説明

澄明液中に分散した不純物凝集体を除去することによるタンパク質の精製方法

【課題】不純物を有効に除去可能な、多孔膜状のアニオン交換膜を用いたタンパク質の精製方法を提供する。
【解決手段】不純物と目的タンパク質とを含む混合溶液から、目的タンパク質を精製する方法であって、不純物と目的タンパク質とを含む混合溶液の水素イオン指数をpH5.0以上pH8.5未満、塩濃度を0mol/L以上0.3mol/L未満に調整した後、濁質成分を除去するろ過膜を透過させて得られる澄明液を、多孔膜状のアニオン交換膜に通液することにより、不純物が除去された目的タンパク質のろ過液を回収する、タンパク質の精製方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパク質の精製方法に関する。本発明は、具体的には、動物細胞培養液に代表される、目的とするタンパク質と、不純物と、を含む混合液から、不純物を簡便に除去し、目的とするタンパク質を効率的に精製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品及び医療分野において、有用なタンパク質を効率的に精製する方法が求められている。また近年、バイオテクノロジー産業において、タンパク質の大量精製が重要な課題となっている。特に医薬の分野において、抗体医薬の需要が急速に拡大しており、効率的に大量のタンパク質を産生及び精製可能な技術の確立が望まれている。
【0003】
一般的に、タンパク質は、動物由来の細胞株を用いる細胞培養によって産生される。細胞培養液からタンパク質を精製する通常の操作においては、最初に、細胞培養液を遠心分離し、濁質成分を沈降除去する。次いで、遠心分離で除去しきれない約1μm以下の細胞デブリを、精密ろ過膜を用いるサイズろ過により除去する。さらに無菌化するために、最大細孔径が0.22μm以下のろ過膜を用いて無菌化ろ過を施し、目的タンパク質を含む無菌溶液を得る(ハーベスト工程)。続いて、代表的にはプロテインAを用いるアフィニティクロマトグラフィーをはじめとする、複数のクロマトグラフィー技術の組み合わせによる精製プロセスを用いて、宿主細胞由来タンパク質(HCP:Host Cell Protein)、デオキシリボ核酸(DNA)、エンドトキシン、ウィルス、及びカラムから脱離したプロテインA等の夾雑物を、この無菌溶液から除去し、目的タンパク質を分離・精製する(ダウンストリーム工程)。
【0004】
ダウンストリーム工程おいて、クロマトグラフィー技術は、不純物を取り除くために重要である。これは、濁質成分を除去した細胞培養液に残存する不純物は、溶液中に分子レベルのサイズで分散しているため、サイズ分離に基づいた精密ろ過膜及び限外ろ過膜では、目的とするタンパク質との分離が事実上不可能であることによる。クロマトグラフィー技術は、高度の精製を達成するためにタンパク質の化学的及び物理的性質を利用するものである。これらの化学的及び物理的性質は、典型的にはサイズ、等電点、電荷分布、疎水性部位及びリガンドに対する親和性による。代表的なクロマトグラフィーによる分離モードは、アフィニティ、イオン交換、疎水性相互作用、ゲルろ過、及び逆相のいずれかのクロマトグラフィーを含んでいる。
【0005】
これらのクロマトグラフィー技術の中でも、特に重要なものは、アフィニティ、イオン交換、及び疎水性相互作用である。目的とするタンパク質が抗体である場合、アフィニティクロマトグラフィーは殆どの場合、プロテインAを用いる。ここでは、抗体−抗原反応に基づいた特異的な相互作用により、リガンドであるプロテインAに抗体分子が、極めて高い選択性をもって吸着する性質を利用しており、一般に溶液中に含まれる95%以上の不純物が非吸着成分として除去される。アニオン交換及びカチオン交換クロマトグラフィーを含むイオン交換クロマトグラフィーは、表面電荷の違いによって、目的タンパク質と、不純物と、を分離する。疎水性相互作用クロマトグラフィーは、疎水性の差によって、目的物と、不純物と、を分離する。
【0006】
クロマトグラフィー技術は高い信頼性を有するが、容量と処理量が大規模な場合の応用には、その再現性及びスケーラビリティを保証する事が問題となる。一般的なクロマトグラフィー工程は効果的で信頼性があるが、クロマトグラフィー工程の処理量は、典型的には対象タンパク質に対するクロマトグラフィー樹脂の能力によって制約される。吸着成分であるタンパク質が過剰となったり、あるいは非吸着成分が大量に存在したりする事などでカラムへの負荷が増大すると、目的タンパク質の不純物からの分離効率がしばしば低下する。
【0007】
特に不純物を非吸着成分としてカラムを透過させて除去する、プロテインAに代表されるアフィニティクロマトグラフィーの場合、溶液中の大量の不純物はカラム内に残留する不純物成分の増加につながり、目的タンパク質の精製度の低下をもたらす。
【0008】
このため、カラムクロマトグラフィー工程前に、カラムに負荷を与える不純物を除去する方法が、これまでにも検討されている。最も一般的に実施されている方法は、目的タンパク質を含有する細胞培養液を、カラムクロマトグラフィーにかける前に、遠心分離、及び/又は精密ろ過膜による処理を施すことにより、溶液中に分散している不純物、あるいは沈殿している濁質成分として存在する不純物を除去する方法である(例えば、非特許文献1参照。)。この方法は、カラムクロマトグラフィーへの負荷を低減するために、ダウンストリーム工程前に実施する必須工程と認識されている。
【0009】
不純物を濁質成分として除去することは、精密ろ過膜あるいは遠心分離により容易に実施することができる。しかし、溶液中に分子状に分散している不純物は、濁質成分と異なり、容易に除去できない。これに対し、溶液中に分子状に分散している不純物を、積極的に沈殿させることにより除去する方法が提案されている。例えば、特許文献1には、ポリカチオン多価電解質を用いて細胞培養液不純物を沈殿させることにより除去する、タンパク質精製方法が開示されている。また、特許文献2には、セルロース繊維と、シリカと、をベースとする粒子状又は繊維状のろ過エレメントに陽電荷を付与することにより、濁質成分と併せて負電荷を有する不純物成分を吸着により除去するろ過素材、及びそれを用いた精製方法が開示されている。また、特許文献2と同様なろ過素材は、特許文献3にも開示されている。さらに、特許文献4及び5には、分子状に分散しているために沈殿あるいは精密ろ過膜によるサイズろ過では除去することができない不純物を、溶液の透過の際に吸着することにより積極的に除去し、カラムプロセスへの負荷を大幅に低減するタンパク質の精製方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特表2010−516773号公報
【特許文献2】特表平4−504379号公報
【特許文献3】米国特許第7390403号明細書
【特許文献4】国際公開第2009/054226号パンフレット
【特許文献5】特開2010−70490号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】“PROCESS SCALE BIOSEPARATIONS FOR THE BIOPHARMACEUTICAL INDUSTRY”、Chapter 1、Published in 2007 by CRC Press、Taylor & Francis Group、US.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記に記載した従来の方法は、(1)濁質成分として溶液中に存在する不純物を、サイズろ過あるいは沈殿によって除去する方法、及び(2)分子状に分散した不純物を吸着によって除去する方法に限定されている。しかしながら、(1)の方法では溶液中に大量に存在する、分子状に分散した不純物を除去することはできない。また(2)の方法では、不純物を有効に吸着除去するために、吸着に用いる多孔膜の構造及び吸着メカニズムを高度に制御する必要があり、また吸着することができる分子状の不純物の量も限定される。したがって、従来よりも有効、かつ簡便に溶液中に存在する不純物を多量に除去する方法が求められている。
【0013】
かかる状況に鑑み、本発明の解決しようとする課題は、多孔膜を用いて多量の不純物を有効にかつ選択的に除去することにより、簡便に目的タンパク質の回収を実施する、タンパク質の精製方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、細胞培養液などの目的タンパク質を含む溶液の水素イオン指数(pH)及び塩濃度を調整し、濁質成分を取り除いた後にも澄明な溶液に分散して存在する形態の、凝集濁質成分と分子状成分との中間領域のサイズに相当する不純物凝集体が含まれる状態において、その溶液を不純物凝集体サイズより大きな最大細孔径を有する多孔膜状のアニオン交換膜に透過することにより、顕著に不純物が取り除かれたろ過液として、精製された目的タンパク質の回収が実現することを見出し、本発明を完成した。
【0015】
すなわち、本発明の一態様は、以下の通りである。
(1)不純物と目的タンパク質とを含む混合溶液から、目的タンパク質を精製する方法であって、不純物と目的タンパク質とを含む混合溶液の水素イオン指数及び塩濃度を、水素イオン指数をpH5.0以上pH8.5未満、塩濃度を0mol/L以上0.3mol/L未満に調整した後、濁質成分を除去する精密ろ過膜を透過させて得られる澄明液を、多孔膜状のアニオン交換膜に通液することにより、不純物が除去された目的タンパク質のろ過液を回収する、タンパク質の精製方法。
(2)澄明液に含まれる不純物が、動的光散乱法によって得られる粒径が20〜200nmの凝集体として、沈殿することなく溶液中に分散した状態である、(1)に記載のタンパク質の精製方法
(3)多孔膜状のアニオン交換膜が、グラフト鎖を有する、最大孔径0.1μm以上0.8μm以下の多孔体よりなるアニオン交換膜である、(1)又は(2)に記載のタンパク質の精製方法。
(4)精密ろ過膜の細孔径が0.1μm以上1.0μm以下である、(1)乃至(3)のいずれかに記載のタンパク質の精製方法
(5)目的タンパク質のろ過液を、クロマトグラフィーカラムを用いて精製することをさらに含む、(1)乃至(4)のいずれかに記載のタンパク質の精製方法。
(6)目的タンパク質が、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、免疫グロブリン、及び抗体断片からなる群から選択される1種である、(1)乃至(5)のいずれかに記載のタンパク質の精製方法。
(7)不純物が、混合溶液中に溶存する不純物タンパク質、HCP、DNA、ウィルス、エンドトキシン、プロテアーゼ及びバクテリアからなる群から選択される少なくとも1種を含む、(1)乃至(6)のいずれかに記載のタンパク質の精製方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明の、多孔膜を用いたタンパク質の精製方法によれば、抗体等のタンパク質及び不純物を含む溶液から、HCP、DNA、エンドトキシン及びウィルスなどの夾雑物を簡便かつ高速に除去可能であり、抗体等のタンパク質の精製を有効かつ迅速に実施することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施例及び比較例の結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施の形態」という。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の本実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することが可能である。
【0019】
本実施の形態に係る、タンパク質含有溶液の精製方法は、不純物と目的タンパク質とを含む混合溶液から、目的タンパク質を精製する方法であって、不純物と目的タンパク質とを含む混合溶液の水素イオン指数をpH5.0以上pH8.5未満、塩濃度を0mol/L以上0.3mol/L未満に調整することと、混合溶液を、濁質成分を除去するろ過膜に透過させて、澄明液を得ることと、澄明液を多孔膜状のアニオン交換膜に通液して不純物を除去し、目的タンパク質のろ過液を回収することと、を含む。
【0020】
ここで、精密ろ過膜は特に限定されるものではなく、タンパク質溶液中に肉眼にて認識される濁質成分をサイズろ過することが可能な最大細孔径を有する多孔膜であり、膜表面で分割するスクリーンろ過膜あるいは膜の内部で粒子を細くするデプス膜のいずれでもよい。また、細孔径分布が膜の厚さ方向で均一な対称膜あるいは細孔径が膜の厚さ方向によって異なる非対称膜のいずれでもよい。
【0021】
精密ろ過膜の最大細孔径は、溶液中の濁質成分を除去し、かつ高い透過流速を得るという観点から、好ましくは0.1μm〜5.0μmであり、より好ましくは0.1μm〜3.0μmであり、さらに好ましくは0.1μm〜1.0μmである。
【0022】
多孔膜状のアニオン交換膜も特に限定されるものではなく、多孔膜の細孔表面に正電荷を有し、負電荷に帯電した微粒子あるいは分子を吸着捕捉することが可能なものであれば、中空糸状、平膜状などの形体によらず用いることが可能である。上記の使用に適した、一般に市販されているアニオン交換膜としては、旭化成メディカル製QyuSpeed(登録商標)D、Pall製MustangQ、Sartorius製SartobindQ、Natrix製adseptQ、Millipore製ChromaSorbなどが挙げられる。これらの中でも、細孔径よりも小さなサイズの不純物凝集物を効果的に捕捉する事に優れた、グラフト鎖を有するアニオン交換膜がより好ましく、上記市販の製品の中では旭化成メディカル製QyuSpeed(登録商標)Dが最も好ましい。
【0023】
多孔膜状のアニオン交換膜の最大細孔径は、溶液中の分散した不純物凝集体有効に捕捉し、かつ高い透過流速を得るという観点から、好ましくは0.1μm〜5.0μmであり、より好ましくは0.1μm〜3.0μmであり、さらに好ましくは0.1μm〜0.8μmである。
【0024】
以下において、多孔膜状のアニオン交換膜に用いられる多孔質基材に固定された親水性を有する分子鎖を「グラフト鎖」という。また、多孔質基材の内部の細孔の側壁を含む多孔質基材の総ての表面を単に「表面」といい、多孔質基材の内部の細孔の側壁を含まない表面を「主表面」という。
【0025】
精密ろ過膜及び多孔膜状のアニオン交換膜に用いられる多孔質基材の形態は、溶液を通液することが可能な形態であれば特に限定されず、例えば、平膜、不織布、中空糸膜、モノリス、又はキャピラリーなどが挙げられる。これらの形態の中でも、製造の容易性、スケールアップ性、及びモジュール成型した際の膜のパッキング性などの観点から、中空糸膜が好ましい。また、多孔質基材の形状は、例えば円板又は円筒状であってもよいが、これに限定されない。
【0026】
本実施の形態において、中空糸多孔膜とは、中空部分を有する円筒状又は繊維状の多孔膜であり、中空糸の内層と、外層と、が貫通孔である細孔によって連通しており、その細孔によって内層から外層、あるいは外層から内層に、液体又は気体が透過する性質を有する多孔体を意味する。中空糸の外径及び内径は、物理的に多孔膜が形状を保持することができ、かつモジュール成型可能であれば、特に限定されない。
【0027】
本実施の形態において、「タンパク質」は、例えば「抗体」を含む。「抗体」とは、生体内に侵入した抗原と抗原抗体反応を起こし、抗原に対する免疫性を生体に与えるタンパク質の総称であり、具体的には、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体及び免疫グロブリンなどを指す。特に本実施の形態における精製方法は、抗体医薬の製造工程で用い得るという観点から、上記の抗体のうち、抗体医薬となり得る抗体が、本実施の形態に係る精製方法の精製対象として好適である場合もある。
【0028】
本実施の形態における「不純物」とは、抗体を精製しようとする対象溶液(混合液)中に含まれる、抗体以外の不純物を指し、例えば、抗体を細胞培養により産生させる際に培養槽内で産生される、目的抗体以外の不純物が挙げられる。より具体的には、HCP、エンドトキシン、DNA、プロテアーゼ、遊離プロテインA、ウィルス、及びバクテリア等が挙げられる。
【0029】
本実施の形態における「目的タンパク質及び不純物を含む混合液」は、上記の抗体及び不純物を含有する溶液(又は含有する可能性のある溶液)であれば特に制限されず、本実施の形態に係る精製方法により、そこから抗体を精製しようとする対象溶液である。例えば、抗体の産生において用いられる細胞培養液又はその除濁液、あるいはそれらのダウンストリーム工程でのクロマトグラフィー工程中又は工程後の部分精製液等が挙げられる。
【0030】
これらの中でも、ダウンストリーム工程における、代表的にはプロテインAを用いるアフィニティクロマトグラフィー工程前の、遠心分離などの粗精製を経由した細胞培養液、又はアフィニティクロマトグラフィー工程後の部分的に精製された溶液が、不純物が部分的に除去されていることで後段の精製工程における負荷がより低減されることから、本実施の形態に係る精製方法の精製対象として特に好適である。混合液中の抗体及び不純物の濃度は、特に限定されない。しかし、本実施の形態における精製方法が、特に高濃度で抗体及び不純物を含有する混合液に対しても効率よく実施することができるという観点から、例えば、混合液は、精密ろ過膜を通過させる前、及び多孔膜状のアニオン交換膜を通過させる前の両方において、抗体及び不純物を合わせて2g/L以上含んでいてもよく、さらには抗体を5g/L以上、不純物を1g/L以上含んでいてもよい。
【0031】
上述した本実施の形態に係る多孔膜状のアニオン交換膜に、抗体及び不純物を含む混合液を通液し、不純物を除去して、目的タンパク質を精製する工程を、以下に説明する。
【0032】
本実施の形態による典型的な抗体の精製方法の例としては、特に限定するものではないが、抗体と、不純物と、を含む混合液を本実施の形態に係る多孔膜状のアニオン交換膜に通液し、混合液中の不純物を多孔膜状のアニオン交換膜に捕捉させることより不純物を混合液から除去し、透過液を抗体の精製液として回収する方法が、最も簡便であり速やかに精製を実施することができることから好ましい。
【0033】
抗体の等電点(pI)は通常、7〜8.5の範囲である。一方、HCP、DNA、及びウィルスなどの不純物の多くのpIは7以下にある。そのため、上記の多孔膜状のアニオン交換膜に通液する溶液のpH範囲及び塩濃度(電気伝導度)を好適に制御することによって、多くの不純物を多孔膜状のアニオン交換膜上の正に帯電したアミノ基に吸着させ、透過液を抗体の精製液として回収することが可能となる。
【0034】
また、タンパク質、DNA、及びウィルスなどは、本質的に分子量及び等電点に広い分布を持ち、さらに疎水性相互作用などアニオン交換相互作用以外の性質も有する。そのため、溶液の特性、特にpH及び塩濃度に代表されるイオン濃度を調整することにより、容易に凝集体を形成する。形成された凝集体は電荷を有したまま、分子状に分散している状態よりもサイズが大きくなる。そのため、凝集体は、多孔膜状のアニオン交換膜のアニオン交換基を有する細孔、特にグラフト鎖を有する細孔を透過する際に、細孔よりも小さなサイズであっても、静電的相互作用及び立体障害により、細孔内に容易に吸着あるいは捕捉される。
【0035】
混合液中の不純物が凝集体を形成し、それを多孔膜状のアニオン交換膜に捕捉あるいは吸着させ、それにより不純物を混合液から除去し、透過液を抗体の精製液として回収する場合、凝集体の形成を促進し、かつ不純物の多孔膜への捕捉性が抗体よりも顕著になる条件に混合液のpH及び塩濃度を調整する。具体的には、水素イオン指数がpH5以上8.5未満及び塩濃度が0mol/L以上0.3mol/L未満の範囲に混合液を調整する。尚、用いる緩衝液並びに塩の種類にも依存するが、この塩濃度範囲は、電気伝導度にして、凡そ0mS/cm以上30mS/cm以下に相当する。このように混合液を調整することにより、不純物は、動的光散乱法によって得られる粒径が20〜200nmの凝集体を形成し、沈殿することなく溶液中に分散した状態となる。
【0036】
塩濃度の調整に用いる塩としては、例えば、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、硫酸アンモニウムなどの他、クエン酸、リン酸又はグリシンの金属塩が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、pHの調整は通常、簡便には塩酸、酢酸、クエン酸、リン酸又は水酸化ナトリウムの添加によって行うことができるが、これに限定されず、当業者に公知のpH調整方法を適宜用いることができる。溶液のpH及び塩濃度の測定は、例えば市販の測定機器を用いて、当業者に公知の手法を用いて行うことができる。
【0037】
上記のpH及び塩濃度に調整した混合液を、例えば0.22μmの精密ろ過膜に通液して、サイズの大きな濁質成分として存在する不純物凝集体を精密ろ過膜によるサイズろ過により取り除いて澄明液を得た後、本実施の形態における多孔膜状のアニオン交換膜に通液することにより、HCP、DNA、エンドトキシン及びウィルスなどのpIが7以下の不純物と、それらの凝集体と、が多孔膜状のアニオン交換膜に吸着あるいは捕捉される。用いる精密ろ過膜の細孔径は通常当該業者においては、0.22μmが多く用いられるが、0.1μm以上1.0μ以下の細孔径の精密ろ過膜でも、同様な効果が期待される。なお、pH及び塩濃度の調整は、混合液を精密ろ過膜に通液した後、澄明液を多孔膜状のアニオン交換膜に通液する前に実施してもよい。
【0038】
濁質成分の除去は、操作の簡便性及び迅速性の観点から、精密ろ過膜が用いられる。また、濁質成分を取り除かないまま、多孔膜状のアニオン交換膜に通液することにより不純物を除去すると、濁質成分が多孔膜状のアニオン交換膜の細孔を閉塞しやすく、溶液の通液が妨げられやすい。したがって、多孔膜状のアニオン交換膜への通液前に、精密ろ過膜により、濁質成分を取り除いた澄明液としておく。
【0039】
混合液のpH及び塩濃度に代表される組成を、精製対象とする抗体のpIに応じて調整することにより、不純物凝集体の形成を促進し、不純物、特に不純物凝集体がより選択的に多孔膜に捕捉され、抗体の精製をより有効に行うことができる。
【0040】
一般的な抗体のpIは8近辺にあるという観点から、混合液の酸性度は、pH5以上pH8.5未満、好ましくはpH6以上8.5未満である。また、混合液の塩濃度は、0mol/L以上0.3mol/L未満、好ましくは0.01mol/L〜0.15mol/Lである。塩濃度及びpH調整の際に用いる緩衝剤の性質により、抗体のpIより低いpHであっても、抗体の多孔膜状のアニオン交換膜への吸着による損失を抑制することができる。たとえば、塩濃度が0.05mol/L以上、あるいは緩衝剤としてリン酸あるいはクエン酸のような多価緩衝剤を用いてpH調整を実施した溶液であれば、抗体の多孔膜状のアニオン交換膜への静電的な吸着を抑制する。一方で、不純物凝集体は静電的相互作用のみならず、立体障害的な相互作用により、多孔膜状のアニオン交換膜の細孔に容易に捕捉される。これにより、不純物のみを多孔膜状のアニオン交換膜に捕捉させ、抗体を透過することによって、目的タンパクである抗体を精製することが可能である。
【0041】
このようにして、透過液として得られた抗体の精製液を、さらにカラムクロマトグラフィー工程にかけることにより、抗体をより高収率で精製することが可能となる。この際、クロマトグラフィー前の混合液中の不純物が顕著に減少しているため、カラムへの負荷を大幅に低減させ、精製度を高めると共に、カラムの寿命を延長することが可能である。クロマトグラフィーに用いるカラムとしては、プロテインAに代表されるアフィニティカラム、カチオン交換、アニオン交換、疎水性、及びハイドロキシアパタイトなどのクロマトグラフィーカラムが挙げられる。これらのカラムを用いた抗体などのタンパク質の精製方法は、当該業者にとって自明な方法によって実施することができる。
【0042】
本実施の形態に係る方法を用い、本明細書の記載を参照することにより、高濃度の抗体及び高濃度の不純物を含む塩を含む溶液から、不純物を、簡便、高速かつ選択的に除去することが可能となる。そのため、有効かつ迅速に、溶液から抗体を精製することが可能となる。したがって、精製された抗体を工業的に効率的に得ることが可能となる。
【0043】
以下、実施例及び比較例(本明細書中において、単に「実施例等」ともいう。)に基づいて本実施の形態をさらに具体的に説明するが、本実施の形態の範囲は以下の実施例のみに限定されない。
【実施例1】
【0044】
i)不純物を含有するCHO細胞培養液(母液)の作成及び評価
インビトロジェン社製、CD OptiCHO(登録商標)無血清培地を用いて得られた細胞培養液を、最大孔径0.45μmの精密ろ過膜(旭化成メディカル社製、MF−SL)によりろ過、除濁し、評価に用いる細胞培養液の澄明な母液を得た。得られた母液をGEヘルスケアバイオサイエンス製AKTAexplorer100に通液することにより、pH7.5、電気伝導度10.6mS/cm、280nmのUV吸光度は2500mAU以上、と評価された。また母液に含まれる不純物タンパク質濃度をウシ血清アルブミンを標準タンパク質としたBradford法(novexin社製、Bradford ULTRA kit)により測定したところ、0.3mg/mLであった。
【0045】
母液中のHCP濃度は、CYGNUS社製、CHO Host Cell Protein ELISA Kit、3rd Generationを用いたELISA法により定量した。微量に含まれるDNAは、invitrogen社製、dsDNA HS Assay Qubit Starter Kitを用いた、Fluorometerにより定量した。ELISA法により求めた母液中のHCP濃度は0.2mg/mL、Fluorometer法で求めた母液のDNA濃度は27.2μg/mLであった。
【0046】
ii)評価液となる細胞培養液の母液の調整
上記の母液に攪拌しながら0.1mol/Lのリン酸を滴下し、pH7.0及びpH6.0に調整した後、ザルトリウス社製の精密ろ過膜ミニザルト(最大細孔径0.22μm)を用いてろ過し、評価に用いる澄明液を得た。澄明液に含まれるHCP濃度は、pH7.0及びpH6.0のそれぞれにおいて、0.2mg/mLと母液と変わらなかった。また、DNA濃度は、pH7.0及びpH6.0のそれぞれにおいて、19.5μg/mL及び16.3μg/mLと、母液より僅かに低下していた。
【0047】
同様にして、母液に攪拌しながら0.1mol/L 酢酸を滴下し、pH6.0に調整した後、精密ろ過膜によりろ過し、評価に用いる澄明液を得た。澄明液に含まれるHCP濃度は、0.2mg/mLと母液と変わらなかった。また、DNA濃度は、11.2μg/mLと、母液より低下していた。
【0048】
さらに同様にして、母液に攪拌しながら0.1mol/L クエン酸を滴下し、pH6.0に調整した後、精密ろ過膜によりろ過し、評価に用いる澄明液を得た。澄明液に含まれるHCP濃度は、0.2mg/mLと母液と変わらなかった。また、DNA濃度は、13.4μg/mLと、母液より低下していた。
【0049】
以下、リン酸pH7.0、リン酸pH6.0、酢酸pH6.0及びクエン酸pH6.0に調整された評価に用いる澄明液を、それぞれ、澄明液a、澄明液b、澄明液c及び澄明液dとする。大塚電子製粒径測定システムELSZ−2を用いた動的光散乱法により、澄明液中に分散して存在する不純物凝集物のサイズを評価したところ、澄明液a、b、c及びdについてそれぞれ、69nm、87nm、107nm及び91nmであった。
【0050】
iii)澄明液のアニオン交換膜への透過
グラフト鎖を有する多孔膜状のアニオン交換膜として、旭化成メディカル社製QyuSpeed(登録商標)D 0.6mLを用意し、評価に用いる上記のそれぞれの澄明液を透過させ、ろ過液を得た。透過評価においては、多孔膜状のアニオン交換膜をGEヘルスケアバイオサイエンス製AKTAexplorer100に設置して、同装置のサンプルポンプにより澄明液を供給し、ろ過液を同社フラクションコレクターFrac−960により採取した。また、透過させる澄明液の液量は、多孔膜状のアニオン交換膜の膜体積300倍である、180mLとした。
【0051】
それぞれの澄明液より得られたろ過液中に含まれるHCP及びDNA濃度は、澄明液a由来のろ過液についてはそれぞれ、48μg/mL及び112ng/mL、澄明液b由来のろ過液は32μg/mL及び101ng/mL、澄明液c由来のろ過液は18μg/mL及び87ng/mL、澄明液d由来のろ過液は21μg/mL及び86ng/mLであり、不純物の顕著な低下が確認された。図1に、これらの結果及び以下の実施例及び比較例の結果を記載した。
【0052】
[比較例1]
実施例1のi)で調整した細胞培養液の澄明な母液を、pHを調整することなく、0.22μmの精密ろ過膜に透過させた。精密ろ過後の澄明液のHCP濃度は0.2mg/mL、DNA濃度は27.2μg/mLと0.45μm精密ろ過後の母液と変わらなかった。また、動的光散乱により得られた凝集物の数平均粒径は、27nmであった。次に、澄明液をアニオン交換膜としての旭化成メディカル社製QyuSpeed(登録商標)D 0.6mLに180mL通液し、ろ過液を採集した。アニオン交換膜のろ過液中に含まれるHCP及びDNA濃度は、それぞれ0.11mg/mL及び0.9μg/mLであり、大幅な低下は見られたものの、実施例1の方法によるものと比べると、不純物除去性は大きく低下していた。
【実施例2】
【0053】
実施例1のi)で調整した細胞培養液の澄明な母液を、GEヘルスケアバイオサイエンス社製、AKTAclossflowを用いて4倍濃縮した後、3倍量の体積の20mmol/L Tris−HCl (pH8.5)緩衝液により、液置換を実施し、20mmol/L Tris pH8.5の濃縮培養液を得た。得られた濃縮培養液を20mmol/L Tris−HCl (pH7.5)緩衝液により、13.5倍に希釈し、1mol/L HCl溶液を用いて、pH7.5に調整した。また、得られた溶液の1部を分取し、塩濃度0.15mol/LとなるようにNaClを添加した。得られた溶液を0.22μmの精密ろ過膜によってろ過することにより、20mmol/L Tris pH7.5の、塩濃度0mol/L及び0.15mol/Lの澄明液を調整し、これらをそれぞれ、澄明液e及び澄明液fとした。澄明液e及びfに含まれるHCP及びDNAの濃度は共にそれぞれ、63μg/mL及び6.5μg/mLであった。また、GEヘルスケアバイオサイエンス製AKTAexplorer100に通液することにより、同装置の電気伝導計により求められた電気伝導度は、澄明液e及びfについて、それぞれ1.6mS/cm及び17.3mS/cmであった。また動的光散乱法により求めた、澄明液e及びf中に分散する、凝集物の粒径はそれぞれ、72nm及び54nmであった。
【0054】
実施例1と同様にして、それぞれの澄明液180mLを、旭化成メディカル社製QyuSpeed(登録商標)D 0.6mLに通液し、ろ過液としての透過フラクションを採取した。各透過フラクションに含まれるHCP及びDNAの濃度は、澄明液e由来のろ過液ではそれぞれ、6.3μg/mL及び25ng/mL、澄明液f由来のろ過液ではそれぞれ、33μg/mL及び25ng/mLであり、共に顕著な不純物成分の減少が確認された。
【0055】
[比較例2]
実施例2で調整した、Tris pH8.5の濃縮培養液を20mmol/L Tris−HCl (pH8.5)緩衝液により、13.5倍に希釈し、これに塩濃度0.3mol/LとなるようにNaClを添加した。得られた溶液を0.22μmの精密ろ過膜によってろ過することにより、20mmol/L Tris pH8.5の、塩濃度0.3mol/Lの澄明液を調整し、これを澄明液gとした。澄明液gに含まれるHCP及びDNAの濃度は共にそれぞれ、60μg/mL及び6.6μg/mLであった。また、GEヘルスケアバイオサイエンス製AKTAexplorer100に通液することにより、同装置の電気伝導計により求められた電気伝導度は、31.4mS/cmであった。また動的光散乱法により求めた、澄明液g中に分散する、凝集物の粒径22nmであった。
【0056】
実施例1と同様にして、澄明液g、180mLを、旭化成メディカル社製QyuSpeed(登録商標)D 0.6mLに通液し、ろ過液としての透過フラクションを採取した。透過フラクションに含まれるHCP及びDNAの濃度は、それぞれ、60μg/mL及び62ng/mLであり、DNAは顕著な減少が確認されたが、HCPは減少しなかった。
【実施例3】
【0057】
実施例1のi)で調整した細胞培養液の澄明な母液を、GEヘルスケアバイオサイエンス社製、AKTAclossflowを用いて4倍濃縮した後、3倍量の体積の20mmol/L Acetate−NaOH (pH5.0)緩衝液により、液置換を実施し、20mmol/L Acetate pH5.0の濃縮培養液を得た。得られた濃縮培養液を20mmol/L Acetate−NaOH (pH6.0)緩衝液により、10倍に希釈し、1mol/L NaOH溶液を用いて、pH6.0に調整した。また、得られた溶液の1部を分取し、塩濃度0.15mol/LとなるようにNaClを添加した。得られた溶液を0.22μmの精密ろ過膜によってろ過することにより、20mmol/L Acetate pH6.0の、塩濃度0mol/L及び0.15mol/Lの澄明液を調整し、これらをそれぞれ、澄明液h及び澄明液iとした。澄明液h及びiに含まれるHCP及びDNAの濃度は、澄明液hではそれぞれ、57μg/mL及び2.4μg/mL、澄明液iではそれぞれ、62μg/mL及び0.9μg/mLであった。また、GEヘルスケアバイオサイエンス製AKTAexplorer100に通液することにより、同装置の電気伝導計により求められた電気伝導度は、澄明液h及びiについて、それぞれ1.7mS/cm及び17.4mS/cmであった。また動的光散乱法により求めた、澄明液h及びi中に分散する、凝集物の粒径はそれぞれ、107nm及び71nmであった。
【0058】
実施例1と同様にして、それぞれの澄明液180mLを、旭化成メディカル社製QyuSpeed(登録商標)D 0.6mLに通液し、ろ過液としての透過フラクションを採取した。各透過フラクションに含まれるHCP及びDNAの濃度は、澄明液h由来のろ過液ではそれぞれ、8.5μg/mL及び12ng/mL、澄明液i由来のろ過液ではそれぞれ、37μg/mL及び14ng/mLであり、共に顕著な不純物成分の減少が確認された。
【実施例4】
【0059】
実施例3で調整した、20mmol/L Tris−HCl (pH7.5)緩衝液により、13.5倍に希釈し、塩濃度0.15mol/LとなるようにNaClを添加した溶液に、抗体タンパク質(株式会社ベネシス製、献血ヴェノグロブリン−IH)を2mg/mLとなるように添加し、再度pH7.5に調整した。得られた溶液を0.22μmの精密ろ過膜によってろ過することにより、抗体タンパク質と不純物を含む、20mmol/L Tris pH7.5、塩濃度0.15mol/Lの澄明液を調整し、これを澄明液jとした。澄明液jに含まれるHCP及びDNAの濃度は共にそれぞれ、63μg/mL及び6.5μg/mL、また、電気伝導度は17.3mS/cmと同じ組成で、抗体タンパク質を添加していない、澄明液fと同じであった。さらに動的光散乱法によって評価された分散する凝集物の平均粒径は49nmであった。
【0060】
実施例1と同様にして、澄明液j、180mLを、旭化成メディカル社製QyuSpeed(登録商標)D 0.6mLに通液し、ろ過液としての透過フラクションを採取した。透過フラクションに含まれるHCP及びDNAの濃度は、32μg/mL及び24ng/mLであり、顕著な不純物成分の減少が確認された。
【0061】
アニオン交換膜透過前後での抗体タンパク質の回収率は、アィニティクロマトグラフィーによって評価した。島津製作所株式会社製高速液体クロマトグラフLC−20AシステムにアフィニティカラムとしてAppliedBiosystems製POROS G(ProteinGカラム)を取り付け、50mmol/Lリン酸に0.15mol/L NaClを含むバッファー(pH7.0)を用い、室温において流速2mL/minでカラムに通液し、ここにアニオン交換膜透過前後のサンプルを100μL添加した。また溶出には12mmol/L塩酸に0.15mol/L NaClを含むバッファーを用いた。その後、システムに、プロテインGカラムに吸着・溶出した抗体タンパク質の溶出ピークを表示させ、溶出ピーク面積を比較することにより、アニオン交換膜透過による抗体タンパク質の回収率を求めた結果、回収率は96%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不純物と目的タンパク質とを含む混合溶液から、前記目的タンパク質を精製する方法であって、
前記不純物と目的タンパク質とを含む混合溶液の水素イオン指数をpH5.0以上pH8.5未満、塩濃度を0mol/L以上0.3mol/L未満に調整することと、
前記混合溶液を、濁質成分を除去するろ過膜に透過させて、澄明液を得ることと、
前記澄明液を多孔膜状のアニオン交換膜に通液して前記不純物を除去し、前記目的タンパク質のろ過液を回収することと、
を含む、タンパク質の精製方法。
【請求項2】
前記水素イオン指数をpH5.0以上pH8.5未満、前記塩濃度に相関する電気伝導度を0mS/cm以上30mS/cm以下に調整する、請求項1に記載のタンパク質の精製方法。
【請求項3】
前記澄明液に含まれる前記不純物が、動的光散乱法によって得られる粒径が20〜200nmの凝集体であり、沈殿することなく溶液中に分散した状態である、請求項1又は2に記載のタンパク質の精製方法。
【請求項4】
前記調整することが、前記澄明液を得ることの前に実施される、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のタンパク質の精製方法。
【請求項5】
前記調整することが、前記澄明液を得ることの後、前記澄明液を多孔膜状のアニオン交換膜に通液する前に実施される、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のタンパク質の精製方法。
【請求項6】
前記多孔膜状のアニオン交換膜が、グラフト鎖を有する、最大孔径0.1μm以上0.8μm以下の多孔体よりなるアニオン交換膜である、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のタンパク質の精製方法。
【請求項7】
前記ろ過膜の細孔径が0.1μm以上1.0μm以下である、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のタンパク質の精製方法。
【請求項8】
前記目的タンパク質のろ過液を、クロマトグラフィーカラムを用いて精製することをさらに含む、請求項1乃至7のいずれか1項にタンパク質の精製方法。
【請求項9】
前記目的タンパク質が、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、免疫グロブリン、及び抗体断片からなる群から選択される1種である、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の、タンパク質の精製方法。
【請求項10】
前記不純物が、前記混合溶液中に溶存する不純物タンパク質、HCP、DNA、ウィルス、エンドトキシン、プロテアーゼ及びバクテリアからなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1乃至9のいずれか1項に記載のタンパク質の精製方法。
【請求項11】
前記調整することの前に、前記混合液の除濁をすることをさらに含む、請求項4に記載のタンパク質の精製方法。

【図1】
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