潤滑油粘度調整剤、潤滑油用添加剤組成物および潤滑油組成物
【課題】樹脂ハンドリング性に優れた潤滑油粘度調整剤、且つ増粘性に優れる潤滑油用組成物を提供する。
【解決手段】本発明の潤滑油粘度調整剤は、プロピレン由来の構成単位を70〜83モル%含み、エチレン由来の構成単位を17〜30モル%含み、(i)アイソタクチック指数が5〜40%、(ii)メソトリアッド(mm)が85〜95%、且つ(iii)極限粘度[η]が0.5〜2.5dl/gを満たすプロピレン・エチレン共重合体からなる。
【解決手段】本発明の潤滑油粘度調整剤は、プロピレン由来の構成単位を70〜83モル%含み、エチレン由来の構成単位を17〜30モル%含み、(i)アイソタクチック指数が5〜40%、(ii)メソトリアッド(mm)が85〜95%、且つ(iii)極限粘度[η]が0.5〜2.5dl/gを満たすプロピレン・エチレン共重合体からなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑油粘度調整剤、潤滑油用添加剤組成物および潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
石油製品は、一般に温度が変わると粘度が大きく変化する、いわゆる粘度の温度依存性を有している。例えば、自動車などに用いられる潤滑油組成物などでは、粘度の温度依存性が小さいことが好ましい。そこで潤滑油には、粘度の温度依存性を小さくする目的で、潤滑油基剤に可溶なある種のポリマーが、潤滑油粘度調整剤として用いられている。
【0003】
このような潤滑油粘度調整剤として、従来、エチレン・α−オレフィン共重合体が広く用いられており、潤滑油の性能バランスをさらに改善するため種々の改良がなされている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0004】
また、近年は、プロピレン・α−オレフィン共重合体を潤滑油粘度調製剤として用いる提案もなされている。(例えば、特許文献3参照)。
しかしながら、特許文献3に記載された共重合体は粘着性が強いため製造時(たとえば重合後の後処理工程等)、または粘度調整剤として取り扱う際におけるハンドリング性が悪い上に、潤滑油組成物としての増粘性も十分ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第00/034420号
【特許文献2】国際公開第06/028169号
【特許文献3】特開2009−029983号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、製造時(たとえば重合後の後処理工程等)、または粘度調整剤として取り扱う際におけるハンドリング性が良好な共重合体からなり、増粘性に優れる潤滑油組成物を得るために用いることができる潤滑油粘度調整剤、当該潤滑油粘度調製剤を含み、増粘性に優れる潤滑油組成物を得るために用いることができる潤滑油用添加剤組成物、および増粘性に優れる潤滑油組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意研究の結果、特定のプロピレン・エチレン共重合体が、製造時(たとえば重合後の後処理工程等)、または粘度調整剤として取り扱う際におけるハンドリング性が良好であると共に、当該プロピレン・エチレン共重合体を潤滑油粘度調整剤として用いると、得られる潤滑油組成物の増粘性が優れたものとなることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、
[1]
プロピレン由来の構成単位を70〜83モル%含み、エチレン由来の構成単位を17〜30モル%含み、以下要件を満たすプロピレン・エチレン共重合体(A)からなる潤滑油粘度調製剤。
(i)アイソタクチック指数が5〜40%
(ii)メソトリアッド分率(mm)が85〜95%
(iii)極限粘度[η]が0.5〜2.5dl/g
であり、好ましくは、以下のいずれかである。
【0009】
[2]
プロピレン・エチレン共重合体(A)のアイソタクチック指数とメソトリアッド分率(mm)がさらに以下式を満たすものである前記の潤滑油粘度調製剤。
(i−2)アイソタクチック指数≧−2.24×E+64
(ii−2)メソトリアッド分率(mm)≧−0.4492×E+95
(ただし、Eはプロピレン・エチレン共重合体(A)のエチレン由来の構成単位のモル%)
【0010】
[3]
前記のプロピレン・エチレン共重合体(A)を1〜50重量%、および油(B)50〜99重量%(ただし、前記(A)および(B)の重量%は、添加剤組成物中の(A)および(B)の合計料に基づいて算出される)を含有する潤滑油用添加剤組成物。
【0011】
[4]
前記のプロピレン・エチレン共重合体(A)と、潤滑油基剤(BB)とを含む潤滑油組成物であり、潤滑油組成物100重量%中、前記プロピレン・エチレン共重合体(A)を0.1〜5重量%含有する潤滑油組成物。
【0012】
[5]
潤滑油組成物100重量%中、流動点降下剤(C)を、0.05〜5重量%含有する前記の潤滑油組成物。
【発明の効果】
【0013】
本発明の潤滑油粘度調整剤は、製造時(たとえば重合後の後処理工程等)、または粘度調整剤として取り扱う際におけるハンドリング性が良好で取り扱いに優れる。また、本発明の潤滑油粘度調整剤または潤滑油用添加剤組成物を含む潤滑油組成物は増粘性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に本発明について具体的に説明する。
〔潤滑油粘度調整剤〕
本発明の潤滑油粘度調整剤は、プロピレン由来の構成単位を70〜83モル%含み、エチレン由来の構成単位を17〜30モル%含み、以下要件を満たすプロピレン・エチレン共重合体(A)からなる。
(i)アイソタクチック指数が5〜40%
(ii)メソトリアッド分率(mm)が85〜95%
(iii)極限粘度[η]が0.5〜2.5dl/g
また、(i)アイソタクチック指数と(ii)メソトリアッド分率(mm)は、さらに以下式を満たすことが好ましい。
(i−2)アイソタクチック指数≧−2.24×E+64
(ii−2)メソトリアッド分率(mm)≧−0.4492×E+95
(ただし、Eはプロピレン・エチレン共重合体(A)のエチレン由来の構成単位のモル%)
【0015】
〔プロピレン・エチレン共重合体(A)〕
本発明のプロピレン・エチレン共重合体(A)のプロピレン由来の構成単位は70〜83モル%であり、プロピレン由来の構成単位が70モル%以上である共重合体を含有する潤滑油組成物は、増粘性に優れるため好ましく、プロピレン由来の構成単位が83モル%以下である共重合体を含有する潤滑油組成物は、低温貯蔵性に優れるため好ましい。
【0016】
本発明のプロピレン・エチレン共重合体(A)のアイソタクチック指数は5〜40%であり、好ましくは10〜40%であり、より好ましくは10〜25%である。
本発明のプロピレン・エチレン共重合体(A)のアイソタクチック指数は赤外(IR)分光分析法で測定される。ポリプロピレンの赤外(IR)スペクトルでは、997cm-1と973cm-1に2本の観察されるピークが生じ、997cm-1の吸光度を973cm-1の吸光度で割った商に100を掛けた値がポリプロピレンのアイソタクチック指数として定義されている。本発明のプロピレン・エチレン共重合体(A)のアイソタクチック指数もこれに準ずる。
【0017】
本発明のプロピレン・エチレン共重合体(A)のメソトリアッド分率(mm)は国際公開2004−087775号パンフレットの21頁7行目から26頁6行目までに記載された方法を用いて13C−NMRで測定することができる。本発明のプロピレン・エチレン共重合体(A)のメソトリアッド分率(mm)は85〜95%であり、好ましくは87〜93%である。メソトリアッド分率(mm)の高いプロピレン・エチレン共重合体(A)を得るためには、一般的に、重合温度は低い方が好ましく、重合圧力は高い方が好ましく、ポリマー濃度は低い方が好ましい。
【0018】
本発明のプロピレン・エチレン共重合体(A)の極限粘度[η]は0.5〜2.5dl/gであり、好ましくは1.0〜2.5dl/gであり、より好ましくは1.1〜2.4dl/gであり、さらに好ましくは1.3〜2.3dl/gである。極限粘度[η]が上記範囲内にあるプロピレン・エチレン共重合体(A)を含有する潤滑油組成物は、せん断安定性に優れるため好ましい。
【0019】
本発明のプロピレン・エチレン共重合体(A)の密度は、867kg/m3以下であることが好ましく、より好ましくは853〜867kg/m3であり、さらに好ましくは857〜867kg/m3である。密度が前記範囲内にあるプロピレン・エチレン共重合体(A)を含有する潤滑油組成物は、低温貯蔵性と低温粘度特性バランスに優れるため好ましい。 なお、低温における潤滑油の流動性を示すのが低温貯蔵性であり、低温貯蔵性に優れる潤滑油は低温においてもゲル化を起こすことなく流動性を維持する。
【0020】
本発明のプロピレン・エチレン共重合体(A)は、少なくとも下記(a1)もしくは(a2)のどちらかの要件を満たすことがより好ましく、下記(a1)および(a2)の要件を同時に満たすことがさらに好ましい。
【0021】
(a1)プロピレン・エチレン共重合体(A)を、190℃に設定した熱プレス成形機を用いて5分間余熱した後、2分加圧し、20℃に設定した冷却槽で4分間冷却することにより得られる、厚さ2mmのプレスシートを、20℃で4週間保管した後に試験体として用い、−20℃まで冷却して、−20℃で5分間保持した後、昇温速度10℃/分で200℃まで昇温したときに得られる示差走査熱量計(DSC)曲線において観測される融点(Tm1)が、30℃〜80℃、好ましくは40℃〜60℃である。
【0022】
(a2)プロピレン・エチレン共重合体(A)を、190℃に設定した熱プレス成形機を用いて5分間余熱した後、2分加圧し、20℃に設定した冷却槽で4分間冷却することにより得られる、厚さ2mmのプレスシートを、20℃で4週間保管した後に試験体として用い、−20℃まで冷却して、−20℃で5分間保持した後、昇温速度10℃/分で200℃まで昇温し、200℃で5分間保持した後、降温速度10℃/分で−100℃まで冷却し、−100℃で5分間保持した後、昇温速度10℃/分で200℃まで昇温したときに得られる示差走査熱量計(DSC)曲線において、2回目の昇温過程で観測される融解熱量(ΔH2)が5J/g以下、好ましくは1J/g以下である。
【0023】
また、プロピレン・エチレン共重合体(A)を、190℃で余熱した後に加圧を行い、その後冷却を行うが、該冷却は加圧後速やかに行われることが好ましい。具体的には加圧後1分以内に、加圧後のプロピレン・エチレン共重合体(A)を、冷却槽に配置するものとする。
【0024】
なお、示差走査熱量計(DSC)曲線において、融解ピークが複数観察される場合には、最大ピークを融点(Tm1)とする。融点(Tm1)が30〜80℃であるプロピレン・エチレン共重合体(A)は、微小な結晶成分を形成することを意味する。
【0025】
融点(Tm1)および/または融解熱量(ΔH2)が前記範囲内にあるプロピレン・エチレン共重合体(A)を含有する潤滑油組成物は、低温貯蔵性と低温粘度特性バランスに優れるため好ましい。
【0026】
本発明のプロピレン・エチレン共重合体(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量は、10,000〜500,000が好ましく、30,000〜400,000がより好ましく、50,000〜350,000が特に好ましい。なお、重量平均分子量とは、GPCで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量を示す。重量平均分子量が上記範囲内にあるプロピレン・エチレン共重合体(A)を含有する潤滑油組成物は、せん断安定性に優れるため好ましい。
【0027】
本発明のプロピレン・エチレン共重合体(A)の、GPCにより測定した分子量分布(Mw/Mn、ポリスチレン換算、Mw:重量平均分子量、Mn:数平均分子量)は、4.0以下であることが好ましく、より好ましくは3.0以下、特に好ましくは2.5以下である。
【0028】
本発明の前記プロピレン・エチレン共重合体(A)の製造方法としては特に制限はないが、オレフィンをアイソタクチック構造で立体規則性重合することのできる公知の触媒、例えば、固体状チタン成分と有機金属化合物を主成分とする触媒、またはメタロセン化合物を触媒の一成分として用いたメタロセン触媒の存在下でプロピレンおよびエチレンを共重合させることにより得られる。中でも、アイソタクチック構造で立体規則性重合することのできるメタロセン触媒を用いた製造法が好ましく、このようなメタロセン触媒の例としては、国際公開第2000/01745号、国際公開第2004/106430号、国際公開第2005/019283号、国際公開2006/025540号、国際公開第2004/087775号パンフレットの請求項6〜8に記載されたメタロセン触媒を挙げることができる。
【0029】
メタロセン化合物としては、具体的には、μ-ジメチルシリル(ビス-インデニル)ハフニウムジメチル、ジフェニルメチレン(3−tert−ブチル−5−エチルシクロペンタジエニル)(2,7−ジ−tert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(3−tert−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)(2,7−ジ−tert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルメチレン(3−tert−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド等が挙げられる。
【0030】
〔潤滑油用添加剤組成物〕
本発明の潤滑油用添加剤組成物は、前述のプロピレン・エチレン共重合体(A)を1〜50重量%、および油(B)50〜99重量%(但し、前記(A)および(B)の重量%は、添加剤組成物中の(A)および(B)の合計量に基づいて算出される)を含有する。
【0031】
すなわち、前記(A)および(B)の量は、前記(A)と(B)との合計を100重量%とした際の量である。
潤滑油用添加剤組成物が含有する油(B)としては、鉱物油、およびポリα−オレフィン、ジエステル類、ポリアルキレングリコールなどの合成油が挙げられ、鉱物油または鉱物油と合成油とのブレンド物が好ましく用いられる。なお、ジエステル類としては、ポリオールエステル、ジオクチルフタレート、ジオクチルセバケートなどが挙げられる。
【0032】
鉱物油は、一般に脱ワックスなどの精製工程を経て用いられ、精製の仕方により幾つかの等級があるが、一般に0.5〜10%のワックス分を含む鉱物油が使用される。例えば、水素分解精製法で製造された流動点の低い、粘度指数の高い、イソパラフィンを主体とした組成の高度精製油を用いることもできる。また、40℃における動粘度が10〜200cStの鉱物油が一般的に使用される。
【0033】
鉱物油は、前述のように一般に脱ワックスなどの精製工程を経て用いられ、精製の仕方により幾つかの等級があり、本等級はAPI(米国石油協会)分類で規定される。表1に各グループに分類される潤滑油基剤の特性を示す。
【0034】
【表1】
表1におけるポリα−オレフィンは、少なくとも炭素数10以上のα−オレフィンを原料モノマーの一種として重合して得られる炭化水素ポリマーであって、デセン−1を重合して得られるポリデセンなどが例示される。
【0035】
また、本発明で使用される油(B)は、グループ(i)〜グループ(iv)のいずれかに属する油が好ましく、特に鉱物油の中でも100℃における動粘度が1〜50mm2/sで、かつ粘度指数が80以上のもの、またはポリα−オレフィンが好ましい。また、油(B)としては、グループ(ii)またはグループ(iii)に属する鉱物油、またはグループ(iv)に属するポリα−オレフィンが好ましい。なお、グループ(i)よりもグループ(ii)およびグループ(iii)の方が、ワックス濃度が少ない傾向にある。
【0036】
特に、油(B)としては、鉱物油であって、100℃における動粘度が1〜50mm2/sで、かつ粘度指数が80以上でありグループ(ii)またはグループ(iii)に属するもの、またはグループ(iv)に属するポリα−オレフィンが最も好ましい。
【0037】
本発明の潤滑油用添加剤組成物は、前記プロピレン・エチレン共重合体(A)および油(B)を含有し、通常は前記プロピレン・エチレン共重合体(A)を1〜50重量%および油(B)50〜99重量%(但し、前記(A)および(B)の重量%は、添加剤組成物中の(A)および(B)の合計量に基づいて算出される)を含有する。本発明の潤滑油用添加剤組成物は、好ましくは前記プロピレン・エチレン共重合体(A)を2〜40重量%および油(B)60〜98重量%を含有し、より好ましくは前記プロピレン・エチレン共重合体(A)を3〜30重量%および油(B)70〜97重量%を含有する。
【0038】
また、本発明の潤滑油用添加剤組成物は、前記プロピレン・エチレン共重合体(A)および油(B)以外の他の成分が含まれていてもよい。他の成分としては乳化剤、分散剤、耐酸化安定剤、耐磨耗剤等が挙げられる。本発明の潤滑油用添加剤組成物に他の成分が含まれる場合には、前記プロピレン・エチレン共重合体(A)と、油(B)との合計100重量%に対して、通常は0.01〜10重量%の範囲で含有される。
【0039】
本発明の潤滑油用添加剤組成物は、プロピレン・エチレン共重合体(A)および油(B)を前記範囲で含むことが好ましい。プロピレン・エチレン共重合体(A)および油(B)を前記範囲で含む潤滑油用添加剤組成物を用いて、潤滑油組成物を製造する際には、潤滑油用添加剤組成物と、潤滑油組成物の他の成分とを混合することで、少ないプロピレン・エチレン共重合体(A)含有量で、増粘性に優れた潤滑油組成物を得ることができる。
【0040】
また本発明の潤滑油用添加剤組成物は、上記のように油(B)を含有する組成物であるため、潤滑油組成物を製造する際の作業性も良好であり、潤滑油組成物の他の成分と容易に混合することができる。
【0041】
本発明の潤滑油用添加剤組成物は、従来公知の方法で、プロピレン系共重合体(A)および油(B)を混合することにより調製することができる。
〔潤滑油組成物〕
本発明の潤滑油組成物は、前述のプロピレン・エチレン共重合体(A)と、潤滑油基剤(BB)とを含有し、好ましくはさらに流動点降下剤(C)を含有する。
【0042】
まず本発明の潤滑油組成物を形成する各成分について説明する。
潤滑油組成物が含有するプロピレン・エチレン共重合体(A)としては、上述の潤滑油粘度調整剤であるプロピレン・エチレン共重合体(A)が用いられる。
【0043】
潤滑油組成物が含有する潤滑油基剤(BB)としては、鉱物油、およびポリα−オレフィン、ジエステル類、ポリアルキレングリコールなどの合成油が挙げられ、鉱物油または鉱物油と合成油とのブレンド物が好ましく用いられる。なお、ジエステル類としては、ポリオールエステル、ジオクチルフタレート、ジオクチルセバケートなどが挙げられる。
【0044】
鉱物油は、一般に脱ワックスなどの精製工程を経て用いられ、精製の仕方により幾つかの等級があるが、一般に0.5〜10%のワックス分を含む鉱物油が使用される。例えば、水素分解精製法で製造された流動点の低い、粘度指数の高い、イソパラフィンを主体とした組成の高度精製油を用いることもできる。また、40℃における動粘度が10〜200cStの鉱物油が一般的に使用される。
【0045】
鉱物油は、前述のように一般に脱ワックスなどの精製工程を経て用いられ、精製の仕方により幾つかの等級があり、本等級はAPI(米国石油協会)分類で規定される。各グループに分類される潤滑油基剤の特性は、前記表1に示したとおりである。
【0046】
表1におけるポリα−オレフィンは、少なくとも炭素数10以上のα−オレフィンを原料モノマーの一種として重合して得られる炭化水素ポリマーであって、デセン−1を重合して得られるポリデセンなどが例示される。
【0047】
また、本発明で使用される潤滑油基剤(BB)は、グループ(i)〜グループ(iv)のいずれかに属する油が好ましく、特に鉱物油の中でも100℃における動粘度が1〜50mm2/sで、かつ粘度指数が80以上のもの、またはポリα−オレフィンが好ましい。また、潤滑油基剤(BB)としては、グループ(ii)またはグループ(iii)に属する鉱物油、またはグループ(iv)に属するポリα−オレフィンが好ましい。なお、グループ(i)よりもグループ(ii)およびグループ(iii)の方が、ワックス濃度が少ない傾向にある。
【0048】
特に、潤滑油基剤(BB)としては、鉱物油であって、100℃における動粘度が1〜50mm2/sで、かつ粘度指数が80以上でありグループ(ii)またはグループ(iii)に属するもの、またはグループ(iv)に属するポリα−オレフィンが最も好ましい。
【0049】
潤滑油組成物が好ましくは含有する流動点降下剤(C)としては、アルキル化ナフタレン、メタクリル酸アルキルの(共)重合体、アクリル酸アルキルの(共)重合体、フマル酸アルキルと酢酸ビニルの共重合体、α−オレフィン重合体、α−オレフィンとスチレンの共重合体などが挙げられ、中でも、メタクリル酸アルキルの(共)重合体、アクリル酸アルキルの(共)重合体が好適に用いられる。
【0050】
本発明の潤滑油組成物は、上述したようにプロピレン・エチレン共重合体(A)と、潤滑油基剤(BB)とを含有し、好ましくはさらに流動点降下剤(C)を含有している。
潤滑油組成物100重量%中、前記プロピレン・エチレン共重合体(A)は、通常は0.1〜5重量%、好ましくは0.2〜4重量%、さらに好ましくは0.4〜3重量%、特に好ましくは0.6〜2重量%の量で含有される。また、本発明の潤滑油組成物が、流動点降下剤(C)を含有する場合には、潤滑油組成物100重量%中、流動点降下剤(C)は、通常は0.05〜5重量%、好ましくは0.05〜3重量%、さらに好ましくは0.05〜2重量%、最も好ましくは0.05〜1重量%の量で含有される。
【0051】
なお、本発明の潤滑油組成物の、前記プロピレン・エチレン共重合体(A)および含有されることが好ましい流動点降下剤(C)以外の成分は、前記潤滑油基剤(BB)および後述の配合剤である。なお、配合剤とは、潤滑油組成物に含有されるプロピレン・エチレン共重合体(A)、潤滑油基剤(BB)および流動点降下剤(C)以外の成分を意味する。
【0052】
本発明の潤滑油組成物が、配合剤を含有する場合の含有量は特に限定されないが、前記潤滑油基剤(BB)と配合剤との合計を100重量%とした場合に、配合剤の含有量としては、通常は0重量%を超え、好ましくは1重量%以上であり、より好ましくは3重量%以上であり、さらに好ましくは5重量%以上である。また、配合剤の含有量としては、通常は40重量%以下であり、好ましくは30重量%以下であり、より好ましくは20重量%以下であり、さらに好ましくは15重量%以下である。
【0053】
本発明の潤滑油組成物において、前記プロピレン・エチレン共重合体(A)の含有量が前記範囲内であると、潤滑油組成物は増粘性に優れるため好ましい。
本発明の潤滑油組成物は、粘度の温度依存性が小さく、かつ前記プロピレン・エチレン共重合体(A)と流動点降下剤(C)との相互作用による流動点の上昇が少なく、あらゆるせん断速度領域で低温特性に優れており、低温での取扱い性も優れており、良好な潤滑性能を示す。
【0054】
また、本発明の潤滑油組成物は、前記プロピレン・エチレン共重合体(A)、潤滑油基剤(BB)および流動点降下剤(C)以外に、配合剤を含有してもよい。配合剤としては、メタクリル酸アルキルの(共)重合体、水添SBR(スチレンブタジエンラバー)、SEBS(スチレンエチレンブチレンスチレンブロック共重合体)などの粘度指数向上効果を有する添加剤、清浄剤、錆止め添加剤、分散剤、極圧剤、消泡剤、酸化防止剤、金属不活性化剤などが挙げられる。
【0055】
本発明の潤滑油組成物は、従来公知の方法で、前記プロピレン・エチレン共重合体(A)、潤滑油基剤(BB)および流動点降下剤(C)、さらに必要に応じてその他の配合剤を混合または溶解することにより調製することができる。
【0056】
本発明の潤滑油組成物は、低温貯蔵性、低温粘度に優れ、高温時の省燃費性に優れるため、自動車エンジン用潤滑油、ヘビーデューティーディーゼルエンジン用潤滑油、マリンディーゼルエンジン用潤滑油、2サイクルエンジン用潤滑油、自動変速基油、手動変速機油、ギヤ油、グリース等として好適に用いることができる。
【実施例】
【0057】
次に本発明について実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0058】
〔アイソタクチック指数〕
本発明のプロピレン・エチレン共重合体(A)のアイソタクチック指数は赤外(IR)分光分析法で測定した。共重合体を熱プレスしてフィルム状に成形し、ついで赤外分光計を用いて赤外(IR)スペクトルを得た。得られた赤外スペクトルの997cm−1の吸光度を973cm−1の吸光度で割った商に100を掛けた値をアイソタクチック指数として算出した。
【0059】
〔メソトリアッド分率(mm)〕
実施例または比較例で製造または使用した共重合体のメソトリアッド分率(mm)については、13C−NMRスペクトルの解析により求めた。
【0060】
(測定装置)
LA500型核磁気共鳴装置(日本電子(株)製)
(測定条件)
オルトジクロルベンゼンとベンゼン−d6との混合溶媒(オルトジクロルベンゼン/ベンゼン−d6=3/1〜4/1(体積比))中、120℃、パルス幅45°パルス、パルス繰返し時間5.5秒にて、実施例または比較例で製造または使用した共重合体のメソトリアッド分率(mm)を測定した。
【0061】
〔極限粘度〕
135℃、デカリン中で測定した。
〔密度〕
実施例または比較例で製造または使用した共重合体の密度は、ASTM D1505記載の方法に従い、測定した。
【0062】
〔DSC測定〕
実施例または比較例で製造した共重合体を、190℃に設定した油圧式熱プレス成形機を用いて5分間余熱した後、2分加圧し、加圧後1分以内に20℃に設定した冷却槽に配置し、そこで4分間冷却して、厚さ2mmのプレスシートを作成した。
【0063】
このプレスシートを20℃で4週間保管したものを試験体とした。DSC測定は、インジウムにて較正したSEIKO社製示差走査型熱量計(RDC220)を用いて行った。
約10mgになるようにアルミニウム製DSCパン上に前記試験体を秤量し、蓋をパンにクリンプして密閉雰囲気下とし、サンプルパンを得た。
【0064】
サンプルパンをDSCセルに配置し、リファレンスとして空のアルミニウムパンを配置する。DSCセルを窒素雰囲気下にて20℃(室温)から−20℃まで冷却し、−20℃で5分間保持した後、200℃まで10℃/分で昇温した。(第1昇温過程)
次いで200℃で5分間保持した後、10℃/分で降温し、DSCセルを−100℃まで冷却した。−100℃で5分間保持した後、DSCセルを200℃まで10℃/分で昇温した。(第2昇温過程)
【0065】
第1昇温過程で得られるエンタルピー曲線の融解ピークトップ温度を融点(Tm1)とした。融解ピークが2個以上存在する場合には、最大のピークを有するものがTm1として定義される。
【0066】
第2昇温過程で得られるエンタルピー曲線の融解ピーク面積を融解熱量(ΔH2)とした。
2つ以上の融解ピークが存在するときは、2つ以上のピークが完全に分離することなく(すなわちピークトップどうしをつなぐエンタルピー曲線がベースラインまで戻ることなく)存在した場合も、2つ以上のピークがそれぞれ完全に分離している場合(すなわちピークトップどうしをつなぐエンタルピー曲線がベースラインまで戻っている場合)も、融解熱量(ΔH2)としては、上記2つ以上のピークのピーク面積を合計したものとした。
また、融解熱ピーク以外に、結晶化ピークが観測された場合には、結晶化ピーク面積は合算しなかった。
【0067】
〔重量平均分子量および分子量分布〕
実施例または比較例で製造または使用した共重合体の重量平均分子量および分子量分布は、以下の方法により測定した。
【0068】
(試料の前処理)
実施例または比較例で製造または使用した共重合体30mgを0−ジクロロベンゼン20mlに145℃で溶解した後、その溶液を孔径が1.0μmの焼結フィルターで濾過したものを分析試料とした。
【0069】
(GPC分析)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて平均分子量および分子量分布曲線を求めた。計算はポリスチレン換算で行った。
【0070】
(測定装置)
ゲル浸透クロマトグラフalliance GPC 2000型(Waters社製)
(解析装置)
データ処理ソフトEmpower2(Waters社製)
(測定条件)
カラム TSKgel GMH6−HTを2本、及びTSKgel GMH6−HTLを2本(いずれも直径7.5mm×長さ30cm、 東ソー社製)
カラム温度 140℃
移動相 o−ジクロロベンゼン(0.025%BHT含有)
検出器 示差屈折率計
流速 1mL/分
試料濃度 0.15%(w/v)
注入量 500μL
サンプリング時間間隔 1秒
カラム較正 単分散ポリスチレン(東ソー社製)
分子量換算 PS換算/標準換算法
【0071】
〔動粘度〕
実施例または比較例で調製した潤滑油組成物の100℃における動粘度を、ASTM D446に基づき測定を行った。
【0072】
〔Cold Cranking Simulator(CCS)粘度〕
実施例または比較例で調製した潤滑油組成物のCCS粘度(−30℃)を、ASTM D 2602に基づいて測定を行った。CCS粘度は、クランク軸における低温での摺動性(始動性)の評価に用いられ、値が小さい程、潤滑油の低温粘度(低温特性)が優れることを示す。
【0073】
具体的にはほぼ同一の重量平均分子量を有する実施例または比較例で製造または使用した共重合体(潤滑油粘度調整剤)を用いた、同一の動粘度を有する潤滑油組成物では、CCS粘度が低いほど低温省燃費性に優れる。
【0074】
〔Shear Stability Index(SSI)〕
実施例または比較例で調製した潤滑油組成物のSSIを、ASTM D 3945に基づいて測定を行った。SSIは潤滑油中の共重合体成分が摺動下で剪断力を受け分子鎖が切断することによる動粘度の損失の尺度であり、SSIが大きい値であるほど、動粘度の損失が大きいことを示す。
【0075】
〔プローブタック試験〕
実施例または比較例で製造した共重合体を、190℃に設定した油圧式熱プレス成形機を用いて5分間余熱した後、2分加圧し、加圧後1分以内に20℃に設定した冷却槽で4分間冷却して、厚さ2mmのプレスシートを作成した。
【0076】
このプレスシートを20℃で4週間保管したものを試験体とした。さらに、試験前処理として、100℃で10分間加熱した後、氷浴させた離型剤溶液にて4分間冷却した。試験体に付着した水分はエアガンで除去した。
プローブタック試験は、レスカ社製タッキング試験機(TAC−II)を用いて行った。直径5mmφのステンレス製円柱状プローブを試験体に接触させ、剥離するときに生じるタック(gf)を評価した。プローブの試験体への接触速度を120mm/分、加圧力を50gf、加圧時間を1秒、剥離速度120mm/分とした。
【0077】
〔実施例1〕
実施例1は、エクソンモービルケミカルカンパニーから入手可能な、ビスタマックス(VISTAMAXX(商標))6100である。性状を表2に示す。
【0078】
〔実施例2〕
実施例2は、エクソンモービルケミカルカンパニーから入手可能な、ビスタマックス(VISTAMAXX(商標))6200である。性状を表2に示す。
【0079】
〔実施例3〕
充分に窒素置換された容積310リットルの攪拌翼付加圧連続重合反応器の一つの供給口に、脱水精製したn−ヘキサンを32.7リットル/hrの流量で、また、メチルアルミノキサン(東ソー・ファインケム社製TMAO−341)を2.5mmol/hr、ジフェニルメチレン(3−tert−ブチル−5−エチルシクロペンタジエニル)(2,7−ジ−tert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリドを0.010mmol/hr、トリイソブチルアルミニウム(東ソー・ファインケム社製TiBA)を1.4mmol/hrの流量で連続的に供給した。同時に連続重合反応器の別の供給口に、エチレンを2.5kg/hrの流量で、プロピレンを15.2kg/hrの流量で、水素を2.3ノルマルリットル/hrの流量で連続的に供給し、重合温度60℃、全圧1.3MPa−G、攪拌回転数190rpmの条件下で連続溶液重合を行った。重合反応器外周に設けられたジャケットに冷媒を流通させ、また、別に設置されたガスブロワを用いて気相部を強制的に循環させ、これを熱交換器で冷却することにより、重合反応熱の除去を行った。
【0080】
上記条件で重合を行った結果生成したプロピレン・エチレン共重合体を含むヘキサン溶液は、重合反応器内平均溶液量100リットルを維持するように、重合反応器最下部に設けられた排出口を介してプロピレン・エチレン共重合体として8.0kg/hrの速度で連続的に排出させた。得られた重合溶液を大量のメタノールに投入して、プロピレン・エチレン共重合体を析出させた。該プロピレン・エチレン共重合体を、130℃で24時間減圧乾燥を行った。得られたポリマーの性状を表2に示す。
【0081】
〔比較例1〕
充分に窒素置換した内容量1500mLの重合器に、500mLの乾燥ヘプタン、トリイソブチルアルミニウム0.9mmolと1−ブテン20gを常温で仕込んだ後、重合器内温を54℃に昇温した。プロピレンで0.6MPaGに加圧し、次いでエチレンで0.65MPaGに加圧した後、ヘプタンに溶解したジメチルシリレン(テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライド(0.00131mmol)、およびトルエンに溶解したN,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(0.0065mmol)を重合器内に添加した。内圧をエチレン圧で0.65MPaGに保持しながら6.5分間重合し、5mlのメタノールを添加して重合を停止した。重合熱により内温は76℃まで上昇した。降温、脱圧後、重合溶液を2Lのアセトン/メタノールに加えてポリマーを析出させ、ろ過で回収したポリマーを減圧下、80℃で10時間乾燥した。得られたポリマーの性状を表2に示す。
【0082】
〔比較例2〕
プロピレンおよびエチレンでの加圧をそれぞれ0.5MPaG、0.7MPaGにし、重合時間を4分間にした以外は比較例1と同様に重合を行った。重合熱により内温は61℃まで上昇した。得られたポリマーの性状を表2に示す。
【0083】
〔比較例3〕
充分に窒素置換した内容量1500mLの重合器に、500mLの乾燥ヘプタン、トリイソブチルアルミニウム0.5mmolと1−ブテン20gを常温で仕込んだ後、重合器内温を54℃に昇温した。水素を500mL導入した後、プロピレンで0.6MPaGに加圧し、次いでエチレンで0.7MPaGに加圧した。ヘプタンに溶解したジメチルシリレン(テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライド(0.00065mmol)、およびトルエンに溶解したN,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(0.0035mmol)を重合器内に添加した。内温54℃、内圧をエチレン圧で0.7MPaGに保持しながら25分間重合し、5mlのメタノールを添加して重合を停止した。降温、脱圧後、重合溶液を2Lのアセトン/メタノールに加えてポリマーを析出させ、ろ過で回収したポリマーを減圧下、80℃で10時間乾燥した。得られたポリマーの性状を表2に示す。
【0084】
なお、表2中、比較例におけるメソトリアッド分率(mm)の表記”−”は、比較例の共重合体はアタクチックポリマーであるため、精度を確保してメソトリアッド分率(mm)を算出することはできないが、80%以下であったことを示す。
【0085】
表2中、比較例におけるアイソタクチック指数の表記”−”は、比較例の共重合体はアタクチックポリマーであるため、アイソタクチック指数を算出できるほどの立体規則性を有していないことを示す。
表2中、融点(Tm1)の表記”n/d”は融点が観測されなかったことを示す。
【0086】
【表2】
【0087】
〔実施例4〕
実施例1のポリマーを用いて、プローブタック試験および表3に示した配合にて潤滑油の性能評価を行った。結果を表4に示す。
【0088】
〔実施例5〕
実施例2のポリマーを用いて、プローブタック試験および表3に示した配合にて潤滑油の性能評価を行った。結果を表4に示す。
【0089】
〔実施例6〕
実施例3のポリマーを用いて、プローブタック試験および表3に示した配合にて潤滑油の性能評価を行った。結果を表4に示す。
【0090】
〔比較例4〕
比較例1のポリマーを用いて、プローブタック試験および表3に示した配合にて潤滑油の性能評価を行った。結果を表4に示す。
【0091】
〔比較例5〕
比較例2のポリマーを用いて、プローブタック試験および表3に示した配合にて潤滑油の性能評価を行った。結果を表4に示す。
【0092】
〔比較例6〕
比較例3のポリマーを用いて、プローブタック試験および表3に示した配合にて潤滑油の性能評価を行った。結果を表4に示す。
【0093】
【表3】
【0094】
【表4】
上記表4から分かるとおり、同等の剪断安定性(SSI)を有する潤滑油を得ようとした場合、実施例4〜6は比較例4〜6に比べてポリマー添加量が10%以上少なくて済み、増粘性に優れることが分かる。また、同等の剪断安定性(SSI)を有する潤滑油を得ようとした場合、実施例4〜6は比較例4〜6に比べて粘着力が小さく、粘度調整剤として取り扱う際のハンドリング性に優れることが分かる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑油粘度調整剤、潤滑油用添加剤組成物および潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
石油製品は、一般に温度が変わると粘度が大きく変化する、いわゆる粘度の温度依存性を有している。例えば、自動車などに用いられる潤滑油組成物などでは、粘度の温度依存性が小さいことが好ましい。そこで潤滑油には、粘度の温度依存性を小さくする目的で、潤滑油基剤に可溶なある種のポリマーが、潤滑油粘度調整剤として用いられている。
【0003】
このような潤滑油粘度調整剤として、従来、エチレン・α−オレフィン共重合体が広く用いられており、潤滑油の性能バランスをさらに改善するため種々の改良がなされている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0004】
また、近年は、プロピレン・α−オレフィン共重合体を潤滑油粘度調製剤として用いる提案もなされている。(例えば、特許文献3参照)。
しかしながら、特許文献3に記載された共重合体は粘着性が強いため製造時(たとえば重合後の後処理工程等)、または粘度調整剤として取り扱う際におけるハンドリング性が悪い上に、潤滑油組成物としての増粘性も十分ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第00/034420号
【特許文献2】国際公開第06/028169号
【特許文献3】特開2009−029983号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、製造時(たとえば重合後の後処理工程等)、または粘度調整剤として取り扱う際におけるハンドリング性が良好な共重合体からなり、増粘性に優れる潤滑油組成物を得るために用いることができる潤滑油粘度調整剤、当該潤滑油粘度調製剤を含み、増粘性に優れる潤滑油組成物を得るために用いることができる潤滑油用添加剤組成物、および増粘性に優れる潤滑油組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意研究の結果、特定のプロピレン・エチレン共重合体が、製造時(たとえば重合後の後処理工程等)、または粘度調整剤として取り扱う際におけるハンドリング性が良好であると共に、当該プロピレン・エチレン共重合体を潤滑油粘度調整剤として用いると、得られる潤滑油組成物の増粘性が優れたものとなることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、
[1]
プロピレン由来の構成単位を70〜83モル%含み、エチレン由来の構成単位を17〜30モル%含み、以下要件を満たすプロピレン・エチレン共重合体(A)からなる潤滑油粘度調製剤。
(i)アイソタクチック指数が5〜40%
(ii)メソトリアッド分率(mm)が85〜95%
(iii)極限粘度[η]が0.5〜2.5dl/g
であり、好ましくは、以下のいずれかである。
【0009】
[2]
プロピレン・エチレン共重合体(A)のアイソタクチック指数とメソトリアッド分率(mm)がさらに以下式を満たすものである前記の潤滑油粘度調製剤。
(i−2)アイソタクチック指数≧−2.24×E+64
(ii−2)メソトリアッド分率(mm)≧−0.4492×E+95
(ただし、Eはプロピレン・エチレン共重合体(A)のエチレン由来の構成単位のモル%)
【0010】
[3]
前記のプロピレン・エチレン共重合体(A)を1〜50重量%、および油(B)50〜99重量%(ただし、前記(A)および(B)の重量%は、添加剤組成物中の(A)および(B)の合計料に基づいて算出される)を含有する潤滑油用添加剤組成物。
【0011】
[4]
前記のプロピレン・エチレン共重合体(A)と、潤滑油基剤(BB)とを含む潤滑油組成物であり、潤滑油組成物100重量%中、前記プロピレン・エチレン共重合体(A)を0.1〜5重量%含有する潤滑油組成物。
【0012】
[5]
潤滑油組成物100重量%中、流動点降下剤(C)を、0.05〜5重量%含有する前記の潤滑油組成物。
【発明の効果】
【0013】
本発明の潤滑油粘度調整剤は、製造時(たとえば重合後の後処理工程等)、または粘度調整剤として取り扱う際におけるハンドリング性が良好で取り扱いに優れる。また、本発明の潤滑油粘度調整剤または潤滑油用添加剤組成物を含む潤滑油組成物は増粘性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に本発明について具体的に説明する。
〔潤滑油粘度調整剤〕
本発明の潤滑油粘度調整剤は、プロピレン由来の構成単位を70〜83モル%含み、エチレン由来の構成単位を17〜30モル%含み、以下要件を満たすプロピレン・エチレン共重合体(A)からなる。
(i)アイソタクチック指数が5〜40%
(ii)メソトリアッド分率(mm)が85〜95%
(iii)極限粘度[η]が0.5〜2.5dl/g
また、(i)アイソタクチック指数と(ii)メソトリアッド分率(mm)は、さらに以下式を満たすことが好ましい。
(i−2)アイソタクチック指数≧−2.24×E+64
(ii−2)メソトリアッド分率(mm)≧−0.4492×E+95
(ただし、Eはプロピレン・エチレン共重合体(A)のエチレン由来の構成単位のモル%)
【0015】
〔プロピレン・エチレン共重合体(A)〕
本発明のプロピレン・エチレン共重合体(A)のプロピレン由来の構成単位は70〜83モル%であり、プロピレン由来の構成単位が70モル%以上である共重合体を含有する潤滑油組成物は、増粘性に優れるため好ましく、プロピレン由来の構成単位が83モル%以下である共重合体を含有する潤滑油組成物は、低温貯蔵性に優れるため好ましい。
【0016】
本発明のプロピレン・エチレン共重合体(A)のアイソタクチック指数は5〜40%であり、好ましくは10〜40%であり、より好ましくは10〜25%である。
本発明のプロピレン・エチレン共重合体(A)のアイソタクチック指数は赤外(IR)分光分析法で測定される。ポリプロピレンの赤外(IR)スペクトルでは、997cm-1と973cm-1に2本の観察されるピークが生じ、997cm-1の吸光度を973cm-1の吸光度で割った商に100を掛けた値がポリプロピレンのアイソタクチック指数として定義されている。本発明のプロピレン・エチレン共重合体(A)のアイソタクチック指数もこれに準ずる。
【0017】
本発明のプロピレン・エチレン共重合体(A)のメソトリアッド分率(mm)は国際公開2004−087775号パンフレットの21頁7行目から26頁6行目までに記載された方法を用いて13C−NMRで測定することができる。本発明のプロピレン・エチレン共重合体(A)のメソトリアッド分率(mm)は85〜95%であり、好ましくは87〜93%である。メソトリアッド分率(mm)の高いプロピレン・エチレン共重合体(A)を得るためには、一般的に、重合温度は低い方が好ましく、重合圧力は高い方が好ましく、ポリマー濃度は低い方が好ましい。
【0018】
本発明のプロピレン・エチレン共重合体(A)の極限粘度[η]は0.5〜2.5dl/gであり、好ましくは1.0〜2.5dl/gであり、より好ましくは1.1〜2.4dl/gであり、さらに好ましくは1.3〜2.3dl/gである。極限粘度[η]が上記範囲内にあるプロピレン・エチレン共重合体(A)を含有する潤滑油組成物は、せん断安定性に優れるため好ましい。
【0019】
本発明のプロピレン・エチレン共重合体(A)の密度は、867kg/m3以下であることが好ましく、より好ましくは853〜867kg/m3であり、さらに好ましくは857〜867kg/m3である。密度が前記範囲内にあるプロピレン・エチレン共重合体(A)を含有する潤滑油組成物は、低温貯蔵性と低温粘度特性バランスに優れるため好ましい。 なお、低温における潤滑油の流動性を示すのが低温貯蔵性であり、低温貯蔵性に優れる潤滑油は低温においてもゲル化を起こすことなく流動性を維持する。
【0020】
本発明のプロピレン・エチレン共重合体(A)は、少なくとも下記(a1)もしくは(a2)のどちらかの要件を満たすことがより好ましく、下記(a1)および(a2)の要件を同時に満たすことがさらに好ましい。
【0021】
(a1)プロピレン・エチレン共重合体(A)を、190℃に設定した熱プレス成形機を用いて5分間余熱した後、2分加圧し、20℃に設定した冷却槽で4分間冷却することにより得られる、厚さ2mmのプレスシートを、20℃で4週間保管した後に試験体として用い、−20℃まで冷却して、−20℃で5分間保持した後、昇温速度10℃/分で200℃まで昇温したときに得られる示差走査熱量計(DSC)曲線において観測される融点(Tm1)が、30℃〜80℃、好ましくは40℃〜60℃である。
【0022】
(a2)プロピレン・エチレン共重合体(A)を、190℃に設定した熱プレス成形機を用いて5分間余熱した後、2分加圧し、20℃に設定した冷却槽で4分間冷却することにより得られる、厚さ2mmのプレスシートを、20℃で4週間保管した後に試験体として用い、−20℃まで冷却して、−20℃で5分間保持した後、昇温速度10℃/分で200℃まで昇温し、200℃で5分間保持した後、降温速度10℃/分で−100℃まで冷却し、−100℃で5分間保持した後、昇温速度10℃/分で200℃まで昇温したときに得られる示差走査熱量計(DSC)曲線において、2回目の昇温過程で観測される融解熱量(ΔH2)が5J/g以下、好ましくは1J/g以下である。
【0023】
また、プロピレン・エチレン共重合体(A)を、190℃で余熱した後に加圧を行い、その後冷却を行うが、該冷却は加圧後速やかに行われることが好ましい。具体的には加圧後1分以内に、加圧後のプロピレン・エチレン共重合体(A)を、冷却槽に配置するものとする。
【0024】
なお、示差走査熱量計(DSC)曲線において、融解ピークが複数観察される場合には、最大ピークを融点(Tm1)とする。融点(Tm1)が30〜80℃であるプロピレン・エチレン共重合体(A)は、微小な結晶成分を形成することを意味する。
【0025】
融点(Tm1)および/または融解熱量(ΔH2)が前記範囲内にあるプロピレン・エチレン共重合体(A)を含有する潤滑油組成物は、低温貯蔵性と低温粘度特性バランスに優れるため好ましい。
【0026】
本発明のプロピレン・エチレン共重合体(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量は、10,000〜500,000が好ましく、30,000〜400,000がより好ましく、50,000〜350,000が特に好ましい。なお、重量平均分子量とは、GPCで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量を示す。重量平均分子量が上記範囲内にあるプロピレン・エチレン共重合体(A)を含有する潤滑油組成物は、せん断安定性に優れるため好ましい。
【0027】
本発明のプロピレン・エチレン共重合体(A)の、GPCにより測定した分子量分布(Mw/Mn、ポリスチレン換算、Mw:重量平均分子量、Mn:数平均分子量)は、4.0以下であることが好ましく、より好ましくは3.0以下、特に好ましくは2.5以下である。
【0028】
本発明の前記プロピレン・エチレン共重合体(A)の製造方法としては特に制限はないが、オレフィンをアイソタクチック構造で立体規則性重合することのできる公知の触媒、例えば、固体状チタン成分と有機金属化合物を主成分とする触媒、またはメタロセン化合物を触媒の一成分として用いたメタロセン触媒の存在下でプロピレンおよびエチレンを共重合させることにより得られる。中でも、アイソタクチック構造で立体規則性重合することのできるメタロセン触媒を用いた製造法が好ましく、このようなメタロセン触媒の例としては、国際公開第2000/01745号、国際公開第2004/106430号、国際公開第2005/019283号、国際公開2006/025540号、国際公開第2004/087775号パンフレットの請求項6〜8に記載されたメタロセン触媒を挙げることができる。
【0029】
メタロセン化合物としては、具体的には、μ-ジメチルシリル(ビス-インデニル)ハフニウムジメチル、ジフェニルメチレン(3−tert−ブチル−5−エチルシクロペンタジエニル)(2,7−ジ−tert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(3−tert−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)(2,7−ジ−tert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルメチレン(3−tert−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド等が挙げられる。
【0030】
〔潤滑油用添加剤組成物〕
本発明の潤滑油用添加剤組成物は、前述のプロピレン・エチレン共重合体(A)を1〜50重量%、および油(B)50〜99重量%(但し、前記(A)および(B)の重量%は、添加剤組成物中の(A)および(B)の合計量に基づいて算出される)を含有する。
【0031】
すなわち、前記(A)および(B)の量は、前記(A)と(B)との合計を100重量%とした際の量である。
潤滑油用添加剤組成物が含有する油(B)としては、鉱物油、およびポリα−オレフィン、ジエステル類、ポリアルキレングリコールなどの合成油が挙げられ、鉱物油または鉱物油と合成油とのブレンド物が好ましく用いられる。なお、ジエステル類としては、ポリオールエステル、ジオクチルフタレート、ジオクチルセバケートなどが挙げられる。
【0032】
鉱物油は、一般に脱ワックスなどの精製工程を経て用いられ、精製の仕方により幾つかの等級があるが、一般に0.5〜10%のワックス分を含む鉱物油が使用される。例えば、水素分解精製法で製造された流動点の低い、粘度指数の高い、イソパラフィンを主体とした組成の高度精製油を用いることもできる。また、40℃における動粘度が10〜200cStの鉱物油が一般的に使用される。
【0033】
鉱物油は、前述のように一般に脱ワックスなどの精製工程を経て用いられ、精製の仕方により幾つかの等級があり、本等級はAPI(米国石油協会)分類で規定される。表1に各グループに分類される潤滑油基剤の特性を示す。
【0034】
【表1】
表1におけるポリα−オレフィンは、少なくとも炭素数10以上のα−オレフィンを原料モノマーの一種として重合して得られる炭化水素ポリマーであって、デセン−1を重合して得られるポリデセンなどが例示される。
【0035】
また、本発明で使用される油(B)は、グループ(i)〜グループ(iv)のいずれかに属する油が好ましく、特に鉱物油の中でも100℃における動粘度が1〜50mm2/sで、かつ粘度指数が80以上のもの、またはポリα−オレフィンが好ましい。また、油(B)としては、グループ(ii)またはグループ(iii)に属する鉱物油、またはグループ(iv)に属するポリα−オレフィンが好ましい。なお、グループ(i)よりもグループ(ii)およびグループ(iii)の方が、ワックス濃度が少ない傾向にある。
【0036】
特に、油(B)としては、鉱物油であって、100℃における動粘度が1〜50mm2/sで、かつ粘度指数が80以上でありグループ(ii)またはグループ(iii)に属するもの、またはグループ(iv)に属するポリα−オレフィンが最も好ましい。
【0037】
本発明の潤滑油用添加剤組成物は、前記プロピレン・エチレン共重合体(A)および油(B)を含有し、通常は前記プロピレン・エチレン共重合体(A)を1〜50重量%および油(B)50〜99重量%(但し、前記(A)および(B)の重量%は、添加剤組成物中の(A)および(B)の合計量に基づいて算出される)を含有する。本発明の潤滑油用添加剤組成物は、好ましくは前記プロピレン・エチレン共重合体(A)を2〜40重量%および油(B)60〜98重量%を含有し、より好ましくは前記プロピレン・エチレン共重合体(A)を3〜30重量%および油(B)70〜97重量%を含有する。
【0038】
また、本発明の潤滑油用添加剤組成物は、前記プロピレン・エチレン共重合体(A)および油(B)以外の他の成分が含まれていてもよい。他の成分としては乳化剤、分散剤、耐酸化安定剤、耐磨耗剤等が挙げられる。本発明の潤滑油用添加剤組成物に他の成分が含まれる場合には、前記プロピレン・エチレン共重合体(A)と、油(B)との合計100重量%に対して、通常は0.01〜10重量%の範囲で含有される。
【0039】
本発明の潤滑油用添加剤組成物は、プロピレン・エチレン共重合体(A)および油(B)を前記範囲で含むことが好ましい。プロピレン・エチレン共重合体(A)および油(B)を前記範囲で含む潤滑油用添加剤組成物を用いて、潤滑油組成物を製造する際には、潤滑油用添加剤組成物と、潤滑油組成物の他の成分とを混合することで、少ないプロピレン・エチレン共重合体(A)含有量で、増粘性に優れた潤滑油組成物を得ることができる。
【0040】
また本発明の潤滑油用添加剤組成物は、上記のように油(B)を含有する組成物であるため、潤滑油組成物を製造する際の作業性も良好であり、潤滑油組成物の他の成分と容易に混合することができる。
【0041】
本発明の潤滑油用添加剤組成物は、従来公知の方法で、プロピレン系共重合体(A)および油(B)を混合することにより調製することができる。
〔潤滑油組成物〕
本発明の潤滑油組成物は、前述のプロピレン・エチレン共重合体(A)と、潤滑油基剤(BB)とを含有し、好ましくはさらに流動点降下剤(C)を含有する。
【0042】
まず本発明の潤滑油組成物を形成する各成分について説明する。
潤滑油組成物が含有するプロピレン・エチレン共重合体(A)としては、上述の潤滑油粘度調整剤であるプロピレン・エチレン共重合体(A)が用いられる。
【0043】
潤滑油組成物が含有する潤滑油基剤(BB)としては、鉱物油、およびポリα−オレフィン、ジエステル類、ポリアルキレングリコールなどの合成油が挙げられ、鉱物油または鉱物油と合成油とのブレンド物が好ましく用いられる。なお、ジエステル類としては、ポリオールエステル、ジオクチルフタレート、ジオクチルセバケートなどが挙げられる。
【0044】
鉱物油は、一般に脱ワックスなどの精製工程を経て用いられ、精製の仕方により幾つかの等級があるが、一般に0.5〜10%のワックス分を含む鉱物油が使用される。例えば、水素分解精製法で製造された流動点の低い、粘度指数の高い、イソパラフィンを主体とした組成の高度精製油を用いることもできる。また、40℃における動粘度が10〜200cStの鉱物油が一般的に使用される。
【0045】
鉱物油は、前述のように一般に脱ワックスなどの精製工程を経て用いられ、精製の仕方により幾つかの等級があり、本等級はAPI(米国石油協会)分類で規定される。各グループに分類される潤滑油基剤の特性は、前記表1に示したとおりである。
【0046】
表1におけるポリα−オレフィンは、少なくとも炭素数10以上のα−オレフィンを原料モノマーの一種として重合して得られる炭化水素ポリマーであって、デセン−1を重合して得られるポリデセンなどが例示される。
【0047】
また、本発明で使用される潤滑油基剤(BB)は、グループ(i)〜グループ(iv)のいずれかに属する油が好ましく、特に鉱物油の中でも100℃における動粘度が1〜50mm2/sで、かつ粘度指数が80以上のもの、またはポリα−オレフィンが好ましい。また、潤滑油基剤(BB)としては、グループ(ii)またはグループ(iii)に属する鉱物油、またはグループ(iv)に属するポリα−オレフィンが好ましい。なお、グループ(i)よりもグループ(ii)およびグループ(iii)の方が、ワックス濃度が少ない傾向にある。
【0048】
特に、潤滑油基剤(BB)としては、鉱物油であって、100℃における動粘度が1〜50mm2/sで、かつ粘度指数が80以上でありグループ(ii)またはグループ(iii)に属するもの、またはグループ(iv)に属するポリα−オレフィンが最も好ましい。
【0049】
潤滑油組成物が好ましくは含有する流動点降下剤(C)としては、アルキル化ナフタレン、メタクリル酸アルキルの(共)重合体、アクリル酸アルキルの(共)重合体、フマル酸アルキルと酢酸ビニルの共重合体、α−オレフィン重合体、α−オレフィンとスチレンの共重合体などが挙げられ、中でも、メタクリル酸アルキルの(共)重合体、アクリル酸アルキルの(共)重合体が好適に用いられる。
【0050】
本発明の潤滑油組成物は、上述したようにプロピレン・エチレン共重合体(A)と、潤滑油基剤(BB)とを含有し、好ましくはさらに流動点降下剤(C)を含有している。
潤滑油組成物100重量%中、前記プロピレン・エチレン共重合体(A)は、通常は0.1〜5重量%、好ましくは0.2〜4重量%、さらに好ましくは0.4〜3重量%、特に好ましくは0.6〜2重量%の量で含有される。また、本発明の潤滑油組成物が、流動点降下剤(C)を含有する場合には、潤滑油組成物100重量%中、流動点降下剤(C)は、通常は0.05〜5重量%、好ましくは0.05〜3重量%、さらに好ましくは0.05〜2重量%、最も好ましくは0.05〜1重量%の量で含有される。
【0051】
なお、本発明の潤滑油組成物の、前記プロピレン・エチレン共重合体(A)および含有されることが好ましい流動点降下剤(C)以外の成分は、前記潤滑油基剤(BB)および後述の配合剤である。なお、配合剤とは、潤滑油組成物に含有されるプロピレン・エチレン共重合体(A)、潤滑油基剤(BB)および流動点降下剤(C)以外の成分を意味する。
【0052】
本発明の潤滑油組成物が、配合剤を含有する場合の含有量は特に限定されないが、前記潤滑油基剤(BB)と配合剤との合計を100重量%とした場合に、配合剤の含有量としては、通常は0重量%を超え、好ましくは1重量%以上であり、より好ましくは3重量%以上であり、さらに好ましくは5重量%以上である。また、配合剤の含有量としては、通常は40重量%以下であり、好ましくは30重量%以下であり、より好ましくは20重量%以下であり、さらに好ましくは15重量%以下である。
【0053】
本発明の潤滑油組成物において、前記プロピレン・エチレン共重合体(A)の含有量が前記範囲内であると、潤滑油組成物は増粘性に優れるため好ましい。
本発明の潤滑油組成物は、粘度の温度依存性が小さく、かつ前記プロピレン・エチレン共重合体(A)と流動点降下剤(C)との相互作用による流動点の上昇が少なく、あらゆるせん断速度領域で低温特性に優れており、低温での取扱い性も優れており、良好な潤滑性能を示す。
【0054】
また、本発明の潤滑油組成物は、前記プロピレン・エチレン共重合体(A)、潤滑油基剤(BB)および流動点降下剤(C)以外に、配合剤を含有してもよい。配合剤としては、メタクリル酸アルキルの(共)重合体、水添SBR(スチレンブタジエンラバー)、SEBS(スチレンエチレンブチレンスチレンブロック共重合体)などの粘度指数向上効果を有する添加剤、清浄剤、錆止め添加剤、分散剤、極圧剤、消泡剤、酸化防止剤、金属不活性化剤などが挙げられる。
【0055】
本発明の潤滑油組成物は、従来公知の方法で、前記プロピレン・エチレン共重合体(A)、潤滑油基剤(BB)および流動点降下剤(C)、さらに必要に応じてその他の配合剤を混合または溶解することにより調製することができる。
【0056】
本発明の潤滑油組成物は、低温貯蔵性、低温粘度に優れ、高温時の省燃費性に優れるため、自動車エンジン用潤滑油、ヘビーデューティーディーゼルエンジン用潤滑油、マリンディーゼルエンジン用潤滑油、2サイクルエンジン用潤滑油、自動変速基油、手動変速機油、ギヤ油、グリース等として好適に用いることができる。
【実施例】
【0057】
次に本発明について実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0058】
〔アイソタクチック指数〕
本発明のプロピレン・エチレン共重合体(A)のアイソタクチック指数は赤外(IR)分光分析法で測定した。共重合体を熱プレスしてフィルム状に成形し、ついで赤外分光計を用いて赤外(IR)スペクトルを得た。得られた赤外スペクトルの997cm−1の吸光度を973cm−1の吸光度で割った商に100を掛けた値をアイソタクチック指数として算出した。
【0059】
〔メソトリアッド分率(mm)〕
実施例または比較例で製造または使用した共重合体のメソトリアッド分率(mm)については、13C−NMRスペクトルの解析により求めた。
【0060】
(測定装置)
LA500型核磁気共鳴装置(日本電子(株)製)
(測定条件)
オルトジクロルベンゼンとベンゼン−d6との混合溶媒(オルトジクロルベンゼン/ベンゼン−d6=3/1〜4/1(体積比))中、120℃、パルス幅45°パルス、パルス繰返し時間5.5秒にて、実施例または比較例で製造または使用した共重合体のメソトリアッド分率(mm)を測定した。
【0061】
〔極限粘度〕
135℃、デカリン中で測定した。
〔密度〕
実施例または比較例で製造または使用した共重合体の密度は、ASTM D1505記載の方法に従い、測定した。
【0062】
〔DSC測定〕
実施例または比較例で製造した共重合体を、190℃に設定した油圧式熱プレス成形機を用いて5分間余熱した後、2分加圧し、加圧後1分以内に20℃に設定した冷却槽に配置し、そこで4分間冷却して、厚さ2mmのプレスシートを作成した。
【0063】
このプレスシートを20℃で4週間保管したものを試験体とした。DSC測定は、インジウムにて較正したSEIKO社製示差走査型熱量計(RDC220)を用いて行った。
約10mgになるようにアルミニウム製DSCパン上に前記試験体を秤量し、蓋をパンにクリンプして密閉雰囲気下とし、サンプルパンを得た。
【0064】
サンプルパンをDSCセルに配置し、リファレンスとして空のアルミニウムパンを配置する。DSCセルを窒素雰囲気下にて20℃(室温)から−20℃まで冷却し、−20℃で5分間保持した後、200℃まで10℃/分で昇温した。(第1昇温過程)
次いで200℃で5分間保持した後、10℃/分で降温し、DSCセルを−100℃まで冷却した。−100℃で5分間保持した後、DSCセルを200℃まで10℃/分で昇温した。(第2昇温過程)
【0065】
第1昇温過程で得られるエンタルピー曲線の融解ピークトップ温度を融点(Tm1)とした。融解ピークが2個以上存在する場合には、最大のピークを有するものがTm1として定義される。
【0066】
第2昇温過程で得られるエンタルピー曲線の融解ピーク面積を融解熱量(ΔH2)とした。
2つ以上の融解ピークが存在するときは、2つ以上のピークが完全に分離することなく(すなわちピークトップどうしをつなぐエンタルピー曲線がベースラインまで戻ることなく)存在した場合も、2つ以上のピークがそれぞれ完全に分離している場合(すなわちピークトップどうしをつなぐエンタルピー曲線がベースラインまで戻っている場合)も、融解熱量(ΔH2)としては、上記2つ以上のピークのピーク面積を合計したものとした。
また、融解熱ピーク以外に、結晶化ピークが観測された場合には、結晶化ピーク面積は合算しなかった。
【0067】
〔重量平均分子量および分子量分布〕
実施例または比較例で製造または使用した共重合体の重量平均分子量および分子量分布は、以下の方法により測定した。
【0068】
(試料の前処理)
実施例または比較例で製造または使用した共重合体30mgを0−ジクロロベンゼン20mlに145℃で溶解した後、その溶液を孔径が1.0μmの焼結フィルターで濾過したものを分析試料とした。
【0069】
(GPC分析)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて平均分子量および分子量分布曲線を求めた。計算はポリスチレン換算で行った。
【0070】
(測定装置)
ゲル浸透クロマトグラフalliance GPC 2000型(Waters社製)
(解析装置)
データ処理ソフトEmpower2(Waters社製)
(測定条件)
カラム TSKgel GMH6−HTを2本、及びTSKgel GMH6−HTLを2本(いずれも直径7.5mm×長さ30cm、 東ソー社製)
カラム温度 140℃
移動相 o−ジクロロベンゼン(0.025%BHT含有)
検出器 示差屈折率計
流速 1mL/分
試料濃度 0.15%(w/v)
注入量 500μL
サンプリング時間間隔 1秒
カラム較正 単分散ポリスチレン(東ソー社製)
分子量換算 PS換算/標準換算法
【0071】
〔動粘度〕
実施例または比較例で調製した潤滑油組成物の100℃における動粘度を、ASTM D446に基づき測定を行った。
【0072】
〔Cold Cranking Simulator(CCS)粘度〕
実施例または比較例で調製した潤滑油組成物のCCS粘度(−30℃)を、ASTM D 2602に基づいて測定を行った。CCS粘度は、クランク軸における低温での摺動性(始動性)の評価に用いられ、値が小さい程、潤滑油の低温粘度(低温特性)が優れることを示す。
【0073】
具体的にはほぼ同一の重量平均分子量を有する実施例または比較例で製造または使用した共重合体(潤滑油粘度調整剤)を用いた、同一の動粘度を有する潤滑油組成物では、CCS粘度が低いほど低温省燃費性に優れる。
【0074】
〔Shear Stability Index(SSI)〕
実施例または比較例で調製した潤滑油組成物のSSIを、ASTM D 3945に基づいて測定を行った。SSIは潤滑油中の共重合体成分が摺動下で剪断力を受け分子鎖が切断することによる動粘度の損失の尺度であり、SSIが大きい値であるほど、動粘度の損失が大きいことを示す。
【0075】
〔プローブタック試験〕
実施例または比較例で製造した共重合体を、190℃に設定した油圧式熱プレス成形機を用いて5分間余熱した後、2分加圧し、加圧後1分以内に20℃に設定した冷却槽で4分間冷却して、厚さ2mmのプレスシートを作成した。
【0076】
このプレスシートを20℃で4週間保管したものを試験体とした。さらに、試験前処理として、100℃で10分間加熱した後、氷浴させた離型剤溶液にて4分間冷却した。試験体に付着した水分はエアガンで除去した。
プローブタック試験は、レスカ社製タッキング試験機(TAC−II)を用いて行った。直径5mmφのステンレス製円柱状プローブを試験体に接触させ、剥離するときに生じるタック(gf)を評価した。プローブの試験体への接触速度を120mm/分、加圧力を50gf、加圧時間を1秒、剥離速度120mm/分とした。
【0077】
〔実施例1〕
実施例1は、エクソンモービルケミカルカンパニーから入手可能な、ビスタマックス(VISTAMAXX(商標))6100である。性状を表2に示す。
【0078】
〔実施例2〕
実施例2は、エクソンモービルケミカルカンパニーから入手可能な、ビスタマックス(VISTAMAXX(商標))6200である。性状を表2に示す。
【0079】
〔実施例3〕
充分に窒素置換された容積310リットルの攪拌翼付加圧連続重合反応器の一つの供給口に、脱水精製したn−ヘキサンを32.7リットル/hrの流量で、また、メチルアルミノキサン(東ソー・ファインケム社製TMAO−341)を2.5mmol/hr、ジフェニルメチレン(3−tert−ブチル−5−エチルシクロペンタジエニル)(2,7−ジ−tert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリドを0.010mmol/hr、トリイソブチルアルミニウム(東ソー・ファインケム社製TiBA)を1.4mmol/hrの流量で連続的に供給した。同時に連続重合反応器の別の供給口に、エチレンを2.5kg/hrの流量で、プロピレンを15.2kg/hrの流量で、水素を2.3ノルマルリットル/hrの流量で連続的に供給し、重合温度60℃、全圧1.3MPa−G、攪拌回転数190rpmの条件下で連続溶液重合を行った。重合反応器外周に設けられたジャケットに冷媒を流通させ、また、別に設置されたガスブロワを用いて気相部を強制的に循環させ、これを熱交換器で冷却することにより、重合反応熱の除去を行った。
【0080】
上記条件で重合を行った結果生成したプロピレン・エチレン共重合体を含むヘキサン溶液は、重合反応器内平均溶液量100リットルを維持するように、重合反応器最下部に設けられた排出口を介してプロピレン・エチレン共重合体として8.0kg/hrの速度で連続的に排出させた。得られた重合溶液を大量のメタノールに投入して、プロピレン・エチレン共重合体を析出させた。該プロピレン・エチレン共重合体を、130℃で24時間減圧乾燥を行った。得られたポリマーの性状を表2に示す。
【0081】
〔比較例1〕
充分に窒素置換した内容量1500mLの重合器に、500mLの乾燥ヘプタン、トリイソブチルアルミニウム0.9mmolと1−ブテン20gを常温で仕込んだ後、重合器内温を54℃に昇温した。プロピレンで0.6MPaGに加圧し、次いでエチレンで0.65MPaGに加圧した後、ヘプタンに溶解したジメチルシリレン(テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライド(0.00131mmol)、およびトルエンに溶解したN,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(0.0065mmol)を重合器内に添加した。内圧をエチレン圧で0.65MPaGに保持しながら6.5分間重合し、5mlのメタノールを添加して重合を停止した。重合熱により内温は76℃まで上昇した。降温、脱圧後、重合溶液を2Lのアセトン/メタノールに加えてポリマーを析出させ、ろ過で回収したポリマーを減圧下、80℃で10時間乾燥した。得られたポリマーの性状を表2に示す。
【0082】
〔比較例2〕
プロピレンおよびエチレンでの加圧をそれぞれ0.5MPaG、0.7MPaGにし、重合時間を4分間にした以外は比較例1と同様に重合を行った。重合熱により内温は61℃まで上昇した。得られたポリマーの性状を表2に示す。
【0083】
〔比較例3〕
充分に窒素置換した内容量1500mLの重合器に、500mLの乾燥ヘプタン、トリイソブチルアルミニウム0.5mmolと1−ブテン20gを常温で仕込んだ後、重合器内温を54℃に昇温した。水素を500mL導入した後、プロピレンで0.6MPaGに加圧し、次いでエチレンで0.7MPaGに加圧した。ヘプタンに溶解したジメチルシリレン(テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライド(0.00065mmol)、およびトルエンに溶解したN,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(0.0035mmol)を重合器内に添加した。内温54℃、内圧をエチレン圧で0.7MPaGに保持しながら25分間重合し、5mlのメタノールを添加して重合を停止した。降温、脱圧後、重合溶液を2Lのアセトン/メタノールに加えてポリマーを析出させ、ろ過で回収したポリマーを減圧下、80℃で10時間乾燥した。得られたポリマーの性状を表2に示す。
【0084】
なお、表2中、比較例におけるメソトリアッド分率(mm)の表記”−”は、比較例の共重合体はアタクチックポリマーであるため、精度を確保してメソトリアッド分率(mm)を算出することはできないが、80%以下であったことを示す。
【0085】
表2中、比較例におけるアイソタクチック指数の表記”−”は、比較例の共重合体はアタクチックポリマーであるため、アイソタクチック指数を算出できるほどの立体規則性を有していないことを示す。
表2中、融点(Tm1)の表記”n/d”は融点が観測されなかったことを示す。
【0086】
【表2】
【0087】
〔実施例4〕
実施例1のポリマーを用いて、プローブタック試験および表3に示した配合にて潤滑油の性能評価を行った。結果を表4に示す。
【0088】
〔実施例5〕
実施例2のポリマーを用いて、プローブタック試験および表3に示した配合にて潤滑油の性能評価を行った。結果を表4に示す。
【0089】
〔実施例6〕
実施例3のポリマーを用いて、プローブタック試験および表3に示した配合にて潤滑油の性能評価を行った。結果を表4に示す。
【0090】
〔比較例4〕
比較例1のポリマーを用いて、プローブタック試験および表3に示した配合にて潤滑油の性能評価を行った。結果を表4に示す。
【0091】
〔比較例5〕
比較例2のポリマーを用いて、プローブタック試験および表3に示した配合にて潤滑油の性能評価を行った。結果を表4に示す。
【0092】
〔比較例6〕
比較例3のポリマーを用いて、プローブタック試験および表3に示した配合にて潤滑油の性能評価を行った。結果を表4に示す。
【0093】
【表3】
【0094】
【表4】
上記表4から分かるとおり、同等の剪断安定性(SSI)を有する潤滑油を得ようとした場合、実施例4〜6は比較例4〜6に比べてポリマー添加量が10%以上少なくて済み、増粘性に優れることが分かる。また、同等の剪断安定性(SSI)を有する潤滑油を得ようとした場合、実施例4〜6は比較例4〜6に比べて粘着力が小さく、粘度調整剤として取り扱う際のハンドリング性に優れることが分かる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレン由来の構成単位を70〜83モル%含み、エチレン由来の構成単位を17〜30モル%含み、以下要件を満たすプロピレン・エチレン共重合体(A)からなる潤滑油粘度調製剤。
(i)アイソタクチック指数が5〜40%
(ii)メソトリアッド分率(mm)が85〜95%
(iii)極限粘度[η]が0.5〜2.5dl/g
【請求項2】
プロピレン・エチレン共重合体(A)のアイソタクチック指数とメソトリアッド分率(mm)がさらに以下式を満たすものである請求項1に記載の潤滑油粘度調製剤。
(i−2)アイソタクチック指数≧−2.24×E+64
(ii−2)メソトリアッド分率(mm)≧−0.4492×E+95
(ただし、Eはプロピレン・エチレン共重合体(A)のエチレン由来の構成単位のモル%である)
【請求項3】
請求項1〜2のいずれか1項に記載のプロピレン・エチレン共重合体(A)を1〜50重量%、および油(B)50〜99重量%(ただし、前記(A)および(B)の重量%は、添加剤組成物中の(A)および(B)の合計量に基づいて算出される)を含有する潤滑油用添加剤組成物。
【請求項4】
請求項1〜2のいずれか1項に記載のプロピレン・エチレン共重合体(A)と、潤滑油基剤(BB)とを含む潤滑油組成物であり、潤滑油組成物100重量%中、前記プロピレン・エチレン共重合体(A)を0.1〜5重量%含有する潤滑油組成物。
【請求項5】
潤滑油組成物100重量%中、流動点降下剤(C)を、0.05〜5重量%含有する請求項4に記載の潤滑油組成物。
【請求項1】
プロピレン由来の構成単位を70〜83モル%含み、エチレン由来の構成単位を17〜30モル%含み、以下要件を満たすプロピレン・エチレン共重合体(A)からなる潤滑油粘度調製剤。
(i)アイソタクチック指数が5〜40%
(ii)メソトリアッド分率(mm)が85〜95%
(iii)極限粘度[η]が0.5〜2.5dl/g
【請求項2】
プロピレン・エチレン共重合体(A)のアイソタクチック指数とメソトリアッド分率(mm)がさらに以下式を満たすものである請求項1に記載の潤滑油粘度調製剤。
(i−2)アイソタクチック指数≧−2.24×E+64
(ii−2)メソトリアッド分率(mm)≧−0.4492×E+95
(ただし、Eはプロピレン・エチレン共重合体(A)のエチレン由来の構成単位のモル%である)
【請求項3】
請求項1〜2のいずれか1項に記載のプロピレン・エチレン共重合体(A)を1〜50重量%、および油(B)50〜99重量%(ただし、前記(A)および(B)の重量%は、添加剤組成物中の(A)および(B)の合計量に基づいて算出される)を含有する潤滑油用添加剤組成物。
【請求項4】
請求項1〜2のいずれか1項に記載のプロピレン・エチレン共重合体(A)と、潤滑油基剤(BB)とを含む潤滑油組成物であり、潤滑油組成物100重量%中、前記プロピレン・エチレン共重合体(A)を0.1〜5重量%含有する潤滑油組成物。
【請求項5】
潤滑油組成物100重量%中、流動点降下剤(C)を、0.05〜5重量%含有する請求項4に記載の潤滑油組成物。
【公開番号】特開2012−172013(P2012−172013A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−33471(P2011−33471)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【出願人】(591131338)ザ ルブリゾル コーポレイション (203)
【氏名又は名称原語表記】THE LUBRIZOL CORPORATION
【住所又は居所原語表記】29400 Lakeland Boulevard, Wickliffe, Ohio 44092, United States of America
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【出願人】(591131338)ザ ルブリゾル コーポレイション (203)
【氏名又は名称原語表記】THE LUBRIZOL CORPORATION
【住所又は居所原語表記】29400 Lakeland Boulevard, Wickliffe, Ohio 44092, United States of America
【Fターム(参考)】
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