説明

濃度測定装置及び濃度測定方法

【課題】構成が簡単であり、光検出器の感度の温度変化に起因する測定誤差を低減させることが可能な濃度測定装置を提供する。
【解決手段】濃度測定装置は、固有吸収波長λ1及び非吸収波長λ2の光を含む第1出射光3A1及び第2出射光3A2を試料4に照射する光源3と、試料4を透過した第1出射光3C1及び第2出射光3C2がそれぞれ入射する第1光検出器13及び第2光検出器15と、試料4と第2光検出器15との間に設けられた第2光アッテネータ7と、第2光アッテネータ制御部21とを備える。第1及び第2光検出器13、15の光電変換部45は、同一の光電変換原理に基づくと共に同一の材料からなり、第2光アッテネータ制御部21は、第2光検出器15に入射する第2出射光3E2の強度を、第1光検出器13に入射する第1出射光3E1の強度に近づけるように第2光アッテネータ7の光透過率を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濃度測定装置及び濃度測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1の図8には、受光素子(光検出器)を1つ使用するガス濃度測定装置が記載されている。この装置は、光源と、気体試料を収納するチャンバと、気体試料中の測定対象ガスの固有吸収波長の光を選択的に透過させるバンドパスフィルタと、1つの受光素子としての焦電素子と、を備えている。この装置では、光源から出射したパルス光は、チャンバ内の気体試料中を進行してチャンバ外に出射する。チャンバ外に出射したパルス光は、バンドパスフィルタを通過した後に、焦電素子に入射する。パルス光のうち測定対象ガスの固有吸収波長付近の波長を有する光は、気体試料中を進行する際、気体試料中の測定対象ガスの濃度に対応した割合で測定対象ガスに吸収されるため、焦電素子に入射するパルス光の光強度は、測定対象ガスの濃度に対応して変化する。そのため、焦電素子に入射するパルス光の光強度から、気体試料中の測定対象ガスの濃度を算出することができる。
【0003】
また、下記特許文献1の図1及び図9には、受光素子(光検出器)を2つ使用するガス濃度測定装置が記載されている。これらの装置は、光源と、気体試料を収納するチャンバと、気体試料中の測定対象ガスの固有吸収波長付近の波長を有する光を選択的に透過させる第1のバンドパスフィルタと、気体試料中の各種ガスによっては実質的に吸収されない波長(非吸収波長)付近の波長を有する光を選択的に透過させる第2のバンドパスフィルタと、2つの受光素子としての第1の焦電素子及び第2の焦電素子を備えている。
【0004】
これらの装置では、光源から出射したパルス光は、チャンバ内の気体試料中を進行して、チャンバの2つの光出射面(端面)からチャンバ外に出射する。チャンバの一方の光出射面から出射したパルス光は、第1のバンドパスフィルタを通過した後に、第1の焦電素子に入射する。チャンバの他方の光出射面から出射したパルス光は、第2のバンドパスフィルタを通過した後に、第2の焦電素子に入射する。第1の焦電素子に入射するパルス光の光強度は、上述の受光素子(光検出器)を1つ使用するガス濃度測定装置における場合と同様に、測定対象ガスの濃度に対応して変化する。一方、第2の焦電素子に入射するパルス光の光強度は、気体試料中の測定対象ガスの濃度には依存しない。
【0005】
そして、下記特許文献1の図1に記載のガス濃度測定装置においては、第2の焦電素子の出力値(測定値)が設定した基準値に近づくように光源の出射光の強度をフィードバック制御することにより光源の出射光の強度変動を抑制すると共に、第1の焦電素子の出力値(測定値)を基に測定対象ガスの濃度を算出している。
【0006】
また、下記特許文献1の図9に記載のガス濃度測定装置においては、第1の焦電素子の出力値と第2の焦電素子の出力値の比、即ち、気体試料を通過した後の光のうち、測定対象ガスの固有吸収波長付近の波長を有する光の強度と非吸収波長付近の波長を有する光の強度の比を割算器によって演算することにより、気体試料中の測定対象ガスの濃度を算出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−128956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1の図8に記載されているような光検出器を1つ使用するガス濃度測定装置においては、光源の劣化等により光源の出射光の強度が変動すると、測定対象ガスの濃度に関わらず受光素子に入射する光の強度が変動してしまうため、測定対象ガスの濃度の測定値に誤差が生じてしまう。
【0009】
それに対して、上記特許文献1の図1及び図9に記載されているような光検出器を2つ使用するガス濃度測定装置においては、光源の出射光の強度の変動に起因する測定対象ガスの測定値の誤差をある程度低減させることができる。具体的には、上記特許文献1の図1に記載されているようなガス濃度測定装置においては、第2の焦電素子の出力値を基に光源の出射光の強度の変動を抑制しているため、光源の出射光の強度の変動に起因する測定値の誤差をある程度低減させることができる。
【0010】
また、上記特許文献1の図9に記載されているようなガス濃度測定装置においては、測定対象ガスの固有吸収波長付近の波長を有する光の強度と非吸収波長付近の波長を有する光の強度の比を用いて、気体試料中の測定対象ガスの濃度を算出している。光源の出射光の強度が変動した場合、第1の光検出器に入射する光の強度と、第2の光検出器に入射する光の強度は、略同じ割合で変動するため、上記の比を算出する際に、光源の出射光の強度変動に起因する第1の光検出器の出力変動と第2の光検出器の出力変動とをある程度相殺させることができる。その結果、光源の出射光の強度の変動に起因する測定値の誤差をある程度低減させることができる。
【0011】
しかしながら、光検出器の感度(光強度と出力との相関関係)は、温度依存性を有する。即ち、光検出器の出力値は、光検出器内の光電変換部の温度が変動してしまうと、入射する光の強度に関わらず、変動してしまう。そのため、上記特許文献1の図1に記載されているようなガス濃度測定装置においては、測定中に第1の焦電素子の光電変換部の温度が変化すると、第1の焦電素子の感度の変化に起因して測定対象ガスの測定値に誤差が生じてしまう上に、第2の焦電素子の感度の変化に起因して光源の強度の変動に起因する測定誤差を適切に低減させることができなくなってしまうため、測定対象ガスの濃度を精度よく測定することが困難である。
【0012】
また、上記特許文献1の図9に記載されているような光検出器を2つ使用するガス濃度測定装置においては、第1の焦電素子の出力値と第2の焦電素子の出力値の比を基に気体試料中の測定対象ガスの濃度を算出しているため、第1と第2の光検出器の感度の温度依存性はある程度互いに相殺され、上述のような光検出器の感度の温度依存性に起因する測定誤差は、ある程度抑制されるとも考えられる。
【0013】
しかしながら、第1の光検出器に入射する光の強度と、第2の光検出器に入射する光の強度は、通常互いに異なっている。具体的には、第1の光検出器に入射する光は、測定対象ガスの固有吸収波長付近の波長を有するため、測定対象ガスにある程度吸収されて強度が相対的に低くなっているのに対して、第2の光検出器に入射する光は、非吸収波長付近の波長を有するため、気体試料中の各種ガスに実質的に吸収されず、強度が相対的に高くなっている。そのため、測定中における、第1の光検出器の光電変換部の温度と第2の光検出器の光電変換部の温度は、通常互いに異なっている。このように第1の光検出器の光電変換部の温度と第2の光検出器の光電変換部の温度が互いに異なっていると、第1の光検出器の感度と第2の光検出器の感度は、異なる割合で変動してしまう。そのため、第1の光検出器の出力値と第2の光検出器の出力値の比を基に気体試料中の測定対象ガスの濃度を算出しても、第1と第2の光検出器の感度の温度依存性を互いに十分に相殺することができないため、測定対象ガスの測定値に誤差が生じてしまう。
【0014】
上述のような光検出器の感度の温度依存性の問題を解決するために、第1の光検出器と第2の光検出器の感度の温度依存性を予め測定しておき、第1の光検出器の光電変換部と第2の光検出器の光電変換部の温度をそれぞれ測定する温度測定器をガス濃度測定装置に設けることが考えられる。この温度測定器で測定した第1の光検出器と第2の光検出器の温度と、第1の光検出器と第2の光検出器の感度の温度依存性に基づいて、第1の光検出器と第2の光検出器の出力値を補正することにより、光検出器の温度補償を行うことができる。
【0015】
しかしながら、このような方法で光検出器の温度補償を行うと、ガス濃度測定装置の構成が複雑になる上に、予め測定した第1の光検出器と第2の光検出器の感度の温度依存性に誤差があると、測定対象ガスの濃度の測定誤差につながるため、精度よく測定対象ガスの濃度を測定することは困難である。
【0016】
以上のような理由により、従来のガス濃度測定装置では、光検出器の感度の温度変化に起因する測定誤差を十分に低減させることが困難であった。
【0017】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、構成が簡単であり、光検出器の感度の温度変化に起因する測定誤差を低減させることが可能な濃度測定装置及び簡単な構成で光検出器の感度の温度変化に起因する測定誤差を低減させることが可能な濃度測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上述の課題を解決するため、本発明に係る濃度測定装置は、試料に含まれる測定対象物質の濃度を測定する濃度測定装置であって、第1波長の光を含む第1出射光を試料に照射する第1光源と、第2波長の光を含む第2出射光を照射する第2光源と、試料を透過した第1出射光が入射するように設けられた光の強度信号を出力する第1光検出器と、第2出射光が入射するように設けられた光の強度信号を出力する第2光検出器と、試料を透過した第2出射光が入射するように試料と第2光検出器との間に設けられ、光透過率が可変である第2光アッテネータと、第2光アッテネータの光透過率を制御する第2光アッテネータ制御部と、測定対象物質の濃度を算出する算出部と、を備え、第1波長の光の測定対象物質による光吸収率は、第2波長の光の測定対象物質による光吸収率よりも高く、第1光検出器の光電変換部と第2光検出器の光電変換部は、同一の光電変換原理に基づくと共に、同一の材料からなり、第2光アッテネータ制御部は、第1光検出器の出力値及び第2光検出器の出力値に基づいて、第2光検出器に入射する第2出射光の強度を、第1光検出器に入射する第1出射光の強度に近づけるように第2光アッテネータの光透過率を制御し、算出部は、第2光アッテネータの光透過率に基づいて測定対象物質の濃度を算出する。
【0019】
本発明に係る濃度測定装置においては、第2光検出器に入射する第2出射光の強度が、第1光検出器に入射する第1出射光の強度と等しくなる場合の第2光アッテネータの光透過率は、第1光検出器に入射する第1出射光の強度を、仮想的に第2光アッテネータの光透過率を100%とした場合における第2光検出器に入射する第2出射光の強度で除した値に比例する。そして、第1波長の光の測定対象物質による光吸収率は、第2波長の光の測定対象物質による光吸収率よりも高いため、仮想的に第2光アッテネータの光透過率を100%とした場合において、第1光検出器に入射する第1出射光の強度、及び、第2光検出器に入射する第2出射光の強度は、測定対象物質の濃度に対応して異なる割合で変化する。そのため、第2光アッテネータの光透過率は、試料中における測定対象物質の濃度に対応した値となり、第2光アッテネータの光透過率から、試料中における測定対象物質の濃度を算出することができる。
【0020】
さらに、本発明に係る濃度測定装置においては、第1光検出器の光電変換部と第2光検出器の光電変換部は、同一の光電変換原理に基づくと共に同一の材料からなるため、第1光検出器の感度(光強度と出力との相関関係)の光電変換部の温度依存性と、第2光検出器の感度の光電変換部の温度依存性は、実質的に同じになる。そして、本発明に係る濃度測定装置においては、第2光アッテネータによって、第2光検出器に入射する第2出射光の強度が、第1光検出器に入射する第1出射光の強度に近づくように制御されているため、測定中における第1光検出器の光電変換部の温度と第2光検出器の光電変換部の温度は、略等しくなるように制御される。これにより、測定中における第1光検出器の感度の変化の割合と第2光検出器の感度の変化の割合は、実質的に等しくなる。そのため、第1光検出器の光電変換部及び第2光検出器の光電変換部の温度変化に起因する第1光検出器の出力値の誤差の割合と第2光検出器の出力値の誤差の割合は、実質的に等しくなる。
【0021】
そのため、第1光検出器に入射する第1出射光の強度を、第2光検出器に入射する第2出射光の強度で除した値(即ち、第1出射光の強度と第2出射光の強度の比)においては、これらの誤差は互いに相殺される。これにより、第1光検出器の光電変換部及び第2光検出器の光電変換部の温度が変化しても、第2光アッテネータの光透過率の制御への影響は低減される。その結果、本発明に係る濃度測定装置によれば、第1光検出器の光電変換部と第2光検出器の光電変換部の温度をそれぞれ測定する温度測定器を設けずに光検出器の温度補償を行うことができるため、構成が簡単になる。さらに、上述のように、第1光検出器と第2光検出器の入出力値を近づけることによってこれらの光検出器の温度補償を行うため、これらの光検出器の感度の温度依存性を予め測定しておく必要がない。そのため、これらの光検出器の温度依存性を予め測定する際の測定誤差に起因して、測定対象ガスの濃度の測定誤差が生じることはない。従って、本発明に係る濃度測定装置は、構成が簡単であり、光検出器の感度の温度変化に起因する測定誤差を低減させることが可能である。
【0022】
さらに、第1波長は、測定対象物質の固有吸収波長であり、第2波長は、試料に含まれる各物質の各固有吸収波長と異なる非吸収波長であることが好ましい。これにより、第1光検出器に入射する第1出射光の強度は、測定対象物質の濃度に対応してより大きく変化し、第2光検出器に入射する第2出射光の強度は、測定対象物質の濃度にほぼ依存しなくなる。その結果、測定対象物質の濃度変化に対する第2光アッテネータの光透過率の変化率がより大きくなるため、測定対象物質の濃度の測定をより高精度に行うことができる。
【0023】
さらに、算出部は、試料全体に対する測定対象物質の比率として、測定対象物質の濃度を算出することが好ましい。これにより、試料全体に対する測定対象物質の比率としての測定対象物質の濃度を測定することができる。
【0024】
また、試料は、参照用物質をさらに含み、第2出射光は、第2光検出器に入射する前に試料を透過し、第2波長の光の参照用物質による光吸収率は、第1波長の光の参照用物質による光吸収率よりも高く、算出部は、測定対象物質及び参照用物質の合計に対する測定対象物質の比率として、測定対象物質の濃度を算出することが好ましい。
【0025】
これにより、測定対象物質による第1波長の光の吸収率と参照用物質による第1波長の光の吸収率の比、及び、測定対象物質による第2波長の光の吸収率と参照用物質による第2波長の光の吸収率の比から、測定対象物質及び参照用物質の合計に対する測定対象物質の比率としての測定対象物質の濃度を算出することができる。
【0026】
さらに、本発明に係る濃度測定装置においては、第1光検出器の光電変換部と第2光検出器の光電変換部は、同一であることが好ましい。これにより、第1光検出器の光電変換部及び第2光検出器の光電変換部の温度変化に起因する第1光検出器の出力値の誤差の割合と第2光検出器の出力値の誤差の割合は、さらに近い値となる。その結果、光検出器の感度の温度変化に起因する測定誤差を、さらに低減させることが可能となる。
【0027】
さらに、本発明に係る濃度測定装置においては、第1光源と第2光源は、一つの光源であることが好ましい。これにより、光源の発光強度が変化した場合、第1出射光の強度と第2出射光の強度は、同じ割合で変化する。そのため、第1光検出器に入射する第1出射光の強度を、第2光検出器に入射する第2出射光の強度で除した値(即ち、第1出射光の強度と第2出射光の強度の比)においては、これらの強度変化は互いに相殺されるため、第2光アッテネータの光透過率の制御への影響は低減される。その結果、光源の発光強度の変化に起因する測定誤差を低減させることが可能となる。
【0028】
さらに、本発明に係る濃度測定装置は、試料を透過した第1出射光が入射するように試料と第1光検出器との間に設けられ、上記第1波長を通過帯域に含み、上記第2波長を通過帯域に含まない第1バンドパスフィルタと、試料を透過した第2出射光が入射するように試料と第2光検出器との間に設けられ、上記第2波長を通過帯域に含み、上記第1波長を通過帯域に含まない第2バンドパスフィルタと、をさらに備えることが好ましい。
【0029】
これにより、第1光検出器には、上記固有吸収波長付近の波長を有する光が優先的に入射すると共に、上記非吸収波長付近の波長を有する光が第1バンドパスフィルタによって遮断され、第2光検出器には、上記非吸収波長付近の波長を有する光が優先的に入射すると共に、上記固有吸収波長付近の波長を有する光が第2バンドパスフィルタによって遮断される。そのため、非吸収波長付近の波長を有する光が第1光検出器の出力値に与える影響を低減させることができ、固有吸収波長付近の波長を有する光が第2光検出器の出力値に与える影響を低減させることができる。その結果、測定対象ガスの濃度をさらに精度よく測定することが可能となる。
【0030】
さらに、本発明に係る濃度測定装置においては、試料は気体状であり、測定対象物質は気体であることが好ましい。これにより、本発明に係る濃度測定装置によって、気体状の試料における特定種類の気体の濃度を測定することが可能となる。
【0031】
さらに、本発明に係る濃度測定装置は、試料を透過した第1出射光が入射するように試料と第1光検出器の間に設けられ、光透過率が可変である第1光アッテネータと、第1光アッテネータの光透過率を制御する第1光アッテネータ制御部と、をさらに備えることが好ましい。これにより、光源の発光強度が変化した場合に、その変化の影響を第1光アッテネータで低減させることができる。
【0032】
さらに、本発明に係る濃度測定装置においては、第2光アッテネータは、液晶光シャッターであることが好ましい。これにより、光学系を簡素化できる上に機械的な可動部が減少するため、廉価であり、かつ、メンテナンス頻度の低い濃度測定装置となる。
【0033】
さらに、本発明に係る濃度測定装置においては、第1光検出器及び第2光検出器は、それぞれ熱型の光検出器であることが好ましい。これにより、第1光検出器と第2光検出器は、波長依存性が低くなるため、上記固有吸収波長と上記非吸収波長の差を大きく設定することができる。そのため、非吸収波長付近の波長を有する光が第1光検出器の出力値に与える影響をさらに低減させることができ、固有吸収波長付近の波長を有する光が第2光検出器の出力値に与える影響をさらに低減させることができる。その結果、測定対象物質の濃度をさらに精度よく測定することが可能となる。
【0034】
また、上述の課題を解決するため、本発明に係る濃度測定方法は、試料に含まれる測定対象物質の濃度を測定する濃度測定方法であって、第1波長の光を含む第1出射光を試料に照射する工程と、試料を透過した第1出射光を、光の強度信号を出力する第1光検出器に入射させる工程と、第2波長の光を含む第2出射光を、光透過率が可変である第2光アッテネータを通過するように照射し、第2光アッテネータを通過後の第2光出射光を、光の強度信号を出力する第2光検出器に入射させる工程と、第2光アッテネータの光透過率を制御する第2光アッテネータ制御工程と、測定対象物質の濃度を算出する算出工程と、を備え、第1波長の光の測定対象物質による光吸収率は、第2波長の光の測定対象物質による光吸収率よりも高く、第1光検出器の光電変換部と第2光検出器の光電変換部は、同一の光電変換原理に基づくと共に、同一の材料からなり、第2光アッテネータ制御工程においては、第1光検出器の出力値及び第2光検出器の出力値に基づいて、第2光検出器に入射する第2出射光の強度を、第1光検出器に入射する第1出射光の強度に近づけるように第2光アッテネータの光透過率を制御し、算出工程においては、第2光アッテネータの光透過率に基づいて測定対象物質の濃度を算出する。
【0035】
本発明に係る濃度測定方法においては、第2光検出器に入射する第2出射光の強度が、第1光検出器に入射する第1出射光の強度と等しくなる場合の第2光アッテネータの光透過率は、第1光検出器に入射する第1出射光の強度を、仮想的に第2光アッテネータの光透過率を100%とした場合における第2光検出器に入射する第2出射光の強度で除した値に比例する。そして、第1波長の光の測定対象物質による光吸収率は、第2波長の光の測定対象物質による光吸収率よりも高いため、仮想的に第2光アッテネータの光透過率を100%とした場合において、第1光検出器に入射する第1出射光の強度、及び、第2光検出器に入射する第2出射光の強度は、測定対象物質の濃度に対応して異なる割合で変化する。そのため、第2光アッテネータの光透過率は、試料中における測定対象物質の濃度に対応した値となり、第2光アッテネータの光透過率から、試料中における測定対象物質の濃度を算出することができる。
【0036】
さらに、本発明に係る濃度測定方法においては、第1光検出器の光電変換部と第2光検出器の光電変換部は、同一の光電変換原理に基づくと共に同一の材料からなるため、第1光検出器の感度(光強度と出力との相関関係)の光電変換部の温度依存性と、第2光検出器の感度の光電変換部の温度依存性は、実質的に同じになる。そして、本発明に係る濃度測定方法においては、第2光検出器に入射する第2出射光の強度が、第1光検出器に入射する第1出射光の強度に近づくように第2光アッテネータの光透過率が制御されているため、測定中における第1光検出器の光電変換部の温度と第2光検出器の光電変換部の温度は、略等しくなるように制御される。これにより、測定中における第1光検出器の感度の変化の割合と第2光検出器の感度の変化の割合は、実質的に等しくなる。そのため、第1光検出器の光電変換部及び第2光検出器の光電変換部の温度変化に起因する第1光検出器の出力値の誤差の割合と第2光検出器の出力値の誤差の割合は、実質的に等しくなる。
【0037】
そのため、第1光検出器に入射する第1出射光の強度を、第2光検出器に入射する第2出射光の強度で除した値(即ち、第1出射光の強度と第2出射光の強度の比)においては、これらの誤差は互いに相殺される。これにより、第1光検出器の光電変換部及び第2光検出器の光電変換部の温度が変化しても、第2光アッテネータの光透過率の制御への影響は低減される。その結果、本発明に係る濃度測定方法によれば、第1光検出器の光電変換部と第2光検出器の光電変換部の温度をそれぞれ測定する温度測定器を使用することなく光検出器の温度補償を行うことができるため、構成が簡単になる。さらに、上述のように、第1光検出器と第2光検出器の入出力値を近づけることによってこれらの光検出器の温度補償を行うため、これらの光検出器の感度の温度依存性を予め測定しておく必要がない。そのため、これらの光検出器の温度依存性を予め測定する際の測定誤差に起因して、測定対象ガスの濃度の測定誤差が生じることはない。従って、本発明に係る濃度測定方法によれば、簡単な構成で光検出器の感度の温度変化に起因する測定誤差を低減させることが可能である。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、構成が簡単であり、光検出器の感度の温度変化に起因する測定誤差を低減させることが可能な濃度測定装置及び簡単な構成で光検出器の感度の温度変化に起因する測定誤差を低減させることが可能な濃度測定方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1は、第1実施形態のガス濃度測定装置の構成図である。
【図2】図2は、光源から出射直後の第1出射光及び第2出射光の光強度の波長分布を示す図である。
【図3】図3(A)は、第1バンドパスフィルタを通過後の第1出射光の光強度の波長分布を示す図であり、図3(B)は、第2バンドパスフィルタを通過後の第2出射光の光強度の波長分布を示す図である。
【図4】図4は、第1光検出器及び第2光検出器の構成を示す模式的な断面図である。
【図5】図5は、第2実施形態のガス濃度測定装置の構成図である。
【図6】図6は、第3実施形態のガス濃度測定装置の構成図である。
【図7】図7(A)は、光源31から出射直後の第1出射光の光強度の波長分布を示す図であり、図7(B)は、光源33から出射直後の第2出射光の光強度の波長分布を示す図である。
【図8】図8は、第4実施形態のパルスオキシメーターの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、実施の形態に係る濃度測定装置について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図面において、可能な場合には同一要素には同一符号を用いる。また、図面中の構成要素内及び構成要素間の寸法比は、図面の見易さのため、それぞれ任意となっている。
【0041】
(第1実施形態)
まず、第1実施形態に係る濃度測定装置及び濃度測定方法として、ガス濃度測定装置及びガス濃度測定方法について説明する。
【0042】
図1は、本実施形態のガス濃度測定装置の構成図である。図1に示すように本実施形態のガス濃度測定装置1は、光源3と、気体状の試料4を収納する試料収納器5と、第2光アッテネータ7と、第1バンドパスフィルタ9と、第2バンドパスフィルタ11と、第1光検出器13と、第2光検出器15と、第2光アッテネータ制御部21と、算出部23と、を備えている。
【0043】
光源3は、第1出射光3A1と第2出射光3A2を試料収納器5に向かって照射する。本実施形態では、第1出射光3A1と第2出射光3A2は、同一の光源3から出射する同様の波長分布及び強度分布を有する光である。即ち、本実施形態では、光源3は、第1光源と第2光源を兼ねている。光源3としては、例えば、ハロゲンランプ、キセノンランプ、タングステンランプ、白色ランプ、蛍光灯、水銀灯、太陽光、LED、ヒーター、レーザー等を用いることができる。
【0044】
図2は、光源から出射直後の第1出射光及び第2出射光の光強度の波長分布を示す図である。図2に示すように、第1出射光3A1と第2出射光3A2は、共に試料4に含まれる測定対象物質の固有吸収波長λ1と、試料4中に含まれる各物質の各固有吸収波長と異なる非吸収波長λ2の光を含んでいる。即ち、本実施形態においては、第1波長は固有吸収波長λ1であり、第2波長は非吸収波長λ2となる。光源3は、時間的に一定の強度の第1出射光3A1と第2出射光3A2を出射してもよいし、所定周期ごとに出射されるパルス光として第1出射光3A1と第2出射光3A2を出射してもよい。
【0045】
また、本実施形態における場合のように光源3が第1光源と第2光源を兼ねている場合、第1出射光3A1と第2出射光3A2のそれぞれにおいて、固有吸収波長λ1の光の強度と非吸収波長λ2の光の強度は、図2に示すように同程度、例えば、強度差が5%以内であることが好ましい。何故なら、第2光アッテネータ7によって第2光検出器15に入射する第2出射光3E2の強度を大きく調節しなくても、第1出射光3E1による第1光検出器13の光電変換部45の温度上昇度と、第2出射光3E2による第2光検出器15の光電変換部45の温度上昇度を、同程度に制御することが容易となるためである。その結果、測定対象物質の濃度の測定精度が向上する。
【0046】
なお、第1出射光3A1と第2出射光3A2のそれぞれにおいて、固有吸収波長λ1の光の強度と非吸収波長λ2の光の強度が大きく異なる場合(例えば、強度差が5%以上である場合)、濃度測定を行う前に、測定対象物質が無い場合の第1光検出器13と第2光検出器15の出力値が略同一値となるように、第2光アッテネータ7の光透過率の初期状態を設定することが好ましい。これにより、測定精度を向上させることができる。なお、第1出射光3A1と第2出射光3A2のそれぞれにおける固有吸収波長λ1の光の強度と非吸収波長λ2の光の強度の差の大きさに関わらず、上述のような第2光アッテネータ7の光透過率の初期状態の設定を行うことができる。また、第1出射光3A1と第2出射光3A2のそれぞれにおいて、非吸収波長λ2の光の強度は、固有吸収波長λ1の光の強度より大きい、又は固有吸収波長λ1と同等であることが好ましい。何故なら、上述のような第2光アッテネータ7の光透過率の初期状態の設定を容易に行うことができるためである。
【0047】
図1に示すように、試料収納器5は、その内部に試料4を収納する箱型の部材である。試料収納器5は、試料収納器5の一端面に設けられた1つの光入射部5Aと、試料収納器5の他端面に設けられた2つの光出射部5B、5Cを有する。光入射部5Aは、第1出射光3A1や第2出射光3A2を透過させる機能を有したものが好ましいが、開口部であってもよい。
【0048】
試料4は、例えば、気体状の大気とすることができる。測定対象物質は、例えば、二酸化炭素(CO)ガス、一酸化炭素(CO)ガス、炭化水素(HC)ガス等とすることができる。固有吸収波長λ1(図2参照)は、測定対象物質が二酸化炭素(CO)ガスの場合、一酸化炭素(CO)ガスの場合、及び、炭化水素(HC)ガスの場合、それぞれ順に、4.3μm、4.7μm、及び、3.4μmとすることができる。非吸収波長λ2(図2参照)は、測定対象物質を含めた試料4内の各物質の各固有吸収波長と異なる波長であり、測定対象物質が二酸化炭素(CO)ガスの場合、一酸化炭素(CO)ガスの場合、及び、炭化水素(HC)ガスの場合、それぞれ例えば3.9μmと設定することができる。
【0049】
ここで、本実施形態における場合のように光源3が第1光源と第2光源を兼ねている場合、固有吸収波長λ1と非吸収波長λ2は互いに近く(例えば、固有吸収波長λ1と非吸収波長λ2の波長の差が1μm以下)、かつ、第1光検出器13に入射する直前の第1出射光3E1の波長と第2光検出器15に入射する直前の第2出射光3E2の波長とが互いに重ならないことが好ましい。一般的に光源から出射される光は、波長により光強度が異なっているが、固有吸収波長λ1と非吸収波長λ2の波長差が小さければ第1出射光3E1と第2出射光3E2における固有吸収波長λ1の光と非吸収波長λ2の光の強度は同程度になる。その上で、第1出射光3E1の波長と第2出射光3E2の波長とが互いに重ならなければ、第1出射光3E1による第1光検出器13の光電変換部45の温度上昇度と、第2出射光3E2による第2光検出器15の光電変換部45の温度上昇度を、同程度に制御することが容易となる。なお、第1出射光3E1の波長と第2出射光3E2の波長が互いに重ならないとは、第1出射光3E1の強度ピークに対する波長の半値幅を規定する波長範囲と、第2出射光3E2の強度ピークに対する波長の半値幅を規定する波長範囲とが、互いに重ならないことを意味する。
【0050】
光源3から出射した第1出射光3A1と第2出射光3A2は、光入射部5Aを透過して試料4に到達する。即ち、光源3は、第1出射光3A1と第2出射光3A2を試料4に照射する。試料4に到達した第1出射光3A1及び第2出射光3A2は、それぞれ第1出射光3B1及び第2出射光3B2として、それぞれ光入射部5Aから光出射部5Bまで、及び、光入射部5Aから光出射部5Cまで進行する。第1出射光3B1及び第2出射光3B2が試料収納器5内を進行する際、第1出射光3B1及び第2出射光3B2のうち固有吸収波長付近の波長を有する光が吸収される。この際に吸収される光の量は、第1出射光3B1及び第2出射光3B2が試料収納器5内を進行する距離(光路長)及び試料4内の測定対象物質の濃度に比例する。
【0051】
光出射部5B及び光出射部5Cは、それぞれ光入射部5Aと同様に、第1出射光3B1や第2出射光3B2を透過させる機能を有したものが好ましいが、開口部であってもよい。
【0052】
光出射部5Bに到達した第1出射光3B1は、光出射部5Bを透過し、第1出射光3C1として、光出射部5Bから第1バンドパスフィルタ9まで進行する。また、光出射部5Cに到達した第2出射光3B2は、光出射部5Cを透過し、第2出射光3C2として、光出射部5Cから第2光アッテネータ7まで進行する。
【0053】
第1バンドパスフィルタ9は、固有吸収波長λ1をその通過帯域に含み、非吸収波長λ2をその通過帯域に含まない光バンドパスフィルタである。第1バンドパスフィルタ9に到達した第1出射光3C1の一部は、第1バンドパスフィルタ9を通過して、第1出射光3E1として、第1バンドパスフィルタ9から第1光検出器13まで進行する。
【0054】
図3(A)は、第1バンドパスフィルタを通過後の第1出射光の光強度の波長分布を示す図である。図3(A)に示すように、第1バンドパスフィルタ9を通過後の第1出射光3E1は、固有吸収波長λ1付近の波長の成分のみを有する。即ち、第1出射光3C1のうち、固有吸収波長λ1付近の波長の光は第1バンドパスフィルタ9を通過し、それ以外の波長の光は第1バンドパスフィルタ9によって遮断される。
【0055】
また、図1に示すように、第2光アッテネータ7は、第2出射光3C2の一部を遮断する機能を有する。第2光アッテネータ7は、その光透過率が可変である。第2光アッテネータ7の光透過率は、詳細は後述するように、第2光アッテネータ制御部21によって、所定の条件に近づけるように制御される。第2出射光3C2のうちの一部は、第2光アッテネータ7と通過し、第2出射光3D2として第2光アッテネータ7から第2バンドパスフィルタ11まで進行する。
【0056】
第2光アッテネータ7としては、例えば、光減衰機能を有する光減衰素子を用いた光アッテネータや、光シャッターを用いることができる。光減衰機能を有する光減衰素子としては、例えば、ND(Neutral Density)フィルター等の光減衰フィルター、ファラデー回転子、及び、光ファイバを挙げることができる。光減衰素子として光減衰フィルターを用いる場合、この光減衰フィルターの光軸に対する位置を移動させて光透過率を変更することができる。光減衰素子としてファラデー回転子を用いる場合、ファラデー回転子の回転角を変更することにより、光透過率を変更することができる。光減衰素子として光ファイバを用いる場合、光ファイバの曲げ損失は曲率半径に依存するため、曲率半径を変更することにより光透過率を変更することができる。
【0057】
また、光シャッターにおいては、その光透過率を所定の2つの値(例えば、100%と0%)間で変更することができる。そして、光シャッターの光透過率を例えばパルス幅変調制御(Pulse Width Modulation制御, PMW制御)によって周期的に変化させることにより、時間的に平均した場合の光透過率を所定の値にすることができる。この場合、PMW制御の際のパルス間隔等を変更することにより、光透過率を変更することができる。
【0058】
光シャッターとしては、例えば、メカニカルシャッターや、液晶光シャッターを挙げることができる。液晶光シャッターは、電圧の印加によって配向態様を変化させることのできる液晶を有し、その液晶の配向態様に応じて光透過率が変化する。
【0059】
第2光アッテネータ7としては、液晶光シャッターを用いるのが好ましい。何故なら、光学系を簡素化できる上に機械的な可動部が減少するため、廉価、かつ、メンテナンス頻度を低くすることができるからである。
【0060】
第2バンドパスフィルタ11は、非吸収波長λ2をその通過帯域に含み、固有吸収波長λ1をその通過帯域に含まない光バンドパスフィルタである。第2バンドパスフィルタ11に到達した第2出射光3D2の一部は、第2バンドパスフィルタ11を通過して、第2出射光3E2として、第2バンドパスフィルタ11から第2光検出器15まで進行する。
【0061】
図3(B)は、第2バンドパスフィルタを通過後の第2出射光の光強度の波長分布を示す図である。図3(B)に示すように、第2バンドパスフィルタ11を通過後の第2出射光3E2は、非吸収波長λ2付近の波長の成分のみを有する。即ち、第2出射光3D2のうち、非吸収波長λ2付近の波長の光は第2バンドパスフィルタ11を通過し、それ以外の波長の光は第2バンドパスフィルタ11によって遮断される。
【0062】
第1光検出器13は、第1光検出器13に入射する第1出射光3E1の強度信号を出力し、第2光検出器15は、第2光検出器15に入射する第2出射光3E2の強度信号を出力する。本実施形態においては、第1光検出器13と第2光検出器15は、同一の光検出器である。図4は、第1光検出器及び第2光検出器の構成を示す模式的な断面図である。図4に示すように、第1光検出器13(第2光検出器15)は、壁部に開口部41Aが形成されたケース体41と、開口部41Aに設けられた窓部43と、窓部43と対向するようにケース体41内に設けられた光電変換部45と、を有している。
【0063】
窓部43は、光透過率の高い材料で形成されており、測定対象の外部の光は、窓部43と通してケース体41内に入り、光電変換部45に入射する。光電変換部45は、光の受光量に応じた電圧信号を一対の出力配線13A、13B(15A、15B)間に出力する。
【0064】
第1光検出器13及び第2光検出器15としては、例えば、サーモパイル、サーミスタ、ボロメータ、及び、焦電素子等の熱型光検出素子や、フォトダイオード、光導電セル、光電管等の量子型光検出素子を用いることができる。
【0065】
サーモパイルの光電変換部45の光電変換原理は、熱起電力効果に基づき、サーミスタ及びボロメータの光電変換部45の光電変換原理は、熱電対効果に基づき、焦電素子の光電変換部45の光電変換原理は、焦電効果に基づく。また、フォトダイオードの光電変換部45の光電変換原理は、光起電力効果に基づき、光導電セルの光電変換部45の光電変換原理は、光導電効果に基づき、光電管の光電変換部45の光電変換原理は、光電子放出効果に基づく。本実施形態では、第1光検出器13と第2光検出器15は同一の光検出器であるため、第1光検出器13の光電変換部45と第2光検出器15の光電変換部45は、同一の光電変換原理に基づくと共に、同一の材料からなり、さらに、形状も同一である。
【0066】
また、サーモパイルの光電変換部45は熱電対であり、サーミスタ及びボロメータの光電変換部45は、温度変化によって電気抵抗率が変化する抵抗体であり、焦電素子の光電変換部45は焦電効果を有する材料からなる焦電体部である。また、フォトダイオードの光電変換部45はpn接合又はpin接合を有する半導体部であり、光導電セルの光電変換部45は光導電効果を有する半導体部であり、光電管の光電変換部45は光電面を構成する光電効果を有する金属部である。
【0067】
また、第1光検出器13及び第2光検出器15は、それぞれ熱型の光検出器であることが好ましい。これにより、第1光検出器13と第2光検出器15は、波長依存性が低くなるため、上記固有吸収波長λ1と上記非吸収波長λ2の差を大きく設定することができる(図2参照)。そのため、非吸収波長λ2付近の波長を有する光が第1光検出器13の出力値に与える影響を低減させることができ、固有吸収波長λ1付近の波長を有する光が第2光検出器15の出力値に与える影響をさらに低減させることができる。その結果、測定対象物質の濃度をさらに精度よく測定することが可能となる。
【0068】
また、図1に示すように、出力配線13Aと出力配線15Aは、第2光アッテネータ制御部21に接続され、出力配線13Bと出力配線15Bは、接地されている。これにより、第1光検出器13は第1出射光3E1の大きさに応じた電圧信号を第2光アッテネータ制御部21に出力し、第2光検出器15は、第2出射光3E2の大きさに応じた電圧信号を第2光アッテネータ制御部21に出力する。
【0069】
第2光アッテネータ制御部21は、第1光検出器13の出力値及び第2光検出器15の出力値に基づいて、第2光検出器15に入射する第2出射光3E2の強度を、第1光検出器13に入射する第1出射光3E1の強度に近づけるように第2光アッテネータ7の光透過率を制御する。例えば、第1光検出器13の出力値よりも第2光検出器15の出力値の方が大きい場合、第2光アッテネータ制御部21によって第2光アッテネータ7の光透過率を低下させ、第1光検出器13の出力値よりも第2光検出器15の出力値の方が小さい場合、第2光アッテネータ制御部21によって第2光アッテネータ7の光透過率を増加させる。光源3が所定周期ごとにパルス光を出射する場合、その周期に同期するように第2光アッテネータ制御部21によって第2光アッテネータ7の光透過率を制御する。このように、本実施形態においては、第2光アッテネータ制御部21は、第1光検出器13の出力値及び第2光検出器15の出力値に基づいて、第2光アッテネータ7の光透過率を帰還的に制御する。なお、光源3が所定周期ごとにパルス光を出射する場合、パルス光の発光周期より第2光アッテネータ7の駆動周期を短くすることが好ましい。何故なら、単位発光パルスに対し、第2光アッテネータ7の光透過率を細かく制御できるので、第2光アッテネータ7の透過率を精度よく制御できるからである。
【0070】
第2光アッテネータ制御部21は、本実施形態においては、第1光検出器13及び第2光検出器15と接続された出力値比較手段17と、出力値比較手段17及び第2光アッテネータ7に接続されたサーボ制御部19と、を有している。出力値比較手段17は、出力配線13Aと出力配線15Aに接続されており、第1光検出器13の出力値と第2光検出器15の出力値の差に対応した電圧信号をサーボ制御部19に出力する。サーボ制御部19は、出力値比較手段17からの電圧信号に応じて第2光アッテネータ7の光透過率を制御する。具体的には、サーボ制御部19は、第1光検出器13の出力値と第2光検出器15の出力値の差を0に近づけるように第2光アッテネータ7の光透過率を制御することにより、第2光検出器15に入射する第2出射光3E2の強度を、第1光検出器13に入射する第1出射光3E1の強度に近づける。
【0071】
出力値比較手段17としては、例えば図1に示すように、作動オペアンプを用いることが好ましい。また、出力値比較手段17として、引き算器や割算器を用いることもできる。
【0072】
算出部23は、本実施形態ではサーボ制御部19に接続されている。算出部23は、第2光アッテネータ7の光透過率に基づいて、試料4全体に対する測定対象物質の比率としての測定対象物質の濃度を算出する。
【0073】
上述のような本実施形態に係るガス濃度測定装置1においては、第2光検出器15に入射する第2出射光3E2の強度が、第1光検出器13に入射する第1出射光3E1の強度と等しくなる場合の第2光アッテネータ7の光透過率は、第1光検出器13に入射する第1出射光3E1の強度を、仮想的に第2光アッテネータ7の光透過率を100%とした場合における第2光検出器15に入射する第2出射光3E2の強度で除した値に比例する。そして、固有吸収波長λ1の光の測定対象物質による光吸収率は、非吸収波長λ2の光の測定対象物質による光吸収率よりも高いため、仮想的に第2光アッテネータ7の光透過率を100%とした場合において、第1光検出器13に入射する第1出射光3E1の強度、及び、第2光検出器15に入射する第2出射光3E2の強度は、測定対象物質の濃度に対応して異なる割合で変化する。そのため、第2光アッテネータ7の光透過率は、試料4中における測定対象物質の濃度に対応した値となり、第2光アッテネータ7の光透過率から、試料4中における測定対象物質の濃度を算出することができる。
【0074】
例えば、本実施形態においては、ある基準時における第2光アッテネータ7光透過率と、基準時以降におけるサーボ制御部19による第2光アッテネータ7の光透過率の制御量の積算値から、算出部23によって第2光アッテネータ7の光透過率を算出することができる。そして、算出した第2光アッテネータ7の光透過率を基に、算出部23によって、試料4中における測定対象物質の濃度を算出することができる。また、算出部23は、サーボ制御部19による上記制御量の積算値を用いずに、測定対象物質の濃度を算出する時点における第2光アッテネータ7の光透過率から試料4中における測定対象物質の濃度を算出してもよい。
【0075】
さらに、上述のような本実施形態に係るガス濃度測定装置1においては、第1光検出器13の光電変換部45と第2光検出器15の光電変換部45は、同一の光電変換原理に基づくと共に同一の材料からなるため(図4参照)、第1光検出器13の感度(光強度と出力との相関関係)の光電変換部45の温度依存性と、第2光検出器15の感度の光電変換部45の温度依存性は、実質的に同じになる。そして、本実施形態に係るガス濃度測定装置1においては、第2光アッテネータ7によって、第2光検出器15に入射する第2出射光3E2の強度が、第1光検出器13に入射する第1出射光3E1の強度に近づくように制御されているため、測定中における第1光検出器13の光電変換部45の温度と第2光検出器15の光電変換部45の温度は、略等しくなるように制御される。これにより、測定中における第1光検出器13の感度の変化の割合と第2光検出器15の感度の変化の割合は、実質的に等しくなる。そのため、第1光検出器13の光電変換部45及び第2光検出器15の光電変換部45の温度変化に起因する第1光検出器13の出力値の誤差の割合と第2光検出器15の出力値の誤差の割合は、実質的に等しくなる。
【0076】
そのため、第1光検出器13に入射する第1出射光3E1の強度を、第2光検出器15に入射する第2出射光3E2の強度で除した値(即ち、第1出射光3E1の強度と第2出射光3E2の強度の比)においては、これらの誤差は互いに相殺される。これにより、第1光検出器13の光電変換部45及び第2光検出器15の光電変換部45の温度が変化しても、第2光アッテネータ7の光透過率の制御への影響は低減される。その結果、本実施形態に係るガス濃度測定装置1によれば、第1光検出器13の光電変換部45と第2光検出器15の光電変換部45の温度をそれぞれ測定する温度測定器を設けずに第1光検出器13及び第2光検出器15の温度補償を行うことができるため、構成が簡単になる。さらに、上述のように、第1光検出器13と第2光検出器15の入出力値を近づけることによってこれらの光検出器の温度補償を行うため、これらの光検出器の感度の温度依存性を予め測定しておく必要がない。そのため、これらの光検出器の温度依存性を予め測定する際の測定誤差に起因して、測定対象ガスの濃度の測定誤差が生じることはない。従って、本実施形態に係るガス濃度測定装置1は、構成が簡単であり、第1光検出器13及び第2光検出器15の感度の温度変化に起因する測定誤差を低減させることが可能である。
【0077】
また、本実施形態に係るガス濃度測定装置1は、上述のように測定誤差を低減させることが可能であるため、第1出射光3B1及び第2出射光3B2が試料収納器5内を進行する距離(光路長)が短くても、測定対象物質の濃度を測定することができる。そのため、本実施形態に係るガス濃度測定装置1によれば、装置全体の大きさを小型化することが可能である。
【0078】
さらに、上述のような本実施形態に係るガス濃度測定装置1においては、第1波長は、測定対象物質の固有吸収波長λ1であり、第2波長は、非吸収波長λ2である。これにより、第1光検出器13に入射する第1出射光3E1の強度は、測定対象物質の濃度に対応してより大きく変化し、第2光検出器15に入射する第2出射光3E2の強度は、測定対象物質の濃度にほぼ依存しなくなる。その結果、測定対象物質の濃度変化に対する第2光アッテネータ7の光透過率の変化率がより大きくなるため、測定対象物質の濃度の測定をより高精度に行うことができる。
【0079】
さらに、本実施形態に係るガス濃度測定装置1においては、上述のように第1光検出器13の光電変換部45と第2光検出器15の光電変換部45は、同一である(図2参照)。これにより、第1光検出器13の光電変換部45及び第2光検出器15の光電変換部45の温度変化に起因する第1光検出器13の出力値の誤差の割合と第2光検出器15の出力値の誤差の割合は、さらに近い値となる。その結果、第1光検出器13及び第2光検出器15の感度の温度変化に起因する測定誤差を、さらに低減させることが可能である。
【0080】
さらに、本実施形態に係るガス濃度測定装置1においては、上述のように光源3は、第1光源と第2光源を兼ねている(図1参照)。これにより、光源3の発光強度が変化した場合、第1出射光3A1の強度と第2出射光3A2の強度は、同じ割合で変化する。そのため、第1光検出器13に入射する第1出射光3E1の強度を、第2光検出器15に入射する第2出射光3E2の強度で除した値(即ち、第1出射光3E1の強度と第2出射光3E2の強度の比)においては、これらの強度変化は互いに相殺されるため、第2光アッテネータの光透過率の制御への影響は低減される。その結果、光源3の発光強度の変化に起因する測定誤差を低減させることが可能である。
【0081】
さらに、本実施形態に係るガス濃度測定装置1は、上述のように試料4を透過した第1出射光3C1が入射するように試料4と第1光検出器13との間に設けられ、測定対象物質の固有吸収波長λ1を通過帯域に含み、上記非吸収波長λ2を通過帯域に含まない第1バンドパスフィルタ9と、試料4を透過した第2出射光3C2、3D2が入射するように試料4と第2光検出器15との間に設けられ、上記非吸収波長λ2を通過帯域に含み、上記固有吸収波長λ1を通過帯域に含まない第2バンドパスフィルタ11と、をさらに備えている(図1参照)。
【0082】
これにより、第1光検出器13には、上記固有吸収波長λ1付近の波長を有する光が優先的に入射すると共に、上記非吸収波長λ2付近の波長を有する光が第1バンドパスフィルタ9によって遮断され、第2光検出器15には、上記非吸収波長λ2付近の波長を有する光が優先的に入射すると共に、上記固有吸収波長λ1付近の波長を有する光が第2バンドパスフィルタ11によって遮断される。そのため、非吸収波長λ2付近の波長を有する光が第1光検出器13の出力値に与える影響を低減させることができ、固有吸収波長λ1付近の波長を有する光が第2光検出器15の出力値に与える影響を低減させることができる。その結果、測定対象ガスの濃度をさらに精度よく測定することが可能である。
【0083】
また、本実施形態における場合のように、第1出射光3A1と第2出射光3A2のそれぞれにおいて、固有吸収波長λ1の光の強度と非吸収波長λ2の光の強度が、図2に示すように同程度、例えば、強度差が5%以内である場合、ガス濃度測定装置1は、第1バンドパスフィルタ9及び第2バンドパスフィルタ11を備えていることが特に好ましい。何故なら、第1出射光3E1による第1光検出器13の光電変換部45の温度上昇度と、第2出射光3E2による第2光検出器15の光電変換部45の温度上昇度を、同程度に制御することが容易となるためである。その結果、測定対象物質の濃度の測定精度が向上する。なお、ガス濃度測定装置1は、第1バンドパスフィルタ9及び第2バンドパスフィルタ11を備えていなくても、測定対象ガスの濃度の測定は可能である。
【0084】
また、上述のような本実施形態に係る濃度測定方法においては、第2光検出器15に入射する第2出射光3E2の強度が、第1光検出器13に入射する第1出射光3E1の強度と等しくなる場合の第2光アッテネータ7の光透過率は、第1光検出器13に入射する第1出射光3E1の強度を、仮想的に第2光アッテネータ7の光透過率を100%とした場合における第2光検出器15に入射する第2出射光3E2の強度で除した値に比例する。そして、第1波長の光の測定対象物質による光吸収率は、第2波長の光の測定対象物質による光吸収率よりも高いため、仮想的に第2光アッテネータ7の光透過率を100%とした場合において、第1光検出器13に入射する第1出射光3E1の強度、及び、第2光検出器15に入射する第2出射光3E2の強度は、測定対象物質の濃度に対応して異なる割合で変化する。そのため、第2光アッテネータ7の光透過率は、試料4中における測定対象物質の濃度に対応した値となり、第2光アッテネータ7の光透過率から、試料4中における測定対象物質の濃度を算出することができる。
【0085】
さらに、本実施形態に係る濃度測定方法においては、第1光検出器13の光電変換部45と第2光検出器15の光電変換部45は、同一の光電変換原理に基づくと共に同一の材料からなるため、第1光検出器13の感度(光強度と出力との相関関係)の光電変換部45の温度依存性と、第2光検出器15の感度の光電変換部45の温度依存性は、実質的に同じになる。そして、本実施形態に係る濃度測定方法においては、第2光検出器15に入射する第2出射光3E2の強度が、第1光検出器13に入射する第1出射光3E1の強度に近づくように第2光アッテネータ7の光透過率が制御されているため、測定中における第1光検出器13の光電変換部45の温度と第2光検出器15の光電変換部45の温度は、略等しくなるように制御される。これにより、測定中における第1光検出器13の感度の変化の割合と第2光検出器15の感度の変化の割合は、実質的に等しくなる。そのため、第1光検出器13の光電変換部45及び第2光検出器15の光電変換部45の温度変化に起因する第1光検出器13の出力値の誤差の割合と第2光検出器15の出力値の誤差の割合は、実質的に等しくなる。
【0086】
そのため、第1光検出器13に入射する第1出射光3E1の強度を、第2光検出器15に入射する第2出射光3E2の強度で除した値(即ち、第1出射光3E1の強度と第2出射光3E2の強度の比)においては、これらの誤差は互いに相殺される。これにより、第1光検出器13の光電変換部45及び第2光検出器15の光電変換部45の温度が変化しても、第2光アッテネータ7の光透過率の制御への影響は低減される。その結果、本実施形態に係る濃度測定方法によれば、第1光検出器13の光電変換部45と第2光検出器15の光電変換部45の温度をそれぞれ測定する温度測定器を使用することなく光検出器の温度補償を行うことができるため、構成が簡単になる。さらに、上述のように、第1光検出器13と第2光検出器15の入出力値を近づけることによってこれらの光検出器の温度補償を行うため、これらの光検出器の感度の温度依存性を予め測定しておく必要がない。そのため、これらの光検出器の温度依存性を予め測定する際の測定誤差に起因して、測定対象ガスの濃度の測定誤差が生じることはない。従って、本実施形態に係る濃度測定方法によれば、簡単な構成で光検出器の感度の温度変化に起因する測定誤差を低減させることが可能である。
【0087】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る濃度測定装置及び濃度測定方法として、第1実施形態とは異なる態様のガス濃度測定装置及びガス濃度測定方法について説明する。
【0088】
図5は、本実施形態のガス濃度測定装置の構成図である。図5に示すように、本実施形態のガス濃度測定装置1aは、第1光アッテネータ27と、第1光アッテネータ制御部29と、をさらに備える点において、上述の第1実施形態のガス濃度測定装置1と相違する。
【0089】
第1光アッテネータ27は、試料4を透過した第1出射光3C1が入射するように試料4と第1バンドパスフィルタ9の間に設けられている。第1光アッテネータ27は、試料4を透過した第1出射光3C1の一部を遮断する機能を有する。試料4を透過した第1出射光3C1は、第1光アッテネータ27で一部が遮断された後、第1出射光3D1として、第1光アッテネータ27から第1バンドパスフィルタ9まで進行する。
【0090】
第1光アッテネータ27は第1光アッテネータ制御部29に接続されている。第1光アッテネータ27の光透過率は可変であり、その光透過率は、第1光アッテネータ制御部29によって制御される。第1光アッテネータ27は、第2光アッテネータ7と同様の光アッテネータとすることができる。また、算出部23は、第1光アッテネータ制御部29と接続されている。算出部23は、第1光アッテネータ27の光透過率も考慮して試料4中の測定対象物質の濃度を算出する。
【0091】
本実施形態のガス濃度測定装置1aによれば、光源3の発光強度が変化した場合に、その変化の影響を第1光アッテネータ27で低減させることができる。具体的には、例えば、第2光アッテネータ7の光透過率を100%にした場合の第2出射光3E2の強度を第2光検出器15によって定期的に測定すること等により、光源3の発光強度の経時変化等による強度変動を測定する。そして、光源3の発光強度が低下した場合、第1光アッテネータ27の光透過率を増加させて、第1出射光3D1の強度変動を抑制することができる。
【0092】
なお、第1出射光3A1と第2出射光3A2のそれぞれにおいて、固有吸収波長λ1の光の強度と非吸収波長λ2の光の強度が大きく異なる場合(例えば、強度差が5%以上である場合)、濃度測定を行う前に、測定対象物質が無い場合の第1光検出器13と第2光検出器15の出力値が略同一値となるように、第2光アッテネータ7及び/又は第1光アッテネータ27の光透過率の初期状態を設定することが好ましい。これにより、測定精度を向上させることができる。なお、第1出射光3A1と第2出射光3A2のそれぞれにおける固有吸収波長λ1の光の強度と非吸収波長λ2の光の強度の差の大きさに関わらず、上述のような第2光アッテネータ7及び/又は第1光アッテネータ27の光透過率の初期状態の設定を行うことができる。
【0093】
なお、第1光アッテネータ27は、第1バンドパスフィルタ9と第1光検出器13の間に設けられていてもよい。
【0094】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態に係る濃度測定装置及び濃度測定方法として、第1実施形態及び第2実施形態とは異なる態様のガス濃度測定装置及びガス濃度測定方法について説明する。
【0095】
図6は、本実施形態のガス濃度測定装置の構成図である。図6に示すように、本実施形態のガス濃度測定装置1bは、光源31(図1参照)に代えて、2つの光源(光源31及び光源33)を備える点において、上述の第1実施形態のガス濃度測定装置1と相違する。
【0096】
本実施形態の光源31は、第1出射光31Aを出射する。第1出射光31Aは、光入射部5Aを通過し、第1出射光31Bとして、光入射部5Aから光出射部5Bまで進行する。光出射部5Bを通過した第1出射光31Bは、第1出射光31Cとして、光出射部5Bから第1バンドパスフィルタ9まで進行する。第1バンドパスフィルタ9を通過した第1出射光31Cは、第1出射光31Eとして、第1バンドパスフィルタ9から第1光検出器13まで進行する。
【0097】
本実施形態の光源33は、第2出射光33Aを出射する。第2出射光33Aは、光入射部5Aを通過し、第2出射光33Bとして、光入射部5Aから光出射部5Cまで進行する。光出射部5Cを通過した第2出射光33Bは、第2出射光33Cとして、光出射部5Bから第2光アッテネータ7まで進行する。第2光アッテネータ7を通過した第2出射光33Cは、第2出射光33Dとして第2光アッテネータ7から第2バンドパスフィルタ11まで進行する。第2バンドパスフィルタ11を通過した第2出射光33Dは、第2出射光33Eとして、第2バンドパスフィルタ11から第2光検出器15まで進行する。
【0098】
光源31及び光源33としては、例えば、LED、レーザー等を用いることができる。
【0099】
図7(A)は、光源31から出射直後の第1出射光の光強度の波長分布を示す図である。図7(A)に示すように、本実施形態において、第1出射光31Aは固有吸収波長λ1付近の波長の成分のみを有し、非吸収波長λ2付近の波長の成分は有していない。
【0100】
図7(B)は、光源33から出射直後の第2出射光の光強度の波長分布を示す図である。図7(B)に示すように、本実施形態において、第2出射光33Aは非吸収波長λ2付近の波長の成分のみを有し、固有吸収波長λ1付近の波長の成分は有していない。
【0101】
本実施形態のガス濃度測定装置1bでは、上述のように第1出射光31Aは非吸収波長λ2付近の波長の成分は有しておらず、第2出射光33Aは固有吸収波長λ1付近の波長の成分は有していない。即ち、ガス濃度測定装置1bは、2つの光源(光源31及び光源33)を備える上に、光源31は、固有吸収波長λ1付近の波長の成分のみを有する第1出射光3A1を出射し、その一部である第1出射光3E1を第1光検出器13に入射させ、光源33は、非吸収波長λ2付近の波長の成分のみを有する第2出射光3A2を出射し、その一部である第2出射光3E2を第2光検出器15に入射させている。そのため、ガス濃度測定装置1bは、第1バンドパスフィルタ9及び/又は第2バンドパスフィルタ11を備えていなくてもよい。なお、この場合、第1出射光3A1と第2出射光3A2は、それぞれ、概ね同一の半値幅を有することが好ましい。
【0102】
また、光源31は、非吸収波長λ2付近の波長の成分を有していてもよい。その場合、ガス濃度測定装置1bは、第1バンドパスフィルタ9を備えることが好ましい。同様に、光源33は、固有吸収波長λ1付近の波長の成分を有していてもよい。その場合、ガス濃度測定装置1bは、第2バンドパスフィルタ11を備えることが好ましい。
【0103】
また、本実施形態における場合のように、ガス濃度測定装置1bが2つの光源(光源31及び光源33)を備える場合、光源31から出射直後の第1出射光31Aの強度と光源33から出射直後の第2出射光33Aの強度は、図7に示すように同程度、例えば、強度差が5%以内であることが好ましい。何故なら、第2光アッテネータ7によって第2光検出器15に入射する第2出射光33Eの強度を大きく調節しなくても、第1出射光31Eによる第1光検出器13の光電変換部45の温度上昇度と、第2出射光33Eによる第2光検出器15の光電変換部45の温度上昇度を、同程度に制御することが容易となるためである。その結果、測定対象物質の濃度の測定精度が向上する。
【0104】
なお、光源31から出射直後の第1出射光31Aと光源33から出射直後の第2出射光33Aの強度が大きく異なる場合(例えば、強度差が5%以上である場合)、濃度測定を行う前に、測定対象物質が無い場合の第1光検出器13と第2光検出器15の出力値が略同一値となるように、第2光アッテネータ7の光透過率の初期状態を設定することが好ましい。これにより、測定精度を向上させることができる。なお、光源31から出射直後の第1出射光31Aと光源33から出射直後の第2出射光33Aの強度の差の大きさに関わらず、上述のような第2光アッテネータ7の光透過率の初期状態の設定を行うことができる。また、光源33から出射直後の第2出射光33Aの強度は、光源31から出射直後の第1出射光31Aの強度より大きい、又は光源31から出射直後の第1出射光31Aの強度と同等であることが好ましい。何故なら、上述のような第2光アッテネータ7の光透過率の初期状態の設定を容易に行うことができるためである。
【0105】
ここで、本実施形態における場合のように、ガス濃度測定装置1bが2つの光源(光源31及び光源33)を備える場合、光源31から出射直後の第1出射光31Aの波長と光源33から出射直後の第2出射光33Aの波長とが互いに重ならないことが好ましい。第1出射光31Aの波長と第2出射光33Aの波長とが互いに重ならなければ、第1出射光31Eによる第1光検出器13の光電変換部45の温度上昇度と、第2出射光33Eによる第2光検出器15の光電変換部45の温度上昇度を、同程度に制御することが容易となる。なお、第1出射光31Aの波長と第2出射光33Aの波長が互いに重ならないとは、第1出射光31Aの強度ピークに対する波長の半値幅を規定する波長範囲と、第2出射光33Aの強度ピークに対する波長の半値幅を規定する波長範囲とが、互いに重ならないことを意味する。
【0106】
なお、上述の実施形態1〜3における場合、光源3(又は光源33)から出射する第2出射光3A2(又は第2出射光33A)を試料4に照射せずに、第2光アッテネータ7に入射させてもよい。
【0107】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態に係る濃度測定装置及び濃度測定方法として、パルスオキシメーター及びパルスオキシメーターによる濃度測定方法について説明する。
【0108】
図8は、本実施形態のパルスオキシメーターの構成図である。図8に示すように、本実施形態のパルスオキシメーター1cは、試料4を収納する試料収納器5を備えていない点において、上述の第1実施形態のガス濃度測定装置1と相違する。
【0109】
パルスオキシメーター1cは、経皮的に動脈血酸素飽和度を測定する装置である。図8に示すように、パルスオキシメーター1cを使用する際は、第1実施形態におけるガス濃度測定装置1aの試料収納器5の位置に、体組織51と、体組織51内に存在し内部に血液55が流れる血管53を配置する。体組織51と血管53と血液55とで、試料4aとなる。
【0110】
本実施形態のパルスオキシメーター1cにおいては、血液55中の酸化ヘモグロビンを測定対象物質とし、血液55中の還元ヘモグロビンを参照用物質とする。そして、第1波長の光の酸化ヘモグロビンによる光吸収率は、第2波長の光の酸化ヘモグロビンによる光吸収率よりも高く、かつ、第2波長の光の還元ヘモグロビンによる光吸収率は、第1波長の光の還元ヘモグロビンによる光吸収率よりも高くなるように、第1波長及び第2波長を決定する。第1波長は、例えば、940nmとすることができ、第2波長は、例えば、660nmとすることができる。
【0111】
本実施形態においては、酸化ヘモグロビンによる第1波長の光の吸収率と還元ヘモグロビンによる第1波長の光の吸収率の比、及び、酸化ヘモグロビンによる第2波長の光の吸収率と還元ヘモグロビンによる第2波長の光の吸収率の比を基に、算出部23は、酸化ヘモグロビン及び還元ヘモグロビンの合計に対する酸化ヘモグロビンの比率としての酸化ヘモグロビンの濃度を算出する。また、このようにして算出した酸化ヘモグロビンの濃度から、動脈血酸素飽和度を算出することができる。
【0112】
なお、本実施形態においては、還元ヘモグロビンを測定対象物質とし、酸化ヘモグロビンを参照用物質としてもよい。この場合、算出部23は、酸化ヘモグロビン及び還元ヘモグロビンの合計に対する還元ヘモグロビンの比率としての還元ヘモグロビンの濃度を算出する。
【0113】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形態様が可能である。
【0114】
例えば、上述の各実施形態においては、第1光検出器13と第2光検出器15は、同一の光検出器であるが(図1、図4、図5、図6、及び図8参照)、第1光検出器13の光電変換部45と第2光検出器15の光電変換部45が、同一の光電変換原理に基づくと共に同一の材料からなれば、第1光検出器13と第2光検出器15は、同一の光検出器でなくてもよい。ただし、その場合であっても、第1光検出器13の光電変換部45と第2光検出器15の光電変換部45は、同一であることが好ましい。上述のように、第1光検出器13の血液55及び第2光検出器15の光電変換部45の温度変化に起因する第1光検出器13の出力値の誤差及び第2光検出器15の出力値の誤差の割合を、さらに近い値とすることができるためである。
【0115】
また、上述の第1実施形態、第2実施形態、及び、第3実施形態においては、第1波長を測定対象物質の固有吸収波長λ1、第2波長を試料4に含まれる各物質の各固有吸収波長と異なる非吸収波長非吸収波長λ2としているが(図2参照)、第1波長の光の測定対象物質による光吸収率が、第2波長の光の測定対象物質による光吸収率よりも高くなるように、第1波長及び第2波長が決定されていればよい。この場合、第1バンドパスフィルタ9として、第1波長を通過帯域に含み、第2波長を通過帯域に含まないような光バンドパスフィルタを用い、第2バンドパスフィルタ11として、第2波長を通過帯域に含み、第1波長を通過帯域に含まないような光バンドパスフィルタを用いる。
【0116】
また、上述の第4実施形態におけるパルスオキシメーター1cは、第2実施形態におけるガス濃度測定装置1aと同様に、第1光アッテネータ27をさらに備えてもよい(図5参照)。また、上述の第4実施形態におけるパルスオキシメーター1cは、第3実施形態におけるガス濃度測定装置1bと同様に、光源31に代えて、2つの光源(光源31及び光源33)を備えてもよい(図6参照)。
【0117】
また、試料4中に測定対象物質が2種類(例えば、測定対象のガスが2種類)ある場合、上述の各実施形態のガス濃度測定装置は、第1の測定対象物質を上述のように測定すると共に、第2の測定対象物質を第1の測定対象物質と同様に測定するための第3光源、第4光源、第3光検出器、第4光検出器、及び、第3アッテネータ、及び、第3アッテネータ制御部をさらに備えていてもよい。この場合、第3光源は第2の測定対象物質の固有吸収波長(第1の測定対象物質の固有吸収波長λ1とは異なる波長)を含む光を試料4に照射し、第4光源は試料4中の各物質の各固有吸収波長と異なる非吸収波長を含む光を試料4に照射する。第1〜第4光源のうちの一部又は全部は、同一の光源であってもよいし、第1〜第4光源は、それぞれ別体の光源であってもよい。
【符号の説明】
【0118】
1・・・濃度測定装置(ガス濃度測定装置)、3・・・光源(第1光源、第2光源)、3A1、3B1、3C1、3D1、3E1・・・第1出射光、3A2、3B2、3C2、3D2、3E2・・・第2出射光、4・・・試料、5・・・試料収納器、7・・・第2光アッテネータ、9・・・第1バンドパスフィルタ、11・・・第2バンドパスフィルタ、13・・・第1光検出器、15・・・光検出器、21・・・光アッテネータ制御部、23・・・算出部、λ1・・・第1波長(固有吸収波長)、λ2・・・第2波長(非吸収波長)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料に含まれる測定対象物質の濃度を測定する濃度測定装置であって、
第1波長の光を含む第1出射光を前記試料に照射する第1光源と、
第2波長の光を含む第2出射光を照射する第2光源と、
前記試料を透過した前記第1出射光が入射するように設けられた光の強度信号を出力する第1光検出器と、
前記第2出射光が入射するように設けられた光の強度信号を出力する第2光検出器と、
前記試料を透過した前記第2出射光が入射するように前記試料と前記第2光検出器との間に設けられ、光透過率が可変である第2光アッテネータと、
前記第2光アッテネータの光透過率を制御する第2光アッテネータ制御部と、
前記測定対象物質の濃度を算出する算出部と、
を備え、
前記第1波長の光の前記測定対象物質による光吸収率は、前記第2波長の光の前記測定対象物質による光吸収率よりも高く、
前記第1光検出器の光電変換部と前記第2光検出器の光電変換部は、同一の光電変換原理に基づくと共に、同一の材料からなり、
前記第2光アッテネータ制御部は、前記第1光検出器の出力値及び前記第2光検出器の出力値に基づいて、前記第2光検出器に入射する前記第2出射光の強度を、前記第1光検出器に入射する前記第1出射光の強度に近づけるように前記第2光アッテネータの前記光透過率を制御し、
前記算出部は、前記第2光アッテネータの前記光透過率に基づいて前記測定対象物質の濃度を算出する濃度測定装置。
【請求項2】
前記第1波長は、前記測定対象物質の固有吸収波長であり、
前記第2波長は、前記試料に含まれる各物質の各固有吸収波長と異なる非吸収波長である請求項1に記載の濃度測定装置。
【請求項3】
前記算出部は、前記試料全体に対する前記測定対象物質の比率として、前記測定対象物質の濃度を算出する請求項1又は2に記載の濃度測定装置。
【請求項4】
前記試料は、参照用物質をさらに含み、
前記第2出射光は、前記第2光検出器に入射する前に前記試料を透過し、
前記第2波長の光の前記参照用物質による光吸収率は、前記第1波長の光の前記参照用物質による光吸収率よりも高く、
前記算出部は、前記測定対象物質及び前記参照用物質の合計に対する前記測定対象物質の比率として、前記測定対象物質の濃度を算出する請求項1に記載の濃度測定装置。
【請求項5】
前記第1光検出器の前記光電変換部と前記第2光検出器の前記光電変換部は、同一である請求項1〜4のいずれか一項に記載の濃度測定装置。
【請求項6】
前記第1光源と前記第2光源は、一つの光源である請求項1〜5のいずれか一項に記載の濃度測定装置。
【請求項7】
前記試料を透過した前記第1出射光が入射するように前記試料と前記第1光検出器との間に設けられ、前記第1波長を通過帯域に含み、前記第2波長を通過帯域に含まない第1バンドパスフィルタと、
前記試料を透過した前記第2出射光が入射するように前記試料と前記第2光検出器との間に設けられ、前記第2波長を通過帯域に含み、前記第1波長を通過帯域に含まない第2バンドパスフィルタと、
をさらに備える請求項1〜6のいずれか一項に記載の濃度測定装置。
【請求項8】
前記試料は気体状であり、前記測定対象物質は気体である請求項1〜7のいずれか一項に記載の濃度測定装置。
【請求項9】
前記試料を透過した前記第1出射光が入射するように前記試料と前記第1光検出器の間に設けられ、光透過率が可変である第1光アッテネータと、
前記第1光アッテネータの光透過率を制御する第1光アッテネータ制御部と、
をさらに備える請求項1〜8のいずれか一項に記載の濃度測定装置。
【請求項10】
前記第2光アッテネータは、液晶光シャッターである請求項1〜9のいずれか一項に記載の濃度測定装置。
【請求項11】
前記第1光検出器及び前記第2光検出器は、それぞれ熱型の光検出器である請求項1〜10のいずれか一項に記載の濃度測定装置。
【請求項12】
試料に含まれる測定対象物質の濃度を測定する濃度測定方法であって、
第1波長の光を含む第1出射光を前記試料に照射する工程と、
前記試料を透過した前記第1出射光を、光の強度信号を出力する第1光検出器に入射させる工程と、
第2波長の光を含む第2出射光を、光透過率が可変である第2光アッテネータを通過するように照射し、前記第2光アッテネータを通過後の前記第2光出射光を、光の強度信号を出力する第2光検出器に入射させる工程と、
前記第2光アッテネータの光透過率を制御する第2光アッテネータ制御工程と、
前記測定対象物質の濃度を算出する算出工程と、
を備え、
前記第1波長の光の前記測定対象物質による光吸収率は、前記第2波長の光の前記測定対象物質による光吸収率よりも高く、
前記第1光検出器の光電変換部と前記第2光検出器の光電変換部は、同一の光電変換原理に基づくと共に、同一の材料からなり、
前記第2光アッテネータ制御工程においては、前記第1光検出器の出力値及び前記第2光検出器の出力値に基づいて、前記第2光検出器に入射する前記第2出射光の強度を、前記第1光検出器に入射する前記第1出射光の強度に近づけるように前記第2光アッテネータの前記光透過率を制御し、
前記算出工程においては、前記第2光アッテネータの前記光透過率に基づいて前記測定対象物質の濃度を算出する濃度測定方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−276539(P2010−276539A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−131202(P2009−131202)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】