説明

潤滑組成物

【課題】良好にすす処理し、摩擦調整、粘度調整及び酸化防止を示し、改良されたエンジンの性能と洗浄度を有する。
【解決手段】最大30の炭素原子を有するカルボン酸とアルコールとのエステルであって、400から5000の範囲内の分子量を有するエステルで、5から50重量%の割合で存在し、当該エステルにより、クランク室内にて見出せる粒子状の燃焼物質を浮遊状態に保持させる、クランク室の潤滑組成物の構成要素として使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑組成物に関し、特にピストンエンジン、とりわけジーゼル(圧縮−点火の)エンジン、クランク室の潤滑に用いるのに好適な組成物に関する。本発明はまた、改良された性能を一定の観点で与える一定の成分の使用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
油性の潤滑剤の効率改善と有用な寿命に関する需要が増している。潤滑組成物の寿命を実質的に短くしている因子は酸化である。これは酸の形成で生じるもので、エンジンのパーツを腐食する傾向が生じ、望ましくない粘度増大が起こり、潤滑剤としての組成物の有用性を減じてしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
潤滑剤の第1の目的は、可動パーツ間の摩擦を減じるところにあり、クランク室内の潤滑剤による摩擦の緩和により、エンジン摩耗を減少させ、エンジン効率を改善するところにある。
【0004】
クランク室の潤滑剤の更なる目的は、クランク室内にて見出せる燃焼副生成物を浮遊状態において維持し、エンジンに悪影響を与えるスラッジや付着物(ディポジット deposits)の形成を阻止するところにある。かかる潤滑組成物の機能および性能全てにおいて改良を行う必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、浮遊状態に粒子状の燃焼物質を保持する潤滑組成物の能力を改善するために、最大30の炭素原子を有するカルボン酸とアルコールとのエステルであって、その分子量が400から5000の範囲内にある当該エステルの使用を提供する。さらにとりわけ、本発明は、当該組成物のすす処理の特性を改良するための、かかるエステルの使用を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0006】
エステルの混合物は、それらの重量平均分子量又はそれらの特性が望ましい範囲内にあれば使用することができる。多くの具体例では、これは、天然(動物、植物)原料、石油系原料から誘導される生成物の酸及び又はアルコール成分の使用から得ることができ、かかる場合、その成分は、狭い範囲の分子量を持つ物質からなる混合物となる。他の具体例では、当該混合物は、広範囲に異なった分子量を持つ物質からなっていてもよく、例えば、低級又は高級エステルを、エステル成分又は全潤滑組成物の性質、例えば粘度を調整するために、低い割合で加えられる。
【0007】
好ましくは、エステルの分子量或いはエステル混合物の重量平均分子量は、最大2000、さらに好ましくは、400から1000の範囲内にあり、さらに好ましくは、450から1000が好ましく、最も好ましいのは500から750である。
【0008】
このエステルは、1以上のカルボン酸と1以上のアルコールとを反応させることにより都合よく得ることができ、とりわけ、ポリカルボン酸と一価アルコール又は、好ましくは多価アルコールとモノカルボン酸を反応させることによって得られる。このエステルは、脂肪族、好ましくは飽和脂肪族の、エステルである。
【0009】
アルコールは、エステル化可能なヒドロキシル基を2から8、好ましくは3から6、最も好ましくは3又は4含有することがよく、また炭素原子を2から10、好ましくは5又は6含有するのがよい。ポリオールは、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ネオペンチルグルコール、またはジメチロールプロパンであるのがよい。ポリオールは、1以上、望ましくは1又は2のエーテル官能基を含むことができる。このような混合物の例は、上記ポリオールのオリゴマー、例えばジ−又はトリ−ペンタエリトリトールである。脂環式ポリオールは使用可能であるが、現在では脂肪族ポリオール、特にトリメチロールプロパンが望ましい。酸は、カルボキシル炭素原子を含めて、最大で24、より望ましくは6から18の炭素原子を含めることがよく、好ましくは上記の単一のカルボキシル基を含めて、8から12、最も好ましくは8から10の炭素原子を含めるのがよい。
【0010】
酸としては、脂肪酸、好ましくは飽和脂肪酸を使用するのがよい。例としては、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸及びステアレン酸がある。酸は、直鎖であっても枝別れしたものであってもよく、酸の混合物が主に入手可能性の理由から好ましい。ポリオールが使用されている具体例においては、それはモノ−及びポリ−カルボン酸の混合物とエステル化でき、その後者ではいわゆる複合エステルを与えるために低い割合の配合にしておくのが有利である。同様に、ポリカルボン酸は、モノ−及びポリ−オールの混合物とともに使用することができる。
【0011】
エステルは、未反応のアルコールと酸の部分を実質的に含まないことがよく、エステルの酸価は最大で5mg KOH/g、好ましくは最大で1mg
KOH/gがよい。
【0012】
エステルの流動点は、ASTM D97による測定で、最大で−15℃、好ましくは−21℃がよい。その100℃の粘度は、3から12mm2/sec又はcStの範囲内にあることがよく、好ましくは4から8mm2/sec又はcStである。その粘度指数は、ASTM D2270による測定で、少なくとも120であるのがよく、好ましくは130から160の範囲内がよい。
【0013】
従って、本発明はまた、浮遊状態において粒子状の燃焼物質、特にすす(soot)を保持する潤滑組成物の能力を改善するため、流動点がASTM D97による測定で最大−15℃、100℃の粘度が3から12mm2/sec又は
cStの範囲内、そしてASTM D2270による粘度指数が少なくとも120を有するエステルの使用を提供する。そのエステルは、最大5mg KOH / g の酸価を有することがよく、上記に定められ記述される化学構造が好ましい。
【0014】
現在のところ、好ましいエステルは、トリメチロールプロパンをCからC10のアルカノイック酸と混合することでエステル化されるエステルで、商業的にはFINA Chemicals社からRadialube 7368として入手可能である。Radialube 7368は、登録商標である。
【0015】
下記に更に詳細に示すように、典型的な潤滑組成物は、天然系及び/或いは合成系の基油原料(base stock)に加えて、様々な添加剤からなるが、それらの中には上記洗浄剤、分散剤、酸化防止剤、摩耗防止剤、腐食防止剤、摩擦調整剤、防錆剤、流動点降下剤、粘度調整剤及び消泡剤などが含まれる。2以上の物質はそれぞれの機能のカテゴリーにおいて使用可能であり、その所定物質は1以上の機能のカテゴリー中で効果的になる。
【0016】
本発明の潤滑剤の減摩特性は、アミン系の摩擦調整剤を組入れることにより改善される。
【0017】
従って、本発明はさらに、上記のごときエステルと、アミン系の摩擦調整剤を含む潤滑組成物であり、 当該組成物全量においてエステルを5から50重量%含有する組成物を提供する。
【0018】
本発明はまたさらに、潤滑組成物の減摩特性を改善するための、上記のごときエステルとアミン系摩擦調整剤の、使用を提供する。
【0019】
本発明のエステル含有潤滑剤の酸化安定性と付着物(deposit)のコントロールは、粘度調整剤、特にアルケニル アレン/ジエン共重合体の粘土調整剤、その他公知の粘度指数調整剤、及び酸化防止剤、特にヒンダードフェノール酸化防止剤を含有すれば改善することができることもまた見出した。
【0020】
本発明は、なおさらに、上記のごときエステルと、アルケニル アレン/ジエン共重合体の粘度調整剤、及びヒンダードフェノール酸化防止剤を含有する潤滑組成物であり、当該組成物全量において当該エステルを5から50重量%含有する組成物を提供する。
【0021】
本発明はまた、ジーゼル(圧縮−点火の)エンジンにおけるピストンの付着物(piston deposits)のコントロールを改善するため、先に特定した様なエステル、先に特定した様な粘度調整剤及びヒンダードフェノール酸化防止剤の使用を提供するものである。
【0022】
潤滑組成物は減摩成分及び付着物(deposit)調整成分の両者を含有しているのが好ましいことが認められる。
【0023】
本発明の全具体例の中で、当該エステルは、組成物全量に対して5から50重量%、好ましくは10から40重量%、最も好ましくは15から30重量%の割合で存在するのがよい。
【0024】
基油原料(ベースストック、base stock)は、本発明にしたがい提供されるエステルに加えて、天然系基油原料と同様に、ポリ−α−オレフィン、ポリブテン、アルキルベンゼン、アルキル化ナフタレン、燐酸エステル及びポリシリコーンオイルのような上記以外のエステルを含む合成の基油原料を含有することができる。
【0025】
天然系基油原料は、API EOLCS 1509の定義のグループI、II又はIIIの中では、鉱物潤滑油を含んでいるが、それらは原油の源(source)に応じて、例えばそれがパラフィン系であるか、ナフテン系であるか、混合物であるか或いはパラフィン−ナフテン系であるかどうかに応じて、それらの製造で用いられる方法、例えばそれらの蒸留範囲や、それらが直留であるのか、分解であるのか、水素精製(hydrofined)であるのか、溶剤抽出であるのかどうかに対応して、大幅に異なってくる。
【0026】
APIのグループIIIの基油原料、例えば水素分解或いは水素異性化(hydroisomerized)された基油原料が好適であり、中でも水素異性化された基油原料が好適である。基油原料又は基油原料は、本発明により提供されるエステルのほか、その他の添加剤と共に含まれ、当該組成物の残部をなす。
【0027】
本発明は、上記のごときエステルに加え、APIのグループIIIの基油原料、特に水素異性化した基油原料と、灰分が少なくとも1.5重量%、望ましくは1.5から3重量%、最も望ましくは1.8から3重量%の割合の洗浄剤を含む組成物に特に有用である。
【0028】
潤滑油の基油原料混合物は、100℃の粘度が2.5から12cSt、或いはmm2/s、好ましくは3.5から9cSt.、或いはmm2/sであるが、実際の値は製造される潤滑油のグレードに依存する。
【0029】
アミン系摩擦調整剤としては、特に第三アミンを挙げることができる。好ましい第三アミンの例は、国際出願番号WO 93/21288及びWO 97/04050で与えることができ、その開示は文献によって組み入れられる。望ましくは次式の化合物が使用される。
【0030】
【化1】

【0031】
上記式中、Rはアルキル基を示し、Rは水素又はアルキル基を示し、m,n,pはそれぞれ1から4の範囲の整数を表す。望ましくはアルキル基(alkyl group(s))は12から20の炭素原子を含む。望ましくはm及びpは2であり、nは2或いは3、Rは水素を表している。
【0032】
特に好適に使用される摩擦調整剤は、N−(2−ヒドロキシエチル)−N−(2−牛脂オキシエチル)−2−アミノエタノール、及びN−(2−ヒドロキシエチル)−N−(3−牛脂オキシプロピル)−2−アミノエタノールであり、ここで牛脂は主にC16及びC18のアルキル基を含む天然生成物である。
【0033】
摩擦調整剤は、当該組成物全量に対して0.025重量%から1.0重量%、好ましくは0.05重量%から0.25重量%、より好ましくは0.075重量%から0.15重量%である。
【0034】
粘度調整剤は、潤滑油に対して高温及び低温で機能を発揮し、昇温時に剪断安定性を保持し、また温度の低下時で受容可能な粘性又は流動性を示す。
【0035】
アルケニル アレン/ジレン共重合体の粘度調整剤としては、特に水素化共重合体を挙げることができるが、これは、残留不飽和物質が少なくとも80%、好ましくは90から98%除去されていることが望ましい。この共重合体の好適な例としては、ブロック共重合体、例えばジ−及びトリ−ブロック共重合体が挙げられる。このような共重合体の例としては、アルキル置換スチレンを含む、スチレンやイソプレン共重合体が挙げられる。その他の共役ジエン、例えばブタジエンも代替的に使用可能である。このポリマーの典型的な重量平均分子量は、10,000から100,000、好ましくは70,000から100,000である。好ましい共重合体の更なる例としては、スター共重合体(star copolymer)を挙げることができ、その典型はアルケニル アレン重合体、例えばジビニルベンゼン、のコアー(core)を持つ共重合体であり、ペンダントの手(pendant arm)の数は、典型的には4から25、特に12から16であって、例えばイソプレンの様なジエンポリマーによって与えられる手は、望ましくは水素化されており、それぞれの手は典型的に30,000から50,000の分子量を持ち、またこのスターポリマーは典型的に500,000から620,000の分子量を持つ。手の自由端は官能基を備えてもよい。
【0036】
共重合体は水素化されたスチレン/ジエン共重合体が望ましく、好適にはスチレン/イソプレンブロック共重合体である。
【0037】
粘度調整剤は当該組成物全量において0.05重量%から2重量%、好ましくは0.1重量%から1.5重量%、より好ましくは0.75重量%から1.25重量%である。
【0038】
酸化防止剤は、使用上、鉱油の劣化傾向を減少させる。かかる劣化の形跡は、例えば金属表面にワニス状の付着物やスラッジの形成と、粘度の増大にある。
【0039】
ヒンダードフェノール酸化防止剤の例としては、次式のものを使用することが望ましい。
【0040】
【化2】

【0041】
式中、Rは第3ブチル基を示し、Rはアルキルを示し、任意にヘテロ原子、好ましくは硫黄、CH−アリール、アリール、或いは(CH)nCOORが割り込まれ、nは1から4を示し、Rはアルキル基を示す。
がアルキル基であれば、6から20の炭素原子を含むことが望ましい。望ましくはnは2を示し、Rは、6から10、好ましくは7から9の炭素原子を含むアルキル基を示すことが望ましい。好ましい酸化防止剤は、Irganox (TM) L135であり、これは、RがCH2CH2COOR5、RがCのアルキル基の混合物である。その他の好適な酸化防止剤には、ヒンダードビスフェノールが含まれ、その多くが当該技術において公知でかつ一般的に使用されている。
【0042】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤の効果はその配合割合に大きく依存する。しかしながら、一般的には、その割合は、当該組成物全量において少なくとも0.25重量%、より望ましくは0.5重量%から5重量%、好ましくは1.0重量%から4重量%、最も好ましくは1.5重量%から3.5重量%である。
【0043】
本発明の潤滑組成物は、特に圧縮−点火(ジーゼル)エンジンのクランク室の潤滑剤としての使用、例えば、船舶や鉄道のエンジンのみならず、自動車やトラックのエンジンに適している。また本発明は、本発明による潤滑剤をエンジンに供給すること及びエンジンを作動することを含むところの、エンジンを潤滑にするプロセスを提供するものである。
【0044】
本発明にしたがって与えられた添加剤に加えて、潤滑組成物は1以上の次の成分を含有してもよい。
【0045】
好ましい粘度調整剤は、本発明にしたがって与えられるものに加えて、一般的には、高分子量の炭化水素ポリマーまたはポリエステル、及び粘度指数の向上と同時に分散剤としての機能を発揮する粘度指数調整分散剤である。油溶性の粘度調整ポリマーは、通常、ゲル透過クロマトグラフィーまたは光散乱方法での測定で、約10,000から100,000、好ましくは20,000から500,000の重量平均分子量を持っている。
【0046】
腐食防止剤は、潤滑オイル組成物で接触している金属部分の分解を減ずる。チアジアゾール(thiadiazoles)は、例えば米国特許第2 719 125号、第2
719 126号及び第3 087 932号で、潤滑オイル用の腐食防止剤の例として開示されている。好ましいチアジアゾールは、ビス−2,5−(ノニル−ジスルフィド)−1,3,4−チアジアゾールである。
【0047】
好ましい酸化防止剤は、本発明によって提供されたものに加えて、アルキル−フェノールチオエステルのアルカリ土類金属塩、ジフェニルアミン、フェニル−ナフチルアミン、及びフォスフォサルファライズド(phosphosulphurised)またはサルファライズド(sulphurised)炭化水素が含まれる。
【0048】
摩擦調整剤は、本発明にしたがって提供されたものに加えて、ファイナルオイル(final
oil)のその他の成分と適合する燃料エコノミー剤をまた含めることができる。そのような物質の例としては、高級脂肪酸のグリセリルモノエステル、ジチオカルバメイト、特にモリブデン塩、及びオキサゾリン化合物がある。
【0049】
分散剤は、流体中の浮遊状態において、使用の間、酸化を原因として生じるオイル不溶性物質を保持し、これによってスラッジの凝集(flocculation)や、金属のパーツ上における沈殿や付着を防ぐ。いわゆる灰のない分散剤は、金属含有(因って灰を形成する)の洗浄剤と異なり、燃焼で灰を実質的に形成しない有機物質である。好ましい分散剤は、炭化水素基が50から400の炭素原子を含む長鎖炭化水素置換のカルボン酸誘導体を含んでおり、かかる誘導体の例は、高分子量の炭化水素置換の琥珀酸誘導体である。この炭化水素置換のカルボン酸は、例えば窒素含有化合物、より好適にはポリアルキレンポリアミン、またはエステルと反応することができる。特に好ましい分散剤は、ポリアルキレンアミンとアルケニル琥珀酸無水物との反応物である。明細書の実施例は最後に述べたタイプの分散剤を米国明細書第3202678号、第3154560号、第3172892号、第3024195号、第3024237号、第3219666号、第3216936号及びベルギー明細書第662875号で開示している。
【0050】
他の好ましい分散剤は、例えば米国特許第4 637 886号で開示されたマクロ環式分散剤(macrocyclic
dispersants)があり、アミノ化し且つ任意に硼酸塩化して官能基化した、少なくとも30%の末端ビニリデン不飽和のオレフィンポリマーがWO−94/13709に開示されている。
【0051】
上記のように、粘度指数調整分散剤は、粘度指数調整剤及び分散剤しとして両方作用する。粘度指数調整分散剤が潤滑組成物の使用に適している例としては、アミン、例えばポリアミンと、炭化水素−置換のモノ又はジカルボン酸との反応生成物が含まれており、その炭化水素の置換基は、化合物に粘度指数調整特性を与えるのに十分長い鎖を含む。
【0052】
分散剤と粘度指数調整分散剤の実施例は、欧州特許明細書第24146Bで見出すことができる。
【0053】
洗浄剤及び金属防錆剤は、スルホン酸、アルキルフェノール、スルホン化アルキルフェノール、アルキルサリチレート、ナフテネート、及びその他の油溶性モノ−及びジカルボン酸の金属塩が含まれる。金属がアルカリ土類金属から選ばれ、マグネシウムである過塩基化金属スルホネートが特に洗浄剤としての使用に好適である。
【0054】
洗浄剤/金属防錆剤の代表例、及びその調製方法は、欧州特許明細書第208560A号において与えられる。
【0055】
摩耗防止剤は、名前が意味する通り、金属部分の摩耗を減少する。金属、特にジヒドロカルビルジチオフォスフェート(dihydorocarbyldithiophosphates)(ZDDPs)が摩耗防止剤としては広く使用されている。特にオイル系組成物で用いるZDDPsが好ましく、その化学式はZn[SP(S)(OR1)(OR2)]2であって、式中、R及びRはそれぞれアルキルまたはアラルキル基であり、望ましくは炭素原子が1から18、好ましくは2から12である。リンのない物質が必要な場合は、例えばジオカルバメートが使用でき、例えば米国特許第4 758 362号及び第4 997 969号に記述されている。
【0056】
流動点降下剤は、潤滑油流動調整剤(lube oil flow improvers)として公知であり、流体が流動しようとする又は注入することができる温度を下げる。かかる添加剤は、エチレンとα−オレフィン又は不飽和エステルの共重合体、ポリメタクリレート、及びこはく酸−オレフィン共重合体を含む。
【0057】
泡の調整は、ポリシロキサンタイプの消泡剤、例えばシリコーンオイルやポリジメチルシロキサンにより与えられる。
【0058】
上記添加剤のいくつかは多数の効果を与えるもので、例えば一つの添加剤が分散−酸化防止剤として作用し得る。
【0059】
潤滑組成物に1以上の上記添加剤を含ませる場合は、典型的には、各添加剤は当該添加剤に所望とする作用を与えることができる量でその原料オイル(the base oil)中に混合する。
【0060】
かかる添加剤の代表的な有効量は、クランク室の潤滑剤に使用する場合は下記の通りである。
【0061】
添加剤 質量 % a.i. 質量 % a.i.
(広い範囲) (好適範囲)
粘度調整剤 0.01−6 0.01−4
腐食防止剤 0.01−5 0.01−1.5
酸化防止剤 0.01−6 0.01−4
摩擦調整剤 0.01−5 0.01−1.5
分散剤 0.1−20 0.1−8
洗浄剤/防錆剤 0.01−6 0.01−5
摩耗防止剤 0.01−6 0.01−4
流動点降下剤 0.01−5 0.01−1.5
消泡剤 0.001−3 0.001−0.15
鉱物或いは合成系オイルベース 残余 残余

* ファィナルオイル(final oil)に対する有効成分の質量%は、本発明
に従って与えられる添加剤を除くが、本発明が同一機能を有する添加
物を与える場合は所定の値から減じることができる。
+ 比較的大きな割合は、例えば少なくとも10質量%などは、通常、船
舶用途に用いられる。
【0062】
多くの添加剤を使用した場合、必須ではないが、潤滑オイル組成物を形成するためにベースオイルに数種類添加できる添加剤(濃縮物は添加剤パッケージと言及されることもある)で構成された添加剤濃縮物を1以上用いるのが望ましい。添加剤濃縮物の潤滑オイル中への溶解は、溶剤によって及び緩やかに加熱しながら攪拌することにより容易になるが、必須ではない。
【0063】
理解し得ることは、当該組成物の種々の成分、即ち任意及び慣用成分と共に必須成分は、配合、貯蔵、使用の下で反応することができ、本発明は、かかる反応の結果得る又は得られた生成物を提供することができることである。
【実施例】
【0064】
下記の実施例では、全てのパーセンテージは重量で、特定の試験が示されている。それらは以下のように実施される。
【0065】
Mack T−8
本試験は、機械的燃料インジェクションを持つE7−350の6シリンダー搭載のMackジーゼルエンジンで実施され、試験対象である潤滑剤のすす形成の目標レベルを与えるために時間調整を行った。そのエンジンは、1800rpmで稼働し、燃料フロー速度は250時間で、63.3kg/hrであった。本試験は、浮遊状態において、燃焼生成物、典型的にはすす、を保持するためのオイルの能力を評価するもので、高レベルのすすで汚染されたとき、粘度増加の減少とフィルターの差込みによって示されるものである。API CG−4 及び ACEA E3−96 の規格によって許容可能な粘度増加の最大値は、すすの量が3.8%のとき、11.5mm2/sec乃至cStである。かかる処理下での許容可能な圧力差の増加分は138kPaである。
【0066】
Mercedes Benz OM441LA
本試験は、1900rpmで250kWの定格性能を持つ6シリンダーのジーゼルエンジンにおいて、オイル溜め温度125℃で、フルロードで50時間と循環状態で50時間を交互に繰り返して400時間実施される。続いて、このエンジンを検査し、エンジンスラッジ、ピストンの清浄度、エンジンとターボ室の付着物、目視によるエンジンの摩耗、内腔(bore)の艶、シリンダーの摩耗及びリングの粘着度、及びオイルの消費の観点から測定される。スラッジ、清浄度、付着物及びエンジンの摩耗については長所の等級評価法で評価し、シリンダー摩耗は実測される。
【0067】
実施例1において、本発明に係る組成物を、ACEA E3−96の基準を満たす15W40製品である現代欧州ハイパワージーゼル潤滑オイルと比較した。このオイルには、Paranox 2281を14.8重量%、Paratone 8002(登録商標)を8重量%含有しており、エッソ系基油原料中に酸化防止剤及びオレフィン共重合体(粘土調整剤)を備えている。
【0068】
本発明に係る組成物は下記の通りであった。
【0069】
成分 機能
水素異性化 44.6
基油原料(1)
エステル(2) 20.0
水素化スチレン/イソプレン 粘度調整剤 0.9
共重合体(3)
Irganox L 135 ヒンダードフェノール 2.0
酸化防止剤
アミン(4) 摩擦調整剤 0.1
残余 (5) 32.4
【0070】
(1)Shell XHVI
(2)CからC10のアルカノイック酸混合物のトリメチロールプロパンエステルで、100℃の粘度が4.5mm2/s、VI 140、流動点<−42℃、酸価が0.1 mg KOH/g (Radialube(登録商標)7368)
(3)鉱油6%溶液のASTM D445 粘度:100℃で1400mm2/s
(4)N−(2−ヒドロキシエチル)−N−(3−牛脂オキシプロピル)−2−アミノエタノール
(5)分散剤、無灰及び金属洗浄剤、摩耗防止剤、流動性改良剤、腐食防止剤、その他の酸化防止剤、消泡剤及び希釈剤。
【0071】
本組成物は、100℃の粘度が12mm2/s、VIが175、TBNが15.3及び灰分量が1.9 重量%を持っていた。
【0072】

実施例1
本発明に係る組成物と比較例オイルは、すす処理能力を確認すべく、Mack
T−8の試験がなされた。その結果、粘度増加が低く及びフィルター圧力変化が低く、良好な処理特性を示した。表はその結果を示す。
【0073】

本発明の組成物 比較例オイル パス値
すす3.8%時の 3.2 9.3 11.5
粘度上昇mm2/s
フィルター圧力差 17 40 138.0
の増加(kPa)
ACEA E3−96 パス値(最大値)

【0074】
実施例2
上記の本発明の組成物は、OM441LAのテストがなされ、Mercedes Benz
228.5頁の要求規格に対してその性能を測定した。表に示された結果から全基準の達成が確認される。
【0075】
評価項目 目標値 結果項目
清浄度、エンジン 9.0 最小 9.4
清浄度、ピストン 40 最小 40
付着物、% 2.0 最大 1.5
摩耗、目視 2.5 最大 2.1
内腔の艶 2.0% 最大 0.3%
シリンダー摩耗、mm 0.008 最大 0.002
リングの粘着度(第2リング) 1 最大 0
オイルの消費度、g/h 100 最大 67.7



【特許請求の範囲】
【請求項1】
最大30の炭素原子を有するカルボン酸とアルコールとのエステルであって、400から5000の範囲内の分子量を有するエステルで、5から50重量%の割合で存在し、当該エステルにより、クランク室内にて見出せる粒子状の燃焼物質を浮遊状態に保持させる、クランク室の潤滑組成物の構成要素として使用されるエステルの使用方法。
【請求項2】
モノオレイン酸グリセリル及びジオレイン酸グリセリルの混合物の使用を除く、請求項1記載のエステルの使用方法。
【請求項3】
最大30の炭素原子を有するカルボン酸とアルコールとのエステルであって、400から5000の範囲内の分子量を有するエステルで、当該エステルにより、粒子状の燃焼物質を浮遊状態に保持させる、潤滑組成物の構成要素として使用されるエステルで、モノオレイン酸グリセリル及びジオレイン酸グリセリルの混合物の使用を除く、エステルの使用方法。
【請求項4】
エステルが5から50重量%の割合で存在する、請求項3記載のエステルの使用方法。
【請求項5】
その潤滑組成物がクランク室の潤滑組成物であり、そのエステルがクランク室内にて見出せる粒子状の燃焼物質を浮遊状態に保持させるよう使用する、請求項3または4記載のエステルの使用方法。
【請求項6】
そのエステルの分子量が450から2000の範囲内である請求項1から5のいずれかの項において記載された、エステルの使用方法。
【請求項7】
そのエステルの分子量が500から750の範囲内である請求項1から5のいずれかの項において記載された、エステルの使用方法。
【請求項8】
そのエステルが、多価アルコールとモノカルボン酸とのエステルである請求項1から7のいずれかの項において記載された、エステルの使用方法。
【請求項9】
その酸が、最大24の炭素原子を含む、請求項1から8のいずれかの項において記載された、エステルの使用方法。
【請求項10】
その酸が、最大18の炭素原子を含む、請求項9に記載された、エステルの使用方法。
【請求項11】
そのエステルは、2から8のエステル化可能な水酸基と2から10の炭素原子を含む飽和脂肪族アルコールと、6から18の炭素原子を含む飽和脂肪族モノカルボン酸とのエステルである、請求項1から8のいずれかの項において記載された、エステルの使用方法。
【請求項12】
そのエステルが、トリメチロールプロパンと、1以上のCからC10のアルカノイック酸(alkanoic acids)とのエステルである、請求項11において記載された、エステルの使用方法。
【請求項13】
そのエステルが、酸価が最大5mg KOH/gである、請求項1から12のいずれかの項において記載された、エステルの使用方法。
【請求項14】
そのエステルが、ASTM D97の流動点が最大−15℃、100℃の粘度が3から12mm2/secの範囲内、及びASTM D2270の粘度指数が少なくとも120のエステルである、請求項1から13のいずれかの項において記載された、エステルの使用方法。
【請求項15】
その潤滑組成物が圧縮−点火エンジンのクランク室の潤滑剤である、請求項1から14のいずれかの項においてクレームされた、エステルの使用方法。
【請求項16】
その潤滑組成物がアミン系摩擦調整剤を含む、請求項1から15のいずれかの項において記載された、エステルの使用方法。
【請求項17】
その潤滑組成物がアルケニル アレン/ジエン共重合体粘度調整剤、及びヒンダードフェノール(hindered phenol)酸化防止剤を含有する、請求項1から16のいずれかの項において記載された、エステルの使用方法。
【請求項18】
その組成物が、水素で異性化された基油原料(hydoroisomerized
base stock)を含有する、請求項1から17のいずれかの項において記載された、エステルの使用方法。
【請求項19】
その組成物はまた、先のいずれかの請求項に記載のもの以外に、1以上の洗浄剤、分散剤、酸化防止剤、摩耗防止剤、腐食防止剤、摩擦調整剤、防錆剤、流動点降下剤(pour point depressants)、粘度調整剤及び消泡剤を含む、請求項1から18のいずれかの項において記載された、エステルの使用方法。




【公開番号】特開2012−97275(P2012−97275A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−3763(P2012−3763)
【出願日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【分割の表示】特願2009−113004(P2009−113004)の分割
【原出願日】平成10年10月1日(1998.10.1)
【出願人】(500155062)インフィニューム・ユー・エス・エー・エルピー (2)
【出願人】(504469606)トータル・ペトロケミカルズ・リサーチ・フエリユイ (180)
【Fターム(参考)】