説明

潤滑油組成物

米国自動車技術者協会(SAE)により75W−140として特徴付けられ、米国石油協会(API)のGL−5性能分類要件に適合する、可動部品の金属間接触を伴う装置に関連して使用するための潤滑油組成物であって、(a)(i)少なくとも1つの比較的低粘度のポリ−α−オレフィンと(ii)少なくとも1つのジエステルを含んでなるベースオイル;(b)(i)少なくとも1つの比較的高粘度のポリ−α−オレフィンと(ii)ポリイソブチレンを含んでなる増粘剤;および(c)少なくとも1つの、潤滑剤の特性および/または該潤滑剤を用いる装置の性能を改良するために効果的な少なくとも1つの添加剤を含んでなる性能添加剤を含む潤滑油組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に自動車および機械産業におけるギア、変速機および/または車軸用途に関連する多くの用途において有用性を有する潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
潤滑油組成物、特にギアおよび車軸潤滑液の重要な機能は、それを組み込んだ装置の耐用年数における高い信頼性および耐久性を提供することである。一般的に、潤滑油、および特にギアおよび車軸潤滑油は、商業的に成功するために比較的多くの性能基準を満たさなければならないことが多い。例えば商業的に成功する車軸潤滑油は、しばしば高い酸化安定性、互換性、剪断安定性、腐食防止または腐食耐性、摩耗保護、シフト性および長寿命を有することが求められる。これらの特性は、達成することが困難な一連の性能基準を示している。
【0003】
ギア潤滑油は、米国石油協会(「AIP」)により「GL」規格を用いて分類される。これらの分類は6等級に細分される。最も低い規格AIP GL−1は、無添加のベースオイルからなる軽荷重条件用に使用される油を分類する。最も高い規格AIP GL−6は、例えば、高速での摺動および大きな衝撃荷重がかかる極めて過酷な荷重条件用で、最大10%までの高性能耐摩耗性添加剤を含む油を分類する。しかしながら、等級API GL−5が大部分の厳しい要件を満たすため、最近では、等級API GL−6は利用されない。API GL−5の性能要件を満たして分類される潤滑油組成物は、一般的に、例えば、軸変位が非常に大きいハイポイドギアにおいて利用される。
【0004】
特定の用途に対して潤滑油を選択する場合、潤滑油組成物の粘度/温度の関係は考慮すべき別の重要な基準である。シングルグレードおよびマルチグレードの潤滑油のベースとして、一般的に使用される鉱物油は、温度変化により比較的大きな粘度変化を示す。温度により粘度においてこのような比較的大きな変化を示す液体は、低い粘度指数を示す。SAE J306は、車軸およびギア潤滑油組成物に対する粘度要件を記載する。この分類は、高温下および低温下の両方で測定した潤滑油の粘度に基づく。高温動粘性率はASTM D 445に従って測定し、結果はセンチストークスス(cSt)で示す。低温の粘度値はASTM D 2983に従って測定し、結果はセンチポアーズ(cP)で示す。これら2つの粘度単位は、下記式1のように相関している。
(cP/(密度、g/cm))=cSt (式1)
車軸およびギア潤滑油組成物の適格性に関する高温および低温要件を、下記表1にまとめている。
【0005】
【表1】

【0006】
これらの米国自動車技術者協会(「SAE」)規格は、器機メーカーによる自動車ギア、車軸、およびマニュアル変速機用潤滑油の決定および推奨における使用、油販売業者にとってはこれらの潤滑油の粘度に関する分類における使用、ユーザーにとってはそれらのオーナーのマニュアル書を理解することにおける使用を意図する。
【0007】
高温粘度は、液体の流体潤滑特性に関連している。いくつかの潤滑油組成物は、粘度調整剤または粘度指数向上剤として知られ、液体の粘度を増加させる働きをする高分子ポリマーを含有し得る。しかしながら、使用中、これらのポリマーは低分子量に剪断されることがあり、それにより新しい液体の粘度に比べて低粘度の液体を生じる。低温粘度要件は液体の流動性に関連し、低い気温下で重要な部分に適切な潤滑をもたらす。
【0008】
そのような潤滑油組成物を使用する種々の必要とされる特性を有する数多くの潤滑油組成物が製造されているが、使用することのできる改善されたクリーン性能の潤滑油組成物を提供するための添加剤または添加剤の組み合わせに対する要求が存在する。ギアオイルの納得できる性能が要求される一方、添加剤が低コストであり、簡単に製造されることが非常に望ましい。したがって、当技術分野において、これらの業界基準を満たしていて、さらに、容易に生産し得る費用効果のよい代替物を提供する潤滑油組成物、特に、SAE 75W−140として分類され、GL−5の性能要件を満たす潤滑油組成物に対する要求がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
出願人は、改良潤滑油組成物を開発し、多くの実施態様において、上述した基準に関して比較的高いレベルの性能を満たす潤滑油組成物を開発した。本明細書で使用する用語「潤滑油組成物」は、少なくとも1つの液体機能が部品間の摩擦を抑制または低減する、部品の金属間接触を伴う用途において用いられる液体組成物を含む広い意味において用いられる。例えば、本明細書において用いる用語「潤滑油組成物」には、ギアオイル、車軸油などが含まれる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
特定の実施態様において、本発明の潤滑油組成物は、(a)ベースオイル(base-stock);(b)増粘剤;および(c)少なくとも1つの添加剤を含んでなる。本発明の特定の潤滑油組成物は、(a)(i)低粘度ポリ−α−オレフィン(PAO)と(ii)少なくとも1つのジエステルを含んでなるベースオイル;(b)(i)少なくとも1つの比較的高粘度のPAO系増粘剤と(ii)ポリイソブチレンを含んでなる増粘剤;および(c)少なくとも1つの、潤滑油の特性および/またはその潤滑油を用いる装置の性能を改良するために効果的な少なくとも1つの添加剤を含んでなる性能添加剤パッケージを含んでなる。本発明の特定の潤滑油組成物は、75W−140のSAE粘度分類を有し、API GL−5性能要件満たす多粘性グレード潤滑油である。
【0011】
出願人は、75W−140のSAE粘度分類を有し、API GL−5性能要件を満たす本発明の潤滑油組成物が、
(a)約10〜35重量%の低粘度PAO;
(b)約30〜75重量%の高粘度PAO;
(c)約5〜30重量%のジエステル;
(d)約2〜25重量%のPIB(ポリイソブチレン);
(e)約5〜10重量%の添加剤パッケージ;および、場合により、
(f)0.001〜0.004重量%の消泡剤
を含んでなることを見出した。
【0012】
出願人は、本発明の特定のSAE 75W−140潤滑油組成物が、API GL−5性能要件を満たし、かつ、下記に対する有利な特性:リッジング、リップリング、孔食、剥離、スコーリングおよび摩耗の1つ以上、好ましくは全てに関して、リングギアおよびピニオンギアにおいて改善された性能を示す、費用効果に優れた潤滑油組成物を提供することを見出した。
【発明を実施するための形態】
【0013】
一態様において、本発明の潤滑油組成物は、(a)ベースオイル;(b)増粘剤;および(c)少なくとも1つの添加剤を含んでなる。特定の実施態様において、本発明の潤滑油組成物は、75W−140のSAE粘度分類を有し、API GL−5性能要件を満たす多粘性グレード潤滑油である。特定の実施態様において、本発明のベースオイルは、(i)低粘度ポリ−α−オレフィン(PAO)と(ii)少なくとも1つのジエステルを含む。特定の実施態様において、本発明の増粘剤は、(i)少なくとも1つの比較的高粘度のPAO系増粘剤と(ii)ポリイソブチレンを含む。特定の実施態様において、性能添加剤パッケージは、少なくとも1つの、潤滑油の特性および/またはその潤滑油を用いる装置の性能を改良するために効果的な少なくとも1つの添加剤を含む。本発明は、潤滑油を含む車軸、ギア変速機または運転システムのための完全に調製された潤滑油(完全に調製された重付加車軸液が含まれる)の調製方法および使用方法を提供する。
【0014】
一般的に、本発明のこれらの成分は、各用途の特定の必要性に応じて様々に異なる量で組成物中に存在し得ると考えられ、そのような全ての変動量は本発明の広義の範囲内にあると考えられる。それにもかかわらず、出願人は、特定の実施態様において、本発明の潤滑油組成物が、
(a)約15〜65重量%のベースオイル;
(b)約30〜75重量%の増粘剤;および
(c)約7〜35重量%の添加剤
を含むことを見出した。
【0015】
出願人は、本発明の特定の潤滑油組成物をリングギアおよびピニオンギアに関して使用した場合に、この潤滑油組成物が、リッジング、リップリング、孔食、剥離、スコーリングおよび摩耗の1つ以上、好ましくは全てに関して有利な特性を示すおよび/または有利な特性を生じることを見出した。
【0016】
本発明のPAOは、エチレンと高級オレフィンのコポリマーも含む、エチレンやプロピレンなどの低級オレフィンのポリマーを使用してもよいが、典型的には1−オクタンから1−ドデセンまでの直鎖α−オレフィン(1−デセンが好ましい原料である)の触媒的オリゴマー化(低分子量重合法)により製造することのできる炭化水素の分類を含む。本明細書に記載するような各成分に関して、一般的に、非常に多くの個々の化合物または化合物の組み合わせを使用することができる。
【0017】
特定の実施態様において、本発明のベースオイルは、少なくとも1つの低粘度PAOおよび少なくとも1つのジエステルを含む。本発明の低粘度PAOに関して、特定の実施態様において低粘度PAOは12cSt以下の粘度を有するポリ−α−オレフィンを含む。一実施態様において、本発明の低粘度PAOは、ChevronPhillips社のPAO−2およびIneos社のPAO−6を含む。このような低粘度PAOのさらなる例は当業者に明白であるはずである。本発明のジエステルに関して、特定の実施態様においてジエステルはアジピン酸エステルを含む。さらに別の実施態様において、アジピン酸エステルはアジピン酸デシルを含み、とりわけ、アジピン酸ジイソデシル、アゼライン酸ジイソデシルおよびアジピン酸ジトリデシルからなる群から選択される1つ以上のアジピン酸エステルを含む。これらの成分の幅広い範囲の相対濃度が存在し得ることが考えられるが、一般的に本発明のベースオイルは、特定の実施態様において、低粘度PAO:エステルを約7:1〜約1:3の重量比、好ましくは約2.6:1〜約1:1.6の重量比で含む。特定の実施態様において、本発明の潤滑油組成物は、低粘度PAOを約10〜35重量%、別の実施態様においては約12〜20重量%の量で含む。特定の実施態様において、本発明の潤滑油組成物は、ジエステルを約5〜30重量%、別の実施態様においては約7.5〜20重量%の量で含む。
【0018】
特定の実施態様において、本発明の増粘剤は、少なくとも1つの高粘度PAOおよびポリイソブチレンを含有する。本発明の高粘度PAOに関して、特定の実施態様において高粘度PAOは40cStより高い、好ましくは約40〜約1000cStの粘度を有するポリ−α−オレフィンを含む。一実施態様において、本発明の高粘度PAOは、ExxonMobil社またはChemtura社のPAO−100を含む。このような高粘度PAOのさらなる例は当業者に明白であるはずである。本発明のポリイソブチレンに関して、特定の実施態様においてポリイソブチレンはIneos H−1500−SPAまたはLubrizol 8404を含む。ポリイソブチレンのさらなる例は当業者に明白であるはずである。これらの成分の幅広い範囲の相対濃度が存在し得ることが考えられるが、一般的に本発明の増粘剤は、特定の実施態様において、高粘度PAO:ポリイソブチレンを約37.5:1〜約1.2:1の重量比、好ましくは約12:1〜約2.6:1の重量比で含む。特定の実施態様において、本発明の潤滑油組成物は、高粘度PAOを約30〜75重量%、別の実施態様においては約40〜60重量%の量で含む。特定の実施態様において、本発明の潤滑油組成物は、ポリイソブチレンを約2〜25重量%、別の実施態様においては約5〜15重量%の量で含む。
【0019】
特定の実施態様において、本発明の少なくとも1つの性能添加剤は、潤滑油の特性および/またはその潤滑油を用いる装置の性能を改良するために効果的な少なくとも1つの添加剤を含んでなる性能添加剤パッケージを含む。特定の実施態様において、性能添加剤は、イオウ化学に基づく少なくとも1つの添加剤およびリン化学に基づく少なくとも1つの性能添加剤を含む。典型的な添加剤パッケージは、通常、分散剤、酸化防止剤、腐食防止剤、摩耗防止剤、防錆剤、および極圧添加剤の1つ以上を含む。一実施態様において、添加剤パッケージはAfton HiTec 317である。このような添加剤のさらなる例は当業者に明白であるはずである。特定の実施態様において、この添加剤パッケージは、必要に応じて消泡剤を含む。別の特定の実施態様において、消泡剤はシリコーンおよび種々の有機化合物を含む。他の特定の実施態様において、消泡剤は低分子量ジメチルシロキサンである。一実施態様において、消泡剤はDow Corning社のDC−200/300〜60,000cStを含む。このような消泡剤のさらなる例は当業者に明白であるはずである。特定の実施態様において、本発明の潤滑油組成物は、添加剤パッケージを、約5〜10重量%、別の実施態様においては約7.5〜9重量%の量で含有する。特定の実施態様において、本発明の潤滑油組成物は、消泡剤を約0.001〜0.004重量%の量で含有する。
【0020】
本発明の潤滑油組成物は、約35〜約95℃、好ましくは約65〜約85℃の温度で成分を一緒に混合することにより製造することができる。ベースオイル、増粘剤および添加剤を適当な金属容器またはガラス容器に入れる。混合を促進するために機械的な攪拌を行う。確実に均質な生成物となるよう十分な混合時間を用いる。本発明の潤滑油組成物の製造方法は、本発明を開示する技術分野における当業者に既知であり、認識されているはずである。当業者は、この製造方法が本発明を限定するものではなく、本発明の教示に従って、または先行技術において知られた教示に従って、1つ以上の成分を変更してもよいことを認識するであろう。
【0021】
本発明の潤滑油組成物は、好ましくは、低温および高温グレード潤滑油のいずれの要件も満たし、特定の実施態様は多粘性グレード潤滑油である。本発明の特定の潤滑油組成物は、SAE 75W−140潤滑油として分類され、SAE 75Wについて低温要件を満たし、かつ、SAE 140について高温要件を満たす。SAE 75Wとして分類される潤滑油組成物は、−40℃で約150,000cPの粘度を有する。SAE 140として分類される潤滑油組成物は、100℃で、24.0cSt以上約32.5cSt未満の動粘性率を有する潤滑油組成物である。
【0022】
特定の実施態様において、本発明の潤滑油組成物は、APIカテゴリーのGL−5性能要件を満たし、別の実施態様においては、SAE J2360性能基準を満たす。本発明の特定の潤滑油組成物は、ギアを対象としている。特定の実施態様において、本発明の潤滑油組成物は、高速/衝撃負荷および低速/高トルク条件の様々な状況下で稼働する、ハイポイドギアを備えた自動車車軸におけるギアを対象とする。本発明の特定の潤滑油組成物は、以下のような試験および判定基準により概説されるAPIカテゴリーGL−5性能要件に適合する:(1)標準型L−42;(2)カナダ式L−42;(3)標準型ASTM D 6121の試験法;(4)カナダ式ASTM D 6121の試験法;(5)ASTM D 7038またはL−33の試験法;(6)ASTM D 5704またはL−60の試験法;(7)ASTM D 892の試験法;および(8)ASTM D 130の試験法。
【0023】
上記に基づき、本発明の一実施態様の潤滑油組成物は、(a)低粘度ポリ−α−オレフィン(PAO);(b)高粘度PAO;(c)ジエステル;(d)ポリイソブチレン(PIB);(e)添加剤;および、任意に(f)消泡剤を含み、この潤滑油組成物は、75W−140のSAE粘度分類を有し、AIPカテゴリーGL−5性能要件を満たす多粘性グレード潤滑油である。出願人は、特定の実施態様において、本発明の潤滑油組成物が、
(a)約10〜35重量%の低粘度PAO;
(b)約30〜75重量%の高粘度PAO;
(c)約5〜30重量%のジエステル;
(d)約2〜25重量%のPIB;
(e)約5〜10重量%の添加剤パッケージ;および、場合により、
(f)0.001〜0.004重量%の消泡剤
を含んでなることを見出した。別の特定の実施態様において、本発明の潤滑油組成物は、
(a)12〜20重量%の低粘度PAO;
(b)40〜60重量%の高粘度PAO;
(c)7.5〜20重量%のジエステル;
(d)5〜15重量%のPIB;
(e)7.5〜9重量%の添加剤パッケージ;および、場合により、
(f)0.001〜0.004重量%の消泡剤
を含有する。
【0024】
本発明は、上記記載に限定される必要性はない。当業者は、実施態様が本発明を限定するものではなく、本発明の教示に従って、または先行技術において知られた教示に従って、1つ以上の成分を変更してもよいことを認識するであろう。
【実施例】
【0025】
以下の実施例は、本発明を限定することなく、本発明を説明することを目的とするものである。
【0026】
潤滑油組成物例1を、下記表2に示される成分を一緒に混合することにより調製した。
【0027】
【表2】

【0028】
〔高速および衝撃負荷下の車軸における潤滑油組成物の性能:L−42(ASTM D 7452)〕
この方法の目的は、高速および衝撃負荷下におけるギア潤滑油の耐スコーリング性を評価することである。試験潤滑油の性能は標準油の性能と比較した。特別に選択した後軸マウンティングアセンブリおよび2つの大型動力計が試験器機として働く。浸入は、華氏225°F(107.2℃)で適度な速度および負荷で行う。その後、華氏280°F(137.8℃)に近い温度で、一連の適度な加速および減速を行う。最終シリーズの走行は、急速な減速を伴う高速加速からなる。この試験は、一般的に「標準」および「カナダ式」と称する2つの異なる作動条件のセットで行ってもよい。リングギアおよびピニオンギアを合否基準で評価する。合否基準は、リングギアおよびピニオンギアにおけるスコーリングが、関連する適合標準油試験によるものより少ない量であることを要求する。ASTM D 7450により定義されるリングギアおよびピニオンギアに関する「スコーリング」は、金属と金属の接触の結果として1つに溶接した小さな接触粒子の引きはがしにより生じる、歯車表面からの金属の急速な剥離であり;第2表面は、マットまたは艶無し仕上げであることを特徴とする。実施したL−42標準試験およびカナダ式試験結果を、下記表3および4において、それぞれ報告する。
【0029】
【表3】

【0030】
【表4】

【0031】
上記表3および4からわかるように、本発明の潤滑油組成物は、基準を測定するために用いた適合標準油試験結果の平均スコーリング値と同じであるか、良好である(より低い)ことを示すことにより、L−42標準試験およびカナダ式試験をどちらも合格した。
【0032】
〔高速、低トルク、その後、低速、高トルクにおける潤滑油組成物の性能:ASTM D 6121〕
高速、低トルク、および、低速、高トルク稼働の条件下、ハイポイド車軸アセンブリにおけるギア潤滑油の負荷容量、摩耗性および極圧特性を測定するために、この方法を用いた。特別に選択した後軸アセンブリ、エンジンおよび変速機、ならびに2つの大型動力計が試験器機として働く。試験車軸を100分間、440車軸回転数(rpm)、華氏295°F(146.1℃)の潤滑油温度、9460ポンド(109mkg)のトルクで稼働させた。その後、この車軸を24時間、80車軸回転数(rpm)、華氏275°F(135.0℃)潤滑油温度、41,800ポンド(482mkg)のトルクで稼働させた。リッジング、リップリング、摩耗、孔食/剥離、スコーリングに基づくASTM評価で、リングギアおよびピニオンギアを評価する。
【0033】
ASTM D 7450により定義されるリングギアおよびピニオンギアに関する「リッジング」は、部分的にまたは完全に歯車表面若しくはギアを横切って、滑り運動の方向に斜めに動く平行に上昇した滑らかな隆線をもたらす歯車表面の変化である。ASTM D 7450により定義されるリングギアおよびピニオンギアに関する「リップリング」は、水紋または魚の鱗に似ているおおよそ規則的なパターンの外観をもたらす歯車表面上の変化である。ASTM D 7450により定義されるリングギアおよびピニオンギアに関する「摩耗」は、表面疲労または付着摩耗の痕跡のない金属の剥離であり、ツールの部分的若しくは完全な脱離またはマークのすり減りまたは根元に近い接触領域の底部での、または、ピニオン歯車の接触領域の先端若しくは後端部における認識可能なショルダーリッジの形成(磨損)をもたらす。ASTM D 7450により定義されるリングギアおよびピニオンギアに関する「孔食(ピッティング)」は、表面金属の小さな領域の破損から生じる、歯車上の小さく不規則な空洞を意味する。ASTM D 7450により定義されるリングギアおよびピニオンギアに関する「剥離(スポーリング)」は、孔食より広範囲の状態の、歯車表面の不規則領域断片の剥離である。ASTM D 7450により定義されるリングギアおよびピニオンギアに関する「スコーリング」は、金属と金属の接触の結果として1つに溶接した小さな接触粒子の引きはがしにより生じる、歯車表面からの金属の急速な剥離であり;第2表面は、マットまたは艶無し仕上げであることを特徴とする。
【0034】
この試験は、「非リューブライト」の金物を使用する「標準」および「リューブライト」の金物を使用する「カナダ式」といわれる2つの異なる稼働条件下のセットで行った。ASTM D 7450で定義される「リューブライト」は、リン酸塩で被覆された表面を意味する。ASTM D 6121標準非リューブライト試験、およびカナダ式リューブライト試験について、下記の表5および6に、それぞれ記載する。
【0035】
【表5】

【0036】
【表6】

【0037】
上記表5および6からわかるように、本発明の潤滑油組成物は、特定された最低等級と同じであるか、良好な(より高い)ASTM評価を示すことにより、ASTM D 6121標準試験およびカナダ式試験のどちらも合格した。
【0038】
〔水分混入および上昇温度を施した際の潤滑油組成物の性能〕
水分混入および上昇温度を施した間のギア潤滑油の防錆性および防食性を評価するためにこの方法を用いた。電気モーター、特別に選択したハイポイドディファレンシャルハウジングアセンブリ(hypoid differential housing assembly)、冷却ファン、加熱灯、および加熱貯蔵ボックスが試験器機として働く。ディファレンシャルハウジングアセンブリを、4時間、2,500インプットrpm、華氏180°F(82.2℃)潤滑油温度で、潤滑油に混合した1液量オンスの蒸留水で稼働させる。その後、この操作ユニットを貯蔵ボックスに入れ、華氏125°F(51.7℃)で162時間保存する。この方法の終わりに、アセンブリの操作部品を錆の存在で評価する。全ての内部可動部品(リング、ピニオン、ベアリング、ディファレンシャルギアなど)を最終的な錆評価で評価する。
【0039】
APIカテゴリーGL−5の対象液体は、最終的な錆腐食評価で9.0以上でありことが求められる。潤滑油組成物例1は、最終錆腐食評価9.3を示し、ASTM D 7038試験を合格した。
【0040】
〔潤滑油組成物の熱および酸化安定性:ASTM D 5704〕
厳しい熱的および酸化的条件下における潤滑油の劣化を評価するためにこの方法を用いた。ギアケースアセンブリ、2つの平歯車、2つの銅ストリップ、ベアリング、温度制御システム、交流電源、モーター、および制御された給気設備が主要な試験器機として働く。平歯車を1750インプットrpmで50時間、荷重下回転させる。潤滑油温度は華氏325°F(162.8℃)に維持する。潤滑油に流す気流を、この方法の操作継続中、22.1mg/分に調節する。油の物理的および化学的特性とギア上の沈着物を、この試験手順の最後に評価する。大型ギアと小型ギアを、カーボン/ワニスおよびスラッジで評価する。使用した油を、粘度上昇、ペンタン不溶性物質およびトルエン不溶性物質で評価する。実施したASTM D 5704試験の結果を下記の表7に記載する。
【0041】
【表7】

【0042】
上記表7からわかるように、本発明の潤滑油組成物は、API GL−5判定基準により要求される粘度上昇率(%)、ペンタンおよびトルエン不溶性物質(重量%)、ならびにカーボン/ワニスおよびスラッジ値を示すことにより、ASTM D 5704試験に合格した。
【0043】
〔潤滑油組成物の発泡特性:ASTM D 892〕
24℃および93.5℃におけるギア潤滑油の発泡特性を評価するためにこの方法を用いた。泡は、自動車の駆動系において、ギアまたはベアリングの表面を適切に保護することができないため、発泡は望ましくない。大きなガラスシリンダーに油を入れ、多孔質石を用いて底部から空気を吹き込む。生じる全ての泡の量を視覚的に測定する。使用した油を3連続で性質/安定性を評価する。実施したASTM D 892試験の結果を下記表8に記載する。
【0044】
【表8】

【0045】
上記表8からわかるように、本発明の潤滑油組成物は、API GL−5判定基準により要求される泡特性の性質/安定性を示すことにより、ASTM D 892試験に合格した。
【0046】
〔潤滑油組成物の銅腐食特性:ASTM D 130〕
潤滑油の「金(yellow metal)」または銅との親和性を評価するためにこの方法を用いた。銅(赤銅)、黄銅または青銅への攻撃は、自動車の駆動系に配置される部品にとって望ましくない。小さな金属の細長い一片を試験油のサンプル中に入れた。この油をブロック若しくはオーブンで3時間、華氏210°F(98.9℃)で加熱した。一組の既知の標準セットと比較して、変色について金属片のASTM評価を行った。APIカテゴリーGL−5の対象液体は3以下のASTM評価であることが要求される。潤滑組成物例1は、ASTM評価2eを示すことにより、ASTM D 130試験に合格した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動部品の金属間接触を伴う装置に関連して使用するための潤滑油組成物であって、
(a)(i)少なくとも1つの比較的低粘度のポリ−α−オレフィンと(ii)少なくとも1つのジエステルを含んでなるベースオイル(base-stock);
(b)(i)少なくとも1つの比較的高粘度のポリ−α−オレフィンと(ii)ポリイソブチレンを含んでなる増粘剤;および
(c)少なくとも1つの、潤滑油の特性および/または該潤滑油を用いる装置の性能を改良するために効果的な少なくとも1つの添加剤を含んでなる性能添加剤
を含んでなり、米国石油協会のGL−5の性能分類要件を満たす潤滑油組成物。
【請求項2】
前記潤滑油組成物が、−40℃で150,000cPの粘度と、100℃で24.0cSt以上32.5cSt未満の動粘性率を有する多粘性グレード潤滑油である、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項3】
前記ベースオイルが、12センチストークス(cSt)以下の粘度を有する少なくとも1つのポリ−α−オレフィンを含む、請求項1または2に記載の潤滑油組成物。
【請求項4】
前記増粘剤が、40センチストークス(cSt)より高い粘度を有するポリ−α−オレフィンを含む、請求項1〜3のいずれかに記載の潤滑油組成物。
【請求項5】
(a)約15〜65重量%のベースオイル;
(b)約30〜75重量%の増粘剤;および
(c)約7〜35重量%の添加剤
を含有する請求項1〜4のいずれかに記載の潤滑油組成物。
【請求項6】
可動部品の金属間接触を伴う装置に関連して使用するための潤滑油組成物であって、
(a)10〜35重量%の低粘度ポリ−α−オレフィン;
(b)30〜75重量%の高粘度ポリ−α−オレフィン;
(c)5〜30重量%のジエステル;
(d)2〜25重量%のポリイソブチレン;
(e)5〜10重量%の添加剤パッケージ;および、場合により、
(f)0.001〜0.004重量%の消泡剤
を含んでなり、米国石油協会のGL−5の性能分類要件を満たす潤滑油組成物。
【請求項7】
前記潤滑油組成物が、−40℃で150,000cPの粘度と、100℃で24.0cSt以上32.5cSt未満の動粘性率を有する多粘性グレード潤滑剤である、請求項6に記載の潤滑油組成物。
【請求項8】
前記低粘度ポリ−α−オレフィンが12センチストークス(cSt)以下の粘度を有する、請求項6または7に記載の潤滑油組成物。
【請求項9】
前記高粘度ポリ−α−オレフィンが40センチストークス(cSt)より高い粘度を有する、請求項6〜8のいずれかに記載の潤滑油組成物。
【請求項10】
(a)12〜20重量%の低粘度ポリ−α−オレフィン;
(b)40〜60重量%の高粘度ポリ−α−オレフィン;
(c)7.5〜20重量%のジエステル;
(d)5〜15重量%のポリイソブチレン;
(e)7.5〜9重量%の添加剤パッケージ;および、場合により、
(f)0.001〜0.004重量%の消泡剤
を含む、請求項6〜9のいずれかに記載の潤滑油組成物。

【公表番号】特表2013−510198(P2013−510198A)
【公表日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−537316(P2012−537316)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際出願番号】PCT/EP2010/006608
【国際公開番号】WO2011/054482
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(505066718)コグニス・アイピー・マネージメント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (191)
【氏名又は名称原語表記】Cognis IP Management GmbH
【Fターム(参考)】