説明

潤滑油組成物

【課題】優れた省燃費性を有すると共に、騒音・振動の発生を抑制し得る潤滑油組成物を提供すること。
【解決手段】100℃における動粘度が3.5〜10mm2/s、かつ粘度指数が100以上である潤滑油基油を用い、(a)数平均分子量が2,500〜25,000のエチレン−α−オレフィン共重合体および/または(b)数平均分子量が10,000〜30,000のポリメタクリレートを配合してなる潤滑油組成物であって、組成物の100℃における動粘度が5.6〜15.0mm2/sである潤滑油組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑油組成物に関し、さらに詳しくは、内燃機関など潤滑油を充填した機械装置が作動した場合、騒音の発生を抑制し、同時に省燃費性を付与し得る潤滑油組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、世界規模で自動車や産業機械類の製造と使用が急速に増加しており、それに伴って、消費される石油などのエネルギーが増大している。そのため、エネルギーの使用による大気汚染が極度に進行し、重大な問題となっている。
このような大気汚染を防止するには、大気汚染の主要な源である自動車などから排出される排出ガスを低減することが必要であり、それを潤滑油の面から実現する方法としては、潤滑油によって省燃費を実現することが要求される。
ところで、潤滑油、例えば、内燃機関用潤滑油(エンジン油)における省燃費方法としては、エンジン油による摩擦損失(攪拌抵抗)を低減するために、その粘度を低くすること(低粘度化)が有効であることは知られている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、低粘度基油を用いるなど、単に潤滑油を低粘度化するのみでは、エンジンの騒音や振動が大きくなる、という問題を招来する。この騒音や振動は、騒音振動公害として、生活環境に甚大な悪影響を与える原因となっている。
従って、省燃費用潤滑油については、潤滑油を低粘度化して省燃費性を有すると共に、騒音・振動の発生を抑制し得る潤滑油組成物の開発が望まれている。
【0003】
【特許文献1】特開2004−137317号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような状況下で、優れた省燃費性を有すると共に、騒音・振動の発生を抑制し得る潤滑油組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、前記の好ましい性質を有する潤滑油組成物を開発すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の基油を用いると共に、いずれも特定の分子量を有するエチレン−α−オレフィン共重合体及び/又はポリメタアクリレートを配合し、特定の動粘度に調整した組成物が、その目的に適合し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。すなわち、本発明は、
【0006】
〔1〕100℃における動粘度が3.5〜10mm2/s、かつ粘度指数が100以上である潤滑油基油を用い、(a)数平均分子量が2,500〜25,000のエチレン−α−オレフィン共重合体および/または(b)数平均分子量が10,000〜30,000のポリメタクリレートを配合してなる潤滑油組成物であって、組成物の100℃における動粘度が5.6〜15.0mm2/sである潤滑油組成物、
〔2〕前記潤滑油組成物の100℃における動粘度が5.6〜12.5mm2/sである、前記〔1〕に記載の潤滑油組成物、
〔3〕前記潤滑油基油の100℃動粘度が3.5〜6mm2/sである、前記〔1〕又は〔2〕に記載の潤滑油組成物、
〔4〕さらに、酸化防止剤、極圧剤、耐摩耗剤、油性剤、清浄分散剤、粘度指数向上剤、及び流動点降下剤の中から選ばれる少なくとも一種の添加剤を含む前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の潤滑油組成物、
〔5〕内燃機関に用いる前記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の潤滑油組成物、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、優れた省燃費性を有すると共に、騒音・振動の発生を抑制し得る潤滑油組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の潤滑油組成物に用いる基油は、100℃における動粘度が3.5〜10mm2/sであると共に、粘度指数が100以上である基油を用いることを要する。
100℃における動粘度が3.5mm2/s未満では充分に騒音や振動の発生を防止できない場合があり、10mm2/sを超えると省燃費性能を阻害する恐れがある。このようなことから、100℃における動粘度は、3.5〜6mm2/sであることがより好ましい。
また、本願発明に用いる基油は、粘度指数が100以上であることを要する。粘度指数が100以上であれば、組成物の低温粘度を低くすることにより省燃費を図り、同時にさらなる高温における粘度の低下を抑制できるため、騒音や振動を抑制する効果を高めることができる。
このようなことから、基油の粘度指数は110以上が好ましく、120以上がより好ましい。
本願発明に用いる基油は、さらに、硫黄分が1000質量ppm以下であることが好ましく、500質量ppm以下であることがより好ましい。硫黄分が1000質量ppm以内であれば、組成物の安定性を高めることができる。
【0009】
本発明の潤滑油組成物における基油は、上記の条件を満たす限り、特に制限はなく、通常の潤滑油に使用される鉱油及び/又は合成油が使用できる。
鉱油基油としては、例えば原油を常圧蒸留留分、あるいは常圧蒸留して得られる常圧残油を減圧蒸留して得られた潤滑油留分を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、水素化脱ろう、溶剤脱ろう、水素化精製等の処理を1つ以上行って精製したもの、あるいは鉱油系ワックスやフィッシャートロプシュプロセス等により製造されるワックス(ガストゥリキッドワックス)を異性化することによって製造される基油等が挙げられる。
【0010】
一方、合成油基油としては、例えばポリブテン又はその水素化物、1−デセンオリゴマー等のポリα−オレフィン又はその水素化物、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート等のジエステル、トリメチロールプロパンカプリレート、ペンタエリスリトール−2−エチルヘキサノエート等のポリオールエステル、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン等の芳香族系合成油、ポリアルキレングリコール又はその誘導体等が例示できる。
【0011】
本発明では、基油として、鉱油基油、合成油基油又はこれらの中から選ばれる2種以上の任意混合物等が使用できる。例えば、1種以上の鉱油基油、1種以上の合成油基油、1種以上の鉱油基油と1種以上の合成油基油との混合油等を挙げることができる。特に、水素化分解処理を含む精製を行って得られた鉱油基油や該基油と1−デセンオリゴマー等のポリα−オレフィンの水素化物との混合物を用いることが好ましい。
本発明では、基油として、鉱油基油、合成油基油又はこれらの中から選ばれる2種以上の任意の混合物が使用できる。
【0012】
本発明においては、(a)成分として、数平均分子量が2,500〜25,000のエチレン−α−オレフィン共重合体を用いる。
ここで、数平均分子量が2,500未満のものでは、騒音や振動を抑制する効果が不充分ではなく、また、25,000を超えるものでは、剪断安定性が低下し、安定して効果を維持することが困難である。騒音や振動の抑制及び剪断安定性などを考慮すると、このエチレン−α−オレフィン共重合体の好ましい数平均分子量は2,500〜5,000の範囲である。
また、このエチレン−α−オレフィン共重合体に用いられるα−オレフィンとしては、炭素数3〜20のα−オレフィンが好ましく、例えばプロピレン,1−ブテン,1−デセンなどを好ましく挙げることができる。またエチレンとα−オレフィンの比は1:9〜9:1(質量比)の範囲が好ましい。
【0013】
この(a)成分のエチレン−α−オレフィン共重合体は、一種を用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、その配合量は、通常組成物全量に基づき、0.1〜20質量%の範囲で選ばれる。この量が0.1質量%以上であれば、騒音や振動を抑制する効果が得られ、20質量%以下であれば、低温時の粘度が高くなる問題もなく、また剪断安定性も良好であり、安定してその効果を維持することができる。
【0014】
本発明においては、(b)成分として、数平均分子量が10,000〜30,000のポリメタクリレートを用いる。ポリメタクリレートは非分散型、分散型のいずれであってもよい。
ここで、数平均分子量が10,000未満のものでは、騒音や振動を抑制する効果が不充分ではなく、また、30,000を超えるものでは、剪断安定性が低下し、安定して効果を維持することが困難である。騒音や振動の抑制及び剪断安定性などを考慮すると、このポリメタクリレートの好ましい数平均分子量は、15,000〜25,000の範囲である。
【0015】
この(b)成分のポリメタクリレートは一種を用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、その配合量は、本発明の組成物の100℃における動粘度の条件を満たすように選択すればよいが、通常、組成物全量に基づき、0.1〜10質量%の範囲で選ばれる。この量が0.1質量%以上であれば、省燃費効果、並びに騒音や振動を抑制する効果が得られ、10質量%以下であれば、低温時の粘度が過度に高くなる問題もなく、剪断安定性も良好であり、安定してその効果を維持することができる。
【0016】
本発明は、上記のとおり、基油に(a)成分及び/又は(b)成分を配合することによって得られる組成物であるが、さらに、使用目的に応じて、潤滑油に通常配合する各種添加剤を使用することができる。
例えば、酸化防止剤、極圧剤、耐摩耗剤、油性剤、清浄分散剤、(a),(b)以外の他の粘度指数向上剤、及び流動点降下剤の中から選ばれる少なくとも一種の添加剤を配合することが好ましい。
【0017】
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤及び/又はアミン系酸化防止剤を配合する。
前記フェノール系酸化防止剤としては、従来潤滑油の酸化防止剤として使用されている公知のフェノール系酸化防止剤の中から、任意のものを適宜選択して用いることができる。このフェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール;2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール;2,4,6−トリ−tert−ブチルフェノール;2,6−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシメチルフェノール;2,6−ジ−tert−ブチルフェノール;2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール;2,6−ジ−tert−ブチル−4−(N,N−ジメチルアミノメチル)フェノール;2,6−ジ−tert−アミル−4−メチルフェノール;4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−イソプロピリデンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−ノニルフェノール)、2,2’−イソブチリデンビス(4,6−ジメチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、4,4’−チオビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルベンジル)スルフィド、ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィド、2,2’−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクチル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、オクチル−3−(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等を好ましい例として挙げることができる。
【0018】
一方、アミン系酸化防止剤としては、従来潤滑油の酸化防止剤として使用されている公知のアミン系酸化防止剤の中から、任意のものを適宜選択して用いることができる。このアミン系酸化防止剤としては、例えばジフェニルアミン系のもの、具体的にはジフェニルアミンやモノオクチルジフェニルアミン;モノノニルジフェニルアミン;4,4’−ジブチルジフェニルアミン;4,4’−ジヘキシルジフェニルアミン;4,4’−ジオクチルジフェニルアミン;4,4’−ジノニルジフェニルアミン;テトラブチルジフェニルアミン;テトラヘキシルジフェニルアミン;テトラオクチルジフェニルアミン:テトラノニルジフェニルアミンなどの炭素数3〜20のアルキル基を有するアルキル化ジフェニルアミンなど、及びナフチルアミン系のもの、具体的にはα−ナフチルアミン;フェニル−α−ナフチルアミン、さらにはブチルフェニル−α−ナフチルアミン;ヘキシルフェニル−α−ナフチルアミン;オクチルフェニル−α−ナフチルアミン;ノニルフェニル−α−ナフチルアミンなどの炭素数3〜20のアルキル置換フェニル−α−ナフチルアミンなどが挙げられる。これらの中で、ナフチルアミン系よりジフェニルアミン系の方が、効果の点から好ましく、特に炭素数3〜20のアルキル基を有するアルキル化ジフェニルアミン、とりわけ4,4’−ジ(C3〜C20アルキル)ジフェニルアミンが好適である。
【0019】
本発明においては、前記フェノール系酸化防止剤を1種用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、前記アミン系酸化防止剤を1種用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。さらには、フェノール系酸化防止剤1種以上とアミン系酸化防止剤1種以上とを組み合わせて用いてもよい。
前記酸化防止剤の配合量は、効果及び経済性のバランスなどの点から、潤滑油組成物全量に基づき、好ましくは0.05〜3.0質量%、より好ましくは0.2〜2.0質量%の範囲で選定される。
【0020】
極圧剤、耐摩耗剤としては、ジチオリン酸亜鉛、ジチオカルバミン酸亜鉛、ジスルフィド類、硫化オレフィン類、硫化油脂類、硫化エステル類、チオカーボネート類、チオカーバメート類等の硫黄含有摩耗防止剤;亜リン酸エステル類、リン酸エステル類、ホスホン酸エステル類及びこれらのアミン塩または金属塩等のリン含有摩耗防止剤;チオ亜リン酸エステル類、チオリン酸エステル類、チオホスホン酸エステル類及びこれらのアミン塩または金属塩等の硫黄及びリン含有摩耗防止剤が挙げられる。
油性剤(摩擦調整剤)としては、潤滑油用の摩擦調整剤として通常用いられる任意の化合物が使用可能であり、例えば、炭素数6〜30のアルキル基またはアルケニル基、特に炭素数6〜30の直鎖アルキル基または直鎖アルケニル基を分子中に少なくとも1個有する、脂肪族アミン、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、脂肪酸、脂肪族アルコール、脂肪族エーテル等が挙げられる。極圧剤、耐摩耗剤、油性剤は、それぞれ通常0.01〜3質量%、好ましくは0.1〜1.5質量%の範囲である。
【0021】
清浄分散剤としては、金属系の清浄剤として、Ca、Mg、Ba等アルカリ土類金属を含有する中性又は過塩基性のスルフォネート、フェネート、サリチレート、カルボキシレート、ホスホネート等が挙げられる。これらの中で、金属系の清浄剤としては、Caスルフォネート、Caサリチレート、Caフェネートなどが好ましく、特に、過塩基性(過塩素酸法による塩基価が150〜500mgKOH/g)のCaスルフォネート、Caサリチレート、Caフェネートが好ましい。
また、無灰系の分散剤として、コハク酸イミド(ホウ素化物を含む)、コハク酸エステル等が挙げられる。
これら清浄分散剤の配合量は、通常0.01〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%の範囲で配合する。
【0022】
(a),(b)以外の他の粘度指数向上剤としては、例えば、前記以外のポリメタクリレート、前記以外のオレフィン系共重合体、分散型オレフィン系共重合体、スチレン系共重合体(例えば、スチレン−ジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体など)などが挙げられる。これら粘度指数向上剤の配合量は、通常0.5〜15質量%程度であり、好ましくは1〜10質量%である。
【0023】
本願発明においては、その他、流動点降下剤、消泡剤、界面活性剤等を配合することができる。
【0024】
本発明の潤滑油組成物の100℃における動粘度が5.6〜15.0mm2/sであることを要する。組成物の100℃における動粘度が5.6mm2/s未満では充分に騒音や振動の発生を防止できない場合があり、15.0mm2/sを超えると省燃費性能を阻害する恐れがある。このようなことから、100℃における動粘度は、5.6〜12.5mm2/sであることがより好ましい。
【0025】
本発明の潤滑油組成物は、優れた省燃費性を有すると共に、騒音・振動の発生を抑制し得る効果を有する。
例えば、この潤滑油を内燃機関に用いれば、省燃費性内燃機関油(エンジン油)として有用であり、かつ、エンジンの作動時、特に加速運転時における騒音・振動の発生を抑制することができる。したがって、特に、4サイクルエンジンを搭載した4輪自動車や2輪自動車などに使用する内燃機関用の潤滑油として利用価値が高い。
【実施例】
【0026】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、騒音、省燃費性は、以下に示す方法により実施した。
【0027】
(1)騒音の評価
下記のエンジンモータリング装置と騒音測定方法により、騒音を測定した。
〔エンジンモータリング装置と運転条件〕
使用エンジン :水冷600cc、4気筒エンジン
動弁形式 :DOHC(直打)
エンジン回転数 :3000rpm
オイルパン油温 :100℃
駆動用モーター :7.5KW
〔騒音測定方法〕
騒音計(小野測器社製 「LA5560」)を用い、周波数分析装置(小野測器製Repolyzer XN−8100)にて、6300Hzの周波数のパワースペクトル(dB)を測定した。
(2)省燃費性の評価
(1)の騒音の「エンジンモータリング装置」を用い、モーターのエンジン駆動トルク(Nm)を計測することにより、省燃費性を評価した。
〔エンジンモータリング装置と運転条件〕
使用エンジン :水冷600cc、4気筒エンジン
動弁形式 :DOHC(直打)
エンジン回転数 :5000rpm
オイルパン油温 :100℃
駆動用モーター :7.5KW
【0028】
実施例1〜5、及び比較例1〜3
第1表に示す各基油及び添加剤を用いて潤滑油を調製し、上記の方法で騒音及び省燃費性を評価した。その結果を第1表に示す。
【0029】
【表1】

【0030】
[注]
1)パラフィン系鉱油、100℃動粘度4.469mm2/s、粘度指数127
2)パラフィン系鉱油、100℃動粘度5.285mm2/s、粘度指数104
3)パラフィン系鉱油、100℃動粘度10.89mm2/s、粘度指数107
4)数平均分子量300,000
5)数平均分子量21,000
6)第2級アルキル型ジアルキルジチオリン酸亜鉛、P含有量8.6質量%
7)Caスルフォネート:塩基価(過塩素酸法)300mgKOH/g、Ca含有量12.5質量%
8)窒素含有量1.8質量%、硼素含有量2.0質量%、
9)窒素含有量2.3質量%、硼素含有量1.9質量%
10)窒素含有量1.0質量%、硼素含有量0質量%
11)ジアルキルジフェニルアミン
12)数平均分子量2,600、100℃動粘度600mm2/s、粘度指数240
13)数平均分子量3,700、100℃動粘度2,000mm2/s、粘度指数300
14)消泡剤
【0031】
第1表より、実施例1〜4は,数平均分子量が2,600若しくは3700のエチレン−α−オレフィン共重合体A若しくはBを用い、実施例5は、数平均分子量が21,000のポリメタクリレートを用い、また、いずれも基油の性状及び組成物の100℃動粘度について要件を満たすものであることが分かる。これら本発明の潤滑油組成物は、騒音低減性とともに,省燃費性能についても優れている。
これに対して,本発明が必要とする数平均分子量のエチレン−α−オレフィン共重合体やポリメタクリレートを有しない比較例1、2は、騒音低減性、省燃費性のいずれかの性能が不十分である。また、数平均分子量が3700のエチレン−α−オレフィン共重合体を用いるが、組成物の100℃動粘度が15.4mm2/sである比較例3は,省燃費性が劣る。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の潤滑油は、内燃機関をはじめ各種機械装置に用いた場合に、優れた省燃費性を示すと共に、騒音・振動の発生を抑制し得る潤滑油組成物である。したがって、大気汚染、及び騒音振動公害を防止する潤滑油として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
100℃における動粘度が3.5〜10mm2/s、かつ粘度指数が100以上である潤滑油基油を用い、(a)数平均分子量が2,500〜25,000のエチレン−α−オレフィン共重合体および/または(b)数平均分子量が10,000〜30,000のポリメタクリレートを配合してなる潤滑油組成物であって、組成物の100℃における動粘度が5.6〜15.0mm2/sである潤滑油組成物。
【請求項2】
前記潤滑油組成物の100℃における動粘度が5.6〜12.5mm2/sである、請求項1記載の潤滑油組成物。
【請求項3】
前記潤滑油基油の100℃動粘度が3.5〜6mm2/sである、請求項1又は2に記載の潤滑油組成物。
【請求項4】
さらに、酸化防止剤、極圧剤、耐摩耗剤、油性剤、清浄分散剤、粘度指数向上剤、及び流動点降下剤の中から選ばれる少なくとも一種の添加剤を配合してなる請求項1〜3のいずれかに記載の潤滑油組成物。
【請求項5】
内燃機関に用いる請求項1〜4のいずれかに記載の潤滑油組成物。

【公開番号】特開2009−221382(P2009−221382A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−68415(P2008−68415)
【出願日】平成20年3月17日(2008.3.17)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】