説明

濃度測定装置

【課題】 低濃度の対象化合物を高精度に測定することができる濃度測定装置を提供する。
【解決手段】 試料溶液を定量する試料計量槽5と、発色剤溶液を定量する発色剤計量槽6と、希釈水を計量する希釈水計量槽7と、計量された溶液を混合する混合槽20と、前記混合液の可視光の吸光度を測定する吸光度ユニット26,27,28とを備え、正逆両方向に流体を搬送でき、試料計量槽5へ試料溶液を送る第1給送部21、発色剤計量槽6発色剤溶液を送る第2給送部22、希釈水計量槽7へ希釈水を送る第3給送部23と、前記第1給送部から第3給送部を正転させてそれぞれ溶液を槽5,6,7内へ供給した後、逆転させてそれぞれ試料溶液及び発色剤溶液及び希釈水を排出するように前記第1第3給送部21,22,23を動作制御する制御演算部70と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光の吸収を利用して測定試料の濃度を測定する濃度測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体はどの製造工程において使用するプロセス用化合物水溶液に含まれる化合物の濃度を正確かつ迅速に測定することはこれらの製造分野において広く要請されている課題である。
【0003】
一般に、溶液中の化合物の濃度を測定する方法として、滴定の原理を用いたものや近赤外線又は紫外線による吸光度測定の原理を利用したものが知られている。例えば、前者において酸化物を定量する場合、過マンガン酸カリを用いた方法やヨウ化カリウムを用いたヨウ素滴定法が広く知られており、また、後者としては、特許文献1(特開平6−265471号公報)などが公知となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−265471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ヨウ素滴定法は、試料中に含まれる酸化物(過酸化水素)によりヨウ素を遊離させ、当該遊離したヨウ素を滴定測定するものである。しかし、金属をエッチングした液中の過酸化水素定量などの測定には、共存物質である金属もヨウ素を遊離させる場合があるため、エッチング液中の過酸化水素定量に加えて金属イオン濃度も測定してしまうことになり、過酸化水素定量のみを正確に測定することができない場合があるという欠点があった。
【0006】
また、過マンガン酸カリ溶液滴定においては、同様に共存物質の影響により溶液の着色が変化するため、終点がわかりにくくなり、正確な濃度測定ができないという問題があった。
【0007】
このように、エッチング液中の過酸化水素定量に関しては、共存中物質の影響により、正確に滴定法による過酸化水素の定量ができないという問題があった。
【0008】
また、滴定法では滴下のための時間を要することから、滴定法の原理を利用した自動化装置は、設計に不利であるという問題もあった。
【0009】
また、特許文献2に記載の装置は、近赤外線又は紫外線に対して吸収スペクトルを呈する化合物のみ使用することができるが、数100ppm程度の低濃度では精度の高い濃度測定ができず、精度不足であるという問題があった。
【0010】
したがって、本発明が解決しようとする技術的課題は、測定対象となる対象化合物が低濃度であっても高精度に測定することができる濃度測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記技術的課題を解決するために、以下の構成の濃度測定装置を提供する。
【0012】
本発明の基本的態様は、内部に挿入して設けられた供給管によって供給される液体を定量する計量槽と前記計量槽で定量された液体の可視光の吸光度を測定する吸光度測定ユニットとを備えた濃度測定装置であって、
正逆両方向に流体を搬送でき、前記供給管中の液体を前記計量槽に送る給送部と、
前記給送部を正転させて前記計量槽にそれぞれ溶液を供給した後、逆転させて前記供給管からそれぞれ液体を排出するように前記給送部を動作制御して前記液体を定量する制御演算部と、を備えることを特徴とする濃度測定装置である。
【0013】
本発明の第1態様によれば、内部に挿入して設けられた第1供給管によって供給される測定対象である対象化合物を含有する試料溶液を定量する試料計量槽と、内部に挿入して設けられた第2供給管によって供給され前記対象化合物の濃度に基づいた濃さで発色する発色剤溶液を定量する発色剤計量槽と、前記試料計量槽中の試料溶液と発色剤計量槽中の発色剤溶液を混合する混合槽と、前記混合液の可視光の吸光度を測定する吸光度ユニットとを備えた濃度測定装置であって、
正逆両方向に流体を搬送でき、前記第1供給管中の試料溶液を送る第1給送部と、
正逆両方向に流体を搬送でき、前記第2供給管中の発色剤溶液を送る第2給送部と、
前記第1給送部及び第2給送部を、正転させて試料計量槽及び発色剤計量槽にそれぞれ溶液を供給した後、逆転させて前記第1供給管及び第2供給管からそれぞれ試料溶液及び発色剤溶液を排出するように前記第1給送部及び第2給送部を動作制御する制御演算部と、を備えることを特徴とする、濃度測定装置を提供する。
【0014】
本発明の第2態様によれば、前記試料計量槽及び発色剤計量槽は、それぞれの側壁に溢流口を備え、前記第1供給管及び第2供給管は、その下端が前記溢流口よりも下側まで延在して設けられていることを特徴とする、第1態様の濃度測定装置を提供する。
【0015】
本発明の第3態様によれば、さらに、前記試料計量槽及び発色剤計量槽に設けられた前記溢流口近傍に、前記試料溶液及び発色剤溶液が流動したかを検知する排出検知センサを備え、
前記、制御演算部は、排出検知センサからの検出信号により、前記第1給送部及び第2給送部の正転から逆転の切り替えを行なうことを特徴とする、第2態様の濃度測定装置を提供する。
【0016】
本発明の第4態様によれば、さらに、第3供給管によって供給される希釈液を定量する希釈液計量槽と、
正逆両方向に流体を搬送でき、前記第3供給管中の希釈液を希釈液計量槽送る第3給送部と、を備え、
前記制御演算部は、第3給送部の正転及び逆転動作の切り替え制御を行なうことを特徴とする、第1から3態様のいずれか1つの濃度測定装置を提供する。
【0017】
本発明の第5態様によれば、希釈液計量槽中の希釈液を前記混合槽に送る希釈液排出部をさらに備え、
前記制御演算部は、前記希釈液計量槽中の希釈液の量以上の輸送量となるように希釈液排出部を動作させることを特徴とする、第4態様の濃度測定装置を提供する。
【0018】
本発明の第6態様によれば、前記試料溶液は対象化合物を過酸化水素とする溶液であり、前記発色剤溶液は、モリブデン酸アンモニウム溶液であることを特徴とする、第1から第5態様のいずれか1つの濃度測定装置を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の濃度測定装置は、簡単な構造で再現性の高い計量を実現し、供給管の挿入量を調整することにより計量槽で定量する容量が可変であり、また、計量槽の追加が可能であり、対象とする試薬の変更も容易であることから、様々な用途に対応可能である。
【0020】
本発明によれば、発色剤溶液及び試料溶液を常に一定の割合で混合させることで、試料溶液を発色させて可視光による吸光度を測定するために、低濃度においても試料溶液中の対象化合物の濃度を高精度で測定することができる。また、滴定法と異なり、滴下時間がなく測定時間が短いため装置化に有利である。
【0021】
また、試料計量槽及び発色剤計量槽を用いて一定量を計量する際に、第1給送部及び第2給送部を正転させて内部に溶液を供給した後、逆転させることで、第1供給管及び第2供給管によって両溶液が両計量槽から排出され、試料計量槽及び発色剤計量槽中には水面が第1及び第2供給管の下端位置となった一定体積の溶液が残ることとなる。よって、常に一定の割合で発色剤溶液及び試料溶液を混合することができ、吸光度測定の精度を高めることができる。
【0022】
さらに、過マンガン酸カリウムの析出などによる配官のつまりがなくメンテナンス性が高く、さらに、ポンプの逆転により定量を行う方法は構造が簡単で誤差が少ない。シリンジポンプなどを使う方法に比べ安価に製作することができる。
【0023】
また、試料計量槽及び発色剤計量槽の側壁に溢流口を備えることで、槽内に容量を超えて溶液が供給された場合であっても、確実に動作を可能にすることができる。
【0024】
また、排出検知センサにより、溢流口から溶液が流出したかを検出することにより、第1供給管及び第2供給管の下端よりも確実に溶液が槽内に貯留されていることを確認することができ、第1給送部及び第2給送部の逆転による槽内により定量される溶液の測定を確実にすることができる。
【0025】
一般的に化合物の濃度が高くなると、化合物の濃度と発色剤による発色の程度に相関関係がなくなる。このため、希釈液で高濃度の試料溶液を希釈し、発色剤の発色が化合物の濃度に対して相関関係をもつ領域で吸光度測定をすることができる。
【0026】
本発明の第5態様によれば、希釈液計量槽中の希釈液の分量以上の配送量となるように希釈液排出部を動作させることで、希釈液計量槽中の希釈液がすべてを混合槽に送られた後、空気が混合槽中に送られることとなる。この送られた気泡により、混合槽中の試料溶液と発色剤溶液を攪拌させ、均一な混合液とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる濃度測定装置の構成を示す模式図である。
【図2】過酸化水素濃度と発色した混合溶液の吸光度との関係を示すグラフである。
【図3】図1の濃度測定装置に使用される試料計量槽の構成を示す模式図である。
【図4】図3の試料計量槽を用いて溶液を定量する工程を示す図である。
【図5】図1の濃度測定装置に用いられている混合槽の構成を示す模式図である。
【図6】図1の濃度測定装置の動作フロー図である。
【図7】計量動作のサブフロー図である。
【図8】本発明の第2実施形態の濃度測定装置に使用される試料計量槽の構成を示す模式図である。
【図9】第2実施形態にかかる濃度測定装置の計量動作のサブフロー図である。
【図10】図1の濃度測定装置を用いて作成した検量データを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態に係る濃度測定装置について、図面を参照しながら説明する。
【0029】
図1は、本発明の実施形態にかかる濃度測定装置の構成を示す模式図である。
【0030】
本実施形態にかかる濃度測定装置1は、試料タンク2内に貯留されている試料溶液と、発色剤タンク3内に貯留されている発色剤溶液を混ぜ、試料溶液と発色剤溶液の反応により発色させて、その発色の程度を可視光吸光度測定により、試料溶液中の対象化合物の濃度を測定するものである。
【0031】
試料溶液は濃度を測定する対象である対象化合物が溶解した溶液であり、発色剤溶液は試料溶液と混合することで試料溶液中の対象化合物の濃度によって濃さで発色する溶液である。試料溶液と発色剤溶液を混合して起こる化学反応を促進するために、例えば、混合溶液を加熱などの処理をしてもよい。
【0032】
本実施形態にかかる濃度測定装置では、試料溶液として過酸化水素水溶液、発色剤溶液として、硫酸酸性下のモリブデン酸アンモニウム水溶液を用い、試料溶液中の過酸化水素の濃度を測定する。
【0033】
本実施形態にかかる濃度測定装置は、数百ppmレベルの過酸化水素溶液である試料溶液を硫酸酸性下のモリブデン酸アンモニウム水溶液(7モリブデン酸6アンモニウム4水和物:0.5〜3%、硫酸:3〜9%、水:88〜95%の水溶液)に添加すると、試料溶液中の対象化合物としての過酸化水素の濃度に応じた濃さで混合液が黄色発色するという現象を用いたものである。そして、この発色した混合溶液を可視光により吸光度測定し、過酸化水素水溶液中の過酸化水素濃度を測定する。
【0034】
濃度測定装置1は、これらの原理を用いた濃度測定を自動化するために、制御演算部70を備える。制御演算部70は、濃度演算を行なうマイクロプロセッサ、検量データや各種データ及びマイクロプロセッサを動作させるためのプログラム等が格納された記憶装置、データや各種の命令を入力するキーボード等の入力装置、データ処理の結果を出力するプリンタやディスプレイ等の出力装置等から構成される。また、制御演算部70は後述する電磁弁の開閉制御信号や各ポンプの停止および運転の制御信号を発生する。
【0035】
図2に過酸化水素濃度と発色した混合溶液の吸光度との関係を示す。図2のグラフに示すように、上記試料溶液としての過酸化水素水溶液と発色剤溶液としてのモリブデン酸アンモニウム水溶液を一定量ずつ定量し、混合した混合液を可視光で吸光度測定すると、濃度と吸光度との間には、特定の濃度C(約2000ppm)までの低濃度領域において、比例関係が見られる。本実施形態にかかる濃度測定装置では、この特定濃度C以下の領域において吸光度測定を行なう。
【0036】
この原理により試料溶液の濃度を測定するためには、試料溶液と発色剤溶液の混合比率を一定にする必要があり、このために、本実施形態にかかる濃度測定装置1は、一定量の試料溶液と発色剤溶液を計量するための機構を備える。すなわち、測定ごとにいずれも同じ体積の溶液が計量できるように構成されていることが必要である。
【0037】
また、例えば、特定濃度以上の試料溶液を希釈して特定濃度C以下とするために純水を用いて試料溶液を希釈することが必要となる。このために、濃度測定装置1は、希釈水が貯留された希釈水タンク4や一定量の希釈水を計量するため機構を備える。
【0038】
一定量の試料溶液、発色剤溶液、希釈水を計量するための機構を構成する部材の一部として、それぞれ、試料計量槽5、発色剤計量槽6、希釈水計量槽7とを備える。なお、本実施形態では、試料計量槽5は約10ml、発色剤計量槽6は約2ml、希釈水計量槽7は約38mlの溶液をそれぞれ定量する。
【0039】
試料タンク2、発色剤タンク3、希釈水タンク4からそれぞれ試料計量槽5、発色剤計量槽6、希釈水計量槽7へは、第1供給管としての試料供給管8、第2供給管としての発色剤供給管9、第3供給管としての希釈水供給管10が一端が内部に挿入されるようにして連結されている。
【0040】
また、試料計量槽5、発色剤計量槽6、希釈水計量槽7には、後述するようにそれぞれ溢流口が設けられており、当該溢流口に接続されたオーバーフロー配管11,12,13がそれぞれのタンクに接続されている。
【0041】
試料供給管8、発色剤供給管9、希釈水供給管10は、それぞれ可撓性のチューブが用いられている。試料供給管8、発色剤供給管9、希釈水供給管10には、それぞれのタンクから計量槽への液体の輸送用に第1〜第3給送部の一例としての送液ポンプ14,15,16が設けられている。
【0042】
送液ポンプ14,15,16は、制御演算部70からの制御信号により動作するチューブポンプで構成されており、送液ポンプを構成するロータの回転方向を切り替えることで輸送対象である液体を正方向及び逆方向へ切り替え自在に輸送することができる。
【0043】
図3は、本実施形態の濃度測定装置に用いられている試料計量槽の構成を示す模式図である。図3では、試料計量槽を例にとって説明するが、発色剤計量槽6及び希釈水計量槽7は、計量容量が異なる点を除き試料計量槽5と同じ構成である。
【0044】
試料計量槽5は、上部が開口した円筒状の本体40と本体40の開口を密閉する蓋体41を備えている。本体40の側壁42には溢流口44が設けられており、オーバーフロー配管11が接続されている。
【0045】
蓋体41には、試料供給管8が液密に挿通され試料計量槽5の内部に試料溶液を供給することができるようになっている。試料供給管8は、その下端8aが溢流口44よりも下方に位置するように挿通され、また、本体40の側壁内面43と接触するようになっている。これにより、試料供給管8から供給された試料溶液は、本体40の内壁面を伝って落下することとなり、気泡の発生が防止される。
【0046】
本体40の底壁45は、円錐形となるように傾斜をつけて構成されており、内部に貯留された溶液が内壁面に残りにくいようになっている。また、本体40の最深部には貯留された溶液の取出口46が設けられており、後述するように、試料混合配管17によって混合槽20に接続されている。
【0047】
上記構成の試料計量槽5により、簡単な構成で一定量の試料溶液を計量することができる。図4は、試料計量槽を用いて溶液を定量する工程を示す図である。
【0048】
まず、図4(a)に示すように、送液ポンプ14を正転させて矢印90に示すように試料供給管8から試料溶液を試料計量槽5に供給する。この際、試料混合配管17に設けられている送液ポンプは停止しているため、取出口46からの溶液は流出しない。なお、上記の通り、試料供給管8の下端8aが本体40の内壁面に接触しているため、槽内に気泡が発生することがない。
【0049】
試料供給管8からの試料溶液の供給が継続すると、試料溶液の水面が試料計量槽5の溢流口44に到達する。すると、図4(b)に示すように、溢流口44から試料溶液が溢流し、オーバーフロー配管11を通って試料タンク2へ還流する。
【0050】
次いで、ポンプが逆転して、図4(c)の矢印92に示すように試料供給管8から試料溶液が吸い出される。その後、図4(d)に示すとおり、試料溶液の液面が試料供給管8の下端8aの位置まで下降すると、それ以上試料溶液の排出は行なわれず、試料計量槽5内には一定体積の試料溶液が残る。なお、上記の動作は、試料計量槽5だけではなく、発色剤計量槽6及び希釈水計量槽7についても同様に行なわれる。
【0051】
試料計量槽5、発色剤計量槽6、希釈水計量槽7の各取出口は、それぞれ、試料混合配管17、発色剤混合配管18、希釈水混合配管19によって混合槽20に接続されている。試料混合配管17、発色剤混合配管18、希釈水混合配管19には、それぞれの計量槽から混合槽への液体の輸送用に送液ポンプ20,21,22が設けられている。当該送液ポンプのうち、希釈水混合配管19に設けられている送液ポンプ22は、本発明の希釈液排出部に相当する。
【0052】
送液ポンプ20,21,22は、制御演算部70からの制御信号により動作するチューブポンプで構成されており、送液ポンプを構成するロータの回転方向を切り替えることで輸送対象である液体を正方向及び逆方向へ切り替え自在に輸送することができる。
【0053】
図5は、本実施形態の濃度測定装置に用いられている混合槽の構成を示す模式図である。混合槽20は、上部が開口した円筒状の本体47と本体47の開口を密閉する蓋体48を備えている。
【0054】
蓋体48には、試料混合配管17、発色剤混合配管18、希釈水混合配管19がそれぞれ液密に挿通され混合槽20の内部に試料計量槽5、発色剤計量槽6、希釈水計量槽7内に存在する溶液を供給することができるようになっている。希釈水混合配管19は、その下端19aが本体47の底壁近傍にまで到達するように挿通され、後述するように、希釈水混合配管19から空気を排出することで、混合槽20内の溶液を攪拌することができるようになっている。
【0055】
本体47の底壁には、取出口49が設けられており、配管24によって後述するフローセル26と接続する。配管24には、混合槽からフローセル26への液体の輸送用に送液ポンプ25が設けられている。送液ポンプ25は、制御演算部70からの制御信号により動作するチューブポンプで構成される。
【0056】
フローセル26は、吸光度測定ユニットを構成する部材であり、具体的には図示しないが光が通過する部分が石英ガラス製もしくはサファイヤ製の窓板を有する構成である。透明なセルを挟んで互いに対向する位置には、可視光を発行する発光器27と、発光器から発行されてセルを通過した光量を測定する受光器28とが設けられる。発光器27から発行される光の波長は混合液の発色の程度を測定可能であるものであればよく、単色光であってもよいし複数の波長の光を含むものであってもよい。
【0057】
なお、フローセル26の下流側の配管29には、電磁弁30を設けてもよい。電磁弁は、制御演算部70からの動作制御を受けて作動するものであり、配管29内の流体が流れるのを確実に停止することができる。なお、送液ポンプ25により確実に流体の流れを停止できる場合は、電磁弁の設置を省略することもできる。
【0058】
フローセル26を通過した混合液は、配管29を通って廃液タンク31に廃棄される。
【0059】
制御演算部70では、受光器28から受信した光強度に関する信号により、フローセル26を通過したときに吸収された吸光度を求め、予め作成されている検量データと比較することによって、対象化合物の濃度を算出する。
【0060】
以下、本実施形態にかかる濃度測定装置を用いて濃度測定を行なう工程について説明する。図6は、実施形態にかかる濃度測定装置の動作フロー図である。
【0061】
まず、前提として、濃度既知のサンプルデータを用いて対象化合物の濃度と吸光度の関係を示す検量データを作成する。図2に示すように対象化合物の濃度と吸光度の関係は低濃度領域においては、ほぼ正比例の関係にあり、特定の濃度Cを超えると徐々に比例関係からの誤差が大きくなる。本実施形態にかかる濃度測定装置では、十分な制度を確保することができる濃度範囲となるように、混合液中の対象化合物濃度が特定濃度Cよりも低い値Cとなるように設定し、この濃度となるように希釈水と試料装置の混合割合を調整、決定する。
【0062】
作成された検量線は、制御演算部70内に格納され、制御演算部70が測定試料の吸光度の値に基づいて対象化合物の濃度を算出する際の参照データとして用いられる。
【0063】
まず、図2に示すように、本実施形態にかかる濃度測定装置1を用いて濃度測定を行なう前提として、本装置の各槽及び配管などの洗浄を行なう(#1)。洗浄の工程では任意のポンプを順に動作させ、濃度測定に用いる各溶液を装置内に通過させる。この動作によって、装置内に残存する溶液が除去され、測定時の誤差を少なくすることができる。
【0064】
洗浄工程が終了すると、試料溶液及び希釈水自体の発色の程度を確認するブランクデータを取得するために、発色試薬以外の定量、測定を行なう予備測定操作(#2)を行なう。予備測定操作における各工程は、本測定工程と共通するため、詳細は、本測定工程で説明する。
【0065】
洗浄工程(#1)及び予備測定工程(#2)が終了すると、本測定工程を行なう。本測定工程は、計量工程(#4)、混合工程(#5)、濃度測定工程(#6)を含む。
【0066】
計量工程(#3)では、制御演算部70は、試料溶液、発色剤溶液、希釈水の計量を行なう。これらの溶液の計量は、上記の通り、定量以上の溶液を槽内に供給した後に溶液を抜き取ることによって一定量の溶液を計量する動作を行なう。
【0067】
図7に計量動作の処理のサブフロー図を示す。これらの処理は、試料溶液、発色剤溶液、希釈水のそれぞれについて並行して動作が行なわれる。まず、図7に示すように、計量動作では制御演算部70は、送液ポンプ14,15,16を正転させ(#31)、試料計量槽5、発色剤計量槽6、希釈水計量槽7にそれぞれ試料溶液、発色剤溶液、希釈水を供給する。
【0068】
送液ポンプ14,15,16の正転動作は、それぞれに予め決められた所定の駆動時間が経過するまで行なわれる。なお、送液ポンプ14,15,16の正転動作によって供給された溶液の水面が溢流口44の高さまで到達すると、オーバーフロー配管11,12,13によってそれぞれのタンクへ還流され、各槽からの溢流が防止される。
【0069】
制御演算部70は、正転動作が所定時間継続させた後、送液ポンプ14,15,16を逆転駆動させる(#33)。送液ポンプ14,15,16の逆転動作は、それぞれに予め決められた所定の駆動時間が経過するまで行なわれる(#34)。
【0070】
このようにして、計量工程の動作(#3)が終了すると、制御演算部70は、送液ポンプ20,21,22を正転させて各槽に定量された溶液を混合槽20に送液して溶液を混合する(#4)。送液ポンプ20,21,22の正転動作は、それぞれに予め決められた所定時間が経過するまで行なわれる。このときの所定時間は、各槽に貯留されている溶液をすべて混合槽20に送るために必要な所要時間よりも長く設定されている必要がある。また、さらに、希釈水を混合槽20に送る送液ポンプ20については、十分に長い時間を駆動するように設定されている。
【0071】
これにより、希釈水計量槽7に貯留されている希釈水がすべて混合槽20に輸送された後も送液ポンプ23の駆動が継続することとなるため、希釈水混合配管19から空気が排出することで、図5に示すように、気泡50により混合槽20内の溶液を攪拌することができる。制御演算部70は、送液ポンプ23の駆動が終了すると、混合工程を終了させる。
【0072】
混合工程が終了すると、濃度測定の工程を行なう(#5)。濃度測定の工程では、電磁弁30を開放した状態で送液ポンプ25を駆動させ、混合槽20内の混合溶液をフローセル26に送り込む。所定時間が経過すると、送液ポンプ25を停止し、さらに、電磁弁30が設けられている場合は電磁弁30を閉じて、フローセル26内の混合溶液の揺らぎがなくなってから、混合溶液の可視光の吸光度を測定する。
【0073】
制御演算部70は、受光器28から光電流として出力するフローセル26の透過光の強度に対応する透過光強度信号から各波長の光の吸光度をそれぞれ演算し、演算した各波長の光の吸光度および上述の予め求められた検量データに基づいて上記各波長の吸光度から対象化合物である過酸化水素の濃度を演算する。
【0074】
本実施形態の濃度測定装置1によれば、試料タンク2内に貯留されている試料溶液と、発色剤タンク3内に貯留されている発色剤溶液を混ぜ、試料溶液と発色剤溶液の反応により発色させて、その発色の程度を可視光吸光度測定することにより、高精度で試料溶液中の対象化合物の濃度を測定することができる。また、この原理を用いた濃度測定方法において重要な各溶液の混合比率を一定にする機構を簡単な構成で実現することができ、測定ごとの繰り返し再現性を高くすることができる。
【0075】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態にかかる濃度測定装置は、大部分の構成を第1実施形態にかかる濃度測定装置と共通にするため、相違点についてのみ主に説明する。図8は、本発明の第2実施形態にかかる濃度測定装置に使用される試料計量槽の構成を示す模式図である。
【0076】
図8に示す試料計量槽5aは、図3に示す試料計量槽5と基本的構成を共通にするが、溢流口44の近傍に、溢流センサ51が設けられている点で異なる。溢流センサ51は、溢流口44から流体が溢流したか否かを検出するセンサであり、例えば、光学センサなどを使用することができる。
【0077】
溢流センサ51からの出力信号は、制御演算部70に送信され、制御演算部が行なう計量工程(図6の#2参照)における制御信号として機能する。
【0078】
図9は、第2実施形態にかかる濃度測定装置の計量動作のサブフロー図である。本実施形態においては、計量工程で送液ポンプ14の動作制御に溢流センサ51からの出力をトリガ信号として利用する。すなわち、送液ポンプの正転により試料計量槽5に試料溶液を供給する場合、溢流センサ51からの溢流口44から試料溶液がオーバーフローしていることを示す出力信号が検知されると送液ポンプ14を逆転動作に切り替える。
【0079】
なお、溢流センサ51からの出力がない場合であっても所定時間が経過すると正転動作を終了し、逆転動作に切り替える処理を行なう(#25)。このように制御することで、溢流センサ51の不良などの問題を発見することができる。
【0080】
本実施形態の構成を採用することにより、溶液の計量工程に要する時間を短縮化することができるという効果がある。
【実施例】
【0081】
本発明にかかる濃度測定装置の測定精度を検証するために、試料溶液として過酸化水素水溶液、発色剤溶液として、硫酸酸性下のモリブデン酸アンモニウム水溶液を用い、試料溶液中の過酸化水素の濃度を測定する実験を行なった。
【0082】
まず、電子天秤を利用して過酸化水素濃度が既知の混合溶液を作成し、これを本発明にかかる図1に示す濃度測定装置の混合槽20に投入し、送液ポンプ25を動作させて吸光度測定ユニット(フローセル26、発光器27、受光器28)に送り、450nm、500nmの2波長で吸光度を測定した。検量データの対象となる吸光度データは、450nmでの吸光度の値から500nmでの吸光度の値を引いた2波長吸光度とし、これに基づいて、2波長吸光度と調合値濃度との関係を示す検量データを作成した。図10に検量データを示す。検量結果より、検量データをy=8593.4x2+4968.6xの式で特定した。
【0083】
上記各試料を用いた吸光度データは、きわめて直線に近い二次曲線として表され、図10に示すように、1000ppm程度までの低濃度領域では、ほぼ直線として近似することができ、これ以上の濃度では、直線からの差分が大きくなるという関係があることが分かる。
【0084】
次に、本発明にかかる図1に示す濃度測定装置の、試料タンク2に濃度既知の試料を入れ、これを用いて濃度測定装置を動作させて試料中の過酸化水素濃度の測定を行なった。なお、試料計量槽5は約10ml、発色剤計量槽6は約2ml、希釈水計量槽7は約38mlの溶液をそれぞれ定量し、これらの溶液を混合槽に混合させて混合後の濃度既知の混合溶液を作成し、前記の2波長吸光度を測定して検量データにより濃度を算出した。算出結果を表1に示す。
【0085】
【表1】

【0086】
表1に示すように、本実施形態にかかる濃度測定装置によれば、濃度既知の調合値と測定値の誤差が少なく、高い精度で濃度が測定されていることがわかる。また、この結果より、試料計量槽5、発色剤計量槽6、希釈水計量槽7でのそれぞれの溶液の定量が精度よく行なわれ、混合溶液の吸光度測定の再現性についても高い評価が得られることがわかる。さらには、1000ppm程度までの低濃度の領域においては、測定誤差がきわめて少なく、これらの濃度範囲になるように試料溶液を希釈することにより、濃度測定の精度を高くすることができる。
【0087】
なお、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施可能である。例えば、
【0088】
また、本発明の濃度測定装置は、実施例に示した試料溶液中の過酸化水素の濃度を測定以外の用途として、アルミやシリコンなどのエッチング量測定や洗浄液の微量金属イオンの検出などにも適用可能である。
【符号の説明】
【0089】
1 濃度測定装置
2 試料タンク
3 発色剤タンク
4 希釈水タンク
5,5a 試料計量槽
6 発色剤計量槽
7 希釈水計量槽
8 試料供給管
9 発色剤供給管
10 希釈水供給管
11,12,13 オーバーフロー配管
14,15,16,20,21,22 送液ポンプ
17 試料混合配管
18 発色剤混合配管
19 希釈水混合配管
20 混合槽
26 フローセル
27 発光器
28 受光器
30 電磁弁
40 本体
41 蓋体
44 溢流口
46 取出口
70 制御演算部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に挿入して設けられた第1供給管によって供給される測定対象である対象化合物を含有する試料溶液を定量する試料計量槽と、内部に挿入して設けられた第2供給管によって供給され、前記対象化合物の濃度に基づいた濃さで発色する発色剤溶液を定量する発色剤計量槽と、前記試料計量槽中の試料溶液と発色剤計量槽中の発色剤溶液を混合する混合槽と、前記混合液の可視光の吸光度を測定する吸光度測定ユニットとを備えた濃度測定装置であって、
正逆両方向に流体を搬送でき、前記第1供給管中の試料溶液を送る第1給送部と、
正逆両方向に流体を搬送でき、前記第2供給管中の発色剤溶液を送る第2給送部と、
前記第1給送部及び第2給送部を、正転させて試料計量槽及び発色剤計量槽にそれぞれ溶液を供給した後、逆転させて前記第1供給管及び第2供給管からそれぞれ試料溶液及び発色剤溶液を排出するように前記第1給送部及び第2給送部を動作制御する制御演算部と、を備えることを特徴とする濃度測定装置。
【請求項2】
前記試料計量槽及び発色剤計量槽は、それぞれの側壁に溢流口を備え、前記第1供給管及び第2供給管は、その下端が前記溢流口よりも下側まで延在して設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の濃度測定装置。
【請求項3】
さらに、前記試料計量槽及び発色剤計量槽に設けられた前記溢流口近傍に、前記試料溶液及び発色剤溶液が流動したかを検知する排出検知センサを備え、
前記、制御演算部は、排出検知センサからの検出信号により、前記第1給送部及び第2給送部の正転から逆転の切り替えを行なうことを特徴とする、請求項2に記載の濃度測定装置。
【請求項4】
さらに、第3供給管によって供給される希釈液を定量する希釈液計量槽と、
正逆両方向に流体を搬送でき、前記第3供給管中の希釈液を希釈液計量槽送る第3給送部と、を備え、
前記制御演算部は、第3給送部の正転及び逆転動作の切り替え制御を行なうことを特徴とする、請求項1から3のいずれか1つに記載の濃度測定装置。
【請求項5】
希釈液計量槽中の希釈液を前記混合槽に送る希釈液排出部をさらに備え、
前記制御演算部は、前記希釈液計量槽中の希釈液の量以上の輸送量となるように希釈液排出部を動作させることを特徴とする、請求項4に記載の濃度測定装置。
【請求項6】
前記試料溶液は対象化合物を過酸化水素とする溶液であり、前記発色剤溶液は、モリブデン酸アンモニウム溶液であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1つに記載の濃度測定装置。
【請求項7】
内部に挿入して設けられた供給管によって供給される液体を定量する計量槽と前記計量槽で定量された液体の可視光の吸光度を測定する吸光度測定ユニットとを備えた濃度測定装置であって、
正逆両方向に流体を搬送でき、前記供給管中の液体を前記計量槽に送る給送部と、
前記給送部を正転させて前記計量槽にそれぞれ溶液を供給した後、逆転させて前記供給管からそれぞれ液体を排出するように前記給送部を動作制御して前記液体を定量する制御演算部と、を備えることを特徴とする濃度測定装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−93164(P2012−93164A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−239497(P2010−239497)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(000001096)倉敷紡績株式会社 (296)
【出願人】(591203288)日本アクア株式会社 (4)
【Fターム(参考)】