説明

澱粉粒子の製造方法

【課題】極めて小さい澱粉粒子を製造する方法の提供。
【解決手段】a)水中澱粉分散系を含んでなる第1の相を製造し、b)第2の液相中に第1の相の分散系またはエマルジョンを製造(但し、第2の相は水でない)し、c)第1の相中に存在する澱粉を架橋し、d)このように生成した澱粉粒子を分離する段階を含んでなる2相系において澱粉粒子を製造する方法。第2の相は疎水性の相であり、段階b)では、水中油のエマルジョンを形成し、次にこれが油中水エマルジョンに反転されることからなる。段階c)では第2の相は、水と混和性の澱粉の非溶媒からなる。極めて小さい粒子サイズの澱粉粒子を本方法によりコントロールして得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、50nmから数mmの粒子サイズを持つ小さい澱粉粒子を単純な様式で得ることができる澱粉粒子の製造方法に関する。特に、50nmから100μm粒子サイズを持つ小さい澱粉粒子、いわゆるナノあるいはミクロ−粒子は、広範囲の用途に極めて望ましい。小さい澱粉粒子は、医薬品、化粧品、食品、塗料、コーティング、紙、インク及び多くの他の用途で使用され得る。
【背景技術】
【0002】
これ迄、このタイプの小さい粒子は、ポリマーを出発原料として用いた(多段)エマルジョン架橋または溶媒蒸発、噴霧乾燥及び他の方法により製造されてきた(非特許文献1;非特許文献2)。多数の経路が次の特許に記述されている。特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5。特許文献5においては、2つの非混和性の水性の液相が出発原料として使用される。エマルジョン架橋の場合には、多くの機械的エネルギーが必要とされ、粒子を分別し、精製するのが極めて困難であり、これが高製造コストに導く(例えば、特許文献6)。また、蒸発及び噴霧乾燥も、大量の(通常、有機で、揮発性)溶媒の使用を必要とする費用のかかる方法である。水に溶解されたポリマーまたは澱粉が常に出発原料として使用される。特許文献2においては、水溶性及び水不溶性ポリマーの組み合わせが出発原料として使用される。しかしながら、双方とも2つの異なる溶媒に溶解される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】PCT/GB/01735
【特許文献2】PCT/GB95/00686
【特許文献3】PCT/GB92/01692
【特許文献4】PCT/GB93/01421
【特許文献5】EP 0 213 303 B1
【特許文献6】PCT/GB93/01692
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Jiugao,Y,ら,Starch,46(1994)252
【非特許文献2】Arshady,R.,Pot.Eng.Sci.,29(1989),1747
【発明の概要】
【0005】
本発明は、第3の主要成分として澱粉と2相系を使用する澱粉粒子の製造方法を提供する。この方法は
a)水中澱粉分散系を含んでなる第1の相を製造し、
b)第2の液相中で第1の相の分散系またはエマルジョンを製造(但し、第2の相は水でない)し、
c)第1の相中に存在する澱粉を架橋し、
d)このように生成した澱粉粒子を分離する
段階を少なくとも含んでなる。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明によれば、澱粉とは、小麦粉等の、澱粉に富んだ(少なくとも80%澱粉重量/重量を含有する)、天然のままの澱粉、顆粒状澱粉、澱粉の画分及び誘導体、並びに農業
用原材料であると理解される。この澱粉は、小麦、コーン、アミロコーン、ワックスコーン、ポテト、キノア、米等の多種多様な天然源に由来することができる。
【0007】
好ましくは、この澱粉は、顆粒状澱粉であり、天然のままの、あるいは変性、例えば物理的、化学的あるいは酵素により変性されたものであることができる。この澱粉は冷水に可溶である必要はない。場合によっては、澱粉は完全あるいは部分的に糊化あるいは溶融されうる。種々のタイプの澱粉の混合物も使用することもできる。例えば、部分可溶性の、(予備)糊化または変性澱粉を天然のままの澱粉に添加することができる。
【0008】
アミロースを富化した、あるいは逆に、アミロペクチンを富化した澱粉等の部分的あるいは完全に区分化された澱粉を使用することもできる。使用することができる誘導体は、加水分解が熱または酸の影響下で塩基性の、あるいは酵素による加水分解であることができるマルトデキストリン、酸化された澱粉(カルボキシ、ジアルデヒドなど)、カルボキシル化、塩素化あるいは硫酸エステル化された澱粉、疎水性とされた澱粉(アセテート、サクシネート、半エステル、ホスフェートエステル等のエステル)及びリン酸エステル化された澱粉、澱粉エーテル(ヒドロキシアルキル)等の部分的あるいは完全に加水分解された澱粉である。更には、上述の変性を組み合わせた澱粉、すなわち、2官能性あるいは多官能性の澱粉を使用することもできる。この誘導体は、また顆粒状であることもできる。
【0009】
他の炭水化物またはポリマーを助剤として使用することができる。これらの助剤は、高々15%、好ましくは1−10%(澱粉固体基準での重量/重量)を占める。上記助剤は、特に、アルギネート、ペクチン及びカルボキシメチルセルロース等の他の炭水化物を含む。
【0010】
本発明の第1の局面によれば、この第2の相は疎水性の相である。上記第2の相は、第1の相(水中の澱粉)中で分散あるいは乳化され、水中油(O/W)のエマルジョンが生成する(段階b)i))。次に、上記O/Wエマルジョンは、油中水(W/O)エマルジョンに反転される(段階b)ii))。このプロセスは、本願においては「転相」と呼ばれる。W/Oエマルジョンにおいては、水性相は第1の澱粉中の水相からなる。この澱粉は、ここで顆粒状、部分的に糊化あるいは溶解とすることができる。転相段階に続いて、この澱粉粒子は架橋され、次に分離される。
【0011】
転相の前あるいは最中に架橋反応を既に開始することができる。特に、架橋反応がゆっくり進行するような架橋反応の条件である場合には、この方法を使用することができる。完全な架橋は一般に転相後に起こる。
【0012】
この澱粉は、本方法の開始時には完全に糊化している必要はない。本発明の好ましい態様によれば、顆粒状澱粉の部分的あるいは完全な更なる糊化は、転相の最中、前あるい後に行われる。この澱粉は、架橋時には部分的に顆粒状のままとすることができる。温度を上昇させることにより、あるいは水酸化物等の塩を添加することにより、あるいはこれらの組み合わせにより、糊化を行うことができる。
【0013】
段階b)においては、O/Wエマルジョン中の疎水性相:水の比が80:20から20:80のオーダーであるならば有利である。好ましくは、O/Wエマルジョン中の疎水性相:水の比は、60:40と40:60(V/V)の間である。
【0014】
水と混和性でないすべての液体が疎水性相として好適である。これらの例は、炭化水素(アルカン、シクロアルカン)、エーテル、エステル、ハロゲノ炭化水素、ジ−及びトリ−グリセリド、脂肪、ワックス及び油である。油または脂肪の例は、パーム油、種油、ヒ
マワリ油及びサラダ油である。多数の極性液体は、オクタン、ドデカン、トルエン、デカリン、キシレン、ペンタノール及びオクタノール等の高級アルコール、またはこれらの混合物である。パラフィン油、ヘキサンまたはシクロヘキサンが好ましくは使用される。好ましくは、疎水性相の粘度は澱粉/水相の粘度に近い。水/澱粉相の疎水性相との混和性は、好ましくはできるだけ低くなければならない。
【0015】
好ましくは、O/Wエマルジョンは、界面活性剤により安定化される。転相、すなわちO/WエマルジョンからW/Oエマルジョンへの転相(段階b)ii))は、種々の方法で起こり得る。1)温度感受性である界面活性剤を使用する場合には、転相は、温度を上昇させることにより誘起され得る。2)O/Wエマルジョンは、もう一つの界面活性剤を添加することにより脱安定化され得る。この界面活性剤はW/Oエマルジョンを安定化する。3)転相は、疎水性液体を添加することにより得られる。4)転相は、また、塩添加により得られる。
【0016】
温度を上昇することによる転相が第1に挙げられてよい。温度を上昇することは、O/W界面における界面活性剤分子の油相への移動を引き起こす。この結果は、疎水性相の凝集に抗して極性頭部がもたらす保護も低下するということである。例えば、疎水性相、界面活性剤のタイプ及び水性相中の澱粉のタイプと濃度に依存するある温度で、この保護は低下して、すべての油滴が凝集し、このエマルジョンが0/WからW/0に切り替わるか、あるいは反転した。
【0017】
この転相温度(PIT)は、選ばれた(水/澱粉)/油(疎水性相)/界面活性剤系に依存する。対象とする界面活性剤は、好ましくは水と疎水性相、例えば油と同等の親和性を有しなければならない。これはHLB(親水性−親油性バランス)値で表わされる。好ましくは、8から20あるいはそれ以上の、優先的には10から15のHLB値を持つ界面活性剤が使用される。HLB値が高い程、界面活性剤の水性相への親和性は大きい。この値が高すぎる場合、転相を可能とするには更に大きな温度上昇(あるいは、界面活性剤または疎水性液体または塩の添加)が必要であるか、さもなくば転相はもはや起こらない。
【0018】
原則として、Dimodan、Acidan(蒸留モノグリセリド)及びグリセロールモノステアレート等の脂肪酸モノグリセリド、脂肪酸のクエン酸、乳酸及び酢酸エステル(Cetodan,Lactodan,Panodan,Promodan)、脂肪酸のプロピレングリコールエステル(Triodan)、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、カルシウムステアレート、エトキシル化及びサクシニル化モノグリセリド、グルコース及びサッカロースエステル;また脂肪酸アルコール(セタノール、パルミトール、ステアリルアルコール)、遊離脂肪酸、脂質類、リン脂質類、レシチン、糖脂質類及びグリコール等の広範で、多様な界面活性剤または乳化剤を使用することができる。極めて好適な界面活性剤の例は、極性ポリオキシエチレン頭部を持つものである。このような界面活性剤は、特に、Tweenの商品名で市販されている。Tween−85(ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリオレエート、HLB=11±1)が好ましくは使用される。
【0019】
上述のように、転相が起こる温度は、界面活性剤のタイプ及び程度こそ少ないが濃度等の種々のファクターに依存する。PITは、例えば
*エマルジョン中の塩濃度を増加する、
*水:油比を低減する、
*アルコールを添加する、
*界面活性剤のタイプに依り、pHを上げるか、あるいは下げる
ことにより下げ得る。
【0020】
好ましくは、水/油(疎水性相)/界面活性剤系は、20℃程度、好ましくは10℃程度の温度上昇が転相の惹起に充分であるように選ばれる。好ましくは、転相は、0と80℃の間で、更に好ましくは室温より若干上(ほぼ25−40℃)で起こる。
【0021】
転相を起こさせる第2の方法は、第2の界面活性剤の添加である。上記第2の界面活性剤は、O/Wエマルジョンを安定化させるのに使用した界面活性剤とは異なる。O/WエマルジョンをTween 80により安定化したとすれば、例えばSpan 80を添加することができる。
【0022】
更には、O/WエマルジョンからW/Oエマルジョンへの切り替えは、O/Wエマルジョンに疎水性液体または塩を添加することにより得られる。この切り替えまたは反転は、水と油相の容積分率を変えることにより、あるいは界面で表面張力を変えることにより起こる。事実、O/Wエマルジョンへの疎水性液体または塩の添加もまた、転相温度を低下させると考えられる。
【0023】
この方法(転相)の使用の利点は、W/Oエマルジョンの形成が自発的なプロセスであり、そのために系の乳化に少ない機械的エネルギーしか必要とされないということである。系をスケールアップする場合には、これもまた、利点を提供する。特に、PIT法を使用する使用する場合には、多くの場合粒子の分別が簡単である。温度を低下する方法によりこれを実施することができ、その結果、W/Oエマルジョンが脱安定化される。また、無極性溶媒、好ましくは無極性アルコール、更に好ましくはシクロヘキサノールまたはシクロオクタノールを添加することにより、分離を行うこともできる。
【0024】
この系のもう一つの利点は、系の成分の好適な選択等の処理条件を調節することにより、粒子サイズを所望のサイズに調節することができるということである。
【0025】
転相に続いて、水相に分散されたか、あるいは場合によって部分的に溶解された澱粉が架橋される。転相の前、最中あるいは後にこの架橋反応を開始することができる。この反応の結果として、分離した澱粉粒子が生じる。次に、これらの粒子を分別することができる。
【0026】
好ましくは、澱粉/水相に添加した架橋剤により架橋を行うことができる。架橋は、転相の前、または転相の最中あるいは直後に起こすことができ、これは、反応速度により主に決められる。架橋剤に依り、塩基、酸または塩等の触媒を添加することにより、架橋を開始することができる。
【0027】
架橋は、好ましくは0と80℃の間、好ましくは10と60℃の間で起こる。架橋が転相温度以上、好ましくは転相温度の少なくとも10℃、更に優先的には少なくとも20℃以上の温度で起こることは明白である。
【0028】
アンヒドログルコース単位モル当たり好ましくは5から1000ミリモル、更に好ましくは20−500ミリモルの架橋剤が使用される。
【0029】
使用することができる架橋剤は、最も普通の2官能性あるいは多官能性の試剤である。架橋剤の例は、エピクロロヒドリン、グリオキサール、トリメタリン酸トリナトリウム、ホスホリルクロライドまたは二塩基性あるいは多塩基性カルボン酸の無水物等の普通の架橋剤である。しかしながら、トリメタリン酸トリナトリウム等のリン酸エステルの架橋剤としての使用が特に好ましい。これらの場合には、触媒は、水酸化ナトリウム等の塩基とすることができる。
【0030】
変性澱粉を使用する場合には、多様な他の架橋剤が可能である。ジアルデヒド澱粉の場合には、架橋剤は、例えば、尿素、テトラメチレンジアミンまたはヘキサメチレンジアミン等のジアミンまたはジアミドとすることができ、この場合には、酸を触媒として使用することができる。
【0031】
また、例えば、カルボキシメチル澱粉またはジカルボキシ澱粉の場合には、ジアミンまたはジオールを用いて架橋を行うこともできる。しかしながら、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛または鉄、好ましくはカルシウム等の多価金属イオンにより触媒することができる内部エステル形成によっても、有利に架橋を行うことができる。もう一つの可能な出発原料は、カチオン性の、あるいはアミノアルキル澱粉であり、これは、ジカルボン酸またはジアルデヒドを用いて系内で架橋され得る。
【0032】
いくつかの他の架橋剤は、ジエポキシブタン、ジグリシジルエーテル及びアルキレンビス−グリシジルエーテル等の官能性エポキシド、ジクロロヒドリン、ジブロモヒドリン、アジピン酸無水物、グルタールアルデヒド、アミノ酸及びボラックスである。
【0033】
多くの場合、澱粉の化学的変性、例えばカルボキシメチル化またはカチオン化反応を架橋反応時に同時に起こさせることも可能である。
【0034】
本発明の第2の局面によれば、第2の相は、広い濃度範囲にわたって水と易(あるいは完全)混和性である澱粉に対する非溶媒からなる。非溶媒と水とのある比で、この系はもはや完全混和性でなくなり、相分離が起こり、澱粉の水相の小さい液滴が連続の非溶媒相中に存在する。
【0035】
この態様によれば、本発明は、第2の相が澱粉に対する水混和性の非溶媒である、2相系での澱粉粒子の製造方法であって、この方法が
a)水中澱粉分散系を含んでなる第1の相を製造し、
b)相分離が起こるように第1の相に第2の相を添加し、
c)第1の相中に存在する澱粉を架橋し、
d)このように生成した澱粉粒子を分離する
ことを含んでなるものである。
【0036】
水と混和性であり、澱粉が溶解しないいかなる液体も澱粉に対する非溶媒として使用することができる。このような非溶媒の例は、アセトン、メタノール、エタノール及びイソプロパノールである。
【0037】
エタノールが好ましくは使用される。反応時のエタノールの量は、第1の水中の澱粉の相の量に対して、好ましくは20と75%の間、更に好ましくは45と55%の間である。この条件は、相分離した系が得られるということである。この量は、澱粉等の他の成分に依存している。
【0038】
好ましくは、この製造は、0−80℃、更に好ましくは10−60℃で行われる。
【0039】
この方法による架橋方法は、上述の方法に対応している。アンヒドログルコース単位モル当たり好ましくは5から1000ミリモル、更に好ましくは20−500ミリモルの架橋剤が使用される。
【0040】
この方法によっても、この澱粉は、本方法の開始時に完全に糊化されている必要はない。本発明の好ましい態様によれば、顆粒状澱粉の部分的あるいは完全な更なる糊化が第1
の相への非溶媒の添加の最中、前あるい後に行われる。この澱粉は、架橋時には部分的に顆粒状のままとすることができる。
【0041】
これらの粒子の粒子サイズは50nmと100μmの間である。この粒子サイズは、なかんずく、澱粉と架橋剤のタイプと濃度、反応時間及び非溶媒のタイプに依存する。この方法も種々の成分を含む処理条件を調節することにより、粒子サイズを調節できるという利点を提供する。
【0042】
架橋に続いて、極めて簡単な方法で遠心分離または濾別及び乾燥によりこの粒子を分別することができる。必要ならば、少量の追加の非溶媒を添加して、系を脱安定化する。部分乾燥の後、この粒子を用途においてサスペンジョンで直ちに使用することができる。場合によっては、水、エタノールまたはアセトンなどで洗浄した後、あるいはローラー乾燥、凍結乾燥またはスプレー乾燥等の既存の乾燥方法を用いてこの粒子を空気中で乾燥することができる。
【0043】
粒子製造のためのこの方法のもう一つの利点は、界面活性剤が不要であり、粒子を分別するために、酸または塩が不要であるということである。結果として、非溶媒の再使用も簡単な方法で可能である。
【0044】
この澱粉粒子は、なかんずく、紙、テキスタイル、爆薬、フォーム、接着剤、ホットメルト、洗剤、ハイドロゲル、肥料、食品、人工香料及び風味料、医薬品及び化粧品、ティッシュー、土壌改良剤、殺虫剤、コーティング、マイルド処理、例えば、酵素または熱水により除去できるコーティング、塗料、インク、トナー、有機反応触媒、セラミック及び診断剤において使用され得る。使用される量は、対象とする使用に慣用的な量である。
【0045】
(実施例)
【実施例1】
【0046】
13gのPaselli SA2(Avebe)を10gのNaClを含む80gの水中に分散した。この分散体を7gのTween 85を含む110gのパラフィン油に添加した。このO/Wエマルジョンを22℃とした。
【0047】
次に、2mlの水中の0.21gのNaOHと1.2mlのエピクロロヒドリン(ECH)を添加し、全体を50℃に加熱した。このエマルジョンの転相温度PIT2(アルカリの添加後と架橋時)は25℃であった。反応時間は数時間であった。
【0048】
分離を開始するために、0.52mlの37%HClと50mlの水を添加した。温度を21℃とした。これは、エマルジョンの中和後の転相温度(PIT3)である。酸の添加前の転相温度、PIT2は、通常PIT3よりも若干高い。この粒子を容易に、かつ迅速に遠心分離または濾別することが可能であった。粒子サイズ(<600nm)の見積もりを光学顕微鏡により行った。この粒子は球形である。
【実施例2】
【0049】
60gのPaselli SA2(Avebe)を45gのNaClを含む400gの水中に分散した。この分散体を35gのTween 85を含む500gのパラフィン油に添加した。このO/Wエマルジョンを20℃とした。2mlの水中の0.21gのNaOHと1.2mlのエピクロロヒドリン(ECH)を添加し、全体を50℃に加熱した。このW/OエマルジョンのPIT2は25℃であった。反応時間は16時間であった。
【0050】
分離を開始するために、200mlの水中の5gの37%HClを添加した。温度を2
0℃とした。この粒子を容易に、かつ迅速に遠心分離または濾別することが可能であった。粒子サイズ(<600nm)の見積もりを光学顕微鏡により行った。この粒子は球形である。
【実施例3】
【0051】
60gのPaselli SA2(Avebe)を10gのNaClを含む400gの水中に分散した。この分散体を35gのTween 85を含む500gのパラフィン油に添加した。このO/Wエマルジョンを20℃とした。このエマルジョンの架橋前の転相温度PIT1は25℃である。0.95gのNaOHと3mlの水と30gのトリメタリン酸トリナトリウム(TSTP)を添加し、全体を55℃に加熱した。転相は25℃で起こった。反応時間は3.5時間であった。
【0052】
分離を開始するために、200mlの水中の2.4gの37%HClを添加した。温度を25℃(すなわち、PIT3)以下に下げた。20℃(中和後の転相温度、すなわちPIT3)の温度近傍を交互に加熱と冷却を行うことにより、この粒子を分別した。粒子サイズ(<600nm)の見積もりを光学顕微鏡により行った。
【実施例4】
【0053】
200gのPaselli SA2(Avebe)を70gのTSTPを含む1lの水中に分散した。この分散体を40gのTween 85を含む1000mlのパラフィン油に添加した。このO/Wエマルジョンを20℃とした。転相は25℃で起こった(PIT2;PIT1は24℃である)。次に、10mlの水中の2.5gのNaOHを添加し、全体を50℃に加熱した。反応時間は16時間であった。
【0054】
分離を開始するために、500mlの水中の6.25gの37%HClを添加した。温度を22℃(PIT3)以下に下げた。22℃(中和後の転相温度、すなわちPIT3)の温度近傍を交互に加熱と冷却を行うことにより、この粒子を分別した。粒子サイズ(<600nm)の見積もりを光学顕微鏡により行った。この粒子は球形である。
【実施例5】
【0055】
6gのPaselli SA2(Avebe)を3gNaClを含む40gの水中に分散した。この分散体を3.5gのTween 85を含む55gのパラフィン油に添加した。このO/Wエマルジョンを20℃とした。2mlの水中の0.314gのNaOHを添加した。次に、2mlの水中の0.3gのGMAC(カチオン試剤)を1mlのECHと共に添加した。全体を50℃に加熱した。反応時間は6時間であった。
【0056】
分離を開始するために、20mlの水中の0.79gの37%HClを添加した。温度を30℃以下に低げた。PIT3は30℃であった。粒子サイズの見積もりを光学顕微鏡により行った。NaClを添加することによりPIT3を低下させることが可能であった。
【実施例6】
【0057】
12gの天然ポテト澱粉(PN)を頂部撹拌機を付けたガラスビーカー中の脱塩水(600ml)中に分散した。均質で、濃厚な、ゼラチン状の物を塊なしで得る迄水酸化ナトリウム(25mlの脱塩水中2g)を澱粉分散体に添加した。次に、(乳白色)2相系が生成する迄エタノール(EtOH,450ml)を澱粉/水相中にゆっくりと導入した。安定状態を得た後、4gのTSTPを添加した。反応を室温で24時間行った。反応に続いて、水含有澱粉粒子の堆積物とEtOH−水の上層が生成する迄、エタノール(250ml)を添加した。EtOH−水層を注ぎ出した。場合によっては、最初に遠心分離(3000rpmで3分間)することが可能である。必要ならば、実質的にすべてのEtOHが消失する迄、澱粉層を水で何度も洗浄する。光学顕微鏡は、澱粉が部分的に糊化し、残
存の顆粒を含んでいることを示した。
【実施例7】
【0058】
500gの天然ポテト澱粉(PN)を頂部撹拌機を付けたガラスビーカー中の脱塩水(25l)中に分散した。均質で、濃厚な、ゼラチン状の物を塊なしで得る迄、水酸化ナトリウム(333g)を澱粉分散体に添加した。次に、(乳白色)2相系が生成する迄エタノール(EtOH、10.4l)を澱粉/水相中にゆっくりと導入した。安定状態を得た後、366.7gのTSTPを添加した。反応を室温で24時間行った。粒子が堆積物を形成した後、EtOH−水層を可能な限り注ぎ出した。Niro Mobile Minorスプレー乾燥機(150℃でポジション2)を用いて、水/澱粉層をスプレー乾燥した。電子顕微鏡により求めた粒子サイズは、ほぼ1−10μmであった。
【実施例8】
【0059】
18gの天然ワックスコーン澱粉(WCN)を頂部撹拌機を付けたガラスビーカー中の脱塩水(600ml)中に分散した。均質で、濃厚な、ゼラチン状の物を塊なしで得る迄、水酸化ナトリウム(25mlの脱塩水中6g)を澱粉分散体に添加した。次に、(乳白色)2相系が生成する迄エタノール(EtOH、250ml)を澱粉/水相中にゆっくりと添加した。安定状態を得た後、4gのTSTPを添加した。反応を室温で24時間行った。反応に続いて、水含有澱粉粒子の堆積物とEtOH−水の上層が生成する迄、エタノール(156ml)を添加した。超音波浴を添加時に使用した。EtOH−水層を注ぎ出した。適当ならば、遠心分離(3000rpmで3分間)を行うことができる。必要ならば、実質的にすべてのEtOHが消失する迄澱粉層も水で何度も洗浄する。
【実施例9】
【0060】
実施例6、7及び8のそれに同一の方法でフロック−ゲルとPaselliSA2澱粉(Avebe)から粒子を製造した。しかしながら、分離に添加したEtOHの量(第2の量)は、それぞれ230と255mlであった。
【実施例10】
【0061】
100gのカチオン性澱粉(Avebe、DS=0.044)をほぼ300mlの水中に分散した。20gのECHと150mgのH2SO4をこの分散体に添加した。次に、ECHの澱粉への酸カップリングを行うために、この澱粉サスペンジョンを70℃で4時間保持した。この澱粉を同時に糊化した。次に、この澱粉溶液を室温迄冷却した。
【0062】
次に、ほぼ300mlのエタノールを添加した。この水/エタノール比で相分離が起こり、これは、この溶液が濁るという事実により見ることができ、光学顕微鏡によっても見られた。相分離が起こったならば、1gのNaOHの50mlの1:1水/エタノール混合物中の溶液をゆっくり添加することにより、pHを上昇させた。この方法によりこの架橋反応をスタートした。18時間後、追加のエタノールを添加し、その後、遠心分離により架橋した澱粉粒子をエタノールから取り出した。この粒子を洗浄、濃化して、ほぼ30%固体を含むサスペンジョンを得た。
【0063】
以下に本発明の主な特徴と態様を列挙する。
【0064】
1.a)水中澱粉分散系を含んでなる第1の相を製造し、
b)第2の液相中で第1の相の分散系またはエマルジョンを製造(但し、第2の相は水でない)し、
c)第1の相中に存在する澱粉を架橋し、
d)このように生成した澱粉粒子を分離する
段階を少なくとも含んでなる2相系での澱粉粒子の製造方法。
【0065】
2.第2の相が疎水性の相であり、かつ
a)水中澱粉分散系を含んでなる第1の相を製造し、
b)i)水中油のエマルジョンを得るように、第2の相を第1の相中で分散あるいは乳化し、
ii)水中油のエマルジョンを油中水のエマルジョンに転相し、
c)第1の相中に存在する澱粉を架橋し、
d)このように生成した澱粉粒子を分離する
段階を少なくとも含んでなる1.に記載の方法。
【0066】
3.該澱粉が段階b)ii)の前、最中または後で完全に、あるいは部分的に糊化される2.に記載の方法。
【0067】
4.段階b)i)において疎水性相:水の比が80:20から20:80、好ましくは60:40から40:60である2.に記載の方法。
【0068】
5.該水中油エマルジョンが界面活性剤を含む2.、3.または4.に記載の方法。
【0069】
6.該界面活性剤が8から20の、好ましくは10から15のHLB値を持つ5.に記載の方法。
【0070】
7.段階b)ii)が転相が起こる迄水中油エマルジョンの温度を上昇させることを含んでなる5.または6.に記載の方法。
【0071】
8.油中水エマルジョンへの転相が起こるように、段階b)ii)が水中油エマルジョンへの第2の界面活性剤の添加を含んでなる5.または6.に記載の方法。
【0072】
9.油中水エマルジョンへの転相が起こるように、段階b)ii)が水中油エマルジョンへの疎水性液体の添加を含んでなる5.または6.に記載の方法。
【0073】
10.第2の相が澱粉に対する水混和性の非溶媒であり、
a)水中澱粉分散系を含んでなる第1の相を製造し、
b)相分離が起こるように、第1の相に第2の相を添加し、
c)第1の相中に存在する澱粉を架橋し、
d)このように生成した澱粉粒子を分離する
段階を少なくとも含んでなる1.に記載の方法。
【0074】
11.該澱粉に対する水混和性の非溶媒がエタノールまたはアセトン、好ましくはエタノールである10.に記載の方法。
【0075】
12.該澱粉が段階b)またはc)の前、最中または後で完全に、あるいは部分的に糊化される10.または11.に記載の方法。
【0076】
13.該澱粉が部分的に変性された澱粉からなる先行する1.−12.の一つに記載の方法。
【0077】
14.第1の相中の澱粉含量が1−50%(m/m)、好ましくは5から25%(m/m)である先行する1.−13.の一つに記載の方法。
【0078】
15.架橋が好ましくはトリメタリン酸トリナトリウムまたはエピクロロヒドリンである
架橋剤の助けにより行われる先行する1.−14.の一つに記載の方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)水中澱粉分散系を含んでなる第1の相を製造し、
b)相分離が起こるように、澱粉に対する水混合性の非溶媒である第2の相を第1の相に添加し、
c)第1の相中に存在する澱粉を架橋し、
d)このように生成した澱粉粒子を分離する
段階を少なくとも含んでなる2相系で澱粉粒子を製造する方法。
【請求項2】
該澱粉に対する水混和性の非溶媒がエタノールまたはアセトンである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該澱粉に対する水混和性の非溶媒がエタノールである請求項1に記載の方法。
【請求項4】
該澱粉が段階b)またはc)の前、最中または後で完全に、あるいは部分的に糊化される請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
該澱粉が部分的に変性された澱粉からなる請求項1〜4のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
第1の相中の澱粉含量が1−50%(m/m)である請求項1〜5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
第1の相中の澱粉含量が5から25%(m/m)である請求項1〜6のいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
架橋がトリメタリン酸トリナトリウムまたはエピクロロヒドリンである架橋剤の助けにより行われる請求項1〜7のいずれか一つに記載の方法。

【公開番号】特開2012−111955(P2012−111955A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−15009(P2012−15009)
【出願日】平成24年1月27日(2012.1.27)
【分割の表示】特願2000−592325(P2000−592325)の分割
【原出願日】平成11年12月29日(1999.12.29)
【出願人】(500409987)
【Fターム(参考)】