説明

濁水処理装置

【課題】 処理対象となる濁水と凝集材とを効率よく混合して凝集物を生成すると共に、生成した凝集物の沈殿及び分離を促進して、放流先の水質基準を満足する放流水とする。
【解決手段】 濁水処理装置は、被処理水中に凝集材を投入する凝集材投入装置70と、凝集材が投入された被処理水を攪拌してフロックを生成する急速攪拌槽10と、急速攪拌槽10から流出した被処理水を急速攪拌槽10よりも遅い速度で攪拌してフロックの成長を促進する緩速攪拌槽20と、緩速攪拌槽20から流出した被処理水中に存在するフロックを沈殿させて除去する沈降槽30と、沈降槽30で除去できなかったフロックを濾過することにより分離して放流水を生成する濾過装置(回転ドラム100、110)を有する固液分離槽(第1固液分離槽40、第2固液分離槽50)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濁水処理装置に関するものであり、例えば、工事現場で発生する濁水を清浄化して、放流先の水質基準を満足させた後に、放流を行うための技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
工事現場で発生する濁水は、多くの現場で貯め置く環境が許されない状況にあることから、工事の支障とならないように、工事敷地内から適宜放流することを強いられる。その際、当然のことながら放流先の水質環境に悪影響を及ぼさないように、水質基準を満足するための処理を行う必要がある。特に、放流先が河川、湖沼、海域である場合には、放流水の水質には厳しい水質基準が適用されるのが一般的である。
【0003】
従来の濁水処理技術では、無機系凝集材と高分子凝集材を単独又は併用して濁水中の土粒子を凝集させた後、要求される単位時間あたりの処理量と同等の貯留容積を有する沈殿池又はシックナーを用いて、凝集した土粒子群を重力によって自然沈降させる方法が採用されている。
【0004】
従来、このような濁水処理装置に関する技術が種々開示されている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。特許文献1に記載された技術は、濁水を上部側から供給して下部側へ流す下降流路と、下降流路の下部に開口して設けられ、下降流を上昇流に反転させる沈殿部と、沈殿部の上部に開口して設けられ、上昇流が流れる上昇流路と、を備えた沈殿物分離部を複数組備えている。
【0005】
また、特許文献2に記載された技術は、濁水の移送配管と、移送配管に連なる移送配管よりも小径の細径配管と、細径配管又はその上流側の移送配管に設けられた凝集剤供給手段と、水の流入口及び流出口を有し、流入口に細径配管が連なる凝集反応用の一時滞留部とを備えている。
【0006】
さらに、特許文献3に記載された技術は、濁水に炭酸ガスを吹き込み、濁水を中和する中和処理装置と、凝集剤溶解液を貯留する凝集剤タンクと、凝集剤の計量及び溶解から凝集剤タンクへの凝集剤溶解液の自動補充までの一連の工程を自動化して行う凝集剤自動補給装置と、凝集剤タンクから投入された凝集剤と中和された濁水とを撹拌混合し、濁水中の浮遊物を凝集させフロックの生成反応を促進させる螺旋式ラインミキサとを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−154690号公報
【特許文献2】特開2004−160353号公報
【特許文献3】特開2006−239619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した従来の技術では、凝集材によって生成される土粒子の凝集物を重力によって自然沈降させている。したがって、その沈降速度は、最大でも7m/h程度(日本ダム協会資料)となることから、清澄な上澄み水を得るためには、要求される単位時間当たり処理量と同等の貯留容積を有する沈殿池又はシックナーが必要であった。
【0009】
また、近年、自然生態系への影響を重要視する見地から、濁水処理の高度化(放流水濁度の厳格化)が求められるようになってきており、例えば、砂ろ過装置を追加して設置し、あるいは大型シックナーを導入する必要がある等、設備的な追加負担を強いられる事例も増えている。
【0010】
また、従来の凝集材が内包する技術的な問題点として、濁水濃度の変動に伴う薬剤の過剰添加を挙げることができる。すなわち、濁水濃度が想定した値よりも極端に低下するような事態が発生した場合には、一時的に凝集材が過剰添加の状態に陥る。このような場合には、不要な薬剤コストをかけているにもかかわらず、逆に凝集沈降分離効果の低下を引き起こすだけではなく、元々メンテナンス頻度の高い砂ろ過装置やシックナーに対する負荷が増大して、維持管理に多大な人手及び経費を要するという問題があった。さらに、放流基準を満たすように厳重な管理を行っているが、万が一、処理水中に未反応の凝集材が混入して白濁すると、放流基準に適合しない処理水を放流してしまうおそれがあり、また、放流先に生息する魚類等の生物に影響を与えることにもなりかねない。
【0011】
本発明は、上述した事情に鑑み提案されたもので、処理対象となる濁水と凝集材とを効率よく混合して凝集物を生成すると共に、生成した凝集物の沈殿及び分離を促進して、放流先の水質基準を満足した放流水とすることが可能な濁水処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の濁水処理装置は、上述した目的を達成するため、以下の特徴点を有している。すなわち、本発明の濁水処理装置は、被処理水中に凝集材を投入する凝集材投入装置と、凝集材が投入された被処理水を攪拌してフロックを生成する急速攪拌槽と、急速攪拌槽から流出した被処理水を急速攪拌槽よりも遅い速度で攪拌してフロックの成長を促進する緩速攪拌槽と、緩速攪拌槽から流出した被処理水中に存在するフロックを沈殿させて除去する沈降槽と、沈降槽で除去できなかったフロックを濾過することにより分離して放流水を生成する濾過装置を有する固液分離槽と、を備えたことを特徴とするものである。
【0013】
固液分離槽に設置する濾過装置は、回転ドラムと、洗浄装置と、備えている。そして、回転ドラムは、水平方向の回転軸を有する筒状枠体と、当該筒状枠体の外周面に取り付けた濾過部材とを有しており、その下半部を被処理水中に浸漬して回転させながら、沈降槽から流出した被処理水を当該回転ドラムの外部から内部へ流入させてフロックを濾過する。また、洗浄装置は、回転ドラムの内面側から、被処理水中に浸漬していない回転ドラムの上半部へ向かって洗浄水又はエアーを噴出して濾過部材を洗浄するようになっている。これにより、被処理水の連続的な処理が可能となる。
【0014】
このような構成からなる濁水処理装置では、まず初めに、凝集材投入装置において、道路、トンネル、シールド、河川、港湾等の土木工事や建築工事で発生する汚濁水(被処理水)中に凝集材を投入する。凝集材は、例えば、天然無機鉱物を原料とする粉体系凝集材を用いることが好ましい。
【0015】
続いて、急速攪拌槽において、凝集材が投入された被処理水を急速攪拌してフロックを生成し、さらに、緩速攪拌槽において、被処理水を緩速攪拌してフロックの成長を促進し、沈降槽において、被処理水中に存在するフロックを沈殿させて除去する。
【0016】
さらに、固液分離槽において、回転ドラム外周面に金網等の濾過部材を取り付けた濾過装置を用いて、沈降槽で除去できなかったフロックを濾過することにより分離して、環境基準等に適合した放流水を生成する。この際、洗浄装置により、回転ドラムの内側から洗浄水やエアーを噴出して金網等からなる濾過部材を洗浄することにより、フロックによる目詰まりを防止する。
【0017】
上述した構成を備えた濁水処理装置において、固液分離槽は、被処理水の流下方向に沿って直列して設けた2つの槽からなり、各槽内にはそれぞれ回転ドラムを備え、下流側の回転ドラムに取り付けた濾過部材は、上流側の回転ドラムに取り付けた濾過部材よりも目の粗さが細かい構成とすることが好ましい。
【0018】
このような構成からなる固液分離槽では、上流側から下流側に向かって設置した2つの回転ドラムにより、それぞれ被処理水中に浮遊するフロックを濾過する。この際、上流側の回転ドラムで濾過できなかったフロックを、さらに目の粗さが細かい濾過部材を取り付けた下流側の回転ドラムにより濾過する。
【0019】
また、上述した構成を備えた濁水処理装置において、固液分離槽に設けた回転ドラムの下方に、整流部材(邪魔板や整流板)を設けた構成とすることが好ましい。このような構成からなる固液分離槽では、整流部材(邪魔板や整流板)により、固液分離槽の底部から上昇する水流を抑制する。
【0020】
また、上述した構成を備えた濁水処理装置において、固液分離槽は、その上部に、洗浄装置により洗浄した後のフロックを含む洗浄水を受け止めて固液分離槽外へ排出するための洗浄水回収部材を備えた構成とすることが好ましい。このような構成からなる固液分離槽では、固液分離槽の上方へ向かって吹き上げられたフロックを含む洗浄水を、洗浄水回収部材で回収することにより、洗浄により除去されたフロックが処理水へ再流入することを防止する。
【0021】
また、上述した構成を備えた濁水処理装置において、各攪拌槽は、回転軸の回転に伴い被処理水を攪拌する攪拌翼を備えると共に、各攪拌槽の一方又は双方は、各攪拌槽内で攪拌される被処理水の流れ方向に略直交する方向に設置した邪魔板を備えた構成とすることが可能である。このような構成からなる急速攪拌槽及び緩速攪拌槽では、邪魔板により乱流を発生させて攪拌を促進させる。
【0022】
また、上述した構成を備えた濁水処理装置において、各攪拌槽の一方又は双方は、圧縮空気を噴出することにより被処理水を攪拌する圧縮空気噴出装置と、各攪拌槽内の被処理水を吸引して再び被処理水中に噴出することにより被処理水を攪拌する泥水ポンプの一方又は双方を備えた構成とすることが可能である。このような構成からなる緩速攪拌槽では、攪拌状況に応じて、攪拌翼だけではなく、圧縮空気噴出装置により被処理水中に圧縮空気を噴出し、あるいは泥水ポンプにより被処理水の攪拌を行うことにより、被処理水の攪拌を促進させる。
【0023】
また、上述した構成を備えた濁水処理装置において、沈降槽は、側面壁の少なくとも1面が着脱可能となっており、複数の沈降槽を並列させると共に、隣合う各沈降槽において対向する側面壁をそれぞれ取り外して、当該隣合う各沈降槽同士を連結することにより全体として一つの沈降槽を形成する構成とすることが好ましい。このような構成からなる沈降槽では、現場における被処理水量に応じて、1単位の沈降槽を複数繋ぎ合わせて大きな沈降槽を形成する。
【0024】
また、上述した構成を備えた濁水処理装置において、沈降槽は、沈殿させたフロックの一部を急速攪拌槽又は緩速攪拌槽の少なくとも一方に戻すフロック戻し機構を備えた構成とすることが好ましい。このような構成からなる沈降槽では、フロック戻し機構により、沈殿させたフロックの一部を攪拌槽へ戻して、被処理水中の浮遊物質と結合させる。
【0025】
また、上述した構成を備えた濁水処理装置において、沈降槽は、緩速攪拌槽から流入する被処理水を当該沈降槽の底面側へ導く潜り堰を備え、当該潜り堰は沈降槽に対して着脱可能である構成とすることが好ましい。このような構成からなる沈降槽では、現場の状況に応じて、潜り堰を取り付けることにより、流入する被処理水を底面側へ導く一方、潜り堰を取り外すことにより、上面側から被処理水を流入させる。
【0026】
また、上述した構成を備えた濁水処理装置において、沈降槽は、被処理水の水流に略直交する方向に設置した整流板と、沈殿したフロックの巻き上がりを防止する邪魔板とを備えた構成とすることが好ましい。このような構成からなる沈降槽では、整流板により被処理水の水流を整流し、邪魔板によりフロックの巻き上がりを防止する。
【0027】
また、上述した構成を備えた濁水処理装置において、沈降槽の整流板及び邪魔板の少なくとも一方は、沈降槽に対して着脱可能であると共に、それぞれ面積が異なる複数種類の有孔板状部材からなり、その設置位置、設置面積及び開口率を変更可能な構成とすることが好ましい。このような構成からなる沈降槽では、現場の状況に応じて、整流板又は邪魔板を取り付けるが、この際、その設置位置、設置面積及び開口率を適宜変更する。
【発明の効果】
【0028】
本発明の濁水処理装置では、急速攪拌槽及び緩速攪拌槽の2つの攪拌槽を備えている。そして、急速攪拌槽において、凝集材を素早く被処理水に溶解させることができると共に、溶解した凝集材の成分と、被処理水中の浮遊物質(以下、SSと称する)とが接触する回数を増加させて、フロックの形成を促進することができる。また、緩速攪拌槽において、急速攪拌槽よりも遅い速度で被処理水を攪拌することにより、急速攪拌槽で形成したフロックの径を増大させることができる。
【0029】
また、固液分離槽において、金網等の濾過部材により、沈降性の悪いフロックを濾過することにより、清澄な処理水を得ることができる。この際、濾過部材を回転ドラムの外周面に取り付け、濾過部材の下部を被処理水に浸漬すると共に、濾過部材の上部を空気中に突出させて回転ドラムを回転させることにより、回転ドラムの外周面の全体にわたって効率よくフロックを濾過することができる。
【0030】
さらに、回転ドラムの濾過部材に対して洗浄水又はエアーを噴出することにより、濾過部材に捕捉されたフロックを吹き飛ばして濾過部材の目詰まりを防止し、さらに効率よくフロックを濾過することができる。また、洗浄水又はエアーの噴出は、回転ドラムの内面側から、被処理水中に浸漬していない回転ドラムの上半部へ向かって行うので、処理後の水質を向上させることができる。さらに、気中で回転ドラムの内側から外側に向けて洗浄を行うことで、濾過部材の洗浄効果を高めることができる。
【0031】
また、固液分離槽を被処理水の流下方向に沿って直列して設けた2つの槽から構成し、各槽内に回転ドラムを備えると共に、下流側の回転ドラムに取り付けた濾過部材の目の粗さを細かく設定した構成の場合には、上流側の回転ドラムで濾過しきれなかった細かなフロックを、下流側の回転ドラムで濾過することができるので、さらに処理後の水質を向上させることができる。
【0032】
また、固液分離槽に設けた回転ドラムの下方に、邪魔板や整流板からなる整流部材を設けた構成とした場合には、回転ドラムの回転等に伴う乱流の発生が抑制されるので、固液分離槽の底部に沈降したフロックが水流により上昇することがなく、さらに処理後の水質を向上させることができる。
【0033】
また、固液分離槽の上部に、洗浄後のフロックを含む洗浄水を受け止めて固液分離槽外へ排出するための洗浄水回収部材を備えた構成とした場合には、洗浄により破壊されたフロックが固液分離槽内に落下することを極力防止して、さらに処理後の水質を向上させることができる。
【0034】
また、各攪拌槽内に、回転軸の回転に伴い被処理水を攪拌する攪拌翼と、各攪拌槽内で攪拌される被処理水の流れ方向に略直交する方向に設置した邪魔板と、を備えた構成とした場合には、攪拌翼だけではなく、邪魔板により攪拌効率をさらに向上させることができる。
【0035】
また、各攪拌槽内に、被処理水を吸引して再び被処理水中に噴出することにより被処理水を攪拌する泥水ポンプを設け、あるいは圧縮空気を噴出して上昇流を発せさせる構成とした場合には、攪拌翼による攪拌とは異なる状態で被処理水が攪拌されるので、さらに攪拌効率を向上させることができる。
【0036】
また、複数個の沈降槽を連結して、所望の大きさの沈降槽を形成する構成とした場合には、被処理水となる濁水の発生量等、現場の状況に応じて適正な処理量を有する沈降槽を形成することができる。また、それぞれ別体となった複数個の沈降槽を単に連結するのではなく、連結面の壁を取り外して連結し、全体として一つの沈降槽を形成する構成としているので、被処理水の水量増加に対応した適切な流速を確保することができ、フロックの分離性能の低下を防止することができる。
【0037】
また、沈降槽に沈殿したフロックの一部を攪拌槽に戻すフロック戻し機構を設けた構成とした場合には、フロックに含まれる余剰の凝集材を再度攪拌槽において利用することができるため、凝集材の添加量が低減される。このため、凝集材の利用効率を高めることができると共に、濁水処理費用を低減することができる。
【0038】
また、沈降槽内に、着脱可能な潜り堰を設けた構成とした場合には、潜り堰を取り付けると、被処理水が底面側から供給される一方、潜り堰を取り外すと、被処理水が上面側から供給されるので、現場の状況に応じて適切な状態で被処理水を沈降槽へ供給することができる。
【0039】
また、沈降槽内に、整流板を設けた構成とした場合には、沈降槽内における乱流の発生を防止して、フロックを効率よく沈降させることができる。また、邪魔板を設けることにより、沈降したフロックの巻き上がりを防止することができる。さらに、整流板又は邪魔板として、それぞれ面積が異なる複数種類から構成すると共に、沈降槽に対して着脱可能な構成とした場合には、現場の状況に応じて、乱流の発生及びフロックの巻き上がりを抑制して、フロックをより一層効率よく沈降させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施形態に係る濁水処理装置の外観を示す斜視図。
【図2】本発明の実施形態に係る濁水処理装置の構成を示す模式図。
【図3】本発明の実施形態に係る急速攪拌槽及び緩速攪拌槽の構成を示す模式図。
【図4】本発明の実施形態に係る沈降槽の構成を示す模式図。
【図5】本発明の実施形態に係る沈降槽の連結態様を示す模式図。
【図6】本発明の実施形態に係る第1固液分離槽、第2固液分離槽及び放流槽の構成を示す模式図。
【図7】本発明の実施形態に係る第1固液分離槽及び第2固液分離槽に設けた洗浄装置の構成を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、図面を参照して、本発明の濁水処理装置の実施形態を説明する。図1〜図7は、本発明の実施形態に係る濁水処理装置を示すもので、図1は濁水処理装置の外観を示す斜視図、図2は濁水処理装置の構成を示す模式図、図3は急速攪拌槽及び緩速攪拌槽の構成を示す模式図、図4は沈降槽の構成を示す模式図、図5は沈降槽の連結態様を示す模式図、図6は第1固液分離槽、第2固液分離槽及び放流槽の構成を示す模式図、図7は第1固液分離槽及び第2固液分離槽に設けた洗浄装置の構成を示す模式図である。
【0042】
<濁水処理装置の概要>
本発明の実施形態に係る濁水処理装置は、図1及び図2に示すように、工事現場等で発生する濁水を清浄化して、放流先の水質基準を満足した処理水を生成するための装置であり、被処理水(濁水)中に凝集材を投入する凝集材投入装置70と、凝集材が投入された被処理水(濁水)を攪拌してフロックを生成する2つの攪拌槽(急速攪拌槽10及び緩速攪拌槽20)と、被処理水(濁水)中に存在するフロックを沈殿させて除去する沈降槽30と、フロックを濾過分離して放流水を生成する濾過装置(回転ドラム100、110)を有する2つの固液分離槽(第1固液分離槽40及び第2固液分離槽50)と、を備えている。また、固液分離槽(第1固液分離槽40及び第2固液分離槽50)で処理済の放流水を一時貯留するための放流槽60を備えた構成としてもよい。
【0043】
<凝集材投入装置>
凝集材投入装置70は、被処理水中に凝集材を投入するための装置であり、単位時間あたりに一定量の凝集材を投入することができればどのような装置であってもよい。公知の薬剤定量投入装置としては、ピストン式、ダイヤフラム式、プランジャ式、スネーク式等のポンプが知られている。例えば、凝集材を蓄積するホッパーと、ホッパーの出口に設けられたスクリューコンベアと、スクリューコンベアを一定速度で回転させるためのモータとを備えた粉体定量投入装置を利用することができる。この場合には、ホッパー内に凝集材を装填し、スクリューコンベアを所定の速度で回転させることにより、必要量の凝集材を急速攪拌槽10内に投入することができる。
【0044】
<凝集材>
本発明の実施形態に使用する凝集材は、濁水中に混入した浮遊物質を凝集させてフロックを形成することができれば、どのような凝集材を使用してもよいが、特に、安全性が高く、汎用性がある凝集材として、天然無機鉱物を原料とする粉体系凝集材を用いることが好ましい。
【0045】
このような凝集材としては、新日本工業株式会社製の「SNKバイオ」を例示することができる。この凝集材は、従来の有機高分子や化学成分を原料とする凝集材とは異なり、天然無機鉱物を原料とする安全性の高い凝集材である。また、pHの高い濁水を処理する場合であっても、炭酸ガスや硫酸による前中和処理を行う必要がない。このため、道路、トンネル、シールド、河川、港湾等の土木工事や建築工事で発生する濁水の処理だけではなく、道路清掃時に発生する濁水の処理や大雨、自然災害による河川の泥水処理、浄水場排泥池の泥水処理にも適用することもできる。さらに、河川等の自然水域に直接放流しても魚類に影響を与えることがなく、例えば10℃以下の低水温であって簡単に処理することができる。
【0046】
<急速攪拌槽>
急速攪拌槽10は、図3に示すように、凝集材が投入された被処理水を攪拌してフロックを生成するための装置である。急速攪拌槽10の底部は、下方へ向かって縮径しながら突出する角錐状、円錐状となっており、最下端部には、フロックを排出するためのフロック排出口15が設けられている。なお、図示しないが、フロック排出口15には開閉装置(蛇口)が設けられており、常時は開閉装置によりフロック排出口15が閉じた状態とされている。そして、急速攪拌槽10の底部に所定量のフロックが溜まると、開閉装置によりフロック排出口15を開いて、急速攪拌槽10内からフロックを排出する。排出されたフロックは、産業廃棄物として処理してもよいが、脱水処理を施した後、緑化基盤や埋め戻し材料に有効利用することができる。
【0047】
急速攪拌槽10の内部には、被処理水を攪拌するための攪拌翼13a、13bが設けられている。この攪拌翼13a、13bは、駆動モータ11に連結した回転軸12に取り付けられており、駆動モータ11を駆動すると回転軸12が回転して、攪拌翼13a、13bによる被処理水の攪拌が行われる。攪拌翼13a、13bの形状は特に限定されるものではないが、確実な攪拌を行うために、タービン翼やI型パドル翼を用いることが好ましい。また、1つの回転軸に対して、1つの攪拌翼だけを設けてもよいが、本実施形態のように複数(例えば、2〜4箇所)の攪拌翼13a、13bを設置することにより攪拌力を高めることができ、凝集材の効果を最大限に引き出すことができる。
【0048】
また、急速攪拌槽10内に、泥水ポンプ16を設置することが好ましい。この泥水ポンプ16は、被処理水を吸引して再び被処理水中に噴出することにより被処理水を攪拌するためのポンプであり、例えば、2〜4inch程度のものを使用する。また、状況に応じて、複数(例えば、2〜4台)の泥水ポンプ16を設置してもよい。
【0049】
また、急速攪拌槽10内に、被処理水の攪拌を促進するための邪魔板14を設置することが好ましい。この邪魔板14は、被処理水の流れ方向に略直交する方向に設置され、被処理水中に乱流を発生させる。邪魔板14の設置数及び設置箇所は、被処理水の状態に応じて適宜変更することができる。
【0050】
また、急速攪拌槽10内に、被処理水の攪拌を促進するための圧縮空気噴出装置26を設置してもよい(図3においては、緩速攪拌槽20に設置されている)。この圧縮空気噴出装置26は、圧縮空気ポンプにより圧縮した圧縮空気を噴出口から噴出することにより被処理水を攪拌するための装置である。例えば、急速攪拌槽10の外部に圧縮空気ポンプを設置し、圧縮空気ポンプに接続した空気パイプの先端部に複数の空気噴出口を設け、この空気噴出口を被処理水中に浸漬させて圧縮空気ポンプを駆動することにより、被処理水中に圧縮空気を噴出させて被処理水を攪拌することができる。
【0051】
急速攪拌槽10では、例えば、攪拌翼13a、13bの回転軸を1300〜1500rpmで回転させることで被処理水を急速攪拌し、被処理水中に凝集材を素早く溶解させると共に、溶解した凝集材の成分と被処理水中のSSとが接触する回数を増加させることができる。急速攪拌槽10における被処理水の滞留時間は、被処理水中のSS等の状況により異なるが、例えば、30〜90secとすることができる。
【0052】
<緩速攪拌槽>
緩速攪拌槽20は、急速攪拌槽10から流出した被処理水を急速攪拌槽10よりも遅い速度で攪拌してフロックの成長を促進するための装置である。本実施形態では、急速攪拌槽10と緩速攪拌槽20との間に潜り堰17が設けられており、急速攪拌槽10で攪拌された被処理水は、潜り堰17を通過して、緩速攪拌槽20の上部から供給される。
【0053】
緩速攪拌槽20は、図3に示すように、急速攪拌槽10と同様の構成からなるが、被処理水の流速を遅くしてフロックの形成を促進させるため、急速攪拌槽10と比較して容積を大きくすることが好ましい。駆動モータ21、回転軸22、攪拌翼23、邪魔板24、フロック排出口25の構成については、上述した急速攪拌槽10に設置したものと同様である。なお、本実施形態では急速攪拌槽10に泥水ポンプ16を設置し、緩速攪拌槽20に圧縮空気噴出装置26を設置しているが、緩速攪拌槽20に泥水ポンプ16を設置してもよいし、急速攪拌槽10に圧縮空気噴出装置26を設置してもよい。
【0054】
また、緩速攪拌槽20の沈降槽30側には、潜り堰27が設置されている。緩速攪拌槽20における被処理水の排出部が水槽の上部に位置すると共に、沈降槽30における被処理水の流入部が水槽の上部に位置する場合には、被処理水が短絡してしまい、被処理水の滞留時間が少なくなるおそれがある。したがって、緩速攪拌槽20の流出側に潜り堰27を設けるとともに、後に詳述するように沈降槽30の流入側に潜り堰32を設けることにより、被処理水の短絡を防止することができる。
【0055】
<沈降槽>
沈降槽30は、図4に示すように、緩速攪拌槽20から流出した被処理水中に存在するフロックを沈殿させて除去するための装置である。沈降槽30の底部は、下方へ向かって縮径しながら突出する角錐状、円錐状となっており、最下端部には、フロックを排出するためのフロック排出口35が設けられている。なお、図示しないが、フロック排出口35には開閉装置(蛇口)が設けられており、常時は、開閉装置によりフロック排出口35が閉じた状態とされている。そして、沈降槽30の底部に所定量のフロックが溜まると、開閉装置によりフロック排出口35を開いて、沈降槽30内からフロックを排出する。排出されたフロックは、産業廃棄物として処理してもよいが、脱水処理を施した後、緑化基盤や埋め戻し材料に有効利用することができる。
【0056】
また、沈降槽30は、その側面壁の少なくとも1面が着脱可能となっている。図4に示す例では、側面壁31が着脱可能となっており、2つの沈降槽を連結して1つの沈降槽30を形成している。すなわち、複数の沈降槽30を並列させると共に、隣合う各沈降槽30において対向する側面壁31をそれぞれ取り外して、当該隣合う各沈降槽30同士を連結することにより全体として一つの沈降槽30を形成できる構成とすることが好ましい。
【0057】
沈降槽30の連結方向は、どのような方向であってもよく、濁水処理装置を設置する現場の地形や面積等に合わせて、適宜連結することができる。例えば、図5に示すように、2個又は3個の沈降槽30を直列あるいは並列に連結したり、あるいは沈降槽30をコ字状に連結したりすることができる。連結する沈降槽30の数及び連結方向は、特に限定するものではなく、濁水の発生量等、現場の状況に応じて適宜な連結状態とすることにより、適正な処理量を有する沈降槽30を形成することができる。
【0058】
なお、連結面となる側面壁を取り外さずに、複数個の沈降槽30を連結した場合には、被処理水の水量が増加すると、その分、沈降槽30内における上向きの流速が速くなり、フロックの分離性能が低下する。したがって、沈降槽30の容量を増加する場合には、本実施形態のように、連結面の壁を取り外して連結し、全体として一つの沈降槽30を形成することが好ましい。
【0059】
また、沈降槽30は、沈殿させたフロックの一部を急速攪拌槽10又は緩速攪拌槽20の少なくとも一方に戻すフロック戻し機構を備えることが好ましい。例えば、フロック排出口35に泥水ポンプ92を連通して接続すると共に、泥水ポンプ92にフロック戻し管(図示せず)の一端を接続し、このフロック戻し管の他端を急速攪拌槽10や緩速攪拌槽20に接続することにより、沈降槽30の底部に沈降したフロックの一部を急速攪拌槽10又は緩速攪拌槽20に戻すことができる。
【0060】
また、沈降槽30は、緩速攪拌槽20から流入する被処理水を、沈降槽30の底面側へ導く潜り堰32を備えた構成とすることが好ましい。さらに、潜り堰32は、沈降槽30に対して着脱可能とすることが好ましい。沈降槽30に潜り堰32を取り付けると、被処理水が底面側から供給されるため、形成されたフロックはそのまま沈降槽30の底部に導かれて停留する。一方、潜り堰32を取り外すと、被処理水が上面側から供給されるため、形成されたフロックが沈降槽30の上部から底部へ向かって沈降する。沈降槽30に対して潜り堰32を取り付けるか否かは、緩速攪拌槽20におけるフロックの形成状況や被処理水の流量等に応じて適宜選択される。
【0061】
また、沈降槽30は、被処理水の水流に略直交する方向に設置した整流板33と、沈殿したフロックの巻き上がりを防止する邪魔板34とを備えた構成とすることが好ましい。この場合、整流板33及び邪魔板34の少なくとも一方は、沈降槽30に対して着脱可能であると共に、それぞれ面積が異なる複数種類の有孔板状部材からなり、その設置位置、設置面積及び開口率を変更可能である構成とすることが好ましい。整流板33及び邪魔板34としては、例えば、土木資材で利用されるネットやパンチングメタルを使用することができる。
【0062】
本実施形態の整流板33は、沈降槽30の上部から下部に向かって設置された板状の部材であり、被処理水が流れる方向に沿って複数枚設けられている。詳細には図示しないが、沈降槽30において、対向する内側面の複数箇所に、上部から下部へ向かう凹状のレールを対向して一対ずつ設け、この一対のレールの上部から整流板33を差し込むことにより、沈降槽30内に整流板33を設置することができる。整流板33の設置枚数及び設置位置は、緩速攪拌槽20におけるフロックの形成状況や被処理水の流量等に応じて適宜選択される。この整流板33により、沈降槽30内に乱流が発生することを防止して、フロックの沈降を促進する。さらに、整流板33を通過することにより、微細フロック同士が衝突してフロック径が大きくなり、フロックの沈降を促進する。
【0063】
邪魔板34は、沈降槽30内の下方において、被処理水の水流に略平行する方向に設置された板状の部材である。この邪魔板34を設けることにより、沈降槽30の底部に停留したフロックの巻き上がりを防止して、第1固液分離槽40へ流れ込む被処理水中に混入するフロック量を減らすことができる。このため、本実施形態の邪魔板34は、沈降槽30内において被処理水の流下方向の下流側に設けられている。また、邪魔板34は、沈降槽30に対して着脱可能な構成としてもよい。この場合、邪魔板34を取り付けるか否かは、緩速攪拌槽20におけるフロックの形成状況や被処理水の流量等に応じて適宜選択することができる。
【0064】
<固液分離槽>
固液分離槽は、沈降槽30で除去できなかったフロックを濾過することにより分離して放流水を生成する濾過装置(回転ドラム100、110)を有する装置である。本実施形態の固液分離槽は、被処理水の流下方向に沿って直列して設けた第1固液分離槽40と第2固液分離槽50の2つからなり、各槽内にはそれぞれ回転ドラム100、110を備え、下流側(第2固液分離槽50)の回転ドラム110に取り付けた濾過部材113は、上流側(第1固液分離槽40)の回転ドラム100に取り付けた濾過部材103よりも目の粗さが細かくなっている。また、沈降槽30と第1固液分離槽40と間には、潜り堰41が設けられている。
【0065】
第1固液分離槽40及び第2固液分離槽50の底部は、下方へ向かって縮径しながら突出する角錐状、円錐状となっており、最下端部には、フロックを排出するためのフロック排出口45、55がそれぞれ設けられている。なお、図示しないが、フロック排出口45、55には開閉装置(蛇口)が設けられており、常時は、開閉装置によりフロック排出口45、55が閉じた状態とされている。そして、第1固液分離槽40又は第2固液分離槽50の底部に所定量のフロックが溜まると、開閉装置によりフロック排出口45、55を開き、第1固液分離槽40又は第2固液分離槽50からフロックを排出する。排出されたフロックは、産業廃棄物として処理してもよいが、脱水処理を施した後、緑化基盤や埋め戻し材料に有効利用することができる。
【0066】
第1固液分離槽40には、回転ドラム100の下方に位置するように邪魔板43が設けられており、第2固液分離槽50には、回転ドラム110の下方に位置するように整流板53が設けられている。邪魔板43及び整流板53は、被処理水中に乱流が発生することを防止する整流部材として機能するが、本実施形態では、整流板53として、孔を有する板状部材を用いているため、両者を区別して、回転ドラム100の下方に位置する整流部材を邪魔板43と称し、回転ドラム110の下方に位置する整流部材を整流板53と称している。
【0067】
邪魔板43及び整流板53により、被処理中に乱流が発生することを防止して、各固液分離槽内部におけるフロックの沈降を促進する。なお、第1固液分離槽40の邪魔板43は、被処理水の流下方向の上流側が下流側よりも低くなるように、斜めに設置することが好ましい。このように、第1固液分離槽40において邪魔板43を斜めに設置することにより、邪魔板43上に流れてきたフロックは、傾斜下端へ向かって滑り落ちるので、邪魔板43上にフロックが滞留することを防止できる。本実施形態では、第2固液分離槽50でフロックを分離した後の被処理水が放流槽60に一時貯留された後、放流される。
【0068】
また、第1固液分離槽40及び第2固液分離槽50の上部に、洗浄装置42、52により洗浄した後のフロックを含む洗浄水を受け止めて排出するための洗浄水回収部材80を設けることが好ましい。洗浄水回収部材80は、後に詳述する洗浄装置42、52により回転ドラム100、110を洗浄した際に、第1固液分離槽40及び第2固液分離槽50の上方へ向かって吹き飛ばされたフロックを含む洗浄水を受け止めて排出するための部材からなる。
【0069】
洗浄水回収部材80は、吹き上げられたフロックを含む洗浄水を受け止めるための屋根板81と、屋根板81により受け止めたフロックを含む洗浄水を排出するための排出樋82とを備えている。屋根板81は、フロックを含む洗浄水を排出樋82へ向かって導くために、一端部から他端部に向かって下り傾斜しており、屋根板81の傾斜下端側に位置するように排出樋82が配置されている。また、排出樋82は、フロックを含む洗浄水を流下させるために、一端部から他端部に向かって下り傾斜している。排出樋82で回収したフロックは、第1攪拌槽10、または原水槽(図示せず)に返送して再処理を行う。
【0070】
図1及び図2に示すように、第1固液分離槽40の回転ドラム100で濾過された被処理水は、槽外に設けた連通管により第2固液分離槽50へ導かれ、第2固液分離槽50の回転ドラム110で濾過された被処理水は、槽外に設けた連通管により放流槽60へ導かれ、清浄水として放流される。
【0071】
また、図6に示すように、放流槽60の底部は、下方へ向かって縮径しながら突出する角錐状、円錐状となっており、最下端部には、フロックを排出するためのフロック排出口65が設けられている。なお、図示しないが、フロック排出口65には開閉装置(蛇口)が設けられており、常時は、開閉装置によりフロック排出口65が閉じた状態とされている。
【0072】
通常運転時には、放流槽60の底部にフロックが溜まることはないが、故障等なんらかの不都合が発生して、放流槽60の底部に所定量のフロックが溜まった場合には、速やかにフロックを第1攪拌槽10、または原水槽(図示せず)に返送して再処理を行うことにより、清浄な放流水とすることができる。
【0073】
本実施形態では、第1固液分離槽40及び第2固液分離槽50の上部に、共通の洗浄水回収部材80を設けているが、各固液分離槽毎に洗浄水回収部材80を設けてもよい。また、回収したフロックを含む洗浄水の状態に応じて、屋根板81を省略し、排出樋82のみを設けてもよい。洗浄水回収部材80で回収したフロックを含む洗浄水は、第1攪拌槽10、または原水槽(図示せず)に返送して再処理を行う。この洗浄水回収部材80を設けることにより、吹き飛ばされたフロックが、再び被処理水中に混入するのを防止することができる。
【0074】
また、固液分離槽の数は2つに限られず、被処理水の性状や流量等に応じて、適宜増減することができる。例えば、沈降槽30で十分にフロックが分離され、被処理水中のSSが少ない場合には、1つの固液分離槽だけを設けてもよいし、沈降槽30から流入する被処理水中のSSが多い場合には、3つあるいは4つ以上の固液分離槽を設けてもよい。この場合にも、下流側の回転ドラムに取り付けた濾過部材は、上流側の回転ドラムに取り付けた濾過部材よりも目の粗さを細かくすることが好ましい。
【0075】
<回転ドラム>
第1固液分離槽40及び第2固液分離槽50に設置された回転ドラム100、110は、水平方向の回転軸101、111を有する筒状枠体102、112と、当該筒状枠体102、112の外周面に取り付けた濾過部材103、113とを備えている。また、図示しないが、回転軸101、111には、それぞれ回転モータの駆動軸が連結されている。そして、回転ドラム100、110の下半部を被処理水中に浸漬して回転させながら、沈降槽30から流出した被処理水を当該回転ドラム100、110の外部から内部へ流入させてフロックを濾過するようになっている。
【0076】
本実施形態の濾過部材103、113は、沈降性の悪いフロックを濾し採るために、例えば150〜350Mesh等の金網を用いている。また、第1固液分離槽40に設けた回転ドラム100の金網と、第2固液分離槽50に設けた回転ドラム110の金網とを比較すると、第1固液分離槽40に設けた回転ドラム100で濾し採ることができなかった細かなフロックを、第2固液分離槽50に設けた回転ドラム110で濾し採るために、第2固液分離槽50に設けた回転ドラム110の金網の方が目の粗さが細かくなっている。
【0077】
なお、本実施形態では2つの固液分離槽を設け、各固液分離槽にそれぞれ1つの回転ドラムを設けているが、各固液分離槽内に複数の回転ドラムを設けてもよい。また、本実施形態では、洗浄の容易さや耐久性等の観点から濾過部材として金網を用いているが、濾過部材は金網に限定されるものではなく、濾布等を用いてもよい。
【0078】
<洗浄装置>
洗浄装置42、52は、回転ドラム100、110の内面側から、被処理水中に浸漬していない回転ドラム100、110の上半部へ向かって洗浄水又はエアーを噴出して濾過部材103、113を洗浄するための装置である。なお、図示しないが、洗浄装置42、52には、水又はエアーを供給するためのポンプが接続されている。また、水を噴出して洗浄を行う場合には、濁度が処理目標となるSS以下であり、pHが中性域もしくは処理水と同等のpHであれば、処理水(濁水処理装置で処理後の水)、水道水、清水等、どのような水を用いてもよいが、放流水の量を増やさないという点で、処理水を用いることが好ましい。また、エアーを噴出して洗浄を行う場合には、回転ドラム100、110内に洗浄用圧縮空気が滞留して濾過障害を生じないように、回転ドラム100、110にエアー抜き機構を設けることが好ましい。
【0079】
なお、濁水処理を行っている間は、回転ドラム100、110の回転を継続することが好ましい。これは、濾過部材103、113にフロックが付着して濾過障害が発生することを極力防止して、洗浄処理の頻度を少なくするためである。また、回転ドラム100、110の回転を継続することにより、空気中に露出した濾過部材103、113にフロックが固着することがなくなり、洗浄を容易に行うことができる。
【0080】
洗浄装置42、52による洗浄は、濁水処理を行っている間、常時行ってもよいし、間欠的に行ってもよい。また、洗浄水による洗浄及びエアーによる洗浄を併用してもよい。さらに、図7に示すように、固液分離槽(第1固液分離槽40及び第2固液分離槽50)内に水位センサー91を設け、水位センサー91が所定の水位を超えたことを検知した場合に、制御装置90の制御により、洗浄装置42、52を動作させる構成とすることができる。すなわち、濾過部材103、113が目詰まりすると、回転ドラム100、110内に流れ込む被処理水の量が減少するため、固液分離槽(第1固液分離槽40及び第2固液分離槽50)内の水位が上昇する。したがって、固液分離槽(第1固液分離槽40及び第2固液分離槽50)内の水位を検知して、濾過部材103、113の洗浄を行うことにより、濾過部材103、113が目詰まりして固液分離槽(第1固液分離槽40及び第2固液分離槽50)から被処理水があふれ出すことを防止できる。また、間欠洗浄を行った場合には、洗浄水量を減らすことができるので、攪拌槽等に返送する洗浄水量を縮減することができると共に、電気代を削減して、処理コストを低減することができる。
【0081】
なお、制御装置90は、どのような構成であってもよいが、例えば、所定の水位を超えたことを水位センサー91が検知すると、その検知信号を受信して洗浄装置42、52に駆動電力を供給するスイッチ機構を用いることができる。
【符号の説明】
【0082】
10 急速攪拌槽
11 駆動モータ
12 回転軸
13a、13b 攪拌翼
14 邪魔板
15 フロック排出口
16 泥水ポンプ
17 潜り堰
20 緩速攪拌槽
21 駆動モータ
22 回転軸
23 攪拌翼
24 邪魔板
25 フロック排出口
26 圧縮空気噴出装置
27 潜り堰
30 沈降槽
31 側面壁
32 潜り堰
33 整流板
34 邪魔板
35 フロック排出口
40 第1固液分離槽
41 潜り堰
42 洗浄装置
43 整流板
45 フロック排出口
50 第2固液分離槽
52 洗浄装置
53 整流板
55 フロック排出口
60 放流槽
65 フロック排出口
70 凝集材投入装置
80 洗浄水回収部材
81 屋根板
82 排出樋
90 制御装置
91 水位センサー
92 泥水ポンプ
100、110 回転ドラム
101、111 回転軸
102、112 筒状枠体
103、113 濾過部材
F フロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水中に凝集材を投入する凝集材投入装置と、
凝集材が投入された被処理水を攪拌してフロックを生成する急速攪拌槽と、
前記急速攪拌槽から流出した被処理水を前記急速攪拌槽よりも遅い速度で攪拌してフロックの成長を促進する緩速攪拌槽と、
前記緩速攪拌槽から流出した被処理水中に存在するフロックを沈殿させて除去する沈降槽と、
前記沈降槽で除去できなかったフロックを濾過することにより分離して放流水を生成する濾過装置を有する固液分離槽と、
を備えた濁水処理装置であって、
前記固液分離槽に設置する前記濾過装置は、回転ドラムと、洗浄装置と、を備え、
前記回転ドラムは、水平方向の回転軸を有する筒状枠体と、当該筒状枠体の外周面に取り付けた濾過部材とを有しており、その下半部を被処理水中に浸漬して回転させながら、前記沈降槽から流出した被処理水を当該回転ドラムの外部から内部へ流入させてフロックを濾過し、
前記洗浄装置は、前記回転ドラムの内面側から、被処理水中に浸漬していない前記回転ドラムの上半部へ向かって洗浄水又はエアーを噴出して前記濾過部材を洗浄する、
ことを特徴とする濁水処理装置。
【請求項2】
前記固液分離槽は、被処理水の流下方向に沿って直列して設けた2つの槽からなり、各槽内にはそれぞれ回転ドラムを備え、下流側の回転ドラムに取り付けた濾過部材は、上流側の回転ドラムに取り付けた濾過部材よりも目の粗さが細かいことを特徴とする請求項1に記載の濁水処理装置。
【請求項3】
前記固液分離槽は、回転ドラムの下方に整流部材を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の濁水処理装置。
【請求項4】
前記固液分離槽は、その上部に、前記洗浄装置により洗浄した後のフロックを含む洗浄水を受け止めて前記固液分離槽外へ排出するための洗浄水回収部材を備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の濁水処理装置。
【請求項5】
前記急速攪拌槽及び前記緩速攪拌槽は、回転軸の回転に伴い被処理水を攪拌する攪拌翼を備えると共に、
前記急速攪拌槽及び前記緩速攪拌槽の少なくとも一方は、各攪拌槽内で攪拌される被処理水の流れ方向に略直交する方向に設置した邪魔板を備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の濁水処理装置。
【請求項6】
前記急速攪拌槽及び前記緩速攪拌槽の少なくとも一方は、圧縮空気を噴出することにより被処理水を攪拌する圧縮空気噴出装置と、各攪拌槽内の被処理水を吸引して再び被処理水中に噴出することにより被処理水を攪拌する泥水ポンプの少なくとも一方を備えたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の濁水処理装置。
【請求項7】
前記沈降槽は、側面壁の少なくとも1面が着脱可能となっており、複数の沈降槽を並列させると共に、隣合う各沈降槽において対向する側面壁をそれぞれ取り外して、当該隣合う各沈降槽同士を連結することにより全体として一つの沈降槽を形成することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の濁水処理装置。
【請求項8】
前記沈降槽は、沈殿させたフロックの一部を前記急速攪拌槽又は前記緩速攪拌槽の少なくとも一方に戻すフロック戻し機構を備えたことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の濁水処理装置。
【請求項9】
前記沈降槽は、前記緩速攪拌槽から流入する被処理水を当該沈降槽の底面側へ導く潜り堰を備え、当該潜り堰は前記沈降槽に対して着脱可能であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の濁水処理装置。
【請求項10】
前記沈降槽は、被処理水の水流に略直交する方向に設置した整流板と、沈殿したフロックの巻き上がりを防止する邪魔板とを備えたことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の濁水処理装置。
【請求項11】
前記整流板及び前記邪魔板の少なくとも一方は、前記沈降槽に対して着脱可能であると共に、それぞれ面積が異なる複数種類の有孔板状部材からなり、その設置位置、設置面積及び開口率を変更可能であることを特徴とする請求項10に記載の濁水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−115770(P2012−115770A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−268012(P2010−268012)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【出願人】(000201478)前田建設工業株式会社 (358)
【出願人】(510317302)新日本工業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】