説明

潤滑油組成物

【課題】潤滑油組成物において、中でも精製度の高い基油を用いた、工業用潤滑油全般、特に機械油、タービン油、コンプレッサー油、油圧作動油、歯車油、軸受油において、良好な防錆性を持ち、スラッジが少なく、更に低い摩擦係数を有する省エネ性に優れた潤滑油組成物を得ようとする。
【解決手段】硫黄含量が少ない精製度の高い鉱油や合成油の基油に、添加剤としてコハク酸誘導体と、エポキシ化合物を含有させる。これによって、優れた防錆性を有し、スラッジの少ない優れた工業用潤滑油として好適な潤滑油組成物を得ることができる。また、更に、アミン化合物、アミド化合物、多価アルコールエステルの少なくとも1つを含有させることにより、摩擦係数を低減させた、省エネ性にも富んだ潤滑油組成物を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑油組成物に関し、硫黄分含量の少ない精製された基油を用いた、工業用潤滑油全般に関するもので、特に機械油、油圧作動油、タービン油、コンプレッサー油、歯車油、軸受油として使用される潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
潤滑油組成物、その中でも工業用潤滑油組成物には、良好な防錆性及び摩擦特性が要求され、低い摩擦係数(μ)を有することによって、効率的に、機械装置における摩擦損失を低減し、高い省エネルギー性を達成することが求められている。
例えば、建設用機械等において油圧装置が多用されているが、油圧作動油として使用される潤滑油の摩擦係数が高い場合、油圧シリンダーの往復動パッキングのしゅう動部において、微小スティックスリップ現象が発生し、シリンダーのビビリ、振動、鳴き、異音発生などの現象を引き起こし、油圧装置を精度良く制御できなくなる(特許文献1)。そこで、油圧シリンダーが正確かつスムーズに移動するようにするためには、潤滑油の摩擦係数を低下させることが必要となっている。
【0003】
機械設備に使用する潤滑油には、その性能を維持するために本質的に防錆性が必要とされている。これは、機械装置におけるタンク内の潤滑油温度が使用条件により上下するので、そのためタンク内の潤滑油には凝縮水が混入することがあること、また冷却水配管からの漏水により水分が混入することがあること、等によるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−111277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、潤滑油の示す摩擦係数を低くさせ、高い省エネ性を持つ工業油潤滑油を得ようとするものである。また、この様な潤滑油組成物を油圧装置における油圧作動油として使用した場合に、油圧シリンダーのビビリ、振動、鳴き、異音発生などの現象を引き起こすことなく、油圧装置を精度良く制御できるようにすると共に、錆の発生を抑制し、良好な防錆性を付与しようとするものである。そして、これらによって良好な防錆性を有し、かつ省エネルギー性に富んだ、作動効率の良い潤滑油組成物を得ようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、硫黄分含量が0.3質量%以下の精製された鉱油及び/または合成油の基油に、添加剤としてコハク酸誘導体と、エポキシ化合物を加えることによって、油圧作動油などの工業用潤滑油組成物として好適な潤滑油組成物を得ることができる。
また、添加剤としてさらにアミン化合物、アミド化合物、多価アルコールエステルの少なくとも1つを加えることによって、一層防錆性に富み、かつ省エネルギー性の優れた潤滑油組成物を得ることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、各種工業用の装置で発生するスラッジの発生を少なくし、錆の発生を抑制して、防錆性に富んだ潤滑油組成物を得ることができる。さらに、摩擦損失を効果的に減らすことができ、省エネルギー化を図ることができる。また油圧作動油として使用した場合に、摩擦係数を低減させることにより、油圧シリンダーのビビリ、振動、鳴き、異音発生などの現象を引き起こすことなく、油圧装置を精度良く制御することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本潤滑油組成物の基油には、通常の潤滑油に使用される鉱油、合成油であって、硫黄含有量が約0.3質量%以下の高度精製油を使用することができ、特に、API(American Petroleum Institute,米国石油協会)基油カテゴリーでグループ2、グループ3、グループ4などに属する基油を、単独または混合物として使用することができる。
【0009】
グループ2基油には、例えば、原油を常圧蒸留して得られる潤滑油留分に対して、水素化分解、脱ろうなどの精製手段を適宜組合せて適用することにより得られたパラフィン系鉱油がある。ガルフ社法などの水素化精製法により精製されたグループ2基油は、全イオウ分が10ppm未満、アロマ分が5%以下であり、本発明に好適である。これらの基油の粘度は特に制限されないが、粘度指数は90〜125、好ましくは100〜120がよい。40℃における動粘度は、好ましくは2〜680mm/s、より好ましくは8〜220mm/sである。また全硫黄分は700ppm未満、好ましくは500ppm未満、更に好ましくは10ppm未満がよい。全窒素分も10ppm未満、好ましくは1ppm未満がよい。さらにアニリン点は80〜150℃、好ましくは100〜135℃のものを使用するのがよい。
【0010】
グループ3基油及びグループ2プラス基油には、例えば、原油を常圧蒸留して得られる潤滑油留分に対して、高度水素化精製により製造されるパラフィン系鉱油や、脱ろうプロセスにて生成されるワックスをイソパラフィンに変換・脱ろうするISODEWAXプロセスにより精製された基油や、モービルWAX異性化プロセスにより精製された基油も好適である。これらの基油の粘度は特に制限されないが、粘度指数は95〜145、好ましくは100〜140がよい。40℃における動粘度は、好ましくは2〜680mm/s、より好ましくは8〜220mm/sである。また全硫黄分は、0〜100ppm、好ましくは10ppm未満がよい。全窒素分も10ppm未満、好ましくは1ppm未満がよい。さらにアニリン点は80〜150℃、好ましくは110〜135℃のものを使用するのがよい。
【0011】
合成油としては、例えば、ポリオレフィン、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、エステル、ポリオキシアルキレングリコール、ポリフェニルエーテル、ジアルキルジフェニルエーテル、含フッ素化合物(パーフルオロポリエーテル、フッ素化ポリオレフィン等)、シリコーン油などが挙げられる。
【0012】
上記ポリオレフィンには、各種オレフィンの重合物、又はこれらの水素化物が含まれる。オレフィンとしては任意のものが用いられるが、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、炭素数5以上のα−オレフィンなどが挙げられる。ポリオレフィンの製造にあたっては、上記オレフィンの1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。特にポリαオレフィン(PAO)と呼ばれているポリオレフィンが好適であり、これはグループ4基油である。
これら合成基油の粘度は特に制限されないが、40℃における動粘度は、好ましくは2〜680mm/s、より好ましくは8〜220mm/sである。
【0013】
天然ガスの液体燃料化技術のフィッシャートロプッシュ法により合成されたGTL(ガストゥリキッド)は、原油から精製された鉱油基油と比較して、硫黄分や芳香族分が極めて低く、パラフィン構成比率が極めて高いため、酸化安定性に優れ、蒸発損失も非常に小さいため、本発明の基油として好適である。GTL基油の粘度性状は特に制限されないが、通例粘度指数は130〜180、より好ましくは140〜175である。また40℃における動粘度は、2〜680mm/s、より好ましくは5〜120mm/sである。また通例全硫黄分は10ppm未満、全窒素分1ppm未満である。そのようなGTL基油商品の一例として、SHELL XHVI(登録商標)がある。
【0014】
本発明の潤滑油組成物の基油成分における硫黄分含有量は、0.3質量%以下、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは100ppm以下、更に好ましくは10ppm以下がよい。
本潤滑油組成物における上記基油の含有量は特に制限されないが、潤滑油組成物の全量基準で60質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上である。
【0015】
コハク酸誘導体は、一般式(1)に示すものである。
【化1】

【0016】
上記一般式(1)中、X及びXは各々水素又は3〜6の同一または異なったアルキル基、アルケニル基若しくはヒドロキシアルキル基であり、好ましくは、水素原子、1−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、2−メチルプロピル基、ターシャリーブチル基が良い。Xは炭素数1〜30のアルキル基若しくはアルケニル基、エーテル結合を有するアルキル基、またはヒドロキシアルキル基である。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ドデシレン基、トリデシル基、テトラデシル基、テトラデシレン基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、オクタデシレン基、エイコシル基、ドコシル基、アルコキシプロピル基、3−(C〜C18)ヒドロカーボンオキシ(C〜C)アルキル基、更に好ましくは、テトライソプロピル基、オレイル基、シクロヘキシルオキシプロピル基、3−オクチルオキシプロピル基、3−イソオクチルオキシプロピル基、3−デシルオキシプロピル基、3−イソデシルオキシプロピル基、3−(C12〜C16)アルコキシプロピル基が良い。またこれらの化合物のアミン化物でも良い。
【0017】
上記コハク酸誘導体は、JIS K2501で定める酸価が10〜300mgKOH/gのもの、好ましくは30〜200mgKOH/gのものが良い。コハク酸誘導体は、潤滑油組成物中に約0.001〜0.5質量%程度、好ましくは約0.001〜0.1質量%程度、より好ましくは約0.005〜0.1質量%程度で用いられる。このコハク酸誘導体は1種で又は数種を混ぜて使用することができる。
【0018】
上記したエポキシ化合物としては脂肪族のエポキシ化合物があり、下記の一般式(2)で示されるエポキシ化合物がある。
【化2】

【0019】
上記一般式(2)中、Rは水素(H)または炭素数1〜22の直鎖若しくは分岐のアルキル基またはアルケニル基である。Rは水素(H)または炭素数1〜22の直鎖若しくは分岐のアルキル基またはアルケニル基、又は「−R−COOH」基、「−R−COOR」基、「−OH」基であり、(上記Rは炭素数1〜22の直鎖若しくは分岐のアルキレン基またはアルケニレン基であり、Rは炭素数1〜22の直鎖若しくは分岐のアルキル基またはアルケニル基)である。
【0020】
上記一般式(2)で表されるエポキシ化合物として、アルケニル化合物をエポキシ化したものとして、オレフィンオキサイドと呼ばれるものが挙げられる。例えば、オクテンオキサイド、ノネンオキサイド、デセンオキサイド、ウンデセンオキサイド、ドデセンオキサイド、トリデセンオキサイド、テトラデセンオキサイド、ペンタデセンオキサイド、ヘキサデセンオキサイド、ヘプタデセンオキサイド、オクタデセンオキサイドや、末端がエポキシ化されたアルファデセンオキサイド、アルファドデセンオキサイド、アルファテトラデセンオキサイド、アルファヘキサデセンオキサイド、アルファオクタデセンオキサイドなどがある。
【0021】
他のエポキシ化合物としては、菜種油、大豆油、アマニ油、ヒマシ油、ヤシ油、パーム油、パーム核油、ひまわり油、米ぬか油、サフラワー油、牛脂、豚脂等をエポキシ化して製造されたもので、エポキシ化菜種油、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化ヒマシ油、エポキシ化サフラワー油等といったエポキシ化脂肪酸グリセライドが挙げられる。
【0022】
上記したエポキシ化合物以外のエポキシ化合物としては、エポキシ化エステル化合物があり、菜種油、大豆油、アマニ油、ヒマシ油、ヤシ油、パーム油、パーム核油、ひまわり油、米ぬか油、サフラワー油、牛脂、豚脂等から得られる脂肪酸のエステル化合物をエポキシ化して製造されたもので、エポキシ化菜種油エステル、エポキシ化大豆油エステル、エポキシ化アマニ油エステル、エポキシ化ヒマシ油エステル、エポキシ化サフラワー油エステル等が挙げられる。
【0023】
また、これらエステルのアルコール残基は、アルキル基、エーテル結合を有するアルキル基、若しくはヒドロキシアルキル基であり、より好ましくはブチル基、イソブチル基、2−エチルヘキシル基である。一例として、エポキシ化ステアリン酸メチル、エポキシ化ステアリン酸ブチル、エポキシ化ステアリン酸オクチル、エポキシ化菜種脂肪酸イソブチルエステル、エポキシ化菜種脂肪酸2−エチルヘキシルエステル、エポキシ化亜麻仁油脂肪酸ブチルエステルなどが挙げられる。なお、一般的な菜種脂肪酸の主成分はオレイン酸63%、リノール酸20%、リノレン酸8%の炭素数18の脂肪酸であり、亜麻仁脂肪酸の主成分は、オレイン酸21%、リノール酸13%、リノレン酸57%の炭素数18の脂肪酸である。
【0024】
これらのエポキシ化合物は、ゴムやプラスチックの可塑剤、安定剤として知られているが、エポキシ化合物の潤滑油組成物中の配合量は、0.01〜5質量%、より好ましくは0.01〜2質量%、更に好ましくは0.01〜1質量%がよい。
【0025】
アミン化合物としては脂肪族アミンがあり、下記の一般式(3)で示されるアルキルアミン類などがある。
(化3)
(RNH3−n (3)

(式3中、Rは炭素数6〜30の直鎖の飽和または不飽和のアルキル基であり、nは1または2の整数である。)
【0026】
上記一般式(3)で示されるアルキルアミン類のうち、1級アミン類としては、下記一般式(4)で示されるものがある。
(化4)
N−X (4)

上記一般式(4)中、Xは、炭素数1〜30のアルキル基若しくはアルケニル基である。こうした化合物として、例えば、ラウリルアミン、ココナットアミン、n−トリデシルアミン、ミリスチルアミン、n−ペンタデシルアミン、n−パルミチルアミン、n−ヘプタデシルアミン、n−ステアリルアミン、イソステアリルアミン、n−ノナデシルアミン、n−エイコシルアミン、n−ヘンエイコシルアミン、n−ドコシルアミン、n−トリコシルアミン、n−ペンタコシルアミン、オレイルアミン、牛脂アミン、水素化牛脂アミン、大豆アミン等が挙げられる。Xの炭素数は好ましくは8〜24、更に好ましくは12〜18がよい。またXは直鎖脂肪族でも、分岐脂肪族でも、三級アルキル基でもよい。
【0027】
また、2級アミン類としては、例えば、ジラウリルアミン、ジココナットアミン、ジn−トリデシルアミン、ジn−ミリスチルアミン、ジn−ペンタデシルアミン、ジn−パルミチルアミン、ジn−ヘプタデシルアミン、ジn−ステアリルアミン、ジイソステアリルアミン、ジn−ノナデシルアミン、ジn−エイコシルアミン、ジn−ヘンエイコシルアミン、ジn−ドコシルアミン、ジn−トリコシルアミン、ジn−ペンタコシルアミン、ジオレイルアミン、ジ牛脂アミン、ジ水素化牛脂アミン、ジ大豆アミン等が挙げられる。
【0028】
脂肪族アミンとしては、下記の一般式(5)で示されるジアミン類もある。
(化5)
−HN−X−NH (5)

上記一般式(5)中、Xは炭素数1〜30のアルキル基若しくはアルケニル基である。Xの炭素数は好ましくは8〜24、更に好ましくは12〜18がよい。また、Xは炭素数1〜12のアルキレン基である。Xの炭素数は好ましくは1〜8、更に好ましくは2〜4がよい。
【0029】
こうした一般式(5)のジアミン化合物としては、例えば、N−オクチル−1,2−エチレンジアミン、N−ノニル−1,2−エチレンジアミン、N−デシル−1,2−エチレンジアミン、N−ウンデシル−1,2−エチレンジアミン、N−ラウリル−1,2−エチレンジアミン、N−トリデシル−1,2−エチレンジアミン、N−ミリスチル−1,2−エチレンジアミン、N−テトラデシル−1,2−エチレンジアミン、N−ペンタデシル−1,2−エチレンジアミン、N−パルミチル−1,2−エチレンジアミン、N−ヘプタデシル−1,2−エチレンジアミン、N−オレイル−1,2−エチレンジアミン、N−ステアリル−1,2−エチレンジアミン、N−イソステアリル−1,2−エチレンジアミン、N−ノナデシル−1,2−エチレンジアミン、N−エイコシル−1,2−エチレンジアミン、N−ココナット−1,2−エチレンジアミン、N−牛脂−1,2−エチレンジアミン、N−水素化牛脂−1,2−エチレンジアミン、N−大豆−1,2−エチレンジアミン、等のエチレンジアミン類がある。
【0030】
また、N−オクチル−1,3−プロピレンジアミン、N−ノニル−1,3−プロピレンジアミン、N−デシル−1,3−プロピレンジアミン、N−ウンデシル−1,3−プロピレンジアミン、N−ラウリル−1,3−プロピレンジアミン、N−トリデシル−1,3−プロピレンジアミン、N−ミリスチル−1,3−プロピレンジアミン、N−テトラデシル−1,3−プロピレンジアミン、N−ペンタデシル−1,3−プロピレンジアミン、N−パルミチル−1,3−プロピレンジアミン、N−ヘプタデシル−1,3−プロピレンジアミン、N−オレイル−1,3−プロピレンジアミン、N−ステアリル−1,3−プロピレンジアミン、N−イソステアリル−1,3−プロピレンジアミン、N−ノナデシル−1,3−プロピレンジアミン、N−エイコシル−1,3−プロピレンジアミン、N−ココナット−1,3−プロピレンジアミン、N−牛脂−1,3−プロピレンジアミン、N−水素化牛脂−1,3−プロピレンジアミン、N−大豆−1,3−プロピレンジアミン、等のプロピレンジアミン類がある。
【0031】
更に、N−オクチル−1,4−ブチレンジアミン、N−ノニル−1,4−ブチレンジアミン、N−デシル−1,4−ブチレンジアミン、N−ウンデシル−1,4−ブチレンジアミン、N−ラウリル−1,4−ブチレンジアミン、N−トリデシル−1,4−ブチレンジアミン、N−ミリスチル−1,4−ブチレンジアミン、N−テトラデシル−1,4−ブチレンジアミン、N−ペンタデシル−1,4−ブチレンジアミン、N−パルミチル−1,4−ブチレンジアミン、N−ヘプタデシル−1,4−ブチレンジアミン、N−オレイル−1,4−ブチレンジアミン、N−ステアリル−1,4−ブチレンジアミン、N−イソステアリル−1,4−ブチレンジアミン、N−ノナデシル−1,4−ブチレンジアミン、N−エイコシル−1,4−ブチレンジアミン、N−ココナット−1,4−ブチレンジアミン、N−牛脂−1,4−ブチレンジアミン、N−水素化牛脂−1,4−ブチレンジアミン、N−大豆−1,4−ブチレンジアミン、等のブチレンジアミン類がある。
【0032】
また、脂肪族アミンとしては、下記の一般式(6)で示されるアミン類も挙げられる。
(化6)
−N−(X (6)

上記一般式(6)中、Xは炭素数1〜30のアルキル基若しくはアルケニル基であり、Xの炭素数は好ましくは1〜20が、より好ましくは1〜8若しくは12〜18がよい。Xは炭素数1〜20のアルキル基、アルケニル基、若しくはヒドロキシアルキル基であり、Xの炭素数は好ましくは1〜8もしくは12〜18がよい。
【0033】
がメチル基であるものとして、例えば、ジオクチルメチルアミン、ジノニルメチルアミン、ジデシルメチルアミン、ジウンデシルメチルアミン、ジラウリルメチルアミン、ジトリデシルメチルアミン、ジミリスチルメチルアミン、ジテトラデシルメチルアミン、ジペンタデシルメチルアミン、ジパルミチルメチルアミン、ジヘプタデシルメチルアミン、ジオレイルメチルアミン、ジステアリルメチルアミン、ジイソステアリルメチルアミン、ジノナデシルメチルアミン、ジエイコシルメチルアミン、ジココナットメチルアミン、ジ牛脂メチルアミン、ジ水素化牛脂メチルアミン、ジ大豆メチルアミン、等のジアルキルメチルアミン類がある。
【0034】
また、Xがメチル基であるものとして、例えばオクチルジメチルアミン、ノニルジメチルアミン、デシルジメチルアミン、ウンデシルジメチルアミン、ラウリルジメチルアミン、トリデシルジメチルアミン、ミリスチルジメチルアミン、テトラデシルジメチルアミン、ペンタデシルジメチルアミン、パルミチルジメチルアミン、ヘプタデシルジメチルアミン、オレイルジメチルアミン、ステアリルジメチルアミン、イソステアリルジメチルアミン、ノナデシルジメチルアミン、エイコシルジメチルアミン、ココナットジメチルアミン、牛脂ジメチルアミン、水素化牛脂ジメチルアミン、大豆ジメチルアミン、等のアルキルジメチルアミン類がある。
【0035】
さらに、Xがヒドロキシアルキル基であるものとして、例えばN−オクチルジエタノールアミン、N−ノニルジエタノールアミン、N−デシルジエタノールアミン、N−ウンデシルジエタノールアミン、N−ラウリルジエタノールアミン、N−トリデシルジエタノールアミン、N−ミリスチルジエタノールアミン、N−テトラデシルジエタノールアミン、N−ペンタデシルジエタノールアミン、N−パルミチルジエタノールアミン、N−ヘプタデシルジエタノールアミン、N−オレイルジエタノールアミン、N−ステアリルジエタノールアミン、N−イソステアリルジエタノールアミン、N−ノナデシルジエタノールアミン、N−エイコシルジエタノールアミン、N−ココナットジエタノールアミン、N−牛脂ジエタノールアミン、N−水素化牛脂ジエタノールアミン、N−大豆ジエタノールアミン等のN−アルキルジエタノールアミン類、またN−オクチルジプロパノールアミン、N−ノニルジプロパノールアミン、N−デシルジプロパノールアミン、N−ウンデシルジプロパノールアミン、N−ラウリルジプロパノールアミン、N−トリデシルジプロパノールアミン、N−ミリスチルジプロパノールアミン、N−テトラデシルジプロパノールアミン、N−ペンタデシルジプロパノールアミン、N−パルミチルジプロパノールアミン、N−ヘプタデシルジプロパノールアミン、N−オレイルジプロパノールアミン、N−ステアリルジプロパノールアミン、N−イソステアリルジプロパノールアミン、N−ノナデシルジプロパノールアミン、N−エイコシルジプロパノールアミン、N−ココナットジプロパノールアミン、N−牛脂ジプロパノールアミン、N−水素化牛脂ジプロパノールアミン、N−大豆ジプロパノールアミン等のN−アルキルジプロパノールアミン類がある。
【0036】
これらの脂肪族アミンは、潤滑油組成物中に上記した群から選ばれた少なくとも1種を約0.005〜5質量%程度、好ましくは約0.01〜1質量%程度で用いるとよい。
【0037】
本発明におけるアミド化合物として、一般式(7)に示す脂肪酸とモノアミンによる生成物であるアミド化合物、または脂肪酸とポリアミンによる生成物であるアミド化合物が挙げられる。
(化7)
10CONH (7)

【0038】
脂肪酸とモノアミンによるアミド化合物として、上記一般式(7)中、X10は炭素数1〜30のアルキル基若しくはアルケニル基である。例えば、ラウリルアミド、ココナットアミド、n−トリデシルアミド、ミリスチルアミド、n−ペンタデシルアミド、n−パルミチルアミド、n−ヘプタデシルアミド、n−ステアリルアミド、イソステアリルアミド、n−ノナデシルアミド、n−エイコシルアミド、n−ヘンエイコシルアミド、n−ドコシルアミド、n−トリコシルアミド、n−ペンタコシルアミド、オレイルアミド、牛脂アミド、水素化牛脂アミド、大豆アミド等が挙げられる。好ましくはX10の炭素数は8〜24、更に好ましくは12〜18がよい。またアルキル基若しくはアルケニル基は、直鎖脂肪族でも、分岐脂肪族でも、三級アルキル基でもよい。
【0039】
またポリアミンと脂肪酸とのアミド化合物としては、例えばイソステアリン酸トリエチレンテトラミド,イソステアリン酸テトラエチレンペンタミド,オレイン酸ジエチレントリアミド,オレイン酸ジエタノールアミドなど、炭素数1〜24の飽和若しくは不飽和脂肪酸と脂肪族アミド,ポリアルキレンポリアミドなどとの反応物が挙げられる。
【0040】
アミド化合物は、潤滑油組成物中に約0.001〜0.5質量%程度、好ましくは約0.001〜0.1質量%程度、より好ましくは約0.005〜0.1質量%程度で用いられる。このアミド化合物は、1種で又は数種を混ぜて使用することができる。
【0041】
本発明の潤滑油組成物に対して、多価アルコールのエステルを配合することができる。この多価アルコールのエステルとしては、従来油性剤として使用されているもの、例えば、グリセロール、ソルビトール、アルキレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、キシリトール等の多価アルコールの炭素数1〜24の飽和または不飽和脂肪酸の部分または完全エステルを用いることができる。
【0042】
こうしたものとして、具体的には、例えば、グリセロールエステルとして、グリセロールモノラウリレート、グリセロールモノステアレート、グリセロールモノイソステアレート、グリセロールモノパルミテート、グリセロールモノオレート、グリセロールジラウリレート、グリセロールジステアレート、グリセロールジイソステアレート、グリセロールジパルミテート、グリセロールジオレート等がある。
【0043】
ソルビトールエステルとしては、ソルビトールモノラウリレート、ソルビトールモノパルミテート、ソルビトールモノステアレート、ソルビトールモノオレート、ソルビトールジラウリレート、ソルビトールジパルミテート、ソルビトールジステアレート、ソルビトールジオレート、ソルビトールトリステアレート、ソルビトールトリラウリレート、ソルビトールトリオレート、ソルビトールセスキオレート、ソルビトールテトラオレート等が挙げられる。
【0044】
アルキレングリコールエステルとしては、エチレングリコールモノラウリレート、エチレングリコールモノステアレート、エチレングリコールモノオレート、エチレングリコールジラウリレート、エチレングリコールジステアレート、エチレングリコールジオレート、プロピレングリコールモノラウリレート、プロピレングリコールモノステアレート、プロピレングリコールモノオレート、プロピレングリコールジラウリレート、プロピレングリコールジステアレート、プロピレングリコールジオレート等がある。
【0045】
ネオペンチルグリコールエステルとしては、ネオペンチルグリコールモノラウリレート、ネオペンチルグリコールモノステアレート、ネオペンチルグリコールモノオレート、ネオペンチルグリコールジラウリレート、ネオペンチルグリコールジステアレート、ネオペンチルグリコールジオレート等が挙げられる。
【0046】
トリメチロールプロパンエステルとしては、トリメチロールプロパンモノラウリレート、トリメチロールプロパンモノステアレート、トリメチロールプロパンモノオレート、トリメチロールプロパンジラウリレート、トリメチロールプロパンジステアレート、トリメチロールプロパンジオレート等がある。
【0047】
ペンタエリスリトールエステルとしては、ペンタエリスリトールモノラウリレート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールモノオレート、ペンタエリスリトールジラウリレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールジオレート、ジペンタエリスリトールモノオレート等がある。
こうした多価アルコールの脂肪酸エステルとしては、好ましくは多価アルコールと不飽和脂肪酸との部分エステルを用いるとよい。
【0048】
これらの多価アルコールの脂肪酸エステルは、潤滑油組成物中に約0.01〜5質量%程度、好ましくは約0.05〜2質量%程度で用いられる。使用量が上記範囲を外れると、摩擦係数を低減する効果が弱くなることがある。
【0049】
上記した成分のほかに更に性能を向上させるため、必要に応じて種々の添加剤を適宜使用することができる。これらのものとしては、酸化防止剤、金属不活性剤、極圧剤、油性向上剤、消泡剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、清浄分散剤、防錆剤、抗乳化剤等や、その他の公知の潤滑油添加剤を挙げることができる。
【0050】
本発明において使用する酸化防止剤としては、潤滑油に使用されるものが実用的には好ましく、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤を挙げることができる。これらの酸化防止剤は、潤滑油組成物中に約0.01〜5質量%の範囲で単独又は複数組み合わせて使用できる。
【0051】
前記アミン系酸化防止剤としては、p,p’−ジオクチル−ジフェニルアミン(精工化学社製:ノンフレックスOD−3)、p,p’−ジ−α−メチルベンジル−ジフェニルアミン、N−p−ブチルフェニル−N−p’−オクチルフェニルアミンなどのジアルキル−ジフェニルアミン類、モノ−t−ブチルジフェニルアミン、モノオクチルジフェニルアミンなどのモノアルキルジフェニルアミン類、ジ(2,4−ジエチルフェニル)アミン、ジ(2−エチル−4−ノニルフェニル)アミンなどのビス(ジアルキルフェニル)アミン類、オクチルフェニル−1−ナフチルアミン、N−t−ドデシルフェニル−1−ナフチルアミンなどのアルキルフェニル−1−ナフチルアミン類、1−ナフチルアミン、フェニル−1−ナフチルアミン、フェニル−2−ナフチルアミン、N−ヘキシルフェニル−2−ナフチルアミン、N−オクチルフェニル−2−ナフチルアミンなどのアリール−ナフチルアミン類、N,N’−ジイソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミンなどのフェニレンジアミン類、フェノチアジン(保土谷化学社製:Phenothiazine)、3,7−ジオクチルフェノチアジンなどのフェノチアジン類などが挙げられる。
【0052】
硫黄系酸化防止剤としては、ジドデシルサルファイド、ジオクタデシルサルファイドなどのジアルキルサルファイド類、ジドデシルチオジプロピオネート、ジオクタデシルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ドデシルオクタデシルチオジプロピオネートなどのチオジプロピオン酸エステル類、2−メルカプトベンゾイミダゾールなどが挙げられる。
【0053】
フェノール系酸化防止剤としては、2−t−ブチルフェノール、2−t−ブチル−4−メチルフェノール、2−t−ブチル−5−メチルフェノール、2,4−ジ−t−ブチルフェノール、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、2−t−ブチル−4−メトキシフェノール、3−t−ブチル−4−メトキシフェノール、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン(川口化学社製:アンテージDBH)、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノールなどの2,6−ジ−t−ブチル−4−アルキルフェノール類、2,6−ジ−t−ブチル−4−メトキシフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エトキシフェノールなどの2,6−ジ−t−ブチル−4−アルコキシフェノール類がある。
また、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルメルカプト−オクチルアセテート、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(吉富製薬社製:ヨシノックスSS)、n−ドデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2’−エチルヘキシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ベンゼンプロパン酸3,5−ビス(1,1−ジメチル−エチル)−4−ヒドロキシ−C7〜C9側鎖アルキルエステル(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製:IrganoxL135)などのアルキル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート類、2,6−ジ−t−ブチル−α−ジメチルアミノ−p−クレゾール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)(川口化学社製:アンテージW−400)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)(川口化学社製:アンテージW−500)などの2,2’−メチレンビス(4−アルキル−6−t−ブチルフェノール)類がある。
さらに、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)(川口化学社製:アンテージW−300)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)(シェル・ジャパン社製:Ionox220AH)、4,4’−ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2−(ジ−p−ヒドロキシフェニル)プロパン(シェル・ジャパン社製:ビスフェノールA)、2,2−ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4’−シクロヘキシリデンビス(2,6−t−ブチルフェノール)、ヘキサメチレングリコールビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製:IrganoxL109)、トリエチレングリコールビス[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート](吉富製薬社製:トミノックス917)、2,2’−チオ−[ジエチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製:IrganoxL115)、3,9−ビス{1,1−ジメチル−2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン(住友化学:スミライザーGA80)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)(川口化学社製:アンテージRC)、2,2’−チオビス(4,6−ジ−t−ブチル−レゾルシン)などのビスフェノール類がある。
そして、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製:IrganoxL101)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン(吉富製薬社製:ヨシノックス930)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン(シェル・ジャパン社製:Ionox330)、ビス−[3,3’−ビス−(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、2−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル−4−(2”,4”−ジ−t−ブチル−3”−ヒドロキシフェニル)メチル−6−t−ブチルフェノール、2,6−ビス(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチル−ベンジル)−4−メチルフェノールなどのポリフェノール類、p−t−ブチルフェノールとホルムアルデヒドの縮合体、p−t−ブチルフェノールとアセトアルデヒドの縮合体などのフェノールアルデヒド縮合体などが挙げられる。
【0054】
リン系酸化防止剤として、トリフェニルフォスファイト、トリクレジルフォスファイトなどのトリアリールフォスファイト類、トリオクタデシルフォスファイト、トリデシルフォスファイトなどのトリアルキルフォスファイト類、トリドデシルトリチオフォスファイトなどが挙げられる。
【0055】
本発明の組成物と併用できる金属不活性剤としては、ベンゾトリアゾール、4−メチル−ベンゾトリアゾール、4−エチル−ベンゾトリアゾールなどの4−アルキル−ベンゾトリアゾール類、5−メチル−ベンゾトリアゾール、5−エチル−ベンゾトリアゾールなどの5−アルキル−ベンゾトリアゾール、1−ジオクチルアミノメチル−2,3−ベンゾトリアゾールなどの1−アルキル−ベンゾトリアゾール類、1−ジオクチルアミノメチル−2,3−トルトリアゾールなどの1−アルキル−トルトリアゾール類等のベンゾトリアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール、2−(オクチルジチオ)−ベンゾイミダゾール、2−(デシルジチオ)−ベンゾイミダゾール、2−(ドデシルジチオ)−ベンゾイミダゾールなどの2−(アルキルジチオ)−ベンゾイミダゾール類、2−(オクチルジチオ)−トルイミダゾール、2−(デシルジチオ)−トルイミダゾール、2−(ドデシルジチオ)−トルイミダゾールなどの2−(アルキルジチオ)−トルイミダゾール類等のベンゾイミダゾール誘導体がある。
また、インダゾール、4−アルキル−インダゾール、5−アルキル−インダゾールなどのトルインダゾール類等のインダゾール誘導体、ベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール誘導体(千代田化学社製:チオライトB−3100)、2−(ヘキシルジチオ)ベンゾチアゾール、2−(オクチルジチオ)ベンゾチアゾールなどの2−(アルキルジチオ)ベンゾチアゾール類、2−(ヘキシルジチオ)トルチアゾール、2−(オクチルジチオ)トルチアゾールなどの2−(アルキルジチオ)トルチアゾール類、2−(N,N−ジエチルジチオカルバミル)ベンゾチアゾール、2−(N,N−ジブチルジチオカルバミル)−ベンゾチアゾール、2−(N,N−ジヘキシルジチオカルバミル)−ベンゾチアゾールなど2−(N,N−ジアルキルジチオカルバミル)ベンゾチアゾール類、2−(N,N−ジエチルジチオカルバミル)トルチアゾール、2−(N,N−ジブチルジチオカルバミル)トルチアゾール、2−(N,N−ジヘキシルジチオカルバミル)トルチアゾールなどの2−(N,N−ジアルキルジチオカルバミル)−トルゾチアゾール類等のベンゾチアゾール誘導体がある。
さらに、2−(オクチルジチオ)ベンゾオキサゾール、2−(デシルジチオ)ベンゾオキサゾール、2−(ドデシルジチオ)ベンゾオキサゾールなどの2−(アルキルジチオ)−ベンゾオキサゾール類、2−(オクチルジチオ)トルオキサゾール、2−(デシルジチオ)トルオキサゾール、2−(ドデシルジチオ)トルオキサゾールなどの2−(アルキルジチオ)トルオキサゾール類等のベンゾオキサゾール誘導体、2,5−ビス(ヘプチルジチオ)−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ビス(ノニルジチオ)−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ビス(ドデシルジチオ)−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ビス(オクタデシルジチオ)−1,3,4−チアジアゾールなどの2,5−ビス(アルキルジチオ)−1,3,4−チアジアゾール類、2,5−ビス(N,N−ジエチルジチオカルバミル)−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ビス(N,N−ジブチルジチオカルバミル)−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ビス(N,N−ジオクチルジチオカルバミル)−1,3,4−チアジアゾールなどの2,5−ビス(N,N−ジアルキルジチオカルバミル)−1,3,4−チアジアゾール類、2−N,N−ジブチルジチオカルバミル−5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2−N,N−ジオクチルジチオカルバミル−5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾールなどの2−N,N−ジアルキルジチオカルバミル−5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール類等のチアジアゾール誘導体、1−ジ−オクチルアミノメチル−2,4−トリアゾールなどの1−アルキル−2,4−トリアゾール類等のトリアゾール誘導体などが挙げられる。
これらの金属不活性剤は、潤滑油組成物中に約0.01〜0.5質量%の範囲で単独又は複数組み合わせて使用できる。
【0056】
本発明の潤滑油組成物に対して、耐摩耗性や極圧性を付与するために、リン化合物を添加することもできる。本発明に適したリン化合物としては、例えば、リン酸エステル、酸性リン酸エステル、酸性リン酸エステルのアミン塩、塩素化リン酸エステル、亜リン酸エステル、ホスフォロチオネート、ジチオリン酸亜鉛、ジチオリン酸とアルカノール又はポリエーテル型アルコールとのエステルあるいはその誘導体、リン含有カルボン酸、リン含有カルボン酸エステルが挙げられる。
これらのリン化合物は、潤滑油組成物中に約0.01〜2質量%の範囲で単独又は複数組み合わせて使用できる。
【0057】
上記リン酸エステルとしては、例えば、トリブチルホスフェート、トリペンチルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリヘプチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリノニルホスフェート、トリデシルホスフェート、トリウンデシルホスフェート、トリドデシルホスフェート、トリトリデシルホスフェート、トリテトラデシルホスフェート、トリペンタデシルホスフェート、トリヘキサデシルホスフェート、トリヘプタデシルホスフェート、トリオクタデシルホスフェート、トリオレイルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリス(iso−プロピルフェニル)ホスフェート、トリアリールフォスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、及びキシレニルジフェニルホスフェートなどが挙げられる。
【0058】
上記酸性リン酸エステルの具体例としては、モノブチルアシッドホスフェート、モノペンチルアシッドホスフェート、モノヘキシルアシッドホスフェート、モノヘプチルアシッドホスフェート、モノオクチルアシッドホスフェート、モノノニルアシッドホスフェート、モノデシルアシッドホスフェート、モノウンデシルアシッドホスフェート、モノドデシルアシッドホスフェート、モノトリデシルアシッドホスフェート、モノテトラデシルアシッドホスフェート、モノペンタデシルアシッドホスフェート、モノヘキサデシルアシッドホスフェート、モノヘプタデシルアシッドホスフェート、モノオクタデシルアシッドホスフェート、モノオレイルアシッドホスフェート、ジブチルアシッドホスフェート、ジペンチルアシッドホスフェート、ジヘキシルアシッドホスフェート、ジヘプチルアシッドホスフェート、ジオクチルアシッドホスフェート、ジノニルアシッドホスフェート、ジデシルアシッドホスフェート、ジウンデシルアシッドホスフェート、ジドデシルアシッドホスフェート、ジトリデシルアシッドホスフェート、ジテトラデシルアシッドホスフェート、ジペンタデシルアシッドホスフェート、ジヘキサデシルアシッドホスフェート、ジヘプタデシルアシッドホスフェート、ジオクタデシルアシッドホスフェート、及びジオレイルアシッドホスフェートなどが挙げられる。
【0059】
上記酸性リン酸エステルのアミン塩としては、前記酸性リン酸エステルのメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、及びトリオクチルアミンなどのアミンとの塩などが挙げられる。
【0060】
上記亜リン酸エステルとしては、ジブチルホスファイト、ジペンチルホスファイト、ジヘキシルホスファイト、ジヘプチルホスファイト、ジオクチルホスファイト、ジノニルホスファイト、ジデシルホスファイト、ジウンデシルホスファイト、ジドデシルホスファイト、ジオレイルホスファイト、ジフェニルホスファイト、ジクレジルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリペンチルホスファイト、トリヘキシルホスファイト、トリヘプチルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリノニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリウンデシルホスファイト、トリドデシルホスファイト、トリオレイルホスファイト、トリフェニルホスファイト、及びトリクレジルホスファイトなどが挙げられる。
【0061】
上記ホスフォロチオネートとしては、具体的には、トリブチルホスフォロチオネート、トリペンチルホスフォロチオネート、トリヘキシルホスフォロチオネート、トリヘプチルホスフォロチオネート、トリオクチルホスフォロチオネート、トリノニルホスフォロチオネート、トリデシルホスフォロチオネート、トリウンデシルホスフォロチオネート、トリドデシルホスフォロチオネート、トリトリデシルホスフォロチオネート、トリテトラデシルホスフォロチオネート、トリペンタデシルホスフォロチオネート、トリヘキサデシルホスフォロチオネート、トリヘプタデシルホスフォロチオネート、トリオクタデシルホスフォロチオネート、トリオレイルホスフォロチオネート、トリフェニルホスフォロチオネート、トリクレジルホスフォロチオネート、トリキシレニルホスフォロチオネート、クレジルジフェニルホスフォロチオネート、キシレニルジフェニルホスフォロチオネート、トリス(n−プロピルフェニル)ホスフォロチオネート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフォロチオネート、トリス(n−ブチルフェニル)ホスフォロチオネート、トリス(イソブチルフェニル)ホスフォロチオネート、トリス(s−ブチルフェニル)ホスフォロチオネート、トリス(t−ブチルフェニル)ホスフォロチオネート等が挙げられる。また、これらの混合物も使用できる。
【0062】
上記したジチオリン酸亜鉛としては、一般に、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、ジアリールジチオリン酸亜鉛、アリールアルキルジチオリン酸亜鉛等が挙げられる。例えば、ジアルキルジチオリン酸亜鉛のアルキル基は、炭素数3〜22の第1級又は第2級のアルキル基、炭素数3〜18のアルキル基で置換されたアルキルアリール基を有するジアルキルジチオリン酸亜鉛が使用される。
ジアルキルジチオリン酸亜鉛の具体例としては、ジプロピルジチオリン酸亜鉛、ジブチルジチオリン酸亜鉛、ジペンチルジチオリン酸亜鉛、ジヘキシルジチオリン酸亜鉛、ジイソペンチルジチオリン酸亜鉛、ジエチルヘキシルジチオリン酸亜鉛、ジオクチルジチオリン酸亜鉛、ジノニルジチオリン酸亜鉛、ジデシルジチオリン酸亜鉛、ジドデシルジチオリン酸亜鉛、ジプロピルフェニルジチオリン酸亜鉛、ジペンチルフェニルジチオリン酸亜鉛、ジプロピルメチルフェニルジチオリン酸亜鉛、ジノニルフェニルジチオリン酸亜鉛、ジドデシルフェニルジチオリン酸亜鉛、ジドデシルフェニルジチオリン酸亜鉛等が挙げられる。
【0063】
リン含有カルボン酸、同エステル等のリン含有カルボン酸化合物としては、同一分子中にカルボキシル基とリン原子の双方を含んでいればよく、その構造は特に制限されないが、通常、極圧性及び熱・酸化安定性の点から、ホスホリル化カルボン酸若しくはホスホリル化カルボン酸エステルが好ましい。ホスホリル化カルボン酸及びホスホリル化カルボン酸エステルとしては、例えば下記の一般式(8)で表される化合物が挙げられる。
【0064】
【化8】

【0065】
上記一般式(8)中、R及びRは同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を示し、Rは炭素数1〜20のアルキレン基を示し、Rは水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を示し、X11、X12、X13及びX14は同一でも異なっていてもよく、それぞれ酸素原子又は硫黄原子を示す。
上記一般式(8)中の、R及びRにおける炭素数1〜30の炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基等が挙げられる。
【0066】
上記ホスホリル化カルボン酸の中でも有用なβ−ジチオホスホリル化プロピオン酸は、下記の一般式(9)の構造を有するものである。
【化9】

【0067】
このβ−ジチオホスホリル化プロピオン酸としては、具体的に、3−(ジ−イソブトキシ−チオホスホリルスルファニル)−2−メチル−プロピオン酸などが挙げられる。
【0068】
本潤滑油組成物におけるリン含有カルボン酸化合物の含有量は、特に制限されるものではないが、潤滑油組成物中に好ましくは0.001〜1質量%、より好ましくは0.002〜0.5質量%である。リン含有カルボン酸化合物の含有量が前記下限値未満では十分な潤滑性が得られない傾向にある。一方、前記上限値を超えて加えても含有量に見合う潤滑性向上効果が得られない傾向にあり、更には熱・酸化安定性や加水分解安定性が低下するおそれがあるので好ましくない。
【0069】
なお、上記一般式(8)で表されるホスホリル化カルボン酸のうち、Rが水素原子である化合物の含有量については、0.001〜0.1質量%、好ましくは0.002〜0.08質量%、より好ましくは0.003〜0.07質量%、更に好ましくは0.004〜0.06質量%、一層好ましくは0.005〜0.05質量%である。
【0070】
本発明の潤滑油組成物に対して、低温流動性や粘度特性を向上させるために、流動点降下剤や粘度指数向上剤を添加してもよい。
粘度指数向上剤としては、例えばポリメタクリレート類やエチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ジエン共重合体、ポリイソブチレン、ポリスチレンなどのオレフィンポリマー類等の非分散型粘度指数向上剤や、これらに含窒素モノマーを共重合させた分散型粘度指数向上剤等が挙げられる。その添加量は、潤滑油組成物中に約0.05〜20質量%の範囲で使用できる。
流動点降下剤としては、例えばポリメタクリレート系のポリマーが挙げられる。その添加量は、潤滑油組成物中に約0.01〜5質量%の範囲で使用できる。
【0071】
本発明の潤滑油組成物に対して、消泡性を付与するために、消泡剤を添加してもよい。本発明に適した消泡剤として、例えばジメチルポリシロキサン、ジエチルシリケート、フルオロシリコーン等のオルガノシリケート類、ポリアルキルアクリレート等の非シリコーン系消泡剤が挙げられる。その添加量は、潤滑油組成物中に約0.0001〜0.1質量%の範囲で単独又は複数組み合わせて使用できる。
【0072】
本発明に適した抗乳化剤として、通常潤滑油添加剤として使用される公知のものが挙げられる。その添加量は、潤滑油組成物中に約0.0005〜0.5質量%の範囲で使用できる。
【実施例】
【0073】
以下本発明について、実施例及び比較例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
実施例及び比較例の調製にあたり、下記の組成材料を用意した。
1.基油
(1−1) 基油1:原油を常圧蒸留して得られた潤滑油留分に対して、水素化分解、脱ろうなどの精製手段を適宜組み合わせて適用することにより得られたパラフィン系鉱油で、API(米国石油協会)基油分類によりグループ2(Gp2)に分類されるもの。(特性:100℃における動粘度;5.35mm/s、40℃における動粘度;31.4mm/s、粘度指数;103、硫黄分含有量(硫黄元素換算値);10質量ppm未満、窒素分含有量(窒素元素換算値);1質量ppm未満、アニリン点;110℃、15℃密度;0.863、20℃密度;0.860、20℃屈折率;1.472、ASTM D2502による分子量;411、ASTM D3238法による環分析のパラフィン分;62%、同ナフテン分;38%、同アロマ分;1%未満、ASTM D5480法によるガスクロ蒸留による初留点温度;312℃)
(1−2) 基油2:原油を常圧蒸留して得られた潤滑油留分に対して、高度水素化精製により製造されるパラフィン系鉱油で、API(米国石油協会)基油分類によりグループ3(Gp3)に分類されるもの。(特性:100℃における動粘度;6.57mm/s、40℃における動粘度;37.5mm/s、粘度指数;130、硫黄分含有量(硫黄元素換算値);10質量ppm未満、窒素分含有量(窒素元素換算値);1質量ppm未満、アニリン点;123℃、15℃密度;0.844、20℃密度;0.841、20℃屈折率;1.465、ASTM D2502による分子量;479、ASTM D3238法による環分析のパラフィン分;79%、同アロマ分;1%未満、IP346法による多環芳香族分;0.2%、ASTM D5480法によるガスクロ蒸留による初留点温度;306℃)
(1−3) 基油3:フィッシャートロプッシュ法により合成されたGTL(ガストゥリキッド)で、API(米国石油協会)基油分類によりグループ3(Gp3)に分類されるもの。(特性:100℃における動粘度;5.10mm/s、40℃における動粘度;23.5mm/s、粘度指数;153、15℃密度;0.821、硫黄分含有量(硫黄元素換算値);10質量ppm未満、窒素分含有量(窒素元素換算値);1質量ppm未満、アニリン点;126℃、15℃密度;0.821、20℃密度;0.817、20℃屈折率;1.456、ASTM D2502による分子量;447、ASTM D3238法による環分析のパラフィン分;95%、同アロマ分:1%未満、ASTM D5480法によるガスクロ蒸留による初留点温度;365℃)
(1−4) 基油4:合成油;αデセンの重合により合成されたポリαオレフィン、一般名称PAO6で、API(米国石油協会)基油分類によりグループ4(Gp4)に分類されるもの。(特性:100℃における動粘度;5.89mm/s、40℃における動粘度;31.2mm/s、粘度指数;135、15℃密度;0.827、硫黄分含有量(硫黄元素換算値);10質量ppm未満、窒素分含有量(窒素元素換算値);1質量ppm未満、アニリン点;128℃、15℃密度;0.827、20℃屈折率;1.460、ASTM D5480法によるガスクロ蒸留による初留点温度;403℃)
(1−5) 基油5:原油を常圧蒸留して得られた潤滑油留分に対して、脱ろうなどの精製手段を適宜組み合わせて適用することにより得られたパラフィン系鉱油で、API(米国石油協会)基油分類によりグループ1(Gp1)に分類されるもの。(特性:100℃における動粘度;4.60mm/s、40℃における動粘度;24.6mm/s、粘度指数;101、15℃密度;0.866、硫黄分含有量(硫黄元素換算値);4500質量ppm、窒素分含有量(窒素元素換算値);20質量ppm、ASTM D3238法による環分析のパラフン分;66%、同ナフテン分;31%、同アロマ分;3%、アニリン点;99℃、IP346法による多環芳香族分;0.8%、ASTM D5480法によるガスクロ蒸留による初留点温度;331℃)
【0074】
2.添加剤
(2−1) 添加剤A1:コハク酸誘導体;テトライソプロペニルコハク酸,1,2−プロパンジオールハーフエステル (JIS K2501法による酸価:160mgKOH/g)
(2−2) 添加剤A2:コハク酸誘導体;テトライソプロペニルコハク酸,1,3−プロパンジオールハーフエステル (JIS K2501法による酸価:160mgKOH/g)
(2−3) 添加剤A3:コハク酸誘導体;ラインケミー社製RC4802(ASTM D3739による酸価:35mgKOH/g)
(2−4) 添加剤B1:エポキシ化菜種脂肪酸2エチルヘキシルエステル
(2−5) 添加剤B2:エポキシ化菜種脂肪酸イソブチルエステル
(2−6) 添加剤B3:エポキシ化大豆油
(2−7) 添加剤C1:ココナッツアミン(主成分はドデシルアミンである)
(2−8) 添加剤C2:N−アルケニルジエタノールアミン(主成分はN−ドデシルジエタノールアミン):3級アミン化合物(JIS K2501法による塩基価:160mgKOH/g)
(2−9) 添加剤C3:N−アルケニルジエタノールアミン(主成分はN−オレイルジエタノールアミン):3級アミン化合物(JIS K2501法による塩基価:160mgKOH/g)
(2−10) 添加剤D1:ポリアミンのアミド(主成分はイソステアリン酸トリエチレンテトラアミドである)
(2−11) 添加剤D2:オレイルアミド
(2−12) 添加剤E1:トリメチロールプロパンモノオレート
(2−13) 添加剤E2:ペンタエリスリトールモノオレ−ト
(2−14) 添加剤E3:グリセロールモノイソステアレート(JIS K0070法による水酸基価:313mgKOH/g)
【0075】
(実施例1〜23、比較例1〜9)
上記した組成材料を用いて、表1〜表7に示す組成により実施例1〜23、比較例1〜9の潤滑油組成物を調製した。
【0076】
(試験)
上記実施例1〜23及び比較例1〜9の各潤滑油組成物について、その性能を見るために以下の試験を行った。
【0077】
(錆止め性試験)
JIS K2510に準拠し、恒温槽内に設置した容器に、試験油300mlを採取し、毎分1000回転で攪拌し、60℃になったときに鉄製の試験片を試験油中に挿入し、更に人工海水を30ml加え、60℃に保ったまま24時間攪拌を続け、その後試験片を取り出し、試験片の錆の発生有無を目視で評価した。
試験の評価は次の基準によって行った。
錆の発生が見られない・・・・・・・・・◎(合格)
錆の発生が見られる・・・・・・・・・・×(不合格)
【0078】
(熱安定性試験)
CINCINNATI MILACRON社のTHERMAL STABILITY TEST PROCEDURE“A”に準拠し、恒温槽内に設置した容器に、試験油200mlを採取し、銅触媒および鉄触媒との共存下、135℃で168時間放置した。その後室温まで冷却後、5ミクロンのフィルターによりスラッジを集積し、発生したスラッジ重量を秤量した。なお表中の数値は試験油200mlあたりのスラッジ量(mg/200ml)である。
試験の評価は次の基準によって行った。
スラッジ量が2.5mg/200ml未満・・・・・合 格(◎)
スラッジ量が2.5mg/200ml以上・・・・・不合格(×)
【0079】
(振り子試験・摩擦係数)
神鋼造機株式会社製の曽田式振子型油性試験機により摩擦係数を測定した。この試験は、振子支点の摩擦部分に試験油を与え、振子を振動させ、振動の減衰から摩擦係数を求めるものである。実施例9〜23、比較例1〜9について行った。
試験の評価は次の基準によって行った。
摩擦係数が0.135以下・・・・・・・・・・◎(優)
摩擦係数が0.135超〜0.150未満・・・○(良)
摩擦係数が0.150以上・・・・・・・・・・×(不可)
【0080】
(試験結果)
各試験の結果を表1〜表7示す。
【0081】
(考察)
表1に示す試験結果から明らかなように、実施例1〜3に示すグループ2基油(基油1)を使用し、コハク酸誘導体(添加剤A1又はA2)とエポキシ化合物(添加剤B1又はB2)を併用したものでは、錆止め性試験の人工海水中においても錆が発生せず合格(◎)しており、スラッジの発生量が少なく、スラッジ量においても合格(◎)している。
また、表2の実施例4〜8に示すように、基油としてグループ3基油(基油2)、GTL(基油3)、PAO(基油4)のいずれの基油を使用した潤滑油組成物においても、錆が発生せず合格(◎)しており、スラッジの発生量が少なくスラッジ量においても合格(◎)している。
【0082】
表3中、実施例9〜12のものでは、基油としてグループ2基油(基油1)、グループ3基油(基油2)、GTL(基油3)、PAO(基油4)のいずれかを使用し、コハク酸誘導体(添加剤A1又はA2)、エポキシ化合物(添加剤B1又はB2)及びアミン化合物(添加剤C1)を使用したものでは、錆止め性試験においても錆が発生せず合格(◎)し、スラッジ量においても合格(◎)しており、摩擦係数が小さくて良好であり、実施例10、11では優(◎)、実施例9、12では良(○)となっている。
また、実施例13、14の基油1にコハク酸誘導体(添加剤A3)、エポキシ化合物(添加剤B2)及びアミン化合物(添加剤C1及びC2を併用)を加えたものでは、錆止め性試験においても錆が発生せず合格(◎)し、スラッジ量においても合格(◎)しており、摩擦係数が小さくて優(◎)となっている。
【0083】
表4中に示されている実施例15〜17のものは、基油としてグループ2基油(基油1)又はGTL(基油3)のいずれかを使用し、コハク酸誘導体(添加剤A1)、エポキシ化合物(添加剤B1)及びアミド化合物(添加剤D1又はD2)を使用したものであって、錆止め性試験においても錆が発生せず合格(◎)し、スラッジの発生量が少なくスラッジ量においても合格(◎)しており、摩擦係数において実施例16、17では優(◎)、実施例15では良(○)となっている。
また、実施例18〜19のものは、基油として(基油1又は基油3)を使用し、コハク酸誘導体(添加剤A1)、エポキシ化合物(添加剤B1)及び多価アルコールエステル(添加剤E1又はE2)を使用したもので、錆止め性試験において合格(◎)し、スラッジ量においても合格(◎)し、摩擦係数において優(◎)を示している。
更に、実施例20のものは、基油(基油1)を使用し、コハク酸誘導体(添加剤A1)、エポキシ化合物(添加剤B1)、アミン化合物(添加剤C1)及びアミド化合物(添加剤D1)を使用したもので、錆止め性試験において合格(◎)し、スラッジの発生量においても合格(◎)し、摩擦係数において優(◎)となっている。
【0084】
表5に示す実施例21〜23のものは、基油(基油1)を使用し、コハク酸誘導体(添加剤A2又はA3)、エポキシ化合物(添加剤B1又はB2)、アミン化合物〔(添加剤C1とC3)または(添加剤C1とC2)〕及び多価アルコールエステル(添加剤E3)を使用したものであって、錆止め性試験において合格(◎)し、スラッジの発生量においても合格(◎)し、摩擦係数において優(◎)となっている。
【0085】
これに対して、表6、7に示す中で、比較例1〜8は基油としてグループ2基油(基油1)を使用したものであるが、比較例1のグループ2基油(基油1)のみのものでは、スラッジ量において合格(◎)しているが、錆止め性試験及び摩擦係数において不合格(×)になっている。比較例2及び3のコハク酸誘導体(添加剤A1又はA2)のみを添加したものでは、錆止め性試験で合格(◎)しているが、スラッジ量及び摩擦係数で不合格(×)となっている。
比較例4、5は、エポキシ化合物(添加剤B2又はB3)のみを添加したものであるが、比較例4のものは、スラッジ量で合格(◎)しているが、錆止め性試験及び摩擦係数で不合格(×)となっている。また、比較例5では、スラッジ量の値が余りにも大きいので摩擦係数の測定は省略した。
【0086】
比較例6は、基油1にアミド化合物(添加剤D1)のみを添加したもので、スラッジ量及び摩擦係数で合格(◎)しているが、錆止め性試験で不合格(×)となっている。
比較例7のものは、基油1にアミド化合物(添加剤D2)のみを添加したもので、摩擦係数で合格(◎)しているが、錆止め性試験で不合格(×)及びスラッジ量で不合格(×)となっている。
比較例8は、基油1に多価アルコールエステル(添加剤E2)のみを添加したもので、錆止め性試験で合格(◎)し、摩擦係数で良(○)であるが、スラッジ量において不合格(×)となっている。
比較例9のものは、基油にクループ1基油(基油5)を使用したもので、コハク酸誘導体(添加剤A1)及びエポキシ化合物(添加剤B1)を併用しているが、錆止め性試験で合格(◎)しても、スラッジ量で不合格(×)となっている。また、比較例9でも、スラッジ量の値が余りにも大きいので摩擦係数の測定は省略した。
上記したように、各実施例のものでは、比較例に比べて、優良な結果が得られており、本発明における潤滑油組成物として好ましいことが判った。
【0087】
【表1】

【0088】
【表2】

【0089】
【表3】

【0090】
【表4】

【0091】
【表5】

【0092】
【表6】

【0093】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫黄分含量が0.3質量%以下の鉱油及び/または合成油の基油に、添加剤としてコハク酸誘導体と、エポキシ化合物を含有することを特徴とする潤滑油組成物。
【請求項2】
上記コハク酸誘導体の酸価が10〜300mgKOH/g(JIS K2501)である請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項3】
上記エポキシ化合物が、エポキシ化脂肪酸エステルである請求項1または2に記載の潤滑油組成物。
【請求項4】
潤滑油組成物中に上記コハク酸誘導体が0.001〜0.5質量%、エポキシ化合物が0.01〜5質量%含まれている請求項1〜3のいずれかに記載の潤滑油組成物。
【請求項5】
添加剤としてさらにアミン化合物、アミド化合物、多価アルコールエステルの少なくとも1つを含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の潤滑油組成物。
【請求項6】
上記基油がGTLである請求項1〜5のいずれかに記載の潤滑油組成物。
【請求項7】
上記基油がポリαオレフィンである請求項1〜5のいずれかに記載の潤滑油組成物。

【公開番号】特開2011−140643(P2011−140643A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−271967(P2010−271967)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【出願人】(000186913)昭和シェル石油株式会社 (322)
【Fターム(参考)】