説明

潤滑油組成物

【課題】従来の潤滑油組成物の低粘度による省燃費性能をさらに超える省燃費化要求に応える潤滑油組成物を提供する。
【解決手段】(A)%Cが2以下であり、100℃における動粘度が1.5〜4.5mm/sに調整してなる潤滑油基油に、(B)粘度指数向上剤として(B1)重量平均分子量50,000以下のポリ(メタ)クリレートを組成物全量基準で1〜10質量%、および(B2)重量平均分子量100,000〜250,000のポリ(メタ)クリレートを組成物全量基準で0.1〜5質量%含有し、80℃における動粘度(Vk:mm/s)と高剪断粘度(Vs:mPa・s)の比(Vs/Vk)が1未満、40℃、平均速度 3.0m/s、すべり率10%、面圧0.4GPaにおけるトラクション係数が0.02以下であることを特徴とする潤滑油組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は潤滑油組成物に関し、詳しくは、省燃費性の高い、自動車用の自動変速機、手動変速機、無段変速機に好適な潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、炭酸ガス排出量の削減など、環境問題への対応から自動車、建設機械、農業機械等の省エネルギー化、すなわち、省燃費化が急務となっており、エンジンや変速機、終減速機、圧縮機、油圧装置等の装置には省エネルギーへの寄与が強く求められている。そのため、これらに使用される潤滑油には、従来に比べより攪拌抵抗や摩擦抵抗を減少することが求められている。
【0003】
省燃費化手段のひとつとして、潤滑油の低粘度化が挙げられる。例えば、自動車用自動変速機や無段変速機はトルクコンバータ、湿式クラッチ、歯車軸受機構、オイルポンプ、油圧制御機構などを有し、また、手動変速機や終減速機は歯車軸受機構を有しており、これらに使用される潤滑油をより低粘度化することにより、トルクコンバータ、湿式クラッチ、歯車軸受機構およびオイルポンプ等の攪拌抵抗および摩擦抵抗が低減され、動力の伝達効率が向上することで自動車の燃費の向上が可能となる。
【0004】
しかしながら、これらに使用される潤滑油は、先に述べたように、油圧制御装置の媒体としても使用されており、過度な低粘度化はオイルポンプや制御バルブ等からのオイルの漏れにより、十分な油圧を発生できない等の不具合を生じる。このため、機械の寿命が尽きるまで、使用される潤滑油は必要な粘度を保持する必要がある。
【0005】
このため、従来での技術は、燃費向上のため潤滑油組成物としては低粘度にしながら、基油の粘度を高くすることにより、せん断安定性、潤滑油寿命等の性能保持し、高温高せん断(HTHS)粘度も高くすることで、油膜保持性能を高め、耐摩耗性、耐ピッチング性等に優れ、せん断安定性も良好で、低温粘度特性にも優れる自動変速機油を提供することとしていた(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、これでは近年の更なる省燃費化要求に十分に応えきれなくなってきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−096925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような実情に鑑みなされたものであり、その目的は、潤滑油組成物の粘度を保持しながら従来の概念を超える手段でさらなる省燃費性を実現する潤滑油組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決するために、潤滑油基油とポリマーに着目し、検討した結果、特定の基油と特定のポリ(メタ)クリレート系添加剤を選択した潤滑油組成物が、上記課題を解決できる事を見いだし、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、(A)%Cが2以下であり、100℃における動粘度が1.5〜4.5mm/sに調整してなる潤滑油基油に、(B)粘度指数向上剤として(B1)重量平均分子量50,000以下のポリ(メタ)クリレートを組成物全量基準で1〜10質量%、および(B2)重量平均分子量100,000〜250,000のポリ(メタ)クリレートを組成物全量基準で0.1〜5質量%含有し、80℃における動粘度(Vk:mm/s)と高剪断粘度(Vs:mPa・s)の比(Vs/Vk)が1未満、40℃、平均速度 3.0m/s、すべり率10%、面圧0.4GPaにおけるトラクション係数が0.02以下であることを特徴とする潤滑油組成物にある
【0010】
また本発明は、音波剪断試験8時間後の80℃での粘度低下率8%以下であることを特徴とする前記記載の潤滑油組成物にある。
また本発明は、オイルポンプを構成要素に含有する機構に用いられることを特徴とする前記記載の潤滑油組成物にある。
また本発明は、無段変速機用であることを特徴とする前記記載の潤滑油組成物にある。
【発明の効果】
【0011】
本発明の潤滑油組成物は、従来品からさらに潤滑にかかる抵抗を低減できるため、例えば自動車用手動変速機用、自動変速機用、無段変速機用又は手動変速機用あるいは自動車用終減速機用、そのなかでも特に無段変速機用として使用することで自動車の燃費の向上に寄与することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を説明する。
本発明における(A)潤滑油基油は、%Cが2以下であり、100℃における動粘度が1.5〜4.5mm/sに調整してなる潤滑油基油であり、鉱油系潤滑油基油、合成系潤滑油基油及びこれらの混合物を用いることができる。
【0013】
鉱油系潤滑油基油としては、原油を常圧蒸留及び減圧蒸留して得られた潤滑油留分を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄、白土処理等の精製処理を単独又は二つ以上適宜組み合わせて精製したパラフィン系、ナフテン系等の鉱油系潤滑油基油や、ノルマルパラフィン、イソパラフィン等が挙げられる。なお、これらの基油は単独でも、2種以上任意の割合で組み合わせて使用してもよい。
【0014】
好ましい鉱油系潤滑油基油としては以下の基油を挙げることができる。
(1) パラフィン基系原油および/または混合基系原油の常圧蒸留による留出油;
(2) パラフィン基系原油および/または混合基系原油の常圧蒸留残渣油の減圧蒸留留
出油(WVGO);
(3) 潤滑油脱ろう工程により得られるワックスおよび/またはGTLプロセス等により製造されるフィッシャートロプシュワックス;
(4) (1)〜(3)の中から選ばれる1種または2種以上の混合油のマイルドハイドロクラッキング処理油(MHC);
(5) (1)〜(4)の中から選ばれる2種以上の油の混合油;
(6) (1)、(2)、(3)、(4)または(5)の脱れき油(DAO);
(7) (6)のマイルドハイドロクラッキング処理油(MHC);
(8) (1)〜(7)の中から選ばれる2種以上の油の混合油などを原料油とし、この原料油
および/またはこの原料油から回収された潤滑油留分を、通常の精製方法によって精製し、潤滑油留分を回収することによって得られる潤滑油
【0015】
ここでいう通常の精製方法とは特に制限されるものではなく、潤滑油基油製造の際に用いられる精製方法を任意に採用することができる。通常の精製方法としては、例えば、(ア)水素化分解、水素化仕上げなどの水素化精製、(イ)フルフラール溶剤抽出などの溶剤精製、(ウ)溶剤脱ろうや接触脱ろうなどの脱ろう、(エ)酸性白土や活性白土などによる白土精製、(オ)硫酸洗浄、苛性ソーダ洗浄などの薬品(酸またはアルカリ)精製などが挙げられる。本発明ではこれらの1つまたは2つ以上を任意の組み合わせおよび任意の順序で採用することができる。
【0016】
本発明で用いる鉱油系潤滑油基油としては、上記(1)〜(8)から選ばれる基油をさらに以下の処理を行って得られる基油が特に好ましい。
すなわち、上記(1)〜(8)から選ばれる基油をそのまま、またはこの基油から回収された潤滑油留分を、水素化分解あるいはワックス異性化し、当該生成物をそのまま、もしくはこれから潤滑油留分を回収し、次に溶剤脱ろうや接触脱ろうなどの脱ろう処理を行い、その後、溶剤精製処理するか、または、溶剤精製処理した後、溶剤脱ろうや接触脱ろうなどの脱ろう処理を行って製造される水素化分解鉱油及び/又はワックス異性化イソパラフィン系基油が好ましく用いられる。この水素化分解鉱油及び/又はワックス異性化イソパラフィン系基油は、基油全量基準で好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、特に好ましくは70質量%以上使用することが望ましい。
【0017】
また、合成系潤滑油基油としては、ポリα−オレフィン又はその水素化物、イソブテンオリゴマー又はその水素化物、イソパラフィン、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ジエステル(例えば、ジトリデシルグルタレート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート等)、ポリオールエステル(例えば、トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、ペンタエリスリトール2−エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールペラルゴネート等)、ポリオキシアルキレングリコール、ジアルキルジフェニルエーテル、ポリフェニルエーテル等が挙げられる。
【0018】
好ましい合成系潤滑油基油としてはポリα−オレフィンが挙げられる。ポリα−オレフィンとしては、典型的には、炭素数2〜32、好ましくは6〜16のα−オレフィンのオリゴマーまたはコオリゴマー(例えば、1−オクテンオリゴマー、1−デセンオリゴマー、エチレン−プロピレンコオリゴマー等)及びその水素化物が挙げられる。
【0019】
ポリα−オレフィンの製法については特に制限はないが、例えば、三塩化アルミニウム、三フッ化ホウ素または三フッ化ホウ素と水、アルコール(例えば、エタノール、プロパノールまたはブタノール)、カルボン酸、またはエステル(例えば、酢酸エチルまたはプロピオン酸エチル)との錯体を含むフリーデル・クラフツ触媒のような重合触媒の存在下でのα−オレフィンの重合等が挙げられる。
【0020】
本発明における(A)潤滑油基油は、上記のような2種類以上の鉱油系基油同志あるいは合成油系基油同志の混合物であっても差し支えなく、鉱油系基油と合成油系基油との混合物であっても差し支えない。そして、上記混合物における2種類以上の基油の混合比は、任意に選ぶことができる。
【0021】
本発明の変速機用潤滑油組成物における(A)潤滑油基油は、100℃における動粘度が1.5〜4.5mm/sに調整してなる潤滑油基油である。
(A)成分としては、具体的には以下の(A−a)〜(A−c)から選ばれる1種又は2種以上を混合して用いることが好ましい。
(A−a)100℃における動粘度が1.5〜3.5mm/s未満、好ましくは1.9〜3.2mm/sの鉱油系基油
(A−b)100℃における動粘度が3.5〜7mm/s未満、好ましくは3.6〜4.5mm/sの鉱油系基油
(A−c)100℃における動粘度が1.5〜7mm/s未満、好ましくは3.8〜4.5mm/sのポリα−オレフィン系基油
【0022】
ここで、(A−a)〜(A−b)の潤滑油基油の%Cは2以下であり、1以下であることが好ましく、0.5以下であることがさらに好ましく、実質的に0であることが特に好ましい。(A−c)の%Cは実質的に0である。(A)潤滑油基油の%Cを2以下とすることでより酸化安定性に優れ、かつ本発明の条件であるトラクション係数0.02以下の潤滑油組成物を得ることができる。
なお、本発明において%Cとは、ASTM D 3238−85に準拠した方法により求められる芳香族炭素数の全炭素数に対する百分率を示す。
【0023】
また、(A−a)〜(A−c)の潤滑油基油は、その粘度指数に格別の限定はないが、粘度指数は80以上が好ましく、より好ましくは100以上、特に好ましくは120以上であり、通常200以下、好ましくは160以下であることが望ましい。粘度指数を80以上とすることによって、低温から高温にわたり良好な粘度特性を示す組成物を得ることができるとともに、トラクション係数も低いものが得られる。また粘度指数が高すぎると組成的にノルマルパラフィン量が増えすぎ、低温流動性が悪化する。
【0024】
また、本発明における(A−a)〜(A−b)の潤滑油基油は、その硫黄含有量に格別の限定はないが、0.1質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以下がより好ましく、0.02質量%以下がさらに好ましく、0.01質量%以下が特に好ましく、0.005質量%以下が最も好ましい。なお、(A−c)の硫黄含有量は実質的に0%である。(A)成分の硫黄含有量を低減することで組成物の酸化安定性により優れた組成物を得ることができる。
【0025】
本発明においては、上記(A−a)〜(A−c)をそれぞれ単独でも使用することができるが、任意に混合使用することができる。中でも、(A−a)と、(A−b)及び/又は(A−c)を併用することが好ましい。なお、(A−a)成分及び/又は(A−b)成分と(A−c)成分を併用する場合、(A−c)成分の含有量は、基油全量基準で、好ましくは1〜50質量%、より好ましくは3〜20質量%、さらに好ましくは3〜10質量%である。特に、(A−c)成分を3〜10質量%程度配合することで、安価かつ効果的に、疲労寿命、低温特性、酸化安定性に優れた効果を発現することができる。
【0026】
本発明における(A)潤滑油基油の100℃における動粘度は1.5〜4.5mm/sであり、好ましくは2.8〜4.0mm/s、特に好ましくは3.6〜3.9mm/sである。100℃における動粘度を4.5mm/s以下とすることによって、流体抵抗が小さくなるため潤滑箇所での摩擦抵抗がより小さい潤滑油組成物を得ることが可能となり、低温粘度に優れた組成物(例えば、−40℃におけるブルックフィールド粘度が2万mPa・s以下)とすることができる。また、100℃における動粘度を1.5mm/s以上とすることによって、油膜形成が十分となり、潤滑性により優れ、また、高温条件下での基油の蒸発損失がより小さい潤滑油組成物を得ることが可能となる。
【0027】
また、本発明における(A)潤滑油基油の%Cは2以下であり、1以下であることが好ましく、0.5以下であることがさらに好ましく、実質的に0であることが特に好ましい。(A)潤滑油基油の%Cを2以下とすることでより酸化安定性に優、かつ本発明の条件である、トラクション係数0.02以下の組成物を得ることができる。
【0028】
また、本発明における(A)潤滑油基油は、その粘度指数に格別の限定はないが、粘度指数は80以上が好ましく、より好ましくは100以上、特に好ましくは120以上であることが望ましい。粘度指数を80以上とすることによって、低温から高温にわたり良好な粘度特性を示す組成物を得ることができるとともに、トラクション係数も低いものが得られる。
【0029】
また、本発明における(A)潤滑油基油は、その硫黄含有量に格別の限定はないが、0.1質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以下がより好ましく、0.02質量%以下がさらに好ましく、0.01質量%以下が特に好ましく、0.005質量%以下が最も好ましい。(A)成分の硫黄含有量を低減することで組成物の酸化安定性により優れた組成物を得ることができる。
【0030】
本発明における(A)潤滑油基油は前述の通りであるが、潤滑油組成物としての疲労寿命に問題がある場合は、この基油に動粘度20mm/s〜50mm/sの溶剤精製基油を、(A)%Cが2以下であり、100℃における動粘度が1.5〜4.5mm/sに調整してなる潤滑油基油となり、潤滑油組成物の40℃、平均速度 3.0m/s、すべり率10%、面圧0.4GPaにおけるトラクション係数が0.02以下となる範囲で混合して使用することができる。
この動粘度20mm/s〜50mm/sの溶剤精製基油としては、硫黄分が0.3質量%〜0.7質量%であり、%Cが5以上9以下のものが好ましく使用される。
【0031】
本発明の潤滑油組成物における粘度指数向上剤((B)成分)は、下記一般式(1)で表されるモノマーから誘導される構造単位を実質的に含有するポリ(メタ)アクリレート系添加剤であることが好ましい。
【化1】

【0032】
一般式(1)において、Rは水素又はメチル基、好ましくはメチル基、Rは炭素数1から30の炭化水素基である。
炭素数1から30の炭化水素基としては、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、直鎖又は分枝のペンチル基、直鎖又は分枝のヘキシル基、直鎖又は分枝のヘプチル基、直鎖又は分枝のオクチル基、直鎖又は分枝のノニル基、直鎖又は分枝のデシル基、直鎖又は分枝のウンデシル基、直鎖又は分枝のドデシル基、直鎖又は分枝のトリデシル基、直鎖又は分枝のテトラデシル基、直鎖又は分枝のペンタデシル基、直鎖又は分枝のヘキサデシル基、直鎖又は分枝のヘプタデシル基、直鎖又は分枝のオクタデシル基、直鎖又は分枝のノナデシル基、直鎖又は分枝のイコシル基、直鎖又は分枝のヘンイコシル基、直鎖又は分枝のドコシル基、直鎖又は分枝のトリコシル基、直鎖又は分枝のテトラコシル基等の炭素数1〜30のアルキル基等が挙げられる。
【0033】
本発明における(B)成分は、下記一般式(2)や(3)で表されるモノマーから誘導される構造単位を含むこともできる。
【化2】

【0034】
一般式(2)において、Rは水素又はメチル基、好ましくはメチル基、Rは炭素数1〜30のアルキレン基、Eは窒素原子を1〜2個、酸素原子を0〜2個含有するアミン残基又は複素環残基を示し、aは0又は1の整数を示す。
【化3】

【0035】
一般式(3)において、Rは水素又はメチル基である。Eは窒素原子を1〜2個、酸素原子を0〜2個含有するアミン残基又は複素環残基を示す。
【0036】
およびEで表される基としては、具体的には、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、アニリノ基、トルイジノ基、キシリジノ基、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、モルホリノ基、ピロリル基、ピロリノ基、ピリジル基、メチルピリジル基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、キノニル基、ピロリドニル基、ピロリドノ基、イミダゾリノ基、およびピラジノ基等が例示できる。
【0037】
この好ましい例としては、具体的には、ジメチルアミノメチルメタクリレート、ジエチルアミノメチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、2−メチル−5−ビニルピリジン、モルホリノメチルメタクリレート、モルホリノエチルメタクリレート、N−ビニルピロリドン及びこれらの混合物等が例示できる。
【0038】
粘度指数向上剤((B)成分)は、具体的には、下記(Ba)〜(Bd)からなる一般式(1)のモノマーと、必要に応じて使用される一般式(2)および/または(3)で表される(Be)の極性基含有モノマーとの共重合体である。
(Ba)Rが炭素数1〜4のアルキル基である(メタ)アクリレート
(Bb)Rが炭素数5〜10のアルキル基である(メタ)アクリレート
(Bc)Rが炭素数12〜18のアルキル基である(メタ)アクリレート
(Bd)Rが炭素数20以上のアルキル基である(メタ)アクリレート
(Be)極性基含有モノマー
【0039】
本発明においては、(B)成分におけるモノマーの構成比としては、ポリ(メタ)アクリレートを構成するモノマー全量基準で、以下の通りであることが好ましい。
(Ba)成分:好ましくは10〜60質量%、より好ましくは20〜50質量%、
(Bb)成分:好ましくは0〜50質量%、より好ましくは0〜20質量%
(Bc)成分:好ましくは10〜60質量%、より好ましくは20〜40質量%、
(Bd)成分:好ましくは1〜20質量%、より好ましくは5〜10質量%、
(Be)成分:好ましくは0〜20質量%、より好ましくは0〜10質量%、特に好ましくは0〜5質量%
【0040】
この組成にすることにより、組成物の低温粘度特性と疲労寿命延長効果を両立させることができる。
【0041】
上記ポリ(メタ)アクリレートの製造法は任意であるが、例えば、ベンゾイルパーオキシド等の重合開始剤の存在下で、モノマー(Ba)〜(Be)の混合物をラジカル溶液重合させることにより容易に得ることができる。
【0042】
本発明における(B)成分は粘度指数向上剤として、少なくとも2種類の重量平均分子量をもつ、(B1)重量平均分子量50,000以下のポリ(メタ)クリレートを組成物全量基準で1〜10質量%、および(B2)重量平均分子量100,000〜250,000のポリ(メタ)クリレートを組成物全量基準で0.1〜5質量%使用する。
【0043】
(B1)の重量平均分子量は50,000以下、好ましくは40,000以下、さらに好ましくは30,000以下であり、5,000以上、好ましくは10,000以上、さらに好ましくは15,000以上である。50,000を超えると(B2)との組み合わせにおいて剪断安定性が低すぎ、潤滑油組成物としての必要粘度を維持することができない。また5,000より小さいと高剪断粘度が高くなるため、80℃における動粘度(Vk:mm/s)と高剪断粘度(Vs:mPa・s)の比(Vs/Vk)が1未満を満足させることができない。
【0044】
なお高剪断粘度を測定するTBS粘度計では、剪断速度10−6/sで、計測上、高剪断粘度(Vs:mPa・s)の比(Vs/Vk)が1となるのは分子量が50,000を超える分子量であり、ここでいう1未満とは理論的な値である。
【0045】
(B2)の重量平均分子量は250,000以下、好ましくは200,000以下、さらに好ましくは170,000以下であり、100,000以上、好ましくは120,000以上、さらに好ましくは150,000以上である。250,000を超えると(B1)との組み合わせにおいて剪断安定性が低すぎ、潤滑油組成物としての必要粘度を維持することができない。また100,000より小さくなると高剪断粘度が十分に低くなりにくいため、80℃における動粘度(Vk:mm/s)と高剪断粘度(Vs:mm/s)の比(Vs/Vk)が1未満を満足させることができない。
【0046】
なお、ここでいう重量平均分子量は、ウォーターズ社製150−C ALC/GPC装置に東ソー社製のGMHHR−M(7.8mmID×30cm)のカラムを2本直列に使用し、溶媒としてはテトラヒドロフラン、温度23℃、流速1mL/分、試料濃度1質量%、試料注入量75μL、検出器示差屈折率計(RI)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量を意味する。
【0047】
本発明における(B1)の添加量は組成物全量基準で10質量%以下、好ましくは9質量%以下、さらに好ましくは8質量%以下であり、1質量%以上、好ましくは2質量%以上、より好ましくは4質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上である。10質量%を超えると高剪断粘度が高くなりすぎ、1質量%未満では十分な組成物粘度を確保できない。
【0048】
本発明における(B2)の添加量は組成物全量基準で5質量%以下、好ましくは4質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下であり、0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上である。5質量%を超えると剪断による粘度低下により必要な潤滑油組成物の粘度を機械の寿命において確保できず、0.1質量%未満では十分な組成物粘度を確保できない。
【0049】
本発明の潤滑油組成物における(B)成分のポリ(メタ)アクリレート系添加剤の配合量は上記のとおりであるが、潤滑油組成物の80℃における動粘度が5〜10mm/s、好ましくは6〜9mm/s、かつ、潤滑油組成物の粘度指数が120〜270、好ましくは150〜250、より好ましくは170〜220となるような量であることが好ましい。
【0050】
本発明の潤滑油組成物は80℃における動粘度(Vk:mm/s)と高剪断粘度(Vs:mPa・s)の比(Vs/Vk)が1未満となることが必要である。ここでいう高剪断粘度は、ASTM D−4683で規定されているものであり、HTHS粘度とも称される。本発明では80℃ 、剪断速度としては1×10−1 の条件で測定されたものである。
【0051】
Vs/Vkが1未満とは、高剪断時、組成物の粘度が低下することを意味しており、ごく薄い油膜を介在して摺動する条件、具体的には100μm以下の油膜において潤滑される条件、例えば軸受やクラッチ、ギヤの歯面等での潤滑条件では高い剪断速度になるため、粘度指数向上剤で粘度を上げている潤滑油組成物では起こりうる現象である。本発明ではこの粘度の低下量を1未満と規定することにより確保し、高剪断条件化での粘度低下による抵抗を下げることにより、省燃費性を確保することを目的としている。この高剪断時の粘度とはあくまで流体潤滑状態であり、個体間の接触は発生していない。
したがってこの値は小さいほど省燃費性が向上することになるが、値が小さすぎると潤滑性に問題が発生するため、限界がある。このため下限値は0.7であり、好ましくは0.8以上、より好ましくは0.85以上である。
【0052】
また本発明の潤滑油組成物は40℃、平均速度 3.0m/s、すべり率10%、面圧0.4GPaにおけるトラクション係数が0.02以下である。
このトラクション係数はスチールボール-ディスク装置で測定されたものである。これは半径13cmの円盤を286.7rpmで回転させ、半径10cmのところに半径1.27cmのボールに20Nの荷重をかけ、40℃で平均速度 3.0m/s、すべり率10%、面圧0.4GPaにおけるボールにかかる回転トルクから算出されたものである。
【0053】
この条件はいわゆる完全な弾性流体潤滑条件までには至らず、まだ流体潤滑条件と弾性流体潤滑条件の中間の領域である。従来の技術では高い面圧、具体的には1GPaを超える面圧でトラクション係数を測定し、その潤滑油組成物の高い面圧条件化での油膜の形成のしやすさ、すなわちトラクション係数が高い組成物ほど油膜を形成しやすく過酷な条件での潤滑性が良好であると判断されていた。
【0054】
しかし本発明でのトラクション係数の測定条件は前述したとおり0.4GPaという中間面圧条件下での測定値であり、玉軸受やころ軸受での潤滑を除けば、機械の潤滑領域のうち、トラクション係数が潤滑にかかわる抵抗となっている部分の代表条件と考えても良い。したがって、本条件下のトラクション係数を低減することは、機械の潤滑条件でトラクション係数にかかる抵抗を下げることになる。すなわち、本発明では40℃で平均速度 3.0m/s、すべり率10%、面圧0.4GPaにおけるトラクション係数を0.02以下とすることで、より省燃費効果を確保することができるのである。
この条件下でのトラクション係数は0.02以下であり、低ければ低いほど良いが、先に述べたように、より高い面圧下に玉軸受やころ軸受等の潤滑性を確保するため0.005以上であることが好ましい。
【0055】
本発明の潤滑油組成物は音波剪断試験8時間後の80℃での粘度低下率が8%以下であることが好ましい。ここでいう音波剪断試験とはJASO M 347で規定される試験法によるものである。
【0056】
先に述べたように、本発明の潤滑油組成物は、油圧制御装置の媒体としても使用されており、粘度が低下するとオイルポンプや制御バルブ等からのオイルの漏れにより、十分な油圧を発生できない等の不具合を生じる。このため、機械の寿命が尽きるまで、使用される潤滑油は必要な粘度を保持する必要がある。
このため、本発明の潤滑油組成物に繰り返し剪断力がかかっても十分な粘度が保持される必要がある。本発明の潤滑油組成物が音波剪断試験8時間後の80℃での粘度低下率が8%以下であるということは、これを保障する値である。もちろんより好ましくは7%以下であり、さらに好ましくは6%以下である。
【0057】
また本発明の潤滑油組成物は、自動車用の手動変速機、自動変速機、無段変速機、終減速機、エンジン油、農業機械や建設用機械、等さまざまな用途に使用可能である。もっとも好適に使用されるのは無段変速機、である。これは潤滑において剪断がかかる箇所が多く、面圧も高い分が多いため、本発明の性能が最も効果的に使用されうるためである。
【0058】
本発明の潤滑油組成物には、その性能をさらに向上させる目的で、又は潤滑油組成物に必要な性能を付与するために、必要に応じて、粘度指数向上剤、極圧剤、分散剤、金属系清浄剤、摩擦調整剤、酸化防止剤、腐食防止剤、防錆剤、抗乳化剤、金属不活性化剤、流動点降下剤、シール膨潤剤、消泡剤、着色剤等の各種添加剤を単独で又は数種類組み合わせて配合しても良い。
【0059】
粘度指数向上剤としては、前記した(B)成分のポリ(メタ)アクリレートのほか、非分散型または分散型エチレン−α−オレフィン共重合体またはその水素化物、ポリイソブチレンまたはその水素化物、スチレン−ジエン水素化共重合体、スチレン−無水マレイン酸エステル共重合体、ポリアルキルスチレンおよび構造式(1)で表される(メタ)アクリレートモノマーとエチレン/プロピレン/スチレン/無水マレイン酸のような不飽和モノマーとの共重合体等の粘度指数向上剤をさらに用いることができる。
本発明の潤滑油組成物に粘度指数向上剤((B)成分を除く)を配合する場合、その配合量は、組成物の100℃における動粘度及び粘度指数の規定を満たす限り制限はなく、通常、組成物全量基準で0.1〜15質量%、好ましくは0.5〜5質量%である。
【0060】
極圧剤としては、亜リン酸、亜リン酸モノエステル類、亜リン酸ジエステル類、亜リン酸トリエステル類、及びこれらの塩から選ばれる少なくとも1種のリン系極圧剤、硫化油脂類、硫化オレフィン類、ジヒドロカルビルポリスルフィド類、ジチオカーバメート類、チアジアゾール類、及びベンゾチアゾール類から選ばれる少なくとも1種の硫黄系極圧剤、及び/又は、チオ亜リン酸、チオ亜リン酸モノエステル類、チオ亜リン酸ジエステル類、チオ亜リン酸トリエステル類、ジチオ亜リン酸、ジチオ亜リン酸モノエステル類、ジチオ亜リン酸ジエステル類、ジチオ亜リン酸トリエステル類、トリチオ亜リン酸、トリチオ亜リン酸モノエステル類、トリチオ亜リン酸ジエステル類、トリチオ亜リン酸トリエステル類、及びこれらの塩から選ばれる少なくとも1種のリン−硫黄系極圧剤からなる極圧剤を配合するのが好ましい。
【0061】
分散剤としては、炭素数40〜400の炭化水素基を有する、コハク酸イミド、ベンジルアミン、ポリアミン、及び/又はそのホウ素化合物誘導体等の無灰分散剤を配合することができる。
本発明においては、上記分散剤の中から任意に選ばれる1種類あるいは2種類以上の化合物を任意の量で含有させることができるが、通常、その含有量は、組成物全量基準で0.01〜15質量%、好ましくは0.1〜8質量%である。
【0062】
金属系清浄剤としては、アルカリ土類金属スルホネート、アルカリ土類金属フェネート、アルカリ土類金属サリシレート等の金属系清浄剤が挙げられる。
本発明においては、上記金属系清浄剤の中から任意に選ばれる1種類あるいは2種類以上の化合物を任意の量で含有させることができるが、通常、その含有量は、組成物全量基準で0.01〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%である。
【0063】
摩擦調整剤としては、潤滑油用の摩擦調整剤として通常用いられる任意の化合物が使用可能であるが、炭素数6〜30のアルキル基又はアルケニル基、特に炭素数6〜30の直鎖アルキル基又は直鎖アルケニル基を分子中に少なくとも1個有する、アミン化合物、イミド化合物、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、脂肪酸金属塩等が好ましく用いられる。
本発明においては、上記摩擦調整剤の中から任意に選ばれる1種類あるいは2種類以上の化合物を任意の量で含有させることができるが、通常、その含有量は、組成物全量基準で0.01〜5.0質量%、好ましくは0.03〜3.0質量%である。
【0064】
酸化防止剤としては、フェノール系化合物やアミン系化合物等、潤滑油に一般的に使用されているものであれば使用可能である。
具体的には、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール等のアルキルフェノール類、メチレン−4,4−ビスフェノール(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール)等のビスフェノール類、フェニル−α−ナフチルアミン等のナフチルアミン類、ジアルキルジフェニルアミン類、ジ−2−エチルヘキシルジチオリン酸亜鉛等のジアルキルジチオリン酸亜鉛類、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)脂肪酸(プロピオン酸等)あるいは(3−メチル−5−tertブチル−4−ヒドロキシフェニル)脂肪酸(プロピオン酸等)と1価又は多価アルコール、例えばメタノール、オクタノール、オクタデカノール、1,6−ヘキサジオール、ネオペンチルグリコール、チオジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ペンタエリスリトール等とのエステル等が挙げられる。
これらの中から任意に選ばれた1種類あるいは2種類以上の化合物は、任意の量を含有させることができるが、通常、その含有量は、潤滑油組成物全量基準で0.01〜5質量%、好ましくは0.1〜3質量%であるのが望ましい。
【0065】
腐食防止剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、トリルトリアゾール系、チアジアゾール系、及びイミダゾール系化合物等が挙げられる。
【0066】
防錆剤としては、例えば、石油スルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、ジノニルナフタレンスルホネート、アルケニルコハク酸エステル、及び多価アルコールエステル等が挙げられる。
【0067】
抗乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、及びポリオキシエチレンアルキルナフチルエーテル等のポリアルキレングリコール系非イオン系界面活性剤等が挙げられる。
【0068】
金属不活性化剤としては、例えば、イミダゾリン、ピリミジン誘導体、アルキルチアジアゾール、メルカプトベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾール又はその誘導体、1,3,4−チアジアゾールポリスルフィド、1,3,4−チアジアゾリル−2,5−ビスジアルキルジチオカーバメート、2−(アルキルジチオ)ベンゾイミダゾール、及びβ−(o−カルボキシベンジルチオ)プロピオンニトリル等が挙げられる。
【0069】
流動点降下剤としては、潤滑油基油に応じて公知の流動点降下剤を任意に選択することができるが、重量平均分子量が好ましくは20,000〜500,000、より好ましくは50,000〜300,000、特に好ましくは80,000〜200,000のポリ(メタ)クリレートが好ましい。
【0070】
消泡剤としては、潤滑油用の消泡剤として通常用いられる任意の化合物が使用可能であり、例えば、ジメチルシリコーン、フルオロシリコーン等のシリコーン類が挙げられる。これらの中から任意に選ばれた1種類あるいは2種類以上の化合物を任意の量で配合することができる。
【0071】
シール膨潤剤としては、潤滑油用のシール膨潤剤として通常用いられる任意の化合物が使用可能であり、例えば、エステル系、硫黄系、芳香族系等のシール膨潤剤が挙げられる。
【0072】
着色剤としては、通常用いられる任意の化合物が使用可能であり、また任意の量を配合することができるが、通常その配合量は、組成物全量基準で0.001〜1.0質量%である。
【0073】
これらの添加剤を本発明の潤滑油組成物に含有させる場合には、その含有量は組成物全量基準で、腐食防止剤、防錆剤、抗乳化剤ではそれぞれ0.005〜5質量%、流動点降下剤、金属不活性化剤では0.005〜2質量%、シール膨潤剤では0.01〜5質量%、消泡剤では0.0005〜1質量%の範囲で通常選ばれる。
【実施例】
【0074】
以下、本発明の内容を実施例及び比較例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
【0075】
(実施例1〜2、比較例1〜5)
表1に示す組成に従い、本発明に係る変速機用潤滑油組成物(実施例1〜2)を調製した。これらの組成物につき、以下に示す性能評価試験を行い、その結果を表1に示した。
また、表1に示す組成に従い、比較のための変速機用潤滑油組成物(比較例1〜5)を調製し、これらの組成物についても同様の性能評価試験を行い、その結果も表1に示した。
【0076】
[ポンプ試験 消費電力低減率]
ポンプ、圧力弁およびオイルタンクからなる試験装置を用いて、ポンプ回転数を一定として潤滑油を循環した際のポンプ消費電力を計測する。潤滑油はオイルタンクよりポンプにて汲み出され、圧力弁を通過してオイルタンクへ戻る構造となっている。圧力弁は潤滑油循環時の負荷を任意に設定可能であり、オイルタンクはヒーターを有しており潤滑油温度を任意に設定可能である。実施例では、潤滑油温度を80℃、負荷を13MPaに設定した際のオイルの消費電力を比較した。
【0077】
【表1】

【0078】
表1の結果から明らかにように、実施例1〜2の潤滑油組成物は、Vs/Vkが1未満であり、かつトラクション係数が0.02以下である。また音波剪断試験8時間後の80℃での粘度低下率が8%以下である。これに対し、比較例1はVs/Vkが1未満を満足せず、比較例2〜4はいずれも粘度低下率が8%を超え、比較例5はVs/Vkが1未満を満足せず、またトラクション係数が0.032と大きいものであった。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の潤滑油組成物は省燃費性に優れ、手動変速機用、自動変速機用、無段変速機用、終減速機用として有用に使用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)%Cが2以下であり、100℃における動粘度が1.5〜4.5mm/sに調整してなる潤滑油基油に、(B)粘度指数向上剤として(B1)重量平均分子量50,000以下のポリ(メタ)クリレートを組成物全量基準で1〜10質量%、および(B2)重量平均分子量100,000〜250,000のポリ(メタ)クリレートを組成物全量基準で0.1〜5質量%含有し、80℃における動粘度(Vk:mm/s)と高剪断粘度(Vs:mPa・s)の比(Vs/Vk)が1未満、40℃、平均速度 3.0m/s、すべり率10%、面圧0.4GPaにおけるトラクション係数が0.02以下であることを特徴とする潤滑油組成物。
【請求項2】
音波剪断試験8時間後の80℃での粘度低下率が8%以下であることを特徴とする請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項3】
オイルポンプを構成要素に含有する機構に用いられることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の潤滑油組成物。
【請求項4】
無段変速機用であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の潤滑油組成物。

【公開番号】特開2012−201808(P2012−201808A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68069(P2011−68069)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000004444)JX日鉱日石エネルギー株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】