説明

潤滑組成物

【課題】 熱的に安定で耐磨耗性を長時間保持する潤滑組成物の提供。
【解決手段】 粘度指数向上剤と、立体障害された硫黄含有、リン含有化合物とその塩の少なくとも一つを含んだ潤滑組成物が開示される。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2005年11月9日出願の米国特許仮出願第60/734,757号の優先権の利益を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本開示は、粘度指数向上剤、および硫黄含有、リン含有化合物とその塩のうちの少なくとも一つを含んで成る組成物に関する。また当該組成物の使用方法も開示される。
【背景技術】
【0003】
潤滑組成物中で使用されるリン含有化合物の使用は既知のものである。特に、当該リン含有化合物は通常直鎖アルキル鎖を含んで成る。しかしながらこれらの化合物の問題は、完全に調合されたギア潤滑剤中、高温下で熱的に不安定であることが知られているという点である。熱的に不安定な化合物は、潤滑組成物中で尚早に分解し、耐摩耗性などの特性を潤滑組成物に提供しなくなる傾向が強い。
【0004】
ギアオイルなどの潤滑組成物は、一般的に高温にさらされるため、高温で尚早に分解しない熱的に安定な化合物を提供することが有益である。従って、熱的に安定な化合物は長時間にわたって潤滑組成物中に残り、例えば耐摩耗性などの特性を長時間組成物に提供する。ここで必要とされているのは、耐摩耗性を保持するのに適した熱安定性を有する化合物である。
【0005】
さらに、自動車メーカーがより大きくよりパワフルなエンジンの大型トラックを製造し続けているため、軸上のトルクの量が増加している。残念なことに、コストのため、これらのトラックの車軸は増加したトルクに対応するように改良されていない。そこでメーカーは、車軸の寿命を延ばすために、安価な問題解決策である改善された潤滑剤にますます頼ることとなっている。特に必要とされるのは、「無公害」の、すなわち一定の時間あるいは距離内でブレークインされていないような、耐摩耗性、熱安定性、及び車軸内の酸化安定性の少なくとも一つが向上された潤滑組成物である。また、低温、高温および各種の荷重条件下に置かれる車軸内で使用される、上記のような潤滑組成物が必要である。さらに、向上された耐摩耗性および高温型ASTM D−6121(L−37)で証明される熱安定性および/または改良型ASTM D5704(L60)の変形で証明される向上された酸化保護性のうち少なくとも一つを提供することのできる潤滑組成物が必要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示によると、粘度指数向上剤、および立体障害された、硫黄含有、リン含有化合物と、硫黄含有、リン含有化合物の塩のうちの少なくとも一つを含んで成る潤滑組成物が開示される。
【0007】
ある態様では、更に粘度指数向上剤、および硫黄含有化合物とリン含有化合物と窒素含有化合物の反応生成物を含んで成る潤滑組成物が開示される。
【0008】
本開示の追加的な目的および利点は、以下の記載により部分的に説明される、および/または本開示を実行することにより習得することができる。本開示の目的および利点は、添付の請求項で特に示されている要素および組み合わせを用いて実現および達成される。
【0009】
前述の要約および以下の詳しい説明は、共に例示および説明のみを目的としたものであり、本開示を請求されたものとして限定するものではないと判断されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本明細書中で使用される「ヒドロカルビル置換基」または「ヒドロカルビル基」という用語は、当技術分野に精通した技術者に周知の通常の意味で使用されている。具体的には、これらは分子の残りの部分に直接結合した炭素原子を有し、また主に炭化水素の特性を有する基を指す。ヒドロカルビル基の例には以下のものが含まれる:
【0011】
(1)炭化水素置換基、すなわち脂肪族(例えばアルキルまたはアルケニル)置換基、脂環式(例えばシクロアルキル、シクロアルケニル)置換基、また芳香族、脂肪族、および脂環基によって置換された芳香族置換基、ならびに環が分子の別の部分によって完成されている(例えば二つの置換基が一緒になって脂環式ラジカルを形成している)ような環状置換基;
【0012】
(2)置換された炭化水素置換基、すなわち、本発明の状況下で主に炭化水素である置換基(例えばハロ(特にクロロおよびフルオロ)、ヒドロキシ、アルコキシ、メルカプト、アルキルメルカプト、ニトロ、ニトロソ、およびスルホキシ)を変化させないような、非炭化水素基を含んだ置換基;
【0013】
(3)ヘテロ置換基、すなわち、主に炭化水素の特性を有しながら、本発明の状況下で、そうでなければ炭素原子から成る環または鎖の中に炭素以外の原子を含んでいるような置換基。ヘテロ原子には硫黄、酸素、および窒素があり、またピリジル、フリル、チエニルおよびイミダゾリルのような置換基が含まれる。ヒドロカルビル基中、炭素原子10個につき通常二つ以下、例えば一つ以下の非炭化水素置換基が存在する。一般的にはヒドロカルビル基中に非炭化水素置換基は存在しない。
【0014】
本明細書中で使用される「重量パーセント」という用語は、別段の定めが明記されていない限り、列挙された成分が組成物全体の重量に対して占めるパーセンテージを意味する。
【0015】
ある態様では、GL−5および/またはSAEJ2360の性能を保持しながら、ハイポイドギア車軸のようなギアに、向上された耐摩耗性、酸化安定性、および熱安定性のうち少なくとも一つをもたらす組成物が提供される。当組成物は、立体障害性を有し、高温での化合物の分解を最小化するおよび/または防止することのできる化合物をその場で形成する、いくつかの化合物および/または成分を含むことができる。結果として得られた組成物は、向上された耐摩耗性、酸化安定性、および熱安定性のうち少なくとも一つを示し、そのため立体障害を含まない組成物よりも長く潤滑組成物中に残ることができる。立体障害は、ヒドロカルビル鎖の分岐などの任意の形態で存在し得る。例えば、ベータ分岐障害のある亜リン酸ジアルキルおよび/または硫化された同様のリン酸塩が、開示された組成物中に存在することができる。いかなる特定の理論にも限定されることなく、直鎖および分岐亜リン酸塩と比べ、立体障害されたリン含有化合物、立体障害された硫黄含有、リン含有化合物および/または立体障害された硫黄含有、リン含有化合物の塩は、潤滑組成物のASTM D5704(L60)性能を改善することができると考えられている。当該の潤滑組成物は、紙、スチールまたは炭素繊維のようないかなる摩擦材料とも、好適に使用することができる。
【0016】
本明細書に開示された組成物は、亜リン酸塩またはリン酸塩のようなリン含有化合物を含むことができる。亜リン酸塩およびリン酸塩の両方の作り方は既知のものである。たとえば、亜リン酸塩は、リン酸あるいは別の亜リン酸塩とさまざまなアルコールとを反応さ
せることによって作ることができる。別の合成方法に、三塩化リンと過剰量のアルコールとの反応がある。また、亜リン酸塩とグリコールのエステル交換反応によって環状亜リン酸塩を作ることができ、その結果モノマー生成物とポリマー生成物の混合物が得られる。Oswald,Alexis A.[オズワルド、アレクシス・A],“Synthesis of Cyclic Phosphorous Acid Esters by Transesterification,”,Can.J.Chem.、37:1498−1504(1959)[「エステル交換による環状亜リン酸エステルの合成」]、;およびSaid,Musa A.,et al.[サイド、ムサ・A、その他],“Reactivity of Cyclic Arsenites and Phosphites:X−ray structures of bis(5,5−dimethyl−1,3,2−diosarsenan−2−yl)ether and bis(2,4,8,10−tetra−tert−butyl−12H−dibenzo[d,g][1,3,2]dioxarsenocin−6−yl)ether,”,J.Chem.Soc.,22:2945−51(1995)[「環状亜ヒ酸塩および亜リン酸塩の反応性:ビス(5,5−ジメチル−1,3,2−ジオサルセナン−2−イル)エーテルおよびビス(2,4,8,10−テトラ−tert−ブチル−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキシアルセノシン−6−イル)エーテルのX−線構造」]を参照されたい。尚これらの開示は引用することにより本明細書に組み込まれる。ピリジンの存在下で環状クロロフォスファイトと硫化水素を反応させるなどの、環状チオ亜リン酸水素の作り方もまた知られている。Zwierzak,A.,“Cyclic organophosphorus compounds.I.Synthesis and infrared spectral studies of cyclic hydrogen phosphites and thiophosphites”,Can.J.Chem.,45:2501−12(1967)[「環状有機リン化合物I、環状亜リン酸水素およびチオ亜リン酸の合成および赤外線スペクトル研究」]を参照されたい。尚これらの開示は引用することにより本明細書に組み込まれている。
【0017】
ある態様において、亜リン酸エステルはジヒドロカルビル亜リン酸塩またはトリヒドロカルビル亜リン酸塩であることができる。各ヒドロカルビル基は、約1から約24の炭素原子、あるいは1から約18の炭素原子、あるいは約2から約8の炭素原子を有することができる。各ヒドロカルビル基は独立してアルキル、アルケニル、アリール、およびそれらの混合物であることができる。ヒドロカルビル基がアリール基である場合、それには少なくとも約6つの炭素原子、あるいは約6から約18の炭素原子が含まれる。アルキルまたはアルケニル基の例には、プロピル、ブチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、オレイル、リノレイル、ステアリル、その他が含まれる。アリール基の例としては、フェニル、ナフチル、ヘプチルフェノール、その他が含まれる。ある態様では、各ヒドロカルビル基は独立してメチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オレイル、またはフェニル;例えばメチル、ブチル、オレイルまたはフェニル;またさらなる例としてはメチル、ブチル、オレイルまたはフェニルであることができる。
【0018】
有用な亜リン酸エステルの非限定的な例に、化学式(I)で表される化合物のような、ホスホン酸ジブチル水素、ホスホン酸ジイソブチル水素、ホスホン酸ジオレイル水素、ホスホン酸ジ(C14−18)水素、亜リン酸トリフェニル、化学式(I)の化合物のような亜リン酸ジヒドロカルビル、式(IV)の化合物のような亜リン酸ポリマーが含まれる。
【化1】

式中nは約1から約5の整数であり、そして
、R、R、R、R、R、R10、およびR11は独立して水素、シアノ、および約1から約30の炭素原子、例えば約1から約20の炭素原子、またさらなる例としては約1から約10の炭素原子を含むヒドロカルビル基から成る群から選択できる。ある態様では、nが約5より大きい整数である場合、いかなる特定の論理にも限定されることなく、反復単位は完全には硫化しないと考えられている。
【0019】
ある態様では、化学式(I)の化合物において、R、R、R、およびRは水素であり、またRおよびRはメチルである。この化合物は通常亜リン酸ネオペンチルグリコール(NPGP)と呼ばれ、CAS #4090−60−2(5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン−2−オン)の称号で化学情報検索データベース(Chemical Abstracts Select)に登録されている。ある態様では、化学式(IV)の化合物において、RおよびRはメチル、R、R、R、およびRは水素、またR10およびR11は約1から約6の炭素原子を有するアルキル基であり得る。この化合物は亜リン酸ネオペンチルグリコールの製造工程のポリマー副生成物である。
【0020】
リン含有化合物はさらに、リン酸エステルまたはそれらの塩、リン酸または無水リン酸と不飽和化合物との反応生成物、およびそれら二つ以上の混合物のうちの少なくとも一つでもあり得る。
【0021】
金属ジチオリン酸塩は、金属塩基をモノチオリン酸あるいはジチオリン酸であり得る少なくとも一つのチオリン酸と反応させることによって調製される。
【0022】
リン酸または無水リン酸は、アミド、エステル、酸、酸無水物、およびエーテルを含むが、これらに限定されることのない不飽和化合物と反応させることができる。
【0023】
ある態様では、亜リン酸塩のようなリン含有化合物は、化合物の立体障害を増加させ、それにより熱分解に対する耐性を増加させるような各種の官能基を含み得る。ある態様では、ヒドロカルビル鎖中の酸素原子に対してベータの位置で、リン含有化合物が分岐し得る。このベータ炭素での分岐により、潤滑組成物中のリン含有化合物の熱安定性が変化、例えば向上されると考えられている。
【0024】
また、結果として得られる化合物の立体障害を増加させるような成分を用いてリン含有化合物を作ることができる。例えば、亜リン酸塩を作るために使用されるアルコールはベータ分岐アルコールであり得る。ベータ分岐アルコールの非限定的な例に、イソブタノール、2−エチルヘキサノール、ネオペンチルグリコール、ネオペンチルアルコール、プリスタノール、およびメチルイソブチルカルビノール(MIBC)などが含まれる。
【0025】
開示されたリン含有化合物を、硫黄含有、リン含有化合物を生成するための出発物質として使用することができる。ある態様では、硫黄含有化合物を上述のようなリン含有化合物や窒素含有化合物と混合、混和、および/または反応させて、硫黄含有、リン含有化合物を生成させることができる。ある態様では、粘度指数向上剤、及びリン含有化合物、窒素含有化合物と硫黄含有化合物との反応生成物を含んで成る組成物が企図されている。硫黄含有、リン含有化合物は、硫黄を含有していないリン含有化合物と比べて、より優れた耐摩耗性を提供することができる。
【0026】
硫黄含有化合物は、遊離硫黄および/または活性硫黄を含んで成る任意の化合物である。硫黄含有化合物の非限定的な例としては、動物性または植物性の硫化脂肪または硫化油;動物性または植物性の硫化脂肪酸エステル;リンの三価または五価の酸の完全にまたは部分的にエステル化されたエステル;硫化オレフィン;ジヒドロカルビルポリスルフィド;硫化ディールスアルダー付加物;硫化ジシクロペンタジエン;脂肪酸エステルとモノ不飽和オレフィンの硫化または共硫化された混合物;脂肪酸、脂肪酸エステル、およびαオレフィンの共硫化混和物;官能的に置換されたジヒドロカルビルポリスルフィド;チオアルデヒド、チオケトンおよびそれらの誘導体(例えば酸、エステル、イミン、またはラクトン);エピチオ化合物;硫黄含有アセタール誘導体;テルペンと非環式オレフィンの共硫化混和物;ポリスルフィドオレフィン生成物;および元素硫黄などが含まれる。
【0027】
ある態様では、イソブテンのようなオレフィンを硫黄と反応させることにより、硫黄含有化合物を作ることができる。その生成物、例えば硫化イソブチレンまたは硫化ポリイソブチレンは、一般的に約10重量%から約55重量%、例えば約30重量%から約50重量%の硫黄を含有している。このような硫黄含有化合物を形成するため、その他の様々なオレフィンまたは不飽和炭化水素、例えばイソブテン二量体または三量体などを使用することができる。
【0028】
別の態様において、ポリスルフィドは化学式R20−S−R21で表される一つ以上の化合物から成り、式中R20およびR21は各々が約3から約18の炭素原子を含み得るヒドロカルビル基であり、またxは約2から約8の間、例えば約2から約5、またさらなる例としては3であり得る。当該のヒドロカルビル基は、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、またはアラルキルのような多様な種類のものであり得る。ジ−t−ブチルトリスルフィドや、ジ−t−ブチルトリスルフィドを含む混合物(例えば主にあるいは完全にトリスルフィド、テトラ、およびペンタスルフィドから成る混合物)のような第3級アルキルポリスルフィドを使用することもできる。その他の有用なジヒドロカルビルポリスルフィドの例に、ジアミルポリスルフィド、ジノニルポリスルフィド、ジドデシルポリスルフィド、およびジベンジルポリスルフィドなどが含まれる。
【0029】
リン含有化合物の当量当り、少なくとも等モル量あるいはそれ以上の硫黄含有化合物を使用して、硫黄含有、リン含有化合物を得ることができる。ある態様では、約1から約1.5モル等量の硫黄含有化合物が使用される。
【0030】
さらに、完成した潤滑組成物の総重量に対し、約0.5重量%から約10重量%、例えば約2から約6重量%、またさらなる例としては約5重量%の範囲の量の硫黄含有化合物を、完成した潤滑組成物中に存在させる。
【0031】
上述のように、開示された組成物中に窒素含有化合物が存在することができる。ある態様では、窒素含有化合物を使用して、硫黄含有、リン含有化合物、および/またはそれと類似した塩を得ることができる。また、以下に開示されるように、別の態様においては窒
素含有化合物を酸と組み合わせることができ、ここで酸および窒素含有化合物のうち少なくとも一つは摩擦調整剤である。さらに以下に開示されるように、さらなる態様においては窒素含有化合物は分散剤であり、また任意にホウ素化および/またはリン酸化されることができる。
【0032】
窒素含有化合物は構造式RCONRのアミドのような任意の窒素含有化合物であり得、式中R、RおよびRはそれぞれ独立して水素、または約1から約30の炭素原子を含んだヒドロカルビル基、あるいは以下の構造式で表されるエトキシル化アミドである:
【化2】

ここでxとyの合計は約1から約50、例えば約1から約20、またさらなる例では約1から約10である。ある態様では、R、RおよびRがヒドロカルビル基である場合、それらは約1から約18の炭素原子、例えば約1から約6つの炭素原子を含む。
【0033】
が水素でRとRがヒドロカルビル基であるとき、窒素含有化合物はジヒドロカルビルホルムアミドである。ここで有用性のあるジヒドロカルビルホルムアミドの非限定的な例として以下のものが含まれる:ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジプロピルホルムアミド、メチルエチルホルムアミド、ジブチルホルムアミド、メチルブチルホルムアミド、エチルブチルホルムアミド、ジオレイルホルムアミド、ジステアリルホルムアミド、ジデシルホルムアミド、ジトリデシルホルムアミド、デシルトリデシルホルムアミド、デシルオレイルホルムアミド、およびトリデシルオレイルホルムアミドなど。
【0034】
がヒドロカルビル基でRとRが共に水素であるとき、窒素含有化合物は第1級ヒドロカルビルアミドである。第1級ヒドロカルビルアミドの非限定的な例としては、アセトアミド、プロピオンアミド、ブチルアミド、バレルアミド、ラウラミド、ミリストアミドおよびパルミトアミドなどが含まれる。以下に挙げるいくつかの単純な脂肪酸アミドがアルマック社(Armak Company)より市販されている:ココ脂肪酸アミド、オクタデカンアミド、水素化された獣脂脂肪酸アミド、オレアミド、および13−ドコセンアミド。
【0035】
とRが共にヒドロカルビル基でRが水素であるとき、窒素含有化合物はN−置換アミドである。N−置換アミドの非限定的な例には、N−メチルアセトアミド、N−エチルアセトアミド、N−メチルバレルアミド、N−プロピルラウラミド、N−メチルオレアミドおよびN−ブチルステアルアミドが含まれる。
【0036】
、RおよびRがすべてヒドロカルビル基であるとき、窒素含有化合物はN,N−二置換アミドである。N,N−二置換アミドの非限定的な例としては、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−N−エチルアセトアミド、N,N−ジエチルプロピオンアミド、N,N−ジブチルバレルアミド、N,N−ジエチルステアルアミドおよびN,N−ジメチルオレアミドが含まれる。
【0037】
窒素含有化合物のその他の非限定的な例には、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ドデカンアミド、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ココ脂肪酸アミド、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)オレアミド、N−2−ヒドロキシエチルコカミドおよびN−2−ヒドロキシエチルステアルアミドが含まれる。
【0038】
ある態様では、硫黄含有、リン含有化合物は、化学式(II)および(V)のうち少な
くとも一つで表される化合物であり得る:
【化3】

式中nは約1から約5の整数であり;そして
、R、R、R、R、R、R10、およびR11は、水素、シアノ、および約1から約30の炭素原子、例えば約1から約20の炭素原子、そしてさらなる例としては約1から約10の炭素原子を含んだヒドロカルビル基から成る群から独立して選択される。
【0039】
ある態様では、化学式(II)においてRとRはメチル、またR、R、R、およびRは水素である。別の態様では、化学式(V)において、RとRはメチル、R、R、R、およびRは水素、またR10とR11は約1から約6の炭素原子を含んで成るアルキル基であり得る。
【0040】
開示された組成物は、硫黄含有、リン含有化合物の塩を含んで成る。ある態様において、塩は(a)リン含有化合物、硫黄含有化合物、およびアミドのような窒素含有化合物を供給し、(b)結果として得られる硫黄含有、リン含有化合物に、塩を得るためアミンなどの追加的な窒素含有化合物を加えることによって調製される。別の態様において、塩はリン含有化合物、硫黄含有化合物、およびアミンのような窒素含有化合物を供給することによって調製される。硫黄化された亜リン酸ネオペンチルグリコールのような塩は、硫黄化された亜リン酸ネオペンチルグリコールや硫黄化されていない亜リン酸ネオペンチルグリコールに比べ、耐摩耗性が優れている。
【0041】
開示されたプロセスには溶媒の使用が含まれる。溶媒は、反応物質の少なくとも一つまたは生成物が可溶性であるような、任意の不活性液状物質であり得る。非限定的な例として、ベンゼン、トルエン、キシレン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、ナフサ、ジエチルエーテルカルビトール、ジブチルエーテルジオキサン、クロロベンゼン、ニトロベンゼン、四塩化炭素、クロロホルム、ガス・ツー・リキッドやポリアルファオレフィンのような基油、およびプロセスオイルなどが含まれる。
【0042】
ある態様では、窒素含有化合物が、開示された組成物中に存在する任意の酸の中和を助ける。油溶性でさえある限り、任意の窒素含有化合物を使用することができる。窒素含有化合物のその他の非限定的な例には、アミド、アミン、およびピリジンが含まれる。ある態様では、窒素含有化合物は第1級、第2級、または第3級のアミンであり得る。
【0043】
ある態様において、ヒドロカルビルアミンは、ヒドロカルビル基中に約4から約30の炭素原子、例えば約8から約20の炭素原子を含む第1級ヒドロカルビルアミンであり得
る。ヒドロカルビル基は飽和の場合も不飽和の場合もある。第1級飽和アミンの代表例は、脂肪族の第1級脂肪族アミンとして知られているものである。一般的な脂肪族アミンには、n−ヘキシルアミン、n−オクチルアミン、n−デシルアミン、n−ドデシルアミン、n−テトラデシルアミン、n−ペンタデシルアミン、n−ヘキサデシルアミン、n−オクタデシルアミン(ステアリルアミン)などのようなアルキルアミンが含まれる。これらの第1級アミンは、蒸留用および工業用の両方が入手可能である。蒸留用からはより純粋な反応生成物得られ、アミドとイミドは工業用のアミンとの反応中に形成される。さらに好適なものに混合脂肪族アミンがある。
【0044】
ある態様では、開示された化合物のアミン塩は、アルキル基に少なくとも約4つの炭素原子を有する第3級脂肪族第1級アミンから得られたものである。ほとんどの場合、それらはアルキル基に合計約30未満の炭素原子を有するアルキルアミンから得られる。
【0045】
通常、第3級脂肪族第1級アミンは以下の化学式で表されるモノアミンである:
【化4】

式中R、R、およびRは同一あるいは異なってもよく、また約1つから約30の炭素原子を含んだヒドロカルビル基であり得る。このようなアミンは、第3級ブチルアミン、第3級ヘキシル第1第級アミン、1−メチル−1−アミノ−シクロヘキサン、第3級オクチル第1級アミン、第3級デシル第1級アミン、第3級ドデシル第1級アミン、第3級テトラデシル第1級アミン、第3級ヘキサデシル第1級アミン、第3級オクタデシル第1級アミン、第3級テトラコサニル第1級アミン、および第3級オクタコサニル第1級アミンなどによって例証される。
【0046】
アミンの混合物もまた本開示の目的のため有用である。この種のアミン混合物の例示には、C−C16の第3級アルキル第1級アミンの混合物や、C14−C24の第3級アルキル第1級アミンの同様の混合物がある。第3級アルキル第1級アミンおよびそれらの調製方法は、当技術分野における通常の技術を有する者に周知のものであり、従ってこれ以上の論議は不要である。本開示の目的のために有用な第3級アルキル第1級アミンおよびそれらの調製方法は、本件に関しその教示が引用することによって本明細書に組み込まれている、米国特許第2,945,749号に記載されている。
【0047】
その炭化水素鎖がオレフィン不飽和を含むような第1級アミンもまた、非常に有用である。従って、R’基およびR”基は、鎖の長さに基づき、少なくとも一つのオレフィン不飽和、通常は10個の炭素原子につき一つ以下の二重結合を含むことができる。代表的なアミンに、ドデセニルアミン、ミリストレイルアミン、パルミトレイルアミン、オレイルアミンおよびリノレイルアミンがある。
【0048】
第2級アミンには、脂肪族第2級アミンを含む上記のアルキル基のうち二つを有するジアルキルアミン、またさらに、R’が脂肪族アミン、R”がメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、ブチルなどのような低級アルキル基(1−9炭素原子)、あるいはR”がその他の非反応性置換基または極性置換基(CN、アルキル、カルバルコキシ、アミド、エーテル、チオエーテル、ハロ、スルホキシド、スルホン)を含んだアルキル基であるような混合ジアルキルアミンが含まれる。脂肪族ポリアミンジアミンには、モノ−またはジアルキル、対称または非対称のエチレンジアミン、プロパンジアミン(1,2または1,3)、および上記のもののポリアミン類似物が含まれる。好適な脂肪族ポリアミンとしては、N−ココ−1,3−ジアミノプロパン、N−大豆アルキルトリメチレンジアミン、N−獣脂−1,3−ジアミノプロパン、およびN−オレイル−1,3−ジアミノプロパンが含まれる。
【0049】
硫黄含有、リン含有化合物および/またはその類似塩の調製に使用される窒素含有化合物については、本明細書に開示された工程を完了するのに必要な量が供給される。すなわち、十分な窒素含有化合物が存在しない場合にはリン含有化合物は完全に硫化されない。ある態様では、リン含有化合物の当量当り約0.05から約2、例えば約1から約1.5モル等量の窒素含有化合物が供給される。
【0050】
硫黄含有、リン含有化合物および/またはその類似塩は、室温(23℃)あるいはそれ以上、例えば少なくとも約50℃、またさらなる例としては約50℃から約90℃の温度範囲で作られる。通常室温で約1分から約8時間の間混合すれば十分である。
【0051】
そのような塩の調整方法は周知のものであり、文献に報告されている。例えば、米国特許第2,063,629号、2,224,695号、2,447,288号、2,616,905号、3,984,448号、4,431,552号、5,354,484号、Pesin et al, Zhumal Obshchei Khimiil 31(8):2508−2515(1961)、及びPCT国際出願公開WO87/07638号を参照されたい。尚これらの開示は引用することにより本明細書に組み込まれている。
【0052】
硫黄含有、リン含有化合物および/またはその塩は、別々に形成され、次に潤滑または官能性流体組成物に添加される。一方、硫黄含有、リン含有化合物および/またはその塩は、潤滑または官能性流体組成物を形成するために開示された亜リン酸塩のようなリン含有化合物がその他の成分と混和、混合および/または反応させられたときに形成される。しかしながら、塩をin situで形成する場合、酸が窒素含有化合物と反応して硫化および塩形成を停止させる可能性があるため、組成物中に存在する防錆成分などの酸を制限することが大切である。
【0053】
硫黄含有、リン含有化合物の塩は油溶性である。すなわち当該の塩のヒドロカルビル鎖は、結果として得られる化合物が調合された組成物に可溶であるよう、少なくとも6つの炭素原子分などの十分な長さをしている。疎水基を取り入れることにより、非分極性の媒体の可溶性が増加される。硫黄含有、リン含有化合物の塩の非限定的な例に、ジイソブチルチオリン酸C8−16第3級アルキル第1級アミン塩、ジ−2−エチルヘキシル−チオリン酸C8−16第3級アルキル第1級アミン塩、およびネオペンチルグリコールチオリン酸C8−16第3級アルキル第1級アミン塩などが含まれる。ある態様では、ジチオリン酸の塩が企図されている。別の態様では、硫黄含有、リン含有化合物の塩は、以下に示す化学式(III)および(VI)の化合物のうちの少なくとも一つである:
【化5】

式中nは1から5の整数であり;また
、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、およびR11は水素、シアノ、および約1から約30の炭素原子、例えば約1から約20の炭素原子、そしてさらなる例としては約1から約10の炭素原子を含んだヒドロカルビル基から成る群から独立して選択される。ある態様では、化学式(VI)において、RとRはメチル;R、R、R、R、R、およびRは水素;RはC12−14の第3級アルキル基;またR10とR11は約1から約6の炭素原子を含んで成るアルキル基である。ある態様では、化学式(III)において、R、R、R、R、R、およびRは水素;RとRはメチル;またRはC12−14の第3級アルキル基である。
【0054】
ある態様において、硫黄含有、リン含有化合物の塩は、高周波往復リグ性能の低下、模擬車軸使用効率試験における温度の低下、および模擬トレーラー牽引試験における温度低下のうち少なくとも一つを提供するのに必要な任意の量で、潤滑組成物中に存在し得る。例えば当該の塩は、潤滑組成物の総重量に対し、約0.1から約10重量%、例えば約0.3から約8重量%、またさらなる例としては約0.3から6重量%の範囲の量で存在する。
【0055】
開示された組成物には、さらに酸および窒素含有化合物が含まれることがあり、ここで酸および窒素含有化合物のうち少なくとも一つは摩擦調整剤である。摩擦調整剤とは、約10から約24の炭素原子を含んで成る化合物を意味すると考えられている。ある態様において、当組成物は摩擦を調整する酸と窒素含有化合物を含んで成る。別の態様において、当組成物は酸と摩擦を調整する窒素含有化合物を含んで成る。さらなる態様において、当組成物は摩擦を調整する酸と摩擦を調整する窒素含有化合物を含んで成る。
【0056】
開示された組成物中で使用される酸は、有機カルボン酸、有機リン酸、有機スルホン酸、無機リン酸、およびそれらの混合物のうちの少なくとも一つであり得る。ある態様において、有機カルボン酸は、直鎖または分岐であり、飽和または不飽和であり、また約5から約40、例えば約10から約24の炭素原子を含んで成る。有機カルボン酸は脂肪族である可能性もある。当該カルボン酸の非限定的な例に、オクテン酸、イソステアリン酸、ステアリン酸、およびそれらの混合物が含まれる。
【0057】
ある態様では、当該の酸は上記で開示された酸のような有機リン酸、ジアルキルリン酸、モノアルキルリン酸、ジアルキルジチオリン酸、モノアルキルジチオリン酸、ジアルキルチオリン酸、モノアルキルチオリン酸、およびそれらの混合物である。リン酸の非限定的な例として、リン酸アミル酸、リン酸2−エチルヘキシル酸、ジアルキルジチオリン酸、およびそれらの混合物が含まれる。
【0058】
当該の酸は、上記で開示されたリン含有化合物と同一あるいは異なったものであることができる。また、開示された組成物中に存在する窒素含有化合物は、上記で開示された、硫黄含有、リン含有化合物および/またはその類似塩のいずれかを作るために使用し得る窒素含有化合物と同一あるいは異なったものであり得る。
【0059】
ある態様では、当該の酸はリン酸2−エチルヘキシル酸およびリン酸アミル酸のうちの少なくとも一つであり、また窒素含有化合物はオレイルアミンである。
【0060】
本明細書で開示された潤滑組成物は、二つの異なった窒素含有化合物を含んで成る。ある態様において、当該化合物は、オレイルアミンのような直鎖アミン、およびC11−14第3級アルキル第1級アミンの混合物のような分岐アミンを含んで成る。当該アミンは、それぞれ潤滑組成物中に、アミンの総重量パーセントが約0.1重量%から約5重量%、さらなる例として約0.3重量%から約2重量%、またさらなる例としては約0.4重量%から約0.9重量%となるような量で存在する。
【0061】
本発明に基づく組成物の調合に使用するのに適した基油は、合成油または鉱油あるいはそれらの混合物の中のいずれかから選択される。ある態様において、2005年3月17日公開の米国特許出願第2005/0059562号に開示されたように、組成物は植物油と合成油の組み合わせを含んで成る。鉱油には、動物油および植物油(例えばヒマシ油、ラード油)、ならびに液体石油や溶媒処理あるいは酸処理されたパラフィン系、ナフテン系またはパラフィン・ナフテン混合系の鉱油系潤滑油のような他の潤滑油が含まれる。石炭あるいは頁岩から得られた油もまた適切である。さらに、ガス・ツー・リキッド工程から得られたオイルも適している。
【0062】
主要量の基油が存在する可能性がある。ここで「主要量の」とは、50%あるいはそれ以上、例えば潤滑組成物の約80重量パーセントから約98重量パーセントを意味するものと考えられる。
【0063】
基油の100℃での粘度は、一般的に約2cStから約15cSt、さらなる例としては約2cStから約10cStである。従って基油の粘度は通常約SAE50から約SAE250、より一般的には約SAE70Wから約SAE140である。適切な自動車用オイルにはまた、75W−140、80W−90、85W−140、85W−90などのようなクロスグレードも含まれる。
【0064】
合成油の非限定的な例として、ポリマー化およびインターポリマー化されたオレフィン(例えばポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレン・イソブチレンコポリマーなど)のような炭化水素オイル;ポリ(1−ヘキセン)、ポリ−(1−オクテン)、ポリ(1−デセン)等やそれらの混合物のようなポリアルファオレフィン;アルキルベンゼン(例えばドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジ−(2−エチルヘキシル)ベンゼンなど);ポリフェニル(例えばビフェニル、ターフェニル、アルキル化ポリフェニルなど);アルキル化ジフェニルエーテルおよびアルキル化ジュフェニルスルフィドおよびそれらの誘導体、類似体、また同族体、その他が含まれる。
【0065】
アルキレンオキシドのポリマーおよびインターポリマーや、末端ヒドロキシル基がエステル化やエーテル化などによって変成されているそれらの誘導体は、別の種類の、使用可能な既知の合成油を構成する。このようなオイルは、エチレンオキシドまたはプロピレンオキシドのポリマー化によって調製されたオイル、これらのポリオキシアルキレンポリマーのアルキルおよびアリールエーテル(例えば平均分子量が約1000であるメチル−ポリイソプロピレングリコールエーテル、分子量が約500−1000のポリエチレングリコールのジフェニルエーテル、分子量が約1000−1500のポリプロピレングリコールのジエチルエーテルなど)、またはそれらのモノカルボン酸エステルおよびポリカルボン酸エステル、例えば酢酸エステル、混合C3−8脂肪酸エステル、またはテトラエチレングリコールのC13オキソ酸ジエステル等によって例示される。
【0066】
使用される別の種類の合成油には、ジカルボン酸(例えばフタル酸、コハク酸、アルキルコハク酸、アルケニルコハク酸、マレイン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、アジピン酸、リノール酸二量体、マロン酸、アルキルマロン酸、アルケニルマロン酸、など)と各種アルコール(例えばブチルアルコール、ヘキシルアルコール、ドデシルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエーテル、プロピレングリコール、など)のエステルが含まれる。これらのエステルの具体的な例としては、アジピン酸ジブチル、セバシン酸ジ(2−エチルヘキシル)、フマル酸ジ−n−ヘキシル、セバシン酸ジオクチル、アゼライン酸ジイソオクチル、アゼライン酸ジイソデシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジデシル、セバシン酸ジエイコシル、リノール酸二量体の2−エチルヘキシルジエステル、1モルのセバシン酸を2モルのテトラエチレングリコールおよび2モルの2−エチルヘキサン酸およびその他と反応させることによって形成される複合エステルが含まれる。
【0067】
合成油として有用なエステルにはまた、C5−12のモノカルボン酸と、ポリオールと、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール等のようなポリオールエーテル、から作られた物が含まれる。
【0068】
従って、本明細書に記載の組成物を作るために使用された基油は、米国石油協会(API)の基油互換性ガイドラインに指定されたグループI−Vの基油のいずれかから選択することができる。このような基油グループは以下の通りである:
【0069】
グループIは、飽和度が90%未満および/または0.03%以上の硫黄を含有しており、また粘度指数は80またはそれ以上120未満であり:グループIIは飽和度が90%あるいはそれ以上で、0.03%あるいはそれ未満の硫黄を含み、粘度指数は80またはそれ以上120未満であり:グループIIIは飽和度が90%あるいはそれ以上で、0.03%あるいはそれ未満の硫黄を含み、粘度指数は120あるいはそれ以上であり:グループIVはポリアルファオレフィン(PAO)であり;またグループVには、グループI、II、III、またはIVに含まれないその他すべてのベースストックが含まれる。
【0070】
上記のグループの決定に使用された試験方法は、飽和度についてはASTM D2007、粘度指数についてはASTM D2270、また硫黄についてはASTM D2622、4294、4927および3120のうちの一つである。
【0071】
グループIVのベースストック、すなわちポリアルファオレフィン(PAO)には、アルファオレフィンの水素化されたオリゴマーが含まれ、オリゴマー化の最も重要な方法は、フリーラジカル工程、チーグラー触媒作用、および陽イオン性フリーデル・クラフツ触媒方法である。
【0072】
ポリアルファオレフィンの粘度は一般的に100℃で2cStから100cStの範囲、例えば100℃で4cStから8cStの範囲である。これらは、例えば、約2から約30の炭素原子を有する分岐あるいは直鎖のアルファオレフィンのオリゴマーである。これらの非限定的な例には、ポリプロペン、ポリイソブテン、ポリ−1−ブテン、ポリ−1−ヘキセン、ポリ−1−オクテン、およびポリ−1−デセンが含まれる。ホモポリマー、インターポリマー、およびそれらの混合物も含まれる。
【0073】
上記で引用されたベースストックのバランスに関して、結果として得られる混合物がグループIのベースストックに指定された特性の範囲内に含まれる特性を有することを条件として、「グループIのベースストック」にはまた、他の一つ以上のグループからのベースストックと混合することのできるグループIのベースストックも含まれる。
【0074】
例示的なベースストックには、グループIのベースストックおよびグループIIのベースストックとグループIのブライトストックとの混合物が含まれる。
【0075】
本明細書における使用に好適なベースストックは、蒸留、溶剤精製、水素プロセス、オリゴマー化、エステル化、および再精製を含み、またこれらに限定されることのない様々な異なったプロセスを用いて作ることができる。
【0076】
基油は、フィッシャー・トロプシュ合成された炭化水素から得られたオイルであり得る。フィッシャー・トロプシュ合成された炭化水素は、フィッシャー・トロプシュ触媒を使用し、HおよびCOを含んだ合成ガスから作られる。このような炭化水素を基油として有用なものとするために、一般にさらなるプロセスが必要である。例えば当該の炭化水素を、米国特許第6,103,099号または6,180,575号に開示されたプロセスを用いて水素異性化したり、米国特許第4,943,672号または6,096,940号に開示されたプロセスを用いて水素化分解および水素異性化したり、米国特許第5,882,505号に開示されたプロセスを用いて脱ろうしたり、あるいは米国特許第6,013,171号、6,080,301号または6,165,949号に開示されたプロセスを用いて水素異性化および脱ろうすることができる。
【0077】
鉱油であれ合成油であれ(これら任意の二つ以上の混合物も同様に)、本明細書上記に開示された種類の未精製オイル、精製オイル、および再精製オイルを基油中で使用することができる。未精製のオイルは、さらなる精製処理なしで鉱油または合成油源から直接得られたものである。例えば、レトルト工程から直接得られたシェール油、一次蒸留から直接得られた石油、またはエステル化工程から直接得られてさらなる処理を受けずに使用されたエステル油などが、未精製のオイルである。精製オイルは、一つ以上の特性を向上させるために更に一つ以上の精製ステップで処理されていることを除いて、未精製のオイルと同様である。溶媒抽出、二次蒸留、酸または塩基抽出、ろ過、接触ろ過などのような精製技術の多くは、当技術分野に精通した技術者に知られている。再精製オイルは、精製オイルを得るために使用したプロセスと同様のプロセスを、すでに使用された精製オイルに適用することによって得られる。このような再精製オイルは、再生油または再処理油としても知られ、またしばしば、使用済みの添加剤、汚染物質、およびオイルの崩壊産物の除去を目的とした技術によってさらに処理される。
【0078】
開示された潤滑組成物には粘度指数向上剤が含むことができる。粘度指数向上剤は、組成物の総重量に対し、例えば約5重量%から約25重量%、またさらなる例としては約10重量%から約20重量%など、任意の希望の量あるいは効果量で存在し得る。
【0079】
本明細書中で有用な粘度指数向上剤は、C2−14のオレフィンのポリマー化から得られた少なくとも一つのホモポリマー、またはコポリマーを含んで成り、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって決定された数平均分子量が約250から約50,000、例えば1,000から25,000、またさらなる例としては約5000から約15,000,であるオレフィン(コ)ポリマーである。C2−14のオレフィンには、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン、2−ブテン、1−オクテン、1− デセン、1−ドデセンおよび1−テトラデセンが含まれる。ある態様において、(コ)ポリマーには、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、エチレン/プロピレンコポリマー、エチレン/ブテンコポリマー、および1−ブテン/イソブチレンコポリマーが含まれる。数平均分子量が約800から約5000、例えば約1000から約3000のポリイソブチレンはオレフィンポリマーであり得る。
【0080】
ここで特に好適なオレフィンコポリマーは、化学式HC=CHRで表される一つ以上のアルファオレフィンとエチレンを含んで成るエチレン−アルファ−オレフィンコポリマーであり、式中Rは約1から約10の炭素原子を有する炭化水素ラジカルである。コポリマーを形成するモノマーは任意的に非共役ポリエンを含むことができる。ある態様では、アルファオレフィンとして、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチルペンテン、1−ヘプテン、1−オクテンおよび1−デセンが含まれる。任意の非共役ポリエンには、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,4−ペンタジエン、2−メチル−1,4−ペンタジエン、3−メチル−1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,3−ヘキサジエン、1,9−デカジエン、およびエキソ−ジシクロペンタジエンおよびエンド−ジシクロペンタジエンなどのような脂肪族ジエン;5−プロペニル−ノルボルネン、5−(ブテン−2−イル)−ノルボルネン、および5(2−メチルブテン−[2’]−イル)ノルボルネンなどのようなエキソ−アルケニルノルボルネンおよびエンド−アルケニルノルボルネン;5−メチル−6−プロペニルノルボルネンのようなアルキルアルケニルノルボルネン;5−メチレンノルボルネン、5−エチリデンノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、ビニルノルボルネン、およびシクロヘキシルノルボルネンなどのようなアルキリデンノルボルネン;メチルノルボルナジエン、エチルノルボルナジエン、およびプロピルノルボルナジエンなどのようなアルキルノルボルナジエン;そして1,5−シクロオクタジエンおよび1,4−シクロオクタジエンなどのようなシクロジエンが含まれる。ある態様では、粘度指数向上剤はプロピレンの含有量がコポリマーの約55重量%から約65重量%であるようなエチレン/プロピレンコポリマーである。
【0081】
オレフィンコポリマーのエチレン含有量は通常約35重量%から約65重量%、例えば約40重量%から約60重量%である。非共役ポリエンが存在する場合、これらは通常約1重量%から約25重量%、例えば約2重量%から約20重量%、またさらなる例では約4重量%から約17重量%である。全体を100重量%とした場合、コポリマーの残りの部分はエチレン以外のアルファオレフィンでできている。
【0082】
オレフィンコポリマーは、チーグラー・ナッタ(Ziegler−Natta)触媒あるいはメタロセン触媒を使用し、既知の方法に基づいて調製することができる。オレフィンコポリマーの数平均分子量(Mn)は通常、約250から約50,000、例えば約1,000から約25,000である。
【0083】
使用に適したポリアルキル(メタ)アクリレートは、C1−30(メタ)アクリレートのポリマー化によって調製することができる。これらのポリマーの調製にはさらに、ポリアルキル(メタ)アクリレートに向上した分散性など付加的な特性をもたらす、窒素含有官能基、ヒドロキシ基および/またはアルコキシ基を有するアクリルモノマーの使用が含まれる。ポリアルキル(メタ)アクリレートの数平均分子量は、約10,000から約250,000、例えば約15,000から約100,000である。ポリアルキル(メタ)アクリレートは、フリーラジカル重合あるいはアニオン重合の従来の方法によって調製される。
【0084】
本組成物は、さらに場合によりホウ素を含有した化合物を含んで成る。ホウ素含有化合物は組成物中に約5ppmから約500ppm、例えば約11ppmから約100ppm存在する。使用されるホウ素化合物の量は、混合物中の塩基性窒素および/またはヒドロキシル基1モルにつき、約0.001モルから約1モルである。
【0085】
ホウ素含有化合物は有機化合物であっても無機化合物であってもよい。無機化合物にはホウ素酸、その無水物、酸化物、ハロゲン化物が含まれる。有機ホウ素化合物にはホウ素のアミドおよびエステルが含まれる。さらに、ホウ素化されたアシル化アミンやホウ素化された分散剤、ホウ素化されたエポキシドやグリセロールのホウ素化された脂肪酸エステルも含まれる。
【0086】
使用されるホウ素含有化合物としては、酸化ホウ素;酸化ホウ素水和物;三酸化ホウ素;三フッ化ホウ素;三臭化ホウ素;三塩化ホウ素;ボロン酸(すなわちアルキル−B(OH)あるいはアリール−B(OH))、ホウ酸(すなわちHBO)、テトラホウ酸(すなわちH)、メタホウ酸(すなわちHBO)、ホウ素無水物などのようなホウ素酸、そしてこのようなホウ素酸のホウ素アミドおよび各種エステルが含まれる。ホウ素の三ハロゲン化物とエーテル、有機酸、無機酸、あるいは炭化水素との錯体を使用することもできる。このような錯体の例に、三フッ化ホウ素−トリエチルエステル、三フッ化ホウ素−リン酸、三塩化ホウ素−クロロ酢酸、三臭化ホウ素−ジオキサン、および三フッ化ホウ素メチルエチルエーテルなどが含まれる。
【0087】
ボロン酸の具体例としては、メチルボロン酸、フェニル−ボロン酸、シクロヘキシルボロン酸、p−ヘプチルフェニルボロン酸およびドデシルボロン酸などが含まれる。好適なホウ素含有化合物には、例えば酸化ホウ素、酸化ホウ素水和物、および三酸化ホウ素のような酸化ホウ素が含まれる。
【0088】
ホウ素酸エステルには、ホウ酸と、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、シクロペンタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、ドデカノール、ベヘニルアルコール、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、ベンジルアルコール、2−ブチルシクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−ブタンジオール、2,4−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−オクタンジオール、グリセロール、ペンタエリスリトールジエチレングリコール、カルビトール、セロソルブ、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、フェノール、ナフトール、p−ブチルフェノール、o,p−ジヘプチルフェノール、n−シクロヘキシルフェノール、2,2−ビス{p−ヒドロキシフェニル)−プロパン、ポリイソブテン(分子量1500)置換のフェノール、エチレンクロロヒドリン、o−クロロフェノール、m−ニトロフェノール、6−ブロモオクタノール、および7−ケト−デカノールなどのようなアルコールまたはフェノールとのモノ有機エステル、ジ有機エステル、およびトリ有機エステルが含まれる。低級アルコール、1,2−グリコール、および1−3−グリコール、すなわち約8未満の炭素原子を有するものは、ホウ酸エステルの調製に有用である。
【0089】
ホウ素酸のエステルの調製方法は既知のものであり、当技術分野で開示されている。例えば、一つの方法にはトリ−有機ホウ酸塩を得るための、三塩化ホウ素と3モルのアルコールまたはフェノールとの反応が含まれる。別の方法には、酸化ホウ素とアルコールまたはフェノールの反応が含まれる。また別の方法には、テトラホウ酸と3モルのアルコールまたはフェノールとの直接的なエステル化が含まれる。さらに別の方法には、例えば環状ホウ酸アルキレンを形成するため、ホウ酸とグリコールの直接的なエステル化が含まれる。
【0090】
ある態様において、ホウ素含有化合物は、上記に開示された窒素含有化合物を含むがそれらに限定されることのない、ホウ素化された窒素含有化合物である。ある態様では、ホウ素化された窒素含有化合物は分散剤である。
【0091】
別の態様では、ホウ素含有化合物は、上記に開示されたリン含有化合物を含むがそれらに限定されることのない、ホウ素化されたリン含有化合物である。ある態様では、ホウ素化されたリン含有化合物は分散剤である。使用されるリン化合物の量は、その半分までが補助窒素化合物から得られた反応混合物中の塩基性窒素および遊離ヒドロキシル基1モルにつき、約0.001モルから1モルである。
【0092】
リンを含有した分散剤は、塩基性窒素および/または少なくとも一つのヒドロキシル基を分子中に有する、少なくとも一つの油溶性の無灰分散剤を含んで成る。好適な分散剤としては、アルケニルスクシンイミド、アルケニルコハク酸エステル、アルケニルコハク酸エステル・アミド、マンニッヒ塩基、ヒドロカルビルポリアミン、あるいはポリマー性ポリアミンなどが含まれる。
【0093】
そのコハク酸基に少なくとも30の炭素原子を含んだヒドロカルビル置換基が含まれているようなアルケニルスクシンイミドが、例えば米国特許第3,172,892号、3,202,678号、3,216,936号、3,219,666号、3,254,025号、3,272,746号、および4,234,435号に記載されている。アルケニルスクシンイミドは、アルケニル無水コハク酸、酸、酸・エステル、酸ハロゲン化物、または低級アルキルエステルを少なくとも一つの第1級アミノ基を含有したポリアミンと共に加熱するなどの、従来の方法によって形成することができる。アルケニル無水コハク酸は、オレフィンと無水マレイン酸の混合物を例えば約180−220℃まで加熱することによって、容易に作ることができる。このオレフィンは、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等、およびそれらの混合物などのような低級モノオレフィンのポリマーあるいはコポリマーである。例示的なアルケニル基源は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)数平均分子量が10,000またはそれ以上、例えば約500から約2,500、さらなる例としては約800から約1,500であるようなポリイソブテンである。ある態様では、ポリイソブチレンの分子量は約700から約5000である。ポリイソブチレン無水コハク酸とアミンの比率は約1.4から約3、さらなる例では約1.8から約2.2である。
【0094】
ある態様では、キャッピング剤が加えられる。例えば、キャッピング剤として機能するように追加量の無水マレイン酸を塩基性窒素に加え、それにより塩基性窒素を非塩基性に還元する。
【0095】
本明細書中で使用される「スクシンイミド」という用語は、一つ以上のポリアミン反応物と炭化水素置換のコハク酸または無水酸(あるいはコハク酸アシル化剤のような物)の間の反応から得られた完全な反応生成物を含むことを意味し、また化合物を含むことを意図している。ここで当生成物は、第1級アミノ基と無水物部分の反応から得られるタイプのイミド結合に加え、アミド、アミジン、および/または塩結合を有することができる。
【0096】
分散剤は、例えば米国特許第3,184,411号、3,342,735号、3,403,102号、3,502,607号、3,511,780号、3,513,093号、3,513,093号、4,615,826号、4,648,980号、4,857,214号、および5,198,133号に記載の方法によって、リン酸化することができる。
【0097】
上述の多様な無灰分散剤のホウ素化の方法が、米国特許第3,087,936号、3,254,025号、3,281,428号、3,282,955号、2,284,409号、2,284,410号、3,338,832号、3,344,069号、3,533,945号、3,658,836号、3,703,536号、3,718,663号、4,455,243号、および4,652,387号に記載されている。
【0098】
上述されているような無灰分散剤のリン酸化およびホウ素化の方法は、米国特許第4,857,214号および5,198,133号に説明されている。
【0099】
潤滑剤組成物は、スクシンイミド分散剤とホウ素化されたスクシンイミド分散剤のような、二つの異なった窒素含有分散剤を含んで成ることができる。
【0100】
任意的に他の成分が潤滑剤組成物あるいは添加剤組成物中に存在することがある。他の成分の非限定的な例として、希釈剤、消泡剤、乳化破壊剤、銅腐食防止剤、酸化防止剤、極圧添加剤、耐摩耗剤、シール膨張剤、流動点降下剤、防錆剤、および摩擦調整剤が含まれる。
【0101】
本明細書にはまた、自動車のギア、固定ギアボックス(工業用ギアを含む)および/または車軸などのような機械を、開示された潤滑組成物で潤滑する方法が開示されている。さらなる態様では、自動車のギア、固定ギアボックス(工業用ギアを含む)および/または車軸などのような機械に開示された潤滑組成物を加えることを含んで成る、自動車のギア、固定ギアボックス(工業用ギアを含む)および/または車軸などのような機械における耐摩耗保護性および熱安定性の少なくとも一つを向上させる方法が開示される。また、潤滑されたギアセットおよび潤滑されていないギアセットで、例えば少なくとも325 °Fで少なくとも約16時間ASTM D6121を、および/または例えば少なくとも300時間ASTM D5704をパスさせる方法、および/またはギアおよび/または車軸を開示された潤滑組成物で循滑することを含んで成る、GL−5および/またはSAE J2360性能を維持する方法も開示されている。
【実施例】
【0102】
例1:潤滑剤組成物
【0103】
潤滑剤組成物を以下のようにして調合した:
【表1】

例2:ASTM D5704およびASTM D6121
【0104】
いくつかの潤滑剤組成物を例1に記載されている通りに調合し、ATM D5704およびASTM D6121を実施した。各試験の合格要件を表2および3に示す。
【表2】

【表3】

【0105】
L−37試験はASTM D−3121により標準化された低速/高トルクの車軸試験法である。この試験は80rpm、1742ft−lbs.、275°Fの条件下で24時間行われる。高温型L−37試験は80rpm、1742ft−lbs.、325°Fの条件下で16時間行われる。
【0106】
化学式IIIあるいは粘度指数向上剤のいずれかの成分のいかなる変化形も、ASTM
D5704およびASTM D6121試験の両方に不合格となる結果に終わった。
【0107】
本明細書および添付の請求項の目的のため、特記されていない限り、明細書および請求項で使用されている数量、パーセンテージや比率、またその他の数値を表すの数はすべて、あらゆる場合において「約」という言葉で修飾されているものとして理解される。従って、それに反する指定がない限り、以下の明細書および添付の請求項で示されている数値パラメータは、本開示が目指している希望の特性によって変化し得る近似値である。少なくとも、また当請求項の範囲に対応する均等論の適応を制限する試みとしてではなく、各数値パラメータは少なくとも報告された多くの有効数字と通常の四捨五入の使用を考慮に入れて解釈されるべきものである。
【0108】
本明細書および添付の請求項の英文において使用されている、「a」、「an」、および「the」などの単数形を表す単語は、明白に、はっきりと単数の対象物に限定されていない限り、複数の意を含むことに注意されたい。従って、例えば「an antioxidant」という表現には二つあるいはそれ以上の異なった酸化防止剤が含まれる。また、ここで使用される「含む(include)」という表現およびその文法的な変化形は、リストに挙げられた項目が、それらに代用するあるいは付加され得る他の同様の項目を除外しないように、非限定的であることを意図したものである。
【0109】
特定の実施例について説明してきたが、現時点で予見されていないあるいは予見できない代替案、変更、変化、改良点、および実質的に対応する内容が出願人あるいは当技術分野に精通した他の技術者に発見されることもある。従って、提出されたものまた修正される可能性のあるものとしての添付の請求項は、このような代替案、変更、変化、改良点、および実質的に対応する内容をすべて含むことを意図している。
【0110】
本発明の主な特徴及び態様を挙げれば以下のとおりである。
1. 以下のものを含んで成る潤滑組成物:
粘度指数向上剤;
および立体障害された硫黄含有、リン含有化合物と硫黄含有、リン含有化合物の塩の少なくとも一つ。
2. 粘度指数向上剤がオレフィン(コ)ポリマーおよびポリアルキル(メタ)アクリレートの中から選ばれている、上記1に記載の組成物。
3. 粘度指数向上剤がエチレン/プロピレンコポリマーである、上記1に記載の組成物。
4. 粘度指数向上剤が組成物中に約5重量%から約25重量%存在しており、Mnが約5000から約15000である、上記1に記載の組成物。
5. 立体障害された硫黄含有、リン含有化合物が化学式(II)および(V)の少くとも一つで表される化合物である、上記1に記載の組成物:
【化6】

式中nは1から5の整数であり、そして
、R、R、R、R、R、R10、およびR11はそれぞれ独立して水素、シアノ、および約1から約30の炭素原子を含むヒドロカルビル基から成る群から選択される。
6. 化学式(II)においてRおよびRがメチル、またR、R、RおよびRが水素である、上記5に記載の組成物。
7. 硫黄含有、リン含有化合物の塩が化学式(III)および(VI)の少くとも一つで表される、上記1に記載の組成物:
【化7】

式中nは1から5の整数であり、そして
、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、およびR11は独立して水素、シアノ、および約1から約30の炭素原子を含むヒドロカルビル基から成る群から選択される。
8. 化学式(III)において、R、R、R、R、RおよびRが水素、RおよびRがメチル、またRがC12−14の第3級アルキル基である、上記7に記載の組成物。
9. 化学式(VI)において、R、R、R、R、R、R、R、およびRが水素、RがC12−14の第3級アルキル基、またR10およびR11は約1から約6の炭素原子を含んで成るアルキル基である、上記7に記載の組成物。
10. さらに鉱油および合成油の少なくとも一つから選択された基油を含んで成る、上記1に記載の組成物。
11. 基油がポリアルファオレフィンである、上記10に記載の組成物。
12. 基油が鉱油および合成油の混合物である、上記10に記載の組成物。
13. 基油がガス・ツー・リキッドオイルである、上記10に記載の組成物。
14. さらにホウ素含有化合物を含んで成る、上記1に記載の組成物。
15. ホウ素含有化合物が、約5ppmから約500ppmのホウ素を供給する量で組成物中に存在する、上記14に記載の組成物。
16. 約11ppmから約100ppmの量のホウ素含有化合物が組成物中に存在する、上記15に記載の組成物。
17. ホウ素含有化合物がホウ素化された窒素含有化合物である、上記14に記載の組成物。
18. ホウ素化された窒素含有化合物が分散剤である、上記17に記載の組成物。
19. ホウ素含有化合物がホウ素化されたリン含有化合物である、上記14に記載の組成物。
20. ホウ素化されたリン含有化合物が分散剤である、上記19に記載の組成物。
21. さらに酸および窒素含有化合物を含んで成り、酸および窒素含有化合物の少なくとも一つが摩擦調整剤である、上記1に記載の組成物。
22. 組成物が摩擦を調整する酸と窒素含有化合物を含んで成る、上記21に記載の組成物。
23. 組成物が摩擦を調整する窒素含有化合物と酸を含んで成る、上記21に記載の組成物。
24. 組成物が摩擦を調整する窒素含有化合物と摩擦を調整する酸を含んで成る、上記21に記載の組成物。
25. 酸が、有機カルボン酸、有機リン酸、有機スルホン酸、無機リン酸、およびそれらの混合物の中の少なくとも一つから選択された摩擦調整剤である、上記21に記載の組
成物。
26. 有機カルボン酸が、直鎖または分岐鎖、飽和または不飽和であり、また約10から約24の炭素原子を含んでいる、上記25に記載の組成物。
27. 有機カルボン酸が脂肪族である、上記25に記載の組成物。
28. 有機リン酸が、ジアルキルリン酸、モノアルキルリン酸、ジアルキルジチオリン酸、ジアルキルチオリン酸、およびそれらの混合物のうちの少なくとも一つである、上記25に記載の組成物。
29. 摩擦を調整する酸が、オクタン酸、オレイン酸、イソステアリン酸、ステアリン酸、およびそれらの混合物のうちの少なくとも一つである、上記25に記載の組成物。
30. リン酸が、アミル酸リン酸塩、2−エチルヘキシル酸リン酸塩、ジアルキルジチオリン酸、およびそれらの混合物のうちの少なくとも一つである、上記25に記載の組成物。
31. 窒素含有化合物が摩擦調整剤であり、第1級アミン、第2級アミンおよび第3級アミンの中から選択されたものである、上記21に記載の組成物。
32. アミンが直鎖あるいは分岐鎖状であり、飽和あるいは不飽和であり、また約10から約24の炭素原子を含んで成る、上記31に記載の組成物。
33. アミンがオレイルアミンである、上記31に記載の組成物。
34. アミンが分岐鎖状で、C8−16の第3級および第1級アルキルアミンの混合物である、上記31に記載の組成物。
35. 上記1に記載の潤滑組成物を潤滑剤として使用することを含んで成る、自動車のギアの潤滑方法。
36. 上記1に記載の潤滑組成物を自動車のギアに添加することを含んで成る、自動車のギアの耐摩耗保護性を向上させる方法。
37. 上記1に記載の潤滑組成物を自動車のギアに添加することを含んで成る、自動車のギアの熱安定性を向上させる方法。
38. 上記1に記載の潤滑組成物を潤滑剤として使用することを含んで成る、車軸の潤滑方法。
39. 上記1に記載の潤滑組成物を車軸に添加することを含んで成る、車軸の耐摩耗保護性を向上させる方法。
40. 上記1に記載の潤滑組成物を車軸に添加することを含んで成る、車軸の熱安定性を向上させる方法。
41. 上記1に記載の潤滑組成物を潤滑剤として使用することを含んで成る、固定ギアボックスの潤滑方法。
42. 上記1に記載の潤滑組成物を固定ギアボックスに添加することを含んで成る、固定ギアボックスの耐摩耗保護性を向上させる方法。
43. 上記1に記載の潤滑組成物を固定ギアボックスに添加することを含んで成る、固定ギアボックスの熱安定性を向上させる方法。
44. 上記1に記載の潤滑組成物でギアを潤滑することを含んで成る、ASTM D5704に合格する方法。
45. 上記1に記載の潤滑組成物でギアを潤滑することを含んで成る、少なくとも約300時間ASTM D5704に合格する方法。
46. 上記1に記載の潤滑組成物でギアを潤滑することを含んで成る、潤滑されたギアセットおよび潤滑されていないギアセットでASTM D6121に合格する方法。
47. 上記1に記載の潤滑組成物でギアを潤滑することを含んで成る、潤滑されていないギアセットで少なくとも約325°Fで少なくとも約16時間ASTM D6121に合格する方法。
48. 上記1に記載の潤滑組成物でギアを潤滑することを含んで成る、GL−5および/またはSAEJ2360性能を維持する方法。
49. 粘度指数向上剤、および硫黄含有化合物とリン含有化合物と窒素含有化合物の反応生成物を含んで成る潤滑組成物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘度指数向上剤;および
立体障害された硫黄含有、リン含有化合物と硫黄含有、リン含有化合物の塩の少なくとも一つ、を含んでなる潤滑組成物。
【請求項2】
立体障害された硫黄含有、リン含有化合物が化学式(II)および(V)の少くとも一つの化合物である、
【化1】

式中nは1から5の整数であり、そして
、R、R、R、R、R、R10、およびR11はそれぞれ独立して水素、シアノ、および約1から約30の炭素原子を含むヒドロカルビル基から成る群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
硫黄含有、リン含有化合物の塩が化学式(III)および(VI)の少くとも一つの化合物である、
【化2】

式中nは1から5の整数であり、そして
、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、およびR11は独立して水素、シアノ、および約1から約30の炭素原子を含むヒドロカルビル基から成る群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
さらにホウ素含有化合物を含んで成る、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
さらに酸および窒素含有化合物を含んで成り、酸および窒素含有化合物の少なくとも一つが摩擦調整剤である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
請求項1に記載の潤滑組成物を潤滑剤として使用することを含んで成る、自動車のギアの潤滑方法。
【請求項7】
請求項1に記載の潤滑組成物を自動車のギアに添加することを含んで成る、自動車のギアの耐摩耗保護性を向上させる方法。
【請求項8】
請求項1に記載の潤滑組成物を自動車のギアに添加することを含んで成る、自動車のギアの熱安定性を向上させる方法。
【請求項9】
請求項1に記載の潤滑組成物を潤滑剤として使用することを含んで成る、車軸の潤滑方法。
【請求項10】
請求項1に記載の潤滑組成物を車軸に添加することを含んで成る、車軸の耐摩耗保護性を向上させる方法。
【請求項11】
請求項1に記載の潤滑組成物を車軸に添加することを含んで成る、車軸の熱安定性を向上させる方法。
【請求項12】
請求項1に記載の潤滑組成物を潤滑剤として使用することを含んで成る、固定ギアボックスの潤滑方法。
【請求項13】
請求項1に記載の潤滑組成物を固定ギアボックスに添加することを含んで成る、固定ギアボックスの耐摩耗保護性を向上させる方法。
【請求項14】
請求項1に記載の潤滑組成物を固定ギアボックスに添加することを含んで成る、固定ギアボックスの熱安定性を向上させる方法。
【請求項15】
請求項1に記載の潤滑組成物でギアを潤滑することを含んで成る、ASTM D5704に合格する方法。
【請求項16】
請求項1に記載の潤滑組成物でギアを潤滑することを含んで成る、少なくとも約300時間のASTM D5704に合格する方法。
【請求項17】
請求項1に記載の潤滑組成物でギアを潤滑することを含んで成る、潤滑されたギアセットおよび潤滑されていないギアセットでASTM D6121に合格する方法。
【請求項18】
請求項1に記載の潤滑組成物でギアを潤滑することを含んで成る、潤滑されていないギアセットで少なくとも約325°Fで少なくとも約16時間ASTM D6121に合格する方法。
【請求項19】
請求項1に記載の潤滑組成物でギアを潤滑することを含んで成る、GL−5および/またはSAEJ2360性能を維持する方法。
【請求項20】
粘度指数向上剤、および硫黄含有化合物とリン含有化合物と窒素含有化合物の反応生成物を含んで成る潤滑組成物。

【公開番号】特開2007−238944(P2007−238944A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−58651(P2007−58651)
【出願日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(391007091)アフトン・ケミカル・コーポレーション (123)
【氏名又は名称原語表記】Afton Chemical Corporation
【Fターム(参考)】