説明

濃厚な貯蔵安定性蛍光増白剤水溶液

成分(a)、(b)および(c)を含む、濃厚な貯蔵安定性水溶液(S)であって、
成分(a)が式(1)[式中、増白剤におけるアニオン電荷が、水素、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、アンモニウム、C1−4直鎖もしくは分岐アルキルラジカルによってモノ−、ジ−もしくはトリ置換されたアンモニウム、およびC1−4直鎖もしくは分岐ヒドロキシアルキルラジカルによってモノ−、ジ−もしくはトリ置換されたアンモニウムからなる群から選択される1種またはそれ以上のカチオンからなるカチオン電荷によって相殺されている]
で表される少なくとも1種の蛍光増白剤であり、成分(a)の濃度は、濃厚な貯蔵安定性水溶液(S)の全重量を基準として、1kgあたり0.08〜0.3モルであり、
成分(b)が、少なくとも1種の無機塩(SA)であり、濃厚な貯蔵安定性水溶液(S)の全重量を基準として、2〜15重量%の濃度を有し、そして、
成分(c)が水であり、10〜88重量%(濃厚な貯蔵安定性水溶液(S)の全重量を基準とした重量%)の濃度を有する、
濃厚な貯蔵安定性水溶液(S)。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可溶化助剤の使用、単離もしくは膜ろ過工程なしで、優れた貯蔵安定性を有する、特定のトリアジニル−スチルベンをベースとする蛍光増白剤の濃厚な水溶液に関する。上記の増白剤溶液は、サイズプレスまたは着色コーティング組成物のいずれかにおいて紙の表面に塗布された場合に優れた蛍光増白効果を付与し、減少されたアニオン電荷を示す。
【背景技術】
【0002】
製紙業では、蛍光増白剤(OBA)を、便利にそして正確に計量できる濃厚な水溶液の形態で使用することが好まれる。しかしながら、OBAは通常、製造工程の副生成物として形成する無機塩の存在のために、常温で水に対して低い溶解性を有することがよく知られている。
【0003】
このような欠点を避けるために、特開昭62−106965号は、式(I)で表される以下の化合物の非常に可溶性のトリアジニル−スチルベンをベースとするOBAを開示している
【0004】
【化1】

【0005】
[式中、
Mは通常、アルカリ金属原子であり、
pは0、1または2であり、そして
Rは、アミノ基の水素原子が除去されたアミノ酸残基である。]。
【0006】
しかしながら、アミノ酸残基によって生じる高いアニオン電荷は、損紙を再利用すること−すなわち製紙工程で生じた任意の紙廃棄物を再パルプ化すること−を望む製糸業者にとって、蛍光増白剤が、系におけるアニオン電荷の増加(これは例えば、サイズに、または保持および排水目的に使用されるカチオン性化学物質を妨げ得る)をもたらす再パルプ化工程において抽出され得る、という困難をもたらし得る。
【0007】
米国特許第4,466,900号は、減少したアニオン電荷を有する式(1)の化合物(Mは通常アルカリ金属原子であり、pは2であり、そしてRは特に実施例1に従うジエチルアミノラジカルである)を含有する、貯蔵安定性水溶液の製造方法であって、無機塩を除去するために反応混合物を半透膜に通すことを特徴とする方法を開示している。この付加的時間(およびコストを消費する工程)のために、上記方法は経済的に不利である。
【0008】
スイス特許第532,686号は、反応混合物から沈澱させることを特徴とする、減少したアニオン電荷を有する式(I)の化合物(Mは通常アルカリ金属原子であり、pは2であり、そしてRはジアルキルアミノラジカルである。ジ−n−プロピルアミンが表Iに記載されている)の製造および単離を記載している。そのようにして得られる式(I)の固体化合物は、サイズプレスまたはコーティング組成物のいずれかにおいて、紙の増白に直接使用される。しかしながら、この特許では、濃厚な貯蔵安定性の水溶液の製造に関する開示はない。
【0009】
国際公開第2006/000573号は、分岐アルキル鎖を有する脂肪族アルキルアミンから誘導される蛍光増白剤の貯蔵安定性の濃厚な溶液を開示している。式(10)は、第二級アミンであるメチルイソプロピルアミンから誘導されるヘキサスルホン化OBAを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開昭62−106965号
【特許文献2】米国特許第4,466,900号
【特許文献3】スイス特許第532,686号
【特許文献4】国際公開第2006/000573号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、減少されたアニオン電荷を有する蛍光増白剤であって、そこから濃厚な貯蔵安定性増白剤水溶液を、追加的な時間消費工程およびコスト消費工程、例えば膜ろ過、単離、または助剤の添加なしで製造できる蛍光増白剤が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
驚くべきことに、式(1)の化合物は、濃厚な水溶液として製造した場合に、減少したアニオン電荷と高い貯蔵安定性を合わせ持ち、追加の工程段階も可溶化剤も必要とせず、それと同時に、サイズプレスにおいて、または顔料性コーティング組成物において紙の表面に塗布された場合に優れた蛍光増白効果を付与する。
【0013】
本発明は、成分(a)、(b)および(c)を含む、濃厚な貯蔵安定性水溶液(S)であって、
成分(a)が式(1)
【0014】
【化2】

【0015】
[式中、増白剤におけるアニオン電荷が、水素、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、アンモニウム、C1−4直鎖もしくは分岐アルキルラジカルによってモノ−、ジ−もしくはトリ置換されたアンモニウム、およびC1−4直鎖もしくは分岐ヒドロキシアルキルラジカルによってモノ−、ジ−もしくはトリ置換されたアンモニウムからなる群から選択される1種またはそれ以上のカチオンからなるカチオン電荷によって相殺されている]
で表される少なくとも1種の蛍光増白剤であり、成分(a)の濃度は、濃厚な貯蔵安定性水溶液(S)の全重量を基準として、1kgあたり0.08〜0.3モルであり、
成分(b)が、少なくとも1種の無機塩(SA)であり、濃厚な貯蔵安定性水溶液(S)の全重量を基準として、2〜15重量%の濃度を有し、そして、
成分(c)が水であり、10〜88重量%(濃厚な貯蔵安定性水溶液(S)の全重量を基準とした重量%)の濃度を有する、
濃厚な貯蔵安定性水溶液(S)を提供する。
【0016】
場合により、前記の貯蔵安定性水溶液(S)は、成分(a)の性能を高めるため、いわゆるキャリアーとして機能するために、ポリエチレングリコールを、濃厚な貯蔵安定性水溶液(S)の全重量を基準として、2〜40重量%の量で含むことができる。
【0017】
場合により、前記の濃厚な貯蔵安定性水溶液(S)は、成分(a)の性能を高めるため、いわゆるキャリアーとして機能するために、ポリビニルアルコールを、濃厚な貯蔵安定性水溶液(S)の全重量を基準として、0.01〜10重量%の量で含むことができる。
【0018】
式(1)の好ましい化合物は、増白剤におけるアニオン電荷が、Li、Na、K、Ca2+、Mg2+、およびC1−4直鎖もしくは分岐ヒドロキシアルキルラジカルによってモノ−、ジ−もしくはトリ置換されたアンモニウムからなる群から選択される1種またはそれ以上のカチオンからなるカチオン電荷によって相殺されている化合物である。
【0019】
式(1)のより好ましい化合物は、増白剤におけるアニオン電荷が、Na、K、Ca2+、Mg2+、およびC1−4直鎖もしくは分岐ヒドロキシアルキルラジカルによってモノ−、ジ−もしくはトリ置換されたアンモニウムからなる群から選択される1種またはそれ以上のカチオンからなるカチオン電荷によって相殺されている化合物である。
【0020】
式(1)の特に好ましい化合物は、増白剤におけるアニオン電荷が、NaおよびKからなる群から選択される1種またはそれ以上のカチオンからなるカチオン電荷によって相殺されている化合物である。
【0021】
好ましくは、増白剤におけるアニオン電荷が1種またはそれ以上のカチオンからなるカチオン電荷によって相殺されている場合に、異なるカチオンのこの混合物は、2、3、4または5種、より好ましくは2、3または4種、より一層好ましくは2または3種の異なるカチオンを含む。
【0022】
本発明の1つの好ましい態様において、前記の濃厚な貯蔵安定性水溶液(S)は、濃厚な貯蔵安定性水溶液(S)1kgあたり0.08〜0.2モルの成分(a)を、より好ましくは濃厚な貯蔵安定性水溶液(S)1kgあたり0.09〜0.18モルの成分(a)を含む。
【0023】
本発明の別の好ましい態様において、前記の濃厚な貯蔵安定性水溶液(S)は、前記濃厚な水溶液(S)の全重量を基準として、2.5〜14重量%、より好ましくは2.5〜12重量無機塩(SA)を含む。好ましくは、前記塩(SA)は、製造工程の副生成物である。
【0024】
好ましい無機塩(SA)は、アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩、好ましくはリチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウムまたはマグネシウム塩、あるいは前記化合物の混合物である。
【0025】
より好ましくは、無機塩(SA)はハロゲン化リチウム、ハロゲン化ナトリウムまたはハロゲン化カリウム、あるいは前記化合物の混合物である。
【0026】
より一層好ましくは、無機塩(SA)は塩化ナトリウム、塩化カリウム、または前記化合物の混合物である。
【0027】
本発明のさらなる対象は、全ての好ましい実施態様においてまた、シアヌル酸ハライドと以下:
a)遊離酸、部分的もしくは完全に塩形態にある式(2)のアミン、
【0028】
【化3】

【0029】
b)遊離酸、部分的もしくは完全に塩形態にある式(3)のジアミン、
【0030】
【化4】

【0031】
および、
c)式(4)のジ−n−プロピルアミン、
【0032】
【化5】

【0033】
との段階的反応による(水の存在下に、塩基(B)を用いる)、上述の濃厚な貯蔵安定性水溶液(S)を製造する方法である。
【0034】
好ましくは、製造工程から得られた溶液を、貯蔵安定性水溶液(S)の製造に直接、もし必要なら、希釈により所望の最終濃度にして、使用する。好ましくは、濃厚な貯蔵安定性水溶液(S)の製造には、さらなる工程段階、例えば膜ろ過、乾燥等は適用しない。
【0035】
シアヌル酸ハライドとしては、フッ化物、塩化物または臭化物を使用することができる。シアヌル酸クロリドが好ましい。
【0036】
各反応は、水性媒体において実施することができ、シアヌル酸ハライドは水に、または水性/有機媒体に懸濁され、シアヌル酸ハライドは溶媒、例えばアセトンに溶解される。各アミンは、希釈なしで、または水性溶液もしくは懸濁液の形態で導入することができる。芳香族アミンを第一に反応させるのが好ましいが、アミンは、シアヌル酸ハライドと任意の順序で反応させることができる。化学量論的な量のアミンは、式(3)のジアミンの場合にはシアヌル酸ハライドのモル量の半分を意味し、そして、式(2)のアミンおよび式(4)のジ−n−プロピルアミンの場合にはシアヌル酸ハライドと等価のモル量を意味する。各アミンは、シアヌル酸ハライドに対して、化学量論的に、または過剰量で反応させることができる。通常、芳香族アミンは化学量論的にまたはわずかに過剰量で反応させ;式(4)のジ−n−プロピルアミンは通常、化学量論に対して0.1〜30%の過剰で使用される。
【0037】
シアヌル酸ハライドの第一のハロゲンの置換に関しては、0〜20℃の範囲の温度で、そして酸性〜中性pH条件下で、より好ましくは2〜7のpH範囲において行うことが好ましい。シアヌル酸ハライドの第二のハロゲンの置換に関しては、20〜60℃の範囲の温度で、そして弱酸性〜弱アルカリ性条件下で、好ましくは4〜8の範囲のpHにおいて行うことが好ましい。シアヌル酸ハライドの第三のハロゲンの置換に関しては、60〜102℃の範囲の温度で、そして弱酸性〜アルカリ性条件下で、より好ましくは7〜10の範囲のpHにおいて行うことが好ましい。
【0038】
例えば式(2)および(3)の芳香族アミンによる、および式(4)のジ−n−プロピルアミンによる、シアヌル酸ハライドの第一、第二および第三ハロゲンの置換のための反応時間は、10分〜24時間の範囲、好ましくは30分〜10時間、より好ましくは1〜5時間の範囲である。
【0039】
各反応のpHは通常、好適な塩基(B)の添加、塩基(B)の選択により調節され、濃厚な貯蔵安定性水溶液(S)の所望の最終組成により決定される。好ましい塩基(B)は、例えば、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属(例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム)水酸化物、炭酸塩または重炭酸塩、または脂肪族第三級アミン、例えばトリエタノールアミンもしくはトリイソプロパノールアミン、あるいはこれらの組み合わせである。塩基(B)が2種またはそれ以上の異なる塩基の組み合わせである場合には、該塩基は、任意の順序で、または同時に添加することができる。
【0040】
好ましくは、塩(SA)は製造工程の間に、例えば、好適な塩基(B)によるハロゲン化水素の中和により形成し、例えば式1においては塩基(B)は水酸化ナトリウムである。
【0041】
NaOH + HCl → NaCl + HO (式1)

好ましくは、ハロゲン化水素が、例えば式(2)および式(3)の芳香族アミンによるおよび式(4)のジ−n−プロピルアミンによる、シアヌル酸ハライドの3つの置換の間に放出される。
【0042】
反応pHを調節する必要がある場合には、酸を使用することができ、その例には、塩酸、硫酸、ギ酸および酢酸が含まれる。
【0043】
従って、本発明のさらなる対象は、上記で定義された濃厚な貯蔵安定性水溶液(S)(全ての好ましい実施態様においてまた)の、好ましくはセルロース基材、例えば織物、不織布またはより好ましくは紙の蛍光増白のための、蛍光増白剤としての使用である。
【0044】
成分(a)に加えて、式(1)とは構造的に異なる他の蛍光増白剤を使用することができる。
【0045】
織物および不織布の蛍光増白のために、前記の濃厚な貯蔵安定性水溶液(S)は、例えば、処理浴中における増白剤濃度をほぼ一定に維持することができるパジング工程において使用することができる。結合剤、特に合成樹脂を用いた織物(織物または好ましくは不織布)の仕上げにおいて、濃厚な貯蔵安定性水溶液(S)を処理浴において、またはその前に、合成樹脂に添加することができる。蛍光増白剤は、固定することができ、冷却静置(cold dwell)工程または熱処理によって、場合により中間乾燥の後に、仕上げ剤で架橋することができる。酸および塩、例えば塩化マグネシウムおよび塩化亜鉛に対する安定性のために、濃厚な貯蔵安定性水溶液(S)の形態にある式(1)の化合物はまた、綿の蛍光増白および同時の防しわ加工に好適である。濃厚な貯蔵安定性水溶液(S)は、0.01〜2.5重量%、好ましくは0.02〜2.0重量%(乾燥セルロース性基材の重量を基準とした重量%)の範囲内の量で使用することができる。
【0046】
濃厚な貯蔵安定性水溶液(S)は、より好ましくは、紙および不織布の増白のための、より一層好ましくは、シート形成後の紙のまたはウェブ形成後の不織布の蛍光増白のための蛍光増白剤として好適である。
【0047】
特に好ましくは、濃厚な貯蔵安定性水溶液(S)は、シート形成後の紙の増白に適している。これは、濃厚な貯蔵安定性水溶液(S)を顔料性コーティング組成物に、またはサイズ溶液もしくは懸濁液に添加することによって達成することができる。紙は微細性もしくは粗性であることができ、そして漂白もしくは無漂白セルロースであることができる。
【0048】
サイズプレスにおける紙の処理のために、濃厚な貯蔵安定性水溶液(S)を、サイズ溶液もしくは懸濁液1リットルあたり0.5〜125グラム、好ましくは1リットルあたり2〜100グラムの範囲で含むサイズ溶液もしくは懸濁液を使用することができる。前記サイズ溶液もしくは懸濁液はまた、1種またはそれ以上の結合剤を、1〜30重量%、好ましくは2〜20重量%、最も好ましくは5〜15重量%の濃度(サイズ溶液の全重量を基準とした重量%)で含むことができる。前記サイズ溶液もしくは懸濁液のpHは通常5〜9、好ましくは6〜8の範囲内である。
【0049】
結合剤は、天然デンプン、酵素的化工デンプン、化学的化工デンプンおよびそれらの混合物からなる群から選択される。化工デンプンは、好ましくは酸化デンプン、ヒドロキシエチル化デンプンまたはアセチル化デンプンである。天然デンプンは、好ましくはアニオン性デンプン、カチオン性デンプンまたは両性デンプンである。デンプン源は任意でよいが、好ましくはデンプン源はトウモロコシ、コムギ、ジャガイモ、コメ、タピオカまたはサゴである。
【0050】
サイズ溶液もしくは懸濁液は、場合により、濃厚な貯蔵安定性水溶液(S)に含まれる無機塩(SA)とは異なる二価金属塩または二価金属塩の混合物を、サイズ溶液1lあたり1〜100g/l、好ましくは2〜80g/l、特に好ましくは5〜70g/lの濃度で含むことができる。
【0051】
好ましい二価金属塩は、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、臭化カルシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化マグネシウム、硝酸カルシウム、硝酸マグネシウム、ギ酸カルシウム、ギ酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム、クエン酸カルシウム、クエン酸マグネシウム、グルコン酸カルシウム、グルコン酸マグネシウム、アスコルビン酸カルシウム、アスコルビン酸マグネシウム、亜硫酸カルシウム、亜硫酸マグネシウム、重亜硫酸カルシウム、重亜硫酸マグネシウム、亜ジチオン酸カルシウム、亜ジチオン酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、チオ硫酸カルシウム、チオ硫酸マグネシウム、および前記化合物の混合物からなる群から選択される。
【0052】
より好ましい二価金属塩は、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、臭化カルシウム、臭化マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、チオ硫酸カルシウム、チオ硫酸マグネシウム、および前記化合物の混合物からなる群から選択される。
【0053】
特に好ましい二価金属塩は、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、および前記化合物の混合物からなる群から選択される。
【0054】
前記二価金属塩が1種またはそれ以上のカルシウム塩および1種またはそれ以上のマグネシウム塩の混合物である場合、カルシウム塩の量は、添加した二価金属塩の全重量を基準として、0.1〜99.9重量%の範囲内であることができる。
【0055】
濃厚な貯蔵安定性水溶液(S)に加えて、サイズ溶液または懸濁液はまた、1種またはそれ以上のバインダー、水、および場合により式(1)とは構造的に異なる蛍光増白剤、および場合により1種またはそれ以上の二価金属塩を含むことができる。サイズ溶液または懸濁液は、成分(a)の製造の間に形成される副生成物、ならびに、セルロース基材、例えば織物、不織布または紙の処理のために慣用的に使用される他の添加剤を含むことができる。
【0056】
紙添加剤の例は、二次バインダー、不凍液、殺生物剤、消泡剤、ワックスエマルジョン、染料、無機塩、保存剤、錯化剤、増粘剤、表面サイズ剤、架橋剤、顔料、特殊樹脂等である。
【0057】
サイズ組成物は好ましくは、濃厚な貯蔵安定性水溶液(S)および場合により二価金属塩および/または他の任意成分を、バインダー水溶液に、好ましくは20℃〜90℃の温度で添加することによって製造される。
【0058】
前記サイズ組成物は、本技術分野において公知の任意の表面処理方法によって、紙基材の表面に塗布することができる。サイズ組成物の塗布方法の例には、サイズプレス塗布、カレンダーサイズ塗布(calender size application)、タブサイズ、コーティング塗布および噴霧塗布が含まれる。サイズ組成物の塗布の好ましい方法は、サイズプレス、例えばパドルサイズプレスにおけるものである。予め形成させた紙のシートを、サイズ組成物で浸された双ロールニップを通す。紙が組成物の一部を吸収し、残りはニップにおいて除かれる。
【0059】
前記紙基材はセルロース繊維のウェブを含み、それは任意の繊維状植物から得ることができる。好ましくは、セルロース繊維は硬材および/または軟材から得られる。繊維は、新生繊維または再生繊維のいずれかでよく、あるいは、新生繊維および再生繊維の任意の組み合わせでもよい。
【0060】
顔料性コーティング組成物は、少なくとも1種のバインダーおよび1種の白色顔料、特に不透明白色顔料を含有し、追加的にさらなる添加剤、例えば分散剤および消泡剤を含有していてもよい、本質的に水性の組成物である。
【0061】
白色顔料を含まないコーティング組成物を製造することが可能だが、印刷用の最も良好な白色基材は、10〜80重量%(不透明コーティング組成物の全重量を基準とした重量%)の白色顔料を含む不透明コーティング組成物を用いて作られる。そのような白色顔料は、通常、無機顔料、例えば、ケイ酸アルミニウム(例えばカオリン、さもなければ陶土として知られている)、炭酸カルシウム(例えばチョーク)、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、炭酸バリウム、硫酸バリウムまたは硫酸カルシウム(例えばセッコウ)、またはこれらの混合物である。
【0062】
顔料性コーティング組成物におけるバインダーは、製紙産業でコーティング組成物の製造に通常用いられている任意のものでよく、単一のバインダー、または一次および二次バインダーの混合物からなることができる。単独のバインダーもしくは一次バインダーは、好ましくは、合成ラテックス、典型的にはスチレンブタジエン、酢酸ビニル、スチレンアクリル、ビニルアクリルもしくはエチレン酢酸ビニルポリマーである。二次バインダーは、例えばデンプン、カルボキシメチルセルロース、カゼイン、ダイズポリマーまたはポリビニルアルコールであることができる。
【0063】
単独のバインダーもしくは一次バインダーは、通常、5〜25重量%(白色顔料の全重量を基準とする重量%)の範囲の量で使用される。二次バインダーは、通常、0.1〜10重量%(白色顔料の全重量を基準とする重量%)の範囲の量で使用され;しかしながら、デンプンは通常3〜10重量%(白色顔料の全重量を基準とする重量%)の範囲で使用される。
【0064】
前記の濃厚な貯蔵安定性水溶液(S)は、0.01〜3重量%、好ましくは0.05〜2重量%(白色顔料の重量を基準とした重量%)の範囲の成分(a)量が得られる量で使用することができる。
【0065】
式(1)の蛍光増白剤を含有する濃厚な貯蔵安定性水溶液(S)は、特開昭62−106965号に記載の類似化合物と比較して、アニオン電荷が低いという利点を有する。
【0066】
驚くべきことに、式(1)の蛍光増白剤はまた、スイス特許第532,686号および米国特許第4,466,900号に例示されるような、式(1)の化合物のジ−n−プロピルアミノラジカルがジ−n−エチルアミノもしくはジ−n−ブチルアミノラジカルに交換されている類似化合物よりも高い水溶性を有する。
【0067】
驚くべきことに、濃厚な貯蔵安定性水溶液(S)は、特開昭62−106965号に記載の類似化合物と比較して、より良好な使用特性を示す。
【0068】
以下の実施例によって、本発明をさらに詳細に説明する。特に言及しない限り、「%」および「部」は、重量%および重量部を意味するものである。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】スイス特許第532686号からの実施例6によって得られる式(6a)の化合物(左)、および本願からの製造例2aによって得られる式(6)の化合物(右)を、1kgあたり0.150モル含有する水溶液を示す。
【実施例】
【0070】
<製造例1>
520.2部のアニリン−2,5−ジスルホン酸一ナトリウム塩を、900部の水に添加し、約295.1部の30重量%水酸化ナトリウム水溶液を用いて、約25℃および約8〜9のpHで溶解させる。このようにして調製した溶液を約30分の時間をかけて、405部の水および630部の氷に分散させた331.9部のシアヌル酸クロリドへ添加する。氷/水浴を用いて温度を5℃未満に維持し、約504.1部の20重量%炭酸ナトリウム水溶液を用いてpHを約4〜5に維持する。添加の終了時に、約35.1部の20重量%炭酸ナトリウム水溶液を用いてpHを約6に増加させ、反応が完了するまで約0〜5℃で撹拌を継続する。その後、151.2部の重炭酸ナトリウムを反応混合物に添加する。窒素下において、333.4部の4,4’−ジアミノスチルベン−2,2’−ジスルホン酸を1240部の水に、約235.8部の30重量%水酸化ナトリウム水溶液を用いて約45〜50℃および約8〜9のpH値で溶解させることにより得られる水溶液を、反応混合物に滴下する。得られた混合物を約45〜50℃で反応の完了まで撹拌する。得られた水性混合物は、式(5)の化合物を混合物1kgあたり0.161モルの濃度で含有する。
【0071】
【化6】

【0072】
<製造例2a>
製造例1に従って得られた式(5)の化合物を含む水性混合物1234.5部に、42.5部のジ−n−プロピルアミンを添加する。該混合物を還流下で2時間撹拌し、pHは30重量%水酸化ナトリウム水溶液の添加により8〜9に維持する。このようにして調製された水性溶液を60〜65℃に冷却し、ろ過する。水をろ液に添加するか、または留去することにより、1kgの最終の濃厚な貯蔵安定性蛍光増白剤水溶液2aあたり0.150モルの濃度の式(6)の化合物(最終の濃厚な貯蔵安定性蛍光増白剤水溶液2aの全重量を基準として20.4重量%)、および約5.3重量%(最終の濃厚な貯蔵安定性蛍光増白剤水溶液2aの全重量を基準とした重量%)の塩化ナトリウムを含む、濃厚な貯蔵安定性水溶液2aが得られる。そのようにして調製された濃厚な貯蔵安定性蛍光増白剤水溶液2aは8〜9の範囲のpHを有し、5℃で2週間たった後でも沈澱を示さない。
【0073】
【化7】

【0074】
<製造例2b>
以下:
− 製造例2aに従って製造された式(6)の化合物を含有する濃厚な蛍光増白剤水溶液、および
− 平均分子量1500を有するポリエチレングリコール、
を、90〜95℃に加熱しながら一緒に撹拌することにより、濃厚な貯蔵安定性蛍光増白剤水溶液2bを製造する。1kgの最終の濃厚な貯蔵安定性蛍光増白剤水溶液2bあたり0.150モルの濃度の式(6)の化合物と6重量%のポリエチレングリコール1500(最終の濃厚な貯蔵安定性蛍光増白剤水溶液2bの全重量を基準とした重量%)を含む最終の濃厚な貯蔵安定性蛍光増白剤水溶液2bを得るために、各成分の部が選択される。最終の濃厚な貯蔵安定性蛍光増白剤水溶液2bにおいて各成分の所望の濃度を得るためには、水を添加するか、あるいは蒸留により除去する。前記の濃厚な貯蔵安定性蛍光増白剤水溶液2bは8〜9の範囲のpHを有し、約5.3重量%(最終の濃厚な貯蔵安定性蛍光増白剤水溶液2bの全重量を基準とした重量%)の塩化ナトリウムを含む。この手順に従って得られた濃厚な貯蔵安定性蛍光増白剤水溶液2bは、5℃で2週間たった後でも沈澱の徴候を示さない。
【0075】
<比較例2c>
スイス特許第532686号からの実施例6に記載されるのと同一の手順に従うことにより、式(6a)の化合物を粉末として得る(蛍光増白剤におけるアニオン電荷はNaおよび/またはKカチオンによって相殺されている)。
【0076】
【化8】

【0077】
式(6a)の化合物と一緒に、前記粉末は、1.9重量%のナトリウムカチオン、7.5重量%のカリウムカチオン、5.1重量%の塩化物アニオンおよび1.3重量%の水(得られる最終粉末の全重量を基準とした重量%)を含む。
【0078】
式(6a)の化合物を1kgあたり0.150モルの濃度で含有する水性混合物を、スイス特許(CH)第532686号からの実施例6におけるように得られた式(6a)の化合物を含有する粉末を水に添加し、1時間撹拌することによって製造する。
(写真1。付属物を参照。)
【0079】
<比較例3>
1kgの最終の蛍光増白剤水溶液3あたり0.150モルの濃度の式(7)の化合物(最終の蛍光増白剤水溶液3の全重量を基準として19.6重量%)、そして約5.3重量%(最終の蛍光増白剤水溶液3の全重量を基準とした重量%)の塩化ナトリウムを含む蛍光増白剤水溶液3が、製造例2aと同一の手順であって、42.5部のジ−n−プロピルアミンの代わりに30.7部のジエチルアミンが使用される点だけが異なる手順に従って得られる。そのようにして調製された蛍光増白剤水溶液3は8〜9の範囲のpHを有し、5℃で0〜4日以内に沈澱を示す。
【0080】
【化9】

【0081】
<比較例4>
1kgの最終の蛍光増白剤水溶液4あたり0.150モルの濃度の式(8)の化合物(最終の蛍光増白剤水溶液4の全重量を基準として21.3重量%)、および約5.3重量%(最終の蛍光増白剤水溶液4の全重量を基準とした重量%)の塩化ナトリウムを含む蛍光増白剤水溶液4を、製造例2aと同一の手順であって、42.5部のジ−n−プロピルアミンの代わりに54.3部のジ−n−ブチルアミンが使用される点だけが異なる手順に従って得た。そのようにして調製された蛍光増白剤水溶液4は8〜9の範囲のpHを有し、5℃で0〜4日以内に沈澱を示す。
【0082】
【化10】

【0083】
<比較例5a>
1kgの最終の蛍光増白剤水溶液5aあたり0.150モルの濃度の式(9)の化合物(最終の蛍光増白剤水溶液5aの全重量を基準として22.7重量%)および約5.3重量%(最終の蛍光増白剤水溶液5aの全重量を基準とした重量%)の塩化ナトリウムを含む蛍光増白剤水溶液5aが、製造例2aと同一の手順であって、42.5部のジ−n−プロピルアミンの代わりに55.9部のL−アスパラギン酸が使用される点だけが異なる手順に従って得られる。そのようにして調製された蛍光増白剤水溶液5aは8〜9の範囲のpHを有し、5℃で2週間たった後でも沈澱の徴候を示さない。
【0084】
【化11】

【0085】
<比較例5b>
以下:
− 比較例5aに従って製造された式(9)の化合物を含有する水溶液、および
− 平均分子量1500を有するポリエチレングリコール、
を、90〜95℃に加熱しながら一緒に撹拌することにより、蛍光増白剤水溶液5bを製造する。1kgの最終蛍光増白剤水溶液5bあたり0.150モルの濃度の式(9)の化合物と6重量%のポリエチレングリコール1500(最終蛍光増白剤水溶液5bの全重量を基準とした重量%)を含む最終蛍光増白剤水溶液5bを得るために、各成分の部が選択される。最終蛍光増白剤水溶液5bにおいて各成分の所望の濃度を得るためには、水を添加するか、あるいは蒸留により除去する。前記の蛍光増白剤水溶液5bは8〜9の範囲のpHを有し、約5.3重量%(最終蛍光増白剤水溶液5bの全重量を基準とした重量%)の塩化ナトリウムを含む。この手順に従って得られた蛍光増白剤水溶液5bは、5℃で2週間たった後でも沈澱の徴候を示さない。
【0086】
<比較例6a>
国際公開第2006/000573号に開示される式(10)の化合物を1kgの最終の蛍光増白剤水溶液6aあたり0.150モルの濃度(最終の蛍光増白剤水溶液6aの全重量を基準として19.6重量%)で含み、そして約5.3重量%(最終の蛍光増白剤水溶液6aの全重量を基準とした重量%)の塩化ナトリウムを含む蛍光増白剤水溶液6aが、製造例2aと同一の手順であって、42.5部のジ−n−プロピルアミンの代わりに30.7部のN−メチル−N−イソプロピルアミンが使用される点だけが異なる手順に従って得られる。そのようにして調製された蛍光増白剤水溶液6aは8〜9の範囲のpHを有し、5℃で1〜5日以内に沈澱を示す。
【0087】
【化12】

【0088】
<比較例6b>
以下:
− 比較例6aに従って製造された式(10)の化合物を含有する水溶液、および
− 平均分子量1500を有するポリエチレングリコール、
を、90〜95℃に加熱しながら一緒に撹拌することにより、蛍光増白剤水溶液6bを製造する。1kgの最終蛍光増白剤水溶液6bあたり0.150モルの濃度の式(10)の化合物と6重量%のポリエチレングリコール1500(最終蛍光増白剤水溶液6bの全重量を基準とした重量%)を含む最終蛍光増白剤水溶液6bを得るために、各成分の部が選択される。最終蛍光増白剤水溶液6bにおいて各成分の所望の濃度を得るためには、水を添加するか、あるいは蒸留により除去する。前記の蛍光増白剤水溶液6bは8〜9の範囲のpHを有し、約5.3重量%(最終蛍光増白剤水溶液6bの全重量を基準とした重量%)の塩化ナトリウムを含む。この手順に従って得られた蛍光増白剤水溶液6bは、5℃で1週間以内に沈澱を示す。
【0089】
<使用例2aおよび比較使用例5a>
それぞれ0〜80g/l(乾燥蛍光増白剤を基準として0〜約20g/l)の範囲にある以下:
− 製造例2aに従い製造された式(6)の化合物、および
− 比較例5aに従い製造された式(9)の化合物、
を含む蛍光増白剤水溶液の1種を、塩化カルシウム(30g/l)およびアニオン性ジャガイモデンプン(50g/l)(AVEBE B.A.製Perfectamyl A4692)を含む撹拌水溶液に60℃で添加することにより、サイズ溶液を製造する。該サイズ溶液を冷却し、その後、実験用サイズプレスの駆動ローラー間に加え、AKD(アルキルケテンダイマー)でサイズされ、漂白された市販の75g/m原紙シートに塗布する。処理した紙を、平床乾燥機において、70℃で5分間乾燥する。乾燥した紙を調湿し、その後、較正したAuto Elrepho分光光度計においてCIE白色度およびaおよびb値を測定する。結果はそれぞれ表1および表2に示され、これらは本発明によってもたらされる優れた白色度ビルドアップと改善された色合い顕色(shade development)を明確に示している。
【0090】

表1:CIE白色度
【0091】
【表1】

【0092】
表2:CIELAB aおよびb
【0093】
【表2】

【0094】
<使用例2bおよび比較使用例5b>
それぞれ0〜80g/l(乾燥蛍光増白剤を基準として0〜約20g/l)の濃度範囲にある以下:
− 製造例2bに従い製造された式(6)の化合物、および
− 比較例5bに従い製造された式(9)の化合物、
を含む蛍光増白剤水溶液の1種を、塩化カルシウム(30g/l)およびアニオン性ジャガイモデンプン(50g/l)(AVEBE B.A.製Perfectamyl A4692)を含む撹拌水溶液に60℃で添加することにより、サイズ溶液を製造する。該サイズ溶液を冷却し、その後、実験用サイズプレスの駆動ローラー間に加え、AKD(アルキルケテンダイマー)でサイズされ、漂白された市販の75g/m原紙シートに塗布する。処理した紙を、平床乾燥機において、70℃で5分間乾燥する。乾燥した紙を調湿し、その後、較正したAuto Elrepho分光光度計においてCIE白色度およびaおよびb値を測定する。結果はそれぞれ表3および表4に示され、これらは本発明によってもたらされる優れた白色度ビルドアップと改善された色合い顕色を明確に示している。
【0095】
表3:CIE白色度
【0096】
【表3】

【0097】
表4:CIELAB aおよびb
【0098】
【表4】

【0099】
<使用例3>
70部のチョーク(OMYAからHydrocarb 90の商標名で市販されている)、30部のクレー(IMERYSからKaolin SPSの商標名で市販されている)、42.8部の水、0.6部の分散剤(BASFからPolysalz Sの商標名で市販されているポリアクリル酸のナトリウム塩)、20部の50%ラテックス(DowからDL 921の商標名で市販されているスチレンブタジエンコポリマー)、8部の98〜99%の加水分解度および4.0〜5.0mPa.s(20℃で4%水溶液)を有するポリビニルアルコール10%水溶液(0.8部の乾燥ポリビニルアルコール)を含むコーティング組成物を製造する。前記コーティング組成物の固体含有量を、水の添加によって約65%に調節し、pHを水酸化ナトリウムによって8〜9に調節する。
【0100】
それぞれ製造例2aおよび2b、ならびに比較例5aおよび5bに記載されるように製造した蛍光増白剤水溶液2a、2b、5aおよび5bを、乾燥固体の0.8〜2.0重量%の濃度範囲で、撹拌しているコーティング組成物に添加する。その後、増白したコーティング組成物を、標準速度設定およびバーにおける標準負荷で、自動巻線型バーアプリケーター(wire−wound bar applicator)を用いて、中性サイズ処理された市販の75gsm白色原紙シートに塗布する。その後、コーティングした紙を高温気流において2分間乾燥する。乾燥した紙を調湿し、その後、較正したAuto Elrepho分光光度計においてCIE白色度およびCIELAB aおよびb値を測定する。結果はそれぞれ表5および表6に示され、これらは本発明によってもたらされる優れた白色度ビルドアップと改善された色合い顕色を明確に示している。
【0101】
表5:CIE白色度
【0102】
【表5】

【0103】
表6:CIELAB aおよびb
【0104】
【表6】

【0105】
<使用例4>
それぞれ0〜60g/l(乾燥蛍光増白剤を基準として0〜約20g/l)の濃度範囲にある以下:
− 比較例2cに従い製造された式(6a)の化合物、および
− 比較例2aに従い製造された式(6)の化合物、
を含む蛍光増白水性混合物の1種を、アニオン性ジャガイモデンプン(50g/l)(AVEBE B.A.製Perfectamyl A4692)を含む撹拌水溶液に60℃で添加することにより、サイズ溶液を製造する。該サイズ溶液を冷却し、その後、実験用サイズプレスの駆動ローラー間に加え、AKD(アルキルケテンダイマー)でサイズ処理され、漂白された市販の75g/m原紙シートに塗布する。処理した紙を、平床乾燥機において、70℃で5分間乾燥する。
【0106】
乾燥した紙を調湿し、その後、較正したAuto Elrepho分光光度計においてCIE白色度を測定する。結果は表7に示され、これは本発明によってもたらされる優れた白色度ビルドアップを明確に示している。
【0107】
表7:CIE白色度
【0108】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分(a)、(b)および(c)を含む、濃厚な貯蔵安定性水溶液(S)であって、
成分(a)が式(1)で表される少なくとも1種の蛍光増白剤であり
【化1】

[式中、増白剤におけるアニオン電荷が、水素、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、アンモニウム、C1−4直鎖もしくは分岐アルキルラジカルによってモノ−、ジ−もしくはトリ置換されたアンモニウム、およびC1−4直鎖もしくは分岐ヒドロキシアルキルラジカルによってモノ−、ジ−もしくはトリ置換されたアンモニウムからなる群から選択される1種またはそれ以上のカチオンからなるカチオン電荷によって相殺されている]、
そして成分(a)の濃度は、濃厚な貯蔵安定性水溶液(S)の全重量を基準として、1kgあたり0.08〜0.3モルであり、
成分(b)が、濃厚な貯蔵安定性水溶液(S)の全重量を基準として2〜15重量%の濃度にある、少なくとも1種の無機塩(SA)であり、そして、
成分(c)が、濃厚な貯蔵安定性水溶液(S)の全重量を基準として10〜88重量%の濃度にある水である、
濃厚な貯蔵安定性水溶液(S)。
【請求項2】
ポリエチレングリコールを、濃厚な貯蔵安定性水溶液(S)の全重量を基準として2〜40重量%の量でさらに含むことを特徴とする、請求項1記載の濃厚な貯蔵安定性水溶液(S)。
【請求項3】
ポリビニルアルコールを、濃厚な貯蔵安定性水溶液(S)の全重量を基準として、0.01〜10重量%の量でさらに含むことを特徴とする、請求項1または2記載の濃厚な貯蔵安定性水溶液(S)。
【請求項4】
式(1)の増白剤におけるアニオン電荷が、Li、Na、K、Ca2+、Mg2+、およびC1−4直鎖もしくは分岐ヒドロキシアルキルラジカルによってモノ−、ジ−もしくはトリ置換されたアンモニウムからなる群から選択される1種またはそれ以上のカチオンからなるカチオン電荷によって相殺されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1つに記載の濃厚な貯蔵安定性水溶液(S)。
【請求項5】
成分(a)の濃度が、濃厚な貯蔵安定性水溶液(S)1kgあたり0.08〜0.2モル、より好ましくは0.09〜0.18モルであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1つに記載の濃厚な貯蔵安定性水溶液(S)。
【請求項6】
無機塩(SA)/成分(b)の濃度が、濃厚な水溶液(S)の全重量を基準として2.5〜14重量%、より好ましくは2.5〜12重量%であり、そして前記塩(SA)が製造工程の副生成物であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1つに記載の濃厚な貯蔵安定性水溶液(S)。
【請求項7】
無機塩(SA)が、アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩、好ましくはリチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウムまたはマグネシウム塩、あるいは前記化合物の混合物であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1つに記載の濃厚な貯蔵安定性水溶液(S)。
【請求項8】
シアヌル酸ハライドと以下:
a)遊離酸、部分的もしくは完全に塩形態にある式(2)のアミン、
【化2】

b)遊離酸、部分的もしくは完全に塩形態にある式(3)のジアミン、
【化3】

および、
c)式(4)のジ−n−プロピルアミン、
【化4】

との段階的反応による(水の存在下に、塩基(B)を用いる)、請求項1記載の濃厚な貯蔵安定性水溶液(S)を製造する方法。
【請求項9】
シアヌル酸ハライドがフッ化物、塩化物または臭化物として使用される、請求項8記載の方法。
【請求項10】
シアヌル酸ハライドが水に、または水性/有機媒体に懸濁される、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
芳香族アミン(2)および(3)を化学量論的にまたはわずかに過剰量で反応させ、そしてジ−n−プロピルアミン(4)を化学量論に対して0.1〜30%の過剰で使用する、請求項8〜10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
第一の反応工程が0〜20℃の範囲の温度で行われ、第二の反応工程が20〜60℃の範囲の温度で行われ、そして第三の反応工程が60〜102℃の範囲の温度で行われる、請求項8〜11のいずれか1つに記載の方法。
【請求項13】
第一の反応工程が酸性〜中性条件下で行われ、第二の反応工程が弱酸性〜弱アルカリ性条件下で行われ、そして第三の反応工程が弱酸性〜アルカリ性条件下で行われる、請求項8〜12のいずれか1つに記載の方法。
【請求項14】
塩基(B)が、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属水酸化物、炭酸塩または重炭酸塩、または脂肪族第三級アミン、あるいはこれらの組み合わせである、請求項8〜13のいずれか1つに記載の方法。
【請求項15】
セルロース基材、織物または不織布材料の蛍光増白のために、蛍光増白剤として請求項1〜7のいずれか1つに記載の濃厚な貯蔵安定性溶液(S)を使用する方法。
【請求項16】
織物および不織布の蛍光増白のために使用される場合に、溶液(S)がセルロース性材料の重量を基準として0.01〜2.5重量%の量で使用される、請求項15記載の方法。
【請求項17】
サイズプレス、サイズ溶液もしくは懸濁液における紙の処理のために、溶液(S)を、サイズ溶液もしくは懸濁液1リットルあたり0.5〜125グラムの濃度で使用する、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
請求項1〜7のいずれか1つに記載の濃厚な貯蔵安定性溶液(S)を含む、紙の処理のためのサイズ溶液もしくは懸濁液。
【請求項19】
溶液(S)が、サイズ溶液もしくは懸濁液1リットルあたり0.5〜125グラムの濃度で含まれる、請求項18記載のサイズ溶液もしくは懸濁液。
【請求項20】
以下の群:天然デンプン、酵素的化工デンプン、化学的化工デンプンおよびそれらの混合物、からなる群から選択される1種またはそれ以上の結合剤を追加的に含む、請求項18または19に記載のサイズ溶液。
【請求項21】
前記塩(SA)とは異なる二価金属塩または二価金属塩の混合物をさらに含む、請求項18〜20のいずれか1つに記載のサイズ溶液。
【請求項22】
1種またはそれ以上の結合剤、水、および場合により、式(1)とは構造的に異なる他の蛍光増白剤をさらに含む、請求項18〜21のいずれか1つに記載のサイズ溶液。
【請求項23】
請求項1〜7のいずれか1つに記載の濃厚な貯蔵安定性溶液(S)を含む、顔料性コーティング組成物。

【図1】
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【公表番号】特表2013−512971(P2013−512971A)
【公表日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−541355(P2012−541355)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【国際出願番号】PCT/EP2010/007287
【国際公開番号】WO2011/066955
【国際公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(398056207)クラリアント・ファイナンス・(ビーブイアイ)・リミテッド (182)
【Fターム(参考)】