説明

潤滑組成物

【課題】特に(高温での)動粘度と(低温での)ブルックフィールド粘度の厳しい条件を満たす伝達流体として使用するための代替潤滑組成物を提供すること。
【解決手段】本発明は、フィッシャー−トロプシュ由来基油を含む基油および1種以上の添加剤を含み、100℃で少なくとも3.6cStの動粘度(ASTM D445準拠)、−40℃で10,000mPas未満のブルックフィールド粘度(DIN51398準拠)を有し、組成物の全重量に基づいて1.0重量%未満のVI向上剤を含む潤滑組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝達流体(しかしこれに限定されない)としての特定の用途の基油および1種以上の添加物を含む潤滑組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
伝達流体は当業者に周知であり、自動車産業において、たとえば、自動変速装置(ATF)、手動変速装置(MTF)、二段クラッチ変速装置(DCT)、連続可変式変速装置(CVT)、動力分配装置(TC)、車軸、水力およびパワーステアリング装置に使用されている。伝達流体はまた、様々な産業の応用分野において潤滑、動力分配装置および他の目的に用いることができる。
【0003】
通常、伝達流体は基油(通常、基油の混合物からなる)、粘度指数(VI)向上剤(増粘剤などの)、ならびに、たとえば酸化、さび、腐食、摩耗、(微小)孔食、スカッフィング、発泡などに対して保護を与えるための、ならびに、汚染処理、レオロジー特性、臭気および色などの特性の改良のための1種以上の性能改善用添加剤を含有する性能改善用添加剤パッケージを含む。
【0004】
EP−A−1553158に開示された実施例に関しては、VI向上剤が、比較的高い分子量、またはオレフィンコポリマー、ポリアルキルメタクリレートおよびスチレンマレイン酸エステルなどの代替増粘剤を有するポリイソアルキレン成分であってもよい。EP−A−1553158の実施例(パラグラフ[0084]の表を参照)において示されるように、6.5から8.0重量%のVI向上剤を使用すると4.01cStから5.2cSt以上の動粘度(100℃での)の増加を結果として生じる。
【0005】
上記または他のVI向上剤(または増粘剤)の使用の欠点は、動作中、これらの成分を使用すると流体の剪断安定度の低下、すなわち、流体の永久的な粘性低下をもたらすことである。剪断安定度の低下もまた、流動点降下剤として組成物に添加されるVI向上剤について観察される。後者のVI向上剤の例はポリアルキルメタクリレートを含むが、これに限定されない。
【0006】
しかし、ブルックフィールド粘度(たとえば−40℃での)についての厳しい要求と組み合わせて、動粘度(たとえば100℃での)についての厳しい要求を満たすために、相当な量のVI向上剤を使用しないで鉱物性基油で伝達流体を配合することは疑問である。例として、前述のEP−A−1553158(「基準線1」および「基準線1A」)に開示されるようなVI向上剤を含まない基準流体は、100℃で4.01cStの動粘度および−40℃で17,000のブルックフィールド粘度を示す。
【0007】
この点において、たとえば最新式の自動変速装置流体、最新式の二段湿式クラッチ流体、最新式のCVT流体または最新式の動力分配装置流体について、−40℃で17,000mPasのブルックフィールド粘度が不都合な高い値であることは当業者にはわかるものと留意される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1553158号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の問題または他の問題を最小限に抑えることを目的とする。
【0010】
本発明の別の目的は、特に(高温での)動粘度と(低温での)ブルックフィールド粘度の厳しい条件を満たす伝達流体として使用するための代替潤滑組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
1つ以上の上記または他の目的は、フィッシャー−トロプシュ由来基油を含む基油および1種以上の添加剤を含み、
−100℃(ASTM D445準拠)で少なくとも3.6cStの動粘度、
−−40℃(DIN51398準拠)で10,000mPas未満のブルックフィールド粘度
を有し、組成物の全重量に基づいて1.0重量%未満のVI向上剤を含む潤滑組成物を提供することによって本発明により得ることができる。
【0012】
本発明の重要な利点は、改善された剪断安定度特性に加えて、望ましい燃費特性を得ることができることである。後者は、本発明による潤滑組成物の比較的低い動粘度(40℃から100℃の範囲での)の結果である。
【0013】
さらなる本発明の利点は、IV群の基油(PAO;ポリ−α−オレフィン基油)を用いる必要のない潤滑組成物を配合することが可能であることである。この種のPAOを用いる欠点は、その製造コストが高く、PAOが比較的高いCOフットプリントであることである。
【0014】
(基油が少なくともフィッシャー−トロプシュ由来基油を含み、本発明による潤滑油組成物に関する要件が満たされる場合は、)本発明による潤滑組成物で用いられる基油に関して特に限定はなく、様々な通常の鉱油、合成油および植物油などの天然に由来するエステルも、都合よく用いることができる。
【0015】
本発明で用いられる基油は、(フィッシャー−トロプシュ由来基油に加えて)1種以上の鉱油および/または1種以上の合成油の混合物を含むのが好都合である。したがって、本発明によると、用語「基油」は、少なくとも1種のフィッシャー−トロプシュ由来基油を含む1種を超える基油を含む混合物を指すことができる。鉱油は、水素化精製法および/または脱蝋で精製することによってさらに精製してもよい、パラフィン、ナフテンまたはパラフィン/ナフテン混合タイプの液状の石油および溶媒処理または酸処理した鉱物性潤滑油を含む。
【0016】
本発明の潤滑油組成物で使用される適切な基油は、I−III群の鉱物性基油、VI群のポリα−オレフィン(PAO)、I−III群のフィッシャー−トロプシュ由来基油およびこれらの混合物である。基油(または1種を超える基油が用いられる場合は、基油混合物)は、II群またはIII群の基油、好ましくはIII群の基油の要件(特にVIに関して、硫黄分および飽和炭化水素の含量)を満たすのが好ましい。
【0017】
本発明において、「I群」、「II群」、「III群」および「IV群」の基油は、アメリカ石油協会(API)のカテゴリーI、II、IIIおよびIVの定義に従う潤滑油基油を意味する。これらのAPIカテゴリーはAPI刊行物1509第15版、付録E(2002年4月)に定義されている。
【0018】
フィッシャー−トロプシュ由来基油は当業界で知られている。用語「フィッシャー−トロプシュ由来」は、フィッシャー−トロプシュ法の合成生成物に由来する基油であることを意味する。フィッシャー−トロプシュ由来基油もGTL(ガスから液体の)基油と呼んでもよい。本発明の潤滑組成物で基油として都合よく用いることができる適切なフィッシャー−トロプシュ由来基油は、たとえばEP0776959、EP0668342、WO97/21788、WO00/15736、WO00/14188、WO00/14187、WO00/14183、WO00/14179、WO00/08115、WO99/41332、EP1029029、WO01/18156およびWO01/57166に開示されたようなものである。
【0019】
合成油は、オレフィンオリゴマー(ポリα−オレフィン基油を含む;PAO)、二塩基酸エステル、多価アルコールエステル、ポリアルキレングリコール(PAG)、アルキルナフタレンおよび脱蝋したワックス状異性化物などの炭化水素油を含む。「Shell XHVI」(商標)の名称でShellグループから販売されている合成炭化水素基油は、都合よく用いることができる。
【0020】
ポリα−オレフィン基油(PAO)およびこれらの製造は当業界で周知である。本発明の潤滑組成物で用いることができる好ましいポリα−オレフィン基油は、直鎖状のCからC32、好ましくはCからC16の、α−オレフィンに由来してもよい。前記ポリα−オレフィンのためのとりわけ好ましい供給材料は、1−オクタン、1−デケン、1−ドデケンおよび1−テトラデケンである。
【0021】
PAOの高い製造コストを考慮すると、PAO基油よりフィッシャー−トロプシュ由来基油を用いる方がはるかに好ましい。したがって、好ましくは、基油は、50重量%を超え、好ましくは60重量%を超え、より好ましくは70重量%を超え、さらに好ましくは80重量%を超え、最も好ましくは90重量%を超えるフィッシャー−トロプシュ由来基油を含む。特に好ましい実施形態において、基油のうち5重量%以下、好ましくは2重量%以下が、フィッシャー−トロプシュ由来基油ではない。基油の100重量%が1種以上のフィッシャー−トロプシュ由来基油に基づくことは、より一層好ましい。
【0022】
本発明による特に好ましい実施形態によると、組成物は、IV群の基油の20重量%未満、好ましくは10未満、より好ましくは5未満、さらに好ましくは3未満、特に好ましくは2未満、より一層好ましくは1%未満、最も好ましくは0重量%のIV群の基油を含む。
【0023】
本発明の潤滑組成物に組込まれる基油の合計量は、潤滑組成物の全重量に関して、60から99.5重量%の範囲の量で存在するのが好ましく、より好ましくは65から98重量%の範囲の量、および最も好ましくは70から96重量%の範囲の量である。
【0024】
本発明によると、基油は、好ましくは100℃で少なくとも3.0cSt(ASTM D445準拠)、好ましくは少なくとも4.0cStの動粘度を有している。通常、基油は100℃で10.0未満、好ましくは8.5未満、より好ましくは7.0cSt未満、または5.5cSt未満の動粘度を有している。基油が2種またはより多くの基油の混合物を含む場合、基油のこの動粘度への全寄与が、示す通りであることが好ましい(好ましくは少なくとも3.0cStおよび通常10.0cSt未満など)。
【0025】
上に述べたように、本発明による組成物は、−40℃でのブルックフィールド粘度および100℃での動粘度に対して特定の具体的な要件を満たす。
【0026】
通常、組成物の100℃での動粘度(ASTM D445準拠)は、3.6から6.0cSt、通常5.5cSt未満の間にある。好ましくは、組成物の100℃での動粘度は少なくとも3.7、好ましくは少なくとも3.9、より好ましくは少なくとも4.1、さらにより好ましくは少なくとも4.2、最も好ましくは少なくとも4.5cStである。
【0027】
通常、組成物の−40℃でのブルックフィールド粘度は2000から10,000mPasの間で、より典型的には4000mPasを超える。好ましくは、組成物の−40℃でのブルックフィールド粘度は9000mPas未満で、好ましくは8000mPas未満、より好ましくは7000mPas未満、さらにより好ましくは6000mPas未満である。
【0028】
本発明による潤滑組成物は、組成物の全重量に基づいて、1.0重量%未満のVI(粘度指数)向上剤を含む。当業者は、用語「VI向上剤」が意味するものを容易に理解する。
【0029】
より具体的には、本発明による潤滑組成物は、少なくとも300の平均分子量(特にDIN55672−1によるゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定して)の分子量を有するVI(粘度指数)向上剤を1.0重量%未満含み、ポリイソアルキレン成分のオレフィンコポリマー、ポリアルキルメタクリレート、スチレンマレイン酸エステルおよびこれらの組合せからなる群から選択される。当業者は、このようなVI向上剤が意味するものを容易に理解し、この点において、ポリアルキルメタクリレートなどのいくつかのVI向上剤が分散性にもまた効果を持ちうることが留意される。これらのVI向上剤の例の具体的な記述については、EP−A−1583158が参照され、その教示は引用により本明細書に包含される。
【0030】
好ましくは、VI向上剤は1000を超え、より好ましくは2500を超え、さらにより好ましくは5000を超える平均分子量を有する。
【0031】
本発明の好ましい実施形態によると、組成物は、組成物の全重量に基づいて、0.5重量%未満、好ましくは0.1重量%未満、より好ましくは0.05重量%未満のVI向上剤を含み、最も好ましくはVI向上剤を全く含まない。
【0032】
さらに、組成物は、組成物の全重量に基づいて、流動点降下剤を、0.3重量%未満を含むことが好ましく、より好ましくは0.1重量%未満で、より好ましくは、流動点降下剤を全く含まない。
【0033】
本発明による潤滑組成物の特に好ましい実施形態によると、CEC−L−45−A−99による20時間のKRL試験で評価して、組成物は、5%未満、好ましくは2%未満で、より好ましくは1%未満、最も好ましくは0.5%未満の剪断損失を有する。CEC−L−45−A−99によって、伝達潤滑油(円錐ころ軸受装置により、またドイツ語の短縮形「KLR」で表される)の粘度剪断安定度を測定する。
【0034】
本発明による潤滑組成物は、抗酸化剤、耐摩耗性添加剤、(好ましくは無灰の)分散剤、清浄剤、極圧添加剤、摩擦改良剤、金属不活性化剤、防蝕剤、解乳化剤、消泡剤、シール適合性剤および添加剤希釈基油、などの1種以上の添加剤をさらに含む。
【0035】
当業者は上記および他の添加剤に精通しているため、本明細書においてはさらに詳細に論じない。この種の添加剤の具体的な例は、たとえば、Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology、第3版(14巻)、477−526ページに述べられている。また、具体的言及は前述のEP−A−1553158になされており、その教示は引用により本明細書に包含される。
【0036】
本発明の潤滑組成物は、基油(複数可)と1種以上の添加剤との混合により都合よく調製することができる。
【0037】
前述の添加剤は、潤滑組成物の全重量に基づいて、通常、0.01から35.0重量%の範囲の量で、好ましくは0.05から25.0重量%、より好ましくは、潤滑組成物の全重量に基づいて、1.0から20.0重量%の範囲の量、存在する。
【0038】
別の態様において、本発明は、剪断安定度(特にCEC−L−45−A−99による)および燃費の1つ以上を改善するために、本発明(特に伝達流体としての)による潤滑組成物の使用を提供する。好ましい剪断安定度は、限定的な剪断損失(ASTM D445によって測定された動粘度100℃における減少)をもたらす。典型的には、本発明による組成物の剪断損失は、5%未満、好ましくは2%未満、より好ましくは1.5%未満、さらに好ましくは1%未満または0.5%未満である。剪断損失は、ASTM D445準拠粘度測定で、再現性のある測定はされないのが最も好ましい。
【0039】
本発明は以下の実施例に関して下記に述べられるが、本発明の範囲の限定を意図するものでは決してない。
【実施例】
【0040】
潤滑油組成物
自動変速装置、二段クラッチ変速装置、動力分配装置、パワーステアリング装置、油圧装置などで使用される実施可能な様々な伝達流体が配合された。
【0041】
表1および2で示すように、十分に配合された伝達流体配合物(実施例1−5および比較例1−13)の組成物および特性を試験した。成分の量は、十分に配合された配合物の全重量に基づいて、重量%で与えられる。
【0042】
試験した伝達流体配合物はすべて、基油(または基油混合物)、添加剤パッケージ(この添加剤パッケージは試験したすべての組成物で同じだった)および消泡剤の組合せを含んでいた。比較例12および13はまたVI向上剤を含んでいた。
【0043】
「添加剤パッケージ」は伝達流体の特別の性能向上パッケージで、摩擦改良剤、抗酸化剤、抗さび剤、抗摩耗剤、分散剤および清浄剤を含む性能改善用添加剤の組合せを含んでいた。
【0044】
「VI向上剤1」および「VI向上剤2」は通常のVI向上剤で、たとえばEvonik RohMax Additives GmbH(Darmstadt,独国)からそれぞれ、「Viscoplex12−410」および「Viscoplex0−050」の取引名称で販売されている。
【0045】
「基油1」は、100℃(ASTM D445)で約4cSt(1cStは1mm−1に対応する)の動粘度を有しているフィッシャー−トロプシュ由来基油(「GTL4」)であった。
【0046】
「基油2」は、100℃(ASTM D445)で約5cStの動粘度を有しているフィッシャー−トロプシュ由来基油(「GTL5」)であった。
【0047】
これらのGTL4およびGTL5基油はIII群の要件を満たし、たとえば、国際公開第02/070631号に記載され、その教示が引用により本明細書に包含される方法または類似する方法によって、都合よく製造することができる。
【0048】
「基油3」および「基油4」は、市販のII群の基油であった。基油3および4は、Neste Oil B.V(Beringen、ベルギー国)からそれぞれ「Nexbase3020」および「Nexbase3030」の取引名称で販売されている。
【0049】
「基油5」は市販のIII群の基油であった。基油5は、たとえばNeste Oil B.V(Beringen、ベルギー国)「Nexbase3043」の取引名称で販売されている。
【0050】
「基油6」および「基油7」は市販のII群の基油であった。基油6および7はたとえば、SK Energy(Ulsan、韓国)からそれぞれ「Yubase 3」および「Yubase3L」の取引名称で販売されている。
【0051】
「基油8」は市販のIII群の基油であった。基油8はたとえばSK Energy(Ulsan、韓国)から「Yubase4」の取引名称で販売されている。
【0052】
「基油9」は市販のII群の基油であった。基油9はたとえばS−Oil Corporation(Onsan、韓国)から「S−Oil Ultra3」の取引名称で販売されている。
【0053】
「基油10」は市販のII群の基油だった。基油10はたとえばS−Oil Corporation(Onsan、韓国)から「S−Oil Ultra4」の取引名称で販売されている。
【0054】
「基油11」および「基油12」は、市販のII群の基油だった。基油11はたとえばPetro−Canada(カナダ国)から「VHVI4」の取引名称で販売されている。基油12はたとえばShellから「XHVI4.0」の取引名称で販売されている。
【0055】
実施例1−5および比較例1−13の組成物は、普通の潤滑油配合手順を用いて、基油を添加剤パッケージと混合することにより得られた。
【0056】
【表1】

【0057】
【表2】


【0058】
検討
表1から知ることができるように、本発明によると、驚いたことに、VI向上剤(および/または流動点降下剤)を含まずに、100℃で少なくとも3.6cStの動粘度および−40℃で少なくとも10,000mPas未満のブルックフィールド粘度の厳しい条件を満たす伝達流体を配合するのが可能であることが見出された。
【0059】
表2からわかるように、比較例1−11は、実施例1−5の配合物と同じ添加剤パッケージ、およびフィッシャー−トロプシュ由来基油の代わりにII群および/またはIII群の鉱物性基油を含むが、VI向上剤(または流動点降下剤の目的で添加されるVI向上剤)を使用しないでは、上記の厳しい要件を満たさなかった。
【0060】
VI向上剤が添加された比較例12および13は、100℃での動粘度および−40℃でのブルックフィールド粘度の上記の要件を満たすが、しかし望まれないレベルの剪断損失に終わった。それと反対に、表1からわかるように、実施例2および実施例4は非常に良好な剪断安定度を示し、剪断損失は全く見出されなかった。実施例1、3および5について剪断損失データをとらなかったが、類似した良好な値が予期される。
【0061】
したがって、本発明による組成物がVI向上剤の存在(または少なくとも相当なより少量)を必要としない程度に、組成物の剪断安定度は改良される。流体がポンプで送り込まれる応用分野において、この改善された剪断安定度は、より高い能力ポンプによる剪断損失を過剰補償する必要性を軽減または不要にさえし、したがってコストを下げ、最終的に燃費に寄与するものを有利にする。
【0062】
また、本発明による組成物の低い動粘度および低いブルックフィールド粘度を考慮すると、低温での運転開始とポンプ動作、および高温での動作条件に関しても望ましい燃費特性を得ることができる。
【0063】
上記でわかるのは、特にII群および/またはIII群の鉱油を用いる類似した潤滑組成物と比較したとき、本発明による組成物が改善された剪断安定度特性だけでなく同時に望ましい燃費特性をも示すことである。
【0064】
また、本発明による組成物は、望ましい引火点特性(DIN ISO2592による)およびNoack揮発性値(CEC−L−40−93Bによる)をもたらすことが見出された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基油および1種以上の添加剤を含む潤滑組成物であって、基油がフィッシャー−トロプシュ由来基油を含み、ならびに油滑組成物が、
−100℃で少なくとも3.6cStの動粘度(ASTM D445準拠)、
−−40℃で10,000mPas未満のブルックフィールド粘度(DIN51398準拠)
を有し、組成物の全重量に基づいて1.0重量%未満のVI向上剤を含む潤滑組成物。
【請求項2】
基油が、IIまたはIII群の基油、好ましくはIII群の基油の要件を満たす、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項3】
VI向上剤が少なくとも300の平均分子量(特にDIN55672−1に準拠するゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定して)の分子量を有し、ならびにポリイソアルキレン成分のオレフィンコポリマー、ポリアルキルメタクリレート、スチレンマレイン酸エステルおよびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1または2に記載の潤滑組成物。
【請求項4】
100℃で少なくとも3.7、好ましくは少なくとも3.9、より好ましくは少なくとも4.1、さらに好ましくは少なくとも4.2、最も好ましくは少なくとも4.5cStの動粘度(ASTM D445準拠)を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の潤滑組成物。
【請求項5】
−40℃で9000mPas未満、好ましくは8000mPas未満、より好ましくは7000mPas未満、さらにより好ましくは6000mPas未満のブルックフィールド粘度を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の潤滑組成物。
【請求項6】
基油が、100℃で少なくとも3.0cSt、より好ましくは少なくとも3.5、より好ましくは少なくとも4.0cStの動粘度(ASTM D445準拠)を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の潤滑組成物。
【請求項7】
組成物の全重量に基づいて、0.5重量%未満、好ましくは0.1重量%未満、より好ましくは0.05重量%未満のVI向上剤を含み、最も好ましくはVI向上剤を全く含まない、請求項1から6のいずれか一項に記載の潤滑組成物。
【請求項8】
組成物の全重量に基づいて、0.3重量%未満、好ましくは0.1未満の流動点降下剤を含み、より好ましくは流動点降下剤を全く含まない、請求項1から7のいずれか一項に記載の潤滑組成物。
【請求項9】
基油が、50重量%を超え、好ましくは60重量%を超え、より好ましくは70重量%を超え、さらにより好ましくは80重量%を超え、最も好ましくは90重量%を超えるフィッシャー−トロプシュ由来基油を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の潤滑組成物。
【請求項10】
20重量%未満、好ましくは10未満、より好ましくは5未満、さらに好ましくは3未満、特に好ましくは2未満、より一層好ましくは1未満のIV群の基油を含み、最も好ましくは0重量%のIV群の基油を含む、請求項1から9のいずれかの一項に記載の潤滑組成物。
【請求項11】
CEC−L−45−A−99に準拠する20時間KRL試験で評価して、5%未満、好ましくは2%未満、より好ましくは1.0%未満、最も好ましくは0.5%未満の剪断損失を有する、請求項1から10のいずれか一項に記載の潤滑組成物。
【請求項12】
剪断安定度(特にCEC−L−45−A−99準拠)および燃費特性の1つ以上を改善するための、請求項1から11のいずれか一項に記載の潤滑組成物の、特に伝達流体としての使用。

【公開番号】特開2010−189639(P2010−189639A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−27225(P2010−27225)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(000186913)昭和シェル石油株式会社 (322)
【Fターム(参考)】