説明

濃度計測用配管構造

【課題】本発明は、配管内における物質の密度計測および濃度計測等に利用出来る濃度計測用配管構造に関するものである。
【解決手段】前記濃度計測用配管構造は、配管の一部において、湾曲状に切り欠かれた湾曲状切欠部と、前記湾曲状切欠部を閉塞する凸状部および前記凸状部に連設された湾曲状閉塞部と、前記凸状部に取り付けられた濃度計とから構成されている。前記湾曲状切欠部は、前記凸状部および湾曲状閉塞部が溶接等により接合されている。配管を流れてきた物質は、濃度計が取り付けられている前記凸状部を通過する際に一方の線源から放射されたガンマー線が他方に取り付けられたガンマー線検出器によって計測される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙パルプにおける黒液、緑液、白液、カラー、パルプ液等、化学工業における各種溶液、スラリー等、製鐵や非鉄金属精錬における各種金属スラリー等、土木における、土砂スラリー、あるいは、セメントスラリー等の密度計測および濃度計測等に利用出来る濃度計測用配管構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガンマー線を応用した配管密度計は、配管径に応じた配管ホルダーとガンマー線の透過能力を勘案した核種を用いる必要があり、様々な核種と配管ホルダーの組み合わせをラインナップする必要があった。マイクロ波、超音波等を応用した配管密度計は、配管毎にマイクロ波または超音波等が透過する窓を設ける必要があり、適用配管径の種類の分だけ、ラインナップする必要があった。このため、配管密度計は、汎用性が損なわれ、多大のコスト負担をよぎなくされた。
【0003】
さらに、配管規格は、予め、全てが決められているため、計測距離を選択する余地がなかった。したがって、前記配管密度計は、計測原理からみた最適計測距離を選択し、精度よく計測することができなかった。ガンマー線を利用する配管密度計は、国際基準により法的手続きを経ずに、安全に使用できる線源があるが、これを用いて精度よく計測するには最適計測距離を選択する必要があり、これを実現する手段がなかった。
【0004】
また、マイクロ波、超音波等は、これらを透過する窓の材質および形状が配管に合わせて多様化されるため、ガンマー線と組み合わせた複合センサーとし多成分分析計として使用することが極めて困難であった。このため、ガンマー線計測器の特長である安定性を用いると同時に、ガンマー線計測の欠点である応答性をマイクロ波等の計測で補い、多成分を計測できる配管濃度計ができなかった。
【0005】
また、特開平8−178822号公報には、配管用流体密度検出方法が記載されている。前記配管用流体密度検出方法は、配管の本体表面を外側に突出させた狭隘な流路部分の両側に線源と検出器を置いて計測している。前記配管用流体密度検出方法は、配管内を流れる物質の流速を大幅に変えてしまうため、正確な計測ができなかった。
【特許文献1】特開平8−178822号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上の課題を解決するために、本発明は、電磁波応用濃度計や超音波応用濃度計をあらゆる配管に容易に適用できるように汎用性をもたせ、その果実として、コストダウンを図ることとともに、高い精度の計測ができる濃度計測用配管構造を提供することを目的とする。また、本発明は、マイクロ波または超音波等とガンマー線の良さを組み合わせた高い精度の計測ができる濃度計測用配管構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(第1発明)
第1発明の濃度計測用配管構造は、配管内部に存在する物質の濃度を計測するためのものであり、前記配管内部を流通する物質の流通方向に対する摩擦を和らげる湾曲状切欠部と、前記湾曲状切欠部の上部に設けられ、前記物質を流通させる前記湾曲状切欠部の湾曲と下部が一致する形状を備えた凸状部と、前記凸状部の両側に連設され、前記湾曲状切欠部を閉塞する湾曲状閉塞部と、前記凸状部の両側垂直面に取り付けられた線源と、前記線源を検出する検出器とからなる濃度計とから少なくとも構成されていることを特徴とする。
【0008】
(第2発明)
第2発明の濃度計測用配管構造は、配管内部に存在する物質の濃度を計測するためのものであり、前記配管内部を流通する物質の流通方向に対する摩擦を和らげる傾斜面付き切欠部と、前記傾斜面付き切欠部の上部に設けられ、前記物質を流通させる前記傾斜面付き切欠部と下面が一致する形状を備えた凸状部と、前記凸状部の両側に連設され、前記傾斜面付き切欠部を閉塞する傾斜面付き切欠閉塞部と、前記凸状部の両側垂直面に取り付けられた線源と、前記線源を検出する検出器とからなる濃度計とから少なくとも構成されていることを特徴とする。
【0009】
(第3発明)
第3発明の濃度計測用配管構造は、第1発明または第2発明の凸状部が前記配管の上周面より上に突出していることを特徴とする。
【0010】
(第4発明)
第4発明の濃度計測用配管構造において、第3発明の凸状部は、前記配管内部を流通する物質の流通方向に対する摩擦を和らげる傾斜面または曲面が上流および下流に設けられていることを特徴とする。
【0011】
(第5発明)
第5発明の濃度計測用配管構造は、第1発明から第4発明の濃度計がガンマー線源とガンマー線検出器とから構成されていることを特徴とする。
【0012】
(第6発明)
第6発明の濃度計測用配管構造は、第5発明のガンマー線源がバリウム133であることを特徴とする。
【0013】
(第7発明)
第7発明の濃度計測用配管構造は、第6発明のガンマー線源にバリウム133を使用した場合、前記バリウム133の1MBq密封線源を用いて計測することを特徴とする。
【0014】
(第8発明)
第8発明の濃度計測用配管構造は、第1発明から第3発明の濃度計がマイクロ波発振器とマイクロ波受信器とから構成されていることを特徴とする。
【0015】
(第9発明)
第9発明の濃度計測用配管構造は、第1発明から第3発明の濃度計がガンマー線源とガンマー線検出器、およびマイクロ波発振器とマイクロ波受信器から構成されていることを特徴とする。
【0016】
(第10発明)
第10発明の濃度計測用配管構造は、第8発明または第9発明の凸状部の両側垂直面にマイクロ波を透過する窓が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、配管を切り欠いた部分に凸状部を設けた構造とし、前記凸状部における両側の計測面に濃度計等を設置し、濃度等を計測しているため、透過不能の配管径に対しても透過型の濃度計等を用いることができ、高い精度で計測することができ、あらゆる大きさの配管において、透過型濃度計測が可能である。
【0018】
本発明によれば、配管を切り欠いた部分に凸状部を設けた構造とし、前記凸状部の平行した部分からガンマー線を被計測物に対して真っ直ぐに入射させることができるため、前記ガンマー線を丸い配管に対して照射するものと比較して、多くのガンマー線を照射できるので、計算式のカウント数と透磁率(μ)の値の関係を適切に保つことができる。また、前記計測は、透磁率(μ)の値を大きくすることができるため、高い精度の計測結果を得ることができる。
【0019】
本発明によれば、配管を切り欠いた部分に凸状部が設けられているため、この計測面に取り付ける計測器が同一であっても、あらゆる大きさの配管で、透過型濃度計測が可能になり、前記計測器の汎用性を格段に高めることができる。
【0020】
本発明によれば、配管を切り欠いた部分に凸状部が設けられているため、配管の径にかかわらず、透過するガンマー線等と、被計測物質である流体に最適の透過距離とすることができ、高い精度の計測が可能になる。
【0021】
本発明によれば、配管に湾曲状切欠部あるいは傾斜面付き切欠部を設けたため、被計測物質の流れを乱流にして二層流の発生あるいはスケールの付着を防ぐことができ、高い精度の計測が可能になる。
【0022】
本発明によれば、配管に湾曲状切欠部あるいは傾斜面付き切欠部と凸状部を設けることで、前記配管断面中の上下左右あらゆる部分において計測が可能になる。また、太い配管における計測は、同一断面上の様々の部位に濃度計等を設けることにより、複数計測が可能となり、配管内を流れる物質の状況を分析することができる。
【0023】
本発明によれば、容器状に加工した管にも適用でき、様々な容器内の物質濃度を計測することができる。
【0024】
本発明によれば、ガンマー線検出器の遮蔽体にタングステンを用いることで、検出器の幅を小さくでき、湾曲した面で切り欠きを小さくできるため、適用配管径種類が増える。
【0025】
本発明によれば、計測面部材に鉄より比重の軽い部材を用いることで、ガンマー線透過パルスの数を増やすことができ、統計誤差のより少ない、高い精度の計測が可能となる。
【0026】
本発明によれば、ガンマー線源は、バリウム133とすることで線源遮蔽体を小さくでき、湾曲状切欠部または傾斜面付き切欠部を任意の大きさにできるため、適用配管の径および/または種類を増加させることができる。
【0027】
本発明によれば、透過する電磁波は、マイクロ波を用いることであらゆる配管径での流体濃度計が可能となる。前記マイクロ波は、位相を計測することで、あらゆる配管径での同一波長による物質濃度が計測できる。
【0028】
本発明によれば、透過する電磁波にガンマー線とマイクロ波を併用することで、ガンマー線によりドリフトを抑えた安定計測が広範囲の配管径での計測と複数成分の濃度計測が可能となる。前記方法は、溶液内の析出の状態を密度と誘電率(ε)の違いから計測したり、誘電率(ε)の異なる2つの成分の割合を密度と誘電率(ε)の違いから計測したり、密度計測だけでは計測しきれなかった物質の濃度を計測したり、ガンマー線計測の安定性とマイクロ波計測の応答性の良さを利用した計測器などさまざまな計測が可能となった。
【0029】
本発明によれば、併用するガンマー線源にバリウム133の1MBq密封線源を用い、マイクロ波の位相を用いて計測することで、放射線障害防止法上の届出許可等の手続きなしに、あらゆる配管径での複数成分の流体物質の濃度を計測できる。
【0030】
本発明によれば、配管を切り欠いた部分に凸状部を設けた構造とし、前記凸状部において、濃度計等の計測面を平行に設けることができるので、マイクロ波等の計測波を透過する部材を容易に取り付けることでき、摩耗や破損等が発生した場合にも容易に交換することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
(第1発明)
第1発明の濃度計測用配管構造は、配管内部に存在する、紙パルプにおける黒液、緑液、白液、カラー、パルプ液等、化学工業における各種溶液、スラリー等、製鐵や非鉄金属精錬における各種金属スラリー等、土木における、土砂スラリーやセメントスラリー等の密度および濃度等を計測するためのものである。前記濃度計測用配管構造は、配管の一部において、湾曲状に切り欠かれた湾曲状切欠部と、前記湾曲状切欠部を閉塞する凸状部および前記凸状部に連設された湾曲状閉塞部と、前記凸状部に取り付けられた濃度計とから構成されている。前記湾曲状切欠部は、前記凸状部および湾曲状閉塞部が溶接等により接合されている。
【0032】
前記湾曲状切欠部は、前記配管内部を流通する物質の流通方向に対する摩擦を和らげるものであり、流通方向に対して前後に湾曲部が設けられている。前記凸状部は、前記湾曲状切欠部の上部に設けられ、前記物質を流通させる前後において、前記湾曲状切欠部の湾曲と下部が一致する形状を備えている。湾曲状閉塞部は、前記凸状部の両側に連設され、前記湾曲状切欠部に接合されることにより前記湾曲状切欠部を閉塞している。濃度計は、前記凸状部における一方の側の垂直面に取り付けられた線源と、前記凸状部の他方の側に取り付けられた前記線源のエネルギーを検出する検出器とから構成されている。なお、前記凸状部の形状は、前記物質の流れに沿って狭くなり、その後、平行な面を有する凸状部になり、さらに、その後、徐々に幅を広げるようにすることもできる。
【0033】
配管を流れてきた物質は、濃度計が取り付けられている凸状部の内部を通過する際に一方の線源から放射された、たとえば、ガンマー線が、他方に取り付けられたガンマー線検出器によって計測される。前記物質の流速は、凸状部において、変化がないため、正確に濃度等を計測することができる。また、前記物質は、凸状部に隣接する部分において、湾曲状閉塞部に当たるため、切欠閉塞部の前後にキャビテーションが発生し難いため、通常の流通状態で濃度等を計測することができる。
【0034】
(第2発明)
第2発明の濃度計測用配管構造は、配管内部における切欠部の形状が異なっている点で第1発明と異なっている。前記切欠部は、前記配管内部を流通する物質の流通方向に対する摩擦を和らげる傾斜面によって切り欠かれている。そして、前記凸状部は、前記傾斜面付き切欠部の上部に設けられ、前記物質を流通させる前記傾斜面付き切欠部と下面が一致する形状になっている。また、傾斜面付き切欠閉塞部は、前記凸状部の両側に連設され、前記傾斜面付き切欠部に溶接により接合され、前記傾斜面付き切欠部を閉塞する。
【0035】
濃度計は、前記凸状部の両側垂直面に取り付けられた線源と、前記線源を検出する検出器とから構成されている。前記物質の流速は、凸状部において、変化がないため、正確に濃度等を計ることができる。また、前記凸状部に隣接する部分において、傾斜面付き切欠部に衝突した前記物質は、前記傾斜面に沿って下部に流れ、その反対に傾斜面に沿って上昇するため、傾斜面付き切欠部の前後にキャビテーションが発生し難いため、通常の流通状態で濃度等を計測することができる。
【0036】
(第3発明)
第3発明の濃度計測用配管構造において、前記凸状部は、前記配管の上周面より上に突出している。前記凸状部の突出高さは、第1発明または第2発明の凸状部の高さの1/2から1/4程度、好ましくは1/3程度で高くしてあれば、前記配管の上周面より突出しても、内部物質の流速に大きな差がでないことが判った。
【0037】
(第4発明)
第4発明の濃度計測用配管構造は、前記凸状部における物質の流通方向に対して、上流および下流の上部に前記配管内部を流通する物質の流通方向に対する摩擦を和らげる傾斜面または曲面が設けられている。前記傾斜面または曲面は、前記傾斜面付き切欠部の傾斜面または湾曲状切欠部の湾曲と相まって、物質の流通速度を変えることなく、前記凸状部を通過するため、正確な物質の濃度等を計測することができる。
【0038】
(第5発明)
第5発明の濃度計測用配管構造は、ガンマー線源とガンマー線検出器とから構成された前記濃度計によって流通物質の濃度等を計測している。ガンマー線のみの計測は、コンプトン散乱領域のガンマー線源を用いる。
【0039】
(第6発明)
第6発明の濃度計測用配管構造は、ガンマー線源として、バリウム133を使用する。本発明による平行した凸状部に対してバリウム133のガンマー線を透過させる場合、前記線源のエネルギーを小さくしても、計算式のカウント数と装置定数(μ)の値の関係を適切に設定すれば、効率を上げることが可能で、よい計測ができる。
【0040】
(第7発明)
第7発明の濃度計測用配管構造において、バリウム133から放射されるガンマー線源の1MBq以下の密封線源は、放射線障害防止法上規制対象に入らない微弱線源である。本発明によりバリウム133から放射されるガンマー線源の1MBq以下の法規制対象外である微弱線源を用いて従来不可能であった管径1m程度の太い口径の配管内の流体の密度を計測することができるようになった。ガンマー線検出は、しゃへい体にタングステンを用いることで、入射したガンマー線がビルドアップすることを抑えることができ、計測のじゃまとなる散乱線を少なくできるので好ましく、バリウム133から放射されるガンマー線源の1MBq以下の微弱密封線源において、特に好ましい。また、前記検出器は、小さくできるので、被計測部材が小さくなっても容易に取り付けられる。
【0041】
(第8発明)
第8発明の濃度計測用配管構造における濃度計は、マイクロ波発振器とマイクロ波受信器とから構成され、凸状部の両側面に設けられる。前記マイクロ波発振器からマイクロ波を発振し、前記マイクロ波受信器により、前記マイクロ波のパワーまたは位相のいずれかを計測することができる。
【0042】
(第9発明)
第9発明の濃度計測用配管構造における濃度計は、ガンマー線源とガンマー線検出器、およびマイクロ波発振器とマイクロ波受信器が凸状部の両側面に設けられている。配管を流通する物質は、ガンマー線とマイクロ波の双方によって計測することができる。前記濃度計は、前記配管内における溶液の析出状態を密度と誘電率(ε)の違いから計測したり、誘電率(ε)の異なる2つの成分の割合を密度と誘電率(ε)の違いから計測したり、密度計測だけでは計測しきれなかった物質の濃度を計測したり、ガンマー線計測の安定性とマイクロ波計測の応答性の良さを利用した計測が可能になる。
【0043】
(第10発明)
第10発明の濃度計測用配管構造は、凸状部の両側垂直面にマイクロ波を透過する窓が設けられている。前記窓は、マイクロ波を透過するセラミックスまたはプラスチック等により閉塞されている。
【実施例1】
【0044】
図1(イ)は本発明の第1実施例である濃度計測用配管構造を説明するための斜視図、(ロ)は第1実施例の濃度計測用配管構造を説明するためのA−A断面図である。図1(イ)および(ロ)において、濃度計測用配管構造は、配管11の内部に存在する、紙パルプにおける黒液、緑液、白液、カラー、パルプ液等、化学工業における各種溶液、スラリー等、製鐵や非鉄金属精錬における各種金属スラリー等、土木における、土砂スラリーあるいはセメントスラリー等の密度および濃度等を計測するためのものである。本明細書は、前記配管11の内部における前記物質を単に「物質」と記載する。
【0045】
前記濃度計測用配管構造は、配管11の一部において、湾曲状に切り欠かれた湾曲状切欠部111と、前記湾曲状切欠部111を閉塞する凸状部113および前記凸状部113に連設された湾曲状閉塞部114と、前記凸状部113に取り付けられた濃度計(線源12および検出器13)とから構成されている。前記湾曲状切欠部111は、前記凸状部113および湾曲状閉塞部114が溶接等により接合され、水密性が保持されている。
【0046】
前記湾曲状切欠部111は、前記配管11の内部を流通する物質の流通方向に対する摩擦を和らげるものであり、流通方向に対して前後に湾曲部が設けられている。前記凸状部113は、前記湾曲状切欠部111の上部に設けられ、前記物質を流通させる前後において、前記湾曲状切欠部111の湾曲と下部が一致する形状を備えている。湾曲状閉塞部114は、前記凸状部113の両側に連設され、前記湾曲状切欠部111に接合されることにより前記湾曲状切欠部111を閉塞して、配管11の水密性を保持している。
【0047】
濃度計は、前記凸状部113における一方の側の垂直な計測面に取り付けられた線源12と、前記線源12から放射された、たとえば、ガンマー線を検出する前記凸状部113の他方の垂直な計測面112、112′に取り付けられた検出器13とから構成されている。
【0048】
配管11を流れてきた物質は、濃度計が取り付けられている凸状部113を通過する際に一方の線源12から放射された、たとえば、ガンマー線が、他方に取り付けられた検出器13によって計測される。前記物質の流速は、凸状部113において、変化がほとんどないため、正確に濃度等を計測することができる。また、前記物質は、凸状部113に隣接する部分において、湾曲状閉塞部114、114′に当たるため、閉塞部の前後にキャビテーションが発生しないため、通常の流通状態で濃度等を計測することができる。
【0049】
次に、コンプトン散乱領域のガンマー線源を用いた場合を説明する。計測原理は、次の定義による計算式により計測密度を演算する。
N :カウント数cps
N(0):ρ=0の時のカウント数cps もしくは基準とするρx の時のカウント数cps
μ:装置定数
ρ:計測対象物密度
計算式は
N=N(0)×exp (- μρ)となり
密度の計算は
ρ=-1/μLn(N/N(0))となる。
【0050】
本実施例を1m程度の大口径配管に適用した場合、直径200mm程度の流体が流れることがある。前記流体は、湾曲部材により流れの方向を脇へ逸らされるため、流路を閉塞させることが無く、安定した計測が可能である。ガンマー線検出方法は、流れが乱流であっても差し支えなく、スラリー計測において、乱流が望ましい。そこで、本実施例は、スラリー等が湾曲状閉塞部により計測領域を確実に乱流とすることができるので好ましい。
【0051】
本実施例による、配管を切り欠いた部分に凸状部を設け、この部分が平行しているため、配管材料をガンマー線が透過する距離は、配管材料の厚さに比較的近い距離である。これに比べ、丸い配管に対してガンマー線を透過させた場合は、配管の管壁を斜めに長い距離ガンマー線がよぎる部分が多く、配管材料内での減衰が多い。また、密度の高い配管材料に対しガンマー線が斜めに入射するため、配管材料でのコンプトン散乱による反射が多くなり、計測すべき配管の内部にガンマー線が到達し難くなる。
【0052】
本実施例は、丸い配管のままに比べ、計測に必要なガンマー線のパルスを数多く用いることができるので、計算式のカウント数と装置定数(μ)の値の関係を適切に保つことができる、また、本実施例は、装置定数(μ)の値を大きくすることができて効率がよく、高い精度の計測ができる。
【0053】
本実施例は、ガンマー線源としてBa−133を用い、二つの計測部材の間隔を20mmから100mm程度として、液状の計測対象物を透過させた場合、効率よく減衰するため、計測精度が上げられる。本実施例は、平行した管壁材料をBa−133ガンマー線が透過させる場合、線源を小さくしても計算式のカウント数と装置定数(μ)の値の関係を適切に設定し効率を上げることが可能で高い精度の計測ができる。
【0054】
Ba−133線源の1MBq以下の密封線源は、放射線障害防止法上規制対象にはいらない微弱線源である。本発明によりBa−133の1MBq以下の法規制対象外微弱線源を用いて従来不可能であった管径1mなどの太い口径の配管内の流体の密度を計測することができるようになった。ガンマー線検出器の遮蔽体にタングステンを用いることで入射したガンマー線がビルドアップすることを抑えることができ、計測のじゃまとなる散乱線を少なくできるので好ましく、Ba−133線源の1MBq以下の微弱密封線源においては特に好ましい。また、本実施例は、検出器を小さくできるので、計測部材を小さくしても、精度の高い計測ができる。
【0055】
使用する配管材料は、本実施例において、鋼管としたが、ステンレス鋼、ポリ塩化ビニル製、ポリプロピレン製等、その他の素材を使用することができる。本実施例における検出器は、シンチレーション検出器を使用したが、半導体等その他の方式からなる検出器を使用することができる。本実施例は、配管の径の大きさにかかわらず、透過する波と流体に最適の透過距離とすることができ、高い精度の計測ができる。
【0056】
本実施例は、配管断面中の上下左右あらゆる部分に計測部材を設けることが可能となり、それぞれの位置における流れの計測が可能となる。太い配管は、同一断面上の様々の部位での複数計測が可能となり流れの状況を分析できる。本実施例は、容器状に加工した管にも適用でき、様々な容器内の液濃度を計測することができる。
【実施例2】
【0057】
図2(イ)は本発明の第2実施例である濃度計測用配管構造を説明するための斜視図、(ロ)は第2実施例の濃度計測用配管構造を説明するためのB−B断面図である。図2(イ)および(ロ)において、第2実施例の濃度計測用配管構造は、配管11の内部における切欠部の形状が異なっている。前記切欠部は、前記配管11の内部を流通する物質の流通方向に対する摩擦を和らげる傾斜面付き切欠部211によって切り欠かれている。そして、前記凸状部213は、前記傾斜面付き切欠部211の上部に設けられ、前記物質を流通させる前記傾斜面付き切欠部211と下面が一致する形状になっている。また、傾斜面付き切欠閉塞部214、214′は、前記凸状部213の両側に連設され、前記傾斜面付き切欠部211に溶接により接合され、前記傾斜面付き切欠部211を水密的に閉塞している。
【0058】
濃度計は、たとえば、マイクロ波発振器22と、前記マイクロ波を受信するマイクロ波受信器23とから構成されている。また、前記凸状部213には、前記マイクロ波を透過する窓14、14′が設けられている。前記窓14、14′は、たとえば、セラミックスまたはプラスチックス等によって構成されている。
【0059】
本実施例は、凸状部213を湾曲部材を使用した円弧ではなく、傾斜面付き凸状部として、ほぼ台形状にした例である。前記台形状は、多角形にしてもよく、全体としてほぼ湾曲形状である限り、どのようなものでもよく限定されない。前記凸状部213の両側面に取り付けられた二つの計測装置(たとえば、マイクロ波発振器とマイクロ波受信器)は、着脱可能に固定されている。
【0060】
マイクロ波の計測は、透過してきたマイクロ波のパワーを計測しても、位相を用いて計測してもよい。また、計測するための素子は、凸状部213に埋め込むこともできる。前記マイクロ波を使用する場合、マイクロ波の透過する窓14は、セラミックス以外に、プラスチックス等、その他のマイクロ波を透過させるものであればよく限定されない。
【実施例3】
【0061】
図3は本発明の第3実施例である濃度計測用配管構造を説明するための断面図である。図3において、第3実施例の濃度計測用配管構造は、凸状部213の両側面にマイクロ波を透過する窓14、14′が設けられているとともに、その上に、マイクロ波発振器22と、マイクロ波受信器23が、また、その上にガンマー線源12と、ガンマー線を検出する検出器13がそれぞれ取り付けられている。前記それぞれの計測部材は、前記凸状部213の内部空間を流れ2流体の密度(濃度)をガンマー線とマイクロ波の双方を用いて計測する。
【0062】
前記ガンマー線および/またはマイクロ波を用いる計測方法は、配管11を流れる溶液内の析出の状態を密度と誘電率(ε)の違い、あるいは、誘電率(ε)の異なる2つの成分の割合を密度と誘電率(ε)の違いから演算する。また、前記計測方法は、密度計測だけで計測しきれなかった物質の濃度を計測したり、ガンマー線計測の安定性とマイクロ波計測の応答性の良さの両方を利用してさまざまな計測が可能となった。
【実施例4】
【0063】
図4(イ)は本発明の第4実施例である濃度計測用配管構造を説明するための斜視図、(ロ)は第4実施例の濃度計測用配管構造を説明するためのC−C断面図である。図4(イ)および(ロ)において、第4実施例の濃度計測用配管構造は、第1実施例および第2実施例と異なり、配管11の一部において、傾斜面付き凸状部413が前記配管11の上周面より上に突出している。前記傾斜面付き凸状部413の突出高さは、前記凸状部(たとえば、図3の符合213)の高さの1/2から1/4程度、好ましくは1/3程度、高くしてあれば、前記配管11の上周面より突出しても、内部物質の流速に大きな差がでないことが判った。
【0064】
前記傾斜面付き凸状部413は、上流および下流の上部に前記配管11の内部を流通する物質の流通方向に対する摩擦を和らげる傾斜面が設けられている。前記傾斜面は、前記傾斜面付き切欠部411の傾斜面と相まって、物質の流通速度を大きく変えることなく、前記傾斜面付き凸状部413を通過するため、正確な物質の濃度等を計測することができる。また、前記流通方向に対して設けられた傾斜面付き切欠閉塞部414、414′は、前記流通方向の前後において、前記傾斜面付き凸状部413における傾斜と反対方向に傾斜している。前記傾斜面は、流体に対するキャビテーションが発生しないため、より正確なデータを得ることができる。また、前記傾斜面付き凸状部413は、傾斜面を湾曲面に変えることができる。
【0065】
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではない。そして、本発明は、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱することがなければ、種々の設計変更を行うことが可能である。たとえば、切欠部および凸状部の形状は、濃度計等を平行に配置できるとともに、被計測物質の流速を変えない形状であれば、形状を任意に変更することができる。傾斜面の角度または湾曲面の曲率の程度は、任意に変えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】(イ)は本発明の第1実施例である濃度計測用配管構造を説明するための斜視図、(ロ)は第1実施例の濃度計測用配管構造を説明するためのA−A断面図である。(実施例1)
【図2】(イ)は本発明の第2実施例である濃度計測用配管構造を説明するための斜視図、(ロ)は第2実施例の濃度計測用配管構造を説明するためのB−B断面図である。(実施例2)
【図3】本発明の第3実施例である濃度計測用配管構造を説明するための断面図である。(実施例3)
【図4】(イ)は本発明の第4実施例である濃度計測用配管構造を説明するための斜視図、(ロ)は第4実施例の濃度計測用配管構造を説明するためのC−C断面図である。(実施例4)
【符号の説明】
【0067】
11・・・配管
111・・・湾曲状切欠部
112、112′・・・計測面
113・・・凸状部
114、114′・・・湾曲状閉塞部
12・・・線源
13・・・検出器
14、14′・・・窓
211・・・傾斜面付き切欠部
212・・・計測面
213・・・凸状部
214、214′・・・傾斜面付き切欠閉塞部
22・・・マイクロ波発振器
23・・・マイクロ波受信器
411・・・傾斜面付き切欠部
412・・・計測面
413・・・傾斜面付き凸状部
414、414′・・・傾斜面付き切欠閉塞部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管内部に存在する物質の濃度を計測するための濃度計測用配管構造において、
前記配管内部を流通する物質の流通方向に対する摩擦を和らげる湾曲状切欠部と、
前記湾曲状切欠部の上部に設けられ、前記物質を流通させる前記湾曲状切欠部の湾曲と下部が一致する形状を備えた凸状部と、
前記凸状部の両側に連設され、前記湾曲状切欠部を閉塞する湾曲状閉塞部と、

前記凸状部の両側垂直面に取り付けられた線源と、前記線源を検出する検出器とからなる濃度計と、
から少なくとも構成されていることを特徴とする濃度計測用配管構造。
【請求項2】
配管内部に存在する物質の濃度を計測するための濃度計測用配管構造において、
前記配管内部を流通する物質の流通方向に対する摩擦を和らげる傾斜面付き切欠部と、
前記傾斜面付き切欠部の上部に設けられ、前記物質を流通させる前記傾斜面付き切欠部と下面が一致する形状を備えた凸状部と、
前記凸状部の両側に連設され、前記傾斜面付き切欠部を閉塞する傾斜面付き切欠閉塞部と、
前記凸状部の両側垂直面に取り付けられた線源と、前記線源を検出する検出器とからなる濃度計と、
から少なくとも構成されていることを特徴とする濃度計測用配管構造。
【請求項3】
前記凸状部は、前記配管の上周面より上に突出していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載された濃度計測用配管構造。
【請求項4】
前記凸状部は、前記配管内部を流通する物質の流通方向に対する摩擦を和らげる傾斜面または曲面が上流および下流に設けられていることを特徴とする請求項3に記載された濃度計測用配管構造。
【請求項5】
前記濃度計は、ガンマー線源とガンマー線検出器とから構成されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載された濃度計測用配管構造。
【請求項6】
前記ガンマー線源は、バリウム133であることを特徴とする請求項5に記載された濃度計測用配管構造。
【請求項7】
前記ガンマー線源にバリウム133を使用した場合、前記バリウム133の1MBq密封線源を用いて計測することを特徴とする請求項6に記載された濃度計測用配管構造。
【請求項8】
前記濃度計は、マイクロ波発振器とマイクロ波受信器とから構成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載された濃度計測用配管構造。
【請求項9】
前記濃度計は、ガンマー線源とガンマー線検出器、およびマイクロ波発振器とマイクロ波受信器から構成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載された濃度計測用配管構造。
【請求項10】
前記凸状部の両側垂直面には、マイクロ波を透過する窓が設けられていることを特徴とする請求項8または請求項9に記載された濃度計測用配管構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−36614(P2009−36614A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−200676(P2007−200676)
【出願日】平成19年8月1日(2007.8.1)
【出願人】(000100517)アースニクス株式会社 (5)
【Fターム(参考)】