンなどの無機または有機モリブデン化合物、アルキルメルカプ
チルボレート等の有機ホウ素化合物;グラファイト、硫化アンチモン、ホウ素
化合物、ポリテトラフルオロエチレン等を例示することができる。摩耗防止剤
は、必要に応じて0〜3重量%の範囲で用いられる。
酸化防止剤:2,6−ジ-tert-ブチル−4−メチルフェノール等のフェノール系やアミン
系の化合物が挙げられる。酸化防止剤は、必要に応じて0〜3重量%の範囲
で用いられる。
防錆剤:各種アミン化合物、カルボン酸金属塩、多価アルコールエステル、リン化合物、
スルホネートなどの化合物が挙げられる。防錆剤は、必要に応じて0〜3重量%
の範囲で用いられる。
消泡剤:ジメチルシロキサン、シリカゲル分散体等のシリコーン系化合物、アルコール系
またはエステル系の化合物などを例示することができる。消泡剤は、必要に応じ
て0〜0.2重量%の範囲で用いられる。
【0093】
上記の添加剤以外にも、抗乳化剤、着色剤、油性剤(油性向上剤)などを必要に応じて用いることができる。
【0094】
[実施例]
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0095】
平均分子量・分子量分布
数平均分子量(Mn)および分子量分布(Mw/Mn)は、島津製作所製のGPC(クロマトパックC−R4A)を用い以下のようにして測定した。分離カラムについては、TSK G6000H XL、G4000H XL、G3000H XL、G2000H XLを用い、カラム温度を40℃とし、移動相にはテトラヒドロフラン(和光純薬)を用い、展開速度を0.8ml/分とし、試料濃度を0.2重量%とし、試料注入量を200マイクロリットルとし、検出器として示差屈折計を用いた。標準ポリスチレンとしては、東ソー社製のものを用いた。
【0096】
配合
ベース油としては、FTN−100(フッコールNT−100:富士興産)を用い、星型ポリマーの配合量を調整することにより、100℃において一定粘度(14mm/s)となるように配合サンプルを調製した。
【0097】
粘度特性
動粘度、粘度指数はJIS K2283に記載の方法により、100℃および40℃での動粘度を測定し、粘度指数を算出した。
【0098】
また、低温粘度はASTM D2983に記載の方法により、−26℃における粘度を測定した。
【0099】
剪断安定性
配合油の剪断安定性はDIN 52350−6に準拠し、KRL剪断安定性試験機を用いて評価した。配合油を60℃で20hの間、剪断条件下(1450rpm)におき、試験前後での100℃での動粘度を測定し、剪断粘度低下率を算出した。
【0100】
[合成例1]
[末端にビニリデン基を有するエチレン・プロピレン共重合体の重合]
充分に窒素置換した内容積10リットルのガラス製タンク4其に、充分に脱水した精製トルエン6リッターをそれぞれに挿入した。その後、タンク1其にはMAOを40ミルモル/リットルの濃度になるように仕込み、もう1其のタンクにはビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウム(IV)ジクロリドを0.08ミリモル/リットルとなるように仕込んだ。その後、充分に窒素置換したコンデンサー付きベント管を取り付けた内容積5リッターガラス製反応容器に、上述のタンクからトルエン1000ミリリッター、MAOのトルエン溶液500ミリリッター及び、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウム(IV)ジクロリドのトルエン溶液500ミリリッターをポンプで仕込み攪拌を開始した。
【0101】
常圧下で、プロピレンを反応容器の上部から219リッター/hの流量で供給し、反応容器内を40℃迄昇温した。反応容器内が所定の温度に近づいたところで、上述の2其のトルエンタンクからそれぞれ1000ミリリッター/h、MAOのトルエン溶液1000ミリリッター/h、及びビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウム(IV)ジクロリドのトルエン溶液1000ミリリッター/hの流量で連続的に供給すると同時に、エチレンを反応容器上部より徐々に供給し所定量の81リッター/hとなったところで重合開始とした。容器の下部から重合液を連続的に排出しながら反応容器のレベルが2000ミリリッターとなるように保った。排出された重合液にメタノールを滴下し重合を停止させた。
【0102】
重合開始から2時間後に重合液の採取を開始し、4リッターの重合液を採取した後に重合を終了した。重合終了後、採取した重合液に20ミリリッターの濃塩酸と2リッターの水を入れ、充分に攪拌し、触媒成分を除去した。更に、得られた重合混合物を多量の水で2回洗浄した後、エバポレーターで溶媒を減圧留去し、117gの無色透明のオイル状ポリマーを得た。得られたポリマーのエチレン含量は50mol%であった。分子量をGPC(PS換算)で測定したところMn=2,980、Mw=5,480、Mw/Mn=1.8であった。
【0103】
該ポリマーの1H−NMR分析の結果、4.6−4.8ppmに分子末端のビニリデン基に基づくシグナルが認められた。積分値の比率から分子片末端のビニリデン含有率は99%と算出された。
【0104】
[末端にエポキシ基を有するエチレン・プロピレン共重合体の合成]
攪拌機、温度計、及びコンデンサー付きベント管を取り付けた500mlのガラス製セパラブルフラスコに、上記の末端ビニリデン型エチレン・プロピレン共重合体100gとトルエン100g、タングステン酸ナトリウム(NaWO・2HO)1.14g、メチル−トリ−n−オクチルアンモニウムハイドロジェンスルフェイト〔CH(C17NHSO〕0.81g及び、85%HPO0.144gを仕込み、攪拌しながら窒素雰囲気下で90℃まで昇温した。その後、50mlガラス製滴下ロートに30%Hを24g仕込み、上述のセパラブルフラスコに取り付け、Hを3時間かけて滴下した後、更に、90℃で5時間反応を行った。
【0105】
反応終了後、反応溶液を多量の水で数回洗浄した。水洗後の反応溶液を、セライトを詰めたG3ガラスフィルターで濾過した後、エバポレーターで溶媒を減圧留去することにより、無色透明なオイル状ポリマー99.8gを得た。該ポリマーの分子量を測定したところMn=2,280、Mw=4,200、Mw/Mn=1.8であった。
【0106】
該ポリマーの1H−NMR分析の結果、2.5−2.6ppmにエポキシ環内部のメチレン基に基づくシグナルが認められ、末端にエポキシ基を有するエチレン・プロピレン共重合体が存在することを確認した。また、積分値からエポキシ化率は71%と算出された。
【0107】
[末端にメタクリロイル基を有するマクロモノマーの合成]
コンデンサー付きベント管を取り付けた100mlのガラス製三口ナスフラスコに、上記の末端エポキシ化エチレン・プロピレン共重合体20gとトルエン20gを入れ、マグネチックスターラーにより攪拌・溶解した。溶解後、ピリジンを2滴、ヒドロキノン4.3mgを加え、攪拌しながら窒素雰囲気下で120℃まで昇温した。その後、10mlガラス製滴下ロートにメタクリル酸1.43gと同量のトルエンの混合液を仕込み、上述のセパラブルフラスコに取り付け、30分かけて滴下した後、更に、10時間反応を行った。
【0108】
反応終了後、反応溶液を多量の水で数回洗浄した。水洗後の反応溶液を、セライトを詰めたG3ガラスフィルターで濾過した後、エバポレーターで溶媒および未反応のメタクリル酸を減圧蒸留することにより、黄色のオイル状ポリマー20.4gを得た。該ポリマーの分子量を測定したところMn=3,360、Mw=6,070、Mw/Mn=1.8であった。
【0109】
該ポリマーの1H−NMR分析の結果、5.5−5.7ppmおよび6.0−6.2ppmにメタクリロイル基の不飽和結合に基づくシグナルが認められ、末端にメタクリロイル基を有するエチレン・プロピレン共重合体が存在することを確認した。
【0110】
[マクロモノマーの重合によるグラフト共重合体の合成]
コンデンサー付きベント管を取り付けた100mlのガラス製三口ナスフラスコに、上記のマクロモノマー12.5gとメチルメタクリレート12.5g、トルエン25gを入れ、マグネチックスターラーにより攪拌しながら窒素雰囲気下で80℃まで昇温した。その後、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.13gを10mlのトルエンに溶解し、50mlガラス製滴下ロートを用いて、上述のセパラブルフラスコに取り付け、10分かけて滴下した後、更に、6時間反応を行った。
【0111】
反応終了後、エバポレーターで溶媒および未反応のメチルメタクリレートを減圧蒸留することにより、黄色ポリマー21gを得た。該ポリマーの分子量を測定したところMn=22,790、Mw=36,550、Mw/Mn=1.6であった。重量収支から計算したグラフト共重合体中のメチルメタクリレート含量は40.5%であった。
【0112】
[合成例2]
[末端にビニリデン基を有するエチレン・プロピレン共重合体の重合]
合成例1と同様にして末端にビニリデン基を有するエチレン・プロピレン共重合体の重合を行った。
【0113】
[末端にエポキシ基を有するエチレン・プロピレン共重合体の合成]
攪拌機、温度計、及びコンデンサー付きベント管を取り付けた500mlのガラス製セパラブルフラスコに、上記の末端ビニリデン型エチレン・プロピレン共重合体100gを仕込み、攪拌しながら窒素雰囲気下で60℃まで昇温した。その後、m−クロロ過安息香酸30gを1時間掛けて投入し、更に、90℃で5時間反応を行った。
【0114】
反応終了後、反応溶液を多量の水で数回洗浄し後、エバポレーターで溶媒を減圧留去することにより、無色透明なオイル状ポリマー84.5gを得た。該ポリマーの分子量を測定したところMn=1,760、Mw=3,800、Mw/Mn=2.2であった。
該ポリマーの1H−NMR分析の結果、エポキシ化率は68%と算出された。
【0115】
[末端基中にメタクリロイル基を有するマクロモノマーの合成]
上記の末端エポキシ化エチレン・プロピレン共重合体20gとトルエン20gを入れ、マグネチックスターラーにより攪拌・溶解した。溶解後、トリエチルアミンを3滴、ヒドロキノン4.0mgを加え、攪拌しながら窒素雰囲気下で80℃まで昇温した。その後、10mlガラス製滴下ロートにメタクリル酸2.1gと同量のトルエンの混合液を仕込み、上述のセパラブルフラスコに取り付け、30分かけて滴下した後、更に、10時間反応を行った。
【0116】
反応終了後、反応溶液を多量の水で数回洗浄した。水洗後の反応溶液を、セライトを詰めたG3ガラスフィルターで濾過した後、エバポレーターで溶媒および未反応のメタクリル酸を減圧蒸留することにより、黄色のオイル状ポリマー19.2gを得た。該ポリマーの分子量を測定したところMn=2,930、Mw=5,320、Mw/Mn=1.8であった。
【0117】
[マクロモノマーの重合によるグラフト共重合体の合成]
上記の末端にメタクリロイル基を有するマクロモノマーを用いて、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)の投入量を0.08gとしたこと以外は合成例1と同様にしてグラフト共重合体を重合し、黄色ポリマー22.3gを得た。該ポリマーの分子量を測定したところMn=35,090、Mw=64,210、Mw/Mn=1.9であった。重量収支から計算したグラフト共重合体中のメチルメタクリレート含量は43.9%であった。
【0118】
[合成例3]
[末端にビニリデン基を有するエチレン・プロピレン共重合体の重合]
プロピレン流量を219リッター/h、エチレン流量を81リッター/hとし、重合温度を27℃としたこと以外は合成例1と同様の方法によりエチレン・プロピレン共重合体の重合・後処理を行い、147gの無色透明の粘性ポリマーを得た。得られたポリマーのエチレン含量は47mol%であった。分子量をGPC(PS換算)で測定したところMn=7,080、Mw=12,530、Mw/Mn=1.8であった。
【0119】
[末端にエポキシ基を有するエチレン・プロピレン共重合体の合成]
上記の末端にビニリデン基を有するエチレン・プロピレン共重合体を用い、タングステン酸ナトリウム(NaWO・2HO)を0.48g、メチル−トリ−n−オクチルアンモニウムハイドロジェンスルフェイト〔CH(C17NHSO〕を0.34g及び、85%HPOを0.061g、30%Hを10.1gの仕込み量に変更したこと以外は合成例1と同様にエポキシ化反応を行い、無色透明なポリマー99.9gを得た。該ポリマーの分子量を測定したところMn=6,870、Mw=12,640、Mw/Mn=1.8であった。
1H−NMR分析の結果、エポキシ化率は72%と算出された。
【0120】
[末端基中にメタクリロイル基を有するマクロモノマーの合成]
上記の末端にエポキシ基を有するエチレン・プロピレン共重合体を用い、メタクリル酸の仕込量を0.6gとしたこと以外は合成例1と同様にメタクリロイル化反応を行い、黄色のポリマー19.1gを得た。該ポリマーの分子量を測定したところMn=8,030、Mw=14,780、Mw/Mn=1.8であった。
【0121】
[マクロモノマーの重合によるグラフト共重合体の合成]
上記の末端にメタクリロイル基を有するマクロモノマーを用いて、合成例2と同様の方法によりメチルメタクリレートとの共重合を行い、黄色ポリマー18.2gを得た。該ポリマーの分子量を測定したところMn=56,320、Mw=91,800、Mw/Mn=1.6であった。重量収支から計算したグラフト共重合体中のメチルメタクリレート含量は31.3%であった。
【0122】
[合成例4]
[末端Al化エチレン・プロピレン共重合体の合成]
充分に窒素置換した内容積1Lのガラス製オートクレーブに精製トルエン800mlを入れ、エチレン20リットル/h、プロピレン80リットル/hを吹き込むことにより液相および気相を飽和させた。その後、50℃にてMAOをAl換算で20ミリモルおよびジシクロペンタジエニルジルコニウムジクロリド0.02ミリモルを加えて重合を開始した。常圧下、50℃で120分間重合させた後、ジイソブチルアルミニウムヒドリド50mlを加えて110℃で4時間加熱攪拌を行った。このようにして末端Al化エチレン・プロピレン共重合体を含むトルエン溶液を得た。
【0123】
[末端OH化エチレン・プロピレン共重合体の合成]
上記にて得られたトルエン溶液を100℃に保ち、窒素ガスを乾燥空気に切り替え、該温度を保ちながら100リットル/hの流量で8時間供給しつづけた後、溶液を分液漏斗に移しヘキサン1Lで希釈した後、1N塩酸水溶液300mlで5回洗浄し、さらに水200mlで2回洗浄した。有機層に無水硫酸マグネシウムを加えて乾燥した後、グラスフィルター(G3)でろ過し、ろ液を濃縮後、得られた黄色オイル状物質を10時間真空乾燥して96.0gのオイル状ポリマーを得た。
【0124】
該ポリマーのH−NMR分析の結果、3.3−3.6ppmにヒドロキシル基に隣接するメチレン基に基づくシグナルが認められ、末端にヒドロキシル基を有するエチレン・プロピレン共重合体が存在することを確認した。
【0125】
[末端基中にメタクリロイル基を有するマクロモノマーの合成]
充分窒素置換した500mlガラス製反応器に、上記にて得られた末端OH化EPR90.1gを入れ、乾燥トルエン250mlおよびトリエチルアミン8.7ml、メタクリル酸クロリド12.2mlを加えて室温で6時間攪拌した。反応中に析出した白色固体を桐山ロートでろ別し、ろ液を濃縮して128gの黄色オイル状ポリマーを得た。得られたポリマー118gをヘキサンに溶解し、カラムクロマトグラフィーにより精製して微黄色オイル状ポリマー49gを得た。該ポリマーの分子量(PS換算)をGPCにより測定したところ、Mwが2420、Mnが1330、Mw/Mn=1.8であった。
該ポリマーの1H−NMR分析の結果、エチレン・プロピレン共重合体に基づくシグナルの他に以下のシグナルが検出された。δ1.95ppm(s、3H;=C−C3)、δ3.8−4.1ppm(m、2H;−COO−C2−)、δ5.55ppm(s、1H;C2=)、δ6.1ppm(s、1H;C2=)。すなわち、末端にメタクリロイル基を有するマクロモノマーが存在することを確認した。
【0126】
[マクロモノマーの重合によるグラフト共重合体の合成]
充分窒素置換した500mlガラス製反応器に、上記の末端にメタクリロイル基を有するマクロモノマーを42g、o−キシレン156mlを入れ、臭化銅287mg、N,N,N’,N’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン0.84ml、メタクリル酸メチル(MMA)43mlおよび(1−ブロモエチル)ベンゼン0.27mlを加えて90℃で6時間加熱攪拌した。得られた反応液をメタノール2L中に注ぎ攪拌したところ、白色ポリマーが析出した。グラスフィルター(G3)でろ過して取り出した固体状ポリマーをクロロホルム200mlに溶解し、メタノール2L中に注いで再沈殿した。得られた沈殿を回収し、10時間真空乾燥して55gの半透明固体状ポリマーを得た。該ポリマーの分子量を測定したところ、Mn=21,600、Mw=29,800、Mw/Mn=1.4であった。また、NMR分析結果から計算したグラフト共重合体中のメチルメタクリレート含量は69%であった。
【0127】
[合成例5]
[直鎖状エチレン・プロピレン共重合体の合成]
MAOの仕込を20ミルモル/リットル(タンク内濃度)、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウム(IV)ジクロリドを0.16ミリモル/リットル(タンク内濃度)となるように仕込み、プロピレン流量を189リッター/hとし、エチレン流量を111リッター/hとしたこと以外は合成例1と同様の方法によりエチレン・プレピレン共重合体の重合・後処理を行い、151gの無色透明のオイル状ポリマーを得た。得られたポリマーのエチレン含量は48mol%であった。分子量をGPC(PS換算)で測定したところMn=8,580、Mw=14,840、Mw/Mn=1.7であった。
【0128】
[合成例6]
[直鎖状エチレン・プロピレン共重合体の合成]
ビス(1,3−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドを0.028ミリモル/リットル(タンク内濃度)、MAOの仕込を40ミルモル/リットル(タンク内濃度)となるように仕込み、プロピレン流量を195リッター/hとし、エチレン流量を105リッター/hとしたこと以外は合成例1と同様の方法によりエチレン・プロピレン共重合体の重合・後処理を行い、136gの無色透明のポリマーを得た。得られたポリマーのエチレン含量は54mol%であった。分子量をGPC(PS換算)で測定したところMn=56,400、Mw=92,500、Mw/Mn=1.6であった。
【実施例1】
【0129】
ベース油と、合成例1で得られたグラフト共重合体、流動点降下剤としてアクルーブ133(三洋化成社製)、極圧剤としてアングラモル98A(Lubrizol社製)をそれぞれ配合し、潤滑油を調製した。得られた潤滑油の性能評価を行なった。配合比、及び評価結果を表1に示す。
【実施例2】
【0130】
合成例2で得られたグラフト共重合体を用いた以外は、実施例1と同様にして潤滑油組成物を調製し、評価した。配合比、及び評価結果を表1に示す。
【実施例3】
【0131】
合成例3で得られたグラフト共重合体を用いた以外は、実施例1と同様にして潤滑油組成物を調製し、評価した。配合比、及び評価結果を表1に示す。
【実施例4】
【0132】
合成例4で得られたグラフト共重合体を用いた以外は、実施例1と同様にして潤滑油組成物を調製し、評価した。配合比、及び評価結果を表1に示す。
【0133】
比較例1
合成例5で得られたポリマーを使用したこと以外は、実施例1と同様にして潤滑油組成物を調製し、評価した。配合比、及び評価結果を表1に示す。
【0134】
比較例2
合成例6で得られたポリマーを用いた以外は、比較例1と同様にして潤滑油組成物を調製し、評価した。配合比、及び評価結果を表1に示す。
【0135】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0136】
本発明の潤滑油用粘度指数向上剤は潤滑油添加剤として、従来の潤滑油用粘度指数向上剤と比較して優れた粘度温度特性および剪断安定性を有しており、燃費効率、耐久性に優れた潤滑油組成物を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)または(II)で表される、ポリオレフィン鎖Pの末端基中に(メタ)アクリロイル基を含有するポリオレフィンマクロモノマー(A)を構成単位として有するグラフト共重合体からなる潤滑油用粘度指数向上剤。
【化1】

【化2】

[式中、R1およびR2はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を示し、PはCH=CHR3(R3は炭素原子数が1〜20の炭化水素基、水素原子またはハロゲン原子)で示されるオレフィンを単独重合または共重合させてなるポリマー鎖である]
【請求項2】
前記一般式(I)または(II)で表されるポリオレフィンマクロモノマー(A)と少なくとも1種以上の一般式(III)で表される(メタ)アクリロイル基を有するモノマー(B)とを構成単位として有するグラフト共重合体からなる潤滑油用粘度指数向上剤。
【化3】

(式中、R4は炭素数1〜20のアルコキシル基またはアミノ基、R5は水素原子またはメチル基を示す)
【請求項3】
上記ポリオレフィン鎖Pの数平均分子量(Mn)が500〜20,000である請求項1または2に記載のグラフト共重合体からなる潤滑油用粘度指数向上剤。
【請求項4】
上記ポリオレフィン鎖Pが、
(a)エチレンから導かれる構成単位を30〜90モル%の範囲の量で含有し、(b)炭素原子数3〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種類の単量体から導かれる構成単位を10〜70モル%の範囲で含有する、エチレン・α−オレフィン共重合体である請求項1〜3いずれか1項に記載のグラフト共重合体からなる潤滑油用粘度指数向上剤。
【請求項5】
上記グラフト共重合体の数平均分子量(Mn)が1,000〜100,000である請求項1〜4いずれか1項に記載のグラフト共重合体からなる潤滑油用粘度指数向上剤。
【請求項6】
(i)請求項1〜5いずれか1項に記載のグラフト共重合体からなる潤滑油用粘度指数向上剤0.2〜50重量部と、
(ii)鉱油、合成炭化水素油及びエステル油から選ばれる少なくとも1種類からなり、かつ、100℃での動粘度が1〜20mm/sの範囲にあるベースオイル50〜99.8重量部と、必要に応じて
(iii)清浄分散剤、粘度指数向上剤、酸化防止剤、腐食防止剤、耐磨耗剤、摩擦調整剤、流動点降下剤、防錆剤、消泡剤および極圧剤からなる群より選ばれた少なくとも1種類の添加剤を含むことを特徴とする潤滑油組成物。

【公開番号】特開2006−8842(P2006−8842A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−187636(P2004−187636)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】