説明

濁度計

【課題】検出器の数を増やしたり、複雑な濁度の演算を行ったり、特殊な形状の散乱光検出器を用いたりすることなく、低コストで精度良く試料液の濁度を測定することが可能な透過散乱光方式の濁度計を提供する。
【解決手段】内部に試料液14が導入される測定セル2と、測定セル内の試料液に光を照射する光源16と、試料液を透過した光20を検出する透過光検出器18と、光反射面24を測定セルに向けた状態で透過光検出器の後方に配置され、透過光検出器の後方に焦点を結ぶ凹面鏡22と、光入射面28を凹面鏡に向けた状態で透過光検出器と凹面鏡との間に配置され、光入射面が凹面鏡の焦点またはその近傍に位置する散乱光検出器とを具備する濁度計とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水道水、河川水、工業排水などの試料液の濁度(濁り)を測定する濁度計に関し、さらに詳述すると、試料液に光を照射し、試料液を透過した光(透過光)および試料液中の微粒子により散乱した光(散乱光)を検出して試料液の濁度を測定する透過散乱光方式の濁度計に関する。
【背景技術】
【0002】
濁度計の測定方式としては、試料液を透過した光のみを検出して濁度を測定する透過光方式、試料液中の微粒子により散乱した光(後方散乱光、前方散乱光、90度散乱光等)のみを検出して濁度を測定する散乱光方式、ならびに、透過光および散乱光の両方を検出して濁度を測定する透過散乱光方式などがある。透過光方式は低濁度の測定に適し、散乱光方式は高濁度の測定に適しているのに対し、透過散乱光方式は低濁度および高濁度の両方の測定に適しているという利点を有する。
【0003】
従来、透過散乱光方式の濁度計として、特許文献1のものが提案されている。特許文献1の図1の濁度計は、図3に示すように、測定セル50内の試料液52に光を照射する光源54と、試料液52を透過した透過光56を検出する透過光検出器58と、透過光検出器58の外方に配置され、試料液52中の微粒子によって散乱した散乱光(後方散乱光)60を検出する第1散乱光検出器62と、透過光検出器58と第1散乱光検出器62との間に配置され、試料液52中の微粒子によって散乱した散乱光(後方散乱光)64を検出する第2散乱光検出器66とを備えたものである。
【0004】
また、特許文献1の図6には、従来技術として、図4に示す濁度計が記載されている。図4の濁度計は、図3と同様の測定セル50および光源54と、試料液52を透過した透過光56を検出する透過光検出器68と、透過光検出器68の外方に配置され、試料液52中の微粒子によって散乱した散乱光(後方散乱光)70を検出する円環状の散乱光検出器72とを備えたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−329629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図3、図4に示した従来の濁度計において、透過光検出器の外方に複数の散乱光検出器を配置したり、円環状の散乱光検出器を配置したりしているのは、光源の正面には透過光検出器が存在するため、なるべく多くの光量の散乱光を検出するためには、上記のように、透過光検出器の外方に複数あるいは円環状の散乱光検出器を配置することが好ましいからである。
【0007】
しかし、図3の濁度計は、複数の散乱光検出器を用いるため、検出器の数が増えるとともに、濁度の演算が複雑になり、濁度の測定コストが高くなるものであった。
【0008】
また、図4の濁度計は、円環状という特殊な形状の散乱光検出器を用いるため、散乱光検出器が高価になり、やはり濁度の測定コストが高くなるものであった。
【0009】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたもので、検出器の数を増やしたり、複雑な濁度の演算を行ったり、特殊な形状の散乱光検出器を用いたりすることなく、低コストで精度良く試料液の濁度を測定することが可能な透過散乱光方式の濁度計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記目的を達成するため、下記第1発明および第2発明に係る濁度計を提供する。
【0011】
(第1発明)
内部に試料液が導入される測定セルと、
前記測定セル内の試料液に光を照射する光源と、
前記試料液を透過した光を検出する透過光検出器と、
放物面状または球面状の光反射面を有し、前記光反射面を前記測定セルに向けた状態で前記透過光検出器の後方に配置され、前記透過光検出器の後方に焦点を結ぶ凹面鏡と、
光入射面を前記凹面鏡に向けた状態で前記透過光検出器と前記凹面鏡との間に配置され、前記光入射面が前記凹面鏡の焦点またはその近傍に位置する散乱光検出器とを具備し、
前記試料液中の微粒子により散乱した光を前記凹面鏡により反射・集光して前記散乱光検出器で検出するとともに、前記透過光検出器および前記散乱光検出器の出力から試料液の濁度を演算することを特徴とする濁度計。
【0012】
(第2発明)
内部に試料液が導入される測定セルと、
前記測定セル内の試料液に光を照射する光源と、
前記試料液を透過した光を検出する透過光検出器と、
放物面状または球面状の光反射面を有し、前記光反射面を前記測定セルに向けた状態で前記光源の前方に配置され、前記光源の前方に焦点を結ぶ凹面鏡と、
光入射面を前記凹面鏡に向けた状態で前記光源と前記凹面鏡との間に配置され、前記光入射面が前記凹面鏡の焦点またはその近傍に位置する散乱光検出器とを具備し、
前記試料液中の微粒子により散乱した光を前記凹面鏡により反射・集光して前記散乱光検出器で検出するとともに、前記透過光検出器および散乱光検出器の出力から前記試料液の濁度を演算することを特徴とする濁度計。
【0013】
本発明に係る透過散乱光方式の濁度計は、散乱光(第1発明では後方散乱光、第2発明では前方散乱光)が凹面鏡の光反射面で反射され、凹面鏡の焦点位置付近に配置された散乱光検出器によって検出される。したがって、本発明の濁度計によれば、凹面鏡によって散乱光を効率的に反射・集光することができ、そのため検出器の数を増やしたり、複雑な濁度の演算を行ったり、特殊な形状の散乱光検出器を用いたりすることなく、低コストで精度良く試料液の濁度を測定することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の濁度計は、検出器の数を増やしたり、複雑な濁度の演算を行ったり、特殊な形状の散乱光検出器を用いたりすることなく、低コストで精度良く透過散乱光方式によって試料液の濁度を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1発明に係る濁度計の一実施形態を示すもので、(a)は模式的正面図、(b)は(a)図b−b線に沿った側面図である。
【図2】第2発明に係る濁度計の一実施形態を示す模式的正面図である。
【図3】従来の濁度計の一例を示す模式的正面図である。
【図4】従来の濁度計の一例を示す模式的正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施形態)
図1は第1発明に係る濁度計の一実施形態を示すもので、(a)は模式的正面図、(b)は(a)図b−b線に沿った側面図である。
【0017】
本例の濁度計において、2は測定セル(フローセル)を示す。測定セル2は、円筒体4の両端開口部に透明な光入射セル窓6および光出射セル窓8が取り付けられているとともに、円筒体4に試料液導入管10および試料液排出管12が連結されたもので、試料液導入管10から内部に試料液14が連続的に導入され、この試料液14が試料液排出管12から連続的に排出されるものである。
【0018】
本例の濁度計は、光入射セル窓6に対向して光源16が配置されているとともに、光出射セル窓8に対向して透過光検出器(フォトダイオード)18が配置され、光源16から出射して測定セル2内の試料液14を透過した透過光20が透過光検出器18で検出されるようになっている。なお、光源としては、例えば、色度による妨害を避けるために、660nm付近の波長の光を照射するものを用いることができる。また、光源16と光入射セル窓6との間に、光源16からの光を平行光にするレンズを設置することができる。
【0019】
本例の濁度計は、透過光検出器18の後方に、凹面鏡22が配置されている。この凹面鏡22は、放物面状または球面状の光反射面24を測定セル2に向けた状態で配置され、透過光検出器18の後方に焦点を結ぶものである。
【0020】
さらに、本例の濁度計では、透過光検出器18と凹面鏡22との間に、散乱光検出器(フォトダイオード)26が配置されている。この散乱光検出器26は、光入射面28を凹面鏡22に向けた状態で配置されているとともに、上記光入射面28は凹面鏡22の焦点またはその近傍に位置しており、凹面鏡22によって反射・集光された後方散乱光30を検出するものである。なお、凹面鏡22は、散乱光を反射・集光できるものであればよく、その材質、構造、大きさ等に限定はない。
【0021】
本例の濁度計は、水道水、河川水、工業排水などの試料液14を測定セル2内に連続的に導入し、光源16から上記試料液14に光を照射するとともに、透過光検出器18および散乱光検出器26によって透過光20および後方散乱光30を検出し、透過光検出器18および散乱光検出器26の出力から試料液の濁度を演算するものである。この場合、濁度の演算方法は、従来と同様の方法を用いることができる。
【0022】
(第2実施形態)
図2は第2発明に係る濁度計の一実施形態を示す模式的正面図である。本例の濁度計は、第1実施形態の濁度計において、凹面鏡および散乱光検出器の設置位置を変えたもので、それ以外の構成は第1実施形態の濁度計と同様であるため、図2において図1と同一の構成部分には、同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0023】
本例の濁度計は、光源16の前方に、凹面鏡22が配置されている。この凹面鏡22は、放物面状または球面状の光反射面24を測定セル2に向けた状態で配置され、光源16の前方に焦点を結ぶものである。
【0024】
さらに、本例の濁度計では、光源16と凹面鏡22との間に、散乱光検出器(フォトダイオード)26が配置されている。この散乱光検出器26は、光入射面28を凹面鏡22に向けた状態で配置されているとともに、上記光入射面28は凹面鏡22の焦点またはその近傍に位置しており、凹面鏡22によって反射・集光された前方散乱光32を検出するものである。
【0025】
本例の濁度計による濁度の測定方法は、第1実施計と同様であるから、説明を省略する。
【符号の説明】
【0026】
2 測定セル
4 円筒体
6 光入射セル窓
8 光出射セル窓
10 試料液導入管
12 試料液排出管
14 試料液
16 光源
18 透過光検出器
20 透過光
22 凹面鏡
24 光反射面
26 散乱光検出器
28 光入射面
30 後方散乱光
32 前方散乱光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に試料液が導入される測定セルと、
前記測定セル内の試料液に光を照射する光源と、
前記試料液を透過した光を検出する透過光検出器と、
放物面状または球面状の光反射面を有し、前記光反射面を前記測定セルに向けた状態で前記透過光検出器の後方に配置され、前記透過光検出器の後方に焦点を結ぶ凹面鏡と、
光入射面を前記凹面鏡に向けた状態で前記透過光検出器と前記凹面鏡との間に配置され、前記光入射面が前記凹面鏡の焦点またはその近傍に位置する散乱光検出器とを具備し、
前記試料液中の微粒子により散乱した光を前記凹面鏡により反射・集光して前記散乱光検出器で検出するとともに、前記透過光検出器および前記散乱光検出器の出力から試料液の濁度を演算することを特徴とする濁度計。
【請求項2】
内部に試料液が導入される測定セルと、
前記測定セル内の試料液に光を照射する光源と、
前記試料液を透過した光を検出する透過光検出器と、
放物面状または球面状の光反射面を有し、前記光反射面を前記測定セルに向けた状態で前記光源の前方に配置され、前記光源の前方に焦点を結ぶ凹面鏡と、
光入射面を前記凹面鏡に向けた状態で前記光源と前記凹面鏡との間に配置され、前記光入射面が前記凹面鏡の焦点またはその近傍に位置する散乱光検出器とを具備し、
前記試料液中の微粒子により散乱した光を前記凹面鏡により反射・集光して前記散乱光検出器で検出するとともに、前記透過光検出器および散乱光検出器の出力から前記試料液の濁度を演算することを特徴とする濁度計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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