説明

澱粉複合化剤で充填された疎水性ポリマー

【課題】本発明は非常に小さな寸法の粒子の形態で澱粉複合体をフィラーとして含有する、澱粉と非相溶の疎水性のポリマーに関する。
【解決手段】フィラーとして、ポリマーマトリックス中に数値平均寸法3μm未満の粒子の形態で分散された澱粉複合体を含有する、澱粉とは非相溶の疎水性ポリマーが記載されており、前記澱粉複合体は、940〜952cm−1域の二次微分IR吸収を特徴とし、そしてマトリックスや複合体と相溶し得る基を含むカップリング剤によってポリマーマトリックスに結合されているか、またはポリマーマトリックスに固定され得る複合体中に含まれる反応性基によってポリマーマトリックスと結合されている。脂肪族または脂肪性芳香族ポリエステルのような生分解性ポリマー中の澱粉複合体は、マトリックスを形成するポリマーや、EVOHコポリマーとは異なる複合化剤を用いて形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非常に小さな寸法の粒子の形態で澱粉複合体をフィラーとして含有する、澱粉と非相溶の疎水性のポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
澱粉が、澱粉とエチレン−ビニルアルコールコポリマーとの混合物の押出成形によって製造された製品中に、前記エチレンコポリマーと互いに浸透し合った構造を形成する複合体の形態で存在することは文献から知られている(国際特許出願公開第WO92/14782号公報、バスチオリら、ジャーナル・オブ・エンヴァロンメント・ポリマー・デグラデイション−No.1、第3巻、181〜191頁、1993年)。TEM(透過型電子顕微鏡)実験では、その構造は、明確に分離する境界を有さずに混合したサブミクロン寸法の形態の存在を示している。
【0003】
互いに浸透し合った構造は、100℃の水中で激しく攪拌しながらの処理の結果、壊れて、直径1μm未満の粒子を含む微小球凝集体の微分散体を形成するか、または澱粉が部分的に溶解された層状構造を形成する。
【0004】
液滴様の構造は、ビニルアルコール60モル%を含有するEVOHコポリマーの使用により観察されており、他方、層状構造は、ビニルアルコール80モル%を含有するコポリマーを用いて製造されている。
【0005】
このフィラーが導入できる改良された新規な特性を考慮すると、澱粉を、低い水溶性を示す複合体の形態で、非常に小さな寸法の分散粒子として、澱粉と非相溶のポリマー中に分散する必要がある。
【0006】
従来、澱粉は、破壊されていない結晶形態で、ポリエチレンのような疎水性ポリマー中に分散されている。
【0007】
破壊された澱粉は、ゴム中でフィラーとして使用されている(特許文献1および特許文献2)。しかし、分散粒子の寸法は、ゴムのような非相溶のポリマーマトリックス中には澱粉を微分散し難いため、十分に小さくはない。事実、澱粉は、フィラメント様の粒子の形態で分散される。
【0008】
上記米国特許公報には、熱可塑性ポリマーを含有する組成物中での破壊した澱粉の使用可能性も指摘されている。しかし、上記特許にかかる組成物は、組成物の調製方法が正確なマイクロ構造の形成には適さないことと、マイクロ構造の形成には不適当な、過度に親水性のコポリマーが使用されるという事実から、マイクロ分散体の形成には適さない。EVOHコポリマーの場合、ビニルアルコール含量は73モル%である。
【0009】
上記特許では、グラフト化剤を使用する可能性についても言及しているが、グラフト化剤はそれ以上確認されていないが、澱粉とゴムの間の相溶化剤として作用し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第5,374,671号公報
【特許文献2】米国特許第5,545,680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は非常に小さな寸法の粒子の形態で澱粉複合体をフィラーとして含有する、澱粉と非相溶の疎水性のポリマーに関する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
予期しないことに、澱粉と非相溶の疎水性ポリマー中に、940〜950cm−1域の二次微分FTIR吸収または2θ11°〜13°および19°〜21°の領域のX線回折ピークで特徴付けられる澱粉複合体を、低い水溶性の粒子の形態でかつ数値平均寸法3μm未満、好ましくは1μm未満で分散できることが見出された。この澱粉複合体は、ポリマーマトリックスや複合体(外部カップリング剤)と相互作用し得る基を含むカップリング剤を用いて、またはポリマーマトリクスを固定できることから内部カップリング剤として作用する複合体中に含まれる反応性基を用いてポリマーマトリックスに固定されており、この場合は、外部カップリグ剤の使用が省略できる。
【0013】
これは、例えば、脂肪族または脂肪性芳香族ポリエステル、脂肪族ポリアミド、ポリアミド−ポリエステル、ポリウレタン−ポリエステルなどのような生分解性ポリマーを含むマトリックスの場合である。
【0014】
以降に記載するように、上記生分解性マトリックスと共に使用できる複合体は、澱粉と、ポリマーマトリックスを形成するポリマーやエチレン−ビニルアルコールコポリマーとは別のポリマー、または他の複合化剤との複合体である。
【0015】
複合体は、一般には100℃の水には実質上不溶である。
【0016】
溶解性は、一般には20重量%未満である。
【0017】
アミロースは、その全部または殆どが複合体化された形態で複合体中に存在するが、アミロペクチンは、酸で加水分解され得る。アミロペクチン高分子は、水素結合や、合成ポリマーもしくは他の複合化剤と複合体化されたアミロース分子との絡み合いによって、鎖の様々な点で繋がっていると考えられるが、これは結合ではない。前記複合体高分子の寸法はアミロペクチン分子から予想される桁であることから、この分子は、アミロース/合成ポリマー複合体または他の複合化剤で形成されるシェルで取り囲まれた核を形成すると考えられる。
【0018】
シェルは、水素橋架けと相互作用することにより、または核との絡み合いにより、アミロペクチンの溶媒和物に対してスクリーンとして作用する。
【0019】
上記分散体に使用される澱粉組成物は、上記FTIRバンドまたはX線回折を示す澱粉複合体によって構成されるかまたはそのような澱粉複合体を含み、数値平均直径1μm未満の粒子のマイクロ分散体からの前記ピークは、激しく攪拌しながらの水中での沸騰処理によって形成される。
【0020】
フィラーとして使用できる複合体の形成に用いられる澱粉は、アミロースを15重量%以上、好ましくは20重量%以上含有しており、アミロペクチンが85重量%まで、好ましくは80重量%までの量で存在している。
【0021】
澱粉は、塊茎、シリアルまたは豆を起源とするものであってよく、トウモロコシ澱粉、芋澱粉、タピオカ澱粉、エンドウ澱粉または米澱粉などであってよい。アミロース含量20重量%以上の澱粉が好ましい。
【0022】
アミロペクチン含量85重量%以上の澱粉は、アミロペクチンが、アミロースと複合化するポリマーとは複合体を形成しないため、適当ではない。大量の澱粉は、水中での沸騰による処理によって溶解される。
【0023】
上記組成物は、複合化熱可塑性ポリマーおよび場合により可塑剤との混合物中、混合物の成分をまたは複合化剤とレオロジー的に相溶させるような温度およびせん断力条件下での澱粉の押出成形によって調製される。好適な調製方法は、例えば、国際特許出願公開第WO92/14782に記載されており、これを参照としてここに挿入する。澱粉および複合化剤のための通常使用されている溶媒を用いて溶液中での方法を使用することも可能である。
【0024】
組成物は、好ましくは押出機からのコンディショニング前の生産物に、20重量%未満、好ましくは10重量%未満である、好ましくは2重量%を超え、好ましくは4重量%を超える水分量を有する。初期組成中の澱粉と水の和としての好ましい水分量は、5%を超え、30%未満である。組成物のTgは好ましくは0℃未満である。
【0025】
攪拌と、場合により超音波処理を含む水中での沸騰によるマイクロ分散体の形成は、本発明の方法で用いられる組成物の形成に適した操作条件の選択のための基準を構成することがある。
【0026】
澱粉と相溶し得るポリマーは、疎水性配列間に介入した親水性基を含んでおり、その親水性は、得られる押出成形組成物が沸騰水中での処理によって部分的または完全に澱粉の不溶化をもたらし得るように平衡されている。
【0027】
例えば、エチレン−ビニルアルコールコポリマーの場合、好ましくは50モル%以上のビニルアルコール含量は80〜90モル%を超える必要がなく、そうでなければ、水中での沸騰により、マイクロ分散体の代わりに層の形成が生じて、澱粉が溶解する。
【0028】
他の好適なコポリマーは、エチレン−アクリル酸コポリマーであり、好ましくはアクリル酸15〜25重量%を含有する。
【0029】
一般に、メタクリル酸、クロトン酸およびイタコン酸、無水マレイン酸を含むコポリマーや酢酸ビニルを含有するターポリマーのような、極性モノマーを含むエチレンコポリマーが全て適している。
【0030】
澱粉との複合体を形成し得る他のポリマーは、6-6、6-9または12脂肪族ポリアミド、脂肪族および脂肪性芳香族ポリエステル、ポリウレタン/ポリアミド、ポリウレタン/ポリエーテル、ポリアミド/ポリエステル、ポリ尿素/ポリエステル、ポリ尿素/ポリエーテル、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ(乳酸−グリコール酸)、ポリカプロラクトン/ウレタンであり、ここでポリカプロラクトンブロックの寸法は分子量300〜3000の間である。
【0031】
他の複合化剤は、脂肪酸とその誘導体である。複合化剤は、疎水性マトリックスのための反応性基を含み、それによって内部カップリング剤の機能を発揮することがある(例えば、ゴムマトリックスの場合、テトラスルフィドまたは不飽和基)。
【0032】
エチレン20〜50モル%を含有するエチレン/ビニルアルコールコポリマーの場合、入手可能なアミロースの全てを複合化できるコポリマーの量は、組成物の約20重量%である。
【0033】
EVOHの含量が少なくなるほど、複合化されるアミロースの相対量が増加し、この量は、EVOHの量の2倍(EVOHの濃度が10%である場合)から3倍(5%まで減量された場合)まで変化する。
【0034】
このことは、アミロースとEVOHの間の複合化が、前記組成物の複合体を形成しないが、複合体のグループを形成することを示している。
【0035】
澱粉複合体に好ましい配合は、澱粉含量45〜65重量%とアミロース含量20重量%;複合化剤5〜35%;可塑剤0〜20%、および添加される水0〜15%を含有する。その様な配合は、分散形態の寸法を最小化する。
【0036】
疎水性ポリマー中での澱粉複合体を含む組成物の分散は、既知の方法に従って混合することにより(例えば、ゴムの場合は、バンバリーミキサー中での押出成形またはカレンダー処理によって)行なわれる。
【0037】
ゴム組成物に好ましい複合化澱粉は、130〜170℃、好ましくは140〜160℃の温度範囲で混合することによってゴム中に分散できる。
【0038】
カップリング剤の存在下で操作することが好ましい。複合体が、ポリマーマトリックスへ固定できる澱粉の基を含む場合は、カップリング剤の使用を省略することができる。
【0039】
フィラーやポリマーマトリックスと反応し得る好適なカップリング剤は、前記マトリックスがポリオレフィン特性を有するかまたはスチレンブタジエン、ポリブタジエン、ポリイソプレンまたはニトリルゴム、弾性のエチレン/プロピレンまたはエチレン/プロピレンジエンコポリマーである場合、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、メルカプトプロピルトリメトキシシランのような脂肪族シラン、およびメタクリル-オキシ-プロピルトリメトキシシランおよびビニルトリエトキシシランのようなビニルシランである。
【0040】
特に適したシランは、ビス-3-トリエトキシシリルプロピルテトラスルフィドである。
【0041】
使用できる他のカップリング剤は、テトライソオクチルチタネート、イソプロピル-ジイソステアリルメタクリルチタネートおよびイソプロピルトリアクリルチタネートのようなアルキルチタネートまたはエステルである。
【0042】
カップリング剤の量は、澱粉複合体の0.05〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%である。
【0043】
カップリング剤は、その混合段階で澱粉複合体/疎水性ポリマー混合物に好ましく添加される。
【0044】
疎水性ポリマーは、とりわけLDPE、LLDPE、HDPE、過度に低度のLLDPE、結晶性プロピレンポリマーおよびコポリマー(特にアイソタクチックポリプロピレン)、およびエチレン1〜10重量%を含有する結晶性プロピレンコポリマーまたはC-C10α-オレフィンのようなエチレンポリマーを含む。
【0045】
使用できる他の熱可塑性疎水性ポリマーは、ポリアミド、芳香族ポリエステル樹脂、ポリオキシメチレン樹脂、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキサイド樹脂を含む。タイヤ産業で使用されるゴム(例えば、スチレン−ブタジエンゴム、ポリブタジエンまたはポリイソプレンゴム、あるいはEPおよびEPDMゴム)も使用してよい。
【0046】
前記ゴムは、フィラーとして、例えばシリカ、カーボンブラック、そして当該分野で通常使用される加硫剤および加硫促進剤のような成分を含んでいてよい。本発明の澱粉複合体を含むゴムマトリックスは、価値ある特性を有するタイヤの製造に便利に用いられる。
【0047】
同様に、熱可塑性ポリマーは、当該分野で通常使用される着色剤、安定化剤および難燃性化合物のような添加物を含んでいてもよい。
【0048】
上記の特徴を有するフィラーは、より良好な塗工性、特にオレフィンポリマーの場合には、より優れた電気的および熱的エネルギー散逸、より高い弾性流れおよび低いヒステリシス(特にゴムの場合)、そして一方のポリマーから別のポリマーまでの間を変動する他の有利な特性などのポリマーマトリックス特性をもたらす。
【0049】
生分解性疎水性ポリマーも使用できる。そのようなポリマーの例は、脂肪族、ポリエステル、脂肪性芳香族コポリエステル、脂肪族ポリアミド、ポリアミド−ポリエステル ポリ尿素−ポリエステル、ポリウレタン−ポリエステル ポリウレタン−ポリアミドである。具体例は、ポリ-ε-カプロラクトンおよびポリ(ブチレンテレフタレート−ブチレンアジペート)である。
【0050】
前記生分解性ポリマーの場合、ポリマーマトリックスに澱粉複合体を加えることが有利であることが分かった。ここで、複合化剤は、マトリックスやエチレン−ビニルアルコールコポリマーとは別のポリマーであるか、あるいは脂肪酸およびその誘導体から、または別の複合化剤から選択される。
【0051】
澱粉の特性をマトリックスの特性と同じにするかまたは違えさせるように澱粉の特性を特別に作ることは、この種の複合体を用いることにより可能である。
【0052】
例えば、コンポスト化できるバッグの場合、廃棄物を詰めたバックが湿気の有る場所に貯蔵されるときおよび/または圧縮されて接触するときに、澱粉を生分解性の遅いまたは全く生分解性のないポリマーと複合化することによって、脂肪族または脂肪性芳香族ポリエステルマトリックス中に分散された澱粉複合体の生分解性を防止して、前記バッグの早発の分解を回避することが有用であることが分かった。
【0053】
後続して生じる廃棄物の広がりによる早期のバッグの破壊は、煩わしく、有機廃棄物の収集用コンポスト化できるバッグの使用限界を表している。
【0054】
澱粉の生分解性を遅らせるのに用いられるポリマーは、ポリ乳酸、ポリグリコール酸およびポリ(乳酸−グリコール酸)コポリマーを含有する。
【0055】
あまり生分解性のないポリマーの例は、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、エチレン−酢酸コポリマーであり、一般に、前記エチレンコポリマーは、OH基とは別の極性基を含んでいる。
【0056】
ポリエステル系マトリックスと非混和の複合化剤の場合、ポリエステル−澱粉混合物の溶融混合中に直接、澱粉を含む複合体を形成することができる。
【0057】
溶融混合は、澱粉およびポリエステルポリマー成分をレオロジー的に相溶させるのに好適な温度およびせん断条件下で行なわれる。
【0058】
前述の通り、形成されたマトリックスまたは生分解性ポリマー(例えば、脂肪族または脂肪性芳香族ポリエステル)を含むマトリックス中での澱粉複合体の分散は、外部カップリング剤の使用を要しない。
【0059】
澱粉複合体で形成されるフィラーは、0.5〜50重量%の量で疎水性ポリマー中に分散される。最も好適な量は、ポリマーの種類や、ポリマーに与えられる特性に依存する。一般に、2〜30重量%の量が有利に使用され得る。
【0060】
沸騰水による試験では、前記材料は低温貯蔵ミルで粉砕されて、0.5メッシュを通過し得る粉末にされる。
【0061】
前記粉末は、粉末重量の10倍体積の水を含む還流フラスコに導入され、激しく攪拌しながら、必要に応じて超音波処理しながら沸点まで4時間加熱される。
【0062】
以下の実施例は、本発明の非限定的な例示のために提供される。
【0063】
以下の実施例において、特に断りのない限り、成分の量は重量%で表される。
【0064】
実施例1
以下の成分を含むように混合物を調製した。
−セレスター社製グローブ03401澱粉 40%(水 12.8%)
−日本合成社製A−4412EVOH 40%(エチレン44モル%を含むEVOH)
−グリセロール 12%
−水 3%
−尿素 5%
【0065】
前記混合物を、直径(D)20mmおよび長さ/直径比(L/D)30のOMC一軸押出成形機に供給し、以下の温度プロフィール:80/150/140/120℃および約40rpmで作動させた。
【0066】
水分量約6.5%の押出成形された材料を造粒し、次いで直径(D)10mmおよび長さ/直径比(L/D)20のハーケ押出成形機でブロー押出成形により成膜して約30μm厚のフィルムを得た。
【0067】
製造されたフィルムを低温貯蔵ミル内で粉砕し、0.5メッシュを通過し得る粉末にした。次に、粉末約1gを蒸留水100mLと前記混合物を含むフラスコに流し入れ、混合物を激しく攪拌しながら4時間で沸点まで昇温させた。完了時に、不溶の残渣を濾別した。これは初期量の約75%であって、これは澱粉とEVOHの和に対応していた。
【0068】
沸騰している残渣をTEM(透過型電子顕微鏡)で観察したところ、個々の粒子かまたは粒子の凝集によって構成されていた。個々の粒子の直径は0.5μm以下であった。
【0069】
フィルムを二次微分IRで調べたところ、947cm−1に澱粉/EVOH複合体のバンドを有し、そしてX線回折スペクトルでは、2θ13°と20°に2つのピークがあった。
【0070】
実施例2〜4
アミロース約28%を含有するトウモロコシ澱粉を使用した以下の組成物を、実施例1の記載と同様にして調製した。
【表1】

【0071】
沸騰試験における破壊により、澱粉とEVOHの和とほぼ等しい量の不溶残渣が得られた。分離された粒子の直径は0.5μm以下であった。
【0072】
全てのフィルムは、二次微分IRで調べると、947cm−1に複合体のバンドを有しており、X線で調べると、2θ約13°と20°に2つのピークがあった。
【0073】
実施例5〜16
高いアミロース含量の澱粉(ロケット・ユーロリン7、70%アミロース)を使用し、実施例1の記載と同様にして以下の組成物を調製した。
【表2】

【0074】
沸騰試験における破壊により、最も低濃度のEVOHでも、澱粉とEVOHの和とほぼ等しい量の不溶残渣が得られた。分離された粒子の直径は、どの場合も1μm未満であったが、ユーリロン52〜60%の濃度においては、粒子は0.5μmよりも随分小さかった。
【0075】
全てのフィルムは、二次微分IRで調べると、947cm−1に複合体のバンドを有していた。
【0076】
実施例17
水分量6〜10%の複合化澱粉に当たる実施例2、3および4で得られた製品を、ポミニ・ファーレル・ミキサーにおいて、トレッド用SB標準等級76%およびビス-3-トリエトキシシリルプロピルテトラスルフィド4%と155℃で水分量20%で混合した。DMSO中でエッチングした後の最終製品は、TEM分析によれば平均直径0.5μm以下の複合化澱粉のマイクロ分散体を示していた。
【0077】
比較例1
トウモロコシ澱粉をアミロースを含まないワックス状澱粉(スノ−フレーク04201−セレスター社製)に換えたこと以外は実施例5と同じ組成物を調製した。
組成物の成膜と、沸騰水試験でのその破壊は、μm級の粒子の分散体を製造しなかったが、少量のポリマーが、含まれるEVOHと等モル量の塊を作った。
フィルムの一部は、TEMで観察すると微細な層構造を示していた。
【0078】
比較例2
ワックス状澱粉1.7部をユーリロン7澱粉に換えたこと以外は比較例1を繰り返すことにより、最終混合物は、アミロース濃度5%であった。組成物の成膜と沸騰水試験でのその破壊により、EVOH40部と澱粉15部に相当する残渣が製造された。このことは、含まれるアミロースの量が、全てのアミロペクチンの溶媒和を保護するのに十分でなかったことを表していた。
フィルムの一部は、TEMで観察すると微細な層構造を示していた。
【0079】
比較例3
EVOHをデュポン社製エルヴァノール71-30で換えたこと以外は実施例1を繰り返した。
組成物の成膜と沸騰水試験でのその破壊は、不溶残渣を全く生成しなかった。
フィルムの一部は、TEMで観察すると微細な層構造を示していた。
【0080】
実施例18
以下の組成(重量部)を二軸押出成形機APV2030において、180℃/160rpmおよび毎時40Kgのスループットで作動させて押出成形した。
【表3】

【0081】
押出成形後の水分量とMFRは以下の通りであった。
【表4】

【0082】
前記材料をギオルジ(Ghioldi)装置(直径40mmおよびヘッド100mm)で成膜した。
【0083】
バッグ(60×90cm)を製造した。
【0084】
バッグを充填するのにカットガラスを用いた試験を、30℃、75%RHで行ない、以下の結果を与えた。以下の結果は、非可動性バッグを得るのにかかった日数を示す。
【表5】

【0085】
フィルムのIRスペクトルには、約947cm−1に典型的な複合化澱粉のFTIRバンドが見られた。
【0086】
エコフレックスの溶解後、残留澱粉がポリ乳酸およびポリ(乳酸−グリコール酸)と複合化しているのが観察された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
澱粉と非相溶の疎水性ポリマーマトリックス中に数値平均寸法3μm以下の粒子の形態で分散され、前記マトリックスおよび澱粉複合体と相溶する基を含むカップリング剤を用いてまたは前記ポリマーマトリックスに固定される澱粉複合体中に存在する反応性基を用いて前記ポリマーマトリックスと結合される澱粉複合体を、フィラーとして含有する、澱粉と非相溶の疎水性ポリマーであって、前記澱粉複合体が、
940〜950cm−1域の二次微分IR吸収を特徴とし、そして
脂肪族または脂肪性芳香族ポリエステル、脂肪族ポリアミド、ポリアミド
−ポリエステル、ポリウレタンポリエステル、ポリウレタン−ポリアミド、
ポリ尿素−ポリエステルから成る群より選択される疎水性の生分解性ポリ
マーの場合には、前記マトリックスを形成するポリマーとは異なり、またエ チレン−ビニルアルコールコポリマーとも異なるポリマーと澱粉との複合体 または他の複合化剤と澱粉との複合体である、
澱粉と非相溶の疎水性ポリマー。
【請求項2】
澱粉複合体が数値平均寸法1μm以下の粒子の形態で分散されている請求項1記載のポリマー。
【請求項3】
カップリング剤が、ビニルシラン、アルキルチタネートおよびビス-3-トリエトキシシリルプロピルテトラスルフィドから成る群より選択される請求項1または2記載のポリマー。
【請求項4】
前記ポリマーマトリックスを形成するポリマーとは異なる複合化剤が、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ(乳酸−グリコール酸)コポリマー、エチレン−アクリル酸コポリマー、エチレン−酢酸ビニルコポリマーから成る群より選択される請求項1または2記載のポリマー。
【請求項5】
疎水性ポリマー中に分散される前記複合体を含むフィラーの量が、0.5〜50重量%である請求項1〜4のいずれかに記載のポリマー。
【請求項6】
澱粉複合体が、親液性基および疎液性配列を含む、澱粉と相溶するポリマーと澱粉との組成物から製造され、ここで澱粉複合体が発現し、この澱粉複合体から、数値平均直径1μm以下の粒子のミクロ分散体が、攪拌下、100℃の水中での処理によって形成される請求項1〜5のいずれかに記載のポリマー。
【請求項7】
水分量が20%以下でかつ2%以上であり、およびTgが0℃以下の組成物の使用により製造される請求項1〜6のいずれかに記載のポリマー。
【請求項8】
澱粉と複合体を形成できるポリマーが、エチレンと極性モノマーとのコポリマーから成る群より選択される請求項6記載のポリマー。
【請求項9】
コポリマーが、エチレンとビニルアルコール、酢酸ビニルおよび酢酸とのコポリマーから成る群より選択される請求項8記載のポリマー。
【請求項10】
エチレン/ビニルアルコールコポリマーが、ビニルアルコールを50〜75モル%含有する請求項9記載のポリマー。
【請求項11】
澱粉と複合化できる前記ポリマーが、ポリエステル/ポリウレタン、ポリアミド/ポリエステル、脂肪族および脂肪性芳香族ポリエステルおよびポリアミドから成る群より選択される請求項6記載のポリマー。
【請求項12】
澱粉と非相溶の疎水性ポリマーが、エチレンポリマーおよびコポリマー、結晶性プロピレンポリマーおよびコポリマー、芳香族ポリエステル樹脂、ポリアミド、ポリオキシメチレン樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂およびポリカーボネートから成る群より選択される請求項1〜11のいずれかに記載のポリマー。
【請求項13】
疎水性ポリマーが、スチレン−ブタジエンゴム、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、エチレン−プロピレンおよびエチレン−プロピレン−ジエンゴム、および天然ゴムから成る群より選択されるゴムである請求項1〜11のいずれかに記載のポリマー。
【請求項14】
澱粉/ポリマー複合体を含み、複合化するポリマーと複合体との間で連続した相互に浸透した構造部分を形成する組成物を、溶融状態でまたは加熱混練条件下、ポリマーマトリックスおよび複合体と反応し得る基を含むカップリング剤の存在下で、澱粉と非相溶の疎水性ポリマーと混合する請求項1〜13のいずれかに記載の充填されたポリマーを製造する方法。
【請求項15】
澱粉/ポリマー複合体を含む組成物を、140〜160℃の加工温度において、ポリマーマトリックスおよび複合体と反応し得る基を含むカップリング剤の存在下でゴムと混合する請求項1〜13のいずれかに記載の充填されたポリマーを製造する方法。
【請求項16】
カップリング剤が、ビニルおよびテトラスルフィドシラン、およびアルキルチタネートから選択される請求項14または15記載の方法。
【請求項17】
カップリング剤が、前記複合体の0.05〜10重量%の量で使用される請求項14、15および16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
ポリマーマトリックスが、脂肪性芳香族ポリエステル、脂肪族ポリアミド、ポリアミド−ポリエステル、ポリウエレタン−ポリエステル、ポリウレタン−ポリアミドおよびポリ尿素−ポリエステルから成る群より選択される生分解性ポリマーであり、ポリマーマトリックスを形成するポリマーを、請求項1記載の特徴を有し、そしてマトリックスを形成するポリマーとは異なりかつエチレン−ビニルアルコールコポリマーとも異なるポリマーと、または複合化剤と複合化される澱粉から形成されることも特徴とする澱粉の複合体と溶融混合することを含む、請求項1〜13のいずれかに記載の充填されたポリマーを製造する方法。
【請求項19】
澱粉複合体が、予備形成されるかまたは溶融混合中に形成される請求項18記載の方法。
【請求項20】
請求項1〜13のいずれかに記載の疎水性ポリマーから得られる成形物品。
【請求項21】
疎水性ポリマーが、脂肪族および脂肪性芳香族ポリエステル、ポリウレタン−ポリアミド、ポリ尿素−ポリエステル、およびポリウレタン−ポリエステルから成る群より選択される請求項1〜13のいずれかに記載の疎水性ポリマーから得られる成形物品。
【請求項22】
請求項1〜13のいずれかに記載の疎水性ポリマーから得られるフィルム、およびコンポスト化できるバッグ。
【請求項23】
請求項13記載のゴムから得られるタイヤ。

【公開番号】特開2013−18994(P2013−18994A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−219052(P2012−219052)
【出願日】平成24年10月1日(2012.10.1)
【分割の表示】特願2000−574175(P2000−574175)の分割
【原出願日】平成11年9月22日(1999.9.22)
【出願人】(592081988)ノバモント・ソシエタ・ペル・アチオニ (19)
【氏名又は名称原語表記】NOVAMONT SOCIETA PER AZIONI
【Fターム(参考)】