説明

潰瘍治療剤

【課題】本発明は、層状複水酸化物である、亜鉛(Zn)を固溶したハイドロタルサイト粒子の層間にアミノ酸、ピコリン酸、酢酸、クエン酸、グリセリン酸NO3-、CO32-、SO42-、の1種以上を持つ複合ハイドロタルサイト粒子を有効成分とする潰瘍治療剤を提供するものである。
【解決手段】
ハイドロタルサイト粒子に少量の亜鉛(Zn)を固溶させ、層間にはアミノ酸、ピコリン酸、酢酸、クエン酸、グリセリン酸、NO3-、CO32-、SO42-、の1種以上を持つ下記式(1)の複合複合ハイドロタルサイト粒子を活性成分として使用することにより解決する。
(MgaZnb)1-xAlX(OH)2(An-)x/n・mH2O (1)
但し、式中、An-はアミノ酸、ピコリン酸、酢酸、クエン酸、グリセリン酸NO3-、CO32-、SO42-、の1種以上を示し、nは1または2を示し、x、a、bおよびmはそれぞれ下記条件を満足する値を示す。
0.18≦x≦0.40, 0.5≦a<1, 0<b≦0.5, a+b=1, 0≦m<1

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複合ハイドロタルサイト粒子を有効成分として含有する潰瘍治療剤に関するものであり、より詳しくは、腸管からの亜鉛の吸収が高く、優れた潰瘍治療効果を持つ、亜鉛含有複合ハイドロタルサイト粒子層状複水酸化物の中間層に、アミノ酸、ピコリン酸、酢酸、クエン酸、グリセリン酸、等の酸を有効成分として含有する新規潰瘍治療剤に関する。
【背景技術】
【0002】
潰瘍治療剤、特に胃潰瘍治療剤は昔から研究されており、多種多様な製品が開発されている。消化性潰瘍が起こる原因は、胃酸の酸度が高いこと、自立神経の興奮の促進、胃壁の血行障害、ストレス等があり、抗潰瘍剤としては粘膜保護剤とH2ブロッカーやプロトンインヒビター等の胃酸の分泌を抑制する攻撃因子抑制剤が使われている。最近は亜鉛(Zn)の創傷治癒作用が注目され、有機物質に亜鉛(Zn)を配合した潰瘍治療剤も開発されている。例えば、亜鉛(Zn)の錯体を組みやすいという特徴を利用した、ヒスタミン、H2受容体拮抗剤のシメチジンに亜鉛を配合したシメチジン亜鉛錯体(特許文献1)がある。
しかしながら、これらH2ブロッカーは白血球中の顆粒球を減少させ、プロトンインヒビターは顆粒球のスーパーオキサイドの生成を抑制する。(非特許文献1)
【0003】
一方、無機物質の胃潰瘍治療剤としては制酸剤である合成ハイドロタルサイトがある。(特許文献2)(特許文献3)合成ハイドロタルサイトは医薬用制酸剤としては理想的である、とされている。
制酸剤としてのハイドロタルサイト粒子は、潰瘍治療剤としても有効で、その製造方法は、米国特許明細書に記載されている(特許文献4)(特許文献5)。このハイドロタルサイト粒子は、代表的には、化学式Mg6Al2(OH)16CO3・4H2Oで表される。しかし、従来のハイドロタルサイト粒子を潰瘍治療剤として使用する場合は長期間の服用が必要であり、長期間の服用により、胃内壁の粘膜をいためる場合がある。
【特許文献1】特開平6-49035号公報
【特許文献2】特公昭46-2280号公報
【特許文献3】特公昭50-30039号公報
【特許文献4】米国特許3539306号
【特許文献5】米国特許3650704号
【非特許文献1】Digestive Diseases and Sciences Vol45, No9p.1786(2000)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ハイドロタルサイト粒子を口腔内、食道、胃、十二指腸、小腸、大腸等の潰瘍治療剤として使用する場合は、長期間の服用が必要であり、長期間の服用により粘膜を損傷する場合がある。粘膜の保護という点から考えると、さらに改良が望まれていた。そこで、本発明の目的は、粘膜を損傷させず、短期間の服用で優れた潰瘍治療効果を持ち、さらにZnの吸収が優れた瘍潰治療剤として改良された複合ハイドロタルサイト粒子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために、ハイドロタルサイト粒子に少量かつ特定量の亜鉛(Zn)を固溶体として含有させた複合ハイドロタルサイト粒子が、粘膜を損傷することなく優れた潰瘍治療作用を有する、さらに亜鉛(Zn)の吸収が優れた新規潰瘍治療剤として提供された。すなわち、従来の潰瘍治療剤に比べ、速効性で副作用がない潰瘍治療剤である複合ハイドロタルサイト粒子である。
しかしながら、過度のストレスによる胃潰瘍の場合は、ストレスによって血液中の亜鉛(Zn)濃度が下がる。それは、ストレスによって肝臓で生成されるメタロチオネインという蛋白質が多くなるが、その際、亜鉛が大量に使用されるので、血液中の亜鉛(Zn)が肝臓に集まり、亜鉛の血中濃度が低くなり、胃に十分供給できなくなる。そのため、潰瘍の発生を抑制する亜鉛の血中濃度が低くなり潰瘍を発生する。
発明者等は、亜鉛(Zn)の体内への吸収をより高める必要があると考え、鋭意研究の結果、酸性水に溶けやすい亜鉛(Zn)は、アルカリ性の腸管からは吸収されにくいが、このZn含有複合ハイドロタルサイト粒子の中間層に、アミノ酸、ピコリン酸、酢酸、クエン酸、グリセリン酸、等の酸を入れることにより、亜鉛(Zn)が腸管から簡単に吸収されることを見出した。すなわち、胃酸により分解された複合ハイドロタルサイト粒子の亜鉛(Zn)と層間にあった酸が結合し、亜鉛(Zn)が腸管から簡単に吸収され、血中への亜鉛(Zn)の供給を助ける、すなわち中間層中の酸がZnの吸収を助けると思われる。
すなわち、本発明の複合ハイドロタルサイト粒子を服用することにより、消化器内壁粘膜の創傷治癒効果のみならず、複合ハイドロタルサイト粒子が胃内で胃酸により分解し、亜鉛(Zn)が血液中に吸収され、肝臓および血中の亜鉛(Zn)濃度が高くなり、胃へ亜鉛(Zn)が供給され消化器内壁の潰瘍治癒を助けていると思われる。
【0006】
さらに、本発明の複合ハイドロタルサイト粒子は、人体に必要な必須ミネラルのひとつである亜鉛補給も兼ね備えている。
必須ミネラルの一つである亜鉛は、最近不足しがちである。
亜鉛不足は、味覚や免疫力を低下させるだけでなく、特に妊婦の場合、体内の亜鉛が胎児に移行するので、亜鉛欠乏になりやすく、免疫力が低下する。また、亜鉛欠乏はうつ病を引き起こすことも報告されている。亜鉛欠乏のまま出産した場合は、赤ん坊にうつ状態の脳波が観察されたり、脳細胞を作るたんぱく質の合成が行われず、学習や記憶力に悪影響を及ぼすということも判ってきている。亜鉛欠乏性貧血も報告されている。貧血の女性の約48%が亜鉛性貧血であったとの報告もある。
【0007】
すなわち、本発明の複合ハイドロタルサイト粒子は、消化性潰瘍治療および亜鉛補給効果を兼ね備えた新規潰瘍治療剤である。
【0008】
本発明者は、比較的安価で、しかも無毒性か、もしくは毒性が比較的少ない亜鉛(Zn)イオンの少量を、ハイドロタルサイト粒子に固溶させ、中間層中にアミノ酸、ピコリン酸、酢酸、クエン酸、グリセリン酸、を挿入した下記式(1)である複合ハイドロタルサイト粒子が胃潰瘍治療効果に優れており、ミネラルとしての亜鉛(Zn)補給剤としての効果もあることを見出し本発明に到達した。
(MgaZnb)1-xAlX(OH)2(An-)x/n・mH2O (1)
但し、式中、An-はアミノ酸、ピコリン酸、酢酸、クエン酸、グリセリン酸、NO3-、CO32-、SO42-、の1種以上を示し、nは1または2を示し、x、a、bおよびmはそれぞれ下記条件を満足する値を示す。
0.18≦x≦0.40, 0.5≦a<1, 0<b≦0.5, a+b=1, 0≦m<1
xは0.18≦x≦0.4を満足するが、0.2≦x≦0.35が好ましく、0.24≦x≦0.3がより好ましい。bは、0<b≦0.5を満足するが、0.005≦b≦0.1が好ましく、0.0005≦b≦0.2が得に好ましい。また、aは0.5≦a<1を満足するが、0.6≦a≦0.9が好ましい。mは、結晶水の含有量を示し、0≦m≦1を満足するが、0.1≦m≦1が好ましい。
【0009】
本発明の式(1)で表される複合ハイドロタルサイト粒子は、本発明者が見出した新規な化合物であり、ハイドロタルサイト粒子に少量の亜鉛(Zn)が固溶体として含有し、層間にアミノ酸、ピコリン酸、酢酸、クエン酸、グリセリン酸、を入れたものである。本発明でアミノ酸として使用されるものは、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、チロシン、ヒスチジン、トリプトファン、セリン、スレオニン、システィン、メチオニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、リジン、アルギニン、プロリン等であるが、特に好ましいのは、アスパラギン酸、グルタミン酸、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、トリプトファン、スレオニン、メチオニン、リジンである。
【0010】
本発明の複合ハイドロタルサイト粒子は、ハイドロタルサイト粒子と同じ結晶構造を有する化合物であり、粉末X線回折法によれば、ハイドロタルサイト粒子とほとんど同じ回折パターンを示す。さらに、本発明の複合ハイドロタルサイト粒子は、亜鉛がハイドロタルサイト中に固溶しているため、食道、胃、十二指腸、腸等の消化器内壁粘膜を痛めることもない。
【0011】
本発明の複合ハイドロタルサイト粒子の製造方法は基本的には公知のハイドロタルサイト粒子の製造方法(例えば、米国特許3539306号明細書)と同様の方法である。その際、亜鉛(Zn)が固溶体として含有されるように、マグネシウム塩及び/またはアルミニウム塩と一緒に原料中に添加される。亜鉛(Zn)はその所定量を、好ましくは硝酸塩、硫酸塩または塩化物のような水溶性塩として原料中に添加すればよく、反応条件は前記米国特許明細書中に記載された範囲が選択される。
【0012】
本発明のハイドロタルサイト粒子の製造方法は、例えば、Mg、ZnおよびAlの塩(硝酸塩、塩化物、および硫酸塩)を目的のハイドロタルサイト粒子を構成する金属元素の比率で含む水溶液と炭酸ナトリウム水溶液(Na2CO3/Al=0.35〜0.75)および水酸化ナトリウム水溶液とを接触させ、水酸化ナトリウム水溶液で反応液のpHを10〜10.5に保持して共沈殿させる。反応は室温ないし100℃の温度で行う。次に反応生成物をそのまま、または洗浄し、懸濁液(水系)に、アミノ酸等の、複合ハイドロタルサイト粒子の層間に挿入する酸を添加し、水洗する。さらにこれを70〜200℃の温度で0.5〜24時間水熱反応を行うことも出来る。
【0013】
本発明の複合ハイドロタルサイト粒子は、特にその形状は制限されないが、レーザー回折散乱法で測定された平均粒子径は、0.1〜30μm、好ましくは0.2〜20μmであるのが有利であり、BET法比表面積は0.5〜100m2/g、好ましくは1〜50m2/gであるのが望ましい。
本発明の複合ハイドロタルサイト粒子は、潰瘍治療剤として使用する場合は、粉末状、顆粒状、錠剤、カプセル剤または、スラリー状のいずれの形態でもよく、賦形剤、結合剤、崩壊剤および滑沢剤等を必要に応じ添加することが出来る。
【0014】
結合剤としては結晶セルローズ、デンプン系等、崩壊剤としては、とうもろこしデンプン、馬鈴薯デンプン、デキストリン、ヒドロキシプロピルスターチ、部分アルファー化デンプン、カルボキシメチルスターチナトリウム、等のデンプン系崩壊剤、クロスカルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、カルメロース、カルボキシスターチナトリウム等がある。
【0015】
実施例に基づき、本発明を詳細に説明する。
実施例において、複合ハイドロタルサイト粒子の(a)Zn、(b)平均2次粒子径、(c)BET法比表面積、(d)グルタミン酸、は以下に記載する測定法によって測定された値を意味する。
(a)Zn
キレート法により測定した。
(b)平均2次粒子径
MICROTRACK粒度分布計MT-3000 IIシリーズ(MICROTRACK社製)を用いて測定する。
試料粉末700mgを70mLの水に加えて、超音波(NISSEI社製、MODEL US-300、電流300μA)で3分間処理した後、その分散液の2〜4mLを採って、190mLの脱気水を収容した上記粒度分布計の試料室に加え、分析計を作動させて1分間その懸濁液を循環した後、粒度分布を測定する。得られた50%累積2次粒子径を試料の平均2次粒子径とする。
(c)BET法比表面積
液体窒素の吸着法により測定した。
(d)グルタミン酸
ケルダール法を用いて窒素(N)を分析し、その値からグルタミン酸を換算する。

【実施例1】
【0016】
1.3L反応槽中で、4.84モル/Lの水酸化マグネシウム124.1mLを脱炭酸水366.2mLにて希釈し、50℃に温度調整したものに、0.99モル/Lの硝酸亜鉛121.0mLと1.01モル/Lの硝酸アルミニウム237.6mLの混液358.6mLと3.5規定の水酸化ナトリウム205.7mLを50℃に温度調整したものを、それぞれ同時に30分かけて注加し、50℃にて30分攪拌した。
得られたスラリー700mLを150℃で6時間加熱熟成した後、個液分離し、固形物の20倍量の脱炭酸水にて洗浄した後、洗浄済みケーキを乳化し、700mLとした。得られた乳化スラリー300mLを脱水、乾燥し、下記組成の複合ハイドロタルサイト粒子を得た。(比較例1の試料)この複合ハイドロタルサイト粒子の、Znの分析結果、および平均2次粒子径、BET法比表面積の値を表1に示す。

組成:Mg0.586Zn0.130Al0.268(OH)2(NO3)0.195(CO3)0.022・0.5H2O

残り400mLを80℃に温度調整し、試薬特級のグルタミン酸ナトリウム一水和物8.23gを3.5規定の水酸化ナトリウム12.6mLに80℃で溶解し、脱炭酸水で44.0mLにしたものを添加し、1時間攪拌した後、個液分離し、固形物の20倍量の脱炭酸水にて洗浄し、乾燥して下記の組成の複合ハイドロタルサイト粒子を得た。この複合ハイドロタルサイト粒子の、Znおよびグルタミン酸の分析結果、および平均2次粒子径、BET法比表面積の値を表1に示す。

組成:Mg0.603Zn0.131Al0.270(OH)2(Glu)0.085(NO3)0.060(CO3)0.024・0.5H2O

Glu=グルタミン酸

【実施例2】
【0017】
1.3L反応槽中で、4.86モル/Lの水酸化マグネシウム135.8mLを脱炭酸水434.2mLにて希釈し、50℃に温度調整したものに、0.99モル/Lの硝酸亜鉛60.6mLと1.07モル/Lの硝酸アルミニウム224.3mLの混合液284.9mLと6.0規定の水酸化ナトリウム100.0mLを50℃に温度調整したものを、それぞれ同時に30分かけて注加し、50℃にて30分攪拌した。
得られたスラリー700mLを150℃で6時間加熱熟成した後、個液分離し、固形物の20倍量の脱炭酸水にて洗浄した後、洗浄済みケーキを乳化し、700mLとした。得られた乳化スラリー200mLを脱水、乾燥し、下記組成の複合ハイドロタルサイト粒子を得た。(比較例2の試料)この複合ハイドロタルサイト粒子の、Znの分析結果、および平均2次粒子径、BET法比表面積の値を表1に示す。

組成:Mg0.666Zn0.063Al0.259(OH)2(NO3)0.194(CO3)0.021・0.5H2O

残り500mLを80℃に温度調節し、試薬特級のグルタミン酸ナトリウム一水和物10.85gを6.0規定の水酸化ナトリウム9.7mLに80℃で溶解し、脱炭酸水で58.0mLにしたものを添加し、1時間攪拌した後、個液分離し、固形物の20倍量の脱炭酸水にて洗浄し、さらに固形物の20倍量のEt-OHにて洗浄し、乾燥して下記の組成の複合ハイドロタルサイト粒子を得た。この複合ハイドロタルサイト粒子の、Znおよびグルタミン酸の分析結果、および平均2次粒子径、BET法比表面積の値を表1に示す。

組成:Mg0.677Zn0.063Al0.263(OH)2(Glu)0.061(NO3)0.078(CO3)0.036・0.5H2O

Glu=グルタミン酸


実施例2および比較例2のX線回折パターンを書きに示す。

(実施例2)
ピーク番号 2θ d値(Å) 相対強度(I/I0
1 10.980 8.0513 100
2 22.420 3.9622 49
3 34.280 2.6137 49
4 38.100 2.3600 29
5 45.000 2.0128 21
6 60.260 1.5345 40
7 61.420 1.5083 34

(比較例2)
ピーク番号 2θ d値(Å) 相対強度(I/I0
1 11.060 7.9932 100
2 22.540 3.9414 33
3 34.320 2.6108 22
4 38.260 2.3505 14
5 45.300 2.0020 10
6 60.300 1.5336 19
7 61.480 1.5070 17

【実施例3】
【0018】
1.3L反応槽中で4.86モル/Lの水酸化マグネシウム135.8mLを脱炭酸水434.2mLにて希釈し、50℃に温度調整したものに、0.99モル/Lの硝酸亜鉛6.1mLと1.07モル/Lの硝酸アルミニウム224.3mLの混合液230.4mLと5.0規定の水酸化ナトリウム120.0mLを50℃に温度調整したものを、それぞれ同時に30分かけて注加し、50℃にて30分攪拌した。
得られたスラリー700mLを150℃で6時間加熱熟成した後、個液分離し、固形物の20倍量の脱炭酸水にて洗浄した後、洗浄済みケーキを乳化し、700mLとした。得られた乳化スラリー200mLを脱水、乾燥し、下記組成の複合ハイドロタルサイト粒子を得た。(比較例3の試料)この複合ハイドロタルサイト粒子の、Znの分析結果、および平均2次粒子径、BET法比表面積の値を表1に示す。

組成:Mg0.707Zn0.006Al0.275(OH)2(NO3)0.206(CO3)0.022・0.5H2O

残り500mLを80℃に温度調節し、試薬特級のグルタミン酸ナトリウム一水和物10.85gを5.0規定の水酸化ナトリウム11.6mLに80℃で溶解し、脱炭酸水で58.0mLにしたものを添加し、1時間攪拌した後、個液分離し、固形物の20倍量の脱炭酸水にて洗浄し、さらに固形物の20倍量のEt-OHにて洗浄し、乾燥して下記の組成の複合ハイドロタルサイト粒子を得た。この複合ハイドロタルサイト粒子の、Znおよびグルタミン酸の分析結果、および平均2次粒子径、BET法比表面積の値を表1に示す。

組成:Mg0.697Zn0.006Al0.271(OH)2(Glu)0.063(NO3)0.080(CO3)0.037・0.5H2O

Glu=グルタミン酸
【実施例4】
【0019】
雄ラット(SPF)を用いて実施例2で得られた、層間にグルタミン酸を含有する複合ハイドロタルサイト粒子を用い、胃潰瘍に対する影響を調べた。比較例として層間にグルタミン酸を含有しない比較例2を使用した。
(試験方法)
試験群構成
対象群(媒体) 6匹
グルタミン酸含有複合ハイドロタルサイト粒子 100mg/kg 6匹
比較例2 100mg/kg 6匹

ペントバルビタールナトリウム(40mg/Kg、i.p.)麻酔下に開腹し、胃体部と幽門前庭部の境界の粘膜下組織に漿膜側より20%酢酸30μLを注入し、酢酸潰瘍を作製する。潰瘍モデル作製3日後に群分けをして被験物質を1日1回10日間反復経口投与する。最終投与の翌日にペントバルビタールナトリウム(40mg/Kg、i.p.)麻酔下に胃を摘出して潰瘍の長径×短径(mm)を測定し、その積(mm2)を損傷係数とする。結果は表2に示す。
この結果は、本発明のグルタミン酸含有複合ハイドロタルサイト粒子は有効であることを示している。
【0020】
【表1】

【0021】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される複合ハイドロタルサイト粒子を有効成分とする潰瘍治療剤。
(MgaZnb)1-xAlX(OH)2(An-)x/n・mH2O (1)
但し、式中、An-はアミノ酸、ピコリン酸、酢酸、クエン酸、グリセリン酸、NO3-、CO32-、SO42-、の1種以上を示し、nは1または2を示し、x、a、bおよびmはそれぞれ下記条件を満足する値を示す。
0.18≦x≦0.40, 0.5≦a<1, 0<b≦0.5, a+b=1, 0≦m<1
【請求項2】
前記式(1)中、xは0.2≦x≦0.35を満足する請求項1記載の潰瘍治療剤。
【請求項3】
前記式(1)中、bは0.0005≦b≦0.2を満足する請求項1記載の潰瘍治療剤。
【請求項4】
前記式(1)中、bは0.005≦b≦0.1を満足する請求項1記載の潰瘍治療剤。
【請求項5】
前記式(1)中、aは0.6≦a≦0.9を満足する請求項1記載の潰瘍治療剤。
【請求項6】
アミノ酸が、アスパラギン酸、グルタミン酸、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、トリプトファン、スレオニン、メチオニン、リジンである請求項1記載の潰瘍治療剤。
【請求項7】
請求項1記載の複合ハイドロタルサイト粒子の潰瘍治療剤としての使用。
【請求項8】
請求項1記載の複合ハイドロタルサイト粒子を有効成分とする亜鉛補給剤。
【請求項9】
請求項1記載の複合ハイドロタルサイト粒子を有効成分とする顆粒剤。
【請求項10】
請求項1記載の複合ハイドロタルサイト粒子を有効成分とするスラリー剤。
【請求項11】
請求項1記載の複合ハイドロタルサイト粒子を有効成分とする錠剤。
【請求項12】
潰瘍治療剤が胃潰瘍治療剤である請求項1記載の潰瘍治療剤。

【公開番号】特開2009−269862(P2009−269862A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−122246(P2008−122246)
【出願日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【出願人】(000162489)協和化学工業株式会社 (66)
【Fターム(参考)】