澱粉含有食品の製造方法及び澱粉含有食品改質用の酵素製剤
【課題】物性及び食味の改善された澱粉含有食品の製造方法及び澱粉含有食品改質用の酵素製剤を提供する。
【解決手段】澱粉含有食品の製造にα-1,4結合をα-1,6結合へと変換する糖転移活性を有する酵素及びトランスグルタミナーゼを用いる。酵素製剤にα-1,4結合をα-1,6結合へと変換する糖転移活性を有する酵素及びトランスグルタミナーゼを配合する。
【解決手段】澱粉含有食品の製造にα-1,4結合をα-1,6結合へと変換する糖転移活性を有する酵素及びトランスグルタミナーゼを用いる。酵素製剤にα-1,4結合をα-1,6結合へと変換する糖転移活性を有する酵素及びトランスグルタミナーゼを配合する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖鎖のα-1,4結合をα-1,6結合へと変換する糖転移活性を有する酵素及びトランスグルタミナーゼを用いる澱粉含有食品の製造方法及び澱粉含有食品改質用の酵素製剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
α化した澱粉を常温や低温で放置すると、水分を分離し硬くなる。この現象を老化といい澱粉の老化現象については数多く研究されている。一般に老化の防止のためには温度を80℃以上に保っておくか、急速に乾燥させて水分を15%以下にする、pH13以上のアルカリ性に保つことが必要である。また、老化を防止する方法として澱粉含有食品に糖類(ブドウ糖、果糖、液糖等)や大豆タンパク、小麦グルテン、脂肪酸エステル、多糖類(山芋、こんにゃく等)が一般に知られており、特許文献1には増粘剤、界面活性剤等を添加する方法が記載されている。しかし、これらの方法では食味が大きく変化し、また効果も不安定で十分な解決法とはなっていない。
【0003】
また、従来、老化防止の手段として、酵素を添加する方法も知られている。例えば、特許文献2には、精白米にアミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ等の酵素と、食塩及びサイクロデキストリンを混合して炊飯する米飯の改良方法が記載されている。特許文献3には、炊飯後の米飯に糖化型アミラーゼ(β-アミラーゼ、グルコアミラーゼ)の水溶液を噴霧添加する米飯の老化防止方法が記載されている。しかしながら、米に各種の酵素剤を添加して米飯の品質改良を試みているが、いずれも目ざましい効果は得られていないのが現状である。
【0004】
澱粉含有食品の一つである、麺類の食感改良方法に関しては多くの知見がある。 例えば、茹で麺の食感を改良するためにタンパク質素材(活性グルテン、大豆タンパク質、卵白、全卵、カゼイン等)や澱粉等(各種澱粉、多糖類、乳化剤等)を添加することが行われている(特許文献4)。また、レトルト殺菌処理の場合に食感を維持させるために高温、短時間処理を行っている(特許文献5)。また、トランスグルタミナーゼを使用し、食感を改善させる方法も知られている(特許文献6、7)。これらの方法によれば、トランスグルタミナーゼの作用によりタンパク質間及びタンパク質内のネットワーク構造を麺体の中に形成させて麺体内での水分の均一化を防止することにより、茹で後の弾力(こし)のある好ましい食感を維持することができる。しかしながら、全体が均一な食感となり、アルデンテと呼ばれる、中芯感のある食感(外側に比べ内側が硬い)を得るには改善の余地があった。
【0005】
また、特許文献8によれば澱粉含有食品の物性改良剤として、トランスグルコシダーゼを小麦混練時に添加することによって、硬さ、粘りが増し、かつ時間が経つと無添加に比べ中芯感もあるうどんを得ることができる。かなりの効果が見られるものの、茹で直後での物性改良効果において改善の余地が残っていた。このように、いずれの方法によっても、茹で上げ直後の食感を向上させ、かつその優れた食感を長時間にわたって維持するという2つを両立させることは難しく、いまだ完全には達成されていないのが現状である。食品の物性を決定する上で重要なものは、タンパク質と糖質(澱粉)の状態である。タンパク質の物性改良に有効な酵素としてトランスグルタミナーゼが、澱粉の物性改良に有効な酵素としてトランスグルコシダーゼが見出されているが、これらを組み合わせて、物性改良に用いた例は未だ報告されていない。
【特許文献1】特開昭59-2664号公報
【特許文献2】特開昭58-86050号公報
【特許文献3】特開昭60-199355号公報
【特許文献4】特開平2-117353号公報
【特許文献5】特開平2-186954号公報
【特許文献6】特開平2-286054号公報
【特許文献7】特開平6-14733号公報
【特許文献8】WO2005/096839
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、物性及び食味の改善された澱粉含有食品の製造方法及び澱粉含有食品改質用の酵素製剤を提供することである。特に穀粉等を混練する麺類の製造直後の品質(食味と物性)を向上し、製造工程及び製造後の流通過程での時間経過による品質劣化を抑制する方法を提供することである。
【0007】
本発明者等は、鋭意研究を行った結果、α-1,4結合をα-1,6結合へと変換する糖転移活性を有する酵素及びトランスグルタミナーゼを用いて澱粉含有食品を製造することにより上記目的を達成しうることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は以下の通りである。
(1)糖鎖のα-1,4結合をα-1,6結合へと変換する糖転移活性を有する酵素及びトランスグルタミナーゼを添加することを特徴とする澱粉含有食品の製造方法。
(2)糖鎖のα-1,4結合をα-1,6結合へと変換する糖転移活性を有する酵素がトランスグルコシダーゼである(1)記載の方法。
(3)澱粉含有食品が穀粉を原料とする麺類である(1)又は(2)記載の方法。
(4)トランスグルコシダーゼの量が、穀粉1g当たり1.5〜300,000Uであり、トランスグルタミナーゼの量が穀粉1g当たり0.0001〜100Uである(3)記載の方法。
(5)トランスグルコシダーゼの量が、トランスグルタミナーゼ1U当たり1U〜200,000Uである(4)記載の方法。
(6)トランスグルコシダーゼの量が、トランスグルタミナーゼ1U当たり90U〜7,500Uである(4)記載の方法。
(7)澱粉含有食品が、野菜天ぷら又は和菓子又はピザ又は豆腐又はヨーグルト又は卵焼き又はマヨネーズである(1)又は(2)記載の方法。
(8)トランスグルコシダーゼの量が、トランスグルタミナーゼ1U当たり90U〜7,500Uである(7)記載の方法。
(9)トランスグルコシダーゼ及びトランスグルタミナーゼを含有する澱粉含有食品改質用の酵素製剤。
(10)トランスグルコシダーゼの含有量がトランスグルタミナーゼ1U当り90U〜200,000Uである(9)記載の酵素製剤。
(11)澱粉含有食品が麺類であり、トランスグルコシダーゼの含有量がトランスグルタミナーゼ1U当り90U〜7,500Uである(9)記載の酵素製剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、麺類等の澱粉含有食品の製造直後の品質(食味と物性)を向上することができ、時間経過による該食品の品質劣化を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明による澱粉含有食品の製造方法には、α-1,4結合をα-1,6結合へと変換する糖転移活性を有する酵素とトランスグルタミナーゼを用いる。α-1,4結合をα-1,6結合へと変換する糖転移活性を有する酵素の例として、トランスグルコシダーゼ(EC3.2.1.20)、1,4-αグルカン分枝酵素、1,4-αグルカン6-α-D-グルコシルトランスフェラーゼが挙げられる。トランスグルコシダーゼは糖転移能を有するα-グルコシダーゼ酵素である。α-グルコシダーゼとは非還元末端α-1,4-グルコシド結合を加水分解し、α-グルコースを生成する酵素である。尚、グルコアミラーゼはα-グルコシダーゼと類似の反応を起こすが生成するグルコースはα-グルコースではなく、β-グルコースである。さらに、本発明に用いる酵素は単に分解活性を有するのみではなく、水酸基を持つ適当な受容体がある場合、グルコースをα-1,4結合よりα-1,6結合へと転移させ、分岐糖を生成する糖転移活性を有するものであることが特に重要である。従来の物性改良剤に含まれる酵素は澱粉分解酵素であり、糖転移酵素ではない。尚、トランスグルコシダーゼL「アマノ」という商品名で天野エンザイム(株)より市販されている酵素が、α-1,4結合をα-1,6結合へと変換する糖転移活性を有する酵素の一例である。
【0010】
トランスグルタミナーゼはタンパク質やペプチド中のグルタミン残基を供与体、リジン残基を受容体とするアシル転移反応を触媒する活性を有する酵素のことを指し、哺乳動物由来のもの、魚類由来のもの、微生物由来のものなど、種々の起源のものが知られている。本発明で用いる酵素はこの活性を有している酵素であれば構わず、その起源としてはいずれのものでも構わない。また、組み換え酵素であっても構わない。味の素(株)より「アクティバ」TGという商品名で市販されている微生物由来のトランスグルタミナーゼが一例である。
【0011】
澱粉含有食品としては様々なものが考えられるが、市場の大きさや、ニーズ等と照らし合わせると、うどん、パスタ、日本そば、中華麺、焼きそば、フライ工程や乾燥工程を経る即席麺、餃子、焼売の皮等の麺類に作用させるのが特に有効であると考えられる。その他、いも天ぷら等の野菜天ぷら、白玉団子、みたらし団子、大福、桜餅、柏餅、蕨餅、ういろう、すあま、八つ橋等の和菓子、ピザ、食パン、フランスパン、バターロール、米粉パン、デニッシュ、ベーグル、ラスク、ドーナツ、フォカッチャ、ナン、ピタパン等のパン・ベーカリー類、豆腐、ベジタリアン向け大豆ハンバーグ、湯葉、油揚げ等の大豆加工品、ヨーグルト、ヨーグルトドリンク、ホワイトソース、アイスクリーム、生クリーム等の乳加工品、厚焼き卵、卵焼き、目玉焼き、スクランブルエッグ、オムレツ、かに玉、茶碗蒸し、プリン、卵豆腐、カスタードクリーム等の卵加工品、マヨネーズ、マヨネーズタイプ調味料も含まれる。
【0012】
麺類等澱粉含有食品にトランスグルコシダーゼ等α-1,4結合をα-1,6結合へと変換する糖転移活性を有する酵素及びトランスグルタミナーゼを作用させる場合は、製造工程のどの段階で作用させてもかまわない。すなわち原料混合時に酵素を添加してもよいし、混合後に酵素を振りかけて作用させてもよい。さらに、α-1,4結合をα-1,6結合へと変換する糖転移活性を有する酵素及びトランスグルタミナーゼ以外の他の酵素や物質(デキストリン、澱粉、加工澱粉等の糖類、畜肉エキス等の調味料、植物蛋白、グルテン、卵白、ゼラチン、カゼイン等の蛋白質、蛋白加水分解物、蛋白部分分解物、乳化剤、クエン酸塩、重合リン酸塩等のキレート剤、グルタチオン、システイン等の還元剤、アルギン酸、かんすい、色素、酸味料、香料等その他の食品添加物等)と併用し使用してもかまわない。小麦粉を用いる場合はどのような品種の小麦粉でもよく、強力粉、準強力粉、中力粉、薄力粉、デュラムセモリナ粉でもかまわない。また、米粉等の他の穀粉、澱粉(加工澱粉を含む)と混合して使用してもかまわない。
【0013】
麺類等澱粉含有食品にトランスグルコシダーゼ等α-1,4結合をα-1,6結合へと変換する糖転移活性を有する酵素及びトランスグルタミナーゼを作用させる場合、糖転移活性を有する酵素の添加量は、原料穀粉1gに対して酵素活性が1.5U以上、好ましくは1.5〜300,000U 、より好ましくは15〜150,000Uの範囲が適正である。大豆加工品に、トランスグルコシダーゼ等α-1,4結合をα-1,6結合へと変換する糖転移活性を有する酵素及びトランスグルタミナーゼを作用させる場合、糖転移活性を有する酵素の添加量は、大豆乾燥重量1gに対して酵素活性が0.15U以上、好ましくは0.15〜300,000Uの範囲が適正である。乳加工品の場合、糖転移活性を有する酵素の添加量は、無脂乳固形分1gに対して酵素活性が0.15U以上、好ましくは0.15〜300,000Uの範囲が適正である。卵加工品の場合、糖転移活性を有する酵素の添加量は、卵原料乾燥重量1gに対して酵素活性が0.15U以上、好ましくは0.15〜300,000Uの範囲が適正である。マヨネーズの場合、糖転移活性を有する酵素の添加量は、澱粉類1gに対して酵素活性が0.15U以上、好ましくは0.15〜300,000Uの範囲が適正である。尚、酵素活性については1mM α-メチル-D-グルコシド1mlに0.02M酢酸バッファー(pH5.0)1mlを加え、酵素溶液0.5ml添加して、40℃、60分間を作用させた時に、反応液2.5ml中に1μgのブドウ糖を生成する酵素量を1U(ユニット)と定義した。
【0014】
麺類等澱粉含有食品にトランスグルコシダーゼ等α-1,4結合をα-1,6結合へと変換する糖転移活性を有する酵素及びトランスグルタミナーゼを作用させる場合、トランスグルタミナーゼの添加量は、穀粉1gに対して酵素活性が0.0001U以上、好ましくは0.0001〜100U 、より好ましくは0.05〜10Uの範囲が適正である。大豆加工品の場合、トランスグルタミナーゼの添加量は、大豆乾燥重量1gに対して酵素活性が0.0001U以上、好ましくは0.0001〜100Uの範囲が適正である。乳加工品の場合、トランスグルタミナーゼの添加量は、無脂乳固形分1gに対して酵素活性が0.0001U以上、好ましくは0.0001〜100Uの範囲が適正である。卵加工品の場合、トランスグルタミナーゼの添加量は、卵原料乾燥重量1gに対して酵素活性が0.0001U以上、好ましくは0.0001〜100Uの範囲が適正である。マヨネーズの場合、トランスグルタミナーゼの添加量は、澱粉類1gに対して酵素活性が0.0001U以上、好ましくは0.0001〜100Uの範囲が適正である。尚、酵素活性についてはベンジルオキシカルボニル-L-グルタミニルグリシンとヒドロキシルアミンを基質として反応を行い、生成したヒドロキサム酸をトリクロロ酢酸存在下で鉄錯体を形成させた後525nmの吸光度を測定し、ヒドロキサム酸の量を検量線より求め活性を算出する。37℃,pH6.0で1分間に1μmolのヒドロキサム酸を生成する酵素量を1U(ユニット)と定義した。
【0015】
麺類等澱粉含有食品にトランスグルコシダーゼ等α-1,4結合をα-1,6結合へと変換する糖転移活性を有する酵素及びトランスグルタミナーゼを作用させる場合の両酵素の添加量比については、糖鎖のα-1,4結合をα-1,6結合へと変換する糖転移活性を有する酵素のユニット数が、トランスグルタミナーゼ1Uに対して0.15U〜3000000Uが好ましく、1U〜200000Uがより好ましく、90U〜7500Uがさらに好ましい。小麦粉を主原料とする麺類の場合、糖鎖のα-1,4結合をα-1,6結合へと変換する糖転移活性を有する酵素の添加量は、トランスグルタミナーゼ1U当たり1U〜200000Uが好ましく、90U〜50000Uがより好ましく、90U〜7500Uがさらに好ましい。うどんの場合、トランスグルコシダーゼ等糖鎖のα-1,4結合をα-1,6結合へと変換する糖転移活性を有する酵素の添加量は、トランスグルタミナーゼ1U当たり300U〜7500Uが特に好ましい。そば粉を含有する麺類の場合、糖鎖のα-1,4結合をα-1,6結合へと変換する糖転移活性を有する酵素の添加量は、トランスグルタミナーゼ1U当たり0.15〜7500Uが好ましく、0.5U〜800Uがより好ましい。日本そばの場合、トランスグルコシダーゼ等糖鎖のα-1,4結合をα-1,6結合へと変換する糖転移活性を有する酵素の添加量は、トランスグルタミナーゼ1U当たり90U〜800Uが特に好ましい。デュラム粉を主原料とする麺類の場合、糖鎖のα-1,4結合をα-1,6結合へと変換する糖転移活性を有する酵素の添加量は、トランスグルタミナーゼ1U当たり0.15〜200000Uが好ましい。特に、デュラム粉を主原料とするパスタの場合、トランスグルコシダーゼ等糖鎖のα-1,4結合をα-1,6結合へと変換する糖転移活性を有する酵素の添加量は、トランスグルタミナーゼ1U当たり90U〜7500Uがさらに好ましい。その他、白玉団子、みたらし団子、大福、桜餅、柏餅、蕨餅、ういろう、すあま、八つ橋等の和菓子、ピザ、食パン、フランスパン、バターロール、米粉パン、デニッシュ、ベーグル、ラスク、ドーナツ、フォカッチャ、ナン、ピタパン等のパン・ベーカリー類、豆腐、ベジタリアン向け大豆ハンバーグ、湯葉、油揚げ等の大豆加工品、ヨーグルト、ヨーグルトドリンク、ホワイトソース、
アイスクリーム、生クリーム等の乳加工品、厚焼き卵、卵焼き、目玉焼き、スクランブルエッグ、オムレツ、かに玉、茶碗蒸し、プリン、卵豆腐、カスタードクリーム等の卵加工品、マヨネーズ、マヨネーズタイプ調味料、野菜天ぷら等の澱粉含有食品の場合、トランスグルコシダーゼ等α-1,4結合をα-1,6結合へと変換する糖転移活性を有する酵素及びトランスグルタミナーゼを作用させる場合の両酵素の添加量比については、糖鎖のα-1,4結合をα-1,6結合へと変換する糖転移活性を有する酵素のユニット数が、トランスグルタミナーゼ1Uに対して0.15U〜3000000U、好ましくは1U〜200000U、より好ましくは90U〜7500Uの範囲が適正である。
【0016】
各酵素の反応時間は、酵素が基質物質に作用することが可能な時間であれば特に構わなく、非常に短い時間でも逆に長時間作用させても構わないが、現実的な作用時間としては5分〜24時間が好ましい。また、反応温度に関しても酵素が活性を保つ範囲であればどの温度であっても構わないが、現実的な温度としては0〜80℃で作用させることが好ましい。すなわち、通常の食品製造工程を経ることで十分な反応時間が得られる。
【0017】
トランスグルコシダーゼ及びトランスグルタミナーゼにデキストリン、澱粉、加工澱粉等の賦形剤、畜肉エキス等の調味料、植物蛋白、グルテン、卵白、ゼラチン、カゼイン等の蛋白質、蛋白加水分解物、蛋白部分分解物、乳化剤、クエン酸塩、重合リン酸塩等のキレート剤、グルタチオン、システイン等の還元剤、アルギン酸、かんすい、色素、酸味料、香料等その他の食品添加物等を混合することにより、麺類等澱粉含有食品改質用の酵素製剤を得ることができる。本発明の酵素製剤は液体状、ペースト状、顆粒状、粉末状のいずれの形態でも構わない。また、酵素製剤における各酵素の配合量は0%より多く、100%より少ないが、トランスグルコシダーゼの配合量はトランスグルタミナーゼ1U当たり0.15U〜3000000Uが好ましく、1U〜200000Uがより好ましく、90U〜50000Uがさらに好ましい。小麦粉を主原料とする麺類の製造に用いられる酵素製剤の場合、トランスグルコシダーゼの配合量はトランスグルタミナーゼ1U当たり1U〜200000Uが好ましく、90U〜50000Uがより好ましく、90U〜7500Uがさらに好ましい。うどん用の酵素製剤の場合、トランスグルコシダーゼの配合量はトランスグルタミナーゼ1U当たり300U〜7500Uが特に好ましい。そば粉を含有する麺類の製造に用いられる酵素製剤の場合、トランスグルコシダーゼの配合量はトランスグルタミナーゼ1U当たり0.15U〜3000000Uが好ましく、1U〜200000Uがより好ましく、90U〜7500Uがさらに好ましい。日本そば用の酵素製剤の場合、トランスグルコシダーゼの配合量はトランスグルタミナーゼ1U当たり90U〜800Uが特に好ましい。デュラム粉を主原料とする麺類の製造に用いられる酵素製剤の場合、トランスグルコシダーゼの配合量はトランスグルタミナーゼ1U当たり1U〜200000Uが好ましい。デュラム粉を主原料とするパスタ用の酵素製剤の場合、トランスグルコシダーゼの配合量はトランスグルタミナーゼ1U当たり90U〜7500Uが特に好ましい。その他、白玉団子、みたらし団子、大福、桜餅、柏餅、蕨餅、ういろう、すあま、八つ橋等の和菓子、ピザ、食パン、フランスパン、バターロール、米粉パン、デニッシュ、ベーグル、ラスク、ドーナツ、フォカッチャ、ナン、ピタパン等のパン・ベーカリー類、豆腐、ベジタリアン向け大豆ハンバーグ、湯葉、油揚げ等の大豆加工品、ヨーグルト、ヨーグルトドリンク、ホワイトソース、アイスクリーム、生クリーム等の乳加工品、厚焼き卵、卵焼き、目玉焼き、スクランブルエッグ、オムレツ、かに玉、茶碗蒸し、プリン、卵豆腐、カスタードクリーム等の卵加工品、マヨネーズ、マヨネーズタイプ調味料、野菜天ぷら等の澱粉含有食品の製造に用いられる酵素製剤の場合、トランスグルコシダーゼ及びトランスグルタミナーゼの配合比は、トランスグルタミナーゼ1Uに対してトランスグルコシダーゼが0.15U〜3000000U、好ましくは1U〜200000U、より好ましくは90U〜7500Uの範囲が適正である。
【0018】
以下に実施例を挙げ、本発明をさらに詳しく説明する。本発明は、この実施例により何ら限定されない。
【実施例1】
【0019】
市水35gに、「トランスグルコシダーゼL」(天野エンザイム社製)(以下TGL)、トランスグルタミナーゼ製剤である「STG-Mコシキープ」(味の素社製)(以下TG)を添加し溶解させた。試験区分は、酵素を添加しないコントロール区分、TGLのみを添加した区分、TGのみを添加した区分、TGLとTGを共に添加した区分の4試験区とした。デュラム粉「DF」(日清製粉社製)100gを混練機(HOBART社製)にて混合しながら、上記酵素溶液を添加し、混練機設定のスピード1にて3分間、同スピード2にて7分間混練した。その後、恒温恒湿槽「LH21-12P」(ナガノ科学機械製作所社製)を用いて55℃、湿度85%にて2時間寝かせ、パスタマシン「R.M.」(IMPERIA社製)を用いてバラ掛け、複合、圧延、切り出しを行った。圧延はパスタマシン設定の厚さ5、切り出しは裁断幅2mmのパスタマシン付属のカッター「R.220」(IMPERIA社製)にて行った。酵素使用量は、TGLを原料小麦粉1gあたり5000U、上記TGを原料小麦粉に対して0.5%(原料小麦粉1gあたり0.1U)とした。製麺された生麺を、恒温恒湿槽を用いて40℃、湿度90%で30分の乾燥後、18時間後に湿度65%となる勾配設定にて乾燥させ、乾麺を製造した。乾麺を沸騰水にて10分間ゆでた後、氷水にて1分間冷却し、水切りをして保存容器に入れた。冷蔵庫で1日保存した後、常温のコンソメスープを添加して官能評価を行った。官能評価は、硬さ、ねばり(ボソボソ感と対義)に関して、コントロール区分を5点として、0点から10点までの11段階の評点法にて、評価人数8人で行い、平均値を算出した。結果を図1,2に示した。
【0020】
図1に示す通り、TGL処理をすることでやや硬くなり、TG処理をすること非常に硬くなったが、TGLとTGを併用処理することにより更に硬く歯応えのあるパスタとなった。また、図2に示す通り、TGL処理によりねばりが増加する一方TG処理ではねばりが低下したが、TGLとTGを併用処理することにより歯応えとねばりのある好ましい食感となった。以上より、TGLとTGを併用処理することにより、それぞれの酵素の単独の使用では実現の難しかった、硬く歯応えがあり、かつねばりのある食感のパスタが製造可能であることが明らかとなった。
【実施例2】
【0021】
市水400gに食塩30gを加えた20℃の食塩水に、TGL、TGを添加し溶解させた。試験区分は、酵素を添加しないコントロール区分、TGLのみを添加した区分、TGのみを添加した区分、TGLとTGを共に添加した区分の4試験区とした。中力粉「雀」(日清製粉社製)1kgに上記酵素溶液を加えながら3分間手混合し、混練機「TVM03-0028」(トーメン社製)にて10分間(95rpm;4分、75rpm;6分)混合した。混合後、バラ掛け、複合、圧延し、40℃にて1時間寝かせた後に#12の切り刃を用いて切り出しを行った。製造した生麺を沸騰水にて7分間ゆでた後、−40℃で冷凍して、冷凍うどんを製造した。TGLを原料小麦粉1gあたり5000U、上記TGを原料小麦粉に対して0.5%(原料小麦粉1gあたり0.1U)とした。冷凍うどんは、沸騰水にて1分間ゆでた後、官能評価を行った。官能評価は、硬さ、弾力に関して、コントロール区分を3点として、1点から5点までの評点法にて評価人数4人で行った。結果を図3,4に示す。
【0022】
図3に示す通り、TGL処理による硬さへの影響はパスタとは異なり非常に小さい一方、TG処理では非常に硬くなったが、TGLとTGを併用処理することにより更に硬く歯応えのあるうどんとなった。また、図4に示す通り、TGL処理およびTG処理による弾力への影響はほとんどないものの、TGLとTGを併用処理することにより弾力のある食感となった。以上のように、TGLとTGを併用処理することにより、硬く歯応えがあり、かつ弾力のある食感のうどんが製造可能であることが明らかとなった。
【実施例3】
【0023】
中力粉「雀」(日清製粉社製)750g、加工澱粉「あじさい」(松谷化学工業社製)250g、小麦グルテン「AグルG」(グリコ栄養食品社製)20gに、TGL、TGを添加し100rpmで混練機「2kg真空捏機」(大竹麺機社製)にて1分混合した。試験区分は、酵素を添加しないコントロール区分、TGLのみを添加した区分、TGのみを添加した区分、TGLとTGを5通りの割合で共に添加した区分の8試験区とした。それぞれの酵素添加量は、表1に示す通りである。表1中の穀粉は中力粉であり、加工澱粉は含まれない。市水410gに食塩30gを加えた5℃の食塩水を、上記混合原料に全量加えて、混練機にて5分間(100rpm;2分、50rpm;3分)混練した。混練後、製麺機「小型粗麺帯機・小型連続圧延機」(トム社製)にてバラ掛け、複合、圧延し、室温にて1時間寝かせた後に#10の切り刃を用いて切り出しを行った。切り出した麺線は直ちに凍結し、冷凍生うどんとした。冷凍生うどんは、沸騰水にて15分間ゆでた後6時間冷蔵保存し、官能評価を行った。官能評価は、硬さ、弾力、粘り、中芯感、総合評価に関して、コントロール区分を3点とし、0点から5点までの評点法にて評価人数6人で行った。結果を図5に示す。また、TGLのみを添加した区分およびTGのみを添加した区分の結果をもとに、各併用添加区分の理論上の評点を算出した。例えば、併用(2)の粘りの理論値の場合、TGのみ0.134U/g添加時の粘りの評点が「−0.2」であり、併用(2)ではTGを0.094U/g使用している為「−0.2×0.094/0.134=−0.14」、一方TGLのみ108.3U/g添加時の粘りの評点が「1.4」であり、併用(2)ではTGLを32.5U/g使用している為「1.4×32.5/108.3=0.42」、これらを合計すると「−0.14+0.42=0.28」と算出される。よって「0.28」が併用(2)の粘りの理論値である。このように算出した値を用いて、理論値と実際の評点の差を求めた(図6)。この値がゼロであれば理論値通りの効果、すなわち相加効果であり、ゼロより大きければ理論値より大きな効果、すなわち相乗効果が出ていることを意味する。
【0024】
【表1】
【0025】
図5に示す通り、TGLの添加割合が増えるに従い粘りが付与され、TGの添加割合が増えるに従い硬さが付与された。弾力および中芯感においては、両酵素をある一定の割合で作用させた際に、特に大きな効果が得られることが明らかとなった。総合評価においても同様の傾向が見られた。また、図6に示す通り、全ての併用試験区において食感について相乗効果があることが見出された。総合評価においても、併用(1)よりもTGL添加量の多い全範囲において相乗効果が得られ、併用(2)と併用(5)に挟まれる範囲において特に顕著な効果であることが明らかとなった。
【実施例4】
【0026】
そば粉「平和」(北東製粉社製)500g、強力粉「青鶏」(日清製粉社製)500gに、TGL、TGを添加し100rpmで混練機「2kg真空捏機」(大竹麺機社製)にて1分混合した。試験区分は、酵素を添加しないコントロール区分、TGLのみを添加した区分、TGのみを添加した区分、TGLとTGを5通りの割合で共に添加した区分の8試験区とした。それぞれの酵素添加量は、表2に示す通りである。表2中の穀粉はそば粉と強力粉の合算である。市水350gに食塩15gを加えた5℃の食塩水を、上記混合原料に全量加えて、混練機にて5分間(100rpm;2分、50rpm;3分)混練した。混練後、製麺機「小型粗麺帯機・小型連続圧延機」(トム社製)にてバラ掛け、複合、圧延し、#18の切り刃を用いて切り出しを行った。切り出した麺線は直ちに凍結し、冷凍生日本そばとした。冷凍生日本そばは、沸騰水にて2.5分間ゆでた後24時間冷蔵保存し、官能評価を行った。官能評価は、硬さ、弾力、粘り、中芯感、歯切れ、総合評価に関して、コントロール区分を0点とし、−2点から2点までの評点法にて評価人数6人で行った。結果を図7に示す。また、TGLのみを添加した区分およびTGのみを添加した区分の結果をもとに、各併用添加区分の理論上の評点を算出した。算出方法は実施例3と同様とし、算出した値を用いて理論値と実際の評点の差を求めた(図8)。この値がゼロであれば理論値通りの効果、すなわち相加効果であり、ゼロより大きければ理論値より大きな効果、すなわち相乗効果が出ていることを意味する。
【0027】
【表2】
【0028】
図7に示す通り、TGLの添加割合が増えるに従い粘りが付与され、TGの添加割合が増えるに従い硬さと歯切れが付与された。総合評価においては、両酵素をある一定の割合で作用させた際に特に大きな効果が得られることが明らかとなった。また、図8に示す通り、全ての併用試験区において食感について相乗効果があることが見出された。総合評価においては、併用(4)および(5)ではわずかな相乗効果であったが、それよりもTG添加量の多い全範囲において顕著な相乗効果が得られ、併用(1)と併用(3)に挟まれる範囲において特に顕著な効果であることが明らかとなった。
【実施例5】
【0029】
デュラム粉「DF」(日清製粉社製)2kgに、TGL、TGを添加し十分に混合した。試験区分は、酵素を添加しないコントロール区分、TGLのみを添加した区分、TGのみを添加した区分、TGLとTGを5通りの割合で共に添加した区分の8試験区とした。それぞれの酵素添加量は、表2に示す通りである。上記混合原料に市水540gを加え、混練機「真空ミキサーVU-2」(尾久葉鐵工所社製)にて15分間(混練機設定の速度100)混練した。混練後、パスタマシン「真空押出機FPV-2」(ニップンエンジニアリング社製)にて、1.8mmのロングパスタ用ダイスを用いて押し出し製麺を行った。押し出した麺線は、乾燥機「恒温恒湿槽LH21-13P」(ナガノ科学機械製作所社製)にて乾燥し、乾パスタとした。乾パスタは、沸騰水にて9.5分間ゆでた後官能評価を行った。これをゆで直後の評価とした。また、同様に9.5分間ゆでた後24時間冷蔵保存し、30秒間レンジアップして官能評価を行った。これを保存後の評価とした。官能評価は、硬さ、弾力、粘り、中芯感、歯切れ、総合評価に関して、コントロール区分を0点とし、−2点から2点までの評点法にて評価人数7人で行った。結果を図9および図11に示す。また、TGLのみを添加した区分およびTGのみを添加した区分の結果をもとに、各併用添加区分の理論上の評点を算出した。算出方法は実施例3と同様とし、算出した値を用いて理論値と実際の評点の差を求めた(図10、図12)。この値がゼロであれば理論値通りの効果、すなわち相加効果であり、ゼロより大きければ理論値より大きな効果、すなわち相乗効果が出ていることを意味する。
【0030】
ゆで直後の評価結果である図9に示す通り、TGLの添加割合が増えるに従い粘りが付与され、TGの添加割合が増えるに従い硬さと歯切れが付与された。弾力および中芯感においては、両酵素をある一定の割合で作用させた際に、特に大きな効果が得られることが明らかとなった。総合評価においても同様の傾向が見られた。また、保存後の評価においても同様であった(図11)。更に、図10、図12に示す通り、ゆで直後および保存後の全ての併用試験区において、食感について相乗効果があることが見出された。中でも総合評価においては、併用(1)から併用(5)の全ての試験区にて顕著な相乗効果が確認された。
【実施例6】
【0031】
中力粉「白椿」(日清製粉社製)1kg、クチナシ黄色素「イエローカラーTH-G」(長谷川香料社製)1gに、TGL、TGを添加し100rpmで混練機「2kg真空捏機」(大竹麺機社製)にて1分混合した。試験区分は、酵素を添加しないコントロール区分、TGLのみを添加した区分、TGのみを添加した区分、TGLとTGを5通りの割合で共に添加した区分の8試験区とした。それぞれの酵素添加量は、表2に示す通りである。市水420gに食塩5g、かんすい「粉末かんすいX」(日本コロイド社製)10gを加えた5℃の溶液を、上記混合原料に全量加えて、混練機にて3.5分間(100rpm;2分、50rpm;1.5分)混練した。混練後、製麺機「小型粗麺帯機・小型連続圧延機」(トム社製)にてバラ掛け、複合、圧延し、#18の切り刃を用いて切り出しを行った。切り出した麺線は直ちに凍結し、冷凍生中華麺とした。冷凍生中華麺は、沸騰水にて2.5分間ゆでた後、官能評価を行った。官能評価は、硬さ、弾力、粘り、中芯感、総合評価に関して、コントロール区分を0点とし、−2点から2点までの評点法にて評価人数4人で行った。結果を図13に示す。また、TGLのみを添加した区分およびTGのみを添加した区分の結果をもとに、各併用添加区分の理論上の評点を算出した。算出方法は実施例3と同様とし、算出した値を用いて理論値と実際の評点の差を求めた(図14)。この値がゼロであれば理論値通りの効果、すなわち相加効果であり、ゼロより大きければ理論値より大きな効果、すなわち相乗効果が出ていることを意味する。
【0032】
図13に示す通り、TGLの添加割合が増えるに従い粘りが付与され、TGの添加割合が増えるに従い硬さが付与された。総合評価においては、両酵素をある一定の割合で作用させた際に特に大きな効果が得られることが明らかとなった。また、図14に示す通り、全ての併用試験区において何らかの項目について食感の相乗効果があることが見出された。総合評価においても、全ての併用試験区において相乗効果が認められ、併用(3)と併用(5)に挟まれる範囲において特に顕著な効果であることが明らかとなった。
【実施例7】
【0033】
実施例6にて得られた冷凍生中華麺を、サンプルとして用いた。冷凍生中華麺は、熱水中にて軽くほぐした後、蒸し器にて7分間蒸した。冷却した後、やきそば用ソース15gと共にフライパンにて30秒間焼き、官能評価を行った。官能評価は、硬さ、弾力、粘り、中芯感、総合評価に関して、コントロール区分を0点とし、−2点から2点までの評点法にて評価人数4人で行った。結果を図15に示す。また、TGLのみを添加した区分およびTGのみを添加した区分の結果をもとに、各併用添加区分の理論上の評点を算出した。算出方法は実施例3と同様とし、算出した値を用いて理論値と実際の評点の差を求めた(図16)。この値がゼロであれば理論値通りの効果、すなわち相加効果であり、ゼロより大きければ理論値より大きな効果、すなわち相乗効果が出ていることを意味する。
【0034】
図15に示す通り、TGLの添加割合が増えるに従い粘りが付与され、TGの添加割合が増えるに従い硬さが付与された。総合評価においては、両酵素をある一定の割合で作用させた際に特に大きな効果が得られることが明らかとなった。また、図16に示す通り、全ての併用試験区において何らかの項目について食感の相乗効果があることが見出された。総合評価においては、併用 (5)ではわずかな相乗効果であったが、それよりもTG添加量の多い全範囲において顕著な相乗効果が得られ、併用(1)と併用(3)に挟まれる範囲において特に顕著な効果であることが明らかとなった。
【実施例8】
【0035】
準強力粉「特ナンバーワン」(日清製粉社製)850g、加工澱粉「松谷桜」(松谷化学工業社製)150gを混練機「真空ミキサーVU-2」(尾久葉鐵工所社製)にて2分間(90rpm)予備混合した。市水200gに食塩15g、かんすい「粉末かんすいX」(日本コロイド社製)2g、チキンエキス「アジエキス」チキンL-1(味の素社製)を加えた溶液、および市水130gに酵素を溶解した溶液を、上記混合原料に全量加え、上記混練機にて15分間(90rpm;1分、45rpm;14分)混練した。試験区分は、酵素を添加しないコントロール区分、TGLのみを添加した区分、TGのみを添加した区分、TGLとTGを3通りの割合で共に添加した区分の6試験区とした。それぞれの酵素添加量は、表3に示す通りである。表3中の穀粉は準強力粉であり、加工澱粉は含まれない。混練後、製麺機(富士製作所社製)にてバラ掛け、複合、圧延し、厚さ1mmの生地を得た。10分間静置した後、#16の切り刃を用いて切り出し、蒸し機(富士製作所社製)にて95〜98℃で3分間蒸した。型枠取りをした後、フライヤー「コンパクトオートフライヤーKCAF-187EL-T」(北沢産業社製)にて145℃で75秒間フライし、フライ麺を得た。得られたフライ麺は、熱湯にて4.5分間湯戻しし、湯切りした後に官能評価を行った。官能評価は、硬さ、弾力、粘り、中芯感、総合評価に関して、コントロール区分を0点とし、−2点から2点までの評点法にて評価人数4人で行った。結果を図17に示す。また、TGLのみを添加した区分およびTGのみを添加した区分の結果をもとに、各併用添加区分の理論上の評点を算出した。算出方法は実施例3と同様とし、算出した値を用いて理論値と実際の評点の差を求めた(図18)。この値がゼロであれば理論値通りの効果、すなわち相加効果であり、ゼロより大きければ理論値より大きな効果、すなわち相乗効果が出ていることを意味する。
【0036】
【表3】
【0037】
図17に示す通り、TGLの添加割合が増えるに従い粘りが付与され、TGの添加割合が増えるに従い硬さが付与された。総合評価においては、両酵素をある一定の割合で作用させた際に特に大きな効果が得られることが明らかとなった。また、図18に示す通り、全ての併用試験区において何らかの項目について食感の相乗効果があることが見出された。総合評価においても、全ての併用試験区において相乗効果が認められ、併用(2)を中心に特に顕著な効果が見られた。
【実施例9】
【0038】
表4に示す配合に従い、小麦粉を混練機(HOBART社製)にて混合しながら、酵素および食塩を溶解した水を添加した。表4中の穀粉は薄力粉と強力粉の合算である。試験区分は、酵素を添加しないコントロール区分、TGのみを添加した区分、TGLのみを添加した区分、TGとTGLを共に添加した併用区分の4試験区とした。尚、併用区におけるTG1ユニット当たりのTGL量はおよそ800ユニットである。上記混練機にて、混練機設定のスピード1にて3分間、同スピード2にて7分間混練した。15℃にて1時間寝かせた後、パスタマシン「R.M.」(IMPERIA社製)を用いてバラ掛け、複合、圧延を行い、厚さ1mmの生地を得た。生地は、直径89mmの円形に型抜きし、生麺帯を得た。生麺帯は、沸騰水にて4分間ゆで、氷水にて1分間冷却し、冷蔵にて1日間保存した後に官能評価を行った。官能評価は、硬さ、弾力、しなやかさ、総合評価に関して、コントロール区分を0点とし、−2点から2点までの評点法にて評価人数3人で行った。結果を図19に示す。また、TGLのみを添加した区分およびTGのみを添加した区分の結果をもとに、併用添加区分の理論上の評点を算出した。算出方法は実施例3と同様とし、算出した値を用いて理論値と実際の評点の差を求めた(図20)。この値がゼロであれば理論値通りの効果、すなわち相加効果であり、ゼロより大きければ理論値より大きな効果、すなわち相乗効果が出ていることを意味する。
【0039】
【表4】
【0040】
図19に示す通り、TGにより弾力が付与されるものの生地の硬化やしなやかさの低下が見られ、TGLにより弾力やしなやかさが付与された。一方、両酵素を併用することで、生地の硬化が適度に抑制され、弾力、しなやかさの付与された好ましい食感となった。また、図20に示す通り、弾力およびしなやかさにおいて相乗効果があることが見出され、総合評価においても相乗的に好ましい効果が得られることが確認された。以上より、穀粉を原料とする麺帯の製造において、TGもしくはTGL単独ではなく、両酵素を併用することにより、より好ましい食感の麺帯が得られ、食感の改質において相乗効果が得られることが示された。
【実施例10】
【0041】
表5に示す配合に従い薄力粉に水を混合し、酵素を添加して室温で2時間攪拌し、バッター液を得た。試験区分は、酵素を添加しないコントロール区分、TGのみを添加した区分、TGLのみを添加した区分、TGとTGLを共に添加した併用区分の4試験区とした。尚、併用区におけるTG1ユニット当たりのTGL量はおよそ800ユニットである。1cm幅の輪切りにしたさつまいもをバッター液に漬け、フライヤーにて170℃で3分間フライし、さつまいもの天ぷらを得た。天ぷらは、冷凍(−20℃)にて1週間保存し、自然解凍した後にレンジアップをして官能評価を行った。官能評価は、硬さ、ボソつき抑制効果、総合評価に関して、コントロール区分を0点とし、−3点から3点までの評点法にて評価人数3人で行った。結果を図21に示す。また、TGLのみを添加した区分およびTGのみを添加した区分の結果をもとに、併用添加区分の理論上の評点を算出した。算出方法は実施例3と同様とし、算出した値を用いて理論値と実際の評点の差を求めた(図22)。この値がゼロであれば理論値通りの効果、すなわち相加効果であり、ゼロより大きければ理論値より大きな効果、すなわち相乗効果が出ていることを意味する。
【0042】
【表5】
【0043】
図21に示す通り、TGにより硬さが付与されるものの衣がボソつく傾向が見られ、TGLによりボソつき抑制効果が見られた。一方、両酵素を併用することで、硬さを維持し、ボソ付きが抑制された好ましい食感となった。また、図22に示す通り、全ての評価項目において相乗効果があることが見出され、総合評価においても相乗的に好ましい効果が得られることが確認された。以上より、穀粉を原料とするバッターを用いたフライ食品の製造において、TGもしくはTGL単独ではなく、両酵素を併用することにより、より好ましい食感のフライ食品が得られ、食感の改質において相乗効果が得られることが示された。
【実施例11】
【0044】
表6に示す配合に従い、白玉粉に水、酵素を添加して、混練機(HOBART社製)にて混練機設定のスピード1で4分間混練した。表6中の穀粉は白玉粉である。試験区分は、酵素を添加しないコントロール区分、TGのみを添加した区分、TGLのみを添加した区分、TGとTGLを共に添加した併用区分の4試験区とした。尚、併用区におけるTG1ユニット当たりのTGL量はおよそ800ユニットである。混練した生地を12gの団子状に成型し、室温で1時間寝かせた後、沸騰水にて3.5分間ボイルして白玉団子を得た。白玉団子は冷凍(−20℃)にて1週間保存し、自然解凍して官能評価を行った。官能評価は、硬さ、弾力、もちもち感、総合評価に関して、コントロール区分を0点とし、−3点から3点までの評点法にて評価人数4人で行った。結果を図23に示す。また、TGLのみを添加した区分およびTGのみを添加した区分の結果をもとに、併用添加区分の理論上の評点を算出した。算出方法は実施例3と同様とし、算出した値を用いて理論値と実際の評点の差を求めた(図24)。この値がゼロであれば理論値通りの効果、すなわち相加効果であり、ゼロより大きければ理論値より大きな効果、すなわち相乗効果が出ていることを意味する。
【0045】
【表6】
【0046】
図23に示す通り、TGにより硬さや弾力が付与され、TGLによりもちもち感が付与されるものの硬さが低下した。一方、両酵素を併用することで、硬さ、弾力、もちもち感の付与された好ましい食感となった。また、図24に示す通り、全ての評価項目において相乗効果があることが見出され、総合評価においても相乗的に好ましい効果が得られることが確認された。以上より、穀粉を原料とする和菓子の製造において、TGもしくはTGL単独ではなく、両酵素を併用することにより、より好ましい食感の和菓子が得られ、食感の改質において相乗効果が得られることが示された。
【実施例12】
【0047】
表7に示す配合に従い、強力粉に砂糖、食塩、ドライイースト、ショートニング、水および酵素を添加して、3分間手混合し、常温にて30分間静置し発酵した。試験区分は、酵素を添加しないコントロール区分、TGのみを添加した区分、TGLのみを添加した区分、TGとTGLを共に添加した併用区分の4試験区とした。尚、併用区におけるTG1ユニット当たりのTGL量はおよそ800ユニットである。生地を105gに分割し、直径16cmのピザ生地に成型してピケした後、オーブンにて250℃で5分間焼成した。トマトソース15gおよびチーズ30gをトッピングし、冷凍(−20℃)にて1週間保存した。冷凍ピザは、オーブンにて250℃で6分間焼成し、官能評価を行った。官能評価は、硬さ、弾力、もちもち感、総合評価に関して、コントロール区分を0点とし、−2点から2点までの評点法にて評価人数4人で行った。結果を図25に示す。また、TGLのみを添加した区分およびTGのみを添加した区分の結果をもとに、併用添加区分の理論上の評点を算出した。算出方法は実施例3と同様とし、算出した値を用いて理論値と実際の評点の差を求めた(図26)。この値がゼロであれば理論値通りの効果、すなわち相加効果であり、ゼロより大きければ理論値より大きな効果、すなわち相乗効果が出ていることを意味する。
【0048】
【表7】
【0049】
図25に示す通り、TGにより硬さや弾力が付与されるもののもちもち感が低下し、TGLにより弾力やもちもち感が付与されるものの硬さがやや低下した。一方、両酵素を併用することで、適度な硬さを有し、弾力、もちもち感の付与された好ましい食感となった。また、図26に示す通り、弾力、もちもち感において相乗効果があることが見出され、総合評価においても相乗的に好ましい効果が得られることが確認された。以上より、穀粉を原料とする発酵食品の製造において、TGもしくはTGL単独ではなく、両酵素を併用することにより、より好ましい食感の穀粉発酵食品が得られ、食感の改質において相乗効果が得られることが示された。
【実施例13】
【0050】
表8に示す配合に従い、豆乳および加工澱粉を混合し、酵素を添加した。使用した豆乳のBrixは14%であり、この値が豆乳中の固形分値と同等であると定義した。すなわち、ここで用いた豆乳の固形分は14%である。試験区分は、酵素を添加しないコントロール区分、TGのみを添加した区分、TGLのみを添加した区分、TGとTGLを共に添加した併用区分の4試験区とした。尚、併用区におけるTG1ユニット当たりのTGL量はおよそ800ユニットである。上記混合液およびにがりを豆腐用のパックに充填し、寄せを行った後シーラー「卓上型パック手動包装機FK-105」(藤村工業社製)にてシールした。常温にて1時間、65℃にて1時間の熟成を行った後、95℃の熱水で40分間加熱した。冷却した後、1辺が1.5cmの立方体にカットし、−40℃にて冷凍して冷凍豆腐を得た。冷凍豆腐は、自然解凍した後に官能評価を行った。官能評価は、硬さ、弾力、なめらかさに関して、コントロール区分を0点とし、−3点から3点までの評点法にて評価人数3人で行った。結果を図27に示す。また、TGLのみを添加した区分およびTGのみを添加した区分の結果をもとに、併用添加区分の理論上の評点を算出した。算出方法は実施例3と同様とし、算出した値を用いて理論値と実際の評点の差を求めた(図28)。この値がゼロであれば理論値通りの効果、すなわち相加効果であり、ゼロより大きければ理論値より大きな効果、すなわち相乗効果が出ていることを意味する。
【0051】
【表8】
【0052】
図27に示す通り、TGにより硬さや弾力が付与されるもののなめらかさが低下し、TGLによりなめらかさが付与されるものの硬さや弾力が低下した。一方、両酵素を併用することで、硬さ、弾力、なめらかさの付与された好ましい食感となった。また、図28に示す通り、全ての評価項目において相乗効果があることが見出された。以上より、豆類を原料とする加工食品の製造において、TGもしくはTGL単独ではなく、両酵素を併用することにより、より好ましい食感の豆類加工食品が得られ、食感の改質において相乗効果が得られることが示された。
【実施例14】
【0053】
表9に示す配合に従い、牛乳、脱脂粉乳、水、加工澱粉を混合した。混合液に酵素を添加し、スターラーにて5℃で24時間攪拌した。試験区分は、酵素を添加しないコントロール区分、TGのみを添加した区分、TGLのみを添加した区分、TGとTGLを共に添加した併用区分の4試験区とした。尚、併用区におけるTG1ユニット当たりのTGL量はおよそ800ユニットである。続いて、90℃の熱湯にて5分間殺菌し、40℃程度にまで冷却した後、スターターを添加して混合した。混合液をプラスチックカップに充填し、pH4.5になるまで38℃にて発酵させてハードタイプヨーグルトを得た。5℃にて24時間保存した後、官能評価を行った。官能評価は、硬さ、濃厚感、持続性に関して、コントロール区分を0点とし、−3点から3点までの評点法にて評価人数3人で行った。結果を図29に示す。また、TGLのみを添加した区分およびTGのみを添加した区分の結果をもとに、併用添加区分の理論上の評点を算出した。算出方法は実施例3と同様とし、算出した値を用いて理論値と実際の評点の差を求めた(図30)。この値がゼロであれば理論値通りの効果、すなわち相加効果であり、ゼロより大きければ理論値より大きな効果、すなわち相乗効果が出ていることを意味する。
【0054】
【表9】
【0055】
図29に示す通り、TGにより硬さが主に付与され、TGLにより濃厚感が主に付与された。一方、両酵素を併用することで、硬さ、濃厚感、持続性の付与された好ましい食感となった。また、図30に示す通り、全ての評価項目において相乗効果があることが見出された。以上より、乳を原料とする加工食品の製造において、TGもしくはTGL単独ではなく、両酵素を併用することにより、より好ましい食感の乳加工品が得られ、食感の改質において相乗効果が得られることが示された。
【実施例15】
【0056】
表10に示す配合に従い、酵素を含む全原料を混合し、室温にて1時間静置した。試験区分は、酵素を添加しないコントロール区分、TGのみを添加した区分、TGLのみを添加した区分、TGとTGLを共に添加した併用区分の4試験区とした。尚、併用区におけるTG1ユニット当たりのTGL量はおよそ800ユニットである。卵焼き用角型フライパンに油「サラダ油」(味の素社製)を添加して弱火で2分間熱した後、原料全量を投入し、攪拌しながら弱火で3.5分間加熱し、手前半分に寄せた後に更に弱火で4.5分間加熱した。裏返した後、弱火で3分間加熱し、厚焼き卵を得た。厚焼き卵は、カットしてパウチに入れ、冷凍(−20℃)にて1週間保存した後、自然解凍して官能評価を行った。官能評価は、弾力、ソフト感、しなやかさ、総合評価に関して、コントロール区分を0点とし、−3点から3点までの評点法にて評価人数3人で行った。結果を図31に示す。また、TGLのみを添加した区分およびTGのみを添加した区分の結果をもとに、併用添加区分の理論上の評点を算出した。算出方法は実施例3と同様とし、算出した値を用いて理論値と実際の評点の差を求めた(図32)。この値がゼロであれば理論値通りの効果、すなわち相加効果であり、ゼロより大きければ理論値より大きな効果、すなわち相乗効果が出ていることを意味する。
【0057】
【表10】
【0058】
図31に示す通り、TGにより弾力が付与されるもののソフト感やしなやかさが低下し、TGLによりソフト感やしなやかさが付与された。一方、両酵素を併用することで、弾力、ソフト感、しなやかさの付与された好ましい食感となった。また、図32に示す通り、全ての評価項目において相乗効果があることが見出され、総合評価においても相乗的に好ましい効果が得られることが確認された。以上より、卵を原料とする加工食品の製造において、TGもしくはTGL単独ではなく、両酵素を併用することにより、より好ましい食感の卵加工食品が得られ、食感の改質において相乗効果が得られることが示された。
【実施例16】
【0059】
表11に示す配合に従い、コーンスターチと水を混合し、90℃にて2分間加熱してペースト状に糊化させた。糊化澱粉に全卵、酵素を入れて攪拌した後、食酢、砂糖、食塩を添加して攪拌した。試験区分は、酵素を添加しないコントロール区分、TGのみを添加した区分、TGLのみを添加した区分、TGとTGLを共に添加した併用区分の4試験区とした。尚、併用区におけるTG1ユニット当たりのTGL量はおよそ800ユニットである。そこへサラダ油を投入し、ハンドミキサー「bamix Gastro 200」(ESGE社製)にて5分間乳化し、更に1分間全体を攪拌し、マヨネーズタイプ調味料を得た。冷蔵にて24時間保存後、官能評価を行った。官能評価は、硬さ、なめらかさ、持続性に関して、コントロール区分を0点とし、−3点から3点までの評点法にて評価人数3人で行った。結果を図33に示す。また、TGLのみを添加した区分およびTGのみを添加した区分の結果をもとに、併用添加区分の理論上の評点を算出した。算出方法は実施例3と同様とし、算出した値を用いて理論値と実際の評点の差を求めた(図34)。この値がゼロであれば理論値通りの効果、すなわち相加効果であり、ゼロより大きければ理論値より大きな効果、すなわち相乗効果が出ていることを意味する。
【0060】
【表11】
【0061】
図33に示す通り、TGにより硬さや持続性が付与されるもののなめらかさが低下し、TGLによりなめらかさが付与されるものの硬さや持続性が低下した。一方、両酵素を併用することで、硬さ、なめらかさ、持続性の付与された好ましい食感となった。また、図34に示す通り、全ての評価項目において相乗効果があることが見出された。以上より、澱粉類を含有する汎用基本調味料の製造において、TGもしくはTGL単独ではなく、両酵素を併用することにより、より好ましい食感の基本調味料が得られ、食感の改質において相乗効果が得られることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明によると、麺類等の澱粉含有食品の品質を向上できるので、食品分野において極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】パスタの硬さについての官能評価結果である。(実施例1)
【図2】パスタのねばりについての官能評価結果である。(実施例1)
【図3】うどんの硬さについての官能評価結果である。(実施例2)
【図4】うどんの弾力についての官能評価結果である。(実施例2)
【図5】うどんの硬さ、弾力、粘り、中芯感、総合評価についての官能評価結果である。(実施例3)
【図6】うどんの硬さ、弾力、粘り、中芯感、総合評価における、相乗効果についての結果である。(実施例3)
【図7】日本そばの硬さ、弾力、粘り、中芯感、歯切れ、総合評価についての官能評価結果である。(実施例4)
【図8】日本そばの硬さ、弾力、粘り、中芯感、歯切れ、総合評価における、相乗効果についての結果である。(実施例4)
【図9】ゆで直後のパスタの硬さ、弾力、粘り、中芯感、歯切れ、総合評価についての官能評価結果である。(実施例5)
【図10】ゆで直後のパスタの硬さ、弾力、粘り、中芯感、歯切れ、総合評価における、相乗効果についての結果である。(実施例5)
【図11】冷蔵保存後のパスタの硬さ、弾力、粘り、中芯感、歯切れ、総合評価についての官能評価結果である。(実施例5)
【図12】冷蔵保存後のパスタの硬さ、弾力、粘り、中芯感、歯切れ、総合評価における、相乗効果についての結果である。(実施例5)
【図13】冷やし中華の硬さ、弾力、粘り、中芯感、総合評価についての官能評価結果である。(実施例6)
【図14】冷やし中華の硬さ、弾力、粘り、中芯感、総合評価における、相乗効果についての結果である。(実施例6)
【図15】やきそばの硬さ、弾力、粘り、中芯感、総合評価についての官能評価結果である。(実施例7)
【図16】やきそばの硬さ、弾力、粘り、中芯感、総合評価における、相乗効果についての結果である。(実施例7)
【図17】即席麺の硬さ、弾力、粘り、中芯感、総合評価についての官能評価結果である。(実施例8)
【図18】即席麺の硬さ、弾力、粘り、中芯感、総合評価における、相乗効果についての結果である。(実施例8)
【図19】麺帯の硬さ、弾力、しなやかさ、総合評価についての官能評価結果である。(実施例9)
【図20】麺帯の硬さ、弾力、しなやかさ、総合評価における、相乗効果についての結果である。(実施例9)
【図21】天ぷらの硬さ、ボソつき抑制、総合評価についての官能評価結果である。(実施例10)
【図22】天ぷらの硬さ、ボソつき抑制、総合評価における、相乗効果についての結果である。(実施例10)
【図23】白玉団子の硬さ、弾力、もちもち感、総合評価についての官能評価結果である。(実施例11)
【図24】白玉団子の硬さ、弾力、もちもち感、総合評価における、相乗効果についての結果である。(実施例11)
【図25】ピザの硬さ、弾力、もちもち感、総合評価についての官能評価結果である。(実施例12)
【図26】ピザの硬さ、弾力、もちもち感、総合評価における、相乗効果についての結果である。(実施例12)
【図27】豆腐の硬さ、弾力、なめらかさについての官能評価結果である。(実施例13)
【図28】豆腐の硬さ、弾力、なめらかさにおける、相乗効果についての結果である。(実施例13)
【図29】ヨーグルトの硬さ、濃厚感、持続性についての官能評価結果である。(実施例14)
【図30】ヨーグルトの硬さ、濃厚感、持続性における、相乗効果についての結果である。(実施例14)
【図31】厚焼き卵の弾力、ソフト感、しなやかさ、総合評価についての官能評価結果である。(実施例15)
【図32】厚焼き卵の弾力、ソフト感、しなやかさ、総合評価における、相乗効果についての結果である。(実施例15)
【図33】マヨネーズの硬さ、なめらかさ、持続性についての官能評価結果である。(実施例16)
【図34】マヨネーズの硬さ、なめらかさ、持続性における、相乗効果についての結果である。(実施例16)
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖鎖のα-1,4結合をα-1,6結合へと変換する糖転移活性を有する酵素及びトランスグルタミナーゼを用いる澱粉含有食品の製造方法及び澱粉含有食品改質用の酵素製剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
α化した澱粉を常温や低温で放置すると、水分を分離し硬くなる。この現象を老化といい澱粉の老化現象については数多く研究されている。一般に老化の防止のためには温度を80℃以上に保っておくか、急速に乾燥させて水分を15%以下にする、pH13以上のアルカリ性に保つことが必要である。また、老化を防止する方法として澱粉含有食品に糖類(ブドウ糖、果糖、液糖等)や大豆タンパク、小麦グルテン、脂肪酸エステル、多糖類(山芋、こんにゃく等)が一般に知られており、特許文献1には増粘剤、界面活性剤等を添加する方法が記載されている。しかし、これらの方法では食味が大きく変化し、また効果も不安定で十分な解決法とはなっていない。
【0003】
また、従来、老化防止の手段として、酵素を添加する方法も知られている。例えば、特許文献2には、精白米にアミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ等の酵素と、食塩及びサイクロデキストリンを混合して炊飯する米飯の改良方法が記載されている。特許文献3には、炊飯後の米飯に糖化型アミラーゼ(β-アミラーゼ、グルコアミラーゼ)の水溶液を噴霧添加する米飯の老化防止方法が記載されている。しかしながら、米に各種の酵素剤を添加して米飯の品質改良を試みているが、いずれも目ざましい効果は得られていないのが現状である。
【0004】
澱粉含有食品の一つである、麺類の食感改良方法に関しては多くの知見がある。 例えば、茹で麺の食感を改良するためにタンパク質素材(活性グルテン、大豆タンパク質、卵白、全卵、カゼイン等)や澱粉等(各種澱粉、多糖類、乳化剤等)を添加することが行われている(特許文献4)。また、レトルト殺菌処理の場合に食感を維持させるために高温、短時間処理を行っている(特許文献5)。また、トランスグルタミナーゼを使用し、食感を改善させる方法も知られている(特許文献6、7)。これらの方法によれば、トランスグルタミナーゼの作用によりタンパク質間及びタンパク質内のネットワーク構造を麺体の中に形成させて麺体内での水分の均一化を防止することにより、茹で後の弾力(こし)のある好ましい食感を維持することができる。しかしながら、全体が均一な食感となり、アルデンテと呼ばれる、中芯感のある食感(外側に比べ内側が硬い)を得るには改善の余地があった。
【0005】
また、特許文献8によれば澱粉含有食品の物性改良剤として、トランスグルコシダーゼを小麦混練時に添加することによって、硬さ、粘りが増し、かつ時間が経つと無添加に比べ中芯感もあるうどんを得ることができる。かなりの効果が見られるものの、茹で直後での物性改良効果において改善の余地が残っていた。このように、いずれの方法によっても、茹で上げ直後の食感を向上させ、かつその優れた食感を長時間にわたって維持するという2つを両立させることは難しく、いまだ完全には達成されていないのが現状である。食品の物性を決定する上で重要なものは、タンパク質と糖質(澱粉)の状態である。タンパク質の物性改良に有効な酵素としてトランスグルタミナーゼが、澱粉の物性改良に有効な酵素としてトランスグルコシダーゼが見出されているが、これらを組み合わせて、物性改良に用いた例は未だ報告されていない。
【特許文献1】特開昭59-2664号公報
【特許文献2】特開昭58-86050号公報
【特許文献3】特開昭60-199355号公報
【特許文献4】特開平2-117353号公報
【特許文献5】特開平2-186954号公報
【特許文献6】特開平2-286054号公報
【特許文献7】特開平6-14733号公報
【特許文献8】WO2005/096839
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、物性及び食味の改善された澱粉含有食品の製造方法及び澱粉含有食品改質用の酵素製剤を提供することである。特に穀粉等を混練する麺類の製造直後の品質(食味と物性)を向上し、製造工程及び製造後の流通過程での時間経過による品質劣化を抑制する方法を提供することである。
【0007】
本発明者等は、鋭意研究を行った結果、α-1,4結合をα-1,6結合へと変換する糖転移活性を有する酵素及びトランスグルタミナーゼを用いて澱粉含有食品を製造することにより上記目的を達成しうることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は以下の通りである。
(1)糖鎖のα-1,4結合をα-1,6結合へと変換する糖転移活性を有する酵素及びトランスグルタミナーゼを添加することを特徴とする澱粉含有食品の製造方法。
(2)糖鎖のα-1,4結合をα-1,6結合へと変換する糖転移活性を有する酵素がトランスグルコシダーゼである(1)記載の方法。
(3)澱粉含有食品が穀粉を原料とする麺類である(1)又は(2)記載の方法。
(4)トランスグルコシダーゼの量が、穀粉1g当たり1.5〜300,000Uであり、トランスグルタミナーゼの量が穀粉1g当たり0.0001〜100Uである(3)記載の方法。
(5)トランスグルコシダーゼの量が、トランスグルタミナーゼ1U当たり1U〜200,000Uである(4)記載の方法。
(6)トランスグルコシダーゼの量が、トランスグルタミナーゼ1U当たり90U〜7,500Uである(4)記載の方法。
(7)澱粉含有食品が、野菜天ぷら又は和菓子又はピザ又は豆腐又はヨーグルト又は卵焼き又はマヨネーズである(1)又は(2)記載の方法。
(8)トランスグルコシダーゼの量が、トランスグルタミナーゼ1U当たり90U〜7,500Uである(7)記載の方法。
(9)トランスグルコシダーゼ及びトランスグルタミナーゼを含有する澱粉含有食品改質用の酵素製剤。
(10)トランスグルコシダーゼの含有量がトランスグルタミナーゼ1U当り90U〜200,000Uである(9)記載の酵素製剤。
(11)澱粉含有食品が麺類であり、トランスグルコシダーゼの含有量がトランスグルタミナーゼ1U当り90U〜7,500Uである(9)記載の酵素製剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、麺類等の澱粉含有食品の製造直後の品質(食味と物性)を向上することができ、時間経過による該食品の品質劣化を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明による澱粉含有食品の製造方法には、α-1,4結合をα-1,6結合へと変換する糖転移活性を有する酵素とトランスグルタミナーゼを用いる。α-1,4結合をα-1,6結合へと変換する糖転移活性を有する酵素の例として、トランスグルコシダーゼ(EC3.2.1.20)、1,4-αグルカン分枝酵素、1,4-αグルカン6-α-D-グルコシルトランスフェラーゼが挙げられる。トランスグルコシダーゼは糖転移能を有するα-グルコシダーゼ酵素である。α-グルコシダーゼとは非還元末端α-1,4-グルコシド結合を加水分解し、α-グルコースを生成する酵素である。尚、グルコアミラーゼはα-グルコシダーゼと類似の反応を起こすが生成するグルコースはα-グルコースではなく、β-グルコースである。さらに、本発明に用いる酵素は単に分解活性を有するのみではなく、水酸基を持つ適当な受容体がある場合、グルコースをα-1,4結合よりα-1,6結合へと転移させ、分岐糖を生成する糖転移活性を有するものであることが特に重要である。従来の物性改良剤に含まれる酵素は澱粉分解酵素であり、糖転移酵素ではない。尚、トランスグルコシダーゼL「アマノ」という商品名で天野エンザイム(株)より市販されている酵素が、α-1,4結合をα-1,6結合へと変換する糖転移活性を有する酵素の一例である。
【0010】
トランスグルタミナーゼはタンパク質やペプチド中のグルタミン残基を供与体、リジン残基を受容体とするアシル転移反応を触媒する活性を有する酵素のことを指し、哺乳動物由来のもの、魚類由来のもの、微生物由来のものなど、種々の起源のものが知られている。本発明で用いる酵素はこの活性を有している酵素であれば構わず、その起源としてはいずれのものでも構わない。また、組み換え酵素であっても構わない。味の素(株)より「アクティバ」TGという商品名で市販されている微生物由来のトランスグルタミナーゼが一例である。
【0011】
澱粉含有食品としては様々なものが考えられるが、市場の大きさや、ニーズ等と照らし合わせると、うどん、パスタ、日本そば、中華麺、焼きそば、フライ工程や乾燥工程を経る即席麺、餃子、焼売の皮等の麺類に作用させるのが特に有効であると考えられる。その他、いも天ぷら等の野菜天ぷら、白玉団子、みたらし団子、大福、桜餅、柏餅、蕨餅、ういろう、すあま、八つ橋等の和菓子、ピザ、食パン、フランスパン、バターロール、米粉パン、デニッシュ、ベーグル、ラスク、ドーナツ、フォカッチャ、ナン、ピタパン等のパン・ベーカリー類、豆腐、ベジタリアン向け大豆ハンバーグ、湯葉、油揚げ等の大豆加工品、ヨーグルト、ヨーグルトドリンク、ホワイトソース、アイスクリーム、生クリーム等の乳加工品、厚焼き卵、卵焼き、目玉焼き、スクランブルエッグ、オムレツ、かに玉、茶碗蒸し、プリン、卵豆腐、カスタードクリーム等の卵加工品、マヨネーズ、マヨネーズタイプ調味料も含まれる。
【0012】
麺類等澱粉含有食品にトランスグルコシダーゼ等α-1,4結合をα-1,6結合へと変換する糖転移活性を有する酵素及びトランスグルタミナーゼを作用させる場合は、製造工程のどの段階で作用させてもかまわない。すなわち原料混合時に酵素を添加してもよいし、混合後に酵素を振りかけて作用させてもよい。さらに、α-1,4結合をα-1,6結合へと変換する糖転移活性を有する酵素及びトランスグルタミナーゼ以外の他の酵素や物質(デキストリン、澱粉、加工澱粉等の糖類、畜肉エキス等の調味料、植物蛋白、グルテン、卵白、ゼラチン、カゼイン等の蛋白質、蛋白加水分解物、蛋白部分分解物、乳化剤、クエン酸塩、重合リン酸塩等のキレート剤、グルタチオン、システイン等の還元剤、アルギン酸、かんすい、色素、酸味料、香料等その他の食品添加物等)と併用し使用してもかまわない。小麦粉を用いる場合はどのような品種の小麦粉でもよく、強力粉、準強力粉、中力粉、薄力粉、デュラムセモリナ粉でもかまわない。また、米粉等の他の穀粉、澱粉(加工澱粉を含む)と混合して使用してもかまわない。
【0013】
麺類等澱粉含有食品にトランスグルコシダーゼ等α-1,4結合をα-1,6結合へと変換する糖転移活性を有する酵素及びトランスグルタミナーゼを作用させる場合、糖転移活性を有する酵素の添加量は、原料穀粉1gに対して酵素活性が1.5U以上、好ましくは1.5〜300,000U 、より好ましくは15〜150,000Uの範囲が適正である。大豆加工品に、トランスグルコシダーゼ等α-1,4結合をα-1,6結合へと変換する糖転移活性を有する酵素及びトランスグルタミナーゼを作用させる場合、糖転移活性を有する酵素の添加量は、大豆乾燥重量1gに対して酵素活性が0.15U以上、好ましくは0.15〜300,000Uの範囲が適正である。乳加工品の場合、糖転移活性を有する酵素の添加量は、無脂乳固形分1gに対して酵素活性が0.15U以上、好ましくは0.15〜300,000Uの範囲が適正である。卵加工品の場合、糖転移活性を有する酵素の添加量は、卵原料乾燥重量1gに対して酵素活性が0.15U以上、好ましくは0.15〜300,000Uの範囲が適正である。マヨネーズの場合、糖転移活性を有する酵素の添加量は、澱粉類1gに対して酵素活性が0.15U以上、好ましくは0.15〜300,000Uの範囲が適正である。尚、酵素活性については1mM α-メチル-D-グルコシド1mlに0.02M酢酸バッファー(pH5.0)1mlを加え、酵素溶液0.5ml添加して、40℃、60分間を作用させた時に、反応液2.5ml中に1μgのブドウ糖を生成する酵素量を1U(ユニット)と定義した。
【0014】
麺類等澱粉含有食品にトランスグルコシダーゼ等α-1,4結合をα-1,6結合へと変換する糖転移活性を有する酵素及びトランスグルタミナーゼを作用させる場合、トランスグルタミナーゼの添加量は、穀粉1gに対して酵素活性が0.0001U以上、好ましくは0.0001〜100U 、より好ましくは0.05〜10Uの範囲が適正である。大豆加工品の場合、トランスグルタミナーゼの添加量は、大豆乾燥重量1gに対して酵素活性が0.0001U以上、好ましくは0.0001〜100Uの範囲が適正である。乳加工品の場合、トランスグルタミナーゼの添加量は、無脂乳固形分1gに対して酵素活性が0.0001U以上、好ましくは0.0001〜100Uの範囲が適正である。卵加工品の場合、トランスグルタミナーゼの添加量は、卵原料乾燥重量1gに対して酵素活性が0.0001U以上、好ましくは0.0001〜100Uの範囲が適正である。マヨネーズの場合、トランスグルタミナーゼの添加量は、澱粉類1gに対して酵素活性が0.0001U以上、好ましくは0.0001〜100Uの範囲が適正である。尚、酵素活性についてはベンジルオキシカルボニル-L-グルタミニルグリシンとヒドロキシルアミンを基質として反応を行い、生成したヒドロキサム酸をトリクロロ酢酸存在下で鉄錯体を形成させた後525nmの吸光度を測定し、ヒドロキサム酸の量を検量線より求め活性を算出する。37℃,pH6.0で1分間に1μmolのヒドロキサム酸を生成する酵素量を1U(ユニット)と定義した。
【0015】
麺類等澱粉含有食品にトランスグルコシダーゼ等α-1,4結合をα-1,6結合へと変換する糖転移活性を有する酵素及びトランスグルタミナーゼを作用させる場合の両酵素の添加量比については、糖鎖のα-1,4結合をα-1,6結合へと変換する糖転移活性を有する酵素のユニット数が、トランスグルタミナーゼ1Uに対して0.15U〜3000000Uが好ましく、1U〜200000Uがより好ましく、90U〜7500Uがさらに好ましい。小麦粉を主原料とする麺類の場合、糖鎖のα-1,4結合をα-1,6結合へと変換する糖転移活性を有する酵素の添加量は、トランスグルタミナーゼ1U当たり1U〜200000Uが好ましく、90U〜50000Uがより好ましく、90U〜7500Uがさらに好ましい。うどんの場合、トランスグルコシダーゼ等糖鎖のα-1,4結合をα-1,6結合へと変換する糖転移活性を有する酵素の添加量は、トランスグルタミナーゼ1U当たり300U〜7500Uが特に好ましい。そば粉を含有する麺類の場合、糖鎖のα-1,4結合をα-1,6結合へと変換する糖転移活性を有する酵素の添加量は、トランスグルタミナーゼ1U当たり0.15〜7500Uが好ましく、0.5U〜800Uがより好ましい。日本そばの場合、トランスグルコシダーゼ等糖鎖のα-1,4結合をα-1,6結合へと変換する糖転移活性を有する酵素の添加量は、トランスグルタミナーゼ1U当たり90U〜800Uが特に好ましい。デュラム粉を主原料とする麺類の場合、糖鎖のα-1,4結合をα-1,6結合へと変換する糖転移活性を有する酵素の添加量は、トランスグルタミナーゼ1U当たり0.15〜200000Uが好ましい。特に、デュラム粉を主原料とするパスタの場合、トランスグルコシダーゼ等糖鎖のα-1,4結合をα-1,6結合へと変換する糖転移活性を有する酵素の添加量は、トランスグルタミナーゼ1U当たり90U〜7500Uがさらに好ましい。その他、白玉団子、みたらし団子、大福、桜餅、柏餅、蕨餅、ういろう、すあま、八つ橋等の和菓子、ピザ、食パン、フランスパン、バターロール、米粉パン、デニッシュ、ベーグル、ラスク、ドーナツ、フォカッチャ、ナン、ピタパン等のパン・ベーカリー類、豆腐、ベジタリアン向け大豆ハンバーグ、湯葉、油揚げ等の大豆加工品、ヨーグルト、ヨーグルトドリンク、ホワイトソース、
アイスクリーム、生クリーム等の乳加工品、厚焼き卵、卵焼き、目玉焼き、スクランブルエッグ、オムレツ、かに玉、茶碗蒸し、プリン、卵豆腐、カスタードクリーム等の卵加工品、マヨネーズ、マヨネーズタイプ調味料、野菜天ぷら等の澱粉含有食品の場合、トランスグルコシダーゼ等α-1,4結合をα-1,6結合へと変換する糖転移活性を有する酵素及びトランスグルタミナーゼを作用させる場合の両酵素の添加量比については、糖鎖のα-1,4結合をα-1,6結合へと変換する糖転移活性を有する酵素のユニット数が、トランスグルタミナーゼ1Uに対して0.15U〜3000000U、好ましくは1U〜200000U、より好ましくは90U〜7500Uの範囲が適正である。
【0016】
各酵素の反応時間は、酵素が基質物質に作用することが可能な時間であれば特に構わなく、非常に短い時間でも逆に長時間作用させても構わないが、現実的な作用時間としては5分〜24時間が好ましい。また、反応温度に関しても酵素が活性を保つ範囲であればどの温度であっても構わないが、現実的な温度としては0〜80℃で作用させることが好ましい。すなわち、通常の食品製造工程を経ることで十分な反応時間が得られる。
【0017】
トランスグルコシダーゼ及びトランスグルタミナーゼにデキストリン、澱粉、加工澱粉等の賦形剤、畜肉エキス等の調味料、植物蛋白、グルテン、卵白、ゼラチン、カゼイン等の蛋白質、蛋白加水分解物、蛋白部分分解物、乳化剤、クエン酸塩、重合リン酸塩等のキレート剤、グルタチオン、システイン等の還元剤、アルギン酸、かんすい、色素、酸味料、香料等その他の食品添加物等を混合することにより、麺類等澱粉含有食品改質用の酵素製剤を得ることができる。本発明の酵素製剤は液体状、ペースト状、顆粒状、粉末状のいずれの形態でも構わない。また、酵素製剤における各酵素の配合量は0%より多く、100%より少ないが、トランスグルコシダーゼの配合量はトランスグルタミナーゼ1U当たり0.15U〜3000000Uが好ましく、1U〜200000Uがより好ましく、90U〜50000Uがさらに好ましい。小麦粉を主原料とする麺類の製造に用いられる酵素製剤の場合、トランスグルコシダーゼの配合量はトランスグルタミナーゼ1U当たり1U〜200000Uが好ましく、90U〜50000Uがより好ましく、90U〜7500Uがさらに好ましい。うどん用の酵素製剤の場合、トランスグルコシダーゼの配合量はトランスグルタミナーゼ1U当たり300U〜7500Uが特に好ましい。そば粉を含有する麺類の製造に用いられる酵素製剤の場合、トランスグルコシダーゼの配合量はトランスグルタミナーゼ1U当たり0.15U〜3000000Uが好ましく、1U〜200000Uがより好ましく、90U〜7500Uがさらに好ましい。日本そば用の酵素製剤の場合、トランスグルコシダーゼの配合量はトランスグルタミナーゼ1U当たり90U〜800Uが特に好ましい。デュラム粉を主原料とする麺類の製造に用いられる酵素製剤の場合、トランスグルコシダーゼの配合量はトランスグルタミナーゼ1U当たり1U〜200000Uが好ましい。デュラム粉を主原料とするパスタ用の酵素製剤の場合、トランスグルコシダーゼの配合量はトランスグルタミナーゼ1U当たり90U〜7500Uが特に好ましい。その他、白玉団子、みたらし団子、大福、桜餅、柏餅、蕨餅、ういろう、すあま、八つ橋等の和菓子、ピザ、食パン、フランスパン、バターロール、米粉パン、デニッシュ、ベーグル、ラスク、ドーナツ、フォカッチャ、ナン、ピタパン等のパン・ベーカリー類、豆腐、ベジタリアン向け大豆ハンバーグ、湯葉、油揚げ等の大豆加工品、ヨーグルト、ヨーグルトドリンク、ホワイトソース、アイスクリーム、生クリーム等の乳加工品、厚焼き卵、卵焼き、目玉焼き、スクランブルエッグ、オムレツ、かに玉、茶碗蒸し、プリン、卵豆腐、カスタードクリーム等の卵加工品、マヨネーズ、マヨネーズタイプ調味料、野菜天ぷら等の澱粉含有食品の製造に用いられる酵素製剤の場合、トランスグルコシダーゼ及びトランスグルタミナーゼの配合比は、トランスグルタミナーゼ1Uに対してトランスグルコシダーゼが0.15U〜3000000U、好ましくは1U〜200000U、より好ましくは90U〜7500Uの範囲が適正である。
【0018】
以下に実施例を挙げ、本発明をさらに詳しく説明する。本発明は、この実施例により何ら限定されない。
【実施例1】
【0019】
市水35gに、「トランスグルコシダーゼL」(天野エンザイム社製)(以下TGL)、トランスグルタミナーゼ製剤である「STG-Mコシキープ」(味の素社製)(以下TG)を添加し溶解させた。試験区分は、酵素を添加しないコントロール区分、TGLのみを添加した区分、TGのみを添加した区分、TGLとTGを共に添加した区分の4試験区とした。デュラム粉「DF」(日清製粉社製)100gを混練機(HOBART社製)にて混合しながら、上記酵素溶液を添加し、混練機設定のスピード1にて3分間、同スピード2にて7分間混練した。その後、恒温恒湿槽「LH21-12P」(ナガノ科学機械製作所社製)を用いて55℃、湿度85%にて2時間寝かせ、パスタマシン「R.M.」(IMPERIA社製)を用いてバラ掛け、複合、圧延、切り出しを行った。圧延はパスタマシン設定の厚さ5、切り出しは裁断幅2mmのパスタマシン付属のカッター「R.220」(IMPERIA社製)にて行った。酵素使用量は、TGLを原料小麦粉1gあたり5000U、上記TGを原料小麦粉に対して0.5%(原料小麦粉1gあたり0.1U)とした。製麺された生麺を、恒温恒湿槽を用いて40℃、湿度90%で30分の乾燥後、18時間後に湿度65%となる勾配設定にて乾燥させ、乾麺を製造した。乾麺を沸騰水にて10分間ゆでた後、氷水にて1分間冷却し、水切りをして保存容器に入れた。冷蔵庫で1日保存した後、常温のコンソメスープを添加して官能評価を行った。官能評価は、硬さ、ねばり(ボソボソ感と対義)に関して、コントロール区分を5点として、0点から10点までの11段階の評点法にて、評価人数8人で行い、平均値を算出した。結果を図1,2に示した。
【0020】
図1に示す通り、TGL処理をすることでやや硬くなり、TG処理をすること非常に硬くなったが、TGLとTGを併用処理することにより更に硬く歯応えのあるパスタとなった。また、図2に示す通り、TGL処理によりねばりが増加する一方TG処理ではねばりが低下したが、TGLとTGを併用処理することにより歯応えとねばりのある好ましい食感となった。以上より、TGLとTGを併用処理することにより、それぞれの酵素の単独の使用では実現の難しかった、硬く歯応えがあり、かつねばりのある食感のパスタが製造可能であることが明らかとなった。
【実施例2】
【0021】
市水400gに食塩30gを加えた20℃の食塩水に、TGL、TGを添加し溶解させた。試験区分は、酵素を添加しないコントロール区分、TGLのみを添加した区分、TGのみを添加した区分、TGLとTGを共に添加した区分の4試験区とした。中力粉「雀」(日清製粉社製)1kgに上記酵素溶液を加えながら3分間手混合し、混練機「TVM03-0028」(トーメン社製)にて10分間(95rpm;4分、75rpm;6分)混合した。混合後、バラ掛け、複合、圧延し、40℃にて1時間寝かせた後に#12の切り刃を用いて切り出しを行った。製造した生麺を沸騰水にて7分間ゆでた後、−40℃で冷凍して、冷凍うどんを製造した。TGLを原料小麦粉1gあたり5000U、上記TGを原料小麦粉に対して0.5%(原料小麦粉1gあたり0.1U)とした。冷凍うどんは、沸騰水にて1分間ゆでた後、官能評価を行った。官能評価は、硬さ、弾力に関して、コントロール区分を3点として、1点から5点までの評点法にて評価人数4人で行った。結果を図3,4に示す。
【0022】
図3に示す通り、TGL処理による硬さへの影響はパスタとは異なり非常に小さい一方、TG処理では非常に硬くなったが、TGLとTGを併用処理することにより更に硬く歯応えのあるうどんとなった。また、図4に示す通り、TGL処理およびTG処理による弾力への影響はほとんどないものの、TGLとTGを併用処理することにより弾力のある食感となった。以上のように、TGLとTGを併用処理することにより、硬く歯応えがあり、かつ弾力のある食感のうどんが製造可能であることが明らかとなった。
【実施例3】
【0023】
中力粉「雀」(日清製粉社製)750g、加工澱粉「あじさい」(松谷化学工業社製)250g、小麦グルテン「AグルG」(グリコ栄養食品社製)20gに、TGL、TGを添加し100rpmで混練機「2kg真空捏機」(大竹麺機社製)にて1分混合した。試験区分は、酵素を添加しないコントロール区分、TGLのみを添加した区分、TGのみを添加した区分、TGLとTGを5通りの割合で共に添加した区分の8試験区とした。それぞれの酵素添加量は、表1に示す通りである。表1中の穀粉は中力粉であり、加工澱粉は含まれない。市水410gに食塩30gを加えた5℃の食塩水を、上記混合原料に全量加えて、混練機にて5分間(100rpm;2分、50rpm;3分)混練した。混練後、製麺機「小型粗麺帯機・小型連続圧延機」(トム社製)にてバラ掛け、複合、圧延し、室温にて1時間寝かせた後に#10の切り刃を用いて切り出しを行った。切り出した麺線は直ちに凍結し、冷凍生うどんとした。冷凍生うどんは、沸騰水にて15分間ゆでた後6時間冷蔵保存し、官能評価を行った。官能評価は、硬さ、弾力、粘り、中芯感、総合評価に関して、コントロール区分を3点とし、0点から5点までの評点法にて評価人数6人で行った。結果を図5に示す。また、TGLのみを添加した区分およびTGのみを添加した区分の結果をもとに、各併用添加区分の理論上の評点を算出した。例えば、併用(2)の粘りの理論値の場合、TGのみ0.134U/g添加時の粘りの評点が「−0.2」であり、併用(2)ではTGを0.094U/g使用している為「−0.2×0.094/0.134=−0.14」、一方TGLのみ108.3U/g添加時の粘りの評点が「1.4」であり、併用(2)ではTGLを32.5U/g使用している為「1.4×32.5/108.3=0.42」、これらを合計すると「−0.14+0.42=0.28」と算出される。よって「0.28」が併用(2)の粘りの理論値である。このように算出した値を用いて、理論値と実際の評点の差を求めた(図6)。この値がゼロであれば理論値通りの効果、すなわち相加効果であり、ゼロより大きければ理論値より大きな効果、すなわち相乗効果が出ていることを意味する。
【0024】
【表1】
【0025】
図5に示す通り、TGLの添加割合が増えるに従い粘りが付与され、TGの添加割合が増えるに従い硬さが付与された。弾力および中芯感においては、両酵素をある一定の割合で作用させた際に、特に大きな効果が得られることが明らかとなった。総合評価においても同様の傾向が見られた。また、図6に示す通り、全ての併用試験区において食感について相乗効果があることが見出された。総合評価においても、併用(1)よりもTGL添加量の多い全範囲において相乗効果が得られ、併用(2)と併用(5)に挟まれる範囲において特に顕著な効果であることが明らかとなった。
【実施例4】
【0026】
そば粉「平和」(北東製粉社製)500g、強力粉「青鶏」(日清製粉社製)500gに、TGL、TGを添加し100rpmで混練機「2kg真空捏機」(大竹麺機社製)にて1分混合した。試験区分は、酵素を添加しないコントロール区分、TGLのみを添加した区分、TGのみを添加した区分、TGLとTGを5通りの割合で共に添加した区分の8試験区とした。それぞれの酵素添加量は、表2に示す通りである。表2中の穀粉はそば粉と強力粉の合算である。市水350gに食塩15gを加えた5℃の食塩水を、上記混合原料に全量加えて、混練機にて5分間(100rpm;2分、50rpm;3分)混練した。混練後、製麺機「小型粗麺帯機・小型連続圧延機」(トム社製)にてバラ掛け、複合、圧延し、#18の切り刃を用いて切り出しを行った。切り出した麺線は直ちに凍結し、冷凍生日本そばとした。冷凍生日本そばは、沸騰水にて2.5分間ゆでた後24時間冷蔵保存し、官能評価を行った。官能評価は、硬さ、弾力、粘り、中芯感、歯切れ、総合評価に関して、コントロール区分を0点とし、−2点から2点までの評点法にて評価人数6人で行った。結果を図7に示す。また、TGLのみを添加した区分およびTGのみを添加した区分の結果をもとに、各併用添加区分の理論上の評点を算出した。算出方法は実施例3と同様とし、算出した値を用いて理論値と実際の評点の差を求めた(図8)。この値がゼロであれば理論値通りの効果、すなわち相加効果であり、ゼロより大きければ理論値より大きな効果、すなわち相乗効果が出ていることを意味する。
【0027】
【表2】
【0028】
図7に示す通り、TGLの添加割合が増えるに従い粘りが付与され、TGの添加割合が増えるに従い硬さと歯切れが付与された。総合評価においては、両酵素をある一定の割合で作用させた際に特に大きな効果が得られることが明らかとなった。また、図8に示す通り、全ての併用試験区において食感について相乗効果があることが見出された。総合評価においては、併用(4)および(5)ではわずかな相乗効果であったが、それよりもTG添加量の多い全範囲において顕著な相乗効果が得られ、併用(1)と併用(3)に挟まれる範囲において特に顕著な効果であることが明らかとなった。
【実施例5】
【0029】
デュラム粉「DF」(日清製粉社製)2kgに、TGL、TGを添加し十分に混合した。試験区分は、酵素を添加しないコントロール区分、TGLのみを添加した区分、TGのみを添加した区分、TGLとTGを5通りの割合で共に添加した区分の8試験区とした。それぞれの酵素添加量は、表2に示す通りである。上記混合原料に市水540gを加え、混練機「真空ミキサーVU-2」(尾久葉鐵工所社製)にて15分間(混練機設定の速度100)混練した。混練後、パスタマシン「真空押出機FPV-2」(ニップンエンジニアリング社製)にて、1.8mmのロングパスタ用ダイスを用いて押し出し製麺を行った。押し出した麺線は、乾燥機「恒温恒湿槽LH21-13P」(ナガノ科学機械製作所社製)にて乾燥し、乾パスタとした。乾パスタは、沸騰水にて9.5分間ゆでた後官能評価を行った。これをゆで直後の評価とした。また、同様に9.5分間ゆでた後24時間冷蔵保存し、30秒間レンジアップして官能評価を行った。これを保存後の評価とした。官能評価は、硬さ、弾力、粘り、中芯感、歯切れ、総合評価に関して、コントロール区分を0点とし、−2点から2点までの評点法にて評価人数7人で行った。結果を図9および図11に示す。また、TGLのみを添加した区分およびTGのみを添加した区分の結果をもとに、各併用添加区分の理論上の評点を算出した。算出方法は実施例3と同様とし、算出した値を用いて理論値と実際の評点の差を求めた(図10、図12)。この値がゼロであれば理論値通りの効果、すなわち相加効果であり、ゼロより大きければ理論値より大きな効果、すなわち相乗効果が出ていることを意味する。
【0030】
ゆで直後の評価結果である図9に示す通り、TGLの添加割合が増えるに従い粘りが付与され、TGの添加割合が増えるに従い硬さと歯切れが付与された。弾力および中芯感においては、両酵素をある一定の割合で作用させた際に、特に大きな効果が得られることが明らかとなった。総合評価においても同様の傾向が見られた。また、保存後の評価においても同様であった(図11)。更に、図10、図12に示す通り、ゆで直後および保存後の全ての併用試験区において、食感について相乗効果があることが見出された。中でも総合評価においては、併用(1)から併用(5)の全ての試験区にて顕著な相乗効果が確認された。
【実施例6】
【0031】
中力粉「白椿」(日清製粉社製)1kg、クチナシ黄色素「イエローカラーTH-G」(長谷川香料社製)1gに、TGL、TGを添加し100rpmで混練機「2kg真空捏機」(大竹麺機社製)にて1分混合した。試験区分は、酵素を添加しないコントロール区分、TGLのみを添加した区分、TGのみを添加した区分、TGLとTGを5通りの割合で共に添加した区分の8試験区とした。それぞれの酵素添加量は、表2に示す通りである。市水420gに食塩5g、かんすい「粉末かんすいX」(日本コロイド社製)10gを加えた5℃の溶液を、上記混合原料に全量加えて、混練機にて3.5分間(100rpm;2分、50rpm;1.5分)混練した。混練後、製麺機「小型粗麺帯機・小型連続圧延機」(トム社製)にてバラ掛け、複合、圧延し、#18の切り刃を用いて切り出しを行った。切り出した麺線は直ちに凍結し、冷凍生中華麺とした。冷凍生中華麺は、沸騰水にて2.5分間ゆでた後、官能評価を行った。官能評価は、硬さ、弾力、粘り、中芯感、総合評価に関して、コントロール区分を0点とし、−2点から2点までの評点法にて評価人数4人で行った。結果を図13に示す。また、TGLのみを添加した区分およびTGのみを添加した区分の結果をもとに、各併用添加区分の理論上の評点を算出した。算出方法は実施例3と同様とし、算出した値を用いて理論値と実際の評点の差を求めた(図14)。この値がゼロであれば理論値通りの効果、すなわち相加効果であり、ゼロより大きければ理論値より大きな効果、すなわち相乗効果が出ていることを意味する。
【0032】
図13に示す通り、TGLの添加割合が増えるに従い粘りが付与され、TGの添加割合が増えるに従い硬さが付与された。総合評価においては、両酵素をある一定の割合で作用させた際に特に大きな効果が得られることが明らかとなった。また、図14に示す通り、全ての併用試験区において何らかの項目について食感の相乗効果があることが見出された。総合評価においても、全ての併用試験区において相乗効果が認められ、併用(3)と併用(5)に挟まれる範囲において特に顕著な効果であることが明らかとなった。
【実施例7】
【0033】
実施例6にて得られた冷凍生中華麺を、サンプルとして用いた。冷凍生中華麺は、熱水中にて軽くほぐした後、蒸し器にて7分間蒸した。冷却した後、やきそば用ソース15gと共にフライパンにて30秒間焼き、官能評価を行った。官能評価は、硬さ、弾力、粘り、中芯感、総合評価に関して、コントロール区分を0点とし、−2点から2点までの評点法にて評価人数4人で行った。結果を図15に示す。また、TGLのみを添加した区分およびTGのみを添加した区分の結果をもとに、各併用添加区分の理論上の評点を算出した。算出方法は実施例3と同様とし、算出した値を用いて理論値と実際の評点の差を求めた(図16)。この値がゼロであれば理論値通りの効果、すなわち相加効果であり、ゼロより大きければ理論値より大きな効果、すなわち相乗効果が出ていることを意味する。
【0034】
図15に示す通り、TGLの添加割合が増えるに従い粘りが付与され、TGの添加割合が増えるに従い硬さが付与された。総合評価においては、両酵素をある一定の割合で作用させた際に特に大きな効果が得られることが明らかとなった。また、図16に示す通り、全ての併用試験区において何らかの項目について食感の相乗効果があることが見出された。総合評価においては、併用 (5)ではわずかな相乗効果であったが、それよりもTG添加量の多い全範囲において顕著な相乗効果が得られ、併用(1)と併用(3)に挟まれる範囲において特に顕著な効果であることが明らかとなった。
【実施例8】
【0035】
準強力粉「特ナンバーワン」(日清製粉社製)850g、加工澱粉「松谷桜」(松谷化学工業社製)150gを混練機「真空ミキサーVU-2」(尾久葉鐵工所社製)にて2分間(90rpm)予備混合した。市水200gに食塩15g、かんすい「粉末かんすいX」(日本コロイド社製)2g、チキンエキス「アジエキス」チキンL-1(味の素社製)を加えた溶液、および市水130gに酵素を溶解した溶液を、上記混合原料に全量加え、上記混練機にて15分間(90rpm;1分、45rpm;14分)混練した。試験区分は、酵素を添加しないコントロール区分、TGLのみを添加した区分、TGのみを添加した区分、TGLとTGを3通りの割合で共に添加した区分の6試験区とした。それぞれの酵素添加量は、表3に示す通りである。表3中の穀粉は準強力粉であり、加工澱粉は含まれない。混練後、製麺機(富士製作所社製)にてバラ掛け、複合、圧延し、厚さ1mmの生地を得た。10分間静置した後、#16の切り刃を用いて切り出し、蒸し機(富士製作所社製)にて95〜98℃で3分間蒸した。型枠取りをした後、フライヤー「コンパクトオートフライヤーKCAF-187EL-T」(北沢産業社製)にて145℃で75秒間フライし、フライ麺を得た。得られたフライ麺は、熱湯にて4.5分間湯戻しし、湯切りした後に官能評価を行った。官能評価は、硬さ、弾力、粘り、中芯感、総合評価に関して、コントロール区分を0点とし、−2点から2点までの評点法にて評価人数4人で行った。結果を図17に示す。また、TGLのみを添加した区分およびTGのみを添加した区分の結果をもとに、各併用添加区分の理論上の評点を算出した。算出方法は実施例3と同様とし、算出した値を用いて理論値と実際の評点の差を求めた(図18)。この値がゼロであれば理論値通りの効果、すなわち相加効果であり、ゼロより大きければ理論値より大きな効果、すなわち相乗効果が出ていることを意味する。
【0036】
【表3】
【0037】
図17に示す通り、TGLの添加割合が増えるに従い粘りが付与され、TGの添加割合が増えるに従い硬さが付与された。総合評価においては、両酵素をある一定の割合で作用させた際に特に大きな効果が得られることが明らかとなった。また、図18に示す通り、全ての併用試験区において何らかの項目について食感の相乗効果があることが見出された。総合評価においても、全ての併用試験区において相乗効果が認められ、併用(2)を中心に特に顕著な効果が見られた。
【実施例9】
【0038】
表4に示す配合に従い、小麦粉を混練機(HOBART社製)にて混合しながら、酵素および食塩を溶解した水を添加した。表4中の穀粉は薄力粉と強力粉の合算である。試験区分は、酵素を添加しないコントロール区分、TGのみを添加した区分、TGLのみを添加した区分、TGとTGLを共に添加した併用区分の4試験区とした。尚、併用区におけるTG1ユニット当たりのTGL量はおよそ800ユニットである。上記混練機にて、混練機設定のスピード1にて3分間、同スピード2にて7分間混練した。15℃にて1時間寝かせた後、パスタマシン「R.M.」(IMPERIA社製)を用いてバラ掛け、複合、圧延を行い、厚さ1mmの生地を得た。生地は、直径89mmの円形に型抜きし、生麺帯を得た。生麺帯は、沸騰水にて4分間ゆで、氷水にて1分間冷却し、冷蔵にて1日間保存した後に官能評価を行った。官能評価は、硬さ、弾力、しなやかさ、総合評価に関して、コントロール区分を0点とし、−2点から2点までの評点法にて評価人数3人で行った。結果を図19に示す。また、TGLのみを添加した区分およびTGのみを添加した区分の結果をもとに、併用添加区分の理論上の評点を算出した。算出方法は実施例3と同様とし、算出した値を用いて理論値と実際の評点の差を求めた(図20)。この値がゼロであれば理論値通りの効果、すなわち相加効果であり、ゼロより大きければ理論値より大きな効果、すなわち相乗効果が出ていることを意味する。
【0039】
【表4】
【0040】
図19に示す通り、TGにより弾力が付与されるものの生地の硬化やしなやかさの低下が見られ、TGLにより弾力やしなやかさが付与された。一方、両酵素を併用することで、生地の硬化が適度に抑制され、弾力、しなやかさの付与された好ましい食感となった。また、図20に示す通り、弾力およびしなやかさにおいて相乗効果があることが見出され、総合評価においても相乗的に好ましい効果が得られることが確認された。以上より、穀粉を原料とする麺帯の製造において、TGもしくはTGL単独ではなく、両酵素を併用することにより、より好ましい食感の麺帯が得られ、食感の改質において相乗効果が得られることが示された。
【実施例10】
【0041】
表5に示す配合に従い薄力粉に水を混合し、酵素を添加して室温で2時間攪拌し、バッター液を得た。試験区分は、酵素を添加しないコントロール区分、TGのみを添加した区分、TGLのみを添加した区分、TGとTGLを共に添加した併用区分の4試験区とした。尚、併用区におけるTG1ユニット当たりのTGL量はおよそ800ユニットである。1cm幅の輪切りにしたさつまいもをバッター液に漬け、フライヤーにて170℃で3分間フライし、さつまいもの天ぷらを得た。天ぷらは、冷凍(−20℃)にて1週間保存し、自然解凍した後にレンジアップをして官能評価を行った。官能評価は、硬さ、ボソつき抑制効果、総合評価に関して、コントロール区分を0点とし、−3点から3点までの評点法にて評価人数3人で行った。結果を図21に示す。また、TGLのみを添加した区分およびTGのみを添加した区分の結果をもとに、併用添加区分の理論上の評点を算出した。算出方法は実施例3と同様とし、算出した値を用いて理論値と実際の評点の差を求めた(図22)。この値がゼロであれば理論値通りの効果、すなわち相加効果であり、ゼロより大きければ理論値より大きな効果、すなわち相乗効果が出ていることを意味する。
【0042】
【表5】
【0043】
図21に示す通り、TGにより硬さが付与されるものの衣がボソつく傾向が見られ、TGLによりボソつき抑制効果が見られた。一方、両酵素を併用することで、硬さを維持し、ボソ付きが抑制された好ましい食感となった。また、図22に示す通り、全ての評価項目において相乗効果があることが見出され、総合評価においても相乗的に好ましい効果が得られることが確認された。以上より、穀粉を原料とするバッターを用いたフライ食品の製造において、TGもしくはTGL単独ではなく、両酵素を併用することにより、より好ましい食感のフライ食品が得られ、食感の改質において相乗効果が得られることが示された。
【実施例11】
【0044】
表6に示す配合に従い、白玉粉に水、酵素を添加して、混練機(HOBART社製)にて混練機設定のスピード1で4分間混練した。表6中の穀粉は白玉粉である。試験区分は、酵素を添加しないコントロール区分、TGのみを添加した区分、TGLのみを添加した区分、TGとTGLを共に添加した併用区分の4試験区とした。尚、併用区におけるTG1ユニット当たりのTGL量はおよそ800ユニットである。混練した生地を12gの団子状に成型し、室温で1時間寝かせた後、沸騰水にて3.5分間ボイルして白玉団子を得た。白玉団子は冷凍(−20℃)にて1週間保存し、自然解凍して官能評価を行った。官能評価は、硬さ、弾力、もちもち感、総合評価に関して、コントロール区分を0点とし、−3点から3点までの評点法にて評価人数4人で行った。結果を図23に示す。また、TGLのみを添加した区分およびTGのみを添加した区分の結果をもとに、併用添加区分の理論上の評点を算出した。算出方法は実施例3と同様とし、算出した値を用いて理論値と実際の評点の差を求めた(図24)。この値がゼロであれば理論値通りの効果、すなわち相加効果であり、ゼロより大きければ理論値より大きな効果、すなわち相乗効果が出ていることを意味する。
【0045】
【表6】
【0046】
図23に示す通り、TGにより硬さや弾力が付与され、TGLによりもちもち感が付与されるものの硬さが低下した。一方、両酵素を併用することで、硬さ、弾力、もちもち感の付与された好ましい食感となった。また、図24に示す通り、全ての評価項目において相乗効果があることが見出され、総合評価においても相乗的に好ましい効果が得られることが確認された。以上より、穀粉を原料とする和菓子の製造において、TGもしくはTGL単独ではなく、両酵素を併用することにより、より好ましい食感の和菓子が得られ、食感の改質において相乗効果が得られることが示された。
【実施例12】
【0047】
表7に示す配合に従い、強力粉に砂糖、食塩、ドライイースト、ショートニング、水および酵素を添加して、3分間手混合し、常温にて30分間静置し発酵した。試験区分は、酵素を添加しないコントロール区分、TGのみを添加した区分、TGLのみを添加した区分、TGとTGLを共に添加した併用区分の4試験区とした。尚、併用区におけるTG1ユニット当たりのTGL量はおよそ800ユニットである。生地を105gに分割し、直径16cmのピザ生地に成型してピケした後、オーブンにて250℃で5分間焼成した。トマトソース15gおよびチーズ30gをトッピングし、冷凍(−20℃)にて1週間保存した。冷凍ピザは、オーブンにて250℃で6分間焼成し、官能評価を行った。官能評価は、硬さ、弾力、もちもち感、総合評価に関して、コントロール区分を0点とし、−2点から2点までの評点法にて評価人数4人で行った。結果を図25に示す。また、TGLのみを添加した区分およびTGのみを添加した区分の結果をもとに、併用添加区分の理論上の評点を算出した。算出方法は実施例3と同様とし、算出した値を用いて理論値と実際の評点の差を求めた(図26)。この値がゼロであれば理論値通りの効果、すなわち相加効果であり、ゼロより大きければ理論値より大きな効果、すなわち相乗効果が出ていることを意味する。
【0048】
【表7】
【0049】
図25に示す通り、TGにより硬さや弾力が付与されるもののもちもち感が低下し、TGLにより弾力やもちもち感が付与されるものの硬さがやや低下した。一方、両酵素を併用することで、適度な硬さを有し、弾力、もちもち感の付与された好ましい食感となった。また、図26に示す通り、弾力、もちもち感において相乗効果があることが見出され、総合評価においても相乗的に好ましい効果が得られることが確認された。以上より、穀粉を原料とする発酵食品の製造において、TGもしくはTGL単独ではなく、両酵素を併用することにより、より好ましい食感の穀粉発酵食品が得られ、食感の改質において相乗効果が得られることが示された。
【実施例13】
【0050】
表8に示す配合に従い、豆乳および加工澱粉を混合し、酵素を添加した。使用した豆乳のBrixは14%であり、この値が豆乳中の固形分値と同等であると定義した。すなわち、ここで用いた豆乳の固形分は14%である。試験区分は、酵素を添加しないコントロール区分、TGのみを添加した区分、TGLのみを添加した区分、TGとTGLを共に添加した併用区分の4試験区とした。尚、併用区におけるTG1ユニット当たりのTGL量はおよそ800ユニットである。上記混合液およびにがりを豆腐用のパックに充填し、寄せを行った後シーラー「卓上型パック手動包装機FK-105」(藤村工業社製)にてシールした。常温にて1時間、65℃にて1時間の熟成を行った後、95℃の熱水で40分間加熱した。冷却した後、1辺が1.5cmの立方体にカットし、−40℃にて冷凍して冷凍豆腐を得た。冷凍豆腐は、自然解凍した後に官能評価を行った。官能評価は、硬さ、弾力、なめらかさに関して、コントロール区分を0点とし、−3点から3点までの評点法にて評価人数3人で行った。結果を図27に示す。また、TGLのみを添加した区分およびTGのみを添加した区分の結果をもとに、併用添加区分の理論上の評点を算出した。算出方法は実施例3と同様とし、算出した値を用いて理論値と実際の評点の差を求めた(図28)。この値がゼロであれば理論値通りの効果、すなわち相加効果であり、ゼロより大きければ理論値より大きな効果、すなわち相乗効果が出ていることを意味する。
【0051】
【表8】
【0052】
図27に示す通り、TGにより硬さや弾力が付与されるもののなめらかさが低下し、TGLによりなめらかさが付与されるものの硬さや弾力が低下した。一方、両酵素を併用することで、硬さ、弾力、なめらかさの付与された好ましい食感となった。また、図28に示す通り、全ての評価項目において相乗効果があることが見出された。以上より、豆類を原料とする加工食品の製造において、TGもしくはTGL単独ではなく、両酵素を併用することにより、より好ましい食感の豆類加工食品が得られ、食感の改質において相乗効果が得られることが示された。
【実施例14】
【0053】
表9に示す配合に従い、牛乳、脱脂粉乳、水、加工澱粉を混合した。混合液に酵素を添加し、スターラーにて5℃で24時間攪拌した。試験区分は、酵素を添加しないコントロール区分、TGのみを添加した区分、TGLのみを添加した区分、TGとTGLを共に添加した併用区分の4試験区とした。尚、併用区におけるTG1ユニット当たりのTGL量はおよそ800ユニットである。続いて、90℃の熱湯にて5分間殺菌し、40℃程度にまで冷却した後、スターターを添加して混合した。混合液をプラスチックカップに充填し、pH4.5になるまで38℃にて発酵させてハードタイプヨーグルトを得た。5℃にて24時間保存した後、官能評価を行った。官能評価は、硬さ、濃厚感、持続性に関して、コントロール区分を0点とし、−3点から3点までの評点法にて評価人数3人で行った。結果を図29に示す。また、TGLのみを添加した区分およびTGのみを添加した区分の結果をもとに、併用添加区分の理論上の評点を算出した。算出方法は実施例3と同様とし、算出した値を用いて理論値と実際の評点の差を求めた(図30)。この値がゼロであれば理論値通りの効果、すなわち相加効果であり、ゼロより大きければ理論値より大きな効果、すなわち相乗効果が出ていることを意味する。
【0054】
【表9】
【0055】
図29に示す通り、TGにより硬さが主に付与され、TGLにより濃厚感が主に付与された。一方、両酵素を併用することで、硬さ、濃厚感、持続性の付与された好ましい食感となった。また、図30に示す通り、全ての評価項目において相乗効果があることが見出された。以上より、乳を原料とする加工食品の製造において、TGもしくはTGL単独ではなく、両酵素を併用することにより、より好ましい食感の乳加工品が得られ、食感の改質において相乗効果が得られることが示された。
【実施例15】
【0056】
表10に示す配合に従い、酵素を含む全原料を混合し、室温にて1時間静置した。試験区分は、酵素を添加しないコントロール区分、TGのみを添加した区分、TGLのみを添加した区分、TGとTGLを共に添加した併用区分の4試験区とした。尚、併用区におけるTG1ユニット当たりのTGL量はおよそ800ユニットである。卵焼き用角型フライパンに油「サラダ油」(味の素社製)を添加して弱火で2分間熱した後、原料全量を投入し、攪拌しながら弱火で3.5分間加熱し、手前半分に寄せた後に更に弱火で4.5分間加熱した。裏返した後、弱火で3分間加熱し、厚焼き卵を得た。厚焼き卵は、カットしてパウチに入れ、冷凍(−20℃)にて1週間保存した後、自然解凍して官能評価を行った。官能評価は、弾力、ソフト感、しなやかさ、総合評価に関して、コントロール区分を0点とし、−3点から3点までの評点法にて評価人数3人で行った。結果を図31に示す。また、TGLのみを添加した区分およびTGのみを添加した区分の結果をもとに、併用添加区分の理論上の評点を算出した。算出方法は実施例3と同様とし、算出した値を用いて理論値と実際の評点の差を求めた(図32)。この値がゼロであれば理論値通りの効果、すなわち相加効果であり、ゼロより大きければ理論値より大きな効果、すなわち相乗効果が出ていることを意味する。
【0057】
【表10】
【0058】
図31に示す通り、TGにより弾力が付与されるもののソフト感やしなやかさが低下し、TGLによりソフト感やしなやかさが付与された。一方、両酵素を併用することで、弾力、ソフト感、しなやかさの付与された好ましい食感となった。また、図32に示す通り、全ての評価項目において相乗効果があることが見出され、総合評価においても相乗的に好ましい効果が得られることが確認された。以上より、卵を原料とする加工食品の製造において、TGもしくはTGL単独ではなく、両酵素を併用することにより、より好ましい食感の卵加工食品が得られ、食感の改質において相乗効果が得られることが示された。
【実施例16】
【0059】
表11に示す配合に従い、コーンスターチと水を混合し、90℃にて2分間加熱してペースト状に糊化させた。糊化澱粉に全卵、酵素を入れて攪拌した後、食酢、砂糖、食塩を添加して攪拌した。試験区分は、酵素を添加しないコントロール区分、TGのみを添加した区分、TGLのみを添加した区分、TGとTGLを共に添加した併用区分の4試験区とした。尚、併用区におけるTG1ユニット当たりのTGL量はおよそ800ユニットである。そこへサラダ油を投入し、ハンドミキサー「bamix Gastro 200」(ESGE社製)にて5分間乳化し、更に1分間全体を攪拌し、マヨネーズタイプ調味料を得た。冷蔵にて24時間保存後、官能評価を行った。官能評価は、硬さ、なめらかさ、持続性に関して、コントロール区分を0点とし、−3点から3点までの評点法にて評価人数3人で行った。結果を図33に示す。また、TGLのみを添加した区分およびTGのみを添加した区分の結果をもとに、併用添加区分の理論上の評点を算出した。算出方法は実施例3と同様とし、算出した値を用いて理論値と実際の評点の差を求めた(図34)。この値がゼロであれば理論値通りの効果、すなわち相加効果であり、ゼロより大きければ理論値より大きな効果、すなわち相乗効果が出ていることを意味する。
【0060】
【表11】
【0061】
図33に示す通り、TGにより硬さや持続性が付与されるもののなめらかさが低下し、TGLによりなめらかさが付与されるものの硬さや持続性が低下した。一方、両酵素を併用することで、硬さ、なめらかさ、持続性の付与された好ましい食感となった。また、図34に示す通り、全ての評価項目において相乗効果があることが見出された。以上より、澱粉類を含有する汎用基本調味料の製造において、TGもしくはTGL単独ではなく、両酵素を併用することにより、より好ましい食感の基本調味料が得られ、食感の改質において相乗効果が得られることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明によると、麺類等の澱粉含有食品の品質を向上できるので、食品分野において極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】パスタの硬さについての官能評価結果である。(実施例1)
【図2】パスタのねばりについての官能評価結果である。(実施例1)
【図3】うどんの硬さについての官能評価結果である。(実施例2)
【図4】うどんの弾力についての官能評価結果である。(実施例2)
【図5】うどんの硬さ、弾力、粘り、中芯感、総合評価についての官能評価結果である。(実施例3)
【図6】うどんの硬さ、弾力、粘り、中芯感、総合評価における、相乗効果についての結果である。(実施例3)
【図7】日本そばの硬さ、弾力、粘り、中芯感、歯切れ、総合評価についての官能評価結果である。(実施例4)
【図8】日本そばの硬さ、弾力、粘り、中芯感、歯切れ、総合評価における、相乗効果についての結果である。(実施例4)
【図9】ゆで直後のパスタの硬さ、弾力、粘り、中芯感、歯切れ、総合評価についての官能評価結果である。(実施例5)
【図10】ゆで直後のパスタの硬さ、弾力、粘り、中芯感、歯切れ、総合評価における、相乗効果についての結果である。(実施例5)
【図11】冷蔵保存後のパスタの硬さ、弾力、粘り、中芯感、歯切れ、総合評価についての官能評価結果である。(実施例5)
【図12】冷蔵保存後のパスタの硬さ、弾力、粘り、中芯感、歯切れ、総合評価における、相乗効果についての結果である。(実施例5)
【図13】冷やし中華の硬さ、弾力、粘り、中芯感、総合評価についての官能評価結果である。(実施例6)
【図14】冷やし中華の硬さ、弾力、粘り、中芯感、総合評価における、相乗効果についての結果である。(実施例6)
【図15】やきそばの硬さ、弾力、粘り、中芯感、総合評価についての官能評価結果である。(実施例7)
【図16】やきそばの硬さ、弾力、粘り、中芯感、総合評価における、相乗効果についての結果である。(実施例7)
【図17】即席麺の硬さ、弾力、粘り、中芯感、総合評価についての官能評価結果である。(実施例8)
【図18】即席麺の硬さ、弾力、粘り、中芯感、総合評価における、相乗効果についての結果である。(実施例8)
【図19】麺帯の硬さ、弾力、しなやかさ、総合評価についての官能評価結果である。(実施例9)
【図20】麺帯の硬さ、弾力、しなやかさ、総合評価における、相乗効果についての結果である。(実施例9)
【図21】天ぷらの硬さ、ボソつき抑制、総合評価についての官能評価結果である。(実施例10)
【図22】天ぷらの硬さ、ボソつき抑制、総合評価における、相乗効果についての結果である。(実施例10)
【図23】白玉団子の硬さ、弾力、もちもち感、総合評価についての官能評価結果である。(実施例11)
【図24】白玉団子の硬さ、弾力、もちもち感、総合評価における、相乗効果についての結果である。(実施例11)
【図25】ピザの硬さ、弾力、もちもち感、総合評価についての官能評価結果である。(実施例12)
【図26】ピザの硬さ、弾力、もちもち感、総合評価における、相乗効果についての結果である。(実施例12)
【図27】豆腐の硬さ、弾力、なめらかさについての官能評価結果である。(実施例13)
【図28】豆腐の硬さ、弾力、なめらかさにおける、相乗効果についての結果である。(実施例13)
【図29】ヨーグルトの硬さ、濃厚感、持続性についての官能評価結果である。(実施例14)
【図30】ヨーグルトの硬さ、濃厚感、持続性における、相乗効果についての結果である。(実施例14)
【図31】厚焼き卵の弾力、ソフト感、しなやかさ、総合評価についての官能評価結果である。(実施例15)
【図32】厚焼き卵の弾力、ソフト感、しなやかさ、総合評価における、相乗効果についての結果である。(実施例15)
【図33】マヨネーズの硬さ、なめらかさ、持続性についての官能評価結果である。(実施例16)
【図34】マヨネーズの硬さ、なめらかさ、持続性における、相乗効果についての結果である。(実施例16)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖鎖のα-1,4結合をα-1,6結合へと変換する糖転移活性を有する酵素及びトランスグルタミナーゼを添加することを特徴とする澱粉含有食品の製造方法。
【請求項2】
糖鎖のα-1,4結合をα-1,6結合へと変換する糖転移活性を有する酵素がトランスグルコシダーゼである請求項1記載の方法。
【請求項3】
澱粉含有食品が穀粉を原料とする麺類である請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
トランスグルコシダーゼの量が、穀粉1g当たり1.5〜300,000Uであり、トランスグルタミナーゼの量が穀粉1g当たり0.0001〜100Uである請求項3記載の方法。
【請求項5】
トランスグルコシダーゼの量が、トランスグルタミナーゼ1U当たり1U〜200,000Uである請求項4記載の方法。
【請求項6】
トランスグルコシダーゼの量が、トランスグルタミナーゼ1U当たり90U〜7,500Uである請求項4記載の方法。
【請求項7】
澱粉含有食品が、野菜天ぷら又は和菓子又はピザ又は豆腐又はヨーグルト又は卵焼き又はマヨネーズである請求項1又は2記載の方法。
【請求項8】
トランスグルコシダーゼの量が、トランスグルタミナーゼ1U当たり90U〜7,500Uである請求項7記載の方法。
【請求項9】
トランスグルコシダーゼ及びトランスグルタミナーゼを含有する澱粉含有食品改質用の酵素製剤。
【請求項10】
トランスグルコシダーゼの含有量がトランスグルタミナーゼ1U当り90U〜200,000Uである請求項9記載の酵素製剤。
【請求項11】
澱粉含有食品が麺類であり、トランスグルコシダーゼの含有量がトランスグルタミナーゼ1U当り90U〜7,500Uである請求項9記載の酵素製剤。
【請求項1】
糖鎖のα-1,4結合をα-1,6結合へと変換する糖転移活性を有する酵素及びトランスグルタミナーゼを添加することを特徴とする澱粉含有食品の製造方法。
【請求項2】
糖鎖のα-1,4結合をα-1,6結合へと変換する糖転移活性を有する酵素がトランスグルコシダーゼである請求項1記載の方法。
【請求項3】
澱粉含有食品が穀粉を原料とする麺類である請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
トランスグルコシダーゼの量が、穀粉1g当たり1.5〜300,000Uであり、トランスグルタミナーゼの量が穀粉1g当たり0.0001〜100Uである請求項3記載の方法。
【請求項5】
トランスグルコシダーゼの量が、トランスグルタミナーゼ1U当たり1U〜200,000Uである請求項4記載の方法。
【請求項6】
トランスグルコシダーゼの量が、トランスグルタミナーゼ1U当たり90U〜7,500Uである請求項4記載の方法。
【請求項7】
澱粉含有食品が、野菜天ぷら又は和菓子又はピザ又は豆腐又はヨーグルト又は卵焼き又はマヨネーズである請求項1又は2記載の方法。
【請求項8】
トランスグルコシダーゼの量が、トランスグルタミナーゼ1U当たり90U〜7,500Uである請求項7記載の方法。
【請求項9】
トランスグルコシダーゼ及びトランスグルタミナーゼを含有する澱粉含有食品改質用の酵素製剤。
【請求項10】
トランスグルコシダーゼの含有量がトランスグルタミナーゼ1U当り90U〜200,000Uである請求項9記載の酵素製剤。
【請求項11】
澱粉含有食品が麺類であり、トランスグルコシダーゼの含有量がトランスグルタミナーゼ1U当り90U〜7,500Uである請求項9記載の酵素製剤。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【公開番号】特開2008−194024(P2008−194024A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−164867(P2007−164867)
【出願日】平成19年6月22日(2007.6.22)
【出願人】(000000066)味の素株式会社 (887)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月22日(2007.6.22)
【出願人】(000000066)味の素株式会社 (887)
【Fターム(参考)】
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